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特許7482182プロトンポンプ阻害剤を含む経口用固形製剤組成物、それを含む経口用固形製剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】プロトンポンプ阻害剤を含む経口用固形製剤組成物、それを含む経口用固形製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20240502BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240502BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61P1/04
A61P43/00 111
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/28
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022155671
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2019570102の分割
【原出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2022185033
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0083891
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0006687
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508130188
【氏名又は名称】ロッテ精密化學株式会社
【氏名又は名称原語表記】LOTTE Fine Chemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】19,Yeocheon-ro 217beon-gil,Nam-gu,Ulsan,44714,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン、カン イル
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン ヨプ
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/043661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩を含む混合粉末を製造する段階;
(2)塩基性添加剤を含む結合液を製造する段階;
(3)前記混合粉末と前記結合液を連合した後に乾燥する段階;及び
(4)前記(3)段階で得た乾燥物を製粒して顆粒物を製造する段階を含むことを特徴とする、経口用固形製剤の製造方法であって、
前記プロトンポンプ阻害剤がデクスランソプラゾールであり、
前記結合液の溶媒は、水;及び水と混和性である一種以上の有機溶媒;を含み、前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール及びアセトンから選択され、
前記結合液を製造する段階は、(a)水に前記塩基性添加剤をとかす段階、及び(b)前記(a)段階で得られる溶液に前記有機溶媒を投入して混和する段階を含み、
前記結合液を製造する段階は、前記(b)段階によって得られた混和液に腸溶性基剤を投入して分散させる段階をさらに含む、経口用固形製剤の製造方法。
【請求項2】
前記塩基性添加剤の含量は、前記プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩100重量部を基準で2~13重量部であることを特徴とする、請求項1に記載の経口用固形製剤の製造方法。
【請求項3】
前記混合粉末は、希釈剤及び水溶性高分子からなる群より選択された一種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の経口用固形製剤の製造方法。
【請求項4】
前記(3)段階で乾燥は、20~60℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項1に記載の経口用固形製剤の製造方法。
【請求項5】
前記(4)段階によって得られた顆粒物にマンニトール、崩壊剤、希釈剤及び滑沢剤からなる群より選択された一種以上を混合して打錠して錠剤を製造する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の経口用固形製剤の製造方法。
【請求項6】
前記錠剤を水溶性被膜層でコーティングする段階;及び前記水溶性被膜層の表面を腸溶性被膜層でコーティングする段階;をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の経口用固形製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトンポンプ阻害剤を含む経口用固形製剤組成物、それを含む経口用固形
製剤及びその製造方法に関し、より詳しくは、プロトンポンプ阻害剤又はその薬学的に許
容可能な塩と共に適正量の塩基性添加剤を含むことで、柔軟物質の生成が顕著に減少され
て安定性に優れた経口用固形製剤組成物、それを含む経口用固形製剤及びその製造方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
プロトンポンプ阻害剤(Proton Pump Inhibitor;PPI)は、
壁細胞(parietal cell)での水素イオン生成の最終段階に関与する酵素で
あるH、K-ATPaseの抑制による胃酸分泌の有效な阻害剤であり、ヒトの胃酸
関連疾患、例えば、胃潰瘍、出血性潰瘍、十二指腸潰瘍、非ステロイド性抗炎症薬(No
n-steroidal anti-inflammatory drug、NSAID
)-誘発潰瘍、消化性潰瘍、びらん性食道炎、胃食道逆流疾患、ヘリコバクターピロリ感
染、ゾリンジャーエリソン(Zollinger-Ellison)症候群、消化不良及
び胃炎の治療に非常に効果的である。
【0003】
しかし、一部のプロトンポンプ阻害剤は、水分が触れると色が変化するかはやく分解さ
れる性質を有しており、酸性乃至中性条件下で非常に不安定なので製剤化には相当な制約
がある。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1(大韓民国公開特許公報第10-201
3-0115593号)では、NSAIDとプロトンポンプ阻害剤を含む二層精製におい
て、プロトンポンプ阻害剤を含む層に塩基性添加剤を添加してプロトンポンプ阻害剤の安
定性を向上させることで柔軟物質の生成を最小化できるように塩基性条件の環境を造成す
る製剤を開示する。
【0005】
先行文献によると、胃腸で放出するとき、低いpH環境に対する薬物の安定性が向上さ
れ、柔軟物質の生成が抑制され得る。しかし、特許文献1では、プロトンポンプ阻害剤の
安定性の確保のために前記プロトンポンプ阻害剤1重量部を基準で2~10重量部の塩基
性添加剤を含むが、このように多量の塩基性添加物を用いるため錠剤のサイズが大きくな
る短所がある。また、相変らず水分に触れると色が変化するかはやく分解される性質は改
善されなくて保管安定性の問題が残っている。
【0006】
したがって、経口用錠剤のサイズを減らして服用便宜性を確保するように塩基性添加剤
の含量を低めると共にプロトンポンプ阻害剤の水分及び低いpHに対する安定性を向上さ
せ、柔軟物質も最小化できる方案に対する研究が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】KR1020130115593A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、塩基性添加剤をプロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩10
0重量部を基準で2~13重量部の範囲で含むことで柔軟物質の生成が顕著に減少されて
安定性に優れた経口用固形製剤組成物及びそれを含む経口用固形製剤を提供することを目
的とする。
【0009】
また、本発明は、湿式顆粒法を用いることで生産効率に優れた経口用固形製剤の製造方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような課題を解決するために、本発明は、プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学
的に許容可能な塩;及び塩基性添加剤を含む結合液;を含むが、前記塩基性添加剤の含量
は、前記プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩100重量部を基準で2
~13重量部であることを特徴とする経口用固形製剤組成物を提供する。
【0011】
前記プロトンポンプ阻害剤は、デクスランソプラゾール(Dexlansoprazo
le)、エソメプラゾール(Esomeprazole)、ランソプラゾール(Lans
oprazole)、オメプラゾール(Omeprazole)、パントプラゾール(P
antoprazole)、ラベプラゾール(Rabeprazole)、テナトプラゾ
ール(Tenatoprazole)、これらの薬学的に許容可能な塩及びこれらの前駆
体からなる群より選択された一種以上を含むことができ、好ましくは、デクスランソプラ
ゾール(Dexlansoprazole)を含むことができる。
【0012】
前記塩基性添加剤は、NaOH、NaHCO、CaCO、MgCO、KHPO
、KHPO、Ca(OH)、Mg(OH)、NaHPO、MgCO、N
aHPO、NaPO、三塩化リン酸カルシウム、アルギニン、リシン、ヒスチジ
ン、メグルミン、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルミニウムマグネシウムメタ
シリケート及びそれの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択された一種以上を含むこ
とができる。
【0013】
前記組成物は、希釈剤、水溶性高分子及び腸溶性基剤からなる群より選択された一種以
上をさらに含むことができる。
【0014】
具体的に、前記希釈剤は、マンニトール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、キ
シリトール及びグルコースからなる群より選択された一種以上を含むことができ、前記水
溶性高分子は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、
ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロー
ス、ヒドロキシペンチルセルロース及びヒドロキシプロピルブチルセルロースからなる群
より選択された一種以上を含むことができ、前記腸溶性基剤は、ポリ(メタクリル酸メチ
ルメタクリレート)共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネ
ート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びカルボキシメチルエチルセル
ロースからなる群より選択された一種以上を含むことができる。
【0015】
一方、本発明は、前記経口用固形製剤組成物を含む経口用固形製剤を提供する。
【0016】
前記固形製剤は、マンニトール、崩壊剤及び滑沢剤からなる群より選択された一種以上
をさらに含むことができる。
【0017】
前記経口用固形製剤組成物を含むコア、前記コアの表面を被覆する水溶性被膜層及び前
記水溶性被膜層の表面を被覆する腸溶性被膜層をさらに含むことができる。
【0018】
このとき、前記水溶性被膜層は、セルロースエーテル、ポリビニルピロリドン及びポリ
ビニルアルコールからなる群より選択された一種以上を含むことができ、このとき、前記
セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセル
ロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチル
セルロース、ヒドロキシペンチルセルロース及びヒドロキシプロピルブチルセルロースか
らなる群より選択された一種以上を含むことができる。
【0019】
そして、前記腸溶性被膜層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP
MCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS
)、セルロースアセテートフタレート及びこれらの誘導体からなる群より選択された一種
以上を含むことができる。
【0020】
また、本発明は、前記経口用固形製剤の製造方法を提供し、前記製造方法は、(1)プ
ロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩を含む混合粉末を製造する段階;(
2)塩基性添加剤を含む結合液を製造する段階;(3)前記混合粉末と前記結合液を連合
した後に乾燥する段階;及び(4)前記(3)段階で得た乾燥物を製粒して顆粒物を製造
する段階を含む。
【0021】
前記塩基性添加剤の含量は、前記プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な
塩100重量部を基準で2~13重量部であってもよい。
【0022】
前記混合粉末は、希釈剤及び水溶性高分子からなる群より選択された一種以上をさらに
含むことができる。
【0023】
前記結合液の溶媒は、水;及び水と混和性である一種以上の有機溶媒;を含み、前記有
機溶媒は、エタノール、イソプロパノール及びアセトンから選択され得る。このような結
合液の製造段階は、(a)水に前記塩基性添加剤をとかす段階、及び(b)前記(a)段
階で得られる溶液に前記有機溶媒を投入して混和する段階を含むことができる。そして、
前記結合液の製造段階は、前記(b)段階によって得られた混和液に腸溶性基剤を投入し
て分散させる段階をさらに含むことができる。
【0024】
前記(3)段階で乾燥は、20~60℃の温度範囲で行われ得る。
【0025】
本発明による経口用固形製剤の製造方法は、前記(4)段階によって得られた顆粒物に
マンニトール、崩壊剤、希釈剤及び滑沢剤からなる群より選択された一種以上を混合して
打錠して錠剤を製造する段階をさらに含むことができる。そして、このように製造された
前記錠剤を水溶性被膜層でコーティングする段階;及び前記水溶性被膜層の表面を腸溶性
被膜層でコーティングする段階;をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による経口用固形製剤組成物は、塩基性添加剤を適正含量で含むことでプロトン
ポンプ阻害剤の安定性を向上させることができる。これによって、柔軟物質の生成が最小
化され、胃腸で放出するとき低いpH環境に対する薬物安定性が向上され、水分又は湿度
条件下でも変色されない安定性に優れた経口用顆粒製剤が提供され得る。
【0027】
また、本発明による経口用固形製剤の製造方法は、湿式顆粒法を用いることで生産効率
性が向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1は、本発明の一実施例よる経口用固形製剤の製造過程を示す概略図である。
図2は、実施例1~実施例3、比較例1~比較例3によって製造された顆粒物の色相を
比較して示した写真である。
図3は、実施例1によって製造された顆粒物の溶出試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、プロトンポンプ阻害剤(Proton Pump Inhibitor;P
PI)を含む経口用固形製剤組成物、それを含む経口用固形製剤及びその製造方法に関す
る。
【0030】
まず、経口用固形製剤組成物に対して説明すると、前記組成物は、プロトンポンプ阻害
剤又はそれの薬学的に許容可能な塩;及び塩基性添加剤を含む結合液;を含み、前記塩基
性添加剤の含量は、前記プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩100重
量部を基準で2~13重量部であることを特徴とする。
【0031】
前記プロトンポンプ阻害剤は、胃壁細胞(parietal cell)のプロトンポ
ンプ(H/K-ATPase)を抑制して塩酸の生成を抑制し、消化器官内の酸性の
強度を弱化させることで薬効を示す。本発明で前記プロトンポンプ阻害剤は、デクスラン
ソプラゾール(Dexlansoprazole)、エソメプラゾール(Esomepr
azole)、ランソプラゾール(Lansoprazole)、オメプラゾール(Om
eprazole)、パントプラゾール(Pantoprazole)、ラベプラゾール
(Rabeprazole)、テナトプラゾール(Tenatoprazole)、これ
らの薬学的に許容可能な塩及びこれらの前駆体からなる群より選択された一種以上を含む
ことができ、好ましくは、デクスランソプラゾールを用いることができる。
【0032】
前記デクスランソプラゾールは、消化性潰瘍治療剤などで広く用いられている薬物であ
って、ランソプラゾールの光学異性質体であり、下記の化学式1で表示される化合物であ
る。
【0033】
【化1】
【0034】
前記デクスランソプラゾールは、水分に触れると色が変化するかはやく分解される性質
を有しており、このような性質は、酸性又は中性水溶液条件でも同一に発生する。これは
、経口用固形製剤の製造過程や保管過程で水分や湿気による変色問題を引き起こし、また
、胃腸で放出するとき低いpHによる薬物の安定性低下問題を引き起こすことがある。
【0035】
上記のような問題は、デクスランソプラゾール以外にエソメプラゾールなどのようなプ
ロトンポンプ阻害剤でも共通で現われ、したがって、本発明では、プロトンポンプ阻害剤
とともに適正量の塩基性添加剤を含ませてプロトンポンプ阻害剤の安定性を向上させるこ
とで、水分や低いpH環境下での影響を最小化すると共に柔軟物質の生成量も顕著に減少
させた。
【0036】
このような塩基性添加剤の含量は、前記プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容
可能な塩100重量部を基準で2~13重量部であることを特徴とする。前記塩基性添加
剤の含量が2重量部未満である場合には、低いpH環境下での薬物安定性が落ちて柔軟物
質の生成量が多くなる問題が発生し、一方、13重量部を超過する場合には、水分や湿度
条件下で変色される問題が発生した。
【0037】
前記塩基性添加剤は、NaOH、NaHCO、CaCO、MgCO、KHPO
、KHPO、Ca(OH)、Mg(OH)、NaHPO、MgCO、N
aHPO、NaPO、三塩化リン酸カルシウム、アルギニン、リシン、ヒスチジ
ン、メグルミン、アルミニウムマグネシウムシリケート、アルミニウムマグネシウムメタ
シリケート及びそれの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択された一種以上を含むこ
とができ、好ましくは、NaOHを含むことができる。
【0038】
本発明で前記経口用固形製剤組成物は、希釈剤、水溶性高分子及び腸溶性基剤からなる
群より選択された一種以上をさらに含むことができる。
【0039】
前記希釈剤は、顆粒の一定な体積を維持させる物質を示す。前記希釈剤としては、プロ
トンポンプ阻害剤の作用に影響を及ぼさない任意の希釈剤が用いられ得、例えば、マンニ
トール、スクロース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール及びグルコースからなる
群より選択された一種以上が用いられ得、好ましくは、ラクトースが用いられ得る。
【0040】
前記水溶性高分子は、薬物の放出遅延効果のために添加される。前記水溶性高分子とし
ては、プロトンポンプ阻害剤の作用に影響を及ぼさない任意の水溶性高分子が用いられ得
、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒド
ロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、
ヒドロキシペンチルセルロース及びヒドロキシプロピルブチルセルロースからなる群より
選択された一種以上を含むことができ、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロー
スが用いられ得る。
【0041】
前記腸溶性基剤は、胃で薬物が放出されることを抑制する役目をする。本明細書で「腸
溶性」とは、胃液条件(pH1.2付近)では2時間の間崩壊及び溶出(dissolu
tion)されず、小腸液条件(pH7.2付近)では1時間以内のはやい時間内に崩壊
及び溶出される性質を意味する。前記腸溶性基剤としては、活性成分の作用に影響を及ぼ
さない任意の腸溶性基剤が用いられ得、例えば、ポリ(メタクリル酸メチルメタクリレー
ト)共重合体(例えば、オイドラギットL,オイドラギットS、エボニック社製、ドイツ
)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピル
メチルセルロースフタレート及びカルボキシメチルエチルセルロースからなる群より選択
された一種以上が用いられ得、好ましくは、ポリ(メタクリル酸メチルメタクリレート)
共重合体が用いられ得る。
【0042】
一方、本発明は、前記経口用固形製剤組成物を含む経口用固形製剤を提供する。前記固
形製剤は、顆粒(granule)、ペレット(pallet)、錠剤(tablet)
及びカプセル(capsule)からなる群より選択されたいずれか一つの剤型であって
もよい。
【0043】
前記固形製剤は、マンニトール、崩壊剤、希釈剤及び滑沢剤からなる群より選択された
一種以上をさらに含むことができる。例えば、本発明による固形製剤の剤型が錠剤である
場合、前記経口用固形製剤組成物から製造された顆粒にマンニトール、崩壊剤、希釈剤及
び滑沢剤からなる群より選択された一種以上がさらに含まれて製造され得る。
【0044】
前記マンニトール(mannitol)は、経口用固形製剤組成物の流れ性を高める役
目をするもので、マンニトールを含む場合、混合均一性、流動性に優れた経口用固形製剤
組成物を提供することができる。
【0045】
前記崩壊剤(disintegant)は、経口投与後に固体剤型の崩壊又は崩解を容
易にする役目をする。前記崩壊剤は、微細結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピル
セルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボ
キシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム及びクロスポ
ビドンからなる群より選択された一種以上を含むことができる。
【0046】
前記希釈剤は、前記経口用固形製剤組成物を用いて製造した固形製剤に追加で含まれる
もので、その種類は上述した通りである。
【0047】
前記滑沢剤は、無定型デクスランソプラゾール粒子の流動性を向上させて粒子間の摩擦
を防止し、無定型デクスランソプラゾール粒子が打錠機に付着されることを防止する役目
を行う。前記滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、
ステアリン酸カルシウム、滑石、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、シリコンジオ
キサイド及びコロイダルシリコンジオキサイドからなる群より選択された一種以上を含む
ことができる。
【0048】
本発明によって提供される前記経口用固形製剤は、前記経口用固形製剤組成物を含むコ
ア、前記コアの表面を被覆する水溶性被膜層及び前記水溶性被膜層の表面を被覆する腸溶
性被膜層をさらに含むことができる。このように経口用固形製剤を2重コーティング製剤
で設計する場合、耐酸性が確保されて胃での薬物放出が抑制されて腸での薬物放出が促進
され得、これによって、患者の服用順応性が向上され得る。
【0049】
前記腸溶性被膜層は、本発明による経口用固形製剤の最外郭に位置する被膜層であって
、胃で薬物が放出されることを抑制する役目をする。このような腸溶性被膜層は、ヒドロ
キシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、セルロースアセテートフタレート及
びこれらの誘導体からなる群より選択された一種以上を含むことができる。
【0050】
前記水溶性被膜層は、前記経口用固形製剤組成物を含むコアと前記腸溶性被膜層の間に
存在するコーティング層であって、前記腸溶性被膜層が効果的で且つ安定的に被膜される
ようにし、腸溶性被膜層をコーティングするときプロトンポンプ阻害剤のpHに対する影
響を最小化する役目をする。このような水溶性被膜層は、セルロースエーテル、ポリビニ
ルピロリドン及びポリビニルアルコールからなる群より選択された一種以上を含むことが
できる。このとき、前記セルロースエーテルは、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロ
キシアルキルアルキルセルロースからなる群より選択された一種以上を含むことができ、
好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒ
ドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース
、ヒドロキシペンチルセルロース及びヒドロキシプロピルブチルセルロースからなる群よ
り選択された一種以上を含むことができる。
【0051】
また、本発明は、前記経口用固形製剤の製造方法を提供し、前記製造方法は、(1)プ
ロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩を含む混合粉末を製造する段階;(
2)塩基性添加剤を含む結合液を製造する段階;(3)前記混合粉末と前記結合液を連合
した後に乾燥する段階;及び(4)前記(3)段階で得た乾燥物を製粒して顆粒物を製造
する段階を含む。
【0052】
以下、図1を参照して本発明の一実施例による経口用固形製剤の製造方法に対して説明
すると、下記の通りである。
【0053】
(1)混合粉末製造段階
この段階は、プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩を含む混合粉末を
製造する段階である。このとき、前記混合粉末は、希釈剤及び水溶性高分子からなる群よ
り選択された一種以上をさらに含むことができる。そして、本発明で用いられるプロトン
ポンプ阻害剤、希釈剤及び水溶性高分子の種類は上述した通りである。
【0054】
この段階では、前記混合粉末の製造過程中に前記プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学
的に許容可能な塩と追加的な添加剤(例えば、希釈剤及び/又は水溶性高分子)をふるい
にかける過程が含まれ得る。前記ふるいにかける過程を通じて均一な混合状態及び所望す
る粒子サイズを有する混合粉末を提供することができるので好ましい。
【0055】
(2)結合液製造段階
この段階は、塩基性添加剤を含む結合液を製造する段階である。前記塩基性添加剤の含
量は、前記プロトンポンプ阻害剤又はそれの薬学的に許容可能な塩100重量部を基準で
2~13重量部であり、前記塩基性添加剤の種類は上述した通りである。
【0056】
本発明による経口用固形製剤は、湿式顆粒法によって製造されるもので、通常の湿式顆
粒法によると、プロトンポンプ阻害剤のような活性成分と添加剤の混合物の結合液を連合
した後に乾燥するなどの過程を経るようになる。このような従来の湿式顆粒法では、塩基
性添加剤が前記混合物に含まれた状態で結合液と連合される過程を経たが、この場合、プ
ロトンポンプ阻害剤より多い量の塩基性添加剤が添加されると所望する安定性を有する固
形製剤が収得され得る。しかし、上記のように過量の塩基性添加剤が含まれる場合、最終
的に服用される錠剤のサイズが大きくなって服用便宜性が落ちる問題があった。このよう
な問題を解決するために鋭意研究を繰り返えした結果、本発明者らは、塩基性添加剤を含
む結合液を製造した後に前記(1)段階によって製造された混合粉末と前記結合液を連合
して乾燥する過程を通じて顆粒物を製造する場合、少量の塩基性添加剤のみでも湿式顆粒
法に適用できる結合液を製造することができ、これを通じて安定性に優れた経口用固形製
剤を製造することができることを確認し、本発明を完成した。
【0057】
前記結合液を製造するための溶媒は、水;及び水と混和性である一種以上の有機溶媒;
を含むことができる。例えば、前記有機溶媒は、エタノール、イソプロパノール及びアセ
トンから選択され得、好ましくは、60℃以下の沸点を有するアセトンが用いられ得る。
これは、デクスランソプラゾールのようなプロトンポンプ阻害剤が温度に敏感な反応を示
すため、例えば、デクスランソプラゾールを含む顆粒物を高温で乾燥するとき変色の恐れ
があるので、沸点が低いと共に医薬品製造に用いられ得る有機溶媒が好ましく用いられ得
る。しかし、本発明で用いられる塩基性添加剤は、前記有機溶媒にとけないので、下記の
ような段階を通じて結合液が製造され得る。
【0058】
具体的に、前記結合液の製造段階は、(a)水に前記塩基性添加剤をとかす段階、及び
(b)前記(a)段階で得られる溶液に前記有機溶媒を投入して混和する段階を含むこと
ができる。そして、前記(b)段階によって得られた混和液に腸溶性基剤を投入して分散
させる段階をさらに含むことができる。このとき、用いられる腸溶性基剤の種類は上述し
た通りである。
【0059】
(3)連合及び乾燥段階
この段階は、前記(1)段階で得た混合粉末と前記(2)段階で得た結合液を連合した
後に乾燥する段階である。ここで、「連合」とは、前記結合液と混合粉末を混合して湿式
顆粒を作る過程を意味する。
【0060】
前記混合粉末と結合液の連合によって形成された湿式顆粒は、篩過段階を経て乾燥され
得る。ここで、「篩過段階」とは、前記湿式顆粒を篩(Sieve)にかけて一定サイズ
以下の粒子に選別する過程を示す。
【0061】
前記乾燥する過程は、フロントポンプ阻害剤の安定性を考慮して20~60℃の温度範
囲で行われ得、好ましくは、約50℃を超過しない温度、より好ましくは、約40℃を超
過しない温度、さらに好ましくは、20℃~40℃の温度で空気乾燥、流動層乾燥、オー
ブン乾燥又はマイクロウエーブ乾燥を通じて行われ得る。
【0062】
(4)顆粒物製造段階
この段階は、前記(3)段階で得た乾燥物を製粒して顆粒物を製造する段階である。前
記製粒は、顆粒物のサイズを一定にするための過程であって、通常的に用いられる製粒機
が制限なしに用いられ得る。好ましくは、製粒された顆粒物の粒子サイズは、30メッシ
ュ(mesh)以下である場合、追後打錠過程を経て摩損度が低い経口用錠剤を提供する
ことができるので好ましい。
【0063】
本発明による経口用固形製剤の製造方法は、前記(4)段階によって得られた顆粒物に
マンニトール、崩壊剤、希釈剤及び滑沢剤からなる群より選択された一種以上を混合して
打錠して錠剤を製造する段階をさらに含むことができる。前記打錠過程を経た錠剤の硬度
は、10~25kpであってもよく、このように打錠された経口用錠剤は、0.5%以下
の摩損度を示すことができる。
【0064】
また、本発明による経口用固形製剤の製造方法は、上記のように打錠された錠剤を水溶
性被膜層でコーティングする段階;及び前記水溶性被膜層の表面を腸溶性被膜層でコーテ
ィングする段階;をさらに含むことができる。これによって、2重コーティングされた経
口用錠剤が製造されるので、錠剤の耐酸性が確保され、患者の服用順応性が高くなり得る
【0065】
以下、実施例により本発明に関してより詳しく説明するが、本発明がこのような実施例
によって限定されるものではない。
【0066】
<実施例1>
デクスランソプラゾール100重量部、希釈剤108.3重量部及び水溶性高分子16
6.7重量部を混合して混合粉末を製造した。
【0067】
その後、塩基性添加剤である水酸化ナトリウム(NaOH)5.8重量部を精製水58
.3重量部にとかし、ここにアセトン50重量部を投入して混和させた溶液に腸溶性基剤
25重量部を分散させて結合液を製造した。
【0068】
その後、前記混合粉末に前記結合液を投入して連合させた後、篩過過程を経て55℃で
2時間の間乾燥した。このとき、前記篩過過程で14メッシュの篩を用いて湿式粉末を選
別した。
【0069】
その後、前記乾燥過程を通じて得られた乾燥物を製粒して顆粒物を製造した。このとき
、前記製粒過程を通じて粒子サイズが30メッシュ以下である顆粒物を選別した。
【0070】
<実施例2、実施例3及び比較例1~比較例3>
前記デクスランソプラゾール、希釈剤、水溶性高分子、塩基性添加剤、腸溶性基剤、精
製水及びアセトンの含量を下記の表1に記載したように調節したこと以外は、実施例1と
同一の方法で顆粒物を製造した。ただし、下記の表1に記載した各成分の含量単位は重量
部である。
【0071】
【表1】
【0072】
<評価方法>
1.柔軟物質(%)
実施例1~3及び比較例1~3によって製造された顆粒物を対象として製剤の安定性試
験を行った。具体的に、デクスランソプラゾールの代表的な分解産物である柔軟物質B(
Imp.B)、柔軟物質C(Imp.C)及びDex N-OX sulphoxide
の含量、そして、総柔軟物質の含量を液体クロマトグラフ(UPLC)を用いて測定し、
その結果を下記の表2に示した。ここで、前記Dex N-OX sulphoxide
は、デクスランソプラゾールの柔軟物質である2-[3-methyl-1-oxy-4
-(2,2,2-trifluoro-ethoxy)-pyridin-2-ylme
thanesulfinyl]-1H-benzoimidazoleである。
【0073】
前記柔軟物質に対するHPLC分析条件は下記の通りである。
-コラム:X-Bridge Shield RP18 250mm X 4.6mm、
5μm
-注入量:20μl
-検出機:紫外部吸光光度計(波長285nm)
-コラム温度:35℃
-移動相A:Ammonium Acetate0.02M、移動相B:100%Ace
tonitrile
開始:移動相A:移動相B=80:20
25分:移動相A:移動相B=25:75
35分:移動相A:移動相B=25:75
-Diluent:Methanol/Sodium hydroxide0.01M(
25:75)
【0074】
2.溶出試験
実施例1によって製造された顆粒物の溶出率を下記のような条件で評価し、その結果を
図3に示した。
-溶出方法:大韓薬典の溶出第2法(パドル法)
-溶出機の種類:製造社-ERWEKA GmbH、機種-DT 1420
-溶出液の種類:pH1.2(acid stage)、pH7.2(buffer s
tage)
-溶出液の量:900mL
-溶出液の温度:37℃
-パドル速度:100rpm
【0075】
このとき、前記溶出試験は、pH1.2の酸溶液で開始した後、120分後に5mM
ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)が含有された
pH7.2溶液に変更して総210分間テストを進行した。
【0076】
【表2】
【0077】
前記表1を参照すると、塩基性添加剤(NaOH)の含量がデクスランソプラゾール1
00重量部を基準で15重量部である比較例2によって製造された顆粒物の場合、塩基性
添加剤(NaOH)の含量が2~13範囲に含まれる実施例1~実施例3によって製造さ
れた顆粒物と類似なレベルの柔軟物質生成率を示した。しかし、実施例1~実施例3及び
比較例1~比較例3によって製造された顆粒物の写真を示している図2を参照すると、比
較例2によって製造された顆粒物の場合、実施例1~実施例3によって製造された顆粒物
に比べて黄色に変色されたことが分かった。これは、結合液に含まれた水分の影響により
デクスランソプラゾールが黄色に変色されたことで、比較例2によって製造された顆粒物
の場合、水分安定性が落ちることを確認することができる。また、実施例1~実施例3に
よって製造された顆粒物の場合、塩基性添加剤を前記範囲の下限値未満で含む比較例1及
び比較例3によって製造された顆粒物に比べて柔軟物質生成率が顕著に減少されたことを
確認することができた。一方、図2に示された比較例3の顆粒物は、赤い系統の色を示す
が、これは柔軟物質が過量で含まれる場合に現われる色であって、塩基性添加剤を含まな
い結合液を用いて製造された顆粒物の場合、柔軟物質生成率が非常に高くなることを外観
観察だけでも確認することができる。
【0078】
また、図3には、実施例1によって製造された顆粒物の溶出試験結果を示すグラフが図
示されている。前記図3を参照すると、実施例1によって製造された顆粒物の場合、酸状
態(Acid Stage、pH1.2)では溶出が抑制され、緩衝状態(pH7.2)
で溶出率が急激に上がることを確認することができる。これから、本発明によって製造さ
れた経口用固形製剤の場合、デクスランソプラゾールの溶出が胃では抑制され、腸では促
進されて、体内伝達が効果的に行われることが分かった。
【0079】
以上、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するものではなく説明す
るためのものであって、本発明の権利範囲は、下記の特許請求の範囲によって解釈すべき
であり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるも
のと解釈すべきである。
図1
図2
図3