IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

<>
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図1
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図2
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図3
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図4
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図5
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図6
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図7
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図8
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図9
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図10
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図11
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図12
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図13
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図14
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図15
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図16
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図17
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図18
  • 特許-状態診断装置、システム、及び方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】状態診断装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
G05B23/02 V
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021012236
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115585
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】須藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】鹿仁島 康裕
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016509(JP,A)
【文献】特開2018-063545(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146026(WO,A1)
【文献】特開2007-310665(JP,A)
【文献】特開2019-139755(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095259(WO,A1)
【文献】特開2007-065883(JP,A)
【文献】特開2002-278621(JP,A)
【文献】特開2019-159902(JP,A)
【文献】特表2017-539027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の状態に関する第1データを入力として、前記第1データを定量的に表す一の第1数値を、前記複数の段階それぞれについて出力するモデルを実行する実行部と、
前記モデルから出力された前記複数の第1数値が、前記時系列に沿って単調に変化するか否かを判定する判定部と、
を具備する状態診断装置。
【請求項2】
前記判定部により、前記モデルから出力された前記複数の第1数値が、前記時系列に沿って単調に変化すると判定された場合において、前記モデルと前記モデルから出力された前記複数の第1数値とのうち少なくとも一つを送信する送信部と、
をさらに具備する請求項1に記載の状態診断装置。
【請求項3】
前記機器の状態に関する第2データを学習データとして、前記モデルを学習する学習部と、
をさらに具備する請求項1又は請求項2に記載の状態診断装置。
【請求項4】
前記学習部は、前記判定部により、前記モデルから出力された前記複数の第1数値が、前記時系列に沿って単調に変化しないと判定された場合において、前記学習データと前記モデルのパラメータとのうち少なくとも一つを変更して前記モデルを学習する、
請求項3に記載の状態診断装置。
【請求項5】
時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の状態に関する第1データを入力として、前記第1データを定量的に表す複数の第1数値を、前記複数の段階それぞれについて出力するモデルを実行する実行部と、
前記モデルから出力された前記複数の第1数値に関する一の分散及び一の平均を、前記複数の段階それぞれについて計算する計算部と、
前記計算された前記複数の分散が、前記時系列に沿って所定の値以下であるか否かと、前記計算された前記複数の平均が、前記時系列に沿って単調に変化するか否かと、を判定する判定部と、
を具備する状態診断装置。
【請求項6】
前記判定部により、前記計算された前記複数の分散が前記時系列に沿って所定の値以下であると判定された場合、かつ、前記判定部により、前記計算された前記複数の平均が前記時系列に沿って単調に変化すると判定された場合において、前記モデルと前記モデルから出力された前記複数の第1数値とのうち少なくとも一つを送信する送信部と、
をさらに具備する請求項5に記載の状態診断装置。
【請求項7】
前記機器の状態に関する第2データを学習データとして、前記モデルを学習する学習部と、
をさらに具備する請求項6に記載の状態診断装置。
【請求項8】
前記学習部は、前記判定部により、前記計算された前記複数の分散が前記時系列に沿って所定の値以下でないと判定された場合と、前記判定部により、前記計算された前記複数の平均が前記時系列に沿って単調に変化しないと判定された場合とのうち少なくとも一つの場合において、前記学習データと前記モデルのパラメータとのうち少なくとも一つを変更して前記モデルを学習する、
請求項7に記載の状態診断装置。
【請求項9】
前記時系列に沿った所定の段階における前記機器の状態に関する第3データと、前記第3データと、前記所定の段階とは異なる各段階における前記機器の状態に関する信号データとの間の差分を表す第4データとに基づいて、前記第1データを生成する生成部と、
をさらに具備する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の状態診断装置。
【請求項10】
前記第1データは、前記時系列に沿った前記複数の段階それぞれにおける前記機器の音に関する信号データである、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の状態診断装置。
【請求項11】
前記第1データは、実データ又は疑似データである、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の状態診断装置。
【請求項12】
状態診断装置と、第1機器と、第2機器とを具備する状態診断システムであって、
前記状態診断装置は、
時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の状態に関する第1データを入力として、前記第1データを定量的に表す一の第1数値を、前記複数の段階それぞれについて出力するモデルを実行する第1実行部と、
前記モデルから出力された前記複数の第1数値が、前記時系列に沿って単調に変化するか否かを判定する判定部と、
前記判定部により、前記モデルから出力された前記複数の第1数値が、前記時系列に沿って単調に変化すると判定された場合において、前記モデルを前記第2機器に送信する送信部と、
を具備し、
前記第2機器は、
前記第1機器から取得された、前記第1データとは異なり、かつ、前記時系列に沿った前記複数の段階それぞれにおける前記第1機器の状態に関する第2データを入力として、前記状態診断装置から送信された前記モデルを実行する第2実行部と、
を具備する状態診断システム。
【請求項13】
前記第2機器における前記モデルから出力された、前記第2データを定量的に表す複数の第2数値を表示する第3機器と、
をさらに具備する請求項12に記載の状態診断システム。
【請求項14】
時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の状態に関する第1データを入力として、前記第1データを定量的に表す一の第1数値を、前記複数の段階それぞれについて出力するモデルを実行することと、
前記モデルから出力された前記複数の第1数値が、前記時系列に沿って単調に変化するか否かを判定することと、
を具備する状態診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、状態診断装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通例、産業機器やインフラ設備では、その安全性の維持のためにエンジニア等による定期検査が実施される。しかし、近年のIoT(Internet of Things)技術の発展に伴い、上記のような人の手による機器の状態診断は、センサを用いたサーバ等による機器の状態診断に代替されることが期待される。後者のような機器の状態診断を行うシステムにおいては、センサの測定値から機器の異常や劣化を診断するために、機械学習の技術により学習されたモデルが用いられる。このとき、学習されたモデルが意図した通りに機器の異常や劣化を検知可能であるか、すなわちモデルの妥当性を判定することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/146315号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る状態診断装置は、実行部と、判定部とを具備する。実行部は、時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の状態に関する第1データを入力として、前記第1データを定量的に表す一の第1数値を、前記複数の段階それぞれについて出力するモデルを実行する。判定部は、前記モデルから出力された前記複数の第1数値が、前記時系列に沿って単調に変化するか否かを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る状態診断装置の構成例を示す図。
図2】機器の劣化の進行と状態数値との関係の一例を示す図。
図3】機器の劣化の進行と状態数値との関係の一例を示す図。
図4】第1実施形態に係る状態診断装置の動作例を示す図。
図5】第2実施形態に係る状態診断装置の構成例を示す図。
図6】機器の劣化の進行と状態数値と多段階劣化ラベルとの関係の一例を示す図。
図7】機器の劣化の進行と状態数値と多段階劣化ラベルとの関係の一例を示す図。
図8】第2実施形態に係る状態診断装置の動作例を示す図。
図9】第3実施形態に係る状態診断装置の構成例を示す図。
図10】疑似的に生成された多段階劣化データの一例を示す図。
図11】第3実施形態に係る状態診断装置の動作例を示す図。
図12】第4実施形態に係る状態診断装置の構成例を示す図。
図13】状態数値の分布の一例を示す図。
図14】第4実施形態に係る状態診断装置の動作例を示す図。
図15】第5実施形態に係る状態診断装置の構成例を示す図。
図16】第5実施形態に係る状態診断装置の動作例を示す図。
図17】第1-第5実施形態に係る状態診断装置のハードウェア構成例を示す図。
図18】第6実施形態に係る状態診断システムの構成例を示す図。
図19】第7実施形態に係る状態診断システムの構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る状態診断装置、システム、及び方法について説明する。以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明を適宜、省略する。
【0008】
なお、以下の実施形態に係る状態診断装置、システム、及び方法は、産業機器(以下、「機器」と呼ぶ)の劣化状態や劣化兆候を、機器からの音の信号に基づいて検知するモデルの妥当性を判定することを少なくとも一つの目的とする。一般に、機器の劣化が進行すると、機器が発する音の信号が徐々に変化する。モデルは、機器が発する音の信号の変化を検知することで、機器の劣化状態や劣化兆候に関する検知結果を出力する。検知結果がユーザ(例えばエンジニア)に通知されることで、エンジニアは機器の劣化が進み機器が故障する前に、機器を交換又は整備できる。上記の観点から、モデルは、機器の予防保全に資するといえる。以下の実施形態では、このような機器の劣化による信号の変化を捕捉して検知するモデルの妥当性を判定する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る状態診断装置1Aの構成例を示す図である。
状態診断装置1Aは、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定する機能を有する装置である。状態診断装置1Aは、例えばPCやサーバコンピュータ、エッジデバイスを含む種々の処理装置により実装される。状態診断装置1Aは、モデル実行部30、状態診断モデル31、モデル判定部40、及び送信部50を含む。
【0010】
多段階劣化データ20は、時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の劣化状態に関する信号データである。一般に、機器は長期間に亘る連続的又は断続的な使用により劣化が進行し、その性能(パフォーマンス)が低下する。これに伴い、機器に異常な音や振動が生じたり、機器が出力するデータの品質が低下したりといった種々の劣化兆候が表れる。これら劣化兆候は機器の劣化状態を表すため、多段階劣化データ20は、時系列に沿った複数の段階それぞれにおける、機器の劣化兆候に関する信号データであるともいえる。
【0011】
本実施形態において、多段階劣化データ20は、時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の劣化状態を表す音に関する信号データであると想定するが、これに限らない。多段階劣化データ20は、例えば、機器の加速度や振動に関する1次元の信号データでもよいし、機器が出力する画像や動画に関する2次元の信号データでもよい。すなわち、多段階劣化データ20は、機器の複数の異なる劣化状態から得られる信号データであればよい。
【0012】
もちろん、多段階劣化データ20の代わりに、劣化に限らず、時間経過に伴う機器の種々の状態変化に関する多段階の信号データが使用されてもよい。また、多段階劣化データ20は、規則的な又は不規則的な時間間隔で取得された信号データでもよい。すなわち、多段階劣化データ20は、時系列(時間軸又はタイムラインとも呼ぶ)上で連続する複数の時点において取得された機器の状態に関する信号データでもよい。
【0013】
なお、多段階劣化データ20は、機器に設置されたセンサから取得された信号データ(センサデータとも呼ぶ)でもよい。また、多段階劣化データ20は、実際に劣化が確認されている機器から得られた信号データでもよいし、実際に劣化は確認されていないものの、使用前の初期状態(正常状態)から一定期間が経過し、何らかの状態変化が生じた可能性がある機器から得られた信号データでもよい。また、多段階劣化データ20は、実際に機器から得られた実データでもよいし、機器の劣化傾向をシミュレートして疑似的に生成された疑似データでもよい。
【0014】
モデル実行部30は、多段階劣化データ20を取得し、状態診断モデル31を実行する。
【0015】
状態診断モデル31は、入力データから機器の状態を定量的に表す数値(以下、「状態数値」と呼ぶ)を出力するモデルである。状態診断モデル31は、例えば入力データが多段階劣化データ20である場合、時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の劣化状態を定量的に表す状態数値を出力する。このとき、状態数値は機器の劣化の程度を表す劣化度であるともいえる。一般に、劣化度は、機器の劣化が進行するにつれて増加すると期待されるため、状態診断モデル31は、時間経過に伴う機器の劣化度を診断するともいえる。なお、状態診断モデル31は、状態診断装置1Aの外部から取得されたモデルでもよいし、状態診断装置1Aの内部で生成されたモデルでもよい。すなわち、状態診断モデル31は、状態診断装置1Aに含まれなくてもよいし、含まれてもよい。
【0016】
本実施形態において、状態診断モデル31は、時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の劣化状態を表す音に関する信号データを入力として、信号データを定量的に表す状態数値を出力すると想定するが、これに限らない。状態診断モデル31は、劣化に限らず、時間経過に伴う機器の種々の状態変化に関する信号データを入力として、信号データに対応する状態数値を出力するモデルでもよい。
【0017】
なお、状態診断モデル31は、機器の1つの段階に対して1つの状態数値を出力してもよいし(1対1対応)、機器の1つの段階に対して複数の状態数値を出力してもよい(1対多対応)。すなわち、状態診断モデル31は、機器の1つの段階に対して1以上の状態数値を出力してもよく、換言すれば、機器の1つの段階に対してn(nは自然数)個の状態数値を含む特徴ベクトルを出力してもよいといえる。また、状態数値は、連続的な値又は離散的な値でも構わない。
【0018】
なお、状態診断モデル31は、例えば入力データを状態数値に変換するように機械学習モデルを学習することで得られる。また、状態診断モデル31は、入力された信号データを直接、状態数値に変換する1つのアルゴリズムにより実装されてもよいし、入力された信号データを複数の段階を経て、最終的に状態数値に変換する複数のアルゴリズムにより実装されてもよい。例えば、入力データが機器の音に関する信号データである場合、状態診断モデル31は、音データを周波数変換(フーリエ変換)し周波数データを生成するアルゴリズムと、変換された周波数データを入力として当該音データの特徴量を状態数値として出力するアルゴリズムとにより実装されてもよい。また、機械学習モデルとしては、入力データから状態数値を出力する種々のモデル(例:線形回帰、ロジスティック回帰、サポートベクタマシン、決定木、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク)が適用可能である。本実施形態において、状態診断モデル31はニューラルネットワークであると想定する。
【0019】
モデル判定部40は、状態診断モデル31が、時系列に沿った複数の段階それぞれにおける機器の劣化状態を適切に検知可能であるか否かを判定する。具体的には、モデル判定部40は、多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値が、機器の劣化の段階が進行するにつれて単調に変化するか否かを判定する。前述の通り、機器の劣化が進行するにつれて機器の劣化度は増加すると期待されるため、モデル判定部40は、機器の劣化の段階が進行するにつれて、機器の劣化度を示す状態数値が単調に増加するか否かを判定するといえる。
【0020】
例えば、状態数値が大きいほど機器の劣化度も大きいという正の相関がある場合、モデル判定部40は、機器の劣化の段階が進行するにつれて状態数値が増加するか否かを判定する。一方、状態数値が大きいほど機器の劣化度は小さいという負の相関がある場合、モデル判定部40は、機器の劣化の段階が進行するにつれて状態数値が減少するか否かを判定する。すなわち、状態数値の定義に応じて、モデル判定部40は、時間経過に伴う機器の劣化度を表す状態数値が、単調に増加又は減少するか否かを判定する。なお、状態数値の単調性は、例えば所定の段階における状態数値と、当該所定の段階の前後の段階における状態数値とを比較することで確認される。モデル判定部40は、状態診断モデル31が機器の劣化を適切に検知可能であるか否か、すなわち状態診断モデル31の性能を確認するといえる。
【0021】
図2及び図3は、機器の劣化の進行と状態数値との関係の一例を示す図である。
図2及び図3は、機器の各段階における劣化状態を示す状態数値の変化を表す。具体的には、横軸(X軸)が時間を表し、縦軸(Y軸)が状態数値を表す2次元平面(XY平面)上において、状態数値の変化が「グラフA」及び「グラフB」により表される。両グラフは、機器が正常に動作している段階(正常)における状態数値と、機器の劣化が進行していく各段階(劣化1-劣化5)における状態数値とを表す。ここでは、機器の各段階(正常-劣化5)に対して1つの状態数値が割り当てられている場合(1対1対応)を想定し、状態数値が大きいほど機器の劣化度は大きいという正の相関があるものと想定する。
【0022】
図2におけるグラフAは、状態数値が各劣化の段階に応じて単調に増加する例を示す。すなわち、グラフAは、機器の劣化が進行するにつれて、機器の劣化度を示す状態数値が単調に増加することを示す。モデル判定部40は、グラフAのように多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値が単調に増加すると判定した場合、状態診断モデル31は妥当であると判定する。
【0023】
例えば、モデル判定部40は、状態数値の変化を表すグラフAの単調性を以下のようにして判定する。まず、モデル判定部40は、グラフAの各段階(正常-劣化5)のうち所定の段階における状態数値をAとし、当該所定の段階の前の段階における状態数値をBとし、当該所定の段階の後の段階における状態数値をCとする。モデル判定部40は、グラフAの各段階においてB<A<Cの関係が成立するかを判定することで、グラフAが単調増加するか否かを判定する。同様に、モデル判定部40は、グラフAの各段階においてB>A>Cの関係が成立するかを判定することで、グラフAが単調減少するか否かを判定する。このように、モデル判定部40は、所定の段階における状態数値を、当該所定の段階の前後の段階における状態数値と比較することで、グラフAの単調性を判定する。
【0024】
もちろん、単調増加の判定において、モデル判定部40はグラフAの各段階においてB<A又はA<Cのいずれか一方が成り立つかを判定してもよい。同様に、単調減少の判定において、モデル判定部40はグラフAの各段階においてB>A又はA>Cのいずれか一方が成り立つかを判定してもよい。すなわち、モデル判定部40は、所定の段階における状態数値と、当該所定の段階の前後いずれか一方の段階における状態数値との差分の符号を判定すればよい。なお、モデル判定部40は、差分が0である場合を含めて単調増加又は単調減少と判定してもよい。
【0025】
図3におけるグラフBは、状態数値が各劣化の段階に応じて単調に増加しない例を示す。具体的には、グラフBは劣化の段階1(劣化1)から次の劣化の段階2(劣化2)にかけて状態数値が減少した後、続く劣化の段階3(劣化3)にかけて状態数値が増加することを示す。モデル判定部40は、グラフBのように多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値が単調に増加しないと判定した場合、状態診断モデル31は妥当でないと判定する。
【0026】
以上のようにして、モデル判定部40は状態診断モデル31の妥当性を判定する。なお、図2及び図3は、状態診断モデル31が出力する状態数値の変化に関する視覚的な理解を助けるための図であり、実際には、状態診断モデル31が出力する状態数値の変化は、状態診断装置1Aが有する処理回路11(図17に後述)により計算される。すなわち、状態数値の変化は、図2及び図3のように表示されなくてもよく、状態診断装置1A内部で計算されればよい。妥当であると判定された状態診断モデル31は、機器の劣化を診断するのに適したモデルであるといえる。
【0027】
送信部50は、モデル判定部40により妥当であると判定された状態診断モデル31を送信する。送信部50は、例えば状態診断モデル31を実行可能な構成を有する外部装置(例:PC、サーバコンピュータ、エッジデバイス)に状態診断モデル31を送信する。外部装置は、受信した状態診断モデル31を用いて、機器の状態診断を実行する。なお、状態診断装置1Aが、妥当であると判定された状態診断モデル31を実行する場合には、送信部50は、状態診断モデル31を外部装置に送信しなくてもよい。この場合、状態診断装置1Aは、妥当であると判定される以前の状態診断モデル31を実行し、かつ、妥当であると判定された以後の状態診断モデル31を実行してもよい。
【0028】
なお、送信部50は、多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値を送信してもよい。送信部50は、例えば状態数値を表示可能な構成を有する外部装置(例:モニタ)に状態数値を送信する。外部装置は、受信した状態数値を表示する。なお、状態診断装置1Aが状態数値を表示可能な構成を有する場合には、送信部50は、状態数値を外部装置に送信しなくてもよい。この場合、状態診断装置1Aが状態数値を表示してもよい。また、図2及び図3に示すようなグラフにより、外部装置又は状態診断装置1Aにおいて状態数値が表示されてもよい。
【0029】
図4は、第1実施形態に係る状態診断装置1Aの動作例を示す図である。
ステップS101において、状態診断装置1Aは、状態診断モデル31を実行する。具体的には、状態診断装置1Aのモデル実行部30は、状態診断モデル31を実行することで、状態診断モデル31に多段階劣化データ20に対応する状態数値を出力させる。
【0030】
ステップS102において、状態診断装置1Aは、状態診断モデル31の妥当性を判定する。具体的には、状態診断装置1Aのモデル判定部40は、状態診断モデル31が出力した状態数値が単調に変化するか否かを判定する。
【0031】
ステップS103において、状態診断装置1Aは、状態診断モデル31が妥当であるか否かに応じて、続いて実行する処理を選択する。具体的には、状態診断装置1Aは、状態診断モデル31が妥当であると判定された場合(ステップS103のYes)、ステップS104を実行する。一方、状態診断装置1Aは、状態診断モデル31が妥当でないと判定された場合(ステップS103のNo)、処理を終了する。
【0032】
ステップS104において、状態診断装置1Aは、状態診断モデル31を送信又は運用する。具体的には、状態診断装置1Aの送信部50は、妥当であると判定された状態診断モデル31を外部装置に送信する。送信された状態診断モデル31は、外部装置において運用される。あるいは、状態診断装置1Aのモデル実行部30は、妥当であると判定された状態診断モデル31を実行することで運用する。
【0033】
ステップS105において、状態診断装置1Aは、状態診断モデル31の運用が開始されてから一定期間が経過したか否かに応じて、続いて実行する処理を選択する。具体的には、状態診断装置1Aは、一定期間が経過した場合(ステップS105のYes)、ステップS101に戻り、再び状態診断モデル31を実行した後、状態診断モデル31の妥当性を判定する。一方、状態診断装置1Aは、一定期間が経過していない場合(ステップS105のNo)、ステップS104に戻り、状態診断モデル31の運用を続ける。
【0034】
なお、状態診断装置1Aが、一定期間後に状態診断モデル31の妥当性を再び判定するのは、一度妥当であると判定された状態診断モデル31であっても、運用時に機器に生じた劣化が、状態診断モデル31が想定していた劣化よりも微小であった場合や、状態診断モデル31が想定していた劣化と異なる場合に、推定精度が低下すると予想されるからである。状態診断装置1Aは、一定期間後に状態診断モデル31の妥当性を再び判定することで、状態診断モデル31の推定精度が低下しているか否かを判定するといえる。
【0035】
なお、状態診断装置1Aが状態診断モデル31の妥当性を再び判定する際には、妥当性の判定に用いる多段階劣化データ20を差し替えてもよい。このとき、前回の判定で用いた多段階劣化データ20を、同データよりもさらに段階を細分化した別の多段階劣化データ20と差し替えてもよい。
【0036】
以上説明した第1実施形態に係る状態診断装置1Aによれば、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定することができる。また、状態診断装置1Aは、妥当であると判定されたモデルを外部装置に送信することで、外部装置は、受信したモデルを利用して機器の状態診断を実行することができる。また、状態診断装置1Aは、妥当であると判定されたモデルを利用して機器の状態診断を実行することができる。また、状態診断装置1Aは、モデルが出力した状態数値を外部装置に送信することで、外部装置は、受信した状態数値を表示することができる。また、状態診断装置1Aは、モデルが出力した状態数値を表示することができる。
【0037】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る状態診断装置1Bの構成例を示す図である。
第2実施形態に係る状態診断装置1Bは、多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値の変化と、多段階劣化ラベル21により示される信号データの変化とを比較し、状態診断モデル31の妥当性を判定する。
【0038】
多段階劣化ラベル21は、多段階劣化データ20に対応する各段階における劣化の程度を示したデータラベルである。具体的には、多段階劣化ラベル21は、機器の正常状態における信号データと、機器の各劣化状態における信号データとの間の差分を示す。多段階劣化ラベル21は、多段階劣化データ20から生成される。例えば、多段階劣化ラベル21は、多段階劣化データ20に基づいて人為的に生成されてもよいし、多段階劣化データ20から当該差分を計算する機械学習モデル等により機械的に生成されてもよい。
【0039】
図6及び図7は、機器の劣化の進行と状態数値と多段階劣化ラベル21との関係の一例を示す図である。
図6及び図7において、機器が正常に動作している段階(正常)における信号データに対する、各劣化の段階(劣化1-劣化5)における信号データとの間の差分が、複数のラベル211、212、213…により示されている。具体的には、複数のラベル211、212、213…は、各劣化の段階において図6に示すグラフA、及び図7に示すグラフCが通る各データ点を参照する態様で示されている。複数のラベル211、212、213…は、多段階劣化ラベル21に含まれる。
【0040】
なお、図6に示すグラフAは、図2に示すグラフAと同一であるものとする。また、グラフA及びグラフCは、いずれも状態数値が各劣化の段階に応じて単調に増加する例を示す。ただし、グラフA及びグラフCにおいて、状態数値が単調増加する割合が互いに異なるものとする。具体的には、グラフAの方がグラフCと比較して状態数値が単調増加する割合が大きいものとする。グラフA及びグラフCにおいて、正常-劣化1において同一の状態数値を示すが、劣化2-劣化5においてグラフAが示す状態数値の方が、グラフCが示す状態数値よりも大きい。
【0041】
ラベル211は、機器の正常状態(正常)における信号データと、機器の劣化の段階1(劣化1)における信号データとの間の差分を示す。ラベル211は、「劣化1:10kHz-40kHz,+1dB」を示すが、これは「劣化1における信号データは、正常状態における信号データと比較して、10kHz-40kHzの周波数帯域における振幅成分が最大で1dBだけ高い」ことを意味する。同様に、ラベル212は、機器の正常状態(正常)における信号データと、機器の劣化の段階2(劣化2)における信号データとの差分を示す。ラベル212は、「劣化2:10kHz-40kHz,+2dB」を示すが、これは「劣化2における信号データは、正常状態における信号データと比較して、10kHz-40kHzの周波数帯域における振幅成分が最大で2dBだけ高い」ことを意味する。同様に、ラベル213は、機器の正常状態(正常)における信号データと、機器の劣化の段階3(劣化3)における信号データとの差分を示す。ラベル213は、「劣化3:10kHz-40kHz,+3dB」を示すが、これは「劣化3における信号データは、正常状態における信号データと比較して、10kHz-40kHzの周波数帯域における振幅成分が最大で3dBだけ高い」ことを意味する。
【0042】
モデル判定部40は、状態数値の増加量に対する信号データの増加量の比率(増加率とも呼ぶ)が、各劣化の段階(劣化1-劣化5)において一定であるか否かを判定する。もちろん、上記の2つの増加量を入れ替えて、モデル判定部40は、信号データの増加量に対する状態数値の増加量の比率が、各劣化の段階(劣化1-劣化5)において一定であるか否かを判定してもよい。ここでは説明の便宜上、前者の比率に注目する。
【0043】
例えば、モデル判定部40は、上記の増加率が一定であるか否かを以下のようにして判定する。まず、モデル判定部40は、機器の正常状態における状態数値と、機器の劣化1における状態数値との差分をaとし、機器の正常状態における状態数値と、機器の劣化2における状態数値との差分をbとし、機器の正常状態における状態数値と、機器の劣化3における状態数値との差分をcとする。ラベル211より、正常から劣化1にかけて状態数値が差分aだけ増加したとき、信号データは最大で1dBだけ増加することが分かる。同様に、ラベル212より、正常から劣化2にかけて状態数値が差分bだけ増加したとき、信号データは最大で2dBだけ増加することが分かる。同様に、ラベル213より、正常から劣化3にかけて状態数値が差分cだけ増加したとき、信号データは3dBだけ増加することが分かる。
【0044】
次に、モデル判定部40は、劣化1における増加率を「1dB/a」、劣化2における増加率を「2dB/b」、劣化3における増加率を「3dB/c」として計算する。モデル判定部40は、残りの各劣化の段階(劣化4-劣化5)における増加率を上記と同様な手法で計算する。モデル判定部40は、計算された各劣化の段階(劣化1-劣化5)における増加率が一定であると判定した場合、状態診断モデル31は妥当であると判定する。一方、モデル判定部40は、計算された各劣化の段階(劣化1-劣化5)における増加率が一定でないと判定された場合、状態診断モデル31は妥当でないと判定する。
【0045】
例えば、状態数値と信号データとの間に、状態数値がs(sは任意の実数)だけ増加するとき、信号データはt(tは任意の実数)だけ増加するという比例関係が存在すると仮定する。この場合、モデル判定部40は、各劣化の段階(劣化1-劣化5)における増加率が、上記の比例関係を表す比例定数「t/s」と一致するか否かを判定すればよい。
【0046】
図6のグラフAは、各劣化の段階における増加率が一定である場合の状態数値の変化を表すものとする。モデル判定部40は、グラフAのように多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値が単調増加すると判定した場合、状態診断モデル31は妥当であると判定する。一方、図7のグラフCは、各劣化の段階における増加率が一定でない場合の状態数値の変化を表すものとする。モデル判定部40は、グラフCのように多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値が単調増加すると判定した場合、状態診断モデル31は妥当でないと判定する。
【0047】
なお、モデル判定部40は、増加率の許容範囲(誤差)を設定し、各劣化の段階における増加率が許容範囲内であれば妥当であると判定してもよい。また、状態数値が単調減少する場合も同様に、モデル判定部40は、状態数値の減少量に対する信号データの減少量の比率(減少率とも呼ぶ)が、各劣化の段階(劣化1-劣化5)において一定であるかを判定すればよい。
【0048】
以上のようにして、モデル判定部40は、各劣化の段階(劣化1-劣化5)に亘る状態数値の変化と、複数のラベル211、212、213…により示される各劣化の段階(劣化1-劣化5)に亘る信号データの変化とを比較することで、状態診断モデル31の妥当性を判定する。前述の通り、図6に示すグラフAと、図7に示すグラフCとはともに状態数値が単調増加する例を示しているが、各劣化の段階における増加率は互いに異なる。第2実施形態に係る状態診断装置1Bは、多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値の変化量と、多段階劣化ラベル21により示される信号データの変化量との比率(変化率とも呼ぶ)が、各劣化の段階において一定であるかを判定する。これにより、状態診断装置1Bは、状態数値の単調変化が、信号データの変化に照らし合わせて妥当であるかを判定する。すなわち、状態診断装置1Bは、状態診断モデル31の妥当性をより厳密に判定するといえる。
【0049】
図8は、第2実施形態に係る状態診断装置1Bの動作例を示す図である。
なお、本動作例において、第1実施形態と同様な処理を行うステップについては、第1実施形態と同様な参照符号を付し、その説明を省略する。ここでは、第1実施形態とは異なる処理を行うステップに注目する。
【0050】
ステップS201(ステップS102の変形例)において、状態診断装置1Bは、多段階劣化ラベル21に基づいて状態診断モデル31の妥当性を判定する。具体的には、状態診断装置1Bのモデル判定部40は、多段階劣化ラベル21と照らし合わせて、状態診断モデル31が出力した状態数値が単調に変化するか否かを判定する。
【0051】
以上説明した第2実施形態に係る状態診断装置1Bによれば、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定することができる。また、状態診断装置1Bは、多段階劣化データ20に対して状態診断モデル31が出力した状態数値の変化と、多段階劣化ラベル21により示される信号データの変化とを比較し、状態診断モデル31の妥当性をより厳密に判定することができる。
【0052】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る状態診断装置1Cの構成例を示す図である。
第3実施形態に係る状態診断装置1Cは、第1実施形態に係る状態診断装置1Aに含まれる各構成(モデル実行部30、状態診断モデル31、モデル判定部40、送信部50)に加えて、多段階劣化生成部60をさらに含む。多段階劣化生成部60以外の各構成については、第1実施形態と同様であるものと想定し、その説明を省略する。第3実施形態に係る状態診断装置1Cは、正常データ22及び多段階劣化パラメータ23に基づいて、多段階劣化データ20を疑似的に生成する。
【0053】
正常データ22は、機器が劣化する以前の段階における、機器の使用前の初期状態(正常状態)に関する信号データである。正常データ22は、多段階劣化データ20と同様に、機器の加速度や振動に関する1次元の信号データでもよいし、機器が出力する画像や動画に関する2次元の信号データでもよい。本実施形態において、正常データ22は、機器が劣化する以前の段階における機器の音に関する信号データであると想定する。
【0054】
多段階劣化パラメータ23は、正常状態から一定期間が経過した各劣化の段階における機器の劣化の程度を表すパラメータである。具体的には、多段階劣化パラメータ23は、機器の劣化前の段階における信号データを表す正常データ22と、機器の劣化後の各段階における信号データとの差分を表すパラメータである。例えば、多段階劣化パラメータ23は、状態診断モデル31による診断対象となる機器と同種である機器の劣化傾向が既知である場合、当該劣化傾向に基づいて人為的又は機械的に生成される。なお、多段階劣化パラメータ23は、診断対象となる機器の劣化を疑似的に生成するためのパラメータであるといえる。
【0055】
なお、第2実施形態における多段階劣化ラベル21と、第3実施形態における多段階劣化パラメータ23とは、いずれも機器の正常状態における信号データと、機器の各劣化状態における信号データとの間の差分を表す点において、同様なデータであるといえる。しかし、多段階劣化ラベル21は、多段階劣化データ20から生成されるのに対し、多段階劣化パラメータ23は、多段階劣化データ20を生成するために、診断対象となる機器の一般的な劣化傾向に基づいて生成される点において異なる。すなわち、多段階劣化ラベル21と、多段階劣化パラメータ23とは、互いに由来が異なる同様なデータであるといえる。
【0056】
多段階劣化生成部60は、正常データ22及び多段階劣化パラメータ23に基づいて、多段階劣化データ20を疑似的に生成する。多段階劣化生成部60は、モデル判定部40と同様に、機械学習モデルにより実装されてもよい。多段階劣化生成部60は、例えば疑似生成する多段階劣化データ20が機器の音に関する信号データである場合、正常データ22に多段階劣化パラメータ23を適用するイコライゼーション処理を行う。
【0057】
図10は、疑似的に生成された多段階劣化データ20の一例を示す図である。
図10は、機器の各段階(正常-劣化7)における劣化状態を表す信号データを示す。ここでは、信号データの一例として、回転機の各段階における稼働音に関する周波数スペクトルが、それぞれ異なるグラフにより示される。具体的には、劣化の段階が進行するにつれて、10000HZ(10kHZ)-40000HZ(40kHZ)の周波数帯域の振幅成分が徐々に増加する(持ち上がる)データが疑似的に生成される。
【0058】
例えば、正常データ22が、回転機の正常状態における周波数スペクトルを示す信号データであるものとする。ここで、多段階劣化パラメータ23に、「劣化の段階1(劣化1)における周波数スペクトルは、正常状態における周波数スペクトルよりも10kHZ-40kHZの周波数帯域の振幅成分が最大で1dBだけ持ち上がる」というパラメータが含まれていたとする。多段階劣化生成部60は、正常データ22に当該パラメータを適用するイコライゼーション処理を施すことにより、劣化1における周波数スペクトルを生成する。同様に、多段階劣化パラメータ23に、「劣化の段階2(劣化2)における周波数スペクトルは、正常状態における周波数スペクトルよりも10kHZ-40kHZの周波数帯域の振幅成分が最大で2dBだけ持ち上がる」というパラメータが含まれていたとする。多段階劣化生成部60は、正常データ22に当該パラメータを適用するイコライゼーション処理を施すことにより、劣化2における周波数スペクトルを生成する。同様な処理が以降の各劣化の段階(劣化3-劣化7)に対しても繰り返されることで、各劣化の段階(劣化1-劣化7)における周波数スペクトルが疑似的に生成される。
【0059】
以上のようにして、多段階劣化生成部60は、正常データ22及び多段階劣化パラメータ23に基づいて、多段階劣化データ20を疑似的に生成する。疑似的に生成された多段階劣化データ20は、状態診断モデル31の入力データとして用いられる。
【0060】
図11は、第3実施形態に係る状態診断装置1Cの動作例を示す図である。
なお、本動作例において、第1実施形態と同様な処理を行うステップについては、第1実施形態と同様な参照符号を付し、その説明を省略する。ここでは、第1実施形態とは異なる処理を行うステップに注目する。
【0061】
ステップS301(ステップS101の前処理)において、状態診断装置1Cは、多段階劣化データ20を生成する。具体的には、状態診断装置1Cの多段階劣化生成部60は、正常データ22及び多段階劣化パラメータ23に基づいて、多段階劣化データ20を疑似的に生成する。
【0062】
以上説明した第3実施形態に係る状態診断装置1Cによれば、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定することができる。また、状態診断装置1Cは、状態診断モデル31の入力データとなる多段階劣化データ20を、正常データ22及び多段階劣化パラメータ23に基づいて疑似的に生成することができる。すなわち、状態診断装置1Cは、実データとしての多段階劣化データ20が得られない、又は得られていない場合においても、疑似的に多段階劣化データ20を生成することができる。
【0063】
(第4実施形態)
図12は、第4実施形態に係る状態診断装置1Dの構成例を示す図である。
第4実施形態に係る状態診断装置1Dは、第1実施形態に係る状態診断装置1Aに含まれる各構成(モデル実行部30、状態診断モデル31、モデル判定部40、送信部50)に加えて、分散/平均計算部70を含む。分散/平均計算部70以外の各構成については、第1実施形態と同様であるものと想定し、その説明を省略する。第4実施形態に係る状態診断装置1Dは、機器の1つの段階について複数の状態数値が割り当てられる場合(1対多対応)において、機器の各段階における複数の状態数値の分散及び平均を計算し、状態診断モデル31の妥当性を判定する。
【0064】
分散/平均計算部70は、状態診断モデル31が出力した状態数値の分布に対して、状態数値の分散及び平均を計算する。モデル判定部40は、各段階における状態数値の分散が、機器の劣化の進行に伴い所定の値以下であるか否かと、各段階における状態数値の平均が、機器の劣化の進行に伴い単調に変化するか否かとを判定する。
【0065】
図13は、状態数値の分布の一例を示す図である。
図13は、機器の各段階(正常-劣化5)における状態数値の分布を示す。具体的には、各状態数値の値(Distance)を横軸にとり、各値を有する状態数値の個数(Frequency)を縦軸にとるヒストグラムが示される。例えば、正常状態(正常)における状態数値の分布に関しては、値域がおよそ19-20の範囲において4-19個の状態数値が分布している。同様に、劣化1における状態数値の分布に関しては、値域がおよそ20-21の範囲において1-16個の状態数値が分布している。
【0066】
例えば、分散/平均計算部70は、以下の数式(1)及び数式(2)により、各状態数値の分布に対して、状態数値の分散及び平均を計算する。
【数1】
数式(1)において、Vは状態数値の分散(Variance)、Xiはn(nは自然数)個の状態数値それぞれの値、Aは状態数値の平均(Average)を表す。なお、Aは以下の数式(2)により計算される。
【数2】
【0067】
図13は、各段階(正常-劣化5)における状態数値の分散が所定の値以下である場合を示す。また、図13は、各段階(正常-劣化5)における状態数値の平均が単調に増加する場合を示す。このように、モデル判定部40は、各段階における状態数値の分散が所定の値以下であり、かつ、各段階における状態数値の平均が単調に変化すると判定した場合、状態診断モデル31は妥当であると判定する。
【0068】
なお、機器の1つの段階に対して1つの状態数値が割り当てられている場合(1対1対応)においては、各段階における状態数値の分散は0であり、各段階における状態数値の平均は、各段階における状態数値の値と同一であると予想される。すなわち、この場合において、各段階における状態数値の平均が単調に変化するか否かを判定することは、各段階における状態数値の値が単調に変化するか否かを判定することに等しいため、第1実施形態における判定と同様であるといえる。
【0069】
一方、モデル判定部40は、劣化の進行に伴う状態数値の分散が所定の値以下でないと判定した場合と、劣化の進行に伴う状態数値の平均が単調に変化しないと判定した場合とのうち少なくとも一つの場合において、状態診断モデル31は妥当でないと判定する。例えば、劣化の進行に伴う状態数値の分散が所定の値よりも大きい場合、状態数値の分布は、図13に示す状態数値の分布よりも横方向に大きく広がると予想される。
【0070】
以上のようにして、モデル判定部40は状態診断モデル31の妥当性を判定する。妥当であると判定された状態診断モデル31は、第1実施形態と同様に、送信部50により外部装置に送信されてもよい。また、状態診断モデル31が出力した状態数値の分布は、図13に示すようなヒストグラムにより、外部装置又は状態診断装置1Dにおいて表示されてもよい。
【0071】
図14は、第4実施形態に係る状態診断装置1Dの動作例を示す図である。
なお、本動作例において、第1実施形態と同様な処理を行うステップについては、第1実施形態と同様な参照符号を付し、その説明を省略する。ここでは、第1実施形態とは異なる処理を行うステップに注目する。
【0072】
ステップS401(ステップS101の後処理)において、状態診断装置1Dは、状態数値の分散及び平均を計算する。具体的には、状態診断装置1Dの分散/平均計算部70は、状態診断モデル31が出力した状態数値の分布に対して、状態数値の分散及び平均を計算する。
【0073】
ステップS402(ステップS102の変形例)において、状態診断装置1Dは、状態数値の分散及び平均に基づいて状態診断モデルの妥当性を判定する。具体的には、状態診断装置1Dのモデル判定部40は、各段階における状態数値の分散が、機器の劣化の進行に伴い所定の値以下であるか否かと、各段階における状態数値の平均が、機器の劣化の進行に伴い単調に変化するか否かとを判定する。
【0074】
以上説明した第4実施形態に係る状態診断装置1Dによれば、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定することができる。また、状態診断装置1Dは、状態診断モデル31が機器の各段階において複数の状態数値を出力する場合においても、モデルの妥当性を判定することができる。
【0075】
(第5実施形態)
図15は、第5実施形態に係る状態診断装置1Eの構成例を示す図である。
第5実施形態に係る状態診断装置1Eは、第1実施形態に係る状態診断装置1Aに含まれる各構成(モデル実行部30、状態診断モデル31、モデル判定部40、送信部50)に加えて、モデル学習部80を含む。モデル学習部80以外の各構成については、第1実施形態と同様であるものと想定し、その説明を省略する。第5実施形態に係る状態診断装置1Eは、ニューラルネットワーク等から状態診断モデル31を生成するほか、妥当でないと判定された状態診断モデル31を学習する。
【0076】
学習データ24は、状態診断モデル31を学習するためのデータである。学習データ24は、例えば多段階劣化データ20そのものや、その一部を含むデータであってもよいし、機器の正常状態に関する信号データのみでもよい。また、学習データ24は、多段階劣化データ20と同様なデータを入力データとし、入力データに対応する状態数値を正解データとする組であるデータセットを含んでもよい。すなわち、学習データ24は、機器の状態に関するデータであればよい。
【0077】
モデル学習部80は、学習データ24を用いて状態診断モデル31を学習する。学習された状態診断モデル31は、モデル判定部40により妥当性が判定される。学習された状態診断モデル31が妥当でないと判定された場合、モデル学習部80は、学習データ24を変更して再び状態診断モデル31を学習する。あるいは、学習された状態診断モデル31が妥当でないと判定された場合、モデル学習部80は、状態診断モデル31のパラメータを変更して再び状態診断モデル31を学習する。
【0078】
例えば、モデル学習部80は、状態診断モデル31がニューラルネットワークに基づく機械学習モデルである場合、ニューラルネットワークの結合の重み付けに関するパラメータを変更してもよいし、ニューラルネットワークの構造を規定するハイパーパラメータを変更してもよい。
【0079】
図16は、第5実施形態に係る状態診断装置1Eの動作例を示す図である。
なお、本動作例において、第1実施形態と同様な処理を行うステップについては、第1実施形態と同様な参照符号を付し、その説明を省略する。ここでは、第1実施形態とは異なる処理を行うステップに注目する。
【0080】
ステップS501(ステップS101の前処理)において、状態診断装置1Eは、状態診断モデル31を学習する。具体的には、状態診断装置1Eのモデル学習部80は、学習データ24を用いて状態診断モデル31を学習する。
【0081】
ステップS502(ステップS103の変形例)において、状態診断装置1Eは、状態診断モデル31が妥当であるか否かに応じて、続いて実行する処理を選択する。具体的には、状態診断装置1Eは、状態診断モデル31が妥当であると判定された場合(ステップS502のYes)、ステップS104を実行する。一方、状態診断装置1Eは、状態診断モデル31が妥当でないと判定された場合(ステップS502のNo)、ステップS501に戻り、再び状態診断モデル31を学習する。
【0082】
以上説明した第5実施形態に係る状態診断装置1Eによれば、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定することができる。また、状態診断装置1Eは、学習データ24に基づいて状態診断モデル31を生成することができる。これにより、状態診断装置1Eは、外部から受信された状態診断モデル31に限らず、モデル学習部80により内部で生成された状態診断モデル31に対しても妥当性を判定することができる。また、状態診断装置1Eは、妥当でないと判定された状態診断モデル31に対して、モデルが妥当となるように学習を繰り返し行うことができる。
【0083】
(ハードウェア構成例)
図17は、第1-第5実施形態に係る状態診断装置1A-1Eのハードウェア構成例を示す図である。
処理回路11は、状態診断装置1A-1Eの動作を制御する。処理回路11は、ハードウェアとしてCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを有する。処理回路11は、プロセッサを介してメモリ12に展開されたプログラムを実行することで、各プログラムに対応する各部を実行する。なお、各部は単独のプロセッサから成る処理回路11により実装されなくともよい。例えば、各部は複数のプロセッサを組み合わせた処理回路11により実装されてもよい。処理回路11は、モデル実行部30、モデル判定部40、及び送信部50を含む。また、処理回路11は、多段階劣化生成部60、分散/平均計算部70、及びモデル学習部80を含んでもよい。
【0084】
メモリ12は、処理回路11が使用するデータやプログラム等の情報を記憶する。メモリ12は、ハードウェアとしてRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子を有する。なお、メモリ12は、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク)、光磁気ディスク(MO)、光学ディスク(CD、DVD、Blu-ray(登録商標))、フラッシュメモリ(USBフラッシュメモリ、メモリカード、SSD)、磁気テープ等の外部記憶装置との間で情報を読み書きする駆動装置であってもよい。なお、メモリ12の記憶領域は、状態診断装置1A内部にあってもよいし、外部記憶装置にあってもよい。メモリ12は、多段階劣化データ20を含んでもよい。また、メモリ12は、多段階劣化ラベル21、正常データ22、多段階劣化パラメータ23、及び学習データ24を含んでもよい。
【0085】
通信インタフェース13は、状態診断装置1A-1Eと外部装置との間で種々のデータを送信又は受信する。通信インタフェース13と外部装置との間では任意の通信規格が使用可能である。
【0086】
以上、第1-第5実施形態に係る状態診断装置1A-1Eについて説明した。なお、各実施形態に係る状態診断装置1A-1Eの機能を互いに組み合わせた状態診断装置であってもよい。すなわち、状態診断装置1A-1Eに含まれる各構成を自由に組み合わせた状態診断装置であってもよい。以下、第6-第7実施形態に係る状態診断システム100A-100Bについて説明する。状態診断装置1A-1Eは、状態診断システム100A-100Bにおいて利用され得る。すなわち、各実施形態に係る状態診断装置1A-1Eと、各実施形態に係る状態診断システム100A-100Bとの種々の組み合わせでもよい。以下、一例として状態診断システム100A-100Bは、第1実施形態に係る状態診断装置1Aを含むものとする。
【0087】
(第6実施形態)
図18は、第6実施形態に係る状態診断システム100Aの構成例を示す図である。
状態診断システム100Aは、状態診断装置1A、エッジデバイス2、複数の対象機器3(対象機器1、対象機器2、・・・、対象機器N(3-1、3-2、・・・、3-N))、及びモニタ4を含む。状態診断装置1A及びエッジデバイス2は、互いに通信可能に接続される。また、エッジデバイス2は、複数の対象機器3及びモニタ4と互いに通信可能に接続される。通信方式としては、有線又は無線の種別を問わない。
【0088】
状態診断システム100Aにおいて、状態診断装置1Aは、妥当であると判定された判定済み状態診断モデル32を、エッジデバイス2に送信する。エッジデバイス2は、送信された判定済み状態診断モデル32を用いて、複数の対象機器3のそれぞれについて状態診断を実行する。このとき、例えば複数の対象機器3のそれぞれに設置されたセンサが、エッジデバイス2に対して各機器の状態に関する信号データを送信してもよい。あるいは、複数の対象機器3のそれぞれが直接、エッジデバイス2に対して各機器の状態に関する信号データを送信してもよい。
【0089】
エッジデバイス2は、判定済み状態診断モデル32を実行することで、判定済み状態診断モデル32に、複数の対象機器3から取得された信号データを定量的に表す状態数値を出力させる。出力された状態数値は、モニタ4に表示される。このとき、複数の対象機器3のそれぞれについて、各機器の状態数値が表示されてもよい。
【0090】
以上のようにして、状態診断システム100Aは、状態診断モデル31の妥当性を判定し、妥当であると判定された判定済み状態診断モデル32を運用する。状態診断システム100Aにおいて、状態診断モデル31の妥当性の判定と、判定済み状態診断モデル32の運用とは、互いに異なる装置により実行される。なお、判定済み状態診断モデル32の運用開始から一定期間後に、状態診断装置1Aは、エッジデバイス2に送信された判定済み状態診断モデル32の妥当性を再び判定してもよい。
【0091】
以上説明した第6実施形態に係る状態診断システム100Aによれば、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定することができる。また、状態診断システム100Aにおいて、状態診断装置1Aは、エッジデバイス2に、妥当であると判定された判定済み状態診断モデル32を送信する。これにより、エッジデバイス2はモデルの妥当性に関する判定を行う必要がないため、比較的小規模な計算資源やメモリを持つエッジデバイス2であっても、受信したモデルを利用して機器の状態診断を実行することができる。すなわち、状態診断システム100Aは、エッジデバイス2が必要とする計算資源の量を節約することができる。また、エッジデバイス2が携行可能である場合、例えばエンジニアが、エッジデバイス2を携行して機器の状態診断を実行することができる。
【0092】
(第7実施形態)
図19は、第7実施形態に係る状態診断システム100Bの構成例を示す図である。
状態診断システム100Bは、状態診断装置1A、複数の対象機器3(対象機器1、対象機器2、・・・、対象機器N(3-1、3-2、・・・、3-N))、及びモニタ4を含む。状態診断装置1Aは、複数の対象機器3及びモニタ4と互いに通信可能に接続される。通信方式としては、有線又は無線の種別を問わない。
【0093】
状態診断システム100Bにおいて、状態診断装置1Aは、妥当であると判定された判定済み状態診断モデル32を用いて、複数の対象機器3のそれぞれについて状態診断を実行する。このとき、例えば複数の対象機器3のそれぞれに設置されたセンサが、状態診断装置1Aに対して各機器の状態に関する信号データを送信してもよい。あるいは、複数の対象機器3のそれぞれが直接、状態診断装置1Aに対して各機器の状態に関する信号データを送信してもよい。
【0094】
状態診断装置1Aは、判定済み状態診断モデル32を実行することで、判定済み状態診断モデル32に、複数の対象機器3から取得された信号データを定量的に表す状態数値を出力させる。出力された状態数値は、モニタ4に表示される。このとき、複数の対象機器3のそれぞれについて、各機器の状態数値が表示されてもよい。
【0095】
以上のようにして、状態診断システム100Bは、状態診断モデル31の妥当性を判定し、妥当であると判定された判定済み状態診断モデル32を運用する。状態診断システム100Bにおいて、状態診断モデル31の妥当性の判定と、判定済み状態診断モデル32の運用とは、同一の装置により実行される。なお、判定済み状態診断モデル32の運用開始から一定期間後に、状態診断装置1Aは、判定済み状態診断モデル32の妥当性を再び判定してもよい。
【0096】
以上説明した第7実施形態に係る状態診断システム100Bによれば、機器の状態を診断するモデルの妥当性を判定することができる。また、状態診断システム100Bは、妥当であると判定されたモデルを利用して機器の状態診断を実行することができる。また、状態診断システム100Bは、モデルが出力した状態数値を外部装置に送信することで、外部装置は、受信した状態数値を表示することができる。
【0097】
以上、第6-第7実施形態に係る状態診断システム100A-100Bについて説明した。以下、応用例として、状態診断システム100A-100Bが、複数の対象機器3として複数の冷却ファンの劣化状態を監視する場合について説明する。
【0098】
(応用例)
例えば、状態診断システム100A-100Bは、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)に設置される冷却ファンの劣化状態を監視する。冷却ファンは、UPS内の熱を排出しており、冷却ファンが停止するとUPS自体も停止してしまう。そのため、冷却ファンの劣化状態を検知し、冷却ファンが故障して停止する前に交換又は整備することが、機器の予防保全という観点で求められる。
【0099】
例えば、冷却ファンの横にマイクが設置される。状態診断システム100A-100Bは、マイクから取得された冷却ファンの稼働音に関する信号データに基づいて、冷却ファンの劣化状態を監視する。信号データは、状態診断システム100A-100B内の判定済み状態診断モデル32に送信される。状態診断システム100A-100Bは、判定済み状態診断モデル32が出力した状態数値によって、冷却ファンの劣化状態を監視する。具体的には、状態診断システム100Aは、冷却ファンの近辺に設置されたエッジデバイス2内の判定済み状態診断モデル32を用いて、冷却ファンの劣化状態を監視する。一方、状態診断システム100Bは、状態診断装置1A内の判定済み状態診断モデル32を用いて、冷却ファンの劣化状態を監視する。
【0100】
なお、状態診断システム100Aにおいて、エッジデバイス2の判定済み状態診断モデル32が冷却ファンの劣化状態を検知した場合、エッジデバイス2は、その検知結果をモニタ4、LED、ブザー等を用いて通知してもよい。具体的には、エッジデバイス2は、上記の検知結果を通信によって管理室及び監視員等に通知してもよい。一方、状態診断システム100Bにおいて、状態診断装置1Aの判定済み状態診断モデル32が冷却ファンの劣化状態を検知した場合、状態診断装置1Aは、その検知結果をモニタ4、LED、ブザー等を用いて通知してもよい。具体的には、状態診断装置1Aは、上記の検知結果を通信によって管理室及び監視員等に通知してもよい。
【0101】
以上、第1-第7実施形態に係る状態診断装置1A-1E、及び状態診断システム100A-100Bについて説明した。以下、各実施形態に係る状態診断装置1A-1E、及び状態診断システム100A-100Bに関するその他変形例について説明する。
【0102】
(その他変形例)
状態診断装置1A-1Eは、状態診断モデル31が出力した状態数値が所定の値を超過すると判定した場合、管理室及び監視員等にアラートを通知してもよい。このとき、アラートには、当該モデルによる診断対象となった機器の名称、状態数値が所定の値を超過した時の日付及び時刻、機器の交換又は整備を促す忠告メッセージ等が含まれてもよい。
【0103】
また、状態診断装置1A-1Eは、一つの機器において、機器に関する複数の劣化の種類(劣化モードとも呼ぶ)を表す信号データが発生する場合、それぞれの劣化の種類に対応するそれぞれの信号データに対して、状態診断モデル31を適用してもよい。前述の通り、一つの機器において、機器の加速度や振動、機器が出力する画像や動画等に関する複数の種類の信号データが発生し得る。状態診断装置1A-1Eは、これら複数の種類の信号データそれぞれに対して、状態診断モデル31を適用してもよい。もちろん、状態診断装置1A-1Eは、状態診断モデル31から出力された、それぞれの信号データを定量的に表すそれぞれの状態数値が、単調に変化するか否かを判定することで、状態診断モデル31の妥当性を判定してもよい。
【0104】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、各省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0105】
1A-1E…状態診断装置、2…エッジデバイス、3…複数の対象機器、3-1~3-N…対象機器1~対象機器N、4…モニタ、11…処理回路、12…メモリ、13…通信インタフェース、20…多段階劣化データ、21…多段階劣化ラベル、22…正常データ、23…多段階劣化パラメータ、24…学習データ、30…モデル実行部、31…状態診断モデル、32…判定済み状態診断モデル、40…モデル判定部、50…送信部、60…多段階劣化生成部、70…分散/平均計算部、80…モデル学習部、100A-100B…状態診断システム、211-213…ラベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19