(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】流体蠕動層ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 5/00 20060101AFI20240502BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240502BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240502BHJP
F04B 43/12 20060101ALI20240502BHJP
F04B 45/08 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F04C5/00 311E
G01N37/00 101
B81B3/00
F04B43/12 A
F04B45/08
(21)【出願番号】P 2021543468
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 US2020015090
(87)【国際公開番号】W WO2020154689
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-23
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518379429
【氏名又は名称】ハウプト レムス ブリックス アンダース
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハウプト,レムス ブリックス アンダース
(72)【発明者】
【氏名】アービドセン,ジョン ハラルド ホルム
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/189735(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0051735(US,A1)
【文献】米国特許第03542491(US,A)
【文献】特開2003-301783(JP,A)
【文献】特表2006-502336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 5/00
G01N 37/00
B81B 3/00
F04B 43/12
F04B 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスであって、
a)上面、底面、開口部を画定する内面、
前記底面より下の基部、および前記底面から
前記基部まで下向きに延在
する凹面の壁を有する環状本体であって、前記環状本体が、前記環状本体に配設された入力ポートおよび出力ポートを含む、環状本体と、
b)前記環状本体の前記底面に固定して取り付けられた弾性カラーであって、前記弾性カラーが、その外周に配設されたフランジ、および前記環状本体の前記基部に固定して取り付けられた底面を含み、前記フランジが、前記環状本体の前記底面に噛み合わされるように構成されている、弾性カラーと、
c)上面、底面、および前記底面から下向きに延在するテーパ拡張部を有する剛性基材であって、前記剛性基材が、前記上面に配設され、かつ前記環状本体の入力ポートおよび出力ポートと整列して位置決めされた入口および出口を含み、前記剛性基材の前記底面が、前記環状本体の前記上面に固定して取り付けられ、前記テーパ拡張部が、前記開口部内に嵌合するようにサイズ設計および形状加工され、それによって、前記入力ポートと前記出力ポートとの間のチャネルを前記弾性カラーと形成する、剛性基材と、を備える、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記環状本体が、前記剛性基材に結合されている、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記剛性基材の前記上面に配設された入口コネクタおよび出口コネクタをさらに備え、各々が、それぞれ、前記環状本体の前記
入力ポートおよび
出力ポートと流体連通して設けられている、請求項1または2に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記弾性カラーが、その内面に形成された1つ以上の戻り止めを含み、各戻り止めが、それぞれ、前記剛性基材の前記入口および前記出口と流体連通している、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記弾性カラーの内面が、凹面である、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記弾性カラーの前記フランジが、前記環状本体の前記底面に結合されており、前記剛性基材の前記テーパ拡張部の前記底面が、前記基部
の内面に結合されている、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記剛性基材の前記テーパ拡張部が、その表面に配設された溝を含み、前記溝が、前記剛性基材の前記上面に平行に位置決めされており、前記溝が、前記弾性カラーと噛み合わされるように構成されている、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記弾性カラーが、その周縁部に沿って配設された線状突起をさらに含み、前記線状突起が、前記フランジ
に平行に位置決めされている、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記剛性基材が、その軸から離れて延在する拡張部をさらに含み、前記拡張部が、前記環状本体の前記
出力ポートと、前記剛性基材の前記出口との間に流体連通を設けるように構成された、前記拡張部に配設されたマイクロ流体チャネルを有する、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
ポンプであって、
(a)請求項1に記載のマイクロ流体デバイスと、
(b)前記マイクロ流体デバイスの前記基部に取り外し可能に取り付けられた回転式アクチュエータであって、前記回転式アクチュエータが、前記マイクロ流体デバイスの前記弾性カラーの一部を圧縮するように構成されている、回転式アクチュエータと、
(c)前記回転式アクチュエータに結合され、前記回転式アクチュエータを前記マイクロ流体デバイスの周囲で回転させるように構成されたモータと、を備える、ポンプ。
【請求項11】
前記回転式アクチュエータが、
(a)内部に配設された開口部を有する本体であって、前記開口部が、前記マイクロ流体デバイスの前記基部および剛性カラーを受容するようにサイズ設計および形状加工されている、本体と、
(b)前記本体の前記開口部の内面に固定して取り付けられた1つ以上のボールであって、前記1つ以上のボールは、前記回転式アクチュエータが回転するにつれて、前記弾性カラーの一部を圧縮するように構成されている、1つ以上のボールと、を含む、請求項10に記載のポンプ。
【請求項12】
前記1つ以上のボールの各々が、ばねによって、前記回転式アクチュエータの前記開口部の前記内面に固定して取り付けられ、それによって、前記回転式アクチュエータと前記マイクロ流体デバイスとの間に押し込み式係合を提供する、請求項11に記載のポンプ。
【請求項13】
前記マイクロ流体デバイスの入口コネクタと流体連通するリザーバをさらに備え、前記リザーバが、(i)前記ポンプによって送達される流体を含むか、または(ii)前記ポンプによってサンプリングされる流体を受容する、ように構成されている、請求項10に記載のポンプ。
【請求項14】
前記流体が、液体または気体である、請求項13に記載のポンプ。
【請求項15】
前記マイクロ流体デバイスの出口コネクタと流体連通する針をさらに備え、前記針が、(i)前記リザーバから流体を、それを必要とする対象に投与するか、または(ii)対象からサンプルを採取する、ように構成されている、請求項13に記載のポンプ。
【請求項16】
コントローラおよび電力供給部をさらに備え、前記コントローラが、前記回転式アクチュエータを回転させるように、前記電力供給部から前記モータに電圧を供給するように構成されている、請求項15に記載のポンプ。
【請求項17】
前記コントローラが、吐出されている流体の量、吐出の時間、吐出の持続時間、前記リザーバ内に残っている流体の量、サンプリングの時間、サンプリングの持続時間、およびさらなるサンプリングのための、前記リザーバ内に残っている体積の量、からなる群から選択される情報に関して、携帯端末と通信するようにさらに構成されている、請求項16に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月24日に出願された米国仮特許出願第62/796,470号の関連出願であり、米国特許法第119条(e)の下でこの仮出願に基づく優先権の利益を主張し、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、流体技術に関し、より詳細には、マイクロチャネルを通る流体の流れを制御するためのマイクロ流体多層蠕動ポンプに関する。
【0003】
背景情報
マイクロ流体システムは、非常に少量の液体を使用して、化学的および生物学的情報を取得および分析するために重要な価値がある。マイクロ流体システムの使用により、反応の応答時間を向上させ、サンプル体積を最小限に抑え、ならびに試薬および消耗品の消費を少なくすることができる。揮発性のまたは有害な材料を使用または生成される場合、マイクロ流体量内で反応を実行させることにより、安全性も高め、廃棄量も削減される。
【0004】
マイクロ流体デバイスは、医学的診断および分析化学からゲノムおよびプロテオーム解析までの広範囲の分野でますます重要になってきている。それらはまた、動物薬物モデルのための移動式低流量薬物送達/注入システムおよび連続監視システムなどの治療的文脈においても有用であり得る。例えば、マイクロポンプが流体を、それを必要とする対象に定期的または継続的に投与するために使用され得、または定期的なサンプルを採取することによって、投与される薬物の経時的な有効性を監視するために使用され得る。
【0005】
しかしながら、これらのデバイスに必要とされる微小構成要素は、多くの場合、複雑であり、製造するにはコストがかかる。したがって、モータと共に一体化して、例えば、移動式注入デバイスに一体化するためのマイクロポンプを形成する、低コストのマイクロ流体デバイスの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
使い捨て注入デバイスおよび流体サンプリング/監視デバイスのための、低コストで高精度の手段を提供するために、マイクロ流体ポンプが開発された。マイクロ流体ポンプを利用するデバイス、ならびに製造方法、およびマイクロ流体プロセスを実行するための方法も、提供される。
【0007】
したがって、一態様では、本発明は、マイクロ流体デバイスを提供する。このマイクロ流体デバイスは、上面、底面、開口部を画定する内面、およびその底面から基部まで下向きに延在する実質的に凹面の壁を有する環状本体であって、環状本体は、環状本体に配設された入力ポートおよび出力ポートを含む、環状本体と、環状本体の底面に固定して取り付けられた弾性カラーであって、その弾性カラーは、外周に配設されたフランジ、および環状本体の基部に固定して取り付けられた底面を含み、そのフランジは、環状本体の底面に噛み合わされるように構成されている、弾性カラーと、上面、底面、およびその底面から下向きに延在するテーパ拡張部を有する剛性基材であって、その剛性基材は、上面に配設され、かつ環状本体の入力ポートおよび出力ポートと整列して位置決めされた入口および出口を含み、剛性基材の底面は、環状本体の上面に固定して取り付けられ、テーパ拡張部は、開口部内に嵌合するようにサイズ設計および形状加工され、それによって、入力ポートと出力ポートとの間のチャネルを弾性カラーと形成する、剛性基材と、を備える。様々な実施形態では、環状本体は、剛性基材に結合される。様々な実施形態では、マイクロ流体デバイスは、剛性基材の上面に配設された入口コネクタおよび出口コネクタをさらに備えることができ、それらの各々は、それぞれ、環状本体の入口ポートおよび出口ポートと流体連通して設けられる。
【0008】
マイクロ流体デバイスの弾性カラーは、その内面に形成された1つ以上の戻り止めを含むことができ、各戻り止めは、それぞれ、剛性基材の入口および出口と流体連通する。様々な実施形態では、弾性カラーの内面は、チャネルをさらに画定するように凹面である。様々な実施形態では、弾性カラーのフランジは、環状本体の底面に結合されており、剛性基材のテーパ拡張部の底面は、基部の内面に結合される。様々な実施形態では、剛性基材のテーパ拡張部は、その表面に配設された溝を含み、その溝は、剛性基材の上面に平行に位置決めされており、その溝は、弾性カラーと噛み合わされるように構成される。
【0009】
様々な実施形態では、弾性カラーは、その周縁部に沿って配設された線状突起をさらに含み、その線状突起は、フランジに実質的に平行に位置決めされる。様々な実施形態では、剛性基材は、その軸から離れて延在する拡張部をさらに含み、その拡張部は、環状本体の出口ポートと、剛性基材の出口との間に流体連通を設けるように構成された、拡張部に配設されたマイクロ流体チャネルを有する。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるようなマイクロ流体デバイスと、そのマイクロ流体デバイスの基部に取り外し可能に取り付けられた回転式アクチュエータであって、その回転式アクチュエータは、マイクロ流体デバイスの弾性カラーの一部を圧縮するように構成されている、回転式アクチュエータと、その回転式アクチュエータに結合され、回転式アクチュエータをマイクロ流体デバイスの周囲で回転させるように構成されたモータと、を備えるポンプを提供する。様々な実施形態では、その回転式アクチュエータは、内部に配設された開口部を有する本体であって、その開口部は、マイクロ流体デバイスの基部および剛性カラーを受容するようにサイズ設計および形状加工されている、本体と、その本体の開口部の内面に固定して取り付けられた1つ以上のボールであって、その1つ以上のボールは、回転式アクチュエータが回転するにつれて、弾性カラーの一部を圧縮するように構成されている、ボールと、を含む。1つ以上のボールの各々は、ばねによって、回転式アクチュエータの開口部の内面に固定して取り付けられ、それによって、回転式アクチュエータとマイクロ流体デバイスとの間に押し込み式係合を提供する。
【0011】
様々な実施形態では、このポンプは、マイクロ流体デバイスの入口コネクタと流体連通するリザーバ(容器)をさらに備え、そのリザーバは、(i)ポンプによって送達される流体を含むか、または(ii)ポンプによってサンプリングされる流体を受容する、ように構成される。様々な実施形態では、このポンプは、マイクロ流体デバイスの出口コネクタと流体連通する針をさらに備え、その針は、(i)リザーバから流体を、それを必要とする対象に投与するか、または(ii)対象からサンプルを取得する、ように構成される。様々な実施形態では、このポンプはまた、コントローラおよび電力供給部も備えており、そのコントローラは、回転式アクチュエータを回転させるように、電力供給部からモータに電圧を供給するように構成される。様々な実施形態では、そのコントローラはまた、吐出される流体の量、吐出の時間、吐出の持続時間、リザーバ内に残っている流体の量、サンプリングの時間、サンプリングの持続時間、およびさらなるサンプリングのための、リザーバ内に残っている体積の量、からなる群から選択される情報に関して、携帯端末と通信するようにも構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】マイクロ流体デバイスの構成要素の例示的な実施形態を示す絵図である。
【
図2】マイクロ流体デバイスの環状本体に取り付けられた弾性カラーの例示的な実施形態の斜視図を示す絵図である。
【
図3】マイクロ流体デバイスの例示的な実施形態の斜視図を示す絵図である。
【
図4】入力ポートを示すマイクロ流体デバイスの例示的な実施形態の断面図を示す絵図である。
【
図5】出力ポートを示すマイクロ流体デバイスの例示的な実施形態の断面図を示す絵図である。
【
図6】マイクロ流体デバイスの例示的な実施形態の断面図を示す絵図である。
【
図7】マイクロ流体デバイスの例示的な実施形態の別の断面図を示す絵図である。
【
図8】ポンプの例示的な実施形態を形成するためにアクチュエータおよびモータを用いて取り付けられたマイクロ流体デバイスの例示的な実施形態の部分断面図を示す絵図である。
【
図9】ポンプの例示的な実施形態を形成するために、アクチュエータおよびモータを用いて取り付けられたマイクロ流体デバイスの例示的な実施形態の別の部分断面図を示す絵図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
使い捨て注入デバイスのための低コスト、高精度、および少ない流量手段を提供するために、ポンプを含むマイクロ流体ポンプおよびデバイスが開発された。有利なことに、ポンプ内の流体の流量は、非常にわずかな流量でも本質的に一定である。
【0014】
本構成および方法について説明する前に、本発明は、説明される特定の構成、方法、および実験条件に限定されず、同様に、構成、方法、および条件は、変化する可能性があることを理解されたい。また、本発明の範囲が添付の特許請求の範囲内のみに限定されることになるため、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみについて説明することを目的としており、限定的であることを意図されていないことも理解されたい。
【0015】
本明細書、および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その文脈が明確にそれ以外の場合を示さない限り、複数形の言及を含む。したがって、例えば、「その方法」への言及は、この開示などを読み解く際に当業者にとって明らかになるであろう、本明細書に記載されるタイプの1つ以上の方法および/またはステップを含む。
【0016】
「含む」という用語は、「含む」、「包含する」、または「によって特徴付けられる」と区別なく使用され、包括的または制限のない言語であり、追加的で列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。「からなる」という語句は、特許請求の範囲に指定されていない任意の要素、ステップ、または素材を除外する。「から基本的になる」という語句は、1つの請求項の範囲を、特定された材料またはステップ、ならびに特許請求の範囲の発明の基本的かつ新規な特性に材料的な影響を及ぼさないものに限定する。本開示は、これらの語句の各々の範囲に対応する本発明のデバイスおよび方法の実施形態について考察する。したがって、列挙された要素またはステップを含むデバイスまたは方法は、そのデバイスまたは方法が本質的にそれらの要素またはステップからなるか、またはそれらの要素またはステップからなる特定の実施形態について考察する。
【0017】
特段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるような同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または等価の任意の方法および材料が本発明の実施または試験に使用され得るが、好ましい方法および材料が、ここで説明される。
【0018】
ここで、
図1~7を参照すると、本発明は、回転式アクチュエータ110と併せて使用してマイクロ流体ポンプ200を形成するためのマイクロ流体デバイス100を提供する。そのマイクロ流体デバイス100は、上面52、底面54、および開口部62を画定する内面56を有する環状本体50を備える。環状本体50内には、1つ以上の入力ポート40および出力ポート42が配設されている。様々な実施形態では、1つ以上の入力ポート40および出力ポート42は、環状本体50の幅に沿って(すなわち、実質的に、軸Cに平行に)配設されて、環状本体50の上面52と底面54との間に流体連通を設ける。
図1および2は、説明上の便宜のみのため、断面形式で入力ポート40および出力ポート42の各々を示しているが、入力ポート40および出力ポート42は、環状本体50を貫通して延在することを理解されたい。環状本体50の底面54から、基部58が延在している。様々な実施形態では、基部58は、環状本体50の外周の一部の周りを自由に動き回る実質的に凹面の壁60によって、環状本体50の底面54に接続され、環状本体50の外周の大部分の周りに、基部58と底面54との間の空間を残している。環状本体50は、金属、プラスチック、非弾性ポリマー、シリコン(結晶シリコンなど)、またはガラスなどの任意の非弾性材料から形成され得るが、これらに限定されない。様々な実施形態では、環状本体50が形成される材料は、生物学的に不活性であり、既知の滅菌技術に適している。
【0019】
マイクロ流体デバイス100は、弾性カラー70をさらに含み、その弾性カラーは、環状本体50に固定して取り付けられるようにサイズ設計および形状加工され、それによって、環状本体の基部58と底面54との間の空間を埋める。弾性カラー70は、上面86、底面88、および上面86から下向きに延在する、実質的に凹面の壁90(すなわち、軸Cに向かって内側に突き出る)を含み得る。この凹面の壁90は、環状本体50の凹面の壁60の曲率を実質的に反映し得る。様々な実施形態では、弾性カラー70は、その外周に配設されたフランジ72を含み得、そのフランジ72は、軸Cから離れて延在する。フランジ72は、環状本体50の底面54と接触するように、サイズ設計および形状加工され得る。様々な実施形態では、フランジ72は、その内面76に形成された1つ以上の入口/出口戻り止め74を含み得、入口/出口戻り止め74の各々は、環状本体50の1つ以上の入力ポート40および出力ポート42に噛み合わされたときに、それらと整列し、かつ流体連通して配設される。
【0020】
弾性カラー70は、間隙80をさらに含み得、このため、弾性カラー70は、連続的な環ではない。その間隙80は、入力ポート40および出力ポート42を分離する、環状本体50の凹面の壁60の一部を露出させる。
図4および5に示すように、弾性カラー70の凹面の壁90は、その周縁部に沿って配設された線状突起78をさらに含み得、その線状突起78は、フランジ72に対して実質的に平行に位置決めされ得る。この線状突起78により、弾性カラー70の断面厚さは増加して、回転式アクチュエータ110(
図8を参照)の圧縮強度および係合を増加させる。当業者であれば、線状突起78は、連続的な隆起要素(図示されているような)、または一連の隆起(図示せず)などの、任意のいくつかの好適な形状で形成され得ることを理解するであろう。様々な実施形態では、弾性カラー70は、例えば、ゴムまたはエラストマーなどの任意の変形可能および/または圧縮可能な材料から形成され得る。様々な実施形態では、弾性カラー70は、熱可塑性エラストマーから形成される。
【0021】
当業者が理解するように、環状本体50および弾性カラー70は、個々の構成要素として形成されてもよく、またはそれらの構成要素は、ツーショット成形またはオーバーモールドのプロセスを使用して接合されてもよく、その場合には、まず、一方のポリマーが、次いで他方のポリマーが、金型に射出されて単数部品を形成する。様々な技術を利用して、環状本体50を弾性カラー70に固定して取り付けることができ、その場合、弾性カラー70のフランジ72は、環状本体50の底面54に固定して取り付けられ、弾性カラー70の底面88は、環状本体50の基部58に固定して取り付けられる。
【0022】
例えば、各パーツは、結合の接着/作成の硬化の前に、2つのパーツの動きを互いに相対的に移動させることができるUV硬化性接着剤または他の接着剤を使用して、共に接合されてもよい。好適な接着剤としては、UV硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、感圧接着剤、酸素感受性接着剤、および両面テープ接着剤が挙げられる。あるいは、各パーツは、超音波溶接プロセス、熱溶接プロセス、レーザ溶接プロセス、および/またはねじり溶接プロセスなどの溶接プロセスを利用して結合されてもよい。当業者であれば、エラストマー系および非エラストマー系のポリマーが、このようにして接合されて、各パーツ間の流体密着封止を達成することができることを容易に理解するであろう。
【0023】
環状本体50内には、上面12および底面14を有する実質的に剛性基材10が配設され、テーパ拡張部16が、底面14から延在する。したがって、テーパ拡張部16の底面17が、環状本体50の基部58の内面59上に着座し、これに対して、環状本体50の上面52は、剛性基材10の底面14に当接し、取り付けられる。したがって、剛性基材10は、環状本体50を覆うフランジ18を形成し、このため、環状本体50の上面52は、剛性基材10の底面14に噛み合わされる。言い替えると、実質的に剛性である本体10のテーパ拡張部16は、環状本体50の開口部62内にぴったり収まるように、サイズ設計および形状加工される。様々な実施形態では、剛性基材は、軸Cから離れる方向に延在する拡張部26を含むことができる。拡張部26内には、剛性基材の出口22と、環状本体50の出力ポート42との間に流体連通を設けるように構成されたマイクロ流体チャネル28が配設され得る。
【0024】
したがって、弾性カラー70の内面76は、剛性基材10のテーパ拡張部16と共に流体の強固なチャネル84を形成し、そこでは、チャネル84は、弾性カラー70の戻り止め74を介して、環状本体50の入力ポート40と出力ポート42との間に流体連通を提供する。様々な実施形態では、弾性カラー70の内面76は、実質的に凹面であってもよく(すなわち、軸Cから離れて突き出る)、それによって、剛性基材10と弾性カラー70との間のチャネル84をさらに画定する。様々な実施形態では、剛性基材10のテーパ拡張部16は、その一部に形成された溝82を含み得、その溝82は、テーパ拡張部16の外周に延在し、環状基部50の上面52に実質的に平行に位置決めされている。そのように設けられる場合、溝82は、チャネル84の体積容量をさらに増やす役割を果たす。
【0025】
剛性基材10の上面12に、入口20および出口22が配設され得、それらの両方は、剛性基材10および環状本体50が互いに取り付けられたときに、環状本体の1つ以上の入力ポート40および出力ポート42と整列して位置決めされ得、したがって、それらと流体連通され得る。環状本体50と同様に、剛性基材10は、金属、プラスチック、非弾性ポリマー、シリコン(結晶シリコンなど)、またはガラスなどの任意の非弾性材料から形成され得るが、これらに限定されない。様々な実施形態では、剛性基材10は、環状本体50の材料と同じ材料から形成されて、全体的な製造コストを削減する。
【0026】
したがって、この構成では、マイクロ流体デバイス100は、軸Cに向けて方向付けられた力に依拠して、ポンプ動作を作動させる。同様に、その構成は、製造コストを削減し、その組立を容易にする追加の利点を提供する。例えば、回転式アクチュエータ110のボール120などの変形要素を介して提供される力F(
図6および7を参照)が、弾性カラー70および/または環状本体50の凹面の壁60に印加されると、弾性カラー70の凹面の壁90の少なくとも一部は、弾性カラー70と剛性基材10との間に形成されたチャネル84中に圧縮され、それによって、圧縮部位でのチャネル84の少なくとも一部を塞いで、チャネル84内の流体の一部と取って代わる。回転式アクチュエータ110が回転するにつれて、圧縮部位は、凹面の壁90に沿って並進し、結果として、チャネル84内の流体に回転方向の蠕動流体の流れを引き起こす。
【0027】
様々な実施形態では、凹面の壁90は、圧縮状態で、圧縮部位でのチャネル84の非圧縮断面積のうちの少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97.5%、少なくとも約99%、または実質的にすべてを塞ぐ。この圧縮により、圧縮部位でのチャネル84内の剛性基材の弾性カラー70とテーパ拡張部16との間に流体密着封止を作り出すことができる。流体密着封止が形成されると、流体、例えば、液体または気体は、圧縮部位の一方の側から圧縮部位の他方の側に、チャネル84に沿って通過するのを妨げられる。流体密着封止は、一時的であってもよく、例えば、弾性カラー70は、圧縮が取り除かれると、完全にまたは部分的に緩和され得、それによって、チャネル84を完全にまたは部分的に再び開放することができる。チャネル84は、非圧縮状態での第1の断面積、および圧縮状態での第2の断面積を有し得る。例えば、圧縮状態での圧縮部位の断面積の、非圧縮状態での同じ部位の断面積に対する比は、少なくとも約0.75、少なくとも約0.85、少なくとも約0.925、少なくとも約0.975、または約1であり得る。当業者ならば、マイクロ流体デバイス100内に形成されるチャネル84の表面が、例えば、疎水性を変化させることによって、調節され得ることを理解するであろう。例えば、疎水性は、表面活性剤などの親水性材料の適用、疎水性材料の適用、所望の疎水性を有する材料からの構築、エネルギービーム、および/または同様のものを用いて表面をイオン化することなどによって調節され得る。
【0028】
様々な方法を利用して、環状本体50を剛性基材10に固定して取り付けることができる。例えば、各パーツは、結合の接着/作成の硬化の前に、2つのパーツの動きを互いに相対的に移動させることができるUV硬化性接着剤または他の接着剤を使用して、共に接合されてもよい。好適な接着剤としては、UV硬化性接着剤、熱硬化性接着剤、感圧接着剤、酸素感受性接着剤、および両面テープ接着剤が挙げられる。あるいは、各パーツは、超音波溶接プロセス、熱溶接プロセス、およびねじり溶接プロセスなどの溶接プロセスを利用して結合されてもよい。さらなる代替方法として、各パーツは、ツーショット成形またはオーバーモールドのプロセスを使用して接合されてもよく、その場合には、まず、一方のポリマーが、次いで他方のポリマーが、金型に射出されて単数部品を形成する。当業者であれば、エラストマー系および非エラストマー系のポリマーが、このようにして接合されて、各パーツ間の流体密着封止を達成することができることを容易に理解するであろう。
【0029】
ここで、
図8~9を参照すると、別の態様では、マイクロ流体ポンプ200が提供され、これは、本明細書に記載されているマイクロ流体デバイス100を利用する。したがって、マイクロ流体ポンプ200は、マイクロ流体デバイス100、およびマイクロ流体デバイス100の基部58に取り外し可能に取り付けられている回転式アクチュエータ110を備える。この回転式アクチュエータ110は、その中に配設された開口部114を有する本体112を含み、そこでは、開口部114は、環状本体50、およびその中の剛性カラー70を受容するようにサイズ設計および形状加工されている。回転式アクチュエータ110が回転するつれ、本体112の開口部114の内面116に、弾性カラー70の凹面の壁90の一部を圧縮するように構成された1つ以上のボール120が、固定して取り付けられている。様々な実施形態では、1つ以上のボール120の各々が、本体112内に配設されたばね130に固定して取り付けられて、マイクロ流体デバイス100の環状弾性本体50に印加される力Fを増加させることができる。そのように設けられる場合、回転式アクチュエータ110のばね130およびボール120は、連動して機能して、基部58上、ならびにマイクロ流体デバイス100の凹面の壁60および/または弾性カラー70上でロックし、それによって、結果として、回転式アクチュエータ110とマイクロ流体デバイス100との間に、押し込み式の取り外し可能な係合を引き起こす。
【0030】
回転式アクチュエータ110による、1つ以上のボール120の機械的な回転により、マイクロ流体デバイス100の弾性カラー70に沿った圧縮部位の並進を引き起こし、それによって、有効なポンピング動作を作り出し、結果として、回転式アクチュエータ110の回転方向の、チャネル84内の流体の流れを生み出す。したがって、ポンピングされる体積は、回転式アクチュエータ110内のボール120の数を変更することによって調整され得、各ボール120間の間隔は、ポンピングされる固定した量の体積である。次いで、流体の流れは、剛性基材10の上面12上に配設(または形成)された適切な入口コネクタ122および出口コネクタ124を通って出入りすることができ、そこでは、入口コネクタ122は、入口20と流体連通して設けられ、出口コネクタ124は、出口22と流体連通して設けられる。理解されるべきであるように、入口コネクタ122は、吐出される流体を収容するリザーバ210と流体連通して設けられてもよく、これに対して、出口コネクタ124は、対象への流体を投与するための管材または針と流体連通して設けられてもよい。様々な実施形態では、入口コネクタ122および出口コネクタ124は、ルアーロックとして形成されて、流体密着継手を設けることができる。
【0031】
様々な実施形態では、回転式アクチュエータ110の機械的回転は、シャフト260によって回転式アクチュエータ110に結合された電気モータ250によって達成され得る。電気モータ250および回転式アクチュエータ110は、ハウジング254内に、電力供給部270およびコントローラ230と共に設けられてもよく、このため、回転式アクチュエータ110は、マイクロ流体デバイス100が回転式アクチュエータ110と押し込み式係合して配置され、電圧272が電気モータ250に印加したときに、マイクロ流体デバイス100の弾性カラー70に沿ってボール120を半径方向に横切るように構成されている。当業者によって理解されるように、マイクロ流体デバイス100に対する回転式アクチュエータ110の回転方向は、チャネル84内の流れの方向を規定する。したがって、当業者は、有利なことに、ポンプ200を通る流体の流れが双方向であり得ることを理解するであろう。加えて、マイクロ流体デバイス100が液体および気体を流すように構成されているため、ガス状の流体の流れは、ポンプ200内の初期起動の液体流動体を提供することができる。
【0032】
したがって、回転式アクチュエータ110は、充電可能なバッテリーなどの電源270から、回転式アクチュエータの動きを制御する電気モータ250に、電圧272を印可することによって、回転することができる。したがって、本発明は、本明細書に記載されているようなマイクロ流体ポンプ200に電圧272を印可することを含む、マイクロ流体プロセスを実行するための方法をさらに提供する。印加電圧272は、電気モータ250を作動させ、その電気モータは、それに取り付けられた回転式アクチュエータ110を回転させ、それによって、弾性カラー70に沿った、圧縮部位の繰り返される並進を引き起こす。
【0033】
広範囲の毎秒パルスが、電気モータ250に印加され得、それによって、マイクロ流体デバイス100内の広範囲の流量を実現することができる。この流体の流れは、実質的に一定であり得、非常に少ない流量であっても、流体に押し付けられる剪断力は、ほとんどないか、または全くない。ポンプ200のこれらの特性は、送達される流体の量の精度を向上させる(例えば、微小量の注入流体の送達を可能にする)が、一方、少ない流量により、薬物の全量を一度に投与することの影響を与えることなく、首尾一貫した送達を提供する。したがって、少ない一定のポンピングされた流量はまた、投薬精度を確実にするために非常に有効であり得る。
【0034】
以下の例示的な実施形態は、対象に流体(例えば、インスリン)を投与するための、低コストで使い捨てのデバイスで使用するための本発明のマイクロ流体ポンプ200の使用について説明する。ポンプ200は、対象に投与される流体(例えば、インスリン)を収容するリザーバ210を含むことができ、そこでは、リザーバ210は、マイクロ流体デバイス100の入口122と流体連通している。マイクロ流体デバイス100の出口124は、対象の組織(すなわち、皮下脂肪または筋肉)の中に挿入される管材(例えば、カテーテル)または針220に接続され得る。マイクロ流体ポンプ200は、電力供給部270からモータ250に電圧272を印可するように構成されたコントローラ230を含み得、それによって、対象への流体の所定の量を1日の適切な時間に投与するか、または適切であれば、継続的な皮下治療(例えば、インスリン治療)を提供することができる。デバイスの前述の構成要素(すなわち、マイクロ流体デバイス100、回転式アクチュエータ110、モータ250、電力供給部270、コントローラ230、およびリザーバ210)のすべては、単一のハウジング254内に配設され得る。したがって、このデバイスは、マイクロ流体デバイス100およびリザーバ210が使い捨てであるように構成され得、それらは、例えば、リザーバ210内の流体のすべてまたは大部分が対象に投与されるときに交換される使い捨てカード上に設けられ得る。
【0035】
本発明のマイクロ流体ポンプ200の使用を説明する別の例示的な実施形態では、マイクロ流体ポンプ200を、動物の疾病モデルで試験する薬物のための低コストで使い捨てのサンプリングデバイスとして使用することができる。ポンプ200は、対象(例えば、動物モデル)からのサンプル(例えば、血液)を収容するように構成された多数の空のリザーバ210を含んでもよく、そこでは、各リザーバ210は、マイクロ流体デバイス100の(サンプル出口として機能する)入口122と流体連通する。マイクロ流体デバイス100の出口124(サンプル入口として機能する)は、対象の組織(すなわち、皮下脂肪もしくは筋肉)または静脈中に挿入される管材(例えば、カテーテル)または針220に接続されてもよい。上記のように、マイクロ流体ポンプ200は、1日の特定の時間、および/または1週間の特定の日に、電力供給部270からモータ250に電圧272を印可するように構成されたコントローラ230を含み得、それによって、対象から定期的なサンプルを採取することができる。そのような定期的なサンプリングを使用して、例えば、対象内の経時的な薬物の有効性を監視することができる。同様に、このデバイスを使用して、サンプリングされる気体の少量の正確な量を必要とする検査(例えば、質量分析法)のための気体材料をサンプリングすることができる。
【0036】
様々な実施形態では、コントローラ230は、携帯電話またはタブレットなどの携帯端末240との有線または無線通信のために構成され得る。無線通信は、赤外線伝送、ブルートゥースプロトコル、無線周波数、Zigbee無線技術、GPS、Wi-Fi、WiMAX、および携帯電話通信からなる群から選択され得、吐出される流体(例えば、インスリン)の量、吐出の時間および/または持続時間、リザーバ210内に残っている流体(例えば、インスリン)の量、サンプリングの時間、サンプリングの持続時間、さらなるサンプリングするためのリザーバ内に残っている体積の量などを含む情報を送信/受信するように構成され得るが、これらに限定されない。様々な実施形態では、携帯端末240は、対象に取り付けられた1つ以上の無線センサによって、血糖値、インスリンレベル、およびその対象の温度などの、その対象の1つ以上の生理学的特性を監視するようにさらに構成され得るが、これらに限定されない。
【0037】
本発明は、上記の開示を参照して説明されてきたが、様々な修正および変形が、本発明の趣旨および範囲内に包含されることを理解されたい。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。