IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 瀬戸 元の特許一覧 ▶ 姫城 勝男の特許一覧 ▶ 納冨 啓一の特許一覧

<>
  • 特許-植物材料の処理方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】植物材料の処理方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/37 20160101AFI20240502BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240502BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20240502BHJP
   C12G 3/02 20190101ALI20240502BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20240502BHJP
【FI】
A23K10/37
B09B3/40
C05F11/00
C12G3/02
B09B101:85
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022055430
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147742
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】522127531
【氏名又は名称】瀬戸 元
(73)【特許権者】
【識別番号】514080718
【氏名又は名称】姫城 勝男
(73)【特許権者】
【識別番号】504038284
【氏名又は名称】納冨 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】納冨 啓一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-178439(JP,A)
【文献】特開平06-340540(JP,A)
【文献】特開2016-149962(JP,A)
【文献】特開平09-141241(JP,A)
【文献】特開2019-147961(JP,A)
【文献】特開2004-244640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/37
B09B 1/00-5/00
C05F 11/00
C12G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物材料を油揚処理した後に、アルコール中で圧砕し、圧砕後に醗酵処理して、飲料用アルコール、飼料、肥料の原料とすることを特徴とする植物材料の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木竹材等の植物材料を処理する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物材料、たとえば竹は、繁殖力が高く広く密集して成長することから、有効に活用されずに放置されてしまうと、竹害の原因となってしまう。
【0003】
そのため、従来より、植物材料は、飼料などの原料として有効に活用する方法が開発されている。
【0004】
しかし、植物材料は、繊維質であることから硬いために、飼料などの原料として活用する場合には、飼料効果を向上させるため等を目的として植物材料を圧砕する必要がある。
【0005】
たとえば、竹材を竹の繊維質を解繊しながら圧砕して、飼料などの原料とする方法が開発されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-58222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、植物材料をそのまま圧砕機で圧砕すると、植物材料の硬さに起因して圧砕機の摩耗や破損が生じてしまい、良好に植物材料を圧砕することができなかった。
【0008】
また、植物材料には種々の菌が付着しており、菌が飼料などに含有されてしまい、飼料などの原料には適さないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、請求項1に係る本発明では、植物材料の処理方法において、植物材料を油揚処理した後に、アルコール中で圧砕し、圧砕後に醗酵処理して、飲料用アルコール、飼料、肥料の原料とすることにした。
【発明の効果】
【0014】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0015】
すなわち、本発明では、植物材料の処理方法において、植物材料を油揚処理した後に圧砕することにしているために、破砕時に油揚処理された植物材料に油が含有されており、飛散性や摩耗性や分離性に優れており、良好に植物材料を圧砕することができる。
【0016】
特に、植物材料の部位ごとに異なる温度で油揚処理することにした場合には、植物材料の部位ごとに適した温度で植物材料を加工(炭化)させることができる。
【0017】
また、処理後の植物材料を燃料として用いた場合には、処理前の植物材料に含まれていた揮発性物質が除去又は熱分解されることで安全な燃料として有効に利用することができる。
【0018】
また、アルコール中で圧砕後にアルコール分を分離回収することにした場合には、植物材料の殺菌を行いながら良好に植物材料を圧砕することができるとともに、回収したアルコールを圧砕時に循環して有効に利用することができる。
【0019】
また、圧砕後に醗酵処理して、飲料用アルコール、飼料、肥料の原料とすることにした場合には、殺菌された安全な原料として植物材料を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る植物材料の処理方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る植物材料の処理方法の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0022】
処理対象となる植物材料は、竹材、木材、菌床材、アシ(ヨシ)などの植物であり、基茎部分に限られず、先端小径部分や枝葉部分や伐根部分をも含むものである。これらの植物材料を予め後述する油揚処理や液中圧砕に適したサイズに破断しておく。
【0023】
破断した植物材料は、そのまま、後述する液中圧砕してもよいが、伐採後に長期保管された植物材料や乾燥した植物材料などのように含有する水分が減少した植物材料の場合は、充水(真空給水)させた後に、凍結させ、凍結状態の植物材料を油揚処理や液中圧砕(凍結圧砕)することが望ましい。
【0024】
本発明では、破断した植物材料は、たとえばオイルクッカーによるフライ加工のように油揚処理を施すことにしている。
【0025】
油揚処理においては、全ての植物材料を同一の加熱温度(油温)としてもよく、植物材料の部位ごとに異なる加熱温度としてもよい。たとえば、植物材料の先端小径部分や枝葉部分や伐根部分は、炭化しない温度(たとえば、110℃以上150℃未満)で低温加工し、その他の基茎部分は、部分的に炭化する温度(たとえば、150℃以上170℃未満)で半炭化加工したり、全体的に炭化する温度(たとえば、170℃以上250℃未満)で全炭化加工する。
【0026】
このように植物材料を油揚処理することで、粗飼料としてのエネルギーを増大させて飼料としての効果を向上させることができ、植物材料に含有されるヒノキチオール等の高揮発性物質を除外したり熱分解することができる。また、油揚処理前に植物材料を充水させた場合には、油揚処理時に植物材料の内部の水分の爆発的な膨張によって植物材料を破砕することもできる。
【0027】
低温加工した植物材料は、酵母や菌床等を混合して熟成させることで飼料とすることができ、半炭化加工や全炭化加工した植物材料は、そのまま飼料とすることができる。これらの植物材料は、主に整腸効果に優れた飼料となり、糞を肥料化することもできる。なお、酵母としては、アルコール醗酵する酵母でもよく、その他の酵母でもよい。また、炭化させた植物材料は、バイオマス燃料や燃焼材や着床材として利用することもできる。
【0028】
このように、植物材料の部位ごとに異なる温度で油揚処理することにした場合には、植物材料の部位ごとや植物材料の状態や使用目的などにあわせて好適な温度で植物材料を加工(炭化)させることができる。
【0029】
なお、油揚処理の熱源としては、油に水分や異物が含まれた廃油をそのまま利用できる蒸発ガス燃焼バーナーを用いることができ、また、油揚処理に用いる油としても、残渣物が混入された廃食用油を濾過したものを用いることができる。濾過物を飼料や肥料となる植物材料に混合して利用することもできる。
【0030】
油揚処理された植物材料は、液中圧砕する。植物材料を油揚処理した後に圧砕することにしているために、圧砕時に油揚処理された植物材料に油が含有されており、飛散性や摩耗性や分離性に優れており、良好に植物材料を圧砕することができる。
【0031】
液中圧砕は、植物材料をアルコールに浸漬させた状態で植物材料の繊維質を解繊しながら圧砕する。なお、アルコールに水を加えて(加水して)から液中圧砕を行ってもよく、また、アルコールでの液中圧砕後に水を加えて(加水して)もよい。
【0032】
このように、液中圧砕は、植物材料をアルコール中で圧砕しているために、大気圧下でアルコールによって植物材料の消毒や植物材料に付着した菌の殺菌(不活化)を行うことができ、また、圧砕時の高温化を抑制して圧砕機の摩耗や故障を防止することができる。液中圧砕した植物材料は、そのまま各種の公知の方法で原料として用いることができる。さらに、植物材料に含有される油分の洗浄除去することも可能である。
【0033】
液中圧砕後には、真空蒸発吸引などの公知の方法によってアルコールを分離して回収する。回収したアルコールは、再び液中圧砕で用いてもよい。
【0034】
また、液中圧砕後には、遠心分離などの公知の方法によって水分を分離して回収する。回収した水分は、再び液中圧砕で用いてもよく、後述する醗酵時に使用してもよい。
【0035】
液中圧砕した植物材料は、水と醗酵剤(各種醗酵菌でもよく、きのこ類の栽培床として使用された木材などの菌付着物でもよい。)とを添加して、醗酵処理する。
【0036】
醗酵後には、フィルタープレスなどの公知の方法によって圧搾して、固液分離する。
【0037】
分離された液体は、飲料用アルコールとして使用することができる。なお、醗酵処理で使用する醗酵剤としては、アルコール醗酵に適したものであればよく、醗酵用酵母などを使用することができる。
【0038】
また、分離された固体(残渣)は、飼料や肥料として使用することができる。
【0039】
特に、分離された固体を飼料とする場合には、残渣物をペレット化して保存し、保存期間内では飼料として使用し、保存期間後には肥料として使用することができる。
【0040】
また、分離された固体を肥料とする場合には、残渣物を竹虫やカブトムシやミミズなどの食用虫や白蟻などの養殖に用いてから肥料として使用するようにしてもよい。
【0041】
また、分離された固体を肥料や飼料とする場合には、残渣物をオイルクッカーなどによってフライ加工してもよい。
【0042】
以上に説明したように、上記植物材料の処理方法は、植物材料を油揚処理した後に圧砕する構成となっている。
【0043】
そのため、上記構成の植物材料の処理方法では、破砕時に油揚処理された植物材料に油が含有されており、飛散性や摩耗性や分離性に優れており、良好に植物材料を圧砕することができる。
【0044】
また、上記植物材料の処理方法は、植物材料の部位ごとに異なる温度で油揚処理する構成となっている。
【0045】
そのため、上記構成の植物材料の処理方法では、植物材料の部位ごとに適した温度で植物材料を加工(炭化)させることができる。
【0046】
また、上記植物材料の処理方法は、アルコール中で圧砕後にアルコール分を分離回収する構成となっている。
【0047】
そのため、上記構成の植物材料の処理方法では、植物材料の殺菌を行いながら良好に植物材料を圧砕することができるとともに、回収したアルコールを圧砕時に循環して有効に利用することができる。
【0048】
また、上記植物材料の処理方法は、圧砕後に醗酵処理して、飲料用アルコール、飼料、肥料の原料とする構成となっている。
【0049】
そのため、上記構成の植物材料の処理方法では、殺菌された安全な原料として植物材料を有効に活用することができる。
図1