(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 279/18 20060101AFI20240502BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20240502BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240502BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240502BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240502BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20240502BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20240502BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240502BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240502BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240502BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240502BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240502BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240502BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C07D279/18
A61K31/5415
A61P3/00
A61P21/00
A61P21/04
A61P17/00
A61P35/00
A61P7/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P33/00
A61P33/02
A61P33/06
A61P31/14
A61P31/18
A61P25/16
A61P9/00
A61P15/00
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022027238
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2019547078の分割
【原出願日】2018-02-16
【審査請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509011385
【氏名又は名称】プロヴファーム ライフ ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェラウド ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】サヤ ババック
(72)【発明者】
【氏名】クエル ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ローラント マリーナ
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-512297(JP,A)
【文献】特表2009-531404(JP,A)
【文献】Cody, Jeremy A.,A convenient one-pot synthesis of ethylene blue,Tetrahedron Letters,2012年07月10日,Vol.53, No.36,pp.4896-4899
【文献】Photochemical & Photobiological Sciences,2015年,Vol.14,No.2,p335-351
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の製造方法であって、
出発物としてフェノチアジンを使用し、以下の工程:
a)フェノチアジンをヨウ素分子で処理する工程と、
b)工程a)から直接的に得られる反応媒体をジメチルアミンで処理する工程と、
を含み、
工程b)において、前記ジメチルアミンは、水、メタノール、エタノー
ルから選択される
1種の溶剤、
又は水、メタノール、エタノールから選択される複数種の溶剤の混合物中の溶液の形で前記反応媒体へと導入され、
工程b)の前に、工程a)から得られる反応媒体を、5℃~50℃の範囲の温度に調節する、方法。
【請求項2】
工程b)において、前記ジメチルアミンは、水溶液の形で前記反応媒体へと導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヨウ素分子での処理を、フェノチアジンを基準にして2.5モル当量~3.5モル当量の範囲のヨウ素分子の量で実施する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジメチルアミンでの処理を、フェノチアジンを基準にして少なくとも7モル当量のジメチルアミンを用いて実施する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ジメチルアミンの導入後の反応媒体は、99/1~50/50の範囲の容量比におけるトルエン及び水の混合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ジメチルアミンの導入後の反応媒体は、99/1~50/50の範囲の容量比におけるアセトニトリル及び水の混合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)の処理の後に沈殿物が形成し、該沈殿物を、濾過により回収する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ジメチルアミンとの反応後に、別の溶剤の添加により反応媒体を処理する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記別の溶剤は、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、エタノール、アセトン、水、又はこれらの溶剤の混合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
出発物として使用されるフェノチアジンが、高速液体クロマトグラフィーにより246nmでの検出により測定される98%(面積%)以上の有機純度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
出発物として使用されるフェノチアジンが、20ppm未満の金属汚染物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を含む組成物の製造のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法であって、前記3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物は、前記組成物の少なくとも95%(その%は、HPLCにより246nmでの検出により測定される)に相当する、方法。
【請求項13】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物の製造方法であって、
a)請求項1~11のいずれか一項に記載の方法により3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を製造すること、
b)前記3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物へと変換すること、を含む、方法。
【請求項14】
欧州薬局方8.6に記載される方法による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される面積%としての97%以上の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物含量を有する組成物を製造するための、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物を含み、20ppm未満の金属汚染物を含む組成物を製造するための、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物を含む医薬の製造方法であって、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法により3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物を製造することと、それを薬学的に許容可能な媒体へと導入することとを含む、方法。
【請求項17】
タウオパチー、タウタンパク質凝集疾患、ピック病、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症(FTD)、FTD及び17番染色体に関連するパーキンソニズム(FTDP-17)、脱抑制-認知症-パーキンソニズム-筋萎縮複合(DDPAC)、淡蒼球橋黒質変性症(PPND)、グアム-ALS症候群、淡蒼球黒質ルイ体変性症(PNLD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、軽度認知障害(MCI)、皮膚癌、黒色腫、メトヘモグロビン血症、ウイルス感染、細菌感染、原虫感染、寄生虫感染、マラリア、内臓リーシュマニア症、アフリカ睡眠病、トキソプラズマ症、ジアルジア症、シャーガス病、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、西ナイルウイルス(WNV)感染、シヌクレイノパチー、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、薬剤性パーキンソニズム、純粋自律神経不全症(PAF)、敗血症性ショック、過度の血行動態反応、乳癌、躁鬱病、アルツハイマー病(AD)から選択される病的状態の予防又は治療、より一般的には中枢神経系の変性疾患の治療を目的とする医薬の製造のための、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度にて生成物を得ることを可能にする一方で、同時に実施が非常に簡単
であり、そして高収率がもたらされる3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-
5-イリウムヨウ化物の新規の製造方法に関する。この方法は、その他のハロゲン化物、
特に3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物を少ない工程
で得ることを可能にする。したがって、この方法は、高品質のメチレンブルーを良好な収
率で得るための経路の第1工程となる。
【背景技術】
【0002】
同一又は異なる場合がある基により3位及び7位で置換されたフェノチアジン誘導体を
合成するための様々な方法が従来技術から知られている。これらの全ての方法における共
通の要素は、それらが幾つかの工程で実施されることである。
【0003】
非特許文献1の文献は、異なる基により3位及び7位で置換されたフェノチアジン誘導
体の幾つかの工程における製造を記載している。この方法の第1工程は、フェノチアジン
を、フェノチアジン-5-イリウム四ヨウ化物としても知られる過ヨウ化物へと変換し、
それを精製及び単離することにある。この方法の第2工程は、2モル当量のジアルキルア
ミンを該過ヨウ化物へと添加することで、ジアルキルアミンにより3位で置換されたフェ
ノチアジン誘導体を得ることにある。少なくとも4モル当量の別のジアルキルアミンによ
り処理することで、3位及び7位で置換された非対称のフェノチアジン誘導体を得ること
が可能となる。この方法は、非特許文献2によりC2~C6アルキルを用いて、3,7-
ビス(ジアルキルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の合成に適合された。
この方法は、クロロホルム等の溶剤の使用を必要とし、その工業的規模の使用はあまり望
ましくない。さらに、その収率は最高で55%である。
【0004】
非特許文献3の文献は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウ
ム過ヨウ化物を介した3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩
化物の多工程製造を記載する唯一の文献である。この方法の第1工程は、フェノチアジン
を過ヨウ化物へと変換し、それを精製及び単離することにある。第2工程は、メタノール
及びジクロロメタンの混合物中に溶解されたジメチルアミンで該過ヨウ化物を処理するこ
とにある。イオン交換により、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イ
リウム塩化物を得ることが可能となる。正確で再現性のある手順は開示されていない。こ
の方法は、ジクロロメタン等の溶剤の使用を必要とし、その工業的規模の使用は、あまり
望ましくない。この方法の再現を試みた場合に、低い収率(42.7%)及び85.36
%(HPLC)の純度を有する生成物が得られた。
【0005】
非特許文献4の文献は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウ
ム臭化物の2工程合成を記載している。最初に、酢酸中で大過剰の臭素により処理するこ
とで、3,7-ビス(ジブロモ)フェノチアジン-5-イリウム臭化物の形成が可能とな
り、引き続きそれがジメチルアミンで処理される。この方法の第1工程は、多くの欠点を
有する。大過剰(20当量)の臭素及び酸素が除去された酢酸の使用も、制御が困難な臭
素化反応の瞬間的性質も、工業的規模の用途とはあまり適合性でない。この方法の第2工
程は、クロロホルム等の溶剤の使用を必要とし、その工業的規模の使用は、あまり望まし
くない。生成物は、多量の生成物の生成にはあまり適していない方法である、シリカカラ
ムクロマトグラフィーにより精製せねばならない。
【0006】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物は、レドックス
指示薬及び色素として、生物物理学的システムにおける光学増感剤(optical revealing
agent)、隔離材としてのナノポーラス材料において、そして光電気化学イメージングに
おいて長い間使用されている化合物である。消毒剤及び抗感染薬として、解毒薬として、
そして診断剤としてのその用途についても知られている。特に、婦人科学、新生児科学、
癌腫学、腫瘍学、泌尿器科学、眼科学、及び胃腸病学、並びに血液中の病原性汚染物の低
減において使用される(特許文献1)。過度の血行動態反応の抑制又は阻害(特許文献2
)、アルツハイマー病の治療、より一般的には中枢神経系の変性疾患の治療(特許文献3
)等の治療分野における新たな用途が開発されている。
【0007】
これらの用途のためには、有機不純物及び金属不純物を殆ど含まないメチレンブルー組
成を有する必要がある。
【0008】
メチレンブルーの製造のための幾つかの既知の方法は、金属試薬の使用を必要とし(特
許文献4、特許文献5)、大量の金属残分で汚染された生成物が生じる。これらの不純物
の量を減らすには、面倒な精製工程が必要となる。
【0009】
金属試薬の使用は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム分
子の金属錯化特性によって限定される。
【0010】
メチレンブルーとその有機不純物:アズールA、アズールB、及びアズールCとは非常
に近い構造を有するため、従来の分離技術を使用してそれらを分離することは困難である
。
【0011】
メチレンブルーを精製して、そこから金属及び有機汚染物を除去する方法は記載されて
いる(特許文献3、特許文献6)。しかしながら、これらの精製方法が適用される粗製メ
チレンブルーの合成は、クロム誘導体等の毒性試薬の使用を必要とする。
【0012】
したがって、こうして高純度の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-
イリウムハロゲン化物を、満足のいく収率で直接得ることを可能にするが、クロム酸化物
等の毒性の高い試薬を必要としない方法が依然として必要とされている。
【0013】
特に、治療分野で使用するためのメチレンブルーを、簡単に行われる方法によって高収
率及び高純度で製造することを可能にする方法が必要とされている。
【0014】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物は、様々な変
換方法によって、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物
を容易に得ることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】英国特許出願公開第2373787号
【文献】国際公開第03/082296号
【文献】国際公開第2008/007074号
【文献】国際公開第2005/054217号
【文献】国際公開第2006/032879号
【文献】国際公開第2008/006979号
【非特許文献】
【0016】
【文献】"A synthetic Route to 3-(Dialkylamino)phenothiazin-5-ium Salts and 3,7-Disubstituted Derivatives Containing Two Different Amino Groups"(L. Strekowski, D. F. Hou and R. L. Wydra; Journal of Heterocyclic Chemistry; 1993; 30; 1693-1695)
【文献】K.J. Mellish et al., Photochemistry and Photobiology, 2002, 75(4); 392-397
【文献】"A novel set of symmetric methylene blue derivative exhibits effective bacteria photokilling - a structure - response study"(Anita Gollmer, et al., Photochem. Photobiol. Sci.; vol. 14, n°2, 1 January 2015, p.335-351)
【文献】N. Leventis et al., Tetrahedron 1997 vol. 53, N°29, 10083-10092, 1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ
化物の新規の製造方法を開発することであった。そのような方法は、簡単なイオン交換又
は以下に記載されるその他の既知の方法によって、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェ
ノチアジン-5-イリウム塩化物すなわちメチレンブルーを得ることを可能にする。
【0018】
本出願人は、高収率及び高純度で3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5
-イリウムヨウ化物を合成するための、迅速で、安価で、効率的であり、かつ工業的規模
に容易に当てはめることができる方法を開発しようと努めた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の
製造方法であって、出発物としてフェノチアジンを使用し、以下の工程:
a)フェノチアジンをヨウ素分子で処理する工程、
b)工程a)から直接的に得られる反応媒体をジメチルアミンで処理する工程、
を含む、方法に関する。
【0020】
1つの好ましい実施の形態によれば、ヨウ素分子での処理は、フェノチアジンを基準に
して2.5モル当量~3.5モル当量の範囲の量のヨウ素分子で行われる。
【0021】
さらにより有利には、ヨウ素分子での処理は、フェノチアジンを基準にして2.9モル
当量~3.3モル当量の範囲の量のヨウ素分子で行われる。
【0022】
1つの好ましい実施の形態によれば、工程b)の前に、工程a)から得られる反応媒体
は、5℃~50℃、好ましくは10℃~45℃、なおも更に良好には20℃~35℃の範
囲の温度で調節される。
【0023】
1つの好ましい実施の形態によれば、ジメチルアミンでの処理は、フェノチアジンを基
準にして少なくとも7モル当量のジメチルアミンを用いて行われる。
【0024】
1つの好ましい実施の形態によれば、工程a)において、溶剤は、芳香族溶剤若しくは
アセトニトリル、又はそれらの混合物、好ましくはトルエン若しくはアセトニトリル、又
はそれらの混合物から選択される。
【0025】
1つの好ましい実施の形態によれば、工程b)において、ジメチルアミンは、水溶液の
形で反応媒体へと導入される。
【0026】
1つの好ましい実施の形態によれば、工程b)の処理の後に沈殿物が形成され、その沈
殿物は、濾過により回収される。
【0027】
本発明はまた、先に記載され、以下で詳細に記載される方法の、3,7-ビス(ジアル
キルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を含む組成物を製造するための使用
であって、3,7-ビス(ジアルキルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物が
、該組成物の少なくとも95%(その%はHPLCにより246nmでの検出により測定
される)に相当する、使用に関する。
【0028】
本発明はまた、3,7-ビス(ジアルキルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化
物の製造方法であって、
i)先に記載され、以下で詳細に記載される方法により3,7-ビス(ジメチルアミノ)
フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を製造することと、
ii)上記3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を、
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物へと変換すること
と、
を含む、方法に関する。
【0029】
本発明はまた、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物
を含む医薬の製造方法であって、先に記載され、以下で詳細に記載される方法により3,
7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物を製造することと、そ
れを薬学的に許容可能な媒体へと導入することとを含む、方法に関する。
【0030】
1つの好ましい実施の形態によれば、医薬の製造方法は、タウオパチー、タウタンパク
質凝集疾患、ピック病、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症(FTD)、F
TD及び17番染色体に関連するパーキンソニズム(FTDP-17)、脱抑制-認知症
-パーキンソニズム-筋萎縮複合(DDPAC)、淡蒼球橋黒質変性症(PPND)、グ
アム-ALS症候群、淡蒼球黒質ルイ体変性症(PNLD)、大脳皮質基底核変性症(C
BD)、軽度認知障害(MCI)、皮膚癌、黒色腫、メトヘモグロビン血症、ウイルス感
染、細菌感染、原虫感染、寄生虫感染、マラリア、内臓リーシュマニア症、アフリカ睡眠
病、トキソプラズマ症、ジアルジア症、シャーガス病、C型肝炎ウイルス(HCV)感染
、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、西ナイルウイルス(WNV)感染、シヌクレイ
ノパチー、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(M
SA)、薬剤性パーキンソニズム、純粋自律神経不全症(PAF)、敗血症性ショック、
過度の血行動態反応、乳癌、躁鬱病、アルツハイマー病(AD)から選択される病的状態
の予防又は治療、より一般的には中枢神経系の変性疾患の治療を目的とする医薬の製造に
関する。
【0031】
1つ以上の特徴を伴う「本質的に~からなる」という表現は、本発明の特性及び特徴を
大きく変更しない成分又は工程が、明示的に列挙された成分又は工程に加えて、本発明の
方法又は材料中に含まれ得ることを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、1つの同じ反応媒体中で実施される、フェノチアジンを3,7-ビス(ジメ
チルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物へと変換するための2工程法に関す
る。
【0033】
この変換法は、
a)フェノチアジンをヨウ素分子で処理することと、
b)工程a)から直接的に得られる反応媒体をジアルキルアミンで処理することと、
を含む。
【0034】
【0035】
スキーム1:フェノチアジンの3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-
イリウムヨウ化物へのワンポット変換
この製造方法は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ
化物を高純度で得ることを可能にする一方で、同時に実施が非常に簡単であり、かつ高収
率がもたらされる。
【0036】
従来技術から、ヨウ素分子をフェノチアジンへと添加することで、酸化反応が生ずるこ
とが知られている。
【0037】
フェノチアジンをヨウ素で酸化させると、反応の中間生成物である過ヨウ化物を形成す
ることが可能となり、それは従来の方法では精製及び単離される。
【0038】
本発明は、過ヨウ化物の単離及び精製を必要としない3,7-ビス(ジメチルアミノ)
フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の製造方法に関する。
【0039】
実際に、ジメチルアミンでの処理後の更なる工程における過ヨウ化物の単離及び精製に
より、比較的不満足な品質の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリ
ウムヨウ化物が得られ、そのような方法は低い収率をもたらすことが分かっている。
【0040】
本発明の方法は、2つの必須の工程が同じ反応媒体中で実施されることを特徴としてい
る。そのような方法はまた、通常は「ワンポット」、正確には「ワンリアクター」と呼称
され、それは、連続した反応が、工程b)の関与の前の工程a)の生成物の完全又は部分
的な単離又は精製なく実施されることを意味する。反応媒体の組成は時間と共に変化する
が、中間生成物は単離及び/又は精製されず、最終生成物だけが反応媒体から分離される
にすぎない。本発明の方法においては、少なくとも2つの連続した反応が行われ、反応媒
体の組成は時間と共に変化するが、フェノチアジン過ヨウ化物は単離及び/又は精製され
ず、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物だけが反応
媒体から分離されるにすぎない。
【0041】
そのような方法は、実施が容易であり、操作が殆ど必要ないという利点を有する。通常
は、ワンポット法は、中間体の単離及び精製を伴って実施されるものよりも純度が低い混
合物をもたらすと言われている。しかしながら、本発明の場合には、驚くべきことに、1
つの同じ反応媒体中で実施される工程a)及び工程b)の2工程の方法は、フェノチアジ
ン過ヨウ化物の単離及び精製を伴って実施される同様の方法よりも高純度の生成物をもた
らすことが分かった。
【0042】
フェノチアジン:
出発物は、市販製品であるフェノチアジンである。
【0043】
好ましくは、出発物として使用されるフェノチアジンは、高速液体クロマトグラフィー
により246nmでの検出により測定される98%(面積%)以上の有機純度を有する。
【0044】
有利には、金属不純物を殆ど含まないか又は全く含まないフェノチアジンが使用される
。好ましくは、200ppm未満の金属汚染物、有利には100ppm未満の金属汚染物
、なおも更に良好には50ppm未満の金属汚染物、更により有利には20ppm未満の
金属汚染物を含むフェノチアジンが使用される。
【0045】
用語「金属汚染物」は、元素の周期律表の全ての金属、特にCd、Cr、Hg、Mn、
Ni、Sn、Pb、Al、Fe、Cu、Zn、As、Mo、Mg、Ti、V、U、Coを
意味すると解釈される。より具体的には、用語「金属汚染物」は、「重」金属、特にAl
、Cd、Cr、Cu、Sn、Mn、Hg、Mo、Ni、Pb、Znを意味すると解釈され
る。
【0046】
工程a):フェノチアジンのヨウ素分子での処理
本発明によれば、工程a)及び工程b)は、溶剤又は溶剤の混合物中で実施される。
【0047】
工程a)においては、単一の溶剤又は溶剤の混合物が使用され得る。工程b)において
は、ジメチルアミンは、反応媒体へと工程a)の溶剤と同一又はそれとは異なり得る溶剤
中の溶液の形で導入される。
【0048】
フェノチアジンは、特にフェノチアジン及びヨウ素分子を可溶化する能力のために選択
される溶剤又は溶剤の混合物中で、ヨウ素分子で処理され、次いでジメチルアミンで処理
される。
【0049】
本発明の方法で使用され得る溶剤の中でも、アルコール、例えばメタノール又はエタノ
ール、テトラヒドロフラン、芳香族溶剤、例えばトルエン、キシレン、及びエチルベンゼ
ン、アセトニトリル、これらの溶剤の混合物を挙げることができる。
【0050】
好ましくは、フェノチアジンのヨウ素分子での処理は、芳香族溶剤及びアセトニトリル
から選択される溶剤中で実施される。
【0051】
有利には、溶剤は、トルエン及びアセトニトリルから選択される。
【0052】
有利には、フェノチアジンのヨウ素分子での処理は、フェノチアジンを基準にして少な
くとも2.5モル当量で、かつ多くとも3.5モル当量のヨウ素分子で行われる。この値
範囲の外側では、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化
物の大幅な減少が認められた。好ましくは、フェノチアジンのヨウ素分子での処理は、フ
ェノチアジンを基準にして少なくとも2.7モル当量で、かつ多くとも3.3モル当量の
ヨウ素分子で、なおも更に良好にはフェノチアジンを基準にして少なくとも2.8モル当
量で、かつ多くとも3.2モル当量のヨウ素分子で実施される。
【0053】
好ましくは、フェノチアジンのヨウ素分子での処理は、フェノチアジンを基準にして約
3モル当量のヨウ素分子で実施される。
【0054】
第1の好ましい実施形態によれば、工程a)は、トルエン中でフェノチアジンを基準に
して少なくとも2.5モル当量で、かつ多くとも3.5モル当量のヨウ素分子の存在下で
実施される。
【0055】
好ましくは、工程a)は、トルエン中でフェノチアジンを基準にして少なくとも2.7
モル当量で、かつ多くとも3.3モル当量のヨウ素分子の存在下で、なおも更に良好には
フェノチアジンを基準にして少なくとも2.8モル当量で、かつ多くとも3.2モル当量
のヨウ素分子で行われる。
【0056】
第2の好ましい実施形態によれば、工程a)は、アセトニトリル中でフェノチアジンを
基準にして少なくとも2.5モル当量で、かつ多くとも3.5モル当量のヨウ素分子の存
在下で実施される。
【0057】
好ましくは、工程a)は、アセトニトリル中でフェノチアジンを基準にして少なくとも
2.7モル当量で、かつ多くとも3.3モル当量のヨウ素分子の存在下で、なおも更に良
好にはフェノチアジンを基準にして少なくとも2.8モル当量で、かつ多くとも3.2モ
ル当量のヨウ素分子で行われる。
【0058】
好ましくは、工程a)は、撹拌しながら周囲温度から100℃までの範囲の温度で実施
される。この工程は発熱的ではないので、上記試薬及び1種以上の溶剤が反応器中に導入
された後に、選択された温度に調節される。
【0059】
有利には、フェノチアジンのヨウ素分子での処理は、30℃~90℃、有利には40℃
~80℃、なおも更に良好には50℃~70℃の範囲の温度で実施される。
【0060】
好ましくは、フェノチアジンのヨウ素分子での処理の全期間は、15分間~6時間、有
利には30分間~4時間、なおも更に良好には1時間~3時間である。
【0061】
薄層クロマトグラフィー又はHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により反応の進
行をモニタリングすることが可能である。
【0062】
有利には、フェノチアジンのヨウ素分子での処理は、
30℃~90℃の範囲の温度で15分間~6時間の期間にわたり、
好ましくは30℃~90℃の範囲の温度で30分間~4時間の期間にわたり、
有利には40℃~80℃の温度で1時間~3時間の期間にわたり、
実施される。
【0063】
従来技術とは異なり、この反応の後に得られる反応媒体は、中間生成物の部分的又は全
体的な単離及び/又は精製なく、ジメチルアミンでの処理に直接的に供される。
【0064】
工程b):反応媒体のジメチルアミンでの処理
有利には溶剤中の溶液の形で導入されるジメチルアミンNH(CH3)2は、工程a)
の後に反応媒体に添加される。
【0065】
ジメチルアミン溶液は、水、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、これらの
溶剤の混合物から選択される溶剤又は溶剤の混合物中の溶液であり得る。
【0066】
好ましくは、ジメチルアミンは、水若しくはテトラヒドロフラン又はこれらの溶剤の混
合物中の溶液の形で反応媒体へと導入される。
【0067】
更により好ましくは、ジメチルアミンは、水溶液の形で反応媒体へと導入される。
【0068】
第1の好ましい実施形態によれば、ジメチルアミンの導入後の反応媒体は、99/1~
50/50、有利には95/5~60/40、なおも更に良好には90/10~70/3
0の範囲の容量比におけるトルエン及び水の混合物を含む。
【0069】
第2の好ましい実施形態によれば、ジメチルアミンの導入後の反応媒体は、99/1~
50/50、有利には95/5~60/40、なおも更に良好には90/10~70/3
0の範囲の容量比におけるアセトニトリル及び水の混合物を含む。
【0070】
好ましくは、ジメチルアミンでの処理は、フェノチアジンを基準にして少なくとも6モ
ル当量のジメチルアミン、有利にはフェノチアジンを基準にして少なくとも7モル当量の
ジメチルアミン、更により有利にはフェノチアジンを基準にして少なくとも8モル当量の
ジメチルアミンを用いて行われる。
【0071】
好ましくは、ジメチルアミンでの処理は、フェノチアジンを基準にして6モル当量~1
5モル当量のジメチルアミン、有利にはフェノチアジンを基準にして7モル当量~12モ
ル当量のジメチルアミン、更により有利にはフェノチアジンを基準にして8モル当量~1
2モル当量のジメチルアミンを用いて行われる。
【0072】
ジメチルアミンの添加により、発熱反応が生ずる。
【0073】
有利には、反応媒体の温度は、ジメチルアミンの導入前に制御される。好ましくは、反
応媒体の温度は、ジメチルアミンが導入される時点で1℃~50℃であり、好ましくはそ
の温度は2℃~40℃、なおも更に良好には5℃~30℃である。
【0074】
反応の発熱性により、ジメチルアミンの導入の期間にわたり反応媒体の温度の上昇が生
ずる。全てのジメチルアミンが反応媒体中に注入された後に、温度は安定する。有利には
、反応媒体の温度は、その後に制御されて20℃~25℃で維持される。
【0075】
好ましくは、反応媒体を、その後に20℃~25℃の範囲の温度で20分間~6時間、
好ましくは1時間~5時間、なおも更に良好には2時間~4時間にわたり撹拌し続ける。
【0076】
ジメチルアミンの反応媒体への添加により、この媒体の色の変化が生じ、それは褐色か
ら暗青色へと変わる。
【0077】
本発明によれば、この期間の後に、反応媒体中に固体の形成が観察される。反応の進行
をHPLCによってモニタリングすることが可能である。
【0078】
ジメチルアミンとの反応後に、3,7-ビス(ジアルキルアミノ)フェノチアジン-5
-イリウムヨウ化物の沈殿を促進させるために、不溶性又は難溶性である別の溶剤の添加
により反応媒体を処理することが可能である。反応が行われる溶剤の選択に応じて、トル
エン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、エタノール、アセトン、水、又はこれらの
溶剤の混合物を選択して使用可能である。
【0079】
第1の好ましい実施形態によれば、反応媒体はトルエンを含み、工程b)の後に、テト
ラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、エタノール、水、又はこれらの溶剤の混合
物から選択される溶剤が添加される。
【0080】
第2の好ましい実施形態によれば、反応媒体はアセトニトリルを含み、工程b)の後に
、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトン、エタノール、水、又はこれらの溶剤の混合
物から選択される溶剤が添加される。
【0081】
次いで、3,7-ビス(ジアルキルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物は
、例えば焼結ガラス漏斗又は濾布であり得る適切な濾過担体上での濾過により反応媒体か
ら単離される。
【0082】
フィルターにより保持される画分は、3,7-ビス(ジアルキルアミノ)フェノチアジ
ン-5-イリウムヨウ化物を含む組成物である。
【0083】
濾液は除去される一方で、沈殿物は溶剤で1回以上洗浄される。
【0084】
好ましくは、濾過に引き続き、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセ
トン、エタノール、ジクロロメタン、水、又はこれらの溶剤の混合物から選択され得る溶
剤での固体の洗浄工程が行われる。
【0085】
本発明のもう1つの主題は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イ
リウムヨウ化物を良好な化学的純度で、信頼性が高く、再現的で、かつ工業的規模に適用
可能な様式で製造するための、上記の方法の使用である。
【0086】
本発明の方法により、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム
塩化物についての欧州薬局方8.6(2015年に発行)に記載される方法による高速液
体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される面積%としての85%以上、好まし
くは90%以上、なおも更に良好には95%以上、有利には98%以上の3,7-ビス(
ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物含量を有する3,7-ビス(ジ
メチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を含む組成物が得られる。
【0087】
本発明の方法により、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム
塩化物についての欧州薬局方8.6(2015年に発行)に記載される方法による高速液
体クロマトグラフィー(HPLC)により測定される面積%としての3%以下、好ましく
は2%以下、なおも更に良好には1%以下の3-(ジメチルアミノ)-7-(メチルアミ
ノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を有する3,7-ビス(ジメチルアミノ)フ
ェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を含む組成物が得られる。
【0088】
こうして、本発明の方法により高純度及び満足のいく収率の3,7-ビス(ジアルキル
アミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物が得られる。
【0089】
本発明の方法は、特段危険ではない出発材料及び溶剤を使用する。本発明の方法は、よ
り大きい規模に容易に当てはめることができる工程を必要とする。したがって、この方法
は、安全性、収率、又は生成物の品質に関連する困難を伴わずに工業化され得る。
【0090】
これらの特性は、満足のいく品質のメチレンブルーとしても知られる3,7-ビス(ジ
メチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物を高収率で得るために必須である。
【0091】
この方法は素早く、安価で非毒性の出発材料を必要とするため、その工業的規模への適
用は、メチレンブルーの現行の製造方法に取って代わることを可能にし得る。
【0092】
本発明の主題はまた、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム
塩化物の製造方法である。この方法は、先に記載された方法による3,7-ビス(ジメチ
ルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の製造と、該3,7-ビス(ジメチル
アミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェ
ノチアジン-5-イリウム塩化物への変換の追加工程とを含む。
【0093】
第1の実施形態によれば、上記ヨウ化物の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチア
ジン-5-イリウム塩化物への変換は、イオン交換により行われる。ヨウ化物イオンの塩
化物イオンへの交換は、例えばAmberlite(商標)樹脂、特にAmberlit
e(商標)IRA958樹脂等のイオン交換樹脂によって行われる。そのような工程は、
当業者によく知られている。特に、作業条件の詳細については、非特許文献3が参照され
得る。
【0094】
第2の実施形態によれば、上記ヨウ化物の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチア
ジン-5-イリウム塩化物への変換は、特許文献6の、特に実験部に記載される方法の実
施により行われる。
【0095】
簡潔には、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物を
、3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノチアジンへと変換させる。
これを、次いでシリカ上での濾過及びジクロロメタンでの洗浄により精製する。精製され
た生成物を脱ベンゾイル化し、キノン、例えば2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1
,4-ベンゾキノン(DDQ)での処理により酸化させる。次いで、3,7-ビス(ジメ
チルアミノ)フェノチアジンをHClで塩化させ、中和し、任意に再結晶化させる。
【0096】
こうして、粗製品質のメチレンブルーの製造に通常使用されるクロム誘導体等の毒性の
高い試薬の使用を合成に必要としない市販製品であるフェノチアジンを出発物として使用
して、高純度の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物が
得られる。
【0097】
さらに、ベンゾイル化反応の間に、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-
5-イリウムヨウ化物が好ましくはベンゾイル化され、一方で、3-ジメチルアミノ-7
-メチルアミノフェノチアジン-5-イリウムヨウ化物、3,7-ビス(メチルアミノ)
フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物、及び3-メチルアミノフェノチアジン-5-イ
リウムヨウ化物は、非常に僅かしかベンゾイル化されない。さらに、それらがベンゾイル
化される場合に、3-ジメチルアミノ-7-メチルアミノフェノチアジン-5-イリウム
ヨウ化物、3,7-ビス(メチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物、及び
3-メチルアミノフェノチアジン-5-イリウムヨウ化物はまた、些細とは言えない割合
でポリベンゾイル化される(polybenzoylated)。3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェ
ノチアジン-5-イリウムヨウ化物の最も頻度の高い汚染物のこれらの固有の特性により
、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物のベンゾイル
化形の精製の間のこれらの汚染物の除去は容易となる。このように、特許文献6に記載さ
れる方法が任意に続く本発明の方法により、その通常の汚染物:アズールB、アズールA
、及びアズールCを実質的に含まないメチレンブルーが得られる。
【0098】
第3の実施形態によれば、上記ヨウ化物の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチア
ジン-5-イリウム塩化物への変換は、特許文献3の、特に実験部に記載される方法の実
施により行われる。
【0099】
この方法は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物
をアセチル化して、N-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10-アセチルフェノチアジ
ンを得ることを含む。これを、次いでエタノールからの再結晶化により精製する。精製さ
れた生成物を脱アセチル化し、FeCl3での処理により酸化させる。3,7-ビス(ジ
メチルアミノ)フェノチアジニウム塩化物を、任意に酸性pHで水から再結晶化させる。
【0100】
本発明の方法により、欧州薬局方8.6(2012年1月版)の方法による高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)により測定される面積%としての97%以上、好ましくは
98%以上の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物含量
を有する3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物(メチレ
ンブルー)を含む組成物が得られる。
【0101】
本発明の方法により、欧州薬局方8.6(2015年に発行)の方法による高速液体ク
ロマトグラフィーにより測定される面積%による2%以下、好ましくは1%以下の3-ジ
メチルアミノ-7-メチルアミノフェノチアジン-5-イリウム塩化物(アズールB)含
量を有する3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物を含む
組成物が得られる。
【0102】
また本発明の方法により、金属不純物を殆ど含まない又は全く含まない3,7-ビス(
ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物を含む組成物が得られる。本発明
の方法により、特に3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化
物を含み、かつ200ppm未満の金属汚染物、有利には100ppm未満の金属汚染物
、なおも更に良好には50ppm未満の金属汚染物、更により有利には20ppm未満の
金属汚染物を含む組成物が得られる。金属含量は、欧州薬局方8.6(2015年に発行
)の方法により測定される。
【0103】
用語「金属汚染物」は、元素の周期律表の全ての金属、特にCd、Cr、Hg、Mn、
Ni、Sn、Pb、Al、Fe、Cu、Zn、As、Mo、Mg、Ti、V、U、Coを
意味すると解釈される。より具体的には、用語「金属汚染物」は、「重」金属、特にAl
、Cd、Cr、Cu、Sn、Mn、Hg、Mo、Ni、Pb、Znを意味すると解釈され
る。
【0104】
本発明の方法は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ
化物を実質的に含まない3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム
塩化物を含む組成物を得ることを可能にする。
【0105】
メチレンブルーとしても知られる3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5
-イリウム塩化物は、様々な感染の治療において数十年間にわたり使用されている。それ
は、消毒剤として、抗感染薬として、メトヘモグロビン血症のための治療の解毒薬として
、そして診断剤として使用される。
【0106】
最近ではその抗ウイルス活性が実証され、それはタウオパチー、タウタンパク質凝集疾
患、ピック病、進行性核上性麻痺(PSP)、前頭側頭型認知症(FTD)、FTD及び
17番染色体に関連するパーキンソニズム(FTDP-17)、脱抑制-認知症-パーキ
ンソニズム-筋萎縮複合(DDPAC)、淡蒼球橋黒質変性症(PPND)、グアム-A
LS症候群、淡蒼球黒質ルイ体変性症(PNLD)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、
軽度認知障害(MCI)、皮膚癌、黒色腫、メトヘモグロビン血症、ウイルス感染、細菌
感染、原虫感染、寄生虫感染、マラリア、内臓リーシュマニア症、アフリカ睡眠病、トキ
ソプラズマ症、ジアルジア症、シャーガス病、C型肝炎ウイルス(HCV)感染、ヒト免
疫不全ウイルス(HIV)感染、西ナイルウイルス(WNV)感染、シヌクレイノパチー
、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、
薬剤性パーキンソニズム、純粋自律神経不全症(PAF)、敗血症性ショック、過度の血
行動態反応、乳癌、躁鬱病、アルツハイマー病(AD)の治療、より一般的には中枢神経
系の変性疾患の治療において使用することを目的とする医薬の製造のために使用され得る
。
【0107】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物はまた、化粧品
において、又は眼科用途を目的とする製品のためにも使用され得る。
【0108】
これらの全ての治療用途のために、特に長期間の間のメチレンブルーの反復投与を必要
とする、アルツハイマー病の予防及び治療、より一般的には中枢神経系の変性疾患の治療
に関連して、高純度及び非常に少ない金属不純物を有するメチレンブルーを有する必要が
ある。
【0109】
本発明の主題はまた、医薬の製造方法であって、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェ
ノチアジン-5-イリウム塩化物を製造することと、それを薬学的に許容可能な媒体へと
導入することとを含む、方法である。
【0110】
上記医薬は、これらの用途におけるその使用に適した任意の形であり得る。
【0111】
特に、1mg~500mgのメチレンブルーを含む錠剤又はゲルカプセル剤の形、0.
05%(g/l)~2%(g/l)の範囲の濃度でメチレンブルーを含む水溶液剤の形を
挙げることができる。
【0112】
そのような組成物は、メチレンブルーの他に、例えばクエン酸及び/又はクエン酸塩、
リン酸緩衝液、ポリマー、セルロース誘導体、脂質等の当業者によく知られる賦形剤を含
む。
【0113】
医療用途においては、本発明の方法により得られるメチレンブルーは、高純度の利点を
有することから、その用途のために不必要な物体への導入が回避される。
【0114】
本発明の方法の効果により、より低コストで、容易に再現可能であり、かつ工業的規模
に適用可能な生成物を得ることが可能となる。
【0115】
実験部:
I-材料及び方法:
1)出発材料及び機器
ヨウ素分子は、TCI社から購入した。
【0116】
フェノチアジンは、ALFA AESAR社、ACROS ORGANICS社から購入した。
【0117】
ジメチルアミンは、
ACROS ORGANICS社から、40重量%のジメチルアミン水溶液(Dimethylamine 40%wt
solution in water)という商品名として、
ACROS ORGANICS社から、2MのジメチルアミンTHF溶液(Dimethylamine 2M solut
ion in THF)という商品名として、
TCI社から、2MのジメチルアミンMeOH溶液(Dimethylamine, 2M solution in M
eOH)という商品名として、
購入した。
【0118】
2)分析法:
HPLC/MS
方法:2015年に発行された欧州薬局方8.6
装置:HPLC Agilent 1260+MS Agilent 6120
カラム:Waters XBridge Phenyl 100×4.6-3.5μm
検出:246nm
試料濃度:1000ppm
試料溶解溶剤:水性TFA0.1%/ACN(70/30)
溶出溶剤:アセトニトリル/水中0.1%(容量/容量)のトリフルオロ酢酸
MSのためのイオン化源:エレクトロスプレー(ESI)
MSのための分析装置:単純な四重極
MSのための検出器:電子倍増管
データ処理のためのコンピュータシステム:Agilent Chemstation
Open Lab
【0119】
II-プロトコル:
実施例1(比較):3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨ
ウ化物の2工程合成(Anita Gollmer, et al., Photochem. Photobiol. Sci.; 2014; DOI
: 10.1039/C4PP00309H; p.1-47による):
1)フェノチアジン-5-イリウム四ヨウ化物の合成(1294-X15)
10gのフェノチアジン(50mmol、1.0当量)及び200mlのジクロロメタ
ンを、500ml容の三ツ口フラスコ中に導入する。該混合物を周囲温度で撹拌する。
【0120】
38.3gのヨウ素分子(150mmol、3.0当量)を、次いで撹拌しながら周囲
温度で添加する。
【0121】
反応媒体を、次いで周囲温度で2時間にわたり撹拌し続ける。
【0122】
反応媒体を、次いでフリット(ポア3)上で濾過する。
【0123】
沈殿物を20mlのジクロロメタンで洗浄し、次いでフリット(ポア3)上で濾過する
。
【0124】
その固体を40℃でオーブンにて乾燥させる。
【0125】
31.6gの黒色の粗製フェノチアジン四ヨウ化物が得られる。収率は89.5%であ
る。
【0126】
2)フェノチアジン四ヨウ化物の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5
-イリウムヨウ化物への変換(1294-Y19)
4.5gのフェノチアジン過ヨウ化物(7.1mmol、1.0当量)を、500ml
容の三ツ口フラスコ中に導入し、メタノール(180ml)及びジクロロメタン(22.
5ml)の混合物中に撹拌しながら周囲温度で溶解させる。
【0127】
2Nのジメチルアミンのメタノール溶液(71.0mmol、10.0当量)35.5
mlを、撹拌しながら50分間をかけて流し入れ、20℃と25℃との間の温度で調節す
る。
【0128】
反応媒体を、次いで周囲温度で6時間にわたり22℃で撹拌し続ける。
【0129】
反応媒体を、次いでフリット(ポア4)上で濾過する。
【0130】
生成物が粉末の形で得られ、それを通風オーブンにて40℃で乾燥させる。
【0131】
1.39gの黒色の固体が得られ、反応収率は47.7%であり、それは該方法で使用
されたフェノチアジンの全体量を基準にして42.7%に相当する。
【0132】
生成物を、上記のHPLC/MS法により分析する。
【0133】
得られた固体中の3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ
化物含量は85.4%である。不純物の中でも、フェノチアジン二量体が11.11%の
量で同定された。
【0134】
実施例2:3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の
1工程合成(1294-AD2):
88gのヨウ素分子(346.2mmol、3.0当量)及び1.15lのトルエンを
、2l容の三ツ口フラスコ中で混合する。23gのフェノチアジン(115.4mmol
、1.0当量)を、撹拌しながら周囲温度で添加する。
【0135】
反応媒体を、次いで周囲温度で3時間にわたり撹拌し続ける。
【0136】
2Nのジメチルアミノのメタノール溶液(1154mmol、10.0当量)575m
lを、次いで20℃~25℃の温度で調節された反応媒体へと撹拌しながら素早く添加す
る(1分間未満)。
【0137】
反応媒体を、次いで周囲温度で2時間30分にわたり撹拌し続ける。
【0138】
反応媒体を、次いでフリット(ポア3)上で濾過する。
【0139】
沈殿物を、トルエンで1回洗浄し、次いでフリット(ポア3)上で濾過する。
【0140】
その固体を、Rotavapor(商標)にて40℃で乾燥させる。
【0141】
40.9gの黒色の生成物が得られ、得られる収率は86%である。
【0142】
生成物を、上記のHPLC/MS法により分析する。
【0143】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物含量は85%
である。
【0144】
実施例3:3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の
1工程合成(1294-AD68):
5gのフェノチアジン(25.1mmol、1.0当量)及び100mlのアセトニト
リルを、250ml容の三ツ口フラスコへと添加する。反応媒体を40℃に加熱する。
【0145】
19.7gのヨウ素分子(77.8mmol、3.1当量)を添加し、加熱を2時間に
わたり継続する。
【0146】
反応媒体を25℃に冷却する。
【0147】
40重量%のH2O溶液の形の31.8mlのジメチルアミン(250.9mmol、
10.0当量)を、反応媒体を25℃と30℃との間に保ちながら導入する。
【0148】
その媒体を、25℃で2時間にわたり撹拌したままにする。
【0149】
その媒体を、100mlのアセトンで希釈し、25℃で30分間にわたり撹拌したまま
にする。
【0150】
反応媒体を、フリット(ポア3)上で濾過する。
【0151】
沈殿物を、20mlのアセトンで4回洗浄する。
【0152】
その固体を、通風オーブンにて40℃で一晩乾燥させる。
【0153】
6.9gの黒色の生成物が得られる。得られる収率は67%である。
【0154】
生成物を、上記の方法に従ってHPLC/MSにより分析する。純度は94.4%であ
る。
【0155】
実施例4:3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の
1工程合成(AD97):
該方法は、実施例3と同様に行われるが、以下の違いがある:反応媒体を10℃と15
℃との間に維持しながらジメチルアミンを導入する。
【0156】
4.28gの黒色の生成物が得られる。得られる収率は41%である。
【0157】
生成物を、上記の方法に従ってHPLC/MSにより分析する。純度は98.3%であ
る。
【0158】
実施例5:3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の
1工程合成(AD98):
該方法は、実施例3と同様に行われるが、以下の違いがある:反応媒体を35℃と40
℃との間に維持しながらジメチルアミンを導入する。
【0159】
6.21gの黒色の生成物が得られる。得られる収率は60%である。
【0160】
生成物を、上記の方法に従ってHPLC/MSにより分析する。純度は88.1%であ
る。
【0161】
比較例6:3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の1工程合成(AD99):
該方法は、実施例3と同様に行われるが、以下の違いがある:反応媒体を60℃と70℃との間に維持しながらジメチルアミンを導入する。
【0162】
4.82gの黒色の生成物が得られる。得られる収率は47%である。
【0163】
生成物を、上記の方法に従ってHPLC/MSにより分析する。純度は73.3%であ
る。
【0164】
実施例7:3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の
1工程合成(AD55):
5gのフェノチアジン(25.1mmol、1.0当量)及び100mlのアセトニト
リルを、500ml容の三ツ口フラスコ中に導入する。反応媒体を40℃に加熱する。
【0165】
19.1gのヨウ素分子(75.3mmol、3.0当量)を添加し、加熱を2時間に
わたり継続する。
【0166】
反応媒体を18℃に冷却する。
【0167】
40重量%のH2O溶液の形の31.8mlのジメチルアミン(250.9mmol、
10.0当量)を、5分間をかけて導入する。その反応は発熱的であり、添加の終わりに
、24℃の反応媒体温度が観察される。
【0168】
その媒体を、周囲温度で2時間にわたり撹拌したままにする。
【0169】
その媒体を、100mlのアセトンで希釈し、周囲温度で30分間にわたり撹拌したま
まにする。
【0170】
沈殿物を、フリット(ポア3)上で濾別し、アセトンで洗浄する。
【0171】
その固体を、Rotavapor(商標)にて40℃で乾燥させる。
【0172】
6.2gの黒色の生成物が得られる。得られる収率は60%である。
【0173】
生成物を、上記の方法に従ってHPLC/MSにより分析する。純度は96.2%であ
る。
【0174】
実施例8:3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウムヨウ化物の
1工程合成(AD62)
5gのフェノチアジン(25.1mmol、1.0当量)及び100mlのアセトニト
リルを、500ml容の三ツ口フラスコ中に導入する。反応媒体を40℃に加熱する。
【0175】
25.5gのヨウ素分子(100.4mmol、4.0当量)を添加し、加熱を2時間
にわたり継続する。
【0176】
反応媒体を20℃~25℃に冷却する。
【0177】
40重量%のH2O溶液の形の31.8mlのジメチルアミン(250.9mmol、
10.0当量)を、5分間をかけて導入する。その反応は発熱的であり、添加の終わりに
、反応媒体温度T<30℃が観察される。
【0178】
その媒体を、周囲温度で2時間にわたり撹拌したままにする。
【0179】
その媒体を、100mlのアセトンで希釈し、周囲温度で30分間にわたり撹拌したま
まにする。
【0180】
沈殿物を、フリット(ポア3)上で濾別し、アセトンで洗浄する。
【0181】
その固体を、Rotavapor(商標)にて40℃で乾燥させる。
【0182】
4.0gの黒色の生成物が得られる。得られる収率は39%である。
【0183】
生成物を、上記の方法に従ってHPLC/MSにより分析する。純度は98.1%であ
る。
【0184】
実施例9:3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノチアジンの合成
(1294-AD86)
100gのフェノチアジン(502mmol、1.0当量)、394.8gのヨウ素分
子(1555mmol、3.1当量)、及び2lのアセトニトリルを、6リットル容の反
応器中に導入する。
【0185】
反応媒体を、40℃で2時間にわたり加熱する。
【0186】
反応媒体を、25℃に冷却する。
【0187】
40重量%のH2O溶液の形の633mlのジメチルアミン(5020mmol、10
.0当量)を、反応媒体を25℃と30℃との間に維持しながら導入する。
【0188】
その媒体を、25℃で2時間にわたり撹拌したままにする。
【0189】
その媒体を、2lのアセトンで希釈し、25℃で30分間にわたり撹拌したままにする
。
【0190】
得られた沈殿物を、フリット(ポア3)上で濾別し、次いで400mlのアセトンで4
回洗浄する。
【0191】
その固体を、通風オーブンにて40℃で一晩乾燥させる。
【0192】
128.4gの黒色の生成物が得られる。得られる収率は62.2%である。
【0193】
生成物を、上記の方法に従ってHPLC/MSにより分析する。純度は95.5%であ
る。
【0194】
実施例10:3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノチアジンの合
成(1294-Z18)
実施例9で調製された30gの3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-
イリウムヨウ化物(72.9mmol、1.0当量)を、2l容の三ツ口フラスコ中の6
00mlの水へと導入する。その混合物を、N2流下で完全な溶解が得られるまで撹拌し
、次いで12℃に冷却する。44.8gの85%のヒドロ亜硫酸ナトリウム(218.7
mmol、3.0当量)を、次いでその溶液に撹拌しながら5分間をかけて添加する。
【0195】
反応媒体を、12℃で30分間にわたり撹拌する。58.32gの30%水酸化ナトリ
ウム水溶液(437.4mmol、6.0当量)を、次いで10分間をかけて添加する。
50.8mlの塩化ベンゾイル(437.4mmol、6.0当量)を、反応媒体に25
分間をかけて添加する。
【0196】
反応媒体を、次いで12℃で2時間にわたり撹拌する。600mlのジクロロメタンを
添加し、反応媒体を数分間にわたり撹拌し、次いで150mlの30%水酸化ナトリウム
水溶液を添加し、得られた混合物を12℃で1時間にわたり撹拌したままにする。
【0197】
反応媒体を、2l容の分液漏斗にてN2下で抽出する。水相を、300mlのジクロロ
メタンで2回抽出する。有機相を、150mlの1Nの水酸化ナトリウム水溶液で2回洗
浄し、シリカを通じて通過させ、次いで真空下で蒸発させる。その固体を、300mlの
エタノール中に溶解させ、その溶液を45分間にわたり-20℃に置く。沈殿物を、フリ
ット(ポア3)上で濾別し、氷冷エタノールで洗浄し、次いで通風オーブンにて40℃で
一晩乾燥させる。
【0198】
ヨウ素の定量的測定を、ICP/MSによって実施する。得られた生成物は、1203
ppmの残留ヨウ素を含有する。
【0199】
金属不純物を、衝突セルを備えた誘導結合プラズマ質量分析法によって分析する(CC
Tモード)。インジウムを内部標準として使用する。金を水銀安定剤として使用する。試
料のミネラル化を、高圧下で研究室用マイクロ波オーブンを用いて行う。使用される方法
は、計量添加の技法である。
【0200】
【0201】
実施例11:3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イリウム塩化物の
合成(1294-AG10)
脱ベンゾイル化:
500ml容の三ツ口フラスコ中で、実施例10において得られた5gの3,7-ビス
(ジメチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノチアジン(12.8mmol、1.0当量
)を、200mlのアセトニトリルへと導入する。反応媒体を、-20℃に冷却する。2
.97gの2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)のア
セトニトリル溶液(13.1mmol、1.02当量)13.4mlを調製し、-20℃
に調節する。
【0202】
DDQの冷溶液を、次いで上記三ツ口フラスコ中に注ぎ、-20℃で3時間にわたり撹
拌したままにする。50mlの酢酸エチル(EA)を添加し、得られた混合物を、-20
℃で30分間にわたり撹拌したままにする。反応媒体を、フリット(ポア3)上で濾過し
、次いで10mlの酢酸エチルで2回洗浄する。得られた沈殿物を、50mlのEA/T
HF混合物(25/75)で洗浄し、排出する。
【0203】
塩化:
得られた固体を、40mlのEA中に取る。その混合物を-20℃に冷却し、39ml
の酢酸エチル/HCl(4.3M)(165.12mmol、12.9当量)を素早く添
加する。反応媒体を、-20℃で3時間にわたり撹拌したままにする。得られた沈殿物を
、フリット(ポア3)上で濾別する。得られた固体を、75mlの酢酸エチル中に取る。
その混合物を-20℃で30分間にわたり撹拌し、次いでフリット(ポア3)上で濾過す
る。
【0204】
中和:
pHの測定を、20mlの水中の100mgの沈殿物で実施し、次いでpHを200μ
Lの0.2MのNaOHで3.8に調整する。得られた生成物を、50mlのアセトン中
に取り、次いで-15℃に冷却する。容量を事前に測定した2.3mlの2MのNaOH
を添加し、次いで得られた混合物を-15℃で2時間にわたり撹拌する。得られた沈殿物
を、フリット(ポア3)上で濾別する。その固体を、20mlのアセトン中に取る。その
媒体を-15℃で30分間にわたり撹拌し、フリット(ポア3)上で濾過し、次いでpH
の測定を、上記と同じ条件下で実施する。沈殿物を、通風オーブンにて40℃で一晩乾燥
させる。
【0205】
精製及び水和:
100ml容の三ツ口フラスコ中で、2.67gの塩化されたメチレンブルーを、43
mlのDCM/EtOH混合物(50/50)へと導入する。その媒体を、撹拌しながら
43℃に加熱し、次いでフリット(ポア3)上で熱時濾過する。1.33mlの水を、濾
液に添加し、次いでジクロロメタンを真空下で蒸発除去する。75mlの酢酸エチルをそ
の媒体に添加し、-20℃に冷却し、次いで一晩撹拌したままにする。得られた沈殿物を
、フリット(ポア3)上で濾別し、次いで40mlのTHF/EA溶液(75/25)中
に再スラリー化させる。濾過し、オーブンにて40℃で2日間にわたり乾燥させた後に、
1.45gのメチレンブルーが得られる。
【0206】
ヨウ素の定量的測定を、イオン交換クロマトグラフィーによって実施する。得られた生
成物は、0.015ppm未満の残留ヨウ素を含有する。