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特許7482123電気化学セル内の水不均衡を制御するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】電気化学セル内の水不均衡を制御するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04291 20160101AFI20240502BHJP
   H01M 8/04492 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20240502BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240502BHJP
【FI】
H01M8/04291
H01M8/04492
H01M8/04746
H01M8/04701
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/043
H01M8/0438
H01M8/04303
H01M8/04228
H01M8/04313
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2021524175
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 US2018059389
(87)【国際公開番号】W WO2020096574
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-11-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505163578
【氏名又は名称】ヌヴェラ・フュエル・セルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ブランシェット,スコット
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-192973(JP,A)
【文献】特開2007-220462(JP,A)
【文献】特開2011-249143(JP,A)
【文献】特開2007-052937(JP,A)
【文献】特開2010-135341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04291
H01M 8/04492
H01M 8/04746
H01M 8/04701
H01M 8/0432
H01M 8/04537
H01M 8/043
H01M 8/0438
H01M 8/04303
H01M 8/04228
H01M 8/04313
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セル内の水不均衡を制御する方法であって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定するステップであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、
決定するステップと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡するステップと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整するステップと
を含み、冷却剤が、全体的に固定された入口冷却剤温度で前記電気化学セルに供給され、前記入口冷却剤温度は、前記累積的水不均衡をゼロに導くために必要とされる可能性ある最大酸化剤ガス流量が、前記酸化剤フィードガス流れを供給する圧縮器の動作限界の中であるということを確実にする手立てで、周囲状況のセットに基づいてセットされる、方法。
【請求項2】
請求項に記載の方法であって、前記冷却剤は、全体的に固定された速度で動作している冷却剤ポンプから前記電気化学セルに供給される、方法。
【請求項3】
請求項に記載の方法であって、周囲状況の前記セットは、空気温度、圧力、および湿度を含む、方法。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法であって、前記酸化剤フィードガスの前記流量の調整は、比例積分微分(PID)コントローラを使用して制御される、方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法であって、前記酸化剤フィードガスの前記流量は、前記累積的水不均衡をゼロに導くために、前記累積的水不均衡がゼロから偏移するときに調整される、方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法であって、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの前記流量は、前記累積的水不均衡が、セットされたしきい値を超えてゼロから偏移するときに調整される、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、前記現在の水不均衡の前記決定は、少なくとも30秒ごとに繰り返される、方法。
【請求項8】
電気化学セル内の水不均衡を制御する方法であって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定するステップであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、
決定するステップと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡するステップと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整するステップと
を含み、
一時的に、前記電気化学セルをドライアウトさせるために、前記電気化学セルへの酸化剤フィードガスの前記流量を増大するステップと、
前記電気化学セルの抵抗を測定するステップと、
測定された前記抵抗が、前記累積的水不均衡がゼロに等しいことに対応する目標抵抗にほぼ等しいかどうかを決定するステップと、
測定された前記抵抗が前記目標抵抗にほぼ等しいとき、前記累積的水不均衡をゼロにリセットするステップと
により、前記累積的水不均衡をゼロに再較正するステップ
をさらに含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記抵抗は、電流遮断法を使用して測定される、方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法であって、前記目標抵抗は、前記電気化学セルの初期スタートアップ試験の間に決定される、方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載の方法であって、前記目標抵抗は、約50から100mΩ-cmの間である、方法。
【請求項12】
電気化学セル内の水不均衡を制御する方法であって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定するステップであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、
決定するステップと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡するステップと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整するステップと
を含み、
前記電気化学セルのベースライン抵抗を測定するステップと、
一時的に、前記電気化学セルをドライアウトさせるために、前記電気化学セルへの酸化剤フィードガスの前記流量を増大するステップと、
前記電気化学セルの現在の抵抗を測定するステップと、
測定された前記現在の抵抗が、前記ベースライン抵抗に相対的に増大したかどうかを決定するステップと、
測定された前記現在の抵抗が、前記ベースライン抵抗と比較して、約0.5%から約300%の間だけ増大したとき、前記累積的水不均衡をゼロにリセットするステップと
により、前記累積的水不均衡をゼロに再較正するステップ
をさらに含む方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記ベースライン抵抗から前記現在の抵抗への抵抗の変化は約25%である、方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法であって、ゼロへの前記累積的水不均衡の再較正するステップは、前記電気化学セルに対するシャットダウンシーケンスの間に、少なくとも1日あたり1回実行される、方法。
【請求項15】
電気化学セル内の水不均衡を制御する方法であって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定するステップであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、
決定するステップと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡するステップと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整するステップと
を含み、
一時的に、前記電気化学セルをドライアウトさせるために、前記電気化学セルへの酸化剤フィードガスの前記流量を増大するステップと、
前記酸化剤排出ガスの湿度を測定するステップと、
前記酸化剤排出ガスの測定された前記湿度が、ゼロの累積的水不均衡に対応する目標湿度にほぼ等しいかどうかを決定するステップと、
測定された前記湿度が前記目標湿度にほぼ等しいとき、前記累積的水不均衡をゼロにリセットするステップと
により、前記累積的水不均衡をゼロに再較正するステップ
をさらに含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記目標湿度は約50%から約99%の間である、方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法であって、前記water created は、前記電気化学セルにより発生させられる電流、および、アノードストイキ比に基づいて決定される、方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法であって、前記waterinは、前記酸化剤フィードガスの湿度、前記酸化剤フィードガスの圧力、および、前記酸化剤フィードガスの前記流量に基づいて決定される、方法。
【請求項19】
電気化学セル内の水不均衡を制御する方法であって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定するステップであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、
決定するステップと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡するステップと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整するステップと
を含む方法であって、前記watercreatedは、前記電気化学セルにより発生させられる電流、および、アノードストイキ比に基づいて決定される、方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の方法であって、前記wateroutは、酸化剤排出ガスの湿度、および、該酸化剤排出ガスの圧力に基づいて決定される、方法。
【請求項21】
電気化学セルと、
複数の酸化剤ガス入口センサ、酸化剤ガス排出センサ、冷却剤入口センサ、冷却剤排出センサ、および電流トランスデューサと、
コントローラであって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定することであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、決定することと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡することと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整することと
を行うように構成されるコントローラと
を含む電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、少なくとも1Hzの頻度で、繰り返し、前記酸化剤フィードガスの前記流量を調整するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項22】
請求項21に記載の電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、PIDループを使用して、前記酸化剤フィードガスの前記流量を調整するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項23】
請求項21または22に記載の電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、前記累積的水不均衡をゼロに導くために、前記累積的水不均衡がゼロから偏移するときに、前記酸化剤フィードガスの前記流量を調整するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項24】
請求項21から23のいずれか一項に記載の電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、前記累積的水不均衡が、セットされたしきい値を超えてゼロから偏移するときに、前記酸化剤フィードガスの前記流量を調整するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項25】
請求項21から24のいずれか一項に記載の電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、少なくとも30秒ごとに、前記現在の水不均衡の前記決定を繰り返すように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項26】
電気化学セルと、
複数の酸化剤ガス入口センサ、酸化剤ガス排出センサ、冷却剤入口センサ、冷却剤排出センサ、および電流トランスデューサと、
コントローラであって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定することであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、決定することと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡することと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整することと
を行うように構成されるコントローラと
を含む電気化学セルシステムであって、冷却剤を、全体的に固定された入口冷却剤温度で前記電気化学セルに供給するように構成される冷却剤ポンプをさらに含み、前記入口冷却剤温度は、前記累積的水不均衡をゼロに導くために必要とされる可能性ある最大酸化剤ガス流量が、前記酸化剤フィードガス流れを供給するように構成される圧縮器の動作限界の中であるということを確実にする手立てで、周囲状況のセットに基づいてセットされる、電気化学セルシステム。
【請求項27】
請求項26に記載の電気化学セルシステムであって、前記冷却剤ポンプは、全体的に固定された速度で動作させられる、電気化学セルシステム。
【請求項28】
請求項26に記載の電気化学セルシステムであって、周囲状況の前記セットは、空気温度、圧力、および湿度を含む、電気化学セルシステム。
【請求項29】
電気化学セルと、
複数の酸化剤ガス入口センサ、酸化剤ガス排出センサ、冷却剤入口センサ、冷却剤排出センサ、および電流トランスデューサと、
コントローラであって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定することであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、決定することと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡することと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整することと
を行うように構成されるコントローラと
を含む電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、
一時的に、前記電気化学セルをドライアウトさせるために、前記電気化学セルへの前記酸化剤フィードガスの前記流量を増大することと、
前記電気化学セルの抵抗を測定することと、
測定された前記抵抗が、前記累積的水不均衡がゼロに等しいことに対応する目標抵抗にほぼ等しくなると、前記酸化剤フィードガスの流れを停止することと、
前記累積的水不均衡をゼロにリセットすることと
により、前記累積的水不均衡をゼロに再較正するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項30】
請求項29に記載の電気化学セルシステムであって、前記抵抗は、電流遮断法を使用して測定される、電気化学セルシステム。
【請求項31】
請求項29または30に記載の電気化学セルシステムであって、前記目標抵抗は、前記電気化学セルの初期スタートアップ試験の間に決定される、電気化学セルシステム。
【請求項32】
請求項29から31のいずれか一項に記載の電気化学セルシステムであって、前記目標抵抗は、約50から100mΩ-cmである、電気化学セルシステム。
【請求項33】
請求項29から32のいずれか一項に記載の電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、前記電気化学セルに対するシャットダウンシーケンスの間に、少なくとも1日あたり1回、前記累積的水不均衡を再較正するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項34】
電気化学セルと、
複数の酸化剤ガス入口センサ、酸化剤ガス排出センサ、冷却剤入口センサ、冷却剤排出センサ、および電流トランスデューサと、
コントローラであって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定することであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、決定することと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡することと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整することと
を行うように構成されるコントローラと
を含む電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、
一時的に、前記電気化学セルをドライアウトさせるために、前記電気化学セルへの前記酸化剤フィードガスの前記流量を増大することと、
前記酸化剤排出ガスの湿度を測定することと、
前記酸化剤排出ガスの前記湿度が、ゼロの累積的水不均衡に対応する目標湿度より下になると、前記酸化剤フィードガスの流れを停止することと、
前記累積的水不均衡をゼロにリセットすることと
により、前記累積的水不均衡をゼロに再較正するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項35】
請求項34に記載の電気化学セルシステムであって、前記目標湿度は、約50%から約99%の間である、電気化学セルシステム。
【請求項36】
請求項21から35のいずれか一項に記載の電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、waterinを、前記酸化剤フィードガスの湿度、前記酸化剤フィードガスの圧力、および、前記酸化剤フィードガスの前記流量に基づいて決定するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項37】
電気化学セルと、
複数の酸化剤ガス入口センサ、酸化剤ガス排出センサ、冷却剤入口センサ、冷却剤排出センサ、および電流トランスデューサと、
コントローラであって、
waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、前記電気化学セル内の現在の水不均衡を決定することであって、
waterinは、酸化剤フィードガスにより前記電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり、
watercreatedは、電気化学反応から前記電気化学セルにより創出される水の量であり、
wateroutは、酸化剤排出ガスにより前記電気化学セルから放出される水の量である、決定することと、
動作の間、前記現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、前記電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡することと、
前記累積的水不均衡に基づいて、前記電気化学セルに進入する前記酸化剤フィードガスの流量を調整することと
を行うように構成されるコントローラと
を含む電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、watercreatedを、前記電気化学セルにより発生させられる電流、および、アノードストイキ比に基づいて決定するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項38】
請求項21から37のいずれか一項に記載の電気化学セルシステムであって、前記コントローラは、wateroutを、酸化剤排出ガスの湿度、および、該酸化剤排出ガスの圧力に基づいて決定するように構成される、電気化学セルシステム。
【請求項39】
請求項8または12に記載の方法であって、前記流量の前記増大は、シャットダウン時の前記累積的水不均衡、および、あらかじめ決定されたシャットダウン時間のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、方法。
【請求項40】
請求項8または12に記載の方法であって、前記累積的水不均衡が、あらかじめ決定されたシャットダウン時間の中でゼロにリセットされない場合に、前記酸化剤フィードガスの前記流量の第2の増大をさらに含む方法。
【請求項41】
請求項29または34に記載の電気化学セルシステムであって、前記流量の前記増大は、シャットダウン時の前記累積的水不均衡、および、あらかじめ決定されたシャットダウン時間のうちの少なくとも1つに基づいて決定される、電気化学セルシステム。
【請求項42】
請求項29または34に記載の電気化学セルシステムであって、前記累積的水不均衡が、あらかじめ決定されたシャットダウン時間の中でゼロにリセットされない場合に、前記酸化剤フィードガスの前記流量の第2の増大をさらに含む、電気化学セルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本開示は、電気化学セルに、ならびに、より詳しくは、電気化学セルまたはセルのスタック内の水不均衡を制御するための方法およびシステムを対象とされる。
【背景技術】
【0002】
[002]通常は燃料セルまたは電解セルと分類される電気化学セルは、化学反応から電流を発生させる、または、電流の流れを使用して化学反応を誘導するために使用されるデバイスである。例えば、燃料セルは、燃料(例えば、水素、天然ガス、メタノール、ガソリン、その他)および酸化剤(空気または酸素)の化学エネルギーを、電気、ならびに、熱および水の廃棄生成物へと変換する。基本的燃料セルは、負帯電アノードと、正帯電カソードと、電解質と呼ばれるイオン伝導材料とを含む。
【0003】
[003]異なる燃料セル技術は、異なる電解質材料を利用する。プロトン交換膜(PEM)燃料セルは、例えば、電解質として高分子イオン伝導膜を利用する。水素PEM燃料セル内で、水素原子は、アノードにおいて電子およびプロトン(水素イオン)へと電気化学的に分けられる。電子は、次いで、回路を通ってカソードに流れ、電気を発生させ、一方で、プロトンは、電解質膜を通ってカソードに拡散する。カソードにおいて、水素プロトンは、電子および酸素(カソードに供給される)と組み合わさって、水および熱を生成する。
【0004】
[004]電解セルは、逆に動作させられる燃料セルを表す。基本的電解セルは、外部電位が印加されるときに、水を水素および酸素ガスへと分解することにより、水素発生器として機能する。
【0005】
[005]水素燃料セルまたは電解セルの基本的技術は、例えば電気化学的水素圧縮、精製、または膨張などの電気化学的水素操作に応用され得る。電気化学的水素操作は、水素管理に対して伝統的に使用される機械的システムに対する存立可能な代替物として出現した。エネルギー担体としての水素の成功裏の商業化、および、「水素経済」の長期の持続可能性は、主として、燃料セル、電解セル、および、他の水素操作/管理システムの、効率およびコスト有効度に依存する。
【0006】
[006]動作において、単一の燃料セルは、一般的には約1ボルトを発生させることができる。所望される量の電気パワーを得るために、個々の燃料セルは、燃料セルスタックを形成するために組み合わされ、燃料セルは、順次的に一体に積層される。
【0007】
[007]水は、先に説明されたように、電気への燃料および酸化剤の変換の副生成物としてカソードにおいて発生させられるのみではなく、水は、さらには、酸化剤および/または燃料ガス(一括して「投入ガス」)内の湿気/蒸気としてセル内へと導き入れられ得る。そして、電気化学セルは、種々の環境状況において動作させられ得るので、投入ガスの湿度(および他のパラメータ、例えば温度)は変動し得る。
【0008】
[008]水は、典型的には、反応物ガス、例えば酸素の排出される流れのおかげで電気化学セルから除去される。水の非効率的な除去は、電気化学セルのフラッディングにつながることがある。電気化学セルのフラッディングは、反応物ガス流れの低減、または完全な中断につながることがある。水の超過の蓄積は、個々の電気化学セルの故障につながることがあり、そのことが、次いで、電気化学セルスタックの不安定性および/または故障につながることがある。
【0009】
[009]電気化学セル内の水の過多は、そのセルの性能に不都合に影響を及ぼすことがあるが、水は、セルの動作をサポートするために必要である。例えば、高分子膜内の水含有物は、それがイオン伝導率を増大するので、電気化学反応を可能にする。
【0010】
[010]水均衡または平衡を(すなわち、フラッディングさせられた状態と、ドライアウトさせられた状態との間で)維持する試みは、例えば、電流出力を水含有量と相関させ、電流の変化がセルの性能変化を示唆するときに動作的調整を為すことを含んでいた。しかしながら、そのような相関は、急速に変化する平衡動態を考慮に入れず、それゆえに、平衡を補正するための尽力は、遅すぎる、または不十分であることがあり、かくして、電気化学セル作動は、悪化する、または止まることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[011]電気化学セル内の水含有量平衡を維持することの必要性に鑑みて、本開示は、電気化学セルおよび電気化学セルスタックにおいての、既存の水管理技術と関連付けられる1つまたは複数の問題点を克服するように設計される方法およびシステムを対象とされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[012]1つの態様において、本開示は、電気化学セル内の水不均衡を制御する方法を対象とされる。一部の実施形態において、方法は、waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、電気化学セル内の現在の水不均衡を決定するステップを含み得る。一部の実施形態において、waterinは、酸化剤フィードガスにより電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり得るものであり、watercreatedは、電気化学反応から電気化学セルにより創出される水の量であり得るものであり、wateroutは、酸化剤排出ガスにより電気化学セルから放出される水の量であり得る。一部の実施形態において、方法は、さらには、動作の間、現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡するステップを含み得る。そして、一部の実施形態において、方法は、さらには、累積的水不均衡に基づいて、電気化学セルに進入する酸化剤フィードガスの流量を調整するステップを含み得る。
【0013】
[013]別の態様において、本開示は、電気化学セルシステムを対象とされる。一部の実施形態において、電気化学セルシステムは、電気化学セルと、複数の酸化剤ガス入口センサ、酸化剤ガス排出センサ、冷却剤入口センサ、冷却剤排出センサ、および電流トランスデューサと、コントローラとを含み得る。一部の実施形態において、コントローラは、waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることにより、電気化学セル内の現在の水不均衡を決定するように構成され得る。一部の実施形態において、waterinは、酸化剤フィードガスにより電気化学セル内へと導き入れられる水の量であり得るものであり、watercreatedは、電気化学反応から電気化学セルにより創出される水の量であり得るものであり、wateroutは、酸化剤排出ガスにより電気化学セルから放出される水の量であり得る。一部の実施形態において、コントローラは、さらには、動作の間、現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することにより、電気化学セルの動作の間、累積的水不均衡を追跡するように構成され得る。そして、一部の実施形態において、コントローラは、さらには、累積的水不均衡に基づいて、電気化学セルに進入する酸化剤フィードガスの流量を調整するように構成され得る。
【0014】
[014]上述の全体的な説明、および、後に続く詳細な説明の両方は、請求される際に、本開示に関して、単に例示的および解説的であり、限定的ではないということが理解されるべきである。
【0015】
[015]本明細書に組み込まれ、本明細書の部分の構成物となる、付随する図面は、本開示の実施形態を例解し、説明とともに、本開示の原理を解説するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】[016]例示的な実施形態による、電気化学セルシステムの概略図を示す図である。
図2】[017]例示的な実施形態による、電気化学セルシステム内の水不均衡を制御する方法を例解するフロー線図である。
図3】[018]例示的な実施形態による、電気化学セルシステム内の水不均衡を制御する方法を例解する、図2のフロー線図の続きの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[019]本開示の本例示的な実施形態に対して、言及が今から詳細に為されることになり、それらの実施形態の例が、付随する図面において例解される。可能な場合はいつでも、同じ参照番号が、同じまたは類する部分を指すために、図面の全体を通して使用されることになる。電気化学セル、特に、水素、酸素、および水を用いる燃料セルとの関係において説明されるが、本開示のデバイスおよび方法は、電解セル、水素精製器、水素エキスパンダ、および水素圧縮器を含むが、それらに制限されない、様々なタイプの燃料セルおよび電気化学セルによって用いられ得るということが理解される。
【0018】
[020]図1は、本開示の例示的な実施形態による、電気化学セルシステム100の概略視図を示す。電気化学セルシステム100は、例えば、中でも、電解質により分離したアノードとカソードとを有する、PEM燃料セルであり得る、電気化学セル10を含み得る。システム100は、電気化学セル10を通る酸化剤ガス(例えば、酸素または周囲空気)、反応物ガス(例えば、水素)、および冷却剤を受け取り放出するように構成され得る。図1および後に続く説明は、電気化学セル10に触れるが、説明は、複数の電気化学セル10を含み得る電気化学セルスタックに等しく適用可能であるということが理解されるべきである。
【0019】
[021]酸化剤ガスは、電気化学セル10のカソードに送り出され得るものであり、一方で、燃料ガスは、電気化学セル10のアノードに送り出され得る。冷却剤が、さらには、電気化学セル10の冷却剤通路に送り出され得る。冷却剤は、冷却剤入口ライン32Aを通して冷却剤ポンプ44により電気化学セル10に供給され、冷却剤出口ライン32Bを通して電気化学セル10から放出され得る。酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口ライン34Aを通して電気化学セル10に供給され、酸化剤ガス排出ライン34Bを通して放出され得る。酸化剤ガスは、圧縮器42または別の適したデバイスにより酸化剤ガス入口ライン34Aに供給され得る。一部の実施形態において、圧縮器42は、周囲環境または他の適した酸化剤源から酸化剤(例えば、空気)を供給され得る。燃料ガスは、燃料ガス入口ライン36Aを通してセル10に供給され、燃料ガス排出ライン38Bを通して放出され得る。セル10は、さらには、電気負荷30に接続される電流回路28を含み得る。動作において、電気化学セル10内への酸化剤および燃料ガスの、それらのガスのそれぞれの入口ラインを通る流れは、アノードおよびカソードを分離する電解質膜においての電気化学反応を結果的に生じさせて、電流回路28を経て電気負荷30に供給される電流を発生させる。
【0020】
[022]電気化学セルシステム100は、冷却剤入口ライン32Aに沿って配置され得る1つまたは複数の冷却剤入口センサと、冷却剤出口ライン32Bに沿って配置され得る1つまたは複数の冷却剤出口センサとを含み得る。例えば、図2において描写されるように、システム100は、冷却剤入口ライン32Aを通して電気化学セル10に供給される冷却剤の冷却剤入口温度を測定するように構成される冷却剤入口センサ20を含み得る。一部の実施形態において、システム100は、冷却剤出口ライン32Bを通る電気化学セル10からの冷却剤放出の冷却剤出口温度を測定するように構成される冷却剤出口センサ22を含み得る。一部の実施形態において、他の冷却剤入口センサおよび冷却剤出口センサが、入ってきて出てゆく冷却剤の他の性質を測定するために利用され得る。例えば、追加的な温度センサ、流量センサ、圧力センサ、または伝導率センサが利用され得る。
【0021】
[023]電気化学セルシステム100は、さらには、酸化剤ガス入口ライン34Aに沿って配置され得る1つまたは複数の酸化剤ガス入口センサを含み得る。例示的な実施形態によれば、システム100は、少なくとも4つの酸化剤ガス入口センサ24、すなわち、酸化剤フィードガスの周囲圧力を測定するための第1の酸化剤ガス入口センサ24A、酸化剤フィードガスの周囲温度を測定するための第2の酸化剤ガス入口センサ24B、酸化剤フィードガスの周囲湿度を測定するための第3の酸化剤ガス入口センサ24C、および、酸化剤フィードガスの質量流量を測定するための第4の酸化剤ガス入口センサ24Dを含み得る。一部の実施形態において、単一の酸化剤ガス入口デバイスが、これらのパラメータのうちのいくつかを測定するために利用され得る。例えば、一部の実施形態において、酸化剤センサ24は、単一のデバイスとして、酸化剤フィードガスの周囲圧力、周囲温度、および湿度を測定し得る。一部の実施形態において、酸化剤ガス入口センサ24は、単一のデバイスとして、酸化剤フィードガスの周囲圧力、周囲温度、酸化剤質量流量、および/または湿度を測定し得る。一部の実施形態において、追加的な酸化剤ガス入口センサ24が、入ってくる酸化剤フィードガスの他の性質を測定するために利用され得る。例えば、一部の実施形態において、酸化剤ガス入口センサは、一酸化炭素、アンモニア、硫黄、揮発性有機化合物、および/または、燃料セル動作もしくは寿命に有害であり得る他の種などの汚染種の、酸化剤ガス組成またはレベルを測定するように構成され得る。
【0022】
[024]電気化学セルシステム100は、さらには、酸化剤ガス排出ライン34Bに沿って配置される1つまたは複数の酸化剤ガス排出センサ26を含み得る。例えば、図2において描写されるように、酸化剤ガス出口排出センサ28は、少なくとも、酸化剤ガス排出ライン34Bを通して電気化学セル10から排出される酸化剤ガスの圧力を測定するための第1の酸化剤ガス排出センサ26Aを含み得る。一部の実施形態において、追加的な酸化剤ガス排出センサ24が、電気化学セル10から排出される酸化剤ガスの他の性質を測定するために利用され得る。例えば、システム100は、電気化学セル10から排出される酸化剤ガスの湿度を測定するための第2の酸化剤ガス排出センサ26Bを含み得る。他の実施形態において、電気化学セル10から排出される酸化剤ガスの流量、温度、または組成を測定するための酸化剤ガス排出センサが、システム100により利用され得る。
【0023】
[025]図1では示していないが、システム100の一部の実施形態において、燃料ガス入口ライン36Aは、1つまたは複数の燃料ガス入口センサを含み得る。これらのセンサは、例えば、電気化学セル10に供給される燃料フィードガスの温度、圧力、相対湿度、流量、および類するものを測定するように構成され得る。同様に、燃料ガス排出ライン36Bは、1つまたは複数の燃料ガス排出出口センサ(図示せず)を含み得る。これらのセンサは、例えば、電気化学セル10から排出される燃料ガスの温度、圧力、相対湿度、流量、および類するものを測定することに対して有用であり得る。
【0024】
[026]上記で論考されたように、電流が、セル10により発生させられ、電流回路28を経て電気負荷30に供給される。電流は、例えば、電流回路28に接続される電流トランスデューサ46により測定され得る。一部の実施形態において、電流トランスデューサ46は、例えば、ホール効果センサまたはシャントセンサであり得る。一部の実施形態において、電気化学セル10、電気回路28、および/または電気化学セルスタックにまたがる抵抗が、電流の小さい変化に応答してセルまたはスタック電圧を測定することにより決定され得る。例えば、電流は、典型的には1000Hzより大きい高い周波数の波形(正弦曲線、三角形、正方形、または他の波形)を使用して、または、燃料セルスタック上の負荷を素早く接続する、もしくは切り離すこと(電気ヒータまたは同様のデバイスなど、「電流遮断」法)によるステップ変化として動揺し得る。セルまたはスタック電圧の結果的に生じる変化を電流の強いられた変化により除算したものが、一般的には、オームの法則によって抵抗に比例する。個別の燃料セル設計に対する特有の電圧-電流-抵抗関係性が、実験的に決定され得る。電気化学セルに対する様々なモデルが、当業者に知られており、測定される電圧および電流変化を、セルの水和状態を決定するために意味のある抵抗値へと転換するために用いられ得る。
【0025】
[027]システム100は、図1において描写されるようにコントローラ40を含み得る。コントローラ40は、例えば、冷却剤入口センサ20、冷却剤排出センサ22、酸化剤ガス入口センサ24(例えば、24A、24B、24C、24D)、および、第1の酸化剤ガス排出センサ26Aを含む、システム100のすべてのセンサとの通信のために構成され得る。コントローラ40は、対応するセンサの測定される値を指し示す、各々のセンサからの信号を受信するように構成され得る。コントローラ40は、さらには、電流トランスデューサ46、圧縮器42、酸化剤ガス入口センサ24B、冷却剤入口センサ20、および/または冷却剤ポンプ44と通信する(例えば、それらに信号を送出する、および、それらから信号を受信する)ように構成され得る。
【0026】
[028]システム100の動作の間、セルに進入する水の量、プラス、セルにより発生させられる水の量は、セル内に貯蔵される水が、増大すること(すなわち、フラッディングさせられた状況に向かって進むこと)、さもなければ減少すること(すなわち、ドライアウト状況に向かって進むこと)を回避するために、セルを離脱する水の量との厳密な均衡の様態に保たれるべきである。セルが、セル内に貯蔵される水が増大している、さもなければ減少している場合に、あまりにも長い間動作させられるならば、セルは、セル性能が低減される、または、セルがもはや動作することができない段階まで、フラッディングまたはドライアウトさせられた様態になり得る。そのセルは、セルに進入する水、プラス、セルにより発生させられる水を、セルを抜け出る水との完璧な均衡の様態に維持することを望むが、環境および動作状況、物理的システムセンサに固有の測定誤差、ならびに/または、システム内で使用されるハードウェアの物理的制限が、継続的な水均衡を妨げ、セルの中に貯蔵される非ゼロの量の蓄積される水を結果的に生じさせることがある。この非ゼロの量は、所望されるよりも多い水が貯蔵されるということを指示する(すなわち、フラッディングに向かう傾向にある)正の量、または、所望されるよりも少ない水が貯蔵されるということを指示する(すなわち、ドライアウトに向かう傾向にある)負の量であり得る。
【0027】
[029]この問題点に対処するために、本開示は、累積的水不均衡(例えば、値)を経時的に追跡し、この累積的水均衡をゼロに戻すようにセルの動作状況を調整することを、システムがそのようにすることができてしまうと行うためのシステムおよび方法を提供する。開示される方法は、waterin
【0028】
【数1】
【0029】
、モル/秒)と称され得る、酸化剤フィードガスにより導き入れられる水の量、および、watercreated
【0030】
【数2】
【0031】
、モル/秒)と称され得る、電気化学反応により創出される水の量を合計し、waterout
【0032】
【数3】
【0033】
、モル/秒)と称され得る、酸化剤排出ガスによりセル10から放出される水の量を減じることにより、電気化学セル10内の現在の水不均衡を決定するステップを含み得る。それゆえに、所与の進展においての実時間水均衡は、式1により反映され得る。
【0034】
【数4】
【0035】
ここで、
【0036】
【数5】
【0037】
は、瞬時水不均衡(モル/秒)を表し、
【0038】
【数6】
【0039】
は、上記で定義されたようなものである。
【0040】
【数7】
【0041】
がゼロに等しいとき、その所与の瞬間においての水流れ(モル/秒)は、均衡をとられた様態と考えられ得る。式1がゼロに等しくないとき、水不均衡が存し得る。例えば、
【0042】
【数8】
【0043】
がゼロより大きいとき、電気化学セル10内の水の量は、増大していることがあり、一方で、
【0044】
【数9】
【0045】
がゼロ未満であるとき、電気化学セル10内の水の量は、減少していることがある。累積的水不均衡、Nが、かくして、時間の関数として算出され得る。
【0046】
【数10】
【0047】
[030]例示的な実施形態によれば、電気化学セル10内の水の量は、動作の間、追跡され得る。累積的水不均衡を追跡することは、動作の間、現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを継続することを含み得る。所定の期間の時間にわたる累積的水均衡(モル)が、式3により表され得る。
【0048】
【数11】
【0049】
この式は、次式のように書き直され得る。
【0050】
【数12】
【0051】
ここで、
【0052】
【数13】
【0053】
は、
【0054】
【数14】
【0055】
を表し、
【0056】
【数15】
【0057】
は、
【0058】
【数16】
【0059】
を表し、
【0060】
【数17】
【0061】
は、
【0062】
【数18】
【0063】
を表す(すべてモル/秒)。
[031]電気化学セル内へと導き入れられる水の量、
【0064】
【数19】
【0065】
は、式5~7において示されるように、酸化剤質量流量、周囲温度、周囲圧力、および周囲相対湿度の測定値から算出され得る。
【0066】
【数20】
【0067】
[032]式6および7は、式5に組み込まれ得るものであり、それによって、電気化学セル内へと導き入れられる水の量、
【0068】
【数21】
【0069】
が、式8により算出されることを可能にする。
【0070】
【数22】
【0071】
[033]記号RHは、第3の酸化剤ガス入口センサ24Cにより測定され得る、セル10に供給される酸化剤フィードガスの相対湿度を表す。記号pは、第1の酸化剤ガス入口センサ24Aにより測定され得る、セル10に供給される酸化剤フィードガスの圧力を表す。記号
【0072】
【数23】
【0073】
は、水に対する固定された性質であり、温度の関数である、温度Tにおいて評価される水の蒸気圧力を表す。記号
【0074】
【数24】
【0075】
は、電気化学セル10に供給される酸化剤ガスの質量流量(グラム/秒)を表し得るものであり、μは、酸化剤ガスの温度、圧力、および相対湿度の関数であり得る、湿性酸化剤ガスの分子量(g/モル)である。かくして、システム100およびコントローラ40は、酸化剤ガス入口センサ24により提供される、測定される値に基づいて、電気化学セル内へと導き入れられる水の量(モル/秒)、
【0076】
【数25】
【0077】
を算出するように構成され得る。
[034]創出される水の量、
【0078】
【数26】
【0079】
(モル/秒)は、式9を使用して算出され得る。
【0080】
【数27】
【0081】
ここで、iは、電流(アンペア、例えば、電流トランスデューサ46により測定される)を表し、Fは、ファラデー定数(96485.3C/moi)であり、Stは、セルに供給される水素燃料の数量が、測定される電流iを発生させるために必要とされる水素燃料の数量により除算されたものを表す実効アノードストイキ比(effective anode stoichiometric ratio)である。Stは、燃料セルシステムおよび制御設計により決定されるパラメータであり、カソード流動に対するアノードパージングによって「浪費される」水素燃料、アノードからカソードへの水素燃料クロスオーバ、および/または、システムに固有であり得るカソードへの水素燃料の他の同様の移転の説明となるものである。
【0082】
[035]排出酸化剤ガスによって電気化学セル10から放出される水の量は、式10により算出され得る。
【0083】
【数28】
【0084】
ここで、RHは、電気化学セル10から排出される酸化剤ガスの湿度を表す。N(すなわち、式1に対する解)がゼロ以上であるとき、RHは、100%に等しくあり得る。Nがゼロ未満であるとき、RHの推定値は、本明細書においてさらに詳細に説明されるモデルを利用して決定され得る。記号pは、測定される私の第1の酸化剤ガス排出センサ26Aであり得る、酸化剤ガス排出ラインを通して電気化学セル10から放出される酸化剤ガスの圧力を表す。記号pH2O(T)は、水に対する固定された性質であり、温度の関数である、水の蒸気圧力を表す。pH2O(T)を決定するために利用される温度は、冷却剤排出センサ22により測定される冷却剤出口温度(T)であり得る。記号
【0085】
【数29】
【0086】
は、式11により算出され得る、酸化剤排出ガス内の非水種の全流れを表す。
【0087】
【数30】
【0088】
ここで、
【0089】
【数31】
【0090】
は、式12により算出され得る。
【0091】
【数32】
【0092】
一方で、
【0093】
【数33】
【0094】
は、式12により算出され得る。
【0095】
【数34】
【0096】
[036]上記で論考されたように、N(すなわち、式2に対する解)がゼロ以上であるとき、RHは、100%に等しくあり得る。Nがゼロ未満であるとき、RHの推定値は、モデルを利用して決定され得るものであり、例えば、RHは、実験データであって、それによりRHがセル10のピーク性能に対応し得る、実験データから導出され得る。例えば、電気化学セルの動作特性が、RHと電気化学セル性能との間の相関を決定するために、所定の範囲の温度および流量にわたって監視され得る。RHによって、式1が、
【0097】
【数35】
【0098】
に対して解かれ得るものであり、その変数は、式14に結果的になり、セルの水の均衡をとられた動作を結果的に生じさせることになる酸化剤流量を表す。
【0099】
【数36】
【0100】
ここで、Stは、アノードストイキであり、fは、水である酸化剤排出流れのモル分率
【0101】
【数37】
【0102】
であり、fは、水である酸化剤入口流れのモル分率
【0103】
【数38】
【0104】
である。式14は、セルの中の水流れの均衡をとるための酸化剤ガス流量を決定するために利用され得る。
[037]コントローラ40は、セルの中の水流量の均衡をとる目標酸化剤フィードガス流量の算出を可能にする、センサ(例えば、冷却剤入口センサ20、冷却剤排出センサ22、酸化剤ガス入口センサ24、酸化剤ガス排出センサ26、および電流トランスデューサ46)のうちの1つまたは複数により測定される性質に基づく、本明細書において説明されるような算出のうちの1つまたは複数を実行するように構成され得る。コントローラ40は、次いで、酸化剤フィードガス流量を調整する、または、酸化剤フィードガス流量をセットする別のコントローラもしくはエンジンに信号を送出するように構成され得る。一部の実施形態において、コントローラ40は、PIDコントローラを利用して、酸化剤フィードガス流量を調整するように構成され得る。酸化剤フィードガス流量の調整は、累積的水不均衡をゼロまたは約ゼロに導くように構成され得る。一部の実施形態において、コントローラ40は、累積的水均衡がセットされたしきい値を超えてゼロから偏移するときに、酸化剤フィードガス流量の調整が水の均衡をとられた流量から離れるように構成され得る。例えば、Nがゼロより大きいならば(すなわち、セル内の超過の貯蔵される水)、コントローラは、正味のドライング状況を積極的に創出して、水をセルから除去し、Nをゼロに向けて導くために、酸化剤フィードガス流量を、水均衡流量より大きい値に調整し得る。逆に、Nがゼロ未満であるならば(すなわち、セル内の貯蔵される水の不足)、コントローラは、正味のフラッディング状況を積極的に創出して、水をセルに追加し、Nをゼロに向けて導くために、酸化剤フィードガス流量を、水均衡流量未満の値に調整し得る。
【0105】
[038]本明細書において説明されるような現在の水不均衡の決定は、セットされた頻度でコントローラ40により繰り返され得る。例えば、コントローラ40は、約0.01秒、約0.1秒、約0.5秒、約1秒、約2秒、約3秒、約4秒、約5秒、約10秒、約20秒、約30秒、または約60秒の頻度で決定を繰り返すように構成され得る。
【0106】
[039]図1において例解されるように、冷却剤は、電気化学セル10の温度を制御するために、電気化学セル10を通して循環させられ得る。一部の実施形態において、冷却剤は、全体的に固定された入口冷却剤温度で電気化学セル10に供給され得る。ある状況のもとで、セルが十分に冷却されないならば、セル内の水不均衡は、水不均衡をゼロに戻るように導くために必要とされる酸化剤フィードガス流量がシステム100の限界を超えている(例えば、圧縮器42の出力容量を超えている)段階に達することがある。この事態を回避するために、入口冷却剤温度は、累積的水不均衡をゼロに導くために必要とされる最大酸化剤フィードガス流量(式14の結果)が、酸化剤フィードガス流れを発生させている圧縮器42の動作限界の中であるように、周囲状況(例えば、空気温度、圧力、および湿度)のセットに基づいてセットされ得る。
【0107】
[040]一部の実施形態において、冷却剤を電気化学セル10に供給する冷却剤ポンプ44が、全体的に固定された速度で動作するように構成され得る。このことは、冷却剤出口温度が、燃料セルパワーとともに変動することを可能とすることになる。冷却剤入口温度をセットし、冷却剤ポンプ44に対する一定速度をセットすることにより、冷却剤ポンプ44を制御するために必要とされる、関連付けられるポンプハードウェアおよび制御ハードウェアが単純化され得る。
【0108】
[041]一部の実施形態において、システム100およびコントローラ40は、累積的水不均衡をゼロに、周期的に再較正するように構成され得る。例えば、コントローラ40は、電気化学セル10を一時的にドライアウトさせるために、酸化剤フィードガスの流量を増大するように構成され得る。このことを行う一方で、コントローラ40は、セル10をまたいで抵抗を測定するように構成され得る。一部の実施形態において、抵抗は、電流遮断法、または、本明細書において説明される他の方法を使用して測定され得る。コントローラ40は、測定される抵抗が、累積的水不均衡がゼロに等しいことに対応する目標抵抗にほぼ等しいときを決定し、次いで、コントローラソフトウェア内の累積的水不均衡変数をゼロにリセットするように構成され得る。このプロセスは、水不均衡算出においての蓄積される誤差(部分的には、上記で論述された式において使用される測定値においての誤差に起因する)が、水レベルの直接的な測定値(すなわち、セルの抵抗)によって補正されることを可能とする。再較正のこのプロセスは、システム負荷が制御され得るとき、実例としてシステムシャットダウンの間に、周期的に行われ得る。一部の実施形態において、再較正の間、水の均衡をとられた流量より大きい酸化剤流量がセルに提供されることが、目的をもってセルをドライアウトさせ、一方で、抵抗の増大に対して監視し、目標値が達成されるとシャットダウンを停止し、例えば、コントローラソフトウェア内の累積的水不均衡変数をゼロにリセットすることにより、累積的水不均衡をリセットするために行われ得る。目標値は、抵抗の絶対値であり得るものであり、または、その目標値は、シャットダウンプロセスの開始からの抵抗の相対的増大であり得る。目標相対的増大は、例えば、約0.5%から約300%の間、約0.5%から約200%の間、約0.5%から約100%の間、約1.0%から約50%の間、または、約5%から約25%の間であり得る。一部の実施形態において、目標抵抗の絶対値は、電気化学セル10の初期スタートアップの間に決定され得る。
【0109】
[042]一部の実施形態において、システム100およびコントローラ40は、酸化剤排出ガスの湿度を測定することにより、累積的水不均衡をゼロに再較正し得る。例えば、コントローラ40は、一時的に電気化学セル10をドライアウトさせるために、酸化剤フィードガスの流量を増大し得る。このことを行う一方で、コントローラ40は、酸化剤排出ガスの湿度(例えば、第2の酸化剤ガス排出湿度センサ26Bにより測定される)を測定するように構成され得る。コントローラ40は、酸化剤排出ガスの湿度が、ゼロの累積的水不均衡に対応する目標湿度の中であるときを決定し、累積的水不均衡をゼロにリセットするように構成され得る。目標湿度は、例えば、約50%から約99%の間、約60%から約99%の間、約70%から約99%の間、約80%から約99%の間、約90%から約99%の間、約50%から約90%の間、約60%から約90%の間、約70%から約90%の間、約80%から約90%の間、約50%から約80%の間、約60%から約80%の間、約70%から約80%の間、または、約75%から約80%の間であり得る。
【0110】
[043]一部の実施形態において、システム100は、電気化学セル10により排出される酸化剤ガスの測定される抵抗、および、測定される湿度の両方に基づいて、再較正を施すように構成され得る。一部の実施形態において、システム100は、セットされた頻度で再較正を施すように構成され得る。例えば、システム100は、少なくとも1日あたり1回、または、少なくとも隔日に1回、再較正を施すように構成され得る。一部の実施形態において、再較正は、1日あたり1回、2日ごとに1回、3日ごとに1回、1週間あたり1回、2週間ごとに1回、1か月あたり1回、2か月ごとに1回、6か月ごとに1回、または、毎年1回行われ得る。一部の実施形態において、再較正は、電気化学セルの稼働時間に基づいて決定され得る。例えば、再較正は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約10時間、約15時間、約25時間、約50時間、約100時間、約200時間、または約500時間の稼働時間の後に始動させられ得る。一部の実施形態において、再較正は、システム100に対するシャットダウンシーケンスの間に施され得る。一部の実施形態において、再較正は、システム100に対するあらゆるシャットダウンシーケンスの間に施される。一部の実施形態において、再較正は、システム100に対する1つおきのシャットダウンシーケンスの間に施される。一部の実施形態において、再較正は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、または30のシャットダウンシーケンスごとに1回施される。
【0111】
[044]一部の実施形態において、システム100は、酸化剤排出ガスライン内に配置される固定されたオリフィスを含み得る。一部の実施形態において、このオリフィスは、フルパワーでの目標カソード排出圧力の達成を結果的に生じさせ得るものであり、一方で、受動的制御を維持する(すなわち、能動的運動部分がない)。
【0112】
[045]図2は、電気化学セル10内の水均衡を制御するシステム100の動作の間に、コントローラ40により遂行される例示的なプロセスを例解する。図2のフローチャートにおいて例解されるように、水不均衡制御の活動化が、電気化学セル10の活動化によって始動させられ得る(ステップ202)。ステップ202から、コントローラ40は、様々なセンサ(例えば、酸化剤ガス入口センサ24、冷却剤入口センサ20、冷却剤出口センサ22、および酸化剤ガス排出センサ26、電流トランスデューサ46)から信号を受信することにより、電流回路を通過する電流測定値、ならびに、電気化学セル10を通って循環する酸化剤ガスおよび冷却剤の測定される性質を追跡することを始め得る(ステップ204)。コントローラ40は、電気化学セル10のこれらの性質を継続的に追跡する、または、周期的な頻度で追跡を繰り返すように構成され得る。
【0113】
[046]ステップ204から、コントローラ40は、電気化学セル10内の現在の水不均衡を決定することを始め得る(ステップ206)。ステップ206は、waterinおよびwatercreatedを合計し、wateroutを減じることを含み得る。本明細書において解説されるように、waterinは、酸化剤フィードガスにより電気化学セル内へと導き入れられる水の量を表し得るものであり、watercreatedは、電気化学反応から電気化学セルにより創出される水の量を表し得るものであり、wateroutは、酸化剤排出ガスにより電気化学セルから放出される水の量を表し得る。waterin、watercreated、およびwateroutを算出するために使用され得る、測定される性質、値、および式は、本明細書において解説されている。コントローラ40は、例えば、性質の各々の測定(ステップ204)の後に、現在の水不均衡を継続的に決定し、または、周期的な頻度で決定を繰り返すように構成され得る。
【0114】
[047]ステップ206から、コントローラ40は、次いで、電気化学セル10の累積的水不均衡を追跡し得る(ステップ208)。ステップ208は、電気化学セル10の動作の間、現在の水不均衡を繰り返し決定し、結果を合計することを含み得る。累積的水不均衡を追跡するために、現在の水不均衡を合計するために使用され得る式は、本明細書において解説されている。ステップ208から、コントローラ40は、次いで、累積的水不均衡がゼロから偏移するかどうかを決定し得る(ステップ210)。累積的水不均衡が、ゼロから偏移していない(例えば、ゼロにほぼ等しい)、または、ゼロのセットされた許容可能なしきい値の中であるならば(ステップ210:いいえ)、コントローラ40は、ステップ204に戻り、プロセスを繰り返し得る。一部の実施形態において、累積的水不均衡は、0.1グラム水/セルまで、0.2グラム水/セルまで、0.5グラム水/セルまで、1.0グラム水/セルまで、2.0グラム水/セルまで、または、5.0グラム水/セルまで、ゼロから偏移することがあり、それでもなお、ゼロの許容可能なしきい値の中と考えられ得る。累積的水不均衡が、ゼロから偏移した(すなわち、ゼロに等しくない)、または、ゼロのセットされた許容可能なしきい値の外側であるならば(ステップ210:はい)、コントローラ40は、ステップ212に進行し得る。ステップ212は、累積的水不均衡に基づいて、電気化学セル10に進入する酸化剤フィードガスの流量を調整することを含み得る。ステップ212の部分として、コントローラ40は、あらかじめ決定された量の時間の中で、累積的水不均衡をゼロに導くために、酸化剤フィードガスに対する容認可能な流量を算出し得る。一部の実施形態において、コントローラ40は、PIDループを利用して、調整を制御し得る。一部の実施形態において、ステップ212から、コントローラ40は、ステップ202に戻り、電気化学セルがシャットダウンされる、または、水不均衡モードが非活動化されるまで、プロセスを繰り返し得る。
【0115】
[048]一部の実施形態において、図2において例解されるように、ステップ212とステップ204との間で、コントローラ40は、電気化学セルのシャットダウンが始動させられたかどうかを決定し得る(ステップ214)。シャットダウンが始動させられなかったならば(ステップ214:いいえ)、コントローラ40は、ステップ204に戻り得る。シャットダウンが始動させられたならば(ステップ214:はい)、コントローラ40は、次いで、図3上で例解されるように、累積的水不均衡の再較正が、シャットダウンの前に求められるかどうかを決定し得る(ステップ216)。再較正が求められないならば(ステップ216:いいえ)(例えば、再較正が近時に遂行された)、コントローラ40は、電気化学セル10のシャットダウンを続行し得る(ステップ218)。一部の実施形態において、ステップ216とステップ218との間で、コントローラ40は、電気化学セル10のカソード側のベースラインパージを遂行するために、所定の継続期間の時間の間、電気化学セルへの酸化剤フィードガスの流量を増大し得る(任意選択のステップ217)。ステップ217の継続期間は、(例えば、約1秒から、約30秒、好ましくは15秒以下の間の値で)固定され、または、一部の実施形態において、コントローラ40により決定される可変継続期間であり得る。例えば、一部の実施形態において、コントローラ40は、1つまたは複数の、測定または算出されるパラメータ(例えば、酸化剤ガス入口質量流量、酸化剤ガス入口周囲温度、酸化剤ガス入口周囲圧力、酸化剤ガス入口周囲相対湿度、冷却剤入口温度、冷却剤出口温度、酸化剤ガス排出温度、酸化剤ガス排出圧力、酸化剤ガス排出相対湿度、または累積的水不均衡値に基づいて、ステップ217の継続期間を決定し得る。
【0116】
[049]再較正が求められるならば(ステップ216:はい)、一部の実施形態において(例えば、選択肢1)、コントローラ40は、一時的に電気化学セル10をドライアウトさせるために、電気化学セル10への酸化フィードガスの流量を増大することによって始まる再較正手順を始動させ得る(ステップ220)。ステップ220から、コントローラ40は、電気化学セル10の抵抗を測定することを始め得る(ステップ222)。ステップ222から、コントローラ40は、測定される抵抗が、累積的水不均衡がゼロに等しいことに対応する目標抵抗にほぼ等しいかどうかを決定し得る(ステップ224)。測定される抵抗が、あらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で目標抵抗に達しなかったならば(ステップ224:いいえ)、コントローラ40は、ステップ220に戻り、同じ流量での電気化学セル10への酸化剤フィードガスの流れを継続し、または、流量をさらに増大し得る。測定される抵抗が、あらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で目標抵抗に達したならば(ステップ224:はい)、コントローラ40は、次いで、累積的水不均衡変数をゼロにリセットし得る(ステップ226)。ステップ226から、コントローラ40は、次いで、電気化学セル10のシャットダウンを継続し得る(ステップ218)。
【0117】
[050]選択肢1の代替の実施形態(図3において示されない)において、コントローラ40は、目標抵抗値に基づいてよりむしろ、測定される抵抗の増大に基づいて、累積的水不均衡値をリセットすべきときを決定し得る。例えば、シャットダウンが始動させられた、および、再較正が求められるならば、コントローラ40は、測定される抵抗が、シャットダウンの始動において測定されたベースライン抵抗に相対的に増大したかどうかを決定し得る。抵抗の変化は、測定される抵抗値とベースライン抵抗との間の差が、ベースライン抵抗により除算されたもの(すなわち、((測定される抵抗)-(ベースライン抵抗))/(ベースライン抵抗)を算出することにより決定され得る。抵抗が、あらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で、シャットダウンの始動において測定されたベースライン抵抗に相対的に、例えば、約0.5%から約300%の間、約0.5%から約200%の間、約0.5%から約100%の間、約1.0%から約50%の間、または、約5%から約25%の間だけ増大したならば、コントローラ40は、次いで、累積的水不均衡変数をゼロにリセットし得る。抵抗が、あらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で、目標量を増大しなかったならば、コントローラ40は、増大される流量ステップに戻り、同じ流量での電気化学セル10への酸化剤フィードガスの流れを継続し、または、流量をさらに増大し得る。
【0118】
[051]他の実施形態において(例えば、選択肢2)、再較正が求められるならば(ステップ216:はい)、コントローラ40は、一時的に電気化学セル10をドライアウトさせるために、電気化学セル10への酸化剤フィードガスの流量を増大することによって始まる再較正手順を始動させ得る(ステップ228)。ステップ228から、コントローラ40は、酸化剤排出ガスの湿度を測定することを始め得る(ステップ230)。ステップ230から、コントローラ40は、測定される湿度が、累積的水不均衡がゼロに等しいことに対応する目標湿度にほぼ等しいかどうかを決定し得る(ステップ232)。測定される湿度が、あらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で目標湿度に達しなかったならば(ステップ232:いいえ)、コントローラ40は、ステップ228に戻り、同じ流量での電気化学セル10への酸化剤フィードガスの流れを継続し、または、流量をさらに増大し得る。測定される湿度が、あらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で目標湿度に達したならば(ステップ232:はい)、コントローラ40は、次いで、累積的水不均衡変数をゼロにリセットし得る(ステップ226)。ステップ226から、コントローラ40は、電気化学セル10をシャットダウンすることを継続し得る(ステップ218)。あらかじめ決定されたシャットダウン時間は、固定され、または、可変であり得るものであり、その事例において、そのシャットダウン時間は、1つまたは複数の変数(例えば、累積的水不均衡、最大酸化剤流量、システム100に対する動作時間制約)に基づいて決定され得る。あらかじめ決定されたシャットダウン時間は、例えば、約1秒以下から約20分の範囲に及び得る。例えば、あらかじめ決定されたシャットダウン時間は、約1秒、約2秒、約3秒、約4秒、約5秒、約10秒、約15秒、約20秒、約30秒、約40秒、約50秒、約60秒、約75秒、約90秒、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、または約20分であり得る。
【0119】
[052]一部の実施形態において、コントローラ40は、(例えば、ステップ220および228においての)酸化剤フィードガスの流量の増大の初期の大きさが、あらかじめ決定されたシャットダウン時間(例えば、最適化されたあらかじめ決定されたシャットダウン時間)とともに固定され得るように構成され得る。コントローラ40が、固定されたあらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で、ゼロへの再較正(すなわち、ステップ226)を達成することができないならば、コントローラ40は、ステップ220または228に戻り、同じ流量を継続し、または、酸化剤の流量を増大して、再較正およびシャットダウンプロセスを加速し得る。この増大の大きさは、例えば、システム100がシャットダウンを完了しようと試行している速度、あるいは、シャットダウンの始動においての、または、コントローラ40がステップ228もしくは220に戻った時間においての累積的水不均衡値に基づいて決定され得る。
【0120】
[053]一部の実施形態において、コントローラ40は、シャットダウンシーケンスの始動の時間において、累積的水不均衡に基づいて、流量の超過の増大を求めるように構成され得る。コントローラ40は、あらかじめ決定されたシャットダウン時間、および最大酸化剤流量に基づいて、流量の増大を決定するように構成され得る。例えば、コントローラ40は、酸化剤流量を増大することにより、あらかじめ決定されたシャットダウン時間を試行および最適化(例えば、最小化)して、最適化されたあらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で、ゼロへの再較正を達成する(ステップ226に達する)ように構成され得る。電気化学セル10への酸化剤ガスの流量の増大は、算出される水均衡(例えば、((あらかじめ決定された水均衡値)-(算出される水均衡値))/(算出される水均衡値))に基づくものであり得る。一部の実施形態において、酸化剤ガスの流量の増大は、約5%から約500%、約25%から約400%、約50%から約300%、または、約75%から約200%の範囲に及び得る。一部の実施形態において、酸化剤ガスの流量の増大は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも225%、少なくとも250%、少なくとも275%、少なくとも300%、少なくとも325%、少なくとも350%、少なくとも375%、少なくとも400%、少なくとも425%、少なくとも450%、少なくとも475%、または、少なくとも500%であり得る。ある事態において(例えば、累積的水不均衡が、電気化学セルがよりフラッディングさせられるということを指示するように高いならば)、求められる流量の超過の増大が、最大酸化剤流量(例えば、圧縮器42の限界)を超過することがあり、その事例において、最適化されたあらかじめ決定されたシャットダウン時間の中で、ゼロへの再較正を達成することは可能でないことがある。かくして、コントローラ40は、(例えば、ステップ220または228に戻ることによる)追加的なシャットダウン時間を見越しておかなければならないことがある。
【0121】
[054]上述の説明は、例解の目的のために提示されたものである。その説明は、網羅的ではなく、開示される寸分違わない形式または実施形態に制限されない。実施形態の修正、適応、および、他の応用例が、本明細書の考察、および、開示される実施形態の実践から明らかであろう。例えば、燃料セル10の説明される実施形態は、種々の電気化学セルとともに使用されるために適応させられ得る。同様に、本明細書において説明されるセルおよび電気化学スタックの配置構成は、ただ単に例示的であり、所定の範囲の他の燃料セル構成に応用され得る。
【0122】
[055]なおまた、例解的な実施形態が、本明細書において説明されたが、範囲は、本開示に基づく、均等な要素、修正、省略、(例えば、様々な実施形態にわたる態様の)組み合わせ、適応、および/または改変を有する、一切の実施形態を含む。特許請求の範囲においての要素は、特許請求の範囲において用いられる文言に基づいて幅広く解釈されるべきであり、本明細書において、または、本出願の手続処理の間に説明される例に制限されるべきではなく、それらの例は、非排他的と解されるべきである。さらに、開示される方法のステップは、ステップを並べ替えること、および/または、ステップを挿入もしくは削除することを含む、任意の様式で修正され得る。
【0123】
[056]本開示の特徴および利点は、詳細な明細書から明らかであり、かくして、添付される特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨および範囲の中に収まる、すべてのセルおよびセルスタックを包含するということが意図される。本明細書において使用される際、不定冠詞「a」および「an」は、「1つまたは複数の」を意味する。同様に、複数形用語の使用は、その用語が所与の文脈において曖昧さのないものでない限り、必ずしも複数を表象するとは限らない。「および」または「または」などの単語は、別段に具体的に指図されない限り、「および/または」を意味する。さらに、数多くの修正および変更が、本開示を考究することから、たやすく浮かぶことになるので、本開示を、例解および説明される、そっくりそのままの構築物および動作に制限することは所望されず、よって、本開示の範囲の中に収まる、すべての適した修正および均等物が、拠りどころにされることがある。
【0124】
[057]本明細書において使用される際、用語「約」は、数値的な値を、25%、20%、15%、10%、5%、または1%の差異だけ、説述される値より上および下に加減するために使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数値的な値を、10%の差異だけ、説述される値より上および下に加減するために使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数値的な値を、15%の差異だけ、説述される値より上および下に加減するために使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数値的な値を、10%の差異だけ、説述される値より上および下に加減するために使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数値的な値を、5%の差異だけ、説述される値より上および下に加減するために使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数値的な値を、1%の差異だけ、説述される値より上および下に加減するために使用される。
【0125】
[058]本明細書において使用される際、用語「燃料セル」および「電気化学燃料セル」、ならびに、それらの複数形変形は、互換的に使用され得るものであり、意味合いにおいて同一であると理解される。
【0126】
[059]マイクロコントローラにより使用されるものなどの、本明細書の書き記された説明に基づくコンピュータプログラム、プログラムモジュール、およびコードは、たやすく、ソフトウェア開発者の理解範囲の中のものである。コンピュータプログラム、プログラムモジュール、またはコードは、種々のプログラミング技法を使用して創出され得る。例えば、それらのコンピュータプログラム、プログラムモジュール、またはコードは、MatLab/Simulink、LabVIEW、Java、C、C++、アセンブリ言語、もしくは、任意のそのようなプログラミング言語の形で、または、それらの手段により設計され得る。そのようなプログラム、モジュール、またはコードのうちの1つまたは複数は、デバイスシステム、または、既存の通信ソフトウェアへと統合され得る。プログラム、モジュール、またはコードは、さらには、ファームウェアまたは回路論理として、実現または再現され得る。
【0127】
[060]本開示の他の実施形態が、本明細書の考察、および、本明細書においての本開示の実践から、当業者には明らかであろう。本明細書および例は、単に例示的と考えられ、本開示の真の範囲および趣旨は、後に続く特許請求の範囲により指示されるということが意図される。
図1
図2
図3