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特許7482166ポリエステル樹脂組成物、ポリエステルフィルム及び電子装置用積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物、ポリエステルフィルム及び電子装置用積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240502BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240502BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20240502BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20240502BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240502BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/524
C08K5/13
C08K5/36
C08G63/16
C08J5/18 CFD
H01B7/08
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022054462
(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公開番号】P2023007386
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0084559
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ビョンジェ
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/029760(WO,A1)
【文献】特表平02-500033(JP,A)
【文献】再公表特許第2010/140611(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0411575(US,A1)
【文献】特開2020-038820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
C08K 5/524
C08K 5/13
C08K 5/36
C08G 63/16
H01B 7/08
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオール残基及びジカルボン酸残基を有するポリエステル樹脂を含み、
前記ジオール残基は、シクロヘキサンジメタノール残基を含み、
前記ジカルボン酸残基は、イソフタル酸残基及びテレフタル酸残基を含み、
前記イソフタル酸残基の含量は、前記ジカルボン酸残基全体を100モル%としたとき、5~20モル%であり、
前記シクロヘキサンジメタノール残基の含量は、ジオール残基全体を100モル%としたとき、50~100モル%であり、
酸化防止剤を含み、
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤を含み、
前記硫黄系酸化防止剤は、前記フェノール系酸化防止剤100重量部を基準として30重量部以上含まれ、
マグネシウムとカリウムを1:1~10のモル比で含む静電印加剤を含み、
前記静電印加剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として、前記静電印加剤に含まれた金属又は金属イオンの含量が300~1000ppmである、ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記リン系酸化防止剤と前記硫黄系酸化防止剤を1:0.1~4の重量比で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記リン系酸化防止剤と前記フェノール系酸化防止剤は1:0.1~4の重量比で含まれる、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂は残留触媒を含み、
前記触媒はチタンを含有する、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエステルフィルムであって、
ジオール残基及びジカルボン酸残基を有するポリエステル樹脂を含み、
前記ジオール残基は、シクロヘキサンジメタノール残基を含み、
前記ジカルボン酸残基は、イソフタル酸残基及びテレフタル酸残基を含み、
前記イソフタル酸残基の含量は、前記ジカルボン酸残基全体を100モル%としたとき、~20モル%であり、
前記シクロヘキサンジメタノール残基の含量は、ジオール残基全体を100モル%としたとき、50~100モル%であり、
酸化防止剤またはその反応物を含み、
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤を含み、
マグネシウムとカリウムを1:1~10のモル比で含む静電印加剤を含み、
前記静電印加剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として、前記静電印加剤に含まれた金属又は金属イオンの含量が300~1000ppmであり、
前記ポリエステルフィルムを250℃のオーブンで60分間放置する前を基準として前記放置後の固有粘度である固有粘度の変化率が90%以上であり、
下記式1で表される耐久性指数(単位:/%)が0.12/%~0.32/%である、ポリエステルフィルム。
[式1]
耐久性指数(/%)=△YI×10/△IV(%)
前記式1において、△YIは、前記ポリエステルフィルムを250℃の条件で60分間オーブンに放置する前と後の黄色度の変化量であり、△IV(%)は、前記ポリエステルフィルムを250℃の条件で60分間オーブンに放置する前と後の固有粘度の変化率である。
【請求項6】
前記リン系酸化防止剤及びその分解物を基準として、前記硫黄系酸化防止剤が2倍以下の重量比で含まれる、請求項5に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
1以上の電気伝導性層と、
前記電気伝導性層の少なくとも一部を囲んで配置される絶縁層とを含み、
前記絶縁層は、請求項5に記載のポリエステルフィルムを含む、フレキシブルフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、ポリエステルフィルムに添加剤として酸化防止剤を1種以上添加して、向上した酸化安定性及び耐久性を有するポリエステルフィルム、その製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車の軽量化のために金属素材をプラスチック素材で代替しているが、このような自動車の部品に使用されるプラスチック素材は、高温安定性が求められ、体積の節減のためにスリム化が求められている。このような自動車部品の電装(電気装置)部品の中でフレキシブルフラットケーブル(FFC;Flexible Flat Cable)は、PCB(Printed Circuit Board)又はPBA(Printed Board Assembly)間の接続のために使用する接続ケーブルの一種であって、一般的なコネクタよりも比較的小型であり、厚さも薄いという特徴がある。また、このようなFFCは、柔軟性があるので折り畳むことができるため、携帯電話などの電子機器の内部の接続コネクタとして多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】大韓民国公開特許第10-2019-0059216号
【文献】大韓民国登録特許第10-2094283号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
具現例の目的は、ポリエステルフィルムに添加剤として酸化防止剤を1種以上添加して、向上した酸化安定性及び耐久性を有するポリエステルフィルムを提供することである。具現例の目的は、フレキシブルフラットケーブルなどの電子装置用積層体の製造に活用可能な耐久性が向上したポリエステルフィルムなどを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、具現例の一実施例に係るポリエステル樹脂組成物は、ジオール残基及びジカルボン酸残基を有するポリエステル樹脂を含み、前記ジオール残基は、シクロヘキサンジメタノール残基を含み、前記ジカルボン酸残基は、イソフタル酸残基及びテレフタル酸残基を含み、前記イソフタル酸残基の含量は、前記ジカルボン酸残基全体を100モル%としたとき、0~20モル%であり、前記シクロヘキサンジメタノール残基の含量は、ジオール残基全体を100モル%としたとき、50~100モル%であり、酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤を含み、前記硫黄系酸化防止剤は、前記フェノール系酸化防止剤100重量部を基準として30重量部以上含む。
【0006】
前記リン系酸化防止剤と前記硫黄系酸化防止剤を1:0.1~4の重量比で含むことができる。
【0007】
前記リン系酸化防止剤と前記フェノール系酸化防止剤は1:0.1~4の重量比で含まれてもよい。
【0008】
前記樹脂は残留触媒を含み、前記触媒はチタンを含有することができる。
【0009】
前記リン系酸化防止剤は、3,9-ビス(2,4-ジクミルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンを含むことができる。
【0010】
具現例の他の一実施例に係るポリエステルフィルムは、ジオール残基及びジカルボン酸残基を有するポリエステル樹脂を含み、前記ジオール残基は、シクロヘキサンジメタノール残基を含み、前記ジカルボン酸残基は、イソフタル酸残基及びテレフタル酸残基を含み、前記イソフタル酸残基の含量は、前記ジカルボン酸残基全体を100モル%としたとき、0~20モル%であり、前記シクロヘキサンジメタノール残基の含量は、ジオール残基全体を100モル%としたとき、50~100モル%であり、酸化防止剤またはその反応物を含み、前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤を含み、下記式1で表される耐久性指数(単位:/%)が1以下であってもよい。
【0011】
[式1]
耐久性指数(/%)=△YI×10/△IV(%)
【0012】
前記式1において、△YIは、前記ポリエステルフィルムを250℃の条件で60分間オーブンに放置する前と後の黄色度の変化量であり、△IV(%)は、前記ポリエステルフィルムを250℃のオーブンで60分間放置する前を基準として前記放置後の固有粘度を%で示した値である。
【0013】
前記ポリエステルフィルムを250℃のオーブンで60分間放置する前と後の黄色度の差が5未満であってもよい。
【0014】
前記ポリエステルフィルムを250℃のオーブンで60分間放置する前を基準として前記放置後の固有粘度が85%以上であってもよい。
【0015】
前記リン系酸化防止剤及びその分解物を基準として、前記硫黄系酸化防止剤が2倍以下の重量比で含まれてもよい。
【0016】
前記耐久性指数が0.1~0.5/%であってもよい。
【0017】
具現例の他の一実施例に係る電子装置用積層体は、1以上の電気伝導性層と;前記電気伝導性層の少なくとも一部を囲んで配置される絶縁層と;を含み、前記絶縁層は、上述したポリエステルフィルムを含む。
【0018】
前記電子装置用積層体はフレキシブルフラットケーブルであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
具現例のポリエステル樹脂組成物、二軸配向ポリエステルフィルムなどは、酸化安定性及び耐久性などが向上したポリエステルフィルムなどを提供する。具現例は、繰り返される熱にさらされるフレキシブルフラットケーブルなどの製造に活用されることで、さらに耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同一の図面符号を付した。
【0021】
本明細書において、ある構成が他の構成を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、それ以外の他の構成を除くものではなく、他の構成をさらに含むこともできることを意味する。
【0022】
本明細書において、ある構成が他の構成と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「それらの間に他の構成を介在して連結」されている場合も含む。
【0023】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上に直接当接してBが位置するか、またはそれらの間に別の層が位置しながらA上にBが位置することを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0024】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0025】
本明細書において、特に言及することなく適用するppmの単位は、重量を基準とする。
【0026】
PET(Polyethylene terephthalate)延伸フィルムはFFCなどの製造に活用されているが、PET延伸フィルム自体の耐熱温度に限界があるため、高耐熱性が求められる自動車のパワートレイン、エンジン制御部品などの主要部品に適用されるFFCにはポリエステル延伸フィルムの活用が制限的であるのが現状である。
【0027】
また、PET延伸フィルムの製造時に、金属性重合触媒(Tiなど)を適用する場合、優れた活性により、熱安定剤を共に適用することが必要であり、熱安定剤としてリン系化合物を重合段に過量投入すると、反応性が低下する問題が発生することがある。したがって、十分な量の安定剤を重合段に適用しない場合、重合された樹脂で製造されたフィルムを高温で使用すれば、色変、割れなどの問題が発生することがある。したがって、合成の効率性を確保しながら、酸化安定性と耐久性が同時に向上したPETフィルムの提供が求められる。
【0028】
以下、具現例をより詳細に説明する。
【0029】
ポリエステル樹脂組成物
前記目的を達成するために、具現例に係るポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂及び酸化防止剤を含む。
【0030】
ポリエステル樹脂は、ジオール残基及びジカルボン酸残基を有するものであって、通常の重合方法により製造されたものが適用されてもよく、例示的に、チタン、アンチモンなどの金属含有触媒下で重合反応されたものが適用されてもよい。
【0031】
前記ジオール残基はシクロヘキサンジメタノール残基を含むことができる。
【0032】
前記ポリエステル樹脂は、前記ジオール残基全体を100モル%としたとき、前記シクロヘキサンジメタノール残基を50モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、または98モル%以上含むことができる。また、前記ジオール残基は、実質的に前記シクロヘキサンジメタノール残基からなることができる。前記ジオール残基として前記シクロヘキサンジメタノール残基を前記の含量で適用する場合、耐熱性、耐加水分解性がさらに向上したポリエステル樹脂を提供することができる。
【0033】
前記ジオール残基は、シクロヘキサンジメタノール残基以外のジオール残基を追加で含むことができる。このとき、前記ポリエステル樹脂は、共重合ポリエステル樹脂であってもよい。
【0034】
追加されるジオール残基の具体的な例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,1-ジメチル-1,5-ペンタンジオールまたはこれらの混合物の残基であってもよい。
【0035】
前記ジカルボン酸残基は、イソフタル酸残基及びテレフタル酸残基を含むことができる。前記イソフタル酸残基の含量は、前記ジカルボン酸残基全体を100モル%としたとき、20モル%以下であってもよく、15モル%以下であってもよく、または10モル%以下であってもよい。前記イソフタル酸残基の含量は、0モル%以上であってもよく、5モル%以上であってもよく、または10モル%以上であってもよい。
【0036】
前記テレフタル酸残基の含量は、前記ジカルボン酸残基全体を100モル%としたとき、80モル%以上であってもよく、90モル%以上であってもよく、95モル%以上であってもよく、100モル%以下であってもよい。
【0037】
前記ジカルボン酸残基として、イソフタル酸残基及びテレフタル酸残基を前記で説明した含量で含む場合、相対的に高い融点特性及び低い結晶化特性を有することができる。
【0038】
前記ジカルボン酸残基として、ジメチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸残基;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸残基;脂環族ジカルボン酸残基;及びこれらのエステル化物の残基で構成される群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0039】
前記ポリエステル樹脂は、繰り返し単位として、1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート残基及び1,4-シクロヘキサンジメチレンイソフタレート残基を共に含むことができる。前記ポリエステル樹脂は、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート-co-イソフタレート)(PCTA)樹脂を含むことができる。
【0040】
前記ポリエステル樹脂は、30,000g/mol~50,000g/mol、または30,000g/mol~40,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。
【0041】
前記ポリエステル樹脂の合成は、通常のポリエステル樹脂の合成方法であれば、制限なしに適用可能である。具体的には、ジカルボン酸残基を構成できる単量体とジオール残基を構成できる単量体とを混合した後、エステル反応または縮合反応を誘導してポリエステル樹脂を合成することができる。このとき、反応の効率性の向上のために触媒を導入することができる。前記触媒は、チタン系触媒、アンチモン系触媒などが適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記チタン系触媒は、チタンテトライソプロポキシド(Titanium tetraisopropoxide)を含むことができる。
【0043】
例示的に、前記ポリエステル樹脂の合成には酸化防止剤が適用されてもよい。前記酸化防止剤は、エステル化反応が行われる約275℃の温度で熱酸化を抑制するための目的で必要に応じて適用され得る。但し、ここに適用される酸化防止剤は、適当量のみを適用することが一般的である。これは、酸化防止剤を過量投入して樹脂を合成すれば、重合反応自体を遅滞させる恐れが大きく、製造された樹脂の固有粘度の低下を発生させる場合が多いためである。したがって、ポリエステル樹脂の合成時に影響を及ぼす酸化防止剤は合成過程で消耗され、フィルムの押出に影響を及ぼす程度に過量の酸化防止剤を適用することは実質的に難しい。したがって、フィルムの製造時に酸化防止の目的でポリエステル樹脂組成物に適用される酸化防止剤は、実質的に樹脂の合成過程で適用される酸化防止剤と区分される。
【0044】
合成されたポリエステル樹脂はチップの形態で保管され得、以降、ポリエステルフィルムの製造に活用できる。
【0045】
保管されたポリエステル樹脂は、フィルムの製造前に乾燥工程を経ることができ、前記乾燥は、150℃以下の温度で行うことができ、70~148℃の雰囲気で行うことができる。前記乾燥は、乾燥されたポリエステル樹脂の水分含量が100ppm以下になるように行われ得る。好ましくは、50ppm以下になるように乾燥条件を適用する。前記乾燥工程が150℃を超える温度で行われる場合、ポリエステル樹脂自体に、意図せぬ色変化が発生する恐れがある。
【0046】
酸化防止剤は、前記合成されたポリエステル樹脂と共にポリエステルフィルム製造用組成物に含まれる。
【0047】
酸化防止剤は、通常、化学反応において意図しない副反応を抑制するために適用され、樹脂の合成過程で適用される場合が多い。
【0048】
具現例では、酸化防止剤を、既に合成が完了した樹脂に適用して、フィルム化過程だけでなくフィルムを使用する過程でも酸化安定性及び耐久性を向上させる。このために、具現例は、酸化防止剤を少なくとも3種類適用する。
【0049】
前記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及び硫黄系酸化防止剤を含む。
【0050】
前記フェノール系酸化防止剤は、例示的に、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン;オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;ベンゼンプロパン酸3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシアルキルエステル(アルキルは、炭素数7又は9);トリエチレングリコール-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート;トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0051】
前記リン系酸化防止剤は、例示的に、3,9-ビス(2,4-ジクミルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン[3,9-Bis(2,4-dicumylphenoxy)-2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diphosphaspiro[5.5]undecane];ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト;ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト;テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4'-ビフェニレンジホスホナイト;またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0052】
前記硫黄系酸化防止剤は、ジラウリル-3,3'-チオジプロピオン酸エステル;ジミリスチル-3,3'-チオジプロピオン酸エステル;ジステアリル-3,3'-チオジプロピオン酸エステル;ラウリルステアリル-3,3'-チオジプロピオン酸エステル;ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオンエステル);またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0053】
前記酸化防止剤は、フィルム製造用組成物に含まれる。
【0054】
前記酸化防止剤は、上述した少なくとも3種が共に適用される。
【0055】
前記フェノール系酸化防止剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として0.01~1重量部含まれてもよい。
【0056】
前記リン系酸化防止剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として0.01~1重量部含まれてもよい。
【0057】
前記硫黄系酸化防止剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として0.01~1重量部含まれてもよい。
【0058】
前記硫黄系酸化防止剤は、前記フェノール系酸化防止剤100重量部を基準として30重量部以上適用される。
【0059】
前記酸化防止剤は、前記リン系酸化防止剤と前記硫黄系酸化防止剤を1:0.1~4の重量比で含むことができ、1:0.4~2.2の重量比で含むことができ、または1:0.8~1.2の重量比で含むことができる。
【0060】
前記酸化防止剤は、前記リン系酸化防止剤と前記フェノール系酸化防止剤を1:0.1~4の重量比で含むことができ、または0.3~1.2の重量比で含むことができる。
【0061】
前記の含量又は含量の比率で少なくとも3種類の酸化防止剤を共にフィルム製造ステップで適用する場合、製造されたフィルムを空気雰囲気の約250℃のオーブンで約60分間苛酷処理した後にも、フィルムの割れが発生せず、後述する黄色度の変化量や固有粘度の変化率の特性に優れ、これを総合的に評価する耐久性指数も優れるという結果を得ることができる。
【0062】
すなわち、前記酸化防止剤を樹脂の合成過程ではなくフィルム製造用組成物に適用する場合、フィルム形成過程で不必要な副反応を抑制する酸化防止剤の基本的な機能だけでなく、製造されたフィルムを使用する過程で繰り返して熱が加えられたり冷やされたりする苛酷な環境にさらされても、フィルムの老化を実質的に抑制することができる。また、このような特徴は、フレキシブルフラットケーブルなどの電子部品の絶縁材料として前記ポリエステルフィルムが優れた活用性を有するようにすることができる。
【0063】
ポリエステル樹脂組成物は、静電印加剤をさらに含むことができる。
【0064】
静電印加剤は、アルカリ金属の塩またはアルカリ土金属の塩が適用され得、フィルムの製造工程で押出樹脂のシート化に寄与する。例示的に、前記静電印加剤は、マグネシウム系化合物やカリウム系化合物が適用されてもよく、具体的には、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、またはこれらの混合物が適用されてもよい。
【0065】
静電印加剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として、静電印加剤に含まれた金属又は金属イオンの含量が300~1000ppmになるように適用され得る。
【0066】
静電印加剤は、酢酸マグネシウムと酢酸カリウムの混合物が適用されてもよい。前記混合物は、マグネシウムとカリウムを1:1~10の含量比(モル比)で含むことができ、または1:5~10の含量比(モル比)で含むことができる。このような範囲で、静電印加剤の機能は十分に行いながら、他の添加剤との相互作用が実質的に抑制されることで、耐久性がさらに向上したフィルムを提供することができる。
【0067】
ポリエステルフィルム
前記目的を達成するために、具現例に係るポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂;及び酸化防止剤又はその反応物;を含み、下記式1で表される耐久性指数(単位:/%)が1/%以下である。
【0068】
[式1]
耐久性指数(/%)=△YI×10/△IV(%)
【0069】
前記式1において、△YIは、前記ポリエステルフィルムを250℃の条件で60分間オーブンに放置する前と後の黄色度の変化量であり、△IV(%)は、前記ポリエステルフィルムを250℃のオーブンで60分間放置する前を基準として前記放置後の固有粘度を%で示した値(固有粘度の変化率)である。
【0070】
前記ポリエステルフィルムは、耐熱性及び耐久性が向上したもので、苛酷テストで黄色度の変化や固有粘度の変化の程度が制御されたことを特徴の一つとする。
【0071】
前記耐久性指数は、0/%超1/%以下であってもよく、0.1/%~0.5/%であってもよく、または0.12/%~0.32/%であってもよい。このような範囲で、フィルムの割れの発生を実質的に抑制しながら、耐熱性及び耐久性が向上したポリエステルフィルムを提供することができる。
【0072】
前記ポリエステルフィルムを250℃のオーブンで60分間放置する前と後の黄色度の差が5未満であってもよく、4以下であってもよく、または3以下であってもよく、0.5超であってもよく、または1超であってもよい。このようなポリエステルフィルムの黄色度の差は、耐熱性が向上したことを意味し、特に、チタンのような金属含有触媒を適用した場合、チタンなどの金属触媒の活性が強いため、これを抑制することが容易ではないという点を考慮して、優れた結果である。
【0073】
前記ポリエステルフィルムを250℃のオーブンで60分間放置する前を基準として前記放置後の固有粘度である固有粘度の変化率が85%以上であってもよく、90%以上であってもよく、92%以上であってもよく、または93%以上であってもよい。前記固有粘度の変化率は、100%未満であってもよく、98%以下であってもよく、または96%以下であってもよい。このようなポリエステルフィルムの高い固有粘度の変化率は、耐久性が向上したことを意味し、特に、チタンのような金属含有触媒を適用した場合、金属触媒の活性が強いため、これを抑制することが容易ではないという点を考慮して、非常に優れた結果である。
【0074】
前記ポリエステルフィルムを250℃のオーブンで60分間放置する苛酷テスト後にも割れが発生しないという特徴も有する。前記割れのテストは、前記苛酷テスト後に試験片を約90°に折り曲げて割れるかどうかを目視で評価したことを基準とする。
【0075】
前記ポリエステルフィルムは、ジオール残基及びジカルボン酸残基を有するポリエステル樹脂を含み、前記ジオール残基はシクロヘキサンジメタノール残基を含み、前記ジカルボン酸残基はイソフタル酸残基及びテレフタル酸残基を含む。
【0076】
前記イソフタル酸残基の含量は、前記ジカルボン酸残基全体を100モル%としたとき、0~20モル%であってもよく、前記シクロヘキサンジメタノール残基の含量は、ジオール残基全体を100モル%としたとき、50~100モル%であってもよい。
【0077】
前記ジオール残基、前記ジカルボン酸残基などについての具体的な説明は、上記の説明と重複するので、その記載を省略する。
【0078】
前記ポリエステルフィルムは、酸化防止剤またはその反応物を含む。
【0079】
酸化防止剤は、フィルムの製造過程または製造後のフィルムにおいて熱、紫外線などの主に外部から加えられるエネルギーに樹脂よりも先に反応して、樹脂の酸化の程度を遅らせ、老化を抑制する役割を果たす。具現例では、酸化防止剤の種類及び含量を特定して、さらに優れた耐久性を得た。
【0080】
酸化防止剤として3種類の酸化防止剤を共に使用し、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤の例示、その含量、含量の比率などについては、上記で説明した通りであるので、その記載を省略する。
【0081】
前記フェノール系酸化防止剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として0.01~1重量部含まれてもよい。前記リン系酸化防止剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として0.01~1重量部含まれてもよい。前記硫黄系酸化防止剤は、前記ポリエステル樹脂100重量部を基準として0.01~1重量部含まれてもよい。前記酸化防止剤の含量は、残留酸化防止剤とその分解産物の和で計算され得る。
【0082】
前記酸化防止剤は、前記リン系酸化防止剤と前記硫黄系酸化防止剤を1:0.1~4の重量比で含むことができ、1:0.4~2.2の重量比で含むことができ、または1:0.8~1.2の重量比で含むことができる。
【0083】
前記酸化防止剤は、前記リン系酸化防止剤と前記フェノール系酸化防止剤を1:0.1~4の重量比で含むことができ、または0.3~1.2の重量比で含むことができる。
【0084】
前記の含量又は含量の比率で少なくとも3種類の酸化防止剤を共にフィルム製造ステップで適用する場合、製造されたフィルムを空気雰囲気の約250℃のオーブンで約60分間苛酷処理した後にも、フィルムの割れが発生せず、後述する黄色度の変化量や固有粘度の変化率の特性に優れ、これを総合的に評価する耐久性指数も優れるという結果を得ることができる。
【0085】
ポリエステル樹脂組成物に投入した酸化防止剤の含量と、製造されたポリエステルフィルムで測定された酸化防止剤の含量とに差が発生し得る。これは、上述したように酸化防止剤自体が分解が容易に行われるためであり、特に、硫黄系酸化防止剤の場合、分解産物がガスの形態で除去されることもある。したがって、ポリエステルフィルムにおいて、前記リン系酸化防止剤及びその分解物を基準として、前記硫黄系酸化防止剤が2倍以下の重量比で検出され得る。
【0086】
前記ポリエステルフィルムは、電気伝導性層を囲む絶縁層として活用可能であり、電気伝導性層で発生する反復的な高熱にさらされても、比較的安定した物性を長期的に維持することができる。
【0087】
前記ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0088】
前記ポリエステルフィルムの製造方法は、ジオール及びジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂組成物を押出してシートを形成するシート形成ステップと;前記シートを長手方向及び幅方向に延伸し、延伸されたシートを熱固定する延伸ステップと;を含むことができる。
【0089】
ポリエステル樹脂組成物に含まれるポリエステル樹脂は乾燥されたものであってもよい。前記乾燥は、前記押出工程の前に行う。前記乾燥温度は、色変を防止するために、150℃以下であることがよい。前記押出は、230℃~300℃、または250℃~290℃の温度条件で行われてもよい。
【0090】
延伸は、予熱後に適用される。前記予熱は、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準としてTg+5℃~Tg+50℃を満たす範囲、例えば、70℃~90℃の範囲で行われてもよい。このような場合、ポリエステルフィルムが延伸に必要とする柔軟性を確保し、延伸過程で破断する現象を抑制することができる。
【0091】
前記延伸は二軸延伸により行われてもよい。例えば、同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法を通じて長手方向(機械方向、MD)及び幅方向(テンター方向、TD)の2軸に延伸されてもよい。好ましくは、まず一方向に延伸した後、その方向の直角方向に延伸する逐次二軸延伸法が行われてもよい。
【0092】
前記長手方向の延伸比は2.0~5.0であってもよく、または3.0~3.5であってもよい。また、前記幅方向の延伸比は2.0~5.0であってもよく、または3.7~4.1であってもよい。前記幅方向の延伸比(d1)に対する長手方向の延伸比(d2)の比率(d2/d1)が0.9~1.4、または1.1~1.3であってもよい。前記延伸比(d1,d2)は、延伸前の長さを1.0としたとき、延伸後の長さを示す。
【0093】
延伸の速度は6.5m/min~8.5m/minであってもよいが、特に限定されない。
【0094】
延伸されたシートは熱固定され得、熱固定温度は150℃~250℃であってもよく、具体的に235℃~245℃であってもよい。前記熱固定は5秒~10分間行われてもよく、より具体的に10秒~7分間行われてもよい。
【0095】
熱固定を開始した後に、フィルムは長手方向及び/又は幅方向に弛緩し得、このときの温度範囲は150℃~250℃であってもよく、弛緩率は1%~10%、または3%~7%であってもよい。
【0096】
ポリエステルフィルムの厚さは1μm~1,000μmであってもよく、または10μm~500μmであってもよい。
【0097】
フレキシブルフラットケーブルなどの電子装置用積層体
前記目的を達成するために、具現例に係る電子装置用積層体は、多層構造を有するもので、1以上の電気伝導性層と;前記電気伝導性層の少なくとも一部を囲んで配置される絶縁層と;を含む。
【0098】
前記絶縁層は、上述したポリエステルフィルムが含まれ得る。
【0099】
前記電気伝導性層は、例示的に、銅、銀、白金、電気伝導性高分子、これらの混合物などが適用されてもよく、ワイヤの形態で適用されるか、または薄膜の形態で適用されてもよい。例示的に、銅線などが適用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0100】
前記電子装置用積層体は、第1絶縁層上に電気伝導性層を配置し、その上に第2絶縁層を配置した後、これらを貼り合わせて製造され得る。前記貼り合わせを通じて、実質的に前記第1絶縁層と前記第2絶縁層が区分されずに電気伝導層を囲むように見えることができる。
【0101】
前記第1絶縁層と第2絶縁層は、それぞれ前記ポリエステルフィルムを含むことができ、例示的に、前記電気伝導性層と直接当接する層に前記ポリエステルフィルムが適用され得る。
【0102】
前記ポリエステルフィルムは、耐酸化性及び耐久性が向上して、より相対的に高い高温安定性が要求される自動車のパワートレイン、エンジン制御部品などの主要部品に適用されるFFCの絶縁層としての活用度に優れる。
【0103】
以下、具体的な実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0104】
1)ポリエステル樹脂の製造
ジオールとしてシクロヘキサンジメタノール(Cyclohexanedimethanol、CHDM)100モル%、及びジカルボン酸としてテレフタル酸(Terephthalic Acid、TPA)95モル%及びイソフタル酸(Isophthalic Acid、IPA)5モル%の単量体混合物を撹拌機に投入し、Ti触媒を前記単量体混合物100重量部を基準として0.001重量部投入した後、275℃でエステル交換反応を行った。前記反応物を真空設備が備えられた別途の反応器に移送した後、285℃で160分間重合してポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタル酸(Polycyclohexylene dimethylene terephthalic Acid、PCTA)を得た。前記樹脂は、150℃以下の温度で乾燥させた後、以降の工程に適用された。このように製造されたポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタル酸は、以降、樹脂と称する。前記樹脂は、以下の実施例1~4、比較例1及び2での樹脂として適用した。
【0105】
2)二軸配向ポリエステルフィルムの製造
フェノール系酸化防止剤としてビーエーエスエフ(BASF)社のIrganox 1010を適用した。
【0106】
リン系酸化防止剤としてドーバー(Dover)社のDoverphos S9228を適用した。
【0107】
硫黄系酸化防止剤としてアデカ(Adeka)社のAO-412Sを適用した。
【0108】
実施例1
下記表1に示したように、前記樹脂にフェノール系酸化防止剤500ppm、リン系酸化防止剤1000ppm、硫黄系酸化防止剤1000ppmとして酸化防止剤を総2500ppm添加し、静電印加剤を最終フィルムの金属(金属元素と金属イオンを含む)の含量を基準として400ppm添加して押出機に投入し、約290℃で押出し、キャスティングロールにより約20℃でキャスティングしてシートを形成した。前記シートを予熱した後、110℃の温度で長手方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸した。以降、延伸されたシートを約30秒間熱固定し、弛緩して、それぞれのポリエステルフィルムを製造した。延伸比及び熱固定温度などは、下記表1に示した。
【0109】
実施例2~4、及び比較例1~3
他の条件は実施例1と同一であるが、表1による含量及び組成で、それぞれ実施例2~4、及び比較例1~2のポリエステルフィルムを製造した。
【0110】
【表1】
【0111】
*実施例1の静電印加剤は、酢酸カリウムと酢酸マグネシウムを5:1のモル比で混合したものを適用した。
*実施例2の静電印加剤は、酢酸カリウムと酢酸マグネシウムを9:1のモル比で混合したものが適用された。
*実施例3及び実施例4、比較例1及び比較例2の静電印加剤は、それぞれ酢酸マグネシウムを適用した。
【0112】
3)二軸配向ポリエステルフィルムの物性評価
色変の評価
製造した二軸配向ポリエステルフィルムを100mm×100mmのサイズに切断し、250℃の条件で60分間オーブンに放置(以下、「オーブン処理」という)した後、YI値の変化量を△YIで表2に示した。
【0113】
△YIは、オーブン処理前のYI値とオーブン処理後のYI値との差を示す。
【0114】
割れの評価
フィルムの割れの有無も、前記色変の評価と同じ方式でオーブンに熱処理を行った後、室温まで冷まし、約90°にフィルムを折り曲げたとき、目視で割れが発生するか否かで評価し、下記表2に示した。
【0115】
IVの変化率の評価
製造されたフィルムの固有粘度(IV、dL/g)の変化率(△IV)は、フィルムを切断して250℃の条件で60分間オーブンに放置した後、回収し、オーブンに放置前/後のIVを測定した。フィルムのIVは、フィルム(10mg)をそれぞれ100℃のオルトクロロフェノール(Ortho-Chlorophenol)に溶解させた後、35℃の恒温槽でオストワルド(Ostwald)粘度計を用いて試料の落下時間を求め、相対粘度を測定した。得られた相対粘度は、相対粘度-固有粘度の換算表に基づいて固有粘度(IV)に変換した。
【0116】
△IV(%)は、250℃の条件で60分間オーブンに放置した後のポリエステルフィルムのIV値を、250℃の条件で60分間オーブンに放置する前のポリエステルフィルムのIV値で除した値である
【0117】
耐久性指数の評価
固有粘度及び黄色度の変化を全て考慮したフィルムの耐久性指数を下記表2に示した。耐久性指数は、下記式1で計算される。
【0118】
[式1]
耐久性指数=△YI×10/△IV(%)
【0119】
【表2】
【0120】
表1及び表2を参照すると、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤を適切な比率で添加して二軸配向ポリエステルフィルムを製造した実施例1~4の場合、酸化防止剤が添加されないか、または硫黄系酸化防止剤が少なく添加された比較例1~2に比べて、色変化(YI及びb値の変化)が少なく、目視上で割れが観察されなかった。これは、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤に硫黄系酸化防止剤を共に添加することによって耐久性が向上して割れが抑制されるものと判断される。
【0121】
ポリエステルフィルムがFFCなどの絶縁材料として活用される際に、繰り返される昇温と冷却過程で耐久性を維持するためには、黄色度と固有粘度の変化率を共に制御しなければならず、これを評価するために導入した耐久性指数は、実施例の場合が優れるものと示され、特に、実施例1が最も低く示され、黄変と固有粘度の2面を同時に向上させるものと評価された。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。