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特許7482106分取液体クロマトグラフィを制御する方法、この方法を実行するための分取液体クロマトグラフィシステムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】分取液体クロマトグラフィを制御する方法、この方法を実行するための分取液体クロマトグラフィシステムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/80 20060101AFI20240502BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20240502BHJP
   G01N 30/95 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
G01N30/80 Z
G01N30/02 Z
G01N30/95
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021503215
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 FR2019050823
(87)【国際公開番号】W WO2019193300
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】1853044
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520388538
【氏名又は名称】インターチム エス アー
【氏名又は名称原語表記】INTERCHIM S.A.
【住所又は居所原語表記】211B AVENUE J.F KENNEDY, 03100 MONTLUCON, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボッホ、リオネル
(72)【発明者】
【氏名】シャルボノー、ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】チャプラ、アラン
(72)【発明者】
【氏名】デクアイレ、ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】メルシェ、オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】プルシュレス、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ケタン、ニコラ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-512029(JP,A)
【文献】特開2013-213777(JP,A)
【文献】特開2016-095322(JP,A)
【文献】特開2004-045236(JP,A)
【文献】特開2012-233774(JP,A)
【文献】特開2008-292378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0247625(US,A1)
【文献】米国特許第07686959(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0050471(US,A1)
【文献】特開2017-125686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分取液体クロマトグラフィを制御する方法であって、
(a)薄層クロマトグラフィ(TLC)および高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の中から分析液体クロマトグラフィ法を、コンピュータのユーザインターフェースを用いて選択するステップと、
(b)被精製物について、ステップ(a)で選択された方法により得られる分析液体クロマトグラフィデータを入力するステップと、
(c)前記分取液体クロマトグラフィを実行するためにユーザが利用可能な分離ツールの表にアクセスするステップと、
(d)前記分析液体クロマトグラフィデータおよび利用可能な分離ツールの表に基づき、前記表から最適な分離ツールを選択し、前記選択された分離ツールに対する分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出するステップと、
を含み、
ステップ(a)~(d)のうちの少なくとも一部は、プロセッサおよび該プロセッサに接続された表示画面を含むコンピュータによって実行される、方法。
【請求項2】
前記被精製物の量を入力するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択された分離ツールへの前記被精製物の注入モードを選択するステップをさらに含み、前記注入モードは、溶液注入または固体投入から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ユーザにより前記算出を確認するステップと、前記確認後に、前記選択された分離ツールで前記分取液体クロマトグラフィを開始するステップと、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ユーザによる前記分取液体クロマトグラフィの加速の実行を含み、ステップ(d)は、前記選択された分離ツールが実装される分取液体クロマトグラフィシステムの最大流量および限界圧力を考慮しながら、最適化された操作条件を算出することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)で選択された方法は、薄層クロマトグラフィ(TLC)であり、ステップ(b)は、TLC板で得られた分析データを入力することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(d)で実行される選択および算出では、前記TLC板の保持係数(Rf)の値、
0.01<Rf<0.07、
0.08<Rf<0.4、
0.4<Rf<0.9、
0.9<Rf<1.0、
に応じた異なる4つのケースが考慮される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
同一の体積差係数(ΔCV)が、前記4つのケースの領域それぞれで異なる保持係数の差(ΔRf)に対応するという事実を考慮して、溶出勾配の形状を体積差係数(ΔCV)の各値に適合させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(d)で実行される選択および算出では、前記TLC板全体に広がる1つ以上またはすべての対象化合物が考慮される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(d)では、前記分取液体クロマトグラフィで使用される溶媒の溶出力の差(Δε°)と、溶媒の混合物の組成に応じた該混合物の溶出力の非線形変化とが考慮される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記TLC板の画像を取得し、前記画像からユーザの携帯機器により分離された化合物を自動検出することを含み、ステップ(b)における分析データの入力は、前記携帯機器からデータをインポートすることを含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(a)で選択された方法は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)であり、前記選択は、
順相液体クロマトグラフィ(NPLC)、
逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)、
親水性相互作用クロマトグラフィ(HILIC)、
疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)、
の中からクロマトグラフィ法を選択することをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)で入力される前記分析液体クロマトグラフィデータは、参照分離ツールで得られた分析液体クロマトグラフィデータである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記利用可能な分離ツールの表は、前記参照分離ツールと同一の分離ツールを含み、ステップ(c)は、該分離ツールを選択し、該分離ツールに対する分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記利用可能な分離ツールの表は、前記参照分離ツールと同一の分離ツールを含まず、ステップ(d)は、前記参照分離ツールの固定相と前記利用可能な分離ツールの固定相の類似度を比較して、前記参照分離ツールと異なる固定相を有する分離ツールを選択、または、前記参照分離ツールと同じ固定相を有する分離ツールを選択し、注入回数を最小限に抑えつつ、複数回注入モードにおける分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
他の分析条件を決定するために、イソクラティック溶出での高速液体クロマトグラフィまたは薄層クロマトグラフィによる分離を算出するステップを含む、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(d)における選択および算出では、強溶媒毎に固有の溶出力が考慮される、請求項6~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
複数の分離ツールで分離試験を行い、前記複数の分離ツールの中から最適な分離能力を有する分離ツールを選択することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記利用可能な分離ツールの表は、前記最適な分離能力を有する分離ツールと同一の分離ツールを含み、ステップ(d)は、該分離ツールを選択し、該分離ツールに対する分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記利用可能な分離ツールの表は、前記最適な分離能力を有する分離ツールと同一の分離ツールを含まず、ステップ(d)は、前記最適な分離能力を有する分離ツールと同じ固定相を有する分離ツールを選択し、注入回数を最小限に抑えつつ、複数回注入モードにおける分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
2つの異なる分析液体クロマトグラフィ法および/またはモードを用いて、一連のステップ(a)~(d)を少なくとも2回連続実行することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記連続実行は、1回目のステップ(a)~(d)で分取液体クロマトグラフィのソリューションを同定できなかった場合に自動で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法の各ステップを実行するように構成されたプロセッサ、コンピュータのユーザインタフェース、および表示画面を含むコンピュータと、
移動相タンク、ポンプ、注入器、分離ツール、検出器、データレコーダ、およびフラクションコレクタを含み、前記コンピュータにより制御される分取液体クロマトグラフィシステムと、を備える、分取液体クロマトグラフィシステム。
【請求項24】
コンピュータに
(a)薄層クロマトグラフィ(TLC)および高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の中から分析液体クロマトグラフィ法を、コンピュータのユーザインターフェースを用いた選択を受信するステップと、
(b)被精製物について、ステップ(a)で選択された方法により得られる分析液体クロマトグラフィデータの入力を受信するステップと、
(c)前記分取液体クロマトグラフィを実行するためにユーザが利用可能な分離ツールの表にアクセスするステップと、
(d)前記分析液体クロマトグラフィデータおよび利用可能な分離ツールの表に基づき、前記表から最適な分離ツールを選択し、前記選択された分離ツールに対する分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧から高圧の分取液体クロマトグラフィを制御する方法、この方法を実行するための分取液体クロマトグラフィシステムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分取液体クロマトグラフィは、化合物の混合物を分離、精製、または濃縮する方法であり、最適化には、使用する分離ツール(内径、長さ、固定相、粒子径など)や操作条件(移動相、溶出の種類、流量、温度、注入モード、注入量など)に関する特定の数のパラメータを選択する必要がある。これらのパラメータの選択は、多くの場合、所望の純度、所望の精製物の量、コスト、および精製時間の間で生産性の妥協に帰着する。
【0003】
この選択を行うため、分析クロマトグラフィシステムを用い、同じ性質の試料について得られた分離結果を使用し、分取液体クロマトグラフィに移行することが知られている。「スケールアップ」では、分析液体クロマトグラフィで処理される試料の量と分取液体クロマトグラフィで処理される試料の量との間の乗数係数を定義する。
【0004】
しかしながら、分析液体クロマトグラフィのシステムは、固定相や操作条件の点で分取液体クロマトグラフィのシステムとは大きく異なり、この移行は比較的複雑である。そのため、この移行を容易にするように計算ツールが設計されてきた。
【0005】
米国特許第7686959号明細書には、薄層クロマトグラフィ(TLC)データを使用して分取クロマトグラフィの操作条件を計算するためのコンピュータによって実施される方法が記載されている。より具体的には、この文献には、薄層クロマトグラフィから、精製される試料の2つの化合物の移動率Rf1、Rf2を計算すること、それぞれの移動率から、化合物のそれぞれのカラム体積CV1、CV2を計算すること(カラム体積は、それぞれの移動率の逆数に等しい)、また、カラム体積CV1、CV2の差として定義されるカラム係数ΔCVを計算することが教示されている。ただし、この係数ΔCVはカラム毎に固有であり、最適なカラムを決定するには多数の計算が必要である。さらに、この方法では、ユーザの介入(データ入力)が多数必要であり、ユーザがクロマトグラフィについて十分な知識を持っていることを前提としている。
【0006】
しかしながら、分取液体クロマトグラフィ精製の実施を担当する操作者が必ずしもクロマトグラフィの専門家であるとは限らないため、より自動化された、操作者による最小限の介入しか必要としない、分取液体クロマトグラフィを制御する方法、この方法を実行するための分取液体クロマトグラフィシステムおよびプログラムを提供することが有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7686959号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、期待される結果に応じて最適かつ十分な分離ツールおよび精製条件を決定するために手動で入力するデータの量を最小限に抑えながら、クロマトグラフィの初心者であるユーザによって実施され得る分取液体クロマトグラフィを制御する方法を設計することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明は、分取液体クロマトグラフィを制御する方法であって、
(a)薄層クロマトグラフィ(TLC)および高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の中から分析液体クロマトグラフィ法を選択するステップと、
(b)被精製物について、ステップ(a)で選択された方法により得られる分析液体クロマトグラフィデータを入力するステップと、
(c)分取液体クロマトグラフィを実行するためにユーザが利用可能な分離ツールの表にアクセスするステップと、
(d)分析液体クロマトグラフィデータおよび利用可能な分離ツールの表に基づき、上記表から最適な分離ツールを選択し、選択された分離ツールに対する分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出するステップと、を含み、
ステップ(a)~(d)のうちの少なくとも一部は、プロセッサおよび該プロセッサに接続された表示画面を含むコンピュータによって実行される方法を提供する。このステップには、特に適切な勾配プロファイルの決定が含まれる。
【0010】
「分離ツール」は、固定相を含むカラム、カートリッジ、またはその他のクロマトグラフィ装置を意味すると解釈される。
【0011】
本方法は、精製物の量を受け取るステップをさらに含む。
【0012】
一実施形態によると、本方法は、選択された分離ツールへの被精製物の注入モードを選択するステップをさらに含み、注入モードは、溶液注入または固体投入から選択される。
【0013】
有利な方法では、本方法は、ユーザにより上記の算出を確認するステップと、確認後に、選択された分離ツールで分取液体クロマトグラフィを開始するステップと、を含む。
【0014】
一実施形態によると、本方法は、ユーザによる分取液体クロマトグラフィの加速の誘起を含む。ステップ(d)は、選択された分離ツールが実装される分取液体クロマトグラフィシステムの最大流量および限界圧力を考慮しながら、最適化された操作条件を算出することを含む。
【0015】
一実施形態によると、ステップ(a)で選択された方法は、薄層クロマトグラフィ(TLC)であり、ステップ(b)は、TLC板で得られた分析データを入力することを含む。
【0016】
好ましくは、ステップ(d)で実行される選択および算出では、TLC板の保持係数Rf値、
0.01<Rf<0.07、
0.08<Rf<0.4、
0.4<Rf<0.9、
0.9<Rf<1.0、
に応じた異なる4つのケースが考慮される。
【0017】
特に有利な方法では、本方法は、同一の体積差係数ΔCVが、上記の4つの領域それぞれで異なる保持係数の差ΔRfに対応するという事実を考慮して、溶出勾配の形状を体積差係数ΔCVの各値に適合させることを含む。
【0018】
好ましくは、ステップ(d)で実行される選択および算出では、TLC板全体に広がる1つ以上またはすべての対象化合物が考慮される。
【0019】
有利な方法では、ステップ(d)では、分取液体クロマトグラフィで使用される溶媒の溶出力の差と、溶媒の混合物の組成に応じた該混合物の溶出力の非線形変化とが考慮される。
【0020】
一実施形態によると、本方法は、TLC板の画像を取得し、画像からユーザの携帯機器により分離された化合物を自動検出することを含み、ステップ(b)における分析データの入力は、携帯機器からデータをインポートすることを含む。
【0021】
一実施形態によると、ステップ(a)で選択された方法は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)であり、上記選択は、
順相液体クロマトグラフィ(NPLC)、
逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)、
親水性相互作用クロマトグラフィ(HILIC)、
疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)、
の中からクロマトグラフィ法を選択することをさらに含む。
【0022】
この場合、ステップ(b)で入力される分析液体クロマトグラフィデータは、参照分離ツールで得られた分析液体クロマトグラフィデータであり得る。
【0023】
一実施形態によると、利用可能な分離ツールの表は、参照分離ツールと同一の分離ツールを含み、ステップ(d)は、該分離ツールを選択し、該分離ツールに対する分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出することを含む。
【0024】
別の方法では、利用可能な分離ツールの表は、参照分離ツールと同一の分離ツールを含まず、ステップ(c)は、参照分離ツールの固定相と利用可能な分離ツールの固定相の類似度を比較して、参照分離ツールと異なる固定相を有する分離ツールを選択、または、参照分離ツールと同じ固定相を有する分離ツールを選択し、注入回数を最小限に抑えつつ、複数回注入(またはマルチラン)モードにおける分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出することを含む。
【0025】
一実施形態によると、本方法は、他の分析条件を決定するために、イソクラティック溶出での高速液体クロマトグラフィまたは薄層クロマトグラフィによる分離を算出するステップを含む。
【0026】
有利な方法では、ステップ(d)における選択および算出では、強溶媒毎に固有の溶出力が考慮される。
【0027】
一実施形態によると、本方法は、複数の分離ツールでスクリーニング分離試験を行い、複数の分離ツールの中から最適な分離能力を有する分離ツールを選択することを含む。この試験は、薄層クロマトグラフィまたは高速液体クロマトグラフィのいずれにおいても、ステップ(b)で入力し得る分析データが存在しない場合に実施される。
【0028】
一実施形態によると、利用可能な分離ツールの表は、上記の最適な分離能力を有する分離ツールと同一の分離ツールを含み、ステップ(d)は、該分離ツールを選択し、該分離ツールに対する分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出することを含む。
【0029】
別の方法では、利用可能な分離ツールの表は、上記の最適な分離能力を有する分離ツールと同一の分離ツールを含まず、ステップ(d)は、最適な分離能力を有する分離ツールと同じ固定相を有する分離ツールを選択し、注入回数を最小限に抑えつつ、複数回注入モードにおける分取液体クロマトグラフィ操作条件を算出することを含む。
【0030】
本発明の一実施形態によると、本方法は、2つの異なる分析液体クロマトグラフィ法および/またはモードを用いて、一連のステップ(a)~(d)を少なくとも2回連続実行することを含む。
【0031】
特に有利な方法では、上記連続実行は、1回目のステップ(a)~(d)で分取液体クロマトグラフィのソリューションを同定できなかった場合に自動で行われる。
【0032】
本発明の別の目的は、上述した方法を実行するためのシステムである。
【0033】
本システムは、上述した方法の各ステップを実行するように構成されたプロセッサ、ユーザインタフェース、および表示画面を含むコンピュータと、
移動相タンク、ポンプ、注入器、分離ツール、検出器、データレコーダ、およびフラクションコレクタを含み、上記コンピュータにより制御される分取液体クロマトグラフィシステムと、を備える。
【0034】
好ましくは、上述の制御方法は、コンピュータプログラムが実行される処理ユニットとメモリを備えるPC型コンピュータなど、制御方法のステップを実行する手段を含む処理装置によって実施される。
【0035】
このコンピュータプログラムは、特に、上述の方法のステップを実行することを可能にする1つまたは複数のアルゴリズムを含む。
【0036】
本発明の他の特徴および利点は、以下の添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明によるシステムの動作を示す論理図である。
図2】TLC板で得られた分離を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明により、特に薄層またはHPLC(高速液体クロマトグラフィまたは高圧液体クロマトグラフィ)カラムでの順相、逆相または他の分析クロマトグラフィ分析から、分取液体クロマトグラフィによる可能な限り最良の精製が可能となる。
【0039】
この分取液体クロマトグラフィは、低圧から高圧まで実施することができ、特に、フラッシュクロマトグラフィ、MPLC(中圧液体クロマトグラフィ)およびHPLCが含まれる。実行圧力は、使用するクロマトグラフィシステム、特に分離ツールが耐えることができる圧力によってのみ制限される。「低圧」とは、一般に、数バールから数十バールのオーダーの圧力を意味すると解釈される。「高圧」とは、一般に、数十バールから数百バール、またはそれ以上の圧力を意味すると解釈される。
【0040】
上記の目的のため、本発明は、ユーザを分析データの提供から分取液体クロマトグラフィを実施可能とする条件の定義までガイドするコンピュータによって実施される方法を提供する。すべてのステップは、ユーザにデータの入力や選択を求めることなく、自動で実行することができる。
【0041】
したがって、本方法は、クロマトグラフィの初心者であるユーザにとって特に興味深いものである。
【0042】
しかしながら、ユーザがクロマトグラフィにある程度の専門知識を持っている場合でも、操作条件の決定に要する時間を短縮することができる点で、この方法は依然として有利である。さらに、本方法は、ユーザによって直接実行されるステップを含んでもよく、これにより、ユーザは、使用されるアルゴリズムと対話することができる(エキスパートモード)。
【0043】
本方法は、ユーザが利用可能な分離ツールの表にアクセスすることを含む。この表は、例えば、ユーザのストックにあるすべてのツールをリスト化したデータベースの形式であり、ツールの主な特性(ツールの種類(カラム、カートリッジ等)、ツールの構成材料(プラスチック、ステンレス鋼等)、寸法(内径、幅等)、固定相の性質、固定相の粒径、固定相の製造元または供給元など)に対応するフィールドを含む。以下、説明の簡潔化のため「カラム」という用語を使用するが、使用する分離ツールの種類に関して制限はない。特に有利な方法では、上述の調製ツールにより、異なるクロマトグラフィ技術、特に順相および/または逆相で異なる圧力(低圧から高圧まで)で実施される技術を実行することができる。
【0044】
本方法は、有利には、出願人によって販売されているクロマトグラフィシステム(商品名puriFlashTM)に適用することができるが、他のシステムに適用してもよい。これらのシステムは、通常、移動相タンク、ポンプ、注入器、分離ツール、検出器、データレコーダ、およびフラクションコレクタを備える。このようなシステムは当業者にとって周知であり、本文では詳細には説明しない。
【0045】
本方法は、ユーザが利用可能なクロマトグラフィシステム(または装置)の表へのアクセスを含み得る。本方法では、最適なクロマトグラフィシステムを提供するため、例えば達成する純度の観点から、生成物の発展段階に応じて、ユーザが表明したニーズが考慮される。システムの定義では、装置のドウェルボリュームと必要なポンプ出力が考慮される。したがって、本方法により、精製物および所望の純度に応じて、最も適切なクロマトグラフィツールおよびシステムを選択することができる。
【0046】
制御ユニットは、以下に説明する特定の数のアルゴリズムを実装するように、またはこのアルゴリズムを実装するリモートコンピュータと通信するように構成されたプロセッサを備える。固体試料の場合、システムは、固体注入サポート(一般にドライロードと呼ばれる)を任意に含む。このサポートは、カラムの上流の移動相流路に配置される。
【0047】
図1の論理図は、本方法の一般的なアーキテクチャを示す。
【0048】
以下、異なるモダリティについて順次説明する。
【0049】
すべてのモダリティは連続しており、これらは、ユーザが最も一般的に利用可能なTLC分析データから開始し、TLC分析データが利用できないかあるいは不十分である場合は、他のタイプの分析データに移行して、すべて任意に実行することができる。すなわち、あるタイプの分析データではユーザに分取液体クロマトグラフィのソリューションを提案できない場合、ユーザは、分離液体クロマトグラフィのソリューションの提供につながり得る別のタイプの分析データに自動的に誘導される。したがって、ユーザがクロマトグラフィの初心者であっても、分析データの提供から分取液体クロマトグラフィのソリューションの取得まで完全にユーザをガイドすることができる。
【0050】
当然、試料の性質(極性か否か)や利用可能な分析データの性質に応じて、ステップの一部のみを実行してもよく、ユーザは、上記のモダリティのいずれからも本方法の実行を自由に開始することができる。しかしながら、本システムは、以下に詳述するすべてのタイプの分析データを処理できるように構成される。
【0051】
第1のステップでは、ユーザは、使用する分析データを取得するために実行される分析液体クロマトグラフィ法を、インターフェースを用いて選択するように促される。この選択は、インターフェースによってユーザに提案される以下の方法の中から行われる。
・薄層クロマトグラフィ(TLC)
・高速液体クロマトグラフィ(HPLC)
【0052】
この選択には、必要に応じて、HPLCカラムでデータを取得するために使用されるクロマトグラフィ法の選択も含まれる。クロマトグラフィ法は、通常、以下から選択される。
・順相液体クロマトグラフィ(NPLC)
・逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)
・親水性相互作用クロマトグラフィ(HILIC):この技術は、低極性分子を分離するのに特に有利である。
疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC):この技術は、疎水性アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質を分離するのに特に有利である。
【0053】
第2のステップでは、上記で選択した方法で取得された分析データが、インターフェースを介して入力データとしてプロセッサに提供される。以下で詳細に説明するように、これらのデータは、ユーザが表に手動で入力してもよく、あるいは、データが格納されているスマートフォンまたはタブレットなどの携帯機器からインポートされてもよい。
【0054】
第1の一連のシチュエーション(P)は、極性試料に関するものである。
【0055】
第1の可能性(ボックス1)では、ユーザは、検討対象の試料について、TLC板の分析データを有する。
【0056】
TLC分析データの処理は、本発明者らによる独自の開発の目的である。
【0057】
まず、使用される量の定義を示す。
保持係数Rfは、薄層クロマトグラフィ(TLC)板上の化合物の溶出を特徴付ける相対量である。これは、移動相の移動距離に対する溶質の移動距離の比である。したがって、完全に溶出された溶質の保持係数は1であり、移動相に運ばれない溶質の保持係数は0である。
kは、カラム内の溶質の保持を特徴付ける熱力学的量であり、(tr-t0)/t0または(Vr-V0)/V0に等しい。
ここで、trは溶質の保持時間、t0は移動相がカラムを通過するのにかかる時間、Vrはカラムから溶質を取り出すのに必要な移動相の体積、V0はカラムの細孔容積である。
【0058】
同じクロマトグラフィシステムの場合、保持係数Rfとkは基本的に以下の関係を有する。
k=(1-Rf)/Rf
Δkは、カラムの形状に依存しない相対量であり、所与の温度で所与の移動相によって所与の固定相に溶出される所与の溶質の特性である。
分取液体クロマトグラフィでは、溶質を回収するために必要な移動相の体積は、非常に有用な量である。この体積Vsは、CVとも呼ばれ、さまざまなカラム形状を考慮して、カラムのドウェルボリュームの単位で以下のように表される。
Vs=CV=Vr/V0=1+k
【0059】
図2は、化合物a、bにそれぞれ対応する2つの染色を有するTLC板を概略的に示している。化合物のうち一方は対象化合物であり、他方はこれに最も近い化合物である。dは、試料の投入ライン(文字Dで示される)と溶媒フロント(文字Fで示される)の間の距離である。dは、試料投入ラインと化合物aに対応する染色の中心との間の距離であり、dは、試料投入ラインと化合物bに対応する染色の中心との間の距離である。
Rf=d/d
Rf=d/d
Vs=CV=1/Rf=1+k
Vs=CV=1/Rf=1+k
したがって、
ΔCV=CV-CV
k=Ktr×(1/Rf-1)、Ktr=定数=1
Δk=Ktr×[(1/Rf-1)-(1/Rf-1)]
したがって、
ΔCV=Δk
【0060】
本発明は、対象化合物の保持係数Rfが0.01~1.0の間であり、対象化合物とそれに最も近い隣接物(または最も近い隣接物2つ)との間の保持差Δkが0.20以上(ΔRf≧0.02)のTLC板を用いて実施することができる。
【0061】
TLC板上に存在し、TLC板全体に分布し得る、1つ以上またはすべての化合物を考慮することができる。したがって、薄層クロマトグラフィから分取液体クロマトグラフィへの移行は、常に実施可能であり、これにより、ユーザが追加の操作を行うことなく、ユーザに精製ソリューションを提供することができる。
【0062】
処理の独自性は、純溶媒の混合物の組成に応じた、混合物の溶出力の非線形変化、および振幅Δε°(別々の2つの溶媒の溶出力の差)を考慮に入れることにある(ε°は溶媒の溶出力)。
【0063】
算出では、ソフトウェアに入力された溶媒の溶出力をカバーする振幅をすべて表す5つの動作振幅が定義される。
【0064】
さらに、本発明者らは、TLC板上の化合物の絶対および相対位置に応じて、対象化合物の4つの保持領域を定義した。
【0065】
例えば、Δε°=0.38のシクロヘキサン/酢酸エチルのペアについて、以下の領域が定められる。
(0.01<Rf≦0.07)-(0.08≦Rf≦0.40)-(0.40<Rf≦0.9)-(0.9<Rf<1.0)
さらに、これらの領域それぞれについて、以下の6つの強溶媒条件が、溶出力の曲率を一部ずつ模倣するように定められる(強溶媒は移動相の溶出性が最も高い溶媒である)。
(0<%強溶媒≦4)-(5≦%強溶媒≦8)-(9≦%強溶媒≦13)-(14≦%強溶媒≦20)-(21≦%強溶媒≦53)-(54≦%強溶媒<100)
%強溶媒は、移動相中の強溶媒の体積パーセントを表す。
【0066】
これらの保持領域のそれぞれについて、クリティカルなペアまたはトリオ(すなわち、ピークの分解能が最良なペアまたはトリオ)のΔkを算出することで、カラムの細孔容積V0が既知な状態で、カラムの粒子サイズに応じて、特定の数のグラジエント条件やイソクラティック条件を提案することができる(ボックス4)。
【0067】
これにより、合計で1215件のケースが導き出される(これらのうち115件については、分離不可能)。
【0068】
したがって、溶出勾配の形状は、同じ係数ΔCVが前述の4つの保持領域のそれぞれで異なる保持係数の差ΔRfに対応するという事実を考慮して、ΔCVの各値に適合される。
【0069】
これらの要素から、4つの領域に対するすべての条件をシーケンスし、独自の分取液体クロマトグラフィのソリューションを実現するコンピュータアルゴリズムが構築される。このアルゴリズムには、精製する試料の量に応じた、使用するカラムの寸法に基づく、直接的なスケールアップ係数の算出が組み込まれる。この係数は、分析クロマトグラフィの試料量と分取液体クロマトグラフィの試料量の間のスケールアップ係数である。
【0070】
ユーザは、補足入力データとして、精製する試料の質量を示す。
【0071】
ユーザは、溶液投入または固体投入(ドライロード)の中から、精製物の注入モードを選択することができる。
【0072】
アルゴリズムは、負荷方程式に基づいて、クロマトグラフィカラムの形状と性質との間の最良の関連性を計算し、分取液体クロマトグラフィのコスト/生産性比を改善する。
【0073】
初期条件と勾配形状は、TLCの溶質のRfとΔRfから計算される。提案されるさまざまな勾配形状は、順相極性(順相モード)のHPLCにおける溶媒の2成分混合物の溶出曲線の形状に基づく。
【0074】
分離の困難さΔkとΔRfに応じて、6つのカラムの分類が示される(ボックス6)。この分類はカラムの表に基づいて行われ、提案にはユーザのストックにある少なくとも3つのカラムが含まれる。この分類では、カラムの種類、固定相の種類、および対象化合物の分子量が考慮される。
【0075】
したがって、使用可能なすべてのカラムの中から提案されたカラムの表示は、対象のアプリケーションと入力データに応じて調節される。
【0076】
有利には、ユーザは、選択したカラムを確認するように促される(ボックス7)。
【0077】
分析データを入力するためのさまざまな手段が存在する。
【0078】
一実施形態によれば、ユーザは、分析データを表に手動で入力して完了する(ボックス2)。データ入力には通常、以下のものが含まれる。
・TLCの場合:Rf、対象化合物、溶媒、および精製する質量。
・HPLCの場合:化合物の保持時間、カラム上流のドウェルボリュームの合計、カラムの内径と長さ、固定相の粒子径、分析カラムのドウェルボリューム、流量、および注入量。
【0079】
特に有利な実施形態によれば、ユーザは、分取液体クロマトグラフィのソリューションの作成のため、TLC分析データの取得およびプロセッサへのデータ転送専用のアプリケーションを備えた、スマートフォンまたはタブレットなどの携帯機器を自由に使用できる(ボックス3)。このようなアプリケーションにより、薄層クロマトグラフィの工程とその処理をより迅速かつ簡単に行うことができる。
【0080】
このようなアプリケーションは、以下の機能を有する。
【0081】
(1)TLC板上の化合物の自動検出
ユーザが直接撮影した、または、ユーザのスマートフォンにある画像ライブラリからダウンロードしたTLC板の画像から、アルゴリズムが(コントラストにより可能であれば)形状の輪郭を識別し、化合物の存在を表す点をその中心に配置する。化合物がアルゴリズムによって自動認識されない場合は、ユーザは手動で化合物を識別、修正することができる。また、ユーザは、試料の投入ラインと溶媒フロントを表す2本のラインを配置する必要がある。
【0082】
(2)対象化合物の同定、保持係数(Rf)およびΔCV(=Δk)の算出
すべての化合物が特定された後、ユーザはそれらをクリックして対象の化合物を指す。保持係数Rfは、対象化合物ごとに表示される。必要に応じて、ユーザは、専用のボタンを押すことで、その化合物が良好な動作領域にあるかどうかを確認することができる。この領域は、典型的には、0.1~0.4の間である。
【0083】
ユーザは、この目的専用のボタンをクリックすることで、ΔCV(=Δk)を表示することもできる。これらは、上下の化合物の配置から計算される。
【0084】
アプリケーションは、最小のΔCV(=Δk)を「MinΔCV」の形式で通信する。このデータから、分離の難易度をユーザに示すアラートメッセージが表示される。例えば、手動モードは以下の3つのレベルの難易度で構成される。
・簡単:「MinΔCV」が4より大きい
・標準:「MinΔCV」が1.5~4
・難しい:「MinΔCV」が1.5未満
【0085】
(3)溶媒および精製する試料の量の入力
ユーザは、精製する試料の量を入力し、使用した溶媒(最大2つ)とその割合を%で選択するように求められる。ユーザは、溶媒ごとに添加剤があるかどうかを示し、それらについてのコメントを追加するか、必要に応じて、次の画面でより一般的な方法でコメントを追加することができる。
【0086】
次に、ユーザのデータを要約した画面が表示される。
【0087】
(4)クロマトグラフィシステムへの情報の直接かつ安全な送信
上記のデータは、例えば、ユーザの個人データベースに保存され、電子メールでユーザに送信され、あるいは、Bluetooth(登録商標)またはWi-Fiによって分取液体クロマトグラフィシステムに送信される。
【0088】
(5)アプリケーションと分取液体クロマトグラフィシステムのペアリング
アプリケーションは、分析データのドシエがファイルされ読み取られるファイル転送プロトコル(FTP)を使用して、Wi-Fi経由でクロマトグラフィシステムとアプリケーションとのペアリングを可能にするパラメータ化モジュールを備える。このパラメータ化モジュールを使用することで、ユーザは自分の電子メールアドレスを入力してファイルを受信することもできる。
【0089】
(6)同じデータのアーカイブ化およびリピート送信
アプリケーションは、有利には、ユーザが必要に応じて自分のデータをアーカイブすることができるアーカイブモジュールを備える。この場合、データはユーザのスマートフォンからのみ参照可能である。必要に応じて、ユーザは、TLC板の分析データをクロマトグラフィシステムに何度でも送信することができる。
【0090】
有利な方法では、送信は、TLC板の画像、それに割り当てられた名前、標的化合物のRf、TLC板上のコメント、被精製物の量の表示、溶媒の名前および割合(%)、該当する場合は溶媒への添加剤に関する言及および潜在的コメントなどを含むJSONファイルを介して行われる。これらのデータは、分取液体クロマトグラフィのソリューションを提供するため、以下に説明する処理アルゴリズムにより読み取られる。
【0091】
しかしながら、例えば、目的のピークの位置、精製を行う溶媒の性質または量がユーザのストックより多い、あるいは、適切なカラムがストックにないことなどが原因で、TLC分離が不十分である場合が存在する。
【0092】
この場合、プロセッサは、分析条件、特に強溶媒または使用する溶媒のペアを変更することで、イソクラティック溶出で最初の分離とは異なる分離が可能なアルゴリズムを起動する(ボックス5)。これにより、最適な保持領域で最高の実験条件を決定し、効率的な精製を行うことが可能となる。このアルゴリズムは、この目的のため、“Principles of Adsorption Chromatography” R.L.Snyder, ed.M.Dekker(1968)に記載される、普遍的な図に基づく。
【0093】
アルゴリズムは、前述の5つの動作振幅それぞれに固有の強溶媒の割合の限界値を算出する。
【0094】
次に、分取液体クロマトグラフィ条件が提案される(上記ボックス6)。
【0095】
分析TLCデータはないが、分析クロマトグラムが利用できる場合(ボックス9)、以下に説明するように、別のモジュールが使用される。
【0096】
HPLCで得られたクロマトグラムの場合、2つのピーク間の分離能は以下の関係によって定義される。
Rs=2×(tR2-tR1)/(ω-ω
ここで、tはピークの保持時間、ωはそのベースでのピークの幅を表す。
【0097】
Rsが大きいほど、2つのピーク間の分離が良好になる。
【0098】
第1のケース(ボックス10)では、分析固定相は、カラム表のうち少なくとも1つのカラムの固定相と同じである。アルゴリズムは、入力された分析カラムに基づき、固定相の材料、商品名、およびグラフト化に関するフィールドが保持されたカラム表のうち1つ以上のカラムを識別する。また、精製する試料の量が入力される。
【0099】
別のアルゴリズム(ボックス11)では、固定相の性質、粒子径、溶媒の性質、およびカラムの材料を考慮しながら、圧力に関してシステムと適合性のあるカラムが選択される。
【0100】
アルゴリズムは、カラムの内径と長さ、および使用される固定相粒子の細孔容積の割合からスケールアップ比を計算する。
【0101】
精製される生試料の質量を上記のスケールアップ比で割り、注入回数を計算する。
【0102】
最後に、アルゴリズムは、分析カラムのグラジエント法から分取液体クロマトグラフィカラムのグラジエント法への移行を行う。この移行は、カラムの寸法の直接比、グラジエントの勾配の再計算、その工程および時間、ならびに使用される粒子の細孔容積の割合に基づく。また、カラムのドウェルボリュームV0や装置のディレイボリュームも考慮される。したがって、圧力の変化と溶媒の消費量が予測できる。保持時間を計算するために表に入力された化合物の分析保持時間も同様に、分取液体クロマトグラフィカラムの予測保持時間に変換される。
【0103】
ユーザが分析評価と同じ固定相を持つカラムを有していない場合(ボックス21)、アルゴリズムは、カラム表において、固定相の性質に関するフィールドが、(a)未処理シリカ、(b)C18以外のグラフト化シリカ、または(c)C18グラフト化シリカに相当するか識別する。
【0104】
ケース(a)および(b)(シリカまたはC18以外グラフト化シリカ)の場合、アルゴリズムは、カラム表の固定相やグラフト化の種類に関するフィールドを相関させることができるか識別し、可能であった場合は、直接移行を提案する。
【0105】
ケース(c)(実施するグラフト化によって機能に大きな違いがあるC18グラフト化シリカ)の場合は、「アトムテーブル」と呼ばれる、さまざまな製造元またはメーカーによる数百個のC18グラフト化シリカ型のカラムの実験データをまとめた表が予め作成されている。アルゴリズムは、極値に応じて実験値の正規化を実行する。それぞれの分析カラムおよび認定基準について、他のすべてのカラムに対するユークリッド距離が計算される。正規化後、各基準のそれぞれの距離が合計され、そのカラムの他のすべてのカラムに対する参照値となる。基準の1つは、疎水性に関する統一されたパラメータを定義することで構成される。
【0106】
アルゴリズムは、アトムテーブルにおいて、入力された分析カラムと同じ固定相、メーカーおよびグラフトの種類のフィールドを検索する(ボックス13)。
【0107】
これを認識すると、アルゴリズムは、アトムテーブルにあるすべての固定相の選択の類似度(ユークリッド距離)を計算する。レスポンスを昇順で分類し、類似値が0.17未満の候補のみを保持する。
【0108】
アルゴリズムは、その結果をアトムテーブルと比較し、注入回数およびカラム表における有無(ユーザの物理的なストックにあるか)に基づいた基準に応じて、6つの候補を一意に保持する。
【0109】
その後のステップは、ボックス11で説明した通りである。
【0110】
ユーザが適切なカラムを有していない場合(ボックス14)、ユーザは適切なカラムを購入する必要があることを通知される。カラム購入後のステップはボックス11で説明した通りである。
【0111】
直接順相のソリューションが見つからない場合(ボックス15)、順相スクリーニングが実施される(ボックス16)。このようなスクリーニングは、HPLCカラムまたはフラッシュクロマトグラフィカラムを用いて、分析カラムにおける順相のさまざまな分離を調査することを含む。
【0112】
このスクリーニングにより、アルゴリズムは、最高の精製能力を有するカラムを選択する(ボックス17)。アルゴリズムは、異なる分離が可能な溶出条件を提案してもよい。
【0113】
次に、アルゴリズムは、選択したカラムによる分離の分析クロマトグラムを使用する(ボックス18)。
【0114】
第1のケース(ボックス19)では、分析固定相は、カラム表のうちの少なくとも1つのカラムの固定相と同じである。アルゴリズムは、入力された分析カラムに基づき、固定相の材料、その製造元、およびグラフト化に関するフィールドが保持されたカラムの表のうち1つ以上のカラムを識別する。また、精製する試料の量が入力される。
【0115】
別のアルゴリズム(ボックス20)では、固定相の性質、粒子径、溶媒の性質、およびカラムの材料を考慮しながら、圧力に関してシステムと適合性のあるカラムが選択される。
【0116】
アルゴリズムは、カラムの内径と長さ、および使用される固定相粒子の細孔容積の割合からスケールアップ比を計算する。
【0117】
精製される生試料の質量を上記のスケールアップ比で割り、注入回数を計算する。
【0118】
最後に、アルゴリズムは、分析カラムのグラジエント法から分取液体クロマトグラフィカラムのグラジエント法への移行を行う。この移行は、カラムの寸法の直接比、グラジエントの勾配の再計算、その工程および時間、ならびに使用される粒子の細孔容積の割合に基づく。また、カラムのドウェルボリュームV0も考慮される。したがって、圧力の変化や溶媒の消費量が予測できる。保持時間を計算するために表に入力された化合物の分析保持時間も同様に、分取液体クロマトグラフィカラムの予測保持時間に変換される。
【0119】
ユーザが分析評価と同じ固定相を持つカラムを有していない場合(ボックス21)、アルゴリズムは、カラム表において、固定相の性質に関するフィールドが、(a)未処理シリカ、(b)C18以外のグラフト化シリカ、または(c)C18グラフト化シリカに相当するか識別する(ボックス22)。
【0120】
ケース(a)および(b)(シリカまたはC18以外グラフト化シリカ)の場合、アルゴリズムは、カラム表の固定相やグラフト化の種類に関するフィールドを相関させることができるか識別し、可能であった場合は、直接移行を提案する(ボックス20)。
【0121】
ケース(c)(実施するグラフト化によって機能に大きな違いがあるC18グラフト化シリカ)の場合は、「アトムテーブル」と呼ばれる、さまざまな製造元またはメーカーによる数百個のC18グラフト化シリカ型のカラムの実験データをまとめた表が予め作成されている。アルゴリズムは、極値に応じて実験値の正規化を実行する。それぞれの分析カラムおよび認定基準について、他のすべてのカラムに対するユークリッド距離が計算される。正規化後、各基準のそれぞれの距離が合計され、そのカラムの他のすべてのカラムに対する参照値となる。基準の1つは、疎水性に関する統一されたパラメータを定義することで構成される。
【0122】
アルゴリズムは、アトムテーブルにおいて、入力された分析カラムと同じ固定相、メーカーおよびグラフトの種類のフィールドを検索する(ボックス13)。
【0123】
これを認識すると、アルゴリズムは、アトムテーブルにあるすべての固定相の選択の類似度(ユークリッド距離)を計算する。レスポンスを昇順で分類し、類似値が0.17未満の候補のみを保持する。
【0124】
アルゴリズムは、その結果をアトムテーブルと比較し、注入回数およびカラム表における有無に基づいた基準に応じて、6つの候補を一意に保持する(候補のうち少なくとも3つはユーザの物理的ストックにあるものとする)。
【0125】
その後のステップは、ボックス20で説明した通りである。
【0126】
ユーザが適切なカラムを有していない場合(ボックス23)、ユーザは適切なカラムを購入する必要があることを通知される。カラム購入後のステップはボックス20で説明した通りである。
【0127】
順相でのスクリーニング後にソリューションが見つからないが、逆相のソリューションが存在する場合(ボックス24)、非極性または中極性(NP/MP)試料に関する第2の一連のシチュエーションに移行する。
【0128】
第1の可能性では、分離の分析クロマトグラムが利用可能である(ボックス25)。
【0129】
ボックス26~30による方法の実施は、ボックス10~14を参照して上述したものと同様であるため、説明を省略する。
【0130】
逆相のソリューションが利用できない場合(ボックス31)、システムは、HPLCまたはフラッシュクロマトグラフィシステムを用いて、逆相のさまざまな選択に関する分離の調査を提案する(ボックス32)。
【0131】
アルゴリズムにより、2つのステップを通じて、熱力学的パラメータpおよびqが既知のカラムセットを用いて、最良の分離能を持つカラムを決定することができる(ボックス33)。第1のステップでは、精製する混合物から溶出する最後の化合物の保持係数が10のオーダーである移動相条件を決定し、他のカラムがこれと同じ目標を達成するようなイソクラティック溶出条件を再計算する。第2のステップでは、イソクラティック溶出で各カラムに試料を注入し、クロマトグラフィプロファイルを比較することで、最も関連性の高いカラムを選択する。
【0132】
第1の可能性では、分離の分析クロマトグラムが利用可能である(ボックス34)。
【0133】
ボックス35~39による方法の実施は、ボックス10~14および26~30を参照して上述したものと同様であるため、説明を省略する。
【0134】
いずれの場合も、選択したカラムがクロマトグラフィシステムに配置されると、算出された操作モードに従って、プロセッサによりクロマトグラフィの実行が開始される(ボックス8)。
【0135】
特に有利な方法では、分取液体クロマトグラフィ法は、以下に記載されるアルゴリズムによって加速することができる。
【0136】
この加速の可能性により、ユーザは、クリティカルペアの分解能が流量の増加によって大きな影響を受けないことを推定しながら、優先度の高い別のタスクを処理するために、および/または、分析時間を短縮するために、精製をより迅速に完了することができる。
【0137】
この目的のため、アルゴリズムは、TLC分析データでは分離の困難さΔk、HPLC分析データではRsに応じて、進行中の精製の最大許容流量および圧力係数を(特にクロマトグラフィシステムの限界圧力、カラムの限界圧力、またドライロードの限界圧力を考慮して)評価する(ボックス40)。アルゴリズムは、リアルタイムでグラジエント法を新しい条件に自動で調整する。ユーザは、精製の任意の時点で加速の実行を選択することができる。この操作は可逆的であり、精製物を損なわず、安全に実行することができる。
図1
図2