(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】圧縮機用油分離機、および、極低温冷凍機用圧縮機
(51)【国際特許分類】
F25B 43/02 20060101AFI20240502BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20240502BHJP
F04B 39/04 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
F25B43/02 A
F25B9/00 G
F04B39/04 G
(21)【出願番号】P 2022581236
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048542
(87)【国際公開番号】W WO2022172634
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2021019894
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591176306
【氏名又は名称】アルバック・クライオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉野 航平
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】原山 俊夫
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-202635(JP,A)
【文献】実開昭63-022571(JP,U)
【文献】特開2006-029684(JP,A)
【文献】特開昭51-047642(JP,A)
【文献】特開平08-219596(JP,A)
【文献】米国特許第04516994(US,A)
【文献】特開2016-151381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0056379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/02
F25B 9/00
F04B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って延びる筒状を有する第1筒状部であって、前記第1筒状部の内と外とを連通する第1連通部を備える前記第1筒状部と、
前記鉛直方向に沿って延び、オイルを含む冷媒を前記第1筒状部内に導入する導入管と、
前記鉛直方向と交差する断面において、前記第1筒状部と前記導入管との間に位置するフィルター部材と、を備え、極低温冷凍機用の圧縮機に搭載される圧縮機用油分離機であって、
前記導入管は、前記冷媒を前記第1筒状部内に導入する導入口を備え、前記導入口は、前記鉛直方向における前記第1筒状部の中央よりも下方に位置
し、
前記導入口は、前記鉛直方向と交差する方向に沿って前記導入管を貫通する孔を含み、
前記鉛直方向に沿って延び、前記鉛直方向と交差する断面において、前記導入管と前記フィルター部材との間に位置する第2筒状部をさらに備え、
前記第2筒状部は、前記鉛直方向と交差する方向において前記導入口と対向する対向部を備え、前記対向部以外の部分に前記第2筒状部の内と外とを連通させる第2連通部を備える
圧縮機用油分離機。
【請求項2】
鉛直方向に沿って延びる筒状を有する第1筒状部であって、前記第1筒状部の内と外とを連通する第1連通部を備える前記第1筒状部と、
前記鉛直方向に沿って延び、オイルを含む冷媒を前記第1筒状部内に導入する導入管と、
前記鉛直方向と交差する断面において、前記第1筒状部と前記導入管との間に位置するフィルター部材と、を備え、極低温冷凍機用の圧縮機に搭載される圧縮機用油分離機であって、
前記導入管は、前記冷媒を前記第1筒状部内に導入する導入口を備え、前記導入口は、前記鉛直方向における前記第1筒状部の中央よりも下方に位置し、
前記導入口は、前記鉛直方向と交差する方向に沿って前記導入管を貫通する
複数の孔を含
み、
前記導入管は、前記第1筒状部内に位置する端部を有するとともに当該端部を塞ぐ蓋部を備え、
前記複数の孔は、前記導入管の外周面のうち、前記導入管の前記端部寄りの部分に位置する
圧縮機用油分離機。
【請求項3】
前記導入管は、前記第1筒状部内に位置する端部を有するとともに当該端部を塞ぐ蓋部を備える
請求項
1に記載の圧縮機用油分離機。
【請求項4】
前記導入管は、前記鉛直方向の下方から上方に向けて、前記鉛直方向における前記第1筒状部の前記中央よりも下方まで延びる
請求項1から3のいずれか一項に記載の圧縮機用油分離機。
【請求項5】
前記導入口は、前記鉛直方向と交差する方向に沿って前記導入管を貫通する複数の円形孔からなり、
前記複数の円形孔は、前記導入管の外周面のうち、前記導入管の前記端部寄りの部分に位置する
請求項3に記載の圧縮機用油分離機。
【請求項6】
前記鉛直方向に沿って延び、前記鉛直方向と交差する断面において、前記導入管と前記フィルター部材との間に位置する第2筒状部をさらに備え、
前記第2筒状部は、前記鉛直方向と交差する方向において前記導入口と対向する対向部を備え、前記対向部以外の部分に前記第2筒状部の内と外とを連通させる第2連通部を備える
請求項
2に記載の圧縮機用油分離機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の圧縮機用油分離機を備える
極低温冷凍機用圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷凍機用の圧縮機が備える圧縮機用油分離機、および、極低温冷凍機用圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷凍機に接続される圧縮機は、油分離機を備えている。油分離機はフィルター装置を備え、フィルター装置は、第1筒状部、第2筒状部、フィルター部材、および、冷媒の導入管を備えている。フィルター装置において、第1筒状部が径方向における最も外側に位置している。第2筒状部は、第1筒状部内に位置し、第2筒状部と第1筒状部との間にフィルター部材が位置している。導入管における下方の端部が第2筒状部内に位置し、かつ、導入管の下方の端部に位置する導入口は、第2筒状部の上端に位置している。第1筒状部および第2筒状部は各々、その筒状部を貫通する複数の貫通孔を有している。導入口からフィルター装置内に導入された冷媒は、第2筒状部の貫通孔を通じてフィルター部材に到達する。冷媒は、フィルター部材において、オイルと冷却ガスとに分離される。フィルター部材に捕捉されたオイルは、自重によってフィルター部材内を移動することによってフィルター部材の下方に溜まり、フィルター部材の下方からフィルター装置外に導出される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィルター装置では、導入管の導入口が第2筒状部の上端に位置するから、導入口から第2筒状部内に放出された冷媒は、第2筒状部の上方からフィルター部材の上方に向けて移動しやすい。そのため、フィルター部材によって捕捉されたオイルの多くは、フィルター部材の上方から下方に向けて移動する必要がある。これにより、フィルター部材から導出されるべき量のオイルがフィルター部材の下方に溜まりにくくなり、結果として、フィルター装置、ひいては油分離機からオイルが導出されにくくなる。
【0005】
本発明は、油分離機からオイルを導出しやすくすることを可能とした圧縮機用油分離機、および、極低温冷凍機用圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の圧縮機用油分離機は、鉛直方向に沿って延びる筒状を有する第1筒状部であって、前記第1筒状部の内と外とを連通する第1連通部を備える前記第1筒状部と、前記鉛直方向に沿って延び、オイルを含む冷媒を前記第1筒状部内に導入する導入管と、前記鉛直方向と交差する断面において、前記第1筒状部と前記導入管との間に位置するフィルター部材と、を備え、極低温冷凍機用の圧縮機に搭載される圧縮機用油分離機である。前記導入管は、前記冷媒を前記第1筒状部間に導入する導入口を備え、前記導入口は、前記鉛直方向における前記第1筒状部の中央よりも下方に位置する。
【0007】
一態様の極低温冷凍機用圧縮機は、上記圧縮機用油分離機を備える。
上記圧縮機用油分離機によれば、導入口が鉛直方向における第1筒状部の中央よりも下方に位置するから、導入口から放出された冷媒は、フィルター部材の上方に比べて、フィルター部材の下方に対して供給されやすくなる。これにより、フィルター部材の下方にオイルが溜まりやすくなり、フィルター部材に溜まったオイルが、第1筒状部の第1連通部を通じて第1筒状部の外部に導出されやすくなる。これにより、油分離機において冷媒から分離されたオイルが、油分離機の外部に導出されやすくなる。
【0008】
上記圧縮機用油分離機において、前記導入口は、前記鉛直方向と交差する方向に沿って前記導入管を貫通する孔を含んでもよい。この圧縮機用油分離機によれば、導入管が、端部のみに導入口を備える場合に比べて、フィルター部材の下方に向けて導入口から放出される冷媒の量を増やすことが可能である。これにより、フィルター部材に捕捉されたオイルが、フィルター部材の下方に溜まりやすくなる。
【0009】
上記圧縮機用油分離機において、前記導入口は、前記鉛直方向と交差する方向に沿って前記導入管を貫通する1つ以上の前記孔からなり、前記導入管は、第1筒状部内に位置する端部を有している。前記導入管は、当該端部を塞ぐ蓋部を備えてもよい。
【0010】
上記圧縮機用油分離機によれば、導入口から導入管の外部に放出された冷媒は、フィルター部材の上方よりもフィルター部材の下方に放出されやすくなる。これにより、フィルター部材におけるオイルの捕捉量には、上方から下方に向けて大きくなるような分布が生じる。このように、フィルター部材の上方ほどオイルの捕捉量が小さいことによって、フィルター部材の上方においてオイルから分離された冷却ガスの通過が、オイルによって妨げられることが抑えられる。一方で、フィルター部材の下方ほどオイルの捕捉量が大きいことによって、オイルが自重により移動する距離を小さくし、油分離機の外部にオイルを導出しやすくすることができる。
【0011】
上記圧縮機用油分離機において、前記導入管は、前記鉛直方向の下方から上方に向けて、前記鉛直方向における前記第1筒状部の前記中央よりも下方まで延びてもよい。この圧縮機用油分離機によれば、導入管を流れる冷媒は、鉛直方向の下方から上方に向けて、第1筒状部内に導入される。これにより、フィルター部材の上方から下方にわたって冷媒が供給されやすくなるから、フィルター部材のうちで、オイルの分離に利用されない領域を小さくすることが可能である。結果として、フィルター部材がオイルを分離する効率を高めることが可能である。
【0012】
上記圧縮機用油分離機において、前記導入口は、前記鉛直方向と交差する方向に沿って前記導入管を貫通する複数の円形孔からなり、前記複数の円形孔は、前記導入管の外周面のうち、前記導入管の前記端部寄りの部分に位置してもよい。
【0013】
上記圧縮機用油分離機によれば、導入口が複数の孔からなるから、1つの孔からの冷媒の放出が困難になったとしても、他の孔から冷媒を放出することが可能である。また、複数の円形孔が端部寄りに位置するから、複数の円形孔がより下方に位置する場合に比べて、フィルター部材においてオイルが捕捉される領域を、鉛直方向において拡張することが可能である。
【0014】
上記圧縮機用油分離機において、前記鉛直方向に沿って延び、前記鉛直方向と交差する断面において、前記導入管と前記フィルター部材との間に位置する第2筒状部をさらに備え、前記第2筒状部は、前記鉛直方向と交差する方向において前記導入口と対向する対向部を備え、前記対向部以外の部分に前記第2筒状部の内と外とを連通させる第2連通部を備えてもよい。
【0015】
上記圧縮機用油分離機によれば、対向部には第2連通部が位置しないから、導入口から放出された冷媒のうち、対向部に向けて放出された冷媒は、対向部に衝突する。これにより、対向部に向けて放出された冷媒は、対向部よりも下方に向かう方向に沿ってフィルター部材に移動する。そのため、フィルター部材によって捕捉されたオイルが自重により移動する距離を小さくし、油分離機の外部にオイルを導出しやすくすることができる。また、オイルから分離された冷却ガスがフィルターを通過しやすくなるから、油分離機の外部に冷却ガスを導出しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の圧縮機用油分離機の構造を示す断面図。
【
図2】第1実施形態の圧縮機用油分離機の作用を説明するための作用図。
【
図3】第2実施形態の圧縮機用油分離機の構造を示す断面図。
【
図4】第2実施形態の圧縮機用油分離機の作用を説明するための作用図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
図1および
図2を参照して、圧縮機用油分離機および極低温冷凍機用圧縮機の第1実施形態を説明する。以下に説明する圧縮機用油分離機は、クライオポンプに搭載される極低温冷凍機に備えられている。なお、
図1では、油分離機が備える各部材の構造を示す便宜上、第1筒状部および第2筒状部の各々の断面構造と端面構造とが示されている。
【0018】
図1が示すように、圧縮機用の油分離機10は、第1筒状部11、導入管12、および、フィルター部材13を備えている。第1筒状部11は、鉛直方向に沿って延びる筒状を有し、第1筒状部11の内と外とを連通する第1連通部11aを備えている。導入管12は、鉛直方向に沿って延び、オイルを含む冷媒を第1筒状部11内に導入する。フィルター部材13は、鉛直方向と交差する断面において、第1筒状部11と導入管12との間に位置している。導入管12は、冷媒を第1筒状部11内に導入する導入口12aを備えている。導入口12aは、鉛直方向における第1筒状部11の中央よりも下方に位置している。
【0019】
導入口12aが鉛直方向における第1筒状部11の中央よりも下方に位置するから、導入口12aから放出された冷媒は、フィルター部材13の上方に比べて、フィルター部材13の下方に対して供給されやすくなる。これにより、フィルター部材13の下方にオイルが溜まりやすくなり、フィルター部材13に溜まったオイルが、第1筒状部11の第1連通部11aを通じて第1筒状部11の外部に導出されやすくなる。これにより、油分離機10において冷媒から分離されたオイルが、油分離機10の外部に導出されやすくなる。
【0020】
導入管12は、鉛直方向の下方から上方に向けて、鉛直方向における第1筒状部11の中央よりも下方まで延びている。そのため、導入管12を流れる冷媒は、鉛直方向の下方から上方に向けて、第1筒状部11内に導入される。これにより、フィルター部材13の上方から下方にわたって冷媒が供給されやすくなるから、フィルター部材13のうちで、オイルの分離に利用されない領域を小さくすることが可能である。結果として、フィルター部材13がオイルを分離する効率を高めることが可能である。
【0021】
冷媒は、上述したオイルを含む冷却ガスである。冷却ガスは、例えばヘリウムガスである。油分離機10を備える圧縮機は、冷媒が流れる通路における油分離機10よりも上流に、冷媒を昇圧するポンプを備えている。冷媒は、昇圧された状態で油分離機10に到達するから、昇圧された冷媒が、導入管12の導入口12aから第1筒状部11内に放出される。
【0022】
油分離機10は、さらに第2筒状部14およびケース15を備えている。第2筒状部14は、鉛直方向と交差する断面において、導入管12とフィルター部材13との間に位置している。第2筒状部14は、鉛直方向と交差する方向において、第2筒状部14の内と外とを連通させる第2連通部14aを含んでいる。ケース15は、第1筒状部11よりも外側に位置している。
【0023】
第1筒状部11は、円筒状を有している。第1筒状部11の第1連通部11aは、第1筒状部11の径方向において第1筒状部11を貫通する複数の貫通孔からなる。複数の貫通孔は、鉛直方向および第1筒状部11の径方向(又は周方向)において規則的に並んでいる。例えば、板状を有したパンチングメタルが円筒状に成型されることによって、第1筒状部11が形成される。なお、第1筒状部11は、金属製の管部材から形成されてもよく、この場合には、管部材に対して複数の貫通孔が形成されればよい。
【0024】
第2筒状部14は、円筒状を有している。第2筒状部14は、第2筒状部14の軸線が第1筒状部11の軸線と一致するように第1筒状部11内に配置されている。鉛直方向において、第2筒状部14の長さは、第1筒状部11の長さに等しい。第2筒状部14の第2連通部14aは、第1連通部11aと同様に、第2筒状部14の径方向において第2筒状部14を貫通する複数の貫通孔からなる。複数の貫通孔は、鉛直方向および第2筒状部14の径方向(又は周方向)において規則的に並んでいる。例えば、板状を有したパンチングメタルが円筒状に成型されることによって、第2筒状部14が形成される。なお、第2筒状部14は、金属製の管部材から形成されてもよく、この場合には、管部材に対して複数の貫通孔が形成されればよい。
【0025】
導入管12は、円筒状を有している。導入管12の一部は、第2筒状部14内に位置している。導入管12のうち、第2筒状部14内に位置する部分は、導入管12の軸線が第2筒状部14の軸線と一致するように第2筒状部14内に配置されている。導入管12は上端部と下端部との2つの端部を有し、
図1の例では上端部が第2筒状部14内に位置している。上述した導入口12aは導入管12の上端部に位置して上方に開口している。すなわち、第1実施形態において、導入管12の導入口12aは1つの開口からなり、かつ、導入口12aは、鉛直方向の下方から上方に向けて冷媒を通過させる。導入管12は、例えば金属製の管からなる。
【0026】
上述した第1筒状部11、第2筒状部14、および、導入管12は、フィルター装置10Fを構成する部材である。フィルター装置10Fにおいて、第1筒状部11における上方の端部、および、第2筒状部14における上方の端部は、1つの蓋部材によって塞がれている。これに対して、第1筒状部11における下方の端部、および、第2筒状部14における下方の端部は、1つの蓋部材によって塞がれている。フィルター装置10Fは、導入管12とともに支持部15c1によって支持されている。
【0027】
フィルター部材13は、第1筒状部11の径方向において、第1筒状部11と第2筒状部14との間に位置している。フィルター部材13は、冷媒に含まれるオイルと冷却ガスとを分離する。フィルター部材13に冷媒が供給されると、冷媒のうち、オイルのみがフィルター部材13に捕捉される一方で、冷媒に含まれる冷却ガスはフィルター部材13に捕捉されない。これにより、フィルター部材13は、オイルと冷却ガスとを分離する。フィルター部材13は、例えばグラスウールである。フィルター部材13は、第1筒状部11と第2筒状部14との間の空間における全体に位置している。
【0028】
ケース15は、本体部15a、上側蓋部15b、および、下側蓋部15cを備えている。本体部15aは鉛直方向に沿って延びる筒状を有し、フィルター装置10Fを収容している。本体部15aにおいて、鉛直方向の上端が上側蓋部15bによって塞がれ、鉛直方向の下端が下側蓋部15cによって塞がれている。上側蓋部15bは、冷却ガスを導出するためのガス導出管16を支持する支持部15b1を備えている。下側蓋部15cは、上述した支持部15c1を備えている。下側蓋部15cは、オイルを導出するためのオイル導出管17を支持している。
【0029】
図2は、油分離機10の作用を説明するための図である。
図2では、油分離機10の作用を説明する便宜上、冷媒に含まれるオイルOLが白抜きの円によって示され、かつ、導入口12aからフィルター装置10F内に導入された冷媒の軌跡が矢印によって示されている。
【0030】
図2が示すように、油分離機10では、鉛直方向において第1筒状部11の中央よりも下方に位置する導入口12aから、鉛直方向の下方から上方に向けて冷媒が導入される。そのため、導入口12aから放出された冷媒は、第2筒状部14を通じて、鉛直方向におけるフィルター部材13の全体に分散される。これにより、フィルター部材13のうちで、オイルOLの分離に利用されない領域を小さくすることが可能であるから、フィルター装置10FがオイルOLを分離する効率を高めることが可能である。
【0031】
フィルター部材13に捕捉されたオイルOLは、自重によりフィルター部材13の下方に移動し、これによって、フィルター部材13の下方にオイルOLが溜まる。フィルター部材13の下方に溜まったオイルOLは、第1筒状部11の第1連通部11aを通じてフィルター装置10Fの外部に導出される。フィルター装置10Fの外部に導出されたオイルOLは、ケース15の下側蓋部15c上に溜まり、下側蓋部15cに支持されたオイル導出管17を通じて油分離機10の外部に導出される。これに対して、フィルター装置10FによってオイルOLと分離された冷却ガスは、ガス導出管16を通じて、油分離機10の外部に導出される。
【0032】
以上説明したように、圧縮機用油分離機、および、極低温冷凍機用圧縮機の第1実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1-1)導入管12の導入口12aが第1筒状部11の中央よりも下方に位置しているため、導入口12aから放出された冷媒は、フィルター部材13の上方よりも下方に、より多く供給されるようになる。これにより、フィルター部材13の下方にオイルOLが溜まりやすくなることにより、フィルター部材13に溜まったオイルOLが、第1筒状部11の第1連通部11aを通じて第1筒状部11の外部に導出されやすくなる。その結果、油分離機10において冷媒から分離されたオイルOLが、油分離機10の外部に導出されやすくなる。
【0033】
(1-2)導入管12は、鉛直方向の下方から上方に向けて延在して第1筒状部11の下端から第1筒状部11内に挿入されており、鉛直方向における第1筒状部11の中央よりも下方に導入口12aが位置している。したがって、冷媒は、鉛直方向の下方から上方に向けて導入管12を流れて、第1筒状部11内に導入される(
図2参照)。これにより、フィルター部材13の上方から下方にわたってフィルター部材13の全体に冷媒が供給されることで、フィルター部材13のうちで、オイルOLの分離に利用されない領域を小さくすることが可能となる。その結果、フィルター部材13がオイルOLを分離する効率を高めることが可能である。
【0034】
なお、上述した第1実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[導入管]
・導入管12は、鉛直方向の上方から下方に向けて延び、かつ、鉛直方向における第1筒状部11の中央よりも下方に導入口12aを有してもよい。すなわち、導入管12は、鉛直方向の上方から下方に向けて冷媒を第1筒状部11内に導入してもよい。この場合であっても、導入管12が鉛直方向における第1筒状部11の中央よりも下方に導入口12aを有するから、上述した(1-1)に準じた効果を得ることはできる。
【0035】
[第2実施形態]
図3および
図4を参照して、圧縮機用油分離機、および、極低温冷凍機用圧縮機の第2実施形態を説明する。第2実施形態の圧縮機用油分離機では、フィルター装置が備える導入管の構造、および、第2筒状部の構造が、第1実施形態の圧縮機用油分離機とは異なっている。以下では、第2実施形態の圧縮機用油分離機における第1実施形態の圧縮機用油分離機との相違点を詳しく説明する。一方で、第2実施形態の圧縮機用油分離機において第1実施形態の圧縮機用油分離機と共通する部材には同一の符号を付し、当該部材の詳しい説明を省略する。
【0036】
なお、
図3では、油分離機が備える各部材の構造を示す便宜上、第1筒状部の断面構造と端面構造とが示されている。また、
図3において、第2筒状部の軸線に対する一方側(左側)には第2筒状部の断面構造と端面構造とが示され、かつ、他方側(右側)には第2筒状部の断面構造が示されている。
【0037】
図3が示すように、油分離機20は、第1実施形態の油分離機10と同様に、第1筒状部11、導入管22、および、フィルター部材13を備えている。第1実施形態と同様、導入管22の導入口22aも、鉛直方向における第1筒状部11の中央よりも下方に位置している。導入管22の導入口22aは、鉛直方向と交差する方向に沿って導入管22を貫通する1つ以上の孔からなる。第2実施形態では、導入管22が円筒状を有し、導入口22aは、導入管22の径方向に沿って導入管22を貫通する1つ以上の孔からなる。導入管22は、第1筒状部11内に位置する端部を有するとともに、この端部を塞ぐ蓋部22bを備えている。すなわち、
図3の例では、導入管22の上端面は閉塞されている。
【0038】
導入管22が上述した導入口22aと蓋部22bとを有するから、導入口22aから導入管22の外部に放出された冷媒は、フィルター部材13の上方よりもフィルター部材13の下方に放出されやすくなる。これにより、フィルター部材13におけるオイルの捕捉量には、上方から下方に向けて大きくなるような分布が生じる。
【0039】
このように、フィルター部材13の上方ほどオイルの捕捉量が小さいことによって、フィルター部材13の上方において冷媒から分離された冷却ガスの通過が、オイルによって妨げられることが抑えられる。一方で、フィルター部材13の下方ほどオイルの捕捉量が大きいことによって、オイルが自重により移動する距離を小さくし、油分離機20の外部にオイルを導出しやすくすることができる。
【0040】
図3が示す例では、導入口22aは、導入管22の径方向に沿って導入管22を貫通する複数の円形孔からなる。複数の円形孔は、導入管22の外周面のうち、導入管22の端部寄りの部分に位置している。すなわち、
図3の例では、導入口22aは、導入管22の上端部寄りの外周面に位置している。導入口22aが複数の孔からなるから、1つの孔からの冷媒の放出が困難になったとしても、他の孔から冷媒を放出することが可能である。また、複数の円形孔が上端部寄りに位置するから、複数の円形孔がより下方に位置する場合に比べて、フィルター部材13においてオイルが捕捉される領域を、鉛直方向において拡張することが可能である。
【0041】
図3が示す例では、複数の円形孔が、導入管22の周方向において間隔を空けて位置し、かつ、導入管22の軸方向において間隔を空けて位置している。そのため、導入管22から放出される冷媒の放出量が導入管22の周方向において偏ることが抑えられる。
【0042】
第2筒状部24は、鉛直方向と交差する方向において導入口22aと対向する部分を含む対向部24bを備えている。第2実施形態では、第2筒状部24が円筒状を有し、対向部24bは、第2筒状部24の径方向において、導入口22aと対向している。第2筒状部24は、対向部24b以外の部分に第2筒状部24の内と外とを連通させる第2連通部24aを備えている。すなわち、第2筒状部24は、鉛直方向において対向部24bを挟む2つの非対向部24cを備えている。第2連通部24aは複数の孔からなり、複数の孔における第1群が上方の非対向部24cに位置し、複数の孔における第2群が下方の非対向部24cに位置している。
【0043】
対向部24bには第2連通部24aが位置しないから、導入口22aから放出された冷媒のうち、対向部24bに向けて放出された冷媒は、対向部24bに衝突する。これにより、対向部24bに向けて放出された冷媒は、対向部24bよりも下方に向かう方向に沿ってフィルター部材13に移動する。そのため、フィルター部材13によって捕捉されたオイルが自重により移動する距離を小さくし、油分離機20の外部にオイルを導出しやすくすることができる。また、冷媒から分離された冷却ガスがフィルター部材13を通過しやすくなるから、油分離機20の外部に冷却ガスを導出しやすくすることができる。
【0044】
なお、第2筒状部24は、第1実施形態の第2筒状部14と同様に、金属製の板部材または金属製の管部材から形成されてよい。この場合には、板部材または管部材のうち、対向部24bに相当する部分に孔を形成しないことによって、対向部24bと非対向部24cとを備える第2筒状部24を形成することが可能である。また、第2筒状部24は、鉛直方向における全体に孔が形成された板部材と、孔を有しない板部材とから形成されてもよい。この場合には、孔を有する板部材のうち対向部24bに相当する部分に、孔を有しない板部材が配置されればよい。
【0045】
図4は、油分離機20の作用を説明するための図である。
図4では、
図2と同様に、油分離機20の作用を説明する便宜上、冷媒に含まれるオイルOLが白抜きの円によって示され、かつ、導入口22aからフィルター装置20F内に導入された冷媒の軌跡が矢印によって示されている。
【0046】
図4が示すように、油分離機20では、導入口22aから放出された冷媒が、対向部24bに衝突することによって、対向部24bよりも下方に向けて冷媒が移動しやすくなる。これにより、フィルター部材13におけるオイルOLの捕捉量には、フィルター部材13の下方ほどオイルOLの捕捉量が大きくなるような分布が生じる。これにより、フィルター部材13の上方ほどオイルOLの捕捉量が小さいことによって、フィルター部材13の上方において冷媒から分離された冷却ガスの通過が、オイルOLによって妨げられることが抑えられる。一方で、フィルター部材13の下方ほどオイルOLの捕捉量が大きいことによって、オイルOLが自重により移動する距離を小さくし、油分離機20の外部にオイルOLを導出しやすくすることができる。
【0047】
以上説明したように、圧縮機用油分離機、および、極低温冷凍機用圧縮機の第2実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(2-1)導入管22の導入口22aが第1筒状部11の中央よりも下方に位置しているため、導入口22aから放出された冷媒は、フィルター部材13の上方よりも下方に、より多く供給されるようになる。これにより、フィルター部材13の下方にオイルOLが溜まりやすくなることにより、フィルター部材13に溜まったオイルOLが、第1筒状部11の第1連通部11aを通じて第1筒状部11の外部に導出されやすくなる。その結果、油分離機20において冷媒から分離されたオイルOLが、油分離機20の外部に導出されやすくなる。
【0048】
(2-2)導入管22は、鉛直方向の下方から上方に向けて延在して第1筒状部11の下端から第1筒状部11内に挿入されており、鉛直方向における第1筒状部11の中央よりも下方に導入口22aが位置している。したがって、冷媒は、鉛直方向の下方から上方に向けて導入管22を流れて、第1筒状部11内に導入される(
図4参照)。これにより、フィルター部材13の上方から下方にわたってフィルター部材13の全体に冷媒が供給されることで、フィルター部材13のうちで、オイルOLの分離に利用されない領域を小さくすることが可能となる。その結果、フィルター部材13がオイルOLを分離する効率を高めることが可能である。
【0049】
(2-3)導入管22の導入口22aは、鉛直方向と交差する方向に導入管22を貫通する1つ以上の孔を含む。この構成では、上方に開口する導入口を用いる場合と比べて、フィルター部材13の下方に向けて放出される冷媒の量を増やすことができるため、フィルター部材13の下方で捕捉されるオイルOLの量を増やすことができる。したがって、フィルター部材13の上方ほどオイルOLの捕捉量が小さいことによって、フィルター部材13の上方において冷媒から分離された冷却ガスの通過が、オイルOLによって妨げられることが抑えられる。一方で、フィルター部材13の下方ほどオイルOLの捕捉量が大きいことによって、オイルOLが自重により移動する距離を小さくし、油分離機20の外部にオイルOLを導出しやすくすることができる。
【0050】
(2-4)導入口22aは複数の孔を含む。この構成では、1つの孔からの冷媒の放出が困難になったとしても、他の孔から冷媒を放出することが可能である。また、複数の円形孔が導入管22の端部(
図3では上端部)寄りに位置するから、複数の円形孔がより下方に位置する場合に比べて、フィルター部材13においてオイルOLが捕捉される領域を、鉛直方向において拡張することが可能である。
【0051】
(2-5)導入口22aから放出された冷媒のうち、対向部24bに向けて放出された冷媒は、対向部24bに衝突して、対向部24bよりも下方に向かう方向に沿ってフィルター部材13に移動する。そのため、フィルター部材13によって捕捉されたオイルOLが自重により移動する距離を小さくし、油分離機20の外部にオイルOLを導出しやすくすることができる。また、冷媒から分離された冷却ガスがフィルター部材13を通過しやすくなるから、油分離機20の外部に冷却ガスを導出しやすくすることができる。
【0052】
なお、上述した第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[導入管]
・第2実施形態の導入管22は、第1実施形態の導入管12の導入口12aをさらに備えてもよい。この場合であっても、導入管22が鉛直方向と交差する方向に沿って導入管22を貫通する孔(導入口22a)を含むから、以下に記載の効果を得ることができる。
【0053】
(2-6)導入管22が、第2実施形態の導入口22aに加えて第1実施形態の導入口12aを含むため、フィルター部材13の下方に向けて導入口12a,22aから放出される冷媒の量を増やすことが可能である。これにより、フィルター部材13に捕捉されたオイルが、フィルター部材13の下方に溜まりやすくなる。
【符号の説明】
【0054】
10,20…油分離機
11…第1筒状部
12,22…導入管
12a,22a…導入口
13…フィルター部材
14,24…第2筒状部
24b…対向部
15…ケース
16…ガス導出管
17…オイル導出管