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特許7482097ビームを形成して基地局装置と端末装置との間の通信の中継を行う中継装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特許-ビームを形成して基地局装置と端末装置との間の通信の中継を行う中継装置、制御方法、及びプログラム 図1
  • 特許-ビームを形成して基地局装置と端末装置との間の通信の中継を行う中継装置、制御方法、及びプログラム 図2
  • 特許-ビームを形成して基地局装置と端末装置との間の通信の中継を行う中継装置、制御方法、及びプログラム 図3
  • 特許-ビームを形成して基地局装置と端末装置との間の通信の中継を行う中継装置、制御方法、及びプログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ビームを形成して基地局装置と端末装置との間の通信の中継を行う中継装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/26 20090101AFI20240502BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240502BHJP
   H04B 7/145 20060101ALI20240502BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W16/28
H04B7/145
H04B7/15
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021151193
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043516
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌也
(72)【発明者】
【氏名】流田 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】五水井 一浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 龍司
【審査官】久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0068050(US,A1)
【文献】国際公開第2021/095181(WO,A1)
【文献】特開2020-010072(JP,A)
【文献】特開2009-044667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/145
H04B 7/15
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置であって、
前記端末装置からの所定の信号を測定しながら、当該所定の信号が到来する方向に向けてビーム幅を狭める制御を実行することにより、前記端末装置に向けられるビームを決定する決定手段と、
前記基地局装置または前記端末装置によって送信された信号を、ユーザデータの復号を行わずに前記ビームを用いて中継する中継手段と、
を有することを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記決定手段によって行われるビーム幅を狭める制御は、第1のビームに対応する第1の角度範囲を複数の第2の角度範囲に分割して、当該複数の第2の角度範囲のそれぞれに対応する複数の第2のビームで前記所定の信号を測定し、当該測定によって得られた前記所定の信号の無線品質に基づいて当該複数の第2のビームの一部を選択して、前記第1のビームよりビーム幅が狭くなったビームを特定することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記複数の第2のビームのうちの前記選択された前記一部を前記第1のビームとして、繰り返しビーム幅を狭める制御を実行する、ことを特徴とする請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記複数の第2のビームのうちの前記選択された前記一部のビーム幅より狭いビーム幅を設定できない場合に前記ビーム幅を狭める制御を停止する、ことを特徴とする請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記複数の第2のビームのうちの前記選択された前記一部のビーム幅が所定のビーム幅より狭い場合に前記ビーム幅を狭める制御を停止する、ことを特徴とする請求項3に記載の中継装置。
【請求項6】
前記所定の信号は復調参照信号である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項7】
前記中継装置は反射板であり、
前記中継手段は、前記基地局装置または前記端末装置によって送信されて前記反射板へ到来した信号を反射させて中継する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項8】
前記反射板はメタマテリアル反射板である、ことを特徴とする請求項7に記載の中継装置。
【請求項9】
前記中継装置は無線レピータであり、
前記中継手段は、前記基地局装置または前記端末装置によって送信されて前記無線レピータへ到来した信号を増幅して送出することによって中継する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項10】
基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置によって実行される制御方法であって、
前記端末装置からの所定の信号を測定しながら、当該所定の信号が到来する方向に向けてビーム幅を狭める制御を実行することにより、前記端末装置に向けられるビームを決定することと、
前記基地局装置または前記端末装置によって送信された信号を、ユーザデータの復号を行わずに前記ビームを用いて中継することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置に備えられたコンピュータに、
前記端末装置からの所定の信号を測定しながら、当該所定の信号が到来する方向に向けてビーム幅を狭める制御を実行することにより、前記端末装置に向けられるビームを決定させ、
前記基地局装置または前記端末装置によって送信された信号を、ユーザデータの復号を行わずに前記ビームを用いて中継させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザデータの復号処理を伴わずに無線信号を中継する中継伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信において、通信可能なエリアを拡大するために、無線レピータが用いられている。無線レピータは、受信した信号を増幅して(必要に応じて周波数変換して)送出することにより、例えば基地局装置が送信した信号を、より遠方やビル陰などの電波が届きにくいエリアに到達させることができる。なお、ビル陰などのエリアに対しては、無線レピータに代えて反射板を用いることもできる。
【0003】
基地局装置は、一般的に、複数のビームを形成して、エリア内の端末装置に対して十分に高速な通信サービスを提供するように構成されうる。この場合、無線レピータは、基地局装置によって形成された複数のビームのうちのいずれかで送信される信号を受信して送出する。一方、この場合に、無線レピータが無指向性アンテナで中継を行うと、中継による利得が不十分であることにより、エリア拡張効果が不十分になりうる。このため、無線レピータがそれぞれ異なる方向に向けられた複数のビームを形成して信号を中継することが想定される。また、反射板を用いる場合も、どの方向に信号を反射させるかを適切に設定することが重要となる。なお、反射板は、物理的な向きを変更することによって信号を反射させる方向を変更することができるが、メタマテリアル反射板(非特許文献1参照)を用いることにより、物理的な向きを変更せずに、様々な方向に電波を反射させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Shimin Gong, et al.、「Toward Smart Wireless Communications via Intelligent Reflecting Surfaces: A Contemporary Survey」、IEEE COMMUNICATIONS SURVEYS & TUTORIALS、VOL. 22、NO. 4、2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような、無線レピータや反射板が様々な方向に電波を出力することができる場合、無線レピータや反射板などの、ユーザデータの復号処理を行わない中継装置が、端末装置の通信の中継に適したビームを特定して使用することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ユーザデータの復号処理を行わない中継装置において基地局装置と端末装置との通信の中継に使用するビームを特定可能とする技術を提供する。
【0007】
本発明の一態様による中継装置は、基地局装置と端末装置との間の通信を中継する中継装置であって、前記端末装置からの所定の信号を測定しながら、当該所定の信号が到来する方向に向けてビーム幅を狭める制御を実行することにより、前記端末装置に向けられるビームを決定する決定手段と、前記基地局装置または前記端末装置によって送信された信号を、ユーザデータの復号を行わずに前記ビームを用いて中継する中継手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射板の電波反射方向の設定を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】中継装置のビーム決定方法を概説する図である。
図3】中継装置の構成例を示す図である。
図4】中継装置によって実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、基地局装置101と端末装置141及び端末装置142との間の通信を中継装置121が中継する中継通信システムである。本無線通信システムは、中継装置121が、基地局装置101から送信されて自装置へ到来した信号を端末装置141又は端末装置142へ中継し、また、端末装置141又は端末装置142から送信されて自装置へ到来した信号を基地局装置101へ中継する無線中継伝送システムである。なお、中継装置121は、端末装置141及び端末装置142に向けてビーム131及びビーム132を形成して中継伝送を行う。なお、中継装置121は、一例において、無線レピータであり、受信した信号を増幅して出力するように構成される。この場合、中継装置121は、例えば複数のアンテナを用いて、ビーム131及びビーム132を形成し、そのビームを用いて中継を行うように構成されうる。また、別の例において、中継装置121は反射板でありうる。中継装置121は、例えば、物理的に向きを変更してビーム131の方向又はビーム132の方向に電波を反射出力するように構成されうる。また、中継装置121は、メタマテリアル反射板であってもよい。メタマテリアル反射板は、例えば、多数の受動素子がアレイ状に配置され、その多数の受動素子を同時に位相制御することにより又は導体パターンや誘電率を調整することにより、反射板の物理的な姿勢制御を行わずに、入射された電波を任意の方向に反射させることができるようにした反射板である。詳細については非特許文献1に記載されているため、ここでの説明については省略する。中継装置121が反射板である場合、入射された信号の増幅は行われない。
【0012】
中継装置121は、基地局装置101と端末装置141及び端末装置142との間の信号を、ユーザデータの復号処理を行わずに転送するに過ぎず、このため、基地局装置101と端末装置141及び端末装置142は、相互に直接接続している場合と同じ通信処理を行う。
【0013】
上述のように、本実施形態では、中継装置121は、端末装置141及び端末装置142の方向に向けて、それぞれビーム131及びビーム132を形成する。このとき、ビームが適切に形成されていないと、端末装置141及び端末装置142に対して十分な無線品質での通信サービスを提供することができないことが想定される。このため、本実施形態では、中継装置121が、通信の中継対象とする端末装置141及び端末装置142に向けて適切にビームを形成するための手法を提供する。
【0014】
このようなビームの形成のため、本実施形態の中継装置121は、端末装置141や端末装置142から送出された所定の信号の無線品質(例えば受信電力、信号対雑音比(SNR)、信号対雑音及び干渉比(SINR))を測定する機能を有する。なお、所定の信号は、例えば、端末装置141及び端末装置142から定期的に送信される復調参照信号(DMRS)でありうるが、無線品質を特定可能な任意の他の信号であってもよい。中継装置121は、例えば、基地局装置101から端末装置141及び端末装置142の情報を取得する。例えば、中継装置121は、端末装置141及び端末装置142が所定の信号(例えばDMRS)を送信する際に用いるリソースなどの情報を、基地局装置101から送出された信号に基づいて特定し、記憶しうる。中継装置121は、例えば、基地局装置101から送出されたマスタインフォメーションブロック(MIB)、システムインフォメーションブロック(SIB)、及び、無線リソース制御(RRC)メッセージを復号することにより、端末装置141及び端末装置142の情報を取得しうる。中継装置121は、所定の信号の測定を行いながら、その所定の信号を受信する際に用いるビーム幅を狭める制御を実行し、無線品質が良好な方向に向けて十分に狭いビーム幅のビームを向けるようにする。これにより、端末装置141や端末装置142からの所定の信号が到来する方向にビームを向けることができ、そのビームを用いて効果的な中継伝送を行うことが可能となる。
【0015】
一例において、中継装置121は、例えば、図2のようにして、ビーム幅を狭める制御を実行しうる。例えば、中継装置121は、図2の(A)に示すように、初期的に、形成可能なビームの最大の角度範囲(例えば180°)を2つに分割して、分割後の角度範囲にそれぞれが対応する2つのビーム201及びビーム202を、例えば時間的に切り替えて形成する。そして、中継装置121は、ビーム201及びビーム202のそれぞれにおいて、端末装置141からの所定の信号を測定する。この処理によれば、2つのビームのうちのいずれかにおいて、相対的に良好な無線品質の測定値を得ることができる。そして、中継装置121は、相対的に良好な無線品質の測定値が得られたビームとして、ビーム202を選択する。そして、中継装置121は、さらに、その選択によって特定されたビーム202の角度範囲を2つに分割して、分割後の角度範囲にそれぞれが対応する2つのビーム211及びビーム212を形成する。そして、同様に、ビーム211及びビーム212を用いて端末装置141からの所定の信号を測定し、その無線品質の測定値が相対的に良好なビームを選択する。ここでは、中継装置121は、ビーム211を選択する。そして、中継装置121は、そのビーム211の角度範囲をさらに2つに分割して、分割後の角度範囲にそれぞれ対応するビーム221及びビーム222を形成して、さらに測定を継続する。中継装置121は、このような処理を繰り返し実行して、それにより、例えば、最も狭いビーム幅のビームが形成された場合など、それ以上狭いビーム幅を設定できない場合に、ビーム幅を狭める制御を停止する。また、中継装置121は、例えば、ビーム幅が所定のビーム幅より狭くなった場合に、ビーム幅を狭める制御を停止してもよい。すなわち、十分な利得が得られる状態となったことに応じて、ビーム幅を狭める制御を停止することができればよく、その基準は必ずしも一意に定まらなくてもよい。そして、中継装置121は、その停止時に特定していたビームで端末装置141の通信を中継するようにしうる。なお、端末装置142に対しても同様の処理が行われ、対応するビームが形成されうる。
【0016】
なお、図2は一例であり、例えば、分割後のビームは、相互に重複する角度範囲に対応してもよい。すなわち、図2に示す各ビームより、所定の角度だけ広いビーム幅を有するビームが用いられてもよい。例えば、ビーム201とビーム202は、それぞれ100°の角度範囲に対応するビームとして形成され、その角度範囲の端部の20°の範囲において重複するように設定されてもよい。また、中継装置121は、例えば、良好な無線品質の測定値が得られたビームの角度範囲を3つ以上に分割して、その分割された角度範囲に対応する3つ以上のビームを用いて、その後の測定を行うようにしてもよい。なお、3つ以上のビームが形成された場合、そのうちの一部(2つ以上)が選択されるようにしてもよい。その後、選択された一部のビームに対応する角度範囲がさらに分割され、同様にビームの選択が繰り返されうる。例えば、良好な無線品質の測定値が得られたビームの角度範囲を5つに分割し、その5つの角度範囲にそれぞれ対応する5つのビームによって測定を実行し、その測定の結果として、3つのビームが選択されるようにしてもよい。なお、このときに、形成したビームの一部として無線品質の測定値が上位の方から所定数のビームを選択するようにしてもよいし、無線品質の測定値が所定値を上回るビームが選択されるようにしてもよい。なお、複数のビームが選択される場合、相互に隣接するビームが選択されるようにし、隣接しないビームについては選択されないようにしてもよい。すなわち、連続する角度範囲を特定するように、複数に分割されたビームの中からその一部の1つ以上のビームが選択されるようにしてもよい。
【0017】
上述のように、徐々にビーム幅を狭める制御を行う場合、最初は広い角度範囲を大まかに分割して所定の信号の無線品質を測定し、十分な無線品質で所定の信号が受信されなかった角度範囲については除外することにより、少ない測定回数で、それ以上の測定が不要な角度範囲を特定することが可能となる。また、この処理を繰り返し実行することにより、効率的にビームの方向及びビーム幅を決定することができる。例えば、最大の角度範囲を32分割したビームが特定される場合、最初から32分割すると32通りの測定が必要となるが、上述のように2分割を繰り返す手法では、10通りの測定のみで足りることとなる。
【0018】
(装置構成)
続いて、上述のような処理を行う中継装置121の構成について、図3を用いて説明する。中継装置121は、例えば、中継回路301とコントローラ302とを有する。
【0019】
中継回路301は、例えば、非再生中継を行うための増幅器と周波数変換器とを含んで構成される。この場合、中継回路301は、例えば、複数のアンテナを含み、それらのアンテナのそれぞれから出力される信号にアンテナウェイトを乗じて出力することにより、任意の方向及びビーム幅の所定のビームを設定して信号を送出することができる。また、複数のアンテナから受信された信号に対してアンテナウェイトを乗じて加算することにより、任意の方向及びビーム幅の所定のビームを設定して、高いアンテナ利得により到来する信号の無線品質を改善することができる。また、中継回路301は、例えば、反射板であってもよく、任意の反射方向及びビーム幅のビームを形成して電波を反射させる機能を有する。例えば、中継回路301は、設定可能な方向で電波が反射されるように反射板の向きを物理的に変更する機能を有しうる。また、中継回路301は、反射板の向きは固定されたメタマテリアル反射板であってもよい。この場合、中継回路301は、反射板内の多数の受動素子における位相制御などによって、設定可能な方向及びビーム幅で電波を反射する機能を有する。
【0020】
コントローラ302は、中継装置121の全体の処理や、上述のようなビームの方向及びビーム幅を決定する処理を実行する。コントローラ302は、例えば1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のメモリにより構成され、1つ以上のメモリに記憶されたコンピュータが解釈可能なプログラム命令が1つ以上のプロセッサにより実行されることにより、各種処理が実行される。コントローラ302は、例えば、中継回路301のアンテナや導体構造を介して、基地局装置101から端末装置141及び端末装置142の情報を取得する。例えば、コントローラ302は、端末装置141及び端末装置142が所定の信号(例えばDMRS)を送信する際に用いるリソースなどの情報を、基地局装置101から送出された信号に基づいて特定し、記憶しうる。コントローラ302は、例えば、基地局装置101から送出されたマスタインフォメーションブロック(MIB)、システムインフォメーションブロック(SIB)、及び、無線リソース制御(RRC)メッセージを復号することにより、端末装置141及び端末装置142の情報を取得しうる。コントローラ302は、例えば、中継回路301のアンテナや導体構造を介して、到来した電波が所定の信号を運ぶ電波であるか否かを判定し、及び所定の信号であった場合にはその信号の送信元の端末装置を特定する。そして、コントローラ302は、端末装置ごとに、上述のような処理を実行して、所定の信号を受信しながらビーム幅を狭める制御を実行して、形成した各ビームでの所定の信号の無線品質が良好となる、十分にビーム幅の狭いビームを特定する。そして、コントローラ302は、例えば、メモリにその特定したビームに関する設定値(例えばアンテナウェイトやメタマテリアルの位相情報等)を記憶し、端末装置の通信の際に、その端末装置に対応する設定値を用いて電波の中継を行うように中継回路301を制御する。
【0021】
(処理の流れ)
続いて、図4を用いて、本実施形態に係る中継装置121によって実行される処理の流れの例について説明する。ここでは、図2のように、ビームを形成可能な角度範囲を半分に分割して所定の信号(例えばDMRS)の無線品質を測定し、良好な無線品質を達成した方のビームを特定して、そのビームの角度範囲をさらに半分に分割して同様の処理を繰り返す場合の例について説明する。なお、ビーム幅を狭める制御は、上述のような変形が可能であるが、ここでは説明を省略する。本処理は、例えば、中継装置121が、コントローラ302によって、端末装置の情報を(例えばRRCメッセージを復号することにより)取得する(S401)ことによって開始される。
【0022】
中継装置121は、ビームを設定可能な角度範囲の最小値を変数「low」の値とし、最大値を変数「high」の値とする(S402)。そして、変数「mid」を、「low」と「high」とによって規定される範囲の中心を示す角度の値に設定する(S403)。例えば、中継装置121が反射板である場合に、反射板の反射面の法線方向が90°であり、反射面を含む直線方向を、0°及び180°とする。この場合、「low」が0°に設定され、「high」が180°に設定され、「mid」は90°と算出される。このとき、「mid」によって規定される分割後の角度範囲(low~mid、及び、mid~high)に対応するビームを中継装置121が形成可能でない場合(S404でNO)、その時点における変数「low」から変数「high」までの角度範囲に対応するビームを使用することを決定し(S410)、処理を終了する。一方で、「mid」によって規定される分割後の角度範囲に対応するビームを中継装置121が形成可能である場合(S404でYES)、その分割後の角度範囲に対応する2つのビームをそれぞれ用いて、端末装置から送出された所定の信号の無線品質を測定する(S405、S406)。なお、この測定は、例えばS406から先に行われてもよい。また、中継装置121は、S405とS406の測定を並行して行うことが可能な場合には、これらの測定を並行して行ってもよい。なお、測定される無線品質は、例えば受信電力(所定の信号が参照信号の場合、例えば参照信号受信電力(RSRP))でありうるが、SNRやSINRなどであってもよい。
【0023】
そして、中継装置121は、2つのビームのいずれにおいて、より良好な無線品質を得ることができたかを判定する(S407)。そして、中継装置121は、low~midの角度範囲に対応するビームにおいてより良好な無線品質が得られた場合(S407でYES)、「mid」の値を変数「high」に代入して(S408)、処理をS403へ戻す。なお、この場合、変数「low」については変更しない。例えば、「mid」の値が90°であり、変数「high」が180°である場合、変数「high」が90°に変更され、0°~90°の角度範囲でS403以降の処理が再度実行される。一方、中継装置121は、mid~highの角度範囲に対応するビームにおいてより良好な無線品質が得られた場合(S407でNO)、「mid」の値を変数「low」に代入して(S409)、処理をS403へ戻す。この場合、変数「high」については変更しない。例えば、「mid」の値が90°であり、変数「low」が0°である場合、変数「low」が90°に変更され、90°~180°の角度範囲でS403以降の処理が再度実行される。これにより、良好な無線品質が得られたビームの角度範囲がさらに分割されて、徐々にビーム幅が狭められることとなる。
【0024】
なお、S404では、ターゲットとなる利得が得られるか否かを判定してもよい。例えば、端末装置及び基地局装置と中継装置との間の距離に基づく伝搬損失と、通信の目標品質とに基づいて、ターゲットの利得が決定され、その利得を得られるようなビームが形成された時点で、図4の処理が終了されてもよい。
【0025】
以上のような処理により、中継装置から端末装置に向けられるビームの方向及びビーム幅を適切に設定することが可能となる。
【0026】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4