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特許7482176T細胞および/またはHLA受容体の標的化破壊
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】T細胞および/またはHLA受容体の標的化破壊
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240502BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240502BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240502BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240502BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240502BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/55
C12N9/16 Z ZNA
C12N15/62 Z
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
C07K14/725
C07K16/28
C07K19/00
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022137773
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2019568660の分割
【原出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2022164822
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】62/521,132
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/542,052
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/573,956
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー コンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】スミティ ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー ケー. リー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド パッション
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ジェイ. リーバー
(72)【発明者】
【氏名】レイ ジャン
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508468(JP,A)
【文献】国際公開第2017/011519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞においてベータ-2-ミクログロブリン(B2M遺伝子を不活性化させるための組成物であって、前記組成物が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又は前記ZFNをコードするポリヌクレオチドを含み、前記ZFNが、前記B2M遺伝子における標的部位に結合し、前記標的部位が、配列番号126又は配列番号127を含み、前記ZFNが、第1のZFNと第2のZFNとを含み
(i)前記第1のZFNが、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)を含み、前記ZFPが、F1からF5の順番づけられた5つのジンクフィンガードメインを含み、前記5つのジンクフィンガードメインが、
F1:AQCCLFH(配列番号128);
F2:DQSNLRA(配列番号42);
F3:RSANLTR(配列番号129);
F4:RSDDLTR(配列番号130);及び
F5:QSGSLTR(配列番号66)
である認識ヘリックス領域を含み、並びに、
(ii)前記第2のZFNが、ZFPを含み、前記ZFPが、F1からF6の順番づけられた6つのジンクフィンガードメインを含み、前記6つのジンクフィンガードメインが、
F1:RSDDLSK(配列番号131);
F2:DSSARKK(配列番号132);
F3:DRSNLSR(配列番号22);
F4:QRTHLRD(配列番号133);
F5:QSGHLAR(配列番号29);及び
F6:DSSNREA(配列番号134)
である認識ヘリックス領域を含む、組成物。
【請求項2】
前記ZFNが、挿入及び/又は欠失により前記B2M遺伝子を改変する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
改変部位が、配列番号126及び配列番号127を含む配列の間に配置される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又は前記ZFNをコードするポリヌクレオチドを含む組成物であって、細胞のゲノムに、1つ又は複数のドナーポリヌクレオチドを組み込む方法における使用のための組成物であって、
前記方法が、
(a)前記ZFN又は前記ZFNをコードするポリヌクレオチドを前記細胞と接触させることであって、前記ZFNベータ-2-ミクログロブリン(B2M遺伝子における標的部位に結合し、前記標的部位が配列番号126又は配列番号127を含み、前記ZFNが、第1のZFNと第2のZFNとを含み
(i)前記第1のZFNが、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)を含み、前記ZFPが、F1からF5の順番づけられた5つのジンクフィンガードメインを含み、前記5つのジンクフィンガードメインが、
F1:AQCCLFH(配列番号128);
F2:DQSNLRA(配列番号42);
F3:RSANLTR(配列番号129);
F4:RSDDLTR(配列番号130);及び
F5:QSGSLTR(配列番号66)
である認識ヘリックス領域を含み、並びに、
(ii)前記第2のZFNが、ZFPを含み、前記ZFPが、F1からF6の順番づけられた6つのジンクフィンガードメインを含み、前記6つのジンクフィンガードメインが、
F1:RSDDLSK(配列番号131);
F2:DSSARKK(配列番号132);
F3:DRSNLSR(配列番号22);
F4:QRTHLRD(配列番号133);
F5:QSGHLAR(配列番号29);及び
F6:DSSNREA(配列番号134)
である認識ヘリックス領域を含む、前記ZFN又は前記ポリヌクレオチドを前記細胞と接触させること、
(b)1つ又は複数のドナーポリヌクレオチドを前記細胞と接触させること、及び
(c)前記細胞のゲノム内において、1つ又は複数のドナーポリヌクレオチドを、切断されたB2M遺伝子に組み込むこと
を含む、組成物。
【請求項5】
前記ZFNが、配列番号126及び配列番号127を含む配列の間に配置される改変部位を改変する、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ドナーポリヌクレオチドが、キメラ抗原受容体(CAR)又は抗体結合T細胞受容体(ACTR)をコードする、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
細胞においてベータ-2-ミクログロブリン(B2M遺伝子を不活性化するin vitro又はex vivo方法であって、
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又は前記ZFNをコードするポリヌクレオチドを、前記細胞と接触させることを含み、前記ZFNが前記B2M遺伝子における標的部位に結合し、前記標的部位が配列番号126又は配列番号127を含み、前記ZFNが、第1のZFNと第2のZFNとを含み
(i)前記第1のZFNが、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)を含み、前記ZFPが、F1からF5の順番づけられた5つのジンクフィンガードメインを含み、前記5つのジンクフィンガードメインが、
F1:AQCCLFH(配列番号128);
F2:DQSNLRA(配列番号42);
F3:RSANLTR(配列番号129);
F4:RSDDLTR(配列番号130);及び
F5:QSGSLTR(配列番号66)
である認識ヘリックス領域を含み、並びに、
(ii)前記第2のZFNが、ZFPを含み、前記ZFPが、F1からF6の順番づけられた6つのジンクフィンガードメインを含み、前記6つのジンクフィンガードメインが、
F1:RSDDLSK(配列番号131);
F2:DSSARKK(配列番号132);
F3:DRSNLSR(配列番号22);
F4:QRTHLRD(配列番号133);
F5:QSGHLAR(配列番号29);及び
F6:DSSNREA(配列番号134)
である認識ヘリックス領域を含む、in vitro又はex vivo方法。
【請求項8】
前記ZFNが、挿入及び/又は欠失によって、前記B2M遺伝子を改変する、請求項に記載のin vitro又はex vivo方法。
【請求項9】
前記ZFNが、配列番号126及び配列番号127を含む配列の間に配置される改変部位を改変する、請求項7又は8に記載のin vitro又はex vivo方法
【請求項10】
細胞のゲノムに、1つ又は複数のドナーポリヌクレオチドを組み込むin vitro又はex vivo方法であって、
(a)ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)又は前記ZFNをコードするポリヌクレオチドを前記細胞と接触させることであって、前記ZFNベータ-2-ミクログロブリン(B2M遺伝子における標的部位に結合し、前記標的部位が配列番号126又は配列番号127を含み、前記ZFNが、第1のZFNと第2のZFNとを含み
(i)前記第1のZFNが、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)を含み、前記ZFPが、F1からF5の順番づけられた5つのジンクフィンガードメインを含み、前記5つのジンクフィンガードメインが、
F1:AQCCLFH(配列番号128);
F2:DQSNLRA(配列番号42);
F3:RSANLTR(配列番号129);
F4:RSDDLTR(配列番号130);及び
F5:QSGSLTR(配列番号66)
である認識ヘリックス領域を含み、並びに、
(ii)前記第2のZFNが、ZFPを含み、前記ZFPが、F1からF6の順番づけられた6つのジンクフィンガードメインを含み、前記6つのジンクフィンガードメインが、
F1:RSDDLSK(配列番号131);
F2:DSSARKK(配列番号132);
F3:DRSNLSR(配列番号22);
F4:QRTHLRD(配列番号133);
F5:QSGHLAR(配列番号29);及び
F6:DSSNREA(配列番号134)
である認識ヘリックス領域を含む、前記ZFN又は前記ポリヌクレオチドを前記細胞と接触させること、
(b)1つ又は複数のドナーポリヌクレオチドを前記細胞と接触させること、及び
(c)前記細胞のゲノム内において、1つ又は複数のドナーポリヌクレオチドを、切断されたB2M遺伝子に組み込むこと
を含む、in vitro又はex vivo方法。
【請求項11】
前記ZFNが、配列番号126及び配列番号127を含む配列の間に配置される改変部位を改変する、請求項10に記載のin vitro又はex vivo方法。
【請求項12】
前記ドナーポリヌクレオチドが、キメラ抗原受容体(CAR)又は抗体結合T細胞受容体(ACTR)をコードする、請求項10又は11に記載のin vitro又はex vivo方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年6月16日に出願された米国仮出願第62/521,132号、2017年8月7日に出願された米国仮出願第62/542,052号および2017年10月18日に出願された米国仮出願第62/573,956号の利益を主張し、これらの開示は、その全体が本明細書において参考として援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、リンパ球および幹細胞を含むヒト細胞のゲノム改変の分野にある。
【背景技術】
【0003】
背景
遺伝子治療は、ヒト治療学の新しい時代の莫大な潜在性を秘める。これらの方法論は、標準医療行為によって対処可能ではなかった状態のための処置を可能にする。遺伝子治療は、遺伝子座の破壊(不活性化)もしくは補正、および導入遺伝子に作動可能に連結された特異的外因性プロモーターによって、またはゲノムへの挿入部位で見出される内因性プロモーターによって調節することができる発現可能な導入遺伝子の挿入などの、ゲノム編集技術の多くの変形を含むことができる。
【0004】
導入遺伝子の送達および挿入は、この技術のいかなる真の実施のために解決されなければならない障害物の例である。例えば、様々な遺伝子送達方法が治療的使用のために潜在的に利用可能であるが、全ては安全性、耐久性と発現レベルとの間の実質的なトレードオフを伴う。エピソームとして導入遺伝子を提供する方法(例えば、アデノウイルス(Ad)、アデノ随伴ウイルス(AAV)およびプラスミドをベースとした系)は高い初期の発現レベルを得ることができるが、これらの方法は堅牢なエピソーム複製を欠き、そのことは有糸分裂が活発な組織における発現の持続時間を制限する可能性がある。対照的に、所望の導入遺伝子のランダムな組込みをもたらす送達方法(例えば、レンチウイルス(LV)の組込み)はより永続的な発現を提供するが、ランダムな挿入の非標的化的性質のために、レシピエント細胞における調節されない成長を引き起こすことがあり、ランダムに組み込まれた導入遺伝子カセットの近くでのオンコジーンの活性化を通して悪性疾患をもたらすおそれがある。さらに、導入遺伝子の組込みが、複製によって駆動される喪失を回避するとしても、それは導入遺伝子に融合した外因性プロモーターの最終的なサイレンシングを防止しない。時間がたつと、そのようなサイレンシングは、大多数の非特異的挿入事象の導入遺伝子発現の低減をもたらす。さらに、導入遺伝子の組込みがあらゆる標的細胞において起こることは稀であり、そのことは、所望の治療効果を達成するために目的の導入遺伝子の十分に高い発現レベルを達成することを困難にする可能性がある。
【0005】
近年、選択されたゲノム遺伝子座での編集を偏らせるための部位特異的ヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)、特異的切断をガイドするための工学技術で作製された(engineered)crRNA/tracr RNA(「単一ガイドRNA」)によるCRISPR/Cas系など)による切断を使用する、遺伝子改変のための新しい戦略(例えば、不活性化、補正および/または導入遺伝子の組み込み)が開発された。例えば、米国特許第9,937,207号;第9,255,250号;第9,045,763号;第9,005,973号;第8,956,828号;第8,945,868号;第8,703,489号;第8,586,526号;第6,534,261号;第6,599,692号;第6,503,717号;第6,689,558号;第7,067,317号;第7,262,054号;第7,888,121号;第7,972,854号;第7,914,796号;第7,951,925号;第8,110,379号;第8,409,861号;米国特許出願公開第2017/0211075号;第2003/0232410号;第2005/0208489号;第2005/0026157号;第2005/0064474号;第2006/0063231号;第2008/0159996号;第2010/00218264号;第2012/0017290号;第2011/0265198号;第2013/0137104号;第2013/0122591号;第2013/0177983号および第2013/0177960号および第2015/0056705号を参照されたい。さらに、標的化ヌクレアーゼはアルゴノート系に基づいて開発されており(例えば、T.thermophilusから、「TtAgo」として公知、Swartsら(2014年)Nature 507巻(7491号):258~261頁を参照のこと)、それは、ゲノム編集および遺伝子治療における使用のための可能性も有し得る。古典的な組込みアプローチと比較して、遺伝子改変へのこのヌクレアーゼ媒介アプローチは、改善された導入遺伝子発現、安全性の増加および発現の持続性の見込みを提供するが、その理由は、それが、遺伝子サイレンシングまたは近くのオンコジーンの活性化のリスクが最小限であるために、正確な導入遺伝子の配置を可能にするからである。
【0006】
T細胞受容体(TCR)は、T細胞の選択的活性化の必須の部分である。抗体にある程度の類似性を有して、TCRの抗原認識部分は、ヘテロダイマーを形成するように共集合する、2本鎖、αおよびβから典型的には作製されている。抗体類似性は、TCRアルファおよびベータ複合体をコードする単一の遺伝子が組み立てられている様式にある。TCRアルファ(TCRα)およびベータ(TCRβ)鎖は、それぞれ2つの領域、C末端定常領域およびN末端可変領域で構成されている。TCRアルファおよびベータ鎖をコードするゲノム遺伝子座は、TCRα遺伝子がVおよびJセグメントを含む、その一方でβ鎖遺伝子座がVおよびJセグメントに加えてDセグメントを含むという点で、抗体をコードしている遺伝子座に類似している。TCRβ遺伝子座について、選択プロセスの間から選択される2つの異なる定常領域がさらにある。T細胞発生の間に種々のセグメントは、各T細胞がアルファおよびベータ鎖中に相補性決定領域(CDR)と呼ばれる固有のTCR可変部分を含むように組み換え、身体は、それらの固有のCDRのために抗原提示細胞によって示される固有の抗原と相互作用することが可能であるT細胞の大きなレパートリーを有する。TCRαまたはβ遺伝子再編成が生じると、第2の対応するTCRαまたはTCRβの発現は、各T細胞が「抗原受容体対立遺伝子排除」と呼ばれるプロセスにおいて1つの固有のTCR構造だけを発現するように抑制される(Bradyら、(2010年)J Immunol 185巻:3801~3808頁を参照)。
【0007】
T細胞活性化の間にTCRは、抗原提示細胞の主要組織適合抗原複合体(MHC)上にペプチドとして示される抗原と相互作用する。TCRによる抗原MHC複合体の認識は、T細胞刺激をもたらし、それは次にヘルパーT細胞(CD4+)および細胞傷害性Tリンパ球(CD8+)の両方のメモリーおよびエフェクターリンパ球中での分化をもたらす。次いでこれらの細胞は、ある特定の抗原に反応することが可能である活性化亜集団を全T細胞集団内にもたらすようにクローンの様式で拡張することができる。
【0008】
MHCタンパク質は、2つのクラス、IおよびIIがある。クラスI MHCタンパク質は、2つのタンパク質、MHC1クラスI遺伝子によってコードされる膜貫通タンパク質であるα鎖、およびMHC遺伝子クラスター内には存在しない遺伝子によってコードされる小さな細胞外タンパク質であるβ2ミクログロブリン鎖(B2Mと称されることもある)のヘテロダイマーである。α鎖は、3つの球状ドメイン内にフォールドし、β2ミクログロブリン鎖が会合すると、球状構造複合体は機能性になり、細胞表面に発現される。ペプチドは、最も可変性でもある2つの最もN末端側のドメイン上に提示される。クラスII MHCタンパク質もヘテロダイマーであるが、しかしヘテロダイマーは、MHC複合体内の遺伝子によってコードされる2つの膜貫通タンパク質を含む。クラスI MHC:抗原複合体は、細胞傷害性T細胞と相互作用する一方で、クラスII MHCは、ヘルパーT細胞に抗原を提示する。さらに、クラスI MHCタンパク質は、ほとんど全ての核形成された細胞および血小板(およびマウスでは赤血球)において発現される傾向がある一方で、クラスII MHCタンパク質は、より選択的に発現される。典型的には、クラスII MHCタンパク質は、B細胞、一部のマクロファージおよび単球、ランゲルハンス細胞ならびに樹状細胞で発現される。
【0009】
ヒトにおいて主要組織適合抗原複合体(MHC)は、ヒト白血球抗原(HLA)として一般に公知である。ヒトにおいてクラスI HLA遺伝子クラスターは、3つの主要な遺伝子座、B、CおよびA、ならびにいくつかのマイナーな遺伝子座(E、GおよびFを含み、第6染色体上のHLA領域に全て見出される)を含む。クラスII HLAクラスターも3つの主要な遺伝子座、DP、DQおよびDRを含み、クラスIおよびクラスIIの両方の遺伝子クラスターは、その集団内でクラスIおよびIIの両方の遺伝子のいくつかの異なる対立遺伝子があるという点で、多形性である。HLA機能において同様に役割を果たすいくつかのアクセサリータンパク質もある。β-2ミクログロブリンはシャペロン(B2Mによってコードされ、第15染色体に配置されている)として機能し、細胞表面上に発現されるHLA A、BまたはCタンパク質を安定化し、クラスI構造上に溝を示す抗原も安定化する。通常それは、血清および尿中で少量見出される。
【0010】
HLAは、移植片拒絶において主要な役割を果たす。移植拒絶の急性期は、約1~3週間以内に生じる場合があり、通常、ドナークラスIおよびクラスII HLA分子への宿主系の感作によるドナー組織への宿主Tリンパ球の作用を含む。多くの場合、誘発抗原はクラスI HLAである。最良の成功のために、ドナーはHLAについて分類され、患者レシピエントに可能な限り完全に適合される。しかし、高いパーセンテージのHLA同一性を共有する可能性があるファミリーメンバー間での提供でさえ、しばしば成功しない。したがって、レシピエント内で移植組織を保つために、患者はしばしば拒絶を予防するための徹底的な免疫抑制療法に供されなければならない。そのような治療は、克服することに患者が困難さを有する場合がある日和見感染のために合併症および顕著な病的状態をもたらす場合がある。クラスIまたはII遺伝子の制御は、一部の腫瘍の存在下で破壊される場合があり、そのような破壊は、患者の予後に因果関係を有する場合がある。例えば、B2M発現の低減は、転移性結腸直腸がんにおいて見出された(Shroutら、(2008年)Br J Canc 98巻:1999頁)。B2MがMHCクラスI複合体の安定化に重要
な役割を有することから、ある特定の固形がんにおけるB2Mの減少は、T細胞駆動免疫監視からの免疫エスケープの機構であると仮定された。B2M発現の低下は、正常なIFNガンマB2M発現制御の抑制および/または遺伝ノックアウトをもたらすB2Mコード配列中の特異的変異の結果であると示されている(Shroutら、同書)。混乱させることに、B2Mの増加は、一部の種類のがんとも関連している。尿中のB2Mレベルの増加は、前立腺、慢性リンパ性白血病(CLL)および非ホジキンリンパ腫を含むいくつかのがんの予後因子として役立つ。
【0011】
養子細胞療法(ACT)は、送達された細胞が患者のがんを攻撃し、除去するように腫瘍特異的免疫細胞を患者に送達することに基づくがん治療の発展途上の形態である。ACTは、患者自身の腫瘍塊から単離され、患者に戻して再注入するためにex vivoで拡張されたT細胞である腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の使用を伴い得る。このアプローチは、転移性メラノーマを処置することにおいて有望であり、ある研究では>50%の長期奏効率が観察された(例えば、Rosenbergら、(2011年)Clin Canc Res 17巻(13号):4550頁を参照)。TILは、それらが腫瘍上に存在する腫瘍関連抗原(TAA)に特異的なT細胞受容体(TCR)を有する患者自身の細胞の混合セットであることから、細胞の有望な供給源である(Wuら(2012年)Cancer J 18巻(2号):160頁)。他のアプローチは、患者の血液から単離されたT細胞を何らかの方法で腫瘍に応答性であるように工学技術で作製される(are engineered)ように編集することを
含む(Kalosら、(2011年)Sci Transl Med 3巻(95号):95ra73)。
【0012】
キメラ抗原受容体(CAR)は、免疫細胞が細胞表面上に発現される特異的分子標的を標的とするように設計された分子である。それらの最も基本的な形態では、それらは、細胞に導入された受容体であり、その受容体は、特異性ドメインがその標的と相互作用した場合に細胞が活性化するように、細胞の外側に発現される特異性ドメインを細胞の内側のシグナル伝達経路にカップリングさせる。しばしばCARは、scFvまたは一部の種類の受容体などの抗原特異的ドメインが、ITAMおよび他の共刺激ドメインなどのシグナル伝達ドメインに融合されている、T細胞受容体(TCR)の機能的ドメインを模倣することから作製されている。次にこれらの構築物は、ex vivoでT細胞に導入され、T細胞が標的抗原を発現する細胞の存在下で活性化されるようにし、T細胞が患者に再導入された場合に、非MHC依存性様式での活性化T細胞による標的細胞への攻撃をもたらす(Chicaybamら(2011年)Int Rev Immunol 30巻:294~311頁、Kalos
、同書を参照)。それにより、工学技術で作製されたTCRまたはCARを用いてex vivoで変更されたT細胞を使用する養子細胞療法は、いくつかの種類の疾患のための非常に有望な臨床アプローチである。例えば、標的化されるがんおよびそれらの抗原には、濾胞性リンパ腫(CD20またはGD2)、神経芽細胞腫(CD171)、非ホジキンリンパ腫(CD19およびCD20)、リンパ腫(CD19)、神経膠芽腫(IL13Rα2)、慢性リンパ性白血病またはCLLならびに急性リンパ性白血病またはALL(両方ともCD19)が含まれる。ウイルス特異的CARもHIVなどのウイルスを有する細胞を攻撃するために開発された。例えば臨床試験は、HIVの処置のためにGp100に特異的なCARを使用して開始された(Chicaybam、同書)。
【0013】
ACTR(抗体結合T細胞受容体)は、外因性に供給された抗体に結合可能である工学技術で作製されたT細胞構成成分である。ACTR構成成分への抗体の結合は、抗体によって認識される抗原と相互作用するようにT細胞を備えさせ、抗原に遭遇すると、ACTRを含むT細胞は、抗原と相互作用するようになる(米国特許出願公開第2015/0139943号を参照)。
【0014】
しかし養子細胞療法の欠点の1つは、移植された細胞の潜在的拒絶を回避するために細胞産物の供給源が患者特異的(自己)でなければならないことである。このことがこの拒絶を回避するために研究者に患者自身のT細胞を編集する方法を開発させた。例えば、患者のT細胞または造血幹細胞は、工学技術で作製されたCAR、ACTRおよび/またはT細胞受容体(TCR)の付加によりex vivoで操作することができ、次にPD1および/またはCTLA4などのT細胞チェックポイントインヒビターをノックアウトするために工学技術で作製されたヌクレアーゼによりさらに処置することができる(国際特許公報WO2014/059173を参照)。より大きな患者集団へのこの技術の応用のために、細胞(同種)の汎用性集団を開発することは有利である。さらにTCRのノックアウトは、患者に導入されても移植片対宿主病(GVHD)応答を開始することができない細胞をもたらす。
したがって、エフェクターT細胞、制御T細胞、B細胞、NK細胞または幹細胞(例えば造血幹細胞、人工多能性幹細胞および胚性幹細胞)でのTCRおよび/またはHLA発現を改変(例えば、ノックアウト)するために使用することができる方法および組成物の必要性がまだある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第7,951,925号明細書
【文献】米国特許第8,110,379号明細書
【文献】米国特許第8,409,861号明細書
【文献】国際公開第2014/059173号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書で、TCRおよび/またはB2M遺伝子の部分的なまたは完全な不活性化または破壊のための組成物および方法、ならびに内因性TCRおよび/またはB2Mの破壊後もしくは破壊と同時のTリンパ球における外因性導入遺伝子の導入および所望のレベルでの発現のための組成物および方法が開示される。同様に本明細書で、TCRヌルT細胞またはTCRおよびHLAクラスIヌルT細胞、B細胞、NK細胞、幹細胞、組織または生物全体、例えばその表面に1つもしくは複数のT細胞受容体および/または1つもしくは複数のHLAクラスI受容体を発現しない細胞を産生するためにTCRおよび/もしくはB2M遺伝子を欠失させる(不活性化する)または抑制するための方法および組成物が提供される。さらなるゲノム改変は、本明細書に記載されるTCRおよび/またはHLAクラスIヌル細胞に存在することができ、限定されずに、さまざまな遺伝子(例えば、プログラム細胞死1(PD1)遺伝子、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)遺伝子、CISH遺伝子、tet2遺伝子、ヒト白血球抗原(HLA)A遺伝子、HLA B遺伝子、HLA C遺伝子、HLA-DPA遺伝子、HLA-DQ遺伝子、HLA-DRA遺伝子、LMP7遺伝子、抗原プロセシング関連輸送体(Transporter associated with Antigen Processing)(TAP)1遺伝子、TAP2遺伝子、タパシン遺伝子(TAPBP)、クラスII主要組織適合抗原トランス活性化因子(CIITA)遺伝子、グルココルチコイド受容体遺伝子(GR)、IL2RG遺伝子、RFX5遺伝子)へのゲノム改変、これらまたは他の遺伝子(例えば、セーフハーバー遺伝子)の1つまたは複数への導入遺伝子(例えば、CAR)の挿入ならびにそのようなゲノム改変の任意の組合せを含む。ある特定の実施形態では、TCRヌルT細胞および/もしくはHLAクラスIヌル細胞または組織は、移植における使用のために有利であるヒト細胞または組織である。好ましい実施形態では、TCRヌルT細胞および/またはHLAクラスIヌル細胞は、養子T細胞療法における使用のために調製される。
【0017】
一態様では、本明細書で:68957、72678、72732または72748と呼ばれるZFNからのZFP;工学技術で作製されたFokI切断ドメイン;およびFokI切断ドメインとZFPとの間のリンカーを含むジンクフィンガーヌクレアーゼが記載される。ある特定の実施形態では、ZFNは、以下:72678と呼ばれるZFNからのZFPを含むZFNおよび72732と呼ばれるZFNからのZFPを含むZFNの第1および第2のZFN(実施例において開示されるアミノ酸およびポリヌクレオチド配列)を含む。ある特定の実施形態では、ZFNは、以下:57531と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFN;57531と呼ばれるZFNおよび72748と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび57071と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび72748と呼ばれるZFN;72678と呼ばれるZFNおよび57071と呼ばれるZFN;72678と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFNの通りの左および右の(第1および第2の)ZFN;ならびに72678と呼ばれるZFNおよび727482と呼ばれるZFNを含むZFPを含む。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、以下:68796と呼ばれるZFNおよび68813と呼ばれるZFN;68796と呼ばれるZFNおよび68861と呼ばれるZFN;68812と呼ばれるZFNおよび68813と呼ばれるZFN;68876と呼ばれるZFNおよび68877と呼ばれるZFN;68815と呼ばれるZFNおよび55266と呼ばれるZFN;68879と呼ばれるZFNおよび55266と呼ばれるZFN;68798と呼ばれるZFNおよび68815と呼ばれるZFN;または68846と呼ばれるZFNおよび53853と呼ばれるZFNの通りの左および右の(第1および第2の)ZFNを含む。本明細書に開示されるZFN(対を含む)をコードするポリヌクレオチド(例えば、mRNA、プラスミド、ウイルスベクターなど)も左およびZFNをコードする配列間に2A配列を含むポリヌクレオチドを含んで提供される。本明細書に開示されるZFNおよび/またはポリヌクレオチドの1つまたは複数ならびにこれらの細胞(例えば、ZFNを含まないが遺伝子改変を含む遺伝子的に改変された細胞)に由来する細胞を含む、遺伝子的に改変された細胞(例えば、幹細胞、前駆細胞、T細胞(エフェクターおよび制御)など)も開示される。遺伝子改変として、ZFNによって標的化された遺伝子における挿入、欠失およびそれらの組合せが挙げられる。さらなるゲノム改変、例えば、T細胞受容体(TCR)遺伝子の改変、HLA-A遺伝子の改変、HLA-B遺伝子の改変、HLA-C遺伝子の改変、TAP遺伝子の改変、CTLA-4遺伝子の改変、PD1遺伝子の改変、CISH遺伝子の改変、tet-2遺伝子の改変、および/または導入遺伝子(例えば、CAR)の挿入は、標的および/または1つもしくは複数の異なる遺伝子座に存在することができる。本明細書に記載されるジンクフィンガーヌクレアーゼ、ポリヌクレオチドおよび/または細胞のいずれかを含む医薬組成物も提供される。細胞において内因性ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)および/またはTCR遺伝子を改変する方法も提供され、方法は、内因性遺伝子が改変される(例えば、欠失、導入遺伝子などの外因性配列の挿入)ように本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたは医薬組成物を細胞に投与するステップを含む。がん、自己免疫性疾患または移植片対宿主病の処置および/または予防のために本明細書に記載されるZFN、ポリヌクレオチド、細胞および/または医薬組成物を使用する方法も提供される。本明細書に記載されるZFN、ポリヌクレオチド、細胞および/または医薬組成物のいずれかを含むキットも提供される。
【0018】
他の態様では、本明細書で、TCR遺伝子の発現がTCR遺伝子のエクソン配列の改変によってモジュレートされる、単離細胞(例えば、リンパ系細胞、幹細胞(例えば、iPSC、胚性幹細胞、MSCまたはHSC)または前駆体細胞/前駆細胞を含む哺乳動物細胞などの真核細胞)が、記載される。ある特定の実施形態では、改変は、表1、2もしくは6の1つもしくは複数に示される標的部位(配列番号8~21および/もしくは92~103)の本明細書の標的部位に示される)配列の9~25(標的部位の9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25を含む)もしくはさらなるヌクレオチド(近接もしくは非近接)の配列を含む配列;表1、2もしくは6に示される標的部位(配列番号8~21および/もしくは92~103)のいずれかの側の(隣接ゲノム配列)の1~5塩基対内、1~10塩基対内もしくは1~20塩基対内;またはAACAGT、AGTGCT、CTCCT、TTGAAA、TGGACTTおよびAATCCTC内もしくはAACAGT、AGTGCT、CTCCT、TTGAAA、TGGACTTおよびAATCCTCを含む標的部位になされる。代替的にまたはさらに改変は、55204および53759に対する標的部位の間(配列番号8と配列番号9との間);55229および53785に対する標的部位の間(配列番号10と配列番号11との間);53810および55255に対する標的部位の間(配列番号12と配列番号13との間);55248および55254/55260について示された標的部位の間(配列番号14と配列番号13との間);55266および53853に対する標的部位の間(配列番号15と配列番号16との間);53860および53863に対する標的部位の間(配列番号17と配列番号18との間);53856および55287に対する標的部位の間(配列番号21と配列番号18との間);または53885もしくは52774および53909もしくは52742に対する標的部位の間(配列番号19と配列番号20との間)を含む、本明細書に記載される対合した標的部位の間(例えば、表3に示されるヌクレアーゼ対に対する標的部位)の配列(例えば、ゲノム配列)に作製されてもよい。改変は、機能的ドメイン(例えば、転写制御ドメイン、野生型と比較して1つまたは複数の変異を有する任意のFokI切断ドメインを含むヌクレアーゼドメイン)およびDNA結合ドメインを含む外因性融合分子によってであってよく、以下:(i)配列番号8~21および/もしくは92~103のいずれかに示す標的部位に結合するDNA結合ドメインおよび、転写因子がTRAC遺伝子発現を改変する転写制御ドメインを含む外因性転写因子を含む細胞、ならびに/または(ii)配列番号8~21および/もしくは92~103を含む本明細書に示される標的部位の1つまたは複数内;表1および2に示される標的部位(配列番号8~21および/または92~103)のいずれかの側(隣接ゲノム配列)の1~5塩基対内、1~10塩基対内もしくは1~20塩基対内;AACAGT、AGTGCT、CTCCT、TTGAAA、TGGACTTおよびAATCCTC内;ならびに/または本明細書に記載される対合した標的部位(例えば、表3に示すヌクレアーゼ対に対する標的部位)の間に挿入および/または欠失を含む細胞を限定されずに含む。TCR遺伝子(複数可)へのこれらの改変およびさらなる遺伝子改変(例えば、B2M遺伝子改変、CTLA、CISH、PD1ならびに/またはtet2遺伝子改変、CAR、抗原特異的TCR(アルファおよびベータ鎖)、抗体結合T細胞受容体(ACTR)をコードする導入遺伝子および/または抗体をコードする導入遺伝子などを含むこれらまたは他の遺伝子座での挿入)を含む細胞も記載される。
【0019】
別の態様では、本明細書で、B2M遺伝子の発現がB2M遺伝子の改変によってモジュレートされる、単離細胞(例えば、リンパ系細胞、幹細胞(例えば、iPSC、胚性幹細胞、MSCまたはHSC)または前駆体細胞/前駆細胞を含む哺乳動物細胞などの真核細胞)が、記載される。ある特定の実施形態では、改変は、表5および8の1つまたは複数に示される標的部位(配列番号117、123、126および/または127)の本明細書の標的部位に示される)配列の9~25(標的部位の9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25を含む)またはさらなるヌクレオチド(近接もしくは非近接)の配列を含む配列;表5および8に示される標的部位(配列番号117、123、126および/または127)のいずれかの側の(隣接ゲノム配列)の1~5塩基対内、1~10塩基対内または1~20塩基対内になされる。代替的にまたはさらに、改変は、本明細書に記載される対合した標的部位(例えば、表5および8に示されるヌクレアーゼ対に対する標的部位)、表8に示される標的部位(配列番号126および127)の間を含む、の間の配列(例えば、ゲノム配列)に作製されてもよい。改変は、機能的ドメイン(例えば、転写制御ドメイン、野生型と比較して1つまたは複数の変異を有する任意のFokI切断ドメインを含むヌクレアーゼドメイン)およびDNA結合ドメイン(例えば、表8に示されるZFP(72732;72748;68957;または72678と呼ばれるZFNのZFP構成成分(設計))を含む外因性融合分子によってであってよく、以下:(i)表5もしくは8のいずれかに示す標的部位(例えば、配列番号126または127)に結合するDNA結合ドメインおよび転写因子がB2M遺伝子発現を改変する転写制御ドメインを含む外因性転写因子を含む細胞、ならびに/または(ii)表5および8を含む本明細書に示される標的部位の1つまたは複数内;いずれかの側(隣接ゲノム配列)の1~5塩基対内、1~10塩基対内または1~20塩基対内;ならびに/または本明細書に記載される対合した標的部位(例えば、表8に示すヌクレアーゼ対に対する標的部位)の間に挿入および/または欠失を含む細胞を限定されずに含む。B2M遺伝子へのこれらの改変ならびにさらなる遺伝子改変(例えば、TCR遺伝子改変、CTLA、CISH、PD1および/またはtet2遺伝子改変、PD1改変、CAR挿入、抗原特異的TCR(アルファおよびベータ鎖)、これらのまたは、抗体結合T細胞受容体(ACTR)をコードする導入遺伝子および/もしくは抗体をコードする導入遺伝子を含む他の遺伝子座での挿入など)を含む細胞も記載される。
【0020】
本明細書に記載されるTCRおよび/またはB2M改変細胞は、さらなる改変、例えば、B2M改変細胞中の1つまたは複数の不活性化T細胞受容体遺伝子、さらなる不活性化TCR遺伝子、PD1および/もしくはCTLA4遺伝子ならびに/または導入遺伝子、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする導入遺伝子、抗体結合T細胞受容体(ACTR)をコードする導入遺伝子および/もしくは抗体をコードする導入遺伝子を含むことができる。本明細書に記載される任意の細胞を含む医薬組成物ならびに被験体における障害(例えば、がん)の処置のためにex vivo治療での細胞および医薬組成物を使用する方法も提供される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される1つまたは複数の改変(TCR編集、B2M編集、PD1編集、CISH、tet2および/もしくはCTLA4編集、HLAクラスI遺伝子編集ならびに/またはこれらのもしくは他の遺伝子への導入遺伝子(例えば、CAR)挿入、など)を含む細胞の集団が提供され、5%未満(例えば、0~5%または、その間の任意の値)、好ましくは3%未満、さらにより好ましくは2%未満の細胞が任意の他の改変(例えば、オフターゲット部位での改変)を含む細胞の集団を含む。ある特定の実施形態では、細胞の集団は、本明細書に記載されるように改変されていないZFN(未改変ZFNは「親」または「親の」ZFNとも称される)を用いて改変された細胞と比較して、オフターゲット部位にバックグラウンドレベル(例えば、2分の1~10分の1(または、その間の任意の値))での改変を含む。ZFNによって作製された改変は、ここで、in vivoでまたは培養物中で遺伝性であり、ZFN(および改変)を含む細胞に由来する細胞(分化細胞を含む)は、本明細書に記載される改変を含む。
【0021】
したがって一態様では、本明細書でTCR遺伝子の発現がモジュレート(例えば、活性化、抑制または不活性化)される細胞が記載される。好ましい実施形態では、TCR遺伝子のエクソン配列は、モジュレートされる。モジュレーションは、TCR遺伝子に結合し、TCR発現を制御する外因性分子(例えば、DNA結合ドメインおよび、転写活性化または抑制ドメインを含む工学技術で作製された転写因子)によって、ならびに/またはTCR遺伝子の配列改変(例えば、TCR遺伝子を切断し、挿入および/または欠失によって遺伝子配列を改変するヌクレアーゼを使用すること)、例えば表6に示されるZFN(例えば、左および右のZFNのZFN対)を含む、を介してであってよい。一部の実施形態では、TCR遺伝子のノックアウトを引き起こすように工学技術で作製されたヌクレアーゼを含む細胞が記載される。他の実施形態では、TCR遺伝子の発現がモジュレートされるように工学技術で作製された転写因子(TF)を含む細胞が記載される。一部の実施形態では、細胞はT細胞である。TCR遺伝子の発現がモジュレートされる細胞がさらに記載され、ここで細胞は少なくとも1つの外因性導入遺伝子ならびに/または少なくとも1つの内因性遺伝子(例えば、ベータ2ミクログロブリン(microglobuin)(B2M)ならびに/または、PD1および/もしくはCTLA4などの免疫学的チェックポイント遺伝子)のさらなるノックアウトまたはこれらの組合せを含むようにさらに工学技術で作製される。
【0022】
別の態様では、本明細書では、B2M遺伝子の発現がモジュレート(例えば、活性化、抑制または不活性化)される細胞が記載される。モジュレーションは、B2M遺伝子に結合し、B2M発現を制御する外因性分子(例えば、DNA結合ドメインおよび、転写活性化または抑制ドメインを含む工学技術で作製された転写因子)によって、ならびに/またはB2M遺伝子の配列改変(例えば、B2M遺伝子を切断し、挿入および/または欠失によって遺伝子配列を改変するヌクレアーゼを使用すること)、例えば表8に示されるZFN(例えば、左および右のZFNのZFN対)または、本明細書に記載される(例えば、表8)設計(認識ヘリックス領域および72732;72748;68957;または72678と呼ばれるZFNにおけるZFPの骨格)を任意のFokIドメイン(野生型または工学技術で作製された)および必要に応じてFokIドメインとZFPとの間の任意のリンカー(例えば、L0、N7a、N7cなど)との組合せで有するZFPを含むZFNを含む、を介してであってよい。一部の実施形態では、B2M遺伝子のノックアウトを引き起こすように工学技術で作製されたヌクレアーゼを含む細胞が記載される。他の実施形態では、B2M遺伝子の発現がモジュレートされるように工学技術で作製された転写因子(TF)を含む細胞が記載される。一部の実施形態では、細胞は、エフェクターT細胞および制御T細胞を含むT細胞である。さらに、B2M遺伝子の発現がモジュレートされ、少なくとも1つの外因性導入遺伝子ならびに/または少なくとも1つの内因性遺伝子(例えば、1つもしくは複数のTCR遺伝子ならびに/または、PD1および/もしくはCTLA4などの免疫学的チェックポイント遺伝子)のさらなるノックアウトまたはそれらの組合せを含むようにさらに工学技術で作製された細胞が記載される。
【0023】
外因性導入遺伝子を含む本明細書に記載される細胞のいずれにおいても、外因性導入遺伝子は、TCRおよび/もしくはB2M遺伝子(例えば、TCRおよび/またはB2M遺伝子がノックアウトされる場合)に組み込まれてよく、ならびに/またはセーフハーバー遺伝子などの遺伝子に組み込まれてよい。一部の場合では外因性導入遺伝子は、ACTR、抗原特異的TCRおよび/またはCARをコードする。導入遺伝子構築物は、HDRまたはNHEJによって駆動されるプロセスによって挿入することができる。一部の態様ではTCRおよび/またはB2M発現がモジュレートされている細胞は、少なくとも外因性ACTR、外因性TCRおよび外因性CARを含む。TCRモジュレーターを含む一部の細胞は、1つまたは複数のチェックポイントインヒビター遺伝子のノックアウトをさらに含む。一部の実施形態では、チェックポイントインヒビターはPD1である。他の実施形態ではチェックポイントインヒビターはCTLA4である。さらなる態様では、TCRおよび/またはB2Mモジュレート細胞は、PD1ノックアウトおよびCTLA4ノックアウトを含む。一部の実施形態ではモジュレートされるTCR遺伝子は、TCRβ(TCRB)をコードする遺伝子である。一部の実施形態ではこれは、この遺伝子(TCRβ定常領域、またはTRBC)の定常領域の標的化切断を介して達成される。ある特定の実施形態ではモジュレートされるTCR遺伝子は、TCRα(TCRA)をコードする遺伝子である。さらなる実施形態では挿入は、TCRα遺伝子の定常領域(本明細書で「TRAC」配列と呼ばれる)の標的化切断を含む、TCR遺伝子の定常領域の標的化切断を介して達成される。一部の実施形態ではTCR遺伝子改変細胞は、B2M遺伝子、HLA-A、-B、-C遺伝子もしくはTAP遺伝子またはこれらの任意の組合せでさらに改変される。他の実施形態では、HLAクラスIIについての制御因子、CIITAも改変される。
【0024】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される細胞は、TCRA遺伝子への改変(例えば、エクソンの改変)(例えば、欠失および/または挿入、TCR発現を抑制するための工学技術で作製されたTFの結合)を含む。ある特定の実施形態では改変は、表1、2もしくは6に示す任意の標的部位(配列番号8~21および/または92~103)内、および/または対合した標的部位(例えば、表3に示すヌクレアーゼ対の標的部位)の間であり、TCRA遺伝子中のこれらの配列のいずれかの中および/またはこれらの配列に隣接する遺伝子(ゲノム)配列の1~50塩基対内(1~5塩基対、1~10塩基対または1~20塩基対などの、その間の任意の値)の1つまたは複数のヌクレオチドへの結合、切断、挿入および/または欠失による改変を含む。ある特定の実施形態では、改変は、表6に示されるZFN(例えば、1つまたは複数のZFN対)を使用して作製される。ある特定の実施形態では、細胞は、以下の配列:TCRA遺伝子(例えば、エクソン、図1Bを参照)中のAACAGT、AGTGCT、CTCCT、TTGAAA、TGGACTTおよびAATCCTCの1つまたは複数中の改変(それへの結合、切断、挿入および/または欠失)を含む。ある特定の実施形態では改変は、TCRA遺伝子発現がモジュレート、例えば抑制または活性化されるような、本明細書に記載される工学技術で作製されたTFの結合を含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される細胞は、B2M遺伝子への改変(例えば、欠失および/または挿入、B2M発現を抑制するための工学技術で作製されたTFの結合)を含む。ある特定の実施形態では改変は、表5もしくは8に示す任意の標的部位内、および/または対合した標的部位(例えば、表8に示すヌクレアーゼ対の標的部位)の間であり、B2M遺伝子中のこれらの配列のいずれかの中および/またはこれらの配列に隣接する遺伝子(ゲノム)配列の1~50塩基対内(1~5塩基対、1~10塩基対または1~20塩基対などの、その間の任意の値を含む)の1つまたは複数のヌクレオチドへの結合、切断、挿入および/または欠失による改変を含む。ある特定の実施形態では、改変は、認識ヘリックス領域および表8に示されるZFNのZFP設計の骨格、FokIドメイン(任意の野生型または工学技術で作製されたFokIドメイン)および必要に応じてリンカー(FokIドメインのNもしくはC末端と、限定されずにL0、N7a、N7cなどを含んで示されるZFP設計のNもしくはC末端との間の任意のリンカー)を含むZFPを含むZFNを使用して作製される。ある特定の実施形態では、ZFNは、表8に示されるZFN(例えば、第1および第2のZFNの対)を含む。ある特定の実施形態では、細胞は、改変(それへの結合、切断、挿入および/または欠失)を以下の配列:配列番号126および127の1つまたは複数の内に含む。ある特定の実施形態では、改変は、B2M遺伝子発現がモジュレートされる、例えば抑制または活性化されるような本明細書に記載される工学技術で作製されたTFの結合を含む。
【0026】
他の実施形態では改変は、ヌクレアーゼ(複数可)結合(標的)および/または切断部位(複数可)でのまたはその近くでの遺伝子改変(ヌクレオチド配列の変更)であり、切断および/もしくは結合部位の上流、下流ならびに/またはその部位(複数可)の1つもしくは複数の塩基対を含む1~300(またはこれらの間の任意の数の塩基対)塩基対内の配列への改変;結合および/もしくは切断部位(複数可)のいずれかの側を含むならびに/または該いずれかの側の1~100塩基対(またはこれらの間の任意の数の塩基対)内の改変;結合および/もしくは切断部位(複数可)のいずれかの側(例えば、1から5、1から10、1から20またはそれより多い塩基対)を含むならびに/または該いずれかの側の1から50塩基対(またはこれらの間の任意の数の塩基対)内の改変;ならびに/またはヌクレアーゼ結合部位および/または切断部位内の1つまたは複数の塩基対への改変、を限定されずに含む。ある特定の実施形態では、改変は、本明細書に開示される標的部位のいずれかの周囲または間の遺伝子配列においてもしくは近くで(例えば、1~300塩基対、1~50塩基対、1~20塩基対、1~10塩基対もしくは1~5塩基対または、その間の任意の数の塩基対)および/または対合した標的部位(例えば、表3または8)の間にある。ある特定の実施形態では、改変は、表1、2および6(TCRA)ならびに/または表5および8(B2M)の標的部位に示される1つまたは複数の配列内のTCRAおよび/またはB2M遺伝子の改変を含む。例えば、これらの配列の1つまたは複数への1つまたは複数の塩基対の改変を含む。ある特定の実施形態ではヌクレアーゼ媒介遺伝子改変は、対合した標的部位間である(二量体が標的を切断するために使用される場合)。ヌクレアーゼ媒介遺伝子改変は、任意の長さの非コード配列および/もしくは任意の長さの導入遺伝子の挿入、ならびに/または1塩基対から1000kb超(または1~100塩基対、1~50塩基対、1~30塩基対、1~20塩基対、1~10塩基対もしくは1~5塩基対を限定されずに含む、これらの間の任意の値)の欠失を含む、任意の数の塩基対の挿入および/もしくは欠失を含むことができる。
【0027】
本発明の改変細胞は、リンパ系細胞(例えば、T細胞(エフェクターT細胞(Teff)および制御T細胞(Treg)を含む)、B細胞またはNK細胞)、幹/前駆細胞(例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)、胚性幹細胞(例えば、ヒトES)、間葉系幹細胞(MSC)、または造血幹細胞(HSC)などの非ヒト哺乳動物およびヒト細胞を含む真核細胞であってよい。幹細胞は、全能性または多能性(例えば、多能性骨髄性またはリンパ系幹細胞であるHSCなど、部分的に分化している)であってよい。他の実施形態では、本発明は、TCRおよびまたはHLA発現についてヌル表現型を有する細胞を産生するための方法を提供する。本明細書に記載されるいずれの改変幹細胞(TCRAおよび/またはB2M遺伝子座で改変された)も、次に、改変TCRAおよび/またはB2M遺伝子発現を含む、本明細書に記載される改変を有する本明細書に記載される幹細胞由来の分化した(in vivoまたはin vitro(培養))細胞を生成するために分化されてよい。
【0028】
別の態様では、本明細書に記載される組成物(改変細胞)および方法は、例えば障害の処置または予防または改善において使用することができる。典型的には方法は、(a)ヌクレアーゼ(例えばZFNまたはTALEN)もしくは工学技術で作製されたcrRNA/tracr RNAを用いるCRISPR/Casなどのヌクレアーゼ系を使用して、またはTCRおよび/もしくはB2M遺伝子が不活性化されるもしくはダウンモジュレートされるように工学技術で作製された転写因子(例えばZFP-TF、TALE-TF、Cfp1-TFまたはCas9-TF)を使用して、単離細胞(例えばT細胞または他のリンパ球)中の内因性TCRおよび/もしくはB2M遺伝子を切断するまたは下方制御すること;ならびに(b)細胞を被験体に導入し、それにより障害を処置することまたは予防することを含む。一部の実施形態では、TCRβ(TCRB)をコードする遺伝子は、不活性化されるまたはダウンモジュレートされる。一部の実施形態では、B2Mをコードする遺伝子は、不活性化またはダウンモジュレートされる。一部の実施形態では不活性化は、本遺伝子の定常領域(TCRβ定常領域、またはTRBC)の標的化切断を介して達成される。好ましい実施形態では、TCRα(TCRA)および/またはB2Mをコードする遺伝子は、不活性化またはダウンモジュレートされる。さらに好ましい実施形態では、障害は、がん、感染性疾患または自己免疫性疾患である。一部の実施形態では、改変は、免疫寛容を誘導するために作製される。さらに好ましい実施形態では不活性化は、本遺伝子の定常領域(TCRα定常領域、すなわちTRACと略される)の標的化切断を介して達成される。一部の実施形態では、B2M遺伝子は切断される。さらなる実施形態では、さらなる遺伝子(TCRおよび/またはB2Mに加えて)は、モジュレートされる(ノックアウトされる)、例えばTCR/B2M二重ノックアウト、さらなるTCR遺伝子、PD1および/もしくはCTLA4ならびに/または1つもしくは複数の治療用導入遺伝子が細胞に存在する(エピソーム、ランダムな組み込みまたはヌクレアーゼ媒介組み込みなどの標的化組み込みを介する組み込み)。改変細胞は、本明細書に記載される1つまたは複数のZFN(例えば、ZFN対)を含んでよく、限定されずに第1および第2のZFNを含むジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含み、各ZFNは切断ドメイン(例えば、任意の野生型または工学技術で作製されたFokI切断ドメイン)およびZFP DNA結合ドメインを含む。ある特定の実施形態では、改変は、本明細書に記載される「設計」(例えば、表6または表8、68846、53853、72732;72748;68957;55266、68798、68879、68815、68799または72678と呼ばれるZFNのZFPを含む)のZFP(認識ヘリックス領域および骨格)、FokIドメイン(任意の野生型または工学技術で作製されたFokIドメイン)ならびに必要に応じてリンカー(FokIドメインのNまたはC末端と本明細書に記載されるZFP設計のNまたはC末端との間の任意のリンカー)を含むZFNを使用して作製される。一部の実施形態ではZFNは一対のZFNを含み、一方のZFNはFokIドメインに作動可能に連結した68846(配列番号177)のZFPを含み、対の他方のZFNはFokIドメインに作動可能に連結した53853(配列番号178)のZFPを含む。一部の実施形態ではZFNは一対のZFNを含み、一方のZFNはFokIドメインに作動可能に連結した72732(配列番号175)のZFPを含み、対の他方のZFNはFokIドメインに作動可能に連結した72678(配列番号176)のZFPを含む。ある特定の実施形態では、ZFNは、以下:68796と呼ばれるZFNおよび68813と呼ばれるZFN;68796と呼ばれるZFNおよび68861と呼ばれるZFN;68812と呼ばれるZFNおよび68813と呼ばれるZFN;68876と呼ばれるZFNおよび68877と呼ばれるZFN;68815と呼ばれるZFNおよび55266と呼ばれるZFN;68879と呼ばれるZFNおよび55266と呼ばれるZFN;68798と呼ばれるZFNおよび68815と呼ばれるZFN;または68846と呼ばれるZFNおよび53853と呼ばれるZFN;57531と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFN;57531と呼ばれるZFNおよび72748と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび57071と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび72748と呼ばれるZFN;72678と呼ばれるZFNおよび57071と呼ばれるZFN;72678と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFNの、本明細書に記載されるZFN(例えば、第1および第2の(左および右とも称される)一対のパートナーZFN);ならびに72678と呼ばれるZFNおよび72748と呼ばれるZFNを含むZFPを含む。したがって、ZFN(例えば、対合ZFNの各ZFNパートナー)は、認識ヘリックス領域を含み、下に記載される(例えば、表1、2、5、6および8に示される設計)さらなるZFP改変を(例えば、骨格領域に)含んでよく、任意の野生型または工学技術で作製されたFokI切断ドメイン(FokI置換、付加および/または欠失変異体の任意の組合せを含む)をさらに含む。例えば、ZFNパートナーは、野生型タンパク質由来または変異配列(実施例に示す通り、配列番号140~174)由来の切断ドメイン(配列番号139)を含む任意のFokI切断ドメインに融合された特異的ジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むことができる。B2M-特異的ZFNパートナーは、配列番号139~174から選択されるFokI切断ドメインに融合されたB2M-特異的ジンクフィンガーDNA結合ドメイン(例えば、72732)を含んでよい。さらに、B2M-特異的ZFNパートナーは、配列番号139~174から選択されるFokI切断ドメインに融合されたB2M-特異的ジンクフィンガーDNA結合ドメイン(例えば、72678)を含んでよい。同様にTRAC-特異的ZFNパートナーは、配列番号139~174から選択されるFokI切断ドメインに融合されたTRAC-特異的ジンクフィンガーDNA結合ドメイン(例えば、68846)を含んでよく、TRAC-特異的ジンクフィンガーDNA結合ドメイン53853は、野生型または工学技術で作製されたFokI切断、例えば、添付の実施例において示されるドメイン(配列番号139~174)に示されるいずれかから選択されるFokI切断ドメインに融合されてよい。一部の実施形態では、FokIドメインは、ZFP DNA結合ドメインのN末端に融合され、他方ではそれはZFP DNA結合ドメインのC末端に融合される。さらに、任意のリンカーをDNA結合ドメインをFokI切断ドメインに連結するために使用することができる。
【0029】
限定されずに、本明細書に記載の通り改変された幹細胞から部分的にまたは完全に分化したものを含んで、本明細書に記載の通り改変された細胞(例えば、本明細書に記載されるZFNを含む細胞)由来の細胞も提供される。これらの細胞は、典型的にはZFNを含まないが、それにより作製された遺伝子改変は含む。
【0030】
転写因子(複数可)および/またはヌクレアーゼ(複数可)は、mRNAとして、タンパク質形態でおよび/またはヌクレアーゼ(複数可)をコードするDNA配列として細胞にまたは周囲の培養培地に導入することができる。ある特定の実施形態では、被験体に導入される単離細胞は、さらなるゲノム改変、例えば、組み込まれた外因性配列(切断されたTCRおよび/もしくはB2M遺伝子または異なる遺伝子、例えばセーフハーバー遺伝子もしくは遺伝子座に)および/またはさらなる遺伝子、例えば1つもしくは複数のHLA遺伝子またはCTLA-4、CISH、PD1もしくはtet2遺伝子の不活性化(例えば、ヌクレアーゼ媒介)をさらに含む。外因性配列(例えば、CARまたは外因性TCR)またはタンパク質は、ベクター(例えばAd、AAV、LV)を介して、または電気穿孔または一過性のトランスフェクションなどの技法を使用することによって導入することができる。一部の実施形態ではタンパク質は、細胞スクイージング(cell squeezing
)などの機械的応力を誘導することによって細胞に導入される(Kollmannspergerら、(
2016年) Nat Comm 7巻、10372頁 doi:10.1038/ncomms10372を参照)。一部の態様では組成物は、単離細胞断片および/または分化した(部分的にまたは完全に)細胞を含んでよい。
【0031】
一部の態様では改変細胞は、細胞療法、例えば養子細胞移入のために使用することができる。他の実施形態では、T細胞移植における使用のための細胞は、目的の別の遺伝子改変を含有する。一態様ではT細胞は、がん細胞で見出されるマーカーに特異的な、挿入されたキメラ抗原受容体(CAR)を含有する。さらなる態様では挿入されたCARは、B細胞悪性疾患を含むB細胞に特徴的なCD19マーカーに対して特異的である。そのような細胞は、適合するHLAを有さない患者を処置するための治療用組成物において有用であり、そのため、それを必要とする任意の患者のための「既製の」治療剤として使用可能である。他の場合では、幹細胞または前駆細胞、例えば、本明細書に記載される改変を含有する造血幹細胞もしくは前駆細胞(HSC/PC)または人工多能性幹細胞(iPSC)は、導入に先立って拡大増殖される。他の態様では、遺伝子的に改変されたHSC/PCは、HSC/PCがin vivoで移植され、分化および成熟する骨髄移植において被験体に与えられる。一部の実施形態では、HSC/PCは、G-CSF誘導動員、プレリキサホル誘導動員およびG-CSF誘導動員とプレリキサホル誘導動員との組合せの後に被験体から単離され、他では、細胞は、ヒト骨髄またはヒト臍帯から単離される。他の実施形態では、iPSCは、患者または健康なドナー細胞由来である。一部の態様では、被験体は、改変されたHSC/PCまたはiPSC由来の改変細胞を含む移植片の導入に先立って軽度の骨髄破壊的手順で処置され、一方他の態様では、被験体は、積極的な骨髄破壊的前処置レジメンを用いて処置される。一部の実施形態では、本発明の方法および組成物は、がんを処置または予防するために使用される。
【0032】
別の態様ではTCRおよび/またはB2Mモジュレート(改変)T細胞は、挿入された抗体結合T細胞受容体(ACTR)ドナー配列を含有する。一部の実施形態ではACTRドナー配列は、ヌクレアーゼ誘導切断に続いてTCR遺伝子の発現を妨害するようにそのTCR遺伝子に挿入される。他の実施形態ではドナー配列は、AAVS1、HPRT、アルブミンおよびCCR5遺伝子などの「セーフハーバー」遺伝子座に挿入される。一部の実施形態ではACTR配列は、ACTRドナー配列が工学技術で作製されたヌクレアーゼの切断部位に隣接する配列に相同性を有する隣接相同アームを含む、標的化組み込みを介して挿入される。一部の実施形態ではACTRドナー配列は、プロモーターおよび/または他の転写制御配列をさらに含む。他の実施形態では、ACTRドナー配列はプロモーターを欠いている。一部の実施形態ではACTRドナーは、TCRβコード遺伝子(TCRB)に挿入される。一部の実施形態では、挿入は、この遺伝子(TCRβ定常領域またはTRBC)の定常領域の標的化切断を介して達成される。好ましい実施形態では、ACTRドナーはTCRαコード遺伝子(TCRA)に挿入される。さらに好ましい実施形態では、挿入はこの遺伝子の定常領域(TCRα定常領域、TRACと省略される)の標的化切断を介して達成される。一部の実施形態ではドナーは、TCRA中のエクソン配列に挿入され、一方、他のものではドナーは、TCRA中のイントロン配列に挿入される。なおさらなる実施形態では、ACTRドナーは、B2M遺伝子に挿入される。一部の実施形態では、B2Mおよび/またはTCRモジュレート細胞は、CARをさらに含む。なおさらなる実施形態ではB2Mおよび/またはTCRモジュレート細胞は、HLA遺伝子またはチェックポイントインヒビター遺伝子でさらにモジュレートされる。
【0033】
本明細書に記載される改変細胞(例えば、不活性化TCR遺伝子を有するT細胞または幹細胞)を含む医薬組成物、または本明細書に記載される1つもしくは複数のTCRおよび/またはB2M遺伝子結合分子(例えば、工学技術で作製された転写因子および/またはヌクレアーゼ)を含む医薬組成物も提供される。ある特定の実施形態では医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。改変細胞、TCRおよび/またはB2M遺伝子結合分子(またはこれらの分子をコードするポリヌクレオチド)および/またはこれらの細胞もしくは分子を含む医薬組成物は、当技術分野において公知の方法を介して、例えば静脈内注入、肝動脈などの特定の血管への注入を通じて、また直接組織注射(例えば筋肉)を通じて被験体に導入される。一部の実施形態では被験体は、組成物を用いて処置または改善させることができる疾患または状態を有する成人である。他の実施形態では被験体は、組成物が疾患または状態(例えば、がん、移植片対宿主病など)を予防、処置または改善させるために投与される小児被験体である。
【0034】
一部の態様では、組成物(ACTRを含むTCRおよび/またはB2Mモジュレート細胞)は、外因性抗体をさらに含む。米国特許公報第2017/0196992号を参照。一部の態様では抗体は、ACTRを含むT細胞を備えて状態を予防または処置するために有用である。一部の実施形態では抗体は、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、CAIX、PSMA、葉酸結合抗体、CD19、EGFR、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAP、VEGF、VEGFR、αVβ3およびα5β1インテグリン、CD20、CD30、CD33、CD52、CTLA4およびエナシン(enascin)などの腫瘍細
胞に関連するまたはがん関連プロセスに関連する抗原を認識する(Scottら(2012年
)Nat Rev Cancer 12巻:278頁)。他の実施形態では抗体は、HIV、HCVなどのような感染性疾患に関連する抗原を認識する。
【0035】
別の態様では、本明細書でTCR遺伝子中の標的部位に結合するTCR遺伝子 DNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALEおよびsgRNA)が提供される。ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、表1の1つの行に示す順序で認識ヘリックス領域を有するZFP;表1の最初の段または表2の3番目の段に示す、標的部位に結合するRVDを有するTALエフェクタードメインDNA結合タンパク質;および/または表2Aの1つの行に示すsgRNA、を含む。これらのDNA結合タンパク質は、TCR発現をモジュレートする工学技術で作製された転写因子を形成するように転写制御ドメインと会合することができる。代替的に、これらのDNA結合タンパク質は、B2M遺伝子に結合し切断する、工学技術で作製されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALENおよび/または、CRISPR/Cas系を形成するように、1つまたは複数のヌクレアーゼドメインと会合し得る。ある特定の実施形態では、ZFN、TALENまたはCRISPR/Cas系の単一ガイドRNA(sgRNA)は、ヒトTCR遺伝子中の標的部位に結合する。転写因子またはヌクレアーゼのDNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALE、sgRNA)は、本明細書に示される標的部位(例えば、配列番号8~21および/または92~103に示される表1または2の標的部位)のいずれかの9、10、11、12またはそれより多い(例えば、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多い)ヌクレオチドを含むTCRA遺伝子中の標的部位に結合できる。ジンクフィンガータンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多いジンクフィンガーを含む場合があり、各ジンクフィンガーは標的遺伝子中の標的サブサイトと特異的に接触する認識ヘリックスを有する。ある特定の実施形態では、例えば表1に示す通り、ジンクフィンガータンパク質は、4つまたは5つまたは6つのフィンガー(F1、F2、F3、F4、F5およびF6と呼ばれ、N末端からC末端にF1からF4またはF5またはF6の順)を含む。本明細書に記載されるZFPは、例えば米国特許出願公開第2018/0087072号に記載されるnR-5Qabc変異体など、ジンクフィンガータンパク質のリン酸接触残基に1つまたは複数の変異も含むことができる。他の実施形態では、単一ガイドRNAまたはTALエフェクターDNA結合ドメインは、本明細書に記載される標的部位(例えば、配列番号8~21および/または92~103のいずれかに示される、表1または表2または表6の標的部位)または、これらの標的部位のいずれかの中のもしくは対合した標的部位の間の12もしくはそれより多い塩基対に結合することができる。例示的sgRNA標的部位は、表2(配列番号92~103)に示されている。表1または表2に示される標的部位の12またはそれより多いヌクレオチドに結合するsgRNAも提供される。TALENは、米国特許第8,586,526号および第9,458,205号に記載されるカノニカルなまたは非カノニカルなRVDを使用して、本明細書に記載される部位(表1または表2または表6の標的部位)を標的化するように設計することができる。本明細書に記載されるヌクレアーゼ(ZFP、TALEまたはsgRNA DNA結合ドメインを含む)は、配列番号8~21および/または92~103のいずれかを含むTCRA遺伝子内に遺伝子改変を作製することが可能であり、これらの配列(配列番号8~21および/もしくは92~103)のいずれかの中の改変(挿入および/または欠失)ならびに/または配列番号8~21および/もしくは92~103に示される標的部位配列に隣接するTCRA遺伝子配列への改変、例えば以下の配列:AACAGT、AGTGCT、CTCCT、TTGAAA、TGGACTTおよびAATCCTCの1つもしくは複数の中のTCR遺伝子のエクソン配列内の改変を含む。
【0036】
別の態様では、本明細書でB2M遺伝子中の標的部位に結合するB2M遺伝子DNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALEおよびsgRNA)が提供される。ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、表5もしくは表8の1つの行に示す順序で認識ヘリックス領域を有するZFP(カラム表示「設計」、72732;72748;68957;または72678と呼ばれるZFNのZFPを含む);表5または表8の第1のカラムに示す標的部位に結合するRVDを有するTALエフェクタードメインDNA結合タンパク質;および/または本明細書に記載される(表5または表8)B2M標的部位に結合するsgRNAを含む。これらのDNA結合タンパク質は、B2M発現をモジュレートする工学技術で作製された転写因子を形成するように転写制御ドメインと会合することができる。代替的に、これらのDNA結合タンパク質は、B2M遺伝子に結合し切断する、工学技術で作製されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、TALENおよび/または、CRISPR/Cas系を形成するように、1つまたは複数のヌクレアーゼ(切断)ドメインと会合し得る。ある特定の実施形態では、ZFN、TALENまたはCRISPR/Cas系の単一ガイドRNA(sgRNA)は、ヒトB2M遺伝子中の標的部位に結合する。転写因子またはヌクレアーゼ(例えば、ZFP、TALE、sgRNA)のDNA結合ドメインは、本明細書に示される標的部位(例えば、表5または表8、配列番号117、123、126または127に示される)のいずれかの9、10、11、12またはそれより多い(例えば、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれより多い)ヌクレオチドを含むB2M遺伝子の標的部位に結合することができる。ジンクフィンガータンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多いジンクフィンガーを含む場合があり、各ジンクフィンガーは標的遺伝子中の標的サブサイトと特異的に接触する認識ヘリックスを有する。ある特定の実施形態では、例えば表5または表8に示す通り、ジンクフィンガータンパク質は、4つまたは5つまたは6つのフィンガー(F1、F2、F3、F4、F5およびF6と呼ばれ、N末端からC末端にF1からF4またはF5またはF6の順)を含む。本明細書に記載されるZFPは、例えば表8のZFP設計(認識ヘリックス領域および骨格変異体)を含む、米国特許出願公開第2018/0087072号に記載されるnR-5Qabc変異体など、ジンクフィンガータンパク質のリン酸接触残基に1つまたは複数の変異も含むことができる。他の実施形態では、単一ガイドRNAまたはTALエフェクターDNA結合ドメインは、本明細書に記載される標的部位(例えば、表5または8の標的部位)またはこれらの標的部位のいずれかの内の12もしくはそれより多い塩基対または対合した標的部位の間に結合することができる。TALENドメインは、米国特許第8,586,526号および第9,458,205号に記載されるカノニカルなまたは非カノニカルなRVDを使用して、本明細書に記載される部位を標的化する(表5または8の標的部位)ように設計することができる。本明細書に記載されるヌクレアーゼ(ZFP、TALEまたはsgRNA DNA結合ドメインを含む)は、本明細書に開示されるB2M標的部位のいずれかを含むB2M遺伝子内に遺伝子改変を作製することが可能であり、これらの配列のいずれかの中の改変(挿入および/または欠失)ならびに/または表5および8に示される標的部位配列(配列番号117、123、126または127)に隣接するB2M遺伝子配列への改変を含む。
【0037】
本明細書に記載されるいずれのヌクレアーゼも、本明細書に記載されるDNA結合ドメイン(例えば、表6または8のZFP設計、TALEまたはsgRNA)および切断ドメインおよび/または切断半ドメイン(例えば、野生型または工学技術で作製されたFokI切断半ドメイン)を含むことができる。それにより、本明細書に記載されるいずれのヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas系)においても、ヌクレアーゼドメインは、野生型ヌクレアーゼドメインまたはヌクレアーゼ半ドメイン(例えば、FokI切断半ドメイン)を含むことができる。他の実施形態では、ヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Casヌクレアーゼ)は、工学技術で作製されたヌクレアーゼドメインまたは半ドメイン、例えば偏性ヘテロダイマー(obligate heterodimer)を形成する、工学技術で作製されたFokI切断半ドメインを含む。例え
ば、米国特許第7,914,796号および第8,034,598号を参照のこと。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるヌクレアーゼの1つまたは複数のFokIエンドヌクレアーゼドメインは、米国特許出願公開第2018/0087072号に記載されるリン酸接触変異体(例えば、R416Sおよび/またはK525S)も含むことができる。それにより、本明細書に記載されるヌクレアーゼのFokIドメイン(例えば:(i)72732;72748;68957;または72678と呼ばれるZFNのZFPを含む、表8に示されるZFP設計および(ii)FokIドメイン、を含むZFN)は、FokIドメイン(全長FokIに対して番号付けされる位置)への変異の任意の組合せを含むことができ、野生型FokI触媒ドメイン配列、および同様にだが限定されずに表8に示されるFokIドメイン、FokI-Sharkey(S418P+K441E);FokI ELD(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D);FokI ELD、Sharkey(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E);FokI ELD、R416E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、R416E);FokI ELD、Sharkey、R416E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、R416E);FokI ELD、R416Y(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、R416Y);FokI ELD、Sharkey、R416E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、R416E);FokI ELD、S418E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418E);FokI ELD、Sharkey部分的、S418E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、K441E、S418E);FokI ELD、K525S(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、K525S);FokI ELD、Sharkey K525S(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、K525S);FokI ELD、I479T(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、I479T);FokI ELD、Sharkey、I479T(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、I479T);FokI ELD、P478D(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、P478D);FokI ELD、Sharkey、P478D(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、P478D);FokI ELD、Q481D(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、Q481D);FokI ELD、Sharkey、Q481D(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、Q481D);FokI KKR(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R);FokI KKR Sharkey、(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E);FokI KKR、Q481E(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、Q481E);FokI KKR、Sharkey Q481E(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、Q481E);FokI KKR、R416E(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、R416E);FokI KKR、Sharkey、R416E(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、R416E);FokI KKR、K525S(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、K525S);FokI KKR、Sharkey、K525S(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、K525S);FokI KKR、R416Y(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、R416Y);FokI KKR、Sharkey、R416Y(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、R416Y);FokI、KKR I479T(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、I479T);FokI、KKR Sharkey I479T(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、I479T;FokI、KKR P478D(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、P478D)、FokI KKR Sharkey P478D(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、P478D);FokI DAD(487位でのR->D、496位でのN->D、499位でのI->A);FokI DAD Sharkey(487位でのR->D、496位でのN->D、499位でのI->A、S418P+K441E);FokI RVR(483位でのD->R、537位でのH->R、538位でのI->V);FokI RVR Sharkey(483位でのD->R、537位でのH->R、538位でのI->V、S418P+K441E)。本明細書に記載されるZFNは、米国特許第7,888,121号;第7,914,796号;第8,034,598号;第8,623,618号;第9,567,609号および米国特許出願公開第2017/0218349号に開示される配列を限定されずに含む任意のリンカー配列も含むことができ、それは、DNA結合ドメイン(例えば、ZFP)のNもしくはC末端とFokI切断ドメインのNもしくはC末端との間に使用することができる。
【0038】
別の態様では本開示は、本明細書に記載されるタンパク質、融合分子および/またはその構成成分のいずれかをコードするポリヌクレオチド(例えば、sgRNAまたは他のDNA結合ドメイン)を提供する。ポリヌクレオチドは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)の一部またはmRNA形態であってよい。本明細書に記載されるいずれのポリヌクレオチドも、TCRαおよび/またはTCRβ遺伝子への標的化挿入のための配列(ドナー、相同アームまたはパッチ配列)を含むことができる。さらに別の態様では、本明細書に記載されるいずれかのポリヌクレオチドを含む遺伝子送達ベクターが提供される。ある特定の実施形態ではベクターは、アデノウイルスベクター(例えば、Ad5/F35ベクター)または、組み込み適格性または組み込み欠損レンチウイルスベクターを含むレンチウイルスベクター(LV)またはアデノ随伴ベクター(AAV)である。したがって同様に本明細書で、ヌクレアーゼ(例えばZFNまたはTALEN)および/またはヌクレアーゼ系(CRISPR/CasまたはTtago)をコードする配列および/または標的遺伝子への標的化組み込みのためのドナー配列を含むウイルスベクターも提供される。一部の実施形態では、ドナー配列およびヌクレアーゼをコードする配列は、異なるベクター上にある。他の実施形態ではヌクレアーゼは、ポリペプチドとして供給される。好ましい実施形態ではポリヌクレオチドは、mRNAである。一部の態様では、mRNAは化学改変されてもよい(例えば、Kormannら、(2011年)Nature Biotechnology 29巻(2号):154~157頁を参照のこと)。他の態様では、mRNAは、ARCAキャップを含むことができる(米国特許第7,074,596号および第8,153,773号を参照のこと)。一部の態様ではmRNAは、酵素的改変によって導入されたcapを含むことができる。酵素によって導入されたcapは、Cap0、Cap1またはCap2を含む場合がある(例えばSmietanskiら、(2014年)Nature Communications 5巻:3004頁を参照)。さらなる態様ではmRNAは、化学的改変によってキャッピングすることができる。さらなる実施形態では、mRNAは、未改変のおよび改変されたヌクレオチドの混合物を含むことができる(米国特許出願公開第2012-0195936号を参照のこと)。なおさらなる実施形態では、mRNAは、WPREエレメントを含むことができる(米国特許出願第2016/0326548号を参照のこと)。一部の実施形態ではmRNAは、2本鎖である(例えばKarikoら(2011年)Nucl Acid Res 39巻:e142頁を参照)。
【0039】
さらに別の態様では本開示で、本明細書に記載されるタンパク質、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターのいずれかを含む単離細胞が提供される。ある特定の実施形態では細胞は、幹/前駆細胞、またはT細胞(例えば、エフェクティブまたは調節性T細胞)からなる群から選択される。なおさらなる態様では本開示で、本明細書に記載されるヌクレアーゼ、転写因子、ポリヌクレオチドおよび/もしくはベクターのいずれかを含む細胞または細胞株に由来する細胞または細胞株、すなわちTCRおよび/またはB2Mが1つもしくは複数のZFNによって不活性化されている、および/または、ドナーポリヌクレオチド(例えばACTRおよび/またはCAR)が細胞のゲノムに安定に組み込まれている細胞に由来する(例えば、培養物中)細胞もしくは細胞株が提供される。それにより本明細書に記載される細胞の子孫は、それら自体で本明細書に記載される分子、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターを含まなくてよいが、これらの細胞では、TCRおよび/またはB2M遺伝子が不活性化されているおよび/またはドナーポリヌクレオチドがゲノムに組み込まれているおよび/または発現される。
【0040】
別の態様では本明細書に、本明細書に記載される細胞に1つもしくは複数のタンパク質、ポリヌクレオチドおよび/またはベクターを導入するステップによって細胞中のTCRおよび/またはB2M遺伝子を不活性化する方法が記載される。ある特定の実施形態では、表6に示されるZFN(例えば、ZFN対)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、細胞中のTCR遺伝子を改変するために使用され、これらの細胞に由来する細胞(分化細胞を含む)は、改変(複数可)を含む。他の実施形態では、表8に示されるZFN(例えば、ZFN対)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドは、細胞中のB2M遺伝子を改変するために使用され、これらの細胞に由来する細胞(分化細胞を含む)は、改変を含む。本明細書に記載される方法のいずれにおいてもヌクレアーゼは、標的化変異誘発、細胞性DNA配列の欠失を誘導することができる、および/または所定の染色体の遺伝子座での標的化組換えを促進することができる。それによりある特定の実施形態ではヌクレアーゼは、標的遺伝子から1つもしくは複数のヌクレオチドを欠失させるか、および/または標的遺伝子に1つもしくは複数のヌクレオチドを挿入する。一部の実施形態ではB2M遺伝子は、ヌクレアーゼ切断、続く非相同末端結合によって不活性化される。他の実施形態では、標的遺伝子(例えば、、TCRまたはB2M)中のゲノム配列は、例えば本明細書に記載されるヌクレアーゼ(または前記ヌクレアーゼをコードするベクター)および、ヌクレアーゼによる標的化切断に続いて遺伝子に挿入される「ドナー」配列を使用して置き換えられる。ドナー配列は、ヌクレアーゼベクターに存在することができ、別々のベクター(例えば、プラスミド、直鎖状の一本鎖もしくは二本鎖DNA、AAV、AdまたはLVベクター)に存在することができ、または異なる核酸送達機構を使用して細胞に導入することができる。一部の実施形態では、方法は、1つまたは複数のさらなる遺伝子(例えば、B2M)を不活性化するステップおよび/または、限定されずに、1つまたは複数の導入遺伝子の不活性化TCRおよび/もしくはB2M遺伝子へのならびに/または1つもしくは複数のセーフハーバー遺伝子への組み込みを含む、1つまたは複数の導入遺伝子を細胞のゲノムに組み込むステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法は、細胞の少なくとも90~100%(または、その間の任意の値)を含む、少なくとも80~100%(または、その間の任意の値)がノックアウト(複数可)および/または組み込まれた導入遺伝子(複数可)を含む細胞の集団をもたらす。
【0041】
さらに、本明細書に記載されるいずれの方法もin vitro、in vivoおよび/またはex vivoで実施することができる。ある特定の実施形態では、方法は、例えばT細胞(エフェクターまたは調節性)を改変して、それらを、被験体(例えば、がんまたは自己免疫疾患を有する被験体)を処置する同種異系の状況(allogenic setting)における治療剤として有用にするために、ex vivoで実施される。処置および/または予防することができるがんの非限定的例には、肺癌、膵臓がん、肝がん、骨がん、乳がん、結腸直腸がん、白血病、卵巣がん、リンパ腫、脳がんなどが含まれる。自己免疫性疾患の非限定的例として、移植片拒絶、1型糖尿病、過敏性腸疾患/障害、多発性硬化症、ループス、強皮症、関節リウマチなどが挙げられる。細胞は、免疫寛容を誘導するためも使用することができる。
【0042】
別の態様では、本明細書に、1つまたは複数の導入遺伝子を単離細胞のゲノムに組み込む方法であって、細胞に、(a)1つまたは複数の導入遺伝子を含む1つまたは複数のドナーベクター(例えば、プラスミド、直鎖状1本鎖または2本鎖DNA、AAV、プラスミド、Ad、mRNAなど)、ならびに(b)mRNA形態での少なくとも1つの天然に存在しないヌクレアーゼを導入するステップを含み、ここで少なくとも1つのヌクレアーゼは1つまたは複数の導入遺伝子が細胞のゲノム(例えば、TCR受容体に)に組み込まれるように細胞のゲノムを切断し、ドナーベクターは、単離細胞およびmRNAを含む電気穿孔緩衝液に、ヌクレアーゼの細胞への電気穿孔の直前または直後に導入される、方法が記載される。ある特定の実施形態では、ドナーベクターは、電気穿孔後で、培養培地への細胞の移行に先立って電気穿孔緩衝液に導入される。例えば、米国特許出願公開第2015/0174169号および第2015/0110762号を参照されたい。方法は、導入遺伝子(複数可)を、限定されずにTCR遺伝子、B2M遺伝子および/またはセーフハーバー遺伝子(例えば、AAVS1、Rosa、アルブミン、CCR5、CXCR4など)を含む任意のゲノム位置に導入するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1-1】図1Aおよび図1Bは、ヌクレアーゼによって標的化される部位の位置を示すTCRA遺伝子を示す図である。図1Aは、生殖系列形態から成熟T細胞のものへのTCRA遺伝子のプロセシングの例示であり、ヌクレアーゼの一般的な標的を示している。図1B(配列番号116(エクソンc1)、117(エクソンc2)および118(エクソンc3))は、定常領域配列における標的部位間の領域を示している。黒色大文字で示される配列は、示されたエクソン配列の配列であり、一方灰色小文字の配列は、近隣のイントロン配列である。
図1-2】同上。
【0044】
図2-1】図2Aおよび図2Bは、TCRA部位A、BおよびD(図2A)ならびに部位E、FおよびG(図2B)に特異的なZFNを用いて処理されたT細胞において改変された各部位のパーセントを示すグラフである。大部分の対は、80%またはこれを超える改変率をもたらした。
図2-2】同上。
【0045】
図3図3は、FACS分析によって分析された、TCRA特異的ZFN対を用いる処理後のCD3陰性T細胞のパーセントを示す。
【0046】
図4図4は、ハイスループットシークエンシングを介して測定されたTCRA配列改変のレベルと、蛍光活性化セルソーティングによって測定されたCD3発現の減少との間のT細胞における高度の相関を示すグラフである。
【0047】
図5図5A~5Dは、TCRA遺伝子における標的部位により分類されたTCRA特異的ZFNを用いた処理後のT細胞の成長を示すグラフである。
【0048】
図6図6は、TRAC(TCRA)およびB2M二重ノックアウトならびにTRAC(TCRA)またはB2M遺伝子座のいずれかへのドナーの標的化組み込みからの結果を示す。
【0049】
図7図7は、TRAC(TCRA)およびB2M二重ノックアウトならびにTRAC(TCRA)またはB2M遺伝子座のいずれかへのドナーの標的化組み込みからのFACS結果を示す。FACS結果は、表示の条件について示されている(上パネルの左から右へ:対照(偽);ドナーを含まないTRACおよびB2M ZFN;B2Mに標的化されたドナーを含むTRACおよびB2M ZFN;ならびにTRACに標的化されたドナーを含むTRACおよびB2M ZFN)。FACプロットの上列の左下象限は、二重(TRAC/B2M)ノックアウトを有する細胞を示しており、FACプロットの下列の右半分は、二重ノックアウトおよび標的化組み込みを有する細胞を示している。細胞の百分率もFACプロットの適切なセクションを向いて指している矢印によって示されている。矢印によって示される通り、85~90%またはそれより多い細胞は、二重KOであり、標的化組み込みについても陽性であった。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書で、細胞が細胞表面上にTCRをもはや含まないようにTCR遺伝子の発現がモジュレートされているおよび/または細胞がB2Mをもはや発現しないようにB2M遺伝子の発現がモジュレートされている細胞を生成するための組成物および方法が開示される。この様式で改変された細胞は、TCR複合体の欠如がHLAベースの免疫応答を予防または低減することから治療剤、例えば移植片として使用することができる。さらに目的の他の遺伝子(例えば、導入遺伝子)は、TCRおよび/またはB2M遺伝子が操作されている細胞に挿入することができる。1つまたは複数のさらなる(非TCRおよび/またはB2M)遺伝子(例えば、他のTCR、B2M、PD1、CTLA4、HLA遺伝子、セーフハーバー遺伝子など)は、ノックアウトおよび/または外因性配列の標的化挿入を介して改変することができる。外因性配列は、改変細胞への組み込みのためのキメラ抗原受容体を含むことができ、がんおよび自己免疫性障害を処置するために使用することができる。
【0051】
一般
本明細書に開示される方法の実施、ならびに組成物の調製および使用は、別途指示がない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNAおよび当技術分野の範囲内である関連分野における従来の技術を用いる。これらの技術は、文献において詳細に説明される。例えば、Sambrookら、MOLECULAR CLONING: A
LABORATORY MANUAL、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989
年および第3版、2001年;Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、John Wiley & Sons、New York、1987年および定期の最新版;シリーズMETHODS IN ENZYMOLOGY、Academic Press、San Diego;Wolffe、CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION、第3版、Academic Press、San Diego、1998年;METHODS IN ENZYMOLOGY、第304巻、「Chromatin」(P.M. WassarmanおよびA. P. Wolffe編)、Academic Press、San Diego、1999年;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY、第1
19巻、「Chromatin Protocols」(P.B. Becker編)、Humana Press、Totowa、19
99年を参照のこと。
【0052】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は互換的に使用され、直鎖状または環状の立体配座の、および一本鎖または二本鎖の形のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限するものと解釈されるべきでない。これらの用語は、天然のヌクレオチドならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート骨格)が修飾されるヌクレオチドの公知の類似体を包含することができる。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有する;すなわち、Aの類似体はTと塩基対合する。
【0053】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は互換的に用いられて、アミノ酸残基のポリマーを指す。本用語は、1つまたは複数のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または改変誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0054】
「結合」は、巨大分子の間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的、非共有結合的相互作用を指す。結合相互作用が全体として配列特異的である限り、該結合相互作用の全ての構成成分が配列特異的である(例えば、DNA骨格中のリン酸残基と接触する)必要があるわけではない。そのような相互作用は、10-6-1またはそれより低い解離定数(K)によって一般的に特徴付けられる。「親和性」は、結合の強さを指す。結合親和性の増加はより低いKと相関する。「非特異的結合」は、目的の任意の分子(例えば工学技術で作製されたヌクレアーゼ)と巨大分子(例えばDNA)との間に生じる標的配列に依存しない非共有結合的相互作用を指す。
【0055】
「DNA結合分子」は、DNAに結合することができる分子である。そのようなDNA結合分子は、ポリペプチド、タンパク質のドメイン、より大きなタンパク質内のドメインまたはポリヌクレオチドであってよい。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAであり、一方他の実施形態では、ポリヌクレオチドはRNAである。一部の実施形態では、DNA結合分子はヌクレアーゼのタンパク質ドメイン(例えばFokIドメイン)であり、一方他の実施形態では、DNA結合分子はRNAガイドヌクレアーゼのガイドRNA構成成分(例えばCas9またはCfp1)である。
【0056】
「結合性タンパク質」は、別の分子に非共有結合で結合することができるタンパク質である。結合性タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合性タンパク質)、RNA分子(RNA結合性タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合性タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合性タンパク質の場合、それはそれ自体に結合することができ(ホモダイマー、ホモトリマーなどを形成する)、および/またはそれは1つまたは複数の異なるタンパク質の1つまたは複数の分子に結合することができる
。結合性タンパク質は、1つより多いタイプの結合活性を有することができる。例えば、ジンクフィンガータンパク質はDNA結合活性、RNA結合活性およびタンパク質結合活性を有する。
【0057】
「ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質」(または、結合ドメイン)は、その構造が亜鉛イオンの配位を通して安定する結合ドメインの中のアミノ酸配列の領域である、1つまたは複数のジンクフィンガーを通して配列特異的な様式でDNAに結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質の中のドメインである。したがって、マルチフィンガーZFPの各ジンクフィンガーは、骨格内のDNAへの結合のための認識ヘリックス領域を含む。用語ジンクフィンガーDNA結合性タンパク質は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPとしてしばしば略される。用語「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」は、1つのZFNおよび、標的遺伝子を切断するために二量体化する一対のZFN(対のメンバーは、「左および右」または「第1および第2の」または「対」と称される)を含む。
【0058】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたは複数のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、それぞれ反復可変性二残基(repeat variable diresidue)(RVD)を含み、そのコグネイト標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一の「反復単位」(「反復」とも呼ばれる)は、長さが一般的に33~35アミノ酸であり、天然に存在するTALEタンパク質の中の他のTALE反復配列と少なくとも一部の配列相同性を示す。TALEタンパク質は、反復単位内のカノニカルなまたは非カノニカルなRVDを使用して標的部位に結合するように設計することができる。例えば、米国特許第8,586,526号および第9,458,205号を参照。ジンクフィンガーおよびTALE DNA結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガータンパク質の認識ヘリックス領域の工学技術(1つまたは複数のアミノ酸を変更)を介して、またはDNA結合(反復可変性二残基またはRVD領域)に関与するアミノ酸の工学技術によって、所定のヌクレオチド配列に結合するように「工学技術で作製する」ことができる。したがって、工学技術で作製されたジンクフィンガータンパク質またはTALEタンパク質は、天然に存在しないタンパク質である。ジンクフィンガータンパク質およびTALEを工学技術で作製するための方法の非限定的例は、設計および選択である。設計されたタンパク質は、その設計/組成が合理的基準から主に生じる、天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準には、既存のZFPまたはTALE設計(カノニカルなおよび非カノニカルなRVD)および結合データの情報を保存するデータベース中の情報を処理するための、置換規則およびコンピュータ化アルゴリズムの適用が含まれる。例えば、米国特許第9,458,205号、第8,586,526号、第6,140,081号、第6,453,242号および第6,534,261号を参照、国際特許公開WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536およびWO03/016496も参照。用語「TALEN」は、1つのTALENおよび、標的遺伝子を切断するために二量体化する一対のTALEN(対のメンバーは、「左および右」または「第1および第2の」または「対」と称される)を含む。
【0059】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質、TALEタンパク質またはCRISPR/Cas系は、天然には見出されず、その産生がファージディスプレイ、相互作用トラップまたはハイブリッド選択などの実験プロセスから主に生じる。例えば、米国特許第5,789,538;5,925,523;6,007,988;6,013,453;6,200,759;国際特許公開第WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197およびWO02/099084を参照のこと。
【0060】
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関与すると考えられている原核生物のアルゴノートタンパク質である。TtAgoは、細菌Thermus thermophilus由来である。例えばSwartsら、同書、G. Shengら、(2013年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111巻、652頁)を参照。「TtAgo系」は、例えばTtAgo酵素による切断のためのガイドDNAを含む要求される構成成分の全てである。
【0061】
「組換え」は、2つのポリヌクレオチドの間での遺伝情報の交換のプロセスを指す。この開示のために、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同組換え修復機構による細胞中の二本鎖切断の修復の間に起こるそのような交換の特殊化した形態を指す。このプロセスはヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経たもの)の鋳型修復に「ドナー」分子を使用し、「非交叉遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として様々に公知であるが、その理由は、それがドナーから標的への遺伝情報の伝達をもたらすからである。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むことなく、そのような伝達は、切断された標的とドナーとの間で形成されるヘテロ二本鎖DNAのミスマッチ補正、および/または、ドナーが標的の一部になる遺伝情報を再合成するために使用される「合成依存性鎖アニーリング」、および/または関連したプロセスに関与することができる。そのような特殊化したHRは標的分子の配列の変更をしばしばもたらし、そのため、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全体が標的ポリヌクレオチドに組み入れられる。
【0062】
本開示の方法では、本明細書に記載される1つまたは複数の標的化ヌクレアーゼは、所定部位(例えば、目的の遺伝子または遺伝子座)の標的配列(例えば、細胞クロマチン)において二本鎖切断(DSB)を生じさせ、切断領域のヌクレオチド配列と相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドを、細胞に導入することができる。DSBの存在により、ドナー配列の組込みを促進することが示された。任意選択で構築物は、切断の領域におけるヌクレオチド配列に相同性を有する。ドナー配列は物理的に組み込まれてもよいし、または代わりに、ドナーポリヌクレオチドを、相同組換えによる切断の修復のための鋳型として使用し、細胞クロマチンへのドナーの場合のようにヌクレオチド配列の全部または一部の導入をもたらす。したがって、細胞クロマチン中の第1の配列を改変することができ、ある特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドに存在する配列へと変換することができる。したがって、用語「置き換える」または「置き換え」の使用は、1つのヌクレオチド配列の、別のものによる置き換え(すなわち、情報の意味での配列の置き換え)を表し、1つのポリヌクレオチドの、別のものによる物理的または化学的置き換えを必ずしも必要とするものではないことを理解することができる。
【0063】
本明細書に記載される方法のいずれでも、細胞の中のさらなる標的部位のさらなる二本鎖切断のために、ジンクフィンガータンパク質のさらなる対を使用することができる。
【0064】
細胞クロマチン中の目的領域における配列の標的化組換えおよび/または置き換えおよび/または変更のための方法のある特定の実施形態では、染色体配列は、外因性「ドナー」ヌクレオチド配列による相同組換えによって変更される。切断の領域に相同性の配列が存在するならば、そのような相同組換えは細胞クロマチン中の二本鎖切断の存在によって刺激される。
【0065】
本明細書に記載される方法のいずれでも、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、目的領域のゲノム配列に相同的であるが同一でない配列を含有することができ、それによって相同組換えを刺激して、目的領域の中に同一でない配列を挿入することができる。したがって、ある特定の実施形態では、目的領域の配列に相同性であるドナー配列の部分は、置き換えられたゲノム配列と約80から99%(または、その間の任意の整数)の間の配列同一性を呈示する。他の実施形態では、例えば、100個の連続した塩基対にわたってドナー配列とゲノム配列との間で1ヌクレオチドだけが異なる場合は、ドナー配列とゲノム配列との間の相同性は99%より高い。ある特定の場合には、新しい配列が目的領域に導入されるように、ドナー配列の非相同部分は、目的領域に存在しない配列を含有することができる。これらの場合には、非相同配列は、目的領域の配列に相同性または同一である、50~1,000塩基対(または、その間の任意の整数値)または1,000を超える任意数の塩基対の配列に一般的に隣接する。他の実施形態では、ドナー配列は第1の配列に非相同性であり、非相同組換え機構によってゲノムに挿入されている。
【0066】
本明細書に記載される方法のいずれも、目的の遺伝子(複数可)の発現を破壊するドナー配列の標的化組込みによる、細胞における1つまたは複数の標的配列の部分的または完全な不活性化のために使用することができる。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株も、提供される。
【0067】
さらに、本明細書に記載される標的化組込みの方法は、1つまたは複数の外因性配列を組み込むために使用することもできる。外因性核酸配列は、例えば、1つまたは複数の遺伝子もしくはcDNA分子、または任意のタイプのコード配列もしくは非コード配列、ならびに1つまたは複数の調節エレメント(例えば、プロモーター)を含むことができる。さらに、外因性核酸配列は、1つまたは複数のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害性RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)など)を産生することができる。
【0068】
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。切断は、ホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解を限定されずに含む、様々な方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断の両方が可能であり、二本鎖切断は2つの異なる一本鎖切断事象の結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端のいずれかの産生をもたらし得る。ある特定の実施形態では、標的化二本鎖DNA切断のために融合ポリペプチドが使用される。
【0069】
「切断半ドメイン」は、第2のポリペプチド(同一のまたは異なる)と共に、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第1および第2の切断半ドメイン」、「+および-切断半ドメイン」ならびに「右および左切断半ドメイン」は互換的に使用されて、二量体化する切断半ドメインの対を指す。
【0070】
「工学技術で作製された切断半ドメイン」は、別の切断半ドメイン(例えば、別の工学技術で作製された切断半ドメイン)と絶対ヘテロダイマー(obligate heterodimer)を
形成するように改変された切断半ドメインである。参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第7,888,121号;第7,914,796号;第8,034,598号;第8,623,618号および米国特許出願公開第2011/0201055号も参照されたい。
【0071】
用語「配列」は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、それはDNAまたはRNAであってもよく;直鎖状、環状または分枝状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよい。用語「ドナー配列」は、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば2から10,000ヌクレオチド(または、その間のもしくはその上の任意の整数値)の間の長さ、好ましくは約100から1,000ヌクレオチド(または、その間の任意の整数)の間の長さ、より好ましくは約200から500ヌクレオチドの間の長さであってよい。
【0072】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造物である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。大多数の真核生物の細胞クロマチンはヌクレオソームの形で存在し、ここで、ヌクレオソームコアはヒストンH2A、H2B、H3およびH4の各々2つを含む八量体に会合した概ね150塩基対のDNAを含み;リンカーDNA(生物体によって様々な長さの)がヌクレオソームコアの間に延びる。ヒストンH1の分子は、リンカーDNAに一般的に会合している。本開示のために、用語「クロマチン」は、原核生物および真核生物の両方の、全てのタイプの細胞核タンパク質の包含を意味するものである。細胞クロマチンには、染色体およびエピソームの両方のクロマチンが含まれる。
【0073】
「染色体」は、細胞のゲノムの全体または一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、細胞のゲノムを含む全ての染色体の集合である、その核型によってしばしば特徴付けられる。細胞のゲノムは、1つまたは複数の染色体を含むことができる。
【0074】
「エピソーム」は、複製する核酸、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部でない核酸を含む他の構造物である。エピソームの例には、プラスミドおよびある特定のウイルスゲノムが含まれる。
【0075】
「標的部位」または「標的配列」は、結合のための十分な条件が存在することを条件に、結合性分子が結合する核酸の一部を規定する核酸配列である。例えば、配列5’GAATTC3’は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼのための標的部位である。
【0076】
「外因性」分子は、細胞に通常は存在しないが、1つまたは複数の遺伝的方法、生化学的方法または他の方法によって細胞に導入することができる分子である。「細胞における正常な存在」は、細胞の特定の発達段階および環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発達の間だけに存在する分子は、成体の筋細胞に関しては外因性分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞に関しては外因性分子である。外因性分子は、例えば、機能不全の内因性分子の機能バージョンまたは正常機能内因性分子の機能不全バージョンを含むことができる。
【0077】
外因性分子は、とりわけ、小分子、例えばコンビナトリアル化学プロセスによって生成されるもの、または巨大分子、例えばタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の改変誘導体、または上記の分子の1つまたは複数を含む任意の複合体であってよい。核酸にはDNAおよびRNAが含まれ、一本鎖または二本鎖であってよく、直鎖状、分枝状または環状であってよく、任意の長さであってよい。例えば、米国特許第8,703,489号および第9,255,259号を参照されたい。核酸には、二重鎖を形成することが可能な核酸ならびに三重鎖形成核酸が含まれる。例えば、米国特許第5,176,996号および第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合性タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合性タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、脱アセチル化酵素、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ギラーゼおよびヘリカーゼが限定されずに含まれる。
【0078】
外因性分子は、内因性分子と同じ種類の分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってよい。例えば、外因性核酸は、細胞に導入される感染性のウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または細胞に通常は存在しない染色体を含むことができる。細胞への外因性分子の導入のための方法は当業者に公知であり、脂質媒介伝達(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介伝達およびウイルスベクター媒介伝達が限定されずに含まれる。外因性分子は内因性分子と同じ種類の分子であってもよいが、細胞が由来する種と異なる種に由来してもよい。例えば、マウスまたはハムスターに本来由来する細胞株に、ヒト核酸配列を導入することができる。
【0079】
対照的に、「内因性」分子は、特定の環境条件下で特定の発達段階の特定の細胞に通常存在するものである。例えば、内因性の核酸は、染色体、ミトコンドリアのゲノム、クロロプラストもしくは他のオルガネラ、または天然に存在するエピソーム核酸を含むことができる。さらなる内因性分子には、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含めることができる。
【0080】
「融合」分子は、2つまたはそれより多いサブユニット分子が、好ましくは共有結合で連結される分子である。サブユニット分子は、同じ化学的タイプの分子であってよいか、または異なる化学的タイプの分子であってよい。第1のタイプの融合分子の例には、融合タンパク質(例えば、ZFPまたはTALE DNA結合ドメインと1つまたは複数の活性化ドメインとの間の融合物)および融合核酸(例えば、上に記載の融合タンパク質をコードする核酸)が限定されずに含まれる。第2のタイプの融合分子の例には、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、および副溝バインダーと核酸との間の融合物が限定されずに含まれる。用語には、ポリヌクレオチド構成成分が機能的分子を形成するようにポリペプチド構成成分と会合する系(例えば、単一ガイドRNAが遺伝子発現をモジュレートするために機能的ドメインと会合するCRISPR/Cas系)も含まれる。
【0081】
細胞における融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの細胞への送達によって生じることができ、ここで、ポリヌクレオチドは転写され、転写物は翻訳されて融合タンパク質を生成する。細胞におけるタンパク質の発現において、トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチドライゲーションが関与することもできる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法は、本開示の他の場所で提示される。
【0082】
本開示のために、「遺伝子」は、遺伝子生成物(下を参照のこと)をコードするDNA領域、ならびに、そのような調節配列がコード配列および/または転写配列に隣接しているか否かを問わず、遺伝子生成物の産生を調節する全てのDNA領域を含む。したがって、遺伝子は、必ずしも限定されずに、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位、エンハンサー、サイレンサー、インシュレータ、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位および遺伝子座調節領域を含む。
【0083】
「セーフハーバー」遺伝子座は、遺伝子を宿主細胞へのいかなる有害作用もなしに挿入することができるゲノム内の遺伝子座である。最も有益なのは、挿入された遺伝子配列の発現が付近の遺伝子からのいかなるリードスルー発現によっても攪乱されないセーフハーバー遺伝子座である。ヌクレアーゼ(複数可)によって標的化されるセーフハーバー遺伝子座の非限定的例には、CCR5、CCR5、HPRT、AAVS1、Rosaおよびアルブミンが含まれる。例えば、米国特許第8,771,985号;同第8,110,379号;同第7,951,925号;米国特許出願公開第2010/0218264号;同第2011/0265198号;同第2013/0137104号;同第2013/0122591号;同第2013/0177983号;同第2013/0177960号;同第2015/0056705号および同第2015/0159172号)を参照されたい。
【0084】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子生成物への変換を指す。遺伝子生成物は、遺伝子の直接転写生成物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的RNAまたは任意の他のタイプのRNA)、またはmRNAの翻訳によって生成されるタンパク質であってよい。遺伝子生成物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集などのプロセスによって改変されるRNA、ならびに、例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリストイル化およびグリコシル化によって改変されるタンパク質も含まれる。
遺伝子発現の「モジュレーション」または「改変」は、遺伝子の活性の変化を指す。発現のモジュレーションには、外因性分子(例えば、工学技術で作製された転写因子)の結合を介した遺伝子の改変によるものを含む遺伝子活性化および遺伝子抑制を限定されずに含めることができる。モジュレーションは、ゲノム編集(例えば、切断、変更、不活性化、ランダム変異)を介した遺伝子配列の改変によっても達成することができる。遺伝子不活性化は、本明細書に記載される改変されていない細胞と比較したときの、遺伝子発現のいかなる低減も指す。したがって、遺伝子不活性化は部分的であるか、または完全であってもよい。
【0085】
「目的領域」は、外因性分子を結合させることが望ましい、例えば、遺伝子または遺伝子の中のもしくはそれに隣接した非コード配列などの細胞クロマチンの任意の領域である。結合は、標的化DNA切断および/または標的化組換えのためであってもよい。目的領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリア、クロロプラスト)、または、例えば感染性ウイルスゲノムに存在することができる。目的領域は、遺伝子のコード領域の中、例えばリーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロンなどの転写された非コード領域の中、または、コード領域の上流もしくは下流のいずれかの非転写領域の中にあってもよい。目的領域は、単一のヌクレオチド対と同じくらい小さくてもよく、または最高2,000ヌクレオチド対の長さ、または任意の整数値のヌクレオチド対であってもよい。
【0086】
「真核生物」細胞には、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)が限定されずに含まれる。
【0087】
用語「作用的連結」および「作用的に(operatively)連結する」(または、「作動可能に(operably)連結する」)は、2つまたはそれより多い構成成分(配列エレメントなど)の並置に関して互換的に使用され、ここで、構成成分は、両構成成分が正常に機能して、構成成分の少なくとも1つが他の構成成分の少なくとも1つにおいて発現する機能を媒介することができるということを可能にするように配置される。例証として、プロモーターなどの転写調節配列は、その転写調節配列が1つまたは複数の転写調節因子の存在または不在に応答してコード配列の転写のレベルを調節するならば、コード配列に作用的に連結されている。転写調節配列はコード配列と一般的にcisで作用的に連結するが、それと直接的に隣接する必要がない。例えば、たとえそれらが近接していなくても、エンハンサーはコード配列に作用的に連結している転写調節配列である。
【0088】
融合ポリペプチドに関して、用語「作用的に連結する」は、構成成分の各々が、そのように連結していない場合にそれがするだろうものと同じ機能を、他の構成成分と連結して実行するという事実を指すことができる。例えば、DNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALE)が活性化ドメインに融合している融合ポリペプチドに関して、融合ポリペプチドにおいて、DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができ、活性化ドメインが遺伝子発現を上方調節することができるならば、DNA結合ドメインおよび活性化ドメインは作用的に連結している。DNA結合ドメインが切断ドメインに融合している融合ポリペプチドの場合は、融合ポリペプチドにおいて、DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができ、切断ドメインが標的部位の近くでDNAを切断することができるならば、DNA結合ドメインおよび切断ドメインは作用的に連結している。同様に、DNA結合ドメインが活性化または抑制ドメインに融合されている融合ポリペプチドに関して、DNA結合ドメインおよび活性化または抑制ドメインは、融合ポリペプチドにおいてDNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合でき、一方活性化ドメインが遺伝子発現を上方制御することができるまたは抑制ドメインが遺伝子発現を下方制御することができる場合に、機能的連結(operative linkage)している。
【0089】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一でないが、完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持する、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は対応する天然分子より多くの、より少ないまたは同じ数の残基を保有することができ、および/または1つまたは複数のアミノ酸もしくはヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当技術分野で周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法は、周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合性機能は、例えば、フィルター結合性、電気泳動移動性-シフトまたは免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断は、ゲル電気泳動によって試験することができる。上記、Ausubelらを参照のこと。別のタンパク質と相互作用するタンパク質の能力は、例えば、共免疫沈降、2ハイブリッドアッセイまたは遺伝子的および生化学的の両方の相補性によって決定することができる。例えば、Fieldsら(1989年)Nature 340巻:245~246頁;米国特許第5,585,245号および国際特許公開第WO98/44350を参照のこと。
【0090】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に移すことが可能である。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子導入ベクター」は、目的の遺伝子の発現に誘導することが可能であり、遺伝子配列を標的細胞に移すことができる任意の核酸構築物を意味する。したがって、本用語は、クローニングおよび発現ビヒクルならびに組込みベクターを含む。
【0091】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」は、好ましくはルーチンのアッセイにおいてとは限らないが、容易に測定されるタンパク質生成物を産生する任意の配列を指す。適するレポーター遺伝子には、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光性または発光性のタンパク質(例えば、緑色蛍光性タンパク質、強化された緑色蛍光性タンパク質、赤色蛍光性タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに強化された細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)が限定されずに含まれる。エピトープタグには、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1つまたは複数のコピーが含まれる。「発現タグ」には、目的の遺伝子の発現をモニタリングするために所望の遺伝子配列に作動可能に連結することができるレポーターをコードする配列が含まれる。
【0092】
用語「被験体」および「患者」は、互換的に用いられ、ヒト患者および非ヒト霊長類、ならびにウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウスなどの実験動物、ならびに他の動物などの哺乳動物を指す。したがって本明細書において使用される用語「被験体」または「患者」は、本発明の発現カセットを投与することができる任意の哺乳動物患者または被験体を意味する。本発明の被験体は、障害を有する被験体または障害を発症するリスクがある被験体を含む。
【0093】
本明細書において使用される用語「処置する」または「処置」は、症状の重症度および/または頻度の低減、症状および/または根底にある原因の除去、症状の出現および/またはそれらの根底にある原因の予防、ならび損傷の改善または治療を指す。がんおよび移植片対宿主病は、本明細書に記載される組成物および方法を使用して処置することができる状態の非限定的例である。それにより「処置する」および「処置」には:
(i)哺乳動物において、具体的にはそのような哺乳動物が状態になりやすい素因を有するが、それを有するとしてまだ診断されていない場合に、疾患または状態の出現を予防すること;
(ii)疾患または状態を抑制すること、すなわちその発症を抑止すること;
(iii)疾患もしくは状態を緩和すること、すなわち疾患もしくは状態の退縮をもたらすこと;または
(iv)疾患もしくは状態から生じる症状を緩和すること、すなわち根底にある疾患もしくは状態に対処すること無く疼痛を緩和すること
が含まれる。
【0094】
本明細書において使用される、用語「疾患」および「状態」は、互換的に使用することができる、または特定の疾病もしくは状態が公知の原因因子を有さず(そのため病因がまだ解明されていない)、したがってそれはまだ疾患としてではなく、望ましくない状態または症候群としてのみ認識されていて、ある程度の具体的な症状のセットが臨床医によって同定されているという点では、異なっていてよい。
【0095】
「医薬組成物」は、哺乳動物、例えばヒトへの生物学的に活性な化合物の送達のために当技術分野において一般に許容される本発明の化合物および媒体の製剤を指す。そのためのそのような媒体には、全ての薬学的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤が含まれる。
【0096】
「有効量」または「治療有効量」は、哺乳動物、好ましくはヒトに投与された場合に、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて処置をもたらすために十分である本発明の化合物の量を指す。「治療有効量」を構成する本発明の組成物の量は、化合物、状態およびその重症度、投与の様式ならびに処置される哺乳動物の年齢に応じて変化するが、当業者自身の知識および本開示を考慮して当業者によって日常的に決定することができる。
【0097】
DNA結合ドメイン
本明細書で、HLA遺伝子またはHLA制御因子を含む任意の遺伝子中の標的部位に特異的に結合するDNA結合ドメインを含む組成物が記載される。任意のDNA結合ドメインは、本明細書で開示される組成物および方法において使用することができ、限定されずにジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、CRISPR/CasヌクレアーゼのDNA結合部分(sgRNA)またはメガヌクレアーゼ由来DNA結合ドメインが含まれる。DNA結合ドメインは、限定されずに、本明細書に開示の標的部位(配列番号8~21および/または92~103)のいずれかに示す12またはそれより多いヌクレオチドの標的配列を含む、遺伝子内の任意の標的配列に結合することができる。
【0098】
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、ジンクフィンガータンパク質を含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択された標的部位に結合するように工学技術で作製されている点で、天然に存在しない。例えば、Beerliら(2002年)Nature Biotechnol.20巻:135~141頁;Paboら(2001年)Ann. Rev. Biochem.70巻:313~340頁;Isalanら(2001年)Nature Biotechnol.19巻:656~660頁;Segalら(2001年)Curr. Opin. Biotechnol.12巻:632~637頁;Chooら(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol.10巻:411~416頁;米国特許第6,453,242号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,030,215号;同第6,794,136号;同第7,067,317号;同第7,262,054号;同第7,070,934号;同第7,361,635号;および同第7,253,273号;および米国特許出願公開第2005/0064474号;同第2007/0218528号;および同第2005/0267061号(すべて本明細書にその全体が参考として援用される)を参照のこと。ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0060230号に開示されているジンクフィンガータンパク質を含む(例えば、表1)。他の実施形態では、DNA結合ドメインは、ZFP構成成分(「設計」と称される)を含み、限定されずにZFN 72732;72748;68957;または72678のZFPドメインを含んで、表1、2、4、5、6または8のZFNに記載される認識ヘリックス領域および骨格を含む。
【0099】
工学技術で作製されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。工学技術で作製する方法には、合理的なデザインおよび種々のタイプの選択が限定されずに含まれる。合理的なデザインには、例えば、三つ組(または、四つ組)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各三つ組または四つ組ヌクレオチド配列は、特定の三つ組または四つ組配列に結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照のこと。
【0100】
ファージディスプレイおよび2ハイブリッド系を含む例示的な選択方法は、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,410,248号;6,140,466号;6,200,759号;および6,242,568号;ならびに国際特許公開第WO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;およびWO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインの結合特異性の増強が、例えば、米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0101】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば長さが5またはそれより多くのアミノ酸のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。長さが6またはそれより多くのアミノ酸の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質には、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0102】
標的部位;ZFPの選択および融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のための方法は、当業者に公知であり、米国特許第6,140,081号、第5,789,538号、第6,453,242号、第6,534,261号、第5,925,523号、第6,007,988号、第6,013,453号、第6,200,759号、および国際特許公開第WO95/19431、WO96/06166、WO98/53057、WO98/54311、WO00/27878、WO01/60970、WO01/88197、WO02/099084、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536およびWO03/016496に詳細に記載されている。
【0103】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば5またはそれより多いアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、第6,903,185号、第7,153,949号:第7,888,121号;第7,914,796号;第8,034,598号;第8,623,618号;第9,567,609号;および米国特許公報第2017/0218349号も参照。本明細書に記載されるタンパク質には、そのタンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。
【0104】
ある特定の実施形態ではDNA結合ドメインは、TCR遺伝子またはTCR制御遺伝子中の標的部位に結合し(配列特異的様式で)、TCR遺伝子の発現をモジュレートする工学技術で作製されたジンクフィンガータンパク質である。一部の実施形態ではジンクフィンガータンパク質は、TCR中の標的部位に結合するが、一方他の実施形態ではジンクフィンガーは、TRBC中の標的部位に結合する。他の実施形態では、DNA結合ドメインは、B2M遺伝子中の標的部位に結合し(配列特異的様式で)、B2M遺伝子の発現をモジュレートする工学技術で作製されたジンクフィンガータンパク質である。これらのDNA結合ドメインの非限定的例示的実施形態は、表1、2および6(TCR)ならびに表5および8(B2M)に示されている。ある特定の実施形態では、ZFPは、72732;72748;68957;または72678と呼ばれるZFNのZFP部分を含む。
【0105】
通常ZFPは、少なくとも3つのフィンガーを含む。ある特定のZFPは、4つ、5つまたは6つのフィンガーを含む。3つのフィンガーを含むZFPは、9または10ヌクレオチドを含む標的部位を典型的には認識し;4つのフィンガーを含むZFPは、12から14ヌクレオチドを含む標的部位を典型的には認識し;一方6つのフィンガーを有するZFPは、18から21ヌクレオチドを含む標的部位を認識することができる。ZFPは、転写活性化または抑制ドメインであってよい1つまたは複数の制御ドメインを含む融合タンパク質であってもよい。
【0106】
一部の実施形態ではDNA結合ドメインは、ヌクレアーゼ由来であってよい。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼ(例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIII)の認識配列が公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res.22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet.12巻:224~228頁;Gimbleら(1996
年)J. Mol. Biol.263巻:163~180頁;Argastら(1998年)J. Mol. Biol.280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログも参照。さらに
、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位に結合するように工学技術で作製することができる。例えば、Chevalierら(
2002年)Molec. Cell 10巻:895~905頁;Epinatら(2003年)Nucleic Acids Res.31巻:2952~2962頁;Ashworthら(2006年)Nature 441巻:656~659頁;Paquesら(2007年)Current Gene Therapy 7巻:49~66頁;米国特許出願公開第2007/0117128号を参照のこと。
【0107】
他の実施形態ではDNA結合ドメインは、植物病原体Xanthomonas(Bochら、(2009年)Science 326巻:1509~1512頁ならびにMoscouおよびBogdanove、(2009年)Science 326巻:1501頁を参照)ならびにRalston
ia(Heuerら(2007年)Applied and Environmental Microbiology 73巻(13号):4379~4384頁を参照);米国特許公開第2011/0301073号および第2011/0145940号由来のものに類似するTALエフェクター由来の工学技術で作製されたドメインを含む。Xanthomonas属の植物病原細菌は、重要な作物植物における多くの疾患を引き起こすことが公知である。Xanthomonasの病原性は、植物細胞に25を超える異なるエフェクタータンパク質を注入する、保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。植物転写活性化因子を模倣して植物トランスクリプトームを操作する、転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、これらの注入されるタンパク質の1つである(Kayら(2007年)Science 318巻:648~651頁を参照のこと)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最も良く特徴付けられたTALEの1つは、Xanthomonas campestgris pv.VesicatoriaからのAvrBs3である(Bonasら(1989年)Mol Gen Genet 218巻:127~136頁および国際特許公開第WO2010079430を参照のこと)。TALEはタンデムリピートの集中型ドメイン(centralized domain)を含有し、各リピートは概ね34アミノ酸を含有し、それら
はこれらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要である。さらに、それらは核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(レビューについては、Schornack Sら(2006年)J Plant Physiol 163巻(3号):256~272頁を参照のこと
)。さらに、植物病原細菌Ralstonia solanacearumでは、R.solanacearum生物型(biovar)1菌株GMI1000および生物型4菌株RS1000において、XanthomonasのAvrBs3ファミリーに相同性である、brg11およびhpx17と呼ばれる2つの遺伝子が見出された(Heuerら(2007
年)Appl and Envir Micro 73巻(13号):4379~4384頁を参照のこと
)。これらの遺伝子はヌクレオチド配列がお互いと98.9%同一であるが、hpx17の反復配列ドメインにおける1,575bpが欠失している点で異なる。しかし、両遺伝子生成物は、XanthomonasのAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。
【0108】
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデムリピートに見出される配列に依存する。反復配列は概ね102塩基対を含み、そのリピートはお互いと典型的にはに91~100%相同である(Bonasら、同上)。そのリピートの多型は通常12位および13位に
位置し、12位および13位の超可変二残基(hypervariable diresidues)(リピート
可変二残基またはRVD領域)の同一性とTALエフェクターの標的配列の中の近接したヌクレオチドの同一性の間に1対1の対応があるようである(MoscouおよびBogdanove、
(2009年)Science 326巻:1501頁およびBochら(2009年)Science 326巻:1509~1512頁を参照のこと)。実験的に、12位および13位のHD配列(リピート可変二残基またはRVD領域)がシトシン(C)への結合をもたらし、NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに、NNがAまたはGに結合し、INGがTに結合するように、これらのTALエフェクターのDNA認識のための天然のコードを決定した。これらのDNA結合リピートは、新しい配列と相互作用して、植物細胞中の非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子を作製するために、新しい組合せおよび多数のリピートを有するタンパク質に組み立てられた(Bochら、同上)。非定型RVDを伴うTALENを包含する、TALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)を得るために、工学技術で作製されたTALタンパク質をFokI切断半ドメインに連結した。例えば、米国特許第8,586,526号を参照のこと。
【0109】
一部の実施形態ではTALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断半ドメインを含む。他の実施形態ではTALEヌクレアーゼは、メガTALである。これらのメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは、単量体として活性であり、活性のために二量体化を必要としない(Boisselら、(
2013年)Nucl Acid Res:1~13頁、doi: 10.1093/nar/gkt1224を参照)。
【0110】
なおさらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、コンパクトなTALENを含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインに連結する単鎖融合タンパク質である。TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに関してどこに配置されるかに応じて、融合タンパク質は、TALE領域によって局在化されたニッカーゼとして作用することができるか、または二本鎖切断を引き起こすことができる(Beurdeleyら(2013年)Nat Comm:4:1762頁、DOI: 10.1038/ncomms2782を参照)。さらに、ヌクレアーゼドメインは、DNA結合機能性も示すことができる。任意のTALENを、1つまたは複数のメガTALEを含むさらなるTALEN(例えば、1つまたは複数のTALEN(cTALENまたはFokI-TALEN)と組み合わせて使用することができる。
【0111】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質またはTALEは、例えば5またはそれより多くのアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。6またはそれより多くのアミノ酸長の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号、第6,903,185号;および第7,153,949号も参照。本明細書に記載されるタンパク質には、そのタンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強は、例えば米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0112】
ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、DNAに結合するシングルガイドRNA(sgRNA)を包含する、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の一部である。例えば、米国特許第8,697,359号ならびに米国特許出願公開第2015/0056705号および2015/0159172号を参照のこと。その系のRNA構成成分をコードするCRISPR(クラスター化規則的散在性ショートパリンドロームリピート)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年、Mol. Microbiol.43巻:1565~1575頁;Makarovaら、2002年、Nucleic Acids Res.30巻:482~496頁;Makarovaら、2006年、Biol.
Direct 1巻:7頁;Haftら、2005年、PLoS Comput. Biol.1巻:e60頁)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子の組合せ、ならびにCRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントを含有する。
【0113】
II型CRISPRは最も良く特徴付けられた系の1つであり、4つの逐次的ステップで標的化DNA二本鎖切断を実行する。先ず、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAはプレcrRNAの反復配列領域(repeat region)にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプレcrRNAのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、crRNA上のスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNAの上のプロトスペーサーとの間のワトソン-クリック塩基対合を介して、機能的ドメイン(例えば、Casなどのヌクレアーゼ)を標的DNAに誘導する、これは、標的認識のためのさらなる要件である。最後に、プロトスペーサーの中で二本鎖切断を引き起こすために、Cas9は標的DNAの切断を媒介する。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップで構成される:(i)「適応」と呼ばれるプロセスにおける、将来の攻撃を防止するためのCRISPRアレイへのエイリアンDNA配列の挿入、(ii)関連するタンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、続いて(iii)エイリアン核酸に対するRNA媒介干渉。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかはCRISPR/Cas系の天然の機能に関与し、エイリアンDNAなどの挿入などの機能における役割を果たしている。
【0114】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能的誘導体」であってよい。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列のポリペプチドと共通した定性的生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、天然配列の断片、ならびに天然配列ポリペプチドの誘導体およびその断片が限定されずに含まれるが、ただし、それらは対応する天然配列ポリペプチドと共通する生物学的活性を有する。本明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合性改変および誘導体Casタンパク質などのその融合物を包含する。Casポリペプチドの適する誘導体またはその断片には、Casタンパク質の変異体、融合物、共有結合性改変またはそれらの断片が限定されずに含まれる。Casタンパク質またはその断片、ならびにCasタンパク質の誘導体またはその断片を含むCasタンパク質は、細胞から得ることができるか、または化学的に合成するか、もしくはこれらの2つの手順の組合せによって得ることができる。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、または、Casタンパク質を天然に産生し、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように遺伝子操作されているか、または、内因性Casと同じであるか異なるCasをコードする、外因的に導入される核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作されている細胞であってよい。一部の場合には、細胞はCasタンパク質を天然に産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。一部の実施形態ではCasタンパク質は、AAVベクターを介した送達のための小さなCas9オルソログである(Ranら(2015年)Nature 510巻、186頁)。
【0115】
一部の実施形態では、DNA結合ドメインは、TtAgo系の一部である(Swartsら、同上;Shengら、同上を参照のこと)。真核生物では、遺伝子サイレンシングはアルゴノ
ート(Ago)ファミリーのタンパク質によって媒介される。このパラダイムでは、Agoは小さい(19~31nt)RNAに結合する。このタンパク質-RNAサイレンシング複合体は、小RNAと標的の間のワトソン-クリック型塩基対を通して標的RNAを認識し、標的RNAをエンドヌクレアーゼ的分解で(endonucleolytically)切断する(Vogel(2014年)Science 344巻:972~973頁)。対照的に、原核生物のAg
oタンパク質は小さい一本鎖DNA断片に結合し、外来の(しばしばウイルスの)DNAを検出し、除去する機能をおそらく果たす(Yuanら、(2005年)Mol. Cell 19巻、405頁;Olovnikovら、(2013年)Mol. Cell 51巻、594頁;Swartsら、
同上)。例示的な原核生物Agoタンパク質には、Aquifex aeolicus、Rhodobacter sphaeroidesおよびThermus thermophilusからのものが含まれる。
【0116】
最も良く特徴付けられた原核生物Agoタンパク質の1つは、T.thermophilusからのものである(TtAgo;Swartsら、同上)。TtAgoは、5’リン酸基で15ntまたは13~25ntの一本鎖DNA断片と会合する。TtAgoに結合するこの「ガイドDNA」は、タンパク質-DNA複合体がDNAの第三者分子中のワトソン-クリック相補的DNA配列に結合するように誘導する役目をする。これらのガイドDNA中の配列情報が標的DNAの同定を可能にしたら、TtAgo-ガイドDNA複合体は標的DNAを切断する。そのような機構は、その標的DNAに結合する間、TtAgo-ガイドDNA複合体の構造によっても支持される(G. Shengら、同上)。Rhodob
acter sphaeroidesからのAgo(RsAgo)は、類似の特性を有する(Olivnikovら、同上)。
【0117】
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAを、TtAgoタンパク質にロードすることができる(Swartsら、同上)。TtAgo切断の特異性はガイドDNAによって方向づけられるので、外因性の、調査者によって指定されたガイドDNAで形成されるTtAgo-DNA複合体は、したがって、TtAgo標的DNA切断を相補的な調査者によって指定された標的DNAに導く。この様に、DNAにおいて標的化二本鎖切断を生じさせることができる。TtAgo-ガイドDNA系(または、他の生物体からのオルソログのAgo-ガイドDNA系)の使用は、細胞の中でゲノムDNAの標的化切断を可能にする。そのような切断は、一本鎖または二本鎖であってよい。哺乳動物のゲノムDNAの切断のために、哺乳動物細胞での発現のために最適化されるバージョンのTtAgoコドンを使用するのが好ましいであろう。さらに、in vitroで形成されるTtAgo-DNA複合体で細胞を処理することが好ましい場合があり、ここで、TtAgoタンパク質は細胞貫通性ペプチドに融合される。さらに、37℃で改善された活性を有するように変異誘発を通して変更された、TtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。Ago-RNA媒介DNA切断は、遺伝子ノックアウト、標的化遺伝子付加、遺伝子補正、DNA切断の活用のための当技術分野で標準の技術を使用した標的化遺伝子欠失を含む転帰の一式(a panopoly of outcomes)に影響をもたらすために使用できた
【0118】
したがって任意のDNA結合ドメインを使用することができる。
【0119】
融合分子
本明細書に記載されるDNA結合ドメイン(例えば、ZFPまたはTALE、単一ガイドRNAなどのCRISPR/Cas構成成分)を含み異種制御(機能的)ドメイン(またはその機能性断片)と会合する融合分子も提供される。共通ドメインには、例えば、転写因子ドメイン(活性化因子、抑制因子、共活性化因子、共抑制因子)、サイレンサー、オンコジーン(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバーなど);DNA修復酵素およびそれらの関連因子およびモディファイヤー;DNA再編成酵素およびそれらの関連因子およびモディファイヤー;クロマチン関連タンパク質およびそれらのモディファイヤー(例えばキナーゼ、アセチラーゼおよび脱アセチル化酵素);ならびにDNA改変酵素(例えば、メチル基転移酵素、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)およびそれらの関連因子およびモディファイヤーが含まれる。そのような融合分子には、本明細書に記載されるDNA結合ドメインを含む転写因子および転写制御ドメインならびにDNA結合ドメインを含むヌクレアーゼおよび1つまたは複数のヌクレアーゼドメインが含まれる。
【0120】
活性化を達成するために適するドメイン(転写活性化ドメイン)には、HSV VP16活性化ドメイン(例えばHagmannら、(1997年)J. Virol. 71巻、5952~
5962頁
を参照)核内ホルモン受容体(例えばTorchiaら、(1998年)Curr. Opin. Cell. Biol. 10巻:373~383頁を参照);核内因子カッパBのp65サブ
ユニット(Bitko & Barik、(1998年)J. Virol. 72巻:5610~5618

およびDoyle & Hunt、(1997年)Neuroreport 8巻:2937~2942頁)
、Liuら、(1998年)Cancer Gene Ther. 5巻:3~28頁)、またはVP64などの人工キメラ機能的ドメイン(Beerliら、(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 95巻:14623~33頁)、およびデグロン(Molinariら、(1999年)EMBO J. 18巻、6439~6447頁)が含まれる。さらなる例示的活性化ドメイン
には、Oct 1、Oct-2A、Sp1、AP-2およびCTF1(Seipelら、(1992年)EMBO J. 11巻、4961~4968頁ならびにp300、CBP、PCAF、SRC1 PvALF、AtHD2AおよびERF-2が含まれる。例えばRobyrら(
2000年)Mol. Endocrinol. 14巻:329~347頁、Collingwoodら(1999年)J. Mol. Endocrinol. 23巻:255~275頁、Leoら(2000年)Gene 245巻:1~11頁、Manteuffel-Cymborowska (1999年)Acta Biochim. Pol. 46巻:77~89頁、McKennaら(1999年)J. Steroid Biochem. Mol. Biol.
69巻:3~12頁、Malikら(2000年)Trends Biochem. Sci. 25巻:27
7~283頁およびLemonら(1999年)Curr. Opin. Genet. Dev. 9巻:499
~504頁を参照。さらなる例示的活性化ドメインには、OsGAI、HALF-1、C1、AP1、ARF-5、-6、-7および-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GPならびにTRAB1が限定されずに含まれる。例えばOgawaら(2000年)Gene 245巻:21~29頁、Okanamiら(1996年)Genes Cells 1巻:87~99頁、Goffら(1991年)Genes Dev. 5巻:298~309頁、Choら(1999年)Plant Mol. Biol. 40巻:419~429頁、Ulmasonら(1999年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96巻:5844~5849頁、Sprenger-Hausselsら(2000年)Plant J. 22巻:1~8頁、Gongら(1999年)Plant Mol. Biol. 41巻:33~44頁およびHoboら(1999年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96巻:15,348~15,353頁を参照。
【0121】
DNA結合ドメインと機能的ドメインとの間の融合タンパク質(またはそれをコードする核酸)形成において、活性化ドメインまたは活性化ドメインと相互作用する分子のいずれかが機能的ドメインとして好適であることは、当業者に明らかである。本質的に、活性化複合体および/または活性化活性(例えば、ヒストンアセチル化など)を標的遺伝子にリクルートすることが可能な任意の分子は、融合タンパク質の活性化ドメインとして有用である。融合分子での機能的ドメインとしての使用のために適する、インシュレータードメイン、局在性ドメインならびに、ISWI含有ドメインなどのクロマチンリモデリングタンパク質および/またはメチル結合ドメインタンパク質は、例えば米国特許第7,053,264号において記載されている。
【0122】
例示的抑制ドメインには、KRAB A/B、KOX、TGFベータ誘導性初期遺伝子(TIEG)、v-erbA、SID、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えばDNMT1、DNMT3A、DNMT3B)、RbおよびMeCP2が限定されずに含まれる。例えばBirdら(1999年)Cell 99巻:451~454頁、Tylerら(1999年)Cell 99巻:443~446頁、Knoepflerら(1999年)Cell 99巻:447~450頁およびRobertsonら(2000年)Nature Genet. 25巻:
338~342頁を参照。さらなる例示的抑制ドメインには、ROM2およびAtHD2Aが限定されずに含まれる。例えばChemら(1996年)Plant Cell 8巻:305~
321頁およびWuら(2000年)Plant J. 22巻:19~27頁を参照。
【0123】
融合分子は、当業者に周知であるクローニングおよび生化学的コンジュゲーションの方法によって構築される。融合分子は、機能的ドメイン(例えば、転写活性化または抑制ドメイン)と関連するDNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALE、sgRNA)を含む。融合分子は、核局在化シグナル(例えばSV40中型T抗原(SV40 medium T-antigen
)由来のものなど)およびエピトープタグ(例えばFLAGおよびヘマグルチニンなど)も任意選択で含む。融合タンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、翻訳リーディングフレームが融合物の構成成分内で保存されるように設計される。
【0124】
一方が機能的ドメイン(またはその機能性断片)と、他方が非タンパク質DNA結合ドメイン(例えば、抗生物質、干渉物質、副溝バインダー、核酸)のポリペプチド構成成分の間の融合は、当業者に公知の生化学コンジュゲーションの方法によって構築される。例えばthe Pierce Chemical Company (Rockford、IL) Catalogueを参照。副溝バイン
ダーとポリペプチドとの間の融合を作製するための方法および組成物が、記載されている。Mappら(2000年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97巻:3930~3935頁。さらにCRISPR/Cas系の単一ガイドRNAは、活性転写制御因子およびヌクレアーゼを形成するように機能的ドメインと会合する。
【0125】
ある特定の実施形態では標的部位は、細胞性クロマチンの到達可能な領域中に存在する。到達可能領域は、例えば米国特許第7,217,509号および第7,923,542号に記載の通り決定することができる。標的部位が細胞性クロマチンの到達可能領域に存在しない場合、1つまたは複数の到達可能領域を、米国特許第7,785,792号および第8,071,370号に記載の通り生成することができる。さらなる実施形態では融合分子のDNA結合ドメインは、その標的部位が到達可能領域中にあるかどうかに関わらず、細胞性クロマチンに結合することができる。例えばそのようなDNA結合ドメインは、リンカーDNAおよび/またはヌクレオソームDNAに結合可能である。この種類の「先駆」DNA結合ドメインの例は、ある特定のステロイド受容体において、および肝細胞核因子3(HNF3)において見出される(Cordingleyら(1987年)Cell 48巻:261~270頁、Pinaら(1990年)Cell 60巻:719~731頁およびCirilloら(1998年)EMBO J. 17巻:244~254頁)。
【0126】
融合分子は、当業者に公知である通り薬学的に許容されるキャリアを用いて製剤化することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、1985
年ならびに米国特許第6,453,242号および第6,534,261号を参照。
【0127】
融合分子の機能的構成成分/ドメインは、融合分子がそのDNA結合ドメインを介して標的配列に結合すると、遺伝子の転写に影響を与えることが可能である種々の異なる構成成分のいずれかから選択することができる。それにより機能的構成成分には、活性化因子、抑制因子、共活性化因子、共抑制因子およびサイレンサーなどの種々の転写因子ドメインが限定されずに含まれる。
【0128】
さらなる例示的機能的ドメインは、例えば米国特許第6,534,261号および第6,933,113号に開示されている。
【0129】
外因性小分子またはリガンドによって制御される機能的ドメインはまた、選択することができる。例えばRheoSwitch(登録商標)技術を用いることができ、ここで機能的ドメインは、外部RheoChem(商標)リガンド(例えば、米国特許公開第2009/0136465を参照)の存在下でその活性なコンフォーメーションだけを想定する。したがってZFPは、調節可能な機能的ドメインに作動可能に連結でき、生じたZFP-TFの活性は、外部リガンドによって調節される。
【0130】
ヌクレアーゼ
ある特定の実施形態では融合分子は、切断(ヌクレアーゼ)ドメインと会合しているDNA結合ドメインを含む。そのように遺伝子改変は、ヌクレアーゼ、例えば工学技術で作製されたヌクレアーゼを使用して達成することができる。工学技術で作製されるヌクレアーゼ技術は、天然に存在するDNA結合タンパク質の工学技術に基づいている。例えば、目的に合わせたDNA結合特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼの工学技術は記載されている。Chamesら(2005年)Nucleic Acids Res 33巻(20号):e178頁、Arnouldら(2006年)J. Mol. Biol. 355巻:443~458頁。さらに、ZFPの工学技術も記載されている。例えば米国特許第6,534,261号、第6,607,882号、第6,824,978号、第6,979,539号、第6,933,113号、第7,163,824号および第7,013,219号を参照。
【0131】
さらにZFPおよび/またはTALEは、ZFNおよびTALEN-その工学技術で作製された(ZFPまたはTALE)DNA結合ドメインを通じてその所期の核酸標的を認識することができ、ヌクレアーゼ活性を介してDNA結合部位近くでDNAが切断されるようにする機能的実体、を作り出すようにヌクレアーゼドメインに融合することができる。
【0132】
したがって本明細書に記載される方法および組成物は、広範に適用可能であり、目的の任意のヌクレアーゼを含むことができる。ヌクレアーゼの非限定的例には、メガヌクレアーゼ、TALENおよびジンクフィンガーヌクレアーゼが含まれる。ヌクレアーゼは、異種DNA結合および切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、異種切断ドメインを含むメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含むことができる、または代替的に、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように変更することができる(例えば、コグネイト結合部位とは異なる部位に結合するように工学技術で作製されたメガヌクレアーゼ)。
【0133】
本明細書に記載されるいずれのヌクレアーゼでも、ヌクレアーゼは、TALENとも呼ばれる、工学技術で作製されたTALE DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼドメイン(例えば、エンドヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼドメイン)を含むことができる。使用者が選択した標的配列との堅牢な、部位特異的相互作用のためにこれらのTALENタンパク質を工学技術で作製するための方法および組成物は公開されている(米国特許第8,586,526号を参照)。一部の実施形態ではTALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断半ドメインを含む。他の実施形態ではTALEヌクレアーゼは、メガTALである。これらのメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは、単量体として活性であり、活性のために二量体化を必要としない(Boisselら、(2013年)Nucl Acid Res:1~13頁、doi: 10.1093/nar/gkt1224を参照)。さらにヌクレアーゼドメインは、DNA結合機能性
を示すこともできる。
【0134】
なおさらなる実施形態では、ヌクレアーゼは、コンパクトなTALEN(cTALEN)を含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインに連結する単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに関してどこに配置されるかに応じて、TALE領域によって局在化されたニッカーゼとして作用することができるか、または二本鎖切断を引き起こすことができる(Beurdeleyら(2013年)Nat Comm:1~8頁、DOI: 10.1038/ncomms2782を参照)。任意のTALENを、さらなるTALEN(例えば、1つもしくは複数のメガTALによる1つもしくは複数のTALEN(cTALENまたはFokI-TALEN))または他のDNA切断酵素と組み合わせて使用することができる。
【0135】
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)または切断活性を示すその一部を含む。天然に存在するメガヌクレアーゼは15~40塩基対の切断部位を認識し、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー(配列番号122として開示される「LAGLIDADG」ファミリー)、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーに一般的に分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼには、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが含まれる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfortら(
1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁;Dujonら(1989
年)Gene 82巻:115~118頁;Perlerら(1994年)Nucleic Acids Res.22巻、1125~1127頁;Jasin(1996年)Trends Genet.12巻:224~2
28頁;Gimbleら(1996年)J. Mol. Biol.263巻:163~180頁;Argast
ら(1998年)J. Mol. Biol.280巻:345~353頁およびNew England Biolabsカタログも参照。
【0136】
天然に存在するメガヌクレアーゼ由来、主にLAGLIDADGファミリー(配列番号122として開示される「LAGLIDADG」ファミリー)由来のDNA結合ドメインは、植物、酵母、Drosophila、哺乳動物細胞およびマウスにおける部位特異的ゲノム改変を促進するために使用されているが、このアプローチは、メガヌクレアーゼ認識配列を保存するいずれかの相同性遺伝子の改変(Monetら(1999年
)、Biochem. Biophysics. Res. Common. 255巻:88~93頁)または認識配列が導入される工学技術で作製される前のゲノムへの改変(Routeら(1994年)、Mol.
Cell. Biol. 14巻:8096~106頁、Chiltonら(2003年)、Plant Physiology. 133巻:956~65頁、Puchtaら(1996年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻:5055~60頁、Rongら(2002年)、Genes Dev. 16巻:1568~81頁、Goubleら(2006年)、J. Gene Med. 8巻(5号):616~622頁)に限定されている。したがって、医学的にまたは生物工学的に関連する部位で新規結合特異性を示すメガヌクレアーゼを工学技術で作製する試みがなされている(Porteusら(2005年)、Nat. Biotechnol. 23巻:967~73頁、Sussmanら(20
04年)、J. Mol. Biol. 342巻:31~41頁、Epinatら(2003年)、Nucleic Acids Res. 31巻:2952~62頁、Chevalierら(2002年)Molec. Cell
10巻:895~905頁、Epinatら(2003年)Nucleic Acids Res. 31巻:2952~2962頁、Ashworthら(2006年)Nature 441巻:656~659頁、Paquesら(2007年)Current Gene Therapy 7巻:49~66頁、米国特許出願公開第2007/0117128号、第2006/0206949号、第2006/0153826号、第2006/0078552号および第2004/0002092)。さらに、メガヌクレアーゼ由来の天然に存在するまたは工学技術で作製されたDNA結合ドメインは、異種ヌクレアーゼ由来の切断ドメイン(例えば、FokI)と作動可能に連結することができる、および/またはメガヌクレアーゼ由来の切断ドメインは異種DNA結合ドメイン(例えば、ZFPまたはTALE)と作動可能に連結することができる。
【0137】
他の実施形態では、ヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALE DNA結合ドメインヌクレアーゼ融合物(TALEN)である。ZFNおよびTALENは、選り抜きの遺伝子中の標的部位に結合するように工学技術で作製されたDNA結合ドメイン(ジンクフィンガータンパク質またはTALE DNA結合ドメイン)および切断ドメインまたは切断半ドメイン(例えば、本明細書に記載される制限および/またはメガヌクレアーゼ由来)を含む。
【0138】
上で詳述されているように、ジンクフィンガー結合ドメインおよびTALE DNA結合ドメインは、選り抜きの配列に結合するように工学技術で作製することができる。例えばBeerliら(2002年)Nature Biotechnol. 20巻:135~141頁、Paboら(
2001年)Ann. Rev. Biochem. 70巻:313~340頁、Isalanら(2001年)Nature Biotechnol. 19巻:656~660頁、Segalら(2001年)Curr. Opin. Biotechnol. 12巻:632~637頁、Chooら(2000年)Curr. Opin. Struct. Biol. 10巻:411~416頁を参照。工学技術で作製されたジンクフィンガ
ー結合ドメインまたはTALEタンパク質は、天然に存在するタンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。工学技術方法には、合理的な設計および様々な種類の選択が限定されずに含まれる。合理的な設計には、例えば、トリプレット(または、クアドルプレット)ヌクレオチド配列および個々の、ジンクフィンガーまたはTALEアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが含まれ、ここで、各トリプレットまたはクアドルプレットヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドルプレット配列に結合するジンクフィンガーまたはTALE反復単位の1つまたは複数のアミノ酸配列と会合している。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第6,453,242号および第6,534,261号を参照。ある特定の実施形態では、DNA結合ドメインは、68957、72678、72732、72748(B2M)または68846(TCR)として指定されるZFNに由来するZFP(例えば、ZFP成分)を含む。
【0139】
標的部位の選択;および融合タンパク質(および、それをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のための方法は当業者に公知であり、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第7,888,121号および第8,409,861号に詳細に記載されている。
【0140】
さらに、これらおよび他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメイン、TALEおよび/またはマルチフィンガーのジンクフィンガータンパク質は、例えば5またはそれより多くのアミノ酸長のリンカーを含む、任意の適するリンカー配列を使用して一緒に連結することができる。長さが6またはそれより多くのアミノ酸の例示的なリンカー配列については、例えば、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照のこと。本明細書に記載されるタンパク質には、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間の適するリンカーの任意の組合せを含めることができる。米国特許第8,772,453号も参照されたい。
【0141】
それによりZFN、TALENおよび/またはメガヌクレアーゼなどのヌクレアーゼは、任意のDNA結合ドメインおよび任意のヌクレアーゼ(切断)ドメイン(切断ドメイン、切断半ドメイン)を含むことができる。上記したように、切断ドメインは、DNA結合ドメインに対して異種であってもよく、例として、ジンクフィンガーもしくはTALエフェクターDNA結合ドメインとヌクレアーゼ由来切断ドメイン、またはメガヌクレアーゼDNA結合ドメインと異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメインである。異種切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインを誘導することができる例示的なエンドヌクレアーゼとしては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、2002~2003年のカタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfortら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻:3379~3388頁を参照のこ
と。DNAを切断するさらなる酵素は公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓のDNアーゼI;ミクロコッカルヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linnら(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993年も参照)。これらの酵素の1つまたは複数(または、それらの機能的断片)は、切断ドメインおよび切断半ドメインの供給源として使用することができる。
【0142】
同様に、上記のように、切断活性のために二量体化を必要とする切断半ドメインは、任意のヌクレアーゼまたはその部分に由来することができる。一般に、2つの融合タンパク質が切断半ドメインを含む場合は、該2つの融合タンパク質が切断のために必要とされる。あるいは、2つの切断半ドメインを含む単一のタンパク質を使用することができる。2つの切断半ドメインは同じエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができ、または、各切断半ドメインは異なるエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができる。さらに、2つの融合タンパク質のそれらのそれぞれの標的部位への結合が、切断半ドメインを、お互いとの空間配向に置き、切断半ドメインが、例えば二量体化によって機能的切断ドメインを形成することを可能にするように、2つの融合タンパク質のための標的部位が、好ましくはお互いに関して配置される。したがって、ある特定の実施形態では、標的部位の近端は、5~8ヌクレオチドまたは15~18ヌクレオチド分離している。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位の間に介入することができる(例えば、2から50ヌクレオチド対、またはそれより多い)。一般に、切断部位は標的部位の間にあるが、切断部位から1~50塩基対の間(または、1~5、1~10および1~20塩基対を含むその間の任意の値)、1~100塩基対の間(または、その間の任意の値)、100~500塩基対の間(または、その間の任意の値)、500~1000塩基対の間(または、その間の任意の値)またはさらには1kb超を含む、切断部位から1またはそれより大きいキロベース離れて存在することができる。
【0143】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、DNA(認識部位で)に配列特異的に結合すること、および結合部位またはその近くでDNAを切断することが可能である。ある特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から離れた部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素Fok Iは、1本の鎖の上のその認識部位から9ヌクレオチドの位置、および他の鎖の上のその認識部位から13ヌクレオチドの位置で、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLiら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89巻:4275~4279頁;Liら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:2764~2768頁;Kimら(1994a)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91巻:88
3~887頁;Kimら(1994b)J. Biol. Chem.269巻:31,978~31,
982頁を参照のこと。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、工学技術で作製されてもされなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素からの切断ドメイン(または、切断半ドメイン)、および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメインを含む。
【0144】
その切断ドメインは結合ドメインと分離できる例示的なIIS型制限酵素は、Fok Iである。この特定の酵素は、ダイマーとして活性である。Bitinaiteら(1998年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻:10,570~10,575頁。全長Fok
Iの配列は下に示される。ホロタンパク質配列は下に記載される(配列番号138)、本明細書に記載されるヌクレアーゼにおいて使用される切断ドメインは、斜字体および下線付きで示されている(全長タンパク質の384位から579位):
【化1】
したがって
、本開示のために、開示される融合タンパク質で使用されるFok I酵素の部分は、切断半ドメインと考えられる。したがって、ジンクフィンガー-Fok I融合物を使用した標的化二本鎖切断および/または細胞配列の標的化置き換えのために、各々Fok I切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質を、触媒活性切断ドメインを再構成するために使用することができる。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI切断半ドメインを含有する単一のポリペプチド分子を使用することもできる。ジンクフィンガー-FokI融合物を使用した標的化切断および標的化配列変更のパラメータは、この開示の他の場所で提供される。
【0145】
切断ドメインまたは切断半ドメインは、切断活性を保持する、または多量体化(例えば、二量体化)して機能的切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質の任意の部分であってよい。
【0146】
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み入れられる、国際特許公開WO07/014275に記載される。さらなる制限酵素も分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを含有し、これらは本開示によって企図される。例えば、Robertsら(20
03
年)Nucleic Acids Res.31巻:418~420頁を参照のこと。
【0147】
ある特定の実施形態では、切断ドメインは、例えば、その全ての開示は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第7,914,796号;同第8,034,598号および同第8,623,618号ならびに米国特許出願公開第2011/0201055号に記載される通り、ホモ二量体化を最小にするかまたは防止する1つまたは複数の工学技術で作製された切断半ドメイン(二量体化ドメイン変異体とも呼ばれる)を含む。「Sharkey」変異(例えば、418および441、全長に対して番号付けされる)および、例えば、米国特許出願公開第2018/0087072号に記載される残基416(例えば、R416S)および/または残基525(例えば、K525S)へのさらなる変異も含まれてよい。したがって、本発明のヌクレアーゼにおいて使用されるFokI切断ドメインは、以下のアミノ酸残基位置(全長に対して番号付けされる):416、418、441、446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、525、531、534、537、および/または538の1つまたは複数で変異されてよい。
【0148】
絶対ヘテロダイマーを形成するFok Iの例示的な工学技術で作製された切断半ドメインは、第1の切断半ドメインがFok Iの490および538位のアミノ酸残基の変異を含み、第2の切断半ドメインがアミノ酸残基486および499の変異を含む対を含む。
【0149】
したがって、一実施形態では、490での変異はGlu(E)をLys(K)で置き換え;538での変異はIso(I)をLys(K)で置き換え;486での変異はGln(Q)をGlu(E)で置き換え;499位での変異はIso(I)をLys(K)で置き換える。具体的には、本明細書に記載される工学技術で作製された切断半ドメインは、1つの切断半ドメインの490位(E→K)および538位(I→K)を変異させて、「E490K:I538K」と呼ばれる工学技術で作製された切断半ドメインを産生すること、ならびに、別の切断半ドメインの486位(Q→E)および499位(I→L)を変異させて、「Q486E:I499L」と呼ばれる工学技術で作製された切断半ドメインを産生することによって調製された。本明細書に記載される工学技術で作製された切断半ドメインは、異常な切断を最小にするかまたは無効にする絶対ヘテロダイマー変異体である。例えば、その開示は全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる、米国特許第7,914,796号および同第8,034,598号を参照のこと。特定の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、(野生型FokIに対して番号付けされる)486位、499位および496位における変異、例えば、486位の野生型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で、499位の野生型Iso(I)残基をLeu(L)残基で、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換える変異(それぞれ、「ELD」ドメインおよび「ELE」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、490位、538位および537位(野生型FokIに対して番号付けされる)における変異;例えば、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、538位の野生型Iso(I)残基をLys(K)残基で、および、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KKK」ドメインおよび「KKR」ドメインとも呼ばれる)を含む。他の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、490位および537位(野生型FokIに対して番号付けされる)における変異、例えば、490位の野生型Glu(E)残基をLys(K)残基で、および、537位の野生型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換える変異(それぞれ、「KIK」ドメインおよび「KIR」ドメインとも呼ばれる)を含む。
【0150】
他の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、487位、499位および496位(野生型FokIに対して番号付けされる)に変異、例えば487位の野生型Arg(R)残基をAsp(D)残基で、および499位の野生型Ile(I)残基をAla(A)で、および496位の野生型Asn(N)残基をAsp(D)残基で(「DAD」とも称される)置き換える変異、ならびに/または483位、538位および537位(野生型FokIに対して番号付けされる)での変異、例えば、483位の野生型Asp(D)残基をArg(R)残基で、538位の野生型Ile(I)残基をVal(V)残基で、および537位の野生型His(H)残基をArg(R)残基で(「RVR」とも称される)置き換える変異を含む。例えば、米国特許第8,962,281号;第7,914,796号;第8,034,598号;および第8,623,618号を参照されたい、これらの開示は、その全体が全ての目的のために参考として援用される。他の実施形態では、工学技術で作製された切断半ドメインは、「Sharkey」および/または「Sharkey」変異を含む(Guoら、(2010年) J. Mol. Biol. 400巻(1号):96~107頁を参照)。
【0151】
したがって、本明細書に記載されるヌクレアーゼにおいて使用され得るFokIドメインの非限定的例として、以下:表8に示されるFok変異体(例えば、ELD、KKRなど)、FokI-Sharkey(S418P+K441E)、FokI ELD(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D)、FokI ELD、Sharkey(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E)、FokI ELD、R416E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、R416E)、FokI ELD、Sharkey、R416E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、R416E)、FokI ELD、R416Y(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、R416Y)、FokI ELD、Sharkey、R416E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、R416E)、FokI ELD、S418E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418E)、FokI ELD、Sharkey部分的、S418E(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、K441E、S418E)、FokI ELD、K525S(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、K525S)、FokI ELD、Sharkey K525S(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、K525S)、FokI ELD、I479T(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、I479T)、FokI ELD、Sharkey、I479T(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、I479T)、FokI ELD、P478D(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、P478D)、FokI ELD、Sharkey、P478D(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、P478D)、FokI ELD、Q481D(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、Q481D)、FokI ELD、Sharkey、Q481D(486位でのQ->E、499位でのI->L、496位でのN->D、S418P+K441E、Q481D)、FokI KKR(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R)、FokI KKR Sharkey、(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E)、FokI KKR、Q481E(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、Q481E)、FokI KKR、Sharkey Q481E(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、Q481E)、FokI KKR、R416E(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、R416E)、FokI KKR、Sharkey、R416E(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、R416E)、FokI KKR、K525S(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、K525S)、FokI KKR、Sharkey、K525S(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、K525S)、FokI KKR、R416Y(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、R416Y)、FokI KKR、Sharkey、R416Y(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、R416Y)、FokI、KKR I479T(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、I479T)、FokI、KKR Sharkey I479T(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、S418P+K441E、I479T、FokI、KKR P478D(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、P478D)、FokI、KKR Sharkey P478D(490位でのE->K、538位でのI->K、537位でのH->R、P478D)、FokI
DAD(487位でのR->D、496位でのN->D、499位でのI->A)、FokI DAD Sharkey(487位でのR->D、496位でのN->D、499位でのI->A、S418P+K441E)、FokI RVR(483位でのD->R、537位でのH->R、538位でのI->V)、FokI RVR Sharkey(483位でのD->R、537位でのH->R、538位でのI->V、S418P+K441E)が挙げられる。
【0152】
本明細書に記載されるZFNは、任意のリンカー配列も含むことができ、限定されずに本明細書に開示される配列(L0、N7a、N7cなど)および/または、DNA結合ドメインのNもしくはC末端とFokI切断ドメインのNもしくはC末端との間に使用することができる米国特許第7,888,121号;第7,914,796号;第8,034,598号;第8,623,618号;第9,567,609号および米国公開第20170218349号に開示されているものを含む。
【0153】
本明細書に記載されるZFNのZFP(工学技術で作製されたおよび/または野生型切断ドメインを含む)は、オフターゲット部位として公知の目的としない他の切断部位と比較してその目的の標的に対する、ヌクレアーゼ対を含むZFNの特異性を増加させる改変も含んでよい(米国特許出願公開第20180087072号を参照)。したがって、本明細書に記載されるヌクレアーゼは、DNA結合ドメインと切断ドメインとの間に特異的リンカーを含んでよい;ならびに/あるいはそれらのDNA結合ドメイン骨格領域の1つもしくは複数に変異を、および/または上に記載されるそれらのヌクレアーゼ切断ドメインに1つもしくは複数の変異を含んでよい。これらのヌクレアーゼのZFPは、DNA骨格上のリン酸と非特異的に相互作用できるZFP DNA結合ドメイン(「ZFP骨格」)内のアミノ酸に変異を含むことができるが、それらはDNA認識ヘリックス中に変化は含まない。したがって、本発明は、ヌクレオチド標的特異性のために必要でないZFP骨格中にカチオン性アミノ酸残基の変異を含むZFPを含む。一部の実施形態では、ZFP骨格中のこれらの変異は、カチオン性アミノ酸残基を中性またはアニオン性アミノ酸残基に変異させることを含む。一部の実施形態では、ZFP骨格中のこれらの変異は、極性アミノ酸残基を中性または非極性アミノ酸残基に変異させることを含む。好ましい実施形態では、変異は、DNA結合ヘリックスに対して(-5)位、(-9)位および/または(-14)位に作製された。一部の実施形態では、ジンクフィンガーは、1つまたは複数の変異を(-5)、(-9)および/または(-14)に含むことができる。さらなる実施形態では、マルチフィンガージンクフィンガータンパク質中の1つまたは複数のジンクフィンガーは、(-5)、(-9)および/または(-14)に変異を含むことができる。一部の実施形態では、(-5)、(-9)および/または(-14)でのアミノ酸(例えば、アルギニン(R)またはリジン(K))は、アラニン(A)、ロイシン(L)、Ser(S)、Asp(N)、Glu(E)、Tyr(Y)および/またはグルタミン(Q)に変異される。
【0154】
ある特定の実施形態では、ZFNは、表6に示す以下の対:68796および68813;68796および68861;68812および68813;68876および68877;68815および55266;68879および55266;68798および68815;または68846および53853の少なくとも1つを含む。他の実施形態では、ZFNは、表8に示す以下の対:57531および72732;57531および72748;68957および57071;68957および72732;68957および72748;72678および57071;72678および72732;または72678および72748の少なくとも1つを含む。
【0155】
あるいは、ヌクレアーゼを、いわゆる「スプリット酵素」技術を使用して核酸標的部位にin vivoで組み立てることができる(例えば、米国特許出願公開第2009/0068164号を参照のこと)。そのようなスプリット酵素の構成成分は、別個の発現構築物の上で発現させることができるか、または1つのオープンリーディングフレームの中に連結させることもでき、ここで、個々の構成成分は、例えば、自己切断2AペプチドまたはIRES配列によって分離される。構成成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメインまたはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであってよい。
【0156】
ヌクレアーゼ(例えば、ZFNおよび/またはTALEN)は、使用前に、例えば米国特許第8,563,314号に記載されるとおりに、酵母をベースとした染色体系において、活性についてスクリーニングすることができる。
【0157】
ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼはCRISPR/Cas系を含む。系のRNA構成成分をコードするCRISPR(規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列)遺伝子座、およびタンパク質をコードするCas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansenら、2002年、Mol. Microbiol.43巻:1565~1575頁;Makarovaら、2002年、Nucleic Acids Res.30巻:482~496頁;Makarovaら、2006年、Biol. Direct 1巻:7頁;Haftら、2005年、PLoS Comput. Biol.1巻:
e60頁)が、CRISPR/Casヌクレアーゼ系の遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子の組合せ、ならびにCRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラムすることが可能な非コードRNAエレメントを含有する。
【0158】
II型CRISPRは最も良く特徴付けられた系の1つであり、4つの逐次的ステップで標的化DNA二本鎖切断を実行する。先ず、2つの非コードRNA、プレcrRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAはプレcrRNAのリピート領域にハイブリダイズし、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプレcrRNAのプロセシングを媒介する。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、crRNA上のスペーサーとプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間のワトソン-クリック塩基対合を通して、Cas9を標的DNAに向けるが、これは、標的認識のためのさらなる要件である。最後に、Cas9は標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内に二本鎖切断を生じさせる。CRISPR/Cas系の活性は、3つのステップで構成される:(i)「適応」と呼ばれるプロセスにおける、将来の攻撃を防止するためのCRISPRアレイへのエイリアンDNA配列の挿入、(ii)関連するタンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、続いて(iii)エイリアン核酸に対するRNA媒介干渉。したがって、細菌細胞では、いわゆる「Cas」タンパク質のいくつかはCRISPR/Cas系の天然の機能に関与し、エイリアンDNAの挿入などの機能における役割を果たすなどである。
【0159】
ある特定の実施形態では、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能的誘導体」であってよい。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通した定性的生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、天然配列の断片、天然配列ポリペプチドの誘導体およびその断片が限定されずに含まれるが、ただし、それらは対応する天然配列ポリペプチドと共通する生物学的活性を有する。本明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合性改変物およびその融合物を包含する。Casポリペプチドの適する誘導体またはその断片には、Casタンパク質の変異体、融合物、共有結合性改変物またはその断片が限定されずに含まれる。Casタンパク質またはその断片、ならびにCasタンパク質の誘導体またはその断片を含むCasタンパク質は、細胞から、または化学して得ることができるか、あるいはこれらの2つの手順を組み合わせて得ることができる。細胞は、Casタンパク質を天然に産生する細胞、または、Casタンパク質を天然に産生し、内因性Casタンパク質をより高い発現レベルで産生するように遺伝子操作されているか、もしくは、内因性Casと同じであるかまたは異なるCasをコードする、外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作されている細胞であってよい。一部の場合には、細胞はCasタンパク質を天然に産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作される。
【0160】
TCR遺伝子および他の遺伝子を標的化する例示的CRISPR/Casヌクレアーゼ系は、例えば米国特許出願公開第2015/0056705号に開示されている。

ヌクレアーゼ(複数可)は、標的部位で1つまたは複数の2本鎖および/または1本鎖切断を作製することができる。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、触媒として不活性な切断ドメインを含む(例えば、FokIおよび/またはCasタンパク質)。例えば、米国特許第9,200,266号、および第8,703,489号およびGuillingerら(2014年)Nature Biotech. 32巻(6号):577~582頁を参照。触媒として不活性な切断ドメインは、触媒として活性なドメインと組み合わせて1本鎖切断を作製するためのニッカーゼとして作用することができる。したがって、2つのニッカーゼは特異的領域において2本鎖切断を作製するために組み合わせて使用することができる。さらなるニッカーゼも、当技術分野において公知であり、例えばMcCafferyら(2016年
)Nucleic Acids Res. 44巻(2号):e11頁. doi: 10.1093/nar/gkv878. Epub 2015 Oct 19において公知である。加えて、デッドCas(「dCas」)またはCasニッカーゼは、塩基編集系を作製するために塩基改変酵素(例えば、シチジンデアミナーゼ)に融合されてよい(Komorら、(2016年) Nature 533巻:420頁)
。これらの系は、DNA中に二重鎖切断を作製せずに塩基編集複合体によるDNA塩基の変更(改変)を可能にする。したがって、一部の実施形態では、ガイドRNA(表2)は、ノックアウトを引き起こすようにTRAC遺伝子中に変異を導入するために使用することができる。
【0161】
送達
タンパク質(例えば、転写因子、ヌクレアーゼ、TCRおよびCAR分子)、ポリヌクレオチドならびに/または本明細書に記載されるタンパク質および/もしくポリヌクレオチドを含む組成物は、例えばタンパク質および/またはmRNA構成成分の注射によってを含む任意の適する手段によって標的細胞に送達することができる。一部の実施形態では、タンパク質は細胞スクイージングによって細胞に導入される(Kollmannspergerら、(
2016年) Nat Comm 7巻、10372頁、doi:10.1038/ncomms10372を参照)。
【0162】
適する細胞には、真核および原核細胞ならびに/または細胞株が限定されずに含まれる。そのような細胞またはそのような細胞から生成された細胞株の非限定的例は、T細胞、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)およびperC6細胞、ならびにSpodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、またはSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞を含む。ある特定の実施形態では細胞株は、CHO-K1、MDCKまたはHEK293細胞株である。適する細胞は、例として、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、造血幹細胞、ニューロン幹細胞および間葉系幹細胞などの幹細胞も含む。
【0163】
本明細書に記載されるDNA結合ドメインを含むタンパク質を送達する方法は、例えば、その全ての開示は参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,453,242号;同第6,503,717号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,607,882号;同第6,689,558号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号に記載される。
【0164】
DNA結合ドメインおよび本明細書に記載されるこれらのDNA結合ドメインを含む融合タンパク質も、1つまたは複数のDNA結合タンパク質をコードする配列を含有するベクターを使用して送達することができる。さらに、さらなる核酸(例えば、ドナー)もこれらのベクターを介して送達することができる。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどを限定されずに含む、任意のベクター系を使用することができる。参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,534,261号;同第6,607,882号;同第6,824,978号;同第6,933,113号;同第6,979,539号;同第7,013,219号;および同第7,163,824号も参照。さらに、これらのベクターのいずれもが1つもしくは複数のDNA結合タンパク質コード配列および/またはさらなる核酸を必要に応じて含むことができることは明らかである。それにより、本明細書に記載される1つまたは複数のDNA結合タンパク質、および必要に応じてさらなるDNAが細胞に導入される場合、それらは同じベクター上でまたは異なるベクター上で運ばれ得る。複数のベクターが使用される場合、各ベクターは1つまたは複数のDNA結合タンパク質をコードする配列および所望のさらなる核酸を含むことができる。
【0165】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移行法は、工学技術で作製されたDNA結合タンパク質をコードする核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)および標的組織に導入するために、ならびに所望のさらなるヌクレオチド配列を共導入するために使用することができる。そのような方法は、核酸(例えば、DNA結合タンパク質および/またはドナーをコードする)を細胞にin vitro投与するために使用できる。ある特定の実施形態では、核酸は、in vivoまたはex vivo遺伝子治療用途のために投与される。非ウイルス性のベクター送達系には、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソーム、脂質ナノ粒子またはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体を形成した核酸が含まれる。ウイルスベクター送達系にはDNAウイルスおよびRNAウイルスが含まれ、それらは、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのいずれかを有する。遺伝子治療手順のレビューについては、Anderson、(1992年)Science 25
6巻:808~
813頁;NabelおよびFelgner、(1993年)TIBTECH 11巻:211~217頁
;MitaniおよびCaskey、(1993年)TIBTECH 11巻:162~166頁
;Dillon、(1993年)TIBTECH 11巻:167~175頁;Miller、(1992年
)Nature 357巻:455~460頁;Van Brunt、(1988年)Biotechnology
6巻(10号
):1149~1154頁;Vigne、(1995年)Restorative Neurology and Neuroscience 8巻:35~36頁;KremerおよびPerricaudet、(1995年)British Medical Bulletin 51巻(1号):31~44頁;Haddadaら、(1995年)Current
Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Boehm(編)
;およびYuら、(1994年)Gene Therapy 1巻:13~26頁を参照のこと
【0166】
核酸の非ウイルス性の送達方法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、脂質ナノ粒子、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、mRNA、人工ビリオンおよび作用物質によって強化されたDNAの取込みが含まれる。例えばSonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションを、核酸の送達のために使用することもできる。好ましい実施形態では、1つまたは複数の核酸は、mRNAとして送達される。同様に好ましいのは、翻訳効率の増加のためおよび/またはmRNA安定性のためのキャッピングされたmRNAの使用である。特に好ましいのは、ARCA(抗リバースキャップ類似物)キャップまたはそのバリアントである。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,074,596号および第8,153,773号を参照。
【0167】
さらなる例示的な核酸送達系には、Amaxa Biosystems(Cologne、Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville、Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston、MA)およびCopernicus Therapeutics Inc.によって提供されるものが含まれる、(例えば、米国特許第6,008,336を参照のこと)。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386;4,946,787;および4,897,355に記載され、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)、Lipofectin(商標)およびLipofectamine(商標)RNAiMAX))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションのために適するカチオン性および中性脂質には、Felgner、国際公開第WO91/17424およびWO91/16024のものが含まれる。送達は、細胞に対して(ex vivo投与)、または標的組織に対して(in vivo投与)であり得る。
【0168】
免疫脂質複合体などの標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal、(1995年)Science 270巻:404~410頁;Blaeseら、(1995年)Cancer Gene Ther.2巻:291~297頁;Behrら、(19
94年)Bioconjugate Chem.5巻:382~389頁;Remyら、(1994年)Bioconjugate Chem.5
巻:647~654頁;Gaoら、(1995年)Gene Therapy 2巻:710~722頁;Ahmadら、(1992年)Cancer Res.52巻:4817~4820頁
;米国特許第4,186,183号、4,217,344号、4,235,871号、4,261,975号、4,485,054号、4,501,728号、4,774,085号、4,837,028号および4,946,787号を参照のこと)。
【0169】
送達のさらなる方法には、送達する核酸をEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)にパッケージすることの使用が含まれる。これらのEDVは、二重特異的抗体の1つのアームが標的組織への特異性を有し、他方がEDVへの特異性を有する二重特異的抗体を使用して、標的組織に特異的に送達される。抗体はEDVを標的細胞表面に運び、次に、EDVはエンドサイトーシスによって細胞に運ばれる。細胞に入ると、内容物は放出される(MacDiarmidら(2009年)Nature Biotechnology 27巻(7号):643頁を参照
されたい)。
【0170】
所望により、工学技術で作製されたDNA結合タンパク質、および/またはドナー(例えば、CARまたはACTR)をコードする核酸の送達のための、RNAウイルスベースのまたはDNAウイルスベースの系の使用は、体内の特異的細胞にウイルスを向かわせて、核にウイルスのペイロードを輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接的に(in vivoで)投与することができるか、または、それらは細胞をin vitroで処置するために使用することができ、改変された細胞は患者に(ex vivoで)投与される。核酸の送達のための従来のウイルスベースの系には、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、ワクシニアベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクターが限定されずに含まれる。宿主ゲノムへの組込みは、レトロウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルス遺伝子導入方法で可能であり、挿入される導入遺伝子の長期発現をしばしばもたらす。さらに、多くの異なる細胞型および標的組織において、高い形質導入効率が観察された。
【0171】
外来のエンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的標的集団を拡張することによって、レトロウイルスの向性を変更することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させ、高いウイルス力価を一般的にもたらすことができるレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最高6~10kbの外来配列のためのパッケージング能力を有するシス作用性ロングターミナルリピートで構成される。ベクターの複製およびパッケージングのために最小限のシス作用性LTRが十分であり、それらは次に、恒久的導入遺伝子発現を提供するために標的細胞の中に治療的遺伝子を組み込むために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に基づくものおよびそれらの組合せが含まれる(例えば、Buchscherら、(1992年)J. Virol.66巻:2731~2739頁;Johannら、(1
992年)J. Virol.66巻:1635~1640頁;Sommerfeltら、(1990年)Virol.176巻:
58~59頁;Wilsonら、(1989年)J. Virol.63巻:2374~2378頁;Millerら、(1991年)J. Virol.65巻:2220~2224頁;国際特許公開第WO1994/026877を参照のこと)。
【0172】
一過性の発現が好まれる適用では、アデノウイルスをベースにした系を使用することができる。アデノウイルスをベースにしたベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。そのようなベクターで、高い力価および高レベルの発現が得られた。このベクターは、比較的単純な系において大量に産生することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターは、例えば、核酸およびペプチドのin vitro産生において、ならびにin vivoおよびex vivoの遺伝子治療手順のために、標的核酸で細胞を形質導入するためにも使用される(例えば、Westら、(1987年)Virology 160巻:38~47頁;米国特許第4,797,368号;国際特許公開WO93/24641;Kotin、(1994年)Human Gene Therapy 5巻:793~80
1頁;Muzyczka、(1994年)J. Clin. Invest.94巻:1351頁を参照のこと。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinら、(1
985年)Mol. Cell. Biol.5巻:3251~3260頁;Tratschinら、(1984
年)Mol. Cell. Biol.4巻:2072~2081頁;HermonatおよびMuzyczka、(1984年)PNAS USA 81巻:6466~6470頁;およびSamulskiら、(1989年
)J. Virol.63巻:03822~3828頁を含む、いくつかの刊行物に
記載されている。
【0173】
臨床試験での遺伝子導入のために少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが今日利用でき、それらは、形質導入剤を生成するためにヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠損ベクターの補完を含むアプローチを利用する。
【0174】
pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験で使用されたレトロウイルスベクターの例である(Dunbarら、(1995年)Blood 85巻:3048~305頁;Kohnら、(19
95年)Nat. Med.1巻:1017~102頁;Malechら、(1997年)PNAS USA
94巻:22 12133~12138頁)。PA317/pLASNは、遺伝子治療治験で使用された最初の治療的ベクターであった。(Blaeseら、(1995年)Science
270巻:475
~480頁)。MFG-Sパッケージベクターで、50%またはそれより高い形質導入効率が観察された。(Ellemら、(1997年)Immunol Immunother.44巻(1号):1
0~20頁;Dranoffら、(1997年)Hum. Gene Ther.1巻:111~2頁。
【0175】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠損非病原性パルボウイルスアデノ随伴2型ウイルスに基づく有望な代替遺伝子送達系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV 145bp逆方向末端反復だけを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムへの組込みに起因する効率的な遺伝子導入および安定した導入遺伝子送達は、このベクター系の鍵となる特徴である。(Wagnerら、(1998年)Lancet 351巻:9117 1702~3頁、Kearnsら、(1996年)Gene Ther.9巻:7
48~55頁)。AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV8.2、AAV9、AAVrh10ならびにAAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6などの偽型化AAVを含む他のAAV血清型を、本発明に従って使用することもできる。
【0176】
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)は、高い力価で産生することができ、いくつかの異なる細胞型を容易に感染させることができる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1bおよび/またはE3遺伝子を置き換えるように工学技術で作製され、その後、複製欠損ベクターは欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞において増殖する。Adベクターは、肝臓、腎臓および筋肉において見出されるものなどの非分裂、分化細胞を含む、複数の種類の組織をin vivoで形質導入させることができる。従来のAdベクターは、大きな運搬能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫のためのポリヌクレオチド治療を含んだ(Stermanら、(1998年)Hum. Gene Ther.7巻:1083~9頁)。臨床試験における遺伝子導入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例には、Roseneckerら、(1996年)Infection 24巻:1 5~10頁;Stermanら、(1998年)Hum. Gene Ther.9巻:7号、1083~1089頁;Welshら、(1995年)Hum. Gene Ther.2巻:205~18頁;Alvarezら、(1997年)Hum. Gene Ther.5巻
:597~613頁;Topfら、(1998年)Gene Ther.5巻:507~513頁;Stermanら、(1998年)Hum. Gene Ther.7巻:1083~1089頁が含まれる。
【0177】
パッケージング細胞は、宿主細胞を感染させることが可能であるウイルス粒子を形成するために使用される。そのような細胞には、アデノウイルスをパッケージする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージするψ2細胞またはPA317細胞が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、ウイルス粒子に核酸ベクターをパッケージするプロデューサー細胞株によって通常生成される。ベクターは、パッケージングおよび以降の宿主への組込み(適用可能な場合)のために必要とされる最小限のウイルス配列を一般的に含有し、他のウイルス配列は発現させるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられる。欠落しているウイルスの機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは、宿主ゲノムへのパッケージングおよび組込みのために必要であるAAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列を一般的に所有するだけである。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするが、ITR配列を欠いているヘルパープラスミドを含有する細胞株にパッケージされる。細胞株は、ヘルパーとしてアデノウイルスにも感染する。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如に起因して、有意な量でパッケージされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVより感受性である熱処理によって低減することができる。さらに、AAVは、バキュロウイルス系を使用して製造することができる(例えば米国特許第6,723,551号および第7,271,002号を参照)。
【0178】
293またはバキュロウイルス系からのAAV粒子の精製は、典型的にはウイルスを産生する細胞の成長、続く細胞上清からのウイルス粒子の回収または、細胞を溶解することおよび粗溶解物からウイルスを回収することを含む。次にAAVは、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、米国特許第7,419,817号および第6,989,264号を参照)、イオン交換クロマトグラフィーおよびCsCl密度遠心分離(例えば、国際特許出願公開番号WO2011/094198A10号)、免疫親和性クロマトグラフィー(例えば、国際特許公開番号WO2016/128408号)またはAVBセファロース(例えば、GE Healthcare Life Sciences)を使用する精製を含む、当技術分野において公知の方法によって精製される。
【0179】
多くの遺伝子治療適用では、遺伝子治療ベクターが特定の組織型に高度の特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外部表面のウイルスコートタンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって所与の細胞型に対して特異性を有するように改変することができる。リガンドは、目的の細胞型に存在することが公知である受容体に親和性を有するように選択される。例えば、Hanら、
(1995年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92巻:9747~9751頁は、
モロニーマウス白血病ウイルスは、gp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように改変することができること、および組換えウイルスは、ヒト上皮増殖因子受容体を発現するある特定のヒト乳がん細胞を感染させることを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞表面受容体に対するリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス-標的細胞対に拡張することができる。例えば、繊維状ファージは、選択される事実上いかなる細胞受容体に特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示するように、工学技術で作製することができる。上の記載はウイルスベクターに主に適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取込みを有利にする、特異的取込み配列を含有するように工学技術で作製することができる。
【0180】
遺伝子治療ベクターは、下記のように、一般的に全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または頭蓋内注入)または局所適用による、個々の患者への投与によってin vivoで送達することができる。あるいは、ベクターは、細胞に、例えば個々の患者から外植される細胞(例えば、リンパ球、骨髄吸引物、組織生検)、または汎用性ドナー造血幹細胞にex vivoで送達することができ、続いて、通常ベクターを取り込んだ細胞の選択の後に、細胞を患者に再移植することができる。
【0181】
本明細書に記載される細胞は、細胞療法、例えば、がんの処置および/または予防のための養子細胞療法のためにも使用することができる。細胞療法は、ある特定の型の細胞(例えば、腫瘍抗原に反応性のT細胞またはB細胞)がレシピエントに与えられる特殊化した種類の移植である。細胞療法は、自己(レシピエント由来)または同種(ドナー由来)のいずれかである細胞を用いて行うことができ、細胞は幹細胞などの未成熟細胞またはT細胞などの完全に成熟し機能性の細胞であってもよい。実際に、ある特定のがんなどの一部の疾患では、T細胞は、ある特定の腫瘍抗原に対する結合活性を増加させるためにex
vivoで操作され、拡大増殖され、次に、腫瘍を根絶することを試みる種類のがんを罹患している患者に導入されてよい。これは、内因性T細胞応答が、腫瘍自体によって抑制されている場合に特に有用である。
【0182】
診断、研究、移植のための、または遺伝子および/または細胞治療のためのex vivo細胞トランスフェクション(例えば、宿主生物へのトランスフェクトした細胞の再注入を介して)は、当業者に周知である。好ましい実施形態では、細胞は、被験体生物から単離され、DNA結合タンパク質核酸(DNA-binding proteins nucleic acid)(遺伝子またはcDNA)を用いてトランスフェクトされ、被験体生物(例えば、患者)に再注入されて戻される。ex vivoトランスフェクションに適する種々の細胞型は、当業者に周知である(例えば、Freshneyら、Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique(第3版、1994年))および患者から細胞をどのように単離および培養するかについての考察について、それに引用される参考文献を参照)。
【0183】
一実施形態では、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためにex
vivo手順で使用される。幹細胞を使用する有利な点は、in vitroで幹細胞は他の細胞型に分化できること、または哺乳動物(細胞のドナーなど)に導入することができ、そこで幹細胞が骨髄中で生着することである。GM-CSF、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインを使用して臨床に重要な免疫細胞型にCD34+細胞をin
vitroで分化させるための方法は公知である(Inabaら、(1992年)J. Exp.
Med. 176
巻:1693~1702頁を参照)。
【0184】
幹細胞は、形質導入および分化のために公知の方法を使用して単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR-1(顆粒球)ならびにIad(分化した抗原提示細胞)などの不必要な細胞に結合する抗体を用いて骨髄細胞をパニングすることによって骨髄細胞から単離される(Inabaら、(19
92年)J. Exp. Med. 176巻:1693~1702頁を参照)。
【0185】
改変された幹細胞はまた、一部の実施形態において使用することができる。例えば、アポトーシスに対して抵抗性にされたニューロン幹細胞は、幹細胞が本発明のZFP TFも含有する場合、治療用組成物として使用することができる。アポトーシへの抵抗性は、幹細胞において、例えば、BAX-特異的ZFNまたはBAK-特異的ZFNを使用して(米国特許第8,597,912号を参照)、または、カスパーゼ中で破壊されているもの、例えば再度カスパーゼ6特異的ZFNを使用して、BAXおよび/またはBAKをノックアウトすることによって生じさせることができる。これらの細胞を、TCRを制御することが公知であるZFP TFを用いてトランスフェクトすることができる。
【0186】
治療用DNA結合タンパク質(またはこれらのタンパク質をコードする核酸)を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)は、in vivoでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。代替的に、裸のDNAを投与することができる。投与は、分子を導入して血液または組織細胞と最終的に接触させるために通常使用される、注射、注入、局所適用およびエレクトロポレーションを限定されずに含む経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者に利用可能であり、周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路を使用することができるが、特定の経路が別の経路より速く(immediate)、より有効な反応を
しばしば提供することができる。
【0187】
DNAの造血幹細胞への導入のための方法は、例えば米国特許第5,928,638号に開示されている。造血幹細胞、例えばCD34+細胞への導入遺伝子の導入のために有用なベクターには、35型アデノウイルスが含まれる。
【0188】
免疫細胞(例えば、T細胞)への導入遺伝子の導入のために適切なベクターには、非組込み型のレンチウイルスベクターが含まれる。例えば、Oryら(1996年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻:11382~11388頁;Dullら(1998年)J. Virol.72巻:8463~8471頁;Zufferyら(1998年)J. Virol.72巻:9873~9880頁;Follenziら(2000年)Nature Genetics 25巻:217~222頁を参照のこと。
【0189】
薬学的に許容されるキャリアは、一部において、投与される特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、下記のように、医薬組成物の多様な、適する製剤が利用可能である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第17版、1989年を参照のこと)。
【0190】
上記したように、開示された方法および組成物は、限定されずに、原核細胞、真菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳動物細胞ならびに、T細胞および任意の種類の幹細胞を含むヒト細胞を含む、任意の種類の細胞において使用することができる。タンパク質発現のために適する細胞株は当業者に公知であり、限定されずにCOS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)、perC6、Spodoptera fugiperda(Sf)などの昆虫細胞、ならびにSaccharomyces、PichiaおよびSchizosaccharomycesなどの真菌細胞を含む。これらの細胞株の後代、バリアントおよび派生物も使用することができる。
【0191】
応用
開示される組成物および方法は、限定されずに、TCRおよび/またはB2Mモジュレーションが望ましい治療用および研究用応用を含む、TCRおよび/またはB2M発現および/または機能性をモジュレートすることが望ましい任意の応用のために使用することができる。例えば、開示される組成物は、養子細胞療法のために1つもしくは複数の外因性CAR、外因性TCR、または他のがん特異的受容体分子を発現し、それによりがんを処置および/または予防するように改変されたT細胞において、内因性TCRおよび/またはB2Mの発現を破壊するためにin vivoおよび/またはex vivo(細胞治療)で使用することができる。T細胞は、エフェクターT細胞または制御T細胞であってよい。さらにそのような状況において、細胞内でのTCR発現の抑止は、健康な、非標的化組織との不必要な交差反応(すなわち移植片対宿主応答)の危険を除去または実質的に低減することができる。本明細書に記載される改変細胞は、限定されずに、前立腺、慢性リンパ性白血病(CLL)および非ホジキンリンパ腫を含むがんの処置のためにも使用することができる。
【0192】
方法および組成物は、幹細胞組成物(例えば、iPSCおよびHSC/HSPC)も含み、ここで幹細胞内のB2M、TCRAおよび/またはTCRB遺伝子は、モジュレートされ(改変され)、細胞は、ACTRおよび/もしくはCARならびに/または単離されたもしくは工学技術で作製されたTCRをさらに含む。例えば、TCRノックアウトまたはノックダウンモジュレートされた同種異系造血幹細胞は、骨髄アブレーション後にHLA適合患者に導入することができる。これらの変更されたHSCは、患者での再定着を可能にするが、潜在的GvHDを生じない。導入された細胞は、根底にある疾患を処置するための続く治療の間に役立つ他の変更(例えば、化学療法耐性)も有することができる。HLAクラスIヌル細胞は、外傷患者での緊急治療室の場所における「既製の」治療としての用途も有する。
【0193】
本発明の方法および組成物は、in vitroおよびin vivoモデル、例えば、TCRまたはB2Mならびに関連障害の動物モデルの設計および実行のためにも有用であり、これらの障害の研究を可能にする。
【0194】
本明細書で指摘される全ての特許、特許出願および公開は、参照によりそれらの全体が本明細書によって組み込まれる。
【0195】
理解の明快性のために開示は例証および例として多少詳細に提供されたが、本開示の精神または範囲から逸脱せずに様々な変更および改変を実施することができることは当業者に明らかである。したがって、前述の開示および以下の実施例は限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例
【0196】
(実施例1)
TCR特異的ヌクレアーゼの設計
TCR特異的ZFNをTCRα(TCRA)遺伝子での二本鎖切断の部位特異的導入を可能にするために構築した。ZFNをUrnovら(2005年)Nature 435巻(704
2号):646
~651頁、Lombardoら(2007年)Nat Biotechnol.;25巻(11号):1
298~306頁および米国特許出願公開第2008-0131962号、第2015-016495号、第2014-0120622号、および第2014-0301990号および米国特許第8,956,828号に本質的に記載の通り設計した。ZFN対は、TCRA遺伝子の定常領域中の異なる部位を標的とした(図1を参照)。例示的ZFN対に対する認識ヘリックスならびに標的配列を下の表1に示す。TCRAジンクフィンガー設計の標的部位を第1カラムに示す。ZFP認識ヘリックスによって標的化される標的部位中のヌクレオチドを大文字で示し;非標的化ヌクレオチドを小文字で示す。FokIヌクレアーゼドメインとZFP DNA結合ドメインとを繋ぐために使用されるリンカーも示す(米国特許出願公開第2015/0132269号を参照)。例えばドメインリンカーL0のアミノ酸配列は、DNA結合ドメイン-QLVKS-FokIヌクレアーゼドメイン(配列番号3)である。同様にドメインリンカーN7aについてのアミノ酸配列は、FokIヌクレアーゼドメイン-SGTPHEVGVYTL-DNA結合ドメイン(配列番号6)であり、N7cはFokIヌクレアーゼドメイン-SGAIRCHDEFWF-DNA結合ドメイン(配列番号7)である。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0197】
全てのZFNを検査し、それらの標的部位に結合することを見出し、ヌクレアーゼとして活性であることを見出した。
【0198】
本明細書に記載されるZFPは、例えば米国特許出願公開第20180087072号に記載される、nR-5Qabc変異体(ZFP骨格に)ならびに/またはR416Sおよび/もしくはK525S変異体(FokIに)など、ジンクフィンガータンパク質および/またはFokIドメインのリン酸接触残基に1つまたは複数の変異を含んでもよい。
【0199】
TCRA遺伝子を標的化するために、S.pyogenesのCRISPR/Cas9系のためのガイドRNAも構築した。さらなるTCRアルファ-標的化ガイドRNAについて米国特許出願公開第2015/00566705号を参照されたい。下の表2に、TCRA遺伝子中の標的配列ならびにガイドRNA配列が示される。全てのガイドRNAをCRISPR/Cas9系で検査し、活性であることを見出す。
【表2】
【0200】
したがって、本明細書に記載されるヌクレアーゼ(例えば、ZFPまたはsgRNA DNA結合ドメインを含むヌクレアーゼ)は、それらの標的部位に結合し、TCRA遺伝子を切断し、それにより配列番号6~48もしくは137~205のいずれかを含むTCRA遺伝子内に、これらの配列(例えば、配列番号8~21および/または92~103のいずれかに示される標的配列;これらの標的部位の12~25ヌクレオチド;および/または対合した標的部位の間)のいずれかの中の改変(挿入および/または欠失)ならびに/または以下の配列:AACAGT、AGTGCT、CTCCT、TTGAAA、TGGACTTおよび/もしくはAATCCTC内の改変(図1Bを参照)が挙げられる、遺伝子改変を作製する。これらの標的部位に標的化されたTALEヌクレアーゼも設計され、結合および活性に関して機能性であることが見出されている。
【0201】
さらに、DNA結合ドメイン(ZFPおよびsgRNA)は、全てそれらの標的部位に結合し、これらの標的部位を認識するZFP、TALEおよびsRNA DNA結合ドメインも、1つまたは複数の転写制御ドメインと会合する場合に、活性な工学技術で作製された転写因子へと組み立てられる。
【0202】
(実施例2:in vitroでのヌクレアーゼ活性)
表1に記載されるZFNをK562細胞におけるヌクレアーゼ活性を検査するために使用した。切断活性を検査するために、上に記載されるヒトTCRA-特異的ZFNの対をコードしているプラスミドをプラスミドまたはmRNAを用いてK562細胞にトランスフェクトした。K562細胞は、American Type Culture Collectionから得て、10%認定ウシ胎仔血清(FBS、Cyclone)を補充したRPMI培地(Invitrogen)において推奨される通り成長させた。トランスフェクションのために、表1に列挙する活性ヌクレアーゼについてのORFを5’および3’UTRならびに合成ポリAシグナルを保有するmRNA産生のために最適化した発現ベクターにクローニングした。mRNAを、mMessage mMachine T7
Ultra kit(Ambion)を製造者の指示に従って使用して生成した。ヌクレアーゼmRNAのin vitro合成は、T7プロモーター、適切なヌクレアーゼおよび、in vitro転写反応に続くポリAテールの酵素的付加のためのポリAモチーフを含有するpVAX-ベースベクター、またはT7プロモーター、5’UTR、適切なヌクレアーゼ、3’UTRおよび64bpポリAストレッチを含有するpGEMベースベクター、またはT7プロモーター、5’UTR、適切なヌクレアーゼ、3’UTRおよび60bpポリAストレッチを含有するPCRアンプリコンのいずれかを使用した。K562細胞100万個を250ngまたは500ngのZFNコードmRNAと混合した。細胞をプログラムT-16を使用してAmaxa Nucleofector IITMにおいてトランスフェクトし1.4mLの温めたRPMI培地+10%FBSに回収した。ヌクレアーゼ活性をトランスフェクション3日後に標準的プロトコールによりディープシークエンシング(MiSeq、Illumina)によって評価した。結果を下の表3に示す。
【表3】
【0203】
高活性TCRA特異的TALENは、以前にも記載されている(国際特許出願番号WO2014/153470号を参照)。
【0204】
ヒトTCRA-特異的CRISPR/Cas9系も検査した。ヒトK562細胞におけるCRISPR/Cas9系の活性をMiSeq分析によって測定した。Cas9による内因性TCRA DNA配列の切断は、ハイスループットシークエンシング(Miseq、Illumina)によってアッセイする。
【0205】
これらの実験において、Cas9はpVAXプラスミドで供給され、sgRNAはプロモーター(例えば、U6プロモーターまたはCMVプロモーター)の調節下でプラスミドで供給される。プラスミドは各々100ngまたは各々400ngのいずれかで混合し、一回の試行につき2e5細胞と混合した。細胞を、Amaxa系を使用してトランスフェクトした。簡潔には、Amaxaトランスフェクションキットを使用し、標準のAmaxaシャトルプロトコールを使用して核酸をトランスフェクトする。トランスフェクションの後、細胞を室温で10分の間静止させ、その後予め温めたRPMIに再懸濁した。次に、細胞を、37℃の標準条件で成長させる。トランスフェクションの7日後にゲノムDNAを単離し、MiSeq分析にかけた。
【0206】
簡潔には、表2に列挙するガイドRNAを活性について検査した。ガイドRNAを3種の異なる構成で検査した:G0は、上に記載の設定である。G1は、両者のリーディングフレームの転写は、同じ方向にあるCas9遺伝子およびU6-ガイドRNAトレーサー発現カセットの発現を駆動するCMVプロモーターを含むpVAXベクターを使用した。G2は、Cas9とU6ガイド発現カセットとが反対方向であることを除いてG1と同様である。これら3種の設定を100ngまたは400ngのいずれかのトランスフェクトDNAを使用して検査し、結果を下の表4に示す。結果は、「パーセントインデル」または「NHEJ%」として表し、「インデル」は、ヌクレアーゼ誘導二重鎖切断の部位でのエラープローンNHEJ修復工程の結果として見出される小さな挿入および/または欠失を意味する。
【表4-1】
【表4-2】
【0207】
示される通り、本明細書に記載されるヌクレアーゼは、標的化部位で切断およびゲノム改変を誘導する。
【0208】
したがって、本明細書に記載されるヌクレアーゼ(例えば、ZFP、TALEまたはsgRNA DNA結合ドメインを含むヌクレアーゼ)は、それらの標的部位に結合し、TCRA遺伝子を切断し、それにより配列番号8~21もしくは92~103のいずれかを含むTCRA遺伝子内に、これらの配列(配列番号8~21または92~103)のいずれかの中の改変(挿入および/または欠失);これらの遺伝子配列の1~50(例えば、1から10)塩基対内の改変;対合した標的部位(二量体について)の標的部位間の改変;および/または以下の配列:AACAGT、AGTGCT、CTCCT、TTGAAA、TGGACTTおよび/またはAATCCTCの1つもしくは複数の中の改変(図1Bを参照)が挙げられる、遺伝子改変を作製する。
【0209】
さらに、DNA結合ドメイン(ZFP、TALEおよびsgRNA)は、全てそれらの標的部位に結合し、1つまたは複数の転写制御ドメインと会合する場合に、活性な工学技術で作製された転写因子へと組み立てられる。
【0210】
(実施例3:T細胞におけるTCRA特異的ZFN活性)
TCRA特異的ZFN対をヌクレアーゼ活性についてヒトT細胞においても検査した。ZFNをコードするmRNAを精製T細胞にトランスフェクトした。簡潔には、T細胞を白血球フェレーシス産物から得て、Miltenyi CliniMACSシステム(CD4およびCD8二重選択)を使用して精製した。次いで、Dynabeads(ThermoFisher)を製造者のプロトコールに従って使用して、これらの細胞を活性化した。活性化3日後、細胞を3種の用量のmRNA(60、120および250μg/mL)を用いてMaxcyte electroporator(Maxcyte)、OC-100、30e6細胞/mL、体積0.1mLを使用してトランスフェクトした。細胞をディープシークエンシング(Miseq、Illumina)を使用してトランスフェクション後10日目にオンターゲットTCRA改変について分析した。細胞生存率および細胞増殖(合計細胞倍加)を培養の13~14日間を通じて測定した。加えて、処理細胞の細胞表面上のTCRを培養10日目にCD3について染色する標準的FACS分析を使用して測定した。
【0211】
TCRA特異的ZFN対は、T細胞において全て活性であり、一部は、80%を超えるTCRA対立遺伝子改変をこれらの条件下で生じることが可能である(図2Aおよび2Bを参照)。同様に、ZFNを用いて処理したT細胞は、CD3の発現を欠いており、FACS分析は、一部の場合において80から90%の間のT細胞がCD3陰性であったことを示した(図3)。これらの細胞において、ZFNによって改変されたTCRAパーセントとCD3減少との間の比較は、高度の相関を実証した(図4)。細胞生存率は、模擬処理対照と同等であり、TCRAノックアウト細胞増殖も対照と同等であった(図5A~5Dを参照)。
【0212】
(実施例4:標的化組み込みを用いるB2MおよびTCRAの二重ノックアウト)
上に記載のヌクレアーゼおよび表5に記載されるB2M標的化ヌクレアーゼ(米国特許出願公開第2017/0173080号も参照)をB2MおよびTCRAを不活性化し、標的化組み込みを介して、ドナー(導入遺伝子)をTCRAまたはB2M遺伝子座のいずれかに導入するために使用した。B2M特異的ZFNを下の表5に示す:
【表5-1】
【表5-2】
【0213】
この実験ではTCRA特異的ZFN対は、TCRA特異的ZFN標的部位間に配列TTGAAAを含む、SBS番号55266/SBS番号53853であり(表1)、B2M対は、B2M特異的ZFN標的部位間に配列TCAAATを含む、SBS番号57332/SBS番号57327(表5)であった。
【0214】
簡潔には、T細胞(AC-TC-006)を解凍し、X-vivo15 T細胞培養培地中でCD3/28 dynabead(1:3、細胞:ビーズ比)を用いて活性化した(0日目)。培養2日後(2日目)、AAVドナー(GFP導入遺伝子およびTCRAまたはB2M遺伝子に対する相同アームを含む)を、ドナーを含まない対照群はまた維持されていることを除いて、細胞培養物に加えた。翌日(3日目)、TCRAおよびB2M ZFNを、mRNA送達を介して以下の5群において付加した:
(a)群1(TCRAおよびB2M ZFNのみ、ドナーなし):TCRA 120ug/mL:B2Mのみ60ug/mL;
(b)群2(TCRAおよびB2M ZFNならびにTCRA相同アームを有するドナー):TCRA 120ug/mL;B2M 60ug/mLおよびAAV(TCRA-Site E-hPGK-eGFP-Clone E2)1E5vg/細胞;
(c)群3(TCRAおよびB2M ZFNならびにTCRA相同アームを有するドナー):TCRA 120ug/mL;B2M 60ug/mL;およびAAV(TCRA-Site E-hPGK-eGFP-Clone E2)3E4vg/細胞;
(d)群4(TCRAおよびB2M ZFNならびにB2M相同アームを有するドナー):TCRA 120ug/mL;B2M 60ug/mLおよびAAV(pAAV B2M-hPGK GFP)1E5vg/細胞
(e)群5(TCRAおよびB2M ZFNならびにB2M相同アームを有するドナー):TCRA 120ug/mL;B2M 60ug/mLおよびAAV(pAAV B2M-hPGK GFP)3E4vg/細胞。
全ての実験は、3e7細胞/mlの細胞密度で米国特許公開第2017/0137845号に記載のプロトコール(超低温ショック(extreme cold shock))を使用して実施し、電気穿孔後に、30℃、一晩の低温ショックのために培養した。
【0215】
翌日(4日目)、細胞を0.5e6細胞/mlに希釈し、37℃での培養に移した。3日後(7日目)、細胞を0.5e6細胞/mlに再度希釈した。さらに3日および7日培養後(それぞれ10日目および14日目)、細胞をFACSおよびMiSeq分析のために採取した(0.5e6細胞/mlに希釈)。
【0216】
図6に示す通り、GFP発現は、標的組み込みが成功したこと、および本明細書に開示されたヌクレアーゼ標的部位内(またはヌクレアーゼ標的部位の1から50、1から20、1から10または1から5塩基対内)、TTGAAAおよびTCAAAT内(対合した標的部位間)に、B2MおよびTCRA改変(挿入および/または欠失)を含む遺伝子改変細胞が得られたことを示した。
【0217】
さらなる実験をTRACおよびB2Mの二重ノックアウトならびにドナーベクターの標的化組み込みを有する細胞を生成するために実施した。具体的には、TRAC特異的ZFN対SBS番号55266/SBS番号53853およびB2M対SBS番号57071/SBS番号57531をT細胞に導入した。簡潔には、比1:1のCD4:CD8ヒトT細胞を解凍し、X-vivo15 T細胞培養培地中でCD3/28 Dynabeads(登録商標)(1:3の細胞:ビーズ比)を用いて活性化した(0日目)。
【0218】
培養3日後(3日目)、細胞をMaxcyte電気穿孔緩衝液中、ZFN mRNAの存在下で3e7細胞/mLに濃縮し、次にMaxcyteデバイスを使用して電気穿孔した。濃縮し、電気穿孔した細胞を、次に組織培養ウエルに置き、次いでhPGK-GFP-BGHポリA導入遺伝子ドナーをコードするAAV6を濃縮細胞に加え、細胞を回復させ、37℃で、20分間インキュベートした。代替的に、ドナーベクターをデバイス中の電気穿孔緩衝液に加えてもよい。次に細胞を培養培地中、3e6細胞/mLに希釈し、30℃で、一晩培養した。翌朝、細胞を追加の培養培地中、0.5e6細胞/mLに希釈した。以下は群の記載である:
(a)偽:ZFN mRNAもAAVドナーも添加せずに電気穿孔された細胞;
(b)TRACおよびB2M ZFNのみ、ドナーなし):TRAC 120ug/mL:B2Mのみ30ug/mL;
(c)TRACおよびB2M ZFNおよびB2M相同アームを有するドナー:TRAC
120ug/mL;B2M 30ug/mLおよびAAV6(B2M-部位A-hPGK-eGFP)3E4vg/細胞;
(d)TCACおよびB2M ZFNおよびTRAC相同アームを有するドナー:TRAC 120ug/mL;B2M 30ug/mL;およびAAV6(TCRA-部位E-hPGK-eGFP)3E4vg/細胞。
【0219】
全ての実験は、3e7細胞/mlの細胞密度で米国特許出願公開第2017/0137845号に記載のプロトコール(超低温ショック(extreme cold shock))を使用して実施し、電気穿孔後に、30℃、一晩の低温ショックのために培養した。翌日(4日目)、細胞を0.5e6細胞/mLに希釈し、37℃での培養に移した。3日後(7日目)、細胞を0.5e6細胞/mLに再度希釈した。さらに3日および7日培養後(それぞれ10日目および14日目)、細胞をFACSおよびMiSeq分析のために採取した(0.5e6細胞/mLに希釈)。
【0220】
図7に示す通り、GFP発現(ドナー)は、標的組み込みが成功し、本明細書に開示されるヌクレアーゼ標的部位内(またはヌクレアーゼ標的部位の1から50塩基対内、1~20塩基対内、1~10塩基対内または1~5塩基対内、対合した標的部位間を含む)に、B2MおよびTRAC改変(挿入および/または欠失)を含む遺伝子改変細胞が高頻度で(80~90%ノックアウトおよび標的化組み込み率を含む)得られたことを示した。
【0221】
実験は、CARを発現する二重B2M/TCRAノックアウトを作製するためにCAR導入遺伝子が、B2M、TCRAまたは別の遺伝子座のいずれかでのB2MおよびTCRA二重ノックアウトに組み込まれるものでも実施される。
【0222】
(実施例5:TCRAおよびB2M ZFNの最適化)
オフターゲット切断を減少させるために、非特異的リン酸接触がオフターゲット切断の全体的な抑制をもたらすように選択的に除去されるヌクレアーゼ最適化のための戦略(Guilingerら、(2014年) Nat Methods. 11巻(4号):429~35頁。doi: 10.1038/nmeth.2845; Kleinstiverら、(2016年) Nature 529巻(7587
号):490~5頁。doi: 10.1038/nature16526; Slaymakerら、(2016年) Science351巻(6268号):84~8頁。doi: 10.1126/science.aad5227)を採用した(米国特許出願公開第2018/0087072号を参照)。アミノ酸置換をDNAのリン酸骨格と相互作用するジンクフィンガーフレームワーク内の1つまたは複数の重要な位置(Pavletich and Pabo (1991年) Science 252巻(5007号):8
09~17頁; Elrod-Ericksonら、(1996年) Structure 4巻(10号):1
171~80頁)およびリン酸接触を作製すると同様に予測される右ZFN FokIドメイン中の位置に作製した。
【0223】
下の表6に、各ZFNについての特徴付け情報を示す。左からSBS番号(例えば、55254)が示され、ZFNが結合するDNA標的がSBS番号の下に示されている。次は、フィンガー1~6または1~5(表6の細分されたカラム2)に対するアミノ酸認識ヘリックス設計が示されている。適切なヘリックス設計の下での、米国特許出願第15/685,580号に記載される、表示のフィンガーのZFP骨格配列に作製された変異が、表6に同様に示される。表6において使用される記号において、「Qm5」は、表示のフィンガーのマイナス5位(-1から+6と番号付けられたヘリックスと比較して)で、この位置のアルギニンがグルタミン(Q)で置き換えられていることを意味し、一方「Qm14」は、マイナス14位に通常存在するアルギニン(R)がグルタミン(Q)で置き換えられていることを意味する。nQm5における略称「n」は、変異が、5または6フィンガータンパク質の構成において使用される2フィンガーモジュールのN末端フィンガー内にあることを意味する。「なし」は、認識ヘリックス領域外に変化がないことを示している。したがって、例えばSBS番号68797は、nQm5変異をフィンガー1、3および5に含む一方で、フィンガー2、4および6は、ジンクフィンガー骨格に変異を有さない(例えば、認識ヘリックス領域外のジンクフィンガー配列)。
【0224】
最後に、表6の最も右側のカラムは、DNA結合ドメインをFokI切断ドメインに連結するために使用されるリンカーを示し、(例えば、「L0」LRGSQLVKS(配列番号135)、「標準」リンカーと称され、例えば米国特許第9,567,609号に記載されている(カラムの最上列に示される))、FokIリン酸接触変異および二量体化変異の部位は、リンカー名称の下のボックスに示されている。他のリンカーとして、N7c(SGAIRCHDEFWF、配列番号136)およびN7a(SGTPHEVGVYTL、配列番号137)が挙げられる。具体的には、Fok変異体ボックスの最上列に示されているのは、二量体化ドメインにおいて見出される変異の種類である(例えば、例えば米国特許第8,962,281号において記載されるELDまたはKKR)。下に二量体化変異体名称が示され、非特異的リン酸接触を除去するために作製されたFokIドメインに存在する任意の変異が最下部に示されている(例えば、K525SまたはR416S、米国特許出願公開第20180087072号に記載の通りアミノ酸525位または416位のセリン残基が、それぞれリジンまたはアルギニンのいずれかの代わりに使用される)。したがって、例えば、SBS番号68796において、リンカーはL0リンカーであり、FokI切断ドメインはELD二量体化変異体を含み、リン酸接触変異を含まない。さらに、SBS番号68812について、リンカーはL0リンカーであり、FokI切断ドメインは、FokIドメインがさらにR416E置換変異を含むKKR二量体化変異を含む。
【0225】
本明細書に記載されるZFP(本明細書に記載されるZFN由来のZFPを含む)と共に使用することができる他のFokIドメインバリアントは、Sharkey変異(S418P+K441E、Guoら、(2010年) J. Mol Biol, doi:10.101b/j.jmb.2010.04.060を参照)ならびにDADおよびRVR FokI変異(米国特許第8,962,281号を参照)の付加を含む。使用することができる工学技術で作製されたFokIバリアントの非限定的例としては:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
が挙げられる。
【0226】
ZFNの全ての対ごとの組合せを機能性について検査し、全てが活性であることが見出された。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0227】
各部位についてのZFNをコードする遺伝子を2A自己切断ペプチドによって分けられた右および左パートナーとして各標的部位との組合せで発現プラスミドにクローニングした。ZFNをコードするmRNAを標準的in vitro転写方法を使用して得た。次に活性化T細胞(活性化3日後)を種々のmRNAを用いて3種の異なる用量(100μL中12、6または3μg、3E6 T細胞)で電気穿孔によって処理した。電気穿孔4日後、細胞を1つまたは複数の標的部位での切断について分析した。データを下の2つの表(各標的部位について1つ)に示す。
【表7a-1】
【表7a-2】
【表7b】
【0228】
したがって、改変後にZFN試薬は、優れたオンターゲット切断活性を維持しており、一方しばしばバックグラウンドへのオフターゲット切断活性は減少している(例えば、親55254/55248対のオンターゲット切断活性を改変68861/68796対と比較し、12μgの飽和用量でそれぞれ96.7および99.3パーセントのオンターゲット切断を示し、一方、この用量で親対において42.22パーセントおよび、改変対では1.19%の合計オフターゲット活性を有し、1.28の対照レベルと同様であった。
【0229】
TRAC ZFNと同様に:潜在的なリン酸接触アミノ酸をB2Mタンパク質のFokIドメインにおいて改変した。ZFP構成成分の例示的な改変(「設計」)を下の表8に示す。
【表8】
【0230】
改変B2M試薬を上に記載の通り活性について検査し、HLAに対して特異的な抗体を使用してFAC分析によって表現型ノックアウトについて分析した。全ての対ごとの組合せ(57531/57071;57531/72732;57531/72748;68957/57071;68957/72732;68957/72748;72678/57071;72678/72732;72678/72748)は、下の表9に示す表示の対についての例示的結果と共に活性であることが見出され、改変バリアントが活性であることを実証している。
【表9】
【0231】
オンおよびオフターゲット分析も上の表9に列挙したそれぞれの対についてMiSeqを使用して実行した。結果は、各対について下の表10A~10Dに示し、これらの試薬が高度に特異的であることを実証している。
【表10A】
【表10B】
【表10C】
【表10D-1】
【表10D-2】
【0232】
改変TRACおよびB2M-特異的ZFNを組合せで検査し、Miseq分析によって、およびFAC分析によってCD3+またはHLA+細胞の量を分析する表現型分析によっての両方で、ノックアウト効率について評価した。分析は、2つの異なる濃度で添加されたZFNコードmRNA(90μg/mLまたは120μg/mL)を使用してT細胞において行った。結果を下の表11に示し、これらの試薬が高度に効率的であることを実証している。
【表11】
【0233】
試薬をPGKプロモーターによって駆動されるGFPドナー構築物の存在または不在の組合せにおいても検査した。切断されたB2MまたはTRAC遺伝子座のいずれかに挿入を行った結果を表12に示す。各場合において、PGK-GFPドナーは、AAV6によって送達され、TRACまたはB2M切断部位のいずれかと隣接して相同性を有する相同アームを含んだ。使用したTRAC特異的ZFN対構築物は68846-2A-53853であり、一方B2M特異的対に対する構築物は、72732-2A-72678であった。
【表12-1】
【表12-2】
【0234】
したがって、B2Mに対して特異的なZFNの最適化された対は、FokIバリアント(上を参照されたい)をZFP DNA結合ドメインとの組合せで選択することによって構築した。
【0235】
B2M ZFN 72732および72678に対するDNA結合ドメインに対して最適化されたアミノ酸配列は、下に示されている:
【化7】
【0236】
本明細書に記載されるZFN(例えば、配列番号175および配列番号176)の改変ZFPを含むさらなるZFNは、異なるFokIおよび/またはリンカードメインを使用しても生成される。
【0237】
【0238】
同様に、TRACに対して特異的なZFNの最適な対をFokIバリアント(例えば上記を参照されたい)をZFP DNA結合ドメインとの組合せで選択することによって構築した。B2M ZFN 68846および53853に対するDNA結合ドメインについての最適なアミノ酸配列を下に示す:
【化8】
【化9】
【0239】
ZFNは、FokIドメインに対してN末端側のDNA結合ドメインとともにアセンブルでき、ここで、DNA結合ドメインとFokIドメインとの間のリンカー配列は、L0リンカー:LRGSであった。代替的に、FokIドメインが、DNA結合ドメインに対してN末端側にあるようにZFNをアセンブルする場合、使用したリンカーは、N7cリンカー:SGAIRCHDEFWF(配列番号179)であった。
【0240】
N末端領域(DYKDHDGDYKDHDIDYKDDDDK、配列番号180)中の3×FLAGタグおよび核局在化配列(PKKKRKV、配列番号181)を含む構築物にさらなる特徴を追加した。
【0241】
加えて、一部の構築物では、目的のZFN対をコードする配列は一緒に1つのDNA配列に連結され、各ZFNパートナーについてのオープンリーディングフレームは、2A配列によって分けられている。68846-2A-53853についてのそのようなDNA配列を下に示す:
【化10】
【化11】
【0242】
68846-2A-53853オープンリーディングフレームのアミノ酸配列は:
【化12】
である。
【0243】
本ポリペプチドの特徴を下の表13に項目別に表す。
【表13-1】
【表13-2】
【0244】
72732-2A-72678オープンリーディングフレームについての配列を下に示す:
【化13】
【化14】
【0245】
72732-2A-72678オープンリーディングのアミノ酸配列を下に示す。
【化15】
【0246】
72732-2A-72678アミノ酸配列の特徴を下の表14に示す。
【表14-1】
【表14-2】
【0247】
(実施例6:ZFN試薬のin vivoでの検査)
本明細書に記載されるT細胞を移植片対宿主病および/またはがんの動物モデル(例えば、腫瘍モデルを確立するために多発性骨髄腫などのがん細胞株を注射されたヌードマウス)に投与する。例えば、活性化ヒトT細胞をB2MおよびTRAC-特異的ZFNをコードするmRNAを用いて電気穿孔する、ここで各対は、2A自己切断ペプチドをコードする配列によって分けられている単一のmRNAによってコードされている(MacLeodら
、(2017年) Mol Ther. 25巻(4号):949~961頁)。細胞をまた、CARドナー(例えば、CD19 CAR)を含むAAV粒子を用いて形質導入する。次に細胞を培養し、CAR発現およびCD3+細胞の欠失について染色する。全ての残存CD3+細胞を磁気分離によって枯渇させる。NSGマウスにホタルルシフェラーゼ発現Raji細胞(Raji-ffLuc)を静脈内注射し、4日後、CD3-/抗CD19 CAR T細胞を注射する。Raji-ffLuc細胞の生着および成長は、注射後4日までに明らかであり、未処置マウスにおいて顕著に増加している。処置マウスの血液中のピークCAR T細胞頻度は、8日目に観察され、高用量群の末梢血液中の細胞の約10%に達する。17~19日目までに、対照群の全てのマウスは、顕著な腫瘍負荷の証拠を、特に脊椎および骨髄において示して、完全な後肢麻痺を生じ、安楽死される。対照的に、抗CD19 CAR T細胞を用いて処置したマウスの全ての群は、11日目までに腫瘍増殖の証拠を示さず、研究の32日目を通じて腫瘍は無いままであった。
【0248】
疾患は、本明細書に記載されるT細胞を受けている動物の組織(例えば、骨髄、脾臓、肺、肝臓、心臓など)において検出されないか最小限にしか検出されない。対照的に、対照被験体は、大部分の組織において検出可能な腫瘍細胞を有する。
【0249】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願および公開は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0250】
理解の明快性のために開示は例証および例として多少詳細に提供されたが、本開示の精神または範囲から逸脱せずに様々な変更および改変を実施することができることは当業者に明らかである。したがって、上記の記載および実施例は限定するものと解釈されるべきでない。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
68957、72678、72732または72748と呼ばれるZFN由来のZFP;
工学技術で作製されたFokI切断ドメイン;および
前記FokI切断ドメインと前記ZFPとの間のリンカー
を含む、ジンクフィンガーヌクレアーゼ。
(項目2)
以下:57531と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFN;57531と呼ばれるZFNおよび72748と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび57071と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFN;68957と呼ばれるZFNおよび72748と呼ばれるZFN;72678と呼ばれるZFNおよび57071と呼ばれるZFN;72678と呼ばれるZFNおよび72732と呼ばれるZFNの通りの第1および第2のZFN;ならびに72678と呼ばれるZFNおよび727482と呼ばれるZFNを含むZFPを含む、項目1に記載のジンクフィンガーヌクレアーゼ。
(項目3)
以下:72678と呼ばれる前記ZFN由来のZFPを含むZFN、および72732と呼ばれる前記ZFN由来のZFPを含むZFNの通りの項目1または2に記載の第1および第2のZFNを含む、ジンクフィンガーヌクレアーゼ。
(項目4)
項目1から3のいずれかに記載のジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド。
(項目5)
第1のZFNをコードする配列と第2のZFNをコードする配列との間に2A配列を含む、項目4に記載のポリヌクレオチド。
(項目6)
項目1から3のいずれかに記載のジンクフィンガーヌクレアーゼまたは項目4もしくは5に記載のポリヌクレオチドを含む細胞であって、前記細胞のゲノムが、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼによって改変される、細胞。
(項目7)
幹細胞または前駆細胞である、項目6に記載の細胞。
(項目8)
ヒト細胞である、項目7に記載の細胞。
(項目9)
ゲノム改変が、挿入、欠失およびそれらの組合せからなる群より選択される、項目6から8のいずれかに記載の細胞。
(項目10)
1つまたは複数のさらなるゲノム改変をさらに含む、項目6に記載の細胞。
(項目11)
前記さらなるゲノム改変が、T細胞受容体(TCR)遺伝子の改変、HLA-A遺伝子の改変、HLA-B遺伝子の改変、HLA-C遺伝子の改変、TAP遺伝子の改変、CTLA-4遺伝子の改変、PD1遺伝子の改変、CISH遺伝子の改変、tet-2遺伝子の改変、および/または前記ゲノムへの導入遺伝子の挿入を含む、項目10に記載の細胞。
(項目12)
前記導入遺伝子が少なくとも1つのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、項目11に記載の細胞。
(項目13)
エフェクターT細胞または制御T細胞である、項目12に記載の細胞。
(項目14)
項目6から13のいずれかに記載の細胞に由来する細胞または細胞株。
(項目15)
項目4もしくは5に記載のポリヌクレオチドによるジンクフィンガーヌクレアーゼ、または項目12もしくは13に記載の細胞を含む、医薬組成物。
(項目16)
細胞中の内因性ベータ-2-ミクログロブリン(B2M)遺伝子を改変する方法であって、前記内因性B2M遺伝子が改変されるように項目4または5に記載のポリヌクレオチドを前記細胞に投与するステップを含む、方法。
(項目17)
外因性配列が前記内因性B2M遺伝子に挿入されるように前記外因性配列を前記細胞に導入するステップをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記改変が欠失を含む、項目16または17に記載の方法。
(項目19)
内因性B2M遺伝子内にゲノム改変を含む、遺伝的に改変された細胞を産生する方法であって、
a)細胞を項目4または5に記載のポリヌクレオチドと接触させるステップ;
b)前記ポリヌクレオチドからの融合タンパク質の発現を促進する条件に前記細胞を供するステップ;および
c)前記遺伝的に改変された細胞を産生するために十分な発現された前記融合タンパク質を用いて、前記内因性B2M遺伝子を改変するステップ
を含む、方法。
(項目20)
項目4または5に記載のポリヌクレオチドを含むキット。
(項目21)
被験体におけるがんを処置および予防する方法であって、項目6から14のいずれかに記載の細胞または項目15に記載の医薬組成物を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目22)
被験体における自己免疫性疾患を処置または予防する方法であって、項目6から14のいずれかに記載の細胞または項目15に記載の医薬組成物を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目23)
左のZFNおよび右のZFNを含むジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であって、前記左のZFNおよび前記右のZFNは、以下:68796と呼ばれるZFNおよび68813と呼ばれるZFN;68796と呼ばれるZFNおよび68861と呼ばれるZFN;68812と呼ばれるZFNおよび68813と呼ばれるZFN;68876と呼ばれるZFNおよび68877と呼ばれるZFN;68815と呼ばれるZFNおよび55266と呼ばれるZFN;68879と呼ばれるZFNおよび55266と呼ばれるZFN;68798と呼ばれるZFNおよび68815と呼ばれるZFN;または68846と呼ばれるZFNおよび53853と呼ばれるZFNの通りである、ZFN。
(項目24)
項目23に記載の1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドであって、必要に応じてmRNAである、ポリヌクレオチド。
(項目25)
左のZFNをコードする配列と右のZFNをコードする配列との間に2A配列を含む、項目24に記載のポリヌクレオチド。
(項目26)
項目23から25のいずれかに記載のジンクフィンガーヌクレアーゼを含む細胞であって、前記細胞のゲノムが前記ジンクフィンガーヌクレアーゼによって改変されている、細胞。
(項目27)
幹細胞または前駆細胞である、項目26に記載の細胞。
(項目28)
ヒト細胞である、項目26または27に記載の細胞。
(項目29)
ゲノム改変が、挿入、欠失およびそれらの組合せからなる群より選択される、項目26から28のいずれかに記載の細胞。
(項目30)
1つまたは複数のさらなるゲノム改変をさらに含む、項目29に記載の細胞。
(項目31)
前記さらなるゲノム改変が、B2M遺伝子の改変、HLA-A遺伝子の改変、HLA-B遺伝子の改変、HLA-C遺伝子の改変、TAP遺伝子の改変、CTLA-4遺伝子の改変、PD1遺伝子の改変、および/または前記ゲノムへの導入遺伝子の挿入を含む、項目30に記載の細胞。
(項目32)
前記導入遺伝子が少なくとも1つのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする、項目31に記載の細胞。
(項目33)
幹細胞である、項目31または32に記載の細胞。
(項目34)
項目26から33のいずれかに記載の細胞に由来する細胞または細胞株。
(項目35)
項目24もしくは25に記載のポリヌクレオチドによるジンクフィンガーヌクレアーゼ、または項目26から34のいずれかに記載の細胞を含む、医薬組成物。
(項目36)
細胞において内因性T細胞受容体(TCR)遺伝子を改変する方法であって、前記内因性TCR遺伝子が改変されるように項目24または25に記載のポリヌクレオチドを前記細胞に投与するステップを含む、方法。
(項目37)
外因性配列が前記内因性TCR遺伝子に挿入されるように、前記外因性配列を前記細胞に導入するステップをさらに含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記改変が欠失を含む、項目36に記載の方法。
(項目39)
内因性TCR遺伝子内にゲノム改変を含む遺伝的に改変された細胞を産生する方法であって、
a)細胞を項目24または25に記載のポリヌクレオチドと接触させるステップ;
b)前記ポリヌクレオチドからの融合タンパク質の発現を促進する条件に前記細胞を供するステップ;および
c)前記遺伝的に改変された細胞を産生するために十分な発現された前記融合タンパク質を用いて前記内因性TCR遺伝子を改変するステップ
を含む、方法。
(項目40)
項目24または25に記載のポリヌクレオチドを含むキット。
(項目41)
がんまたは移植片対宿主病および被験体を処置および予防する方法であって、項目26から34のいずれかの細胞を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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