(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】マルチユーザダイレクトリンク送信のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
H04W 76/14 20180101AFI20240502BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20240502BHJP
H04W 28/10 20090101ALI20240502BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20240502BHJP
【FI】
H04W76/14
H04W92/18
H04W28/10
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2022549706
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2021063657
(87)【国際公開番号】W WO2021239618
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-24
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バロン, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ギニャール, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジェ, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ネズ, パトリス
【審査官】中村 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0008210(US,A1)
【文献】特開2020-014250(JP,A)
【文献】特開2020-074539(JP,A)
【文献】国際公開第2020/011684(WO,A1)
【文献】Stephane Baron (Canon),triggered-p2p-transmissions, IEEE 802.11-20/0095r1 ,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/20/11-20-0095-01-00be-triggered-p2p-transmissions.pptx>,2020年03月18日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信のための方法であって、第1のステーション(STA)において:
ダイレクトリンク通信のために用いることができるシングルユーザ通信を引き起こすためのトリガーフレームであって、シングルユーザ通信のためのリソースユニット(RU)であって、前記第1のSTAへ前記RUを割り当てるトリガーフレームをアクセスポイント(AP)から受信する第1受信工程と、
前記トリガーフレームによって前記第1のSTAに対して割り当てられた前記RUを介して第1の時間において第1のフレームを送信する送信工程と、
前記トリガーフレームによって前記第1のSTAに対して割り当てられた前記RUを介して、前記第1の時間より後の第2の時間において第2のSTAによって送信された第2のフレームを受信する第2受信工程と、
前記第2のフレームの通信のための時間を考慮して前記第1のフレームの長さを決定する決定工程と、
を有し、
前記トリガーフレームは、前記第1の時間と前記第2の時間において前記シングルユーザ通信とは異なる通信をトリガする情報を含ま
ず、かつ、当該トリガーフレームの受信は前記異なる通信を引き起こさないことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の時間および前記第2の時間は、short interframe space(SIFS)によって分離される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記決定工程は、前記第2のSTAによる前記第2のフレームの前記送信の終端が、前記割り当てられた前記RUの終端と時間において整合するように前記第1のフレームの前記長さを決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のフレームは、前記第1のフレームに対する応答フレームであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のフレームは、前記第1のフレームの受信を確認するために前記第2のSTAによって送信される肯定応答を示すACKフレームであ
り、前記第1のフレームはHE SU PPDUであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記決定工程では、前記第1のフレームを送信する時間と、前記第2のフレームを受信する時間との合計が前記RUの送信期間
と一致するように、前記第1のフレームの長さを決定することを含む、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のフレームの前記長さを決定することは、
前記第2のフレームを送信する時間に基づいて、前記第1のフレームを含んだphysical protocol data unit(PPDU)を送信するために前記第1のSTAが利用可能な時間TXTIME1を計算する処理と、
得られた前記時間TXTIME1と、前記第1のフレームを送信するために使用される、変調および符号化方式(MCS)
を少なくとも含む送信パラメータと、に基づいて、前記第1のフレームの前記長さを導出する処理と、を含み、
TXTIME1は、TXTIME0-TXTIME2-SIFSにより算出され、
TXTIME0は、前記ダイレクトリンク通信のために前記APによって割り当てられたRUの持続時間であり、
TXTIME2は、前記第2のフレームを含んだPPDU(physical protocol data unit)を送信するために前記第2のSTAに必要とされる時間である、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のフレームは、前記第2のSTAが前記第1のSTAへ逆方向に前記第2のフレームを送信することを可能にする逆方向許可を示す情報であって、前記第2のSTAがアドレス指定された逆方向許可を示す情報を含むことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のフレームは、前記第2のフレームを送信するために前記第2のSTAに許可された持続時間をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のフレームに含められる前記持続時間はTXTIME0-TXTIME1-SIFSに等しい値に設定され、
TXTIME0は、前記トリガーフレームによって割り当てられた前記RUの持続時間であり、
TXTIME1は、前記第1のSTAが前記第1のフレームを含んだPPDU(physical protocol data unit)を送信するのに必要な時間である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記トリガーフレームには前記RUの長さを示す情報がさらに含まれることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記RUの割り当ては、前記RUの中心周波数と、前記RUを介して送信されるPPDU(physical protocol data unit)の周波数帯域幅とで示されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記RUを介して前記PPDUを送信するために前記APによって割り当てられた時間が、前記RUのデータシンボルの長さまたは数と、前記APによって特定された変調および符号化方式(MCS)
を少なくとも含む送信パラメータとに基づいて取得される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記トリガーフレームは、20MHzチャネルの倍数である周波数帯域を有するRUを前記第1のSTAに割り当てることを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記送信工程では、前記第1のフレームを含んだシングルユーザ通信のためのPPDUが送信される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの送信パラメータの値を選択する選択工程をさらに有し、
前記送信工程では、前記選択工程において選択された前記値を使用して、前記トリガーフレームによって割り当てられた前記RUを介して前記第1のフレームを前記第2のSTAに送信することと、
を有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記選択工程で選択される送信パラメータは、符号化タイプ、MCS、DCM、および前記第1のフレームの空間ストリーム(SS)を少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のSTAが前記APに関連付けられていないことを特徴とする、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
無線通信のための方法であって、アクセスポイント(AP)において、
ダイレクトリンク通信のために用いることができるシングルユーザ通信を引き起こすためのトリガーフレームであって、シングルユーザ通信のためのリソースユニット(RU)の割り当てであって、ステーション(STA)へ前記RUを割り当てるトリガーフレームを送信する送信工程と、
前記RUの終端と整合するように前記APのNAV(network allocation vector)を設定する設定工程と、
を有し、
前記トリガーフレームは前記シングルユーザ通信が予定されている時間帯において前記シングルユーザ通信とは異なる通信をトリガするための情報を含ま
ず、かつ、当該トリガーフレームの受信は前記異なる通信を引き起こさないことを特徴とする方法。
【請求項20】
20MHzチャネルの倍数である周波数帯域を有するRUを前記STAに割り当てることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
デバイス内のマイクロプロセッサまたはコンピュータシステムによって実行されるときに、前記デバイスに、請求項1または19に記載の方法を実行させるプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項22】
第1のステーション(STA)として動作する無線通信装置であって、
ダイレクトリンク通信のために用いることができるシングルユーザ通信を引き起こすためのトリガーフレームであって、シングルユーザ通信のためのリソースユニット(RU)の割り当てであって、前記第1のSTAへ前記RUを割り当てるトリガーフレームをアクセスポイント(AP)から受信する受信手段と、
対向機から受信する予定の第2のフレームを通信するための時間を考慮し、第1のフレームの長さを決定する決定手段と、
前記トリガーフレームによって前記第1のSTAに対して割り当てられた前記RUを介して第1の時間において前記決定手段で決定した長さの前記第1のフレームを対向機である第2のSTAに対して送信する送信手段と、を有し、
前記受信手段は、前記トリガーフレームによって前記第1のSTAに対して割り当てられた前記RUを介して、前記第1の時間より後の第2の時間において前記第2のSTAによって送信された第2のフレームを受信し、
前記トリガーフレームは前記第1の時間と前記第2の時間において前記シングルユーザ通信とは異なる通信をトリガする情報を含ま
ず、かつ、当該トリガーフレームの受信は前記異なる通信を引き起こさないことを特徴とする無線通信装置。
【請求項23】
前記第2のSTAが前記APに関連付けられていないことを特徴とする、請求項22に記載の無線通信装置。
【請求項24】
アクセスポイント(AP)の無線通信装置であって、
ダイレクトリンク通信のために用いることができるシングルユーザ通信を引き起こすためのトリガーフレームであって、シングルユーザ通信のためのリソースユニット(RU)の割り当てであって、ステーション(STA)へ前記RUを割り当てるトリガーフレームを送信する送信手段と、
前記RUの終端と整合するように前記APのNAV(network allocation vector)を設定する設定手段と、
を有し、
前記トリガーフレームは前記シングルユーザ通信が予定されている時間帯において前記シングルユーザ通信とは異なる通信をトリガするための情報を含ま
ず、かつ、当該トリガーフレームの受信は前記異なる通信を引き起こさないことを特徴とする無線通信装置。
【請求項25】
前記トリガーフレームは、前記STAが前記トリガーフレームをトリガとしてフレームを送信する場合に使用すべきMCSを示す情報を含まないことを特徴とする請求項24に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、無線通信に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信ネットワークが、音声、映像、パケットデータ、メッセージング、放送などのような、様々な通信サービスを提供するために広く展開されている。これらの無線ネットワークは、利用可能なネットワークリソースを共有することにより、多数のユーザをサポートすることができる、多元接続ネットワークでありうる。このような多元接続ネットワークの例は、符号分割多元接続(CDMA)ネットワーク、時分割多元接続(TDMA)ネットワーク、周波数分割多元接続(FDMA)ネットワーク、直交FDMA(OFDMA)ネットワーク、及びシングルキャリアFDMA(SC-FDMA)ネットワークを含む。
【0003】
高密度環境における無線通信システムに要求されている帯域幅の増加及び遅延要求の減少の問題に対処するために、単一のアクセスポイント(AP)が、無線ネットワークにおいて、MU送信を、すなわち、非APステーションへの又はそれらの非APステーションからの多数の並行送信をスケジューリングすることを可能とするためのマルチユーザ(MU)手順が開発されている。例えば、このようなMU手順の1つが、米国電気電子学会(IEEE)によって、2019年11月のIEEE802.11ax規格のドラフトバージョン6.0(D6.0)において、採用されている。
【0004】
MUの特徴により、ステーションが、2つのアクセス手順、MU手順、及び、従来のEnhanced Distributed Channel Access-EDCA(シングルユーザ)手順、を介して、無線媒体へのアクセスを得る機会を有する。
【0005】
802.11ax規格は、APが、MU下りリンク(DL)送信を実行することを可能とすし、ここで、後者は、いわゆるリソースユニット(RU)上で、様々な非APステーションへの多数の同時の基本的な送信を行うことができる。例として、リソースユニットは、例えば直交周波数分割多元接続(OFDMA)技術に基づいて、周波数領域において無線ネットワークの通信チャネルを分割する。RUのステーションへの割り当ては、(各ステーションによってAPとのアソシエーション手順の間に個別に取得される)非APステーションのアソシエーション識別子(AID)を、送信機会において定義される各RUに対して提供することにより、MU下りリンクフレームの最初にシグナリングされる。
【0006】
また、802.11ax規格は、APが、MU上りリンク(UL)送信をトリガすることを可能とし、ここで、様々な非APステーションが、MU UL送信を形成するリソースユニット上で並行してAPへ送信することができる。非APステーションによるMU UL送信を制御するために、APは、APへの登録時に非APステーションに割り当てられた16ビットのアソシエーション識別子(AID)を用いて、及び/又は、非APステーションのグループを指定する予約AIDを用いて、非APステーションへリソースユニットを割り当てる、トリガフレーム(TF)として知られる制御フレームを送信する。
【0007】
採用された802.11ax MU送信手順は、帯域幅要求の高い通信サービス、例えば、ゲーム、バーチャルリアリティ、ストリーミングアプリケーションなどの映像ベースのサービスには適応されていない。これは、すべての通信がAPを通過し、それによって、送信のためのエアタイムのみならず、媒体アクセスの回数(したがって、媒体アクセス時間)も2倍になるからである。
【0008】
802.11ネットワークプロトコルのシングルユーザ(SU)方式は、ダイレクトリンク(DiL、ピアツーピア(P2P)送信とも呼ばれる)が実行されることを可能にし、ここで、データ(MAC)フレームは、宛先ステーションの48ビットのIEEE MACアドレスを使用してアドレス指定される。しかしながら、SUおよびMU方式は(MU方式のためにAPによって、SU方式のために非APステーションによって)無線媒体へのアクセスを獲得するために、互いに直接競合する。高密度環境では、この競合が、大量の望ましくない衝突を生成し、それによって、レイテンシおよび全体的な有用なデータスループットを低下させる。
【0009】
APのスケジューリングのグローバルポリシーの下でP2P通信を統合することが企図されうる。しかしながら、これは、APが非APステーションによるピア非APステーションへのデータの送信と、ピア非APステーションから非APステーションへのデータの返信との両方を管理しなければならないため、いくつかの課題を呼び起こす。
【0010】
より一般的には、802.11が、ピアツーピア送信に適合していないように見え、従来特定されているようなMU送信が改善されうる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の大まかな目的は、この状況を改善することである。
【0012】
発明者らは、リソースユニットをスケジューリングするための中心点としてAPの利益、及び、送信先ピアステーションとの通信の必要性を知っているソースピアステーションの利益を取ることを企図した。本発明の実施形態では、ソースステーションが確立されたダイレクトリンクセッションを有するピア宛先ステーションと、APによってソースステーションに割り当てられたリソースを介して、そのソースステーションが共有された帯域幅に責任を負う。
【0013】
本開示のある態様は、無線通信のための方法であって、第1のステーション(STA)において:
ダイレクトリンク(DiL)通信のための前記第1のSTAへのリソースユニット(RU)の割り当てをアクセスポイント(AP)から受信することと、
ピアの第2のSTAに、割り当てられたDiL RUの第1の部分を介して第1のフレームを送信することと、
前記APによって前記第1のSTAに割り当てられた前記DiL RUの第2の部分を介して、前記第2のSTAによって送信された第2のフレームを受信することと、
を有する方法を提供する。
【0014】
したがって、ピアツーピア通信の管理は、(たとえば、UL、DL、およびDiLの必要性を調停することによって)BSSレベルでのリソースのスケジューリングに対するグローバル制御を有するAPと、それに割り当てられたP2Pリソースユニットを管理する1つのピアのSTAとの間で、たとえば、対応するピアのSTAとリソースをサブリースし又は時間共有することによって、分散される。これは、特にダイレクトリンク通信のための、リソースの効率的かつ単純な管理をもたらす。
【0015】
好ましい実装は、前記第1の部分および前記第2の部分は、時間多重化され、short interframe space(SIFS)によって分離される場合である。
【0016】
このようにして、割り当てられたRUの第2の部分を占有する第2のフレームの送信が、第1の部分を占有する第1のフレームの送信の終端からSIFSの直後に開始し、第1のフレームの送信の終了後に、設定したNAVを有しない別のSTAからの送信によって媒体が先取りされることを防止する。
【0017】
特に、前記第1のフレームの前記送信は、前記第2のSTAによる前記第2のフレームの前記送信の終端が、前記割り当てられたDiL RUの終端と時間において整合するように構成される。
【0018】
これは、APが、割り当てられたDiL RUの終端後に、他のステーションからの干渉なしに媒体に対する制御を再開することを可能にする。実際、第2のフレームの送信が、ピアツーピア通信のためにAPによって割り当てられた時間が経過する前に終了する場合、自身のNAVを設定していないステーションが媒体を先取りして送信を開始することができる。
【0019】
1つの実装において、前記第2のフレームは、前記第1のフレームに対する応答フレームである。
【0020】
例えば、前記第2のフレームは、前記第1のフレームの受信を確認するために前記第2のSTAによって送信される肯定応答(ACK)フレームである。
【0021】
実施形態によれば、前記第1のフレームの前記送信を設定することが、前記DiL RUの前記第2の部分の残りの時間(すなわち、第1のフレームの送信の終了後の1つのSIFSから割り当てられたDiL RUの終了までの持続時間)が前記第2のフレームの送信時間と一致するように、前記第1のフレームの長さを設定することを含む。
【0022】
これにより、DiL通信は、第1のSTAによる第2のSTAへの特定のシグナリングを必要とせずに、割り当てられたDiL RUの持続時間全体を占有する。これは、第1のフレームを確認応答するための即時肯定応答を実現する第2のフレームなど、第2のフレームの長さが第1のSTAに知られているかまたは予測可能であるときに実行されうる。
【0023】
1つの実装において、前記第1のフレームの前記長さを設定することは、
前記第2のフレームを送信する時間に基づいて、前記第1のフレームを含んだphysical protocol data unit(PPDU)を送信するために前記第1のSTAが利用可能な時間TXTIME1を計算することと、
得られた前記時間TXTIME1と、前記第1のフレームを送信するために使用される、変調および符号化方式(MCS)などの、少なくとも1つの送信パラメータと、に基づいて、前記第1のフレームの前記長さを導出することと、を含み、
TXTIME1は、TXTIME0-TXTIME2-SIFSにより算出され、
TXTIME0は、前記DiL通信のために前記APによって割り当てられたRUの持続時間であり、
TXTIME2は、前記第2のフレームを含んだphysical protocol data unit(PPDU)を送信するために前記第2のSTAに必要とされる時間である。
【0024】
実施形態によれば、前記第1のフレームの前記送信を設定することが、前記第2のSTAが前記第1のSTAへ逆方向(RD)に前記第2のフレームを送信することを可能にする逆方向許可であって、前記第2のSTAにアドレス指定された逆方向許可を前記第1のフレームに含めることを有する。
【0025】
1つの実装において、第1のフレームは、受信側の第2のSTAが逆方向(reverse direction)において、第1のSTAへ第2のフレームを送信することが許可されることを示すために、1に設定された逆方向許可(RDG)ビットを示す制御フィールドを含む。
【0026】
変形例では、RDG制御フィールドが、サービス品質(QoS)-Nullフレームを使用して第2のSTAへ送信される。
【0027】
別の変形例では、RDG制御フィールドが、データフレームを使用して第2のSTAに送信される。
【0028】
1つの実装において、前記第1のフレームの前記送信を設定することが、前記第2のフレームを送信するために前記第2のSTAに許可された持続時間を前記第1のフレームに含めることをさらに有する。
【0029】
特に、第1のフレームに含まれる持続時間は、第1のフレームの送信終了の1つのSIFS後から、割り当てられたDiL RUの終了までの送信に利用可能な最大時間に設定される。
【0030】
持続時間を設定することは、第2のSTAがDiLリソースユニットの許可された第2の部分を占有することを可能にする。1つの実装において、持続時間の設定が、たとえば第2のフレームをパディングすることによって、第2のSTAによる送信のためのデータが利用可能でない又は十分なデータが利用可能でない場合でも、第2のSTAが逆方向にフレームを送信することを必要とする。
【0031】
1つの実装において、前記第1のフレームに含められる前記持続時間はTXTIME0-TXTIME1-SIFSに等しい値に設定され、
TXTIME0は、前記DiL通信のために前記APによって割り当てられた前記RUの持続時間であり、
TXTIME1は、前記第1のSTAが前記第1のフレームを含んだphysical protocol data unit(PPDU)を送信するのに必要な時間である。
【0032】
実施形態によれば、前記DiL RUの前記割り当ておよび前記DiL RUの長さが、前記APから受信されるトリガフレームに含まれる。
【0033】
1つの実装において、前記DiL RUの前記割り当ておよび前記DiL RUの長さが、前記APから受信されるデータまたは制御フレームのTRS(trigger resource scheduling)フィールドに含まれる。
【0034】
特に、前記割り当ては、前記DiL RUの中心周波数と、前記DiL RUを介して送信されるphysical protocol data unit(PPDU)の周波数帯域幅とを示す。
【0035】
1つの実装において、前記PPDUを前記DiL RUを介して送信するために前記APによって割り当てられた時間TXTIME0が、前記DiL RUのデータシンボルの長さまたは数と、前記APによって特定された変調および符号化方式(MCS)などの少なくとも1つの送信パラメータとに基づいて取得される。
【0036】
本開示のある他の態様は、無線通信のための方法であって、第1のステーション(STA)において、
アクセスポイント(AP)から、当該APによって設定された送信機会(TXOP)の間のダイレクトリンク(DiL)通信のための前記第1のSTAへの第1のリソースユニット(RU)の割り当てを受信することと、
前記APが前記TXOPの間のDiL通信のための前記第1のSTAへの第2のRUの割り当てをスケジューリングするかを判定することと、
前記判定に基づいて、第1のDiL RUの一部または全部を介してピアの第2のSTAへ送信されるべき第1のフレームを構成することと、
前記第2のSTAに、前記第1のDiL RUを介して、構成された前記第1のフレームを送信することと、
を有する方法、を提供する。
【0037】
実施形態によれば、前記APが前記TXOPの間の第2のDiL RUの割り当てをスケジューリングしないと判定された場合、前記第1のフレームは、前記第1のDiL RUの一部を介して送信されるように構成される。
【0038】
特に、本方法は、前記APによって前記第1のSTAに割り当てられた前記第1のDiL RUの第2の部分を介して、前記第2のSTAによって送信された第2のフレームを受信すること、をさらに有する。
【0039】
実施形態によれば、前記APが前記TXOPの間の第2のDiL RUの割り当てをスケジューリングすると判定された場合、前記第1のフレームは、前記第1のDiL RUのすべてにわたって送信されるように構成される。
【0040】
特に、本方法は、前記TXOPの間の前記第1のSTAへの前記第2のDiL RUの割り当てを前記APから受信することと、
前記第2のSTAへ、前記第2のDiL RUの第1の部分を介して第3のフレームを送信することと、
前記APによって第1のSTAに割り当てられた前記第2のDiL RUの第2の部分を介して前記第2のSTAによって送信された第2のフレームを受信することと、
をさらに有する。
【0041】
1つの実装において、前記判定は、前記APが前記TXOPの間のDiL通信のために前記第1のSTAへの第2のRUの割り当てをスケジューリングするかを示す情報を、前記APから取得することを含む。
【0042】
実施形態によれば、前記第1のDiL RUの割り当ておよび前記第2のDiL RUの割り当ては、前記TXOP内において、カスケードシーケンスで、前記APから受信された別個のフレームに含まれる。
【0043】
特に、前記第1のDiL RUの割り当てを含む前記フレームは、前記APが前記TXOPの間の前記第1のSTAへの第2のDiL RUの割り当てを、後続のフレームにおいて、スケジューリングすることを示す情報をさらに含む。
【0044】
実施形態によれば、前記第1のDiL RUの割り当ておよび前記第2のDiL RUの割り当ては、前記APから受信される単一のフレームに含まれる。
【0045】
1つの実装において、前記APが前記TXOPの間の前記第1のSTAへの第2のDiL RUの割り当てをスケジューリングすることを示す情報が、前記受信されたフレームにおける前記第2のDiL RUの前記割り当てから取得される。
【0046】
実施形態によれば、1つ以上のDiL RUの割り当てを含んだフレームが、トリガフレームと、trigger resource scheduling(TRS)フィールドを含んだデータまたは制御フレームと、のいずれかである。
【0047】
本開示のある他の態様は、無線通信のための方法であって、第1のステーション(STA)において、
アクセスポイント(AP)から、当該APによって設定された送信機会(TXOP)の間のダイレクトリンク(DiL)通信のための第1のSTAへの第1のリソースユニット(RU)の割り当てを受信することと、
前記TXOPの間のDiL通信のための前記第1のSTAへの第2のRUの割り当てを前記APから受信することと、
ピアの第2のSTAへ、前記第1のDiL RUを介して第1のフレームを送信することと、
前記第2のSTAへ、前記第2のDiL RUの第1の部分を介して第3のフレームを送信することと、
前記APによって前記第1のSTAに割り当てられた前記第2のDiL RUの第2の部分を介して、前記第2のSTAによって送信された第2のフレームを受信することと、
を有する方法、を提供する。
【0048】
1つの実装において、前記第2のフレームが、前記第1のフレームに対する応答フレームである。
【0049】
ステーションに関連する本開示の様々な態様に関する追加のオプションの特徴について、以下、説明する。それらは、方法を参照するが、本発明による装置またはプログラムに移すことができる。
【0050】
1つの実装において、前記APは、ベーシックサービスセット(BSS)の動作周波数帯域にわたって直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式を使用して、1つ以上のマルチユーザ(MU)リソースユニットを割り当てる。
【0051】
1つの実装において、前記割り当てられたDiL RUが、20MHzチャネルの倍数である周波数帯域を有する。
【0052】
1つの実装において、前記割り当てられたDiL RUが、前記動作周波数帯域全体に及ぶ周波数帯域を有する。
【0053】
これは、非同期化による同一チャネル干渉を回避する。
【0054】
1つの実装において、割り当てられたDiL RUにおけるピアツーピア通信が、シングルユーザ(SU)フォーマットを使用して実行される。
【0055】
これは、送信ステーションがピアツーピア通信に適合される送信パラメータの値を設定することを可能にする。送信ステーションによって選択された値は、パラメータの少なくとも一部について、上りリンク通信のためにAPによって設定または指定された値とは異なり得る。ソースSTAはたとえば、ピア宛先STAに向けて送信するときと、APに送信するときとは異なる送信電力を選択し得る。
【0056】
1つの実装において、前記第1のフレームを送信することが、
前記第1のSTAによって、少なくとも1つの送信パラメータの値を選択することと、
前記STAによって選択された前記値を使用して、前記APによって割り当てられた前記DiL RUを介して前記第1のフレームを前記第2のSTAに送信することと、
を有する。
【0057】
1つの実装において、送信パラメータが、符号化タイプ、MCS、DCM、および前記第1のフレームの空間ストリーム(SS)のうちのいずれかである。
【0058】
1つの実装において、前記第1のSTAによってピアの第2のSTAに送信される前記第1のフレームが物理(PHY)プリアンブルおよびペイロードを含み、前記ペイロードは、前記DiL RUを形成する各20MHzチャネルを介して、前記DiL RUおよび前記PHYプリアンブルを介して送信される。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記第2のSTAが前記APに関連付けられていない。
【0060】
本開示のある他の態様は、無線通信のための方法であって、アクセスポイント(AP)において、
ダイレクトリンク(DiL)通信のためのステーション(STA)へのDiLリソースユニット(RU)の割り当てを含むフレームを送信することと、
前記DiL RUの終端と整合するように前記APのnetwork allocation vector(NAV)を設定することと、
を有する方法、を提供する。
【0061】
送信機または受信機のいずれかとしてAPを含む従来の下りリンクおよび上りリンク通信とは対照的に、APは、割り当てられたDiL RUの間に送信または受信を行わない。その結果、APがチャネルにあまりに早くアクセスし、これにより、進行中のP2P通信との干渉を引き起こしうることを防止するために、APは、DiL RUの持続時間に全て沿って、自身のNAVを設定する。たとえば、宛先のピアSTAがAPから遠すぎる場合、たとえば、APに関連付けられていない宛先STAの場合に、干渉が発生し得る。この場合、DiL RUの期間中に宛先のSTAによって送信された信号は、検出閾値を下回る強度でAPに到達するかもしれず、したがって、APはその期間中にアイドルとして媒体を検知し、その期間において、APのNAVが設定されない。
【0062】
1つの実装において、前記設定は、前記割り当てられたDiL RUを介してphysical protocol data unit(PPDU)を送信するために必要とされる時間TXTIME0に基づく。
【0063】
1つの実装において、前記フレームは、前記割り当てられたDiL RUの長さを示すlengthフィールドをさらに含み、それにより、前記STAが時間TXTIME0を判定することを可能にする。
【0064】
実施形態によれば、前記DiL RUの割り当てを含む前記フレームは、トリガフレームと、trigger resource scheduling(TRS)フィールドを含むデータまたは制御フレームと、のいずれかである。
【0065】
本開示のある他の態様は、無線通信のための方法であって、アクセスポイント(AP)において、
前記APによって設定された送信機会(TXOP)の間のダイレクトリンク(DiL)通信のための第1のステーション(STA)への第1のリソースユニット(RU)の割り当てを含む第1のフレームを送信することと、
前記APが、後続のフレームにおいて、前記TXOPの間のDiL通信のための前記第1のSTAへの第2のRUの割り当てをスケジューリングすることを示す情報を前記第1のSTAに送信することと、
前記TXOPの間の前記DiL通信のための前記第1のSTAへの前記第2のRUの前記割り当てを含む第2のフレームを送信することと、
を含む方法、を提供する。
【0066】
実施形態によれば、前記第1のフレームおよび前記第2のフレームは、前記APによって、前記TXOP内のカスケードシーケンスで、送信される。
【0067】
実施形態によれば、前記第1のフレームおよび前記第2のフレームは、トリガフレームと、trigger resource scheduling(TRS)フィールドを含むデータまたは制御フレームと、のいずれかである。
【0068】
APに関連する本開示の様々な態様に関係する追加のオプションの特徴が、ここで以下に説明される。それらは、方法を参照するが、本発明による装置またはプログラムに移すことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、前記APが、ベーシックサービスセット(BSS)の動作周波数帯域にわたって直交周波数分割多元接続(OFDMA)方式を使用して、1つ以上のマルチユーザ(MU)リソースユニットを割り当てる。
【0070】
好ましい実装形態では、前記割り当てられたDiL RUは、20MHzチャネルの倍数である周波数帯域を有する。
【0071】
さらなる好ましい実施態様では、前記割り当てられたDiL RUは、前記動作周波数帯域の全体に及ぶ周波数帯域を有する。これは、非同期化に起因する同一チャネル干渉を回避する。
【0072】
特に、割り当てられたDiL RUにおけるピアツーピア通信が、シングルユーザ(SU)フォーマットを使用して実行される。これは、送信側のステーションが、ピアツーピア通信に適合される送信パラメータの値を設定することを可能にする。送信側のステーションによって選択された値は、パラメータの少なくとも一部について、上りリンク通信のためにAPによって設定または特定された値と異なりうる。発信側STAは、たとえば、ピアの宛先STAに向けて送信するときに、APに送信するときと異なる送信電力を選択しうる。
【0073】
また、本発明の態様は、第1のステーション(STA)の無線通信装置であって、
ダイレクトリンク(DiL)通信のための前記第1のSTAへのリソースユニット(RU)の割り当てをアクセスポイント(AP)から受信するように構成された受信器と、
ピアの第2のSTAに、割り当てられたDiL RUの第1の部分を介して第1のフレームを送信するように構成された送信器と、を有し、
前記受信器は、前記APによって前記第1のSTAに割り当てられた前記DiL RUの第2の部分を介して、前記第2のSTAによって送信された第2のフレームを受信するようにさらに構成される、
無線通信装置を提供する。
【0074】
また、本発明の態様は、第1のステーション(STA)の無線通信装置であって、
アクセスポイント(AP)から、当該APによって設定された送信機会(TXOP)の間のダイレクトリンク(DiL)通信のための前記第1のSTAへの第1のリソースユニット(RU)の割り当てを受信するように構成された受信器と、
プロセッサであって、
前記APが前記TXOPの間のDiL通信のための前記第1のSTAへの第2のRUの割り当てをスケジューリングするかを判定し、
前記判定に基づいて、第1のDiL RUの一部または全部を介してピアの第2のSTAへ送信されるべき第1のフレームを構成する、
ように構成された前記プロセッサと、を有し、
前記装置は、前記プロセッサと接続された送信器をさらに有し、前記送信器は、前記第2のSTAに、前記第1のDiL RUを介して、構成された前記第1のフレームを送信するように構成される、
無線通信装置を提供する。
【0075】
本発明の態様は、アクセスポイント(AP)の無線通信装置であって、
ダイレクトリンク(DiL)通信のためのステーション(STA)へのDiLリソースユニット(RU)の割り当てを含むフレームを送信するように構成された送信器と、
前記DiL RUの終端と整合するように前記APのnetwork allocation vector(NAV)を設定するように構成されたプロセッサと、
を有する無線通信装置を提供する。
【0076】
また、本発明の態様は、アクセスポイント(AP)の無線通信装置であって、
前記APによって設定された送信機会(TXOP)の間のダイレクトリンク(DiL)通信のための第1のステーション(STA)への第1のリソースユニット(RU)の割り当てを含む第1のフレームを送信し、
前記APが、後続のフレームにおいて、前記TXOPの間のDiL通信のための前記第1のSTAへの第2のRUの割り当てをスケジューリングすることを示す情報を前記第1のSTAに送信し、
前記TXOPの間の前記DiL通信のための前記第1のSTAへの前記第2のRUの前記割り当てを含む第2のフレームを送信する、
ように構成された送信器を含む、
無線通信装置を提供する。
【0077】
本発明の別の態様は、機器におけるマイクロプロセッサ又はコンピュータシステムによって実行される際に、その機器に上で定義された方法のいずれかを実行させるプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【0078】
本発明による方法の少なくとも一部が、コンピュータ実装されうる。したがって、本発明は、全体としてハードウェアの実施形態、全体として(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)ソフトウェアの実施形態、又は、その全てが概して「回路」、「モジュール」、又は「システム」と呼ばれうるソフトウェアの態様とハードウェアの態様とを組み合わせた実施形態、の形態をとりうる。さらに、本発明は、媒体に具現化されたコンピュータが使用可能なプログラムコードを有する表現の、任意の有形媒体において具現化されたコンピュータプログラムプロダクトの形式をとりうる。
【0079】
本発明がソフトウェアで実装されうるため、本発明は、任意の適切な搬送媒体上でのプログラム可能な装置への提供のためのコンピュータ可読コードとして具現化されてもよい。有形搬送媒体は、ハードディスクドライブ、磁気テープデバイス、又はソリッドステートメモリデバイスなどのような記憶媒体を含みうる。一時的な搬送媒体は、電気信号、電子信号、光信号、音声信号、磁気信号、又は、電磁信号、例えばマイクロ波やRF信号などの信号を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
ここで、本発明の実施形態を、単なる例として、以下の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、本発明の実施形態が実装されうる典型的な無線通信システムを示す図である。
【
図2a】
図2aは、802.11axに従う従来のトリガベース(TB)のMU UL OFDMA送信を示す図である。
【
図2b】
図2bは、802.11axに従う従来のトリガベース(TB)のMU UL OFDMA送信を示す図である。
【
図2c】
図2cは、802.11axに従う従来のMU DL OFDMA送信を示す図である。
【
図2d】
図2dは、802.11axに従う従来のMU DL OFDMA送信を示す図である。
【
図3a】
図3aは、MU UL OFDMA送信を実行するための802.11ax規格に記載されているトリガフレームのフォーマットを示す図である。
【
図3b】
図3bは、MU UL OFDMAの送信を実行するための802.11ax規格で説明されている、Trigger Dependent User Infoサブフィールドのフォーマットを示す図である。
【
図3c】
図3cは、MU UL OFDMA送信を実行するための802.11ax規格に記載されているTRSサブフィールドのフォーマットを示す図である。
【
図3d】
図3dは、MU UL OFDMAの送信を実行するための802.11ax規格に記載されているCommon Infoフィールドのフォーマットを示す図である。
【
図3e】
図3eは、HE SU PPDUのフォーマットを示す図である。
【
図4a】
図4aは、ステーションの観点から、本発明の実施形態による送信機会(TXOP)中のトリガベース(TB)P2P送信を示す図である。
【
図4b】
図4bは、動作周波数帯域の観点から、
図4aのTB P2P送信を示す図である。
【
図5a】
図5aは、ステーションの観点から、本発明の実施形態による、同じ送信機会(TXOP)中のトリガベース(TB)P2PおよびUL送信を示す図である。
【
図5b】
図5bは、動作周波数帯域の観点から、
図5aのTB P2PおよびUL送信を示す図である。
【
図6a】
図6aは、本発明の例示的な実施形態によるカスケードシーケンスを示す図である。
【
図6b】
図6bは、本発明の例示的な実施形態によるカスケードシーケンスを示す図である。
【
図6c】
図6cは、本発明の例示的な実施形態によるカスケードシーケンスを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態による、APによって実行される無線通信方法の例を、フローチャートを用いて示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態による、第1のステーションによって実行される無線通信方法の例を、フローチャートを用いて示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態によるAPおよびソースSTAの動作を、フローチャートを用いて示す図であり、これらの実施形態において、APが、TXOPにおいて、ソースSTAに2つのDiL RUを割り当てている、図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態によるAPおよびソースSTAの動作を、フローチャートを用いて示す図であり、これらの実施形態において、APが、TXOPにおいて、ソースSTAに2つのDiL RUを割り当てている、図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態によるAPの動作を、フローチャートを用いて示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態によるソースSTAの動作を、フローチャートを用いて示す図である。
【
図13a】
図13aは、本発明の実施形態による通信デバイスの概略図を示す図である。
【
図13b】
図13bは、本発明の実施形態による無線通信機器の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
ここで説明する技術は、直交多重手順に基づく通信システムを含んだ、様々なブロードバンド無線通信システムのために使用されうる。このような通信システムは、例えば、空間分割多元接続(SDMA)システム、時分割多元接続(TDMA)システム、直交周波数分割多元接続(OFDMA)システム、シングルキャリア周波数分割多元接続(SC-FDMA)システムを含む。SDMAシステムは、複数のユーザターミナルに属するデータを並行して送信するために、十分に異なる方向を利用しうる。TDMAシステムは、送信信号を異なる時間スロット又はリソースユニットに分割することにより、複数のユーザターミナルが同一の周波数チャネルを共有することを可能とし、各時間スロットは、異なるユーザターミナルに割り当てられる。OFDMAシステムは、全体のシステム帯域幅を複数の直交サブキャリア又はリソースユニットに分割する変調技術である直交周波数分割多重(OFDM)を利用する。これらのサブキャリアは、トーン、ビンなどとも呼ばれうる。OFDMを用いて、各サブキャリアは、データを用いて個別に変調されうる。SC-FDMAシステムは、システム帯域幅にわたって分散されているサブキャリア上での送信のためのインタリーブされたFDMA(IFDMA)、隣接するサブキャリアのブロックでの送信のためのローカライズドFDMA(LFDMA)、又は隣接するサブキャリアの複数のブロックでの送信のための拡張FDMA(EFDMA)、を利用しうる。
【0082】
ここでの教示は、様々な装置(例えばステーション)に組み込まれ(例えば、装置内に実装され、又は装置によって実行され)うる。いくつかの態様において、ここでの教示に従って実装される無線ステーションは、アクセスポイント(いわゆるAP)又はそうでないもの(いわゆる非APステーション又はSTA)を含みうる。
【0083】
APは、ノードB、無線ネットワーク制御装置(「RNC」)、エボルブドノードB(eNB)、5G次世代基地局(gNB)、基地局制御装置(「BSC」)、基地送受信局(「BTS」)、基地局(「BS」)、送受信機能(「TF」)、無線ルータ、無線送受信機、ベーシックサービスセット(「BSS」)、拡張サービスセット(「ESS」)、無線基地局(「RBS」)、又はいくつかの他の専門用語として知られるもの、を含み、又はそれとして実装されうる。
【0084】
非APステーションは、加入者ユニット、移動局(MS)、遠隔局、遠隔ターミナル、ユーザターミナル(UT)、ユーザエージェント、ユーザデバイス、ユーザ機器(UE)、ユーザステーション、又はいくつかの他の専門用語としてしられるもの、を含み、又はそれとして実装されうる。いくつかの実施形態では、STAは、携帯電話、コードレス電話、セッション・イニシエーション・プロトコル(「SIP」)電話、ワイヤレスローカルループ(「WLL」)ステーション、パーソナルデジタルアシスタント(「PDA」)、無線接続能力を有するハンドヘルドデバイス、又は、無線モデムに接続された、いくつかの他の適切な処理デバイス、を含みうる。したがって、ここで教示される1つ以上の態様は、電話(例えば携帯電話又はスマートフォン)、コンピュータ(ラップトップ)、タブレット、ポータブル通信機器、ポータブルコンピューティングデバイス(例えばパーソナルデジタルアシスタント)、娯楽機器(例えば音楽又は映像デバイス、衛星ラジオ)、全地球測位システム(GPS)機器、又は、無線又は有線媒体を介して通信するように構成された任意の他の適切な機器に組み込まれうる。いくつかの態様において、非APステーションは、無線ノードでありうる。このような無線ノードは、例えば、有線通信リンク又は無線通信リンクを介して、ネットワーク(例えば、インターネット又はセルラネットワークなどのワイドエリアネットワーク)のための又はそのネットワークへの接続性を提供しうる。
【0085】
図1は、いくつかの通信ステーション101~107、110が、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)の無線送信チャネル100を介してデータフレームを交換する、無線通信システムを示している。セントラルステーション、すなわちアクセスポイント(AP)110は、無線システムのベーシックサービスセット(BSS)を管理しうる。仮想APを実装している場合、APによって、複数のBSSが管理されうる。無線送信チャネル100は、単一のチャネルまたは複合チャネルを形成する複数のチャネルによって構成される動作周波数帯域(OFB)によって定義される。
【0086】
今日の増加傾向に対応する直接通信の例示的な状況は、非APステーション、たとえば、図に示されるSTA102とSTA101との間のピアツーピア(P2P)送信の存在である。P2P送信をサポートする技術は、たとえば、WiFi-Miracast(RTM)またはワイヤレスディスプレイのシナリオ、または、Tunneled Direct Link Setup(TDLS)である。なお、P2Pフローが一般に多数ではない場合であっても、フローあたりのデータ量は膨大になりうる(典型的には、1080p60から8K UHD解像度までの低圧縮映像)。
【0087】
STA101~107のそれぞれは、アソシエーション手順中にAP110と関連付けうる。アソシエーション手順の間、AP110は、要求側STAに、特定のアソシエーション識別子(AID)を割り当てる。例えば、AIDは、STAを一意に識別する16ビットの値である。
【0088】
ステーション101~107、110は、送信機会(TXOP)の許可を受け、次いで(シングルユーザ、SU)データフレームを送信するために、ワイヤレス媒体にアクセスするように、EDCA(Enhanced Distributed Channel Access)コンテンションを使用して互いに競合する。また、ステーションは、マルチユーザ(MU)方式を使用することができ、この方式では、単一のステーション、通常はAP110がMU送信をスケジューリングすることが許可され、すなわち、無線ネットワーク内の他のステーションへ又は他のステーションからの複数の同時送信が可能とされる。このようなMU方式の1つの実装が、マルチユーザ上りリンク及び下りリンクOFDMA(MU UL及びDL OFDMA)手順として、IEE 802.11ax改訂規格において採用されている。
【0089】
図2aを参照すると、そのようなMU UL送信を実際に実行するために、802.11ax規格は、直交周波分割多重アクセス(OFDMA)技術に基づいて、許可された通信チャネルを、複数のステーションによって周波数領域において共有されるリソースユニット201~204(RU)に分割している。
【0090】
非APステーション101~107によるMU UL送信を細かく制御するために、AP110は、チャネルがどのようにRUに分割されるか、および、どの非APステーションが各RUを介して送信することを許可されるかを定義するトリガフレーム210を送信する。この例では、トリガフレーム210が、RU201をSTA1に割り当て、RU202をSTA2に割り当て、RU2013をSTA3に割り当て、RU204をSTA4に割り当てる。割り当ては、非APステーションのAIDを使用して行われる。
【0091】
各非APステーションは、トリガフレーム210を受信すると、自身のAIDのおかげで自身に割り当てられたRUを判定し、トリガフレーム210のSIFS期間の後に、その割り当てられたRUを介して、(HE TB PPDUとして知られる)MUフレーム220をAPに送信開始することができる。
【0092】
トリガ機構のため、「トリガベースのMU UL送信」という用語が使用される。
【0093】
ステーションSTA2~STA4による4つのHE TB PPDUの並列送信の後、AP110は、各RUを介して個々のブロックack(BA)230を、または、帯域全体にわたってマルチステーション(M-STA)ブロックack(BA)230を、送信する。
【0094】
図2bは、ステーションの観点から同じMU UL送信を示している。
【0095】
図3aは、MU UL OFDMA送信を実行するための、802.11ax規格に記載されているトリガフレームのフォーマットを示している。
【0096】
トリガフレーム210は、IEEE規格の802.11axで定義されているいくつかのフィールドを含み、特に単一のCommon Infoフィールド300(
図3d)と複数のUser Infoフィールド310を含む。
【0097】
各User Infoフィールド310は、Common Infoフィールド300において定義されたRUの、個別の非APステーション101~107への割り当て、および、APとのUL通信に関する通信パラメータを定義する。そのために、RU Allocationサブフィールド312は、関係するRU(中心周波数および周波数帯域幅)を特定し、一方で、AID12サブフィールド311は、そのRUが割り当てられる非APステーションのAIDの12個のLSBを搬送する。
【0098】
User Infoフィールド310のビットB39 313は、現在使用されていない。Trigger Dependent User Infoサブフィールド314は、主に、User Infoフィールド310の他のサブフィールドによって定義される通信パラメータに関する詳細を提供するために使用される。Trigger Dependent User Infoサブフィールド314(
図3b)の内容は、トリガフレームのタイプに依存する。図に示されるフォーマットは、ベーシックトリガフレームのTrigger Dependent User Infoサブフィールド314に対応する。
【0099】
802.11axで定義されているUser Infoフィールドは、発信元(ソース)の非APステーションのみがAID12サブフィールド311で特定されるため、UL送信のみが明確に承認される。
【0100】
図2cは、AP110が、データフレーム(HE PPDU)を送信する周波数領域におけるMU DL送信を示す。MU UL送信に関しては、802.11ax規格が、直交周波分割多元接続(OFDMA)技術に基づいて、許可された通信チャネルを、複数のステーションによって周波数領域で共有されるリソースユニット201~204(RU)に分割する。
【0101】
図の例では、AP110が、4つの非APステーションと通信するための4つのRUを定義している。プリアンブル250は、RUの記述と、RU201~204の各々を介したDL送信のための宛先の非APステーションとなるステーションの順序付けられたリストとを含む。
【0102】
次に、AP110は、データフレーム内のそのデータ(HE PPDU)を、RU1 201を介してSTA1へ、RU2 202を介してSTA2へ、RU3 203を介してSTA3へ、およびRU4 204を介してSTA4へ、送信する。
【0103】
AP110は、データそのものに加えて、非APステーションに送信される各HE PPDUのA-ControlフィールドにTRS controlサブフィールドを含めることができる。
図3cに示されるこのTRSサブフィールドは、例えばMU DL送信260の後のSIFS(Short Inter Frame Space)後にトリガされる、(媒体にEDCAアクセスする必要なしに)次のMU UL送信において受信データの確認応答をするために、宛先の非APステーション(STA1~STA4)によって必要とされるすべての指示を含む。
【0104】
図3cに示されるように、802.11axに係るサブフィールドTRS350は、受信したデータに対応するために宛先の非APステーションが使用するための、UL Data Symbolsサブフィールド351とRUのallocation352とを含む。UL Data Symbolsサブフィールドは、HE TB PPDU応答のDataフィールドにおけるOFDMシンボルの個数を示し、OFDMシンボルの個数-1に設定される。TRSサブフィールド350の他のパラメータは、APが確認応答を効率的に受信するために使用されるべき変調(MCS)315および(AP側で予想されるRSSIに基づく)送信電力を示すために使用される。ビットB25(321)は、現在使用されていない。
【0105】
図2cに戻り、AP110は、RUを使用して、非APステーションへそのデータフレーム(PPDU)260を送信する。
【0106】
非APステーションは、受信PPDUのTRSサブフィールド350の内容の復号を含んだ、APから受信されたPPDU260の復号を行うことができる。
【0107】
そして、非APステーションは、block ack(BA)パケット270を準備する。
【0108】
PPDUの受信の終了後のSIFS(Short Inter Frame Space)の後、各非APステーションは、その準備されたBAパケット270を、受信されたTRSサブフィールド350のフィールド352において特定されたRUを介して送信する。
【0109】
図2dは、ステーションの観点からの同じMU DL送信を示す。
【0110】
図3eは、HE SU PPDUのフォーマットを示す。従来のプリアンブル(L-STF、L-LTF、L-SIG)に加え、RL-SIG(Repeated Legacy Signal Field)、HE-SIG-A(HE SIGNAL A)、HE-STF(HE Short Training Field)、HE-LTF(HE Long Training Field)、Data、及びPE(Packet Extension)フィールドを含む。レガシプリアンブルおよびHE-SIG-Aは、各20MHzチャネル上で複製される。HE-SIG-Aフィールドは、帯域幅(BW)、変調および符号化方式(MCS)、データストリームの数、符号化タイプなどのような、PPDUの送信パラメータのセットを示す複数のサブフィールドを含む。
【0111】
HE SU PPDUの図示されたフォーマット、及び、HE MU PPDU並びにHE TB PPDU(不図示)などの他の可能なフォーマットが、本発明の実施形態によるフレームを具現化するために使用されうる。これらのHE PPDUに加えて、他のフォーマットももちろん想定されうる。例えば、802.11beにおいて導入されたExtremely-High-Throughput(EHT)フレームも、よく使用されうる。
【0112】
高密度環境における無線通信システムに要求される帯域幅の増加および低減されたレイテンシの要求の問題にさらに対処するために、本発明の態様は、トリガされたMU送信において許可される送信を効率的に変化させようとする。本発明の態様は、ピアツーピア(P2P)とも呼ばれるダイレクトリンク(DiL)送信がMU送信においてスケジューリングされ、効率的に管理されることを可能とする特徴を提供する。管理は、DiL送信のためにリソースユニットを割り当てるAPと、データを送信するためにそのリソースを使用し、かつ、サブリースされた帯域幅を使用して応答フレームを送信する第2の(宛先)ステーションへ、割り当てられた帯域幅の一部をサブリースする、第1の(ソース)ステーションとの間で分散されると考えられる。
【0113】
DiLリソースユニットの割り当ては、トリガフレームによって、または、trigger resource scheduling(TRS)サブフィールドを含んだデータまたは制御フレームによって実行されうる。
【0114】
そのために、APによって非APステーションに送信されるトリガフレームおよび/またはデータまたは制御フレームのtrigger resource scheduling(TRS)サブフィールドは、宛先の非APステーションに向けたデータ送信のためにMU送信のリソースユニットを割り当てるように拡張される。それらは、下りリンク(DL)および上りリンク(UL)の能力に加えて、トリガされたMU送信内でのダイレクトリンク(DiL)送信能力を提供する。
【0115】
本明細書でより詳細に説明するように、APによってP2P RUを割り当てられた第1の(ソース)ステーションは、第2の(宛先)ステーションとの、P2P RUの時間共有を実行しうる。このようにして、ソースステーションと宛先ステーションの両方が、ソースステーションへのP2P送信のために、たとえばトリガフレームによって、割り当てられたリリソースユニットを使用して、ピアツーピアでデータを交換しうる。
【0116】
ソースステーションは、トリガされたMU送信中に提供されるP2P能力を使用して、データフレームを送信する。また、宛先ステーションは、その後に、割り当てられたリソースユニットを介してデータフレームを受信し、ソースステーションに向けて応答フレームで応答しうる。
【0117】
以下では、DiL RUまたはP2P RUが、ダイレクトリンク送信のためにそのように割り当てられたリソースユニットを指す。
【0118】
図4aは、ステーションの観点から、本発明の実施形態による送信機会(TXOP)中の、トリガベース(TB)P2P送信を示している。
【0119】
この例では、P2P送信420が、トリガフレーム(210)でありうる又はTRSサブフィールドを含む制御もしくはデータフレームでありうる、フレーム410によってトリガされる。また、図示の例では40MHzの複合チャネルに対応する動作帯域の全てを、P2P送信が占有すると仮定している。
【0120】
フレーム410は、このようなDiLリソースユニットのシグナリングを搬送する。たとえば、P2P RUをシグナリングするために1ビットが使用されうる。そして、ソースステーションは、フレーム410を受信すると、DiLのためのリソースユニットを割り当てられたか、およびどのリソースユニットが肯定的であるかを判定することができる。
【0121】
ソースステーションは、割り当てられたP2P RUの一部を使用して、physical protocol data unit(P2P PPDU)421を宛先ステーションへ送信する。宛先ステーションは、P2P RUの別の部分を使用して、確認応答(ACK)フレームなどの応答フレーム422を送信する。
【0122】
図4bは、動作周波数帯域の観点から
図4aのTB P2P送信を示す。
【0123】
図5aは、ステーションの観点から、本発明の実施形態による、同じ送信機会(TXOP)中のトリガベース(TB)P2PおよびUL送信を示す。
【0124】
これらの実施形態では、APが1つのトリガするフレーム(TF又はHE MU PPDUのTRS)を使用して、1つより多くのUL/DL/DiLフェーズを割り当てる。図には、2つのフェーズが示されている。STA1とSTA2との間のP2P通信(P2P PPDUの送信およびACKの受信)を可能にするP2Pフェーズと、STA3およびSTA4がそれぞれTB PPDUをAPに送信する上りリンクフェーズである。トリガするフレームは、時間領域および周波数領域において各RUを特定する。時間領域に対して、各RUは1つのグローバル時間値を使用することによってまたは先行する割り当てられたRUの終端に対して相対的に、トリガするフレームの終端から定義されうる。前者は、ステーションがセーブモードに入ることを可能にする。後者は、時間を測定するためにステーションによって使用される可能なクロックシフトの感度が低いので、より良好な同期を可能にする。
【0125】
図5bは動作周波数帯域の観点から、
図5aのTB P2PおよびUL送信を示す。
【0126】
図6aは、本発明の例示的な実施形態によるカスケードシーケンスを示す。
【0127】
図示の実施形態では、2つのステーション(STA1およびSTA2)が、MUカスケードシーケンスの前にダイレクトリンクセッションを確立している。2つの他のステーション(STA 3およびSTA4)は、APに送信するためのいくつかのデータを有する。
【0128】
この実施形態の例では、APが、ダイレクトリンク送信のためにピアとMU UL送信のための2つの他のSTAとの間で、自身が獲得したTXOPを共有するためにMUカスケードシーケンスを開始する。
【0129】
そのために、APは、例えば、動作帯域全体にわたるリソースユニットの受信者としてSTA1を示すトリガフレームを作成する。これは、STA1の送信と並行して他の送信が行われないことを意味する。また、APは、TRS controlサブフィールドを含んだ、STA1にアドレス指定された単一のA-MSDUを含むMU DL PPDUを送信してもよい。これは、(トリガフレーム210の例において)STA1に割り当てられると共にすべての動作帯域を使用するRUを示す1つのUser Infoフィールド310のみをリストすることによって行われる。また、APは、このRUがダイレクトリンク送信専用のRUであることに言及する。
【0130】
この最新の情報は、例えば、この情報を符号化するために1ビットを使用することによって、ダイレクトリンク送信専用のRUにおいて示すことができる。RUがダイレクトリンク送信専用であるという事実をシグナリングするためのいくつかの可能性が存在する。たとえば、User Infoフィールドの1つの予約ビット313(またはTRSサブフィールド350のビット321)が、ダイレクトリンクRUを示すために使用されうる。
【0131】
別の可能性は、ダイレクトリンクのためのRUを示す特定の値にAID12フィールド311を設定することである。そして、User Infoフィールド310のいくつかのフィールドがダイレクトリンク送信の場合に無意味であるため、ステーションのAIDが、trigger dependent infoフィールドにおいて、またはUser Infoフィールド自体において、特定のフォーマットで符号化されうる。そして、たとえば、user infoフィールドの12ビット(ビットB20~B31)を再使用して、ソースピアステーションのAID、宛先ピアステーションのAID、またはそれらの2つのピアステーション間のダイレクトリンクセッションに固有のAIDのうちの1つまたは複数を示すことが可能である。
【0132】
そして、APは、トリガするPPDU(HE MU PPDU410)を送信し、PPDUがダイレクトリンク送信のためのRUをSTA1に割り当てるため、APは、ダイレクトリンク送信の終端(確認応答部分を含む)までAP媒体アクセスを延期する効果を有する、そのNetwork Allocation Vector(NAV)を設定することができる。トリガするPPDUを放射した後にAPがそのNAVを設定することにより、STA2によって送信された確認応答フレーム422と、APによる後続のHE MU PPDU411の送信との間の起こりうる衝突を回避することが可能となる。ここでの問題は、APがSTA2の送信を検出できない可能性があることである。STA2は、STA1と通信するのに十分に近接している一方で、APのBSSの範囲外であり、APからあまりにも遠い可能性がある。
【0133】
STA1は、トリガするPPDU410を受信すると、(割り当てられたRUに関連する情報を読み取ることによって)APがダイレクトリンク送信のためにSTA1にRUを割り当てたと判定する。そして、STA1は、DiL通信のためにAPによって割り当てられたRUの持続時間に対応する時間TXTIME0を決定する。TXTIME0の決定は、トリガするPPDUにおいて受信されたパラメータ値(たとえば、トリガフレーム210からのUL Lengthフィールド、またはTRS controlフィールド350からのUL Data Symbol parameters351およびUL HE MCS315)に基づきうる。
【0134】
TXTIME0の決定は、トリガフレームに含まれるLengthフィールドまたはTRSサブフィールドに含まれるData Symbolサブフィールドに基づきうる。これらのフィールドは、UL送信と同様の方法で、割り当てられたP2P RUのためにAPによって特定されうる。同じ送信フェーズ中のすべてのMU RUが同期の目的で同じ長さを有することを考慮することによって、UL Length320およびUL Data Symbol351が使用されうる。RUが本発明の実施形態によるULおよび/またはP2P送信のために割り当てられうるため、サブフィールド320、351、および315は、それぞれ、TB Length、TB Data Symbol、およびTB HE-MCSに新たに命名されうる。そうでない場合に、専用フィールド、P2P Length、P2P Data SymbolsおよびP2P HE-MCSが、使用されてもよい。
【0135】
TB Lengthに基づくTXTIME0の決定の例として、以下の関係を使用することができる:
TXTIME0=(UL_LENGTH/3)×4+24
{Danraku=ON}
または、TXTIME0に基づいて、TB Lengthが取得される:
TB_LENGTH=((TXTIME0-20)/4)×3-3
{Danraku=ON}
また、TXTIME0は、HE TB PPDUのデータ部分のOFDMシンボルの数を示す、TRS(350)のTB Data Symbolサブフィールド(351)と、TB HE MCSフィールド(315)(HE TB PPDUプリアンブルサイズは既知である)とに基づいて決定されてもよい。
【0136】
ダイレクトリンク送信のためのRUの割り当てに続いて、STA1は、決定された持続時間TXTIME0と、SIFS持続時間と、ACKフレームなどの応答フレームをソースSTA1に送り返すために宛先ピアSTA2によって必要とされる持続時間TXTIME2とを減算することによって、新しい送信時間TXTIME1を決定する。STA1は、例えばSTA2から受信された最新の過去の送信中に測定されたSNRに基づいて、STA2にデータを送信するための最適なMCS値を決定する。このMCS値およびTXTIME2は、STA1からSTA2に送信されうるデータの量を決定することを可能にする。そして、STA1はDiL PPDU421を作成し、APによって割り当てられたRU上でそれを送信する。STA2はそのRU上でDiL PPDU421を受信した後、そのPPDUを復号し、確認応答パケット422を作成し、同じRU上で、DiL PPDU421の受信時間の終了のSIFS持続時間後に、それを送信する。
【0137】
そのNAV持続時間の満了時に、APは媒体を感知し、媒体がSIFS持続時間中に解放されている場合、カスケードシーケンスを継続することができる。
【0138】
そして、APは、カスケードシーケンスを用いた動作を継続しうる。
【0139】
MUカスケード機構は、APによって勝ち取られた単一のTXOP中にいくつかの送信フェーズ(たとえば、ULおよびDL)を繋げることを可能にする。この機構は、双方向アプリケーションのための低遅延送信を提供し、ステーションのスケジューリングのためのAPに対するより良好な柔軟性を与え、また、APとの省電力契約を交渉した省電力モード(典型的にはスリープ)において、異なるステーションを時間でスケジューリングするためにTWT(Target Wake up time)の範囲において使用される。これらすべての場合において、APは、少なくともトリガフレームを含むトリガするMU PPDU411、またはTrigger Response Scheduling(TRS) controlサブフィールドを有するMSDUを送信することによって、カスケードシーケンスを開始する。
【0140】
図の例では、ステーションSTA3およびSTA4が、HE TB PPDU431および432を送信するためのUL RUを割り当てられる。割り当てられたRUは、HE MU PPDU411において異なる方法でシグナリングされうる。
【0141】
トリガするHE MU PPDU411を受信すると、ステーションSTA3およびSTA4がMU DL送信の宛先(物理プリアンブルのHE SIG-B部分にリストされたステーションの一意識別子AID、または、ブロードキャストリソースユニットを識別するプリアンブル中のAID)として識別される場合、ステーションは、受信されたMSDUと、含まれるTRSサブフィールドとを復号する。受信されたHE MU PPDUがトリガフレームを含む場合、ステーションSTA3およびSTA4は、トリガフレーム411のUser Infoフィールド310の意図された受信機として識別される(すなわち、AID12サブフィールド311がステーションのAIDの12個のLSBに等しい)。そして、各ステーションSTA3およびSTA4は、関連付けられたUser Infoフィールドを復号する。
【0142】
TRS controlサブフィールドまたはトリガフレームおよびUser Infoフィールドに基づいて、各ステーションは、自身に割り当てられたリソースユニット(RU)と、関連する送信パラメータ値(フィールド、たとえば、MCS、ターゲットRSSIなど)を決定する。
【0143】
そして、各ステーションは、割り当てられたRUにおいて送信するパケットを生成する。そのために、ステーションは、まず、APによって許可されている送信時間(TXTIME0)を決定する。その決定は、TBまたはUL Lengthフィールド、Data Symbolフィールド、または、HE MCSフィールドのいずれかを用いて、上記で説明したものと同様に実行されうる。第2に、APによって示されるMCSおよびTXTIME0に基づいて、ステーションは、送信可能なデータの量を決定し、(たとえば、ペイロードデータを含んだ)MSDUパケットを生成する。そして、MSDUパケットがHE MU PPDU431および432にカプセル化され、トリガするHE MU PPDU411の受信の終了の、Short Inter Frame Space (SIFS)持続時間後に送信される。
【0144】
APは、トリガするPPDU411の送信後、媒体をリッスンし、HE TB PPDU431/432の受信を待つ。APは、HE TB PPDU431/432の送信期間中に、(全てAP用の)PPDUを復号する。APは、送信の終了のSIFS持続時間後に、媒体を再び取り、それを使用して、DL、UL、またはDiL送信のためのカスケードシーケンスをTXOPの終了まで継続することができる。そして、APは、TXOPの最後に、カスケードシーケンスの間にAPによって受信されたすべてのHE MU PPDUに確認応答するために、Multi STA Block Ackパケット440を送信する。
【0145】
APは、ダイレクトリンクのためのRUを割り当てないトリガするPPDU411を送信することによってカスケードシーケンスを開始し、トリガするPPDU410を送信することによってシーケンスを継続することができることに留意する価値がある。フレーム411および411の連続送信の任意の順序および/または任意の個数が想定されうる。
【0146】
図6bは、本発明の別の例示的な実施形態によるカスケードシーケンスを示す。
【0147】
この実施形態では、MUカスケードシーケンスが、ダイレクトリンク送信と並行するマルチユーザOFDMA送信を行いながら、ダイレクトリンク通信の確認応答の迅速な発信を可能にするように編成される。カスケードシーケンスの起点において、APは、双方向におけるダイレクトリンクのトラフィックの放射をスケジューリングするが、確認応答はシーケンスの後続のタイムスロットにおいて放射される。APは、トリガするPPDU410bを送信するときに、ダイレクトリンク送信のための少なくとも1つのRUを示す。
図6bの例では、APがダイレクトリンク送信のためにSTA1をスケジューリングし、並行して、UL送信のためにSTA3およびSTA4をスケジューリングする。通常、APは、同一のトリガするPPDUにおいてスケジューリングされたダイレクトリンク通信の受信機であるステーションに、(そのステーションが2つの異なるRU上で同時のデータの受信および送信を行う能力を明示的に述べている場合を除き)送信のためのスケジューリングを行わない。
【0148】
RUがダイレクトリンク送信専用であることを示すためのシグナリングは、
図6aの実施形態と同じでありうるが、ダイレクトリンク送信のために割り当てられたRUは、必ずしも動作帯域全体を占有するわけではない。この例では、DiL RUが20MHzの倍数である帯域幅を占有することのみが望まれる。これにより、DiLステーションが、動作帯域の残りの20MHzチャネル上で並行して送信されるMU ULプリアンブルとは異なる、DiLステーション自身のプリアンブルを有するSU PPDUを使用することが可能となる。トリガするPPDU410bの発信時に、STA3および/またはSTA4が何らかの理由でそれらのHE TB PPDUを送信することができない場合、APはダイレクトリンク送信の終了の前に媒体を取らないため、APはそのNAVをダイレクトリンク送信の持続時間に設定することができる。
【0149】
ステーションSTA1、STA3、およびSTA4は、トリガするPPDU410bを受信すると、それらがAPによって割り当てられたRUを使用することが意図されていることを判定する。この実施形態では、すべてのステーションが、上で議論されたのと同じ方法でTXTIME0を計算し、これらは結果として同じ値になるはずである。すべての送信(P2P PPDU423およびHE TB PPDU424および425)は、ほぼ同じ瞬間に終了する。
【0150】
図6aに示される実施形態と比較したこの実施形態における主な違いは、DiLの発信側STA1が(例えば、遅延ブロックAckを要求することによって)STA2への即時の確認応答を必要とせず、現在のフェーズにおいてこの送信のための時間を割り当てないことである。結果として、STA2は、その次の送信機会(カスケードシーケンスの次のフェーズのうちの1つ、または将来のTXOP)を待って、確認応答を送り返す。
【0151】
送信の終了時に、APは、最後の送信の終了のSIFS持続時間後に媒体をとり、例えば、ダイレクトリンクセッションの他のピアステーション(STA2)をトリガするために、新しいトリガするPPDU411bを送信する。また、この第2のトリガするPPDU411bは、本発明の実施形態による、別のステーション(たとえばSTA3)からのMU UL並行送信をトリガしうる。STA2は、この第2のトリガするPPDU411bを受信すると、上述のものと同じメカニズムを使用してTXTIME0を決定し、カスケードシーケンスの前のフェーズ中に受信されたDiL PPDU423の確認応答を含んだPPDUを準備する。代わりにまたは加えて、計算されたTXTIME0に従ってまだ余裕がある場合、PPDUは、ピアのSTA1へ送信すべきデータを含んでもよい。APによって割り当てられたRUをも有するSTA3は、シーケンスのフェーズ中に実行されたものと同様に、HE TB PPDUを準備する。
【0152】
この実施形態の利点の1つは、同時送信(MU UL OFDMA方式の使用)の可能性のために、TXOP中に多数のステーションの、より柔軟なスケジューリングを可能にすることである。APが第2のトリガするPPDU411bにおいて応答側ステーション(STA2)にP2P RUを直接スケジューリングする実施形態において、APが、P2P通信に関与する2つのピアステーションを知る必要がある。変形例では、APが、第2のトリガするPPDU411bにおいて、P2P RUをソースSTA1にスケジューリングする。そして、STA1は、宛先ステーションSTA2からの応答フレームをトリガするために、したがって、P2P RUを時間で共有することによって、この第2の割り当てられたP2P RUを介してフレームを送信する。STA1は、APに代わって、トリガする側のステーションのように動作する。APは、宛先ピアステーションSTA2を知らなければならない(STA2がAPと関連付けられていなくてもよい)。
【0153】
カスケードシーケンスの1つのフェーズ中に送信されたダイレクトリンクパケットの確認応答が同じシーケンスの後続のフェーズの1つの間に送信されるため、シーケンスの最後のフェーズ中に送信されたデータについては、TXOPの終了前に確認応答を行うことができない。
【0154】
この問題を解決するために、
図6aおよび
図6bに記載される2つの実施形態を組み合わせた本発明のさらなる実施形態が想定される。カスケードシーケンスの最初の部分は、
図6bの実施形態のように動作され、ダイレクトリンク送信を含んだカスケードシーケンスの最後のフェーズが、
図6aの最初のフェーズで説明されるように動作される(受信側のピアステーションによるDiL PPDU受信の直後に確認応答が送信される)。
【0155】
このさらなる実施形態では、新しいシグナリングを使用して、ステーションへのダイレクトリンクのために割り当てられたリソースユニットの定義において、現在のカスケードシーケンスにおいてそのステーションへ後続のダイレクトリンクRUがスケジューリングされないことを示すことができる。このシグナリング「NO MORE DiL RU」は、例えば、User Infoフィールド310の802.11ax形式で現在提示されている予約ビットの1つをTRS controlサブフィールドにおいて、又は、trigger dependent user infoフィールド314において、使用しうる。さらに、ダイレクトリンク用のRUを示すビットと同様に、user infoフィールド310における20~31ビットの範囲がダイレクトリンク通信の場合には使用できないため、これらのビットにおいて専用の信号が配置されてもよい。
【0156】
図6cは、本発明の別の例示的な実施形態によるカスケードシーケンスを示す。
【0157】
この実施形態の主な利点は、間に確立されたダイレクトリンクセッションを有する2つのピアステーションのうちの1つがBSSの範囲外にあってもよいことである。この実施形態では、APは、そのBSSに登録されたピアステーションを、送信のためにスケジューリングするだけであり、このピアステーションは、例えば、逆方向(Reverse Direction)Protocol(RDP)を使用することによって、割り当てられた時間の一部を他のピアステーションにサブリースすることができる。本実施形態では、STA1が自身にダイレクトリンクRUを割り当てるトリガフレーム410cを受信すると、そのステーションは、
図6aまたは
図6bの先の実施形態のように、それを自らのニーズのために使用するか、またはそれの一部をダイレクトリンクセッションの他のピアステーションにサブリースすることができる。
【0158】
図6cの例では、ステーションSTA1がDiL RUを割り当てるトリガするPPDU410cを受信すると、STA1は、他の実施形態で議論したように、割り当てられた送信時間(TXTIME0)を決定し、そして、時間TXTIME0の全ての間(すなわち、P2P RUの全てを占有して)、ピアステーションSTA2へ、P2P PPDUを準備して送信する。同じカスケードシーケンスの次のフェーズにおいて、STA1がトリガするPPDU411cを受信し、割り当てられた送信時間(TXTIME0)を決定した後、STA1は、逆方向イニシエータとして機能し、(決定された時間TXTIME0よりも短い送信時間TXTIME1を有する)PPDU440を送信する。PPDU440は、受信ピアがSTA1に逆方向にデータを送信することができることを示すために1に設定された、逆方向許可(RDG)ビットを示すHT Controlフィールドと、好ましくは現在のカスケードフェーズにおける割り当てられた持続時間の終わりまでの最大残存持続時間(TXTIME0-TXTIME1-SIFS)に設定された、Duration/IDフィールドと、を含む。そして、STA2は、このRDP PPDU440の受信からSIFS後に、媒体を使用することができる。RDレスポンダとしてのSTA2は、そのPPDU441の送信時間がPPDU440のDuration/IDフィールドに示される残存持続時間を超えないことを確実にしなければならず、STA1から以前に受信されたPPDUの確認応答、またはSTA1のためのデータ、または両方の組合せのいずれかを含む、DiL PPDU441をSTA1へ送信する。
【0159】
逆方向プロトコルの従来の使用との主な違いは、STA2が現在の逆方向セッションがカスケードシーケンスの範囲内で発生していることを知らないことである。したがって、STA1は、この方式によって課される特別な条件を処理する責任を負う。例えば、STA1は、現在の送信が割り当てられた時間の終端前に終了しないことを保証しなければならない。なぜなら、STA2による送信の早すぎる終了は、別のステーションが媒体を取り、次いでカスケードシーケンスを中断することを可能にするか、または同時のHE TB送信に干渉することを可能としうるからである。したがって、STA2は、割り当てられた時間の終端までパディングデータを送信する必要がありうる。STA2が必要なパディングを追加することができない場合、STA1は、STA2の代わりに、パディングを追加してもよい。たとえば、STA1は、STA2によって送信されたPPDU441を受信すると、(STA2によって送信されたPPDUのQoSデータに含まれるHT controlフィールドのより多くのデータビットを確認することによって)さらなるデータがSTA2によって送信されるかを確認する。STA2によってそれ以上データが送信されず、割り当てられたRUの終端にまだ達していない場合、STA1は、RUの割り当てられた送信時間の終端まで、媒体を占有するためにパディングデータを送信する必要がある。
【0160】
変形例では、APが、DiL RUを割り当てるためにSTA1に送信されるUser Infoフィールドにおいて、現在のカスケードシーケンスの後続のフェーズのうちの少なくとも1つにおいて、追加のDiL RUがこのダイレクトリンクセッションのために割り当てられることを示しうる。これは、
図6bに記載されるように、「NO MORE DiL RU」シグナリングを使用することによって行うことができる。
【0161】
別の変形例では、APによって割り当てられたDiL RUにおいて逆方向プロトコルを使用する可能性が、RDP使用が許可されるか否かを示すシグナリング(例えば、トリガフレームのUser Infoフィールドにおける、またはTRS controlフィールドにおけるビット)によって制御される。これは、APが、HE TB PPDUを使用するステーションによる並行MU UL送信を干渉のリスクなしにスケジューリングすることを可能にする。
【0162】
説明を容易にするために、カスケードの実施形態の例の全て(
図6a~
図6c)が、2つのフェーズを含んだカスケードシーケンスを示している。当然ながら、本発明の実施形態によるカスケードシーケンスは、1つのフェーズのみを含んでもよく、または2つより多くのフェーズを含んでもよい。
【0163】
図7は、本発明の実施形態によるAPによって実行される無線通信方法の例を、フローチャートを用いて示している。これらの実施形態は、カスケードシーケンス内で、または任意のカスケードシーケンスから独立して、実行されうる。
【0164】
ステップ701において、APは、DiL RUを割り当てるフレームを第1のステーション(例えば、STA1)に送信する。前述の実施形態で説明したように、DiL RUの割り当ては、トリガフレームに、または、APから受信されたデータまたは制御フレームのtrigger resource scheduling(TRS)フィールドに含められうる。
【0165】
変形例では、APが、割り当てられた第2のDiL RUの使用に関する制約を、第1のステーションおよび/または第2のステーションへシグナリングしうる。たとえば、APは、割り当てられたDiL RUを介した逆方向プロトコルの使用が許可されているか否かを示しうる。
【0166】
ステップ702において、APは、オプションで、DiL RUの終端と揃うように、APのnetwork allocation vector(NAV)を設定する。APは、APがチャネルにあまりに早くアクセスして進行中のP2P通信との干渉を引き起こしうることを防止するために、DiL RUの持続時間に沿ってそのNAVをすべて設定する。代替的に、APは、第1のステーションにDiL RUを割り当てるフレームの送信の終了時に、DiL RUの持続時間に1つのSIFSを加えたタイマを設定しうる。タイマの満了は、DiL RUの終了に対応し、APは、データを送信するために媒体を再び感知することができる。
【0167】
図8は、本発明の実施形態による、第1のステーションによって実行される無線通信方法の例を、フローチャートを用いて示している。第1のステーションは、第2のステーションとの確立されたダイレクトリンクセッションを有すると考えられる。これらの実施形態は、カスケードシーケンス内で、または任意のカスケードシーケンスから独立して、実効されうる。
【0168】
ステップ801において、第1のステーションは、APから、DiL RUの割り当てを受信する。オプションで、第1のステーションは、逆方向の使用がこのDiL RUにおいて許可されるかを判定する。
【0169】
ステップ802において、第1のステーションは、割り当てられたDiL RUの第1の部分を介して、第1のフレームをピアの第2のステーションへ送信する。割り当てられたDiL RUの残りの部分を第2のSTAと共有するために、DiL RUの一部のみが第1のステーションによって使用される。
【0170】
ステップ803において、第1のステーションは、第1のSTAに割り当てられたDiL RUの第2の部分を介して、第2のステーションから第2のフレームを受信する。第2のフレームは、第1のステーションによって送信された第1のフレームに対する応答フレームまたはACKフレームでありうる。
【0171】
図9および
図10は、本発明の実施形態によるAPおよびソースSTAの動作を、フローチャートを用いて示している。これらの実施形態では、APが、TXOPにおいて、ソースSTAに2つのDiL RUを割り当てる。これらの実施形態は、カスケードシーケンス内で、または任意のカスケードシーケンスから独立して実行されうる。
【0172】
ステップ901において、APは、第1のステーションに第1のDiL RUおよび第2のDiL RUを割り当てる。前述の実施形態で説明したように、DiL RUの割り当ては、トリガフレームに、またはAPから受信されたデータまたは制御フレームのtrigger resource scheduling(TRS)フィールドに、含められうる。
【0173】
実施形態において、2つのDiL RUの割り当てが、1つのフレーム、たとえばトリガフレームにおいて、第1のSTAにシグナリングされる。他の実施形態では、2つのDiL RUの割り当ては、2つの別個のフレーム、たとえばトリガフレームにおいて、第1のSTAにシグナリングされる。
【0174】
1つのトリガするフレーム(TFまたはHE MU PPDUのTRS)の場合、フレームは、DiL RUのそれぞれを、それが割り当てられるステーションのために時間及び周波数領域において特定し、そのステーションがその位置を特定可能とするために、特定しなければならない。時間領域に対して、DiL RUは、1つのグローバル時間値を用いることによって、または先行して割り当てられたRUの終わりに対して、トリガするフレームの終わりから定義されうる。前者は、ステーションがセーブモードに入ることを可能にする。後者は、時間を測定するためにステーションによって使用されるクロックの精度に起因して、起こりうる時間シフトに対する感度が低いため、より良好な同期を可能にする。
【0175】
ステップ902において、APは、オプションで、第2のDiL RUの終端と揃うように、APのnetwork allocation vector(NAV)を設定する。APは、APがチャネルにあまりにも早くアクセスして進行中のP2P通信との干渉を引き起こしうることを防止するように、そのNAVを設定する。
【0176】
なお、APの図示の実施形態において、第1のDiL RUおよび第2のDiL RUが連続している、すなわち、SIFSによってのみ分離されていると仮定されるように、NAVが第2のDiL RUの終端と揃うように設定される。たとえば、2つのDiL RUが連続しておらず、その間にDLおよび/またはUL RUを有する場合、APは、それぞれがDiL RUに関連付けられる2つのNAVを設定しうる。
【0177】
代替的に、APは、P2P送信が進行中であり、APアクセスが防止されるべき全体の期間を測定するためにタイマを使用しうる。
【0178】
より一般的には、APは、確立されたダイレクトリンクセッションを有するピアステーションのペアに、1つより多くのDiL RUを割り当てうる。
【0179】
図10を参照すると、ステップ1001において、第1のステーションが、APから、TXOPにおける第1のDiL RUおよび第2のDiL RUの割り当てを受信する。ステップ1002において、第1のステーションは、そのピアの第2のステーションに向けて第1のフレームを送信するために割り当てられた時間全体を使用する。そして、第1のステーションは、第2のDiL RUを第2のステーションと共有する。第1のステーションは、例えば、RD許可シグナリングを含む第3のフレームを、割り当てられたDiL RUの第1の部分を介して送信し(ステップ1003)、次いで、割り当てられたDiL RUの第2の部分を介して、第2のステーションから第2のフレーム(応答フレーム)を受信する(ステップ1004)。
【0180】
図11は、本発明の実施形態によるAPの動作を、フローチャートを用いて示している。
【0181】
APは、TXOPにおいて、第1のDiL RUを割り当てる第1のフレームを第1のSTAに送信し(1101)、そのTXOPにおいて、第2のDiL RUを割り当てる第2のフレームを第1のSTAに送信する(1104)。第2のDiL RUの次の割り当てを第1のSTAに通知するために、APは、その後の第2のフレームにおいて、第2のDiL RUの割り当てを第1のSTAにスケジューリングする情報を送信する(1102)。第1のSTAは、この情報を使用して、例えば、
図12の実施形態によるように、それに割り当てられたリソースのピアSTAとの共有を効率的に管理する。
【0182】
実施形態によれば、APは、割り当てられた第2のDiL RUの使用に関する制約を、第1のステーションおよび/または第2のステーションへシグナリングしうる。たとえば、APは、割り当てられたDiL RUにおいて逆方向プロトコルの使用が許可されているかを示しうる。
【0183】
APは、オプションで、DiL RUを割り当てるフレームの各送信の後、それぞれの割り当てられたDiL RUの終端と揃うように、APのnetwork allocation vector(NAV)を設定しうる(1103および1105)。
【0184】
図12は、本発明の実施形態による第1のSTAの動作を、フローチャートを用いて示している。
【0185】
ステップ1201において、第1のSTAは、TXOPの間に、APから第1のDiL RUの割り当てを受信する。
【0186】
ステップ1202において、STAは、APがTXOP中にDiL通信のために第1のSTAへの第2のRUの割り当てをスケジューリングするかを判定する。判定は、APから受信された情報に基づいて実行される。
【0187】
実施形態によれば、その情報が、APによって明示的に送られる(例えば、
図11)。
【0188】
実施形態によれば、情報は、APによって実行される割り当てから暗黙的である。これは、例えば、STAへの第1のDiL RUの割り当ておよび第2のDiL RUの割り当てが両方とも同じフレームでシグナリングされる
図9の実施形態の場合である。したがって、この割り当て情報に基づいて、第1のSTAは、第1の割り当てられたDiL RUを介してフレームを送信することを開始する前に、APが第2のDiL RUの割り当てをスケジューリングすることを判定することが可能である。
【0189】
ステップ1202において、APが第1のSTAに第2のDiL RUをスケジューリングしない(すなわち、割り当てない、または割り当てることを意図しない)と判定された場合、第1のSTAは、それぞれ
図8のステップ802および803と同様に、ステップ1203および1204を実行する。
【0190】
ステップ1202において、APが第1のSTAに第2のDiL RUをスケジューリングする(すなわち、割り当てる、または割り当てることを意図する)と判定された場合、第1のSTAは、ステップ1206において、(ステップ1002と同様に)第1の割り当てられたDiL RUを介して第1のフレームを第2のSTAに送信する。ステップ1207において第2のDiL RUの割り当てを受信した後、第1のSTAは、それぞれ
図10のステップ1004および1005と同様に、ステップ1208および1209をそれぞれ実行する。
【0191】
本開示で説明される様々な実施形態の特徴のいくつかは、以下のように列挙されうる:
-ダイレクトリンク設定/ティアダウン手順に変更なし;
-トリガされたP2P特徴は、(APまたはSTAレベルの両方で)能力交換によって制御されうる;
-P2Pトラフィックは、「Single-User style」PPDUのために、APによってトリガされる:
〇APは、802.11axのカスケード機構に基づいて、P2PトラフィックにTXOPの一部を共有することができ、例えば、APは、自身に関連付けられたソースP2Pステーションにリソースを提供する;
〇P2Pトラフィックは、その期間の動作帯域の全てをカバーする「P2P RU」=n×20MHzを使用することができる;
〇「P2P RU」を伝達するための単純なシグナリング(典型的には1ビット);
〇P2Pトラフィックは、その別個のチャネル上でそれ自体のプリアンブルを使用しうる:
・APは全てのトリガ送信パラメータ(例えばMCS)を提供する必要はない;
・(Ack部分に対しても)同期の要求なし;
〇SUまたはMU PPDUフォーマットが、P2P送信のために想定されうる。
【0192】
本開示で説明される様々な実施形態は、有利にはMU動作とSU動作との組合せの利点をとることを可能にする。例えば、MU動作から:
-グローバルセルの効率を向上させ、SU媒体アクセス手順(旧EDCAダイレクトリンク・プロトコル、RDPプロトコルなど)と比較して効率を向上させ、
-APは、他のSTAからの上りリンク/下りリンクRUを依然として共有することができる。
【0193】
そして、SU動作から:
-P2Pステーションが、それらの割り当てられたRUチャネル(例えば、動作帯域)において単独で通信する;
-APは、P2Pの送信特性を認識する必要がない(したがって、すべてのトリガパラメータ、たとえばMCSを提供する必要がない);
-確認応答が、干渉問題なく(並列送信なく)実行されうる;
-受信ピアステーション(宛先STA)が、APのBSSの外側にあってもよい。
【0194】
本開示の実施形態は例えば以下を示した:
-トリガフレームが、P2P STAを含む非APステーションをスケジューリングするための自然なツールである;
-カスケード機構を再利用することにより、制限された修正で、P2Pの時間共有が可能になる;
-P2P動作のトリガは簡単である:
〇P2Pステーションは、動作帯域を介してトリガされてもよく、
〇P2Pステーションは、共有期間(Ackを含む)の間、自身のPPDUフォーマットを使用しうる。
【0195】
図13aは、本発明の少なくとも1つの実施形態を実装するように構成された、無線ネットワーク100の非APステーション101~107またはアクセスポイント110のいずれかである、通信機器1300を概略的に示している。通信機器1300は、好ましくは、マイクロコンピュータ、ワークステーション、又は軽量ポータブルデバイスなどのデバイスでありうる。通信機器1300は、
CPUと表される、プロセッサなどの中央処理装置1301;
本発明の実施形態による方法又はその方法のうちのステップの実行可能コードを記憶するためのメモリ1303、及び、その方法を実行するために必要な変数やパラメータを記録するように適合されるレジスタ;及び
送信および受信アンテナ1304を介して、無線通信ネットワーク、例えばIEEE802.11ファミリの規格のいずれかに従う通信ネットワーク、に接続される少なくとも1つの通信インタフェース1302、
と、好ましくは接続される通信バス1313を含む。
【0196】
好ましくは、通信バスは、通信機器1300に含まれ、又はそれに接続された様々なエレメント間の通信及び相互運用性を提供する。バスの表現は限定ではなく、特に、中央処理装置が通信機器1300の任意のエレメントと、直接、又は、通信機器1300の他のエレメントを用いて、命令を通信することができる。
【0197】
実行可能コードは、読み出し専用、ハードディスク、又は例えばディスクなどのリムーバブルデジタル媒体のいずれかでありうるメモリに、記憶されうる。オプションの変形例によれば、プログラムの実行可能コードは、実行される前に通信機器1300のメモリに格納されるように、インタフェース1302を介して、通信ネットワークを用いて受信されうる。
【0198】
実施形態において、デバイスは、本発明の実施形態を実装するためのソフトウェアを用いるプログラム可能装置である。しかしながら、代替的に、本発明の実施形態が、全体として又は部分的に、ハードウェアで(例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)の形式で)実装されうる。
【0199】
図13bは、本発明を、少なくとも部分的に、実行するように適合された、AP110又はステーション101~107のいずれかである通信機器1300の構造を概略的に図解するブロック図である。図示のように、機器1300は、物理(PHY)レイヤブロック1323、MACレイヤブロック1322、及び、アプリケーションレイヤブロック1321を有する。
【0200】
PHYレイヤブロック1323(ここでは、802.11規格のPHYレイヤ)は、フォーマット、いずれかの20MHzチャネル又は複合チャネルにおける変調又はそこからの復調、及び、802.11フレーム、例えば、送信スロットを予約するための媒体アクセス・トリガフレームTF210(
図4b)、レガシの802.11ステーションと相互動作するためのMACデータ及び管理フレーム、及び、20MHzレガシより小さい幅(通常は2または5MHz)を有するOFDMAタイプのMACデータフレーム、などの使用される無線媒体100を介したフレームのその無線媒体への/その無線媒体からの送信または受信のタスクを有する。
【0201】
MACレイヤブロック又はコントローラ1322は、好ましくは、従来の802.11axのMAC動作を実行する802.11MACレイヤ1324と、本発明を少なくとも部分的に実行するための追加のブロック1325を含む。MACレイヤブロック1322は、オプションで、ソフトウェアで実装されてもよく、そのソフトウェアがRAM1312にロードされてCPU1311によって実行される。
【0202】
好ましくは、OFDMAリソースユニット(サブチャネル)を通じた媒体アクセス・トリガフレームに続くトリガされたMU送信のためのトリガドMU TX管理モジュールと呼ばれる、追加のブロック1325が、(ステーションの観点から、またはAPの観点から)本発明の実施形態の一部を実行する。
【0203】
802.11MACレイヤ1324及びトリガドMU TX管理モジュール1325は、本発明の実施形態による複数のステーションへ宛てられたOFDMAのRUを通じて、正確に通信を処理するために、互いに相互作用する。
【0204】
図の上部において、アプリケーションレイヤブロック1321が、データパケットを、例えば映像ストリームなどのデータパケットを、生成し受信するアプリケーションを動作させる。アプリケーションレイヤブロック1321は、ISO標準によるMACレイヤより上のスタックレイヤの全てを表す。
【0205】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にある変更が当業者には明らかであろう。
【0206】
単なる例を用いて与えられると共に特許請求の範囲のみによって決定される本発明の範囲を限定することを意図しない上述の説明の実施形態を参照することにより、多くのさらなる変更及び変形が当業者には思いつくだろう。特に、異なる実施形態からの異なる特徴は、適切である場合には交換されてもよい。
【0207】
特許請求の範囲において、「comprising」という用語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外するものではない。相互に異なる従属請求項に異なる特徴が列挙されているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。以上、本発明を特定の実施形態を参照して説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にある当業者には修正が明らかであろう。