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特許7482120メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩とその作製方法、および、該分子篩を含む触媒とその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩とその作製方法、および、該分子篩を含む触媒とその利用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/38 20060101AFI20240502BHJP
   B01J 37/06 20060101ALI20240502BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20240502BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20240502BHJP
   B01J 29/80 20060101ALI20240502BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240502BHJP
   B01J 37/30 20060101ALI20240502BHJP
   C10G 11/05 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C01B39/38
B01J37/06
B01J37/10
B01J37/00 F
B01J29/80 M
B01J37/08
B01J37/30
C10G11/05
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2021521117
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 CN2019111725
(87)【国際公開番号】W WO2020078434
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】201811216759.8
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910122645.5
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910578636.7
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910580182.7
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】羅一斌
(72)【発明者】
【氏名】欧陽穎
(72)【発明者】
【氏名】庄立
(72)【発明者】
【氏名】劉建強
(72)【発明者】
【氏名】李明▲コウ▼
(72)【発明者】
【氏名】舒興田
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107971015(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107970990(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102049284(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104307560(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103028433(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1660967(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107973318(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107973317(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20-39/54
B01J 21/00-38/74
C10G 11/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩であって、
該MFI構造分子篩は、ケイ素成分、アルミニウム成分、リン成分および担持される金属成分を含み、
該MFI構造分子篩のn(SiO)/n(Al)は、15を超え且つ70以下であり、
として計算される前記MFI構造分子篩のリン含量は、前記MFI構造分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、
担持されている金属の酸化物として計算される、前記MFI構造分子篩中の担持される金属の含量は、前記MFI構造分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、前記担持される金属は、レアアース元素から選ばれる1つまたは複数であり、
前記MFI構造分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が40~70体積%であり、
前記MFI構造分子篩におけるメソポアの体積および全細孔の体積は、窒素吸着BET比表面積法によって測定され、前記メソポアの体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積であり、
前記MFI構造分子篩のRE分布パラメータDは、0.9≦D≦1.3を満たし、
D=RE(S)/RE(C)
RE(S)は、前記MFI構造分子篩の結晶粒の結晶面のエッジから内部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、
RE(C)は、前記MFI構造分子篩の結晶粒の前記結晶面の幾何学的中心から外部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、
前記Hは、前記結晶面の前記エッジ上の任意の点から該結晶面の前記幾何学的中心までの距離の10%である、
メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩。
【請求項2】
前記担持される金属は、ランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つである、請求項1に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩。
【請求項3】
前記MFI構造分子篩のRE分布パラメータDは、0.9≦D≦1.1を満たす、
請求項1に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩。
【請求項4】
前記MFI構造分子篩のn(SiO)/n(Al)は、18を超え且つ60以下であり、
として計算される前記MFI構造分子篩のリン含量は、前記MFI構造分子篩のドライベース重量に対して3~12重量%であり、
担持されている金属の酸化物として計算される、前記MFI構造分子篩中の担持される金属の含量は、前記MFI構造分子篩のドライベース重量に対して3~8重量%であり、
前記MFI構造分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が45~65体積%である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を作製する方法であって、
結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを濾過および洗浄し、水洗後の分子篩を得る工程aであって、酸化ナトリウムとして計算される前記水洗後の分子篩のナトリウム含量が、当該水洗後の分子篩のドライベース全量に対して5重量%以下である工程a、
工程aで得られた水洗後の分子篩に対してアルカリ溶液中での脱シリカ処理を行い、その後、濾過、洗浄し、アルカリ洗浄後の分子篩を得る工程b、
工程bで得られたアルカリ洗浄後の分子篩に対してアンモニウム交換処理を行い、アンモニウム交換後の分子篩を得る工程cであって、酸化ナトリウムとして計算される前記アンモニウム交換後の分子篩のナトリウム含量が、当該アンモニウム交換後の分子篩のドライベース全量に対して0.2重量%以下である工程c、および、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、リン改質処理、担持される金属の担持処理、および焙焼処理を行い、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を得る工程d、を含み、
前記工程dは、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、同時に前記リン改質処理および前記担持される金属の担持処理を行った後に、前記焙焼処理を行う形式(1)、
前記焙焼処理が水蒸気雰囲気下の焙焼処理および空気雰囲気下の焙焼処理を含み、工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、水蒸気雰囲気下の焙焼処理、前記リン改質処理および空気雰囲気下の焙焼処理をこの順に行う形式(2)、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、前記リン改質処理および前記焙焼処理をこの順に行う形式(3)、および、
前記焙焼処理が水蒸気雰囲気下の焙焼処理および空気雰囲気下の焙焼処理を含み、工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記リン改質処理、空気雰囲気下の焙焼処理、前記担持される金属の担持処理および水蒸気雰囲気下の焙焼処理をこの順に行う形式(4)、
からなる群より選ばれる1つまたは複数の形式によって行われる、
方法。
【請求項6】
前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリー中のMFI構造分子篩は、シリカ対アルミナ比が80以下であるZSM-5分子篩である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
テンプレート剤法を用いて、前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを作製し、
前記工程bは、前記脱シリカ処理の前に、前記水洗後の分子篩に対して乾燥、第二焙焼を行うことによりテンプレート剤を除去するステップを、さらに含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
工程bにおいて、
前記アルカリ溶液が水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムの水溶液であり、および/または、
前記脱シリカ処理の条件は、
ドライベース重量として計算される前記MFI構造分子篩の重量と、アルカリ溶液中の塩基の重量と、アルカリ溶液中の水の重量との比が1:(0.1~2):(5~15)である条件、
温度が10℃~100℃である条件、および/または、
処理時間が0.2~4時間である条件を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
工程cにおいて、
前記アンモニウム交換処理は、アンモニウム塩の水溶液で前記アルカリ洗浄後の分子篩を処理するステップを含み、
当該アンモニウム交換処理の条件は、
ドライベース重量として計算される前記MFI構造分子篩の重量と、アンモニウム塩の重量と、水の重量との比が1:(0.1~1):(5~10)である条件、
温度が10℃~100℃である条件、および/または、
処理時間が0.2~4時間である条件を含み、
前記アンモニウム塩は、
塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選ばれる1つまたは複数である、
請求項5に記載の方法。
【請求項10】
工程dにおいて、
前記リン改質処理は、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つのリン含有化合物を用いて、分子篩に対して含浸および/またはイオン交換を行うステップを含み、
前記担持される金属の担持処理は、前記担持される金属を含む化合物を用いて、含浸および/またはイオン交換により、1回または数回に分けて、前記担持される金属を担持するステップを含み、
前記焙焼処理の条件は、
雰囲気が空気雰囲気および/または水蒸気雰囲気である条件、
焙焼温度が400~800℃である条件、および/または、
焙焼時間が0.5~8時間である条件を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項11】
接触分解触媒であって、該接触分解触媒のドライベース重量に対し、
5~78重量%の請求項1~4のいずれか1項に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、
1~60重量%の無機バインダーと、
0~65重量%の第二粘土と、を含み、
前記無機バインダーは、リン・アルミニウム無機バインダー、および、他の無機バインダーを含む
ことを特徴とする接触分解触媒。
【請求項12】
前記接触分解触媒は、該接触分解触媒のドライベース重量に対し、
ドライベース重量として計算される3~40重量%のリン・アルミニウム無機バインダー、および、
ドライベース重量として計算される1~30重量%の他の無機バインダーを含む、
請求項11に記載の接触分解触媒。
【請求項13】
前記リン・アルミニウム無機バインダーは、アルミノホスフェートゲル、および/または、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーであり、
前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーのドライベース重量に対し、
Alとして計算される10~40重量%のアルミニウム成分、
として計算される40~80重量%のリン成分、および、
ドライベースとして計算される、0を超え且つ42重量%以下の第一粘土を含み、
前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、P/Al重量比が1.0~6.0であり、pHが1~3.5であり、固体含有量が15~60重量%であり、
前記第一粘土は、カオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイトおよび珪藻土のうちの少なくとも1つを含み、
前記他の無機バインダーは、擬似ベーマイト、アルミナゾル、シリカ-アルミナゾルおよび水ガラスのうちの少なくとも1つを含む、
請求項11に記載の接触分解触媒。
【請求項14】
第二粘土を含み、
前記第二粘土は、カオリン、メタカオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイト、含水ハロイサイト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、ベントナイトおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1つである、
請求項11に記載の接触分解触媒。
【請求項15】
前記接触分解触媒は、
8~78重量%の、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、
1~40重量%の前記無機バインダーと、
10~65重量%の第二粘土と、を含むI型接触分解触媒である、
ことを特徴とする請求項11に記載の接触分解触媒。
【請求項16】
前記接触分解触媒は、
該接触分解触媒のドライベース重量に対し、
5~50重量%の、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、
1~60重量%の前記無機バインダーと、
1~25重量%のY型分子篩と、
10~60重量%の前記第二粘土と、を含むII型接触分解触媒である、請求項11に記載の接触分解触媒。
【請求項17】
前記Y型分子篩は、PSRY分子篩、PSRY-S分子篩、レアアース含有PSRY分子篩、レアアース含有PSRY-S分子篩、USY分子篩、レアアース含有USY分子篩、REY分子篩、REHY分子篩およびHY分子篩からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項16に記載の接触分解触媒。
【請求項18】
請求項11に記載の接触分解触媒を作製する方法であって、
請求項1~4のいずれか1項に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩、無機バインダー、および任意に用いる第二粘土を混合し、スラリーとする工程、および、
前記スラリーを噴霧乾燥する工程を含み、
ドライベースとして計算される5~78重量部の、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩に対し、ドライベースとして計算される前記無機バインダーの使用量は1~60重量部であり、ドライベースとして計算される前記第二粘土の使用量は0~65重量部であり、
前記無機バインダーは、リン・アルミニウム無機バインダー、および、他の無機バインダーを含む、
方法。
【請求項19】
第三焙焼が行われ、
前記第三焙焼によって得られた生成物に対して洗浄及び任意に乾燥処理を行う工程をさらに含み、
前記第三焙焼の焙焼温度が300~650℃であり、焙焼時間が0.5~12hであり、前記乾燥処理の温度が100~200℃であり、乾燥時間が0.5~24hである、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記リン・アルミニウム無機バインダーが、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーを含み、
前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーのドライベース重量に対し、
Alとして計算される10~40重量%のアルミニウム成分、
として計算される40~80重量%のリン成分、および、
ドライベースとして計算される、0を超え且つ42重量%以下の第一粘土を含み、
前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、P/Al重量比が1.0~6.0であり、pHが1~3.5であり、固体含有量が15~60重量%であり、
前記第一粘土は、カオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイトおよび珪藻土のうちの少なくとも1つを含み、
且つ、
アルミナ源、前記第一粘土および水を固体含有量5~48重量%のスラリーとするステップであって、前記アルミナ源は、酸によってペプチゼーション可能な水酸化アルミニウムおよび/またはアルミナであり、ドライベース重量として計算される前記第一粘土の使用量は、Alとして計算される15~40重量部の前記アルミナ源に対して0重量部を超え且つ42重量部以下であるステップと、
撹拌下で、前記スラリーに濃リン酸をP/Al=1~6の重量比で添加し、得られたスラリー混合物を50~99℃で15~90分反応させるステップであって、前記P/AlのPはリン酸中の単体リンとして計算されるリン重量であり、Alはアルミナ源中の単体アルミニウムとして計算されるアルミニウム重量であるステップと、
を用いて前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーを作製する工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記スラリーとする前に、さらにY型分子篩を添加して混合する、
請求項18に記載の方法。
【請求項22】
請求項11~17のいずれか1項に記載の接触分解触媒を用いて炭化水素油の接触分解を行う方法であって、
接触分解反応の条件下で、500~800℃の接触分解反応温度にて炭化水素油を前記接触分解触媒と接触させて反応させる工程を含む、
方法。
【請求項23】
前記炭化水素油は、原油、ナフサ、ガソリン、常圧残渣油、減圧残渣油、常圧ワックス油、減圧ワックス油、直留ワックス油、プロパン軽/重質脱油、コークス化ワックス油、および石炭液化生成物から選ばれる1つまたは複数である、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
炭化水素油を、前記接触分解触媒と他の接触分解触媒とを含む触媒混合物と接触させて反応させる、
請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記触媒混合物中の前記接触分解触媒の含量が0.1~30重量%である、
請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩とその作製方法、および、該分子篩を含む触媒とその利用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
21世紀以来、原油価格の変動および技術の急速な発展により、世界の石油化学工業は、原料の多様化および低コスト化が進んでいる。特に、軽質炭化水素資源が豊かな中東地域では石油化学工業の生産能力が急速に伸び、北米のシェールガス産業および中国の石炭化学産業等も発展し、ナフサを原料とする従来の石油化学工業に大きな衝撃を与えている。エタンからエチレンを作る技術の大規模な市場化により、ナフサの蒸気分解による低炭素オレフィンの製造も大きな影響を受けている。比較的、従来のナフサルートのエチレン生産では、経済的コストが高く、コスト上の競争力が低いため、競争力のある化学工業原料生産技術の開発が注目されている。
【0003】
高温下の炭化水素類の分解反応は、長鎖炭化水素類を高付加価値の短鎖炭化水素類、特に低炭素オレフィンおよびガソリンに変換するための重要なプロセスである。通常、炭化水素類の分解は、そのメカニズムによって、カルボニウムイオン型メカニズム(接触分解)とラジカル型メカニズム(蒸気分解)とに分けられる。カルボニウムイオン型メカニズムは、酸性触媒の作用下で発生し、必要な反応温度が比較的低く、プロピレンがその特徴的な分解生成物である。一方、ラジカル型メカニズムは、通常、熱開始の条件下で反応が発生し、エチレンがその特徴的な分解生成物である。実際、炭化水素類は、接触分解反応の条件下ではカルボニウムイオン反応とラジカル反応の両方が発生しうる。しかし、接触分解反応は、反応温度の低さに起因して、フリーラジカルの開始速度が遅いため、カルボニウムイオン反応がその主な反応プロセスであり、プロピレン収率が高いが、エチレン収率が低い。現在、生成物中のエチレン/プロピレン比を広範囲に亘って自由に微調整することはまだできない。
【0004】
熱接触分解によりエチレンを製造する方法は、エチレンを増産させる新たな方法である。従来の蒸気分解によりエチレンを製造する方法では、高い分解温度、原料への厳格な要求などといった欠点がある。通常、蒸気分解によりエチレンを製造する方法は、ラジカル反応メカニズムによって行われるため、反応温度が非常に高い。低炭素オレフィンを高収率で得るための熱接触分解触媒において、通常、活性成分としてZSM-5分子篩が使用され、C3=~C5=オレフィンの増産のために分子篩の性質が調節されているが、エチレン収率はあまり高くない。
【0005】
CN1072032Cには、接触分解により高収率でエチレンおよびプロピレンを得るために用いられる分子篩組成物が開示されている。該分子篩組成物は、SiO/Alモル比が15~60である5員環分子篩を、P、アルカリ土類金属および遷移金属によって活性化し、改質してなる。改質後の分子篩は、P含量が2~10重量%であり、アルカリ土類金属酸化物含量が0.3~5重量%であり、遷移金属酸化物含量が0.3~5重量%である。該分子篩の構造および活性中心は非常に高い熱安定性および水熱安定性を有する。
【0006】
CN1147420Aには、リン及びレアアースを含有し、且つ、MFI構造を有する分子篩が開示されている。該分子篩の化学的無水構成はaREbNaOAlcPdSiOであり、a=0.01~0.25、b=0.005~0.02、c=0.2~1.0、d=35~120である。該分子篩は、炭化水素類の高温転化に用いられるとき、優れた水熱活性安定性および良好な低炭素オレフィン選択性を有する。
【0007】
従来技術では、分子篩の性質を調節する効果として、プロピレンおよびブチレンの収率と選択性の向上効果が目立つが、エチレンの収率および選択性の向上効果は薄い。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明の1つの目的は、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩とその作製方法を提供することである。前記MFI構造分子篩は、石油炭化水素の接触分解反応において、優れたエチレン選択性を有する。
【0009】
本発明の別の目的は、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を含む触媒、その作製方法、および、石油炭化水素の接触分解におけるその利用を提供することである。
【0010】
第一態様では、本発明は、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を提供する。該分子篩はケイ素成分、アルミニウム成分、リン成分および担持される金属成分を含み、該分子篩のn(SiO)/n(Al)は15を超え且つ70以下であり、Pとして計算される前記分子篩のリン含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、担持される金属は、レアアース元素から選ばれる1つまたは複数であり、好ましくはランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つであり、前記分子篩において、全細孔体積に対するメソポア体積の比率が40~70体積%であり、前記分子篩におけるメソポア体積および全細孔体積は、窒素吸着BET比表面積法で測定され、前記メソポア体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積である。
【0011】
一実施形態では、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩について、前記分子篩のRE分布パラメータDは、0.9≦D≦1.3を満たし、好ましくは0.9≦D≦1.1を満たし、D=RE(S)/RE(C)、
RE(S)は、分子篩結晶粒の結晶面のエッジから内部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、RE(C)は、分子篩結晶粒の前記結晶面の幾何学的中心から外部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、前記Hは、前記結晶面のエッジ上の任意の点から該結晶面の幾何学的中心までの距離の10%である。
【0012】
一実施形態では、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩について、前記MFI構造分子篩のn(SiO)/n(Al)は18を超え且つ60以下であり、Pとして計算される前記分子篩のリン含量は、分子篩のドライベース重量に対して3~12重量%であり、担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、分子篩のドライベース重量に対して3~8重量%であり、前記分子篩において、全細孔体積に対するメソポア体積の比率が45~65体積%である。
【0013】
第二態様では、本発明は、第一態様に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を作製する方法を提供する。該方法は、
結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを濾過、洗浄し、水洗後の分子篩を得る工程aであって、酸化ナトリウムとして計算される前記水洗後の分子篩のナトリウム含量が、当該水洗後の分子篩のドライベース全量に対して5重量%以下である工程a、
工程aで得られた水洗後の分子篩に対してアルカリ溶液中での脱シリカ処理を行い、その後、濾過、洗浄し、アルカリ洗浄後の分子篩を得る工程b、
工程bで得られたアルカリ洗浄後の分子篩に対してアンモニウム交換処理を行い、アンモニウム交換後の分子篩を得る工程cであって、酸化ナトリウムとして計算される前記アンモニウム交換後の分子篩のナトリウム含量が、当該アンモニウム交換後の分子篩のドライベース全量に対して0.2重量%以下である工程c、および、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、リン改質処理、担持される金属の担持処理、および焙焼処理を行い、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を得る工程d、を含む。
【0014】
一実施形態では、前記分子篩の作製方法において、前記工程dは、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、同時に前記リン改質処理および前記担持される金属の担持処理を行った後に、前記焙焼処理を行う形式(1)、
前記焙焼処理は水蒸気雰囲気下の焙焼処理および空気雰囲気下の焙焼処理を含み、工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、水蒸気雰囲気下の焙焼処理、前記リン改質処理および空気雰囲気下の焙焼処理をこの順に行う形式(2)、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、前記リン改質処理および前記焙焼処理をこの順に行う形式(3)、および、
前記焙焼処理は水蒸気雰囲気下の焙焼処理および空気雰囲気下の焙焼処理を含み、工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記リン改質処理、空気雰囲気下の焙焼処理、前記担持される金属の担持処理および水蒸気雰囲気下の焙焼処理をこの順に行う形式(4)、
から選ばれる1つまたは複数の形式によって行われる。
【0015】
一実施形態では、前記分子篩の作製方法において、前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリー中のMFI構造分子篩は、シリカ対アルミナ比が80以下であるZSM-5分子篩である。
【0016】
一実施形態では、前記分子篩の作製方法において、テンプレート剤法を用いて前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを作製し、且つ、前記工程bは、前記脱シリカ処理の前に、水洗後の分子篩に対して乾燥、第二焙焼を行うことによりテンプレート剤を除去するステップをさらに含む。
【0017】
一実施形態では、前記分子篩の作製方法について、工程bにおいて、前記アルカリ溶液は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムの水溶液であり、および/または、前記脱シリカ処理の条件は、ドライベース重量として計算される分子篩の重量と、アルカリ溶液中の塩基の重量と、アルカリ溶液中の水の重量との比が1:(0.1~2):(5~15)である条件、温度が10℃~100℃、好ましくは室温~100℃である条件、および/または、処理時間が0.2~4時間である条件を含む。
【0018】
一実施形態では、前記分子篩の作製方法について、工程cにおいて、前記アンモニウム交換処理は、アンモニウム塩の水溶液でアルカリ洗浄後の分子篩を処理するステップを含み、該アンモニウム交換処理の条件は、ドライベース重量として計算される分子篩の重量と、アンモニウム塩の重量と、水の重量との比が1:(0.1~1):(5~10)である条件、温度が10℃~100℃、好ましくは室温~100℃である条件、および/または、処理時間が0.2~4時間である条件を含み、前記アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選ばれる1つまたは複数である。
【0019】
一実施形態では、前記分子篩の作製方法について、工程dにおいて、前記リン改質処理は、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つのリン含有化合物を用いて、分子篩に対して含浸および/またはイオン交換を行うステップを含み、
前記担持される金属の担持処理は、前記担持される金属を含む化合物を用いて、含浸および/またはイオン交換により、1回または数回に分けて、前記担持される金属を担持するステップを含み、
前記焙焼処理の条件は、雰囲気が空気雰囲気および/または水蒸気雰囲気である条件、焙焼温度が400~800℃である条件、および/または焙焼時間が0.5~8時間である条件を含む。
【0020】
第三態様では、本発明は、接触分解触媒であって、該接触分解触媒のドライベース重量に対し、
5~78重量%の第一態様に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、
0~25重量%のY型分子篩と、
1~60重量%の無機バインダーであって、当該バインダーは、リン・アルミニウム無機バインダー、および、任意に用いる他の無機バインダーを含み、
0~65重量%の任意に用いる第二粘土と、を含むことを特徴とする接触分解触媒を提供する。
【0021】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、該接触分解触媒のドライベース重量に対し、ドライベース重量として計算される3~40重量%、好ましくは3~39重量%のリン・アルミニウム無機バインダー、および、ドライベース重量として計算される1~30重量%の他の無機バインダーを含む。
【0022】
一実施形態では、前記接触分解触媒において、前記リン・アルミニウム無機バインダーはアルミノホスフェートゲル、および/または、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーであり、前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーのドライベース重量に対し、Alとして計算される10~40重量%、好ましくは15~40重量%のアルミニウム成分と、Pとして計算される40~80重量%、好ましくは45~80重量%のリン成分と、ドライベースとして計算される、0を超え且つ42重量%以下、好ましくは40重量%以下の第一粘土と、を含み、前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、P/Al重量比が1.0~6.0であり、pHが1~3.5であり、固体含有量が15~60重量%であり、前記第一粘土は、カオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイトおよび珪藻土のうちの少なくとも1つを含み、前記他の無機バインダーは、擬似ベーマイト、アルミナゾル、シリカ-アルミナゾルおよび水ガラスのうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
一実施形態では、前記接触分解触媒は第二粘土を含み、前記第二粘土は、カオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイト、含水ハロイサイト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、ベントナイトおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1つであり、好ましくは、カオリン、メタカオリン、珪藻土、海泡石、アタパルジャイト、モンモリロナイトおよびレクトライトから選ばれる少なくとも1つである。
【0024】
一実施形態では、本発明の第三態様に記載の前記接触分解触媒は、
8~78重量%の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、
1~40重量%のバインダーと、
0~65重量%、好ましくは10重量%~55重量%の第二粘土と、を含むことを特徴とするI型接触分解触媒である。
【0025】
特定の一実施形態では、前記I型接触分解触媒は、接触分解反応器中の接触分解触媒として単独で使用することができる。別の特定の実施形態では、該I型接触分解触媒と他の通常の接触分解触媒との混合物を、接触分解反応器中の接触分解触媒として使用することができる。混合物を使用する場合、本発明における前記I型接触分解触媒は、上記混合物全量の例えば30重量%以下であってもよく、好ましくは1~25重量%であり、より好ましくは3~15重量%である。
【0026】
一実施形態では、本発明の第三態様に記載の接触分解触媒は、
該接触分解触媒のドライベース重量に対し、
5~50重量%の、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、
1~60重量%の前記無機バインダーと、
1~25重量%のY型分子篩と、
0~60重量%、好ましくは10重量%~50重量%の任意に用いる前記第二粘土と、を含むことを特徴とするII型接触分解触媒である。
【0027】
本明細書において、前記I型および/またはII型接触分解触媒、または他の接触分解触媒を指すと明記しない限り、記載された「接触分解触媒」とは、該I型および/またはII型接触分解触媒を含む、本発明の第三態様に記載のあらゆる接触分解触媒を意味する。
【0028】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、前記Y型分子篩が、PSRY分子篩、PSRY-S分子篩、レアアース含有PSRY分子篩、レアアース含有PSRY-S分子篩、USY分子篩、レアアース含有USY分子篩、REY分子篩、REHY分子篩およびHY分子篩のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする接触分解触媒。
【0029】
第四態様では、本発明は、第三態様に記載の接触分解触媒を作製する方法であって、
第一態様に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩、無機バインダー、および任意に用いる第二粘土を混合し、スラリーとする工程、
前記スラリーを噴霧乾燥する工程、および、
任意に行う第三焙焼処理を含み、
ドライベースとして計算される5~78重量部の、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩に対し、ドライベースとして計算される前記無機バインダーの使用量は1~60重量部であり、ドライベースとして計算される前記第二粘土の使用量は0~65重量部であり、
前記バインダーは、リン・アルミニウム無機バインダー、および、任意に用いる他の無機バインダーを含む、方法を提供する。
【0030】
一実施形態では、前記接触分解触媒を作製する方法において、前記第三焙焼が行われ、且つ、前記第三焙焼で得られた生成物に対して洗浄及び任意に用いる乾燥処理を行う工程をさらに含み、前記第三焙焼の焙焼温度が300~650℃であり、焙焼時間が0.5~12h、好ましくは0.5~8hであり、前記乾燥処理の温度が100~200℃であり、乾燥時間が0.5~24hである。
【0031】
一実施形態では、前記接触分解触媒を作製する方法において、前記リン・アルミニウム無機バインダーは、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーを含み、
且つ、該方法は、
アルミナ源、前記第一粘土および水を固体含有量5~48重量%のスラリーとするステップであって、前記アルミナ源は、酸によりペプチゼーション可能な水酸化アルミニウムおよび/またはアルミナであり、ドライベース重量として計算される前記第一粘土の使用量は、Alとして計算される15~40重量部のアルミナ源に対して0重量部を超え且つ42重量部以下、好ましくは40重量部以下であるステップと、
撹拌下で、前記スラリーに濃リン酸をP/Al=1~6の重量比で添加し、得られたスラリー混合物を50~99℃で15~90分反応させるステップであって、前記P/AlのPはリン酸中の単体リンとして計算されるリン重量であり、Alはアルミナ源中の単体アルミニウムとして計算されるアルミニウム重量であるステップと、
を用いて前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーを作製する工程をさらに含む。
【0032】
一実施形態では、前記接触分解触媒を作製する方法において、スラリーとする前に、さらにY型分子篩を添加して混合する。
【0033】
第五態様では、本発明は、第三態様に記載の接触分解触媒を用いて炭化水素油の接触分解を行う方法であって、接触分解反応の条件下で、炭化水素油を前記接触分解触媒と接触させて反応させる工程を含む、方法を提供する。
【0034】
一実施形態では、炭化水素油の接触分解を行う前記方法において、前記接触分解反応の反応温度が500~800℃である。
【0035】
一実施形態では、炭化水素油の接触分解を行う前記方法において、前記炭化水素油は、原油、ナフサ、ガソリン、常圧残渣油、減圧残渣油、常圧ワックス油、減圧ワックス油、直留ワックス油、プロパンにて例えばアスファルトを除去した軽/重質油(以下、プロパン軽/重質脱油と称す)、コークス化ワックス油および石炭液化生成物から選ばれる1つまたは複数である。
【0036】
一実施形態では、炭化水素油の接触分解を行う前記方法において、炭化水素油を、本発明の前記接触分解触媒と他の通常の接触分解触媒とを含む触媒混合物と接触させて反応させる。好ましくは、該実施形態において、本発明の前記接触分解触媒は前記I型接触分解触媒である。
【0037】
一実施形態では、炭化水素油の接触分解を行う前記方法において、触媒混合物を使用する場合、当該混合物中の本発明の前記接触分解触媒(好ましくは前記I型接触分解触媒)の含量が0.1~30重量%である。
【0038】
また、本発明は、例えば以下の四系列の例示的な構成を提供する。
【0039】
第一系列の例示的な構成は、以下の構成を含むが、これらに限定されない。
【0040】
1.本発明の第一系列の例示的な構成1は、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩であって、
該分子篩のn(SiO)/n(Al)は15を超え且つ70以下であり、
として計算される前記分子篩のリン含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、
担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、担持される金属は、ランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つであり、
前記分子篩において、全細孔体積に対するメソポア体積の比率が40~70体積%であり、前記分子篩におけるメソポア体積および全細孔体積は、窒素吸着BET比表面積法で測定され、前記メソポア体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積である、MFI構造分子篩を提供する。
【0041】
2.前記分子篩のn(SiO)/n(Al)は18を超え且つ60以下であり、Pとして計算される前記分子篩のリン含量は、分子篩のドライベース重量に対して3~12重量%であり、担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して3~8重量%であり、前記分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が45~65体積%である、第一系列の例示的な構成1に記載のMFI構造分子篩。
【0042】
3.本発明の第一系列の例示的な構成3は、第一系列の例示的な構成1または2に記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を作製する方法であって、
結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを濾過および洗浄し、水洗後の分子篩を得る工程aであって、酸化ナトリウムとして計算される前記水洗後の分子篩のナトリウム含量が、当該水洗後の分子篩のドライベース全量に対して5重量%以下である工程aと、
工程aで得られた水洗後の分子篩に対してアルカリ溶液中での脱シリカ処理を行い、その後、濾過、洗浄し、アルカリ洗浄後の分子篩を得る工程bと、
工程bで得られたアルカリ洗浄後の分子篩に対してアンモニウム交換処理を行い、アンモニウム交換後の分子篩を得る工程cであって、酸化ナトリウムとして計算される前記アンモニウム交換後の分子篩のナトリウム含量が、当該アンモニウム交換後の分子篩のドライベース全量に対して0.2重量%以下である工程cと、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、リン改質処理、担持される金属の担持処理、および焙焼処理を行った後、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を得る工程dと、を含む方法を提供する。
【0043】
4.前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリー中のMFI構造分子篩は、シリカ対アルミナ比が80以下であるZSM-5分子篩である、第一系列の例示的な構成3に記載の方法。
【0044】
5.テンプレート剤法を用いて前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを作製する場合、工程bは、水洗後の分子篩を乾燥、焙焼することでテンプレート剤を除去した後に前記脱シリカ処理を行うステップをさらに含む、第一系列の例示的な構成3に記載の方法。
【0045】
6.工程bにおいて、前記アルカリ溶液中の塩基は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである、第一系列の例示的な構成3に記載の方法。
【0046】
7.工程bにおいて、前記脱シリカ処理の条件は、ドライベース重量として計算される前記分子篩の重量と、アルカリ溶液中の塩基の重量と、アルカリ溶液中の水の重量との比が1:(0.1~2):(5~15)である条件と、温度が室温~100℃である条件と、時間が0.2~4時間である条件と、を含む、第一系列の例示的な構成3に記載の方法。
【0047】
8.工程cにおいて、前記アンモニウム交換処理の条件は、ドライベース重量として計算される分子篩の重量と、アンモニウム塩の重量と、水の重量との比が1:(0.1~1):(5~10)である条件と、温度が室温~100℃である条件と、時間が0.2~4時間である条件と、を含む、第一系列の例示的な構成3に記載の方法。
【0048】
9.前記アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選ばれる1つまたは複数である、第一系列の例示的な構成8に記載の方法。
【0049】
10.工程dにおいて、前記リン改質処理は、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つのリン含有化合物を用いて、前記分子篩に対して含浸および/またはイオン交換を行うステップを含む、第一系列の例示的な構成3に記載の方法。
【0050】
11.工程dにおいて、前記担持される金属の担持処理は、前記担持される金属を含む化合物を用いて、含浸および/またはイオン交換により、1回または数回に分けて、前記担持される金属を前記分子篩に担持させるステップを含む、第一系列の例示的な構成3に記載の方法。
【0051】
12.工程dにおいて、前記焙焼処理の条件は、雰囲気が空気雰囲気および/または水蒸気雰囲気である条件と、焙焼温度が400~800℃である条件と、焙焼時間が0.5~8時間である条件と、を含む、第一系列の例示的な構成3に記載の方法。
【0052】
第二系列の例示的な構成は、以下の構成を含むが、これらに限定されない。
【0053】
1.本発明の第二系列の例示的な構成1は、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩であって、
該分子篩のn(SiO)/n(Al)は15を超え且つ70以下であり、
として計算される前記分子篩のリン含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、
担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、担持される金属は、ランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つであり、
前記分子篩において、全細孔体積に対するメソポア体積の比率が40~70体積%であり、前記分子篩におけるメソポア体積および全細孔体積は、窒素吸着BET比表面積法で測定され、前記メソポア体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積である、MFI構造分子篩を提供する。
【0054】
2.前記分子篩のRE分布パラメータDは、0.9≦D≦1.1を満たし、D=RE(S)/RE(C)、
RE(S)は、前記分子篩の結晶粒の結晶面のエッジから内部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、RE(C)は、前記分子篩の結晶粒の前記結晶面の幾何学的中心から外部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、前記Hは、前記結晶面の前記エッジ上の任意の点から該結晶面の前記幾何学的中心までの距離の10%である、第二系列の例示的な構成1に記載のMFI構造分子篩。
【0055】
3.前記分子篩のn(SiO)/n(Al)は18を超え且つ60以下であり、
として計算される前記分子篩のリン含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して3~12重量%であり、
担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して3~8重量%であり、
前記分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が45~65体積%である、第二系列の例示的な構成1または2に記載のMFI構造分子篩。
【0056】
4.本発明の第二系列の例示的な構成4は、第二系列の例示的な構成1~3のいずれか1つに記載の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を作製する方法であって、
結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを濾過および洗浄し、水洗後の分子篩を得る工程aであって、酸化ナトリウムとして計算される前記水洗後の分子篩のナトリウム含量が、当該水洗後の分子篩のドライベース全量に対して5重量%以下である工程aと、
工程aで得られた水洗後の分子篩に対してアルカリ溶液中での脱シリカ処理を行い、その後、濾過、洗浄し、アルカリ洗浄後の分子篩を得る工程bと、
工程bで得られたアルカリ洗浄後の分子篩に対してアンモニウム交換処理を行い、アンモニウム交換後の分子篩を得る工程cであって、酸化ナトリウムとして計算される前記アンモニウム交換後の分子篩のナトリウム含量が、当該アンモニウム交換後の分子篩のドライベース全量に対して0.2重量%以下である工程cと、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、リン改質処理、担持される金属の担持処理、および焙焼処理を行った後、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を得る工程dと、を含む方法を提供する。
【0057】
5.前記工程dは、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、同時に前記リン改質処理および前記担持される金属の担持処理を行った後に、前記焙焼処理を行う形式(1)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、水蒸気雰囲気下の焙焼処理、前記リン改質処理および空気雰囲気下の焙焼処理をこの順に行う形式(2)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、前記リン改質処理および前記焙焼処理をこの順に行う形式(3)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記リン改質処理、空気雰囲気下の焙焼処理、前記担持される金属の担持処理および水蒸気雰囲気下の焙焼処理をこの順に行う形式(4)と、からなる群より選ばれる1つまたは複数である、第二系列の例示的な構成4に記載の方法。
【0058】
6.前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリー中のMFI構造分子篩は、シリカ対アルミナ比が80以下であるZSM-5分子篩である、
第二系列の例示的な構成4または5に記載の方法。
【0059】
7.テンプレート剤法を用いて、前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを作製する場合、工程bは、前記水洗後の分子篩を乾燥、焙焼することでテンプレート剤を除去し後に前記脱シリカ処理の前にを行うステップをさらに含む、第二系列の例示的な構成4または5に記載の方法。
【0060】
8.工程bにおいて、前記アルカリ溶液中の塩基は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであり、
前記脱シリカ処理の条件は、ドライベース重量として計算される前記分子篩の重量と、アルカリ溶液中の塩基の重量と、アルカリ溶液中の水の重量との比が1:(0.1~2):(5~15)である条件と、温度が室温~100℃である条件と、時間が0.2~4時間である条件と、を含む、第二系列の例示的な構成4または5に記載の方法。
【0061】
9.工程cにおいて、前記アンモニウム交換処理の条件は、ドライベース重量として計算される前記分子篩の重量と、アンモニウム塩の重量と、水の重量との比が1:(0.1~1):(5~10)である条件と、温度が室温~100℃である条件と、時間が0.2~4時間である条件と、を含み、
前記アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選ばれる1つまたは複数である、第二系列の例示的な構成4または5に記載の方法。
【0062】
10.工程dにおいて、前記リン改質処理は、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つのリン含有化合物を用いて、前記分子篩に対して含浸および/またはイオン交換を行うステップを含み、
前記担持される金属の担持処理は、前記担持される金属を含む化合物を用いて、含浸および/またはイオン交換により、1回または数回に分けて、前記担持される金属を前記分子篩に担持させるステップを含み、
前記焙焼処理の条件は、雰囲気が空気雰囲気および/または水蒸気雰囲気である条件と、焙焼温度が400~800℃である条件と、焙焼時間が0.5~8時間である条件と、を含む、第二系列の例示的な構成4または5に記載の方法。
【0063】
第三系列の例示的な構成は、以下の構成を含むが、これらに限定されない。
【0064】
1.本発明の第三系列の例示的な構成1は、接触分解触媒であって、
当該接触分解触媒のドライベース重量に対し、ドライベース重量として計算される1~25重量%のY型分子篩と、ドライベース重量として計算される5~50重量%の、メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩と、ドライベース重量として計算される1~60重量%の無機バインダーと、ドライベース重量として計算される0~60重量%の任意に用いる第二粘土と、を含み、
前記無機バインダーは、リン・アルミニウム無機バインダーおよび/または他の無機バインダーを含み、
前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩のn(SiO)/n(Al)は15を超え且つ70以下であり、
として計算される前記分子篩のリン含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、
担持されているレアアースの酸化物として計算される、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩中の担持されるレアアースの含量は、当該メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、担持されるレアアースは、ランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つであり、
前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が40~70%であり、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩におけるメソポアの体積および全細孔の体積は、窒素吸着BET比表面積法で測定され、前記メソポアの体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積である、ことを特徴とする接触分解触媒を提供する。
【0065】
2.前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩のRE分布パラメータDは、0.9≦D≦1.3を満たし、D=RE(S)/RE(C)、
RE(S)は、前記分子篩の結晶粒の結晶面のエッジから内部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、RE(C)は、前記分子篩の結晶粒の前記結晶面の幾何学的中心から外部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、前記Hは、前記結晶面の前記エッジ上の任意の点から該結晶面の前記幾何学的中心までの距離の10%である、第三系列の例示的な構成1に記載の接触分解触媒。
【0066】
3.前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩のn(SiO)/n(Al)は18を超え且つ60以下であり、Pとして計算される前記分子篩のリン含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して3~12重量%であり、担持されているレアアースの酸化物として計算される前記分子篩中の担持されるレアアースの含量は、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩のドライベース重量に対して3~8重量%であり、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が45~65%である、第三系列の例示的な構成1または2に記載の接触分解触媒。
【0067】
4.前記接触分解触媒は、該接触分解触媒のドライベース重量に対し、ドライベース重量として計算される3~40重量%のリン・アルミニウム無機バインダー、および/または、ドライベース重量として計算される1~30重量%の他の無機バインダーを含む、第三系列の例示的な構成1に記載の接触分解触媒。
【0068】
5.前記リン・アルミニウム無機バインダーは、アルミノホスフェートゲル、および/または、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーであり、
前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、当該第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーのドライベース重量に対し、Alとして計算される15~40重量%のアルミニウム成分と、Pとして計算される45~80重量%のリン成分と、ドライベースとして計算される、0を超え且つ40重量%以下の第一粘土と、を含み、
前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、P/Al重量比が1.0~6.0であり、pHが1~3.5であり、固体含有量が15~60重量%であり、
前記第一粘土は、カオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイトおよび珪藻土のうちの少なくとも1つを含み、
前記他の無機バインダーは、擬似ベーマイト、アルミナゾル、シリカ-アルミナゾルおよび水ガラスのうちの少なくとも1つを含む、第三系列の例示的な構成4に記載の接触分解触媒。
【0069】
6.前記第二粘土は、カオリン、メタカオリン、珪藻土、海泡石、アタパルジャイト、モンモリロナイトおよびレクトライトから選ばれる少なくとも1つであり、
前記Y型分子篩は、PSRY分子篩、PSRY-S分子篩、レアアース含有PSRY分子篩、レアアース含有PSRY-S分子篩、USY分子篩、レアアース含有USY分子篩、REY分子篩、REHY分子篩およびHY分子篩のうちの少なくとも1つを含む、第三系列の例示的な構成1に記載の接触分解触媒。
【0070】
7.本発明の第三系列の例示的な構成7は、接触分解触媒を作製する方法であって、
Y型分子篩と、メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩と、無機バインダーとを混合することでスラリー化し、噴霧乾燥を行った後、任意に焙焼処理を行い、前記接触分解触媒を得る工程を含み、
前記混合は第二粘土を入れても入れなくてもよく、
ドライベースとして計算されるとき、前記Y型分子篩と、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩と、前記無機バインダーと、前記第二粘土との重量比は(1~25):(5~50):(1~60):(0~60)であり、
前記無機バインダーは、リン・アルミニウム無機バインダーおよび/または他の無機バインダーを含み、
前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩のn(SiO)/n(Al)は15を超え且つ70以下であり、
として計算される、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩のリン含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、
担持されているレアアースの酸化物として計算される、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩中の担持されるレアアースの含量は、当該メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、担持されるレアアースは、ランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つであり、
前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が40~70%であり、
前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩におけるメソポアの体積および全細孔の体積は、窒素吸着BET比表面積法で測定され、前記メソポアの体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積である、方法を提供する。
【0071】
8.前記焙焼によって得られた生成物に対して、洗浄および任意に用いる乾燥処理を行い、前記接触分解触媒を得る工程をさらに含み、
前記第一焙焼処理は焙焼温度が300~650℃であり、焙焼時間が0.5~12hである、第三系列の例示的な構成7に記載の方法。
【0072】
9.前記Y型分子篩は、PSRY分子篩、PSRY-S分子篩、レアアース含有PSRY分子篩、レアアース含有PSRY-S分子篩、USY分子篩、レアアース含有USY分子篩、REY分子篩、REHY分子篩およびHY分子篩のうちの少なくとも1つを含み、
前記第二粘土は、カオリン、メタカオリン、珪藻土、海泡石、アタパルジャイト、モンモリロナイトおよびレクトライトから選ばれる少なくとも1つであり、
前記他の無機バインダーは、擬似ベーマイト、アルミナゾル、シリカ-アルミナゾルおよび水ガラスのうちの少なくとも1つを含み、
前記リン・アルミニウム無機バインダーは、アルミノホスフェートゲル、および/または、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーである、第三系列の例示的な構成7に記載の方法。
【0073】
10.前記バインダーは、重量比が(3~40):(1~30)の前記リン・アルミニウム無機バインダーおよび前記他の無機バインダーを含み、
且つ、
アルミナ源、前記第一粘土および水をスラリー化し、固体含有量5~48重量%のスラリー分散物を得るステップであって、前記アルミナ源は、酸によってペプチゼーション可能な水酸化アルミニウムおよび/またはアルミナであり、ドライベース重量として計算される前記第一粘土の使用量は、Alとして計算される15~40重量部の前記アルミナ源に対して0重量部を超え且つ40重量部以下であるステップと、
撹拌下で、前記スラリーに濃リン酸をP/Al=1~6の重量比で添加し、得られたスラリー混合物を50~99℃で15~90分反応させるステップであって、前記P/AlのPはリン酸中の単体リンとして計算されるリン重量であり、Alはアルミナ源中の単体アルミニウムとして計算されるアルミニウム重量であるステップと、
を用いて前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーを作製する工程をさらに含む、第三系列の例示的な構成7に記載の方法。
【0074】
11.結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを濾過および洗浄し、水洗後の分子篩を得る工程aであって、酸化ナトリウムとして計算される前記水洗後の分子篩のナトリウム含量が、当該水洗後の分子篩のドライベース全量に対して5重量%以下である工程aと、
工程aで得られた水洗後の分子篩に対してアルカリ溶液中での脱シリカ処理を行い、その後、濾過、洗浄し、アルカリ洗浄後の分子篩を得る工程bと、
工程bで得られたアルカリ洗浄後の分子篩に対してアンモニウム交換処理を行い、アンモニウム交換後の分子篩を得る工程cであって、酸化ナトリウムとして計算される前記アンモニウム交換後の分子篩のナトリウム含量が、当該アンモニウム交換後の分子篩のドライベース全量に対して0.2重量%以下である工程cと、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、リン改質処理、担持されるレアアースの担持処理、および第三焙焼処理を行った後、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩を得る工程dと、をさらに含む、第三系列の例示的な構成7に記載の方法。
【0075】
12.前記工程dは、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、同時に前記リン改質処理および前記担持されるレアアースの担持処理を行った後に、前記第三焙焼処理を行う形式(1)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持されるレアアースの担持処理、水蒸気雰囲気下の第三焙焼処理、前記リン改質処理および空気雰囲気下の第三焙焼処理をこの順に行う形式(2)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持されるレアアースの担持処理、前記リン改質処理および前記第三焙焼処理をこの順に行う形式(3)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記リン改質処理、空気雰囲気下の第三焙焼処理、前記担持されるレアアースの担持処理および水蒸気雰囲気下の第三焙焼処理をこの順に行う形式(4)と、から選ばれる1つまたは複数である、第三系列の例示的な構成11に記載の方法。
【0076】
13.前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリー中のMFI構造分子篩は、シリカ対アルミナ比が80以下であるZSM-5分子篩であり、
テンプレート剤法を用いて、前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを作製する場合、工程bは、前記水洗後の分子篩に対して乾燥、第四焙焼を行うことでテンプレート剤を除去した後に前記脱シリカ処理の前に行うステップをさらに含む、第三系列の例示的な構成11に記載の方法。
【0077】
14.工程bにおいて、前記アルカリ溶液中の塩基は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであり、
前記脱シリカ処理の条件は、ドライベース重量として計算される前記分子篩の重量と、アルカリ溶液中の塩基の重量と、アルカリ溶液中の水の重量との比が1:(0.1~2):(5~15)である条件と、温度が10℃~100℃である条件と、時間が0.2~4時間である条件と、を含む、第三系列の例示的な構成11に記載の方法。
【0078】
15.工程cにおいて、前記アンモニウム交換処理の条件は、ドライベース重量として計算される前記分子篩の重量と、アンモニウム塩の重量と、水の重量との比が1:(0.1~1):(5~10)である条件と、温度が10℃~100℃である条件と、時間が0.2~4時間である条件と、を含み、
前記アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選ばれる1つまたは複数である、第三系列の例示的な構成11または12に記載の方法。
【0079】
16.工程dにおいて、前記リン改質処理は、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つのリン含有化合物を用いて、分子篩に対して含浸および/またはイオン交換を行うステップを含み、
前記担持されるレアアースの担持処理は、担持されるレアアースを含む化合物を用いて、含浸および/またはイオン交換により、1回または数回に分けて、前記担持されるレアアースを前記分子篩に担持させるステップを含み、
前記第三焙焼処理の条件は、雰囲気が空気雰囲気および/または水蒸気雰囲気である条件と、焙焼温度が400~800℃である条件と、焙焼時間が0.5~8時間である条件と、を含む、第三系列の例示的な構成11または12に記載の方法。
【0080】
17.第三系列の例示的な構成7~16のいずれか1項に記載の方法で作製される接触分解触媒。
【0081】
18.本発明の第三系列の例示的な構成18は、炭化水素油の接触分解における、第三系列の例示的な構成1~7および例示的な構成17のいずれか1つに記載の接触分解触媒の利用を提供する。
【0082】
19.前記利用は、接触分解反応の条件下で、炭化水素油を前記接触分解触媒と接触させて反応させるステップを含み、前記接触分解反応の条件は、500~800℃の反応温度を含む、第三系列の例示的な構成18に記載の利用。
【0083】
20.前記炭化水素油は、原油、ナフサ、ガソリン、常圧残渣油、減圧残渣油、常圧ワックス油、減圧ワックス油、直留ワックス油、プロパン軽/重質脱油、コークス化ワックス油および石炭液化生成物から選ばれる1つまたは複数である、第三系列の例示的な構成19に記載の利用。
【0084】
第四系列の例示的な構成は、以下の構成を含むが、これらに限定されない。
【0085】
1.本発明の第四系列の例示的な構成1は、接触分解助剤であって、
当該接触分解助剤のドライベース重量に対し、ドライベース重量として計算される8~78重量%の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、ドライベース重量として計算される1~40重量%のバインダーと、ドライベース重量として計算される0~65重量%の第二粘土と、を含み、
前記バインダーは、リン・アルミニウム無機バインダーおよび/または他の無機バインダーを含み、
前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩のn(SiO)/n(Al)は15を超え且つ70以下であり、
として計算される前記分子篩のリン含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、
担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、前記担持される金属は、ランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つであり、
前記分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が40~70%であり、前記分子篩におけるメソポアの体積および全細孔の体積は、窒素吸着BET比表面積法で測定され、前記メソポアの体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積である、ことを特徴とする接触分解助剤を提供する。
【0086】
2.前記分子篩のRE分布パラメータDは、0.9≦D≦1.3を満たし、D=RE(S)/RE(C)、
RE(S)は、前記分子篩の結晶粒の結晶面のエッジから内部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、RE(C)は、前記分子篩の結晶粒の前記結晶面の幾何学的中心から外部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、前記Hは、前記結晶面の前記エッジ上の任意の点から該結晶面の前記幾何学的中心までの距離の10%である、第四系列の例示的な構成1に記載の接触分解助剤。
【0087】
3.前記分子篩のn(SiO)/n(Al)は18を超え且つ60以下であり、Pとして計算される前記分子篩のリン含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して3~12重量%であり、担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して3~8重量%であり、前記分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が45~65%である、第四系列の例示的な構成1または2に記載の接触分解助剤。
【0088】
4.前記リン・アルミニウム無機バインダーは、アルミノホスフェートゲル、および/または、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーであり、
前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、当該第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーのドライベース重量に対し、Alとして計算される10~40重量%のアルミニウム成分と、Pとして計算される40~80重量%のリン成分と、ドライベースとして計算される、0を超え且つ42重量%以下の第一粘土と、を含み、
前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、P/Al重量比が1.0~6.0であり、pHが1~3.5であり、固体含有量が15~60重量%であり、
前記第一粘土は、カオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイトおよび珪藻土のうちの少なくとも1つを含み、
前記他の無機バインダーは、擬似ベーマイト、アルミナゾル、シリカ-アルミナゾルおよび水ガラスのうちの少なくとも1つを含む、第四系列の例示的な構成1に記載の接触分解助剤。
【0089】
5.前記第二粘土は、カオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイト、含水ハロイサイト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、ベントナイトおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1つである、第四系列の例示的な構成1に記載の接触分解助剤。
【0090】
6.前記バインダーは、該バインダーのドライベース重量に対し、ドライベース重量として計算される3~39重量%の前記リン・アルミニウム無機バインダー、および、ドライベース重量として計算される1~30重量%の前記他の無機バインダーを含む、第四系列の例示的な構成1に記載の接触分解助剤。
【0091】
7.本発明の第四系列の例示的な構成7は、接触分解助剤を作製する方法であって、
メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、バインダーと、任意に用いる第二粘土とを混合することでスラリー化し、噴霧乾燥を行った後、前記接触分解助剤を得る工程を含み、
ドライベースとして計算される8~78重量部の、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩に対し、ドライベースとして計算される前記バインダーの使用量は1~40重量部であり、ドライベースとして計算される前記第二粘土の使用量は0~65重量部であり、
前記バインダーは、リン・アルミニウム無機バインダーおよび/または他の無機バインダーを含み、
前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩のn(SiO)/n(Al)は15を超え且つ70以下であり、
として計算される前記分子篩のリン含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、
担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、担持される金属は、ランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つであり、
前記分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が40~70%であり、前記分子篩におけるメソポアの体積および全細孔の体積は、窒素吸着BET比表面積法で測定され、前記メソポアの体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積である、方法を提供する。
【0092】
8.前記噴霧乾燥によって得られた生成物に対して、第一焙焼、洗浄、および任意に用いる乾燥処理を行い、前記接触分解助剤を得る工程をさらに含み、
前記第一焙焼の焙焼温度が300~650℃であり、焙焼時間が0.5~8hであり、前記乾燥処理の温度が100~200℃であり、乾燥時間が0.5~24hである、第四系列の例示的な構成7に記載の方法。
【0093】
9.結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを濾過および洗浄し、水洗後の分子篩を得る工程aであって、酸化ナトリウムとして計算される前記水洗後の分子篩のナトリウム含量が、当該水洗後の分子篩のドライベース全量に対して5重量%以下である工程aと、
工程aで得られた水洗後の分子篩に対してアルカリ溶液中での脱シリカ処理を行い、その後、濾過、洗浄し、アルカリ洗浄後の分子篩を得る工程bと、
工程bで得られたアルカリ洗浄後の分子篩に対してアンモニウム交換処理を行い、アンモニウム交換後の分子篩を得る工程cであって、酸化ナトリウムとして計算される前記アンモニウム交換後の分子篩のナトリウム含量が、当該アンモニウム交換後の分子篩のドライベース全量に対して0.2重量%以下である工程cと、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、リン改質処理、担持される金属の担持処理、および第二焙焼処理を行った後、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を得る工程dと、
を用いて、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を作製する工程をさらに含む、第四系列の例示的な構成7に記載の方法。
【0094】
10.前記工程dは、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、同時に前記リン改質処理および前記担持される金属の担持処理を行った後に、第二焙焼処理を行う形式(1)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、水蒸気雰囲気下の第二焙焼処理、前記リン改質処理および空気雰囲気下の第二焙焼処理をこの順に行う形式(2)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、前記リン改質処理および前記第二焙焼処理をこの順に行う形式(3)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記リン改質処理、空気雰囲気下の第二焙焼処理、前記担持される金属の担持処理および水蒸気雰囲気下の第二焙焼処理をこの順に行う形式(4)と、から選ばれる1つまたは複数である、第四系列の例示的な構成9に記載の方法。
【0095】
11.前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリー中のMFI構造分子篩は、シリカ対アルミナ比が80以下であるZSM-5分子篩であり、
テンプレート剤法を用いて前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを作製する場合、工程bは、前記水洗後の分子篩に対して乾燥および第三焙焼を行うことでテンプレート剤を除去した後に前記脱シリカ処理を行うステップをさらに含む、第四系列の例示的な構成9に記載の方法。
【0096】
12.工程bにおいて、前記アルカリ溶液中の塩基は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであり、
前記脱シリカ処理の条件は、ドライベース重量として計算される前記分子篩の重量と、アルカリ溶液中の塩基の重量と、アルカリ溶液中の水の重量との比が1:(0.1~2):(5~15)である条件と、温度が10℃~100℃である条件と、時間が0.2~4時間である条件と、を含む、第四系列の例示的な構成9に記載の方法。
【0097】
13.工程cにおいて、前記アンモニウム交換処理の条件は、ドライベース重量として計算される前記分子篩の重量と、アンモニウム塩の重量と、水の重量との比が1:(0.1~1):(5~10)である条件と、温度が10℃~100℃である条件と、時間が0.2~4時間である条件と、を含み、
前記アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選ばれる1つまたは複数である、第四系列の例示的な構成9または10に記載の方法。
【0098】
14.工程dにおいて、前記リン改質処理は、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つのリン含有化合物を用いて、分子篩に対して含浸および/またはイオン交換を行うステップを含み、
前記担持される金属の担持処理は、前記担持される金属を含む化合物を用いて、含浸および/またはイオン交換により、1回または数回に分けて、前記担持される金属を前記分子篩に担持させるステップを含み、
前記第二焙焼処理の条件は、雰囲気が空気雰囲気および/または水蒸気雰囲気である条件と、焙焼温度が400~800℃である条件と、焙焼時間が0.5~8時間である条件と、を含む、第四系列の例示的な構成9または10に記載の方法。
【0099】
15.前記第二粘土は、カオリン、海泡石、アタパルジャイト、レクトライト、モンモリロナイト、含水ハロイサイト、ハロイサイト、ハイドロタルサイト、ベントナイトおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1つである、第四系列の例示的な構成7に記載の方法。
【0100】
16.前記バインダーは、前記リン・アルミニウム無機バインダーおよび前記他の無機バインダーを含み、
ドライベースとして計算される8~78重量部の、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩に対し、ドライベース重量として計算される前記リン・アルミニウム無機バインダーの使用量は3~39重量部であり、ドライベース重量として計算される前記他の無機バインダーの使用量は1~30重量部であり、
前記リン・アルミニウム無機バインダーは、アルミノホスフェートゲル、および/または、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーであり、
前記他の無機バインダーは、擬似ベーマイト、アルミナゾル、シリカ-アルミナゾルおよび水ガラスのうちの少なくとも1つを含む、第四系列の例示的な構成7に記載の方法。
【0101】
17.アルミナ源、前記第一粘土および水をスラリー化し、固体含有量5~48重量%のスラリー分散物を得るステップであって、前記アルミナ源は、酸によりペプチゼーション可能な水酸化アルミニウムおよび/またはアルミナであり、ドライベース重量として計算される前記第一粘土の使用量は、Alとして計算される10~40重量部のアルミナ源に対して0重量部を超え且つ42重量部以下であるステップと、
撹拌下で、前記スラリーに濃リン酸をP/Al=1~6の重量比で添加し、得られたスラリー混合物を50~99℃で15~90分反応させるステップであって、前記P/AlのPはリン酸中の単体リンとして計算されるリン重量であり、Alはアルミナ源中の単体アルミニウムとして計算されるアルミニウム重量であるステップと、
を用いて前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーを作製する工程をさらに含む、第四系列の例示的な構成16に記載の方法。
【0102】
18.本発明の第四系列の例示的な構成18は、第四系列の例示的な構成7~17のいずれか1つに記載の方法により作製される接触分解助剤を提供する。
【0103】
19.本発明の第四系列の例示的な構成19は、炭化水素油の接触分解における、第四系列の例示的な構成1~6および第四系列の例示的な構成18のいずれか1つに記載の接触分解助剤の利用を提供する。
【0104】
20.前記炭化水素の油接触分解は、接触分解の条件下で、炭化水素油を前記接触分解助剤と接触させて反応させるか、炭化水素油を前記接触分解助剤および接触分解触媒を含む触媒混合物と接触させて反応させるステップを含み、
前記接触分解の条件は、500~800℃の反応温度を含む、第四系列の例示的な構成19に記載の利用。
【0105】
21.前記触媒混合物中の前記接触分解助剤の含量が0.1~30重量%である、第四系列の例示的な構成20に記載の利用。
【0106】
22.前記炭化水素油は、原油、ナフサ、ガソリン、常圧残渣油、減圧残渣油、常圧ワックス油、減圧ワックス油、直留ワックス油、プロパン軽/重質脱油、コークス化ワックス油および石炭液化生成物から選ばれる1つまたは複数である、第四系列の例示的な構成20または21に記載の利用。
【0107】
意外なことに、化学的な方法によってMFI構造分子篩に対して脱シリカ処理、ナトリウム洗浄を行った後に、リン改質処理および金属担持処理を行うことによって作製されたリン・レアアース含有多級細孔MFI構造分子篩は、触媒または助剤の活性成分として接触分解プロセスに使用できることを本発明者らが発見した。
【0108】
本発明によって提供される脱シリカ処理後のMFI構造分子篩は、豊富なメソポア構造を有するため、分子篩チャネルへのレアアースの移動が容易となり、レアアースと分子篩の酸中心との相乗効果を強化することができる。
【0109】
本発明によって提供される改質MFI構造分子篩の特徴としては、分解能力が高く、形状選択性が優れ、エチレン収率およびエチレン選択性が高い。
【0110】
本発明の他の特徴および利点を、以下の具体的な実施形態において詳細に説明する。
【0111】
〔具体的な実施形態〕
以下、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。ここで説明する具体的な実施形態は単に本発明を説明、解釈するためのものであり、本発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0112】
(メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩)
本発明の前記第一態様によれば、本発明は、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を提供する。該分子篩はケイ素成分、アルミニウム成分、リン成分および担持される金属成分を含み、該分子篩のn(SiO)/n(Al)は15を超え且つ70以下であり、Pとして計算される該分子篩のリン含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~15重量%であり、担持されている金属の酸化物として計算される該分子篩中の担持される金属の含量は、分子篩のドライベース重量に対して1~10重量%であり、担持される金属は、レアアース元素から選ばれる1つまたは複数であり、好ましくはランタンおよびセリウムから選ばれる1つまたは2つであり、該分子篩において、全細孔体積に対するメソポア体積の比率が40~70体積%であり、該分子篩におけるメソポア体積および全細孔体積は、窒素吸着BET比表面積法で測定され、前記メソポア体積は、孔径が2nmを超え且つ100nm以下である細孔の体積である。
【0113】
好ましくは、前記分子篩のn(SiO)/n(Al)は18を超え且つ60以下であり、Pとして計算される前記分子篩のリン含量は、前記分子篩のドライベース重量に対して3~12重量%であり、担持されている金属の酸化物として計算される前記分子篩中の担持される金属の含量は、分子篩のドライベース重量に対して3~8重量%であり、前記分子篩において、全細孔の体積に対するメソポアの体積の比率が45~65体積%である。
【0114】
本発明は、分子篩触媒材料について、ラジカル反応を促進する性能を改善する研究を行い、接触分解温度下でのカルボニウムイオンルートおよびラジカルルートの割合を調整することにより、分解活性および生成物の分布を調整する目的を達成し、エチレンの収率および選択性を高めることができた。
【0115】
好ましくは、本発明によれば、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩のRE分布パラメータDは、0.9≦D≦1.3を満たし、好ましくは0.9≦D≦1.1を満たす。ここで、D=RE(S)/RE(C)。RE(S)は、前記分子篩の結晶粒の結晶面のエッジから内部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、RE(C)は、前記分子篩の結晶粒の前記結晶面の幾何学的中心から外部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、前記Hは、前記結晶面の前記エッジ上の任意の点から該結晶面の前記幾何学的中心までの距離の10%である。RE分布パラメータが上記の範囲を満たす分子篩は、チャネル中により多くのレアアースが含まれるため、エチレン、プロピレンおよびBTXの収率を高めることができる。
【0116】
本発明にかかる、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩について、TEM-EDS法を用いて分子篩のレアアース含量を測定することは、当業者が熟知している。また、前記幾何学的中心も当業者が熟知しており、公式により計算できるため、本発明ではその詳細な説明を省略する。通常、対称的な形状の幾何学的中心は、対向する各頂点を結ぶ直線の交点である。例えば、通常の正六角形を有するZSM-5では、その六角形の結晶面の幾何学的中心は、対向する頂点に基づく3つの直線の交点に位置する。
【0117】
(メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を作製する方法)
本発明の前記第二態様によれば、さらに本発明は、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を作製する方法を提供する。該方法は、
結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを濾過および洗浄し、水洗後の分子篩を得る工程aであって、酸化ナトリウムとして計算される前記水洗後の分子篩のナトリウム含量が、当該水洗後の分子篩のドライベース全量に対して5重量%以下である工程aと、
工程aで得られた水洗後の分子篩に対してアルカリ溶液中での脱シリカ処理を行い、その後、濾過、洗浄し、アルカリ洗浄後の分子篩を得る工程bと、
工程bで得られたアルカリ洗浄後の分子篩に対してアンモニウム交換処理を行い、アンモニウム交換後の分子篩を得る工程cであって、酸化ナトリウムとして計算される前記アンモニウム交換後の分子篩のナトリウム含量が、当該アンモニウム交換後の分子篩のドライベース全量に対して0.2重量%以下である工程cと、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、リン改質処理、担持される金属の担持処理、および焙焼処理を行い、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を得る工程dと、を含む。
【0118】
本発明によれば、前記工程dは、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、同時に前記リン改質処理および前記担持される金属の担持処理を行った後に、前記焙焼処理を行う形式(1)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、水蒸気雰囲気下の焙焼処理、前記リン改質処理および空気雰囲気下の焙焼処理をこの順に行う形式(2)であって、この形式を採用すると、分子篩のチャネル中により多くのレアアースが存在するようになり、エチレン、プロピレンおよびBTXの収率を高めることができる形式(2)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記担持される金属の担持処理、前記リン改質処理および前記焙焼処理をこの順に行う形式(3)と、
工程cで得られたアンモニウム交換後の分子篩に対して、前記リン改質処理、空気雰囲気下の焙焼処理、前記担持される金属の担持処理および水蒸気雰囲気下の焙焼処理をこの順に行う形式(4)と、から選ばれる1つまたは複数の形式によって行われてもよい。
【0119】
本発明によれば、結晶化したMFI構造分子篩のスラリーは、当業者が熟知しており、無アミン法で結晶化させた分子篩スラリーであってもよく、テンプレート剤法で作製された分子篩スラリーであってもよい。前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリー中のMFI構造分子篩は、例えば、シリカ対アルミナ比が80以下であるZSM-5分子篩である。なお、テンプレート剤法を用いて前記結晶化したMFI構造分子篩のスラリーを作製する場合、工程bは、水洗後の分子篩に対して乾燥および第二焙焼を行うことでテンプレート剤を除去した後に前記脱シリカ処理を行う工程を、さらに含んでもよい。当該乾燥および第二焙焼の温度は当業者が熟知しているため、その詳細な説明を省略する。
【0120】
本発明によれば、工程bにおいて、アルカリ溶液は当業者が熟知している。例えば、前記アルカリ溶液は、無機塩基の水溶液、例えば水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムの水溶液であってもよい。また、前記脱シリカ処理の条件は、ドライベース重量として計算される分子篩の重量と、アルカリ溶液中の塩基の重量と、アルカリ溶液中の水の重量との比が1:(0.1~2):(5~15)であるという条件と、温度が室温~100℃であるという条件と、時間が0.2~4時間であるという条件と、を含んでもよい。
【0121】
本発明によれば、工程cにおいて、アンモニウム交換処理は当業者が熟知している。例えば、前記アンモニウム交換処理は、アンモニウム塩の水溶液を用いてアルカリ洗浄後の分子篩を処理するステップを含む。当該アンモニウム交換処理の条件は、ドライベース重量として計算される分子篩の重量と、アンモニウム塩の重量と、水の重量との比が1:(0.1~1):(5~10)であるという条件と、温度が室温~100℃であるという条件と、時間が0.2~4時間であるという条件と、を含でんもよい。前記アンモニウム塩は、通常の無機アンモニウム塩であってもよく、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび硝酸アンモニウムから選ばれる1つまたは複数であってもよい。
【0122】
本発明によれば、工程dにおいて、リン改質処理は、分子篩にリンを担持させる処理であり、例えば、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびリン酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1つのリン含有化合物を用いた含浸および/またはイオン交換を含んでもよい。リン改質処理および担持処理は同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
【0123】
本発明によれば、工程dにおいて、担持処理は、分子篩に金属を担持させる処理である。例えば、前記担持される金属の担持処理は、担持される金属を含む化合物を用いて、含浸および/またはイオン交換により、1回または数回に分けて、前記担持される金属を前記分子篩に担持させるステップを含んでもよい。
【0124】
本発明によれば、工程dにおいて、焙焼処理は当業者が熟知しており、前記焙焼処理の条件は、例えば、雰囲気が空気雰囲気および/または水蒸気雰囲気であるという条件と、焙焼温度が400~800℃であるという条件と、焙焼時間が0.5~8時間であるという条件と、を含む。
【0125】
(接触分解触媒)
本発明の前記第三態様によれば、本発明は、接触分解触媒であって、該接触分解触媒のドライベース重量に対し、0~25重量%の本発明におけるY型分子篩と、5~75重量%の本発明の、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、1~60重量%の無機バインダーであって、当該バインダーがリン・アルミニウム無機バインダー、および/または、任意に用いる他の無機バインダーを含む無機バインダーと、0~65重量%、好ましくは10重量%~55重量%の任意に用いる第二粘土と、を含む、ことを特徴とする接触分解触媒をさらに提供する。
【0126】
本発明で提供される接触分解触媒は、ラジカル反応を促進する性能を備え、接触分解温度下でのカルボニウムイオンルートおよびラジカルルートの割合が調整されていることにより、分解活性および生成物の分布を調整する目的が達成されている。該分解触媒を炭化水素油の接触分解に用いることにより、エチレンの収率および選択性を高めると同時に、比較的高いプロピレン収率およびプロピレン選択性を維持できる。
【0127】
好ましくは、本発明によれば、前記分子篩のRE分布パラメータDは、0.9≦D≦1.3を満たし、好ましくは0.9≦D≦1.1を満たす。ここで、D=RE(S)/RE(C)、RE(S)は、分子篩の結晶粒の結晶面のエッジから内部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、RE(C)は、分子篩の結晶粒の前記結晶面の幾何学的中心から外部へH距離までの範囲における100nmよりも大きい任意の領域内の、TEM-EDS法で測定されたレアアース含量を示し、前記Hは、前記結晶面のエッジ上の任意の点から該結晶面の幾何学的中心までの距離の10%である。RE分布パラメータが上記の範囲を満たす分子篩は、チャネル中により多くのレアアースが含まれるため、エチレン、プロピレンの収率を高めることができる。
【0128】
本発明の接触分解触媒について、TEM-EDS法を用いて分子篩のレアアース含量を測定することは当業者が熟知している。また、前記幾何学中心も当業者が熟知しており、公式により計算できるため、本発明ではその詳細な説明を省略する。通常、対称的な形状の幾何学的中心は、対向する各頂点を結ぶ直線の交点である。例えば、通常の正六角形のZSM-5では、その六角形の結晶面の幾何学中心は、対向する頂点に基づく3つの直線の交点に位置する。
【0129】
本発明によれば、前記無機バインダーとして使用可能なリン・アルミニウム無機接着剤は、第一粘土含有リン・アルミニウム無機接着剤および/またはアルミノホスフェートゲルであってもよい。
【0130】
本発明の具体的な一実施形態によれば、特に例えば前記I型またはII型接触分解触媒において、前記リン・アルミニウム無機バインダーは、当該リン・アルミニウム無機バインダーのドライベース重量に対し、Alとして計算される10~40重量%のアルミニウム成分と、Pとして計算される40~80重量%のリン成分と、ドライベース重量として計算される42重量%以下の第一粘土と、を含む。
【0131】
好ましくは、前記リン・アルミニウム無機バインダー(特に、例えば前記I型またはII型接触分解触媒の場合)は、Alとして計算される15~40重量%のアルミニウム成分と、Pとして計算される45~80重量%のリン成分と、ドライベース重量として計算される1~40重量%の第一粘土とを含む。好ましくは、前記リン・アルミニウム無機バインダーは、Alとして計算される15~35重量%のアルミニウム成分と、Pとして計算される50~75重量%のリン成分と、ドライベース重量として計算される8~35重量%の第一粘土とを含み、且つ、当該リン・アルミニウム無機バインダーのP/Al重量比が好ましくは1.2~6.0、さらに好ましくは2.0~5.0であり、当該リン・アルミニウム無機バインダーのpH値が好ましくは1.5~3.0である。
【0132】
本発明の別の具体的な実施形態によれば、前記リン・アルミニウム無機バインダーは、当該リン・アルミニウム無機バインダーのドライベース重量に対し、Alとして計算される20~40重量%のアルミニウム成分と、Pとして計算される60~80重量%のリン成分と、を含んでもよい。
【0133】
本発明によれば、粘土は当業者が熟知しており、前記第一粘土は好ましくはレクトライトを含む。
【0134】
本発明によれば、前記他の無機バインダーは、前記アルミノホスフェートゲルおよびリン・アルミニウム無機バインダーを除き、接触分解触媒または触媒のバインダー組成として一般に用いられる無機酸化物バインダーから選ばれる1つまたは複数であってもよい。
【0135】
本発明の一実施形態によれば、特に、例えば前記I型接触分解触媒の場合、当該接触分解触媒は、ドライベースとして計算されるとき、15~70重量%の本発明の前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、5~36重量%のバインダーと、10~55重量%の第二粘土とを含むことが好ましい。
【0136】
本発明の一実施形態によれば、特に、例えば前記II型接触分解触媒の場合、当該接触分解触媒は、ドライベースとして計算されるとき、5~35重量%のリン・アルミニウム無機接着剤と、1.5~20重量%のY型分子篩と、10~45重量%の本発明の前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、10~50重量%の第二粘土と、5~28重量%の他の無機バインダーとを含むことが好ましい。
【0137】
本発明の接触分解触媒によれば、特に例えば前記II型接触分解触媒において、前記第二粘土は、好ましくはカオリン、メタカオリン、レクトライトのうちの1つであってもよい。本発明の触媒は、特に、例えば前記II型接触分解触媒の場合、当該触媒の全量に対して好ましくは10~50重量%の第二粘土、例えば12~28重量%または15~40重量%の第二粘土を含む。
【0138】
(前記接触分解触媒を作製する方法)
本発明の前記第四態様によれば、さらに本発明は、第三態様に記載の接触分解触媒を作製する方法であって、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩(または、Y型分子篩も)、バインダー、および任意に用いる第二粘土を混合してスラリーとする工程と、前記スラリーを噴霧乾燥する工程と、任意に行う第三焙焼処理と、を含む方法を提供する。
【0139】
本発明の一実施形態によれば、特に、例えば前記I型接触分解触媒において、ドライベースとして計算されるとき、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、前記バインダーと、前記第二粘土との重量比は、(8~78):(1~40):(0~65)であってもよく、好ましくは(15~70):(5~36):(10~55)であってもよい。
【0140】
本発明の一実施形態によれば、前記接触分解触媒、特に、例えば前記II型接触分解触媒を作製する方法は、スラリーとする前にさらにY型分子篩を添加して混合するステップをさらに含む。ドライベースとして計算されるとき、前記Y型分子篩と、前記メソポアを豊富に含むリン・レアアース含有MFI構造分子篩と、前記無機バインダーと、前記第二粘土との重量比は、(1~25):(5~50):(1~60):(0~60)であってもよく、好ましくは(1.5~20):(10~45):(5~55):(10~50)であってもよい。
【0141】
本発明の一実施形態によれば、特に、例えば前記I型接触分解触媒の場合、前記方法において、前記第三焙焼が行われ、且つ、前記第三焙焼で得られた生成物に対して洗浄および任意に用いる乾燥処理を行う工程をさらに含んでもよい。前記第三焙焼の焙焼温度は350~650℃、例えば400~600℃、好ましくは450~550℃であってもよく、焙焼時間は0.5~6時間または0.5~2時間であってもよく、前記洗浄は、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムのうちの1つを使用して行ってもよく、洗浄温度は40~70℃であってもよく、前記乾燥処理の温度は100~200℃、例えば100~150℃であってもよく、乾燥時間は0.5~24h、例えば1~12hであってもよい。
【0142】
本発明の一実施形態によれば、特に、例えば前記II型接触分解触媒の場合、前記方法において、前記第三焙焼が行われ、且つ、前記第三焙焼で得られた生成物に対して洗浄および任意に用いる乾燥処理を行う工程をさらに含んでもよい。前記焙焼の焙焼温度は例えば400~600℃、好ましくは450~550℃であってもよく、焙焼時間は0.5~12時間であってもよい。前記洗浄は、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウムのうちの1つを使用して行ってもよく、洗浄温度は40~80℃であってもよい。前記乾燥処理の温度は110~200℃、例えば120~150℃であってもよく、乾燥時間は0.5~18h、例えば2~12hであってもよい。
【0143】
一実施形態において、例えば、以下の方法を用いて本発明の前記接触分解触媒、特に前記I型またはII型接触分解触媒を作製してもよい。バインダー(例えば擬似ベーマイト、アルミナゾル、シリカゾル、シリカ-アルミナゲル、または、これらのうちの2つまたは複数による混合物)、第二粘土(例えばカオリン)および水(例えば脱カチオン水および/または脱イオン水)を混合して固体含有量10~50重量%のスラリーを調製する;均一撹拌下で、塩酸、硝酸、リン酸または硫酸などの無機酸を用いてスラリーのpHを1~4に調整し、該pH値を維持したまま、20~80℃下で0~2時間(例えば0.3~2時間)静置することでエージングした後、アルミナゾルおよび/またはシリカゾルを添加して0.5~1.5時間撹拌し、コロイドを形成する;その後、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と任意に用いるY型分子篩とを含む分子篩を添加し、固体含有量が例えば20~45重量%の触媒スラリーを形成する;引き続き撹拌した後、噴霧乾燥によりマイクロスフェア触媒を形成する;その後、マイクロスフェア触媒に対して第一焙焼を行い、例えば350~650℃、400~600℃または450~550℃で、0.5~6時間または0.5~2時間焙焼する;続いて、酸化ナトリウム含量が0.25重量%以下になるまで、硫酸アンモニウムで洗浄する(洗浄温度は40~70℃;硫酸アンモニウム:マイクロスフェア触媒:水=0.2~0.8:1:5~15(重量比));続いて、水で洗浄し、濾過した後、乾燥する。
【0144】
本発明の前記接触分解触媒を作製する方法の一実施形態では、特に前記I型接触分解触媒において、前記バインダーは、前記リン・アルミニウム無機バインダーおよび前記他の無機バインダーを含み、ドライベースとして計算されるとき、前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、前記リン・アルミニウム無機バインダーと、前記他の無機バインダーとの重量比は、(8~78):(3~39):(1~30)であってもよく、好ましくは(8~78):(5~38):(5~25)であってもよい。
【0145】
一実施形態では、特に前記II型接触分解触媒において、前記バインダーは、前記リン・アルミニウム無機バインダーおよび前記他の無機バインダーを含み、ドライベースとして計算されるとき、前記リン・アルミニウム無機バインダーと前記他の無機バインダーとの重量比は、(3~40):(1~30)であってもよく、好ましくは(5~35):(5~28)、さらに好ましくは(10~30):(5~25)であってもよい。
【0146】
本発明で提供される接触分解触媒の作製方法によれば、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩と、リン・アルミニウム無機バインダーと、他の無機バインダーと、任意に用いる第二粘土とを混合し、スラリーとすることができる。原料を添加する順番は特に限定されない。例えば、リン・アルミニウム無機バインダーと、他の無機バインダーと、分子篩と、第二粘土とを混合して(第二粘土を含有しない場合、それに関する添加工程を省略してもよい)スラリーとしてもよい。好ましくは、第二粘土と、分子篩と、他の無機バインダーとを混合してスラリーとした後、前記リン・アルミニウム無機バインダーを添加する。この場合、触媒の活性および選択性が更に良く改善されうる。
【0147】
本発明で提供される接触分解触媒の作製方法は、前記スラリーの作製により得られたスラリーを噴霧乾燥する工程をさらに含む。噴霧乾燥の方法は当業者が熟知しており、本発明では特別に要求しない。
【0148】
本発明によれば、前記リン・アルミニウム無機バインダーは、アルミノホスフェートゲル、および/または、第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーであってもよい。前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーの作製に用いられる前記アルミナ源は、ρ-アルミナ、x-アルミナ、η-アルミナ、γ-アルミナ、κ-アルミナ、σ-アルミナ、θ-アルミナ、ギブサイト、バイエライト、ノルドストランド石、ダイアスポア、ベーマイトおよび擬似ベーマイトから選ばれる少なくとも1つであってもよい。なお、前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダー中のアルミニウム成分は、前記アルミナ源から由来する。
【0149】
本発明によれば、前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーの作製に用いられる前記濃リン酸の濃度は、60~98重量%であってもよく、さらに好ましくは75~90重量%であってもよい。リン酸の添加速度は、好ましくは、リン酸0.01~0.10kg/毎分/アルミナ源kg、さらに好ましくは、リン酸0.03~0.07kg/毎分/アルミナ源kgである。
【0150】
前記実施形態において、前記第一粘土含有リン・アルミニウム無機バインダーは、粘土が導入されていることにより、次の利点を有する。作製プロセスにおける原料間での物質移動、伝熱が改善され、原料中の不均一な局所の瞬間的な猛烈な反応による超安定化放熱に起因するバインダー硬化を避けることができる。得られたバインダーの粘結性能は、粘土を導入しない方法で作製されたリン・アルミニウムバインダーと同等である。さらに、前記方法では、粘土、特に層状構造を有するレクトライトが導入されるため、得られる接触分解触媒または助剤による重油転化能力が改善され、得られる触媒または助剤はよりよい選択性を有する。
【0151】
(本発明の前記接触分解触媒を用いて炭化水素油の接触分解を行う方法)
本発明の前記第五態様によれば、さらに本発明は、第三態様に記載の接触分解触媒を用いて炭化水素油の接触分解を行う方法を提供する。
【0152】
前記接触分解触媒を用いて炭化水素油の接触分解を行う方法は、本分野における通常の方法、例えば、接触分解の条件下で、炭化水素油を本発明の前記接触分解触媒と接触させて反応させる方法であってもよい。本発明で提供される接触分解触媒は、様々な炭化水素油の接触分解に用いることができる。前記炭化水素油は、様々な石油留分、例えば原油、ナフサ、軽油、常圧残渣油、減圧残渣油、常圧ワックス油、減圧ワックス油、直留ワックス油、プロパン軽/重質脱油、コークス化ワックス油および石炭液化生成物から選ばれる1つまたは複数であってもよい。前記炭化水素油は、ニッケル、バナジウム等の重金属不純物、並びに、硫黄および窒素の不純物を含んでもよい。例えば、炭化水素油中の硫黄の含量は3.0重量%にまで達し、窒素の含量は2.0重量%にまで達し、バナジウム、ニッケル等の金属不純物の含量は3000ppmにまで達してもよい。
【0153】
接触分解の条件は、本分野における通常の条件であってもよく、500~800℃、例えば520~680℃の反応温度を含むことが好ましい。
【0154】
一実施形態では、前記I型接触分解触媒の場合、当該I型接触分解触媒を単独で接触分解反応器に添加し、例えば接触分解の条件下で、炭化水素油を本発明の当該I型接触分解触媒と接触させて反応させてもよい。別の実施形態では、当該I型接触分解触媒を助剤として用い、他の通常の接触分解触媒との触媒混合物として使用してもよい。本発明によって提供されるI型接触分解触媒は、前記混合物の総量の30重量%以下を占めてもよく、好ましくは1~25重量%、さらに好ましくは3~15重量%を占める。
【0155】
本発明の一実施形態では、前記触媒混合物中の前記接触分解助剤の含量は、広い範囲で変化してもよく、例えば0.1~30重量%、好ましくは2~26重量%であってもよい。
【0156】
本発明の一実施形態では、前記触媒混合物を用いる場合、接触分解の条件は、本分野における通常の条件であってもよく、500~800℃、例えば550~680℃の反応温度を含むことが好ましい。
【0157】
〔実施例〕
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に説明しない限り、本発明の実施例で用いられる装置および試薬は、いずれも当業者が一般的に使用される装置および試薬である。
【0158】
石油炭化水素の接触分解における低炭素オレフィンの収率および選択性などへの、触媒による影響は、固定床式マイクロ反応によって評価される。得られた触媒サンプルは、固定床式エージング装置にて800℃、100%水蒸気下で17時間エージングした後、マイクロ反応装置にて評価した。なお、原料油はVGOまたはナフサであった。評価条件は、反応温度が620℃であり、再生温度が620℃であり、触媒対油比(触媒/油の比)が3.2であった。
【0159】
本発明にかかる方法における結晶化度は、ASTM D5758~2001(2011)e1の標準方法によって測定される。
【0160】
本発明にかかる方法におけるn(SiO)/n(Al)、すなわちシリカ対アルミナ比は、シリカおよびアルミナの含量から計算される。シリカおよびアルミナの含量は中国国家標準GB/T 30905~2014の標準方法によって測定される。
【0161】
本発明にかかる方法におけるリン含量は、GB/T 30905~2014の標準方法によって測定される。担持される金属の含量は、GB/T 30905~2014の標準方法によって測定される。
【0162】
本発明にかかる方法における比表面は、GB5816の標準方法によって測定される。
本発明にかかる方法における細孔体積は、GB5816の標準方法によって測定される。
【0163】
本発明にかかる方法におけるナトリウム含量は、GB/T 30905~2014の標準方法によって測定される。
【0164】
(必要に応じて)本発明で言及されるRIPP標準方法は、『石油化工分析方法』(楊翠定ら編集,1990年版)を具体的に参照することができる。
【0165】
本発明にかかる方法におけるマイクロ反応活性(転化率等)は、ASTM D5154-2010の標準方法によって測定される。
【0166】
Dの値の計算方法は以下の通りである。透過型電子顕微鏡による写真から、1つの結晶粒、および、この結晶粒の任意の結晶面上に形成された多角形を選ぶ。なお、該多角形には、幾何学的中心と、エッジと、幾何学的中心からエッジ上の任意の点までの間隔の10%に当たるH距離(エッジ上の点の違いにより、Hの値も異なる)と、が存在する。当該結晶面のエッジから内部へH距離までの範囲内の、100nmよりも大きい任意の領域、および、結晶面の幾何学的中心から外へH距離まで範囲内の、100nmよりも大きい任意の領域をそれぞれ選び、当該2つの領域内のレアアースの含量、すなわちRE(S1)およびRE(C1)を測定(2種類のレアアースが存在する場合、当該レアアースの総含量を測定)し、D1=RE(S1)/RE(C1)として計算する。この測定は、異なる結晶粒を5回選んで測定し、その平均値をDとして計算した。
【0167】
実施例で用いられた一部の原料の性質は、以下の通りである。
【0168】
擬似ベーマイトは、山東アルミニウム公司製の工業製品であり、固体含有量が60重量%である。アルミナゾルは中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製の工業製品であり、Al含量が21.5重量%である。シリカゾルは中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製の工業製品であり、SiO含量が28.9重量%、NaO含量が8.9%である。カオリンは、蘇州カオリン公司製の接触分解触媒用カオリンであり、固体含有量が78重量%である。レクトライトは、湖北鐘祥名流レクトライト開発有限公司の製品であり、石英砂含量<3.5重量%、Al含量が39.0重量%、NaO含量が0.03重量%、固体含有量が77重量%である。SB水酸化アルミニウム粉は、ドイツのCondex社の製品であり、Al含量が75重量%である。γ-アルミナは、ドイツのCondex社の製品であり、Al含量が95重量%である。塩酸は、北京化学工場製の化学的な純濃度が36~38重量%である塩酸である。
【0169】
以下の実施例は、本発明の前記メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩を作製し、比較例は、比較用の分子篩を作製する。
【0170】
〔実施例1〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに9.7gのHPO(濃度は85重量%)および8.1gのLa(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で2時間処理し、分子篩MS-Aを得た。その物性データは表1-1に示される。
【0171】
〔実施例2〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに5.8gのHPO(濃度は85重量%)および4.9gのCe(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-Bを得た。その物性データは表1-1に示される。
【0172】
〔実施例3〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに11.6gのHPO(濃度は85重量%)、8.1gのLa(NO・6HOおよび4.9gのCe(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-Cを得た。その物性データは表1-1に示される。
【0173】
〔実施例4〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに5.8gのHPO(濃度は85重量%)および3.3gのCe(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-Dを得た。その物性データは表1-1に示される。
【0174】
〔実施例5〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに5.8gのHPO(濃度85重量%)および14.7gのCe(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-Eを得た。その物性データは表1-1に示される。
【0175】
〔実施例6〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1h行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに8.1gのLa(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥し、水蒸気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行った。当該分子篩に水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに9.7gのHPO(濃度は85重量%)を添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-A-1を得た。その物性データは表1-2に示される。
【0176】
〔実施例7〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに4.9gのCe(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥し、水蒸気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2h行った。当該分子篩に水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに5.8gのHPO(濃度は85重量%)を添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-B-1を得た。その物性データは表1-2に示される。
【0177】
〔実施例8〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1h行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに8.1gのLa(NO・6HOおよび4.9gのCe(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥し、水蒸気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行った。当該分子篩に水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに、11.6gのHPO(濃度は85重量%)を添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-C-1を得た。その物性データは表1-2に示される。
【0178】
〔実施例9〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1h行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに3.3gのCe(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥し、水蒸気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行った。当該分子篩に水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに5.8gのHPO(濃度は85重量%)を添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-D-1を得た。その物性データは表1-2に示される。
【0179】
〔実施例10〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに14.7gのCe(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥し、水蒸気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行った。当該分子篩に水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに5.8gのHPO(濃度は85重量%)を添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2h行い、分子篩MS-E-1を得た。その物性データは表1-2に示される。
【0180】
〔実施例11〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに8.1gのLa(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。当該分子篩に水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに9.7gのHPO(濃度は85重量%)を添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-A-2を得た。その物性データは表1-2に示される。
【0181】
〔実施例12〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに9.7gのHPO(濃度は85重量%)を添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥し、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2h行った。当該分子篩に水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに8.1gのLa(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、水蒸気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-A-3を得た。その物性データは表1-2に示される。
【0182】
〔比較例1〕
結晶化したZSM-5分子篩(触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)を、NaO含量(ドライベースで)が0.2重量%以下になるまで、NHCl交換液で洗浄した。上記分子篩50g(ドライベースとして計算)に水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに7.7gのHPO(濃度は85重量%)および8.1gのLa(NO・6HOを添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-DB1を得た。その物性データは表1-1に示される。
【0183】
〔比較例2〕
結晶化したZSM-5分子篩(中国石油化学触媒有限公司の斉魯支社製;無アミン法で合成され、n(SiO)/n(Al)=27)の母液を濾過により除去した後、当該分子篩を、NaO含量(ドライベースとして計算)が5.0重量%以下になるまで水洗し、濾過を経て濾過ケーキを得た。上記分子篩100g(ドライベースとして計算)を1000gの2.0重量%NaOH溶液に添加し、65℃まで昇温し、30分間反応させた後、室温まで急速に冷却した。続いて、濾液が中性になるまで、濾過、洗浄を行った。その後、濾過ケーキを800gの水に投入してスラリー化し、40gのNHClを添加して75℃まで昇温し、NaO含量(ドライベースとして計算)が0.2重量%以下になるまで交換処理を1時間行った後、濾過、洗浄して分子篩濾過ケーキを得た。該分子篩濾過ケーキ50g(ドライベースとして計算)を取り、この濾過ケーキに水を添加してスラリー化し、固体含有量40重量%の分子篩スラリーを得た。これに9.7gのHPO(濃度は85重量%)を添加し、均一に混合して含浸させた後、乾燥した。続いて、空気雰囲気下、550℃で焙焼処理を2時間行い、分子篩MS-DB2を得た。その物性データは表1-1に示される。
【0184】
【表1-1】
【0185】
【表1-2】
【0186】
以下の実施例では、本発明で用いられるリン・アルミニウム無機バインダーを作製する。
【0187】
〔実施例13〕
本実施例では、本発明の前記リン・アルミニウム無機バインダーを作製する。
【0188】
1.91kgの擬似ベーマイト(Al1.19kgを含む)、0.56kgのカオリン(ドライベースが0.5kg)および3.27kgの脱カチオン水を、30分かけてスラリー化した。撹拌下で、リン酸0.04kg/毎分/アルミナ源kgの添加速度で、スラリーに5.37kgの濃リン酸(質量濃度は85%)を添加し、70℃まで昇温した後、この温度下で45分反応させ、リン・アルミニウム無機バインダーを得た。得られたバインダーBinder1の原料の配合は表2に示される。
【0189】
〔実施例14~16〕
実施例14の方法でリン・アルミニウム無機バインダーを作製した。得られたバインダーBinder2~4の原料の配合は表2に示される。
【0190】
【表2】
【0191】
以下の実施例では本発明の接触分解触媒を作製し、以下の比較例3-1、4-1では比較接触分解触媒を提供する。
【0192】
〔実施例17-1〕
分子篩MS-A、Y型分子篩(PSRY分子篩)、カオリンおよび擬似ベーマイトを取り、脱カチオン水およびアルミナゾルを添加し、120分かけてスラリー化し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これに塩酸を添加してスラリーのpH値を3.0に調節した後、引き続き45分かけてスラリー化し、その後、実施例13で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、30分撹拌した。その後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、C1を得た。その配合は表3-1に示される。
【0193】
〔比較例3-1、4-1〕
MS-Aの代わりに、それぞれ分子篩MS-DB1、MS-DB2を使用したこと以外は、実施例17-1の方法と同様に接触分解触媒を作製し、DC1、DC2を得た。それらの配合は表3-1に示される。
【0194】
〔実施例18-1〕
分子篩MS-B、Y型分子篩(PSRY分子篩)、カオリンおよび擬似ベーマイトを取り、脱カチオン水およびアルミナゾルを添加し、120分かけてスラリー化し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これに塩酸を添加してスラリーのpH値を3.0に調節した後、引き続き45分かけてスラリー化し、その後、実施例14で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、30分撹拌した。その後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、C2を得た。その配合は表3-1に示される。
【0195】
〔実施例19-1〕
分子篩MS-C、Y型分子篩(HRY分子篩)、カオリンおよび擬似ベーマイトを取り、脱カチオン水およびアルミナゾルを添加し、120分かけてスラリー化し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これに塩酸を添加してスラリーのpH値を3.0に調節した後、引き続き45分かけてスラリー化し、その後、実施例15で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、30分撹拌した。その後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、C3を得た。その配合は表3-1に示される。
【0196】
〔実施例20-1〕
分子篩MS-A、Y型分子篩(PSRY分子篩)、カオリンおよび擬似ベーマイトを取り、脱カチオン水およびシリカゾルを添加し、120分かけてスラリー化し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これに塩酸を添加してスラリーのpH値を3.0に調節した後、引き続き45分かけてスラリー化し、その後、実施例16で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、30分撹拌した。その後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、C4を得た。その配合は表3-1に示される。
【0197】
〔実施例21-1〕
分子篩MS-A、Y型分子篩(PSRY分子篩)、カオリンを取り、脱カチオン水を添加し、120分かけてスラリー化した後、実施例13で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これを30分撹拌した後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、C5を得た。その配合は表3-1に示される。
【0198】
〔実施例22-1〕
無機酸化バインダーの前駆体(アルミナゾル)と、カオリンとを表3-1に示す原料の配合の通りに混合し、脱カチオン水を用いて固体含有量30重量%のスラリーに作製した。これを均一に撹拌し、塩酸でスラリーのpH値を2.8に調節し、55℃で1時間静置することでエージングした。その後、メソポアを豊富に含むMFI構造分子篩およびY型分子篩(PSRY分子篩)を添加して触媒スラリー(固体含有量が35%重量)を形成し、引き続き撹拌した後、噴霧乾燥によりマイクロスフェア触媒を作製した。その後、500℃でマイクロスフェア触媒を1時間焙焼した。続いて、酸化ナトリウム含量が0.25重量%以下になるまで、60℃下で硫酸アンモニウムにて洗浄(硫酸アンモニウム:マイクロスフェア触媒:水=0.5:1:10)した。続いて、脱イオン水でリンス、濾過した後、110℃で乾燥し、触媒C6を得た。その配合は表3-1に示される。
【0199】
【表3-1】
【0200】
以下の実施例では本発明の前記接触分解助剤を作製し、比較例3-2、4-2では比較接触分解助剤を提供する。
【0201】
〔実施例17-2〕
分子篩MS-A、カオリンおよび擬似ベーマイトを取り、脱カチオン水およびアルミナゾルを添加し、120分かけてスラリー化し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これに塩酸を添加してスラリーのpH値を3.0に調節した後、引き続き45分かけてスラリー化し、その後、実施例13で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、30分撹拌した。その後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、ZJ1を得た。その配合は表3-2に示される。
【0202】
〔比較例3-2、4-2〕
MS-Aの代わりに、それぞれ分子篩MS-DB1、MS-DB2を使用したこと以外は、実施例17-2の方法と同様に接触分解助剤を作製し、DZJ1、DZJ2を得た。それらの配合は表3-2に示される。
【0203】
〔実施例18-2〕
分子篩MS-B、カオリンおよび擬似ベーマイトを取り、脱カチオン水およびアルミナゾルを添加し、120分かけてスラリー化し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これに塩酸を添加してスラリーのpH値を3.0に調節した後、引き続き45分かけてスラリー化した。その後、実施例14で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、30分撹拌した。その後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、ZJ1を得た。その配合は表3-2に示される。
【0204】
〔実施例19-2〕
分子篩MS-C、カオリンおよび擬似ベーマイトを取り、脱カチオン水およびアルミナゾルを添加し、120分かけてスラリー化し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これに塩酸を添加してスラリーのpH値を3.0に調節した後、引き続き45分かけてスラリー化し、その後、実施例15で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、30分撹拌した。その後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、ZJ3を得た。その配合は表3-2に示される。
【0205】
〔実施例20-2〕
分子篩MS-A、カオリンおよび擬似ベーマイトを取り、脱カチオン水およびシリカゾルを添加し、120分かけてスラリー化し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これに塩酸を添加してスラリーのpH値を3.0に調節した後、引き続き45分かけてスラリー化し、その後、実施例16で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、30分撹拌した。その後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、ZJ4を得た。その配合は表3-2に示される。
【0206】
〔実施例21-2〕
分子篩MS-A、カオリンを取り、脱カチオン水を添加し、120分かけてスラリー化した後、引き続き45分かけてスラリー化した。その後、実施例13で用意したリン・アルミニウム無機バインダーを添加し、固体含有量30重量%のスラリーを得た。これを30分撹拌した後、得られたスラリーを噴霧乾燥してマイクロスフェアを得て、マイクロスフェアを500℃で1時間焙焼し、ZJ5を得た。その配合は表3-2に示される。
【0207】
〔実施例22-2〕
バインダーとしてのアルミナゾルと、カオリンとを表3-2に示す原料の配合の通りに混合し、脱カチオン水を用いて固体含有量30重量%のスラリーに作製した。これを均一に撹拌し、塩酸でスラリーのpH値を2.8に調節し、55℃で1時間静置することでエージングした。その後、分子篩MS-Aを添加して触媒スラリー(固体含有量が35%重量)を形成し、引き続き撹拌した後、噴霧乾燥によりマイクロスフェア触媒を作製した。その後、500℃でマイクロスフェア触媒を1時間焙焼した。続いて、酸化ナトリウム含量が0.25重量%以下になるまで、60℃下で硫酸アンモニウムにて洗浄(硫酸アンモニウム:マイクロスフェア触媒:水=0.5:1:10)した。続いて、脱イオン水でリンス、濾過した後、110℃で乾燥し、触媒ZJ6を得た。その配合は表3-2に示される。
【0208】
【表3-2】
【0209】
以下の実施例では、本発明の接触分解触媒による接触分解反応の効果を説明するために、固定床式マイクロ反応評価装置を採用し、本発明の実施例で得られた触媒C1~C6に対して反応性能評価を行った。
【0210】
〔実施例23-1~28-1〕
800℃、100%水蒸気雰囲気の条件下で、触媒C1~C6をそれぞれ17時間エージングして処理した。エージング後の触媒を固定床式マイクロ反応反応器に入れ、表4に示す原料油の接触分解を行った。評価条件は、反応温度が620℃であり、再生温度が620℃であり、触媒対油比が3.2であった。各触媒を用いた反応の結果は表5-1に示される。
【0211】
【表4】
【0212】
比較例5-1、6-1では、比較触媒を用いる場合の状況を説明するために、固定床マイクロ反応評価装置を採用し、本発明の比較例で得られた触媒DC1、DC2に対して性能評価を行った。
【0213】
比較例5-1、6-1は、実施例23-1と同様のエージング工程を経たDC1、DC2を使用したこと以外は、実施例23-1の方法と同様にして同様の原料油の接触分解を行った。各触媒を用いた反応の結果は表5-1に示される。
【0214】
【表5-1】
【0215】
実施例29-1~34-1では、800℃、100%水蒸気雰囲気の条件下で、触媒C1~C6をそれぞれ17時間エージング処理し、エージング後の触媒を固定床式マイクロ反応反応器に入れ、表6に示すナフサの接触分解を行った。評価条件は、反応温度が620℃であり、再生温度が620℃であり、触媒対油比が3.2であった。各触媒を用いた反応の結果は表7-1に示される。
【0216】
比較例7-1、8-1では、比較触媒を用いる場合の状況を説明するために、固定床式マイクロ反応評価装置を採用し、本発明の比較例で得られた触媒DC1、DC2、DC3に対して性能評価を行った。
【0217】
比較例7-1、8-1は、実施例29-1と同様のエージング工程を経た触媒DC1、DC2、DC3を使用した以外は、実施例29-1の方法と同様にして同様の原料油の接触分解を行った。各触媒を用いた反応の結果は表7-1に示される。
【0218】
【表6】
【0219】
【表7-1】
【0220】
表5-1、表7-1のデータからわかるように、異なる原料油について接触分解を行った結果、メソポアを豊富に含み且つレアアースおよびリンで改質されたZSM-5分子篩を含む、本発明の前記触媒は、エチレンを多く生成するとともにプロピレンを豊富に生成するという優れた性能を示した。特に、適量のアルミノホスフェートゲルおよび他の無機バインダーを含む接触分解触媒を用いるとき、エチレンおよびプロピレンの収率が最も高かった。一方、レアアースで改質されていない細孔拡張分子篩を含む触媒、または、細孔の拡張処理を経ずにレアアースおよびリンで改質されたZSM-5分子篩を含む触媒では、エチレンの収率が著しく低下した。
【0221】
以下のブランク実験例および実施例では、本発明の接触分解助剤による接触分解反応の効果を説明するために、固定床式マイクロ反応評価装置を採用し、100%バランス剤、および、本発明の実施例にバランス剤を添加して得られた助剤ZJ1~ZJ6に対して、反応性能評価を行った。
【0222】
〔ブランク実験例、実施例23-2~28-2〕
800℃、100%水蒸気雰囲気条件下で、助剤ZJ1~ZJ6をそれぞれ17時間エージング処理した。エージング後のZJ1~ZJ6を、それぞれ工業用FCC平衡触媒(工業番号DVR-3のFCC平衡触媒;軽油に関するマイクロ反応活性が63である)と混合した。バランス剤と触媒との当該混合物を固定床式マイクロ反応反応器に入れ、表4に示す原料油の接触分解を行った。評価条件は、反応温度が620℃であり、再生温度が620℃であり、触媒対油比が3.2であった。各触媒混合物の重量での組成および反応の結果は表5-2に示される。
【0223】
比較例5-2、6-2では、比較助剤を用いる場合の状況を説明するために、固定床マイクロ反応評価装置を採用し、本発明の比較例にバランス剤を添加して得られた助剤DZJ1、DZJ2に対して、性能評価を行った。
【0224】
比較例5-2、6-2は、実施例23-2と同様のエージング工程を経た助剤DZJ1、DZJ2と、工業用FCC平衡触媒との混合物を触媒として使用したこと以外は、実施例23-2の方法と同様にして、同様の原料油の接触分解を行った。各触媒混合物の重量での組成および反応の結果は表5-2に示される。
【0225】
【表5-2】
【0226】
ブランク実験例、実施例29-2~34-2では、800℃、100%水蒸気雰囲気の条件下で、助剤ZJ1~ZJ6をそれぞれ17時間エージング処理した。エージング後のZJ1~ZJ6を、それぞれ工業用FCC平衡触媒(工業番号DVR-3のFCC平衡触媒;軽油に関するマイクロ反応活性が63である)と混合した。バランス剤と触媒との当該混合物を固定床式マイクロ反応反応器に入れ、表6に示すナフサの接触分解を行った。評価条件は、反応温度が620℃であり、再生温度が620℃であり、触媒対油比が3.2であった。各触媒混合物の重量での組成および反応の結果は表7-2に示される。
【0227】
比較例7-2、8-2は、比較助剤を用いる場合の状況を説明するために、固定床式マイクロ反応評価装置を採用し、本発明の比較例にバランス剤を添加して得られた助剤DZJ1、DZJ2に対して、性能評価を行った。
【0228】
比較例7-2、8-2は、実施例29-2と同様のエージング工程を経た助剤DZJ1、DZJ2と、工業用FCC平衡触媒との混合物を触媒として使用したこと以外は、実施例29-2の方法と同様にして同様の原料油の接触分解を行った。各触媒混合物の重量での組成および反応の結果は表7-2に示される。
【0229】
【表7-2】
【0230】
表5-2、表7-2のデータからわかるように、異なる原料油について接触分解を行った結果、メソポアを豊富に含み且つレアアースおよびリンで改質されたZSM-5分子篩を含む、本発明の前記助剤は、エチレンを多く生成するとともにプロピレンを豊富に生成するという優れた性能をした。特に、適量のアルミノホスフェートゲルおよび他の無機バインダーを含む助剤を用いるとき、エチレンとプロピレン収率が最も高かった。一方、レアアースで改質されていない多級細孔分子篩を含む助剤、または、細孔の拡張処理を経ずにレアアースで改質されたZSM-5分子篩を含む助剤では、エチレンの収率が著しくに低下した。
【0231】
以上、本発明の好ましい実施形態を詳しく説明したが、本発明は、上記実施形態の具体的な細部に限定されない。本発明の技術思想の範囲内で、本発明の技術案に対して様々の簡単な変形を施すことでき、これらの簡単な変形はいずれも本発明の範囲内にある。
【0232】
上述した具体的な実施形態における様々な具体的な技術的構成は、矛盾しない限り、任意の適切な形式にて組み合わせることができる。但し、必要でない繰り返しを避けるために、本開示では、考えられる様々な組み合わせの説明を省略する。
【0233】
さらに、本発明における様々の異なる実施形態同士を任意に組み合わせることができ、当該組み合わせは本発明の主旨に反しない限り、本発明の内容とみなすべきである。