(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】不可逆エレクトロポレーションのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20240502BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
A61N1/32
A61B18/12
(21)【出願番号】P 2022574629
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 US2021035494
(87)【国際公開番号】W WO2021247738
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-20
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク ストロング
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/133608(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0348525(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0138506(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0333109(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0029240(US,A1)
【文献】特表2008-534107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/32- 1/40
A61B 18/00-18/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの遠位端において、前記カテーテルシャフトに結合された少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と通信するように結合された信号発生器であって、二相性パルスを前記少なくとも1つの電極に供給するように構成された前記信号発生器と、
を備え、
前記二相性パルスは、
第1の極性、第1の初期電圧振幅、
前記第1の初期電圧振幅より小さい終了電圧振幅、及び第1のパルス幅を有する第1の相と、
前記第1の極性と反対の第2の極性、第2の初期電圧振幅、及び第2のパルス幅を有する第2の相と、を備え
、
前記第2の相の前縁が、前記第1の相の後縁に続く相間遅延の後に生
じ、
前記相間遅延の間に前記信号発生器がエネルギをブリードオフすることによって、前記第2の相の前記第2の初期電圧振幅は、前記終了電圧振幅よりも小さい大きさを有する、
エレクトロポレーションシステム。
【請求項2】
前記第1の初期電圧振幅及び前記第2の初期電圧振幅は、1000直流電圧(VDC)と3000VDCの範囲内である、請求項1に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項3】
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、100ナノ秒~200マイクロ秒の範囲内である、請求項1又は2に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項4】
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、5マイクロ秒~10マイクロ秒の範囲内である、請求項1から3のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項5】
前記相間遅延は、100ナノ秒~100マイクロ秒の範囲内である、請求項1から4のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項6】
前記相間遅延が、20マイクロ秒~25マイクロ秒の範囲内である、請求項1から5のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項7】
前記信号発生器は、さらに、複数の二相性パルスの第1のバーストを供給するように構成されており、
第2の二相性パルスの前縁が、第1の二相性パルスの後縁に続くパルス間遅延の後に生じる、請求項1から6のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項8】
前記パルス間遅延は、9マイクロ秒~50ミリ秒の範囲内である、請求項7に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項9】
前記パルス間遅延は、20マイクロ秒~50マイクロ秒の範囲内である、請求項7又は8に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項10】
前記信号発生器は、さらに、前記第1のバーストに続くバースト間遅延の後に、第2の複数の二相性パルスの第2のバーストを供給するように構成されている、請求項7から9のいずれか一項に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項11】
前記バースト間遅延は、270マイクロ秒~10秒の範囲内である、請求項10に記載のエレクトロポレーションシステム。
【請求項12】
コンピュータシステムによるエレクトロポレーション信号発生器の作動方法であって、
前記エレクトロポレーション信号発生器
がアブレーションカテーテルの少なくとも1つの電極に二相性パルスを供給する
ように作動するこ
とを備え、
前記少なくとも1つの電極に二相性パルスを供給するように作動することは、
第1の極性、第1の初期電圧振幅、
前記第1の初期電圧振幅より小さい終了電圧振幅、及び第1のパルス幅を有する第1の相を送ることと、
前記第1の相の後縁に続く相間遅延のために、ゼロ直流電圧(VDC)を供給することと、
前記第1の極性と反対の第2の極性、第2の初期電圧振幅、及び第2のパルス幅を有する第2の相を送ることと、
を備え、
前記第2の相の前縁が、前記第1の相の後縁に続く相間遅延の後に生じ、
前記相間遅延の間に前記エレクトロポレーション信号発生器がエネルギをブリードオフすることによって、前記第2の相の前記第2の初期電圧振幅は、前記終了電圧振幅よりも小さい大きさを有する、
作動方法。
【請求項13】
前記第1の初期電圧振幅及び前記第2の初期電圧振幅は、1000直流電圧(VDC)と3000VDCの範囲内である、請求項12に記載の
作動方法。
【請求項14】
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、100ナノ秒~200マイクロ秒の範囲内である、請求項12又は13に記載の
作動方法。
【請求項15】
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、5マイクロ秒~10マイクロ秒の範囲内である、請求項12から14のいずれか一項に記載の
作動方法。
【請求項16】
前記相間遅延は、100ナノ秒~100マイクロ秒の範囲内である、請求項12から15のいずれか一項に記載の
作動方法。
【請求項17】
前記相間遅延は、20マイクロ秒~25マイクロ秒の範囲内である、請求項12から16のいずれか一項に記載の
作動方法。
【請求項18】
前記エレクトロポレーション信号発生器が複数の二相性パルスの第1のバーストを生成することをさらに備え、
第2の二相性パルスの前縁が、第1の二相性パルスの後縁に続くパルス間遅延の後に生じる、請求項12から17のいずれか一項に記載の
作動方法。
【請求項19】
前記パルス間遅延は、9マイクロ秒~50ミリ秒の範囲内である、請求項18に記載の
作動方法。
【請求項20】
前記パルス間遅延は、20マイクロ秒~50マイクロ秒の範囲内である、請求項18又は19に記載の
作動方法。
【請求項21】
前記エレクトロポレーション信号発生器が前記第1のバーストに続くバースト間遅延の後に、第2の複数の二相性パルスの第2のバーストを生成すること、をさらに備える、請求項18から20のいずれか一項に記載の
作動方法。
【請求項22】
前記バースト間遅延は、270マイクロ秒~10秒の範囲内である、請求項21に記載の
作動方法。
【請求項23】
エレクトロポレーション療法のための信号発生器であって、
第1の極性を有する第1の直流電圧(VDC)と、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する第2のVDCとを供給するように構成された電圧供給部と、
アブレーションカテーテルの導体及び電極への前記第1のVDC及び前記第2のVDCの適用を調節するように構成された複数の半導体スイッチと、
前記複数の半導体スイッチに通信可能に結合され、前記導体及び前記電極を介して二相性パルスを送信するために、前記複数の半導体スイッチの通信を制御するように構成されたマイクロコントローラと、
を備えており、
前記二相性パルスは、
前記第1の極性、第1の初期電圧振幅、
前記第1の初期電圧振幅より小さい終了電圧振幅、及び第1のパルス幅を有する第1の相と、
前記第2の極性、第2の初期電圧振幅、及び第2のパルス幅を有する第2の相と、
を備えており
、
前記第2の相の前縁が、前記第1の相の後縁に続く相間遅延の後に生
じ、
前記相間遅延の間に前記信号発生器がエネルギをブリードオフすることによって、前記第2の相の前記第2の初期電圧振幅は、前記終了電圧振幅よりも小さい大きさを有する、
信号発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月3日に出願された米国仮特許出願第62/704,920号の優先権の利益を主張し、その内容及び開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は概ね、エレクトロポレーションシステムに関する。特に、本開示は、二相性パルス波形の不可逆的エレクトロポレーションエネルギを送達するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な治療法が、人の解剖学的構造を害する様々な症状を治療するために使用される。例えば、心臓不整脈は、アブレーション療法、より具体的には、エレクトロポレーションを用いて治療されることがある。アブレーション療法は、患者の標的組織を部分的に又は完全に損傷するプロセスである。アブレーション療法の少なくともいくつかの方法は、信号発生器に接続された一つ又は複数の電極による標的組織への電場の印加を伴う。一つ又は複数の電極は、例えば、標的組織までナビゲートされ得るカテーテル又はアブレーションカテーテルに組み込まれていることがある。エレクトロポレーションを用いて組織をアブレーションする際、電極は、心房性不整脈(異所性心房頻拍、心房細動、及び心房粗動を含むが、これらに限定されない)などの症状を矯正するために、電流を標的組織に送達して、心臓組織において組織壊死を引き起こす電場を生成する。
【0004】
不整脈(すなわち、不規則な心調律)は、様々な病気や死にもつながり得る同期性房室収縮の喪失及び血流の停滞を含む、様々な危険な症状を引き起こし得る。心房性不整脈の主な原因は、心臓の左心房又は右心房内の迷走電気信号であると考えられている。アブレーションカテーテルは、アブレーションエネルギ(例えば、高周波エネルギ、冷凍アブレーション、レーザ、化学物質、高密度焦点式超音波など)を心臓組織に与え、心臓組織において損傷を生じさせる。この損傷は望ましくない電気経路を分断し、これによって、不整脈をもたらす迷走電気信号を制限又は防止する。
【0005】
エレクトロポレーションは、細胞膜における細孔形成を誘導する強い電場を印加することを含む非熱アブレーション技術である。電場は、十分な振幅を有する、比較的短い持続時間のパルスを印加することによって誘導され得る。このようなパルスは、繰り返されて、パルス列を形成し得る。このような電場が生体内で組織に印加されると、組織中の細胞が、細胞の壁に細孔を開ける膜貫通電位を受ける。従って、エレクトロポレーション(電気穿孔)という用語が使われる。エレクトロポレーションは、可逆的(すなわち、一時的に開けられた細孔が再び閉じる)又は不可逆的(すなわち、細孔が開いたままである)であり得る。例えば、遺伝子治療の分野では、可逆的エレクトロポレーション(すなわち、孔を一時的に開けること)は、高分子量治療用ベクタを細胞にトランスフェクトするために使用される。他の治療用途では、適切に構成されたパルス列のみを使い、例えば、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を引き起こすことによって、細胞破壊を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、例えば、心臓不整脈に罹患している患者の標的組織に、二相性パルス波形のIREエネルギを送達するシステム及び方法を対象とする。
【0007】
本開示はさらに、カテーテルシャフトと、カテーテルシャフトの遠位端においてカテーテルシャフトに結合された少なくとも一つの電極と、信号発生器とを含むエレクトロポレーションシステムを対象とする。信号発生器は、少なくとも一つの電極と通信するように結合される。信号発生器は、少なくとも一つの電極に二相性パルスを供給するように構成されており、二相性パルスは、第1の極性と、第1の初期電圧振幅と、第1のパルス幅とを有する第1の相を含む。二相性パルスは、第1の極性と反対の第2の極性と、第2の初期電圧振幅と、第2のパルス幅とを有する第2の相を含み、第1の初期電圧振幅又は第1のパルス幅の少なくとも一つは、対応する第2の初期電圧振幅又は第2のパルス幅と異なる。第2の相の前縁は、第1の相の後縁に続く相間遅延の後に起こる。
【0008】
本開示はさらに、アブレーションカテーテルを通して、エレクトロポレーションエネルギを送達する方法を対象とする。本方法は、少なくとも一つの電極を標的組織に配置することを含む。本方法は、少なくとも一つの電極を信号発生器に結合することを含む。この方法は、信号発生器によって、二相性パルスを供給することを含む。二相性パルスを供給することは、第1の極性と、第1の初期電圧振幅と、第1のパルス幅とを有する第1の相を送ることを含む。二相性パルスを供給することは、第1の相の後縁に続く相間遅延のためにゼロ(0)直流電圧(VDC)を供給することを含む。二相性パルスを供給することは、第1の極性と反対の第2の極性と、第2の初期電圧振幅と、第2のパルス幅とを有する第2の相を送ることを含み、第1の初期電圧振幅又は第1のパルス幅の少なくとも一つは、対応する第2の初期電圧振幅又は第2のパルス幅と異なる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】エレクトロポレーションエネルギを送達するための例示的なシステムの概略ブロック図である。
【0010】
【
図2】電極ループアセンブリの形態で示される、
図1のシステムでの使用に適した例示的な電極アセンブリの側面図である。
【0011】
【
図3】
図2の電極ループアセンブリの端面図である。
【0012】
【
図4】
図1のシステムと共に使用するための例示的な信号発生器の概略図である。
【0013】
【
図5】例示的な二相性IREパルスのプロット図である。
【0014】
【
図6】二相性IREパルスの例示的なバーストのプロット図である。
【0015】
【
図7】複数のバーストを有する例示的な二相性IRE波形のプロット図である。
【0016】
【
図8】例示的な反転二相性IREパルスのプロット図である。
【0017】
【
図9】二相性IREパルスの別の例のプロット図である。
【0018】
【
図10】アブレーションカテーテルを通してエレクトロポレーションエネルギを送達する例示的な方法のフロー図である。
【0019】
図面のいくつかの図において、対応する参照符号は対応する部を示す。
図面は、必ずしも縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に開示されるシステム及び方法は、人体の組織に応用するためのエレクトロポレーションエネルギ、特にIREエネルギを提供する。開示されるシステム及び方法は、エレクトロポレーションシステムを制御することに関し、より具体的には、より着実で、より良い患者の転帰をもたらすために、IREエネルギを標的組織に(例えば、約400V/cmを心臓組織に)送達するための信号発生器に関する。例えば、信号発生器の開示される実施形態は、二つの相の間で異なる特定のパラメータを有する二相性エレクトロポレーション波形又は信号を生成し、特定のパラメータは、例えば、電圧振幅又はパルス幅を含む。例えば、一実施形態では、パルス幅は実質的に等しくてよいが、電圧振幅は異なる。他の実施形態では、電圧振幅は実質的に等しくてよいが、パルス幅は異なる。さらに他の実施形態では、電圧振幅及びパルス幅が異なる。一般に、各相の電圧振幅は、1キロボルト(kV)~3kVの範囲内であり、各相のパルス幅は、100ナノ秒(ns)~200マイクロ秒(μs)の範囲内である。特定の実施形態では、例えば、パルス幅は5μs~10μsの範囲内である。
【0021】
信号発生器の開示される実施形態は、各相間に相間遅延を有しかつ各二相性パルス間にパルス間遅延を有する二相性の「複数のパルス」の「バースト」又はシリーズとして、二相性エレクトロポレーション波形又は二相性IRE波形を生成する。相間遅延は一般に、他の細胞を刺激することを回避するために、標的組織において電流を逆転させるほど短く、例えば、100ns~100μsの範囲内である。特定の実施形態では、相間遅延は、20μs~25μsの範囲内である。各パルス間のパルス間遅延は一般に、9μs~50ミリ秒(ms)の範囲内である。特定の実施形態では、パルス間遅延は、20μs~50μsの範囲内である。各バーストは、例えば、1~30個の二相性パルスを含んでよい。
【0022】
二相性パルスの複数のバーストは、各バースト間にバースト間遅延を伴って生成される。バースト間遅延は一般に、270μs~10秒(s)の範囲内である。二相性IRE波形又は信号は、例えば、二相性パルスの1~30個のバーストを含んでよい。電圧振幅及びパルス幅に加えて、各二相性パルスは、その傾斜、又は患者負荷を通して放電される帯電容量性負荷によって部分的に特徴付けられる。電流が組織を通って伝わるにつれて、患者負荷が減衰するので、エレクトロポレーションシステムに理想的な範囲、例えば、約25オーム~150オームの範囲の有効な患者負荷を維持するために、患者負荷は、経時的に放電される帯電容量性負荷によって補われる。傾斜は、パルス幅にわたって終了電圧振幅まで減衰する、二相性パルスの所与の相の初期電圧振幅として示される。特定の実施形態では、第2の相の初期電圧振幅は、第1の相の終了電圧振幅に実質的に等しい。
【0023】
さらに、二相性波形は、アノード電極とカソード電極を機能的に反転させることによって、反転又は非反転として生成されてよい。言い換えれば、二相性パルスは、正極性に次いで負極性であってもよいし、又は負極性に次いで正極性であってもよい。
【0024】
開示されるシステム及び方法の実施形態は、患者内での望ましくない骨格筋の興奮及びガスの生成、並びにIRE療法の対象標的ではない周囲組織へのIREエネルギの意図されない印加を低減又は最小限に抑えるために、二相性IRE波形を生成する。しかしながら、本明細書に記載される本開示の特徴及び方法は、本明細書の開示に基づいて当業者によって理解されるように、さまざまな電場ベースのアブレーションシステムに組み込まれ得ることが意図される。
【0025】
開示されるシステム及び方法は一般に、エレクトロポレーションシステムなどの電場ベースのアブレーションシステムにおいて実施される。
図1は、エレクトロポレーション療法のため、及び、例えばマッピングや他のアブレーション療法などの他の電気生理学的研究のためのシステム10の例示的な実施形態を示す。システム10などの特定の実施形態は、例えばカテーテル14の遠位端に配置された電極アセンブリ12を含む。本明細書において、「近位」は、カテーテル14の臨床医に近い端部に向かう方向を指し、「遠位」は、臨床医から離れる方向及び(一般に)患者の体内を指す。代替の実施形態では、システム10は、それぞれの遠位端に一つ又は複数の電極を有する複数の針(
図4に示される)を含んでよい。電極アセンブリ12は、一つ又は複数の個別の電気的に絶縁された電極要素を含む。いくつかの実施形態では、本明細書ではカテーテル電極とも呼ばれる各電極要素は、任意の他の電極要素と選択的に対にされるか又は組み合わせられて、双極又は多極電極として機能できるように、個々に配線される。
【0026】
システム10は、組織を破壊する不可逆的エレクトロポレーション(IRE)に使用されてよい。特に、システム10は、エレクトロポレーション誘発一次壊死療法(electroporation-induced primary necrosis therapy)に使用されてもよく、これは、原形質膜(細胞の壁)の完全性の不可逆的喪失を直接引き起こして、膜の破壊及び細胞壊死をもたらすように電流を送達することの効果を指す。この細胞死のメカニズムは、細胞の外壁の破壊が細胞の内部に有害な影響を引き起こすことを意味する「アウトサイドイン(outside-in)」プロセスと見なすことができる。通常、典型的な原形質膜エレクトロポレーションの場合、標的細胞において不可逆的エレクトロポレーションを引き起こすのに十分強い電場を送達することが可能な密集した電極間に、短持続時間直流(DC)パルスの形態のパルス電場として電流が送達される。本明細書でより詳細に説明するように、システム10は、少なくともいくつかの従来のエレクトロポレーションシステムと比較して、比較的高い電圧及び低いパルス持続時間を有する二相性IRE波形又は信号を送達するように構成されている。さらに、二相性IRE波形は、電圧振幅若しくはパルス幅、又はその両方が異なり得る相を特徴とする。システム10によって生成され、カテーテル電極に印加される波形によって、IRE治療中、容易に骨格筋刺激を低減する及び/又は防止することができる。
【0027】
多電極フープカテーテルを使った不可逆的エレクトロポレーションは、静脈あたりわずか1回のショックで肺静脈隔離を可能にすることができ、静脈の周りに高周波(RF)アブレーション先端を順次配置することと比較して、処置時間をはるかに短縮できる。エレクトロポレーションでの細胞破壊のメカニズムは、主に加熱効果によるものではなく、高電圧電場の印加による細胞膜破壊によるものであることを理解されたい。従って、エレクトロポレーションは、RFエネルギを使用するときに起こり得る熱影響を回避することができる。従って、この「低温」又は「非熱」療法は、望ましい特性を有する。
【0028】
カテーテル電極アセンブリ12は、上述部で簡単に概説し、以下でより詳細に説明するように使用されるように構成された複数のカテーテル電極を含む。電極アセンブリ12は、IREに使用されるカテーテル14の一部として組み込まれており、例えば、不整脈を特定し治療するために電気生理学的研究を行うための感知、マッピング、及び診断のために使用されてもよい。システム10は、患者17の体内の組織16に変調電場を導入する。例示の実施形態では、組織16は、心臓又は心臓組織を含む。しかしながら、様々な他の身体組織をマッピング、診断、又は治療するために、実施形態が使用され得ることを理解されたい。血液量及び動く心臓壁表面は、カテーテル14によって、より具体的には電極アセンブリ12の電極によって検出可能なように、電場を変化させる。心腔内の電極は、印加された電場の変化を監視し、結果として生じる電気信号は、例えば医師への表示のための、心臓壁の位置の動的表現の生成を可能にする。電極アセンブリ12上の電極はまた、心臓自体によって生成される電気信号を検出する。そして、検出された電気信号は、例えば心電図として、表示されてよい。心臓又は心臓組織をマッピングする際に、システム10はまた、心腔内の治療カテーテルを位置特定する及びナビゲートするために使用されてもよい。そのような実施形態では、治療カテーテル上の電極は、電極アセンブリ12上の電極によって検出可能な電場を導入し、治療カテーテル上の電極は、カテーテル14及び電極アセンブリ12に組み込まれてもよいし、独立していてもよい。検出された電気信号は、心臓内の治療カテーテルの位置特定を可能にする。
【0029】
システム10は、標的組織16に損傷を形成するためのエレクトロポレーション治療を可能にする。システム10は、電極アセンブリ12上の密集した電極間において、短持続時間直流(DC)パルスの形態の二相性パルス電場の形態の電流を利用する。これらの二相性DCパルスのパルス幅は、一般に、100ns~数百マイクロ秒のオーダーであり、二相性DCパルスは、数マイクロ秒~数十ミリ秒のオーダーのパルス間遅延を伴って繰り返され、パルス列又はバーストを形成してよい。そのようなバーストも、数百マイクロ秒~数秒のオーダーのバースト間遅延を伴って繰り返されてよい。強い電場が生体内で組織に印加されると、組織中の細胞が、細胞の壁に細孔を開ける膜貫通電位を受ける。従って、「エレクトロポレーション(電気穿孔)」という用語が使われる。アブレーションのための通電方策がDC波形を含むものとして説明されているが、実施形態は、本発明の趣旨及び範囲内にとどまりながら、AC又はDCパルスの変形形態又は組合せを使用してよい。例えば、指数関数的に減衰するパルス、指数関数的に増加するパルス、及びこれらの組み合わせを使用してよい。さらに、本明細書では、システム10の特定の実施形態がIRE療法に関して説明されるが、システム10は、他の形態の電場ベースのアブレーション療法のために、追加的に又は代替的に、使用されてよいことを理解されたい。
【0030】
システム10は、例えば信号発生器26によって電極アセンブリ12を通って患者の身体17内に送られるIRE信号のための、接地経路を提供する接地パッド18をさらに含む。
図1はさらに、心電図(ECG)モニタ28などの電気生理学(EP)モニタ、又は内部身体構造の可視化、マッピング、及びナビゲーションのための可視化、ナビゲーション、及び/又はマッピングシステム30などの、システム10に含まれる様々なサブシステムの身体接続を表すリターン電極20及び21を示す。
【0031】
図示の実施形態では、接地パッド18は、皮膚パッチ電極である。同様に、リターン電極20及び21も、皮膚パッチ電極であってよい。接地パッド18並びにリターン電極20及び21は、皮膚に取り付けるように構成された一つ又は複数の接点を含んでよい。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載のシステム及び方法は、二重接点接地パッド、又は二つ以上の接地接点を有する接地パッドを使って動作してよい。特定の実施形態では、接地パッド18ならびにリターン電極20及び21は、例えば一つ又は複数のカテーテル電極を含む、リターン電極又は接地経路としての使用に適した任意の他のタイプの電極であってよい。カテーテル電極であるリターン電極は、電極アセンブリ12の一部又は別体のカテーテル(図示せず)の一部であってよい。いくつかの実施形態では、例えば、システム10は、複数の電極対を含む双極カテーテル電極アセンブリを含み、各電極対は、一方の電極がリターン電極として機能する二つの電極を含む。
【0032】
システム10は、コンピュータシステム32(電子制御ユニット50及びデータストレージ、つまりメモリ52を含む)をさらに含んでもよく、コンピュータシステム32は、特定の実施形態において、可視化、ナビゲーション、及び/又はマッピングシステム30と一体化されてよい。コンピュータシステム32は、他のコンポーネントの中でも特に、様々なユーザ入力/出力機構34a及びディスプレイ34bなどの従来のインターフェースコンポーネントをさらに含んでよい。
【0033】
システム10は、電極アセンブリ12のどの電極が組織16との接触を示す特性(例えば、インピーダンス、位相角、リアクタンスなどの電気特性)を有するかを特定する、信号発生器26又はコンピュータシステム32と一体化された適切な検出器及び組織感知回路を含んでよい。そして、信号発生器26又はコンピュータシステム32は、組織16と接触していると特定された電極に基づいて、カテーテルアセンブリ12のどの電極又は電極対に通電するかを選択してよい。組織と接触している電極を特定するために適したコンポーネント及び方法は、例えば、米国特許第9,289,606号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
図1に示される実施形態では、カテーテル14は、ケーブルコネクタ40又はインターフェースと、ハンドル42と、近位端46及び遠位端48を有するシャフト44とを含む。カテーテル14はまた、温度センサ、追加の電極、及び対応する導体又はリード線などの、図示されていない他の従来のコンポーネントを含んでよい。コネクタ40は、信号発生器26から延びるケーブル56のための機械的及び電気的接続を提供する。コネクタ40は、当技術分野で知られている従来のコンポーネントを含んでもよく、図示のように、カテーテル14の近位端に配置される。
【0035】
ハンドル42は、臨床医がカテーテル14を保持するための場所を提供し、身体17内でシャフト44を操縦又は導くための手段をさらに提供してよい。例えば、ハンドル42は、カテーテル14を通ってシャフト44の遠位端48まで延在するガイドワイヤの長さを変更するための手段、又はシャフト44を操縦するための手段を含んでよい。さらに、いくつかの実施形態では、ハンドル42は、カテーテルの一部分の形状、サイズ、又は向きを変化させるように構成されてよい。ハンドル42も当技術分野において従来のものであり、ハンドル42の構造は様々であり得ることが理解されるであろう。代替の例示的な実施形態では、カテーテル14が、ロボット駆動又はロボット制御されてよい。従って、臨床医がハンドルを操作して、カテーテル14(及び特にカテーテル14のシャフト44)を前進/後退させる及び/若しくは操縦する又は導くのではなく、ロボットを使ってカテーテル14を操作する。シャフト44は、身体17内で動くように構成された細長い管状の可撓性部材である。シャフト44は、電極アセンブリ12を支持するとともに、関連する導体、及び場合によっては、信号処理又は調整のために使用される追加の電子部品を含むように構成される。シャフト44はまた、流体(灌流液及び体液を含む)、薬剤、及び/又は外科用ツール若しくは器具の移送、送達、及び/又は除去を可能にしてよい。シャフト44は、ポリウレタンなどの従来の材料から作製されてもよく、電気導電体、流体、又は外科用ツールを収容及び/又は移送するように構成された一つ又は複数の管腔を画定する。シャフト44は、従来の導入器を介して、身体17内の血管又は他の構造に導入されてよい。そして、シャフト44は、ガイドワイヤ又は当技術分野で知られている他の手段を使用するなどして、組織16の部位などの所望の位置まで、身体17を通って前進、後退され、及び/又は操縦若しくは導かれてよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、カテーテル14は、らせんカテーテル又はループカテーテルと呼ばれることもある、シャフト44の遠位端にある一つ又は複数のフープに分布したカテーテル電極を有するフープカテーテル(例えば、
図2及び
図3に示される)である。フープの直径(本明細書では「ループ」と呼ばれることもある)は、可変であってよい。いくつかの実施形態では、フープカテーテル直径は、最小直径と最大直径との間で約10ミリメートル(mm)可変である。いくつかの実施形態における最小直径は、カテーテル14の製造時に、約13mm~約20mmの間で選択されてよい。10mmの可変範囲の場合、そのようなカテーテルは、23mm~30mmの間の最大直径を有する。他の実施形態では、フープ直径は、約15mm~約28mmの間、約13mm~約23mmの間、又は約17mm~約27mmの間で可変である。あるいは、カテーテルは、固定直径のフープカテーテルであってもよく、又は異なる直径間で可変であってよい。いくつかの実施形態では、カテーテル14は、14個のカテーテル電極(例えば、7対のカテーテル電極としてグループ化される)を有する。他の実施形態では、カテーテル14は、10個のカテーテル電極、20個のカテーテル電極、又は、例えば、感知、マッピング、診断、又はアブレーションを実行するための任意の他の適切な数の電極を含む。いくつかの実施形態では、カテーテル電極は、リング電極である。あるいは、カテーテル電極は、片面電極又は可撓性材料上に印刷された電極など、任意の他の適切なタイプの電極であってよい。様々な実施形態では、カテーテル電極は、1.0mm、2.0mm、2.5mmの長さ、及び/又は感知、マッピング、診断、若しくはアブレーションのための任意の他の適切な長さを有する。
【0037】
図2及び
図3は、電極フープアセンブリ又は電極ループアセンブリ200の形態で図示される、システム10での使用に適した例示的な電極アセンブリ12を示す。
図2は、カテーテルシャフト300の遠位端302に結合された可変直径ループ202を有する電極ループアセンブリ200の側面図である。
図3は、電極ループアセンブリ200の可変直径ループ202の端面図である。
図2及び
図3に示すように、電極ループアセンブリ200は、近位端204から遠位端206まで延在し、ループ形状に形成された外側スリーブ208と、外側スリーブ208に取り付けられた複数のカテーテル電極210とを含む。電極ループアセンブリ200の近位端204は、適切なカプラ212を介してカテーテルシャフト300に結合される。電極210は、例えば、心臓感知、マッピング、診断、又はアブレーション(例えば、IRE)を含むがこれらに限定されない、様々な診断及び治療目的のために使用されてよい。例えば、電極ループアセンブリ200は、単極ベースのエレクトロポレーション療法に使用するための単極電極アセンブリとして構成されてよい。そのような実施形態では、接地パッド18がリターン電極として機能してよい。
【0038】
他の実施形態では、電極ループアセンブリ200が双極電極アセンブリとして構成されてよい。より具体的には、電極210が、電極対(例えば、カソード-アノード電極対)として構成され、(例えば、カテーテルシャフト44を通って延在する適切な電線又は他の適切な電気導電体を介して)信号発生器26に電気的に結合されてよく、これにより、隣接する電極210が反対の極性で通電されて、隣接する電極210の間に電位及び対応する電場が生成される。他の実施形態では、例えば、隣接電極、非隣接電極、及びシステム10が本明細書に記載のように機能することを可能にする任意の他の組み合わせを含むがこれらに限定されない、電極210の任意の組み合わせが、電極対(例えば、カソード-アノード電極対)として構成されてよい。上述のように、例えば、信号発生器26及び/又はコンピュータシステム32は、電極210と組織16との間の接触に基づいて、電極対を形成するために、電極ループアセンブリ200の特定の電極210を選択的に通電してよい。
【0039】
図示の実施形態では、可変直径ループ202は、可変直径ループ202の円周に沿って均等に離間した14個のカテーテル電極210を含む。他の実施形態では、可変直径ループ202は、任意の適切な材料で作製された任意の適切な数のカテーテル電極210を含んでよい。各カテーテル電極210は、絶縁間隙216によって、他のカテーテル電極から互いに分離されている。例示の実施形態では、各カテーテル電極210は、同じ長さ218(
図3に示す)を有し、各絶縁間隙216は、他の各間隙216と同じ長さ220を有する。例示の実施形態では、長さ218及び長さ220は両方とも、約2.5mmである。他の実施形態では、長さ218と長さ220とは、互いに異なってよい。さらに、いくつかの実施形態では、カテーテル電極210は、すべてが同じ長さ218を有さなくてもよく、及び/又は、絶縁間隙216は、すべてが同じ長さ220を有さなくてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル電極210は、可変直径ループ202の円周に沿って均等に離間していない。
【0040】
電極アセンブリ12は、本明細書に図示及び説明される特定の構造に限定されず、システム10を本明細書に説明されるように機能させることができる任意の他の適切な電極アセンブリ及び任意の他の適切な構造を有してよいことを理解されたい。一例として、電極アセンブリ12は、米国特許第10,136,829号、米国特許第10,750,975号、米国特許出願公開第2019/0201688号、米国特許出願第17/247,198号、米国仮特許出願第63/192,723号、国際特許出願公開第WO2018/208795号、国際特許出願公開第WO2020/251857号、及び国際特許出願公開第WO2020/227086号に記載の電極アセンブリと同じ又は類似の構造を有してもよく、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
再び
図1を参照すると、可視化、ナビゲーション、及び/又はマッピングシステム30は、Abbott Laboratories社のEnSite(商標)Velocity(商標)又はEnSite Precision(商標)心臓マッピング及び可視化システムなどの電場ベース又は磁気ベースのシステムを含む、市販のシステムを含んでよい。可視化、ナビゲーション、及び/又はマッピングシステム30は、例えば、Abbott Laboratories社からのEnSite(商標)Velocity(商標)又はEnSite Precision(商標)システムと同様に市販されているNAVX(商標)システムなどのインピーダンスベースの位置特定機能、並びに全開示が参照により本明細書に組み込まれる「Method and Apparatus for Catheter Navigation and Location and Mapping in the Heart」と題する米国特許第7,263,397号を参照して一般に示されるようなインピーダンスベースの位置特定機能をさらに含んでよい。可視化、ナビゲーション、及び/又はマッピングシステム30は、例えば、一体化されたインピーダンス及び磁気追跡を含む、Abbott Laboratories社からのEnSite(商標)X心臓マッピングシステムなどの、ハイブリッドマッピング及びナビゲーションシステムを含んでよい。他の例示的な実施形態では、可視化、ナビゲーション、及び/又はマッピングシステム30は、例えば、Biosense Webster社から入手可能なCARTOシステム(現在では、インピーダンス駆動電極及び磁気駆動電極を有するハイブリッドの形態である)又はMediGuide Ltd.からのgMPSシステムなどの磁場ベースのシステムを含むがこれらに限定されない、他のタイプのシステムを含んでよい。電場ベースのシステムと磁場ベースのシステムとの組合せによれば、カテーテルは、インピーダンスベースの電極と、一つ又は複数の磁場感知コイルとの両方を含むことができる。一般的に利用可能な蛍光透視法、コンピュータ断層撮影法(CT)、及び磁気共鳴画像法(MRI)に基づくシステムも使用することができる。
【0042】
システム10は、可変インピーダンス27を含んでよい。可変インピーダンスは、信号発生器26又は可視化、ナビゲーション、及び/又はマッピングシステム30の出力の振幅、持続時間、パルス形状などの一つ又は複数の特性を変更するために使用されてよい。別個のコンポーネントとして説明されているが、可変インピーダンス27は、カテーテル14、若しくは信号発生器26、並びに可視化、ナビゲーション、及び/又はマッピングシステム30と一体化されてよい。可変インピーダンス27は、直列接続、並列接続、又は直列及び/又は並列の組合せで接続された抵抗器、キャパシタ、又はインダクタ(図示せず)などの、一つ又は複数のインピーダンス要素を含む。図示の実施形態では、可変インピーダンスはカテーテル14と直列に接続される。あるいは、可変インピーダンス27のインピーダンス要素は、カテーテル14と並列に接続されてもよいし、又はカテーテル14と直列及び並列の組み合わせで接続されてもよい。さらに、他の実施形態では、可変インピーダンスのインピーダンス要素は、接地パッド18と直列及び/又は並列に接続される。いくつかの実施形態は、二つ以上の可変インピーダンスを含み、その各々は、一つ又は複数のインピーダンス要素を含んでよい。そのような実施形態では、各可変インピーダンスは、異なるカテーテル電極又はカテーテル電極のグループに接続されてもよく、各カテーテル電極又はカテーテルのグループを通るインピーダンスを別々に変化させることができる。他の実施形態では、システム10のインピーダンスを変化させなくてもよく、可変インピーダンスを省略してよい。
【0043】
信号発生器26によって生成される二相性波形の比較的高い電圧及び短いパルス持続時間によって、信号発生器26、信号発生器26のコンポーネント、カテーテル14、又は患者の組織16に著しい電磁妨害(EMI)又はノイズが導入されてしまい、システム10の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、本開示の実施形態は、高振幅で短持続時間のパルスを生成するために、ノイズ源を低減し、信号発生器26内の高周波高電圧スイッチングの影響を緩和するための特定の特徴を含む。
【0044】
例えば、
図4は、例示的な信号発生器26の概略図である。信号発生器26は、トリガ信号404に応じて、一つ又は複数の二相性パルスの生成を制御する、マイクロコントローラ402又は他のプログラム可能な処理装置を含む。トリガ信号404は、信号発生器26の内部で生成されてもよいし、又は別のシステムによって外部で生成されてもよい。特定の実施形態では、トリガ信号は、例えば、ユーザによって操作されるスイッチ又はボタンによるスイッチング回路の少なくとも瞬間的な閉鎖の結果として、マイクロコントローラ402に供給される離散論理レベルDC信号である。トリガ信号404に応じて、マイクロコントローラ402は、例えば、単一のパルス、パルスのバースト、又は複数のバーストを開始する。
【0045】
マイクロコントローラ402は、単一の二相性パルスを生成する際に、複数の半導体スイッチを制御する目的で、第1のパルス制御信号406及び第2のパルス制御信号408を生成する。第1のパルス制御信号406及び第2のパルス制御信号408は、マイクロコントローラ402によって生成される論理レベルDC信号である。半導体スイッチは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの、高電圧スタンドオフ、高電流伝導が可能であり、高周波数で動作可能な任意の適切なパワー半導体であってよい。
図4の実施形態では、半導体スイッチは、例えば電極アセンブリ12及び接地パッド18などのリターン電極を用いて、二相性パルスを送達する第1の導体422又は第2の導体424などの一つ又は複数の導体への正の高圧直流(+HVDC)供給部418及び負の高圧直流(-HVDC)供給部420の適用を調整するために、ブリッジ構成で接続されたIGBT410、412、414、416として実現されている。マイクロコントローラ402は、二相性パルスのバーストを生成する際に、ある周波数(例えば、約20ヘルツ~約110KHzの範囲内)で通信するようにIGBT410、412、414、416を制御し、一連の二相性パルスを生成する。特定の実施形態では、二相性パルスは、一つの導体を介して一つ又は複数の単極電極に送達されてよい。例えば、第1の導体422を介して二相性パルスが送達される一方で、第2の導体424は、接地パッド18などのリターン電極又は接地パッド18以外のリターン電極に接続され、第1の導体422によって送達される電流のためのリターンパスとして働く。あるいは、二相性パルスは、第1の導体422及び第2の導体424を介して、一対又は複数対の双極電極に送達されてよい。
【0046】
光アイソレータ426によって、マイクロコントローラ402は、IGBT410、412、414、416と通信可能に結合され、電気的に絶縁される。オプトカプラとも呼ばれる光アイソレータ426は、例えば、IGBT410、412、414、416の高周波スイッチングによって生じるノイズがマイクロコントローラ402に到達するのを防止する。光アイソレータ426は、第1のパルス制御信号406及び第2のパルス制御信号408を、マイクロコントローラ402から論理回路428へと中継し、論理回路428は、この二つの論理レベルDC信号を4つのゲート駆動信号430、432、434、436に変換する。論理回路428は、第1のパルス制御信号406及び第2のパルス制御信号408からゲート駆動信号430、432、434、436の各々を導出し、例えば、二相性パルスの+HVDC相から-HVDC相への移行中に、ゲート駆動信号430、432、434、436が、極性が逆のHVDC供給部同士(+HVDC供給部418及び-HVDC供給部420)を瞬間的に接続させない又は短絡させないことを保証する。例えば、特定の実施形態では、論理回路428は、ゲート駆動信号430及び432の反転としてゲート駆動信号434及び436を導出する。
【0047】
一般に、少なくともいくつかの実施形態では、マイクロコントローラ402は、IGBT410、412、414、416のゲートを駆動するのに十分な電流を供給しない。パワー半導体スイッチのためのゲート電流は、通常、高電圧及び高電流容量で上昇する。従って、信号発生器26は、IGBT410、412、414、416をそれぞれ動作させるためのゲートドライバ438、440、442、444を含む。ゲートドライバ438、440、442、444はさらに、信号発生器26の高電圧高電流部分からマイクロコントローラ402及びデジタル回路の他の特徴を隔離する。ゲートドライバ438、440、442、444は、ゲート駆動信号430、432、434、436に従って、IGBT410、412、414、416の通信を制御する。ゲートドライバ438、440、442、444は、ゲート駆動インピーダンス446、448、450、452を介して、IGBT410、412、414、416のゲートを駆動する。ゲート駆動インピーダンス446、448、450、452は、IGBT410、412、414、416を介して十分な電流上昇を生じさせるため及びIGBT410、412、414、416による振動応答を回避するための両方のために選択される。特定の実施形態では、ゲート駆動インピーダンス446、448、450、452は、6~8オームの範囲の抵抗器である。少なくともいくつかの実施形態では、ゲート駆動インピーダンス446、448、450、452は、6.8オームの抵抗器である。
【0048】
信号発生器26は、特定の実施形態では、マイクロコントローラ402、光アイソレータ426、論理回路428、ゲートドライバ438、440、442、444、及びIGBT410、412、414、416が配置され得る一つ又は複数のプリント回路基板(PCB)上で実装されてよい。PCB上の少なくともいくつかのトレースは、高周波数でスイッチングされる高電圧DCを伝導する。例えば、+HVDC供給部418をIGBT410、412、414、416に接続するトレース、並びに、IGBT410、412、414、416から第1の導体422及び第2の導体424の端子456及び458へ電流を供給するトレースは、それぞれ、IGBT410、412、414、416の高周波スイッチングによって生成されたパルスを伝えるので、信号発生器26へノイズを導入しやすい。特定の実施形態では、そのようなトレースは、これらのトレースの周期的な高di/dt状態から生じるノイズの導入を低減するために、十分に幅広で、可能な限り短いとよい。特定の実施形態では、これらのトレースは、少なくとも0.12インチ幅であるとよい。同様に、少なくともいくつかのトレースは、IGBT410、412、414、416のゲートを駆動する目的で、かなりの量の高周波スイッチングされた電流を伝導する。
例えば、ゲートドライバ438、440、442、444と対応するIGBT410、412、414、416との間に延在するトレースのそれぞれも、これらのトレースの高いdi/dt状況から生じるノイズを導入しやすい。従って、これらのトレースも、ノイズの導入を低減するために、十分に幅広で、可能な限り短いとよい。特定の実施形態では、例えば、ゲートドライバ438、440、442、444と対応するIGBT410、412、414、416との間のトレースは、少なくとも0.06インチ幅であるとよい。
【0049】
特定の実施形態では、信号発生器26は、ゲートドライバ438、440、442、444の各々とIGBT410、412、414、416との間に追加のコンポーネントを含む。例えば、特定の実施形態では、一つ又は複数のキャパシタが、半導体スイッチのゲートと並列に結合されて、そのゲートを駆動するための電流供給部として機能する。ある実施形態では、一つ又は複数のダイオードが、半導体スイッチのゲートと並列に結合され、例えば、過渡電圧サプレッサ又は電流遮断装置として機能する。特定の実施形態では、一つ又は複数のEMI抑制装置が、例えば、IGBT410、412、414、416の高周波数スイッチングから生じるノイズを緩和するために、ゲート駆動枝に結合される。
【0050】
特定の実施形態では、信号発生器26は、高電圧DC出力と直列に接続された、すなわち、第1の導体422及び第2の導体424と直列に接続された一つ又は複数のインピーダンス整合回路(図示せず)を含む。インピーダンス整合回路は、+HVDC供給部418、-HVDC供給部420、及びカテーテル14の電極アセンブリ12の間のトレース又は他の導体によって形成される高電圧DC伝送線の様々な部分において生じ得る、又は内在し得るインピーダンス不連続を軽減する。例えば、カテーテル14が信号発生器26に接続する所でインピーダンス不連続が存在する可能性があり、これは、最終的にシステム10におけるノイズ及び損失として現れる信号発生器26内の信号反射をもたらし得る。
【0051】
信号発生器26は、予め決められているか又はユーザによって選択可能であり得るエレクトロポレーション通電方策に従って、電極要素に通電するように構成されている。エレクトロポレーション誘発一次壊死療法のために、信号発生器26は、電極アセンブリ12を介して送達される電流であって、一つ又は複数の単極電極から伝送され、例えば、接地パッド18又は別のパッチ電極をリターンパスとして利用する二相性IRE波形の形態のパルス電場としての電流を、生成するように構成されてよい。代替の実施形態では、二相性IRE波形は、密集した電極(例えば、電極アセンブリ12の電極対)の間で伝送される。二相性IRE波形は、(例えば、組織部位において)約0.1~1.0kV/cmの電界強度を送達することができる。信号発生器26によって生成される二相性パルスは、骨格筋及び神経(例えば、腎神経)、並びに心筋の興奮を防止するように、(例えば、位相、振幅、及びパルス持続時間を制御することによって)具体的に成形される。心筋の興奮を回避することによって、信号発生器26によって生成される二相性パルスは、心周期又は心調律に基づいて(例えば、R波に沿って)時間調整又はゲート制御される必要がない。より具体的には、信号発生器26によって生成される二相性パルスは、神経又は筋肉の興奮に関連する強度-持続時間曲線より下のパルス幅及び電圧振幅を有するように成形される。信号発生器26によって生成される二相性パルスは、比較的高い強度(すなわち、電圧)及び周波数(すなわち、短いパルス持続時間)を有する。例えば、心臓組織は、細胞膜を損傷するのに400V/cmの電界強度を必要とする。いくつかの実施形態では、二相性IREパルスを生成する際、信号発生器26は、約0VDC~3000VDCの電位で+HVDC供給部418を提供し、-HVDC供給部420は、約0VDC~-3000VDCの電位であってよい。あるいは、信号発生器26は、3000VDCより大きい、例えば、3500VDCまで、4000VDCまで、又は4000VDCより大きい大きさを有する電位で、+HVDC供給部418及び-HVDC供給部420を提供してよい。少なくともいくつかの実施形態では、信号発生器26は、少なくとも一つの高電圧キャパシタ454を含み、電極アセンブリ12のための高電圧電流源として機能する。
【0052】
図5は、信号発生器26によって生成された例示的な二相性IREパルス500のプロット図である。二相性IREパルス500は、電圧(縦軸に示される)対時間(横軸に示される)として示されている。二相性IREパルス500は、第1の相502及び第2の相504を含み、第1の相502の後縁508と第2の相504の前縁510との間に相間遅延506を有する。相間遅延506は、非標的組織を刺激又は損傷することを回避するために、患者の組織において電流伝導を効果的に逆転させるのに十分に短いとよい。例えば、相間遅延506は、100ns~100μsの範囲内である。特定の実施形態では、相間遅延506は、より狭い20μs~25μsの範囲内である。
【0053】
第1の相502及び第2の相504は、異なる電圧振幅あるいは異なるパルス幅、又はその両方を有する。例えば、第1の相502は、初期電圧振幅512を有し、これは、キャパシタ454が患者負荷を通して放電するのに伴って、第1の相502の持続時間にわたって減衰する。第1の相502は、相間遅延506の開始時においてゼロになる前に、終了電圧振幅514を有する。ピーク電圧振幅、例えば、初期電圧振幅512は、標的組織、例えば、心房又は心室において耐久性を有するのに十分な大きさの損傷深さを形成するのに十分に大きいとよい。初期電圧振幅512は、1000VDC~3000VDCの範囲内である。同様に、第2の相504の初期電圧振幅516は、-1000VDC~-3000VDCの範囲内であり、第2の相504の持続時間にわたって終了電圧振幅518まで減衰する。特定の実施形態では、初期電圧振幅512と初期電圧振幅516とは異なり、第1の相のパルス幅520は、第2の相504のパルス幅522にほぼ等しい。あるいは、パルス幅520とパルス幅522とは異なってもよく、一方、初期電圧振幅512と初期電圧振幅516とは、ほぼ等しい又は異なる。
【0054】
カテーテル14は、例えば、電極アセンブリ12の一つ又は複数の単極電極に結合された第1の導体422を通して、二相性IREパルス500を供給する。そのような実施形態では、第2の導体424は、二相性IREパルス500で送達された電流のリターンパスとして機能するパッチ電極に結合されてよい。代替的に、第1の導体422は、接地パッド18を使用して地面を基準としてよい。+HVDC供給部418と-HVDC供給部420を第1の導体422に交互に適用することによって、高電圧パルスの極性を交互に替えることができる。+HVDC供給部418と-HVDC供給部420の両方を第1の導体422から切り離し、その電位を第2の導体424(又は接地パッド18)に対して浮かせることによって、例えば相間遅延506中に、ゼロVDCが達成される。患者の身体17における血液/生理食塩水の導電特性を考慮すると、電極アセンブリ12の電極と第2の導体424(又は接地パッド18)との間には電位が存在しないはずであり、よって、第1の導体422と第2の導体424(又は接地パッド18)との間にも電位が存在しないはずである。
【0055】
例示的な実施形態では、二相性IREパルス500の第1の相502は、約1000VDC~2000VDCの間の初期電圧振幅512で始まり、第2の相504は、大きさが終了電圧振幅514とほぼ等しいか若しくはそれより小さい初期電圧振幅516、又は約500VDC~約1750VDCの初期電圧振幅516で始まる。特定の実施形態では、+HVDC供給部418は、1000VDC~2000VDCの間の電位を提供し、-HVDC供給部420は、500VDC~1750VDCの間の電位を提供し、第1の導体422に結合された単極電極は、二相性IREパルス500で送達された電流のリターンパスとして接地パッド18を利用する。例えば、+HVDC供給部418が約2000VDCの電位にあり、-HVDC供給部420が約-1750VDCの電位にある場合、IGBT410を閉じIGBT414を開いて、+HVDC供給部418を第1の導体422に適用することによって、二相性IREパルス500の第1の相502が生成され、例えばパルス幅520などの、第1の持続時間の+2000VDC信号が生成される。第1の導体422に適用される電圧振幅は、パルス幅520にわたって、初期電圧振幅512から終了電圧振幅514又は約1750VDCまで減衰する。第1の持続時間の後、IGBT410及びIGBT412が開かれて、第1の導体422の電位が浮かされ、これによって、相間遅延506の持続時間のためのゼロVDCが生成される。相間遅延506の後、IGBT414が閉じられて、第1の導体422に-HVDC供給部420が適用される。このとき、第2の相504の初期電圧振幅516は、大きさが終了電圧振幅514にほぼ等しいか若しくはそれより小さく、例えば、約1750VDCである。初期電圧振幅516はさらに、第2の相504の持続時間、すなわちパルス幅522にわたって、終了電圧振幅518まで減衰する。IGBT414が開かれて、第1の導体422の電位がゼロVDCに戻される。
【0056】
一代替実施形態では、第2の導体424は、第1の導体422に結合された単極電極を介して二相性IREパルス500で送達された電流のリターンパスとして利用される。そのような実施形態では、二相性IRE波形500で送達される電位は、IGBT410及び414によって調整される第1の導体422と、IGBT412及び416によって調整される第2の導体424との間の差である。
【0057】
特定の実施形態では、高電圧キャパシタ454は最初に、例えば約2000VDCまで、+HVDC供給部418によって充電されてよく、第1の相502及び第2の相504両方のための電流供給部として機能する。高電圧キャパシタ454は、例えばパルス幅520などの、第1の相502の持続時間にわたって、終了電圧振幅514まで部分的に放電されてよい。高電圧キャパシタ454は、高電圧キャパシタ454を第1の導体422及び地面に結合する複数のスイッチ(図示せず)を「再基準とする」又は再構成することによって達成される逆極性で、第2の相504の間にさらに放電されてよい。従って、第2の相504の初期電圧振幅516は、第1の相502の後に高電圧キャパシタ454に残っている電荷である第1の相502の終了電圧振幅514と大きさがほぼ等しい。特定の実施形態では、相間遅延506の間に、高電圧キャパシタ454に蓄積されたいくらのエネルギを「ブリードオフ(bleeding off)」することによって、初期電圧振幅516の大きさがさらに低減されてもよく、その結果、第2の相504の開始時における高電圧キャパシタ454の電荷が小さくなる。例えば、終了電圧振幅514が約1750VDCである場合、高電圧キャパシタ454は、相間遅延506の間に、約1500VDCまで放電されてよく、その結果、初期電圧振幅516が約1500VDCとなる。
【0058】
代替の実施形態では、カテーテル14は、例えば、第1の導体422及び第2の導体424を通して電極アセンブリ12の一対又は複数対の双極電極へ、二相性IREパルス500を供給する。従って、+HVDC供給部418を第1の導体422と第2の導体424に時間的に交互に印加し、-HVDC供給部420を第2の導体424と第1の導体422に時間的に交互に印加することによって、高電圧信号の極性を切り替えることができる。同様に、第1の導体422と第2の導体424の両方を切断し、それらの電位を浮かせることによって、ゼロVDCが達成される。その結果、患者の身体17内の血液/生理食塩水の導電特性に起因して、電極アセンブリ12の電極間に電位が存在しないはずであり、よって、第1の導体422と第2の導体424との間にも電位が存在しないはずである。
【0059】
図6は、
図5に示される二相性IREパルス500の例示的なバースト524のプロット図である。バースト524は、パルス間遅延526によって分離された二相性IREパルス500の4つのインスタンスを含む。
図6は、4つの二相性IREパルス500を有するバースト524を示しているが、バースト524は、任意の数の二相性IREパルス500を含んでよい。パルス間遅延526は、9μs~50msの範囲内である。特定の実施形態では、パルス間遅延526は、20μs~50μsの範囲内である。
図7は、二相性IREパルス500の複数のバースト524を有する例示的な二相性IRE波形528のプロット図である。各バースト524は、270μs~10sの範囲内のバースト間遅延530によって分離されている。
図7は、二つのバースト524を有する二相性IRE波形528を示しているが、二相性IRE波形528は、任意の数の二相性IREパルス500を各々有する任意の数のバースト524を有してもよい。
【0060】
図8は、極性が負である第1の相802と、極性が正である第2の相804とを有する例示的な反転二相性IREパルス800のプロット図である。第1の相802は、パルス幅810にわたって終了電圧振幅808まで減衰する初期電圧振幅806を有する。同様に、第2の相804は、パルス幅816にわたって終了電圧振幅814まで減衰する初期電圧振幅812を有する。第1の相802は、相間遅延818によって第2の相804から分離されている。
【0061】
図9は、第1の相902及び第2の相904を有する二相性IREパルス900の別の例のプロット図である。二相性IREパルス500と同様に、第1の相902と第2の相904は、相間遅延506によって分離されている。第1の相902は、パルス幅520と、ピーク電圧振幅あるいは初期電圧振幅512と、終了電圧振幅514とを有する。第2の相904は、パルス幅522と、ピーク電圧振幅あるいは初期電圧振幅516と、終了電圧振幅518とを有する。特に、第1の相902での面積906は、第2の相904での面積908にほぼ等しい。面積906及び908は、第1の相902及び第2の相904の持続期間にわたって患者の組織に印加された総電荷又は送達された総エネルギに関する。例えば、
図9に示されるように、パルス幅520はパルス幅522よりも持続時間が短く、その差は、第1の相902が第2の相904の電圧振幅516及び518よりも高い電圧振幅512及び514を有することによって、オフセットされる。代替実施形態では、第2の相904での面積908は、第1の相902での面積906の割合である。例えば、一実施形態では、面積908は、第1の相902での面積906の75%である。別の実施形態では、面積908は、第1の相902での面積906の120%である。
【0062】
図10は、
図1に示されるカテーテル14などのアブレーションカテーテルを介してエレクトロポレーションエネルギを送達する例示的な方法1000のフロー図である。カテーテル14及び少なくとも一つの電極は、標的組織16に配置される(1002)。電極が、信号発生器26に結合される(1004)。信号発生器26が、
図5に示される二相性パルス500などの二相性パルスを供給する(1006)。二相性パルス500を供給すること1006は、第1の極性(例えば、正)、第1の初期電圧振幅512、及び第1のパルス幅520を有する第1の相502を送ること1008を含む。次いで、信号発生器26は、第1の相502の後縁508に続く相間遅延506中に、ゼロVDCを供給する(1010)。次いで、信号発生器26は、第1の極性とは反対の第2の極性(例えば、負)、第2の初期電圧振幅516、及び第2のパルス幅522を有する第2の相504を送る(1012)。第1の初期電圧振幅512又は第1のパルス幅520の少なくとも一方は、対応する第2の初期電圧振幅516又は第2のパルス幅522と異なる。すなわち、第1の初期電圧振幅512と第2の初期電圧振幅516とが異なる大きさを有するか、若しくは第1のパルス幅520と第2のパルス幅522とが異なるか、又はその両方である。
【0063】
例示的な方法の特定のステップには番号が付けられているが、そのような番号付けは、ステップが列挙された順序で実行されなければならないことを示すものではない。従って、ステップについての説明がそのような順序を特に要求しない限り、特定のステップは、それらが提示順通りに実行される必要はない。ステップは、列挙された順序で実行されてもよいし、又は別の適切な順序で実行されてもよい。
【0064】
本明細書に開示された実施形態及び実施例が、特定の実施形態を参照して説明されたが、これらの実施形態及び実施例は、本開示の原理及び適用の単なる例示であることが理解されたい。従って、特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態及び実施例に多くの変更を行うことができ、他の構成を考案することができることを理解されたい。従って、本出願は、これらの実施形態及びそれらの均等物の変更及び変形を包含することが意図される。
【0065】
いくつかの実施形態は、一つ又は複数の電子処理装置又はコンピューティング装置の使用を含む。本明細書で使用される場合、用語「マイクロコントローラ」及び関連する用語、例えば、「プロセッサ」、「コンピュータ」、「処理装置」、「コンピューティング装置」、及び「コントローラ」は、コンピュータと当技術分野で呼ばれる集積回路だけに限定されず、プロセッサ、処理装置、コントローラ、汎用中央処理ユニット(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、縮小命令セットコンピュータ(RISC)プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号処理(DSP)装置、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び本明細書で説明する機能を実行することが可能な他のプログラム可能な回路又は処理装置を広く指し、これらの用語は、本明細書では互換的に使用され得る。これらの処理装置は一般に、プログラミング若しくはプログラムされることによって、又は実行のための命令のロード若しくは他のプロビジョニングによって、機能を実行するように「構成」される。上記の例は、プロセッサ、処理装置、及び関連する用語の定義又は意味を何等かの方法で限定することを意図するものではない。
【0066】
本明細書で説明する実施形態では、メモリは、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能な読取り専用メモリ(EEPROM)、及び不揮発性RAM(NVRAM)などの非一時的コンピュータ可読媒体を含んでよいが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、用語「非一時的コンピュータ可読媒体」は、揮発性及び不揮発性媒体を限定することなく含む非一時的コンピュータ記憶デバイスと、ファームウェア物理的及び仮想記憶装置、CD-ROM、DVD、及びネットワーク又はインターネットなどの任意の他のデジタルソースなどの取り外し可能及び非取り外し可能媒体と、、まだ開発されていないデジタル手段とを限定することなく含む、任意の有形のコンピュータ可読媒体を表すことが意図され、唯一の例外は一時的な伝搬信号である。あるいは、フロッピーディスク、コンパクトディスク-読取専用メモリ(CD-ROM)、光磁気ディスク(MOD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、又はコンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール及びサブモジュール、又は他のデータなどの、情報の短期及び長期記憶のための任意の方法又は技術において実装される任意の他のコンピュータベースの装置も使用されてよい。従って、本明細書で説明する方法は、非一時的コンピュータ可読媒体中に具現化される、実行可能な命令、例えば、「ソフトウェア」及び「ファームウェア」としてエンコードされ得る。さらに、本明細書で使用される場合、「ソフトウェア」及び「ファームウェア」という用語は、交換可能であり、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、クライアント、及びサーバによる実行のために、メモリに記憶された任意のコンピュータプログラムを含む。そのような命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサに、本明細書で説明した方法の少なくとも一部を実行させる。
【0067】
本明細書は、最良の形態を含む本発明を開示するために、また、任意の装置又はシステムを作製及び使用すること、並びに任意の組み込まれた方法を実施することを含む、当業者が本開示を実施することを可能にするために、実施例を使用する。本開示の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起される他の例を含んでもよい。上述の他の例は、特許請求の範囲に記載のものと相違ない構成要素を有する場合、又は特許請求の範囲に記載のものと実質的ではない相違を有する同等の構成要素を含む場合、特許請求の範囲内であることが意図されたい。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの遠位端において、前記カテーテルシャフトに結合された少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と通信するように結合された信号発生器であって、二相性パルスを前記少なくとも1つの電極に供給するように構成された前記信号発生器と、
を備え、
前記二相性パルスは、
第1の極性、第1の初期電圧振幅、及び第1のパルス幅を有する第1の相と、
前記第1の極性と反対の第2の極性、第2の初期電圧振幅、及び第2のパルス幅を有する第2の相と、を備え、
前記第1の初期電圧振幅又は前記第1のパルス幅の少なくとも1つは、対応する前記第2の初期電圧振幅又は前記第2のパルス幅と異なり、
前記第2の相の前縁が、前記第1の相の後縁に続く相間遅延の後に生じる、
エレクトロポレーションシステム。
(項目2)
前記第1の初期電圧振幅及び前記第2の初期電圧振幅は、1000直流電圧(VDC)と3000VDCの範囲内である、項目1に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目3)
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、100ナノ秒~200マイクロ秒の範囲内である、項目1に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目4)
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、5マイクロ秒~10マイクロ秒の範囲内である、項目1に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目5)
前記相間遅延は、100ナノ秒~100マイクロ秒の範囲内である、項目1に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目6)
前記相間遅延が、20マイクロ秒~25マイクロ秒の範囲内である、項目1に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目7)
前記信号発生器は、さらに、複数の二相性パルスの第1のバーストを供給するように構成されており、
第2の二相性パルスの前縁が、第1の二相性パルスの後縁に続くパルス間遅延の後に生じる、項目1に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目8)
前記パルス間遅延は、9マイクロ秒~50ミリ秒の範囲内である、項目7に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目9)
前記パルス間遅延は、20マイクロ秒~50マイクロ秒の範囲内である、項目7に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目10)
前記信号発生器は、さらに、前記第1のバーストに続くバースト間遅延の後に、第2の複数の二相性パルスの第2のバーストを供給するように構成されている、項目7に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目11)
前記バースト間遅延は、270マイクロ秒~10秒の範囲内である、項目10に記載のエレクトロポレーションシステム。
(項目12)
アブレーションカテーテルを介してエレクトロポレーションエネルギを送達する方法であって、
少なくとも1つの電極を標的組織に配置することと、
前記少なくとも1つの電極を信号発生器に結合することと、
前記信号発生器によって、二相性パルスを供給することと、
を備え、
前記供給することは、
第1の極性、第1の初期電圧振幅、及び第1のパルス幅を有する第1の相を送ることと、
前記第1の相の後縁に続く相間遅延のために、ゼロ直流電圧(VDC)を供給することと、
前記第1の極性と反対の第2の極性、第2の初期電圧振幅、及び第2のパルス幅を有する第2の相を送ることと、
を備え、
前記第1の初期電圧振幅又は前記第1のパルス幅の少なくとも1つは、対応する前記第2の初期電圧振幅又は前記第2のパルス幅と異なる、
方法。
(項目13)
前記第1の初期電圧振幅及び前記第2の初期電圧振幅は、1000直流電圧(VDC)と3000VDCの範囲内である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、100ナノ秒~200マイクロ秒の範囲内である、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記第1のパルス幅及び前記第2のパルス幅は、5マイクロ秒~10マイクロ秒の範囲内である、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記相間遅延は、100ナノ秒~100マイクロ秒の範囲内である、項目12に記載の方法。
(項目17)
前記相間遅延は、20マイクロ秒~25マイクロ秒の範囲内である、項目12に記載の方法。
(項目18)
複数の二相性パルスの第1のバーストを生成することをさらに備え、
第2の二相性パルスの前縁が、第1の二相性パルスの後縁に続くパルス間遅延の後に生じる、項目12に記載の方法。
(項目19)
前記パルス間遅延は、9マイクロ秒~50ミリ秒の範囲内である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記パルス間遅延は、20マイクロ秒~50マイクロ秒の範囲内である、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記第1のバーストに続くバースト間遅延の後に、第2の複数の二相性パルスの第2のバーストを生成すること、をさらに備える、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記バースト間遅延は、270マイクロ秒~10秒の範囲内である、項目21に記載の方法。
(項目23)
エレクトロポレーション療法のための信号発生器であって、
第1の極性を有する第1の直流電圧(VDC)と、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する第2のVDCとを供給するように構成された電圧供給部と、
アブレーションカテーテルの導体及び電極への前記第1のVDC及び前記第2のVDCの適用を調節するように構成された複数の半導体スイッチと、
前記複数の半導体スイッチに通信可能に結合され、前記導体及び前記電極を介して二相性パルスを送信するために、前記複数の半導体スイッチの通信を制御するように構成されたマイクロコントローラと、
を備えており、
前記二相性パルスは、
前記第1の極性、第1の初期電圧振幅、及び第1のパルス幅を有する第1の相と、
前記第2の極性、第2の初期電圧振幅、及び第2のパルス幅を有する第2の相と、
を備えており、
前記第1の初期電圧振幅又は前記第1のパルス幅の少なくとも1つは、対応する前記第2の初期電圧振幅又は前記第2のパルス幅と異なり、
前記第2の相の前縁が、前記第1の相の後縁に続く相間遅延の後に生じる、
信号発生器。