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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】極柱アセンブリ、電池セル及び電気設備
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/342 20210101AFI20240502BHJP
   H01M 50/375 20210101ALI20240502BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240502BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240502BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20240502BHJP
【FI】
H01M50/342 101
H01M50/375
H01M50/184 A
H01M50/188
H01M50/198
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022024256
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2022065131
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】202120649284.2
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】沈 陽
【審査官】浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-067840(JP,A)
【文献】特開2002-203529(JP,A)
【文献】特開2011-238412(JP,A)
【文献】特開2012-094250(JP,A)
【文献】特開2001-229904(JP,A)
【文献】特開2006-012814(JP,A)
【文献】特開2015-185225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00~50/198
H01M 50/30~50/392
H01M 50/50~50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルに適用される極柱アセンブリであって、
極柱と、熱変形部材と、固定具と、を備え、前記熱変形部材は、前記極柱を取り囲むように設けられ、且つ前記極柱と固定され、
前記固定具は、貫通孔を有し、前記貫通孔を介して前記熱変形部材を取り囲むように設けられ、且つ前記熱変形部材と固定され、
前記熱変形部材は、温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記貫通孔内に、前記貫通孔の両端にそれぞれ連通する圧力逃がし通路が形成されるように変形し、
前記熱変形部材は、絶縁材であり、前記固定具は、前記貫通孔の軸方向に沿って、前記熱変形部材の両端の間に位置することを特徴とする極柱アセンブリ。
【請求項2】
前記極柱の軸方向に沿って、前記極柱の第1端が前記熱変形部材と前記固定具からはみ出していることを特徴とする請求項1に記載の極柱アセンブリ。
【請求項3】
前記第1端に固定された導電端子をさらに備え、前記導電端子の前記極柱に面する端面は、前記極柱の端面よりも大きく、且つ前記極柱を完全に覆うことを特徴とする請求項に記載の極柱アセンブリ。
【請求項4】
前記端面は、角丸矩形又は矩形を呈し、前記端面の幅と前記固定具の端面の最大リニア寸法との差が4mm未満とされていることを特徴とする請求項に記載の極柱アセンブリ。
【請求項5】
前記極柱が金属を含むこと、及び/又は、前記熱変形部材がポリエチレン、ポリプロピレン、若しくはポリプロピレンエチレンを含むこと、及び/又は、前記固定具が金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の極柱アセンブリ。
【請求項6】
前記熱変形部材は、温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記貫通孔内に前記圧力逃がし通路が形成されるように、溶融または収縮することを特徴とする請求項1に記載の極柱アセンブリ。
【請求項7】
ケースと電極アセンブリとを含み、前記ケースには、前記電極アセンブリを収容する収容キャビティを有するとともに、前記収容キャビティ及び前記電池セルの外界環境にそれぞれ連通する開口が設けられており、
前記電池セルは、請求項1~のいずれか一項に記載の極柱アセンブリをさらに備え、前記固定具が前記開口に取り付けられ、前記極柱の第1端は前記外界環境に露呈し、前記極柱の第2端は前記電極アセンブリと電気的に接続されていることを特徴とする電池セル。
【請求項8】
前記開口の形状は、前記固定具の形状に適合するように構成されることを特徴とする請求項に記載の電池セル。
【請求項9】
電池セルであって、
ケースと電極アセンブリとを含み、前記ケースには、前記電極アセンブリを収容する収容キャビティを有するとともに、前記収容キャビティ及び前記電池セルの外界環境にそれぞれ連通する開口が設けられており、
前記電池セルは、極柱アセンブリをさらに備え、
前記極柱アセンブリは、前記開口に取り付けられ、且つ極柱、熱変形部材及び前記熱変形部材に固定される固定具を含み、前記極柱の第1端は前記外界環境に露呈し、前記極柱の第2端は前記電極アセンブリと電気的に接続され、
前記固定具は、貫通孔を有し且つ前記貫通孔を介して前記熱変形部材を取り囲むように設けられ、
前記熱変形部材は、前記極柱を取り囲むように設けられ、且つ前記極柱と前記開口の内壁との間に位置し
前記熱変形部材は、絶縁材であり、前記固定具は、前記貫通孔の軸方向に垂直な断面が非円形状をなし、
前記熱変形部材は、温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記貫通孔内に圧力逃がし通路が形成されるように、溶融または収縮することを特徴とする電池セル。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の極柱アセンブリ、または、請求項のいずれか一項に記載の電池セルを備えることを特徴とする電気設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池技術分野に関し、特に、極柱アセンブリ、電池セル、及び電気設備に関する。
【背景技術】
【0002】
電池セルは、外部のエネルギーを電気エネルギーに変換してその内部に蓄え、携帯電子機器等の外部機器に必要なタイミングで給電する装置である。現在、バッテリーは、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等の電子製品に広く用いられている。
【0003】
電池セルは、高温条件又は短絡発生中に熱が絶えず発生し、電池セル内部の熱が絶えず蓄積され、さらに熱暴走して内部で高温高圧のガスが発生する可能性があり、このようなガスを即座に排出しないと、膨れにより爆発等の安全事故を引き起こす可能性がある。そこで、現時点では、電池セルの温度が所定の温度よりも高くなる時に、前記ガスを排出できるような電池セルを提供し、電池セルの安全性能を完備させる必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、現在の電池セルが特定の温度を超える温度で内部ガスを速やかに排出できない現状を改善するために、極柱アセンブリ、電池セル、および電気設備を提供することを目的とする。
【0005】
本願の実施形態は、上記の技術課題を解決するために、以下の手段を講じた。
【0006】
電池セルに適用される極柱アセンブリであって、極柱と、熱変形部材と、固定具と、を備える。そのうち、熱変形部材は、前記極柱を取り囲むように設けられ極柱を取り囲むように設けられ、且つ前記極柱と固定されている。固定具は、貫通孔を有し、前記貫通孔を介して前記熱変形部材を取り囲むように設けられ、且つ前記熱変形部材と固定される。前記熱変形部材は、温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記貫通孔内に、前記貫通孔の両端にそれぞれ連通する圧力逃がし通路が形成されるように、変形する。
【0007】
上記態様の更なる改良態様として、前記熱変形部材は、絶縁材であり、前記固定具は、前記貫通孔の軸方向に沿って、前記熱変形部材の両端の間に位置する。
【0008】
上記態様の更なる改良態様として、前記固定具は、前記貫通孔の軸方向に垂直な断面が非円形状をなす。
【0009】
上記態様の更なる改良態様として、前記極柱の軸方向に沿って、前記極柱の第1端が前記熱変形部材と前記固定具からはみ出している。
【0010】
上記態様の更なる改良態様として、前記第1端に固定された導電端子をさらに備え、前記導電端子の前記極柱に面する端面は、前記極柱の端面よりも大きく、且つ前記極柱を完全に覆う。
【0011】
上記態様の更なる改良態様として、前記端面は、角丸矩形又は矩形を呈し、前記端面の幅と前記固定具の端面の最大リニア寸法との差が4mm未満とされている。
【0012】
上記態様の更なる改良態様として、前記極柱が金属を含むこと、及び/又は、前記熱変形部材がポリエチレン、ポリプロピレン、若しくはポリプロピレンエチレンを含むこと、及び/又は、前記固定具が金属を含むことが挙げられる。
【0013】
上記態様の更なる改良形態として、前記熱変形部材は、温度が所定の閾値よりも高い場合に、前記貫通孔内に前記圧力逃がし通路が形成されるように、溶融または収縮する。
【0014】
本願他の実施形態は、さらに、ケースと電極アセンブリとを含む電池セルを提供し、前記ケースには、前記電極アセンブリを収容する収容キャビティを有するとともに、前記収容キャビティ及び前記電池セルの外界環境にそれぞれ連通する開口が設けられている。前記電池セルは、上記のいずれかの極柱アセンブリをさらに備える。前記固定具が前記開口に取り付けられ、前記極柱の第1端が前記外界環境に露呈し、前記極柱の第2端が前記電極アセンブリと電気的に接続されている。
【0015】
上記態様の更なる改良態様として、前記開口の形状は、前記固定具の形状に適合するように構成される。
【0016】
本願のさらに他の実施形態に係る電池セルは、ケースと電極アセンブリとを含み、前記ケースには、前記電極アセンブリを収容する収容キャビティを有するとともに、前記収容キャビティ及び前記電池セルの外界環境とそれぞれ連通する開口が設けられている。前記電池セルは、極柱アセンブリをさらに備える。前記極柱アセンブリは、前記開口に取り付けられ、且つ極柱及び熱変形部材を含む。前記極柱の第1端が前記外界環境に露呈し、前記極柱の第2端が前記電極アセンブリと電気的に接続されている。前記熱変形部材は、前記極柱を取り囲むように設けられ極柱を取り囲むように設けられ、且つ前記極柱と前記開口の内壁との間に位置している。
【0017】
本願の他の実施形態は、さらに、上記のいずれかの極柱アセンブリ、または、上記のいずれかの電池セルを備える電気設備を提供する。
【0018】
本願の有益な効果は、次の通りである。本願実施形態によって提供される極柱アセンブリは、極柱と、熱変形部材と、固定具とを備える電池セルに適用される。ここで、熱変形部材は、極柱を取り囲むように設けられ極柱を取り囲むように設けられ、且つ極柱と固定される。固定具には、貫通孔が設けられ、固定具は、貫通孔によって上記熱変形部材に被せられ、且つ当該熱変形部材と固定される。熱変形部材は、温度が所定の閾値よりも高い場合に、貫通孔内に、貫通孔の両端にそれぞれ連通する圧力逃がし通路を形成するように、変形するように構成される。
【0019】
現在市販されている電池セルと比較して、本願実施形態による極柱アセンブリは、電池セルに適用される時に、その内部の熱変形部材が電池セルの温度が所定の閾値を上回った場合に変形し、さらに、固定具の貫通孔内に圧力逃がし通路が形成されることにより、電池セル内の気体を外部に排出することができ、電池セルの爆発の安全リスクを低減することができる。即ち、本願実施形態によって提供される極柱アセンブリは、現在の電池セルは温度が特定の温度より高い場合に、内部ガスを速やかに排出できない現状を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
1つ又は複数の実施形態はそれに対応する図面によって例示的に説明されたものであり、これらの例示的な説明は実施形態を限定するものではない。図面中の同一符号を付した要素は、類似の要素を示す。特に明記しない限り、図面中の図面は比例制限を受けない。
【0021】
図1】本願の一実施形態に係る電池セルの一方向の断面模式図である。
図2図1における極柱アセンブリの一方向の断面模式図である。
図3図1における極柱アセンブリの他の方向での投影を示す図である。
図4】本願の一実施形態に係る電気設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願の理解を容易にするため、添付図面及び具体的な実施形態を組み合わせて、本願をより詳細に説明する。なお、ある部品が他の部品に「固定された」/「固着された」/「装着された」と表現される場合には、それらが他の部品に直接存在してもよく、あるいはその間に1つまたは複数の中間媒体が存在してもよい。一方の部品が他方の部品に「接続される」と表現する場合、それが他方の部品に直接接続されてもよいし、その間に1つまたは複数の中間媒体が存在してもよい。本明細書で使用される用語「垂直」、「水平」、「左」、「右」、「内」、「外」およびそれに類似する表現は、説明の目的のためにのみ使用される。
【0023】
別に定義がない限り、本明細書において用いられるすべての技術及び科学用語は、本願の技術分野に属する当業者が通常理解する意味合いと同義である。本願明細書において用いられる用語は、具体的な実施形態を記述する目的のみであり、本願を制限するものではない。本明細書で使用される用語「及び/又は」は、1つまたは複数の関連する列挙されたアイテムの任意およびすべての組合せを含む。
【0024】
また、以下に記述する本願の異なる実施形態に係る技術的特徴は、互いの間で競合を構成しない限り、互いに組み合わせもよい。
【0025】
本明細書において、「装着」とは、ある部品又は装置を溶接、螺着、係着、接着等の手段によって特定の位置又は場所に固定又は制限することを含む。前記部品又は装置は、特定の位置又は場所に不動のままでも限定的な範囲内で動いてもよい。前記部品又は装置は、特定の位置又は場所に固定又は制限された後に取り外し可能であっても取り外し不能であってもよく、本願実施形態では制限されない。
【0026】
図1図3は、本発明の一実施形態に係る電池セル1の断面模式図、極柱アセンブリの一方向に沿う断面模式図、及び極柱アセンブリの下から上への投影模式図を示す。電池セル1は、ケース100、電極アセンブリ200、及び極柱アセンブリ300を含む。ここで、ケース100の内部には、収容キャビティ101が設けられているとともに、収容キャビティ101及び電池セル1の外界環境とそれぞれ連通する開口102が設けられている。電極アセンブリ200は、収容キャビティ101内に収容される。極柱アセンブリ300は、上記の開口102に取り付けられ、且つ一端が電極アセンブリ200と電気的に接続され、他端が上記の外界環境に剥き出しにされて、電池セル1の外部端子を形成するものである。
【0027】
上記のケース100については、図1に示すように、ケース100は、全体として扁平な直方体状をなし、その内部に、電極アセンブリ200及び電解液を収容するための収容キャビティ101が設けられている。さらに、ケース100には、上述した収容キャビティ101と電池セル1の外界環境とを連通させる開口102がさらに開口されている。開口102は、上述した極柱アセンブリ300を取り付けるために用いられる。本実施形態において、電池セル1は、スチールシェル電池セルであり、即ち、ケース100は、スチールシェルであるが、本願の他の実施形態では、電池セル1は、他のタイプの硬質ケースの電池セルであってもよい。例えば、ケース100は、アルミケース等の他の金属ケースであってもよい。
【0028】
上記の電極アセンブリ200については、図1に示すように、上記の収容キャビティ101に収容され、且つ積層して設けられた第1電極シート(図示せず)と、第2電極シート(図示せず)と、セパレートフィルム(図示せず)とを備えている。ここで、第1電極シートと第2電極シートとは、極性が逆であり、且つ間隔をあけて設けられる。両者の中の一方の電極シートは正極シートであり、他方の電極シートは負極シートである。セパレートフィルムは、上述した2つの電極シートの間に配置されて、この両者を隔てるために使用される。上記の収容キャビティ101に収容されるように、第1電極シート、第2電極シートおよびセパレートフィルムは、積層して配置されて、断面が長円形の柱状構造に巻回されている。なお、本実施形態における電極アセンブリ200が捲回型電極アセンブリであるが、本願はこれに限定されるものではない。本願の他の実施形態では、電極アセンブリ200は積層型電極アセンブリであってもよい。ケース100内には、さらに、電解液が充填されており、この電極アセンブリ200は電解液に浸潤されている。電解液は、リチウムイオンが伝導する環境を提供し、第1電極シート又は第2電極シートにリチウムイオンを適時に吸蔵させることができ、電池セル1の充放電過程を実現している。
【0029】
上記の極柱アセンブリ300については、具体的に図2図3を参照しながら図1を参照すると、当該極柱アセンブリ300は、前述の開口102に取り付けられ、且つ極柱310と、熱変形部材320と、固定具330とを含む。ここで、熱変形部材320は、極柱310を取り囲むように設けられ、且つ極柱310と固定される。固定具330には、貫通孔301が設けられている。固定具330は、この貫通孔301を介して熱変形部材320を取り囲むように設けられ、且つ熱変形部材320と固定される。熱変形部材320は、温度が所定の閾値よりも高い場合に、貫通孔301内に貫通孔301の両端にそれぞれ連通する圧力逃がし通路が形成されるように、変形するように構成される。これにより、電池セル1の温度が所定の閾値よりも高くなると、その内部で発生する高圧ガスを上記の圧力逃がし通路を通じて電池セル1の外界環境に排出することができ、ひいては、電池セル1の膨れを回避して、電池セル1の爆発のリスクを低減又は解消できる。なお、本願でいう「所定の閾値」とは、電池セル1の温度は、熱変形部材320が固定具330の貫通孔301内に圧力逃がし通路が形成されるようにぴったり変形する時の温度値まで上昇することをいう。電池セルの温度が所定の閾値よりも高いときに、圧逃がし通路は既に形成されている。所定の閾値とは、電池セル1の通常動作温度よりも高く、かつ、電池セル1の熱暴走温度より低い温度の値である。即ち、電池セル1が通常の作動状態にあるときに、通常の作動時に上記の圧力逃がし通路が形成されないように、電池セル1は所定の閾値よりも低い温度にある。電池セル1が熱暴走状態にあるときに、熱暴走時に電池セル1から内部ガスが速やかに排出できないことを防止するために、電池セル1は所定の閾値よりも高い温度にある。なお、本願で言う「変形」とは、具体的には、熱溶融及び収縮の形態を含む。
【0030】
極柱310は、全体として導電性材料からなる柱状をなしている。本実施形態では、極柱310は、金属を含んでいるが、もちろん、本願の他の実施形態では、導電可能な非金属を含んでいてもよいし、金属と非金属との両方を含んでいてもよい。極柱310の軸方向に沿って、その第1端311が熱変形部材320及び固定具330を超えて、電池セル1の外部に露呈して、外部の電気的負荷との電気的接続を容易にする。第2端312は、上記の収容キャビティ101内に進入し、かつ、極柱310が電池セル1の一方の外部端子を構成するように電極アセンブリ200の一方の電極シートと電気的に接続される。また、電極アセンブリ200における他方の電極シートは、ケース100全体として電池セル1の他方の外部端子を構成するように、ケース100と電気的に接続されている。ここで、第1端311と第2端312とは、極柱310の軸方向に沿った対向する両端である。
【0031】
熱変形部材320は、本願の圧力逃がし機能を有する極柱アセンブリ300のコア部品であり、全体として筒状の構造をなし、且つ極柱310を取り囲むように設けられ且つ極柱310と固定されている。上記の筒状構造は、円筒形に限られず、角筒形、又は、断面が多角形の筒状構造であってもよい。熱変形部材320は、比較的に融点の低い素材で形成されることで、電池セル1の熱暴走前に溶融または収縮などの変形が起こりやすく、さらに、貫通孔301内に気体を逃がすための圧力逃がし通路を形成している。幾つかの実施形態では、電池セル1の通常動作温度が100℃未満であり、熱暴走温度が150℃であるが、熱収縮による圧力リークが可能な点を考慮して、熱変形部材320は融点が110℃~170℃の間の材料からなることが好ましい。熱変形部材320は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンエチレンのいずれか、又はこれらの材料の混合物からなる。
【0032】
固定具330は、極柱アセンブリ300の取付固定部品であり、全体としても筒状をなしており、上述した貫通孔301が設けられている。固定具330は、貫通孔301の内壁を介して熱変形部材320の外面に嵌合されると共に、その外壁を介して開口102に取り付けられている。熱変形部材320と極柱310、固定具330との間は、ホットメルト接続により固定される。もちろん、本願の他の実施形態では、上述した極柱310と、熱変形部材320と、固定具330とは、射出成型により一体成型されてもよい。具体的には、極柱310と固定具330とは、射出成形金型の中にインサートとして配置される。射出成形金型は、上述したポリエチレン(又はポリプロピレン/ポリプロピレンエチレン)を射出して極柱アセンブリ300を成型する。本実施形態では、固定具330は、金属からなり、溶接によりケース100に固定され、ケース100に装着される一方で、開口102のシールが実現される。好ましくは、固定具330が極柱310に接触することに起因する電池セル1の正負極の短絡を防止するために、上述の熱変形部材320は、絶縁材である。これと同時に、固定具330の両端は、貫通孔301の長軸方向に沿って、熱変形部材320の両端の間に位置する。
【0033】
好ましくは、固定具330がケース100に対して回動することを回避して、固定具330とケース100との固定効果を破壊することを防止するために、固定具330は、上記の貫通孔301の軸方向に垂直な断面の外郭が、非円形、例えば、長方形、正方形、菱形、五角形等を呈する。これ相応に、上記の開口102は、固定具330の形状にマッチングしている。即ち、断面が上記の固定具330に適合する非円形に形成される。このように、固定具330が開口102に取り付けられた後、開口102の内壁が固定具330の回動を好適に阻止して、上記の目的を達成する。更に好ましくは、熱変形部材320が固定具330に対して回転し、さらに、熱変形部材320と固定具330との固定効果が損なわれることを防止するために、熱変形部材320の貫通孔301の軸方向に垂直な断面の外郭が非円形とされた。これ相応に、貫通孔301の形状は、熱変形部材320にマッチングする。さらに好ましくは、極柱310が熱変形部材320に対する回動を回避し、さらに、極柱310と熱変形部材320との固定効果を破壊することを防止するために、極柱310の貫通孔301の軸方向に垂直な断面の外郭が非円形とされた。これ相応に、熱変形部材320の内孔の形状は、極柱310にマッチングしている。
【0034】
さらに、極柱アセンブリ300が外界負荷と接触できる面積を大きくするために、極柱アセンブリ300は導電端子340をさらに備えている。具体的には、図2に示すように、導電端子340は、扁平の板状構造をなし、極柱310の第1端に固定される。導電端子340は、極柱310の軸方向に沿って対向して設けられた2つの端面341を有する。導電端子340の極柱310に向かう一方の端面341は、極柱310の端面よりも大きく、且つ極柱310を完全に覆う。即ち、導電端子340の断面積の全体は、極柱310の断面積よりも大きくなるように設けられることで、極柱アセンブリ300における負荷と電気的に接続するための領域が効果的に広げられた。また、極柱310の第1端311は、導電端子340と貫通孔301との間に一定の隙間を有するように、熱変形部材320と固定具330を超えて設けられているので、電池セル1内の気体が排出する時に外へスムーズに放出されることができる。導電端子340は、かしめ、切削などのプロセスにより、極柱310と一体成形されていてもよい。なお、本願の他の実施形態では、導電端子340と極柱310とは別体で成形されて、溶接などにより固定されていてもよい。また、導電端子340の端面341は、矩形または丸角矩形である。導電端子340の端面341が大きすぎると、溶接装置のヘッドが開口102の縁に入り込んで溶接工程を行なうことが困難になってしまうため、本実施形態では、端面341の幅寸法と固定具330の最大リニア寸法との差が4mm未満となっている。即ち、端面341の幅方向に沿って、導電端子340の一辺が固定具330を超える寸法は、2mm未満である。
【0035】
本願の実施形態に係る電池セル1は、ケース100と、電極アセンブリ200と、極柱アセンブリ300とを備えている。そのうち、極柱アセンブリ300は、極柱310、熱変形部材320及び固定具330を含む。熱変形部材320と固定具330は、極柱310の外周に内から外へこの順で環設される。熱変形部材320は、温度が予め設定された閾値よりも高くなると変形して、貫通孔301内に当該貫通孔301の両端とそれぞれ連通する圧力逃がし通路を形成するように構成される。
【0036】
現在市販されている電池セルと比較して、本願の実施形態による電池セル1の内部の熱変形部材320は、電池セルの温度が所定の閾値を上回った場合に変形し、固定具330の貫通孔301内に圧力逃がし通路を形成することにより、電池セル1内のガスを外部に排出させて、電池セルの爆発の安全リスクを低減することができる。即ち、本願の実施形態によって提供される電池セルは、現在の電池セルは温度が特定の温度より高い場合に、内部ガスを速やかに排出できない現状を改善することができる。
【0037】
なお、上記の実施形態では、電池セル1の極柱アセンブリ300が、極柱310と熱変形部材320と固定具330とを同時に備えていたが、本願はこれに限定されるものではなく、固定具330は省略できる場合がある。例えば、本願の他の幾つかの実施形態では、電池セル1における極柱アセンブリは、上述の極柱と熱変形部材のみを備えていてもよい。この場合、極柱の第1端はケースの外に露出し、極柱の第2端はケース内に進入し、熱変形部材は極柱を取り囲むように設けられ且つ極柱と開口の内壁との間に位置する。こうすれば、当該極柱アセンブリを含む電池セルは、従来の電池セルがある特定の温度よりも温度が高くなったときに、内部ガスをタイムリーに排出できない現状を改善することができる。
【0038】
同一の発明思想のもと、本願は、極柱アセンブリをさらに提供している。図1乃至図3に示すように、当該極柱アセンブリは、上述したいずれの実施形態における電池セル1の極柱アセンブリとも同様の構成を有する。この極柱アセンブリを電池セルに適用した場合、電池セルの温度が所定の閾値を上回った場合に、その内部の熱変形部材が変形し、固定具の貫通孔内に圧力逃がし通路が形成され、電池セル内の気体を外部に放出することで、電池セルの爆発の安全リスクを低減できる。即ち、本願実施形態によって提供される極柱アセンブリは、従来の電池セルがある特定の温度よりも温度が高くなったときに、内部ガスをタイムリーに排出できない現状を改善することができる。
【0039】
同一の発明思想のもと、本願では、上記したいずれかの実施形態に記載されている電池セルを有する電気設備2をさらに提供している。図4は、本願の一実施形態による電気設備2を示している。本実施形態において、電気設備2が携帯電話であるが、他の実施形態では、電気設備2がタブレット、パソコン、ドローン等の他の電力で駆動する必要がある電力使用装置であってもよい。
【0040】
最後に、上記の実施形態は、本願の技術提案を説明するためにのみ使用され、これを制限するものではない。本願の技術思想の下で、上記の実施形態又は異なる実施形態における技術的特徴を互いに組み合わせることが可能であり、そのステップは任意の順序で実現されることができ、上記のような異なる態様の多くの変化が存在し、簡明化のために詳細には提供されない。上記の実施形態を参照して本願について詳細に説明したが、当業者であれば、上記各実施形態に記載された技術案を修正したり、その一部の技術的特徴を同等に置換したりすることができることを理解すべきである。しかし、これらの補正又は置換に対応する発明の本質は、本願発明の範囲から逸脱するものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 電池セル
100 ケース
101 収容キャビティ
102 開口
200 電極アセンブリ
300 極柱アセンブリ
310 極柱
311 第1端
312 第2端
320 熱変形部材
330 固定具
340 導電端子
341 端面
301 貫通孔
図1
図2
図3
図4