(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】剛性構造を有する軽航空機を製造するための方法およびシステム、ならびに、この方法で製造された重積荷運搬軽航空機
(51)【国際特許分類】
B64F 5/10 20170101AFI20240502BHJP
B64B 1/06 20060101ALI20240502BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
B64F5/10
B64B1/06
B64C1/00 B
(21)【出願番号】P 2022503840
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 FR2020051296
(87)【国際公開番号】W WO2021014082
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-23
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520164518
【氏名又は名称】フライング・ホエールズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バートゥ,クレモン
(72)【発明者】
【氏名】クルスパン,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】グーラン,ジャン-マリ
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第01559807(US,A)
【文献】特開2001-315694(JP,A)
【文献】特開2003-268879(JP,A)
【文献】米国特許第03129911(US,A)
【文献】中国特許出願公開第109515677(CN,A)
【文献】米国特許第04259776(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 5/10
B64B 1/00, 1/06, 1/58
B64C 1/00
E04B 1/35
E04G 21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部の水平セクションから開始して、軽航空機(1)の構造物を連続する複数の水平セクションにより建造するための方法であって、
前記軽航空機の前記構造物の製造の現在状態から開始し、
-現在の横方向位置に配置された持ち上げ手段(20、20´、50、50´)により、
前記持ち上げ手段が前記構造物を支持する複数の第1の持ち上げ点において、前記現在状態の前記構造物を持ち上げる工程、
-前記現在状態の前記構造物の
前記複数の第1の持ち上げ点より横方向内側の複数の第2の持ち上げ点
を支持する位置に支持装置(30、30´)を配置する工程、
-前記持ち上げ手段から前記支持装置へと前記現在状態の前記構造物を移す工程、
-別の横方向位置へと前記持ち上げ手段を移動させる工程、
-前記現在状態の前記構造物のすぐ下にある前記水平セクションを前記構造物上で完全に組み立てる工程、
の反復を含む、方法
であって、
前記持ち上げ手段は、横方向に隔離した位置に設けられた一対の持ち上げカラムを含み、
前記横方向は、水平方向に平行な方向である、方法。
【請求項2】
前記移す工程は、
前記持ち上げ手段により前記現在状態の前記構造物を下降させる工程と、
前記現在状態の前記構造物を前記支持装置上に静止状態で配置する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
建造される前記構造物は、前記方法の各中間現在状態において自立している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記現在状態の前記構造物を持ち上げる前記工程は、ジャッキを使用する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記現在状態の前記構造物を持ち上げる前記工程は、前記構造物の上方に配置された持ち上げウインチを実装する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記持ち上げウインチは、建造中の前記構造物がその最大幅に達する、いわゆる赤道組み立てフェーズにおいて実装されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の第1の持ち上げ点は、前記軽航空機の複数の横方向支持端部に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記構造物は、前記構造物の複数の横方向端部において持ち上げられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
建造中の前記構造物の内部に貨物倉構造物(2)を配置する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記貨物倉構造物(2)は、複数の持ち上げテーブル(60、60´)上に配置される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反復組み立ての前記工程は、桁によって組み立て中の前記水平セクションに前記貨物倉構造物(2)を機械的に結合できるように、前記貨物倉構造物(2)を組み立てるための工程を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
すでに組み立てられた前記構造物の上方部分の複数の決定された点を、前記桁の複数の決定された点に接続して、前記貨物倉構造物を前記構造物に機械的に結合するための複数の工程をさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上部の水平セクションから開始して、軽航空機(1)の構造物を連続する複数の水平セクションにより建造するためのシステムであって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の建造方法を実施するシステムであって、
-現在の横方向位置に配置された持ち上げ手段(20、20´、50、50´)であって、
前記持ち上げ手段が前記構造物を支持する複数の第1の持ち上げ点において前記現在状態の前記構造物を持ち上げるよう構成された持ち上げ手段(20、20´、50、50´)、
-前記現在状態の前記構造物の
前記複数の第1の持ち上げ点より横方向内側の複数の第2の持ち上げ点
を支持する位置に支持装置(30、30´)を配置するための手段、
-前記持ち上げ手段により前記現在状態の前記構造物を下降させ、前記現在状態の前記構造物を前記支持装置上で静止させるように、前記持ち上げ手段から前記支持装置へと前記現在状態の前記構造物を移すための手段、
-前記現在状態に続く状態の前記持ち上げ手段の現在位置である別の横方向位置へと、前記持ち上げ手段を移動させるための手段、
-前記現在状態の前記構造物のすぐ下にある前記水平セクションを前記構造物上で完全に組み立てるための手段、
を備える、システム
であって、
前記持ち上げ手段は、横方向に隔離した位置に設けられた一対の持ち上げカラムを含み、
前記横方向は、水平方向に平行な方向である、システム。
【請求項14】
建造中の前記構造物の内部に貨物倉構造物を配置するための手段をさらに備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記貨物倉構造物を配置するための前記手段は、複数の持ち上げテーブルを含み、前記貨物倉構造物が当該複数の持ち上げテーブル上に配置される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
組み立ての前記手段は、桁によって組み立て中の前記水平セクションに前記貨物倉構造物を機械的に結合できるように、前記貨物倉構造物を組み立てるようさらに構成されている、請求項14または15に記載のシステム。
【請求項17】
すでに組み立てられた前記構造物の上方部分の複数の決定された点を、前記桁の複数の決定された点に接続して、前記貨物倉構造物を前記構造物に機械的に結合するため
の手段をさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記持ち上げ手段は、ジャッキを含むことを特徴とする、請求項13~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記持ち上げ手段は、建造中の前記構造物の上方に配置されたウインチを含むことを特徴とする、請求項13~18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
請求項1~12のいずれか一項に記載の建造方法を実施することにより製造される、重積荷運搬軽航空機(1)。
【請求項21】
キャリアガスの存在なしに、自立的な剛性構造を有する、請求項20に記載の軽航空機。
【請求項22】
積荷を受け入れるように設計された貨物倉(2)を備え、
前記貨物倉は、貨物倉構造物を含み、
当該貨物倉構造物は、一方では、前記貨物倉構造物の両側に横方向に配置され、かつ前記構造物の複数の側面に機械的に接続された桁のアセンブリによって、他方では、前
記桁の複数の決定された点と前記構造物の上方部分の複数の決定された点との間に張られるケーブルのアセンブリによって、前記軽航空機の前記構造物に機械的に結合されている、請求項20または21に記載の重積荷運搬軽航空機。
【請求項23】
前記桁は、引抜成形されたカーボン複合チューブで作られた格子桁を含む、請求項22に記載の軽航空機。
【請求項24】
前記ケーブルは、引抜成形されたカーボンで作られた複合中実セクションロッドを含む、請求項22または23に記載の軽航空機。
【請求項25】
前
記桁に対する前記ケーブルの関節式接続部および前記構造物の前記上方部分に対する前記ケーブルの関節式接続部をさらに含むことを特徴とする、請求項
22~24のいずれか一項に記載の軽航空機。
【請求項26】
前記関節式接続部は、金属部分を含む、請求項25に記載の軽航空機。
【請求項27】
通信網からダウンロード可能であり、かつ/または、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶され、かつ/または、マイクロプロセッサにより実行可能である、コンピュータプログラムプロダクトであって、処理装置の内部メモリ内にロード可能なコンピュータプログラムプロダクトにおいて、
プログラムが前記処理装置により実行されると、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法の複数の工程を当該処理装置に実施させる複数の命令を含むことを特徴とする、コンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性構造を有する軽航空機(aerostat)を製造するための方法に関する。本発明はまた、軽航空機を製造するためのシステム、および、この方法を実施することにより製造される重積荷運搬軽航空機(heavy-load-carrying aerostat)に関する。
【0002】
本発明の分野は、より詳しくは、ただし非限定的な態様において、剛性構造を有する飛行船(airships)の分野、特に、重積荷を運搬する飛行船の分野である。
【背景技術】
【0003】
本発明は、飛行船を製造するための方法に関する。
【0004】
米国特許第1,559,807号が公知である。当該特許は、飛行船を製造する方法、特に全金属飛行船を製造する方法を提案している。この方法では、従来技術による方法に対して作業が容易になる。また、当該作業は、飛行船の製造を、完成した部分に部分を徐々に追加することにより構造物全体を所定の位置において完成させるため、非常に正確である。その結果、あらかじめ形成されたサブアセンブリの組み立てが回避される。
【0005】
さらに、この従来技術に記載された方法によれば、ストリンガのリベッティングおよび飛行船のスキンの取り付けは、作業者の地上での作業により、容易になる。
【0006】
当該方法は、上部の水平セクションから始めて、連続した水平セクションで飛行船を建造することを提案している。このセクションの全体構造には、横方向円形桁の湾曲した上部、ストリンガ、スキンおよびすべての取付け部品(フィッティング)が含まれる。このセクションの全体構造は、格納庫の床上で製造される。格納庫の屋根からのケーブルが、完成したセクション内の適切な場所に固定され、次いで、ケーブルの固定された適切なウインチにより、当該完成したセクションが持ち上げられる。上部の水平セクションは、作り出されるセクションの厚さに等しい高さまで上昇させられる。当該作り出されるセクションは、下方に位置する。この操作が、飛行船の製造が完了するまで繰り返される。
【0007】
従来技術により提案されたソリューションが評価に値するものだとしても、当該ソリューションは完全に満足できるものだというわけではない。実際、当該ソリューションには、格納庫に対して長手方向に延びるレールが設けられた当該格納庫を有することが必要とされる。当該レールは、軽航空機が完成したときには前記軽航空機の長手方向垂直面内にある。この一本のレールには、複数のウインチと、各ウインチを始点とするケーブルとが設備されている必要がある。
【0008】
また、この設備の設置は、建物の構造にストレスを与える。この設備は、例えば別の軽航空機のために他の格納庫で使用される目的のために、当該他の格納庫内へ容易に移動可能ではない。さらに、組み立て中の部品は機械的にメンテナンスされない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの目的は、特に、前述の欠点のうちの全部または一部を改善することである。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、上部の水平セクションから開始して、軽航空機の構造物を連続する複数の水平セクションにより建造するための方法であって、
前記軽航空機の前記構造物の製造の現在状態から開始し、
-現在の横方向位置に配置された持ち上げ手段により、複数の第1の持ち上げ点において、前記現在状態の前記構造物を持ち上げる工程、
-前記現在状態の前記構造物の複数の第2の持ち上げ点と直線を形成する位置に支持装置を配置する工程、
-前記持ち上げ手段から前記支持装置へと前記現在状態の前記構造物を移す工程、
-前記現在状態に続く状態の前記持ち上げ手段の現在位置である別の横方向位置へと前記持ち上げ手段を移動させる工程、
-前記現在状態の前記構造物のすぐ下にある前記水平セクションを前記構造物上で完全に組み立てる工程、
の反復を含む方法が提案される。
【0011】
持ち上げ手段により前記支持装置上に前記現在状態の構造物を移す工程は、前記持ち上げ手段により前記現在状態の前記構造物を下降させる工程と、前記現在状態の前記構造物を前記支持装置上に静止状態で配置する工程と、によって実行され得る。
【0012】
前記現在状態の前記構造物を持ち上げる前記工程は、有利には、ジャッキによって行われてもよいし、また、組み立て中の前記構造物の上方に配置された持ち上げウインチによって行われてもよい。これらの2つの手段は、組み合わせて使用されてもよい。前記持ち上げウインチは、有利には、組み立て中の前記構造物の最大幅に対応する、いわゆる赤道組立てフェーズ(equator assembly phase)において実装され得る。
【0013】
本発明の他の有益かつ非限定的な特徴によれば、単独で、または、技術的に実行可能な任意の組み合わせにおいて、採用される:
-前記持ち上げ手段は、ジャッキを含む;
-前記複数の第1の持ち上げ点は、前記軽航空機の複数の横方向支持端部に配置されている;
-前記構造物は、前記構造物の複数の横方向端部において持ち上げられる。
【0014】
製造方法は、以下の工程をさらに含んでもよい:配置のための工程
-貨物倉構造物が、建造中の前記構造物の内部に配置される;
-前記貨物倉構造物は、複数の持ち上げテーブル上に配置される;
-反復組み立ての前記工程は、桁によって組み立て中の前記水平セクションに前記貨物倉構造物を機械的に結合できるように、前記貨物倉構造物を組み立てるための工程を含む。
【0015】
本発明による製造方法は、すでに組み立てられた前記構造物の上方部分の複数の決定された点を、前記桁の複数の決定された点に接続して、前記貨物倉構造物を前記構造物に機械的に結合するための複数の工程をさらに含む。
【0016】
本発明のさらに別の態様によれば、上部の水平セクションから開始して、軽航空機の構造物を連続する複数の水平セクションにより建造するためのシステムであって、本発明による建造方法を実施するシステムが提案される。当該システムは、
-現在の横方向位置に配置された持ち上げ手段であって、複数の第1の持ち上げ点において前記現在状態の前記構造物を持ち上げるために設けられた持ち上げ手段、
-前記現在状態の前記構造物の複数の第2の持ち上げ点と直線を形成する位置に支持装置を配置するための手段、
-前記持ち上げ手段により前記現在状態の前記構造物を下降させ、前記現在状態の前記構造物を前記支持装置上で静止させるように前記持ち上げ手段により前記支持装置上へと前記現在状態の前記構造物を移すための手段)、
-[前記現在状態に続く状態の前記持ち上げ手段の現在位置である]別の横方向位置へと、前記持ち上げ手段を移動させるための手段、
-前記現在状態の前記構造物のすぐ下にある前記水平セクションを前記構造物上で完全に組み立てるための手段、
を備える。
【0017】
本発明による建造システムはまた、有利には、建造中の前記構造物の内部に貨物倉構造物を配置するための手段をさらに備え得る。
【0018】
前記貨物倉構造物を配置するための前記手段は、複数の持ち上げテーブルを含み、前記貨物倉構造物が当該複数の持ち上げテーブル上に配置され得る。
【0019】
組み立ての前記手段は、桁によって組み立て中の前記水平セクションに前記貨物倉構造物を機械的に結合できるように、前記貨物倉構造物を組み立てるようさらに構成され得る。
【0020】
そして、本発明による建造システムは、すでに組み立てられた前記構造物の上方部分の複数の決定された点を、前記桁の複数の決定された点に接続して、前記貨物倉構造物を前記構造物に機械的に結合するためのための手段を含み得る。
【0021】
本発明の別の態様によれば、本発明による建造方法を実施することによって製造される重積荷運搬軽航空機が提案される。
【0022】
好ましくは、当該軽航空機は、可撓性エンベロープで覆われ、かつ、キャリアガスのバルーンを含む、剛性骨格を含む構造を有する。当該骨格は、横方向フレームおよび長手方向ストリンガに配置され、かつ張られた複数の要素のシステムにより補強された、桁のアセンブリである。キャリアガスバルーンは、当該軽航空機の長さに沿って分布する。
【0023】
この軽航空機が積荷を受け入れるように設計された貨物倉を備える場合、この貨物倉は、貨物倉構造物を含み、当該貨物倉構造物は、一方では、前記貨物倉構造物の両側に横方向に配置され、かつ前記構造物の複数の側面に機械的に接続された桁の集合によって、他方では、前記結合桁の複数の決定された点と前記構造物の上方部分の複数の決定された点との間に張られるケーブルの集合によって、前記軽航空機の前記構造物に機械的に結合されている。この配置構成は、キャリアガスバルーンを隔てる「メイン」フレームのために得られる。
【0024】
横桁は、有利には、引抜成形されたカーボンで作られた複合チューブで作られた格子桁を含んでもよい。前記ケーブルは、引抜成形されたカーボンで作られた中実セクション複合ロッドを含む。そして、前記軽航空機は、前記結合桁に対する前記ケーブルの関節式接続部および前記構造物の前記上方部分に対する前記ケーブルの関節式接続部を含む。これらの関節式接続部は、金属部分を含んでもよい。
【0025】
前記貨物倉構造物と主要構造物との間の前記桁は、下方部分の安定性を保証する。これらの桁と前記主要構造物の前記上方部分との間に張られるケーブルは、有効荷重(payload)を支持する前記貨物倉とヘリウムの空気静力学的圧力(aerostatic pressure)に起因する揚力を支持する前記上方部分との間の力を伝える。
【0026】
構造物は、全体として自立(self-supporting)している。それは、それ自体の重量およびさまざまな装置の重量を支持することを、キャリアガスの存在なしに可能にする、抵抗性および安定性を有する。当該構造物の自立能力は、連続する複数の水平セクションによるその組み立ての中間状態にもまた当てはまる。この能力は、キャリアガスバルーンを隔てるメインフレームの周縁部のまわりの剛性桁および張られた要素の配置構成により、可能となる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、通信網からダウンロード可能であり、かつ/または、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶され、かつ/または、マイクロプロセッサにより実行可能である、コンピュータプログラムプロダクトであって、処理装置の内部メモリ内にロード可能なコンピュータプログラムプロダクトにおいて、前記処理装置により実行されると、本発明の第1の態様またはその1つ以上の改良形による方法の複数の工程を実施する複数のプログラムコード命令を含むことを特徴とする、コンピュータプログラムプロダクトが提案される。
【0028】
本発明の他の利点および特殊性は、添付の図面を参照しながら、実装形態および実施形態の詳細な説明を読むことによって明らかになるだろう。当該詳細な説明は、いかなる点においても限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図2】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図3】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図4】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図5】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図6】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図7】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図8】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図9】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【
図10】本発明による方法の一連の工程、および、本発明による方法を実施するのに適した本発明による装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に記載の実施形態は本質的に限定的ではないため、特徴の選択物(セレクション)が技術的利点を付与するのに十分であるか、または本発明を先行技術から区別するのに十分であるならば、特に、記載の特徴のこの選択物のみを含む本発明の変形形態を考えることが可能である。この選択物は、構造的詳細を伴わない少なくとも1つの好ましくは機能的な特徴を含むか、または、当該構造的詳細の一部が単独で技術的利点を付与するのに十分であるか、もしくは本発明を先行技術から区別するのに十分であるならば、当該構造的詳細のこの一部のみを伴う、少なくとも1つの好ましくは機能的な特徴を含む。
【0031】
図面において、複数の図中に現れる一要素は、同一の符号を保持する。
【0032】
図1を参照する。上部の水平(横)セクションから始まる、連続する水平セクションによる飛行船1の建造の最初のフェーズが記載されている。
【0033】
図1~
図10の各々は、飛行船1の建造の現在状態の正面図を示す副図a、および、飛行船1の建造の現在状態の左側からの長手方向図を示す副図bを含む。
【0034】
本発明による一実施形態による製造装置10の存在が示されている。当該製造装置10は、組み立てゾーンの表面から立つ複数の持ち上げカラム20および複数の持ち上げカラム20´を含む。
【0035】
図1bにより詳細に示されるように、複数のカラム20´は飛行船の左側に整列され、複数のカラム20は飛行船の右側に整列される。
【0036】
各カラム20は、建造中の飛行船の横断面内のカラム20´に対応している。
【0037】
持ち上げカラムの各々は、10メートルの変位にしたがって当該持ち上げカラムに垂直(縦)にスライド可能に取り付けられるよう構成された持ち上げトラックであって、補強シャフトまたはペダルの形態の制御ハンドルにより制御されるよう構成された持ち上げトラックを有する。
【0038】
三脚(tripod)30は、これら2つのカラムの中央に配置される。
【0039】
図1aにより詳細に見ることができるように、接続部分を固定するためのさまざまなケーブルおよびストリンガが実装される。また、エンベロープパネル、ならびに通信網およびヘリウムセルの位置決めが設置される。
【0040】
図1bにより良く示されているように、この設置は、上部セクションの横方向部分に対してだけでなく、当該上部セクションの長手方向の延長に沿うすべてについて行われる。
【0041】
また、このセクションの全体構造には、横方向円形桁の湾曲した上方部分、ストリンガ、スキンおよびすべての取付け部品が含まれる。このセクションの全体構造は、格納庫の床上で製造される。
【0042】
図1aに見られ得るように、飛行船の重量は、持ち上げカラム20および持ち上げカラム20´、ならびに、中央の三脚30に、横方向に分散される。
【0043】
図1を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図2を参照しつつ説明する。
図2aにさらに詳細に示すように、飛行船は、次の水平セクションの組立てに適した高さまで上昇させられる。
【0044】
この状態で、飛行船の重量は、2つの支持点において、持ち上げカラム20および持ち上げカラム20´に横方向に分散される。三脚30は解放され、移動され得る。
【0045】
これは、ヘリウムバルーンを隔てるメインフレームにおいてケーブルブレーシングシステム21により補強されたセクションの垂直方向構造的安定性により、可能になる。
【0046】
図2を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図3を参照しつつ説明する。
図3aにより詳細に示されているように、製造装置10は、追加の三脚30´を含む。
【0047】
三脚30および三脚30´は、飛行船1の2つの荷重ピックアップ点(load pick-up point)と直線を形成する位置に置かれる。これは、2つのカラム20および20´により支持される複数の端部の近くに適切に配置されている。
【0048】
その後、飛行船は、その2つの荷重ピックアップ点の各々の点において、三脚上に配置される。
【0049】
この状態において、飛行船の重量は2つの三脚30および30´に横方向に分散される。持ち上げカラム20および持ち上げカラム20´は解放される。
【0050】
図3を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図4を参照しつつ説明する。
【0051】
図4aにより詳細に示されているように、持ち上げカラム20および持ち上げカラム20´の各々は、第2の横方向位置へと移動される。
【0052】
図4aにより詳細に見ることができるように、接続部分を固定するためのさまざまなケーブルおよびストリンガが実装される。また、エンベロープパネル、ならびに通信網およびヘリウムセルの位置決めが設置される。
【0053】
図4bに最もよく示されているように、この設置は、現在のセクションの横方向部分に対してだけでなく、当該現在のセクションの長手方向の延長に沿うすべてについて行われる。
【0054】
また、このセクションの全体構造には、横方向円形桁の湾曲した上方部分、ストリンガ、スキンおよびすべての取付け部品が含まれる。このセクションの全体構造は、格納庫の床上で製造される。
【0055】
高さが3メートルまで上昇した作業台40上のオペレータの存在が、特定の操作を実行するために必要であることが観察される。
図4aに見られ得るように、飛行船の重量は、荷重ピックアップ点において、三脚30および三脚30´の各々に、ならびに、持ち上げカラム20および持ち上げカラム20´に、横方向に分散される。
【0056】
図4を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図5を参照しつつ説明する。
図4における飛行船の建造の現在状態から、
図5における飛行船の建造の現在状態へと移行することができるように、以下の工程が実行される:
-2つの三脚30および30´の各々を解放できるように飛行船1を持ち上げる工程。
図2を参照しながら説明した工程と同様に、飛行船の重量は、カラム20およびカラム20´のみにおいてピックアップされる、
-2つのカラム20および20´により支持される複数の端部の近くに適切に配置された2つの第2の荷重ピックアップ点と直線を形成する位置に三脚30および三脚30´を移動させ、2つの第2の荷重ピックアップ点の各々の点において、三脚上に飛行船を配置する工程。
図3を参照しながら説明した工程と同様に、飛行船の重量は、三脚30および三脚30´のみにおいてピックアップされる、
-持ち上げカラム20および持ち上げカラム20´の各々を、第3の横方向位置に移動させる工程;エンベロープパネル、通信網およびヘリウムセルの位置決め、ならびに、接続部分を固定するためのさまざまなケーブルおよびストリンガが設置される。
図4を参照しながら説明したように、飛行船の重量は、第2の荷重ピックアップ点において、三脚30および三脚30´の各々に、ならびに、持ち上げカラム20および持ち上げカラム20´に、横方向に分散される。
図5bに最もよく示されているように、この設置は、現在のセクションの横方向部分に対してだけでなく、現在のセクションの長手方向の延長に沿うすべてについて行われる。
【0057】
高さ6メートルまで上昇した作業台40上のオペレータの存在が、特定の操作を実行するために必要であることが観察される。当該作業台40は、それ自体横方向に移動される。
【0058】
図5を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図6を参照しつつ説明する。
図6は、飛行船1の建造の現在状態の正面図を示す副
図6a、および、飛行船1の建造の現在状態の長手方向図を示す副
図6bを含む。
【0059】
図5における飛行船の建造の現在状態から、
図6における飛行船の建造の現在状態へと移行することができるように、
図4の状態から
図5の状態への移行を参照しつつ説明した工程が実行される。
【0060】
高さ約10メートルまで上昇した作業台40上のオペレータの存在が、特定の操作を実行するために必要であることが観察される。当該作業台40は、それ自体横方向に移動される。
【0061】
さらに、このフェーズは、推進モータの設置、および飛行船1の尾部の設置を含む。
【0062】
図6aにより詳細に示されるように、製造装置10は、追加の持ち上げカラム50および50´を含む。
【0063】
追加の持ち上げカラムの各々は、25メートルの変位にしたがって当該追加の持ち上げカラムに垂直に(縦に)スライド可能に取り付けられるよう構成された持ち上げトラックであって、補強シャフトまたはペダルの形態の制御ハンドルにより制御されるよう構成された持ち上げトラックを有する。
【0064】
さらに、2つの三脚30および三脚30´の各々には、その上端部に、垂直アームまたはマストまたは垂直ロッド32および32´がそれぞれ設けられている。
【0065】
図6を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図7を参照しつつ説明する。
【0066】
図5における飛行船の建造の現在状態から、
図6における飛行船の建造の現在状態へと移行することができるように、以下の工程に記載の各工程が実行される:
-カラム20およびカラム20´の全高まで飛行船を持ち上げる工程。その結果、飛行船の重量は、カラム20およびカラム20´のみによってピックアップされる、
-2つのカラム20および20´により支持される複数の端部の近くに適切に配置された他の荷重ピックアップ点と直線を形成する位置に三脚30および三脚30´を移動させ、2つの当該他の荷重ピックアップ点の各々の点において、三脚の垂直ロッド上に飛行船を配置する工程。飛行船の重量は、三脚30および三脚30´のみにおいてピックアップされる、
-カラム20およびカラム20´を除去する工程、
-追加の持ち上げカラム50および50´により、当該他の荷重ピックアップ点をピックアップする工程、そして、
-三脚30および三脚30´、ならびに作業台40を除去する工程。
【0067】
図7を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図8を参照しつつ説明する。工程8では、飛行船1の貨物倉2は、その時点まで建造された構造物の下方に移動される。
【0068】
製造装置10は、貨物倉2が載る持ち上げテーブル60および60´を含む。
【0069】
図8を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図9を参照しつつ説明する。
【0070】
追加の持ち上げカラム50および50´は、飛行船1の構造物の下方部分の最上部セクションが、既に建造された構造物および貨物倉2に固定され得るようにするために、飛行船1を上昇させる。この目的のために、2つの三脚30および30´の各々は、そのアームが地面に対して高さのある点の下にある状態で再び置かれ、その上に、桁の端部が固定される必要がある。
【0071】
加えて、2つの新たな三脚30´および30´´もまた、地面に対して高さのあるかかる点の下方に置かれる。
【0072】
図9aにより詳細に見ることができるように、接続部分を固定するためのさまざまなケーブルおよびストリンガが、下方部分の最上部セクション上に配置されている。接続ケーブル90の設置は、特に、キャリアガスの不在により容易になる。これは、プレテンション(pretension)の導入を制限する。また、エンベロープパネル、ならびに通信網およびヘリウムセルの位置決めが設置される。
【0073】
図9を参照しながら説明した工程に続く工程を、
図10を参照しつつ説明する。飛行船1の構造は完全に完成し、飛行船の貨物倉2が飛行船の構造物に取り付けられている。飛行船の構造物は、接続ケーブルだけでなく、複数の横桁80を含む。
【0074】
さらに、飛行船1は、複数のホイールを有する輸送台タイプの輸送装置70上に配置されている。ターミナル上で静止試験を実行することが可能だが、飛行船に特有の、ウインチの動作を試験することも可能である。これはその動作のために貨物倉内に積載され得る。したがって、これは試験される必要がある。
【0075】
この時点で、本発明による方法の別の実施形態を説明する。この実施形態では、「赤道(equator)」と呼ばれる組み立てフェーズにおいて、持ち上げウインチが、前述の持ち上げカラムと組み合わせて実装される。
【0076】
前記赤道フェーズにおいて、飛行船の上方部分は、それが三次元構造の最も幅広い部分(赤道)に達するまで、すでに組み立てられている。
【0077】
この段階では、小さなカラムは、荷重の上昇および下降、幾何学的位置決めを確実にし、一方、大きなカラムは、小さなカラムにより実行される幾何学的位置決めを管理し、X、Y、Zで荷重を支持し、そして、荷重の上昇および下降にも寄与する。
【0078】
持ち上げウインチ(図示せず)は、組み立て中の飛行船の上に掛かる1つ以上の機械的構造物上の組み立てユニットの内部に配置されている。これらのウインチは、小さなカラムに取り付けられている。
【0079】
赤道上方の組み立ての次のフェーズでは、小さなカラムは、幾何学的位置決め、X、Y、Zにおける荷重の支持、ならびに荷重の上昇および下降を確実にし、一方、ウインチは、小さなカラムにより実行される幾何学的位置決めを管理し、赤道上方のZで荷重を支持し、そして、荷重の上昇および下降に寄与する。
【0080】
組み立ての完了の次のフェーズでは、小さなカラムは、幾何学的位置決め、X、Y、Zにおける荷重の支持、荷重の上昇および下降を確実にし、一方、ウインチは、小さなカラムにより実行される幾何学的位置決めを管理し、赤道上方のZで荷重を支持し、そして、荷重の上昇および下降に寄与する。
【0081】
容易に理解されるであろうように、本発明は記載の実施例に限定されるものではなく、これらの実施例に対して、本発明の範囲から逸脱することなしに、多数の修正がなされ得る。加えて、本発明のさまざまな特徴、形態、変形および実施形態は、それらが不適合でないかまたは互いに排他的でない限り、さまざまな組み合わせにおいて寄せ集められ得る。