(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240502BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20240502BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20240502BHJP
F24F 11/46 20180101ALI20240502BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240502BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/003
F24F7/007 B
F24F11/46
F24F11/74
(21)【出願番号】P 2022183115
(22)【出願日】2022-11-16
(62)【分割の表示】P 2021562255の分割
【原出願日】2019-12-04
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関澤 充
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和仁
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-096332(JP,A)
【文献】特開平06-307108(JP,A)
【文献】特開2002-005485(JP,A)
【文献】特開2009-058191(JP,A)
【文献】特開2013-240358(JP,A)
【文献】特開2017-048941(JP,A)
【文献】特開平11-325530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/003
F24F 7/007
F24F 11/46
F24F 11/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルームの天井裏の空間を含むチャンバから前記クリーンルームへの給気を行う第1ファンを有する第1ユニットと、
前記クリーンルームの空気の前記チャンバを介した還気を行う第2ファンを有する第2ユニットと、を備え、
複数の前記クリーンルームのそれぞれの天井裏の前記空間が、一つの共通の空間として前記チャンバに含まれており、
複数の前記クリーンルームには、前記第2ユニットによってクリーンルーム内の空気をダクトシャフトを介して前記チャンバに戻す第1クリーンルームと、クリーンルーム内の空気をダクトシャフトを介さずに前記クリーンルーム外に排気する第2クリーンルームと、が含まれており、
前記第1クリーンルームは前記第2クリーンルームよりも清浄度が高
く、当該第2クリーンルームから前記チャンバへの還気流路が設けられていないこと
を特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記第2クリーンルームには、当該第2クリーンルームからの排気を行う第3ファンを有する第3ユニットが設けられること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第1クリーンルームは、前記第1ファンの吸込側を介して、前記チャンバに連通するとともに、前記第2ファンの吹出側を介して、前記チャンバに連通していること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第1ユニットは、前記第1ファンから前記クリーンルームに吹き出される空気から塵埃を除去する第1フィルタを備え、
前記第2ユニットは、前記クリーンルームから前記第2ファンに吸い込まれる空気から塵埃を除去する第2フィルタを備えること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項5】
ドアが設けられた壁で仕切られる3つ以上の前記クリーンルームが設けられ、
3つ以上の前記クリーンルームのうち、自身に隣り合う複数のクリーンルームのいずれの設定圧力も、自身の設定圧力よりも低い所定のクリーンルームが存在していること
を特徴とする請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
ドアが設けられた壁で仕切られる3つ以上の前記クリーンルームが設けられ、
3つ以上の前記クリーンルームのうち、自身に隣り合う複数のクリーンルームのいずれの設定圧力も、自身の設定圧力よりも高い所定のクリーンルームが存在していること
を特徴とする請求項4に記載の空調システム。
【請求項7】
第2クリーンルームと、前記第2クリーンルームよりも清浄度が高い第1クリーンルームと、
前記第1クリーンルームおよび前記第2クリーンルームの天井裏の空間を含むチャンバから、前記第1クリーンルームと前記第2クリーンルームのそれぞれへの給気を行う、第1ファンを有する複数の第1ユニットと、
前記第1クリーンルームの空気の前記チャンバを介した還気を行う、第2ファンを有する第2ユニットと、を備え、
前記第1クリーンルームと前記第2クリーンルームとの天井裏の前記空間は、一つの共通の空間として前記チャンバに含まれており、
前記第1クリーンルームにおいて、前記第2ユニットによって前記第1クリーンルーム内の空気はダクトシャフトを介して前記チャンバに戻され、
前記第2クリーンルームにおいて、前記第2クリーンルーム内の空気はダクトシャフトを介さずに前記第2クリーンルーム外に排気され、
前記第2クリーンルームから前記チャンバへの還気流路が設けられていない、空調システム。
【請求項8】
前記第1クリーンルームの側壁に埋設されている前記第2ファンを介して、前記第1クリーンルームから前記ダクトシャフトに空気が直接的に導かれること
を特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療や医薬品の製造の他、半導体や精密機械の製造等において、空気の清浄度の高いクリーンルームが用いられることが多い。このようなクリーンルームの室圧の調整に関して、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「天井埋め込み形空調機13から、天井内チャンバー12a~eへ通ずるダクトに、風量調整ダンパ20aを設けることによって、天井内チャンバー12a~eへの所望の給気量の分配を実現する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、風量調整ダンパによってクリーンルームの室圧が調整される一方、給気側・還気側の各ファンの風量は一定である。このような構成において、クリーンルームの室圧を所定の目標値に維持するためにダンパの開度を変化させると、ダクトにおける空気の圧力損失等に起因して、室圧の応答遅れが生じやすくなる。
【0005】
さらに、前記した応答遅れの他、ダンパの開度-風量特性の非線形性に起因して、クリーンルームの室圧調整時にオーバーシュートが生じやすいという問題もある。このように特許文献1に記載の技術は、室圧を高精度に維持するという点で改善の余地がある。また、クリーンルームの空調を行う空調システムの簡素化も求められている。
【0006】
そこで、本発明は、簡素な構成でクリーンルームの室圧を高精度に維持する空調システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するために、本発明に係る空調システムは、クリーンルームの天井裏の空間を含むチャンバから前記クリーンルームへの給気を行う第1ファンを有する第1ユニットと、前記クリーンルームの空気の前記チャンバを介した還気を行う第2ファンを有する第2ユニットと、を備え、複数の前記クリーンルームのそれぞれの天井裏の前記空間が、一つの共通の空間として前記チャンバに含まれており、複数の前記クリーンルームには、前記第2ユニットによってクリーンルーム内の空気をダクトシャフトを介して前記チャンバに戻す第1クリーンルームと、クリーンルーム内の空気をダクトシャフトを介さずに前記クリーンルーム外に排気する第2クリーンルームと、が含まれており、前記第1クリーンルームは前記第2クリーンルームよりも清浄度が高く、当該第2クリーンルームから前記チャンバへの還気流路が設けられていないことを特徴とする。なお、その他については実施形態の中で説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な構成でクリーンルームの室圧を高精度に維持する空調システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る空調システムの各部屋の間取りを示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る空調システムが備える複数のファンフィルタユニットの配置等を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る空調システムが備えるファンフィルタユニットの制御に関する構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る空調システムの還気ファンの回転速度と風量との関係を示す特性図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る空調システムが備える複数のファンフィルタユニットの配置等を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪実施形態≫
図1は、実施形態に係る空調システムSの各部屋の間取りを示す説明図である。
なお、
図1では、所定のドア(例えば、ドアDm)が開かれた場合に空気が流れる向きを白抜きの破線矢印で示している。本実施形態では、主に、各部屋の室圧の調整について説明するが、室圧の他に空気の温度や湿度を調整する場合も「空調」に含まれるものとする。また、室圧のみの調整も「空調」に含まれるものとする。
【0011】
空調システムSは、前処理室R3(クリーンルーム)や調製室R7(クリーンルーム)といった複数の部屋の室圧等を調整するシステムであり、例えば、再生医療施設に設けられる。このような空調システムSでは、空気の清浄度の異なる部屋が複数設けられることが多い。そして、清浄度の低い部屋から清浄度の高い部屋への空気の漏洩を抑制するために、隣り合う部屋の室圧に差を設けるようにしている。
【0012】
その一例を挙げると、
図1に示す前処理室R3は、1次更衣室R2よりも空気の清浄度が高く、また、その室圧も高い。したがって、作業員が1次更衣室R2から前処理室R3に入る際にドアDeを開くと、
図1の破線矢印で示すように、高圧側の前処理室R3から低圧側の1次更衣室R2へと空気が流れ込む一方、逆向きの流れが生じることはほとんどない。これによって、1次更衣室R2から前処理室R3への塵埃の侵入が抑制され、前処理室R3の清浄度が所定に維持される。
【0013】
しかしながら、空気の移動に伴い、1次更衣室R2の室圧が一時的に高くなる一方、前処理室R3の室圧は一時的に低くなる。ドアDeが開閉されるたびに、このような室圧の変動が生じる。そこで、本実施形態では、後記する各機器の制御によって、各部屋の室圧の変動を抑制するようにしている。
【0014】
なお、
図1において、隣り合う2つの部屋の一方から他方に向かう白抜きの破線矢印を記載しているものは、前記した一方の部屋の方が、他方よりも室圧が高いものとする。また、
図1で符号を付した複数の部屋やドアのうち、適宜に説明を省略するものがあるものとする。例えば、複数のドアDa~Dz,Dα,Dβ,Dγ,Dδのうち、その一部については説明を省略する。
【0015】
図1に示すように、着脱室R1、1次更衣室R2、前処理室R3、脱衣室R10、及び前室R11が、この順で隣り合うように設けられている。作業員が、前処理室R3で所定の作業を行う場合には、前記した順で各部屋を通り抜ける。前処理室R3には、所定の試料を扱うためのバイオハザードキャビネットBSC1が設けられている。バイオハザードキャビネットBSC1で用いられる試料は、前室R4及びパスボックスPB1を順次に介して、搬入される。一方、バイオハザードキャビネットBSC1で作成された製品(細胞加工品等)は、パスボックスPB2及び前室R5を順次に介して、搬出される。なお、パスボックスPB1,PB2は、コンタミネーション(試料汚染)を抑制するための空間である。
【0016】
また、着脱室R1、1次更衣室R2、2次更衣室R6、エアロックAL1、調製室R7、エアロックAL2、脱衣室R10、及び前室R11が、この順で隣り合うように設けられている。作業員が、調製室R7で所定の作業を行う場合には、前記した順で各部屋を通り抜ける。エアロックAL1,AL2は、清浄度が高い調製室R7への塵埃の侵入を抑制するための空間であり、他の部屋に比べて室圧が高くなっている。
【0017】
また、調製室R7と前処理室R3との間も、パスボックスPB5を介して、細胞加工品等の出し入れが可能になっている。調製室R7は、その清浄度が前処理室R3よりも高く、また、室圧も前処理室R3よりも高くなっている。これによって、ドアDxやドアDyが開けられた場合のコンタミネーションを抑制できる。
【0018】
図1に示すように、調製室R7には、所定の試料を扱うためのバイオハザードキャビネットBSC2,BSC3が設けられている。バイオハザードキャビネットBSC2,BSC3で作成された製品(細胞加工品等)は、パスボックスPB3及び前室R8を順次に介して、搬出される。一方、廃棄物等は、パスボックスPB4及び前室R9を順次に介して、搬出される。
【0019】
なお、
図1に示す着脱室R1、1次更衣室R2、前処理室R3、前室R4,R5、2次更衣室R6、調製室R7、前室R8,R9、脱衣室R10、前室R11、及びエアロックAL1,AL2のそれぞれが、「クリーンルーム」に相当する。また、
図1に示すファンフィルタユニット3,7,9,11,13,18の他、エアハンドリングユニット50については後記する。
【0020】
図2は、複数のファンフィルタユニットの配置等を示す説明図である。
なお、
図2では、空気の流れを実線矢印で示している。また、
図2には、
図1(間取り図)の各部屋のうちの一部を図示し、残りの部屋については
図5に示している。これらの
図2、
図5は、例えば、調製室R7からダクトシャフトDS2を介して、チャンバCに空気が導かれるといったように、空気の流れに着目した模式的な断面図になっている。
【0021】
また、
図2に示すダクトシャフトDS1は、
図1には図示していないが、調製室R7からチャンバCに空気を導く空間である。また、ダクトシャフトDS2~DS5も、
図1には図示していないが、所定の部屋からチャンバCに空気を導く空間である。これらのダクトシャフトDS1~DS5は、隣り合う部屋の間の隙間等に設けられた風導管(図示せず)で形成されている。
【0022】
図2に示すように、空調システムSは、エアハンドリングユニット50と、ファンフィルタユニット1~11と、圧力センサ31~36と、を備えている。
エアハンドリングユニット50は、空気の温度等を調整する装置である。
図2に示すように、エアハンドリングユニット50は、フィルタ51と、冷却コイル52と、ファン53と、インバータ54と、を備えている。
【0023】
フィルタ51は、調製室R7からダクトシャフトDS1を介して吸い込まれる空気から塵埃を除去するものである。冷却コイル52は、フィルタ51を通過した空気と、伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。ファン53は、冷却コイル52で熱交換した空気を、ダクトD1を介して、チャンバCに圧送する送風機である。インバータ54は、ファン53の駆動源であるモータ(図示せず)を制御する。
【0024】
図2に示すように、ファン53の吹出側と、チャンバCと、はダクトD1を介して接続されている。なお、ダクトD1は、エアハンドリングユニット50で温度等が調整された空気をチャンバCに導く風導管である。このダクトD1には、ダンパB1が設けられている。そして、例えば、空調システムSの試運転時にダンパB1が所定開度に設定され、その後の空調運転中は、前記した所定開度で維持されるようになっている。
【0025】
また、
図2の例では、前記したダクトD1の他に、別のダクトD2を介して、温度等が調整された空気がチャンバCに導かれるようになっている。なお、温度等が調整された空気をダクトD2を介して供給する別のエアハンドリングユニットについては、周知の構成であるから、
図2では図示を省略している。このようにして、ダクトD1,D2を介して供給された空気は、チャンバCにおいて合流する。なお、一方のダクトD1を通流する空気の温度と、他方のダクトD2を通流する空気の温度と、が異なっていてもよいし、また、略等しくてもよい。
【0026】
図2に示すチャンバCは、ダクトD1,D2の下流端と、調製室R7等の各部屋と、の間に設けられる空間である。具体的に説明すると、チャンバCは、調製室R7等の各部屋の天井Gと、上板Taと、側板Tb,Tcと、によって形成されている。
図2の例では、天井Gよりも高い位置に上板Taが設けられ、上板Taの板面が天井Gの面に対して略平行になっている。また、天井Gと上板Taの横方向一方側(紙面左側)の縁を接続するように、側板Tbが設けられている。同様に、天井Gと上板Taの横方向他方側(紙面右側)の縁を接続するように、側板Tcが設けられている。なお、天井Gと上板Taとの間の縦方向の距離は、チャンバCを介した空気の通流に支障が生じない程度に設計段階で適宜に設定されている。
【0027】
ファンフィルタユニット1(第1ユニット)は、調製室R7(クリーンルーム)の天井裏の空間を含むチャンバCから調製室R7への給気を行う機器であり、天井Gに埋設されている。ファンフィルタユニット1は、
図2に示す給気ファン1a(第1ファン)及びフィルタ1b(第1フィルタ)の他に、制御装置(図示せず)を備えている。
【0028】
給気ファン1aは、チャンバCから調製室R7への給気を行う送風機であり、図示はしないが、ファン本体と、ファンモータと、を備えている。給気ファン1aのファン本体として、例えば、プロペラファンといった軸流ファンが用いられる。また、給気ファン1aのファンモータとして、例えば、直流モータが用いられる。前記した直流モータは、ブラシレス直流モータであってもよいし、また、ブラシ付きの直流モータであってもよい。
【0029】
フィルタ1bは、給気ファン1aから調製室R7に吹き出される空気から塵埃を除去するフィルタであり、給気ファン1aの吹出側に設けられている。このようなフィルタ1bとして、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)やULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)が用いられる。そして、給気ファン1a及びフィルタ1bを収容する筐体(図示せず)が、調製室R7の天井Gの開口部(
図2では符号を図示せず)に嵌め込まれて、金具等で固定されている。なお、調製室R7の天井Gに設けられる別のファンフィルタユニット2も、前記したファンフィルタユニット1と同様の構成になっている。
【0030】
ファンフィルタユニット3は、調製室R7の空気のチャンバCを介した還気、及び、調製室R7からの排気を行う機器である。なお、調製室R7の「還気」とは、調製室R7の空気の少なくとも一部を、この調製室R7に戻すことを意味している。
【0031】
また、
図2では簡略化して、調製室R7の床Fの紙面下側にファンフィルタユニット3を図示しているが、
図1に示すように、調製室R7にドアDpを介して隣り合う空間R12の壁の外側にファンフィルタユニット3が設けられている。
図2に示すように、ファンフィルタユニット3は、還気ファン3
aと、フィルタ3
bと、を備えるとともに、制御装置3c(
図2では不図示、
図3参照)を備えている。
【0032】
図3は、ファンフィルタユニット3の制御に関する構成図である。
図3に示す還気ファン3aは、調製室R7の空気のチャンバC(
図2参照)を介した還気、及び、調製室R7からの排気を行う送風機であり、ファン本体a1と、ファンモータa2と、を備えている。このような還気ファン3aのファン本体a1として、例えば、プロペラファンといった軸流ファンが用いられる。また、還気ファン3aのファンモータa2として、例えば、直流モータが用いられる。
【0033】
制御装置3cは、圧力センサ31の検出値に基づいて、ファンモータa2を制御する装置であり、例えば、ファンモータa2の付近に配置される。この制御装置3cは、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。
【0034】
図3に示すように、制御装置3cは、記憶部c1と、制御部c2と、を備えている。記憶部c1には、所定のプログラムが予め記憶されている。制御部c2は、圧力センサ31の検出値に基づいて、還気ファン3aのファンモータa2を所定に制御する。
なお、制御装置3cに接続されるPLC(Programmable Logic Controller:図示せず)を設けるようにしてもよい。そして、他の機器やセンサ類からPLC(図示せず)に入力される値に基づき、制御装置3cが、還気ファン3aの回転速度の上限値・下限値を所定に変更するようにしてもよい。
【0035】
フィルタ3bは、調製室R7から還気ファン3aに吸い込まれる空気(
図2も参照)から塵埃を除去するものであり、還気ファン3aの吸込側に設けられる。このようなフィルタ3bとして、例えば、HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)やULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)が用いられる。なお、フィルタ3bは、調製室R7から空気が流出する際の抵抗体(空気抵抗)としても機能するため、調製室R7の室圧を比較的高い値で維持しやすいという利点もある。
そして、還気ファン3a及びフィルタ3bを収容する筐体(図示せず)が、前記した空間R12(
図1参照)を形成している壁の開口部(
図1では符号を図示せず)に嵌め込まれて、金具等で固定されている。
【0036】
図3に示す圧力センサ31は、調製室R7(
図2参照)の圧力を検出するセンサであり、調製室R7に設けられている。この圧力センサ31の検出値は、制御装置3cに出力される。なお、調製室R7の室圧を検出する際の基準圧として、空調システムSの各部屋の外部に設けられる所定の一般室(図示せず)の室圧を用いるようにしてもよい。
【0037】
本実施形態では、一例として、
図2に示す給気ファン1a,2aの回転速度が所定値(固定値)である一方、還気ファン3aの回転速度が、圧力センサ31の検出値に基づいて、適宜に変更される場合について説明する。
【0038】
図2に示す給気ファン1a,2a及び還気ファン3aは、空調運転中、常時駆動されることが多い。給気ファン1a,2aは、調製室R7の空気の換気が単位時間当たりに所定回数行われるように、その風量(つまり、回転速度)が予め設定されている。なお、単位時間当たりの換気回数が多いほど、調製室R7の清浄度が高くなる。
【0039】
還気ファン3aは、給気ファン1a,2aによって取り込まれた空気が調製室R7から出ていくように、また、調製室R7の室圧が所定の設定圧力(室圧の目標値)で維持されるように、その回転速度が適宜に調整される。
【0040】
図2に示す隙間k1,k2は、調製室R7から空気が出ていく際の通風路である。一方の隙間k1は、例えば、調製室R7と空間R13(
図1参照)とを仕切るドアDq(
図1参照)の下端部のパッキン(図示せず)と、調製室R7の床面と、間の隙間である。なお、
図1に示す空間R13は、ダクトシャフトDS1(
図2参照)を介して、エアハンドリングユニット50の吸込側に連通している。また、隙間k1の大きさを適宜に調整できるように、ドアDqのパッキンの下端の高さ位置が調整可能になっている。
【0041】
図2に示す他方の隙間k2は、例えば、調製室R7と空間R12(
図1参照)とを仕切るドアDpの下端部のパッキン(図示せず)と、調製室R7の床面と、間の隙間である。なお、
図1に示す空間R12は、ダクトシャフトDS2(
図2参照)を介して、チャンバC(
図2参照)に連通するとともに、還気ファン3aの吸込側にも連通している。そして、隙間k2の大きさを調整できるように、ドアDpのパッキンの高さ位置が調整可能になっている。隙間k1,k2の大きさ(開口率)は、調製室R7の容積の他、換気回数や室圧等の目標値に基づいて、設計時や試運転時に適宜に調整される。
【0042】
また、
図2の例では、複数の孔を有する薄板h2が、ダクトシャフトDS2の上端に設けられている。そして、還気ファン3aの駆動中、調製室R7から隙間k2を介してダクトシャフトDS2に導かれた空気の一部が、薄板h2の複数の孔を介して、チャンバCに戻される(つまり、還気される)ようになっている。このように、調製室R7の空気をチャンバCを介して還気することで、清浄度の高い空気を各室の空調に再利用するようにしている。
【0043】
一方、ダクトシャフトDS2の下部に導かれた空気の一部は、還気ファン3aに吸い込まれて、外部に排気される。すなわち、ファンフィルタユニット3は、調製室R7の壁W2(又は床F)に設けられた所定の隙間k2を介して空気を吸い込み、吸い込んだ空気の一部をダクトシャフトDS2を介してチャンバCに戻す一方、残りの空気を排気するように配置されている。
【0044】
このように、還気ファン3aが調製室R7の還気及び排気の両方を行う場合において、調製室R7は、給気ファン1a,2aの吸込側を介して、チャンバCに連通するとともに、還気ファン3aの吸込側を介して、チャンバCに連通している。そして、次に説明するように、還気ファン3aの制御によって調製室R7の室圧を調整するようにしている。
【0045】
例えば、
図1に示すドアDoを作業員が開けた場合、エアロックAL1は調製室R7よりも室圧が高いため、エアロックAL1から調製室R7に空気が流入し、調製室R7の室圧が若干上昇する。このような室圧の上昇に伴い、圧力センサ31の検出値が調製室R7の室圧の目標値を超えた場合、制御部c2(
図3参照)は、ファンモータa2(
図3参照)の回転速度を所定に上昇させる。なお、ファンモータa2の回転速度の上昇幅(及び低下幅)は、記憶部c1(
図3参照)に予め格納されたプログラムに基づいて、所定に算出される。
【0046】
図4は、還気ファンの回転速度と風量との関係を示す特性図である。
なお、
図4の横軸は、還気ファン3aの回転速度(つまり、ファンモータa2の回転速度)であり、縦軸は、還気ファン3aの風量である。
図4に示すように、還気ファン3aの回転速度が高いほど、その風量も大きくなる。また、還気ファン3aの回転速度と風量とは、線形の関係(比例関係)になっている。したがって、開度-風量特性が非線形の関係であるダンパ(図示せず)を用いて風量を調整する場合に比べて、還気ファン3aによって風量の微調整を行いやすいという利点がある。なお、還気ファン3aの他、給気ファン1a,2a等も
図4と同様の特性を有している。
【0047】
図4に示すように、還気ファン3aには、所定の仕様に基づき、その回転速度の下限値N1と、これに対応する風量の下限値Q1と、が予め設定されている。同様に、還気ファン3aの回転速度の上限値N2と、これに対応する風量の上限値Q2も予め設定されている。特に、還気ファン3aの風量の下限値Q1に着目すると、その具体的な数値例は、50[m
3/h]であり、従来のダンパ(図示せず)で風量調整を行う場合の風量の下限値(150[m
3/h]程度)の3分の1程度の大きさである。したがって、給気ファン1a,2a(
図2参照)や還気ファン3a(
図2参照)を低風量で駆動できるため、ダンパ(図示せず)で風量を調整する場合に比べて、空調システムSの消費電力量を大幅に削減できる。
【0048】
また、回転速度-風量特性が線形である還気ファン3aで風量を調整するため、その回転速度の上限値・下限値付近でも風量を微調整できる。これによって、給気ファン1a,2a(
図2参照)や還気ファン3a(
図2参照)を低風量で駆動しつつ、調製室R7の室圧を高精度で維持できる。
【0049】
例えば、
図1に示すドアDoを作業員が開けて、調製室R7の圧力センサ31の検出値が目標値を超えた場合、前記したように、制御部c2(
図3参照)は、ファンモータa2(
図3参照)の回転速度を所定に上昇させる。このように還気ファン3aの回転速度が上昇すると、調製室R7から隙間k2(
図2参照)を介してダクトシャフトDS2(
図2参照)に流れ出る空気の単位時間当たりの流量が大きくなる。一方、給気ファン2aは所定の回転速度(固定値)で駆動している。その結果、調製室R7において、一時的に上昇した室圧が所定の目標値に戻される。特に、
図4に示す下限値Q1付近でも、還気ファン3aの風量を微調整できるため、低風量でも調製室R7の室圧を高精度で維持できる。
【0050】
また、例えば、
図1に示すドアDxを作業員が開けた場合、パスボックスPB5は調製室R7よりも室圧が低いため、調製室R7からパスボックスPB5に空気が流出し、調製室R7の室圧が若干低下する。このような室圧の低下によって、圧力センサ31の検出値が、調製室R7の室圧の目標値を下回った場合、制御部c2(
図3参照)は、ファンモータa2(
図3参照)の回転速度を所定に低下させる。これによって、調製室R7において、一時的に低下した室圧が所定の目標値に戻される。このような制御によって、調製室R7の室圧の変動が抑制され、室圧が所定の目標値付近で維持される。
【0051】
なお、還気ファン3aの他、後記する還気ファン7a,9a,11aによるチャンバCへの還気によって、チャンバCの圧力が若干変動するものの、各室の室圧の維持に悪影響を与えるおそれは、ほとんどない。
【0052】
図2に示すように、前室R9の天井Gには、ファンフィルタユニット4が埋設されている。また、前室R9には、圧力センサ32が設けられている。そして、圧力センサ32の検出値に基づき、前室R9の室圧を所定の目標値に維持するように、給気ファン4aの回転速度が制御される。なお、給気ファン4aの構成や制御については、前記した還気ファン3aと同様であるから、説明を省略する。
【0053】
ちなみに、
図2の例では、前室R9からの空気の排気側には、排気ファン(図示せず)は特に設けられていない。また、
図2には、前室R9の床Fから紙面下側に抜けるように矢印を図示しているが、例えば、ドアDw(
図1参照)の下端のパッキン(図示せず)と、前室R9の床面と、の間の隙間を介して、前室R9の空気が排気されるようになっている。なお、他の前室R8についても同様である。
【0054】
図2に示すエアロックAL2の天井Gには、給気ファン6a(第1ファン)が埋設されている。一方、エアロックAL2の側壁には、還気ファン7a(第2ファン)が埋設されている。また、エアロックAL2には、室圧を検出する圧力センサ34が設けられている。そして、給気ファン6aが所定の回転速度(固定値)で駆動される一方、エアロックAL2の室圧を所定の目標値に維持するように、還気ファン7aの回転速度が制御(変化)されるようになっている。還気ファン7aから吹き出された空気は、ダクトシャフトDS3、及び薄板h3の複数の孔を順次に介して、チャンバCに戻される。
【0055】
このように、還気ファン7a(第2ファン)がエアロックAL2(クリーンルーム)の還気を行う場合において、エアロックAL2は、給気ファン6a(第1ファン)の吸込側を介して、チャンバCに連通するとともに、還気ファン7a(第2ファン)の吹出側を介して、チャンバCに連通している。
【0056】
なお、還気ファン7aから吹き出された空気がそのままチャンバCに戻される点が異っているものの、還気ファン7aの構成や制御は、調製室R7の空調に用いられる還気ファン3aと同様である。これによって、エアロックAL2の室圧を高精度に維持することができ、また、清浄度の比較的高い空気を各部屋の空調に再利用できる。
【0057】
その他、エアロックAL1や2次更衣室R6の室圧の制御についても、調製室R7の室圧の制御と同様である。したがって、これらについては、詳細な説明を省略する。次に、
図1に示す各室のうち、
図2には図示していない残りの各室の空調について説明する。
【0058】
図5は、複数のファンフィルタユニットの配置等を示す説明図である。
なお、
図5に示す天井Gは、
図2に示したものと同一である。また、
図5に示すチャンバCも、
図2に示したものと同一である。
ファンフィルタユニット12(第1ユニット)は、チャンバCから1次更衣室R2への給気を行う機器であり、天井Gに埋設されている。なお、ファンフィルタユニット12の構成は、調製室R7のファンフィルタユニット1等(
図2参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0059】
ファンフィルタユニット13(第
3ユニット)は、1次更衣室R2からの排気を行う機器である。このように、
図5の例では、ファンフィルタユニット13が還気には用いられていない点で、前記したファンフィルタユニット3,7,9,11(
図2参照)とは異なっている。また、
図5では簡略化して、1次更衣室R2の床Fの紙面下側にファンフィルタユニット13を図示しているが、
図1に示すように、1次更衣室R2と外部とを仕切る壁にファンフィルタユニット13が埋設されている。
【0060】
ファンフィルタユニット13は、
図5に示す排気ファン13a(第
3ファン)やフィルタ13
bの他に、制御装置(図示せず)を備えている。また、1次更衣室R2には、室圧を検出するための圧力センサ37が設けられている。そして、圧力センサ37の検出値に基づいて、1次更衣室R2の室圧を所定の目標値するように、制御装置(図示せず)が、排気ファン13aの回転速度を制御するようになっている。
【0061】
なお、前記した「排気」と「還気」とは、部屋から空気を逃がすという点で共通している。したがって、調製室R7(
図2参照)の還気ファン3aと同様の制御を、排気ファン13a(
図5参照)にも適用できる。また、
図5に示す脱衣室R10についても、同様の制御が行われる。
【0062】
なお、「クリーンルーム」の空気のチャンバCを介した還
気を行う「第2ファン」を有する「第2ユニット」には、ファンフィルタユニッ
ト7,9,1
1(図2参照)が含まれ
る。
【0063】
図5に示す着脱室R1、前室R4,R5,R11の空調については、前記した前室R9(
図2参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0064】
図5に示す前処理室R3の天井Gには、ファンフィルタユニット20~22が埋設されている。ファンフィルタユニット20,21の給気ファン20a,21aの吸込側は、チャンバCに連通している。一方、ファンフィルタユニット22の排気ファン22aの吹出側は、外部に開放されている。また、前処理室R3には、圧力センサ43が設けられている。そして、圧力センサ43の検出値に基づき、前処理室R3の室圧を所定の目標値に維持するように、排気ファン22aの回転速度が制御される。
【0065】
なお、
図5の例では、給気ファン20a,21aの駆動によって前処理室R3に供給された空気の一部は、排気ファン22aによって排出される。また、前記した空気の残りは、所定の隙間k3、ダクトシャフトDS6、及びダクトD3を順次に介して、エアハンドリングユニット(図示せず)の吸込側に導かれる。なお、ダクトD3は、チャンバCからエアハンドリングユニット(図示せず)に空気を導く風導管である。また、前記したエアハンドリングユニット(図示せず)は、温度等が調整された空気を、ダクトD3を介して供給する装置である。なお、ダクトD3に設けられているダンパB3の開度は、試運転時等に所定に設定された状態で維持される。
【0066】
<効果>
本実施形態によれば、例えば、給気ファン1a,2a(
図2参照)から空気を供給される調製室R7(
図2参照)の室圧が、還気ファン3aの制御によって所定に維持される。したがって、調製室R7に空気を導くダクト(図示せず)や、調製室R7から外部に空気を導くダクト(図示せず)を特に設ける必要がなく、空調システムSの構成を簡素化できる。また、チャンバCに所定のガス配管(図示せず)を設けたり、通信線や電力線を引き回したりすることが容易になる。
【0067】
また、チャンバCにダクト(図示せず)を設ける場合に比べて、空調システムSを設置する際の工期を短縮し、ひいては、設置に要するコストを削減できる。また、複数の施設が入っているビルのように、設置スペースに制約がある場合にも対応しやすくなる。
【0068】
また、これまでのように、ダクト(図示せず)に設けられたダンパ(図示せず)で室圧を調整する構成では、ダクトにおける空気の圧力損失の他、ダンパの開度-風量特性の非線形性等に起因して、クリーンルームの室圧の調整において応答遅れやオーバーシュートが生じやすかった。これに対して、本実施形態では、例えば、調製室R7(
図2参照)の室圧が還気ファン3aによって調整されるため、前記した圧力損失や応答遅れが生じることがほとんどない。また、還気ファン3a等の回転速度-風量特性は、線形であるため(
図4参照)、調製室R7の室圧を高精度に維持できる。なお、他の各部屋についても同様のことがいえる。
【0069】
また、これまでのように、ダンパ(図示せず)で室圧を調整する技術では、ダンパの開度の上限値・下限値付近で風量の微調整が困難であり、風量の可変範囲が狭いという問題があった。これに対して、本実施形態では、例えば、還気ファン3aで風量の下限値Q1(
図4参照)から上限値Q2(
図4参照)までの範囲が比較的広く、また、下限値Q1や上限値Q2付近でも風量の微調整が可能である。これによって、特に、下限値Q1付近の低風量での高精度な室圧制御が可能になるため、空調システムSの消費電力量を大幅に削減できる。
【0070】
また、給気ファン1a,2aや還気ファン3a等に直流モータを用いることで、電圧や電流に関する規定の異なる諸外国にも、その構成をほとんど変更することなく、トランス等を適宜に用いることで、空調システムSを適用できる。
【0071】
また、簡素な構成の上、それぞれのクリーンルーム(例えば、
図2の調製室R7)において、室圧を調整するための構成や制御が独立(完結)している。したがって、空調システムSを設計する際の自由度が高く、また、増設も容易である。このように、本実施形態によれば、簡素な構成でクリーンルーム(調製室R7等)の室圧を高精度に維持する空調システムSを提供し、社会貢献に寄与することができる。
【0072】
≪変形例≫
以上、本発明に係る空調システムSについて実施形態により説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、調製室R7(
図2参照)の室圧を還気ファン3aで調整する場合や、1次更衣室R2(
図5参照)の室圧を排気ファン13aで調整する場合等について説明したが、これに限らない。
すなわち、クリーンルームへの給気を行う「第1ファン」と、クリーンルームの還気及び排気のうち少なくとも一方を行う「第2ファン」と、が設けられる構成において、前記した「第1ファン」を制御し(回転速度を変化させ)、「第2ファン」の回転速度を一定にしてもよい。このような構成において、クリーンルームの室圧が目標値を超えた場合、「制御部」は、「第1ファン」の回転速度を所定に低下させる。一方、クリーンルームの室圧が目標値を下回った場合、「制御部」は、「第1ファン」の回転速度を所定に上昇させる。このような構成でも、クリーンルームの室圧を高精度に維持できる。
【0073】
また、「制御部」が、前記した「第1ファン」及び「第2ファン」の両方を制御するようにしてもよい。このような構成において、クリーンルームの室圧が目標値を超えた場合、「制御部」は、例えば、「第1ファン」の回転速度を低下(又は維持)させつつ、「第2ファン」の回転速度を上昇させる。一方、クリーンルームの室圧が目標値を下回った場合、「制御部」は、「第1ファン」の回転速度を上昇(又は維持)させつつ、「第2ファン」の回転速度を低下させる。このように、「制御部」が、「第1ファン」及び「第2ファン」のうち少なくとも一方の回転速度を制御するようにしてもよい。このような構成でも、クリーンルームの室圧を高精度に維持できる。
【0074】
また、ドアが設けられた壁で仕切られる3つ以上のクリーンルームが設けられ、3つ以上のクリーンルームのうち、自身に隣り合う複数のクリーンルームのいずれの設定圧力(室圧の目標値)も、自身の設定圧力よりも低い所定のクリーンルーム(例えば、
図1に示すエアロックAL1,AL2)が存在するようにしてもよい。前記したように、それぞれのクリーンルームの室圧が独立に制御されるため、このような部屋の配置も可能になる。このような配置において、例えば、エアロックAL2(
図2参照)の還気側のファンフィルタユニット7のフィルタ7bが、空気の通流における抵抗体としても機能するため、エアロックAL2の室圧を比較的高い値で維持しやすいという利点がある。
【0075】
また、ドアが設けられた壁で仕切られる3つ以上のクリーンルームが設けられ、3つ以上のクリーンルームのうち、自身に隣り合う複数のクリーンルームのいずれの設定圧力(室圧の目標値)も、自身の設定圧力よりも高い所定のクリーンルームが存在するようにしてもよい。前記したように、それぞれのクリーンルームの室圧が独立に制御されるため、このような部屋の配置も可能になる。
【0076】
また、「
所定のファン」(例えば、還気ファン3a:
図2参照)によって、還気及び排気の両方が行われるクリーンルーム(調製室R7:
図2参照)と、別の「第2ファン」(例えば、還気ファン7a:
図2参照)によって還気が行われるクリーンルーム(エアロックAL2:
図2参照)と、が混在するようにしてもよい。これによって、ダクトD3(
図5参照)を介した排気の他に、還気ファン3a,7a等による排気も行うことで、チャンバCの圧力変動が抑制され、ひいては、各室の室圧をさらに高精度で維持できる。また、各室の還気を行うことで、清浄度の高い空気を再利用できる。
【0077】
また、「
所定のファン」(例えば、還気ファン3a:
図2参照)によって、還気及び排気の両方が行われるクリーンルーム(調製室R7:
図2参照)と、別の「第
3ファン」(例えば、排気ファン13a:
図5参照)によって排気が行われるクリーンルーム(1次更衣室R2:
図5参照)と、が混在するようにしてもよい。これによって、チャンバCの圧力変動が抑制され、ひいては、各室の室圧をさらに高精度で維持できる。
さらに、このような構成において、還気及び排気の両方が行われるクリーンルーム(例えば、調製室R7:
図2参照)の単位時間当たりの換気回数が、排気のみが行われるクリーンルーム(例えば、1次更衣室R2:
図5参照)の換気回数よりも多いようにしてもよい。これによって、例えば、清浄度の高い調製室R7の空気の一部を各室の空調に再利用できる。
【0078】
また、「第2ファン」(例えば、還気ファン7a:
図2参照)によって還気が行われるクリーンルーム(エアロックAL2:
図2参照)と、別の「第
3ファン」(例えば、排気ファン13a:
図5参照)によって排気が行われるクリーンルーム(1次更衣室R2:
図5参照)と、が混在するようにしてもよい。これによって、チャンバCの圧力変動が抑制され、ひいては、各室の室圧をさらに高精度で維持できる。
【0079】
また、実施形態では、給気ファン1a,2aや還気ファン3aを含む各ファンとして、軸流ファンが用いられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、給気ファン1a,2aや還気ファン3aを含む各ファンとして、斜流ファンや横流ファンの他、遠心ファン等が用いられてもよい。
【0080】
また、実施形態では、給気ファン1a,2aや還気ファン3aを含む各ファンの駆動源が直流モータである場合について説明したが、これに限らない。すなわち、給気ファン1a,2aや還気ファン3aを含む各ファンの駆動源として、同期モータ等の交流モータが用いられてもよい。
【0081】
また、実施形態では、ファンフィルタユニット1が備えるフィルタ1bとして、HEPAやULPAが用いられる場合について説明したが、これに限らない。その他、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)を用いたフィルタ等、他の種類のフィルタを用いてもよい。
【0082】
また、実施形態では、例えば、調製室R7の空調に関して、給気ファン1a,2aの制御装置(図示せず)と、還気ファン3aの制御装置3c(
図3参照)と、別個に設けられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、給気ファン1a,2a及び還気ファン3aが1つの制御装置(図示せず)に接続された構成であってもよい。また、複数のクリーンルームの空調に用いられる各ファンを1つの制御装置(図示せず)で制御する構成であってもよい。
【0083】
また、実施形態では、試料が扱われる前処理室R3(
図1参照)や調製室R7(
図1参照)の室圧が、エアロックAL1,AL2(
図1参照)以外の各部屋の室圧よりも高い(つまり、陽圧である)場合について説明したが、これに限らない。すなわち、医療関係や実験動物施設といった生産プロセスの作業空間として、他の部屋よりも室圧の低い(つまり、陰圧の)クリーンルームを設ける場合にも、実施形態を適用できる。
【0084】
また、実施形態では、一例として、空調システムSが再生医療施設に用いられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、工業品の製造や食品産業、医薬品の製造等、他の様々な分野にも実施形態を適用できる。
【0085】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0086】
1,2,4,5,6,8,10,12,14,15,16,17,19,20,21 ファンフィルタユニット(第1ユニット)
7,9,11 ファンフィルタユニット(第2ユニット)
13,18,22 ファンフィルタユニット(第3ユニット)
1a,2a,4a,5a,6a,8a,10a,12a,14a,15a,16a,17a,19a,20a,21a 給気ファン(第1ファン)
1b,2b,4b,5b,6b,8b,10b,12b,14b,15b,16b,17b,19b,20b,21b フィルタ(第1フィルタ)
7a,9a,11a 還気ファン(第2ファン)
7b,9b,11b フィルタ(第2フィルタ)
13a,18a,22a 排気ファン(第3ファン)
13b,18b,22b フィルタ
31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43 圧力センサ
3c 制御装置
a1 ファン本体
a2 ファンモータ
c1 記憶部
c2 制御部
AL1,AL2 エアロック(クリーンルーム、第1クリーンルーム)
C チャンバ
Da,Db,Dc,Dd,De,Df,Dg,Dh,Di,Dj,Dk,Dm,Dn,Do,Dp,Dq,Dr,Ds,Dt,Du,Dv,Dw,Dx,Dy,Dz,Dα,Dβ,Dγ ドア
DS1,DS2,DS3,DS4,DS5,DS6 ダクトシャフト
F 床
G 天井
k2 隙間
R1 着脱室(クリーンルーム、第2クリーンルーム)
R2 1次更衣室(クリーンルーム、第2クリーンルーム)
R3 前処理室(クリーンルーム、第2クリーンルーム)
R4,R5,R8,R9,R11 前室(クリーンルーム、第2クリーンルーム)
R6 2次更衣室(クリーンルーム、第1クリーンルーム)
R7 調製室(クリーンルーム)
R10 脱衣室(クリーンルーム、第2クリーンルーム)
S 空調システム
W1 壁