(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ばね支援IOL提供機構を有するIOLインジェクタ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2021533284
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 IB2019060787
(87)【国際公開番号】W WO2020128756
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】チエン リウ
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0257317(US,A1)
【文献】国際公開第2010/026919(WO,A1)
【文献】特開2017-153958(JP,A)
【文献】国際公開第2007/037223(WO,A1)
【文献】米国特許第2472116(US,A)
【文献】国際公開第2010/21354(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズ(IOL)インジェクタであって、
インジェクタ本体であって、
近位端及び遠位端を有する主本体と、
近位端及び遠位端を有するノズルであって、前記ノズルの前記近位端が前記主本体の前記遠位端に結合
され、前記ノズルは、IOLを収容するように構成されたIOL保管場所、及び前記IOL保管場所に対して遠位にあるIOL待機場所を更に含む、ノズルと、
前記主本体の前記近位端から前記ノズルの前記遠位端まで延在する長手方向軸を有するボアと、
を有する、インジェクタ本体と、
前記インジェクタ本体内で移動可能に結合されて、前記ボア内で整列されたばね支援プランジャであって、
前記ばね支援プランジャが、
ユーザがアクセス可能な近位端、及び遠位端を有するプランジャ本体と、
近位端及び遠位端を有するプランジャロッドと、
前記プランジャロッドの前記遠位端に形成され、IOLに接触して、
前記ばね支援プランジャに加えられた軸方向の力に応じて前記IOLを軸方向に移動させるように適合されたプランジャ先端と、
前記プランジャ本体に結合された第1の端部、及び前記プランジャロッドに結合された第2の端部を有するばねと、
を有する、ばね支援プランジャと、を備え、
前記プランジャ本体に加えられた軸方向の力に応じて、
前記プランジャ本体が軸方向に移動するように適合され、それに応じて、前記ばねが弾性エネルギーを蓄積するように適合されており、
前記プランジャロッドは、前記IOL保管場所に近位に隣接する第1の位置から、前記IOL待機場所に近位に隣接する第2の位置まで軸方向に移動し、前記プランジャロッドの更なる軸方向の動きを防止するように適合された取り外し可能なストッパに接触するように適合され、前記取り外し可能なストッパが前記インジェクタ本体に結合されており、
前記取り外し可能なストッパの取り外し及び前記ばねからの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて、前記プランジャロッドが前記インジェクタ本体の前記遠位端に向かって軸方向に移動するように適合されている、
眼内レンズ(IOL)インジェクタ。
【請求項2】
前記取り外し可能なストッパが、前記インジェクタ本体の第1の側内にスライド可能に配置されたピンを含み、
前記ピンの第1の端部が、
前記ユーザがアクセス可能であり、
前記ピンの第2の端部が、前記プランジャロッドに接触するように適合されており、
第1の構成では、前記ピンの前記第2の端部が、前記プランジャロッドに接触するように適合され、前記プランジャロッドの軸方向の動きを防止するように構成されており、
第2の構成では、前記ピンの前記第2の端部が、前記プランジャロッドの軸方向の動きを防止しないように適合されている、
請求項1に記載のIOLインジェクタ。
【請求項3】
前記取り外し可能なストッパが、前記プランジャロッドの軸方向の動きに対する抵抗を提供するように適合されたブレーキ機構を含み、前記ブレーキ機構が、
前記ユーザがアクセス可能なハンドルを含む第1の端部、及び前記プランジャロッドに接触し、それによって前記プランジャロッドの軸方向の動きに対して摩擦ブレーキ力を加えるように適合された第2の端部、を有する、ブレーキレバーと、
前記ブレーキレバーの前記第1の端部と第2の端部との間に配置されたピボットポイントで前記インジェクタ本体に結合された前記ブレーキレバーと、
前記ブレーキレバーに結合された第1の端部、及び前記インジェクタ本体に結合された第2の端部を有するブレーキレバー戻りばねと、を有し、
前記ハンドルに加えられた力に応じて、
前記ブレーキレバーの前記第2の端部が、前記プランジャロッドと接触する静止位置から離れて移動し、それによって前記摩擦ブレーキ力を減少させるように適合されており、
前記減少された摩擦ブレーキ力に応じて、前記プランジャロッドが、前記ばねからの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて軸方向に移動するように適合されており、
前記ブレーキレバー戻りばねが、前記ブレーキレバーの前記第2の端部を前記静止位置に戻すように適合されている、
請求項1に記載のIOLインジェクタ。
【請求項4】
前記プランジャロッドが、前記ブレーキレバーの前記第2の端部に接触し、それによって前記プランジャロッドの軸方向の動きに対して
前記摩擦ブレーキ力を加えるように適合された1つ以上のブレーキパッドリブを有するブレーキパッドを含む、
請求項3に記載のIOLインジェクタ。
【請求項5】
前記摩擦ブレーキ力が値Bを有し、
前記ハンドルに加えられる前記力が値Hを有し、
BがHに反比例する、
請求項3に記載のIOLインジェクタ。
【請求項6】
前記ばねが、圧縮ばね、引張ばね、又はねじりばねである、請求項1に記載のIOLインジェクタ。
【請求項7】
前記ばね支援プランジャが、前記プランジャロッドの近位部分が前記プランジャ本体の遠位部分内で同心に結合されて、その中で軸方向にスライド可能である伸縮部分を有し、
前記プランジャ本体に加えられた
前記軸方向の力に応じて、前記プランジャロッドの前記近位部分が、前記プランジャ本体の前記遠位部分内でスライド可能に移動するように適合されており、
前記ばねからの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて、前記プランジャロッドの前記近位部分が、前記プランジャ本体の前記遠位部分内でスライド可能に移動するように適合されている、請求項1に記載のIOLインジェクタ。
【請求項8】
前記インジェクタ本体が、前記ボア内に配置された少なくとも1つの隆起を更に含み、
前記プランジャ本体が、少なくとも1つの隆起係合歯を更に含み、
前記少なくとも1つの隆起及び前記少なくとも1つの隆起係合歯が、前記プランジャ本体が前記IOLインジェクタの前記インジェクタ本体の前記遠位端から離れる動きを防止するように適合されている、
請求項1に記載のIOLインジェクタ。
【請求項9】
前記
少なくとも1つの隆起及び前記
少なくとも1つの隆起係合歯が、前記プランジャ本体が
第2の遠位位置にあるときに、前記プランジャ本体が前記IOLインジェクタの前記インジェクタ本体の前記遠位端から離れる動きを防止するように適合されている、
請求項8に記載のIOLインジェクタ。
【請求項10】
前記プランジャロッドの軸方向の動きに対して摩擦抵抗を提供するように構成されたリブ付き減衰機構であって、
前記プランジャロッド上に配置された少なくとも1つの減衰リブと、前記ボア内に配置された少なくとも1つの減衰リブと、を含む、リブ付き減衰機構を更に備え、
前記プランジャロッド上の前記少なくとも1つの減衰リブが、前記ボア内に配置されて、前記プランジャロッドの軸方向の動きに対する
前記摩擦抵抗を提供するように適合された前記少なくとも1つの減衰リブに接触するように構成されている、
請求項1に記載のIOLインジェクタ。
【請求項11】
前記リブ付き減衰機構が、前記ノズルの前記遠位端からの前記プランジャロッドの距離が減少する関数として、前記プランジャロッドの軸方向の動きに対して増大する摩擦抵抗を加えるように構成されている、
請求項10に記載のIOLインジェクタ。
【請求項12】
前記プランジャロッド上の前記少なくとも1つの減衰リブ、及び/又は前記ボア内に配置された前記少なくとも1つの減衰リブが、複数の減衰リブを含み、
前記各減衰リブ間の距離が、前記ノズルの前記遠位端からの距離が減少するにつれて減少する、
請求項11に記載のIOLインジェクタ。
【請求項13】
前記プランジャロッド上の前記少なくとも1つの減衰リブ、及び/又は前記ボア内に配置された前記少なくとも1つの減衰リブが、複数の減衰リブを含み、
前記ボア内に配置された複数の減衰リブに接触する前記プランジャロッド上の複数の減衰リブが、前記ノズルの前記遠位端からの距離が減少するにつれて増大する、
請求項11に記載のIOLインジェクタ。
【請求項14】
前記IOLインジェクタが、前記ボア内の
前記IOLの軸方向位置(AP)と、前記ボア内の
前記IOLを軸方向に移動させるために
前記ユーザによって加えられる力(AF)との間の関係を含むIOL導入力プロファイルを有し、
前記IOLインジェクタが、APの関数としてのAFの変動が最小である力プロファイルを有するように構成されている、
請求項10に記載のIOLインジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/781,719号に対する優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、眼内レンズ(IOL)インジェクタのためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人間の眼は、最も簡単に言えば、角膜と呼ばれる透明な外側部分を通して光を透過及び屈折させ、更に水晶体経由で眼の後ろの網膜上に画像を集束させることによって、視覚を提供するように機能する。集束した画像の品質は、眼のサイズ、形状、長さ、並びに角膜及び水晶体の形状及び透明度を含む、多くの要因に依存する。外傷、加齢、又は病気によって水晶体の透明度が低下すると、網膜に透過し得る光が少なくなるため、視力が低下する。眼の水晶体のこの欠陥は、医学的に白内障として知られている。この状態に対する治療は、水晶体の外科的除去及び人工レンズ(IOL)の移植である。
【0004】
多くの白内障水晶体は、水晶体超音波乳化吸引術と呼ばれる外科的技術によって除去される。この処置の間、眼の前嚢に開口部が作られ、水晶体超音波乳化吸引術の切削チップが患部の水晶体内に挿入されて超音波で振動される。切削チップを振動させることにより、水晶体が眼から吸引され得るように、水晶体を液化又は乳化する。罹患した水晶体は、いったん除去されると、IOLに置き換えられる。
【0005】
IOLは、小さな切開部、場合によっては、罹患した水晶体を除去するために使用されるのと同じ切開部を通して眼内に導入され得る。IOLを眼に提供するために、IOLインジェクタが使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
眼内レンズ(IOL)インジェクタが記載されている。IOLインジェクタは、近位端及び遠位端を有する主本体を有するインジェクタ本体、近位端及び遠位端を有するノズル、主本体の遠位端に結合されたノズルの近位端、及び主本体の近位端からノズルの遠位端まで延在する長手方向軸を有するボアを含む。IOLインジェクタはまた、インジェクタ本体内で移動可能に結合されて、ボア内で整列されたばね支援プランジャを有する。プランジャは、ユーザがアクセス可能な近位端、及び遠位端を有するプランジャ本体、近位端及び遠位端を有するプランジャロッド、プランジャロッドの遠位端に形成され、IOLと接触して、プランジャに加えられた軸方向の力に応じてIOLを軸方向に移動させるように適合されたプランジャ先端、並びにプランジャ本体に結合された第1の端部及びプランジャロッドに結合された第2の端部を有するばね、を有する。プランジャ本体に加えられた軸方向の力に応じて、プランジャ本体は軸方向に移動するように適合され、それに応じて、ばねは弾性エネルギーを蓄積するように適合されている。ばねからの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて、プランジャロッドは、インジェクタ本体の遠位端に向かって軸方向に移動するように適合されている。
【0007】
ノズルは、IOLを収容するように構成されたIOL保管場所、及びIOL保管場所に対して遠位にあるIOL待機場所を含み得る。プランジャ本体に加えられた第1の軸方向の力に応じて、プランジャ本体は、近位位置から第1の遠位位置まで軸方向に移動するように適合され得る。それに応じて、プランジャロッドは、IOL保管場所に近位に隣接する第1の位置からIOL待機場所に近位に隣接する第2の位置まで軸方向に移動し、インジェクタ本体に結合されて、プランジャロッドの更なる軸方向の動きを防止するように適合された取り外し可能なストッパに接触するように適合され得る。プランジャ本体に加えられる更なる軸方向の力に応じて、プランジャ本体は第1の遠位位置から第2の遠位位置まで軸方向に移動するように適合され得、それに応じて、ばねは弾性エネルギーを蓄積するように適合され得る。取り外し可能なストッパの取り外しに応じて、プランジャロッドは、ばねからの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて、インジェクタ本体の遠位端に向かって軸方向に移動するように適合され得る。
【0008】
取り外し可能なストッパは、インジェクタ本体の第1の側内にスライド可能に配置されたピンを含み得る。ピンの第1の端部は、ユーザがアクセス可能であり得、ピンの第2の端部は、プランジャロッドに接触するように適合され得る。第1の構成では、ピンの第2の端部は、プランジャロッドに接触するように適合され得、プランジャロッドの軸方向の動きを防止するように構成され得る。第2の構成では、ピンの第2の端部は、プランジャロッドの軸方向の動きを防止しないように適合され得る。
【0009】
取り外し可能なストッパは、プランジャロッドの軸方向の動きに対する抵抗を提供するように適合されたブレーキ機構を含み得る。ブレーキ機構は、ユーザがアクセス可能なハンドルを有する第1の端部と、プランジャロッドに接触し、それによってプランジャロッドの軸方向の動きに対して摩擦ブレーキ力を加えるように適合された第2の端部と、を有するブレーキレバーを含み得る。ブレーキレバーは、ブレーキレバーの第1の端部と第2の端部との間に配置されたピボットポイントでインジェクタ本体に結合し得る。ブレーキ機構は、ブレーキレバーに結合された第1の端部と、インジェクタ本体に結合された第2の端部とを有するブレーキレバー戻りばねを含み得る。ハンドルに加えられた力に応じて、ブレーキレバーの第2の端部は、プランジャロッドと接触する静止位置から離れて移動し、それによって摩擦ブレーキ力を減少させるように適合され得る。減少した摩擦ブレーキ力に応じて、プランジャロッドは、ばねからの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて軸方向に移動するように適合され得る。ブレーキレバー戻りばねは、ブレーキレバーの第2の端部を静止位置に戻すように適合され得る。
【0010】
プランジャロッドは、ブレーキレバーの第2の端部に接触し、それによってプランジャロッドの軸方向の動きに対して摩擦ブレーキ力を加えるように適合された1つ以上のブレーキパッドリブを有するブレーキパッドを含み得る。
【0011】
摩擦ブレーキ力は値Bを有し、ハンドルに加えられる力は値Hを有し、BはHに反比例し得る。
【0012】
ばねは、圧縮ばね、引張ばね、又はねじりばねであり得る。
【0013】
プランジャは、プランジャロッドの近位部分がプランジャ本体の遠位部分内で同心に結合され、その中で軸方向にスライド可能である伸縮部分を有し得る。プランジャ本体に加えられた軸方向の力に応じて、プランジャロッドの近位部分は、プランジャ本体の遠位部分内でスライド可能に移動するように適合され得、ばねからの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて、プランジャロッドの近位部分は、プランジャ本体の遠位部分内でスライド可能に移動するように適合され得る。
【0014】
インジェクタ本体は、ボア内に配置された少なくとも1つの隆起を含み得、プランジャ本体は、少なくとも1つの隆起係合歯を含み得る。少なくとも1つの隆起及び少なくとも1つの隆起係合歯は、プランジャ本体がIOLインジェクタのインジェクタ本体の遠位端から離れる動きを防止するように適合され得る。
【0015】
隆起及び隆起係合歯は、プランジャ本体が第2の遠位位置にあるときに、プランジャ本体がIOLインジェクタのインジェクタ本体の遠位端から離れる動きを防止するように適合され得る。
【0016】
IOLインジェクタは、プランジャロッドの軸方向の動きに対して摩擦抵抗を提供するように構成されたリブ付き減衰機構を含み得る。リブ付き減衰機構は、プランジャロッド上に配置された少なくとも1つの減衰リブと、ボア内に配置された少なくとも1つの減衰リブとを含み得る。プランジャロッド上の少なくとも1つの減衰リブは、ボア内に配置されて、プランジャロッドの軸方向の動きに対する摩擦抵抗を提供するように適合された、少なくとも1つの減衰リブに接触するように構成され得る。
【0017】
リブ付き減衰機構は、ノズルの遠位端からのプランジャロッドの距離が減少する関数として、プランジャロッドの軸方向の動きに対して増大する摩擦抵抗を加えるように構成され得る。
【0018】
プランジャロッド上の少なくとも1つの減衰リブ、及び/又はボア内に配置された少なくとも1つの減衰リブは、複数の減衰リブを含み得、各減衰リブ間の距離は、ノズルの遠位端からの距離が減少するにつれて減少し得る。
【0019】
プランジャロッド上の少なくとも1つの減衰リブ及び/又はボア内に配置された少なくとも1つの減衰リブは、複数の減衰リブを含み得、ボア内に配置された複数の減衰リブに接触するプランジャロッド上の複数の減衰リブは、ノズルの遠位端からの距離が減少するにつれて増大し得る。
【0020】
IOLインジェクタは、ボア内のIOLの軸方向位置(AP)と、ボア内のIOLを軸方向に動かすためにユーザによって加えられる力(AF)との間の関係を既定するIOL導入力プロファイルを有し得る。IOLインジェクタは、APの関数としてのAFの変動が最小である力プロファイルを有するように構成され得る。
【0021】
IOLインジェクタは、IOLベース、IOL光学部、又はその両方を個別に導入するように適合され得る。
【0022】
IOLインジェクタは、IOLベース及びIOL光学部を同時に導入するように適合され得る。
【0023】
本開示をより完全に理解するために、ここで、添付図面と併せて、以下の説明を参照するが、これらの添付図面は縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、例示的なIOLインジェクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の例示的なIOLインジェクタの長手方向の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、ベース及び光学部を含む例示的なツーピースIOLを示している。
【
図4】
図4は、例示的なIOLインジェクタのノズルの斜視図である。
【
図6】
図6は、
図4のIOLインジェクタのノズルの別の斜視図である。
【
図7】
図7は、内部に配置されて、待機場所に位置決めされたIOLを有する、例示的なIOLインジェクタの遠位端の図である。
【
図8A】
図8Aは、圧縮ばね支援プランジャを有する例示的なIOLインジェクタの概略図である。
【
図9A】
図9Aは、引張ばね支援プランジャを有する例示的なIOLインジェクタの概略図である。
【
図9B】
図9Bの例示的なIOLインジェクタの別の概略図である。
【
図10A】
図10Aは、ねじりばね支援プランジャを有する例示的なIOLインジェクタの概略図である。
【
図11A】
図11Aは、ブレーキ機構を有する例示的なIOLインジェクタの概略図である。
【
図12A】
図12Aは、インジェクタ本体の遠位端から離れるプランジャ本体の動きを防止するように適合された隆起及び隆起係合歯を有する例示的なIOLインジェクタの概略図である。
【
図13A】
図13Aは、プランジャ前進減衰機構を有する例示的なIOLインジェクタの概略図である。
【
図14A-C】
図14Aは、例示的なシミュレートされたIOL導入力プロファイルを示すグラフであり、
図14Bは、例示的なシミュレートされたIOL導入力プロファイルを示す別のグラフであり、
図14Cは、例示的なシミュレートされたIOL導入力プロファイルの例を示す更に別のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の原理の理解を促進する目的のため、ここで図面に示す実装を参照し、特定の言語を用いてそれを説明する。それでもやはり、開示の範囲について何の限定も意図していないことが理解されるであろう。説明するデバイス、機器又は方法に対する任意の代替形態及び更なる修正形態、並びに本開示の原理の任意の更なる適用は、本開示が関連する技術分野の当業者が通常想到するであろうように完全に想定される。特に、1つの実装に関して説明される特徴、構成部品、及び/又はステップは、本開示の他の実装に関して説明される特徴、構成部品、及び/又はステップと組み合わされてもよいことは、完全に想定される。
【0026】
図1及び
図2は、手動でユーザが力を加えることによって作動される例示的なIOLインジェクタ10の概略図である。IOLインジェクタ10は、インジェクタ本体20と、インジェクタ本体20に形成されたボア40を通って往復運動するように適合されたプランジャ30とを含む。インジェクタ本体20は、近位端50及び遠位端23を有する主本体21と、近位端22及び遠位端60を有するノズル25とを有する。ノズル25の近位端22は、主本体21の遠位端23に結合されている。ノズル25は、非圧縮IOL70を収容するように構成されたIOL保管場所80と、IOL保管場所80の遠位にあるIOL待機場所809とを有する。
【0027】
ボア40は、主本体21の近位端50からノズル25の遠位端60まで延在している。ノズル25内のボア40の遠位部分は、それを通ってIOLが軸方向に前進し、圧縮されて、遠位端60の遠位先端27の開口部29を介して眼内に提供され得る、先細の提供チャネル31を形成する。
【0028】
プランジャ30は、インジェクタ本体20内で移動可能に結合され、ボア40内で整列されている。プランジャ30は、IOL70に接触するように適合されたプランジャ先端220を有する。
【0029】
IOLインジェクタ10はまた、長手方向軸75を含む。長手方向軸75は、プランジャ30に沿って延在し、プランジャ30の長手方向軸を規定し得る。
【0030】
IOL保管場所80は、IOL保管場所80の内部へのアクセスを提供するためのドア90を含み得る。ドア90がヒンジ100の周りを旋回してIOL保管場所80を開き、例えば、IOL70の設置を可能にするように、ドア90はヒンジ100を含み得る。他の実装形態では、IOL保管場所80は、IOL70を設置するためのドアを除外し得る。そのような場合、IOL70は、IOLインジェクタ10の組み立て時に、IOL保管場所80内に組み込まれ得る。したがって、そのような場合、IOLインジェクタ10は、プリロードされたIOLインジェクタになる。そのような場合、IOL保管場所80は、ドア90ではなく、開くように構成されていないカバーを有し得る。IOL保管場所80は、粘弾性をIOL保管場所80に追加することを可能にするように適合された穴を含み得る。
【0031】
インジェクタ本体20はまた、インジェクタ本体20の近位端50に形成されたタブ110を含み得る。タブ110は、眼科医、眼科外科助手若しくは看護師、又は他の医療専門家などのユーザの指、親指、又は手によって操作されて、プランジャ30をボア40を通って前進させ得る。
【0032】
プランジャ30は、プランジャ本体200、プランジャ本体200から遠位に延在するプランジャロッド210、及びプランジャロッド210の遠位端230に形成されて、例えば、IOLインジェクタ10のIOL保管場所80に配置されたIOLと接触するように適合された、プランジャ先端220を含み得る。プランジャ30が軸方向に前進し、それによってボア40内で矢印78の方向に遠位方向に変位すると、プランジャ30のプランジャ先端220は、IOL70などのIOLと係合して前進させるように適合されている。
図1及び
図2では、IOL70は、IOL保管場所80内に配置されて示されている。プランジャ30はまた、近位端250に形成されたフランジ240を含み得、これは、ユーザの指、親指、又は手によって操作されて、プランジャ30をボア40を通って矢印78の方向に遠位方向に変位させることによって、プランジャ30をボア40を通って前進させ得る。
【0033】
いくつかの実装形態では、IOL70は、ワンピースIOLであり得る。すなわち、いくつかの実装形態では、IOL70は、
図3Aに示されるように、光学部460及び触覚部450を含み得る。触覚部450のそれぞれは、先端452を含む。いくつかの実装形態では、光学部460及び触覚部450は、単一の材料片から一体的に形成され得る。他の実装形態では、光学部460は1つの材料片から形成され得、触覚部450は別の材料片から形成され得、光学部460及び触覚部450は、眼内に提供される前に一緒に結合され得る。場合によっては、光学部460及び触覚部450は、IOLインジェクタ内に挿入されて眼内に提供される前に、互いにしっかりと固定され得る。
【0034】
他の実装形態では、IOL70は、例えば、
図3Bに示されるように、マルチピースIOLであり得る。例えば、いくつかの実装形態では、IOL70には、2つ以上の別個の構成要素が含まれる。
図3Bは、2つの取り外し可能に取り付けられた構成要素を含む例示的なIOL70である。
図3Bに示されるように、IOL70は、光学部460、及び触覚部450を含み、且つ、上部498及び下部499を有する及びベース461を含む。光学部460及びベース461は、一緒に結合されて単一のIOLになり、その後、必要に応じて、互いから分離されて別個の構成要素になるように適合されている。場合によっては、例えば、
図3Bに示されるツーピースIOL70などのマルチピースIOLの1つ以上の構成要素が、患者の眼内に別々に導入可能である。いったん眼に入ると、構成要素は完全なIOLに組み立てられ得る。例えば、
図3Bに示されるツーピースIOL70の場合、光学部460及びベース461は、眼内に別々に導入可能である。いったん導入されると、光学部460は、ベース461の内部エッジ8内に配置された溝14内でベース461に結合されるように適合されている。
【0035】
時に、患者はIOLの交換を必要とする場合があり、IOLを交換する手順が、眼に損傷を与え得る。例えば、ツーピースIOLを使用する場合、交換手順には、光学部のみの交換が含まれ、それによってベースを眼内の所定の位置に維持することが可能になる。
【0036】
上記で説明したように、いくつかの実装形態では、IOL70は、ベース461及び光学部460が患者の眼内に別々に導入されるツーピースIOLであり得る。したがって、ツーピースIOLの場合、ベース461及び光学部460は、眼に挿入するための別々のIOLインジェクタ10に含まれてもよい。他の実装形態では、ツーピースIOLの2つの構成要素は、単一のIOLインジェクタを使用して眼内に別々に挿入され得る。単一ピースIOLの場合、光学部460及び触覚部450は、単一のIOLを形成し、単一のIOLインジェクタを使用して同時に眼内に挿入される。
【0037】
したがって、いくつかの実装形態では、ユーザは、例えば、上述のIOLインジェクタのIOL保管場所80などの、IOLインジェクタのIOL保管区画内にIOLをロードすることによって、ワンピースIOLをIOLインジェクタ内に配置することができる。また説明されるように、IOL保管場所80は、ドア90などのドアを介してアクセスされ得る。
【0038】
ツーピースIOLの場合、いくつかの実装形態では、ユーザは、ベース461などのベースを、例えばドアを介して、IOLインジェクタのIOL保管区画内にロードすることができる。光学部460などの光学部は、例えば、ドアを介して、別個のIOLインジェクタのIOL保管区画に導入され得る。場合によっては、IOL保管区画は、ドア90などのドアを通してアクセスされ得る。
【0039】
いくつかの実装形態では、IOLは、例えば、製造中、又はそうでなければエンドユーザに配布される前に、IOLインジェクタの保管区画内にプリロードされ得る。したがって、ワンピースIOLの場合、ワンピースIOLは、エンドユーザが受け取る前に、IOLインジェクタを保管区画内にプリロードされ得る。ツーピースIOLの場合、ベースは、1つのIOLインジェクタの保管区画内にプリロードされ得、一方、光学部は、別のIOLインジェクタのIOL保管区画内にプリロードされ得る。本明細書で使用される「プリロードされた」という用語は、ワンピース又はマルチピース構成(例えば、ツーピース構成を含む)のいずれかのIOLが、ユーザによってではなく、むしろ、IOLが以前にIOLインジェクタに設置されており、ユーザがIOLインジェクタを受け取った時点ですでにIOLインジェクタ内に含まれていることによって、IOLインジェクタ内にロードされていることを意味する。IOLインジェクタは、ユーザが受け取ったときに滅菌パッケージ内にパッケージされ得る。
【0040】
本開示を読むと当業者によって理解されるように、IOLインジェクタにプリロードされたIOLは、ユーザによって実行されるIOLインジェクタへのIOLの手動設置及び折り畳みの場合よりも有利である。例えば、IOLを手動で設置して折り畳むと、誤差が生じる可能性が高くなり、それによってすでに複雑な手順中に不要な二次操作又は修正が発生し得る。例えば、IOLを手動で設置して折り畳むことにより、人為的ミスや不十分な滅菌技術などによるIOLの汚染の可能性も招き得る。IOLの汚染により、患者に対する無菌環境を損ない、感染又は他の患者への危害のリスクをもたらし得る。
【0041】
図4~
図7は、例示的なノズル25の詳細を示している。場合によっては、ノズル25は、先細の外面を有する。さらに、ノズル25は、開口部29に向かって先細になる先細の提供チャネル31を形成するボア40の一部を含み得る。遠位先端27は、IOL70を移植できるように、眼内への挿入に適合されている。IOL70は、遠位先端27に形成された開口部29から眼内に排出される。
図5Bに示されるように、先細の提供チャネル31及び遠位先端27は、幅W1を有する楕円形の断面120を有し得る。加えて、遠位先端27は、傾斜先端130を含み得る。IOL保管場所80、提供チャネル31、及び開口部29は、提供通路を規定し得る。提供通路のサイズは、その長さに沿って変化し得る。例えば、場合によっては、提供通路の幅W1、高さH1、又はその両方が、提供通路の長さに沿って変化し得る。提供通路のサイズの変化は、IOLが提供通路を通って前進するときに、IOLの圧縮に寄与し得る。
【0042】
場合によっては、インジェクタ本体20は、挿入深度ガード140を含み得る。挿入深度ガード140は、眼の外側表面に隣接するように適合されたフランジ面150を形成し得る。その開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/049,315号明細書に記載されているように、挿入深度ガード140は、眼の表面に隣接し、それによって遠位先端27が眼内に延在することが可能な量を制限する。
【0043】
図6及び
図7は、例示的なノズル25の一部の詳細図である。ノズル25は、先細の部分62及び挿入深度ガード140を含み得る。遠位先端27は、圧縮された又は部分的に圧縮されたIOL70の待機場所809の視覚的表示を提供する境界1900を含み得る。本明細書で使用される「待機場所」という用語は、ノズル25の遠位端60に隣接する場所を指す。例えば、待機場所809は、遠位端60から2~10mmの場所であり得る。例えば、
図6に示される例では、境界1900は、ノズル25の全部又は一部を取り囲む狭い隆起又はラインである。場合によっては、境界1900は、先細の部分62と挿入深度ガード140との間に配置され得る。インジェクタ本体20の少なくとも一部は、ユーザがインジェクタ本体20内のIOLを見ることを可能にする透明又は半透明の材料から形成され得る。特に、インジェクタ本体20のノズル25は、プランジャ30によってそれを通って移動するときのIOLの観察を可能にするために、透明な材料から形成され得る。
【0044】
図7は、IOL70がノズル25の待機場所809に配置された、IOLインジェクタ10の遠位端60の図を示している。
図7に示されるように、IOL70の待機場所809は、IOL70の光学部の遠位端が境界1900と実質的に整列する場所として規定され得る。触覚部450又はその一部は、境界1900を超えて延在し得る。
【0045】
眼の組織及び構造の感度及び繊細さのため、許容可能なピーク速度と加えられた作動力を用いて、ユーザが患者の眼にIOLを提供することができることが重要である。
【0046】
通常、既存のIOLインジェクタによってIOLを圧縮及び前進させる機構は、プランジャをIOLインジェクタを通って前進させるために必要となる力に大幅な変動を伴う。例えば、既存のIOLインジェクタの作動中、IOLがノズル内で完全に圧縮されると、通常、IOLの前進に対する抵抗がピークとなり、その後、IOLがノズルの出口にあるときに圧力が解放される。場合によっては、これにより、IOLが制御しにくい方法で高速で排出されてしまう可能性がある。一部の既存のIOLインジェクタに関連するIOL前進抵抗力のピーク及びトラフが、IOLインジェクタ及びIOL提供のユーザ制御を低下させる可能性がある。IOLを提供する際の課題には、例えば、IOLインジェクタのユーザ作動によって加えられる力のメカニズム及び大きさを適切且つ再現可能であるように確実にすることが含まれる。また、直感的に使用でき、全ての範囲のスキル及び技術のユーザが利用することができるIOLインジェクタとすることが望ましい。
【0047】
本明細書に記載される様々な実装形態では、本開示は、上述の問題を解決するように適合されたばね支援プランジャ機構に関する。本明細書に記載されるばね支援プランジャ機構の利点には、ユーザに一貫した作動力体験を提供すること、突然のIOL排出を防止すること、ユーザにより高い信頼性及び快適性を提供すること、及び安全性を改善することが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
一般に、本明細書に記載されるばね支援プランジャ機構は、ばね支援プランジャ機構の最初のユーザ作動が弾性エネルギーの蓄積をもたらすように適合されている。その後、ばね支援プランジャ機構は、蓄積された弾性エネルギーを解放するように適合されており、それによってプランジャを前進させて、IOLを患者の眼に提供するのを支援する。さらに、いくつかの実装形態では、本明細書に記載されるばね支援プランジャ機構は、IOLインジェクタからのIOLの突然の排出に対する抵抗を提供するように適合された減衰機構を含む。
【0049】
図8A~
図13Dは、本開示のばね支援プランジャ機構の様々な例示的な実装形態を有するIOLインジェクタの概略図である。
【0050】
いくつかの実装形態では、ばね支援プランジャ機構は、ノズル25の遠位端60に向かってプランジャロッド210の軸方向の前進を駆動又は支援するための機械的な力を提供するように構成された1つ以上のばねを含む。
【0051】
本明細書で使用される「ばね」という用語は、機械的エネルギーを蓄積するように適合された弾性オブジェクトを指す。より具体的には、理論に限定されないが、ばねは、弾性材料の原子間の結合を歪めることによって、ポテンシャルエネルギー、特に弾性ポテンシャルエネルギーを蓄積するデバイスである。
【0052】
コイルばね及びねじりばねなど、当業者によって識別可能な様々なタイプのばねが存在し、これらは、本明細書及び本開示の範囲内で説明されるIOLインジェクタの様々な実装形態において使用することができる。
【0053】
例えば、そうでなければコイルばねとして知られているらせんばねが、静止形態から圧縮又は伸長されると、その長さの変化にほぼ比例する抵抗力が作用する。本明細書で使用される「静止形態」という用語は、本質的に弾性エネルギーが蓄積されなかったばねを指す。コイルばねには通常、2つのタイプ、すなわち、引張ばね又は圧縮ばねがある。引張ばね又は伸長ばねは、負荷がかかるとより長くなるように設計されている。それらのターン(ループ)は通常、無負荷の位置で接触しており、両端部にフック、アイ、又は他の取り付け手段を有し得る。対照的に、圧縮ばねは、負荷がかかるとより短くなるように設計されている。それらのターン(ループ)は通常、無負荷位置では接触しておらず、通常、引張ばねに使用されるような取り付けポイントは必要でない。
【0054】
ねじりばねは、ねじり又はツイストによって機能するばねであり、すなわち、ツイストされると機械的エネルギーを蓄積する柔軟な弾性オブジェクトである。ツイストされると、ねじられた量又は角度に比例して、反対方向に力又はトルクが作用する。
【0055】
例えば、いくつかの実装形態では、ばね1は、例えば
図8A~
図8Dに示されるような圧縮ばね1aであり、又は例えば
図9A~
図9Dに示されるような引張ばね1bであり、又は例えば
図10A~
図10Dに示されるようなねじりばね1cであり得る。
【0056】
いくつかの実装形態では、2つ以上の異なるタイプのばねの様々な組み合わせが、圧縮ばね及び引張ばねなどのように、本明細書で説明されるばね支援プランジャ機構で使用され得る。
【0057】
本開示のばね支援プランジャ機構の実装形態に使用できる他のタイプのばねには、本開示を読むと当業者には識別可能である、とりわけ、一定ばね、可変ばね、可変剛性ばね、平ばね、機械式ばね、曲がりくねったばね、片持ちばね、中空チューブばね、ボリュートばね、ヘアばね、リーフばね、Vばね、ベルビルばね、定力ばね、メインばね、ネゲータばね、プログレッシブレートコイルばね、ゴムバンド、ばねワッシャ、ウェーブばね、が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
ばね支援プランジャ機構は、インジェクタ本体20内で移動可能に結合されて、ボア40内で整列されたばね支援プランジャ30aを含む。ばね支援プランジャ30aは、プランジャ本体200に結合された第1の端部2と、プランジャロッド210に結合された第2の端部3とを有するばね1を有する。ばね支援プランジャ30aは、ユーザによってインジェクタ本体20の遠位端60に向かってプランジャ本体200に加えられた作動力などの、プランジャ本体200に加えられた軸方向の力に応じて、プランジャ本体200がインジェクタ本体20内で軸方向に移動するように適合され、それに応じて、ばね1が弾性エネルギーを蓄積するように適合されるべく構成されている。ばね1からの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて、プランジャロッド210は、インジェクタ本体の遠位端60に向かって軸方向に移動するように適合されている。
【0059】
いくつかの実装形態では、ばね支援プランジャ30aは、プランジャ本体200に加えられた第1の軸方向の力に応じて、プランジャ本体200が近位位置から第1の遠位位置まで軸方向に移動するように適合され得るように構成されている。それに応じて、プランジャロッド210は、IOL保管場所80に近位に隣接する第1の位置から、IOL待機場所809に近位に隣接する第2の位置まで軸方向に移動し、プランジャロッド210の更なる軸方向の動きを防止するように適合された取り外し可能なストッパ4に接触するように適合されている。取り外し可能なストッパ4は、インジェクタ本体20に結合され得る。例えば、取り外し可能なストッパ4は、本明細書に記載されるように、インジェクタ本体20にスライド可能に結合され得るか、又はインジェクタ本体20に回転可能に結合され得る。プランジャ本体200に加えられた更なる軸方向の力に応じて、プランジャ本体200は、第1の遠位位置から第2の遠位位置まで軸方向に移動するように適合され得、それに応じて、ばね1は、弾性エネルギーを蓄積するように適合され得る。取り外し可能なストッパ4の取り外しに応じて、プランジャロッド210は、ばね1からの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて、インジェクタ本体の遠位端60に向かって軸方向に移動するように適合され得る。
【0060】
いくつかの実装形態では、取り外し可能なストッパは、ピン4aの第1の端部5がユーザにアクセス可能であり、ピン4aの第2の端部6がプランジャロッド210に接触するように適合されるように、インジェクタ本体の第1の側内でスライド可能に配置されたピン4aを含み得る。ピン4aは、第1の構成では、ピン4aの第2の端部6がプランジャロッド210に接触するように適合され、それによってプランジャロッド210の軸方向の動きを防止するように構成されるべく適合され得る。第2の構成では、ピン4aの第2の端部6は、プランジャロッド210の軸方向の動きを防止しないように適合され得る。したがって、ピン4aが、例えば、
図8Dに示される第2の構成を採用するように、ユーザは、ピン4aを、例えば
図8Cに示されるような第1の構成から、
図8Dでの矢印85の方向など、外側にスライドさせ得る。
【0061】
いくつかの実装形態では、取り外し可能なストッパは、プランジャロッド210の軸方向の動きに対する抵抗を提供するように適合されたブレーキ機構を含み得る。例えば、
図11A~
図11Dに示されるように、ブレーキ機構は、ユーザがアクセス可能なハンドル7を含む第1の端部と、プランジャロッド210に接触し、それによってプランジャロッド210の軸方向の動きに対して摩擦ブレーキ力を加えるように適合された第2の端部8とを有するブレーキレバー4bを含み得る。ブレーキレバー4bは、ブレーキレバー4bの第1の端部と第2の端部との間に配置されたピボットポイント9で旋回可能に結合されるなど、インジェクタ本体に結合され得る。ブレーキ機構は、ブレーキレバー4bに結合された第1の端部と、インジェクタ本体に結合された第2の端部とを有するブレーキレバー戻りばね11を含み得る。ブレーキ機構は、例えば、
図11Dに示される矢印86の方向に、ユーザの指又は親指によって加えられるなど、ハンドル7に加えられた力に応じて、ブレーキレバー4bの第2の端部が、プランジャロッド210と接触する静止位置から離れて、例えば、
図11Dに示される矢印87の方向に移動し、それによって摩擦ブレーキ力を減少させるように適合され得る。したがって、減少した摩擦ブレーキ力に応じて、プランジャロッド210は、ばね1からの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて軸方向に移動するように適合されている。ブレーキレバー戻りばね11は、ブレーキレバー4bの第2の端部を静止位置に戻すように適合され得る。
【0062】
いくつかの実装形態では、プランジャロッド210は、例えば、ブレーキレバー4bの第2の端部8に接触するように適合され、それによってプランジャロッド210の軸方向の動きに対して摩擦ブレーキ力を加えるように適合された1つ以上のブレーキパッドリブ13を有する、ブレーキパッド12を含み得る。
【0063】
いくつかの実装形態では、ブレーキ機構は、摩擦ブレーキ力が値Bを有し、ハンドル7に加えられる力が値Hを有し、BがHに反比例するように適合され得る。したがって、いくつかの実装形態では、ハンドル7に加えられるより大きな力Hにより、プランジャロッド210のより速い軸方向の動きをもたらし得る。いくつかの実装形態では、BはHに反比例し得る。いくつかの実装形態では、ブレーキレバー4bは、機械的利点を提供するように適合され得る。例えば、ピボットポイント9は、ハンドル7とピボットポイント9との間の距離が、ピボットポイント9と、プランジャロッド210と接触するように適合された第2の端部との間の距離よりも大きくなるように構成され得る。
【0064】
いくつかの実装形態では、ハンドル7に加えられる力は、ノズル25の遠位端60からのIOL70の距離などの、ノズル25内のIOL70の軸方向位置の関数として変化しない値Hを有する。したがって、ばね支援プランジャ機構は、IOL待機場所809からノズル25の遠位端60までなど、ノズル25を通してIOLを前進させるために、ユーザがハンドル7に一定又はほぼ一定量の力Hを加えることができるように適合され得る。対照的に、本明細書に記載されるように、従来のプランジャ機構を有する既存のIOLインジェクタのノズルを通してIOLを軸方向に前進させる場合、ユーザは通常、可変のIOL前進抵抗力を体験し、したがって、IOLを前進させるためにプランジャに対して可変の軸方向の力を加える必要がある。
【0065】
いくつかの実装形態では、ばね支援プランジャ30aは、プランジャロッド210の近位部分が、プランジャ本体200の遠位部分内に同心結合などで結合され、その中で軸方向にスライド可能である伸縮部分を有し得る。したがって、ばね支援プランジャ30aは、プランジャ本体200に加えられた軸方向の力に応じて、プランジャロッド210の近位部分がプランジャ本体200の遠位部分内でスライド可能に移動するように適合されるように、適合され得る。ばね1からの蓄積された弾性エネルギーの解放に応じて、プランジャロッド210の近位部分は、プランジャ本体200の遠位部分内でスライド可能に移動するように適合され得る。
【0066】
当業者によって理解されるように、「伸縮」という用語は、一般に、第1の部分が第2の部分からスライドして出てくる、又は第2の部分内にスライドして入っていく動きを指し、ここで、2つの部分は結合されており、拡張又は折り畳まれていない構成、及び短縮又は折り畳まれた構成を有する。より具体的には、第1及び第2の部分は、一般に、チューブ又はシリンダと呼ばれ得、時にスリーブと呼ばれ得、異なる直径を有し、より小さい直径のスリーブは、より大きい直径の外側スリーブ内で同心に結合されるか、又は入れ子にされている。2つ以上の同心結合されたスリーブは、伸縮シリンダを形成し得る。1つのスリーブが別のスリーブから、又は別のスリーブ内にスライドする動きにより、伸縮シリンダをそれぞれ長くしたり短くしたりすることが可能になる。延長された、又は拡張された構成は、「折り畳まれていない」と呼ばれ得、例えば、より小さな直径のチューブの長さがより大きな直径のチューブ内に全体的又は大部分で含まれる短縮された構成は、「折り畳まれた」と呼ばれ得る。
【0067】
したがって、ばね支援プランジャ機構は、伸縮部分が折り畳まれていない構成から折り畳まれた構成に短くなるときにばね1が弾性エネルギーを蓄積し、伸縮部分が折り畳まれた構成から折り畳まれていない構成に長くなるときにばね1が弾性エネルギーを解放するように適合され得る。
【0068】
いくつかの実装形態では、例えば、
図12A~
図12Dに示されるように、インジェクタ本体は、ボア40内に配置された少なくとも1つの隆起14を含み得、プランジャ本体200は、少なくとも1つの隆起係合歯15を含み得、ここで、少なくとも1つの隆起14及び少なくとも1つの隆起係合歯15は、プランジャ本体200がIOLインジェクタ10のインジェクタ本体の遠位端60から離れる動きを防止するように適合されている。いくつかの実装形態では、隆起14及び隆起係合歯15は、プランジャ本体200が第2の遠位位置にあるときに、プランジャ本体200がIOLインジェクタ10のインジェクタ本体の遠位端60から離れる動きを防止するように適合され得る。したがって、ばね1は、隆起14が隆起係合歯15と係合している結果として弾性エネルギーを蓄積する形態に一時的に維持され得、それによって、弾性エネルギーが、インジェクタ本体20の遠位端60から離れるプランジャ本体200の動きによって解放されるのを防止する。
【0069】
いくつかの実装形態では、ばね支援プランジャ機構は、プランジャロッド210の軸方向の動きに対する抵抗を提供するように構成された減衰機構を含み得る。特に、様々な実装形態では、減衰機構は、IOLインジェクタのノズル25を出ていくIOLの前進速度を制御するように適合されている。
【0070】
例えば、
図13A~
図13Dに示されるように、減衰機構は、プランジャロッド210の軸方向の動きに対して摩擦抵抗を提供するように構成されたリブ付き減衰機構であり得る。リブ付き減衰機構は、プランジャロッド210上に配置された少なくとも1つの減衰リブ16と、ボア40内に配置された少なくとも1つの減衰リブ17とを含み得る。リブ付き減衰機構は、プランジャロッド210上の少なくとも1つの減衰リブ16が、ボア40内に配置された少なくとも1つの減衰リブ17に接触するように構成され、それによってプランジャロッド210の軸方向の動きに対する摩擦抵抗を提供するように適合され得る。
【0071】
いくつかの実装形態では、リブ付き減衰機構は、ノズル25の遠位端60からのプランジャロッド210の距離が減少する関数として、プランジャロッド210の軸方向の動きに対して増大する摩擦抵抗を加えるように構成され得る。例えば、いくつかの実装形態では、プランジャロッド210上の少なくとも1つの減衰リブ16、及び/又はボア40内に配置された少なくとも1つの減衰リブ17は、複数の減衰リブ16/17を含み得、各減衰リブ16/17間の距離は、ノズル25の遠位端60からの距離が減少するにつれて減少する。いくつかの実装形態では、プランジャロッド210上の少なくとも1つの減衰リブ16、及び/又はボア40内に配置された少なくとも1つの減衰リブ17は、複数の減衰リブ16/17を含み得、ボア40内に配置された複数の減衰リブ17に接触するプランジャロッド210上の複数の減衰リブ16は、ノズル25の遠位端60からの距離が減少するにつれて増大する。
【0072】
図14A~
図14Cは、例示的なシミュレートされたIOL導入力プロファイルを示すグラフである。理論に限定されることなく、IOLインジェクタはIOL導入力プロファイルを有し、これは本明細書では、ボア内のIOLの軸方向位置(AP)と、IOL前進抵抗を克服するために必要な力など、ボア内でIOLを軸方向に移動させるための、ユーザなどによって加えられる力(AF)との間の関係を指すことが理解されよう。
【0073】
図14A~
図14Cの例示的なグラフでは、APとラベル付けされたグラフの水平軸は、例えば、水平軸の左端でのIOL保管場所で始まり、IOLがノズルを出ていく位置での水平軸の右端で終わる、ボア(AP)内のIOLの軸方向の場所を示している。
図14A~
図14Cのグラフは、IOL待機場所を示し、IOLの保管場所とノズルの出口との間の水平軸と交差している、垂直の破線を示している。APの数値は、例えば、IOL保管場所からの距離、例えば、mm単位であり得る。AFとラベル付けされた垂直軸は、ボアを通してIOLを軸方向に前進させるためにIOL前進抵抗を克服するために必要な力など、ボア内でIOLを軸方向に移動させるためにユーザによって加えられる力を表す。AFの数値は、例えば、Nm単位であり得る。いくつかの実装形態では、AFは、本明細書で説明されるように、プランジャを軸方向に前進させるためにユーザによって加えられる力、例えば、プランジャ本体に加えられる力、又はブレーキ機構のハンドルに加えられる力を指し得る。
【0074】
図14A~
図14Cでは、「ばね支援機構なし」とラベル付けされたチャートラインは、本明細書に記載のばね支援プランジャ機構を有しない典型的な既存の伝統的に手動で作動されるIOLインジェクタの導入力プロファイルの例を示している。例えば、典型的な既存のIOLインジェクタでは、IOLをIOL保管場所からIOL待機場所まで前進させることに関連するAFは通常低く、IOL待機場所に到達した後、IOLの更なる軸方向の前進が、IOLがノズル内で最大に圧縮される場所までのAFの増大に関連しており、その後IOLがノズルを出ていくとAFは急速に減少する。
【0075】
本明細書に記載される様々な実装形態では、ばね支援プランジャ機構を有するIOLインジェクタは、APの関数としてのAFの変動が最小である力プロファイルを有するように構成されている。本明細書に記載されるばね支援プランジャ機構を有するIOLインジェクタは、本明細書に記載されるばね支援プランジャ機構を有しない典型的な既存のIOLインジェクタと比較して、APの関数としてのAFの変動が減少した力プロファイルを有するように構成されている。
【0076】
様々な実装形態では、本明細書に記載されるばね支援プランジャ機構を有するIOLインジェクタは、IOL待機場所からノズルの出口までのIOLの前進中などに、弾性エネルギーの蓄積に関連する増大したAFを有し得る。例えば、
図14Aに示されるように、ばね支援機構は、IOLの保管場所からIOL待機場所までのIOLの移動中にAFが増大するように適合させることができ、
図14Aでの弾性エネルギー蓄積の段階中のばね支援機構の力プロファイルは、IOLがIOL蓄積位置からIOL待機場所まで軸方向に移動するときのプランジャ本体前進中の比較的一定の弾性エネルギー蓄積に関連する、ゼロ又はゼロに近い値を含む勾配を有するなど、比較的平坦であるとして示されている。
図14Bに示されるような他の実装形態では、ばね支援機構は、プランジャがIOL保管場所からIOL待機場所まで前進するにつれてAFの値が増大し得るように適合され得る。
図14Cに示されるようなばね支援機構の更に別の実装形態では、AFの値は、IOLがIOL蓄積場所からIOL待機場所まで前進すると、この段階中に実質的な弾性エネルギー蓄積することなく、比較的低くなり得、次いで、例えば、プランジャロッドが取り外し可能なストッパと係合すると、AFの値は、プランジャ本体200が弾性エネルギーを蓄積するために更に前進するにつれて増大し、一方、プランジャ先端220及びIOL70は、IOL待機位置に留まる。
【0077】
様々な実装形態において本明細書に記載されるばね支援機構は、本開示を読むと当業者によって識別可能な、とりわけ、線形、漸進的、又は可変レートのばねを有してもよく、したがって、
図14A~
図14Cに示されるような弾性エネルギー蓄積中の力プロファイルを有するように適合され得る。
【0078】
また、従来のIOLインジェクタのAFとは対照的に、本明細書に記載のばね関連プランジャ機構を有するIOLインジェクタは、IOLをIOL待機場所からノズルの出口まで前進させる弾性エネルギーの解放に関連して、IOL待機場所からノズルの出口までのIOLの前進中にAFの変動は減少し得る。例えば、ばね支援プランジャ機構は、いくつかの実装形態では、IOLがノズルを出ていくまで、IOLを待機場所から前進させるためのブレーキ機構のハンドルの押し下げに関連してなど、取り外し可能なストッパの取り外しに続いて、IOLがIOL待機場所から前進につれて、AFの変動は減少し得る。いくつかの実装形態では、ばね支援プランジャ機構は、弾性エネルギーの解放によりIOL前進抵抗に反して軸方向の駆動力を提供するため、IOLがノズル内でより圧縮されるにつれて、AFは減少する。いくつかの実装形態では、減衰機構はまた、IOLがノズルを出ていくときにIOLの圧力が突然解放されるのを防止するように適合された、IOL前進に対抗する抵抗力を提供し得る。
【0079】
いくつかの実装形態では、本明細書に記載されるばね支援プランジャ機構を有するIOLインジェクタは、IOLがIOL待機場所809からノズル25の出口まで前進すると、APの関数としてのAFの変動が最小となる力プロファイルを有するように構成されている。例えば、
図14A~
図14Cのグラフでの「ばね支援機構:弾性エネルギー解放」を示すラインの勾配は、IOLがIOL待機場所809からノズル25の出口まで前進すると、ゼロ又はゼロに近い勾配を有する。対照的に、「ばね支援機構なしを示すラインは、より可変の勾配を有し、最大IOL圧縮のポイントまで正の勾配値を有し、その後にIOLがノズルを出ていくポイントまで負の勾配値を有する。したがって、本開示のばね支援プランジャ機構を有するIOLインジェクタは、IOLが最大に圧縮されるときにAFが大きく増大することはなく、IOLがノズルを出ていくときにAFが急激に減少することもない。
【0080】
したがって、本開示のばね支援プランジャ機構の実装形態では、プランジャ本体が弾性エネルギー蓄積段階中に前進する間に弾性エネルギーを利用し、続いて弾性エネルギー解放段階中に弾性エネルギーをプランジャロッド前進用に使用することによって、及び任意選択的に、また、IOLが本明細書に記載される減衰機構を利用してノズルを出ていくときにプランジャロッドの前進を遅くすることによって、ばね支援プランジャ機構が、ピーク及びトラフAFを有する可変IOL前進力プロファイルを有するいくつかの既存のIOLインジェクタに関連する問題を解決する。
【0081】
本開示のばね支援プランジャ機構の様々な実装形態では、蓄積された弾性エネルギーの解放により、IOLインジェクタのボア40を通ってIOLインジェクタ本体20の遠位端に向かってプランジャロッド210を軸方向に移動させる駆動力を提供する。ユーザがIOLインジェクタを受け取る前に弾性エネルギーが「事前に蓄積される」いくつかの既存のIOLインジェクタとは対照的に、本開示のばね支援機構は、患者の眼にIOLを提供する直前など、ユーザによるプランジャの前進に応じて、弾性エネルギーが蓄積されるように適合されている。場合によっては、「事前に蓄積される」IOLインジェクタは、ユーザがIOLインジェクタを受け取る前に弾性エネルギーが蓄積されると、安全上のリスクを有し得、又は機械的故障のリスクが増大し得る。したがって、本開示のばね支援機構は、ユーザによるIOLインジェクタの使用前に、保管中に弾性エネルギーが蓄積される「事前に蓄積される」ばね機構を有することを回避することによって、IOLインジェクタの安全性及び/又は機械的安定性が向上するという利点を有し得る。
【0082】
本明細書に記載の様々な実装形態では、本開示のばね支援機構は、手動及び自動のIOL前進機構のハイブリッドと見なすことができ、ここで弾性エネルギーは、ばねからの蓄積エネルギーの解放に完全に自動的に応じて、又はユーザによって加えられた力と組み合わされたばねからの蓄積エネルギーの解放に部分的に応じてのいずれかで、ユーザによるプランジャの手動作動と、それに続くプランジャ駆動の軸方向の動きによって蓄積される。
【0083】
いくつかの実装形態では、ばねからの弾性エネルギーの解放中に、ユーザによる作動がない場合、例えば、ユーザによってプランジャに加えられる軸方向の力がない場合、プランジャの前進は自動的に起こり得る。したがって、いくつかの実装形態では、取り外し可能なストッパの取り外しに応じて、弾性エネルギーの解放により、軸方向のプランジャの前進が自動的に駆動され得る。本明細書に記載されるいくつかの実装形態では、ブレーキ機構がIOLインジェクタに含まれ得、ユーザは、プランジャへのブレーキ力の印加を解放して、蓄積されたエネルギーをばねから解放して、プランジャの軸方向の動きを自動的に駆動することが可能になる。
【0084】
他の実装形態では、ばね支援プランジャ機構は、ばね支援プランジャ機構における弾性エネルギーの解放が、IOL前進を自動的に軸方向に駆動するように構成されないように適合することができ、しかし代わりに、プランジャ前進を作動させるためにユーザが力を加えることによってIOLが前進するように、例えば、ユーザがIOLを前進させるのを支援する軸方向の駆動力をより低いレベルで又は部分的に提供し得るが、ユーザは、従来の完全に手動で作動するIOLインジェクタのように、ばね支援プランジャ機構の弾性エネルギー解放がない場合に必要とされるほど多くの軸方向の力を加える必要はない。したがって、いくつかの実装形態では、蓄積された弾性エネルギーの解放により、IOLの前進を支援し、ユーザに対してAFの変動がより少ない体験を提供し得る。
【0085】
したがって、いくつかの実装形態では、自動の軸方向の駆動力(0.875Nmを超える、又は約0.875Nmの力を蓄積するように適合されたばねなどの、高レベルの弾性エネルギー蓄積)、又は部分的支援の軸方向の駆動力(0.875Nm未満又は約0.875Nmの力を蓄積するように適合されたばねなどの、より低レベルの弾性エネルギー蓄積)のいずれかに対して、ばねが所望のレベルの潜在的な弾性エネルギーを蓄積するように、本開示のばね支援機構で使用するためのばねが選択され得る。いくつかの実装形態では、自動の駆動力又は部分的な支援の駆動力のいずれかを提供するように適合されたばねの軸方向の駆動力は、IOLインジェクタ内のIOLのピークIOL前進抵抗力、及び待機場所とノズルの出口との間の距離を参照して計算され得る。例えば、いくつかのIOLインジェクタでは、ピークIOL前進抵抗力は35Nであり得るか、約35Nであり得、待機場所とノズルの出口との間の距離は、0.025mであり得るか、約0.025mであり得る。したがって、それゆえ、例えばいくつかの実装形態では、ばねは、35N×0.025m=0.875Nm又はそのあたりに等しいか、それよりも大きいか、又はそれよりも小さい潜在的な弾性蓄積を有するように選択され得る。
【0086】
いくつかの実装形態では、本開示のばね支援プランジャ機構は、IOLベース461、IOL光学部460、又はその両方を別々に導入するように適合され得る。いくつかの実装形態では、本開示のばね支援プランジャ機構は、IOLベース461、及びIOL光学部460を同時に導入するように適合され得る。
【0087】
本開示に従って適合され得るIOLインジェクタの非限定的な例には、米国特許第7,156,854号明細書及び米国特許出願公開第2016/0256316号明細書に記載されているものが含まれ、それぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
上記で開示された主題は、制限ではなく例示として考えられるべきであり、添付された特許請求の範囲は、本開示の真の思想及び範囲内にある全てのそのような修正、強化、及び他の実施を包含するように意図される。したがって、法律によって許容される最大範囲まで、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物の最も広範な許容可能な解釈によって判断されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限され、又は限定されるべきではない。