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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】電動機巻線劣化状態調査システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20240502BHJP
   H02P 29/62 20160101ALI20240502BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P29/62
G01R31/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021122161
(22)【出願日】2021-07-27
(65)【公開番号】P2023018221
(43)【公開日】2023-02-08
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025753(JP,A)
【文献】特開2017-103128(JP,A)
【文献】特許第5875734(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/198631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
H02P 29/62
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の速度指令および前記電動機の運転状態を表すデータを含む制御データを所定の制御周期で生成し、収集するコントローラと、
前記速度指令にもとづいて、前記電動機を駆動するドライブ装置と、
を備え、
前記コントローラは、
前記ドライブ装置から前記電動機の巻線温度に関するデータを前記制御周期ごとに順次収集し、前記巻線温度のデータを収集するごとに、前記巻線温度のデータおよび前記電動機に関する加速試験の結果にもとづいて、前記電動機の絶縁劣化の度合いを表す劣化スコアを算出し、前記劣化スコアを前記制御周期を複数含む所定の第1期間ごとに積算して第1積算値を算出し、前記第1積算値を前記第1期間の時系列ごとに識別する第1識別データに順次関連付ける演算手段と、
前記第1識別データおよび前記第1積算値を記憶する第1記憶手段と、
を含み、
前記コントローラは、前記第1積算値を算出した後に、前記劣化スコアのデータを廃棄する電動機巻線劣化状態調査システム。
【請求項2】
前記演算手段は、前記第1積算値を、前記第1期間を複数含む所定の第2期間ごとに積算して第2積算値を算出し、前記第2積算値を前記第2期間の時系列ごとに識別する第2識別データに順次関連付け、
前記第1記憶手段は、前記第2識別データおよび前記第2積算値を記憶する請求項1記載の電動機巻線劣化状態調査システム。
【請求項3】
前記ドライブ装置は、前記コントローラから、前記第2識別データおよび前記第2積算値を受信し、受信した前記第2識別データおよび前記第2積算値を記憶する第2記憶手段を含む請求項2記載の電動機巻線劣化状態調査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電動機巻線劣化状態調査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼用ミル等に向けた産業用の電動機では、負荷変動が激しい場合や使用温度条件が厳しい場合等がある。電動機の巻線は、絶縁処理がなされた上で用いられ、このような巻線を有する電動機では、温度による絶縁材料の劣化や、ヒートサイクルによる膨張収縮によるコイルエンド部の機械的応力にともなう劣化等により突発的な故障が生じやすくなる。
【0003】
絶縁劣化による故障を防ぐために、電動機の仕様検討段階では、圧延サイクル中の負荷パターンを想定し、巻線の温度変動を推定計算する手法を用いて巻線の温度の変化を推定し、劣化に対して十分な裕度をもたせた設計とすることが多い。たとえば、JEC-2140:2016には、圧延用交流可変速電動機について、巻線に流れる電流により巻線の温度変動を計算する手法が説明されている。
【0004】
一方で、鉄鋼用ミル用等の産業用電動機の突発故障は、生産スケジュールに大きな影響をもたらすおそれがある。また、巻線温度の推定計算をする際に、負荷変動パターン等を考慮することは可能であるが、仕様検討時に想定した負荷パターンが継続するとは限らず、操業方法自体が変更されることもある。つまり、仕様検討段階で、電動機の劣化状況を正確に推定することは困難である。したがって、電動機の突発故障を防ぐためには、定期あるいは不定期に電動機の劣化状況を点検する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-235069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動機の点検では、対象の電動機を分解し、内部の巻線の劣化状況を目視やその他の検査手段によって検査する。そのため、操業期間中には、点検することはできないし、点検の実施には、多大な時間とコストを要する。
【0007】
プラントにおける電動機の制御は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等を利用した制御システム下で行われる。このような制御システム下では、たとえば、PLCは、電動機の速度データ等を含む各種制御データを制御システムの制御周期で収集することができる。制御データには、巻線の温度データを含んでいる場合もあり、温度データを含まない場合であっても、巻線の温度を推定するためのデータを収集することが可能である。
【0008】
一方で、絶縁劣化による突発故障が顕在化するのは、10年以上の長期間にわたる電動機の使用による場合がほとんどであり、このような長期間の制御データを蓄積することは、現実的とは言えない。
【0009】
本発明の実施形態は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、長期間にわたって、電動機の巻線の劣化状況を表すデータの収集を可能にする電動機巻線劣化状態調査システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、電動機の速度指令および前記電動機の運転状態を表すデータを含む制御データを所定の制御周期で生成し、収集するコントローラと、前記速度指令にもとづいて、前記電動機を駆動するドライブ装置と、を備える。前記コントローラは、前記ドライブ装置から前記電動機の巻線温度に関するデータを前記制御周期ごとに順次収集し、前記巻線温度のデータを収集するごとに、前記巻線温度のデータおよび前記電動機に関する加速試験の結果にもとづいて、前記電動機の絶縁劣化の度合いを表す劣化スコアを算出し、前記劣化スコアを前記制御周期を複数含む所定の第1期間ごとに積算して第1積算値を算出し、前記第1積算値を前記第1期間の時系列ごとに識別する第1識別データに順次関連付ける演算手段と、前記第1識別データおよび前記第1積算値を記憶する第1記憶手段と、を含む。前記コントローラは、前記第1積算値を算出した後に、前記劣化スコアのデータを廃棄する。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態では、長期間にわたって、電動機の巻線の劣化状況を表すデータの収集を可能にする電動機巻線劣化状態調査システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る電動機巻線劣化状態調査システムを例示する模式的なブロック図である。
図2】実施形態の電動機巻線劣化状態調査システムの動作を説明するための模式的なブロック図である。
図3】実施形態の電動機巻線劣化状態調査システムの動作を説明するための模式的なグラフの例である。
図4図4(a)~図4(d)は、実施形態の電動機巻線劣化状態調査システムの動作を説明するためのグラフの例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る電動機巻線劣化状態調査システムを例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、電動機巻線劣化状態調査システム100は、電動機30に接続されている。電動機30には、内部の巻線の近傍に温度センサが設けられており、電動機巻線劣化状態調査システム100は、電動機30を巻線の温度のデータを収集する。電動機巻線劣化状態調査システム100は、電動機30の巻線の温度のデータにもとづいて、巻線の絶縁劣化の状態を表す劣化スコアを算出し、算出した劣化スコアの積算値を計算して、積算値を記憶する。
【0015】
電動機巻線劣化状態調査システム100は、通信ネットワーク102を介して、上位コンピュータ50に通信可能に接続されている。電動機巻線劣化状態調査システム100は、たとえば、上位コンピュータ50の要求にもとづいて、劣化スコアの積算値のデータを上位コンピュータ50に送信する。上位コンピュータ50は、たとえば、取得した劣化スコアの積算値のデータにもとづいて、電動機30の巻線の劣化状況を判定する。
【0016】
劣化スコアとは、その電動機と構造上同一の系列ごとに決定される電動機の巻線温度の関数であり、劣化スコアの算出式は、巻線温度が高いほど大きな値の劣化スコアを出力する。劣化スコアの算出式は、電動機の系列ごとに実施される加速試験によって導出されるアレニウスの式に対応して決定される。つまり、劣化スコアの算出式では、絶縁劣化の度合いは、温度に対して指数関数的に進行するものであり、たとえば、基準の温度に対して、100℃高い温度で使用された電動機の巻線の絶縁性能は、基準の温度に対する場合よりも、10倍の速度で絶縁劣化が進行するものとされる。
【0017】
電動機巻線劣化状態調査システム100の構成について説明する。
電動機巻線劣化状態調査システム100は、コントローラ10と、ドライブ装置20と、を備える。コントローラ10は、演算部(演算手段)12および記憶部(第1記憶手段)14を含む。コントローラ10は、たとえばプログラマブルロジックコントローラ等である。コントローラ10は、通信ネットワーク40を介してドライブ装置20に接続される。ドライブ装置20は、電動機30に接続される。
【0018】
コントローラ10は、あらかじめ設定されたプログラムおよび設定値にもとづいて、電動機30を駆動するための速度指令を生成し、通信ネットワーク40を介してドライブ装置20に供給する。ドライブ装置20は、受信した速度指令にもとづいて、電動機30を駆動する。ドライブ装置20は、電動機30の実際の速度を表すデータをコントローラ10に送信し、コントローラ10は、電動機受信した速度のデータ等にもとづいて、新たな速度指令を生成する。
【0019】
コントローラ10は、ドライブ装置20を介して、電動機30の巻線温度のデータを収集する。コントローラ10は、巻線温度のデータにもとづいて、劣化スコアを算出する。巻線温度のデータは、電動機30の速度や出力電流に関するデータや、コントローラ10が電動機30の制御に必要とする各種制御データを生成し、収集する制御周期でコントローラ10により順次収集される。これら制御データの制御周期は、たとえば一定の周期であり、数ms~数10ms等とされる。
【0020】
コントローラ10は、演算部12によって、収集した巻線温度ごとに劣化スコアを算出する。コントローラ10は、あらかじめ設定された期間ごとに、劣化スコアを積算して、劣化スコアの積算値を記憶部14に時系列で記憶する。劣化スコアの積算期間は、適切な期間を任意に設定することができ、たとえば、1日単位等とすることができる。積算期間は、単独の期間に限らず、複数の段階とすることができる。たとえば、1日ごとの積算値を記憶し、日ごとの積算値を1週間分積算し、週ごとの積算値を1月分積算する等とすることができる。
【0021】
コントローラ10は、制御周期で収集した巻線温度のデータおよびその巻線温度を用いて計算された劣化スコアを、劣化スコアの積算値の計算後に廃棄する。これにより、コントローラ10の記憶部14には、膨大に収集され得る巻線温度のデータでPLCのメモリを占有することを回避することができる。
【0022】
ドライブ装置20は、電動機30を駆動するドライブ回路22のほか、記憶部(第2記憶手段)24を含むことができる。コントローラ10は、通信ネットワーク40を介して、ドライブ装置20に劣化スコアの積算値を送信し、ドライブ装置20は、受信した劣化スコアの積算値を記憶部24に記憶することができる。ドライブ装置20の記憶部24に劣化スコアの積算値を記憶することによって、コントローラ10が有するデータのバックアップとして利用することができる。
【0023】
ドライブ装置20の記憶部24に記憶するデータは、記憶部24の記憶容量に応じて、積算期間を設定するようにしてもよい。たとえば、コントローラ10の記憶部14に日ごとおよび週ごとの劣化スコアの積算値が記憶されている場合に、ドライブ装置20の記憶部24には、週ごとの劣化スコアの積算値(第2積算値)のみを記憶するようにすることができる。ドライブ装置20の記憶部24の記憶容量は、コントローラ10に比べて十分な容量が確保されていない場合が多いが、そのような場合でも、より圧縮された劣化スコアの積算値のデータを記憶することが可能になる。
【0024】
このように、実施形態の電動機巻線劣化状態調査システム100は、制御周期で収集した電動機30の巻線温度における劣化スコアを、所定期間積算して記憶し、制御周期ごとデータを廃棄するので、長期間にわたる劣化スコアの積算値を少ない記憶容量で記憶することができる。
【0025】
電動機巻線劣化状態調査システム100の動作について説明する。
図2は、実施形態の電動機巻線劣化状態調査システムの動作を説明するための模式的なブロック図である。
図2に示すように、実施形態の電動機巻線劣化状態調査システム100では、コントローラ10は、ドライブ装置20を介して、電動機30の巻線温度のデータを取得する。電動機の巻線温度を計測できる温度センサを設けることができない場合には、コントローラ10は、ドライブ装置20から電動機30を駆動する電流値のデータを収集し、収集した電流値にもとづいて巻線温度を計算するようにしてもよい。巻線電流から巻線温度を算出する計算式は、周知のものを利用することができる。
【0026】
コントローラ10には、巻線温度のデータを入力して、劣化スコアを算出する演算式があらかじめ設定されている。コントローラ10は、演算部12によって、設定された演算式を用いて、巻線温度のデータを取得するごとに、劣化スコアを算出して、記憶部14に記憶する。
【0027】
コントローラ10は、劣化スコアのデータが所定の期間分蓄積されると、所定期間分の劣化スコアの積算値を計算し、計算結果を、その期間を表すデータ(第1識別データ)に順次関連付けて記憶部14に記憶する。たとえば、積算期間を1日単位とする場合には、1日の操業終了時に劣化スコアの積算値を計算してもよいし、操業終了か否かにかかわらず、あらかじめ設定された単位時間ごとに積算値の計算をしてもよい。劣化スコアの積算値を複数段階の期間で記憶する場合には、第1段階の期間における積算が第2段階の期間に達したときに、積算値を計算し、第2段階の期間を表すデータ(第2識別データ)に順次関連付けて、記憶部14に記憶する。
【0028】
コントローラ10は、上位コンピュータ50からの要求にもとづいて、記憶部14から期間を表すデータに関連付けられた劣化スコアの積算値を取り出して、上位コンピュータ50に送信する。
【0029】
上位コンピュータ50では、受信した劣化スコアの積算値にもとづいて、電動機30の劣化判定等を行う。
【0030】
コントローラ10は、記憶部14に記憶された劣化スコアの積算値を、ドライブ装置20に送信し、データを記憶部24に記憶する。
【0031】
図3は、実施形態の電動機巻線劣化状態調査システムの動作を説明するための模式的なグラフの例である。
図3には、劣化スコアの算出するための演算式の導出に関するグラフが示されている。このグラフは、アレニウスの式を導出するためのグラフである。横軸は、電動機30の巻線温度T[℃]であり、縦軸は、寿命tである。寿命tは、時間の次元を有する。図3に示すように、このグラフは、lnt=(ΔE/R)・(1/T)+Aであり、対象となる電動機について高温動作試験等の所定の加速試験を行うことによって導出される。
【0032】
図3のグラフは、アレニウスの式による寿命tと劣化スコアの関係も示されており、劣化スコアSは縦軸とされている。劣化スコアSは、導出されたアレニウスの式において、電動機30の温度の設計値Tnomにおける寿命tを1とし、電動機30の温度の最大値Tmaxにおける寿命を10とすることによって、定式化される。
【0033】
図3の例で説明すると、電動機30の周囲温度の設計値Tnomが40℃のときの寿命を劣化スコア=1とする。電動機30の温度の最大値Tmaxが155℃のときの寿命を劣化スコア=10とする。そうすると、アレニウスの式の定数Aに対応する定数が決定された劣化スコア式が導出されるので、Tnom~Tmaxの任意の温度Txにおける劣化スコアSxを求めることができる。なお、この例では、巻線温度は、周囲温度にほぼ等しいものとしている。
【0034】
基準となる劣化スコアの値は、1に限るものではなく、適切な任意の値とすることができる。
【0035】
図4(a)~図4(d)は、実施形態の電動機巻線劣化状態調査システムの動作を説明するためのグラフの例である。
図4(a)に示すように、電動機30の巻線温度Twは、時間変動している。コントローラ10は、巻線温度Twのデータを制御周期で収集する。したがって、図示しないが、収集される巻線温度Twのデータは、制御周期ごとの離散データである。
【0036】
コントローラ10は、収集した巻線温度Twのデータを収集するごとに劣化スコアを算出する。算出された劣化スコアSのデータを時系列で並べると、図4(b)に示すようになる。
【0037】
この例では、算出された制御周期ごとの劣化スコアSのデータは、操業日ごとに積算される。積算された劣化スコアは、操業日に関連付けられて記憶部14に記憶される。制御周期ごとに計算された劣化スコアSのデータは、廃棄される。
【0038】
操業日に関連付けられた劣化スコアの積算値は、上位コンピュータの要求に応じて、適宜読み出され、たとえば、図4(c)および図4(d)に示すように、上位コンピュータ50は、所定日までの劣化スコアの積算値を算出したり、算出した劣化スコアの積算値と所定のしきい値とを比較して、劣化判定を行うことに利用する。
【0039】
実施形態の電動機巻線劣化状態調査システム100の効果について説明する。
実施形態の電動機巻線劣化状態調査システム100では、コントローラ10には、あらかじめ電動機に応じて巻線温度に対する劣化の度合いを表す劣化スコアを算出する演算式が設定されている。そして、コントローラ10は、電動機30の制御周期で電動機30の巻線温度のデータを収集し、収集するごとにその巻線温度に対する劣化スコアを算出し、所定の積算周期で劣化スコアの積算値を計算し、積算値を記憶部14に記憶する。したがって、大量に収集される巻線温度のデータを劣化スコアの積算値に圧縮して記憶部14に記憶することができるので、少ない記憶容量で、長期間にわたって電動機30の劣化状況を表すデータを記憶することができる。
【0040】
たとえば、コントローラ10による制御データの収集周期を10msとし、1日の稼働時間を8時間とすると、巻線温度のデータの収集点数は、8[h]×3600[s]/10[ms]≒3M[個]となる。したがって、1日ごとに劣化スコアを積算して、積算値のみを残すことによって、データは、3百万分の1程度に圧縮されることになる。
【0041】
実施形態の電動機巻線劣化状態調査システム100では、ドライブ装置20にも劣化スコアの積算値を記憶部24に記憶することができる。ドライブ装置20の記憶部24をバックアップとして利用することができるので、より安全にデータの管理を行うことができる。また、ドライブ装置20の記憶部24に記憶されるデータの容量を抑制することによって、ドライブ装置を他の機種に入れ替える場合などに、データの移動、継承が容易になるとのメリットもある。
【0042】
以上説明した実施形態によれば、電動機の巻線の劣化状況を表すデータの収集を可能にする電動機巻線劣化状態調査システムを実現することができる。
【0043】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 コントローラ、20 ドライブ装置、30 電動機、40,102 通信ネットワーク、50 上位コンピュータ、100 電動機巻線劣化状態調査システム
図1
図2
図3
図4