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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】磁場角度センサにおける角度誤差の低減
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/245 N
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2022512746
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 US2020046883
(87)【国際公開番号】W WO2021041093
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】16/553,641
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】591150395
【氏名又は名称】コミサリア タ レネルジー アトミック エ オー エネルジー アルテルナティーヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ラサル-バリア,レミ
(72)【発明者】
【氏名】フェルモン,クロード
(72)【発明者】
【氏名】デウ,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】アクマルディノフ,カミル
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/136054(WO,A1)
【文献】特開2014-220507(JP,A)
【文献】特開2016-166741(JP,A)
【文献】特表2018-503803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸に沿った磁場を示す正弦波信号を生成するように構成された正弦ブリッジと、
前記第1の軸に対して直交する第2の軸に沿った磁場を示す余弦波信号を生成するように構成された余弦ブリッジと
を備えるブリッジ構造を備える磁場角度センサであって、
前記正弦ブリッジ又は前記余弦ブリッジの一方は、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットとを含み、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセットの平均基準方向に等しく、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットの平均方向角度に等しく、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの前記平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセットの前記平均基準方向と正反対である、磁場角度センサ。
【請求項2】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットは、直列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項1に記載の磁場角度センサ。
【請求項3】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットは、並列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項1に記載の磁場角度センサ。
【請求項4】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットは、直列に配置された2つ以上の磁気抵抗素子と、前記2つ以上の磁気抵抗素子と並列に配置された少なくとも1つの磁気抵抗素子とを含む、請求項1に記載の磁場角度センサ。
【請求項5】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセットは、少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項1に記載の磁場角度センサ。
【請求項6】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセットは、直列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項5に記載の磁場角度センサ。
【請求項7】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセットは、並列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項5に記載の磁場角度センサ。
【請求項8】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第2のセットは、直列に配置された少なくとも1つの磁気抵抗素子と、前記少なくとも1つの磁気抵抗素子と並列に配置された2つ以上の磁気抵抗素子とを含む、請求項5に記載の磁場角度センサ。
【請求項9】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセットは、少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項5に記載の磁場角度センサ。
【請求項10】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセットは、直列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項9に記載の磁場角度センサ。
【請求項11】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセットは、並列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項9に記載の磁場角度センサ。
【請求項12】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第3のセットは、直列に配置された少なくとも3つの磁気抵抗素子と、前記少なくとも3つの磁気抵抗素子と並列に配置された2つ以上の磁気抵抗素子とを含む、請求項9に記載の磁場角度センサ。
【請求項13】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットは、少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項9に記載の磁場角度センサ。
【請求項14】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットは、直列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項13に記載の磁場角度センサ。
【請求項15】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットは、並列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含む、請求項13に記載の磁場角度センサ。
【請求項16】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの抵抗は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセットの抵抗に等しい、請求項1に記載の磁場角度センサ。
【請求項17】
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセットの抵抗は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットの抵抗に等しい、請求項16に記載の磁場角度センサ。
【請求項18】
第1の軸に沿った磁場を示す正弦波信号を生成するように構成された正弦ブリッジと、
前記第1の軸に対して直交する第2の軸に沿った磁場を示す余弦波信号を生成するように構成された余弦ブリッジと
を備えるブリッジ構造を備える磁場角度センサであって、
前記正弦ブリッジ又は前記余弦ブリッジの一方は、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットとを含み、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセットの平均基準方向に等しく、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットの平均方向角度に等しく、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットは、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの平均基準角度から角度φに位置する基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの平均基準角度から角度-φに位置する基準角度を有する第2の磁気抵抗素子と
を含む、磁場角度センサ。
【請求項19】
前記角度φは20度と40度との間である、請求項18に記載の磁場角度センサ。
【請求項20】
前記角度φは25度と37度との間である、請求項19に記載の磁場角度センサ。
【請求項21】
前記角度φは22.5度である、請求項19に記載の磁場角度センサ。
【請求項22】
前記角度φは、磁気抵抗素子の少なくとも1つの高調波誤差と関連している、請求項18に記載の磁場角度センサ。
【請求項23】
前記角度φは、磁気抵抗素子の第4次高調波誤差と関連している、請求項22に記載の磁場角度センサ。
【請求項24】
第1の軸に沿った磁場を示す正弦波信号を生成するように構成された正弦ブリッジと、
前記第1の軸に対して直交する第2の軸に沿った磁場を示す余弦波信号を生成するように構成された余弦ブリッジと
を備えるブリッジ構造を備える磁場角度センサであって、
前記正弦ブリッジ又は前記余弦ブリッジの一方は、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットとを含み、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセットの平均基準方向に等しく、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットの平均方向角度に等しく、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットは、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの平均基準角度から調節角度φadjである基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセットの平均基準角度から-φadjである基準角度を有する第2の磁気抵抗素子と、
感度方向に基準方向を有する第3の磁気抵抗素子とを含み、
前記感度方向は前記第1、第2、及び第3の磁気抵抗素子の平均基準方向である
場角度センサ。
【請求項25】
前記正弦ブリッジ又は前記余弦ブリッジの他方は、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の第5のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第6のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第7のセットと、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の第8のセットとを含み、
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第5のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第7のセットの平均基準方向に等しく、
少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第6のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第8のセットの平均方向角度に等しい、
請求項1、18及び24のうちのいずれか1項に記載の磁場角度センサ。
【請求項26】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第5のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第6のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第7のセット、及び少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第8のセットは、巨大磁気抵抗(GMR)素子、異方性磁気抵抗(AMR)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、又は磁気トンネル接合(MTJ)素子のうちの1つ以上を含む、請求項25に記載の磁場角度センサ。
【請求項27】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第5のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第6のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第7のセット、及び少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第8のセットのそれぞれは、基準層及びフリー層を含む、請求項25に記載の磁場角度センサ。
【請求項28】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセット、及び少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットは、巨大磁気抵抗(GMR)素子、異方性磁気抵抗(AMR)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、又は磁気トンネル接合(MTJ)素子のうちの1つ以上を含む、請求項1、18及び24のうちのいずれか1項に記載の磁場角度センサ。
【請求項29】
少なくとも2つの磁気抵抗素子の前記第1のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第2のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第3のセット、及び少なくとも1つの磁気抵抗素子の前記第4のセットのそれぞれは、基準層及びフリー層を含む、請求項1、18及び24のうちのいずれか1項に記載の磁場角度センサ。
【請求項30】
前記磁場角度センサは、電圧ブリッジ、電流ブリッジ、又は導電ブリッジのうちの1つ以上を含む、請求項1、18及び24のうちのいずれか1項に記載の磁場角度センサ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
磁場センサが様々な適用例において使用され、それらは、限定はしないが、磁場の方向の角度を検知する角度センサ、電流搬送導体によって搬送される電流によって生成される磁場を検知する電流センサ、強磁性体の近接を検知する磁気スイッチ、通過しつつある強磁性物品、例えば、リング磁石又は強磁性目標物(例えば、歯車の歯)の磁区を検知する回転検出器であって、逆バイアス磁石又は他の磁石と組み合わせて磁場センサが使用される、回転検出器、及び磁場の磁場密度を検知する磁場センサを含む。
【0002】
種々のパラメータが磁場センサ及び磁場検知素子の性能を特徴付ける。磁場検知素子に関して、パラメータは、磁場に応答しての磁場検知素子の出力信号の変化である感度、及び磁場センサの出力信号が磁場に対して線形に(すなわち、正比例して)変化する度合いである線形性を含む。
【0003】
いくつかの磁場センサは、巨大磁気抵抗(GMR:giant magnetoresistance)素子及びトンネル磁気抵抗(TMR:tunneling magnetoresistance)素子のような、磁気抵抗(MR:magnetoresistance)素子を含む。一般に、GMR及びTMR素子は、例えば、ホール効果素子に比べて相対的に高い感度を有する。GMR及びTMR素子は、適度に良好な線形性を有するが、線形性を有する磁場の範囲が限られる。しかしながら、磁場のその限られた範囲においても、GMR及びTMR素子の線形性は、高温などに起因して、不規則性に悩まされる可能性がある。
【0004】
さらに、GMR及びTMR素子を使用する角度センサは、スピンフロップ(すなわち、高磁場又は異方性磁場(例えば、磁気結晶異方性又は形状異方性)における基準方向の変化)のような現象に起因して角度誤差を受ける可能性がある。例えば、GMR素子を用いて得られた角度は、数度までの誤差を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、磁場角度センサは、第1の軸に沿った磁場を示す正弦波信号を生成するように構成された正弦ブリッジと、第1の軸に対して直交する第2の軸に沿った磁場を示す余弦波信号を生成するように構成された余弦ブリッジとを含むブリッジ構造を備える。正弦ブリッジ又は余弦ブリッジの一方は、少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットと、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットと、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットと、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットとを含む。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットの平均基準方向に等しい。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットの平均方向角度に等しい。
【0006】
上記態様は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットは、直列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットは、並列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットは、直列に配置された2つ以上の磁気抵抗素子と、2つ以上の磁気抵抗素子と並列に配置された少なくとも1つの磁気抵抗素子とを含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットは、少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットは、直列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットは、並列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第2のセットは、直列に配置された少なくとも1つの磁気抵抗素子と、少なくとも1つの磁気抵抗素子と並列に配置された2つ以上の磁気抵抗素子とを含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットは、少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットは、直列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットは、並列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第3のセットは、直列に配置された少なくとも3つの磁気抵抗素子と、少なくとも3つの磁気抵抗素子と並列に配置された2つ以上の磁気抵抗素子とを含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットは、少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットは、直列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットは、並列に配置された少なくとも2つの磁気抵抗素子を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットの抵抗は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセットの抵抗に等しくてもよい。少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットの抵抗は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットの抵抗に等しくてもよい。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセットの平均基準方向と正反対でもよい。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットは、少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットの平均基準角度から角度φに位置する基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットの平均基準角度から角度-φに位置する基準角度を有する第2の磁気抵抗素子とを含むことができる。角度φは20度と40度との間でもよい。角度φは25度と37度との間でもよい。角度φは22.5度でもよい。角度φは、磁気抵抗素子の少なくとも1つの高調波誤差と関連してもよい。角度φは、磁気抵抗素子の第4次高調波誤差と関連してもよい。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットは、少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットの平均基準角度から調節角度φadjに位置する基準角度を有する第1の磁気抵抗素子と、少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセットの平均基準角度から-φadjに位置する基準角度を有する第2の磁気抵抗素子と、感度方向に基準方向を有する第3の磁気抵抗素子とを含むことができ、感度方向は第1、第2、及び第3の磁気抵抗素子の平均基準方向である。正弦ブリッジ又は余弦ブリッジの他方は、少なくとも2つの磁気抵抗素子の第5のセットと、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第6のセットと、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第7のセットと、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第8のセットとを含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第5のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第7のセットの平均基準方向に等しくてもよく、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第6のセットの平均基準方向は、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第8のセットの平均方向角度に等しくてもよい。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第5のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第6のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第7のセット、及び少なくとも1つの磁気抵抗素子の第8のセットは、巨大磁気抵抗(GMR)素子、異方性磁気抵抗(AMR)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、又は磁気トンネル接合(MTJ)素子のうちの1つ以上を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第5のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第6のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第7のセット、及び少なくとも1つの磁気抵抗素子の第8のセットのそれぞれは、基準層及びフリー層を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセット、及び少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットは、巨大磁気抵抗(GMR)素子、異方性磁気抵抗(AMR)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子、又は磁気トンネル接合(MTJ)素子のうちの1つ以上を含むことができる。少なくとも2つの磁気抵抗素子の第1のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第2のセット、少なくとも1つの磁気抵抗素子の第3のセット、及び少なくとも1つの磁気抵抗素子の第4のセットのそれぞれは、基準層及びフリー層を含むことができる。磁場角度センサは、電圧ブリッジ、電流ブリッジ、又は導電ブリッジのうちの1つ以上を含むことができる。
【0007】
これまでの特徴は、図面に関する以下の説明から更に十分に理解することができる。本開示の技術の説明及び理解の際に、図面は助けとなる。可能な全実施形態を図示及び記述することは非現実的又は不可能な場合が多いため、提供された図は1つ以上の例示的な実施形態を示す。したがって、図は、本明細書に記載される広い概念、システム及び技法の範囲を限定することを意図されない。図面において、同じ番号は同じ要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】各ブリッジ構造が正弦ブリッジ及び余弦ブリッジを有する、角度センサの2つのブリッジ構造の図である。
図1A】基板上に配置され、磁石に相対する図1の2つのブリッジ構造を示す図である。
図1B】単一のピン止め構成を有するGMR素子の層を示す図である。
図2】各ブリッジ構造が正弦ブリッジ及び余弦ブリッジを有する、4つのブリッジ構造を有する角度センサの図である。
図2A】共通のブリッジ構造の軸間の異なる角度の図である。
図2B】異なるブリッジ構造の軸間の異なる傾斜角の図である。
図3】異なる数のブリッジ構造を有する角度センサに関するピンニング強度の関数としての角度誤差を示すプロット図である。
図4】2つのブリッジ構造を有する角度センサを示すブロック図である。
図5】4つのブリッジ構造を有する角度センサを示すブロック図である。
図6】磁場の方向を検出するための方法のフロー図である。
図6A】磁場の方向を検出するための方法のフロー図である。
図7】余弦ブリッジ及び正弦ブリッジを有する、角度センサで使用されるブリッジ構造の例の図である。
図8】磁気抵抗(MR)素子の角度に対する角度誤差のグラフである。
図9】2つのMR素子によって置き換えられているMR素子の図である。
図10】直列のMR素子によって置き換えられている図7のブリッジ構造の例示のMR素子の図である。
図11】並列のMR素子によって置き換えられた図7のブリッジ構造の例示のMR素子の図である。
図12A】ブリッジ構成の磁場振幅に対する角度誤差のグラフである。
図12B】ブリッジ構成の磁場振幅に対する角度誤差のグラフである。
図12C】ブリッジ構成の磁場振幅に対する角度誤差のグラフである。
図13A】導電ブリッジ構成の例の図である。
図13B】直列のMR素子によって置き換えられている図13Aの導電ブリッジ構成の図である。
図13C】並列のMR素子によって置き換えられている図13Aの導電ブリッジ構成の図である。
図14-1】直列のMR素子によって置き換えられている図1のブリッジ構造のMR素子の例の図である。
図14-2】直列のMR素子によって置き換えられている図1のブリッジ構造のMR素子の例の図である。
図15】角度誤差を低減するために、ブリッジにおけるMR素子を置き換えるプロセスの例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
角度誤差を低減するために、磁場角度センサのブリッジにおける磁気抵抗(MR)素子を置き換える技法が本明細書において説明される。
【0010】
知られているように、異なるタイプの磁気抵抗素子、例えば、巨大磁気抵抗(GMR)素子、異方性磁気抵抗(AMR)素子、及び磁気トンネル接合(MTJ)素子とも呼ばれるトンネル磁気抵抗(TMR)素子がある。
【0011】
これらの磁気抵抗素子のうち、GMR及びTMR素子は、スピン電子工学(すなわち、電子スピン)によって動作し、その抵抗は、非磁性層によって分離される異なる磁性層の磁場配向に関連する。スピン値構成において、抵抗は、別の層、いわゆる、「基準層」に対する、いわゆる、「フリー層」内の磁化の角度方向に関連する。フリー層及び基準層は後に更に十分に説明される。
【0012】
磁気抵抗素子は単一の素子とすることができるか、又は代替的には、種々の構成に配置される2つ以上の磁気抵抗素子、例えば、ハーフブリッジ又はフル(ホイートストン)ブリッジを含むことができる。
【0013】
本明細書において使用されるときに、「磁場角度センサ」という用語は、一般に他の回路と組み合わせて、磁場検知素子を使用する回路を記述するために使用される。通常の磁場センサでは、磁場検知素子及び他の回路は共通の基板上に集積することができる。
【0014】
ここで図1を参照すると、第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112を有する角度センサ100が示される。第1のブリッジ構造102は第1の正弦ブリッジ104及び第1の余弦ブリッジ106を含み、第2のブリッジ構造112は第2の正弦ブリッジ114及び第2の余弦ブリッジ116を含む。角度センサ100は、第1の正弦ブリッジ104、第1の余弦ブリッジ106、第2の正弦ブリッジ114及び第2の余弦ブリッジ116のそれぞれから生成される信号に部分的に基づいて、磁場の方向を検出するように構成することができる。
【0015】
例えば、第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112は、グラジオメータとして形成することができ、磁場の異なる特性を検出するように構成することができる。第1のブリッジ構造102の第1の正弦ブリッジ104及び第2のブリッジ構造112の第2の正弦ブリッジ114は、磁場の正弦を測定することができる。第1のブリッジ構造102の第1の余弦ブリッジ106及び第2のブリッジ構造112の第2の余弦ブリッジ116は磁場の余弦を測定することができる。したがって、第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112はそれぞれ、磁場の正弦特性及び余弦特性を測定することができる。
【0016】
より詳細には、第1の正弦ブリッジ104、第1の余弦ブリッジ106、第2の正弦ブリッジ114及び第2の余弦ブリッジ116はそれぞれ、それぞれの軸に沿った磁場の投影及び/又は特性を測定することができる。例えば、図1に示されるように、第1の正弦ブリッジ104は第1の軸142に沿って配置され、第1の余弦ブリッジ106は第2の軸144に沿って配置される。一実施形態において、第1の軸142と第2の軸144との間の角度は約90度とすることができる。また、図1に示されるように、第2の正弦ブリッジ114は第3の軸146に沿って配置され、第2の余弦ブリッジ116は第4の軸148に沿って配置される。一実施形態において、第3の軸146と第4の軸148との間の角度147は約90度とすることができる。
【0017】
第2のブリッジ構造112の第3の軸146及び第4の軸148は、第1のブリッジ構造102の第1の軸142及び第2の軸144に対して、ある角度(すなわち、傾斜角)だけ傾けることができ、その角度は90度の約数である。例えば、第1の軸142と第3の軸146との間の傾斜角145は約45度とすることができ、第2の軸144と第4の軸148との間の傾斜角149は約45度とすることができる。異なるブリッジ構造の軸間の傾斜角145、149は、特定の角度センサのブリッジ構造の数に少なくとも部分的に基づいて異なることができることは理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、異なるブリッジ構造の軸間の傾斜角は、約-90度~約90度の任意の角度を含むことができる。
【0018】
第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112はそれぞれ複数の磁気抵抗素子を含む。例えば、図1に示されるように、第1の正弦ブリッジ104は複数の磁気抵抗素子124a~124dを含み、第1の余弦ブリッジ106は複数の磁気抵抗素子126a~126dを含み、第2の正弦ブリッジ114は複数の磁気抵抗素子134a~134dを含み、第2の余弦ブリッジ116は複数の磁気抵抗素子136a~136dを含む。図1は、各ブリッジ構造が4つの磁気抵抗素子を有することを示すが、本明細書において説明されるブリッジ構造は、角度センサ100の特定の適用例に少なくとも部分的に基づいて、それより多くの、又は少ない磁気抵抗素子を含む場合があることは理解されたい。
【0019】
第1の正弦ブリッジ104、第1の余弦ブリッジ106、第2の正弦ブリッジ114及び第2の余弦ブリッジ116はそれぞれ、電圧源端子(例えば、Vcc)162に結合される第1の端子と、接地端子160に結合される第2の端子とを有することができる。他の実施形態では、第1の正弦ブリッジ104、第1の余弦ブリッジ106、第2の正弦ブリッジ114及び第2の余弦ブリッジ116はそれぞれ、電流源端子(例えば、Icc)に結合される第1の端子と、接地端子160に結合される第2の端子とを有することができる。
【0020】
ここで、図1Aを参照すると、角度センサ100が、基板170の第1の表面172上に配置される第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112を含む。角度センサ100は、磁石150が軸152の周りを回転するのに応じて、磁石150によって生成される磁場154の方向を検出するように構成することができる。磁石150はN極156及びS極158を含むことができ、磁場154(例えば、磁場の磁束線)がN極156とS極158との間に延在することができる。
【0021】
角度センサ100は、複数の異なる軸142、144、146、148のそれぞれに沿った磁場154の投影を測定することができる。例えば、第1の正弦ブリッジ104は第1の軸142に沿った磁場154の成分を測定し、第1の軸142に沿った磁場154を示す第1の正弦波信号を生成することができる。第1の余弦ブリッジ106は第2の軸144に沿った磁場154の成分を測定し、第2の軸144に沿った磁場154を示す第1の余弦波信号を生成することができる。第2の正弦ブリッジ114は第3の軸146に沿った磁場154の成分を測定し、第3の軸146に沿った磁場154を示す第2の正弦波信号を生成することができる。第2の余弦ブリッジ116は第4の軸148に沿った磁場154の成分を測定し、第4の軸148に沿った磁場154を示す第2の余弦波信号を生成することができる。図4及び図5に関して後に更に詳細に説明されるように、第1の正弦ブリッジ104、第1の余弦ブリッジ106、第2の正弦ブリッジ114及び第2の余弦ブリッジ116の出力は、磁場154の方向を特定するために、平均することができるか、又は別の方法で比較することができる。
【0022】
正弦ブリッジ104、第1の余弦ブリッジ106、第2の正弦ブリッジ114及び第2の余弦ブリッジ116がそれぞれ異なる軸142、144、146、148に対して位置決めされるので、第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112はそれぞれ少なくとも2つの軸に沿った磁場154の成分を測定することができる。角度センサ100によって生成される出力信号の角度誤差パーセンテージをブリッジ構成要素の数に対応する約数だけ低減できるように、第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112は、異なる角度における磁場154の成分を測定することができる。
【0023】
例えば、第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112によって生成される信号の角度誤差は周期的である可能性がある。しかしながら、図1及び図1Aに示されるように、各ブリッジ構造からの信号に関連付けられるそれぞれの角度誤差が互いに正反対であるような傾斜角で、第2のブリッジ構造112の軸を第1のブリッジ構造102の軸に対して傾けることができる。第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112の出力を平均することができるか、又は2つの出力間の平均値を求めることができ、角度センサ100内のブリッジ構造の数、ここでは2つに部分的に基づいて低減された誤差角度を有する。一実施形態において、第1の軸142と第3の軸146との間の傾斜角145及び第2の軸144と第4の軸148との間の傾斜角149は、角度センサ100の角度誤差を低減するように選択することができる。
【0024】
ここで図1Bを参照すると、磁場検知素子175(例えば、MR素子、GMR素子)が、基板上の上方にわたって配置される複数の層を含む。磁場検知素子175は、図1及び図1Aに関して上記で説明される磁気抵抗素子、及び図2に関して後に説明される磁気抵抗素子と同じ、又は概ね類似とすることができる。
【0025】
基板の上面が図1Bの底部にある下端の線として示される。一実施形態において、磁場検知素子175を含む角度センサの角度誤差を低減するように、磁場検知素子175の基準層のピンニング強度又はピンニングファクタを変更することができる。例えば、特定のブリッジ構造の1つ以上の磁気抵抗素子の層のピンニングファクタが高くなるのに応じて、ブリッジ構造の角度誤差が減少する。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明される各ブリッジ構造は、複数の磁気抵抗素子を含むことができる。各磁気抵抗素子は基準層及びフリー層を含むことができる。基準層のピンニング(又はピンニングファクタ)は約1kOeから約3kOeに及ぶことができる。いくつかの実施形態において、基準層のピンニング(又はピンニングファクタ)は、約1.2kOeから約2.5kOeに及ぶことができる。しかしながら、基準層のピンニング(又はピンニングファクタ)は、角度センサの適用例に少なくとも部分的に基づいて異なることができることは理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、基準層のピンニング(又はピンニングファクタ)は、1kOeより小さく、又は3kOeより大きくすることができる。
【0027】
一実施形態において、基準層は、限定はしないが、強磁性層180cのような強磁性層を指すことができる。スペーサ層は磁場検知素子175の感度特性(例えば、感度軸)を変更することができるので、基準層は、ピン止め層180のうちの、このスペーサ層(ここでは、スペーサ(CU)層182)と接合している層を指すことができる。フリー層及び基準層は後に更に十分に説明される。
【0028】
図1Bの左側において、各層が機能名によって特定される。図1Bの右側には、機能層を形成することができるサブ層の磁気特性が示される。一般に、磁性材料は、様々な磁気特性を有することができ、限定はしないが、強磁性、反強磁性及び非磁性を含む、種々の用語によって分類することができる。様々なタイプの磁性材料の説明は、本明細書では詳述されない。
【0029】
図示されるように、磁場検知素子175は、基板の上方にわたって配置されるシード層176と、シード層176の上方にわたって配置される反強磁性ピンニング層178と、反強磁性ピンニング層176の上方にわたって配置されるピン止め層180とを含むことができる。ピン止め層180は、第1の強磁性ピン止め層180aと、第2の強磁性ピン止め層180cと、その間に配置されるスペーサ層180bとから構成することができる。
【0030】
また、磁場検知素子175は、第2の強磁性ピン止め層180cの上方にわたって配置されるスペーサ層182と、スペーサ層182の上方にわたって配置されるフリー層184とを含むことができる。スペーサ層180bは非磁性金属層である。スペーサ182も非磁性層であり、GMRの場合には金属、TMRの場合には絶縁体とすることができる。フリー層184は、第1の強磁性フリー層184a及び第2の強磁性フリー層184bから構成することができる。
【0031】
磁場検知素子175を保護するために、フリー層184の上方にわたってキャップ層186を配置することができる。
【0032】
磁場検知素子175の層の厚さの例がナノメートル単位で示される。従来の先行技術のGMR素子の層の材料の例が原子記号によって示される。
【0033】
いくつかの層内に矢印が示されており、矢印は、磁場検知素子175が外部磁場を受けないときの層の磁場の方向を示すか、又は磁場の方向である。紙面から出る矢印が円内の丸印として示され、紙面に入る矢印が円内のバツ印として示される。
【0034】
下から上向きに層を考えるとき、シード層176は、基板上に規則的な結晶構造を設けるために使用され、その結晶構造が、上方の層の結晶特性に影響を及ぼす。
【0035】
反強磁性ピンニング層178に関して、反強磁性ピンニング層178内のサブ層(すなわち、層部分)は、右矢印及び左矢印によって示される交互の異なる方向を指し示す磁場を有する傾向があり、結果として、反強磁性ピンニング層は0の正味の磁場を有する。反強磁性ピンニング層178の上面は、1つの方向を指し示す磁気モーメントを有する傾向があり、ここでは左を指し示す。
【0036】
一実施形態において、強磁性ピン止め層180cのピンニングファクタを高めることによって、角度センサの角度誤差パーセンテージを低減することができる。例えば、磁場検知素子175の層のピンニングファクタを変更するために、形状、厚さ又は他の形の寸法を変更して、磁場検知素子175の層のピンニングファクタを高めることができる。
【0037】
ピンニングファクタは、少なくとも2つの異なる技法によって変更(又は生成)することができる。後に更に詳細に説明されるように、いくつかの実施形態において、合成反強磁性体(SAF:synthetic antiferromagnet)を用いてピンニングファクタを変更(又は生成)することができる。
【0038】
他の実施形態では、第1の強磁性ピン止め層180aと反強磁性ピンニング層178との間のピンニングを変更することによって、ピンニングファクタを変更(又は生成)することができる。例えば、ピンニングファクタを高めるために、スペーサ180bを薄くすることによって、又はスペーサ180bの材料を変更すること(例えば、Ruの代わりにRh)によって、第1の強磁性ピン止め層180aと第2の強磁性ピン止め層180cとの間の結合を強めることができる。いくつかの実施形態において、更なる結合がスペーサ180bを通しての結合を相殺できるように、磁場検知素子175が配置される基板の表面を平滑にすることができるか、又は基板の表面粗さを低減することができる。第1の強磁性ピン止め層180aによって放出される磁場(例えば、磁場の磁束線)を第2の強磁性ピン止め層180cによって補償できるように、第1の強磁性ピン止め層180a及び第2の強磁性ピン止め層180cの厚さ及び磁化のバランスをとり、SAFのバランスを保つことができる。いくつかの実施形態において、反強磁性ピンニング層178を厚くして、反強磁性ピンニング層178の異方性を強めることができる。
【0039】
ピン止め層180に関して、第1の強磁性ピン止め層180aは反強磁性ピンニング層178の上面に結合する傾向があり、それゆえ、第1の強磁性ピン止め層180a内の磁場は、反強磁性ピンニング層178の上面における磁気モーメントに平行に揃うことができ、ここでは左を指し示す。
【0040】
第1の強磁性ピン止め層180aと第2の強磁性ピン止め層180cとの間のスペーサ層180bの存在に起因して、第2の強磁性ピン止め層180cは、第1の強磁性ピン止め層180aと反強磁性的に結合する傾向があり、それゆえ、他の方向を指し示す磁場を有し、ここでは右を指し示すように示される。3つの層180a、180b、180cの組合せは、合成反強磁性構造又は層と呼ぶことができる。
【0041】
第1のフリー層184a及び第2のフリー層184bは、外部磁場が存在しない場合に、紙面から出るように指し示すそれぞれの磁場を有する。この指し示す方向は、紙面から出るように指し示す方向に沿って特定の異方性を生み出すことによって達成することができる。その異方性は、それぞれの磁場検知素子(例えば、GMR素子)の形状によって生み出すことができる。例えば、異方性は、ヨーク形状を有するように磁場検知素子175をパターニングすることによって(平面図)、又は結晶若しくは磁気異方性によって生み出すことができる。ヨーク形状を作り出すことによって、フリー層184は優先軸(ヨーク軸)を有する。ヨーク軸が基準磁化に対して垂直である場合には、交差異方性(crossed anisotropy)を達成することができ、それにより、フリー層異方性の秩序場拡張(field extension of the order)に対して線形応答が得られるようにする。
【0042】
動作時に、磁場検知素子175が矢印188の方向を指し示す外部磁場に晒されるとき、強磁性フリー層184a、184b内の磁場は、第2の強磁性ピン止め層180c内の磁場が指し示す方向に更に整列する(又は完全に整列する、すなわち、右を指し示す)ように、右に回転する傾向がある。一実施形態において、スペーサ層180bを通しての第1の強磁性ピン止め層180aと第2の強磁性ピン止め層180cとの間の結合は、Ruderman-Kittel-Kasuya-Yosida(RKKY)結合と呼ぶことができる。ピン止め層180a、180cは、外部磁場に反応しない単一のユニットとしての役割を果たすことができる。したがって、ピンニング層178は、ピン止め層180a、180cの感度の方向及び軸を固定するように構成することができる。例えば、ピン止め層180内の磁化は、反強磁性ピンニング層によってピン止めされ、回転しない。強磁性フリー層184a、184b内の磁場の回転量は、外部磁場の大きさによって決まる。強磁性フリー層184a、184b内の磁場と、第2の強磁性ピン止め層180c内の磁場の方向とが整列するほど、磁場検知素子175の抵抗が下がる傾向がある。
【0043】
逆に、GMR素子が矢印188の正反対の方向を指す磁場に晒されるとき、フリー層184内の磁場は、第2の強磁性ピン止め層180c内の磁場が指し示す方向と更に非整列になる(又は完全に非整列になる、すなわち、左を指し示す)ように、左に回転する傾向がある。回転量は、外部磁場の大きさによって決まる。強磁性フリー層184a、184b内の磁場と、第2の強磁性ピン止め層180c内の磁場の方向とが非整列になるほど、磁場検知素子175の抵抗が上がる傾向がある。
【0044】
ここで図2及び図2Bを参照すると、角度センサ200が第1のブリッジ構造202、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232を含む。角度センサ200は角度センサ100に類似とすることができるが、角度センサ200は4つのブリッジ構造を有する。
【0045】
第1のブリッジ構造202は第1の正弦ブリッジ204及び第1の余弦ブリッジ206を含み、第2のブリッジ構造212は、第2の正弦ブリッジ214及び第2の余弦ブリッジ216を含む。第3のブリッジ構造222は第3の正弦ブリッジ224及び第3の余弦ブリッジ226を含み、第4のブリッジ構造232は第4の正弦ブリッジ234及び第4の余弦ブリッジ236を含む。角度センサ200は、第1の正弦ブリッジ204、第1の余弦ブリッジ206、第2の正弦ブリッジ214、第2の余弦ブリッジ216、第3の正弦ブリッジ224、第3の余弦ブリッジ226、第4の正弦ブリッジ234及び第4の余弦ブリッジ236のそれぞれから生成される信号に部分的に基づいて、磁場の方向を検出するように構成することができる。
【0046】
例えば、第1のブリッジ構造202、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232はそれぞれ、異なる軸に関する磁場成分の正弦及び余弦を測定することができる。第1のブリッジ構造202の第1の正弦ブリッジ204、第2のブリッジ構造112の第2の正弦ブリッジ214、第3のブリッジ構造222の第3の正弦ブリッジ224及び第4のブリッジ構造232の第4の正弦ブリッジ234は、磁場の正弦を測定することができる。第1のブリッジ構造202の第1の余弦ブリッジ206、第2のブリッジ構造212の第2の余弦ブリッジ216、第3のブリッジ構造222の第3の余弦ブリッジ226及び第4のブリッジ構造232の第4の余弦ブリッジ236は、磁場の余弦を測定することができる。
【0047】
第1のブリッジ構造202、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232のそれぞれの正弦ブリッジ及び余弦ブリッジは、異なる軸に沿った磁場の投影及び/又は特性を測定することができる。例えば、図2に示されるように、第1の正弦ブリッジ204は第1の軸250に沿って配置され、第1の余弦ブリッジ206は第2の軸252に沿って配置される。一実施形態において、第1の軸250と第2の軸252との間の角度251は約90度とすることができる(図2A)。第2の正弦ブリッジ214は第3の軸254に沿って配置され、第2の余弦ブリッジ216は第4の軸258に沿って配置される。一実施形態において、第3の軸254と第4の軸258との間の角度255は約90度とすることができる(図2A)。
【0048】
また、図2に示されるように、第3の正弦ブリッジ224は第5の軸260に沿って配置され、第3の余弦ブリッジ226は第6の軸262に沿って配置される。一実施形態において、第5の軸260と第6の軸262との間の角度261は約90度とすることができる(図2A)。第4の正弦ブリッジ234は第7の軸264に沿って配置され、第4の余弦ブリッジ236は第8の軸268に沿って配置される。一実施形態において、第7の軸264と第8の軸266との間の角度265は約90度とすることができる(図2A)。
【0049】
異なるブリッジ構造は互いに種々の傾斜角において傾けることができる。例えば、図2Bに示されるように、各ブリッジ構造の正弦ブリッジを考えると、第3の軸254は第1の軸250に対して第1の傾斜角253に配置することができる。第4の軸258は第2の軸252に対して第2の傾斜角257に配置することができる。第7の軸264は第5の軸260に対して第3の傾斜角263に配置することができる。第8の軸268は第6の軸262に対して第4の傾斜角267に配置することができる。一実施形態において、第1の傾斜角253、第2の傾斜角257、第3の傾斜角263及び第4の傾斜角267は異なることができる。いくつかの実施形態において、第1の傾斜角253、第2の傾斜角257、第3の傾斜角263及び第4の傾斜角267のうちの1つ以上は同じとすることができる。いくつかの実施形態において、第5の軸260は第1の軸250に対して第5の傾斜角269に配置することができる。異なるブリッジ構造の軸間の傾斜角は約-90度~約90度の任意の角度を含むことができることは理解されたい。
【0050】
第1の傾斜角253、第2の傾斜角257、第3の傾斜角263及び第4の傾斜角267は、約90度の約数、及び/又は約45度の約数とすることができる。いくつかの実施形態において、第1の傾斜角253、第2の傾斜角257、第3の傾斜角263及び第4の傾斜角267は、第1のブリッジ構造202、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232の誤差パーセンテージが正反対になるように選択することができる。
【0051】
第1の傾斜角253、第2の傾斜角257、第3の傾斜角263及び第4の傾斜角267は、第1のブリッジ構造202、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232の異なる軸のそれぞれが均等に離間されるように選択することができる。例えば、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232の異なる軸は第1のブリッジ構造202に対して傾けることができる。異なる傾斜角は互いの約数又は倍数とすることができる。そのような実施形態において、第2のブリッジ構造212及び第1のブリッジ構造202の軸間の第1の傾斜角は約45度とすることができ、第3のブリッジ構造222及び第1のブリッジ構造202の軸間の第2の傾斜角は約22.5度とすることができ、第4のブリッジ構造232及び第1のブリッジ構造202の軸間の第3の傾斜角は約67.5度とすることができる。
【0052】
異なるブリッジ構造の軸間の傾斜角は、角度センサの特定の適用例に少なくとも基づいて選択できることは理解されたい。いくつかの実施形態において、異なるブリッジ構造の軸間の傾斜角は反復方法を用いて選択することができる。例えば、互いに約90度に配置される余弦ブリッジ及び正弦ブリッジを有する第1のブリッジ構造を生成することができる。その際、後続の各ブリッジ構造は約90度に配置される余弦ブリッジ及び正弦ブリッジを含むことができ、後続の各ブリッジ構造は、それぞれの角度センサ内の第1のブリッジ構造又は任意の他のブリッジ構造に対して、ある傾斜角で傾けることができる。このようにして、後続の各ブリッジ構造の余弦ブリッジは、第1のブリッジ構造の余弦ブリッジに対して傾けることができ、後続の各ブリッジ構造の正弦ブリッジは、第1のブリッジ構造の正弦ブリッジに対して傾けることができる。いくつかの実施形態において、角度センサはブリッジ構造の1つ以上のグループを含むことができ、ブリッジ構造の各グループは2つ以上のブリッジ構造を有する。
【0053】
第1のブリッジ構造202、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232はそれぞれ複数の磁気抵抗素子を含む。例えば、図2に示されるように、第1の正弦ブリッジ204は複数の磁気抵抗素子208a~208dを含み、第1の余弦ブリッジ206は複数の磁気抵抗素子210a~210dを含み、第2の正弦ブリッジ214は複数の磁気抵抗素子218a~218dを含み、第2の余弦ブリッジ216は複数の磁気抵抗素子220a~220dを含む。第3の正弦ブリッジ224は複数の磁気抵抗素子228a~228dを含み、第3の余弦ブリッジ226は複数の磁気抵抗素子230a~230dを含み、第4の正弦ブリッジ234は複数の磁気抵抗素子240a~240dを含み、第4の余弦ブリッジ236は複数の磁気抵抗素子238a~238dを含む。
【0054】
第1の正弦ブリッジ204、第1の余弦ブリッジ206、第2の正弦ブリッジ214、第2の余弦ブリッジ216、第3の正弦ブリッジ224、第3の余弦ブリッジ226、第4の正弦ブリッジ234及び第4の余弦ブリッジ236の第1の端子は、電圧源端子(例えば、Vcc)272に結合することができる。第1の正弦ブリッジ204、第1の余弦ブリッジ206、第2の正弦ブリッジ214、第2の余弦ブリッジ216、第3の正弦ブリッジ224、第3の余弦ブリッジ226、第4の正弦ブリッジ234及び第4の余弦ブリッジ236の第2の端子は、接地端子274に結合することができる。
【0055】
ここで図3を参照すると、プロット図300が、3つの異なる角度センサ302、304、306に関して角度センサの基準層のピンニングファクタが変化するときの角度センサに関する角度誤差(例えば、絶対角度誤差)の変化を示し、角度誤差値が垂直軸(例えば、y軸)に沿って与えられ、ピンニングファクタが水平軸(例えば、x軸)に沿ってキロエルステッド単位(kOe)において与えられる。詳細には、ライン302は、1つのブリッジ構造を有する角度センサに関する角度誤差を示し、ライン304は、2つのブリッジ構造を有する角度センサ(例えば、図1の角度センサ100)に関する角度誤差を示し、ライン306は4つのブリッジ構造を有する角度センサ(例えば、図2の角度センサ200)に関する角度誤差を示す。
【0056】
図3に示されるように、ピンニングファクタが高くなるのに応じて、絶対角度誤差が減少する。さらに、角度センサ内のブリッジ構造の数が増えるのに応じて、絶対角度誤差が減少する。例えば、ライン302は1つのブリッジ構造を有する角度センサに対応する。ライン302に関して、ピンニングファクタが第1のピンニングファクタ値310、ここでは1kOeから、第2のピンニングファクタ値320、ここでは3kOeまで高くなるのに応じて、角度誤差パーセンテージが減少する。
【0057】
しかしながら、角度センサ内のブリッジ構造の数を増やすことによって、角度センサに関する絶対角度誤差のより大きい減少を達成することができる。例えば、ライン304は2つのブリッジ構造を有する角度センサに対応する。ライン304に関して、第1のピンニングファクタ値310、ここでは1kOeにおいて、2つのブリッジ構造を有する角度センサは、ライン302によって表される1つのブリッジ構造を有する角度センサに比べて、小さい絶対角度を有する。さらに、ピンニングファクタが第1のピンニングファクタ値310、ここでは1kOeから、第2のピンニングファクタ値320、ここでは3kOeまで高くなるのに応じて、ライン304(すなわち、2つのブリッジ構造を有する角度センサ)は、ライン302によって表される1つのブリッジ構造を有する角度センサに比べて、受ける角度誤差の減少が大きい(例えば、ライン302に比べて、ライン304の変化率が大きい)。
【0058】
ライン306は4つのブリッジ構造を有する角度センサに対応し、第1のピンニングファクタ値310、ここでは1kOeにおいて、4つのブリッジ構造を有する角度センサは、2つのブリッジ構造を有する角度センサ(ライン304)及び/又は1つのブリッジ構造を有する角度センサ(ライン302)に比べて小さい絶対角度誤差を有する。さらに、ピンニングファクタが第1のピンニングファクタ値310、ここでは1kOeから、第2のピンニングファクタ値320、ここでは3kOeまで高くなるのに応じて、ライン306(すなわち、4つのブリッジ構造を有する角度センサ)は、ライン304によって表される2つのブリッジ構造を有する角度センサ及び/又はライン302によって表される1つのブリッジ構造を有する角度センサに比べて、受ける角度誤差の減少が大きい(例えば、ライン304及びライン302に比べて、ライン306の変化率が大きい)。それゆえ、角度センサのピンニングファクタを高めることによって、角度センサ内のブリッジ構造の数を増やすことによって、又は両方の組合せによって、角度センサに関する角度誤差パーセンテージを低減することができる。
【0059】
ここで図4を参照すると、ブロック図400が、第1の余弦ブリッジモジュール402、第1の正弦ブリッジモジュール404、第2の余弦ブリッジモジュール406及び第2の正弦ブリッジモジュール408を含む。一実施形態において、第1の余弦ブリッジモジュール402、第1の正弦ブリッジモジュール404、第2の余弦ブリッジモジュール406及び第2の正弦ブリッジモジュール408は、図1の第1の余弦ブリッジ106、第1の正弦ブリッジ104、第2の余弦ブリッジ114及び第2の正弦ブリッジ114の出力にそれぞれ対応することができる。
【0060】
回路400は、図1の角度センサ100の構成要素に結合することができ、第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112によって生成される出力信号(正弦波信号及び余弦波信号)を処理して、第1のブリッジ構造102及び第2のブリッジ構造112によって測定される磁場の方向を示す出力信号を生成するように構成することができる。
【0061】
第1の余弦ブリッジモジュール402の出力が第1の逆正接モジュール410の第1の入力に結合され、第1の正弦ブリッジモジュール404の出力が第1の逆正接モジュール410の第2の入力に結合される。一実施形態において、第1の余弦ブリッジモジュール402の出力は第1の余弦波信号とすることができ、第1の正弦ブリッジモジュール404の出力は第1の正弦波信号とすることができる。第1の逆正接モジュール410は、第1の正弦波信号及び第1の余弦波信号に基づいて、第1の逆正接値を計算することができる。
【0062】
第1の逆正接モジュール410の出力が、加算モジュール418の第1の入力に結合され、第1の逆正接値を与える。
【0063】
第2の余弦ブリッジモジュール406の出力が第2の逆正接モジュール412の第1の入力に結合され、第2の正弦ブリッジモジュール408の出力が第2の逆正接モジュール412の第2の入力に結合される。一実施形態において、第2の余弦ブリッジモジュール404の出力は第2の余弦波信号とすることができ、第2の正弦ブリッジモジュール404の出力は第2の正弦波信号とすることができる。第2の逆正接モジュール412は、第2の正弦波信号及び第2の余弦波信号に基づいて、第2の逆正接値を計算することができる。
【0064】
第2の逆正接モジュール412の出力が、差分素子414の第1の入力に結合され、第2の逆正接値を与える。差分素子414の第2の入力が傾斜角416を受信するように結合される。傾斜角416は、正又は負の角度値とすることができる。
【0065】
傾斜角416は、第1のブリッジ構造のブリッジ又は軸と第2のブリッジ構造(又はそれぞれの角度センサ内の任意の他のブリッジ構造)のブリッジ又は軸との間の角度差に対応することができる。例えば、一実施形態において、傾斜角416は、図1の第2のブリッジ構造112の第3の軸146及び第4の軸148が図1の第1のブリッジ構造102の第1の軸142及び第2の軸144に対してそれぞれ傾けられる傾斜角145、149に対応することができる。別の言い方をすると、傾斜角416は、図1の第1の軸142と第3の軸146との間の第1の傾斜角145に、及び/又は図1の第2の軸144と第4の軸148との間の第2の傾斜角149に対応することができる。
【0066】
差分素子414は、第2の逆正接値に傾斜角値416を適用して、差分値(例えば、第3の逆正接値)を生成することができる。いくつかの実施形態において、差分素子414は、第2の逆正接値から傾斜角416を減算して、差分値を生成することができる。他の実施形態では、差分素子414は、第2の逆正接値に負の傾斜角416を加算し、差分値を生成することができる。
【0067】
差分素子414の出力が、加算モジュール418の第2の入力に結合することができる。加算モジュール418は、第1の逆正接値及び差分値(例えば、第3の逆正接値)を受信し、第1の逆正接値及び差分値の平均値を計算することができる。加算モジュール418の出力は、求められた平均値である出力信号420である。一実施形態において、出力信号420は、磁場の方向を示すことができる。
【0068】
ここで図5を参照すると、回路500が、第1のブリッジ構造の出力に対応する第1の余弦ブリッジモジュール502及び第1の正弦ブリッジモジュール504と、第2のブリッジ構造の出力に対応する第2の余弦ブリッジモジュール506及び第2の正弦ブリッジモジュール508とを含む。回路500は、第3のブリッジ構造の出力に対応する第3の余弦ブリッジモジュール510及び第3の正弦ブリッジモジュール512と、第4のブリッジ構造の出力に対応する第4の余弦ブリッジモジュール514及び第4の正弦ブリッジモジュール516とを更に含む。
【0069】
回路500は、図2の角度センサ200の構成要素に結合することができ、第1のブリッジ構造202、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232によって生成される出力信号(正弦波信号及び余弦波信号)を処理して、第1のブリッジ構造202、第2のブリッジ構造212、第3のブリッジ構造222及び第4のブリッジ構造232によって測定される磁場の方向を示す出力信号を生成するように構成することができる。
【0070】
一実施形態において、第1の余弦ブリッジモジュール502、第1の正弦ブリッジモジュール504、第2の余弦ブリッジモジュール506、第2の正弦ブリッジモジュール508、第3の余弦ブリッジモジュール510、第3の正弦ブリッジモジュール512、第4の余弦ブリッジモジュール514及び第4の正弦ブリッジモジュール516は、図2の第1の余弦ブリッジ206、第1の正弦ブリッジ204、第2の余弦ブリッジ216、第2の正弦ブリッジ214、第3の余弦ブリッジ226、第3の正弦ブリッジ224、第4の余弦ブリッジ236及び第4の正弦ブリッジ234の出力にそれぞれ対応することができる。
【0071】
図5に示されるように、第1の余弦ブリッジモジュール502の出力が第1の逆正接モジュール520の第1の入力に結合され、第1の正弦ブリッジモジュール504の出力が第1の逆正接モジュール520の第2の入力に結合される。一実施形態において、第1の余弦ブリッジモジュール502の出力は第1の余弦波信号とすることができ、第1の正弦ブリッジモジュール504の出力は第1の正弦波信号とすることができる。第1の逆正接モジュール520は、第1の正弦波信号及び第1の余弦波信号に基づいて、第1の逆正接値を計算することができる。
【0072】
第1の逆正接モジュール520の出力が、加算モジュール550の第1の入力に結合され、第1の逆正接値を与える。
【0073】
第2の余弦ブリッジモジュール506の出力が第2の逆正接モジュール522の第1の入力に結合され、第2の正弦ブリッジモジュール508の出力が第2の逆正接モジュール522の第2の入力に結合される。一実施形態において、第2の余弦ブリッジモジュール506の出力は第2の余弦波信号とすることができ、第2の正弦ブリッジモジュール508の出力は第2の正弦波信号とすることができる。第2の逆正接モジュール522は、第2の正弦波信号及び第2の余弦波信号に基づいて、第2の逆正接値を計算することができる。
【0074】
第2の逆正接モジュール522の出力が、第1の差分素子532の第1の入力に結合され、第2の逆正接値を与える。第1の差分素子532の第2の入力が、第1の傾斜角542を受信するように結合される。第1の傾斜角542は、正又は負の角度値とすることができる。
【0075】
第1の傾斜角542、第2の傾斜角544及び第3の傾斜角546は、異なるブリッジ構造のブリッジ又は軸間の傾斜角(例えば、図2Bの傾斜角253、257、263、267)に対応することができる。例えば、第1の傾斜角542は第1のブリッジ構造のブリッジ又は軸と、第2のブリッジ構造(又は任意の他のブリッジ構造)のブリッジ又は軸との間の角度差に対応することができる。一実施形態において、第1の傾斜角542は、図2の第2のブリッジ構造212の第3の軸254及び第4の軸258が図2の第1のブリッジ構造202の第1の軸250及び第2の軸252に対してそれぞれ傾けられる角度に対応することができる。別の言い方をすると、第1の傾斜角542は、図2の第1の軸250と第3の軸254との間の角度に、及び/又は図2の第2の軸252と第4の軸258との間の角度に対応することができる。第2の傾斜角544及び第3の傾斜角546は後に更に詳細に説明される。
【0076】
第1の差分素子532は、第2の逆正接値に第1の傾斜角542を適用し、第1の差分値を生成することができる。いくつかの実施形態において、第1の差分素子532は、第2の逆正接値から第1の傾斜角542を減算し、第1の差分値を生成することができる。他の実施形態では、第1の差分素子532は、第2の逆正接値に負の第1の傾斜角542を加算し、第1の差分値を生成することができる。
【0077】
第1の差分素子532の出力が加算モジュール550の第2の入力に結合することができる。
【0078】
第3の余弦ブリッジモジュール510の出力が第3の逆正接モジュール524の第1の入力に結合され、第3の正弦ブリッジモジュール512の出力が第3の逆正接モジュール524の第2の入力に結合される。一実施形態において、第3の余弦ブリッジモジュール510の出力は第3の余弦波信号とすることができ、第3の正弦ブリッジモジュール512の出力は第3の正弦波信号とすることができる。第3の逆正接モジュール524は、第3の正弦波信号及び第3の余弦波信号に基づいて、第3の逆正接値を計算することができる。
【0079】
第3の逆正接モジュール524の出力が、第2の差分素子534の第1の入力に結合され、第3の逆正接値を与える。第2の差分素子534の第2の入力が、第2の傾斜角544を受信するように結合される。第2の傾斜角544は、正又は負の角度値とすることができる。
【0080】
第2の傾斜角544は、第1のブリッジ構造のブリッジ又は軸と第3のブリッジ構造(又は任意の他のブリッジ構造)のブリッジ又は軸との間の角度差に対応することができる。一実施形態において、第2の傾斜角542は、図2の第3のブリッジ構造222の第5の軸260及び第6の軸262が図2の第1のブリッジ構造202の第1の軸250及び第2の軸252に対してそれぞれ傾けられる角度に対応することができる。別の言い方をすると、第2の傾斜角544は、図2の第1の軸250と第5の軸260との間の角度に、及び/又は図2の第2の軸252と第6の軸262との間の角度に対応することができる。
【0081】
第2の差分素子534は、第3の逆正接値に第2の傾斜角544を適用し、第2の差分値を生成することができる。いくつかの実施形態において、第2の差分素子534は、第3の逆正接値から第2の傾斜角544を減算し、第2の差分値を生成することができる。他の実施形態では、第3の逆正接値に負の第2の傾斜角544を加算し、第2の差分値を生成することができる。
【0082】
第2の差分素子534の出力が加算モジュール550の第3の入力に結合することができる。
【0083】
第4の余弦ブリッジモジュール514の出力が第4の逆正接モジュール526の第1の入力に結合され、第4の正弦ブリッジモジュール516の出力が第4の逆正接モジュール526の第2の入力に結合される。一実施形態において、第4の余弦ブリッジモジュール514の出力は第4の余弦波信号とすることができ、第4の正弦ブリッジモジュール516の出力は第4の正弦波信号とすることができる。第4の逆正接モジュール526は、第4の正弦波信号及び第4の余弦波信号に基づいて、第4の逆正接値を計算することができる。
【0084】
第4の逆正接モジュール526の出力が、第3の差分素子536の第1の入力に結合され、第4の逆正接値を与える。第3の差分素子536の第2の出力が、第3の傾斜角546を受信するように結合される。第3の傾斜角546は、正又は負の角度値とすることができる。
【0085】
第3の傾斜角546は、第1のブリッジ構造のブリッジ又は軸と、第4のブリッジ構造(又は任意の他のブリッジ構造)のブリッジ又は軸との間の角度差に対応することができる。一実施形態において、第3の傾斜角546は、図2の第4のブリッジ構造232の第7の軸264及び第8の軸268が図2の第1のブリッジ構造202の第1の軸250及び第2の軸252に対してそれぞれ傾けられる角度に対応することができる。別の言い方をすると、第3の傾斜角546は、図2の第1の軸250と第7の軸264との間の角度に、及び/又は図2の第2の軸252と第8の軸268との間に対応することができる。いくつかの実施形態において、第3の傾斜角546は、第1の傾斜角542と第2の傾斜角544との合成に等しくすることができる。
【0086】
第3の差分素子536は、第4の逆正接値に第3の傾斜角546を適用し、第3の差分値を生成することができる。いくつかの実施形態において、第3の差分素子536は、第4の逆正接値から第3の傾斜角546を減算し、第3の差分値を生成することができる。他の実施形態では、第3の差分素子536は、第4の逆正接値に負の第3の傾斜角546を加算し、第3の差分値を生成することができる。
【0087】
第3の差分素子536の出力が加算モジュール550の第4の入力に結合することができる。
【0088】
加算モジュール550は、第1の逆正接値、並びに第1、第2及び第3の差分値を受信し、第1の逆正接値、並びに第1、第2及び第3の差分値の平均値を計算することができる。一実施形態において、平均値は磁場の方向に対応することができる。したがって、加算モジュール550の出力は、磁場の方向を示す出力信号552である。
【0089】
ここで図6を参照すると、磁場の方向を検出するための方法600が、602において、第1の軸に沿った磁場を示す第1の正弦波信号及び第2の軸に沿った磁場を示す第1の余弦波信号を生成することによって開始する。一実施形態において、第1の軸は第2の軸と直交することができる。例えば、第1の軸と第2の軸との間の角度は約90度とすることができる。
【0090】
ブロック604において、第3の軸に沿った磁場を示す第2の正弦波信号及び第4の軸に沿った磁場を示す第2の余弦波信号を生成することができる。一実施形態において、第3の軸は第4の軸と直交することができる。例えば、第3の軸と第4の軸との間の角度は約90度とすることができる。
【0091】
角度センサは、異なる軸に沿った磁場を検出するように向けられる1つ以上の磁気抵抗素子を有する複数のブリッジ構造を含むことができる。一実施形態において、各ブリッジ構造は、少なくとも2つの異なる軸に沿った磁場の特性を測定するように構成することができる。
【0092】
角度センサは第1のブリッジ構造及び第2のブリッジ構造を含むことができる。第1のブリッジ構造は、第1の軸に対して、又は第1の軸に沿って配置される第1の正弦ブリッジと、第2の軸に対して、又は第2の軸に沿って配置される第1の余弦ブリッジとを含むことができる。第2のブリッジ構造は、第3の軸に対して、又は第3の軸に沿って配置される第2の正弦ブリッジと、第4の軸に対して、又は第4の軸に沿って配置される第2の余弦ブリッジとを含むことができる。
【0093】
第1の正弦ブリッジ、第1の余弦ブリッジ、第2の正弦ブリッジ及び第2の余弦ブリッジは、磁場の特性を検知する複数の磁気抵抗素子を含むことができる。複数の磁気抵抗素子はある軸に対して配置することができる。例えば、第1の正弦ブリッジは第1の軸に対して配置される第1の複数の磁気抵抗素子を含むことができ、第1の余弦ブリッジは第2の軸に対して配置される第2の複数の磁気抵抗素子を含むことができ、第2の正弦ブリッジは第3の軸に対して配置される第3の複数の磁気抵抗素子を含むことができ、第2の余弦ブリッジは第4の軸に対して配置される第4の複数の磁気抵抗素子を含むことができる。
【0094】
各ブリッジ構造は、互いに直交するように配置される正弦ブリッジ及び余弦ブリッジを含むことができる(例えば、正弦ブリッジと余弦ブリッジとの間の角度が約90度である)。したがって、第1の軸は第2の軸と直交することができ、第3の軸は第4の軸と直交することができる。
【0095】
異なるブリッジ構造の軸は、異なる角度において磁場を検知するように、互いに異なる角度(例えば、傾斜角)に配置することができる。異なる角度において磁場を測定することにより、角度センサの角度誤差を低減することができる。例えば、各ブリッジ構造の角度誤差は周期的である可能性がある。しかしながら、第1のブリッジ構造の角度誤差は、それぞれの軸間の傾斜の角度に部分的に基づいて、第2のブリッジ構造の角度誤差の正反対にすることができる。それぞれのブリッジの角度誤差は、互いに平均又は合成されるときに、角度センサの全角度誤差パーセンテージを相殺することができるか、又はそうでなくても低減することができる。したがって、異なる角度において磁場を測定することにより、複数のブリッジ構造を有する角度センサが、ブリッジ構造の数に関連付けられる約数だけ、それぞれの角度誤差を低減することができる。
【0096】
ブロック606において、第5の軸に沿った磁場を示す第3の正弦波信号及び第6の軸に沿った磁場を示す第3の余弦波信号を生成することができる。一実施形態において、第5の軸は第6の軸と直交することができる。例えば、第5の軸と第6の軸との間の角度は約90度とすることができる。
【0097】
ブロック608において、第7の軸に沿った磁場を示す第4の正弦波信号及び第8の軸に沿った磁場を示す第4の余弦波信号を生成することができる。一実施形態において、第7の軸は第8の軸と直交することができる。例えば、第7の軸と第8の軸との間の角度は約90度とすることができる。
【0098】
本明細書において説明される角度センサは任意の数のブリッジ構造を含むことができることは理解されたい。例えば、本明細書において説明される角度センサは2つのブリッジ構造、4つのブリッジ構造、又は5つ以上のブリッジ構造を含むことができる。角度センサ内のブリッジ構造の数は、角度センサの特定の適用例に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。例えば、方法600のブロック606及び608は任意選択とすることができる。いくつかの実施形態において、ブロック606及び/又はブロック608が方法600に含まれる場合がある。しかしながら、他の実施形態では、方法600は、ブロック602、604及び610を含む場合があり、それゆえ、ブロック606及び608の1つ以上を含まない場合がある。
【0099】
それぞれのブリッジがそれに沿って位置決めされる軸は、互いに様々な異なる角度に配置することができる。例えば、同じブリッジ構造内のブリッジ及び軸(例えば、第1のブリッジ構造の第1の正弦ブリッジ及び第1の余弦ブリッジ)は、互いに直交するように配置することができる。一実施形態において、同じブリッジ構造の正弦ブリッジと余弦ブリッジとの間の角度は約90度とすることができる。
【0100】
異なるブリッジ構造のブリッジ及び軸は、互いに様々な異なる傾斜角に配置することができる。傾斜角は、第1のブリッジ構造の軸及び第2の異なるブリッジ構造の軸、及び/又は第1のブリッジ構造の正弦ブリッジと第2の異なるブリッジ構造の正弦ブリッジとの間の角度を指す場合がある。いくつかの実施形態において、傾斜角は、限定はしないが、約90度、約45度、約22.5度及び約11.25度のような、約90度の約数を含むことができる。
【0101】
異なるブリッジ構造のブリッジ及び軸は、傾斜角に関して互いに均等に離間されるように位置決めすることができる。例えば、4つのブリッジ構造を有する角度センサにおいて、4つの異なるブリッジ構造の異なるブリッジ(及び軸)間の傾斜角は、約22.5度の約数を含むことができる。そのような実施形態において、第1のブリッジ構造の(第1の軸の)第1の正弦ブリッジと、第2のブリッジ構造の第2の正弦ブリッジ(又は第3の軸)との間の傾斜角は約45度とすることができ、第1のブリッジ構造の(第1の軸の)第1の正弦ブリッジと、第3のブリッジ構造の第3の正弦ブリッジ(又は第5の軸)との間の傾斜角は約22.5度とすることができ、第1のブリッジ構造の(第1の軸の)第1の正弦ブリッジと、第4のブリッジ構造の第4の正弦ブリッジ(又は第7の軸)との間の傾斜角は約67.5度とすることができる。異なるブリッジ構造の軸間の傾斜角は、角度センサの特定の適用例に少なくとも部分的に基づいて選択することができ、傾斜角は約-90度~約90度の任意の角度を含むことができることは理解されたい。
【0102】
傾斜角は、特定の角度センサ内のブリッジ構造の数、及び所望の角度誤差低減に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、それぞれの角度センサの基準層のピンニングファクタを変更することができるか、又は基準層の所定のピンニングファクタを有する基準層を形成することができる。例えば、それぞれの角度センサの基準層のピンニングファクタを高めることによって、角度センサに関する絶対角度誤差を低減することができる。それぞれの角度センサの基準層のピンニングファクタが高められるのに応じて、絶対角度誤差を相応に低減することができる(図3を参照)。ピンニングファクタはキロエルステッド単位(kOe)において測定することができる。
【0104】
例えば、本明細書において説明される各ブリッジ構造は、複数の磁気抵抗素子を含むことができる。各磁気抵抗素子は基準層及びフリー層を含むことができる。基準層のピンニング(又はピンニングファクタ)は約1kOeから約3kOeに及ぶことができる。いくつかの実施形態において、基準層のピンニング(又はピンニングファクタ)は、約1.2kOeから約2.5kOeに及ぶことができる。しかしながら、基準層のピンニング(又はピンニングファクタ)は、角度センサの適用例に少なくとも部分的に基づいて異なることができることは理解されたい。例えば、いくつかの実施形態において、基準層のピンニング(又はピンニングファクタ)は、1kOeより小さく、又は3kOeより大きくすることができる。
【0105】
ブリッジ構造の1つ以上のブリッジを構成する磁気抵抗素子の1つ以上の層の特性を変更して、それぞれの層のピンニングファクタを高めることができる。いくつかの実施形態において、複数のブリッジ及び/又は複数のブリッジ構造を構成する磁気抵抗素子の1つ以上の層の特性を変更して、それぞれの層のピンニングファクタを高めることができる。例えば、それぞれの層の形状及び/又は厚さを変更して、それぞれの層のピンニングファクタを高めることができる。
【0106】
少なくとも2つの異なる技法によってピンニングファクタを変更(又は生成)することができる。いくつかの実施形態において、合成反強磁性体(SAF)を用いて、ピンニングファクタを変更(又は生成)することができる。他の実施形態では、ピン止め層とピンニング層との間のピンニングを変更することによって、ピンニングファクタを変更(又は生成)することができる。例えば、ピン止め層とピンニング層との間のピンニングファクタを高めるために、ピン止め層に近接し、ピンニング層から離れて配置されるスペーサ層を薄くすることによって、又はそれぞれのスペーサ層の材料を変更することによって、ピン止め層とピンニング層との間の結合を強めることができる。いくつかの実施形態において、更なる結合がスペーサ層を通しての結合を相殺できるように、磁場検知素子が配置される基板の表面を平滑にすることができるか、又は基板の表面粗さを低減することができる。第1のピン止め層によって放出される磁場(例えば、磁場の磁束線)を第2のピン止め層によって補償できるように、ピン止め層及び第2の異なるピン止め層(スペーサ層によって第1のピンニング層から分離される)の厚さ及び磁化のバランスをとり、SAFのバランスを保つことができる。いくつかの実施形態において、ピンニング層を厚くして、ピンニング層の異方性を強めることができる。
【0107】
ブリッジ構造の1つ又は複数のブリッジを構成する磁気抵抗素子の1つ以上の層のピンニングファクタは、所望の角度誤差低減に少なくとも部分的に基づいて選択することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、特定の角度センサのブリッジ構造の数を増やし、及び/又はブリッジ構造の1つ以上のブリッジ構造の基準層のピンニングファクタを高めて、それぞれの角度センサの絶対角度誤差を低減することができる。例えば、ピンニングファクタが高くなるのに応じて、絶対角度誤差が減少する。さらに、角度センサ内のブリッジ構造の数が増えるのに応じて、絶対角度誤差が減少する。それゆえ、角度センサのピンニングファクタを高めることによって、角度センサ内のブリッジ構造の数を増やすことによって、又は両方の組合せによって、角度誤差を低減することができる。
【0109】
ブロック610において、少なくとも、第1の正弦波信号、第1の余弦波信号、第2の正弦波信号、及び第2の余弦波信号に応答して、磁場の方向を計算することができる。
【0110】
一実施形態において、磁場の方向を特定するために使用される正弦波信号及び余弦波信号の数は、特定の角度センサのブリッジ構造の数に対応することができる。例えば、4つのブリッジ構造を有する角度センサに関して、少なくとも、第1の正弦波信号、第1の余弦波信号、第2の正弦波信号、第2の余弦波信号、第3の正弦波信号、第3の余弦波信号、第4の正弦波信号及び第4の余弦波信号に応答して、磁場の方向を計算することができる。
【0111】
角度センサは、1つ又は複数の正弦波信号及び1つ又は複数の余弦波信号を用いて磁場の方向を特定するように構成される回路(例えば、図4の回路400、図5の回路500)に結合することができるか、又はそのような回路を含むことができる。その回路は、対応する正弦波信号及び余弦波信号を用いて、測定された磁場に対応する逆正接値を生成するように構成される1つ以上の逆正接モジュールを含むことができる。
【0112】
各ブリッジ構造のブリッジは、少なくとも1つの逆正接モジュールに結合し、それぞれの信号を与えることができる。例えば、正弦ブリッジを結合して、逆正接モジュールに正弦波信号を与えることができ、余弦ブリッジを結合して、逆正接モジュールに余弦波信号を与えることができる。逆正接モジュールは、対応する正弦波信号及び余弦波信号を用いて、測定された磁場に対応する逆正接値を生成することができる。各ブリッジ構造からの逆正接角(φ)(又は角度)は、以下の式を用いて求めることができる。
【数1】
【0113】
ただし、Uは、測定された磁場の正弦に対応し、正弦ブリッジによって生成される正弦波信号に対応し、Uは、測定された磁場の余弦に対応し、余弦ブリッジによって生成される余弦波信号に対応する。
【0114】
逆正接値角(φ)は、特定のブリッジ構造の観点から、測定された磁場の角度に対応することができる。一実施形態において、逆正接値(角度(φ))は、ブリッジ構造ごとに求めることができる。
【0115】
その回路は、1つ以上の差分素子を更に含むことができる。差分素子を逆正接モジュールの出力に結合して、第1のブリッジ構造に対して傾けられたブリッジ構造に関する逆正接値(差分値とも呼ばれる)を生成することができる。例えば、差分素子は、第1のブリッジ構造の軸と、異なるブリッジ構造(例えば、第2のブリッジ構造、第3のブリッジ構造、第4のブリッジ構造など)の軸との間の傾斜角を適用して、差分値を生成するように構成することができる。傾斜角は、正又は負の値とすることができる。したがって、差分素子は、それぞれの逆正接値から傾斜角を減算するか、又はそれぞれの逆正接値に負の傾斜角を加算することができる。傾斜角は上記のように異なることができる。
【0116】
第1の逆正接モジュールの出力、及び1つ以上の差分素子の出力は、回路の加算素子の入力に結合することができる。一実施形態において、加算素子は、1つ以上の逆正接値及び/又は1つ以上の差分値の平均値を求め、磁場の方向を示す出力信号を生成することができる。
【0117】
例えば、加算素子は、以下の式を用いて、平均値(φ)を求めることができる。
【数2】
【0118】
角度φはそれぞれのブリッジ構造からの傾斜角値に対応する(例えば、φは第1のブリッジ構造からの傾斜角値に対応し、φは第2のブリッジ構造からの傾斜角値に対応する、など)。θは、第1のブリッジ構造と、第1のブリッジ構造とは異なる、それぞれの他のブリッジ構造との間の傾斜角に対応する(θ=0)。例えば、θは、第1のブリッジ構造と第2のブリッジ構造との間の傾斜角に対応し、θは、第1のブリッジ構造と第3のブリッジ構造との間の傾斜角に対応し、θは、第1のブリッジ構造と第4のブリッジ構造との間の傾斜角に対応する。
【0119】
Xはそれぞれの角度センサ内のブリッジ構造の数に対応する。例えば、2つのブリッジ構造を有する角度センサに関して、Xの値は2に等しい。
【0120】
求められた平均値(φ)は、磁場の方向に対応することができ、それぞれの平均値(φ)を生成するために使用されたブリッジ構造の数に対応する低減された角度誤差パーセンテージを含むことができる。
【0121】
図7を参照すると、磁場角度センサで使用されるブリッジの例はブリッジ700である。一例では、ブリッジ700は、余弦ブリッジ702及び正弦ブリッジ704を含む。
【0122】
余弦ブリッジ702は、測定された磁場の角度の余弦を示す余弦波信号VCOS728を生成する。余弦ブリッジ702は、例えば、MR素子710、MR素子712、MR素子714、及びMR素子716を含む。
【0123】
各MR素子710~716は基準方向を含む。例えば、MR素子710は基準方向720を含み、MR素子712は基準方向722を含み、MR素子714は基準方向724を含み、MR素子716は基準方向726を含む。一例では、基準方向720及び基準方向722は同一方向である。一例では、基準方向720は、基準方向724及び基準方向726の正反対(すなわち180度反対)である。
【0124】
MR素子710及び714は、電圧源VCCに結合される。MR素子712及び716は、接地706に結合される。
【0125】
正弦ブリッジ704は、測定された磁場の角度の正弦を示す正弦波信号VSIN748を生成し、余弦波信号VCOS728に直交する。正弦ブリッジ704は、例えば、MR素子730、MR素子732、MR素子734、及びMR素子736を含む。
【0126】
各MR素子730~736は、基準方向を含む。例えば、MR素子730は基準方向740を含み、MR素子732は基準方向742を含み、MR素子734は基準方向744を含み、MR素子736は基準方向746を含む。一例では、基準方向740及び基準方向742は同一方向にある。一例では、基準方向740は、基準方向744及び基準方向746の正反対(すなわち180度反対)である。
【0127】
MR素子732及び734は電圧源VCCに結合される。MR素子730及び736は接地708に結合される。
【0128】
図8及び図9を参照すると、グラフ800は、MR素子のための角度に対する角度誤差の曲線802を示す。一例では、曲線802は高調波誤差である。単一のMR素子の角度誤差を低減する一技法は、単一のMR素子を少なくとも2つのMR素子と置き換えることである。
【0129】
特定の一例では、単一のMR素子910は、2つのMR素子910a及び910bによって置き換えられる。MR素子910は基準方向920を有し、MR素子910aは基準方向920aを有し、MR素子910bは基準方向920bを有し、それによって基準方向920aと基準方向920bとの平均は基準方向920に等しい。基準方向920aを有するMR素子910aの場合、角度曲線に対する角度誤差は、角度φだけシフトされた曲線806になり、基準方向920bを有するMR素子910bの場合、角度曲線に対する角度誤差は、角度-φだけシフトされた曲線808になる。したがって、基準方向920a、920bの平均を取ることによって、それぞれのMR素子920a、920bの結果的な誤差は相殺される。
【0130】
図8に示される特定の例において、角度φは22.5度であり、曲線802は第4次高調波を示す。ただし、角度φは、MR素子、削除する高調波の数、及び/又は磁場角度センサの用途に依存する他の角度でもよい。いくつかの例では、角度φは、20度から40度の範囲内でもよい。特定の一例では、角度φは、25度から37度の範囲内でもよい。
【0131】
特定の一例では、MR素子は、3つのMR素子と置き換えられてもよく、第1のMR素子は3つの置換MR素子の平均基準角度からの調節角度φadjである基準角度を有し、第2のMR素子は、3つの置換MR素子の平均基準角度からの-φadjである基準角度を有し、第3のMR素子は、感度方向における基準方向を有する。感度方向は、第1、第2、及び第3の磁気抵抗素子の平均基準方向である。一例では、第3のMR素子は、第1及び第2のMR素子よりも大きい抵抗を有する。一例では、調節角度φadjは、0度と90度との間である。
【0132】
図7及び図10を参照すると、ブリッジ700’は、MR素子710、712、714、716、730、732、734、736を直列の等価のMR素子と置き換えた結果として得られたブリッジの例である。例えば、余弦ブリッジ702’において、MR素子710はMR素子710a及びMR素子710bと置き換えられ、MR素子712はMR素子712a及びMR素子712bと置き換えられ、MR素子714はMR素子714a及びMR素子714bと置き換えられ、MR素子716はMR素子716a及びMR素子716bと置き換えられている。
【0133】
MR素子710aは基準方向720aを含み、MR素子710bは基準方向720bを含み、基準方向720aと基準方向720bとの平均は基準方向720に等しい。MR素子712aは基準方向722aを含み、MR素子712bは基準方向722bを含み、基準方向722aと基準方向722bとの平均は基準方向722に等しい。MR素子714aは基準方向724aを含み、MR素子714bは基準方向724bを含み、基準方向724aと基準方向724bとの平均は基準方向724に等しい。MR素子716aは基準方向726aを含み、MR素子716bは基準方向726bを含み、基準方向726aと基準方向726bとの平均は基準方向726に等しい。
【0134】
置換MR素子は直列で追加され、それによって両方の置換MR素子の抵抗の和は、置き換えられたMR素子の抵抗に等しい。例えば、MR素子710aの抵抗とMR素子710bの抵抗との和はMR素子710の抵抗に等しく、MR素子712aの抵抗とMR素子712bの抵抗との和はMR素子712の抵抗に等しく、MR素子714aの抵抗とMR素子714bの抵抗との和はMR素子714の抵抗に等しく、MR素子716aの抵抗とMR素子716bの抵抗との和は、MR素子716の抵抗に等しい。
【0135】
正弦ブリッジ704’において、MR素子730はMR素子730a及びMR素子730bと置き換えられ、MR素子732はMR素子732a及びMR素子732bと置き換えられ、MR素子714はMR素子734a及びMR素子734bと置き換えられ、MR素子736はMR素子736a及びMR素子736bと置き換えられる。
【0136】
MR素子730aは基準方向740aを含み、MR素子730bは基準方向740bを含み、基準方向740aと基準方向740bとの平均は基準方向740に等しい。MR素子732aは基準方向742aを含み、MR素子732bは基準方向742bを含み、基準方向742aと基準方向742bとの平均は基準方向742に等しい。MR素子734aは基準方向744aを含み、MR素子734bは基準方向744bを含み、基準方向744aと基準方向744bとの平均は基準方向744に等しい。MR素子736aは基準方向746aを含み、MR素子736bは基準方向746bを含み、基準方向746aと基準方向746bとの平均は基準方向746に等しい。
【0137】
余弦ブリッジ702’に関して上述したように、正弦ブリッジ704’では、置換MR素子は直列で追加され、それによって両方の置換MR素子の抵抗の和は置き換えられたMR素子の抵抗に等しい。例えば、MR素子730aの抵抗とMR素子730bの抵抗との和はMR素子730の抵抗に等しく、MR素子732aの抵抗とMR素子732bの抵抗との和はMR素子732の抵抗に等しく、MR素子734aの抵抗とMR素子734bの抵抗との和はMR素子734の抵抗に等しく、MR素子736aの抵抗とMR素子736bの抵抗との和はMR素子736の抵抗に等しい。
【0138】
図7及び図11を参照すると、ブリッジ700”は、MR素子710、712、714、716、730、732、734、736を等価の並列のMR素子と置き換えた結果として得られたブリッジの例である。例えば、余弦ブリッジ702”において、MR素子710はMR素子710c及びMR素子710dと置き換えられ、MR素子712はMR素子712c及びMR素子712dと置き換えられ、MR素子714はMR素子714c及びMR素子714dと置き換えられ、MR素子716はMR素子716c及びMR素子716dと置き換えられている。
【0139】
MR素子710cは基準方向720cを含み、MR素子710dは基準方向720dを含み、基準方向720cと基準方向720dとの平均は基準方向720に等しい。MR素子712cは基準方向722cを含み、MR素子712dは基準方向722dを含み、基準方向722cと基準方向722dとの平均は基準方向722に等しい。MR素子714cは基準方向724cを含み、MR素子714dは基準方向724dを含み、基準方向724cと基準方向724dとの平均は基準方向724に等しい。MR素子716cは基準方向726cを含み、MR素子716dは基準方向726dを含み、基準方向726cと基準方向726dとの平均は基準方向726に等しい。
【0140】
置換MR素子は並列に追加され、それによって両方の置換MR素子の抵抗の逆数の和は置き換えられているMR素子の抵抗の逆数に等しい。例えば、MR素子710cの抵抗の逆数とMR素子710dの抵抗の逆数との和はMR素子710の抵抗の逆数に等しく、MR素子712cの抵抗の逆数とMR素子712dの抵抗の逆数との和はMR素子712の抵抗の逆数に等しく、MR素子714cの抵抗の逆数とMR素子714dの抵抗の逆数との和はMR素子714の抵抗の逆数に等しく、MR素子716cの抵抗の逆数とMR素子716dの抵抗の逆数との和はMR素子716の抵抗の逆数に等しい。
【0141】
正弦ブリッジ704”において、MR素子730はMR素子730c及びMR素子730dと置き換えられ、MR素子732はMR素子732c及びMR素子732dと置き換えられ、MR素子734はMR素子734c及びMR素子734dと置き換えられ、MR素子736はMR素子736c及びMR素子736dと置き換えられている。
【0142】
MR素子730cは基準方向740cを含み、MR素子730dは基準方向740dを含み、基準方向740cと基準方向740dとの平均は基準方向740に等しい。MR素子732cは基準方向742cを含み、MR素子732dは基準方向742dを含み、基準方向742cと基準方向742dとの平均は基準方向742に等しい。MR素子734cは基準方向744cを含み、MR素子734dは基準方向744dを含み、基準方向744cと基準方向744dとの平均は基準方向744に等しい。MR素子736cは基準方向746cを含み、MR素子736dは基準方向746dを含み、基準方向746cと基準方向746dとの平均は基準方向746に等しい。
【0143】
余弦ブリッジ702”に関して上述したように、正弦ブリッジ704”において、置換MR素子は並列に追加され、それによって両方の置換MR素子の抵抗の逆数の和は、置き換えられているMR素子の抵抗の逆数に等しい。例えば、MR素子730cの抵抗の逆数とMR素子730dの抵抗の逆数との和はMR素子730の抵抗の逆数に等しく、MR素子732cの抵抗の逆数とMR素子732dの抵抗の逆数との和はMR素子732の抵抗の逆数に等しく、MR素子734cの抵抗の逆数とMR素子734dの抵抗の逆数との和はMR素子734の抵抗の逆数に等しく、MR素子736cの抵抗の逆数とMR素子736dの抵抗の逆数との和はMR素子736の抵抗の逆数に等しい。
【0144】
図12Aから図12Cを参照すると、図7に図示されたものなどのブリッジの磁場振幅に対する角度誤差の曲線1202は、角度誤差が、400Oeの磁場振幅を上回る角度誤差から約800Oeの磁場振幅において3度を上回る角度誤差に顕著に増加することを示す。例えば図10に図示されたものなどの直列の置換MR素子を有するブリッジのための磁場振幅に対する角度誤差の曲線1204は、800Oe未満の磁場振幅に対して角度誤差が1.2度未満であることを示す。例えば図11に図示されたものなどの並列の置換MR素子を有するブリッジのための磁場振幅に対する角度誤差の曲線1206は、800Oe未満の磁場振幅に対して角度誤差が0.8度未満であることを示す。
【0145】
図13Aを参照すると、導電ブリッジ構成1300は、MR素子(例えば、MR素子1310、MR素子1312、MR素子1314、及びMR素子1316)を含む。導電ブリッジ構成1300は、増幅器1318、増幅器1328、トランジスタ1332、トランジスタ1334、トランジスタ1336、及びトランジスタ1338を更に含む。
【0146】
MR素子1310、1312は電圧源Vregに結合され、MR素子1314、1316は接地に結合される。トランジスタ1332のコレクタ1332cはトランジスタ1336のコレクタ1336cに結合され、トランジスタ1334のコレクタ1334cはトランジスタ1338のコレクタ1338cに結合される。
【0147】
各MR素子1310~1316は基準方向を有する。例えば、MR素子1310は基準方向1320を有し、MR素子1312は基準方向1322を有し、MR素子1314は基準方向1324を有し、MR素子1316は基準方向1326を有する。基準方向1320は基準方向1326とほぼ同一方向にあるが、基準方向1322、1324とほぼ反対方向である。
【0148】
一例では、トランジスタ1332、1334は、PNPバイポーラ接合トランジスタである。一例では、トランジスタ1336、1338はNPNバイポーラ接合トランジスタである。
【0149】
増幅器1318の出力は、トランジスタ1332のベース1332bに結合され、トランジスタ1334のベース1334bに結合される。増幅器1318の第1の入力はMR素子1310に結合され、トランジスタ1332のエミッタ1332aに結合される。増幅器1318の第2の入力はMR素子1312に結合され、トランジスタ1334のエミッタ1334aに結合される。増幅器1318の第3の入力は電流Irefを供給する電流源1342に結合され、抵抗Rrefを有する抵抗器1352に結合される。抵抗器1352は電圧源Vregに結合される。
【0150】
増幅器1328の出力はトランジスタ1336のベース1336bに結合され、トランジスタ1338のベース1338bに結合される。増幅器1328の第1の入力はMR素子1314に結合され、トランジスタ1336のエミッタ1336aに結合される。増幅器1328の第2の入力はMR素子1316に結合され、トランジスタ1338のエミッタ1338aに結合される。増幅器1338の第3の入力は電流Irefを供給する電流源1344に結合され、抵抗Rrefを有する抵抗器1354に結合される。抵抗器1354は接地に結合される。
【0151】
図13A及び図13Bを参照すると、MR素子1310~1316は、それぞれ直列の2つ以上のMR素子と置き換えられてもよい。例えば、導電ブリッジ1300’において、MR素子1310はMR素子1310a及びMR素子1310bと置き換えられ、MR素子1312はMR素子1312a及びMR素子1312bと置き換えられ、MR素子1314はMR素子1314a及びMR素子1314bと置き換えられ、MR素子1316はMR素子1316a及びMR素子1316bと置き換えられている。
【0152】
MR素子1310aは基準方向1320aを含み、MR素子1310bは基準方向1320bを含み、基準方向1320aと基準方向1320bとの平均は基準方向1320に等しい。MR素子1312aは基準方向1322aを含み、MR素子1312bは基準方向1322bを含み、基準方向1322aと基準方向1322bとの平均は基準方向1322に等しい。MR素子1314aは基準方向1324aを含み、MR素子1314bは基準方向1324bを含み、基準方向1324aと基準方向1324bとの平均は基準方向1324に等しい。MR素子1316aは基準方向1326aを含み、MR素子1316bは基準方向1326bを含み、基準方向1326aと基準方向1326bとの平均は基準方向1326に等しい。
【0153】
置換MR素子は直列で追加され、それによって両方の置換MR素子の抵抗の和は、置き換えられているMR素子の抵抗に等しい。例えば、MR素子1310aの抵抗とMR素子1310bの抵抗との和はMR素子1310の抵抗に等しく、MR素子1312aの抵抗とMR素子1312bの抵抗との和はMR素子1312の抵抗に等しく、MR素子1314aの抵抗とMR素子1314bの抵抗との和はMR素子1314の抵抗に等しく、MR素子1316aの抵抗とMR素子1316bの抵抗との和はMR素子1316の抵抗に等しい。
【0154】
図13A及び図13Cを参照すると、MR素子1310~1316はそれぞれ並列の2つ以上のMR素子と置き換えられてもよい。例えば、導電ブリッジ1300”において、MR素子1310はMR素子1310c及びMR素子1310dと置き換えられ、MR素子1312はMR素子1312c及びMR素子1312dと置き換えられ、MR素子1314はMR素子1314c及びMR素子1314dと置き換えられ、MR素子1316はMR素子1316c及びMR素子1316dと置き換えられている。
【0155】
MR素子1310cは基準方向1320cを含み、MR素子1310dは基準方向1320dを含み、基準方向1320cと基準方向1320dとの平均は基準方向1320に等しい。MR素子1312cは基準方向1322cを含み、MR素子1312dは基準方向1322dを含み、基準方向1322cと基準方向1322dとの平均は基準方向1322に等しい。MR素子1314cは基準方向1324cを含み、MR素子1314dは基準方向1324dを含み、基準方向1324cと基準方向1324dとの平均は基準方向1324に等しい。MR素子1316cは基準方向1326cを含み、MR素子1316dは基準方向1326dを含み、基準方向1326cと基準方向1326dとの平均は基準方向1326に等しい。
【0156】
置換MR素子は並列に追加され、それによって両方のMR素子の抵抗の逆数の和は置き換えられているMR素子の抵抗の逆数に等しい。例えば、MR素子1310cの抵抗の逆数とMR素子1310dの抵抗の逆数との和はMR素子1310の抵抗の逆数に等しく、MR素子1312cの抵抗の逆数とMR素子1312dの抵抗の逆数との和はMR素子1312の抵抗の逆数に等しく、MR素子1314cの抵抗の逆数とMR素子1314dの抵抗の逆数との和はMR素子1314の抵抗の逆数に等しく、MR素子1316cの抵抗の逆数とMR素子1316dの抵抗の逆数との和はMR素子1316の抵抗の逆数に等しい。
【0157】
図14を参照すると、一例では、図1のブリッジ構造のMR素子は直列のMR素子と置き換えられる。ブリッジ構造1400は、第1の余弦ブリッジ1401、第1の正弦ブリッジ1402、第2の正弦ブリッジ1403、及び第2の正弦ブリッジ1404を含む。
【0158】
第1の余弦ブリッジ1401はMR素子1410a、1410b、1412a、1412b、1414a、1414b、1416a、1416bを含む。MR素子1410a、1410bはMR素子126c(図1)を置き換え、MR素子1412a、1412bはMR素子126a(図1)を置き換え、MR素子1414a、1414bはMR素子126b(図1)を置き換え、MR素子1416a、1416bはMR素子126d(図1)を置き換える。
【0159】
MR素子1410a、1414aは電圧源VCCに結合され、MR素子1416b、1412bは接地1405に結合される。第1の余弦ブリッジ1401は、ブリッジ構造1400の傾斜角φtiltを加えた測定磁場の角度の余弦を示す余弦波信号VOUT1408を生成する。
【0160】
MR素子1410aは基準方向1420aを含み、MR素子1410bは基準方向1420bを含む。MR素子1412aは基準方向1422aを含み、MR素子1412bは基準方向1422bを含む。MR素子1414aは基準方向1424aを含み、MR素子1414bは基準方向1424bを含む。MR素子1416aは基準方向1426aを含み、MR素子1416bは基準方向1426bを含む。
【0161】
基準方向1420a、1420b、1422a、1422b、1424a、1424b、1426a、1426bの平均は感度方向1407に等しい。
【0162】
第2の余弦ブリッジ1403は、MR素子1430a、1430b、1432a、1432b、1434a、1434b、1436a、1436bを含む。MR素子1430a、1430bはMR素子136c(図1)を置き換え、MR素子1432a、1432bはMR素子136a(図1)を置き換え、MR素子1434a、1434bはMR素子136b(図1)を置き換え、MR素子1436a、1436bはMR素子136d(図1)を置き換える。
【0163】
MR素子1430a、1434aは電圧源VCCに結合され、MR素子1436b、1432bは接地1435に結合される。第2の余弦ブリッジ1403は、φtiltよりも小さい測定磁場の角度の余弦を示す余弦波信号VOUT1438を生成する。
【0164】
MR素子1430aは基準方向1440aを含み、MR素子1430bは基準方向1440bを含む。MR素子1432aは基準方向1442aを含み、MR素子1432bは基準方向1442bを含む。MR素子1434aは基準方向1444aを含み、MR素子1434bは基準方向1444bを含む。MR素子1436aは基準方向1446aを含み、MR素子1436bは基準方向1446bを含む。
【0165】
基準方向1440a、1440b、1442a、1442b、1444a、1444b、1446a、1446bの平均は感度方向1437に等しい。
【0166】
第1の正弦ブリッジ1402は、MR素子1450a、1450b、1452a、1452b、1454a、1454b、1456a、1456bを含む。MR素子1450a、1450bはMR素子124c(図1)を置き換え、MR素子1452a、1452bはMR素子124a(図1)を置き換え、MR素子1454a、1454bはMR素子124d(図1)を置き換え、MR素子1456a、1456bはMR素子124b(図1)を置き換える。
【0167】
MR素子1452b、1454bは電圧源VCCに結合され、MR素子1450a、1456aは接地1455に結合される。第1の正弦ブリッジ1403は、測定された磁場の角度に傾斜角φtiltを加えた正弦を示し余弦波信号VOUT1408に直交する正弦波信号VOUT1458を生成する。
【0168】
MR素子1450aは基準方向1460aを含み、MR素子1450bは基準方向1460bを含む。MR素子1452aは基準方向1462aを含み、MR素子1452bは基準方向1462bを含む。MR素子1454aは基準方向1464aを含み、MR素子1454bは基準方向1464bを含む。MR素子1456aは基準方向1466aを含み、MR素子1456bは基準方向1466bを含む。
【0169】
基準方向1460a、1460b、1462a、1462b、1464a、1464b、1466a、1466aの平均は感度方向1457に等しい。
【0170】
第2の正弦ブリッジ1404は、MR素子1470a、1470b、1472a、1472b、1474a、1474b、1476a、1476bを含む。MR素子1470a、1470bはMR素子134b(図1)を置き換え、MR素子1472a、1472bはMR素子134d(図1)を置き換え、MR素子1474a、1474bはMR素子134a(図1)を置き換え、MR素子1476a、1476bはMR素子134c(図1)を置き換える。
【0171】
MR素子1472b、1474bは電圧源VCCに結合され、MR素子1470a、1476aは接地1475に結合される。第1の正弦ブリッジ1404は、φtilt未満の測定磁場の角度の正弦を示し余弦波信号VOUT1438と直交する正弦波信号VOUT1478を生成する。
【0172】
MR素子1470aは基準方向1480aを含み、MR素子1470bは基準方向1480bを含む。MR素子1472aは基準方向1482aを含み、MR素子1472bは基準方向1482bを含む。MR素子1474aは基準方向1484aを含み、MR素子1474bは基準方向1484bを含む。MR素子1476aは基準方向1486aを含み、MR素子1476bは基準方向1486bを含む。
【0173】
基準方向1480a、1480b、1482a、1482b、1484a、1484b、1486a、1486aの平均は感度方向1477に等しい。
【0174】
図14図1のブリッジ構造のMR素子が直列のMR素子と置き換えられた例を示すが、当業者は、本開示を読むことによって、図1のMR素子が更に並列のMR素子と置き換えられてもよく、又は直列のいずれかのMR素子及び並列の他のMR素子と置き換えられてもよいことを認識するであろう。
【0175】
図15を参照すると、角度誤差を低減するために、磁場角度センサにおけるブリッジのMR素子を置き換えるプロセスの例は、プロセス1500である。プロセス1500は、角度誤差を決定する(1502)。例えば、置き換えられるMR素子の角度誤差が決定される。
【0176】
プロセス1500は置換MR素子の数を選択する(1506)。例えば、2つ以上の置換MR素子がMR素子を置き換えるために使用されてもよい。置換MR素子の数は、処理ブロック1502で決定された角度誤差に基づいて決定されてもよい。置換MR素子の数は、磁場センサの用途に基づいて決定されてもよい。
【0177】
プロセス1500は、置換MR素子毎に基準方向を選択する(1508)。一例では、置換MR素子の基準方向の平均は置き換えられているMR素子の基準方向に等しい。置換MR素子毎の基準方向は、処理ブロック1502で決定された角度誤差に基づいて決定されてもよい。置換MR素子毎の基準方向は、磁場センサの用途に基づいて決定されてもよい。
【0178】
プロセス1500は、置換MR素子が直列又は並列に配置されるかを選択する(1510)。一例では、並列の置換MR素子は直列の置換MR素子よりもRmin不適合に影響されない一方、直列の置換MR素子はMRmin不適合により影響されない。Rminの不適合は、ブリッジの全MR素子にわたるRminパラメータの変動であり、以下のように表されてもよい。
(max(全Rmin)-min(全Rmin))*2/(max(全Rmin)+min(全Rmin))
【0179】
ここで、Rminは、MR素子の最小抵抗である。
【0180】
MRminの不適合は、ブリッジの全MR素子にわたるMRminパラメータの変動であり、以下のように表され得る。
(max(全MRmin)-min(全MRmin))*2/(max(全MRmin)+min(全MRmin))
【0181】
ここで、MRminは、以下のように表される素子の磁気抵抗である。
(Rmax-Rmin)/Rmin
【0182】
本明細書で説明される技法は、本明細書で提示された例によって限定されない。例えば、本明細書で説明される実施形態が直列のMR素子又は並列のMR素子によるMR素子の置き換えを示したとしても、当業者は、本開示を読むことによって、並列のMR素子及び直列のMR素子の組合せがMR素子を置き換えるために使用され得ることを認識するであろう。一例では、MR素子は、直列に配置された2つ以上のMR素子と、その2つ以上のMR素子と並列に配置された少なくとも1つのMR素子とによって置き換えられてもよい。他の一例では、MR素子は、直列に配置された少なくとも1つのMR素子と、その少なくとも1つのMR素子と並列に配置された2つ以上のMR素子とによって置き換えられてもよい。さらなる例では、MR素子は、直列に配置された少なくとも3つのMR素子と、その少なくとも3つのMR素子と並列に配置された2つ以上のMR素子とによって置き換えられてもよい。
【0183】
本明細書で説明されるプロセスは、説明される特定の例に限定されない。例えば、プロセス1500は図15の特定の処理順序に限定されない。むしろ、図15の処理ブロックのいずれかは、上述した結果に到達するために、必要に応じて並び替え、結合、省略、又は並列又は連続して実行されてもよい。
【0184】
本明細書で説明される異なる実施形態の要素は、上記で特に記載されていない他の実施形態を形成するために結合されてもよい。単一の実施形態の文脈において説明される様々な要素は、さらに、分離して提供されてもよく、又は適切なサブコンビネーションで提供されてもよい。本明細書で特に説明されていない他の実施形態が、以下の特許請求の範囲内に更に存在する。
図1
図1A
図1B
図2
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図6A
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14-1】
図14-2】
図15