(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】直接還元金属を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
C21B 13/00 20060101AFI20240502BHJP
C22B 5/12 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C21B13/00
C22B5/12
(21)【出願番号】P 2021560527
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 SE2020050337
(87)【国際公開番号】W WO2020204797
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-16
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】521441283
【氏名又は名称】グリーンアイロン エイチツー アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】GREENIRON H2 AB
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】マレー,ハンズ
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-158513(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0074644(KR,A)
【文献】特開昭50-083990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 13/00-13/14
C22B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉空間(120)を備える閉鎖システムの一部である炉(100)において直接還元金属材料を
バッチ式に製造するための方法であって、
a)還元されるべき金属材料を炉空間(120)に装入する工程と、
b)前記炉空間(120)内の低圧化を達成するように、前記炉空間(120)から既存の雰囲気を排出する工程と、
c)主加熱工程において、熱と水素ガスを前記炉空間(120)に供給し、加熱された水素ガスが、前記装入された金属材料を、前記金属材料に存在する金属酸化物が還元されるのに十分に高い温度まで加熱して、次いで、水蒸気を形成する工程と、
d)工程cで形成された水蒸気を、前記装入された金属材料の下の凝縮器(160)において凝縮し、収集する工程と、を含み、
工程cにおける前記水素ガスは、前記水素ガスの再循環なしに供給され、
水素ガスが前記炉(100)に供給されるが、前記金属酸化物が還元される間に前記炉(100)から除去されず、当該方法は、その後に実行される、還元された金属材料を前記炉空間(120)から除去する工程と、不活性雰囲気下で、前記還元された金属材料を保管および/または輸送する工程とをさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程cおよびdは、少なくとも、前記炉空間(120)内で水素雰囲気の過圧に達するまで実行され、前記過圧に達するまで、水素ガスが炉空間(120)から排出されないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程aにおいて装入される前記材料は、最大で50トン、好ましくは最大で25トン、好ましくは5~10トンの材料であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法の工程a~dは、採掘現場に直接設置されたシステム(200)で実行され、それにより、直接還元金属材料が、前記工程を用いて前記採掘現場で製造され、その後、保護雰囲気下で包装され、その後、さらなる処理のために異なる現場に輸送されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程dの後に、前記水素ガスを前記装入された材料を通過して循環させて前記装入された材料を冷却する工程をさらに含み、これにより、前記水素ガスは、前記装入された材料によって加熱され、熱交換器を用いた熱交換によって冷却されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記装入された材料を冷却する工程は、前記装入された材料が100℃未満の温度になるまで実行されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記不活性雰囲気は、窒素雰囲気であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
不活性ガスが充填された第1の輸送容器に前記還元金属材料を供給する工程をさらに含み、いくつかのそのような第1の輸送容器が第2の輸送容器に提供され、次に前記いくつかの第1の輸送容器を囲む空間に不活性ガスが充填されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程cは、初期加熱工程において、熱と水素ガスを前記炉空間(120)に供給し、加熱された水素ガスが、前記装入された金属材料を、前記金属材料に含まれる水の沸点より高い温度まで加熱して、前記含まれる水を蒸発させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程cで供給される前記水素ガスは、熱交換器(160)で予熱され、前記熱交換器(160)は、熱エネルギーを、前記
形成された水蒸気から工程cで供給される前記水素ガスに伝達するように構成されることを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
工程cの前記主加熱工程および工程dにおける前記凝縮は、所定の圧力に達するまで実行されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程cにおける前記主加熱工程および工程dにおける前記凝縮は、前記炉空間(120)の内部で到達した定常状態のガス圧力を維持するために、より多くの水素ガスを供給する必要がなくなるという意味で、定常状態に達するまで実行されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程cにおける前記主加熱工程および工程dにおける前記凝縮は、還元されるべき前記装入された金属材料が所定の温度に達するまで実行されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程cの実行の間に、前記装入された金属材料を通る水蒸気の正味の流れが下向きに存在することを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
e)工程cおよび工程dの終了後、前記
炉空間に存在する水素を最高で100℃まで冷却する工程と、
f)工程eの終了後、前記炉空間(120)から前記水素
を排出し、前記排出された水素
の前記水素ガスを収集する工程、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程cおよびdは、少なくとも0.25時間実行されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接還元金属、特に直接還元鉄(スポンジ鉄としても知られる)を製造するための方法および装置に関する。特に、本発明は、制御された水素雰囲気下で金属鉱石を直接還元して、そのような直接還元金属を生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
還元剤として水素を使用する直接還元金属の製造は、それ自体周知である。例えば、SE 7406174-8およびSE 7406175-5には、金属鉱石の装入物が装入物を通過して流れる水素雰囲気(hydrogen atmosphere)にさらされ、その結果、直接還元金属を形成するように還元される方法が記載されている。
【0003】
本発明は特に、還元されるべき材料のバッチ式充填および処理の場合に適用可能である。
【0004】
従来技術には、水素ガスの使用と同様に熱損失に関する効率を含むいくつかの問題がある。また、還元処理が完了した時点を測定する必要があるため、制御上の問題もある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものである。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、直接還元金属材料を製造するための方法に関し、当該方法は、a)還元されるべき金属材料を炉空間に装入する工程と、b)炉空間内の低圧化を達成するように、炉空間から既存の雰囲気を排出する工程と、c)主加熱工程において、熱と水素ガスを前記炉空間(120)に供給し、加熱された水素ガスが、前記装入された金属材料を、前記金属材料中に存在する金属酸化物が還元されるのに十分に高い温度まで加熱して、次いで、水蒸気を形成する工程と、d)工程cで形成された水蒸気を、装入された金属材料の下の凝縮器で凝縮させ、収集する工程と、を含み、当該方法は、工程cにおける水素ガスが、水素ガスの再循環なしに供給され、当該方法は、その後に実行される、還元された金属材料を炉空間(120)から除去する工程と、不活性雰囲気下で、還元された金属材料を保管および/または輸送する工程とをさらに含むことを特徴とする。
【0007】
以下では、本発明の例示的な実施形態および添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1a】
図1aは、第1動作状態の間での、本発明によるシステムで使用するための簡略化された炉の断面図である。
【
図1b】
図1bは、第2動作状態の間での、
図1aの簡略化された炉の断面である。
【
図2】
図2は、本発明によるシステムの模式図である。
【
図3】
図3は、本発明による方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、加熱炉空間内のH
2圧と気温との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1aおよび
図1bは、同じ部分に対して同じ参照番号を共有する。
【0010】
したがって、
図1aおよび
図1bは、直接還元金属材料を製造するための炉100を示す。
図2では、そのような2つの炉210、220が図示されている。炉210、220は、炉100と同一であってもよく、または詳細が異なる。しかしながら、炉100に関して本明細書で言及される全てのことは、炉210および/または220に等しく適用可能であり、逆もまた同様であることが理解される。
【0011】
さらに、本方法に関して本明細書で言及されるすべてのことは、本システム200および/または炉100、210、220に等しく適用可能であり、その逆も同様であることを理解されたい。
【0012】
そのような炉100は、SE7406174-8およびSE7406175-5に記載されている炉と多くの類似性を有しており、可能な設計詳細に関してこれらの文献を参照する。しかしながら、これらの炉と本発明の炉100との間の重要な違いは、本発明の炉100は、水素ガスが炉100を通って再循環され、炉100の外側に配置された収集容器に戻るようには特に、水素ガスが炉100(または加熱された炉空間120)から再循環され、次いで、還元すべき、装入された材料の1回の同じバッチ処理中に炉100(または加熱された炉空間120)に戻るようには動作されないことである。
【0013】
その代わり、以下の説明から明らかなように、炉100は、一度に材料の1つの装入(充填)のバッチ毎の還元動作のために構成され、そして、水素ガスはバッチ毎の還元工程の間、炉100に供給されるが、そこからは除去されないという意味で、そのような個々のバッチ処理の間、閉じたシステムとして動作するために構成される。
【0014】
言い換えれば、炉100の内部に存在する水素ガスの量は、還元プロセスの間、常に増加する。還元が完了した後、水素ガスは、もちろん炉100内から排出されるが、還元工程中に水素ガスの再循環はない。
【0015】
したがって、炉100は、少なくとも5バール(bar)、または少なくとも6バール、または少なくとも8バール、さらには少なくとも10バールに加圧されるように構成された加熱炉空間120を備える閉鎖システムの一部である。炉100の上部110は、ベル形状(bell-shape)を有する。これは、処理すべき材料を装入するために開放することができ、固定手段111を用いて気密に閉鎖することができる。炉空間120は、れんが材料130のような耐火材料で封入(カプセル化)されている。
【0016】
炉空間120は、1つまたは複数の発熱体(heating elements)121を用いて加熱されるように構成される。好ましくは、発熱体121は電気加熱素子である。しかしながら、ラジエータ燃焼管または類似の燃料加熱要素も同様に使用することができる。しかしながら、発熱体121は、本発明の目的のために化学的に制御されなければならない炉空間120と直接化学的に相互作用するいかなる燃焼ガスも生成しない。なお、後述する主(メイン)加熱工程において炉空間内に供給される気体は、水素ガスのみであることが好ましい。
【0017】
発熱体121は、モリブデン合金などの耐熱性金属材料からなることが好ましい。
【0018】
加熱炉空間120内に追加の発熱体を配置することもできる。例えば、発熱体121と同様の発熱体を、装入された材料または少なくとも容器140に対応する高さなどで、炉空間120の側壁に設けることができる。そのような発熱体は、ガスだけでなく、熱放射を介して装入された材料も加熱するのを助けることができる。
【0019】
また、炉100は、下部150を備え、締結手段111を用いて炉が閉じられたときに上部110とともに密閉容器を形成する。
【0020】
処理される(還元される)材料のための容器140は、炉100の下部150に存在する。容器140はガスが容器140の下を、例えば耐火床に形成された開放または閉鎖チャネル172に沿って通過することを可能にするように、炉空間120の前記床上に支持されてもよく、前記チャネル172は例えば前記炉床における炉空間120の中央部分から、半径方向外向きに、炉空間120の半径方向周辺部まで、その後上方に、炉空間120の上部まで、水素ガスのための入口171から通過する。以下に記載される初期および主加熱工程中のこれらの流れについては、
図1aに示されるフロー矢印を参照されたい。
【0021】
容器140は、好ましくは、気体が容器140の少なくとも底部/床を自由に通過することができることを意味する開放構成のものである。これは、例えば、容器140の底部を貫通する孔を形成することによって達成することができる。
【0022】
処理される材料は、金属オキシドを含み、好ましくは、Fe2O3および/またはFe3O4のような、酸化鉄(iron oxide)を含む。材料は、ペレットまたはボールの形状などの粒状であってもよい。バッチ還元のために装入(装填)される1つの適切な材料は、水中で約1~1.5cmのボール直径に圧延された圧延鉄鉱石ボール(iron ore balls)である。このような鉄鉱石が、本発明の方法において装入された材料の最終温度未満の温度で蒸発する酸化物をさらに含有する場合、このような酸化物は、凝縮器160において凝縮され、粉末形態で容易に収集され得る。このような酸化物は、ZnおよびPb酸化物などの金属酸化物を含むことができる。
【0023】
有利には、炉空間120は、還元されるべき非常に大量の材料で充填されない。各炉100は、好ましくは、各バッチにおいて、最大で50トン、例えば最大で25トン、例えば5~10トンで装入(充填)される。この装入は、炉空間120内部の1つの単一容器150に保持されていてもよい。スループット要件に応じて、いくつかの炉100を並行して使用することができ、次いで、1つの炉220内のバッチからの残留熱を使用して、別の炉210を予熱することができる(
図2および以下を参照)。
【0024】
これは、採掘現場で直接設置および使用に適したシステム200を提供し、還元前に鉱石の高価な輸送を必要としない。代わりに、直接還元金属材料を現場で製造し、保護雰囲気下で包装し、さらなる処理のために異なる現場に輸送することができる。
【0025】
したがって、水圧延鉄鉱石ボールの場合には、容器140内の金属材料の炉100への装入(充填)が完全に自動化されるように、炉100が鉄鉱石ボール生産システムに接続して設置されることが想定され、ここで、容器140は、鉄鉱石ボール生産システムからシステム100へと自動的に循環し、還元されるべき鉄鉱石ボールが充填され、炉空間120に挿入され、本明細書に記載された還元水素/熱処理を受け、炉空間120から取り出され、空にされ、鉄鉱石ボール生産システムに戻され(返され)、最充填される、といったようになる。加熱炉100よりも多くの容器140を使用することができ、その結果、各バッチスイッチにおいて、特定の容器内の還元された装入物(充填物)が、加熱炉100内で、まだ還元されていない異なる容器に入った材料と直ちに交換される。採掘現場のようなこのようなより大きなシステムは、1つの非常に大きな炉ではなく、いくつかのより小さな炉100を用いて、完全に自動化されるように実施され、また、処理量の点で非常に柔軟であるように実施されてもよい。
【0026】
容器140の下には炉100がガス-ガス式熱交換器160を含み、この熱交換器は有利にはそれ自体知られているようなチューブ式熱交換器とすることができる。熱交換器160は、向流式の熱交換器であることが好ましい。熱交換器160には、熱交換器160の下方に、熱交換器160からの凝縮水を集めて収容する閉じたトラフ(trough)161が接続されている。トラフ161はまた、ガス密の方法で炉空間120の動作圧力に耐えるように構成される。
【0027】
熱交換器160は、炉空間120に接続されており、これにより、好ましくは、炉空間120に到達する冷却ガス/冷却されたガスが外部/周囲に設けられた熱交換器チューブに沿って熱交換器160を通過し、更に、発熱体121まで前記チャネル172を通過する。次いで、炉空間120から流出した加熱されたガスは、装入された材料(下記参照)を通過させ加熱した後、熱交換器160を内部/中央に設けられた熱交換器チューブに通過させ、それによって前記冷却ガス/冷却されたガスを加熱する。したがって、流出するガスは、2つの間の温度差による熱伝達、ならびに流出するガスに含まれる凝縮水蒸気の凝縮熱の両方によって、流入するガスを効果的に加熱する。
【0028】
流出するガスから形成された凝縮水は、トラフ161に集められる。
【0029】
炉100は、容器140(123)の下などの炉空間120の底面および/または炉空間120(124)の頂部において、トラフ161(122)内に1組の温度および/または圧力センサを備えることができる。これらのセンサは以下に説明するように、還元プロセスを制御するために制御ユニット201によって使用されてもよい。
【0030】
171は、水素ガスを加熱/冷却するための入口導管を示す。173は、使用済み水素ガスを冷却するための出口導管を示す。
【0031】
トラフ161と入口導管171との間には、バルブ163を備えた過圧平衡チャネル162があってもよい。トラフ161内に大量の水が流入することにより、トラフ161内に過剰圧力が形成された場合、このような過剰圧力は、次いで、入口導管171に解放され得る。バルブ163は、単純な過圧バルブであってもよく、トラフ161内の圧力が導管171内の圧力よりも高い場合に開くように構成される。あるいは、バルブが圧力センサ122からの測定に基づいて、制御装置201(以下)によって作動されてもよい。
【0032】
凝縮水は、凝縮器/熱交換器160からスパウト164または同様のものを介してトラフ内に導かれ、トラフの局所的な低点165などでトラフ161の底部でデバッチングし、好ましくは、前記スパウト164のオリフィス(orifice)が
図1aに例示されているようなトラフ161の主底部166の下方に完全に配置されるようにしてもよい。これにより、トラフ161内の液体水の乱流を減少させ、より制御可能な動作条件が提供されうる。
【0033】
トラフ161は、有利には、装入された材料の還元中に形成される全ての水を受け入れ、収容することができるような寸法にされる。したがって、トラフ161のサイズは、縮小された材料の1つのバッチのタイプおよび体積に適合させることができる。例えば、1000kgのFe2O3を完全に減らすと310リットルの水が形成(生成)され、1000kgを完全に減らすと338リットルの水が形成される。
【0034】
図2では、システム200が図示されており、
図1aおよび
図1bに例示されているタイプの炉を使用することができる。特に、炉210および220の一方または両方は、
図1aおよび
図1bに示すタイプであってもよく、または少なくとも本発明の請求項1によるタイプであってもよい。
【0035】
230は、ガス-ガス式熱交換器を示す。240は、ガス-水式熱交換器を示す。250は、ファンである。260は、真空ポンプである。270は、圧縮機(コンプレッサ)を示す。280は、使用済み水素ガスの容器である。290は、新鮮な/未使用の水素ガスのための容器を示す。V1~V14は、バルブを意味する。
【0036】
201は、センサ122、123、124およびバルブV1~V4に接続され、本明細書に記載のプロセスを制御するように一般に構成された制御装置を示す。制御装置201はまた、監視およびさらなる制御のために、コンピュータ(図示せず)によってシステム200のユーザに提示されるグラフィカルユーザインタフェースのようなユーザ制御装置に接続されてもよい。
【0037】
図3は本発明による方法を示しており、本方法は、
図3に概略的に示されているタイプのシステム100、特に、
図1aおよび
図1bに概略的に示されているタイプの炉100を使用している。特に、本方法は、還元剤として水素ガスを使用して直接還元金属材料を製造するためのものである。
【0038】
このような直接還元の後、金属材料はスポンジ金属を形成しうる。特に、金属材料は酸化鉄材料であってもよく、直接還元後に得られる生成物はスポンジ鉄であってもよい。次いで、このようなスポンジ鉄は、後続の方法の工程において、鋼等を製造するために使用され得る。
【0039】
第1の工程において、本方法が開始する。
【0040】
その後の工程において、還元されるべき金属材料が炉空間120に装入される。この装入は、装入された容器140が
図1aおよび
図1bに示す向きで炉空間120内に配置されることによって行われ、次いで、炉空間120は閉鎖され、締結手段111を用いてガス密の方法で密閉されてもよい。
【0041】
次の工程では、既存の(存在する)雰囲気(atmosphere)が炉空間120から排出され、その結果、大気圧に比べて炉空間120の内部で低圧化が達成される。これは、バルブ1~8、11および13~14が閉じられ、バルブ9~10および12が開いていること、および真空ポンプが吸い出し、したがって、240および250を通過する導管を介して、炉空間120内部の含有雰囲気を排出することによって行われうる。次いで、このような真空排出されたガスが周囲の大気中に流出することができるように、炉空間120が雰囲気で満たされる場合には、バルブ9を開いてもよい。炉空間120が使用済み水素ガスで満たされている場合、これは代わりに容器280に排出される。
【0042】
この例では、炉雰囲気は導管173を介して排出されるが、炉100内に配置された任意の他の適切な出口導管が使用されてもよいことが実現されてもよい。
【0043】
この排出工程、並びに以下に説明する他の工程では、制御装置201を使用して、圧力センサ122、123および/または124からの読み取り値に基づいて、炉空間120内の圧力を制御することができる。
【0044】
空にすることは、最大で0.5バール、好ましくは最大で0.3バールの圧力が炉空間120内で達成されるまで進行することができる。
【0045】
その後の初期加熱工程では、加熱および水素ガスが炉空間120に供給される。水素ガスは、容器280および/または290から供給されてもよい。上述したように、炉100は閉じられているので、供給された水素ガスは、プロセス中に実質的に全く逃げない。言い換えれば、(還元反応で消費される水素とは別に)水素ガス損失は、非常に低いか、または存在しないであろう。代わりに、還元プロセス中に還元反応において化学的に消費された水素のみが使用される。さらに、還元プロセス中に必要とされる唯一の水素ガスは、還元プロセス中の水素ガスと水蒸気との間の必要な圧力および化学の平衡を維持するのに必要な量である。
【0046】
上述のように、容器290は、新鮮な(未使用の)水素ガスを保持し、一方、容器280は、1つまたはいくつかの還元工程で既に使用され、それ以来システム200に収集された水素ガスを保持する。還元プロセスが最初に行われるとき、容器290から供給される新鮮な水素ガスのみが使用される。後続の還元プロセス中に、容器280からの再利用された水素ガスが使用され、これは必要に応じて容器290からの新鮮な水素ガスによって補充される。
【0047】
初期加熱工程の任意の初期段階(この初期段階は、水素ガスを導入する段階であり、炉内空間120の圧力が約1バールになるまで熱供給なしで行われる)では、バルブ2、4~9、11および13~14は閉じられ、一方、バルブ10および12は開いている。新鮮な水素ガスまたは再使用される水素ガスが使用されるかどうかに応じて、バルブV1および/またはV3は開いている。
【0048】
炉空間120内の圧力が大気圧(約1バール)に達するか、近づくと、発熱体121がスイッチオンされる。好ましくは、発熱体121が供給された水素ガスを加熱することによって、炉空間120に前記熱を供給し、次に、容器140内の材料を加熱する。好ましくは、発熱体121が炉空間120に供給される水素ガスが流れる位置に配置され、発熱体121は、還元プロセス中に新たに供給された水素ガス中に実質的に浸漬される(完全に、または、実質的に完全に取り囲まれる)。言い換えれば、熱は、有利には炉空間120に同時に供給される水素ガスに直接供給されてもよい。
図1aおよび
図1bには、発熱体121が炉空間120の頂部に配置された好ましい場合が示されている。
【0049】
しかしながら、本発明者は、熱は、供給された水素ガスが炉空間120に入る場所から離れた場所で炉空間120内部のガス混合物に直接供給されるような、他の方法で炉空間120に供給されてもよいことを予見する。他の例では、このように加熱された水素ガスが炉空間120に入る前に、熱は、炉空間120の外部の位置として供給された水素ガスに供給されてもよい。
【0050】
前記初期加熱工程の残りの間、バルブ5および7~14は閉じられ、一方、バルブ1~4および6は以下に記載されるように、再使用および/または新鮮な水素ガスの制御された供給を達成するために、圧縮機270とともに、制御装置によって制御される。
【0051】
したがって、この初期加熱工程の間、制御装置201は、加熱された水素ガスが、装入された金属材料を、金属材料に含まれる水の沸点より高い温度まで加熱するように、熱および水素供給手段121、280、290を制御して、炉空間120に熱および水素ガスを供給するように構成される。その結果、当該含まれる水が蒸発する。
【0052】
初期加熱工程および主加熱工程(下記参照)の間、制御装置201の制御下で水素ガスがゆっくりと供給される。その結果、水素ガスの流れが垂直下向きに、装入された材料を通して、連続的に、比較的遅いが定常的に存在することになる。一般に、制御装置は、炉空間120内部の所望の増加(単調に増加するよう)圧力曲線を維持し、特に、熱交換器160内の水蒸気の一定の凝縮(以下参照)から生じる炉空間120の下部(および熱交換器160の下部)での減少した圧力を打ち消すように、水素ガスを連続的に追加するように構成される。総エネルギー消費量は、熱交換器160の効率、特に、熱交換器160を通って流れる高温ガスと凝縮水蒸気の凝縮熱の両方から、入ってくる水素ガスに熱エネルギーを伝達するその能力に依存する。Fe2O3の例では、酸化物を加熱し、吸熱反応を熱的に補償し、酸化物を還元するのに必要な理論エネルギはFe2O31000kg当たり約250kWhである。Fe3O4の場合、対応する数値はFe3O4の1000kgあたり約260kWhである。
【0053】
本発明の重要な態様は、還元プロセス中に水素ガスの再循環がないことである。これは上記の概略的な水準で説明されたが、
図1aに示された例では、これは、水素ガスが例えば、圧縮機270を介して、入口管路171を通って、炉空間121の頂部に供給され、そこで、発熱体121によって加熱され、次に、ゆっくりと下方に通過し、容器140内で還元されるべき金属物質を通過し、熱交換器130を通ってさらに下方に、溝161内に入ることを意味する。しかし、炉空間120からの利用可能な出口孔はなく、特にトラフ161からではない。導管173は例えば、バルブV10、V12、V13、V14が閉じられることによって閉じられる。従って、供給された水素ガスは、還元プロセスにおいて部分的に消費され、部分的には炉空間120内のガス圧力の増加をもたらすことになる。次に、このプロセスは以下に詳述するように、金属材料の完全な、または、所望の還元が起こるまで続く。
【0054】
したがって、容器140内の装入された材料の上方の炉空間120内に存在する加熱された水素ガスは、下方にゆっくり移動するガス流を形成する水素ガスのゆっくりとした供給を経て、装入された材料に運ばれることになる。そこで、それは、装入された材料からの水蒸気とガス混合物を形成する(下記参照)。
【0055】
得られた高温ガス混合物は、熱交換器160に流入し、それを通過するガス流を形成する。熱交換器160では、次いで、炉空間120から到着する高温ガスから、導管171から到着する低温の新しく設けられた水素ガスへの熱交換が存在することになり、それによって、後者は前者によって予熱されることになる。言い換えれば、初期および主加熱工程において提供される水素ガスは、熱交換器160で予熱される。
【0056】
高温ガス流の冷却により、冷却されたガスに含まれる水蒸気が凝縮する。この凝縮の結果、液体水が生じ、これがトラフ161内に集められるが、凝縮熱も生じる。熱交換器160は、このような凝縮熱エネルギーを、凝縮水から炉空間120内に供給すべき冷水素ガスに伝達するようにさらに構成されることが好ましい。
【0057】
含有水蒸気の凝縮はまた、炉空間120から下方に流れる高温ガスの圧力を低下させ、より多くの高温ガスが熱交換器160を下方に通過するための空間を提供するのであろう。
【0058】
追加の加熱された水素ガスのゆっくりとした供給、および水素ガスの比較的高い熱伝導率のために、装入された材料は、10分以内など、比較的迅速に、充填された材料に含まれる液体水の沸点に達し、これは、その後、100℃をわずかに超えるはずである。その結果、この含有された液体水は蒸発し、高温水素ガスと混合する水蒸気を形成する。
【0059】
熱交換器160内の水蒸気の凝縮は、構造体の下端における水蒸気のためのガス分圧を低下させ、平均的に下向きに、装入された材料内で発生した水蒸気を下向きに流れさせることになる。この効果に加えて、水蒸気は、それが混合する水素ガスよりも実質的に低い密度でもある。
【0060】
このようにして、容器140内の、装入された材料の水分は徐々に蒸発し、熱交換器160を通って下方に流れ、そこで冷却されて凝縮し、トラフ161内で液体状態になる。
【0061】
熱交換器160に供給される低温水素ガスは、室温であるか、または室温よりもわずかに低い温度を有することが好ましい。
【0062】
この初期加熱工程(ここで、装入された材料は従って、任意の含有された液体水から乾燥される)は、本発明の方法における好ましい工程であることが理解される。特に、これは、材料を炉空間120に装入する前に高価で複雑な乾燥工程を導入する必要なしに、材料の圧延ボールの形態のような粒状材料として挿入される材料を製造し、提供することを容易にする。
【0063】
しかしながら、既に乾燥している、または、乾燥した材料を炉空間120に装入することが可能であることが理解される。この場合、本明細書に記載されるような初期加熱工程は実行されないが、本方法は直ちに主加熱工程(以下)に飛ぶ。
【0064】
本発明の一実施形態では、前記初期加熱工程の間に炉空間120への水素ガスの供給が、初期加熱工程の実行中にわたって、圧力平衡が実質的に維持されるように、好ましくは実質的に等しい圧力が炉空間120およびトラフ161の液体充填されていない部分の全体にわたって常にかかるように、非常に遅くなるように制御される。特に、水素ガスの供給は、前記平衡のガス圧力が初期加熱工程中に増加しないか、またはわずかしか増加しないように制御することができる。この場合、水素ガス供給はその後、容器140内の装入された材料から全て、または、実質的に全ての液体水が蒸発した後にのみ、炉空間120の圧力を経時的に上昇させるように制御される。これが起こった時点は例えば、温度センサ123および/または124によって測定される温度-時間曲線の勾配の上方への変化として決定することができ、勾配の変化は実質的にすべての液体水が蒸発したが、還元がまだ開始されていない時点を示す。あるいは、温度センサ123および/または124によって測定される炉空間120内の測定温度が、120℃と130℃との間などの100℃と150℃との間とすることができる所定の限界を超えると、圧力を上昇させるように水素ガス供給を制御することができる。
【0065】
後続の主加熱工程では、加熱された水素ガスが金属材料中に存在する金属酸化物を還元し、次に水蒸気を形成させるのに十分な高さの温度まで、装入された金属材料を加熱するように、上述の初期加熱工程中の供給に対応する方法で、熱および水素ガスが炉空間120にさらに供給される。
【0066】
したがって、この主加熱工程の間、追加の水素ガスが、炉空間120内で徐々に圧力を増加させながら供給され、加熱され、その結果、装入された金属材料は次に、還元化学反応が開始され、維持される温度まで加熱される。
【0067】
したがって、
図1aおよび
図1bに示す例では、最も上に装入された材料が最初に加熱される。酸化鉄材料の場合、水素ガスは、約350~400℃で装入された材料を還元して金属鉄を形成し始め、以下の式に従って自然発火鉄および水蒸気を形成する:
Fe
2O
3 + 3H
2 = 2Fe + 3H
2O
Fe
3O
4 + 4H
2 = 2Fe + 4H
2O
【0068】
この反応は吸熱性(エンドサーマル(endothermal))であり、炉空間120内で上方から流下する高温水素ガスを介して供給される熱エネルギーによって駆動される。
【0069】
したがって、初期加熱工程および主加熱工程の両方の間に、水蒸気が、装入された材料中に生成される。この形成された水蒸気は、連続的に凝縮され、装入された金属材料の下に配置された凝縮器に集められる。
図1aに示す例では、凝縮器は熱交換器160の形態である。
【0070】
本発明によれば、前記凝縮を含む主加熱工程は、大気圧との関係で炉空間120内の過圧(overpressure)に達するまで実行される。圧力は例えば、圧力センサ123および/または124によって測定することができる。上述のように、本発明によれば、前記過圧に達するまで、水素ガスは炉空間120から排出されず、好ましくは、主加熱工程が完全に終了するまで、水素ガスは炉空間120から排出されない。
【0071】
より好ましくは、主加熱工程における水素ガスの供給、および水蒸気の凝縮は、所定の過圧に達するまで、炉空間120内で行われ、所定の過圧は少なくとも4バール、より好ましくは少なくとも8バール、さらには絶対値で約10バールである。
【0072】
あるいは、主加熱工程における水素ガスの供給、および、水蒸気の凝縮は、炉空間120の内部で到達した定常状態のガス圧力を維持するために、より多くの水素ガスを供給する必要がなくなるという意味で、定常状態に達するまで実行されてもよい。この圧力は、上述した方法と同様の方法で測定することができる。好ましくは、定常状態のガス圧力が少なくとも4バール、好ましくは少なくとも8バール、さらには約10バールであってもよい。このようにして、還元プロセスがいつ完了したかを知る簡単な方法が達成される。
【0073】
あるいは、主加熱工程における水素ガスおよび熱の供給、および、水蒸気の凝縮は、還元されるべき装入金属材料が640~680℃、好ましくは約660℃など、少なくとも600℃とすることができる所定の温度に達するまで実行されてもよい。装入された材料の温度は例えば、適切なセンサを使用して装入された材料からの熱放射を測定することによって直接的に、または温度センサ123によって間接的に測定することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、形成された水蒸気の前記凝縮を含む主加熱工程が少なくとも0.25時間、例えば少なくとも0.5時間、例えば少なくとも1時間の連続時間の間に実行される。この全時間の間に、炉空間120の圧力と温度の両方が単調に上昇することがある。
【0075】
いくつかの実施形態では、主加熱工程はさらに、反復的に実行されてもよく、各反復において、制御装置201は、さらなる量の水素ガスを炉空間に供給する前に、炉空間120の内部で定常状態の圧力に到達することを可能にする。また、熱供給は反復的であってもよく(パルス的であってもよく)、または主加熱工程全体の間、スイッチオン状態であってもよい。
【0076】
初期加熱工程と主加熱工程の両方を実行する間、特に、これらの工程の少なくとも実質的に全長にわたって、容器140内の装入された金属材料を通る水蒸気の正味の流れが下向きに存在することに留意されたい。
【0077】
初期加熱工程と主加熱工程の間、圧縮機270は、制御装置201によって制御され、常に、追加の水素ガスを供給することによって圧力を維持または増加させる。この水素ガスは、還元プロセスで消費される水素を補償するために、また圧力を所望の最終圧力まで徐々に増加させるために使用される。
【0078】
装入された材料中の水蒸気の形成はガス圧力を局所的に増加させ、実質的には炉空間120とトラフ161との間に圧力変動を生じさせる。その結果、形成された水蒸気は装入された材料を通って下方に沈み、熱交換器160内で凝縮し、次に、(炉空間120に関連して)熱交換器160の遠方側の圧力を下げる。こうして、これらのプロセスは装入物を通るガスの下向きの正味の移動を生成し、そこで新たに追加された水素ガスは、炉空間120内の圧力損失を補償する。
【0079】
炉空間120から流出するガス中の熱量、特に水蒸気の凝縮熱は、熱交換器160で流入水素ガスに伝達される。
【0080】
したがって、このプロセスは、還元すべき金属材料が存在し、したがって水蒸気が生成され、その結果、前記下向きのガス移動が生じる限り、維持される。(実質的に全ての金属材料が還元されたために)水蒸気の生成が一度停止すると、圧力は炉100の内部全体にわたって均一化され、測定された温度は炉空間120全体にわたって同様になるのであろう。例えば、トラフ161のガスで満たされた部分の点と、装入された材料の上方の点との間の測定された圧力差は、最大で0.1バールであり得る所定の量未満である。さらに、または、代替的に、装入された材料の上方の点と、装入された材料の下方であるが熱交換器の炉空間120側の点との間の測定された温度差は、所定量よりも小さくなり、これは最高で20℃であり得る。したがって、このような圧力および/または温度の均質性に達して測定されると、主加熱工程は、水素ガス供給が遮断され、発熱体121がスイッチオフされることによって終了することができる。
【0081】
したがって、主加熱工程は、所定の最低温度および/または最高圧力に達するまで、および/または炉100内の加熱容積内で所定の最高温度差および/または最高圧力差に達するまで実行することができる。どの基準が使用されるかは、炉100の設計および還元される金属材料のタイプなどの前提条件に依存する。また、所定の主加熱時間、または所定の加熱/水素供給プログラムの終了などの他の基準を使用することも可能であり、これは経験的に決定することができる。
【0082】
次の冷却工程において、炉空間120内の水素雰囲気は次に、最高で100℃、好ましくは約50℃の温度に冷却され、その後、炉空間120から排出され、収集される。
【0083】
1つまたは複数の炉に接続されていない単一の炉100/220の場合、装入された材料はガス-水式冷却器240の下流に配置されたファン250を使用して冷却されてもよく、次に、水素ガスを冷却するように構成されてもよい(ファン250によって、バルブV12、熱交換器240、ファン250、およびバルブV10を通過するループで閉ループに循環され、出口導管173を介して炉空間120から出て、入口導管171を介して再び炉空間120に入る)。この冷却循環は、
図1bの矢印で示されている。
【0084】
したがって、熱交換器240は、循環水素ガスから水(または異なる液体)に熱エネルギーを伝達し、そこから熱エネルギーを適切な方法で、例えば地域暖房システムで使用することができる。閉ループは、バルブV10およびV12を除く全てのバルブV1~V14を閉じることによって達成される。
【0085】
この場合、水素ガスは、容器140内の装入された材料を通過して循環されるので、水素ガスは、装入された材料から熱エネルギーを吸収し、水素ガスが閉ループで循環される間、装入された材料の効率的な冷却を提供する。
【0086】
異なる例では、炉100/220の冷却から利用可能な熱エネルギーを使用して、異なる炉210を予熱する。これは、その後、上述の冷却閉ループと比較して、バルブV12を閉じ、代わりにバルブV13、V14を開くことによって、制御装置201によって達成される。このようにして、炉220から到達した高温の水素ガスは、好ましくは向流熱交換器であるガス-ガス式熱交換器230に取り込まれ、この熱交換器では他の炉210に対して行われる初期または主加熱工程で供給されている水素ガスが熱交換器230で予熱される。その後、炉220から多少冷却された水素ガスは、炉220に再導入される前に、更なる冷却のために熱交換器240を通過して循環されてもよい。この場合も、炉220からの水素ガスは、ファン250を用いて閉ループ内で循環される。
【0087】
したがって、冷却工程における水素ガスの冷却は、上述したように、異なる炉210空間120と関連して、初期および主加熱工程および凝縮を行うための異なる炉210の空間120に供給される水素ガスとの熱交換を介して実行されてもよい。
【0088】
一度、水素ガスが不十分に高温になって炉210に供給される水素ガスを加熱すると、制御装置201は、バルブV13、V14を再び閉じ、バルブV12を再び開き、その結果、炉220からの水素ガスが熱交換器240に直接取り込まれる。
【0089】
その熱エネルギーがどのように処理されるかにかかわらず、炉220からの水素ガスは、後に空気(air)にされたときの装入された材料の再酸化を回避するために、それ(または、より重要なことには装入された材料)が100℃未満の温度に達するまで冷却される。装入された材料の温度は、上記のような適切な方法で直接的に、または出口導管173を介して出る水素ガスの温度を適切な方法で測定することによって間接的に測定することができる。
【0090】
水素ガスの冷却は水素ガスの過圧を維持しながら行われてもよく、または、バルブV10およびV12が一度開かれると、高温水素ガスがより大きな体積(閉ループ導管および熱交換器の)を占めることを許容される結果、水素ガスの圧力が低下してもよい。
【0091】
次の工程では、水素ガスは、炉220の空間120から排出され、容器280に集められる。この排出は、真空ポンプ260によって、おそらく圧縮機270と組み合わせて実行されてもよく、それによって、制御装置はバルブV3、V5、V6、V8、V10およびV12を開き、他のバルブを閉じ、真空ポンプ260および圧縮機270を作動させて、冷却された水素ガスを使用済み水素ガスのために容器280に移動させる。排出は、望ましくは、炉空間120の内部で最大で0.5バールの圧力、さらには、最大で0.3バールの圧力が検出されるまで実行される。
【0092】
炉空間120は、閉鎖されているので、化学還元反応で消費される水素ガスのみがシステムから除去され、残りの水素ガスは、主加熱工程中に炉空間120内の水素ガス/水蒸気バランスを維持するために必要であったものである。この排出された水素ガスは、還元されるべき金属材料の新しい装入の後続のバッチ動作に十分に有用である。
【0093】
その後の工程では、締結手段111を解除して上部110を開放するなどして炉空間120を開放する。容器140は取り外され、還元されるべき装入金属材料の新しいバッチを有する容器と交換される。
【0094】
その後の工程において、除去された還元された材料は、輸送および保管中の再酸化を回避するために、窒素雰囲気のような不活性雰囲気下に配置されてもよい。
【0095】
例えば、還元された金属材料は、不活性ガスが充填された可撓性(フレキシブル)または剛性(リジッド)の輸送容器内に配置されてもよい。いくつかのそのような可撓性または剛性の容器は、輸送容器内に配置されてもよく、輸送容器は次いで、いくつかの可撓性または剛性の容器を取り囲む空間内に不活性ガスを充填してもよい。その後、還元された金属材料は、再酸化の危険を冒すことなく安全に輸送することができる。
【0096】
次の表は、炉空間120内の種々の温度に対する水素ガスH2と水蒸気H2Oとの間のおおよその均衡(平衡)を示す:
温度(℃): 400 450 500 550 600
H2(vol-%): 95 87 82 78 76
H2O(vol-%): 5 13 18 22 24
【0097】
常圧では約417mの3ガスH2が1000kgのFe2O3を減らすために必要であり、約383mのFe3O4を減らすために必要なものは約1000kgである。
【0098】
次のテーブルは、(従来技術による)常圧およびオープンシステムにおいて、それぞれFe2O3およびFe3O4を1000kg減らすために必要とされる、(従来技術による)異なった温度でのガス量を示している:
温度(℃): 400 450 500 550 600
Nm3H2/トンFe2O3:
8340 3208 2317 1895 1738
Nm3H2/トンFe3O4:
7660 2946 2128 1741 1596
【0099】
下表は、さまざまな圧力で、さまざまな温度に対して、それぞれ1000kgのFe2O3とFe3O4を削減するために必要な、ガスの量を示している:
温度(℃): 400 450 500 550 600
Nm3H2/トンFe2O3:
1バール 8340 3208 2317 1895 1738
2バール 4170 1604 1158 948 869
3バール 2780 1069 772 632 579
4バール 2085 802 579 474 434
5バール 1668 642 463 379 348
6バール 1390 535 386 316 290
Nm3H2/トンFe3O4:
1バール 7660 2946 2128 1741 1596
2バール 3830 1473 1064 870 798
3バール 2553 982 709 580 532
4バール 1915 737 532 435 399
5バール 1532 589 426 348 319
6バール 1277 491 355 290 266
【0100】
以上のように、本発明に係る本加熱工程は、高圧、高温まで行うことが好ましい。主要な加熱工程の大部分の間、少なくとも500℃の加熱水素ガス温度と少なくとも5バールの炉空間120圧力との組み合わせを使用することが有利であることが分かっている。
【0101】
以上、好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明の基本概念から逸脱することなく、開示された実施形態に対して多くの修正を行うことができることは当業者には明らかである。
【0102】
例えば、炉100の幾何学的形状は、詳細な前提条件に応じて異なっていてもよい。
【0103】
熱交換器160は、チューブ熱交換器として説明される。これが特に有利であることが判明したとしても、他の種類のガス-ガス熱交換器/凝縮器が可能であることが実現される。熱交換器240は、任意の適切な構成であってもよい。
【0104】
冷却された水素ガスからの余分な熱は、熱エネルギーを必要とする他のプロセスにも使用することができる。
【0105】
還元される金属材料は、酸化鉄として記載されている。しかし、本発明の方法およびシステムは、約600℃未満の温度で蒸発する、ZnおよびPbなどの上述の金属酸化物などの金属材料を還元するために使用することもできる。
【0106】
また、本直接還元原理は鉄鉱石よりも高い還元温度を有する金属材料と共に使用することができ、使用される建設材料に関して、炉100の構造に対する適切な調整を行うことができる。
【0107】
したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内で変更することができる。