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特許7482126生分解性濾過材料を有するエアロゾル発生物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】生分解性濾過材料を有するエアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/06 20060101AFI20240502BHJP
   A24D 3/17 20200101ALI20240502BHJP
【FI】
A24D3/06
A24D3/17
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021529800
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2019083839
(87)【国際公開番号】W WO2020115219
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】18211158.3
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョワイユ ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】リー ピン
(72)【発明者】
【氏名】パパキリロー ステファノス
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-135476(JP,A)
【文献】特表2018-500030(JP,A)
【文献】特表2018-500416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生物品であって、
エアロゾル発生基体と、
前記エアロゾル発生基体と軸方向で整列したフィルターであって、繊維状紙様材料の一つ以上のシートから形成された少なくとも一つの濾過材料のセグメントを備え、前記繊維状紙様材料が、疎水性繊維と親水性繊維との組み合わせを含み、これにより前記繊維状紙様材料が、TAPPI/ANSI T 558 om-15に従って測定した場合に90度より大きい水接触角を有し、かつ前記繊維状紙様材料が、ISO 14851(2005年)に従って試験された場合、水性媒体中で、試験の56日以内にセルロース参照の分解の少なくとも70パーセントの生分解性を有し、前記疎水性繊維が、疎水性ビスコース繊維を含む、フィルターと、を備える、エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記繊維状紙様材料が、TAPPI/ANSI T 558 om-15に従って測定した場合、95度~105度の水接触角を有する、請求項1に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項3】
前記繊維状紙様材料が、ISO 14851(2005年)に従って試験された場合、水性媒体中で、試験の56日以内にセルロース参照の分解の少なくとも90パーセントの生分解性を有する、請求項1または2に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項4】
前記繊維状紙様材料の吸水性が、TAPPI T 432 cm-09に従って測定した場合、180秒より大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項5】
前記親水性繊維および前記疎水性繊維が、前記繊維状紙様材料の乾分の重量の少なくとも50パーセントを表す、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項6】
疎水性繊維の親水性繊維に対する比が、2:3~3:2、または2:1~1:2である、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項7】
前記繊維状紙様材料における疎水性繊維の親水性繊維に対する前記比が1:1である、請求項6に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項8】
前記親水性繊維が、植物繊維、針葉樹繊維、またはセルロース繊維を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項9】
前記繊維状紙様材料が少なくとも25グラム/平方メートルの坪量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項10】
濾過材料の前記セグメントが、前記繊維状紙様材料の一つ以上のシートの集合体から形成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項11】
前記繊維状紙様材料の前記一つ以上のシートが捲縮されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項12】
前記繊維状紙様材料が、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロースアセテート、セルロースエステル、アルキルコハク酸無水物、ロジン、アクリルコポリマー、加工デンプン、親水コロイド、およびこれらの混合物から成る群から選択される結合剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項13】
ラッパーによって囲まれた濾過材料を含むエアロゾル発生物品で使用するためのフィルターセグメントであって、前記濾過材料が、繊維状紙様材料のシートを含み、前記繊維状紙様材料が、疎水性繊維と親水性繊維との組み合わせを含み、前記繊維状紙様材料が、TAPPI/ANSI T 558 om-15に従って測定した場合に90度より大きい水接触角、およびISO 14851(2005年)に従って試験された場合、試験の56日以内に、水性媒体中で、セルロース参照の少なくとも70パーセントの生分解性を有し、前記疎水性繊維が、疎水性ビスコース繊維を含む、フィルターセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性濾過材料から形成された少なくとも一つのセグメントを有するフィルターを備える、エアロゾル発生物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルター付き紙巻たばこなどの従来のエアロゾル発生物品は典型的に、紙ラッパーによって包囲されたたばこカットフィラーの円筒状のロッドと、巻かれたたばこロッドとほとんどの場合端と端とが当接する関係で軸方向に整列した円筒状のフィルターとを備える。円筒状のフィルターは典型的に、紙プラグラップによって囲まれたセルロースアセテートトウなどの繊維質の濾過材料の一つ以上のプラグを備える。従来、巻かれたたばこロッドおよびフィルターは、フィルターの長さ全体および巻かれたたばこロッドの隣接部分を囲む、通常は不透明の紙材料から形成されたチッピングラッパーの帯によって結合される。
【0003】
たばこが燃焼するのではなく加熱される数多くのエアロゾル発生物品もまた、当技術分野において提唱されてきた。加熱式エアロゾル発生物品では、エアロゾルはたばこなどのエアロゾル発生基体を加熱することによって発生する。公知の加熱式エアロゾル発生物品としては、例えば、エアロゾルを電気加熱によって、または可燃性燃料要素もしくは熱源からエアロゾル形成基体への熱の伝達によって発生する喫煙物品が含まれる。喫煙中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル形成基体から放出され、かつ喫煙物品を通して引き出される空気中に同伴される。放出された化合物は冷めるにつれて凝縮してエアロゾルを形成し、これを消費者が吸い込む。数多くの公知の加熱喫煙物品は、セルロースアセテートなどの繊維質の濾過材料の一つ以上のプラグを備える。
【0004】
エアロゾル発生物品が喫煙され、かつ廃棄された後、フィルターセクションはできるだけ迅速に破壊されることが望ましい。最も一般的に使用される濾過材料であるセルロースアセテートは、生分解性ではなく、そしてそのため、エアロゾル発生物品の濾過材料として使用するために、幅広くさまざまな分散性および分解性材料が提唱されてきた。
【0005】
しかしながら、多くの場合、こうした代替的な濾過材料は、消費者に対して許容可能な濾過効率および喫煙の体験を提供することができないことが見出されている。さらに、多くの場合、分散性および分解性材料が、既存の製造プロセスでの使用に適さないことが見出されており、そしてそれらの使用を商業的に実現可能にするためには、既存の方法および設備の過度に大幅な修正が必要となることになる。
【0006】
それ故に、生分解性が向上しているが、セルロースアセテートトウの濾過効率に匹敵する濾過効率を提供する濾過材料から少なくとも部分的に形成されているフィルターを有する、エアロゾル発生物品を提供することが望ましいことになる。さらに、消費者に許容可能な感覚的な体験を与えるこうしたエアロゾル発生物品を提供することが望ましいことになる。加えて、既存の高速製造技法、および最小限の修正のみを必要とする装置を使用して容易に製造することができる、こうしたエアロゾル発生物品を提供することが望ましいことになる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様によれば、エアロゾル発生基体と、エアロゾル発生基体と軸方向で整列したフィルターと、を備えるエアロゾル発生物品が提供され、フィルターは、繊維状紙様材料の一つ以上のシートから形成された濾過材料の少なくとも一つのセグメントを備え、繊維状紙様材料は、疎水性繊維と親水性繊維との組み合わせを含み、これにより繊維状紙様材料は、TAPPI/ANSI T 558 om-15に従って測定した場合に90度より大きい水接触角を有し、かつ繊維状紙材料は、ISO-14851(2005年)に従って試験された場合、水性媒体中で、試験の56日以内にセルロース参照アイテムの最大分解の少なくとも90パーセントの生分解性を有する。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、エアロゾル発生物品用の濾過材料が提供され、濾過材料は、繊維状紙様材料のシートを備え、繊維状紙様材料は、疎水性繊維と親水性繊維との組み合わせを含み、これにより繊維状紙様材料は、TAPPI/ANSI T 558 om-15に従って測定した場合に90度より大きい水接触角を有し、かつ繊維状紙材料は、ISO-14851(2005年)に従って試験された場合、水性媒体中で、試験の56日以内にセルロース参照アイテムの最大分解の少なくとも90パーセントの生分解性を有する。
【0009】
当然のことながら、本発明の一態様に関して説明した任意の特徴は、本発明の任意の他の態様にも等しく適用可能である。
【0010】
「エアロゾル発生物品」という用語は本明細書において、エアロゾル発生基体が加熱される物品と、エアロゾル発生基体が燃焼される物品(従来の紙巻たばこなど)との両方を意味するために使用される。本明細書で使用される場合、「エアロゾル発生基体」という用語は、加熱に伴い揮発性化合物を放出してエアロゾルを生成する能力を有する基体を意味する。
【0011】
従来の紙巻たばこは、ユーザーが炎を紙巻たばこの一方の端に適用し、そしてもう一方の端を通して空気を吸うときに点火される。炎および紙巻たばこを通して引き込まれた空気中の酸素によって提供される局在化した熱が、紙巻たばこの端部を着火させ、そして結果として生じる燃焼が吸入可能な煙を発生する。
【0012】
加熱式エアロゾル発生物品では、エアロゾルは風味発生基体(たばこなど)を加熱することによって生成される。公知の加熱式エアロゾル発生物品としては、例えば電気加熱式エアロゾル発生物品、およびエアロゾルが可燃性燃料要素または熱源から、物理的に分離されたエアロゾル形成材料への熱の伝達によって生成されるエアロゾル発生物品が挙げられる。例えば、本発明によるエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生基体のロッドの中へと挿入されるように適合されている内部ヒーターブレードを有する電気加熱式のエアロゾル発生装置を備えるエアロゾル発生システムにおいて特定の用途がある。このタイプのエアロゾル発生物品は、先行技術、例えば、欧州特許第EP 0822670号に記載されている。
【0013】
本明細書で使用される場合、「エアロゾル発生装置」という用語は、エアロゾル発生物品のエアロゾル発生基体と相互作用してエアロゾルを発生するヒーター要素を備える装置を指す。本発明によるエアロゾル発生物品は、使用中にエアロゾル発生基体を加熱するための可燃性炭素熱源を備えてもよい。このタイプのエアロゾル発生物品は、先行技術、例えば、国際特許公開公報第2009/022232号に記載されている。また、ニコチン含有エアロゾルが、燃焼を用いずに、また一部の事例では加熱を用いずに、例えば化学反応を通して、たばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン供与源から発生されるエアロゾル発生物品も公知である。喫煙中、揮発性化合物は、燃料要素からの熱伝達によってエアロゾル形成基体から放出され、エアロゾル発生物品を通して引き出された空気中に同伴される。放出された化合物は冷めるにつれて凝縮してエアロゾルを形成し、これを消費者が吸い込む。
【0014】
「紙様」という用語は、本明細書では、製紙技術において公知の方法および設備によって製造することができるものなどのシート形態の材料を意味するために使用される。一つのこうした材料の製造において、繊維状の出発材料は、典型的には、希釈懸濁液を得るために、水性媒体中に均質に分散される。追加的に分散剤が、水性懸濁液中の繊維の分散を支援するために使用されてもよい。篩様のスクリーンを通して懸濁液を排出することによって、無作為に織り込まれた繊維のマットが敷設される。過剰な水は、典型的には、随意に吸引または熱源の補助により、押すことによってこうしたマットから除去される。乾燥工程の後、概して平坦で均一なシートが達成される。
【0015】
本明細書で使用される場合、「疎水性」という用語は、撥水性特性を示す材料または表面を指す。下記により詳細に記述するように、疎水性を決定する一つの有用なやり方は、水接触角を測定することである。「水接触角」は、従来は液体を通して測定された、液体/蒸気界面が固体表面と交わる所の角度である。この角度は、ヤングの式によって説明されるように、液体によって固体表面の湿潤性を実質的に定量化する。
【0016】
これに反して、本明細書では、「親水性」という用語は、水と強い親和性を呈する材料または表面、例えば、水と混合する、水に溶解する、または水によって湿潤する傾向を示す材料または表面を意味するために使用される。
【0017】
「疎水性繊維」という用語は、疎水性特性を有する繊維を意味するために使用される。繊維の場合には、疎水性特性は、沈下試験によって評価されてもよい。一つのこうした試験では、所定量の水の中に繊維が沈下するために必要とされる時間が測定される。疎水性特性を有しないビスコース繊維については、沈下時間は典型的には5秒未満である。疎水性ビスコース繊維については、沈下時間は典型的には24時間より長い。
【0018】
疎水性ビスコース繊維は、例えば、米国特許出願公開第2015/0329707号に記載される。より詳細には、米国特許出願公開第2015/0329707号は、典型的には、ビスコース繊維と、アルキルケテン二量体、アルケニルケテン二量体、アルキルコハク酸無水物、アルケニルコハク酸無水物、アルキルグルタミン酸無水物、アルケニルグルタミン酸無水物、およびアルキルイソシアネート、アルケニルイソシアネート、脂肪酸無水物、およびこれらの混合物から成る群から選択される疎水性物質との混合物としてもたらされる疎水性ビスコース繊維を開示している。疎水性物質の含有量は、ビスコース繊維に基づいて約0.1重量パーセント~約13重量パーセントであり、また好ましくは、ビスコース繊維に基づいて約1重量パーセント~約7.5重量パーセントである。適切な疎水性ビスコース繊維の一例は、Kelheim Fibres GmbHによるOLEA(登録商標)ビスコース繊維である。
【0019】
「セルロース繊維」という用語は、本明細書では、針葉樹繊維、木材パルプ、または例えば亜麻もしくはたばこなどの一年生植物のパルプなどの化学的、機械的、または熱機械的パルプ化プロセスによって得られる、漂白化または無漂白のセルロース系植物繊維を特定するために使用される。さらに、「セルロース繊維」という用語は、これらの漂白または無漂白のセルロース系植物繊維のうちの二つ以上の混合物を指す場合がある。
【0020】
本明細書で使用される場合、「長軸方向」という用語は、エアロゾル発生物品の上流端と下流端との間に延びる、エアロゾル発生物品の主長軸方向軸に対応する方向を指す。使用中、空気は長軸方向でエアロゾル発生物品を通して引き出される。「横断方向」という用語は、長軸方向軸に対して直角を成す方向を指す。
【0021】
エアロゾル発生物品またはエアロゾル発生物品の構成要素の「断面」への任意の言及は、別途記載のない限り、横断断面を指す。本明細書で使用される場合、「長さ」という用語は、長軸方向における構成要素の寸法を指し、また「幅」という用語は、横断方向における構成要素の寸法を指す。「最大幅」という用語は、構成要素の最大断面寸法を指す。例えば、円形断面を有するセグメントの場合、最大幅は円の直径に対応する。
【0022】
シート材料から切断または細断されたストランドまたは細片に関して使用される場合、「幅」という用語は、エアロゾル発生物品内のストランドまたは細片の空間的配向に関係なく、平らに置かれたときのストランドまたは細片のより小さい寸法を指す。シート材料から形成されたストランドまたは細片に関して使用される場合、「長さ」という用語は、エアロゾル発生物品内のストランドまたは細片の空間的配向に関係なく、平らに置かれたときのストランドまたは細片のより大きい寸法を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、使用中にエアロゾル発生物品を通してエアロゾルが搬送される方向に関する、エアロゾル発生物品のセグメントもしくは要素の、またはセグメントもしくは要素の部分の相対的な位置を説明する。
【0024】
本発明によるエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生基体、およびエアロゾル発生基体と軸方向で整列したフィルターを含む。フィルターは、典型的にエアロゾル発生基体から下流に配置される。フィルターは、繊維状紙様材料の一つ以上のシートから形成された、少なくとも一つの濾過材料のセグメントを備える。
【0025】
既存のエアロゾル発生物品とは対照的に、本発明により、繊維状紙様材料は、疎水性繊維と親水性繊維との組み合わせを含み、これにより繊維状紙様材料は、TAPPI/ANSI T 558 om-15に従って測定した場合に90度より大きい水接触角を有する。実際には、繊維状紙様材料内の疎水性繊維と親水性繊維の比は有利なことにバランスが取れており、これにより繊維状紙様材料のシートは全体的に疎水性材料として挙動する一方で、同時に十分な量の親水性繊維を保持して、製紙プロセスでシートを形成することを可能にする。
【0026】
さらに、繊維状紙様材料は、ISO 14851(2005年)に従って試験された場合、水性媒体中で、試験の56日以内にセルロース参照アイテムの最大分解の少なくとも90パーセントの生分解性を有する。繊維状紙様材料の疎水性要素および親水性要素の両方に生分解性繊維を使用することによって、有利なことに高レベルの生分解性を達成することができる。
【0027】
実際には、本発明によるエアロゾル発生物品のフィルターセグメントは、従来のセルロースアセテートフィルターセグメントに見られるものと同様の疎水性と親水性とのバランスを提供するが、生分解性が著しく増加するという利点を有する。親水性繊維を含めることは、製紙のために従来採用されてきた技法を使用して紙様のウェブ材料を形成することを可能にする一方で、同時に疎水性繊維の添加は、全体的に疎水性のシートの提供につながり、これにより最終的には、従来の(非生分解性)セルロースアセテート材料の特性と類似した特性が得られる。材料中の疎水性繊維および親水性繊維の存在は、当業界で周知の紙の顕微鏡写真分析によって決定することができる。繊維状紙様材料のシートにおいて、親水性繊維および疎水性繊維は、繊維状紙様材料の乾分の少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、または少なくとも80パーセントの重量を表す。
【0028】
それ故に、本発明によるエアロゾル発生物品のフィルターセグメントによって提供される全体的な感覚的な体験は、従来のセルロースアセテートトウのフィルターセグメントのものと効果的には同等であるが、環境的な影響は著しく改善された。
【0029】
本発明によるエアロゾル発生物品の製造は、既存の設備およびプロセスのいかなる著しい修正も必要としない。シート材料は、従来の製紙技法を使用して容易に製造することができ、また既存のフィルター作製装置を使用してフィルターロッドへと形成することができ、これは商業的に実行可能な材料の使用を可能にする。傾斜ワイヤプロセスは、高度に多孔性かつかさばるウェブ構造の形成を容易にするため、シートを形成するために特に好ましい。
【0030】
簡潔に上述したように、本発明によるエアロゾル発生基体では、フィルターは、繊維状紙様材料の一つ以上のシートから形成された濾過材料の少なくとも一つのセグメントを含み、繊維状紙様材料は疎水性繊維と親水性繊維との組み合わせを含む。繊維状紙様材料の中へと組み込まれる疎水性繊維のタイプおよび量を調整することによって、材料の疎水性特性を制御することが可能になる。
【0031】
繊維状紙様材料の疎水性は、TAPPI/ANSI T 558 om-15に記載される試験に従って決定され、そして「度」で測定される接触角として提示される結果は、ほぼゼロ度~ほぼ180度の範囲とすることができる。より詳細には、TAPPI/ANSI T 558 om-15に記載される試験によれば、指定された体積の水が、指定された払い出しパラメータを使用して繊維状紙様材料の表面に適用される。シートと接触する水滴の画像が、払い出し後、指定された時間間隔でビデオカメラによって捕捉される。水接触角、すなわち、繊維状紙様材料のシートによって形成された角度およびシートと接触する水滴の表面に対する接線は、捕捉された画像上の画像分析技法によって決定される。指定された時間における水接触角、接触角の変化の速度、落下高さおよび直径の変化も分析することができ、また試験される材料に関する追加的な情報を提供する場合がある。
【0032】
本発明によれば、繊維状紙様材料は、90度より大きい水接触角を有する。それ故に、繊維状紙様材料のシートは、全体的に疎水性材料として効果的に挙動する。
【0033】
繊維状紙様材料は、95度より大きい水接触角を有することが好ましい。繊維状紙様材料は、100度より大きい水接触角を有することがより好ましい。
【0034】
加えて、または別の方法として、繊維状紙様材料は、110度未満の水接触角を有することが好ましい。好ましい実施形態では、繊維状紙様材料は、80度~120度の水接触角を有する。繊維状紙様材料は、95度~110度の水接触角を有することがより好ましい。
【0035】
これに反して、従来のセルロースアセテートおよび紙(セルロース)シート材料はすべて、約40度を下回る水接触角を有する。言い換えれば、これらはすべて、全体的な親水性材料として挙動する。
【0036】
本発明によるエアロゾル発生物品では、生分解性繊維は、紙様材料を形成する繊維の疎水性部分および親水性部分の両方に使用される。簡潔に上述されるように、水性媒体中での繊維状紙様材料の生分解性は、試験の56日以内にセルロース参照アイテムの最大分解の少なくとも90パーセントである。
【0037】
繊維状紙様材料の水性生分解性特性は、ISO 14851「水性媒体中のプラスチック材料の最終的な好気性生分解-閉じたレスピロメータ内の酸素要求量を測定することによる方法(2005年)」に記述される試験に従って決定される。試験材料は、他の有機炭素供与源を本質的に含まない化学的に定義された液体媒体の中へと入れられ、微生物が添加される。水性媒体中の有機材料の好気性生分解の間に、酸素は消費され、そして炭素は二酸化炭素の形態で気体状の鉱物炭素に変換される。有機材料の一部は、細胞増殖のために同化される。放出された二酸化炭素を捕捉するためにKOH溶液が使用され、それ故に誘発される圧力降下は、消費された酸素に直接関連し、その結果、試験材料の生分解の間接的な測定を提供する。酸素消費量に基づく生分解の量は、試験材料の理論的酸素要求量(ThOD)または化学的酸素要求量(COD)に対する生化学的酸素要求量(BOD、対照に対して補正される)の比として表現される。二酸化炭素産生に基づく生分解は、二酸化炭素の形態で気体状の鉱物炭素に変換された、試験材料の固体炭素の割合として計算される。
【0038】
欧州規格EN 14987「プラスチック-排水処理プラントにおける廃棄性の評価-最終的な許容のための試験スキームおよび仕様(2006年)」によれば、生分解の割合が、少なくとも全体で90パーセント、または試験の56日以内に、適切な参照アイテムの最大分解の90%であるときにのみ、材料を生分解性と呼ぶことができる。実際には、試験材料に対して決定された生分解の量は、指定された特徴を有するセルロース参照アイテムについて決定された生分解の量と比較される。
【0039】
実験の開始時、反応器は、指定濃度の懸濁固体/リットルを有する試験媒体を得るために、同量の鉱物媒体および所定量の微生物源(接種材料)で充填される。セルロース参照アイテムおよび試験材料(複数可)を反応器に添加し、そして反応器を暗所で制御された室温下で少なくとも28日間インキュベートする。インキュベーション期間にわたり、酸素消費量は常に記録されるが、一方で発生しかつKOH溶液中に捕捉される二酸化炭素の量は、定期的に滴定法で決定される。上記に提示した条件が満たされる場合、試験材料は生分解性であると見なすことができる。
【0040】
繊維状紙様材料は、IS 17556(2012年)に従って試験された場合、土壌媒体中で、試験の120日以内にセルロース参照アイテムの最大分解の少なくとも80パーセントの生分解性を有することが好ましい。繊維状紙様材料は、IS 17556(2012年)に従って試験された場合、土壌媒体中で、試験の90日以内にセルロース参照アイテムの最大分解の少なくとも80パーセントの生分解性を有することがより好ましい。繊維状紙様材料は、IS 17556(2012年)に従って試験された場合、土壌媒体中で、試験の60日以内にセルロース参照アイテムの最大分解の少なくとも80パーセントの生分解性を有することがなおより好ましい。
【0041】
繊維状紙様材料の水性生分解性特性は、ISO 17556「土壌中での最終的な好気性生分解の、レスピロメータ内酸素要求量、または放出された二酸化炭素の量を測定することによる決定(2012年)」に記述される試験に従って決定される。試験材料を土壌と混合し、そして周囲室温にて暗所でインキュベートする。微生物活性を通した生分解の間に、気体、主に二酸化炭素と水の混合物が生成される。二酸化炭素は、KOH溶液中で捕捉され、かつ滴定によって定期的に決定され、これにより、二酸化炭素の累積生成を決定することができる。生分解の割合は、二酸化炭素の形態で気体状炭素に変換された試験材料の固体炭素の割合として計算することができる。
【0042】
Vincotteの生分解性土壌適合性マークを満たすことを考慮すると、試験材料は、合計で少なくとも90%、または試験材料および参照アイテムの両方に対して停滞状態に達した後に適切な参照アイテムの最大分解の90%の生分解の割合を有する必要がある。実際には、120日かかる試験の終了時に、試験材料に対して決定された生分解の量は、指定された特徴を有するセルロース参照アイテムについて決定された生分解の量と比較される。上記に提示した条件が満たされる場合、試験材料は生分解性であると見なすことができる。
【0043】
これに反して、従来のセルロースアセテートのシート材料は、セルロース参照アイテムの最大分解の約20~25%の水性媒体中で生分解性を有する。もう一方では、紙ラッパーおよびチッピングペーパーなどのエアロゾル発生材料のフィルターおよびその他の構成要素の製造に一般的に使用されるセルロース系材料は、水性媒体中で参照アイテムの最大分解の90パーセント以上の生分解性を有する場合がある。
【0044】
繊維状紙様材料中の疎水性繊維に対する親水性繊維の比を調整することによって、有利なことにシートの他の特性を制御することも可能である。一般に、親水性繊維の存在は、製紙プロセスにおいて繊維質材料のシートを形成するのに役立つという点で望ましい。
【0045】
繊維状紙材料の吸水性は、TAPPI T 432 cm-09に従って測定した場合、少なくとも180秒であることが好ましい。
【0046】
本発明によるフィルターの繊維状紙様材料などの吸湿性基体の吸水性は、TAPPI T 432 cm-09に記載される試験に従って決定される。この試験手順は、サイズ設定されていない、かつ吸収性の紙様材料が、指定された量の水を完全に吸収するために必要とされる時間を決定する。この目的のために、各々がおよそ100×100ミリメートルの繊維状紙様材料の10個の試料を、制御された雰囲気下でコンディショニングし、かつ試験する。試験標本を水平支持体上に置き、かつ所定量の蒸留水または脱イオン水を所与の期間中、標本の上へと流す。タイマーは、水が標本に接触するとすぐに開始され、そして湿潤スポットからの光沢のあるまたは艶のある区域が消えることによって視覚的に示されると、水が完全に吸収されるのに必要な時間が測定される。試験が10個の標本すべてに対して繰り返され、そして試験材料の吸水性として平均吸収時間が秒単位で測定される。
【0047】
これに反して、100パーセントセルロース紙は、TAPPI T 432 cm-09に従って測定した場合、2秒以下の吸水性を有する。エアロゾル発生物品のフィルターに従来使用されているタイプのセルロースアセテートは、典型的には、TAPPI T 432 cm-09に従って測定した場合に180秒以上の吸水性を有する。繊維状紙様材料は、乾燥質量に基づいて約10パーセント~約90パーセントの親水性繊維と、乾燥質量に基づいて約90パーセント~約10パーセントの疎水性繊維を含んでもよい。親水性繊維および疎水性繊維は、全体として取るとき、乾燥質量に基づいて、繊維状紙様材料の少なくとも50パーセントを表す場合がある。
【0048】
繊維状紙様材料は、乾燥質量に基づいて、少なくとも40重量パーセントの疎水性繊維を含み、残りは親水性繊維であることが好ましい。繊維状紙様材料は、乾燥質量に基づいて、少なくとも45重量パーセントの疎水性繊維を含むことがより好ましい。繊維状紙様材料は、乾燥質量に基づいて、少なくとも50重量パーセントの疎水性繊維を含むことがなおより好ましい。
【0049】
繊維状紙様材料中の疎水性繊維と親水性繊維の比は、フィルターが形成されるシート(複数可)の疎水性を制御するように調整することができる。フィルター内の疎水性繊維と親水性繊維との比は、約2:3~3:2である。特に好ましい実施形態では、フィルター内の疎水性繊維と親水性繊維との比は約1:1であり、約50パーセントの疎水性繊維および50パーセントの親水性繊維を有する。
【0050】
親水性繊維は、セルロース繊維を含むことが好ましい。親水性繊維は、セルロース繊維から成ることがより好ましい。適切な代替的な親水性繊維としては、綿、ウール、親水性ビスコースが挙げられる。さらなる適切な代替的親水性繊維が、当業者には公知であろう。例としては、広葉樹(ユーカリ、樺、ブナ)、針葉樹(松、樅)および非樹木(竹)供給源を使用することができる。木材チップは、化学的方法および漂白を使用して、パルプグレードのシートへと加工されてもよい。次いで、繊維は、パルプシートをドープへと処理および溶解し、そしてドープを高速回転することによって繊維へと形成されてもよい。一つのこうしたプロセスの出力は、ステープル繊維(切断され、かつベール梱包された)の形態、またはフィラメント糸の形態であってもよい。
【0051】
一部の実施形態では、親水性繊維は、精製セルロース繊維を含む。精製セルロース繊維は、典型的には、9度SR~90度SR、好ましくは10度SR~40度SR、より好ましくは15度SR~25度SRのショッパーリグラー度(SR度)を有してもよい。上記に提示した範囲のSR度を有する精製セルロース繊維は、有利なことに、繊維状紙様材料のシートに、改善された引張強さを付与するのに役立つ場合がある。SR度は、ISO 5267-1(2000年7月)に従って測定される。
【0052】
典型的には、疎水性繊維の直径は、0.015ミリメートル~0.045ミリメートル、好ましくは0.02ミリメートル~0.04ミリメートルである。
【0053】
典型的には、親水性繊維の長さは、20ミリメートル未満、好ましくは1ミリメートル~12ミリメートル、なおより好ましくは2ミリメートル~5ミリメートルである。これらの範囲内の長さを有する繊維は、有利なことに、繊維状紙様材料のシートの製造を容易にする。
【0054】
疎水性繊維は疎水性ビスコース繊維を含むことが好ましい。疎水性繊維は疎水性ビスコース繊維から成ることがより好ましい。適切な代替疎水性繊維は、当業者には公知であり、ポリエステル繊維およびアクリル繊維を含んでもよい。
【0055】
特に好ましい実施形態では、繊維状紙様材料は、50パーセントのセルロース繊維と50パーセントの疎水性ビスコース繊維とから成る混合物から形成される。
【0056】
疎水性繊維は、0.5dtex~40dtexのタイターを有することが好ましい。疎水性繊維は、1dtex~6dtexのタイターを有することがより好ましい。疎水性繊維は、1.7dtex~3.3dtexのタイターを有することがなおより好ましい。加えて、または別の方法として、疎水性繊維は、約5dtex未満のタイターを有することが好ましい。疎水性繊維は、約3dtex未満のタイターを有することがより好ましい。
【0057】
典型的には、疎水性繊維の長さは、20ミリメートル未満、好ましくは1ミリメートル~12ミリメートル、なおより好ましくは2ミリメートル~5ミリメートルである。これらの範囲内の長さを有する繊維は、有利なことに、繊維状紙様材料のシートの製造を容易にする。
【0058】
繊維状紙様材料は、約15グラム/平方メートル~約60グラム/平方メートルの坪量を有してもよい。好ましい実施形態では、繊維状紙様材料は、少なくとも約20グラム/平方メートルの坪量を有する。繊維状紙様材料は、少なくとも約25グラム/平方メートルの坪量を有することがなおより好ましい。加えて、または別の方法として、繊維状紙様材料は、約50グラム/平方メートル未満の坪量を有することが好ましい。繊維状紙様材料は、40グラム/平方メートル未満の坪量を有することがより好ましい。特に好ましい実施形態では、繊維状紙様材料のシートは、約20グラム/平方メートル~約50グラム/平方メートル、より好ましくは約25グラム/平方メートル~約40グラム/平方メートルの坪量を有する。
【0059】
繊維状紙様材料のシートは、約0.025ミリメートル~約0.2ミリメートルの厚さを有してもよい。好ましい実施形態では、繊維状紙様材料のシートは、少なくとも約0.05ミリメートル、より好ましくは少なくとも0.07ミリメートルの厚さを有する。加えて、または別の方法として、繊維状紙様材料のシートは、好ましくは0.175ミリメートル未満、より好ましくは約0.16ミリメートル未満の厚さを有する。特に好ましい実施形態では、繊維状紙様材料のシートは、約0.05ミリメートル~約0.175ミリメートル、より好ましくは約0.07ミリメートル~約0.16ミリメートルの厚さを有する。
【0060】
繊維状紙様材料のシートは、約1000コレスタ単位~約50000コレスタ単位の空隙率を有してもよい。好ましい実施形態では、繊維状紙様材料のシートは、少なくとも約5000コレスタ単位、より好ましくは少なくとも約10000コレスタ単位の空隙率を有してもよい。加えて、または別の方法として、繊維状紙様材料のシートは、好ましくは40000コレスタ単位未満、より好ましくは約35000コレスタ単位未満の空隙率を有してもよい。特に好ましい実施形態では、繊維状紙様材料のシートは、好ましくは、約5000コレスタ単位~約40000コレスタ単位、より好ましくは約10000コレスタ単位~約35000コレスタ単位の空隙率を有する。シートの空隙率は、IS 2965:2009に従って測定される。
【0061】
繊維状紙様材料のシートは、典型的には、少なくとも約1500cN/30ミリメートルの引張強さMD(機械方向における)を有してもよい。好ましくは、繊維状紙様材料のシートは、少なくとも約2000cN/30ミリメートル、より好ましくは少なくとも約2510cN/30ミリメートルの引張強さMDを有する。加えて、または別の方法として、繊維状紙様材料のシートは、好ましくは約3500cN/30ミリメートル未満、より好ましくは約3200cN/30ミリメートル未満の引張強さMDを有する。特に好ましい実施形態では、繊維状紙様材料のシートは、約2000cN/30ミリメートル~約3500cN/30ミリメートル、より好ましくは約2510cN/30ミリメートル~約3200cN/30ミリメートルの引張強さMDを有する。
【0062】
繊維状紙様材料のシートは、典型的には、少なくとも約100cN/30ミリメートルの引張強さCD(機械横断方向における)を有してもよい。好ましくは、繊維状紙様材料のシートは、少なくとも約500cN/30ミリメートル、より好ましくは少なくとも約900cN/30ミリメートルの引張強さCDを有する。加えて、または別の方法として、繊維状紙様材料のシートは、好ましくは約2000cN/30ミリメートル未満、より好ましくは約1750cN/30ミリメートル未満の引張強さCDを有する。特に好ましい実施形態では、繊維状紙様材料のシートは、約500cN/30ミリメートル~約2000cN/30ミリメートル、より好ましくは約900cN/30ミリメートル~約1750cN/30ミリメートルの引張強さCDを有する。
【0063】
引張強さは、速度が、20ミリメートル/分ではなく、10ミリメートル/分(MD)および30ミリメートル/分(CD)であり、試験された試料の幅が、15ミリメートルではなく、30ミリメートルであることを除いて、ISO 1924-2(2008年12月)に従って測定される。
【0064】
一部の実施形態では、繊維状紙様材料は、サイジング剤、湿潤剤、選択的濾過剤、およびこれらの混合物から選択される一つの添加剤を含む。
【0065】
サイジング剤は、アルキルケテン二量体、アルケニルケテン二量体、アルケニルコハク酸無水物、ロジン、およびこれらの混合物のうちの一つであってもよい。サイジング剤は、有利なことに、繊維状紙様材料のシートの疎水性、表面強度、および印刷適性を改善する場合がある。
【0066】
湿潤剤は、少なくとも約500グラム/molの平均分子量を有するポリアルキレングリコールなどのポリエーテルであってもよい。適切な湿潤剤のその他の例としては、モノプロピレングリコール、ソルビトール、グリセリン、トリアセチン、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0067】
選択的濾過剤は、アミノ酸もしくはアミノ酸塩、特に塩基性アミノ酸もしくは塩基性アミノ酸塩、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0068】
典型的には、繊維状紙様材料は、45乾燥質量パーセント未満の添加剤を含む。繊維状紙様材料は、約30重量パーセント未満の添加剤を含むことが好ましい。添加剤は、有利なことに、繊維状紙様材料の生分解動態を加速する場合がある。
【0069】
一部の実施形態では、繊維状紙様材料は、結合剤を含む。結合剤は、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロースアセテート、セルロースエステル、アルキルコハク酸無水物、ロジン、スチレンアクリルコポリマーなどのアクリルコポリマー、加工デンプン、ゼラチンなどの親水コロイド、およびこれらの混合物から成る群から選択されてもよい。
【0070】
実施形態では、結合剤は繊維の形態であってもよい。一つのこうした結合剤は、ポリビニルアルコール(PVOH)繊維、ポリビニルアセテート(PVA)繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、セルロースアセテート繊維、ナイロン、セルロースエステル繊維、およびこれらの混合物から成る群から選択されてもよい。
【0071】
典型的には、繊維状紙様材料は、20乾燥質量パーセント以下の結合剤を含んでもよい。好ましい実施形態では、繊維状紙様材料は、約5乾燥質量パーセント~15乾燥質量パーセントの結合剤を含む。
【0072】
結合剤を含む本発明の繊維状紙様材料の実施形態は、増加した引張強さ(MDおよびCDの両方で)を表示することが見出されている。これは、有利なことに、本発明の繊維状紙様材料の機械加工性の改善にさらに寄与する。加えて、本発明の繊維状紙様材料は、概してより滑らかな仕上がりを有し、これは摩擦の低減につながる場合がある。
【0073】
特に好ましい実施形態では、紙様繊維状材料のシートは、37乾燥質量パーセント~39乾燥質量パーセントの親水性繊維としての精製セルロース繊維、37乾燥質量パーセント~39乾燥質量パーセントの疎水性ビスコース繊維、7乾燥質量パーセント~8乾燥質量パーセントのサイジング剤、および15乾燥質量パーセント~18乾燥質量パーセントの湿潤剤を含む。
【0074】
別の特に好ましい実施形態では、紙様繊維状材料のシートは、27乾燥質量パーセント~29乾燥質量パーセントの親水性繊維としての精製セルロース繊維、27乾燥質量パーセント~29乾燥質量パーセントの疎水性ビスコース繊維、15乾燥質量パーセント~25乾燥質量パーセントの結合剤、7乾燥質量パーセント~8乾燥質量パーセントのサイジング剤、および15乾燥質量パーセント~18乾燥質量パーセントの湿潤剤を含む。
【0075】
本発明によるエアロゾル発生物品のフィルターに使用するための繊維状紙様材料のシートは、従来の製紙プロセスおよび設備を使用して、上記に提示した疎水性繊維および親水性繊維の組み合わせから製造することができる。その結果、繊維を、例えば、フォードリニア抄紙機上で紙様シートへと変換することができる水性懸濁液またはスラリーにすることができる。本発明で使用するための繊維状紙様材料の湿潤シートは、傾斜ワイヤ、フラットワイヤ、または円網抄紙機、または他の製紙手段で作製することができる。傾斜ワイヤ抄紙機の使用が好ましい。それ故に、形成された湿潤シートは、次いで乾燥されて、繊維状紙様材料のシートを得る。
【0076】
乾燥動作は、典型的には、約摂氏60度~約摂氏175度、好ましくは約摂氏70度~約摂氏150度、なおより好ましくは約摂氏80度~摂氏130度の温度で実施されてもよい。
【0077】
紙様繊維状材料のシートが、上記で参照された添加剤のうちの一つ以上を含有する場合、添加剤は、その間に疎水性繊維と親水性繊維とが水と混合されるのと同一の工程において、または繊維を含有する懸濁液またはスラリーが形成された後で、水性懸濁液またはスラリーに添加されてもよい。代替として、一つ以上の添加剤は、形成された際に、乾燥動作の前に、湿潤した紙様シートに添加されてもよい。さらなる代替的なプロセスでは、一つ以上の添加剤は、乾燥動作が完了した後で、紙様シートに添加されてもよい。
【0078】
典型的には、サイジング剤は、バスサイジングを使用して、サイズプレスを使用して、噴霧を通して、スムージングプレスの使用を通して、ゲートロールサイズプレスの使用を通して、カレンダーサイジングを使用して、ブレードコーティングを通して、またはこれに類するものにより湿紙に添加される。サイズプレスを使用してサイジング剤を適用する場合、新たに形成された湿紙は、ローラーを通してプレスすることができ、これはサイジング剤を紙シートの中へと押し込みし、かつ随意に過剰な添加剤またはサイズを除去することができる。
【0079】
サイズプレスを使用してサイジング剤を適用することには、ある特定の利点がある場合がある。例えば、サイジング剤は、湿紙をより疎水性にすることができるか、または表面強度もしくは耐水性またはその両方を改善することができる。それ故に、湿紙は、より簡単に脱水される場合がある。
【0080】
湿潤剤を紙に適用するために、任意の適切な技法を使用してもよい。例えば、湿潤剤は、サイズプレス、噴霧、ナイフコーティング、マイヤーロッドコーティング、振りかけ、トランスファーロールコーターによって、または任意の適切な印刷プロセスを通して塗布されてもよい。適切な印刷プロセスとしては、フレキソ印刷、グラビア印刷、およびこれに類するものが含まれる。一実施形態では、湿潤剤は、紙様繊維状材料のシートの片側または両側の表面積の実質的に100パーセントを覆ってもよい。
【0081】
一実施形態では、湿潤剤は、紙様繊維状材料のシートの片側または両面に印刷することができる。それ故に、湿潤剤は、紙をコーティングするために使用される一方で、依然として利点を保持する。一例として、湿潤剤は、紙様繊維状材料のシートの表面積の10パーセント~100パーセント、好ましくは紙様繊維状材料のシートの表面積の20パーセント~90パーセント、より好ましくは紙様繊維状材料のシートの40パーセント~60パーセントを覆うように、紙様繊維状材料のシートの一つの表面に適用されてもよい。代替的な実施形態では、または加えて、湿潤剤を、反応性区域を増加することを考慮して、紙様繊維状材料のシートの厚さに分散することができる。
【0082】
選択的濾過剤は、例えば、サイジング剤または湿潤剤と組み合わされ、かつ同時に適用されてもよい。
【0083】
下記により詳細に説明するように、乾燥動作の後に、乾燥シートを、集合、捲縮、エンボス加工、波型のうちの一つ以上によって成形するさらなる工程が続いてもよい。濾過材料のセグメントは、繊維状紙様材料の一つ以上のシートの集合体から形成されることが好ましい。濾過材料のセグメントでは、繊維状紙様材料の一つ以上のシートの集合体は、従来の(紙)フィルタープラグラップなどのラッパーによって囲まれていることがより好ましい。
【0084】
本明細書で使用される場合、「集合」という用語は、繊維状紙様材料シートが、渦巻き状にされ、折り畳まれ、または別の方法でフィルターセグメントの円筒軸に対して実質的に横断方向に圧縮もしくは収縮されていることを意味する。
【0085】
繊維状紙様材料のシートの集合体は、実質的にフィルターセグメントの全長に沿って、かつ実質的にフィルターセグメントの横断断面積全体を横切って延びることが好ましい。
【0086】
本発明に従って、繊維状紙様材料の一つ以上のシートの集合体から形成されたフィルターセグメントは、有利なことに、著しく低い重量標準偏差を呈する場合がある。一つ以上のシートの集合体から形成され、かつ特定の長さを有するフィルターセグメントの重量は、フィルターセグメントを形成するために集合された繊維状紙様材料のシートの密度、幅、および厚さによって決定される。それ故に、こうしたフィルターセグメントの重量は、繊維状紙様材料のシートの密度および寸法を制御することによって調節することができる。これは、有利なことに、本発明の同一寸法のフィルターセグメント間での重量の非一貫性を低減し、そのため結果として重量が選択された許容可能な範囲外となるフィルターセグメントの不合格率を下げる。
【0087】
さらに、本発明の均質化したたばこ材料により、繊維状紙様材料の一つ以上のシートの集合体から形成されたフィルターセグメントは、有利なことに、従来のフィルターセグメントより均一な密度を呈する場合がある。
【0088】
好ましい実施形態では、本発明によるフィルターセグメントは、ラッパーによって囲まれた繊維状紙様材料の一つ以上のきめのある集合体シートから形成される。繊維状紙様材料のきめのあるシートの使用は、有利なことに、本発明によるフィルターセグメントを形成するための、繊維状紙様材料のシートの集合を容易にする場合がある。
【0089】
本明細書で使用される場合、「きめのあるシート」という用語は、捲縮、エンボス加工、デボス加工、穿孔、または別の方法で変形されたシートを意味する。本発明で使用するための繊維状紙様材料のきめのあるシートは、複数の離隔したへこみ、突出部、穿孔、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。本発明の文脈では、「捲縮したシート」という用語は、「しわ付けしたシート」という用語と同じ意味であることが意図され、また複数の実質的に平行な隆起または波型を有するシートを意味する。
【0090】
繊維状紙様材料の捲縮したシートは、実質的に本発明によるフィルターセグメントおよびエアロゾル発生物品の円筒軸に平行な複数の隆起または波型を有することが好ましい。これは、有利なことに、フィルターセグメントを形成するために繊維状紙様材料の捲縮したシートを集合するのを容易にする。しかし当然のことながら、本発明で使用するための繊維状紙様材料の捲縮したシートは、別の方法としてまたは追加的に、フィルターセグメントの円筒軸に対して鋭角または鈍角で配置された複数の実質的に平行な隆起または波型を有してもよい。
【0091】
ある特定の実施形態では、本発明で使用するための繊維状紙様材料シートは、実質的にその表面全体にわたって実質的に均等なきめがあってもよい。例えば、本発明で使用するための繊維状紙様材料の捲縮したシートは、シートの幅にわたって実質的に均等に離隔した複数の実質的に平行な隆起または波型を含んでもよい。
【0092】
上述のような繊維状紙様材料の一つ以上のシートを集合することによって濾過材料のセグメントを形成する代替として、本発明に従ってエアロゾル発生物品で使用するためのフィルターセグメントは、繊維状紙様材料のシート上で切断動作または細断動作を実施することによって得られる断片またはストランドから形成されてもよい。一例として、上記に提示した繊維の組み合わせを含む繊維状紙様材料のシートは、所定の幅を有する断片またはストランドへと切断されてもよい。断片またはストランドは、例えば、約10ミリメートル~15ミリメートルなどの所定の長さに追加的に切断されてもよい。断片またはストランドを、(紙)フィルタープラグラップなどのラッパーによって囲んで、従来の紙巻たばこ用のカットフィラーのロッドを形成するためのプロセスに類似したプロセスで、濾過材料のセグメントを形成してもよい。
【0093】
本発明によるエアロゾル発生物品で使用するためのフィルターは、典型的には、約45パーセント~約60パーセントの濾過効率を有する場合がある。好ましくは、本発明によるエアロゾル発生物品で使用するためのフィルターは、約50パーセント~約55パーセントの濾過効率を有する。濾過効率はIS0 4387:2000-04-01(第三版)-紙巻たばこ-ルーチンの分析用喫煙マシンを使用する総乾燥粒子状物質およびニコチンを含まない乾燥粒子状物質の決定に従って測定される。本発明によるエアロゾル発生物品で使用するためのフィルターは、上述の繊維状紙様材料から形成された一つ以上のフィルター要素またはセグメントを含んでもよい。
【0094】
加えて、または別の方法として、本発明によるエアロゾル発生物品で使用するためのフィルター要素は、代替的な濾過材料から形成された一つ以上のセグメントを含んでもよい。
【0095】
一部の実施形態では、エアロゾル発生基体は、従来の紙巻たばこのように、紙ラッパーによって囲まれた、たばこ材料のランダムに配向させた断片、ストランド、または細片のロッドの形態であってもよい。フィルターセグメントまたは要素は、チッピングペーパーによってロッドに取り付けられてもよい。
【0096】
他の実施形態では、エアロゾル発生基体は、均質化したたばこ材料のシートの集合体の形態であってもよい。このタイプのロッドは、国際特許出願第WO-A-2012/164009号に記載されており、またこれは特に加熱式エアロゾル発生物品に適している。均質化したたばこ材料のストランドから形成された加熱式エアロゾル発生物品のためのロッドを開示する別の代替案が、国際特許出願第WO-A-2011/101164号から公知であり、これは粒子状たばこおよび少なくとも一つのエアロゾル形成体を含む混合物のキャスティング、圧延、カレンダー成形、または押出成形によって形成されて、均質化したたばこ材料のシートを形成しうる。
【0097】
本発明によるエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生基体のロッドおよびフィルターに加えて一つ以上の要素を備えることが好ましく、ロッド、フィルター、および一つ以上の要素は基体ラッパー内に組み立てられる。例えば、本発明によるエアロゾル発生物品は、マウスピース、エアロゾル冷却要素、および支持要素(中空のアセテートチューブなど)のうちの少なくとも一つをさらに備えてもよい。例えば、一つの好ましい実施形態では、エアロゾル発生物品は、直線状の逐次的な配設で、上述のようなエアロゾル発生基体のロッドと、エアロゾル発生基体のすぐ下流に位置する支持要素と、支持要素の下流に位置するエアロゾル冷却要素と、ロッド、支持要素、およびエアロゾル冷却要素を囲む外側ラッパーと、を備える。
【0098】
ここで以下の実施例および添付図面を参照しながら本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1図1は、本発明によるエアロゾル発生物品の概略側面断面図である。
図2図2は、下記に実施例で説明するように、本発明によるエアロゾル発生物品で使用するための繊維状紙様材料の試料に対して実行された生分解試験の結果を示すグラフである。
【0100】
本発明によるエアロゾル発生物品10の実施形態を図1に図示する。エアロゾル発生基体のロッド12と、エアロゾル発生基体と軸方向で整列したマウスピースフィルター14と、を備えるエアロゾル発生物品10が提供される。フィルター14は、エアロゾル発生基体12から下流に配設される。
【0101】
フィルター14は、下記により詳細に説明するように調製された、本発明による、繊維状紙様材料の一つ以上のシートから形成された濾過材料のセグメントを含む。より詳細には、濾過材料のセグメントでは、繊維状紙様材料の一つ以上のシートが集合され、そして実質的にセグメントの全長に沿って、かつ実質的にセグメントの横断断面積全体にわたって延びる。
【0102】
加えて、エアロゾル発生物品10は、中空のセルロースアセテートチューブ16、およびロッド12とフィルター14との間に配設されたスペーサー要素18を含み、これにより四つの要素すべてが、逐次的にかつ同軸で整列して配設される。四つの要素すべては、同一のラッパー20によって囲まれて、エアロゾル発生物品を形成する。
【0103】
エアロゾル発生基体12のロッドは、およそ12ミリメートルの長さ、およびおよそ7ミリメートルの直径を有する。ロッド12は円筒状の形状であり、かつ実質的に円形断面を有する。フィルター14は、実質的に円筒状の形状であり、かつ実質的に円形断面を有し、およそ7ミリメートルの長さおよびおよそ7ミリメートルの直径を有する。
【0104】
実施例1
本発明の繊維状紙様材料のいくつかの実施例を実験室規模で作製し、そして業界標準の技法によって試験した。疎水性繊維は、Kelheim Fibres GmbHによって製造されたDANUFIL OLEA(登録商標)ビスコース繊維であった。これらの繊維は、1.7dtex(1.53den)~3.3 dtex(2.97den)のタイターを有し、長さは5ミリメートルである。漂白または無漂白の針葉樹繊維、または漂白セルロース繊維(すべてが15度SRのSR度を有する)など、様々なタイプの親水性繊維を使用した。繊維状紙様材料を作製するために、両方のタイプの繊維は、水と混合してスラリーを得た。次いで、こうして形成された水性スラリーを、傾斜ワイヤ抄紙機の多孔性形成表面の上へと払い出して、湿紙を形成した。次いで、湿紙を、摂氏80度~摂氏100度の温度で乾燥させた。
【0105】
5個の試料の組成および特徴を下記に示す。
【表1】
【0106】
試料5は、0.15乾燥質量パーセントのアルキルケテン二量体、サイジング剤を追加的に含有した。
紙シートの毛細管現象の上昇高値は、ISO 8787:1986に従って測定された。
【0107】
水滴値は、1964年のTAPPI T432によって測定した場合、水滴が繊維状紙様材料のシートによって吸収されるために必要な時間に対応する。
【0108】
比較のために、100重量パーセントの未精製針葉樹繊維を含有する繊維状紙様材料を同様に作製し、かつ試験した。この対照紙は、96ミリメートル/10分間の毛細管現象の上昇高値および2秒未満の水滴値を示した。
【0109】
実施例2
繊維状紙様材料で作製されたフィルター要素を、水性生分解試験に供した。ISO 14851-水性媒体中のプラスチック材料の最終的な好気性生分解性の決定に記載される標準的な方法論に従った。試験は、調整された汚泥によって引き起こされる実験室条件下での試験アイテムの生分解を決定する。より詳細には、試験材料は、他の有機炭素供与源を本質的に含まない化学的に定義された液体媒体の中へと入れられ、微生物が添加される。水性媒体中の有機材料の好気性生分解の間に、酸素は消費され、そして炭素は二酸化炭素に変換される。定期的な間隔で、生成されたCO2の量が、CO2を吸収するKOH溶液の滴定によって決定される。CO2産生に基づく生分解は、CO2の形態で気体状の鉱物炭素に変換された、試験化合物の固体炭素の割合として計算される。
【0110】
二つの試験項目および一つの参照基準が試験された。セルロース参照基準は、薄層クロマトグラフィー(Avicel、FMC)に適した微結晶セルロース粉末である。試験項目1は、チッピングペーパーと、50乾燥質量パーセントの漂白した針葉樹繊維、および50乾燥質量パーセントの1.7dtex(1.53den)で長さ5ミリメートルのDanufil Oleaビスコース繊維で作製された本発明の26gsmの繊維状紙様濾過材料と、を含む、喫煙された紙巻たばこの吸い殻であった。項目1におけるこの材料の接触角は、95度より大きいことが見出された。試験項目2は、濾過材料と同一のタイプのチッピングペーパーおよび従来の不織セルロースアセテートを含む、喫煙された紙巻たばこの吸い殻であった。項目2のセルロースアセテートの接触角は90度であった。項目1および項目2は両方とも、同様の長さ(27mm)および同様の直径(7.7mm)を有した。両方とも、試験開始時に2ミリメートル未満のサイズ小片へと切断された。
【0111】
試験は3回繰り返して実施された。試験の開始時に、12個の反応器の各一つずつに同量の鉱物媒体および接種材料を充填して、およそ30ミリグラムの懸濁固体/リットルの濃度の試験媒体を得た。参照アイテムおよび試験アイテムは、反応器に直接添加された。3個一組のブランク対照も含まれた。微生物(接種材料)の供給源は、異なる廃水処理プラントから得られた活性汚泥の混合物であった。反応器を攪拌し、56日の期間中、暗所でかつ一定温度(摂氏21度±摂氏1度)でインキュベートした。
【0112】
14日後、28日後、42日後、および56日後、生分解は、試験中にKOH溶液中に捕捉されたCO2の量を測定することによって決定された。図2を参照のこと。
【0113】
表1は、56日後の結果を示す。試験終了時における基準項目および試験項目のThCO2(=有機炭素%および試料の入力に基づく理論的CO2産生)、正味CO2産生、および生分解割合。
【表2】
【0114】
繊維状紙様材料を含むアイテム2の生分解パターンは、参照基準セルロースの生分解パターンと同様であった。14日後、59.5%の生分解に達した。その後、生分解速度は減速し始めた。28日後、78.0パーセント±3.1パーセントの絶対的な生分解が測定された。試験の終了時(56日)に、生分解の停滞状態は、82.7パーセント±3.0パーセントのレベルに達した。相対基準で、参照基準と比較して、94.2パーセントの生分解の割合が計算された。
【0115】
比較すると、セルロースアセテート含有項目1の生分解は、ほぼ直ちに中程度の速度で開始したが、14日後から平らになった。56日後、29.8パーセント±1.5パーセントの絶対的な生分解が測定され、または純粋なセルロースの参照基準と比較して、相対基準で33.9パーセントであった。
【0116】
これらの結果から、本発明の繊維状紙様材料を含む試験項目1は、試験の56日以内に90パーセントの生分解性要件を満たすと結論付けることができる。
図1
図2