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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】アンテナ一体型モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240502BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240502BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20240502BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20240502BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240502BHJP
   C08L 63/02 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 5/23 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20240502BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L23/28 F
C08L33/08
C08K5/1515
C08L9/00
C08L63/02
C08K3/08
C08K5/23
C08K5/3445
H01Q1/38
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021144916
(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公開番号】P2023038030
(43)【公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 直人
(72)【発明者】
【氏名】深野 純平
(72)【発明者】
【氏名】津田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】梅田 裕明
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-129304(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009124(WO,A1)
【文献】特開2011-096056(JP,A)
【文献】特開2014-220390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/28
C08L 33/08
C08K 5/1515
C08L 9/00
C08L 63/02
C08K 3/08
C08K 5/23
C08K 5/3445
H01Q 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に載置された電子部品と、
前記電子部品を封止材により封止した封止層と、
前記封止層の表面に塗布された第一導電性組成物が硬化してなるアンテナ部と、
前記基板と前記アンテナ部とを接続するように前記封止層に形成された溝部と、
前記溝部に充填された第二導電性組成物が硬化してなり、前記電子部品と前記アンテナ部とを電気的に接続する接続部とを有し、
前記第一導電性組成物が、
(A)重量平均分子量が1000以上40万以下である(メタ)アクリル系樹脂と、
(B)分子内にグリシジル基、及び/又は(メタ)アクリロイル基を有するモノマーと、
(C)平均粒子径(D50)が10nm~700nmである粒状樹脂成分と、
(D)平均粒子径(D50)が10~500nmである導電性フィラーと、
(E)平均粒子径(D50)が1~50μmである鱗片状導電性フィラーと、
(F)ラジカル重合開始剤と
(G)エポキシ樹脂硬化剤と、
を少なくとも含有し、
前記粒状樹脂成分(C)の含有割合が、前記アクリル系樹脂(A)、前記モノマー(B)、及び前記粒状樹脂成分(C)を含む樹脂成分中、3~27質量%であり、
前記導電性フィラー(D)と前記導電性フィラー(E)との合計の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して、2000~12000質量部であり、
前記ラジカル重合開始剤(F)の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して、0.5~40質量部であり、
前記エポキシ樹脂硬化剤(G)の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して、0.5~40質量部であり、
前記第二導電性組成物が、
ダイマー酸型エポキシ樹脂5~20質量部を含む、エポキシ樹脂100質量部に対して、導電性フィラー400~600質量部を含有し、
前記導電性フィラーが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した平均粒子径(D50)5~8μmの導電性フィラー(a)と、平均粒子径(D50)2~3μmの導電性フィラー(b)とを含有し、
前記導電性フィラー(a)と前記導電性フィラー(b)との含有割合((a):(b))が、質量比で97:3~50:50である、アンテナ一体型モジュール。
【請求項2】
前記アンテナ部は、50℃から100℃における線膨張係数α1、及び170℃から200℃における線膨張係数α2がいずれも30ppm/℃以下である、請求項1に記載のアンテナ一体型モジュール。
【請求項3】
前記アンテナ部は、体積抵抗率が2×10-5Ω・cm以下である、請求項1又は2に記載のアンテナ一体型モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ一体型モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やタブレット端末等の電子機器においては、第5世代移動通信方式(以下、5Gともいう)による高速通信実現に向け、28GHz帯の送受信を扱う「フロントエンドモジュール(FEM:Front End Module)」の開発が進められている。このようなFEMは、モジュール基板の両面に送信用パワーアンプや受信用低雑音アンプ、集積化受動素子、スイッチ、位相シフタなどを搭載することが想定されている。
【0003】
従来の4G/LTE移動通信システムでは、アンテナとFEMとがフレキシブルプリント基板で接続されていたが、28GHz帯の送受信では、プリント基板の配線による電気的な損失が無視できないため、28GHz帯の電波送受信が可能なアンテナとRF(Radio Frequency)モジュールとが一体化されたアンテナ一体型モジュールが求められている。
【0004】
このような、アンテナ一体型モジュールの構造としては、特許文献1に記載のように、アンテナ機能を兼用させた金属ケースを、基板に実装された電子部品を覆うように設けた構造や、モジュール基板にアンテナ基板を積層した構造が考えられている。
【0005】
しかしながら、このような構成のアンテナ一体型モジュールは分厚くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-142960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、アンテナ一体型モジュールの構成を、基板と、上記基板に載置された電子部品と、上記電子部品を封止材により封止した封止層と、上記封止層の表面に塗布された第一導電性組成物が硬化してなるアンテナ部と、上記基板と上記アンテナ部とを接続するように上記封止層に形成された溝部と、上記溝部に充填された第二導電性組成物が硬化してなり、上記電子部品と上記アンテナ部とを電気的に接続する接続部とを有するものとすることに想到した。しかしながら、第一導電性組成物の組成によってはアンテナ部が反り返ったり、アンテナ部と封止層との密着性が劣っていたり、アンテナ一体型モジュールの実装部分に応力がかかりヒートサイクル試験等の長期信頼性に悪影響を及ぼすことがあった。
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、アンテナ部とモジュールとを接続する配線における電気的な損失を抑制することができ、アンテナ部の反り返りを抑制し、アンテナ部と封止層との密着性に優れ、モジュールの薄型化を可能にするアンテナ一体型モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のアンテナ一体型モジュールは、基板と、上記基板に載置された電子部品と、上記電子部品を封止材により封止した封止層と、上記封止層の表面に塗布された第一導電性組成物が硬化してなるアンテナ部と、上記基板と上記アンテナ部とを接続するように上記封止層に形成された溝部と、上記溝部に充填された第二導電性組成物が硬化してなり、上記電子部品と上記アンテナ部とを電気的に接続する接続部とを有し、上記第一導電性組成物が、(A)重量平均分子量が1000以上40万以下である(メタ)アクリル系樹脂と、(B)分子内にグリシジル基、及び/又は(メタ)アクリロイル基を有するモノマーと、(C)平均粒子径(D50)が10nm~700nmである粒状樹脂成分と、(D)平均粒子径(D50)が10~500nmである導電性フィラーと、(E)平均粒子径(D50)が1~50μmである鱗片状導電性フィラーと、(F)ラジカル重合開始剤と(G)エポキシ樹脂硬化剤と、を少なくとも含有し、上記粒状樹脂成分(C)の含有割合が、上記アクリル系樹脂(A)、上記モノマー(B)、及び上記粒状樹脂成分(C)を含む樹脂成分中、3~27質量%であり、上記導電性フィラー(D)と上記導電性フィラー(E)との合計の含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、2000~12000質量部であり、上記ラジカル重合開始剤(F)の含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、0.5~40質量部であり、上記エポキシ樹脂硬化剤(G)の含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、0.5~40質量部であり、上記第二導電性組成物が、ダイマー酸型エポキシ樹脂5~20質量部を含む、エポキシ樹脂100質量部に対して、導電性フィラー400~600質量部を含有し、上記導電性フィラーが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した平均粒子径(D50)5~8μmの導電性フィラー(a)と、平均粒子径(D50)2~3μmの導電性フィラー(b)とを含有し、上記導電性フィラー(a)と上記導電性フィラー(b)との含有割合((a):(b))が、質量比で97:3~50:50であるものとする。
【0010】
上記アンテナ部は、50℃から100℃における線膨張係数α1、及び170℃から200℃における線膨張係数α2がいずれも30ppm/℃以下であるものとすることができる。
【0011】
上記アンテナ部は、体積抵抗率が2×10-5Ω・cm以下であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアンテナ一体型モジュールによれば、アンテナ部とモジュールとを接続する配線における電気的な損失を抑制することができ、アンテナ部の反り返りを抑制でき、アンテナ部と封止層との優れた密着性が得られ、かつ、モジュールを薄型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ一体型モジュールの模式上面図。
図2図1のA-A断面図。
図3】第一導電性組成物の体積抵抗率の評価に用いた、硬化物のサンプルが形成された基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るアンテナ一体型モジュール10について、図1,2を用いて説明する。
【0015】
本実施形態に係るアンテナ一体型モジュール10は、基板1と、基板1に載置された電子部品2と、電子部品2を封止材により封止した封止層3と、封止層3の表面に塗布された第一導電性組成物が硬化してなるアンテナ部4と、基板1とアンテナ部4とを接続するように封止層3に形成された溝部5と、溝部5に充填された第二導電性組成物が硬化してなり、電子部品2とアンテナ部4とを電気的に接続する接続部6とを有するものである。
【0016】
本実施形態の基板1は、特に限定されるものではなく公知の基板を用いることができ、例えば、FR-4、BTレジンなどが挙げられるが、低誘電率、低誘電正接のものであることが好ましい。
【0017】
本実施形態の電子部品2は、特に限定されず、公知の電子部品を用いることができ、例えば、送信用パワーアンプや受信用低雑音アンプ、集積化受動素子、スイッチ、位相シフタなどが挙げられる。
【0018】
本実施形態の封止層3を形成する封止材は、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂が挙げられるが低誘電率、低誘電正接の材料であることが好ましい。
【0019】
本実施形態の封止層3に形成された溝部5は、図2に示すように、基板1とアンテナ部4とを接続するように形成されていれば特に限定されず、図1に示すように、溝部5の開口部の上面から見た形状が、四角形のものだけでなく、円形のものであってもよい。溝部5の幅及び接続部6の幅は、搭載される電子部品2の大きさや、アンテナ一体型モジュール10の設計に応じて調整することができるが、優れた充填性を得る観点からは、幅が0.05~0.30mm、深さが1.50mm以下、アスペクト比が15以下であることが好ましく、幅が0.07~0.15mm、深さが1.00mm以下、アスペクト比が10以下であることがより好ましい。溝部5の形成方法は、公知の方法を用いればよく特に限定されないが、例えば、レーザーダイシング加工やブレードダイシング加工などの方法が挙げられる。
【0020】
本実施形態のアンテナ部4の体積抵抗率は、28GHz帯の電磁波に対する感度の観点から、2×10-5Ω・cm以下であることが好ましい。体積抵抗率が上記範囲内である場合、消費電力を抑制できる。アンテナ部4の体積抵抗率は、四端子法により測定することができる。
【0021】
本実施形態のアンテナ部4は、50℃から100℃における線膨張係数α1、及び170℃から200℃における線膨張係数α2がいずれも30ppm/℃以下であることが好ましい。線膨張係数が上記範囲内である場合、得られるアンテナ部の反り返りを抑制しやすく、アンテナ一体型モジュール実装部分への応力が低減することで優れた長期信頼性が得られやすく、アンテナ部を薄型にしやすい。線膨張係数は、JIS K 7197-1991に準拠し測定することができる。
【0022】
本実施形態のアンテナ部4と封止層3との密着性は、電子部品2とアンテナ部4との接続安定性の観点から、4B以上であることが好ましい。密着性は、ASTM規格D3599に従い、クロスハッチ試験により測定することができる。
【0023】
本実施形態のアンテナ部4を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、第一導電性組成物をディスペンス工法や真空印刷工法、大気印刷工法によって塗布する方法や、封止層3にマスキングし、第一導電性組成物をスプレー塗布する方法が挙げられる。ディスペンス工法に用いる装置としては、公知の装置を用いればよく、特に限定されないが、例えば、ノードソンアシムテック社製のディスペンサー「S2-920N-P」、バルブ「DV-8000」や、武蔵エンジニアリング(株)製のディスペンサー「FAD2500」、バルブ「SCREW MASTER」などが挙げられる。また、印刷機は公知の装置を用いればよく特に限定されないが、真空印刷工法に用いる装置としては、東レエンジニアリング(株)製「VE-700」などが挙げられ、大気印刷工法に用いる装置としてはニューロング精密工業株式会社製「LS-77A」などが挙げられる。
【0024】
ここで、ディスペンス工法とは、シリンジ形状のノズル先端から導電性組成物を押し出して塗布する方法のことをいう。また、真空印刷工法とは、孔版印刷として版に化学繊維のスクリーンを張ったものを利用し、そのスクリーンに光学的に版膜を作って必要な画線以外の目を塞ぎ、版を作り、真空下で、その版膜の孔を介してインクを擦りつけることにより版の下に設置した被印刷物の印刷面に印刷を行う方法のことをいう。大気印刷工法とは、孔版印刷として版に化学繊維のスクリーンを張ったものを利用し、そのスクリーンに光学的に版膜を作って必要な画線以外の目を塞ぎ、版を作り、大気圧下で、その版膜の孔を介してインクを擦りつけることにより版の下に設置した被印刷物の印刷面に印刷を行う方法のことをいう
【0025】
本実施形態の接続部6の体積抵抗率は、電子部品2とアンテナ部4との接続における電気的な損失を抑制する観点から、10×10-5Ω・cm以下であることが好ましく、7×10-5Ω・cm以下であることがより好ましく、5×10-5Ω・cm以下であることがさらに好ましい。接続部6の体積抵抗率は、四端子法により測定することができる。
【0026】
本実施形態において接続部6と銅箔との接着強度は、特に限定されないが、溝部5の底面に露出した基板1の表面に形成されたパターンとの接続安定性の観点から、2MPa以上であることが好ましい。接着強度はASTM D4541に従い、プルオフ式付着性試験により測定することができる。
【0027】
本実施形態の接続部6を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、第二導電性組成物をディスペンス工法や真空印刷工法、大気印刷工法によって塗布する方法が挙げられる。
【0028】
<第一導電性組成物>
第一導電性組成物の組成は、(A)重量平均分子量が1000以上40万以下である(メタ)アクリル系樹脂と、(B)分子内にグリシジル基、及び/又は(メタ)アクリロイル基を有するモノマーと、(C)平均粒子径(D50)が10nm~700nmである粒状樹脂成分と、(D)平均粒子径(D50)が10~500nmである導電性フィラーと、(E)平均粒子径(D50)が1~50μmである鱗片状導電性フィラーと、(F)ラジカル重合開始剤と(G)エポキシ樹脂硬化剤と、を少なくとも含有し、上記粒状樹脂成分(C)の含有割合が、上記アクリル系樹脂(A)、上記モノマー(B)、及び上記粒状樹脂成分(C)を含む樹脂成分中、3~27質量%であり、上記導電性フィラー(D)と上記導電性フィラー(E)との合計の含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、2000~12000質量部であり、上記ラジカル重合開始剤(F)の含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、0.5~40質量部であり、上記エポキシ樹脂硬化剤(G)の含有量が、上記樹脂成分100質量部に対して、0.5~40質量部であるものとする。
【0029】
上記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを構成モノマーとして少なくとも含む重合体であり、特に限定されないが、例えば、構成モノマーとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、及びメタクリル酸n-ブチルからなる群より選択される少なくとも1種を含有する重合体を用いることができる。構成モノマーとしては、本発明の目的に反しない範囲でアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル以外を含んでいてもよい。2種以上のモノマーを含有する場合、交互共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。ここで、「(メタ)アクリル系樹脂」とは「アクリル系樹脂」及び「メタアクリル系樹脂」の総称である。
【0030】
上記(メタ)アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、1000以上であり、5000以上であることが好ましく、7000以上であることがより好ましく、10000以上であることがさらに好ましい。また、40万以下であり、20万以下であることが好ましく、15万以下であることがより好ましく、5万以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が1000以上である場合、導電性組成物の粘度がスプレー塗布に適した粘性となりやすく、導電性フィラーの優れた分散性が得られやすい。また、重量平均分子量が40万以下である場合、優れた導電性が得られやすい。
【0031】
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができ、移動相としてテトラヒドロフランを用い、ポリスチレン換算の検量線を用いて算出した値とする。
【0032】
このような(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、特開2016-155920号公報、特開2015-59196号公報、特開2016-196606号公報、WO2016/132814に係る焼成ペースト用共重合体等を使用することができる。また、市販されているアクリル系樹脂も使用可能であり、例えば、共栄社化学(株)製「KC-1100」や、「KC-1700P」を用いることができる。
【0033】
(メタ)アクリル系樹脂(A)の含有量は、樹脂成分中、1~70質量%であることが好ましく、10~65質量%であることがより好ましく、15~60質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
上記モノマー(B)は、分子内にグリシジル基及び/又は(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、好ましくは、分子内にグリシジル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。なお、本明細書において、「モノマー(B)」は、オリゴマーや分子量が1000未満であるプレポリマーも含むものとする。
【0035】
上記モノマー(B)がグリシジル基を有する場合、グリシジル基当量は、特に限定されないが、100~300g/eqであることが好ましく、150~250g/eqであることがより好ましい。また、上記モノマー(B)が(メタ)アクリロイル基を有する場合、(メタ)アクリロイル基当量は、特に限定されないが、100~300g/eqであることが好ましく、150~250g/eqであることがより好ましい。なお、このグリシジル基当量及び(メタ)アクリロイル基当量は理論値であるが、場合によっては公知の方法で求められたものでもよい。
【0036】
グリシジル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、イソアミルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0038】
グリシジル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0039】
これらモノマー(B)は1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。導電性組成物にアクリル系樹脂を使用した場合、加熱硬化後に形成されるアンテナ部4と封止層3との密着性が劣る傾向にあるが、上記モノマー(B)を併用することにより、上記導電性フィラー(D)及び上記導電性フィラー(E)を高配合した場合であっても、アンテナ部4と封止層3との優れた密着性が得られる。
【0040】
上記モノマー(B)の含有量は、樹脂成分中、5~80質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
粒状樹脂成分(C)としては、平均粒子径が10nm~700nmであれば特に限定されないが、例えば、ポリブタジエンゴム、シリコーン、スチレンブチレンゴムなどからなるものが挙げられる。粒状樹脂成分(C)は、分散性を高める観点から、液状硬化性樹脂に予め分散させたマスターバッチとして、導電性組成物に配合してもよい。液状硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂であることが好ましく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。液状硬化性樹脂のグリシジル基当量は、特に限定されないが、80~400g/eqであることが好ましく、100~300g/eqであることがより好ましい。なお、このグリシジル基当量は理論値であるが、場合によっては公知の方法で求められたものでもよい。
【0042】
ここで、本明細書において、「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法で測定した、個数基準の平均粒子径D50(メジアン径)をいう。
【0043】
粒状樹脂成分(C)の含有量は、樹脂成分中、3~27質量%であれば特に限定されないが、5~16.5質量%であることが好ましい。粒状樹脂成分(C)の含有量が3質量%以上である場合、導電性組成物中に分散した粒状樹脂成分(C)が焼成時に導電性フィラーが焼結することでアンテナ部4内に生じる応力を吸収することで優れた密着性が得られやすく、27質量%以下である場合、優れた導電性が得られやすい。
【0044】
上記液状硬化性樹脂を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、樹脂成分中、6~55質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましい。
【0045】
平均粒子径が10~500nmである導電性フィラー(D)としては、特に限定されないが、銅ナノ粒子、銀ナノ粒子、金ナノ粒子であることが好ましい。導電性フィラー(D)の平均粒子径が10~500nmであることにより、ミクロンサイズの導電性フィラー同士の間隙を充填することができるため、導電性フィラーを高配合にしやすく、優れた導電性が得られやすい。
【0046】
導電性フィラー(D)の含有量は、特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対して400~10000質量部であることが好ましく、2000~7000質量部であることがより好ましく、2200~7000質量部であることがさらに好ましく、2500~6000質量部であることが特に好ましい。含有量が400質量部以上であるとアンテナ部4の導電性が良好となり、10000質量部以下であると、アンテナ部4と封止層3との優れた密着性が得られやすい。
【0047】
平均粒子径が1~50μmである鱗片状導電性フィラー(E)としては、特に限定されないが、銅粉、銀粉、金粉、銀被覆銅粉または銀被覆銅合金粉であることが好ましく、コスト削減の観点からは、銅粉、銀被覆銅粉、又は銀被覆銅合金粉であることがより好ましい。導電性フィラー(E)の平均粒子径が1μm以上であると、導電性フィラー(E)の分散性が良好で凝集が防止でき、また酸化されにくく、50μm以下であるとアンテナ部4と封止層3との優れた接続性が得られやすい。
【0048】
銀被覆銅粉は、銅粉と、この銅粉粒子の少なくとも一部を被覆する銀層又は銀含有層とを有するものであり、銀被覆銅合金粉は、銅合金粉と、この銅合金粒子の少なくとも一部を被覆する銀層又は銀含有層とを有するものである。銅合金粒子は、例えば、ニッケルの含有量が0.5~20質量%であり、かつ亜鉛の含有量が1~20質量%であり、残部が銅からなり、残部の銅は不可避不純物を含んでいてもよい。このように銀被覆層を有する銅合金粒子を用いることにより、優れた導電性が得られやすい。
【0049】
鱗片状導電性フィラー(E)のタップ密度は4.0~6.5g/cmであることが好ましい。タップ密度が上記範囲内であると、アンテナ部4の優れた導電性が得られやすい。
【0050】
また、鱗片状導電性フィラー(E)のアスペクト比は5~20であることが好ましい。アスペクト比が上記範囲内であると、アンテナ部4の優れた導電性が得られやすい。
【0051】
導電性フィラー(E)の含有量は、特に限定されないが、樹脂成分100質量部に対して400~10000質量部であることが好ましく、1500~8000質量部であることがより好ましく、2000~7000質量部であることがさらに好ましく、2500~6000質量部であることが特に好ましい。含有量が400質量部以上であるとアンテナ部4の優れた導電性が得られやすく、10000質量部以下であると、アンテナ部4と封止層3との密着性が良好となりやすい。
【0052】
上記導電性フィラー(D)と上記導電性フィラー(E)との合計の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、2000~12000質量部であり、好ましくは、3000~12000質量部であり、より好ましくは5000~11000質量部であり、さらに好ましくは5500~10000質量部である。2000質量部以上であることにより、優れた導電性が得られやすく、12000質量部以下であることにより、アンテナ部4と封止層3との優れた密着性が得られやすい。
【0053】
導電性フィラー(D)と導電性フィラー(E)との含有割合(導電性フィラー(D):導電性フィラー(E))は、特に限定されないが、質量比で5:1~1:10であることが好ましい。
【0054】
ラジカル重合開始剤(F)としては、特に限定されないが、例えば、加熱によりラジカル重合を開始させる熱重合開始剤や、エネルギー線照射によりラジカル重合を開始させるエネルギー線重合開始剤を使用できる。
【0055】
熱重合開始剤は、特に制限されず、従来から用いられている有機過酸化物系やアゾ系の化合物を適宜使用することができる。
【0056】
有機過酸化物系重合開始剤の例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0057】
また、アゾ系重合開始剤の例としては、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドリドクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが挙げられる。
【0058】
上記熱重合開始剤は1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。
【0059】
ラジカル重合開始剤(F)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5~40質量部であり、2~30質量部であることが好ましく、5~20質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲内である場合には、導電性組成物の硬化が十分となり、アンテナ部4と封止層3との優れた密着性とアンテナ部4の優れた導電性が得られやすい。
【0060】
エポキシ樹脂硬化剤(G)としては、特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤などが挙げられる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用してもよい。
【0061】
フェノール系硬化剤としては、例えばノボラックフェノール、ナフトール系化合物等が挙げられる。
【0062】
イミダゾール系硬化剤としては、例えばイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールが挙げられる。
【0063】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0064】
カチオン系硬化剤の例としては、三フッ化ホウ素のアミン塩、P-メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ-n-ブチルホスホニウム-o,o-ジエチルホスホロジチオエート等に代表されるオニウム系化合物が挙げられる。
【0065】
エポキシ樹脂硬化剤(G)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.5~40質量部であり、1~20質量部であることが好ましく、2~15質量部であることがより好ましい。硬化剤の含有量が上記範囲内である場合、アンテナ部4と封止層3との優れた密着性と、アンテナ部4の優れた導電性が得られやすい。
【0066】
第一導電性組成物には、発明の目的を損なわない範囲内において、消泡剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤等、公知の添加剤を加えることができる。
【0067】
第一導電性組成物の25℃のおける粘度は、封止層3表面に塗布する装置に応じて適宜調整すればよい。スプレー塗布する場合、単一円筒形粘度計(いわゆるB型又はBH型粘度計)でロータNo.4を用いて10rpmで測定した粘度が60dPa・s以下であることが好ましく、50dPa・s以下であることがより好ましい。ディスペンス工法で塗布する場合、単一円筒形粘度計(いわゆるB型又はBH型粘度計)でロータNo.7を用いて10rpmで測定した粘度が3000dPa・s以下であることが好ましく、1000dPa・s以下であることがより好ましい。真空印刷工法や大気印刷工法で塗布する場合、単一円筒形粘度計(いわゆるB型又はBH型粘度計)でロータNo.7を用いて10rpmで測定した粘度が2000dPa・s以下であることが好ましく、1500dPa・s以下であることがより好ましい。第一導電性組成物の粘度が上記範囲内である場合、ディスペンス工法に用いる装置のノズルや、印刷工法に用いる印刷版、スプレー塗布に用いるスプレー装置のノズルの目詰まりを防止しやすい。
【0068】
第一導電性組成物の粘度は樹脂成分の粘度や導電性フィラーの含有量等により異なるので、上記範囲内にするために、溶剤を使用することができる。本発明において使用可能な溶剤は、特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用してもよい。
【0069】
溶剤の含有量は、導電性組成物の用途や塗布に使用する機器等に応じて適宜調整するのが好ましい。従って、樹脂成分の粘度や導電性フィラーの含有量等により異なるが、目安としては、導電性組成物の含有成分(溶剤を除く)の合計量に対して10~60質量%程度である。
【0070】
<第二導電性組成物>
第二導電性組成物の組成は、ダイマー酸型エポキシ樹脂5~20質量部を含む、エポキシ樹脂100質量部に対して、導電性フィラー400~600質量部を含有し、導電性フィラーが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定した平均粒子径(D50)5~8μmの導電性フィラー(a)と、平均粒子径(D50)2~3μmの導電性フィラー(b)とを含有し、導電性フィラー(a)と導電性フィラー(b)との含有割合((a):(b))が、質量比で97:3~50:50であるものとする。
【0071】
ダイマー酸型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を1個以上有するものであればよく、2種以上を併用することもできる。具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中でも、グリシジルアミン型エポキシ樹脂やグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含有するものが好ましい。
【0072】
ダイマー酸型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、1500g/eq以下であることが好ましく、20~1000g/eqであることがより好ましい。エポキシ当量が上記範囲内である場合、耐熱性、粘性、密着性のバランスが良い導電性組成物が得られやすい。
【0073】
ダイマー酸型エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を1個以上有するエポキシ樹脂であって、ダイマー酸を変性したものであればよく、ダイマー酸のグリシジル変性化合物などが例として挙げられ、2種以上を併用することもできる。このような樹脂としては、例えば、下記一般式(1)、(2)で表されるものを使用できる。
【0074】
【化1】
【0075】
式(1)、(2)中のn1~n5はそれぞれ独立に3~9の整数を表す。
【0076】
n1は3~9の整数を表し、4~8の整数が好ましく、5~7がより好ましく、7が特に好ましい。n2は3~9の整数を表し、5~9の整数が好ましく、7又は8がより好ましく、7が特に好ましい。n3は3~9の整数を表し、4~8の整数が好ましく、6又は7がより好ましく、6が特に好ましい。n4は3~9の整数を表す。n5は3~9の整数を表し、4~8の整数が好ましく、5又は6がより好ましく、5が特に好ましい。
【0077】
このようなダイマー酸型エポキシ樹脂を含有することにより、導電性組成物の粘度やチキソトロピックインデックス(TI値)が低くなりやすく、溝部5への優れた充填性が得られやすい。
【0078】
ダイマー酸型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、80~1500g/eqであることが好ましく、200~1000g/eqであることがより好ましい。エポキシ当量が上記範囲内である場合、耐熱性、粘性、密着性のバランスが良い導電性組成物が得られやすい。
【0079】
導電性フィラー(a)は、平均粒子径が5~8μmであることにより、分散性が良好で凝集が防止でき、アンテナ部4と電子部品2との優れた接続性が得られやすく、電気的な損失を抑制しやすい。
【0080】
導電性フィラー(b)は、平均粒子径が2~3μmであることにより、平均粒子径が5~8μmの導電性フィラー同士の間隙を充填することができるため、アンテナ部4と電子部品2との優れた接続性が得られやすく、電気的な損失を抑制しやすい。
【0081】
導電性フィラーの含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、400~600質量部であれば特に限定されないが、450~550質量部であることがより好ましい。上記範囲内である場合、アンテナ部4と電子部品2との電気的な損失を抑制しやすく、溝部5への優れた充填性が得られやすい。
【0082】
導電性フィラー(a)と導電性フィラー(b)との含有割合((a):(b))は、質量比で97:3~50:50であれば特に限定されないが、95:5~70:30であることがより好ましい。
【0083】
導電性フィラー(a)及び導電性フィラー(b)は、銅粉、銀粉、金粉、銀被覆銅粉又は銀被覆銅合金粉であることが好ましく、これらの中から1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用してもよい。コスト削減の観点からは、銅粉、銀被覆銅粉、又は銀被覆銅合金粉であることがより好ましい。
【0084】
銀被覆銅粉は、銅粉と、この銅粉粒子の少なくとも一部を被覆する銀層又は銀含有層とを有するものであり、銀被覆銅合金粉は、銅合金粉と、この銅合金粒子の少なくとも一部を被覆する銀層又は銀含有層とを有するものである。銅合金粒子は、例えば、ニッケルの含有量が0.5~20質量%であり、かつ亜鉛の含有量が1~20質量%であり、残部が銅からなり、残部の銅は不可避不純物を含んでいてもよい。このように銀被覆層を有する銅合金粒子を用いることにより、アンテナ部4と電子部品2との優れた接続性が得られやすく、電気的な損失を抑制しやすい。
【0085】
導電性フィラー(a)の形状の例としては、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、球状、繊維状、不定形(多面体)等が挙げられるが、アンテナ部4と電子部品2との優れた接続性が得られる観点から、球状であることが好ましい。
【0086】
また、導電性フィラー(a)が球状である場合は、導電性フィラー(a)のタップ密度は3.5~7.0g/cmであることが好ましい。タップ密度が上記範囲内である場合、アンテナ部4と電子部品2との優れた接続性が得られやすく、電気的な損失を抑制しやすい。
【0087】
導電性フィラー(b)の形状の例としては、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、球状、繊維状、不定形(多面体)等が挙げられるが、アンテナ部4と電子部品2との優れた接続性が得られる観点から、球状であることが好ましい。
【0088】
また、導電性フィラー(b)が球状である場合は、導電性フィラー(b)のタップ密度は4.0~7.0g/cmであることが好ましい。タップ密度が上記範囲内である場合、アンテナ部4と電子部品2との優れた接続性が得られやすく、電気的な損失を抑制しやすい。
【0089】
第二導電性組成物には、エポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。エポキシ樹脂硬化剤としては、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤などが挙げられる。これらは1種を単独で使用することもでき、2種以上を併用してもよい。
【0090】
フェノール系硬化剤としては、例えばフェノールノボラック、ナフトール系化合物等が挙げられる。
【0091】
イミダゾール系硬化剤としては、例えばイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールが挙げられる。
【0092】
アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0093】
カチオン系硬化剤の例としては、三フッ化ホウ素のアミン塩、P-メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ-n-ブチルホスホニウム-o,o-ジエチルホスホロジチオエート等に代表されるオニウム系化合物が挙げられる。
【0094】
硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.3~40質量部であることが好ましく、0.5~35質量部であることがより好ましい。硬化剤の含有量が0.3質量部以上である場合、導電性組成物が十分に硬化し、導電性が良好となって、アンテナ部4と電子部品2との優れた接続性が得られやすく、電気的な損失を抑制しやすい。
【0095】
第二導電性組成物には、発明の目的を損なわない範囲内において、消泡剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤等、公知の添加剤を加えることができる。
【0096】
第二導電性組成物の25℃における粘度は、溝部5への充填性の観点から、単一円筒形粘度計で測定する場合はロータNo.7を用いて10rpmで測定した粘度が600dPa・s以下であることが好ましく、500dPa・s以下であることがより好ましい。また、回転式レオメータで測定する場合は、MCR302を用いて、パラレルプレートの測定システムでプレートの直径25mmのパラレルプレート(PP25)を用いて、振り角gamma=0.1%、周波数f=1Hzで測定した複素粘度が25℃で2500Pa・s以下であることが好ましく、2000Pa・s以下であることがより好ましい。
【0097】
ディスペンス工法によって塗布する場合、溝部5への充填性の観点からノズル部を加温し第二導電性組成物の温度を80~180℃に調整することが好ましく、80℃~120℃に調整することがより好ましい。
【0098】
ディスペンス工法によって塗布する場合、第二導電性組成物の80℃における粘度は、溝部5への充填性の観点から、回転式レオメータで測定治具としてPP25を用いて、振り角gamma=0.1%、周波数f=1Hz、昇温速度5℃/minで測定した粘度が100Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以下であることがより好ましい。
【0099】
第二導電性組成物には、ボイドの発生を防止する観点から、溶剤を含まないことが好ましい。
【符号の説明】
【0100】
10・・・アンテナ一体型モジュール、1・・・基板、2・・・電子部品、3・・・封止層、4・・・アンテナ部、5・・・溝部、6・・・接続部、7・・・第一導電性組成物、8・・・第二導電性組成物、20・・・ガラスエポキシ基板、21・・・電極パッド、22・・・導電性組成物の硬化物
【実施例
【0101】
以下、本発明の内容を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。また、以下において「部」又は「%」とあるのは、特にことわらない限り質量基準とする。
【0102】
<第一導電性組成物>
[実施例、比較例]
表1に示す割合で各成分を配合して混合し、導電性組成物1を得た。使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
【0103】
・(メタ)アクリル系樹脂1:分子量=17000
・(メタ)アクリル系樹脂2:分子量=100000、共栄社化学(株)製「KC-1700P」
【0104】
・モノマー1:4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル
【0105】
・マスターバッチ1:平均粒子径100nmのポリブタジエンゴムからなる粒状樹脂成分をビスフェノールA型エポキシ樹脂に分散させたマスターバッチ、粒状樹脂成分の含有量は30質量%
・マスターバッチ2:平均粒子径100nmのシリコーンからなる粒状樹脂成分をビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させたマスターバッチ、粒状樹脂成分の含有量は25質量%
【0106】
・導電性フィラー1:銀粒子(平均粒子径=150nm)
・導電性フィラー2:銀被覆銅合金粉(平均粒子径=5μm、フレーク状、アスペクト比=2~10、タップ密度=5.8g/cm
・導電性フィラー3:銀被覆銅合金粉(平均粒子径=70μm、フレーク状、アスペクト比=2~10、タップ密度=5.5g/cm
【0107】
・ラジカル重合開始剤:2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル
・エポキシ樹脂硬化剤:四国化成工業株式会社製「2E4MZ(2-エチル-4-メチルイミダゾール)」
・溶剤:メチルエチルケトン(MEK)
【0108】
得られた導電性組成物1について、粘度、体積抵抗率、線膨張係数、塗膜の反り、及び密着性の評価を以下のとおり行った。評価結果は表1,2に示す。
【0109】
<粘度>
円錐平板型回転粘度計を用いて計測した。円錐平板型回転粘度計の測定はコーンプレート型粘度計(ブルックフィールド製 VICOMETER DV-II+Pro)コーンスピンドルCP52(コーン角度:3.0°、コーン半径:12mm)を用いて計測した。
【0110】
<体積抵抗率>
図3に示すように、銅箔で形成された電極パッド21が60mmの間隔をあけて両端に設けられたガラスエポキシ基板20上に、幅5mmのスリットを設けた厚さ55μmのポリイミドフィルムを、スリットの端部が両端の電極パッド21と重なるように貼り付けてマスキングした。その上に金属製スキージにて導電性組成物1を塗布し、100℃×10分、190℃で30分間加熱することにより硬化させ、ポリイミドフィルムを剥離し、長さ70mm、幅5mm、厚さ約40μmの硬化物22が両端の電極パッド21間を接続するように形成された基板20を得た。この硬化物サンプルにつき、テスターを用いて電極パッド間の抵抗値(R、Ω)を測定し、断面積(S、cm)と長さ(L、cm)から次式(1)により体積抵抗率(Ω・cm)を計算した。
【式1】
【0111】
【0112】
<線膨張係数>
得られた導電性組成物1をシリコーンの型に充填し、常温、大気圧下に48時間放置し、厚さ3mm、幅5mm、長さ8mmの試験片を得た。得られた試験片を、100℃で10分間加熱した後、190℃で30分間加熱することにより、試験片を硬化させた。得られた試験片について、昇温5℃/minの条件でTMA測定(TMA4000SE:NETZSCH製)を実施し、試験片の線膨張係数を測定した。なお、比較例2については、50℃から100℃における線膨張係数α1と、170℃から200℃における線膨張係数α2を表1に示した。
【0113】
<塗膜の反り>
得られた導電性組成物1を適宜溶剤で希釈し、基板(FR-4 アンクラッド板 横20cm×縦2cm×厚さ100μm)の表面に10μmの厚さでそれぞれスプレー塗布し、100℃で10分間加熱した後、190℃で30分間加熱して、導電性組成物1を硬化させた。得られた基板の横方向一端部を平面に固定し、もう一方の端部の平面からの距離を反り量(mm)として計測した。
【0114】
<密着性>
ASTM規格D3599に従い、クロスハッチ試験により測定した。
【0115】
【表1】


【0116】
評価結果は表1に示すとおりであり、比較例1,2は導電性フィラーの含有量が下限値未満である例であり、比較例1は体積抵抗率が劣っており、比較例2は体積抵抗率、及び塗膜の反りが劣っていた。
【0117】
比較例3は、粒状樹脂成分を含有しない例であり、密着性が劣っていた。
【0118】
<第二導電性組成物>
[実施例、比較例]
表2~5に示す割合で各成分を配合して混合し、導電性組成物2を得た。使用した各成分の詳細は以下のとおりである。
【0119】
・エポキシ樹脂(a):グリシジルアミン型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製「EP-3905S」、エポキシ当量=95g/eq
・エポキシ樹脂(b):グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、(株)ADEKA製「ED502」、エポキシ当量=320g/eq
・ダイマー酸型エポキシ樹脂:上記式(2)において、n1=7、n2=7、n4=4、n5=5のものを使用した。
【0120】
・導電性フィラー(a):銀コート銅粒子、D50=10μm、球状
・導電性フィラー(b):銀コート銅粒子、D50=8μm、球状
・導電性フィラー(c):銀コート銅粒子、D50=6μm、球状
・導電性フィラー(d):銀コート銅粒子、D50=5μm、球状
・導電性フィラー(e):銀粒子、D50=4μm、球状
・導電性フィラー(f):銀コート銅粒子、D50=3μm、球状
・導電性フィラー(g):銀粒子、D50=2μm、球状
・導電性フィラー(h):銀粒子、D50=1μm、球状
【0121】
・硬化剤(a):イミダゾール系硬化剤、四国化成工業(株)製「2E4MZ」
・硬化剤(b):フェノールノボラック系硬化剤、荒川化学工業(株)製「タマノル758」
【0122】
得られた導電性組成物2について、粘度、充填性、抵抗値の評価を以下のとおり行った。結果は表2~5に示す。
【0123】
<粘度>
JIS K7117-1に準拠し、単一円筒形回転粘度計(いわゆるB型又はBH型粘度計)でローターNo.7を用いて10rpmにおける粘度を測定した。
【0124】
<充填性>
幅100μm、深さ1300μmの溝が形成された基板を用意し、得られた導電性組成物2を、真空印刷工法により以下の印刷条件により溝に充填しサンプルを得た。そして、得られたサンプルを、80℃で60分間加熱し、さらに160℃で60分間加熱することにより硬化させた。得られたサンプルについて、硬化前、及び硬化後に、エクスロン・インターナショナル社製のX線透過装置「Y.Cheetah μHD」を用いて、以下の測定条件にてトレンチ部を観察し、ボイドの有無を確認した。ボイドが生じていないものは、充填性が優れているとして「○」と評価し、ボイドが生じていたものは、充填性が劣っているとして「×」と評価した。
<印刷条件>
印圧:0.5MPa
スキージ角度:10°
スキージ速度:15mm/秒
クリアランス:2.0mm
真空度:0.13kPa
ウレタンスキージ硬度:80度
<測定条件>
電圧:50kV
電流:80μA
電力:4W
【0125】
<体積抵抗率>
ガラスエポキシ基板上にメタル版を用いて導電性組成物2をライン印刷(長さ60mm、幅1mm、厚さ約100μm)し、80℃で60分間予備加熱した後、160℃で60分間加熱することにより本硬化させた。このペースト硬化物サンプルにつき、テスターを用いて両端の抵抗値を測定し、断面積(S、cm)と長さ(L、cm)から上記式(1)により体積抵抗率を計算した。サンプルは、ガラスエポキシ基板3枚に各5本のライン印刷を施して合計15本形成し、その平均値を求めた。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
評価結果は表2~5に示すとおりであり、比較例2-1はダイマー酸型エポキシ樹脂を含有しない例であり、充填性が劣っていた。また、比較例2-2はダイマー酸型エポキシ樹脂を上限値を超えて含有する例であり、抵抗値が劣っていた。
【0131】
比較例3-1は導電性フィラー(a)と導電性フィラー(b)とを併用しない例であり、抵抗値が劣っていた。また、比較例3-2は導電性フィラー(a)と導電性フィラー(b)との配合割合が所定範囲外である例であり、充填性が劣っていた。
【0132】
比較例4-1は導電性フィラーの合計量が下限値未満の例であり、抵抗値が劣っていた。また、比較例4-2は導電性フィラーの合計量が上限値を超える例であり、充填性が劣っていた。
【0133】
比較例5-1~5-4は導電性フィラーの平均粒子径が範囲外である例であり、比較例5-1及び比較例5-3は、充填性が劣っており、比較例5-2及び比較例5-4は抵抗値が劣っていた。
図1
図2
図3