(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
E02F9/00 Q
(21)【出願番号】P 2021134840
(22)【出願日】2021-08-20
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】北條 厚
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-341799(JP,A)
【文献】特開2015-182558(JP,A)
【文献】特開2008-268104(JP,A)
【文献】特開2008-221913(JP,A)
【文献】特開2017-090127(JP,A)
【文献】特開2002-013962(JP,A)
【文献】特開昭58-033126(JP,A)
【文献】実開昭56-151922(JP,U)
【文献】特開平02-042171(JP,A)
【文献】特開2009-110714(JP,A)
【文献】特開2012-163508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体に配置され、液体を収容するタンクと、
前記タンクの内部に配置され、大気中と前記液体中の比誘電率の差を用いて前記液体を検出する検出部分を有し、前記タンクの
第1側面に支持されたセンサと、を備え、
前記第1側面に対向する前記タンクの第2側面に配置され、前記検出部分を含む所定範囲の、
前記第1側面と前記第2側面の間の前記液体を収容可能な幅
を狭く
する部材と、を備え、
前記検出部分は、前記第1側面から前記第2側面に向かって突出し、
前記部材は、
前記第2側面から前記第1側面に向かって突出する第1部分と、
前記第1部分の下方に配置され、前記第2側面から前記第1側面に向かって突出する第2部分と、
前記第1部分の前記第1側面側の端と前記第2部分の前記第1側面側の端を繋ぎ、前記検出部分に対向する第3部分と、を有する、
建設機械。
【請求項2】
前記第1部分は、前記第1側面に向かうに従って下方に向かうように傾斜している、
請求項
1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記第2部分は、前記第1側面に向かうに従って上方に向かうように傾斜している、
請求項
1または
2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記
部材は、前記タンクの前記車両本体の左右方向における幅が狭くなるように形成されている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項5】
前記センサは、水平方向において前記第1側面の中央に配置されている、
請求項
1に記載の建設機械。
【請求項6】
前記車両本体は、
キャブと、
前記キャブに配置されたモニタと、
前記センサの検出値に基づいて、前記センサが液面から露出したことを検出した場合、前記モニタに発報する制御部と、を有する、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械には、水や作動油を貯める複数のタンクが設けられている。例えば、特許文献1に示す建設機械には、キャブに設けられた空調機の除湿機能によって回収された水分を貯留するドレン水タンクと、ドレン水タンクに配置された水位センサが備えられている。
【0003】
また、建設機械には、エンジンおよびラジエータの冷却水を貯めるエクスパンションタンクも設けられている。エクスパンションタンクは、所定の水量および空気量をタンク内に確保する必要があり、水位センサによってタンク内の所定量以上の水量が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、所定量以上の水量を確保するにはタンクの幅の広さも必要となるが、幅が広い場合、車体が傾斜した時の水位変化が大きくなる。そのため、所定量以上の水量があるにもかかわらず、車体が傾斜したときに水位センサが液面から露出し、液量が不足していると誤検出する場合があった。
【0006】
本開示は、液体不足の誤検知を抑制することが可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様にかかる建設機械は、車両本体と、タンクと、センサと、を備える。タンクは、車両本体に配置され、液体を収容する。センサは、液体を検出する検出部分を有し、タンクに支持されている。タンクは、幅狭部を有する。幅狭部は、検出部分を含む所定範囲の幅が狭く形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の態様によれば、液体不足の誤検知を抑制することが可能な建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態にかかる油圧ショベルを示す斜視図。
【
図2】本開示の実施の形態にかかるエクスパンションタンクの外観図。
【
図5】(a)本開示の実施の形態のハット部材の側面図、(b)
図5(a)の矢印Bに沿ってハット部材を視た平面図、(c)
図5(a)の矢印Cに沿ってハット部材を視た平面図。
【
図7】本開示の実施の形態にかかる油圧ショベルが傾斜した状態におけるタンクの状態示す断面図。
【
図8】本開示の実施の形態の油圧ショベルの制御構成を示すブロック図。
【
図9】(a)本開示の実施の形態の変形例のハット部材を説明するためのタンクの平断面図、(b)
図9(a)のEE´間の断面図、(c)
図9(a)のFF´間の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示にかかる建設機械の一例としての油圧ショベルについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0011】
<構成>
(油圧ショベル1の概要)
図1は、本実施の形態の油圧ショベル1の構成を示す模式図である。
【0012】
油圧ショベル1(建設機械の一例)は、車両本体2と、タンクユニット3と、制御部4(後述する
図8参照)と、を備える。
【0013】
車両本体2は、
図1に示すように、走行体11と、旋回体12と、作業機13と、を有している。走行体11は、一対の走行装置11a、11bを有する。各走行装置11a、11bは、履帯11c、11dを有している。エンジンからの駆動力によって走行モータが回転して履帯11c、11dが駆動されることによって油圧ショベル1が走行する。
【0014】
旋回体12は、走行体11上に載置されている。旋回体12は、図示しない旋回装置によって上下方向に沿った軸を中心として走行体11に対して旋回可能に構成されている。
【0015】
旋回体12の前部左側位置には、オペレータが運転時に着座する運転席としてのキャブ14が配置されている。キャブ14の内部には、運転席、作業機13を操作するためのレバー、モニタ71(
図8参照)等が配置されている。
【0016】
旋回体12は、後部側に、タンクユニット3並びに図示しないエンジンおよび油圧ポンプなどを収容する。尚、本実施の形態において断りなき場合、前後左右はキャブ14内の運転席を基準として説明する。運転席が正面に正対する方向を前方向(矢印Xf参照)とし、前方向に対向する方向を後方向(矢印Xb参照)とする。運転席が正面に正対したときの側方方向の右側、左側をそれぞれ右方向(矢印Yr参照)、左方向(矢印Yl参照)とする。また、本明細書において「高さ方向」、「鉛直方向」および「水平方向」は、特段記載のない限り、車両本体2が傾斜せずに水平な状態での方向を示している。
【0017】
作業機13は、
図1に示すように、ブーム21、アーム22、掘削バケット23を有し、旋回体12の前部中央位置に取り付けられている。作業機13は、キャブ14の右側に配置されている。ブーム21の基端部は、旋回体12に回動可能に連結されている。また、ブーム21の先端部はアーム22の基端部に回動可能に連結されている。アーム22の先端部は、掘削バケット23に回動可能に連結されている。掘削バケット23は、その開口が旋回体12の方向(後方)を向くことができるようにアーム22に取り付けられている。掘削バケット23が、このような向きに取り付けられた油圧ショベル1は、バックホウと呼ばれている。
【0018】
ブーム21、アーム22および掘削バケット23のそれぞれに対応するように油圧シリンダ24~26(ブームシリンダ24、アームシリンダ25およびバケットシリンダ26)が配置されている。これらの油圧シリンダ24~26が駆動されることによって作業機13が駆動される。これにより、掘削等の作業が行われる。
【0019】
(タンクユニット3)
図2は、タンクユニット3の斜視図である。
図3は、
図2のAA´間の矢視断面図である。
図4は、
図3を前方向Xf側から視た断面図である。
【0020】
タンクユニット3は、エンジンおよびラジエータの冷却水を貯める。タンクユニット3は、タンク31と、水位センサ32(センサの一例)と、水位ゲージ33と、ハット部材34(部材の一例)と、を有する。
【0021】
(タンク31)
タンク31は、エンジンおよびラジエータの冷却水を貯める機能、およびアキュムレータとしての機能を有する。そのため、タンク31には、所定量以上の空気が入っているとともに、所定量以上の冷却水が貯められる。タンク31は、金属材料で形成することができるが、限定されるものではなく、樹脂等で形成されてもよい。
【0022】
タンク31は、特に形状が限定されないが、本実施の形態では、略直方体形状である。タンク31は、
図2~
図4に示すように、第1側面41と、第2側面42と、第3側面43と、第4側面44と、底面45と、天井面46と、流入口47と、排出口48と、補給水口49と、を有する。
【0023】
第1側面41と第2側面42は、
図3に示すように、左右方向(矢印Yr、Yl参照)に対向して所定間隔を空けて配置されている。第1側面41と第2側面42は、概ね同じ大きさと形状であり、長方形状に形成されている。第1側面41と第2側面42は、互いに平行に配置されている。第1側面41と第2側面42は、鉛直方向に沿って配置されている。第1側面41は、第2側面42の左方向Yl側に配置されている。
【0024】
第3側面43は、
図2に示すように、第1側面41の前方向Xf側の端と、第2側面42の前方向Xf側の端を繋ぐ。第4側面44は、
図3に示すように、第1側面41の後方向Xb側の端と、第2側面42の後方向Xb側の端を繋ぐ。第3側面43と第4側面44は、概ね同じ大きさと形状であり、長方形状に形成されている。第3側面43と第4側面44は、互いに平行に配置されている。第3側面43と第4側面44は、鉛直方向に沿って配置されている。第3側面43と第4側面44は、前後方向(矢印Xf,Xb参照)に対向して配置されている。
【0025】
第1側面41および第2側面42の前後方向に沿った幅は、第3側面43と第4側面44の左右方向に沿った幅よりも、大きく形成されている。
【0026】
底面45は、
図3および
図4に示すように、第1側面41の下端と、第2側面42の下端と、第3側面43の下端と、第4側面44の下端を繋ぐ。底面45は、長方形状である。底面45は、水平方向に沿って配置されている。
【0027】
天井面46は、
図3に示すように、第1側面41の上端と、第2側面42の上端と、第3側面43の上端と、第4側面44の上端を繋ぐ。天井面46は、長方形状である。天井面46は、水平方向に沿って配置されている。
【0028】
流入口47は、ラジエータおよびエンジンの冷却水がタンク31に流入する。
図2に示すように、流入口47は、第2側面42に配置されている。流入口47は、第2側面42に形成された開口から右方向Yrに向かって突出している。
【0029】
排出口48は、タンク31から冷却水がラジエータおよびエンジンに向かって排出される。排出口48は、底面45に形成されている。排出口48は、底面45に形成された開口から下方に向かって突出している。
【0030】
補給水口49から、タンク31内の水が不足した際に水が補給される。補給水口49は、天井面46に配置されている。補給水口49は、天井面46に形成された開口から上方に突出しており、突出した先端には、蓋が開閉自在に配置されている。
【0031】
(水位センサ32)
水位センサ32は、タンク31内の液体の高さ位置を検出する。水位センサ32は、第1側面41に固定されている。水位センサ32は、大気中と水中の比誘電率の差を検知して、制御部4に信号を送信する。
【0032】
水位センサ32は、
図3および
図4に示すように、検出部分51と、支持部52と、を有している。検出部分51は、タンク31の内部に位置し、水位を検出する。検出部分51は、棒状である。支持部52は、検出部分51を支持する。支持部52は第1側面に配置されている。支持部52から第1側面41に対して垂直に第2側面42に向かって検出部分51が突出している。検出部分51は、水平方向に沿って配置されている。検出部分51は、必要な水位を検出できればよく、高さ方向における位置は特に限定されないが、本実施の形態では、タンク31の高さ方向における概ね中央に配置されている。支持部52は、検出部分51の検出結果を制御部4に送信する。検出部分51が水から露出すると比誘電率が変化して検出信号が制御部4に送信される。
【0033】
水位センサ32は、
図2に示すように、前後方向(矢印Xf、Xb参照)において第1側面41の中央に配置されている。
【0034】
本実施の形態の油圧ショベル1では、前後方向に車両本体2が傾斜した場合であっても、水位センサ32が前後方向においてタンク31の中央に配置されているため、水位センサ32の上方における水位がほとんど変わらず、残量不足の誤検出を抑制することができる。
【0035】
なお、本実施の形態の油圧ショベル1では、前後方向における仕様上の限界傾斜角度は30度に設定されている。
【0036】
(水位ゲージ33)
水位ゲージ33は、タンク31の外部からタンク31内の水位を確認することができる。水位ゲージ33の種類は特に限定されないが、例えば、鉛直方向に沿って配置されており、
中空であり、内部にタンク31から水が流れ込むような構成の水位ゲージを用いてもよい。車両本体2が水平な状態において水位ゲージ33の水面の高さは、タンク31の水面の高さと同じである。これにより、作業者は、水位ゲージ33の水面の高さを確認することによって、タンク31内の水の高さを知ることができる。
【0037】
水位ゲージ33は、本実施の形態では、第1側面41の外側に配置されているが、いずれの側面に配置されていてもよい。
【0038】
(ハット部材34)
図5(a)はハット部材34の側面図である。
図5(b)は、
図5(a)に示す矢印Bに沿ってハット部材34を視た平面図である。
図5(c)は、
図5(a)に示す矢印Cに沿ってハット部材34を視た平面図である。なお、矢印Bは、後述する第1部分61に対して垂直な方向であり、矢印Cは、後述する第3部分63に対して垂直な方向である。
図6は、
図4のDD´間の模式的な断面図である。
図6では、流入口47、排出口48および補給水口49は省略されている。
【0039】
ハット部材34は、タンク31の所定部分の幅を狭めるための部材である。ハット部材34は、
図4に示すように、タンク31の幅を狭めた幅狭部35を形成する。幅狭部35は、タンク31の左右方向(矢印Yr、Yl参照)における幅が狭くなっている。幅狭部35に上述した検出部分51が配置されている。幅狭部35では、高さ方向において検出部分51を含む所定範囲(後述する上端L1から下端L2の間)の幅が狭くなっている。
【0040】
ハット部材34は、金属材料で形成することができるが、金属材料に限定されなくてもよく、樹脂等で形成されてもよい。なお、タンク31に取り付けることを考慮すると、ハット部材34の材料はタンク31と同じ材料が好ましい。例えば、タンク31およびハット部材34の双方が金属材料で形成されている場合は、溶接等によってハット部材34をタンク31に接合することができる。
【0041】
ハット部材34は、
図4に示すように、第2側面42に接合されて取り付けられている。ハット部材34は、
図6に示すように、前後方向(矢印Xf、Xr参照)の前方向Xf側の端34aが第3側面43に接合され、後方向Xr側の端34bが第4側面44に接合されている。ハット部材34は、前後方向(Yr、Yl)において、第2側面42の端から端まで形成されている。
【0042】
図4および
図5(a)~(c)に示すように、ハット部材34は、第1部分61と、第2部分62と、第3部分63と、を有する。第1部分61、第2部分62、および第3部分63は、平面状に形成されている。ハット部材34は、一枚の長方形状の板を折り曲げて形成されているが、第1部分61と第3部分63と第2部分62の間を溶接等によって接続してもよい。
【0043】
図4に示すように、第1部分61は、第2側面42から第1側面41に向かって突出するように配置されている。第1部分61は、第2側面42から第1側面41に向かうに従って、下方に向かうように傾斜している。第1部分61の右方向Yr側の端は、第2側面42に接合されている。
図6に示すように、第1部分61の前方向Yf側の端は、第3側面43に接合されており、第1部分61の後方向Yb側の端は、第4側面44に接合されている。
【0044】
図4に示すように、第2部分62は、第1部分61の下方に配置されている。第2部分62は、第2側面42から第1側面41に向かって突出するように配置されている。第2部分62は、第2側面42から第1側面41に向かうに従って、上方に向かうように傾斜している。第2部分62の右方向Yr側の端は、第2側面42に接合されている。
図6に示すように、第2部分62の前方向Yf側の端は、第3側面43に接合されており、第2部分62の後方向Yb側の端は、第4側面44に接合されている。
【0045】
第3部分63は、
図4および
図5(a)~(c)に示すように、第1部分61の第1側面41側の端と、第2部分62の第1側面41側の端を接続する。第3部分63は、鉛直方向に沿って配置されている。
図6に示すように、第3部分63の前方向Yf側の端は、第3側面43に接合されており、第3部分63の後方向Yb側の端は、第4側面44に接合されている。
【0046】
第3部分63は、
図4に示すように、水位センサ32に対向して配置されている。第3部分63と、第3部分63と対向する第1側面41の部分41aとの間に検出部分51が配置されている。第3部分63と、第3部分63と対向する第1側面41の部分41aとの間によって、幅狭部35が形成されている。幅狭部35の範囲は、
図4において、上端が点線L1で示され、下端がL2で示されている。
【0047】
上述した第1部分61および第2部分62の傾斜により、空気だまりを抑制できる効果を発揮できる。
【0048】
次に、油圧ショベル1が傾いた場合について説明する。
【0049】
図4では、水位がLOWレベルのときの水面WSが示されている。水面WSは、第2部分62の下端近傍に位置している。LOWレベルとは、水の補給を行う必要がない水量の下限値である。LOWレベルよりも水位が下がったときには、水が不足していると検出されても誤検知とは判断されない。
【0050】
図4の状態から、左側から右側に向かって下がるように油圧ショベル1が仕様上の限界傾斜角度まで傾斜した状態を
図7に示す。
図7に示す傾斜状態のタンク31内の水量は、
図4に示す水平状態のタンク31内の水量と同じである。
【0051】
図7に示すように、油圧ショベル1が仕様上の限界角度まで傾斜した状態でも、検出部分51が配置されているタンク31の部分の幅が狭いため、検出部分51がLOWレベルの水面WSよりも下方に位置している。このため、タンク31が傾いた場合でも、検出部分51が水から露出し難く、誤検出を抑制することができる。検出部分51は、水量がLOWレベルの状態において、油圧ショベル1が限界傾斜角度まで傾斜したときでも、水面WSから露出しないように配置されている。
【0052】
なお、本実施の形態の油圧ショベル1では、左右方向における仕様上の限界角度が20度に設定されているため、タンク31の幅を狭くするためには、第1部分61の傾斜角度αは、20度より大きく設定する方が好ましい。
【0053】
(制御部4)
図8は、本実施の形態の油圧ショベル1の制御構成を示す図である。制御部4は、プロセッサおよび記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、水位センサ32の検出値の入力を受けて、プログラムに従ってモニタ71の制御のための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよび/またはRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、モニタ71を制御するプログラムおよびデータを記憶している。
【0054】
制御部4は、水面WSから露出したことを検出した水位センサ32による検出信号を受けて、作業者に水量が不足していることを知らせるようにモニタ71によって報知する。
【0055】
作業者は、モニタ71からの報知を受けて、補給水口49から、タンク31内に水を補給する。
【0056】
(特徴)
(1)
本実施の形態の油圧ショベル1は、車両本体2と、タンク31と、水位センサ32と、を備える。タンク31は、車両本体2に配置され、水を収容する。水位センサ32は、液体を検出する検出部分51を有し、タンク31に支持されている。タンク31は、幅狭部35を有する。幅狭部35は、検出部分51を含む所定範囲(
図4に示す上端L1から下端L2の範囲)の幅が狭く形成されている。
【0057】
このように、水位センサ32の液体を検出する検出部分51を設置している部分のタンク31の幅を狭くすることによって、車両本体2が傾斜した時の液面の位置変化を小さくすることができる。このため、車両本体2が傾斜したときに水位センサ32が液面から露出し難くでき、誤検出を抑制することができる。
【0058】
(2)
本実施の形態の油圧ショベル1では、水位センサ32は、タンク31の第1側面41に支持されている。検出部分51は、第1側面41から、第1側面41に対向する第2側面42に向かって突出している。幅狭部は35、第1側面41と第2側面42の間に形成されている。
【0059】
これにより、水位センサ32を支持している第1側面41と第2側面42の間の幅を部分的に狭くすることができる。
【0060】
(3)
本実施の形態の油圧ショベル1は、ハット部材34を更に備える。ハット部材34は、幅狭部35を形成する。
【0061】
これにより、タンク31にハット部材34を配置することによって、タンク31に幅狭部35を形成でき、傾斜による水位センサ32の誤検知を抑制することができる。
【0062】
(4)
本実施の形態の油圧ショベル1では、ハット部材34は、第1側面41に対向する第2側面42に配置され、幅狭部35を形成する。ハット部材34は、第1部分61と、第2部分62と、第3部分63と、を有する。第1部分61は、第2側面42から第1側面41に向かって突出する。第2部分62は、第1部分61の下方に配置され、第2側面42から第1側面41に向かって突出する。第3部分63は、第1部分61の第1側面41側の端と第2部分62の第1側面41側の端を繋ぎ、検出部分51に対向する。
【0063】
これにより、第3部分63と第1側面41の間隔が狭くなるため、タンク31に幅狭部35を形成でき、水位センサ32の誤検知を抑制することができる。
【0064】
(5)
本実施の形態の油圧ショベル1では、第1部分61は、第1側面41に向かうに従って下方に向かうように傾斜している。
【0065】
これにより、第1部分61の上面に気泡が溜まることを抑制することができる。特にタンク31がエクスパンションタンクである場合、気泡が液体に混ざって排出することを抑制できるため、良好な気液分離性を得ることができる。
【0066】
(6)
本実施の形態の油圧ショベル1では、第2部分62は、第1側面41に向かうに従って上方に向かうように傾斜している。
【0067】
これにより、第2部分62の下面に気泡が溜まることを抑制することができる。特にタンク31がエクスパンションタンクである場合、気泡が液体に混ざって排出することを抑制できるため、良好な気液分離性を得ることができる。
【0068】
(7)
本実施の形態の油圧ショベル1では、幅狭部35は、タンク31の車両本体2の左右方向における幅が狭く形成されている。
【0069】
これによって、車両本体2の左右方向への傾斜による液面の変化を抑制することができる。
【0070】
(8)
本実施の形態の油圧ショベル1では、水位センサ32は、水平方向において第1側面41の中央に配置されている。
【0071】
これによって、第1側面41と第2側面42が対向する方向に対して垂直な前後方向に、車両本体2が傾斜した場合であっても、その方向における中央に水位センサ32の検出部分51が配置されているため、水位センサ32の上方における液面の位置がほとんど変化しない。そのため、油圧ショベル1が傾斜している場合であっても、適切に液体不足の検出を行うことができる。
【0072】
また、建設機械が油圧ショベル1の場合には、前後方向における仕様上の限界傾斜角度が、左右方向における仕様上の限界傾斜角度よりも大きく設定されている。このため、より傾斜角度が大きくなる可能性がある前後方向では中央に水位センサ32を配置し、左右方向におけるタンク31の内部の幅を狭くすることによって、誤検出をより抑制することができる。
【0073】
(9)
本実施の形態の油圧ショベル1では、車両本体2は、キャブ14と、モニタ71と、制御部4と、を有する。モニタ71は、キャブ14に配置されている。制御部4は、水位センサ32の検出値に基づいて、水位センサ32が液面から露出したことを検出した場合、モニタ71に発報する。
【0074】
これにより、タンク31内の液体の不足をオペレータに報知することができる。
【0075】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0076】
(A)
上記実施の形態では、タンク31の右方向Yr側の第2側面42にハット部材34が配置されているが、これに限らなくてもよく、ハット部材34は第1側面41に配置されていてもよい。
【0077】
(B)
上記実施の形態では、タンク31の左右方向における幅の一部を狭くするように、ハット部材34を第2側面42に配置しているが、これに限らなくてもよく、タンク31の前後方向における幅の一部を狭くするようにハット部材34を第3側面43または第4側面44に配置してもよい。この場合、水位センサ32は、第3側面43および第4側面44うちハット部材34が設けられていない側面の前後方向における中央に配置する方が好ましい。
【0078】
なお、上記実施の形態では、前後方向における仕様上の限界傾斜角度が、左右方向における仕様上の限界傾斜角度よりも大きく形成されているが、車種や車格によっては、反対の場合も考えられる。
すなわち、前後方向と左右方向において仕様上の限界傾斜角度が異なる場合、限界傾斜角度が大きい方向の傾斜に対しては、その方向における側面の中央に水位センサ32を配置して水位の変化による誤検知を抑制し、小さい方向の傾斜に対しては、ハット部材を配置して幅を狭くして水位の変化による誤検知を抑制する方が好ましい。
【0079】
ようするに、車種や車格によって定められる前後方向および左右方向の限界角度に基づいて、ハット部材34がタンク31に配置されればよい。
【0080】
(C)
上記実施の形態では、水位センサ32を前後方向における第1側面41の中央に配置することによって、前後方向における車両本体2の傾斜による誤検知を抑制しているが、これに限らなくてもよい。例えば、別のハット材を更に設けることによってタンク31の水位センサ32が配置されている近傍の前後方向の幅を狭くしてもよい。
【0081】
図9(a)は、タンク31に2つの第1ハット部材81および第2ハット部材82が配置された状態を示す平断面図である。
図9(b)は、
図9(a)のEE´間の矢視断面図である。
図9(c)は、
図9(a)のFF´間の矢視断面図である。
【0082】
第1ハット部材81は、
図9(b)に示すように、第1部分91と、第2部分92と、第3部分93と、を有する。第1部分91は、第2側面42から第1側面41に向かって突出する。第2部分92は、第1部分91の下方に配置され、第2側面42から第1側面41に向かって突出する。第3部分93は、第1部分91の第1側面41側の端と第2部分92の第1側面41側の端を繋ぎ、検出部分51に対向する。第1部分91および第2部分92は、水平方向に沿って配置されている。第3部分93は、鉛直方向に沿って配置されている。
図9(a)に示すように、第1ハット部材81の前方向Xf側の端81aは、第3側面43に接合されており、第1ハット部材81の後方向Xb側の端81bは、第4側面44に接合されている。
【0083】
第2ハット部材82は、
図9(c)に示すように、第1部分101と、第2部分102と、第3部分103と、を有する。第1部分101は、第4側面44から第3側面43に向かって突出する。第2部分102は、第1部分101の下方に配置され、第4側面44から第3側面43に向かって突出する。第3部分103は、第1部分101の第3側面43側の端と第2部分102の第3側面43側の端を繋ぎ、検出部分51に対向する。第1部分101および第2部分102は、水平方向に沿って配置されている。第3部分103は、鉛直方向に沿って配置されている。
図9(b)に示すように、第2ハット部材82の左方向Yl側の端82aは、第1側面41に接合されており、第2ハット部材82の右方向Yr側の端82bは、第1ハット部材81の第3部分93に接合されている。
【0084】
これにより、水位センサ32の検出部分51が配置されているタンク31の部分の前後方向および左右方向の双方の幅が狭くなっているため、車両本体2が左右方向または前後方向のいずれの方向に傾斜した場合でも、誤検知を抑制することができる。
【0085】
(D)
上記実施の形態では、タンクの一例として水を貯めるエクスパンションタンクを用い、説明を行ったが、エクスパンションタンクに限らなくてもよい。例えば、燃料や作動油といった液体油を貯める燃料タンクや作動油タンクに上記実施の形態で説明したハット部材34を適用してもよい。
【0086】
(E)
上記実施の形態では、幅狭部35を形成する部材の一例であるハット部材34は、第1部分61、第2部分62、および第3部分63の3つの平らな板状の部分によって形成されているが、これにかぎらなくてもよい。要するに、幅狭部35を形成できる部材であれば特に限定されるものではなく、湾曲した部材であってもよい。また、一体成形により、タンクの一部に幅狭部を形成してもよい。
【0087】
(F)
上記実施の形態では、建設機械の一例として油圧ショベルを用いて説明したが、これに限らなくてもよく、ブルドーザ、およびホイールローダ等であってもよい。
【0088】
(G)
上記実施の形態では、作業者に水不足を知らせるために、モニタ71に表示させることによって報知しているが、モニタ71に限らなくてもよく、ランプや音等で報知してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示の構成は、液体不足の誤検知を抑制することが可能な効果を有し、油圧ショベル等の建設機械に有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 :油圧ショベル
2 :車両本体
31 :タンク
32 :水位センサ
35 :幅狭部
51 :検出部分