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特許7482151圧着器具および圧着器具のための装填ツール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】圧着器具および圧着器具のための装填ツール
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
A61B17/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021562112
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 US2020029686
(87)【国際公開番号】W WO2020219790
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】62/838,250
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506243057
【氏名又は名称】エルエスアイ ソルーションズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】サウアー, ジュード, エス.
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0177503(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0345956(US,A1)
【文献】特開平10-277044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04 - A61B 17/062
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の縫合糸ファスナーのそれぞれを圧着するための器具であって、
ハウジングと、前記ハウジングに結合された少なくとも2つのシャフトと、2つ以上の受入フェイスと、2つ以上のプッシャーと、駆動リンクと、レバーと、を備え、
前記少なくとも2つのシャフトのそれぞれは、長手軸に沿って基端から先端まで延び、内部空間を画成する1以上の内面を有し、
前記2つ以上の受入フェイスのぞれぞれは、前記少なくとも2つのシャフトの対応する1つの前記先端またはその近傍に位置する前記内部空間の一部に、少なくとも部分的に収容され、ハンマーおよびアンビルと結合され、前記ハンマーと前記アンビルとの間で前記2つ以上の縫合糸ファスナーのうちの対応する1つを受け入れるように構成され、
前記2つ以上のプッシャーのそれぞれは、長手軸に沿って基端から先端まで延び、前記少なくとも2つのシャフトの対応する1つの内部空間に少なくとも部分的に配置され、前記少なくとも2つのシャフトの対応する1つの前記長手軸と実質的に平行な方向に、非係合位置から係合位置まで移動可能であり、前記係合位置では、前記先端が前記2つ以上の受入フェイスの対応する1つの前記ハンマーと前記アンビルの少なくとも一方と係合して前記ハンマーと前記アンビルを一緒に押し付けて、前記2つ以上の縫合糸ファスナーの対応する1つを圧着するように構成され、
前記2つ以上のフッシャーのそれぞれの基端が、前記駆動リンクに連結され、
前記レバーは、第1位置と第2位置との間で変位可能なように前記ハウジングに移動可能に連結され、一部が前記駆動リンクの一部に連結され、前記第1位置から前記第2位置に変位した時に前記2つ以上のプッシャーのそれぞれを前記非係合位置から前記係合位置へと移動させ、
縫合糸の一部が、前記2つ以上の縫合糸ファスナーの対応する1つの穴に挿通され、前記レバーが前記第1位置から前記第2位置へと変位した時に、前記2つ以上の縫合糸ファスナーの対応する1つが圧着されて、前記2つ以上の縫合糸ファスナーの対応する1つの前記穴内に前記縫合糸の一部を固定するように構成されており、
さらに、前記少なくとも2つのシャフトのそれぞれの先端又はその近傍に配置された装填ツールを備え、前記装填ツールがターゲットカバーを備え、
前記ターゲットカバーは、
前記ターゲットカバーの頂面から底面まで延び、周縁部により画成された2つ以上の縫合糸用開口と、
前記ターゲットカバーの底面から突出し、それぞれが前記周縁部の対応する1つに沿って延びる突出部を有する2つ以上のスネアガイドと、
を備え、前記2つ以上のスネアガイドのそれぞれが、前記2つ以上のスネアガイドのそれぞれを囲むスネアワイヤの第1部分を支持するように構成され、前記スネアワイヤの第2部分が、前記2つ以上の縫合糸ファスナーの対応する1つに挿通されるように構成され、
前記縫合糸の一部が前記ターゲットカバーの前記2つ以上の縫合糸用開口の対応する1つに挿通され、対応する前記スネアワイヤが前記縫合糸の一部を前記2つ以上の縫合糸ファスナーの対応する1つの穴に通して引くように構成されている、器具。
【請求項2】
さらに、前記少なくとも2つのシャフトのそれぞれに連結されたハンドルを備え、前記ハンドルは、前記少なくとも2つのシャフトのそれぞれの前記長手軸と平行に移動可能であり、
前記ハンドルは前記スネアワイヤの第3部分と固定的に連結され、前記ハンドルの移動により前記縫合糸の一部を前記2つ以上の縫合糸ファスナーの対応する1つに挿通させるように構成された、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記スネアワイヤが前記ハンドルに連結される時に、前記スネアワイヤの第4部分がプレジェットを通る、請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記少なくとも2つのシャフトのそれぞれの前記長手軸が平行である請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記装填ツールは、前記ターゲットカバーに着脱可能に連結されるターゲットトレイをさらに備え、
前記ターゲットトレイは、その頂面から底面に延びる2つ以上の縫合糸用開口を有し、前記2つ以上の縫合糸用開口のそれぞれは周縁部により画成され、前記ターゲットトレイの前記周縁部のそれぞれは、前記ターゲットカバーの前記周縁部の対応する1つと位置合わせされ、これにより前記ターゲットカバーの前記2つ以上の縫合糸用開口のそれぞれが、前記ターゲットトレイの前記2つ以上の縫合糸用開口の対応する1つと位置合わせされる、請求項1に記載の器具。
【請求項6】
前記2つ以上のスネアガイドのそれぞれの底部が、前記ターゲットトレイの頂面の一部と接するか近接しており、これにより、前記スネアワイヤの前記第1部分が前記2つ以上のスネアガイドの対応する1つの周りに維持される、請求項5に記載の器具。
【請求項7】
前記2つ以上の縫合糸用開口のそれぞれの周縁部が同一形状を有している、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記周縁部のそれぞれが楕円形状を有している、請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記周縁部のそれぞれは、対称軸に関して対称であり、前記対称軸に沿って基端から先端へと延びており、前記2つ以上の縫合糸用開口の第1縫合糸用開口の前記周縁部の前記先端は、前記2つ以上の縫合糸用開口の第2縫合糸用開口の前記周縁部の前記先端より基端側に位置している、請求項7に記載の器具。
【請求項10】
前記2つ以上の縫合糸用開口の前記第1縫合糸用開口の前記周縁部の前記対称軸は、前記2つ以上の縫合糸用開口の前記第2縫合糸用開口の前記周縁部の前記対称軸と平行でない、請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記2つ以上の縫合糸用開口の前記第1縫合糸用開口の前記周縁部の前記対称軸と、前記2つ以上の縫合糸用開口の前記第2縫合糸用開口の前記周縁部の前記対称軸は、両方とも、前記少なくとも2つのシャフトのいずれの長手軸とも平行でない、請求項10に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定された縫合糸にスリーブを圧着するための外科用器具に関し、特に、そのための装填ツールを有する外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI Solutions,Inc.によりTi-KNOT(登録商標)およびCOR-KNOT(登録商標)として販売されているスリーブ等の可鍛性縫合糸ファスナーは、腹腔鏡下外科手術において、手または器具で結ばれていた結び目を、大幅に改善している。
【0003】
スリーブは、チタンなどの可鍛性材料で作られており、体組織に長時間接しても安全であることが証明されている。スリーブは、2本以上の縫合糸の上をスライドされ、変形または圧着して縫合糸を固定する。
【0004】
圧着器具の一例が米国特許第7,235,086号に開示されている。この米国特許は、「移動制限機能を備えた圧着器具」と題され、ニューヨーク州ビクターのLSI Solutions,Inc.に譲渡されている。このような器具を使用すると、器具の端部にあるハンマーとアンビルの間に保持された圧着スリーブに、縫合糸の端部を通すことができる。縫合糸の端部は、シャフトの側面にある穴を通り抜ける。器具は、縫合糸が固定された表面(例えば、組織、心臓弁などの交換用の解剖学的構造、または心臓弁輪などの拡張解剖学的構造)に対して、圧着スリーブを縫合糸の所望位置に位置付けるために用いることができる。
【0005】
アクチュエータにより、シャフトにある楔部材が前進し、ハンマーを圧着スリーブに押し込む。ハンマーがアンビルに向かって圧着スリーブを圧着し、縫合糸が変形されたスリーブにより、しっかりと保持される。ブレードもシャフト内に組み込むことができ、縫合糸の端部をトリミングするためにアクチュエータによって同時に移動可能である。
【0006】
縫合糸ファスナーを取り付けるための上記のような器具は、非常に効果的であることが証明されている。LSI Solutions,Inc.が提供するTi-KNOT(登録商標)およびCOR-KNOT(登録商標)の器具(www.lsisolutions.comで情報を入手可能)は、時間の節約、使いやすさ、信頼性という認識された利点により、外科医に広く受け入れられている(たとえば、2011年にニューヨーク州ニューヨークで開催のAATS 2011 Mitral ConclaveでRodriguez,Sutter,Ferdinandにより発表された要約「僧帽弁修復への低侵襲アプローチのための新しい結び目結束技術」、または2012年にスペインのバルセロナで開催の第26回EACTS会議でGersakとRobicにより発表された要約「低侵襲性の僧帽弁手術において、自動結び目結束と切断装置が、大動脈のクロスクランプ時間を短縮する」を参照)。
【0007】
COR-KNOT(登録商標)装置のような装置は、多くの種類の低侵襲手術(MIS)、より具体的には低侵襲心臓手術(MICS)を可能にする。MISは、患者に形成された1つ以上の小さな切開またはアクセス部位を介して実行される手術の一種である。MISは、従来のアプローチと比較して、少なくとも同等の罹患率と死亡率の結果をもたらすことが示され、術後の痛みの軽減、呼吸機能の改善、入院期間の短縮、および美容の改善という利点が報告されている。
【0008】
通常、COR-KNOT(登録商標)装置のような圧着器具の場合、クイック装填ユニットが提供され、圧着可能なスリーブを装置に装填し、装置に保持された圧着可能なスリーブに縫合糸を通すのを容易にしている。これは、縫合糸の単一対の端部を用いる場合に単一の圧着可能なファスナーに対しては、良好に機能するが、縫合糸の複数組の端部を用いる場合には適していない。プレジェット(綿撒糸)が含まれる場合にはなおさらである。このようなシナリオは、複数の圧着可能なファスナーを同時に処理できる圧着装置が必要になるため、さらに複雑になる。
【0009】
したがって、複数の圧着可能なファスナーを同時に配置することができる外科用圧着器具の必要性があるだけでなく、縫合糸の複数組の端部および複数の圧着可能なファスナーと相性の良い外科用圧着器具用の装填ツールも必要であり、特にプレジェットが含まれる場合、そのような使用で生じる縫合糸の管理も必要である。さらに、そのような装填ツールは、圧着器具から分離されているか、圧着器具と一体であるかにかかわらず、使いやすいものである必要がある。
【発明の概要】
【0010】
1つ以上の縫合糸ファスナーを1つ以上の対応する外科用縫合糸に圧着するための器具が開示されている。この器具は、少なくとも1つのシャフトと、それぞれが前記1つ以上の縫合糸ファスナーのうちの1つを受け入れるように構成された1つ以上の受入フェイスと、それぞれが前記1つ以上の受入フェイスの1つに対応する1つ以上のアンビルと、それぞれが前記1つ以上のアンビルの1つに対応し、対応するアンビルに対して相対的に移動可能であり、これにより、前記1つ以上の受入フェイスで受けられている前記1つ以上の縫合糸ファスナーを、前記対応するアンビルとの間で圧着する1つ以上のハンマーと、前記少なくとも1つのシャフトの長手軸と実質的に平行な方向に移動可能であり、ハンマーとアンビルを一緒に押し付けるために、前記ハンマーと前記アンビルの少なくとも一方と係合するように構成された1つ以上のプッシャーと、装填ツールと、を備えている。前記装填ツールは、1つ以上のスネアガイドを画成するターゲットカバーと、前記ターゲットカバーに結合されるターゲットトレイと、それぞれが前記器具の前記1つ以上の受入フェイスの対応する1つ内に配置される1つ以上の縫合糸ファスナーと、それぞれが前記1つ以上のスネアガイドの対応する1つに巻かれた1つ以上のスネアループと、前記1つ以上のスネアループに結合された少なくとも1つのハンドルであって、その移動により、前記1つ以上の縫合糸ファスナーを通して結合された前記1つ以上のスネアループを引くように構成されたハンドルと、を有する。
【0011】
圧着器具用の装填ツールも開示されている。この装填ツールは、1つ以上のスネアガイドを画成するターゲットカバーと、前記ターゲットカバーに結合されたターゲットトレイ と、1つ以上の縫合糸ファスナーと、それぞれが前記1つ以上のスネアガイドの対応する1つに巻かれた1つ以上のスネアループと、前記1つ以上のスネアループに結合された少なくとも1つのハンドルと、を備えており、前記少なくとも1つのハンドルが前記1つ以上の縫合糸ファスナーに対して移動することにより、前記少なくとも1つのハンドルが前記1つ以上の縫合糸ファスナーを通して結合された前記1つ以上のスネアループを、引くように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】一実施形態の装填ツールを有する、縫合糸ファスナーを圧着するための器具の一実施形態を、右上かつ先端側から見た斜視図である。
【0013】
図1B図1Aの圧着器具および装填ツールを右下かつ先端側から見た斜視図である。
【0014】
図2A図1Aの装填ツールのターゲットカバーの上面図である。
図2B】同ターゲットカバーの左側面図である。
図2C】同ターゲットカバーの右側面図である。
図2D】同ターゲットカバーの下面図である。
図2E】同ターゲットカバーを先端側から見た図である。
図2F】同ターゲットカバーを基端側から見た図である。
【0015】
図3A図1Aの装填ツールのターゲットトレイの上面図である。
図3B】同ターゲットトレイの左面図である。
図3C】同ターゲットトレイの右面図である。
図3D】同ターゲットトレイの下面図である。
図3E】同ターゲットトレイを先端側から見た図である。
図3F】同ターゲットトレイを基端側から見た図である。
【0016】
図4A】装填ツールを有する圧着器具の一連の組立の最初の段階を示す分解図である。
図4B】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4C】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4D】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4E】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4F】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4G】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4H】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4J】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4K】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4L】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4M】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4L】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4M】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4N】同組立の次の段階を示す分解図である。
図4P】同組立の次の段階を示す分解図である。
【0017】
図5A】装填ツールを用いて縫合糸を圧着器具に装填する使用例を示す図である。
図5B】同使用例を示す図である。
図5C】同使用例を示す図である。
図5D】同使用例を示す図である。
図5E】同使用例を示す図である。
図5F】同使用例を示す図である。
図5G】同使用例を示す図である。
図5H】同使用例を示す図である。
【0018】
図6A】外科用圧着器具用の装填ツールの別の実施形態を示す部分分解図である。
図6B】同実施形態を示す部分分解図である。
図6C】同実施形態を示す部分分解図である。
【0019】
図7】外科用圧着器具用の装填ツールのさらなる実施形態を示す図である。
【0020】
明確にするために、そして適切であると思われる場合、対応するフィーチャを示すために参照番号が図で繰り返されており、図面の様々な要素は、フィーチャをより良く示すために必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1Aは、縫合糸ファスナーを圧着するための器具20の一実施形態を右上かつ先端側から見た斜視図である。この圧着器具20(crimping instrument)は、装填ツール22(loading tool)を有している。図1Bは、図1Aの圧着器具20および装填ツール22を右下かつ先端側から見た斜視図である。装填ツール22は、ターゲットカバー24とターゲットトレイ26を有している。
【0022】
本実施形態では、圧着器具20は複数のシャフト28を有しており、これらシャフト28の先端は、それぞれ、縫合糸ファスナーを受け入れるように構成された受入フェイス(receiving face;この図では見えないが、後述する)を保持する。圧着器具はまた、ユーザが保持できるハンドル30と、レバー32とを有する。レバー32は、必要に応じて、器具により保持された縫合糸ファスナーを圧着するために、器具20内の構造を作動させるべく、ハンドル30に対して移動可能である。これを可能にする構造については、詳しく後述する。
【0023】
図2A、2B、2C、2D、2E、2Fは、それぞれ、図1Aの装填ツール22のターゲットカバー24の上面図、左側面図、右側面図、下面図、先端側から見た図、および基端側から見た図である。ターゲットカバー24は、複数のスネアガイド34を画成する。ターゲットカバー24はまた、複数の縫合糸用開口36を画成し、これらの開口のそれぞれは、1または複数のスネアガイド34の対応する1つの中に、少なくとも部分的に存在する。ターゲットカバー24はさらに、1または複数の縫合糸用開口36のそれぞれに結合された(または連通された)縫合糸用クリアランススロット38を画成する。ターゲットカバー24はまた、結合ラッチ40を有する。
【0024】
図3A、3B、3C、3D、3E、3Fは、それぞれ、図1Aの装填ツール22のターゲットトレイ26の上面図、左側面図、右側面図、下面図、先端側から見た図、および基端側から見た図である。ターゲットトレイ26は、複数の縫合糸用開口42を画成する。本実施形態のターゲットトレイ26はまた、複数のスネアチャネル44を画成する。ターゲットトレイ26はまた、結合ラッチ46を有する。
【0025】
図4A~4Pは、装填ツールを有する圧着器具の一連の組立を示す分解図である。図番4Iと4Oは、見た目が似た数字との混同を避けるために使用していないことに留意されたい。
【0026】
図4Aに示されるように、複数のシャフト28は、シャフト28の基端28Pでシャフトスペーサー48に結合されている。受入フェイス50が、シャフト28の先端28Dに配置される。各受入フェイス50には、ハンマー52とアンビル54が結合されている。
【0027】
図4Bに示されるように、複数のプッシャー56が、基端56Pで駆動リンク58に結合されている。各プッシャー56の先端56Dは楔チップ60(ウエッジチップ;wedge tip)を有している。この楔チップ60は、器具が組み立てられて使用される時に、対応するハンマー52に乗るようになっている。本実施形態では、切断ブレード62も各プッシャー56の先端56Dに結合されている。
【0028】
図4Cに示されるように、図4Bのプッシャーアセンブリ56Aが、図4Aのシャフトアセンブリ28Aの基端28Pに挿入される。
【0029】
図4Dに示されるように、異なるシャフトスペーサー64が、シャフト28の先端28Dに配置される。プッシャー56に結合された駆動リンク58は、レバー32内のレシーバ66に結合される。一方、レバー軸68は、第1ハウジング半体72のボス70内に配置される。第1ハウジング半体72は、シャフトスペーサー48とも係合する。
【0030】
図4Eに示されるように、付勢要素74(この例では、スプリング)は、レバー32をハウジングの係止部78に向かって付勢するために、ポスト76とレバー32との間に接続されている。第2ハウジング半体80は、第1ハウジング半体72に結合される。第2ハウジング半体80は、レバー32の他の軸82と係合するための同等のボス(この図には見えない)を有している。
【0031】
本実施形態では、図4Fに示すように、上下のスタビライザー構成要素84A、84Bを含むシャフトスタビライザーが、露出したシャフト28の一部の周りに結合されている。
【0032】
図4Gに示されるように、スライド可能なハンドル86が、シャフトスペーサー88と共に、シャフト28の先端28D上でスライドされる。
【0033】
ターゲットカバー24が図4Hに示されている。本実施形態では、3対のターゲットカバーの縫合糸用開口36A、36B、36Cがあることに留意されたい。ターゲットカバーの縫合糸用開口36A、36B、36Cの各対は、基端側の縫合糸用開口90と先端側の縫合糸用開口92を有している。図2A~2Fについて前述したように、各縫合糸用開口は対応するスネアガイドを有している。したがって基端側の縫合糸用開口90は、対応する基端側のスネアガイド94を有する(そのうちの1つのみが図4Hで容易に見ることができる)。同様に、先端側の縫合糸用開口92は、対応する先端側のスネアガイド96を有する。図4Hに示されるように、スネアワイヤ98は、第1のスネアガイド対の先端側スネアガイド96の周りに巻き付けられて、スネアループ98Lを形成する。図4Jに示されるように、スネアワイヤ98の端部98Eが一緒に捩られて、スネアループ98Lが完成する。スネアガイド96、94のそれぞれの周りにスネアループを形成する工程が繰り返され、その結果として本実施形態では図4Kに示されるように、6つのスネアループと6つの捩られたスネアワイヤ端部98Eが得られる。捩られたワイヤ端部98Eのそれぞれは、プレジェット100に通される。第1の捩られた端部102は、第1のスネアループ対の先端側スネアループに結合されている。第2の捩られた端部104は、第1のスネアループ対の基端側スネアループに結合されている。第3の捩られた端部106は、第2のスネアループ対の先端側スネアループに結合されている。第4の捩られた端部108は、第2のスネアループ対の基端側スネアループに結合されている。第5の捩られた端部110は、第3のスネアループ対の先端側スネアループに結合されている。第6の捩られた端部112は、第3のスネアループの基端側スネアループに結合されている。
【0034】
図4Lに示されるように、第1、第2の捩られた端部102、104は、プレジェット100より基端側でさらに一緒に捩られて、第1対のスネアワイヤ114になる。図4Mに示されるように、第3、第4の捩られた端部106、108は、プレジェット100より基端側でさらに一緒に捩られて、第2対のスネアワイヤ116になる。同様に、第5、第6の捩られた端部110、112は、プレジェット100より基端側でさらに一緒に捩られて、第3対のスネアワイヤ118になる。
【0035】
次に、図4Nに示されるように、捩られたスネアワイヤ114、116、118は、それぞれ圧着可能なファスナー120に通される。圧着可能なファスナー120は、対応する受入フェイス50に着座している。捩られたスネアワイヤ114、116、118は、対応するスロット122から出て、スライドハンドル86のチャネル124に通される。捩られたスネアワイヤ114、116、118は、この実施形態では、留め具126を用いてスライディングハンドル86に結合される。このようにしてハンドル86は複数のスネアループに結合され、ハンドルの動き(この例では、基端側に向かう方向)により縫合糸用ファスナー120を通してスネアループを引くようになっている。ターゲットカバー24の結合ラッチ40は、シャフト28の周りに結合され、これによりターゲットカバー24を所定の位置に保持している。
【0036】
図4Pに示されるように、ターゲットトレイ26はターゲットカバー24の下に位置合わせされ、スネアループが予定より早くスネアループガイドから脱落するのを防ぐ。ターゲットトレイ26の結合ラッチ46は、シャフト28の周りに結合され、これによりターゲットトレイを所定の位置に保持している。
【0037】
図5A~5Hは、装填ツール22を用いて、縫合糸が圧着器具に装填される使用例の一実施形態を示す。図5A~5Cに示されるように、第1の縫合糸端部128、第2の縫合糸端部130、第3の縫合糸端部132、第4の縫合糸端部134、第5の縫合糸端部136、第6の縫合糸端部138が、それぞれ縫合糸用開口140、142、144、146、148、150に通される。次に、図5Dに示されるようにターゲットカバー24が取り外され、ターゲットトレイ26と基端側スネアループ152と先端側スネアループ154が露出される。これが可能であるのは、縫合糸用クリアランススロット38(図5Cに見られる)が、縫合糸128、130、132、134、136、および138を通すことができるからである。図5Eに示されるように、ハンドル86が、基端側方向156に移動される。これにより、基端側スネアループ152と先端側スネアループ154が、器具の先端に保持された縫合糸ファスナー(この図には見えない)に向かって引っ張られる。スネアループ152、154がハンドル86の動きによってファスナーを通して引っ張られると、捕らえられている縫合糸128、130、132、134、136、および138もファスナーを通して引っ張られる。基端側および先端側のスネアループが互い違いに配置されているこのような実施形態は、異なる縫合糸が異なる時間に縫合糸ファスナーを通して引っ張られることを可能にし、それによって圧着可能なファスナーのサイズをより小さくすることを可能にする。
【0038】
図5Fは、ハンドル86がより基端側に移動され、それにより、基端側スネアループが引っ張られて既に縫合糸ファスナーを通過し、先端側スネアループ154が縫合糸ファスナーを通過している状態を示す。
【0039】
図5Gでは、縫合糸128、130、132、134、136、138は、プレジェット100だけでなく3つの縫合糸ファスナーにも通されて、完全に捕らえられている。この図では縫合糸ファスナーは見えないが、各シャフト28の先端28Dに1つの縫合糸ファスナーがある。縫合糸128、130は、第1の縫合糸ファスナーを通る。縫合糸132、134は、第2の縫合糸ファスナーを通る。縫合糸136、138は、第3の縫合糸ファスナーを通る。図5Hでは、器具はひっくり返されて示されており、これによりシャフト28の下側のスロット122から出た縫合糸128、130の対、縫合糸132、134の対、縫合糸136、138の対が見られる。この時点で、縫合糸を必要に応じて引っ張ることができる。器具のレバーを絞ってプッシャーを基端側に動かし、それによって楔チップがハンマーをアンビルに向かって押圧し、縫合糸ファスナーをハンマーとアンビルとの間で圧着し、その結果、縫合糸を縫合糸ファスナー内に固定することができる。プッシャーに取り付けられた切断ブレードは、スロット122から出た縫合糸の端部を切断することができる。
【0040】
図6A~6Cは、外科用圧着器具に用いられる装填ツール158の別の実施形態を部分的に分解して示す図である。本実施形態は、ハンドルを除いて前述の実施形態と同様である。本実施形態では、捩られたスネアワイヤ114、116、118にそれぞれ結合された3つの別個のハンドル160が装備されている。器具が再装填されるか、またはユーザに装填されることが望まれる状況において、これら別々のハンドル160は、各受入フェイス50に1つずつエンドユーザによってより容易に装填される。図6Bに示されるように、ハンドルが器具に装填された後、ターゲットカバー24を器具にスナップ装着することができ、ターゲットトレイ26を器具にスナップ装着してターゲットカバー24を覆うことができる。図6Cは、その結果を示している。
【0041】
図7は、外科用圧着器具に用いられる装填ツール162のさらなる実施形態を示している。前の実施形態は3対のスネアループを有していた。本実施形態は1対のスネアループを有する。さらに他の実施形態では、ただ1つのスネアループまたは奇数のスネアループを有してもよい。さらに他の実施形態では、それぞれが縫合糸ファスナーから実質的に等距離に離れたスネアループを有し、基端側スネアループと先端側スネアループとに識別できないようにしてもよい。
【0042】
圧着器具およびその装填ツールの様々な利点を論じてきた。ここで論じられた実施形態は、本明細書の例として説明されている。前述の詳細な開示は、例としてのみ提示されることを意図しており、限定するものではないことは、当業者には明らかであろう。本明細書に明示的に記載されていないが、種々の変更、改善、および修正が、当業者により試みられるであろう。これらの変更、改善、および修正は、ここに示唆されており、クレームされた発明の精神および範囲内にある。さらに、記載された要素を処理する順序またはシーケンス、数、文字、または他の符号は、特許請求の範囲で指定されている場合を除き、いかなる順序を限定することを意図しない。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図4J
図4K
図4L
図4M
図4N
図4P
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図7