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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】水中炭化水素精製システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20240502BHJP
   C02F 1/40 20230101ALI20240502BHJP
   B01D 35/02 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C02F1/28 H
C02F1/40 Z
B01D35/02 E
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023001788
(22)【出願日】2023-01-10
(62)【分割の表示】P 2020198638の分割
【原出願日】2016-03-17
(65)【公開番号】P2023052286
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】62/134,279
(32)【優先日】2015-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モラヴェック, ディビス, ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ダラス, アンドリュー, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブロック, ジョセフ, エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハウザー, ブラッドリー, ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ホール, カレン, イー.
(72)【発明者】
【氏名】シェファード, マーク, シー.
(72)【発明者】
【氏名】マドセン, マイク, ジェイ.
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-527287(JP,A)
【文献】特表2013-544631(JP,A)
【文献】特表2008-526375(JP,A)
【文献】特開2002-326083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/28、1/40
B01D24/00-43/00
B01J20/00-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンシステムの燃料タンクから導入され、かつ炭化水素を含有する水を精製する方法であって、
水フィルター中の最終精製床における放出可能な水量の精製状態がクリーンであるか、またはクリーンでないかを決定するステップであって、前記水フィルターが、1つ以上の水量と、第1の精製床から前記最終精製床まで配列された複数の精製床とを含み、それにより、前記第1の精製床が、水回収リザーバから前記水フィルター中に導入された新たな水を受け取り、かつ前記最終精製床が前記水フィルターから水を放出し、前記1つ以上の水量が前記複数の精製床に存在する、ステップと;
前記放出可能な水量の前記精製状態がクリーンであると決定することに応じて、前記第1の精製床に新たな水量を導入するステップであって、前記新たな水量を導入することが前記水フィルター中の前記1つ以上の水量のそれぞれを移動させ、それにより、前記放出可能な水量が前記最終精製床を出て、かつ前記1つ以上の水量の次の放出可能な水量が前記最終精製床に入る、ステップと;
前記精製床の少なくとも1つにおける前記次の放出可能な水量の滞留時間に応じて、前記次の放出可能な水量と関連する精製状態を追跡するステップと;
前記滞留時間に応じて、前記精製床の前記少なくとも1つと関連する床装填状態を追跡するステップと
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記放出可能な水量の前記精製状態がクリーンであるかどうかを決定する前に、水温が10℃未満であるかどうかを決定するステップと;
前記水温が前記10℃未満であると決定することに応じて、前記新たな水量を導入する前記ステップを回避するステップと
をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記新たな水量を導入する前記ステップに応じて、前記精製床の前記少なくとも1つと関連する前記床装填状態が、前記少なくとも1つの精製床と関連する床装填しきい値を超えるかどうかを決定するステップと;
前記複数の精製床の1つ以上が、前記関連する床装填しきい値を超える床装填状態を有すると決定することに応じて、欠陥状態をフィルター期限切れに更新するステップと
をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
次の条件:低温、過剰制限、バルブ故障、過剰水および期限切れフィルターの少なくとも1つに応じて、前記欠陥状態を更新するステップをさらに含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記新たな水量を導入することに応じて、前記複数の精製床の1つに対応する関連する精製床を画定する精製床追跡器を更新するステップであって、前記精製床追跡器が、前記関連する精製床に存在する現在の水量の現在の滞留時間、前記現在の水量の現在の精製状態および前記関連する精製床の現在の床装填状態を維持し、前記複数の精製床のそれぞれが異なる精製床追跡器および異なる水量と関連し、前記第1の精製床と関連する前記精製床追跡器の前記現在の精製状態がアンクリーンに更新される、ステップをさらに含んでなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中炭化水素精製システムおよび方法、特に、研磨吸収剤要素から上流の高容量吸収剤要素によって水から炭化水素を除去するものに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料中の水汚染は、それがエンジンの性能および動作に影響を与える場合に懸念される。水汚染は、例えば、燃料フィルターのつまり、燃料枯渇、空洞化および腐食を通したエンジン要素の損傷、ならびに微生物増殖の促進を含む種々の問題を生じる可能性がある。
【0003】
燃料中の水汚染を低減するために、種々のデバイスが使用されている。例として、デバイスを合体および分離することを利用して、最初に、乳化された水をより大きい液滴中に合体させ、かつ次に、拡大化した液滴を燃料流から除去する。除去または排水された水中炭化水素分散体または乳濁液流は、燃料分離器システムからのこのような水から排出される。
【0004】
近年、炭化水素流体の燃焼によって生じる大気汚染を低減させることに焦点を当てた努力がなされてきた。ディーゼル燃料は、ディーゼルエンジン排気ガス規制に適合するため、硫黄の量が低減されるように精製された。しかしながら、これらの低硫黄ディーゼル燃料は他の添加剤の使用を必要とした。例として、エンジン用ディーゼル燃料の十分な潤滑性を維持するために、低硫黄ディーゼル燃料に界面活性剤が添加されていた。界面活性剤は、水と炭化水素との間の表面張力を低下させるため、水中炭化水素乳濁液または分散体を安定化させる効果も有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、水中炭化水素精製システムおよび方法、特に、他の態様の中でも、研磨吸収剤要素から上流の高容量吸収剤要素によって水から炭化水素を除去するものに関する。
【0006】
多くの実施形態において、水中炭化水素精製システムは、高容量炭化水素吸収剤材料と、燃料システムから水中炭化水素分散体を受け取るように構成された注入口とを有する高容量炭化水素吸収剤段階を含む。研磨炭化水素吸収剤段階は、高容量炭化水素吸収剤段階と液体連通しかつその下流にある。研磨炭化水素吸収剤段階は、研磨活性炭を含む。高容量炭化水素吸収剤材料は研磨活性炭より高い飽和容量を有し、かつ研磨活性炭は高容量炭化水素吸収剤材料より高い研磨容量を有する。
【0007】
さらなる実施形態において、エンジン燃料および水分離システムは、エンジン燃料ラインに流体接続され、かつ水排水口を有する燃料および水分離器システムを含む。本明細書に記載される水中炭化水素精製システムは、水排水口と流体連通する。
【0008】
なおさらなる実施形態において、方法は、燃料システムから水中炭化水素分散体を形成するステップと、高容量炭化水素吸収剤段階に水中炭化水素分散体を通過させるステップとを含む。高容量炭化水素吸収剤段階は、炭化水素の少なくとも一部を分散体から除去して、実質的に水である透過水を形成する高容量炭化水素吸収剤材料を含む。次いで、研磨炭化水素吸収剤段階に透過水を通過させる。研磨炭化水素吸収剤段階は、炭化水素を吸着し、かつ研磨された水流を形成するための研磨活性炭を含む。高容量炭化水素吸収剤材料は研磨活性炭より高い飽和容量を有し、かつ研磨活性炭は高容量炭化水素吸収剤材料より高い研磨容量を有する。
【0009】
種々の実施形態において、方法は、水フィルター中の最終精製床における放出可能な水量の精製状態がクリーンであるか、またはクリーンでないかを決定するステップを含む。水フィルターは、1つ以上の水量と、第1の精製床から最終精製床まで配列された複数の精製床とを含み、それにより、第1の精製床が、水回収リザーバから水フィルター中に導入された新たな水を受け取り、かつ最終精製床が水フィルターから水を放出する。1つ以上の水量は複数の精製床に存在する。本方法は、放出可能な水量がクリーンであると決定することに応じて、第1の精製床に新たな水量を導入するステップを含む。新たな水量を導入することは、水フィルター中の1つ以上の水量のそれぞれを移動させ得、それにより、放出可能な水量が最終精製床を出て、かつ1つ以上の水量の次の放出可能な水量が最終精製床に入る。本方法はまた、精製床の少なくとも1つにおける次の放出可能な水量の滞留時間に応じて、次の放出可能な水量と関連する精製状態を追跡するステップと、滞留時間に応じて、精製床の少なくとも1つと関連する床装填状態を追跡するステップとを含む。
【0010】
追加的な実施形態において、方法は、水フィルターの第1の精製床中に新たな水量を導入するステップを含む。水フィルターは、1つ以上の水量と、第1の精製床から最終精製床まで配列された複数の精製床とを含み、それにより、第1の精製床が、水回収リザーバから水フィルター中に導入された新たな水を受け取り、かつ最終精製床が水フィルターから水を放出する。1つ以上の水量は複数の精製床に存在し得る。本方法は、複数の精製床の1つに対応する関連する精製床を画定する精製床追跡器を更新するステップをさらに含み得る。精製床追跡器は、関連する精製床に存在する現在の水量の滞留時間、現在の水量の現在の精製状態および関連する精製床の現在の床装填状態を維持する。複数の精製床のそれぞれが異なる精製床追跡器および異なる水量と関連する。また、本方法は、第1の精製床と関連する精製床追跡器の現在の精製状態をアンクリーンに更新するステップを含む。
【0011】
種々のさらなる実施形態において、方法は、水フィルターの第1の精製床に新たな水量を導入するステップを含む。水フィルターは、1つ以上の水量と、第1の精製床から最終精製床まで配列された複数の精製床とを含み、それにより、第1の精製床が、水回収リザーバから水フィルター中に導入された新たな水を受け取り、かつ最終精製床が水フィルターから水を放出する。1つ以上の水量は複数の精製床に存在する。本方法は、水量の1つに対応する関連する水量を定義する水量追跡器を更新するステップをさらに含み得る。水量追跡器は、関連する水量の現在の滞留時間、関連する水量の現在の精製状態、関連する水量が存在する現在の精製床および現在の精製床の現在の床装填状態を維持する。1つ以上の水量のそれぞれが異なる水量追跡器および異なる精製床と関連する。またさらに、本方法は、新たな水量の現在の精製状態がアンクリーンに設定された状態で、新たな水量と関連する水量追跡器を作成するステップを含む。
【0012】
本発明の実施形態の1つ以上の詳細は、以下の添付の図面および記載において明らかにされる。本発明の他の特徴、対象および利点は、記載および図面からならびに特許請求の範囲から明白となるであろう。
【0013】
本開示は、添付の図面と関連して、以下の本開示の種々の実施形態の詳細な記載を考慮することにより、より詳細に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】水中炭化水素精製システムの概略図である。
図2】エンジン燃料および水分離システムの概略図である。
図3】別の水中炭化水素精製システムの概略図である。
図4】水中炭化水素精製システムを有するエンジンシステムの概略図である。
図5図4のエンジンシステムからの水の排出を管理するプロセスの概略図である。
図6図4のエンジンシステムの燃料水分離器および水フィルターの概略図である。
図7図4のエンジンシステムのコントローラーの概略図である。
図8図5のプロセスの水排出条件を確認するプロセスの概略図である。
図9】精製床追跡器を維持するプロセスの概略図である。
図10】水量追跡器を維持するプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に提示された概略図は必ずしも一定の縮尺ではない。図面中で使用される同様の数字は、同様の構成要素、ステップなどを参照する。しかしながら、所与の図中の構成要素を参照するための数字の使用は、別の図中において同一の数字でラベリングされた構成要素を限定するように意図されないことが理解されるであろう。加えて、構成要素を参照するための異なる数字の使用は、異なる数字付けされた構成要素が同一または同様であることが不可能であることを示すように意図されない。
【0016】
以下の詳細な記載において、本明細書の一部を形成し、かつ実例としてデバイス、システムおよび方法のいくつかの特定の実施形態が示される添付の図面が参照される。他の実施形態が考えられ、かつ本開示の範囲または趣旨を逸脱することなく作成され得ることが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な記載は限定の意味で解釈されるべきではない。
【0017】
別途指定されない限り、本明細書に使用される全ての科学用語および技術用語は、一般に当該技術分野において使用される意味を有する。本明細書に提供される定義は、多くの場合、本明細書に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、かつ本開示の範囲を限定するような意味はない。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容が明らかに他を規定しない限り、複数形の指示対象を有する実施形態を含む。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、内容が明らかに他を規定しない限り、「または」という用語は、一般に「および/または」を含む意味で利用される。
【0020】
本明細書において使用される場合、「有する」、「有している」、「含む」、「含んでいる」、「含んでなる」、「含んでなっている」などは、それらの非限定的な意味で使用され、かつ一般に「含むが、限定されない」ことを意味する。「からなる」および「から本質的になる」という用語は、「含んでなる」などに包括されることが理解されるであろう。
【0021】
本明細書で参照されるいずれの方向、例えば、「上部」、「底部」、「左」、「右」、「上方」「下方」、「上」、「下」ならびに他の方向および配向は、本明細書中、図面の参照において明快さのために記載され、実際のデバイスもしくはシステムまたはデバイスもしくはシステムの使用を限定するものではない。本明細書に記載されるデバイス、物品またはシステムの多くは、いくつかの方向および配向で使用されてよい。
【0022】
「炭化水素」という用語は、30個以下の炭素原子を有する飽和または不飽和分子から主に形成される油または燃料材料を意味する。
【0023】
「水中炭化水素乳濁液」という句は、水が連続相であり、かつ炭化水素が分散されているか、または不連続相である乳濁液または分散体を意味する。
【0024】
「吸収」という用語は、水からの炭化水素の除去プロセスを意味し、水からの炭化水素の吸収、吸着または同様の除去プロセスが含まれる。
【0025】
「高容量炭化水素吸収剤材料」および「高容量材料」という句は、意図されたクリーン度まで水をクリーンにする必要はないが、その代わりに高い飽和容量を導く特性を有する材料を意味する。例えば、2500ppmの水中B5乳濁液または分散体(B5=5%バイオディーゼルブレンド)でチャレンジした場合、これらの材料の飽和容量は、好ましくは、材料1グラムあたり750mgより高い炭化水素であるか、または材料1グラムあたり1000mgより高い炭化水素である。好ましい飽和容量は、チャレンジ流体濃度および構成によって異なるであろう。
【0026】
「研磨炭化水素吸収剤材料」および「研磨材料」という句は、広範囲の入ってくるチャレンジ水濃度において意図されたクリーン度まで水を精製することができる材料を意味する。好ましくは、これらの材料は、意図された目標クリーン度において高い装填特徴を有する。例えば、2500ppmの水中B5乳濁液または分散体で、2ppmの目標クリーン度でチャレンジした場合、これらの材料は、材料1グラムあたり25mgより高いか、または材料1グラムあたり50mgより高い炭化水素の好ましい装填または研磨容量を有する。好ましい装填特徴は、チャレンジ流体濃度および構成ならびに目標クリーン度次第である。
【0027】
本開示は、水精製システム、特に、他の態様の中でも、研磨吸収剤要素から上流で高容量吸収剤要素によって水から炭化水素を除去するシステムに関する。高容量吸着剤要素は、水中炭化水素分散体から炭化水素の少なくとも一部を除去し、透過水を形成した。次いで、透過水は、研磨吸収剤要素を通過し、研磨された水流を形成する。研磨された水流は、5ppm未満の炭化水素、または2ppm未満の炭化水素、または1ppm未満の炭化水素を有し得る。多くの実施形態において、高容量の吸収剤要素は、活性炭および/またはポリウレタンなどのポリマー材料であり、かつ研磨吸収剤段階は活性炭である。高容量炭化水素吸収剤材料は研磨活性炭より高い飽和容量を有し、かつ研磨活性炭は高容量炭化水素吸収剤材料より高い研磨容量を有する。高容量炭化水素吸収剤段階および研磨炭化水素吸収剤段階は、単一ハウジング内に含まれてもよい。本開示はそのように限定されないが、本開示の種々の態様の認識は、以下に提供された実施例の考察を通して得られるであろう。
【0028】
燃料投入システムに関する燃料クリーン度必要条件は、信頼性の高いエンジン性能を保証するために必要とされている。大きい程度において、燃料ろ過は、研摩粒子および不溶性水の制御と関連する燃料クリーン度必要条件を満たすことの原因となる。これらの燃料フィルターは、燃料流からの混入水の少なくとも一部を合体することができ、かつ水中燃料分散体または乳濁液廃液流を形成することができる。
【0029】
図1は、水中炭化水素精製システム10の概略図である。図3は、別の水中炭化水素精製システム100の概略図である。水中炭化水素精製システム10は、高容量炭化水素吸収剤材料36を含む高容量炭化水素吸収剤段階30と、水中炭化水素分散体供給源から水中炭化水素分散体22を受け取るように構成された注入口21とを含む。高容量炭化水素吸収剤材料36は、炭化水素の少なくとも一部を除去し、かつ実質的に水である透過水を形成する。透過水は、高容量炭化水素吸収剤段階30を出る。研磨炭化水素吸収剤段階40は、高容量炭化水素吸収剤段階30と液体連通しかつその下流にある。透過水32は、研磨炭化水素吸収剤材料46を含む研磨炭化水素吸収剤段階40に入る。研磨炭化水素吸収剤材料46は、残りの炭化水素を除去し、精製水流42が得られ、これは研磨炭化水素吸収剤段階40を出る。研磨炭化水素吸収剤段階40は、例えば、活性炭を含むことができる。
【0030】
好ましくは、高容量炭化水素吸収剤材料36は研磨活性炭46より高い飽和容量(qsat)を有し、かつ研磨活性炭46は高容量炭化水素吸収剤材料36より高い装填または研磨容量(q)を有する。高容量炭化水素吸収剤材料36は、研磨活性炭46よりも少なくとも10%高い、または少なくとも25%高い、または少なくとも50%高い、または少なくとも100%高い飽和容量(qsat)を有し得る。研磨活性炭46は、高容量炭化水素吸収剤材料36よりも少なくとも10%高い、または少なくとも25%高い、または少なくとも50%高い、または少なくとも100%高い装填または研磨容量(q)を有する。
【0031】
図3は、高容量炭化水素吸収剤段階材料36が空隙空間を画定する容器を形成し、かつ研磨炭化水素吸着剤材料46(例えば、活性炭)が空隙空間に配置される、二重吸収剤100の実施形態を例示する。容器を形成する高容量炭化水素吸収剤段階材料36は、注入口22(水中燃料分散体を供給する)および排出口42(精製水流)を有するハウジング13に含まれ得る。これらの実施形態の多くにおいて、高容量炭化水素吸収剤段階材料36は、以下に記載するポリマー材料から形成された不織布または織物層である。
【0032】
図2は、エンジン燃料および水分離システム11の概略図である。エンジン燃料および水分離システム11は、エンジン燃料ライン12に流体接続され、かつ排水排出口23およびろ過燃料排出口24を有する燃料および水分離器システム50(燃料水分離器)を含む。水中炭化水素精製システム10、100は、排水排出口23と流体連通する。
【0033】
多くの実施形態において、水中炭化水素分散体供給源は、燃料流から粒子をろ去し、水を合体させ、かつ水中炭化水素分散体流を形成することができる燃料フィルター要素50である。燃料フィルター要素50は、例えば、車両エンジンなどのディーゼルエンジンで使用されるものなどの燃料システムの一部を形成する。
【0034】
水中炭化水素精製システム10、100は、単一ハウジング内に含まれてもよい。高容量炭化水素吸収剤段階30および研磨炭化水素吸収剤段階40は、単一ハウジング13、例えば、フィルターハウジング内に含まれる。高容量炭化水素吸収剤段階30は(高容量材料の)第1の体積36を画定し得、かつ研磨炭化水素吸収剤段階40は(研磨材料の)第2の体積46を画定し得、および第1の体積36および第2の体積46はフィルターハウジング13に含まれる。
【0035】
高容量炭化水素吸収剤段階30および研磨炭化水素吸収剤段階40は、単一ハウジング13内に含まれる場合、互いから物理的に分離され得る。多孔性分割要素15は、第1の体積36を第2の体積46から分離し得る。
【0036】
多孔性分割要素15は、(高容量材料の)第1の体積36と(研磨材料の)第2の体積46との混合または拡散を防ぎ得るか、または減少し得る。多孔性分散要素15は、フィルターハウジング13に固定されていてもよい。多孔性分割要素15は、複数の開口を含み得る。開口は、高容量材料および研磨材料が多孔性分割要素15を通過することを防ぐようにサイズ設定されていてもよい。開口は、高容量材料および研磨材料の粒径よりも小さくてよい。多孔性分割要素15は、スクリーン要素または多孔性金属層であり得る。
【0037】
多孔性分割要素15は、多孔性不織物層または不織布層であり得る。不織物層15は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステルおよびそれらの組合せなどのポリマー材料から形成され得る。これらのポリマー材料も炭化水素を吸収し得、かつ炭化水素吸収剤材料であり得る。多孔性分割要素15は、ポリウレタン不織物層であり得る。多孔性分割要素15は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステルおよびそれらの組合せなどのポリマー材料から形成されたポリマースクリーンなどの押出成形層であり得る。これらのポリマー材料も炭化水素を吸収し得、かつ炭化水素吸収剤材料であり得る。
【0038】
水中炭化水素精製システム10、100は、高容量炭化水素吸収剤材料36を含む高容量炭化水素吸収剤段階30と、水中炭化水素分散体供給源50から水中炭化水素分散体22を受け取るための(燃料および水分離器システム50の排水排出口23と流体連通した)注入口23とを含む。高容量炭化水素吸収剤材料36は、炭化水素の少なくとも一部を除去し、かつ実質的に水である透過水を形成する。透過水は、高容量炭化水素吸収剤段階30を出る。研磨炭化水素吸収剤段階40は、高容量炭化水素吸収剤段階30と液体連通しかつその下流にある。透過水は、研磨炭化水素吸収剤材料46を含む研磨炭化水素吸収剤段階40に入る。研磨炭化水素吸収剤材料46は、残りの炭化水素を除去し、精製水流42が得られ、これは研磨炭化水素吸収剤段階40を出る。研磨炭化水素吸収剤段階40は、例えば、活性炭を含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、水中炭化水素精製システム10、100は、抗菌剤を含むことができる。例えば、高容量炭化水素吸収剤段階30または研磨炭化水素吸収剤段階40の1つ以上が抗菌剤を含むことができる。抗菌剤は、微生物の成長を抑制するか、または微生物を死滅させるいずれかの有用な材料または化合物でもあり得る。例示的な抗菌剤には、銀、銅、(例えば、第四級アミンなどの)有機殺生剤、オゾンまたは紫外線が含まれる。
【0040】
多くの実施形態において、水中炭化水素分散体または乳濁液は、少なくとも500ppm、または少なくとも1000ppm、または少なくとも2,000ppm、または少なくとも5,000ppmの炭化水素含有量を有する。透過水は、500ppm未満、または250ppm未満、または100ppm未満の炭化水素含有量を有する。研磨水流は、5ppm未満、または2ppm未満、または1ppm未満の炭化水素含有量を有する。
【0041】
他の実施形態において、水中炭化水素分散体または乳濁液は、少なくとも100ppm、または少なくとも250ppm、または100ppm~500ppmの範囲の炭化水素含有量を有する。透過水は、水中炭化水素分散体または乳濁液より低い炭化水素含有量を有する。研磨水流は、5ppm未満、または2ppm以下未満、または1ppm未満の炭化水素含有量を有する。
【0042】
炭化水素吸収材料
炭化水素吸収材料は、炭化水素を吸収することができるいずれの材料も含む。例示的な炭化水素吸収材料には、ポリマー材料、活性炭または両方が含まれる。水中炭化水素分散体は、研磨炭化水素吸収材料と接触する前に最初に高容量炭化水素と接触する。炭化水素吸収要素の全寿命は、研磨炭化水素吸収材料の上流に高容量炭化水素吸収材料を有することにより長くし得ることが見出されている。
【0043】
平衡濃度と炭素装填との間の関係は、吸着等温線によって記載することができる。吸着の最も広く使用されるモデルの3つは、Freundlich、LangmuirおよびBET等温線である。これらの中で、経験的なFreundlich等温式は、広範囲のチャレンジ条件および装填量における活性炭の装填挙動を最も良好に記載する。Freundlich等温式は、
【数1】
であり、式中、qは、吸着剤1グラムあたりの吸着物質のミリグラムでの吸着剤装填(x/m)であり、cは、溶液中の平衡吸着物質濃度であり、かつKおよび1/nは、吸着物質、吸着剤および温度に依存する等温式パラメータである。
【0044】
Freundlich等温式は、特定の目標平衡吸着物質濃度における吸着剤装填を決定するために使用することができる。平衡吸着物質濃度(c)が、入ってくる吸着物質濃度(c)に等しい場合、材料は使い尽くされている。これらの条件下の装填容量は、飽和容量またはqsatと呼ばれる。材料の飽和容量は、異なる入ってくる吸着物質濃度によって変化する。高い飽和容量を有する材料は、高容量炭化水素吸収剤材料または高容量材料と呼ばれる。
【0045】
ほとんどの精製用途において、成分を残す目標吸着物質濃度(c)は、入ってくる吸着物質濃度より低い。この場合、意図された目標吸着物質濃度において、Freundlich等温式から決定された吸着剤装填は研磨容量またはqであるとみなされる。材料の研磨容量は、異なる入ってくる吸着物質濃度および目標吸着物質濃度によって変化する。研磨容量は、一般に飽和容量より低い。高い研磨容量を有する材料は、研磨炭化水素吸収剤材料または研磨材料と呼ばれる。
【0046】
好ましくは、高容量炭化水素吸収剤材料は研磨炭化水素吸収剤材料より高い飽和容量(qsat)を有し、かつ研磨炭化水素吸収剤材料は高容量炭化水素吸収剤材料より高い研磨容量(q)を有する。飽和容量(qsat)および研磨容量(q)は、同一の入ってくる吸着物質濃度によって決定される。
【0047】
高容量材料と、それに続いて研磨材料の別個の部分とを含む水中炭化水素精製システムは、単一材料の同サイズのシステムを上回る増加した寿命を有する。特に、高容量の材料と、それに続いて研磨材料の別個の部分とを含むフィルターハウジングは、単一材料の同サイズのフィルターハウジングを上回る増加した寿命を有することができる。高容量材料および研磨材料は互いに直列流配向で配置され、研磨材料が高容量材料の下流にある。
【0048】
活性炭は、極めて高い表面積および非常に多孔性の構造を有する微粒炭素である。そのため、その吸着容量は特に高く、特に炭化水素に関して特に顕著である。活性炭は、非常に多孔性の構造を有する炭素(ほとんど>90%)から主になる。加えて、活性炭の内部表面積は500~2000m/g炭素であり、これは活性炭の高い吸着容量を説明する。
【0049】
「高容量」活性炭は、(本明細書中、研磨炭化水素吸収材料と呼ばれる)活性炭の参照試料よりも少なくとも25%、または少なくとも50%、または少なくとも75%高い、飽和における装填(qsat)を有する。一般に、高容量炭化水素吸収剤材料は研磨炭化水素吸収剤材料より高い飽和容量(qsat)を有する。
【0050】
いくつかの実施形態において、高容量炭化水素吸収ポリマー材料には、炭化水素吸収ポリマーポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステルおよびそれらの組合せが含まれる。これらの吸収ポリマー材料は、不織布層、ナノ繊維層、スポンジまたはポリマーフォーム要素または層の形態であり得る。他の実施形態において、高容量炭化水素吸収材料は活性炭である。いくつかの実施形態において、高容量炭化水素吸収材料は、高容量炭化水素吸収ポリマー材料および高容量炭化水素吸収活性炭材料の両方を含む。
【0051】
高容量炭化水素吸収材料は、1種以上または2種以上の異なるタイプまたは種類の高容量炭化水素吸収材料を含む。2種以上の高容量炭化水素吸収材料は、単一体積内で一緒に混合され得るか、または仕切りもしくはスペーサー要素によって互いから分離され得、それらは互いに直列流配向であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、高容量炭化水素吸収材料は、2種以上の高容量炭化水素吸収活性炭材料を含む。2種以上の高容量炭化水素吸収活性炭材料は、単一体積内で一緒に混合され得るか、または仕切りもしくはスペーサー要素によって互いから分離され得、それらは互いに直列流配向であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、高容量炭化水素吸収材料は、2種以上の高容量炭化水素吸収ポリマー材料を含む。2種以上の高容量炭化水素吸収ポリマー材料は、単一体積内で一緒に混合され得るか、または仕切りもしくはスペーサー要素によって互いから分離され得、それらは互いに直列流配向であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、高容量炭化水素吸収材料は、高容量炭化水素吸収ポリマー材料および高容量炭化水素吸収活性炭材料を含む。高容量炭化水素吸収ポリマー材料および高容量炭化水素吸収活性炭材料は、単一体積内で一緒に混合され得るか、または仕切りもしくはスペーサー要素によって互いから分離され得、それらは互いに直列流配向であり得る。これらの実施形態において、高容量炭化水素吸収ポリマー材料は、全高容量炭化水素吸収材料の10~90重量%を表し得、かつ高容量炭化水素吸収活性炭材料は、全高容量炭化水素吸収材料の90~10重量%を表し得る。高容量炭化水素吸収ポリマー材料は、全高容量炭化水素吸収材料の25~50重量%を表し得、かつ高容量炭化水素吸収活性炭材料は、全高容量炭化水素吸収材料の75~50重量%を表し得る。高容量炭化水素吸収ポリマー材料は、全高容量炭化水素吸収材料の75~50重量%を表し得、かつ高容量炭化水素吸収活性炭材料は、全高容量炭化水素吸収材料の25~50重量%を表し得る。
【0055】
多くの実施形態において、研磨炭化水素吸収剤材料は活性炭である。いくつかの実施形態において、研磨炭化水素吸収材料は、2種以上の研磨炭化水素吸収活性炭材料を含む。2種以上の研磨炭化水素吸収活性炭材料は、単一体積内で一緒に混合され得るか、または仕切りもしくはスペーサー要素によって互いから分離され得、それらは互いに直列流配向であり得る。
【0056】
高容量炭化水素吸収材料および研磨炭化水素吸収剤材料が異なる材料であることが理解される。例えば、炭化水素吸収材料および炭化水素吸収剤材料の両方が活性炭であり得るが、それらは、異なる吸収特性を有する異なる種類の活性炭である。一般に、研磨活性炭は高容量炭化水素吸収剤材料より高い装填または研磨容量(q)を有する。
【0057】
いくつかの実施形態において、水中炭化水素精製システムは、研磨炭化水素吸収剤材料と比較して、ほぼ等しい重量または体積量の高容量炭化水素吸収剤材料を有する。高容量炭化水素吸収剤材料は、(水中炭化水素精製システムに含まれる)全吸収剤材料の45~55重量%を表し、かつ研磨炭化水素吸収剤材料は、全吸収剤材料の約55%~45%である。
【0058】
いくつかの実施形態において、研磨炭化水素吸収剤材料と比較して、より高い重量%の高容量炭化水素吸収剤材料を有することは、水精製システムにおける全炭化水素の寿命を改善することが知られている。これらの実施形態のいくつかにおいて、高容量炭化水素吸収剤材料は、全吸収剤材料の55重量%~95重量%を表し、かつ研磨炭化水素吸収剤材料は、全吸収剤材料の約45%~5%である。
【0059】
他の実施形態において、高容量炭化水素吸収剤材料と比較して、より高い重量%の研磨炭化水素吸収剤材料を有することは、水精製システムにおける全炭化水素の寿命を改善することが知られている。これらの実施形態のいくつかにおいて、高容量炭化水素吸収剤材料は、全吸収剤材料の15重量%~45重量%を表し、かつ研磨炭化水素吸収剤材料は、全吸収剤材料の約85重量%~55重量%である。
【0060】
いくつかの実施形態において、水中炭化水素精製システムは、約2/3の高容量炭化水素吸収剤材料および1/3の研磨炭化水素吸収剤材料を有する。高容量炭化水素吸収剤材料は、(水中炭化水素精製システムに含まれる)全吸収剤材料の60~75重量%を表し、かつ研磨炭化水素吸収剤材料は、全吸収剤材料の約40%~25%である。
【0061】
本明細書で使用される場合、「内側」、「外側」、「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「左」、「右」、「上方」および「下方」、「時計回り」および「逆時計回り」ならびに他の同類語などの用語は、図面に示される相対位置を参照する。一般に、物理的な実施形態は異なる配向を有し得、そのような場合、用語は、デバイスの実際の配向に変更された相対位置を参照するように意図される。
【0062】
図4は、燃料水分離が必要となる可能性を有する燃料の供給源からの流体流を提供および制御するために使用することができる、様々な要素を示すエンジンシステム150の概略図である。示されるように、エンジンシステム150は、燃料供給源152、燃料水分離器154、水フィルター156、燃料ポンプ158、エンジン160、コントローラー162、燃料ライン164および水ライン166を含む。燃料ラインバルブ170、水ラインバルブ172、燃料中水(WIF)センサー174、温度センサー176もエンジンシステム150の本例示された実施形態に含められる。
【0063】
これらの構成要素は、例示された実施形態に含まれているが、本開示は、示されたそれぞれの構成要素を含むことに限定されず、さらには、示されていないかまたは燃料から水を分離し、かつ分離した水を精製して炭化水素を除去するための本明細書に記載の制御技術とともに使用され得る他の配列で見出され得る他の構成要素が含まれていてもよい。例えば、エンジンシステム150は、2013年11月29日出願の“Fuel Filter Assembly,Filter Element and Method for Draining Water from a Fuel Filter Assembly”という名称の欧州特許出願第2,878,352号明細書に記載されるように構成されてもよい。上記の特許出願は、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0064】
動作中、エンジンシステム150は、燃料から水を分離し得る。水は、例えば、大気凝結または非理想的な燃料管理のために燃料に存在し得る。いくつかの場合、燃料供給源152中の燃料は水と混合され得る。それがエンジン160に達する前に、エンジンシステム150は、好ましくは燃料から水を除去する。
【0065】
しかしながら、エンジンシステム150中の水は有用ではなくなり得、種々の実施形態において、水は、好ましくはエンジンシステム150から排除され、これは環境180中に入り得る。少なくとも1つの実施形態において、水は環境180中に蒸発し得る。
【0066】
しかしながら、分離された水はアンクリーンであり得る。本明細書で使用される場合、「アンクリーンな水」は、炭化水素などの汚染物質を含有し得るか、またはそれを含有すると考えられる水を意味する。したがって、「クリーンな水」は、汚染物質を有さないか、または汚染物質が十分に存在しないと考えられる水を意味する。環境180中へのアンクリーンな水の放出を防ぐことは、例えば、司法上の必要条件に従うために望ましいことができる。種々の実施形態において、汚染物質のしきい値は司法上の必要条件に応じて決定され得る。多くの場合、「アンクリーンな水」は、好ましくは、司法上の必要条件に従って、環境180中に入り得る「クリーンな水」へと精製される。
【0067】
種々の例示的な実施形態において、エンジンシステム150は、好ましくは、エンジンシステム150を出る前に、分離されたアンクリーンな水を精製する。アンクリーンな水を精製することに関連するエンジンシステム150の種々の構成要素およびそれらの動作は、本明細書中でさらに詳細に記載される。
【0068】
燃料供給源152は、燃料を含むことができ、かつ燃料ライン164を通して燃料をエンジン160に供給することができる燃料タンクであり得る。エンジン160は、例えば、正常動作中に機械的エネルギー(例えば、自動車動力のためのトルク)を提供するために燃料(例えば、ディーゼル)を燃焼する内部燃焼エンジンであり得る。エンジン160の正常動作中、燃料ライン164は、典型的に燃料供給源152、燃料水分離器174、燃料ポンプ158およびエンジン160と流体連通する。
【0069】
燃料ライン164に沿った流体連通は、開放または閉鎖が可能である燃料ラインバルブ170によって中断され得る。閉鎖した燃料ラインバルブ170は、好ましくは両方向においてバルブにわたる流体連通を妨げる。少なくとも例示された実施形態において、燃料ラインバルブ170は、燃料ライン164に沿って燃料供給源152と燃料水分離器154との間に位置する。エンジン160の正常動作中、燃料ラインバルブ170は、好ましくは開放している。
【0070】
燃料は、好ましくは燃料ライン164に沿って上流また下流の燃料ポンプ158によって引き出される。本明細書でエンジンシステム150を記載するために使用される場合、燃料ライン164に沿った「上流」という用語は、燃料供給源152に向かう方向を意味する。したがって、燃料ライン164に沿った「下流」という反対の用語は、エンジン160に向かう方向を意味する。
【0071】
燃料ポンプ158は、燃料ライン164に沿って圧力差を提供し得る。正常動作中、燃料ポンプ158は、燃料を下流方向に引き出すために、下流で比較的より高い圧力(+)および上流で比較的より低い圧力(-)を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態において、燃料ポンプ158は逆方向に動作し得る。例えば、燃料ポンプ158は、燃料を上流方向に引き出すために、上流で比較的より高い圧力および下流で比較的より低い圧力を提供し得る。
【0073】
燃料水分離器154は、好ましくは、エンジン160への危害を防ぐかまたは緩和するために、燃料から十分な量の水を除去する。示されるように、燃料水分離器154は、燃料供給源152の下流かつ燃料ポンプ158およびエンジン160の下流に配置される。
【0074】
多くの実施形態において、燃料水分離器154は、図2中の燃料フィルター要素50に類似している。種々の例示的な実施形態において、燃料水分離器154は、上流の注入口で水と混合された燃料を受け取り、燃料から水をろ過し、燃料ライン164への下流排出口にろ過された燃料を提供し、水ライン166に水を提供する。
【0075】
水ライン166は、環境180と燃料水分離器154との間に流体連通を提供し得る。例示された実施形態において、水ライン166は、燃料水分離器154、水フィルター156および環境180間で典型的に流体連通を提供する。示されるように、水フィルター156は、燃料水分離器154の下流かつ環境180の上流に配置される。
【0076】
本明細書で使用される場合、水ライン166に沿って「上流」とは、燃料水分離器に154に向かう方向を意味する。したがって、水ライン166に沿って「下流」という反対の用語は、環境180に向かう方向を意味する。
【0077】
多くの実施形態において、燃料水分離器154から水ライン166へと提供される水は、アンクリーンな水であると考えられて、水中炭化水素分散体を含み得る。アンクリーンな水は、環境180にクリーンな水を提供するために、好ましくは水フィルター156によって精製される。例えば、水フィルター156は、炭化水素を炭化水素吸収材料中に吸収し、水を精製する図1または3の水中炭化水素精製システム10、100を含み得る。
【0078】
水ライン166に沿った流体連通は、水ラインバルブ172によって制限され得、それにより、水ライン166に沿って一方向のみで流体が流れることが可能となり得る。例えば、水ラインバルブ172は、チェックバルブであり得、これは、開放して一方向で流動を可能にし、かつ閉鎖して他の方向での流体流動を防ぐために感圧性であり得る。少なくとも1つの実施形態において、水ラインバルブ172は、受動的チェックバルブである。例示された実施形態において、水ラインバルブ172は、水ライン166に沿って燃料水分離器154と水フィルター156との間に配置される。
【0079】
正常動作中、燃料ポンプ158は、環境180の圧力(例えば、大気圧)よりも低い上流圧力を生じ得、これにより、水ライン166に沿って上流で低く(-)かつ下流で高い(+)、水ラインバルブにわたる圧力差が生じ得る。例示された実施形態において、水ラインバルブ172は、圧力差に応じて閉鎖する傾向があり、かつ流体が水ライン166に沿って上流に流れることを防ぐ。
【0080】
水は、好ましくは水ラインバルブ172を通して水を下流に流すことにより、エンジンシステム150から排出される。いくつかの実施形態において、分離された水は、圧力差により、燃料水分離器154から水フィルター156を通してかつエンジンシステム150から流れ得る。例えば、水は、特に水ラインバルブ172を開放し、水が水ライン166に沿って下流に流れることを可能にして水を排出するために、下流よりも上流でより高い圧力となる水ラインバルブ172にわたる十分な圧力差構成を構築することによって排出され得る。多くの実施形態において、水ラインバルブ172は、好ましくは、流体が水ライン166に沿って下流にのみ流れることを可能にする。
【0081】
例示された実施形態において、燃料ポンプ158は、水を排出するために必要とされる圧力差を提供するために使用され得る。例えば、燃料ポンプ158は、水ラインバルブ172を開放するために十分である、環境180の圧力より高い上流の圧力を生じるために逆方向に動作し得る。特に、燃料ラインバルブ170は、閉鎖されて、例えば、上流にポンプされた燃料が燃料供給源152へと戻ることを防ぐことにより、燃料水分離器154中の圧力の増加を促進してもよい。十分な圧力差のため、開放されると、開放水ラインバルブ172は、流体が環境180に向かって圧力差を越えて水ライン166に沿って下流に流れることを可能にする。
【0082】
多くの実施形態において、燃料ポンプ158が逆にされる間、エンジン160は、好ましくは動作しない(例えば、燃料を消費しない)。したがって、水の排出前に、エンジン160は、好ましくは止められ得る。しかしながら、他の実施形態において、燃料ポンプ158以外の別の構成要素が水を排出するための圧力を提供するために使用され得るか、または燃料ライン164において圧力に対して応答性である必要のないアクティブワンウェイバルブなど、チェックバルブ以外の異なるバルブが、水が回出のために下流に流れることを可能にするために使用され得る。
【0083】
種々の実施形態において、アンクリーンな水(例えば、水中炭化水素分散体)は、それを通って燃料が流れると、燃料水分離器154によって連続方式で分離されるものとして記載され得る。エンジン160の運転時、分離された水の量は、1つ以上のパラメータに応じてモデル化および推測され得る。水分離パラメータの非限定的な例には、とりわけ以下のものが含まれる:燃料水分離器154中のフィルター材料の種類、そのようなフィルター材料の「飽和」(例えば、フィルター装填の量)、燃料中水の濃度、燃料の温度および燃料の流量。
【0084】
しかしながら、エンジン160の運転時、燃料ポンプ158は、好ましくは正常動作にあり、水は排出されない。水を排出することができるまで水を回収および貯蔵することは有利であり得る。したがって、アンクリーンな水は、バッチ中の燃料水分離器154から排出されるものとして記載され得る。連続的に水を分離し、バッチ中でそれを排出するプロセスは、「マルチバッチ」プロセスと記載され得る。いくつかの例示的な実施形態において、燃料水分離器154は、水が水フィルター156中に排出されるまでアンクリーンな水を回収するためのリザーバを含む。
【0085】
多くの例示的な実施形態において、アンクリーンな水は、好ましくは水フィルター156中に存在している間に精製される。エンジンシステム150から排出するために、アンクリーンな水を十分に精製するために水フィルター156において必要とされるか、または最小の時間量は、1つ以上のパラメータに応じてモデル化および推測され得る。例えば、水精製パラメータには、吸着剤装填、吸着物質対吸着剤の比率、平衡吸着物質濃度、吸着物質特徴、吸着剤特徴(例えば、表面積などの物理的特徴)および温度などの動力学的パラメータが含まれ得る。多くの実施形態において、水フィルター156中の時間量に対する水中炭化水素の濃度をモデル化する動力学的パラメータの特定のセットに基づく動力学的プロフィールを使用して、滞留時間しきい値、ならびに本明細書の他の箇所において記載されるような制御技術の他の態様を決定し得る。
【0086】
多くの実施形態において、燃料水分離器154からバッチ中でかつ水フィルター156中に排出され得る、アンクリーンな水が水フィルター156に滞在する時間の量を最大化または最適化することが好ましいことができる。他方、燃料水分離器154から水を排出するためにエンジンシステム150が止められる頻度を最小化または最適化すること(換言すれば、作動時間の中断を最小化すること)も好ましいことができる。本明細書に記載された技術は、エンジンシステム150で使用され得る水の精製および排出を最適化するための技術を定義する。
【0087】
多くの例示的な実施形態において、エンジンシステム150は、燃料水分離器154から水フィルター156中に事前に決定された水量を排出する。水フィルター156は、好ましくは事前に決定された水量の対象数(例えば、1つ、2つ、3つまたはそれを超える)を受け取り、かつ貯蔵するために設計される。事前に決定された水量の対象数は、特定の用途に従って、燃料水分離器154中での推定された水分離速度に基づき、水フィルター156中での水の十分な滞留時間を促進するために選択され得る。
【0088】
1つの例示的な自動車用途において、例えば、燃料水分離器154による水分離の推定速度は、典型的な条件下で1時間のエンジン動作あたり約40mLであると決定され得る。同じエンジンシステム150において、水フィルター156による水精製の推定速度は、典型的な条件下で1時間の滞留時間あたり約40mLであると決定され得る。さらに、排出のための事前に決定された水量は、設計によって約40mLであり得、これは、3つの水量が3時間かけて排出される(例えば、0、1および2時間マークで水フィルターに入る)ことを意味する。3つ全ての水量のために水フィルター156で望ましい滞留時間を促進するため、水フィルター156は、複数の事前に決定された水量(例えば、少なくとも3つ)を貯蔵するように設計され得る。3時間マークで第4の排出時までに、第1の水量は、水フィルター156において少なくとも3時間の滞留時間を有し、水フィルター156からの排出のためにクリーンであると考えられ得る。
【0089】
水フィルター156は、先入れ先出しプロセス(FIFO)に従って、事前に決定された水量を受け取り、かつ排出するよう設計され得る。FIFOプロセスは、好ましくは、水フィルター156中で最も長い時間にわたり滞在した水をエンジンシステム150から排出することにより、複数の水量を含み得る水フィルター156中に水量が存在する時間量を最大化する。記載された例示的な自動車用途において、例えば、0時間マークにおいて水フィルター156に排出された第1の40mLの水量は、3時間にわたり水フィルター156に存在し得、かつ第2および第3の水量の前に水フィルター156から排出され得る(例えば、第4の水量が水フィルター156中に排出される場合の3時間マークにおいて)。
【0090】
エンジンシステム150は、水フィルター156を通した燃料および水の流量を管理するための制御システムを含み得る。例示された実施形態において、制御システムは、特に水の排出を管理および制御するために、エンジンシステム150中の種々の構成要素と動作連通するコントローラー162を含む。多くの例示的な実施形態において、コントローラー162は、水排出の管理を容易にするために、水フィルター156中のアンクリーンな水の滞留時間も追跡する。コントローラー162は、本明細書の他の箇所において記載される水の排出を管理および制御するために、種々の例示的な方法を実施するように設定され得る。
【0091】
本開示の多くの態様は、コンピュータシステムまたはプログラム学習を実行することができる他のハードウェアであり得る、制御および/または通信システムの構成要素によって実行される一連の動作を含むレシーバー、タイマー、マネージャー、オペレーターまたはコントローラーに関して記載される。これらの構成要素は、エンジンシステムのコントローラー(例えば、エンジン制御モジュール/ユニット(ECM/ECU))、複数のコントローラー、またはエンジンシステムから独立し、エンジンコントローラーと通信するコントローラーにおいて実現化可能である。少なくとも1つの実施形態において、描写されかつ記載された構成要素は、コントローラー、センサー、アクチュエーターがデジタルのメッセージによって通信する、コントローラーエリアネットワーク(CAN)などの有線または無線ネットワークの一部であり得る。本開示と一貫する実施形態において、種々の動作のそれぞれが、1つ以上のプロセッサー(例えば、セントラルプロセッシングユニット(CPU)またはマイクロプロセッサー)により、またはその全てがコントローラー162および/または他のコントローラーで実行可能である組合せによって実行されるプログラム指示による特殊化回路(例えば、特殊化関数を実行するために相互連結した不連続論理ゲート)によって実行可能であることが認識されるであろう。コントローラーは、必要とされる動作を実行するためにプロセッサーを利用し得るか、または別の構成要素とプロセッサーを共有し得る。本開示と一貫した実施形態の論理は、コンピュータによって読み取り可能な媒体において指示を実行するように構成され得る、いずれの適切なデータプロセッサーによっても実行可能である。コンピュータによって読み取り可能な媒体には、明白な形態のメディア、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能なプログラム可能リードオンリーメモリ(例えば、EPROM、EEPROMまたはフラッシュメモリ)、光ファイバーおよびポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、または他のいずれかの固体状態、磁性および/もしくは情報を記憶し得る光ディスク媒体が含まれる。したがって、種々の態様は、多くの異なる形態で実現可能であり、かつ全てのそのような形態は本開示と矛盾しないと想定される。
【0092】
コントローラー162は、燃料ラインバルブ170および燃料ポンプ158と動作連通し得る。多くの例示的な実施形態において、コントローラー162は、燃料ポンプ158が正常に動作するように、および逆方向に動作するように命令する信号を提供する。さらに、コントローラー162は、燃料ラインバルブ170が開放または閉鎖するように命令する信号を提供し得る。このように、コントローラー162は、水の排出を制御するように構成される。
【0093】
また、コントローラー162は、センサーデータを受け取るためにセンサーと動作連通し得る。いくつかの例示的な実施形態において、コントローラー162は、センサーデータを表す種々のセンサー信号を受け取るために、WIFセンサー174および温度センサー176に動作連結される。コントローラー162は、水排出の管理を容易にするためにセンサーデータを使用し得る。
【0094】
WIFセンサー174は、好ましくは、事前に決定された水量が燃料水分離器154から排出する準備ができていることを示す信号を提供する。種々の例示的な実施形態において、WIFセンサー174は、燃料水分離器154の水回収リザーバと流体連通し得、かつリザーバ中の水位(例えば、燃料-水界面)が事前に決定されたトリガー量に適合するか、またはそれを超える時に誘引されるように配置され得る。
【0095】
多くの実施形態において、事前に決定されたトリガー量は、好ましくは、分離された燃料が水フィルター156に流れるのを防ぐ安定係数によって事前に決定された水量と関連する。例えば、WIFセンサー174の位置は、少なくとも50mLの水が燃料水分離器154中で回収され、かつ40mLのみの水が水フィルター156に排出され得る場合に誘引し得る。
【0096】
種々の実施形態において、1つのWIFセンサー174が含まれる。しかしながら、種々の実施形態において2つ以上のWIFセンサー174が含まれ得る。
【0097】
いくつかの例示的な実施形態において、コントローラー162は、誘引されたWIFセンサー174への応答(例えば、エンジン160の停止)において、事前に決定された時間量で燃料ポンプ158を逆戻りさせるように命令することによって排出を制御する。少なくとも1つの実施形態において、コントローラー162は、典型的な動作条件下で、事前に決定された水量を排出するために推定された事前に決定された時間量間にわたり、燃料ポンプ158を逆戻りさせる。
【0098】
温度センサー176は、好ましくは、水ラインに沿った温度を示す信号を提供する。水温は、エンジンシステム150から水を排出する能力に影響を与え得る。例えば、温度センサー176は、水の流れを限定し得る氷の可能な堆積を示唆する低温信号を提供し得る。水温は、水フィルター156の動力学、または水から炭化水素をろ過するためのその能力に影響を与え得る。低温信号を受信することに応じて、コントローラー162は、水が、例えば、水排出管理を促進する後の時間まで排出されないべきであることを示す欠陥状態を更新し得る。
【0099】
温度センサー176は、水温を示すことに関して専用であり得るか、または典型的に、他の温度を示すためにエンジンシステム150に存在する温度センサーであり得る。多くの例示的な実施形態において、水ライン166の水温がエンジン160の5℃以内であるように、水ライン166はエンジン160に近接して配置される。そのような実施形態において、水温用のセンサーは必要とされなくてもよい。例えば、温度センサー176は、例えば、ECUにエンジンブロック温度を提供するためにすでに使用され得るエンジンブロックセンサーであり得る。そのような場合、コントローラー176は、ECUから水ラインに沿って温度を示す信号を受信し得る。この構成は、水ライン166の温度をほぼエンジンブロック温度まで標準化するというさらなる利益を有し、これは、加温される時に凍結および氷堆積を防ぎ得る。
【0100】
ここで、図4および5を一緒に参照すると、水の排出を管理する例示的プロセス200の概略図が示される。プロセス200は、例えば、コントローラー162で実行され得る。
【0101】
ステップ202において、水を排出する準備ができているという指示が決定される。指示は、事前に決定された水量を燃料水分離器154から排出する準備ができていることを示す、誘引されたWIFセンサー172への応答において決定され得る。また、そのような実施形態において、エンジンシステム150オペレーターは、WIFセンサー172が誘引されたことを(例えば、計測器クラスターのライトランプによって)知らせ得る。
【0102】
ステップ204において、水排出条件が確認される。種々の実施形態において、エンジン動作状態が確認される。例えば、エンジンキーが「オフ」の位置にある場合、エンジン160は、動作しないように決定される(例えば、オフ状態で運転しない)。いくつかの例示的な実施形態において、水排出条件は、「オフ」の位置に向けられたエンジンキーに応じて確認される。
【0103】
他方、エンジンキーが「オン」の位置にある場合、エンジン160が動作していることを示し、タイマーが開始され得る。事前に決定された期間後、タイマーは期限が切れ得、これは、WIFセンサー174が事前に決定された期間で誘引されたことを示す。事前に決定された期間は、水回収リザーバのサイズを超え、かつ/または特定の時間限界内に精製される水フィルター156の能力を超える、事前に決定された期間で燃料水分離器154によって分離された水の推定量に対応し得る。
【0104】
エンジンシステム150のオペレーターは、水が特定の期間内に排出されなければならないことを知らせ得、かつ第2のタイマーが開始し得る。第2のタイマーの期限において、水が排出可能であるようにオペレーターがエンジン160(例えば、プルオーバー)を止めるまで、エンジンシステム150は、水を十分に精製する水フィルター156の能力を維持するための厳格な基準を必要とし得る。厳格な基準の非限定的な例には、エンジンアウトプット負荷軽減、計測器ランプの点滅、および可聴式アラームが含まれる。
【0105】
さらなる実施形態において、排出前に水温を確認する。水温がしきい値より低いことが決定される場合、水は、水の凍結の可能性のために排出され得ない。例えば、温度センサー176が低水温(例えば、10℃未満)を示す場合、水は排出され得ない。
【0106】
追加的な実施形態において、水フィルター156から排出される水量の精製進捗が確認される。排出された水量がアンクリーンであると決定される場合、水は水フィルター156から排出され得ない。好ましくは、この決定を容易にするために、水量が水フィルター156から排出されるまで水量の精製が水量の流入から水フィルター156まで追跡される。
【0107】
ステップ206において、排出条件が満足のいくものである場合、水は燃料水分離器154から水フィルター156中に排出される。水フィルター156が排出前に水で満たされる場合、より古い水量が水フィルター156から排出され得る。
【0108】
ステップ208において、フィルターの状態を示すパラメータが更新される。例えば、欠陥状態が決定および設定され得る。欠陥状態の非限定的な例としては、低温度欠陥、過剰制限欠陥、バルブ故障欠陥、過剰水欠陥およびフィルター期限切れ欠陥が含まれる。欠陥状態は、好ましくは、排出の試みが失敗したことおよび水が排出されなかったことを示す。いずれの欠陥状態の不在も排出が成功していたことを示す。エンジンオペレーターは、それに応じて知らされ得る。
【0109】
一例において、温度センサー176からの低温信号に応じて、低温度欠陥が決定および設定され得、これは、水の凍結によって水を排出する能力に影響を与え得る。第2の例において、逆動作中(例えば、排出中)の燃料ポンプ特徴における過度の相違に応じて過剰制限欠陥が決定および設定され得、これは、限定される流れの可能性によって水を排出する能力に影響を与え得る。第3の例において、逆動作中(例えば、排出中、燃料ラインバルブ170が閉鎖しないか、または水ラインバルブ172が開放しない)の燃料ポンプ特徴における過度の相違に応じてバルブ故障欠陥が決定および設定され得、これは、圧力の望ましくない損失または圧力の堆積によって水を排出する能力に影響を与え得る。第4の例において、特定の時間限界内で精製するための水フィルター156の能力を超えて燃料水分離器154によって回収された水に応じて過剰水欠陥が決定および設定され得、これは、アンクリーンな水の望ましくない排出をもたらし得る。第5の例において、有効実用寿命の終了に達した水フィルター156または精製床300に応じてフィルター期限切れ欠陥が決定および設定され得、これは、滞留時間にかかわらず、アンクリーンな水の不十分な精製をもたらし得る。少なくとも1つの実施形態において、有効実用寿命(例えば、その床装填しきい値)の終了に達した最終精製床300に応じてフィルター期限切れ欠陥が決定される。
【0110】
図6は、例示的な燃料水分離器154および例示的な水フィルター156の概略図である。例示された実施形態において、燃料水分離器154は水192を燃料190から除去する。分離された燃料190は、正常動作において下流に続き得る。分離された水192は、好ましくは、燃料水分離器154の底部において水回収リザーバ194中で回収され得る。
【0111】
いくつかの例示的な実施形態において、燃料190および水192は、分離後に同じ体積で存在し得る。分離された燃料190は、例えば、別個の相として、分離された水192上に浮遊し得る。水回収リザーバ194は、燃料水分離器154中の体積のより低い部分と定義され得る。水回収リザーバ194はシリンダーとして概略的に示されるが、水および燃料を分離および含み得るいずれの適切な形状も本開示内で考慮される。
【0112】
また、示されるように、WIFセンサー174は、水回収リザーバ194に配置される。WIFセンサー174は、水192のレベルが事前に決定された水量に達した時を検出することに応じて誘引され得る。誘引は、好ましくは、水量が排出される準備ができていることを示す。排出時、水量は、好ましくは燃料水分離器154を出て水ラインバルブ172を越え、水フィルター156に入る。多くの例示的な実施形態において、水量は、安定係数によって事前に決定された水量と関連し得る。例えば、事前に決定された水量は50mLであり得、かつ排出される水量は40mLであり得る。
【0113】
水フィルター156は、注入口196および排出口198を含む。新しい水量が注入口196に入る時、水フィルター156は、好ましくは、排出口198から第1のおよび最も古い水量を排出するように設計される。例えば、水フィルター196が最初に取り付けられた時、水フィルター196中に水量は存在せず、最初の排出時に、好ましくは事前に決定された水量と等しい第1の水量が水フィルター156に入る。次いで、追加的な排出により、好ましくは、事前に決定された水量の増加においてフィルター156中の水準を上昇させる。概略的に示されるように、注入口196は、水フィルター156の底部に隣接して配置され、排出口198は、水フィルター156の上部または反対端部に配置される。好ましくは、排出口198から精製されたクリーンな水のみが出るかまたは排出される。
【0114】
多くの実施形態において、水フィルター156は、1つ以上の炭化水素吸収剤を含む。炭化水素吸収剤は、好ましくは、水中炭化水素精製システム10、100において記載された炭化水素吸収剤材料を含む。水フィルター156は、1つ以上の種類の炭化水素吸収剤材料を含み得る。段階は、材料の種類に従って水フィルター156によって画定され得る。少なくとも1つの実施形態において、それぞれ高容量段階および研磨段階を画定する高容量材料および研磨材料などの2種の炭化水素吸収剤材料が利用される。
【0115】
複数の不連続精製床300(例えば、区分け、段階または地域)として、水フィルター156の全体積を考慮することにより、水が水フィルター156を通して進む時の炭化水素除去の挙動を予測するモデルが作成され得る。水量が精製床300に「入り」かつ「出る」ことができる。そのようなモデルは、新たな水量が水フィルター156に入る時に、水フィルター156中の既存の水量が上流に追い出されること、およびそれらが水フィルター156を通して進む時に、それぞれの水量が実質的に他の水量と混合しないことを仮定し得る。
【0116】
多くの例示的な実施形態において、それぞれの精製床300は、好ましくは事前に決定された水量と等しい空隙量を有するものとして定義される。例えば、精製床300の全体積は約75mLであり、材料を吸収するために約40mLおよび約35mLの空隙量を有する。換言すれば、水は、モデルにより、一列で不連続量において水フィルター156を通して前進しているものとして推定され得、それぞれの不連続量は不連続精製床300に存在し、かつそれぞれの新たな水量が1つの精製床300によって上流に存在する水量を追い出す。
【0117】
例示された実施形態において、いずれの数の精製床300も画定され得るが、水フィルター156は、第1の精製床301から最終精製床308まで配列された8つの精製床301、302、303、304、305、306、307、308を含む。それぞれの精製床300は、水ライン166に沿って別の精製床300から上流または下流であると定義され得る。
【0118】
精製床300は、特定の吸収材料または特定の吸収段階を含み得る。さらに、それぞれの精製床300は、特定の吸収剤、吸収剤材料または吸収段階に対応し得る。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、最終精製床308は、研磨材料から製造された1種の研磨吸収剤を含む研磨吸収段階に対応する。同じく、少なくとも1つの実施形態において、精製床301~307は、高容量材料から製造された1種の高容量吸収剤を有する1つの高容量吸収段階に対応する。
【0119】
それぞれの精製床300は、精製床300が、例えば、水から炭化水素を吸収する能力を表す対応または関連する床装填状態を有し得る。例えば、水量が精製床300において完全にまたは部分的にクリーンにされる場合、床装填状態は増加し得る。精製床300が十分な炭化水素を吸収したら、精製床300は、吸着等温線モデルによって定義され得るその有効寿命の終了に達したと考えられ得る。したがって、精製床300のための床装填しきい値は、吸着等温線モデルに応じて決定され得る。床装填状態は、精製床300がもはや効果的にアンクリーンな水から炭化水素を吸収することができないことを示す「しきい値到達」または「無効」に設定され得る。逆に、「しきい値に達していない」または「有効」の床装填状態は、精製床300が炭化水素を吸収し続け、アンクリーンな水の精製に影響を与え得ることを示すことができる。
【0120】
床装填しきい値は、吸着等温線モデルにより、それぞれの精製床300に関して異なり得る。一例において、炭化水素吸収剤の材料、サイズ、形状および他の特徴は、その有用使用寿命に関して炭化水素を吸収するその能力に影響を与え得、床装填しきい値はそれに応じて調整され得る。例えば、高容量精製床は、100の床装填しきい値を有し得、それに対して研磨精製床は10の床装填しきい値を有し得る。
【0121】
さらに、水フィルター156における精製床300の位置は、床装填しきい値に影響を与え得る。床装填状態は、吸着等温線モデルを使用してマルチバッチプロセスをモデル化することに基づいて設定される。少なくとも1つの実施形態において、精製床300の床装填しきい値は、下流方向で減少し得、上流の精製床300が、水フィルター156の有効寿命の早期により多くの炭化水素を吸収するであろうことが認識される。例えば、床装填しきい値は、第1の精製床301に関して100、第2の精製床302に関して95、第3の精製床303に関して85など、最終精製床308に関して10に設定され得る(例えば、最終精製床は、床装填しきい値に達する前に10のアンクリーンな水量をクリーンにすることができる)。
【0122】
それぞれの精製床300内のそれぞれの水量は、どの程度の量の水量が精製されたかを表す関連する精製段階を有するものとしても考えられ得る。多くの実施形態において、水フィルター156に入る新たな水量は、アンクリーンな水であると考えられる。したがって、新たな水量の精製段階は、初期化されるかまたは「アンクリーン」に設定される。しかしながら、水量が、滞留時間しきい値の間、1つ以上の有効な精製床300に存在する場合、水はクリーンな水であると考えられ得る。したがって、精製状態は「クリーン」に設定され、これは、水量が水フィルター156から排出され得る「クリーンな水」を含むことを示す。逆に、水量が「アンクリーンな水」を含むと考えられる限り、精製状態は「アンクリーン」のままであり得る。
【0123】
精製床300は、FIFOプロセスを促進するために、水フィルター156中でいずれかの適切な方式で配列され得る。多くの実施形態において、第1の精製床301は、注入口196の下流および全ての他の精製床302~308の上流として定義される。例えば、水フィルター156に入る水は、他のいずれかの精製床前に第1の精製床301に入り得る。
【0124】
種々の実施形態において、最終精製床308は、排出口198の上流および全ての他の精製床301~307の下流として定義される。例えば、水フィルター156を出る水は、他のいずれの精製床の代わりに最終精製床308から出ることができる。
【0125】
例示された実施形態において、水192が水フィルター156に導入される時、水が最終精製床308通過するまで、水は、第1の精製床301、次いで第2の精製床302、次いで第3の精製床303などを通過し、排出口198を通して水フィルターを出る。
【0126】
少なくとも1つの実施形態において、精製床300は、水フィルター156の高さに沿って画定された軸に沿って線形に配列される。例えば、精製床300は、水フィルター156の高さに沿って「積層されている」として定義され得る。精製床300の形状およびサイズは、図3で示された吸収剤材料36、46と同様に、同心または重ねられた方式を含むいずれの他の適切な方式でも画定され得る。
【0127】
図7は、例示的なコントローラー162の概略図である。例示されるように、コントローラー162は、センサーデータを受け取るためにWIFセンサー174および温度センサー176に連結される。センサーデータは、新たな水量が、例えば、水回収リザーバから排出される準備ができていることを示し得る。センサーデータレシーバー400は、燃料中の水のパラメータ404および水温パラメータ422など、センサーデータに応じて1つ以上のパラメータを決定し得る。
【0128】
コントローラー162は、水排出を制御するため、燃料ラインバルブ170および燃料ポンプ158に連結されて示される。多くの例示的な実施形態において、コントローラー162は、水排出管理および制御と関連する1つ以上のパラメータを決定および提供し、かつ記憶するために使用可能である。本明細書で使用される場合、データの決定は、コントローラー162にデータを受け取ることも含み得る。
【0129】
少なくともいくつかの実施形態において、コントローラー162は、水の排出を管理するための様々なパラメータ、しきい値および状態を決定するように構成される水フィルターマネージャー401を含む。種々の実施形態において、水フィルターマネージャー401は、水排出の管理を容易にするために、精製床追跡器または水量追跡器も含む。例えば、精製床追跡器は、その関連する動力学的モデルに基づき、それぞれの精製床に関して床装填状態416を維持および更新し得る。別の例において、水量追跡器は、現在の精製床の関連する動力学的モデルに基づき、それぞれの水量に関して精製状態410を維持および更新し得る。追跡器の種類は、例えば、コントローラー162のプロセッシングまたはメモリで利用可能なリソースに基づいて選択され得る。
【0130】
さらに、種々の実施形態において、コントローラー162は、アラームコマンド408、欠陥状態420および水排出コマンド420などの1つ以上のコマンドまたは状態を提供するように構成される排出オペレーター403を含む。例えば、欠陥状態420は、コントローラー162の外側のECUに提供され得る。コマントおよび状態は信号によって表され得る。
【0131】
少なくとも1つの実施形態において、コントローラー162は、エンジンキーが「オン」または「オフ」に向けられるかどうかを示すエンジンキーパラメータ402を決定するように構成される。コントローラー162は、好ましくは、WIFセンサー174が事前に決定された水量の存在によって誘引されるか、または誘引されないかを示す燃料中の水のパラメータ404を決定するようにも構成される。
【0132】
例示されるように、コントローラー162は、経過した1つ以上の期間を追跡し得るタイマー406を維持するようにさらに構成される。異なるタイマー406は、追跡されるそれぞれの期間で維持され得る。いくつかの実施形態において、タイマー406は、WIFセンサーが誘引されてから経過した期間を追跡し得る。種々の実施形態において、タイマー406は、水量が1つ以上の有効精製床に存在した期間と定義され得る水量の滞留時間を追跡し得る。タイマー406は、例えば、秒、分または時間の単位でいずれの適切な時間増加においても更新され得る。
【0133】
なおさらに、例示されたコントローラー162は、タイマー406の期限に応じて1つ以上のアラームコマンド408を提供するように構成される。アラームコマンド408は、エンジンオペレーターに警告し得るか、または十分に精製された水を排出するエンジンシステムの能力を維持するための作用を取り得る。
【0134】
種々の実施形態において、コントローラー162は、1つ以上の滞留時間412および1つ以上の滞留時間しきい値414に応じて、1つ以上の水量の1つ以上の生成状態を決定するように構成される。例えば、精製状態410は、滞留時間412が水量の滞留時間しきい値414に適合するかまたはそれを超えるまで、アンクリーンに設定され得る。精製状態410は、次いでクリーンに設定され得る。
【0135】
さらなる実施形態において、コントローラー162は、1つ以上の精製床に関して、1つ以上の床装填状態416および1つ以上の床装填しきい値418を決定するように構成される。コントローラー162は、床装填状態416と、関連する床装填しきい値418とを比較し得る。1つ以上の床装填状態416が関連する床装填しきい値418に達すると、欠陥状態420は更新され、期限切れフィルターを示し得る。
【0136】
多くの実施形態において、コントローラー162は、温度センサー176において水温を示す水温パラメータ422を決定するように構成される。コントローラー162は、水温パラメータ422との比較のために、低温しきい値424も決定し得る。低温しきい値424より低下した水温パラメータ422に応じて、コントローラー162は欠陥状態を更新し、低温を示し得る。
【0137】
少なくともいくつかの例示的な実施形態において、コントローラー162は、「オフ」の位置を示すエンジンキーパラメータ402、誘引されたWIFセンサーを示す燃料中の水のパラメータ404、低温(または他の欠陥)を示さない欠陥状態420、およびクリーンである水フィルター中の次の放出可能な水量と関連する精製状態410に応じて、水排出コマンドを決定し得る。種々の例示的な実施形態において、排出オペレーター403は、好ましくは燃料ラインバルブ170を閉鎖し、かつ燃料ポンプ158を逆戻りさせる排出コマンド426を提供する。
【0138】
コントローラー162において実行され得るプロセスは、図8、9、10および11に関して本明細書中に詳細に記載される。
【0139】
図8は、水排出条件を確認するための例示的なプロセス202の概略図である。プロセス202は、ステップ501において新たな水量が排出される準備ができていることを決定することによって開始する。次いで、ステップ502において、水温が低温しきい値未満であるかどうかが決定される。水温が低温しきい値より低い場合、プロセス202は、新たな水量を導入する(例えば、水量を排出する)ステップを回避し、ステップ503が続けられる。
【0140】
ステップ503において、欠陥状態は、低温、過剰量の水および期限切れフィルターなどの1つ以上の条件に応じて更新される。条件のそれぞれは、新たな水量が排出可能ではなく、したがって排出の試みが失敗であったことを示し得る。
【0141】
しかしながら、ステップ502において、水温が低温しきい値より低くない場合、プロセス202は504ステップに続き得る。
【0142】
多くの実施形態において、プロセス202は、水フィルターであって、1つ以上の水量と、第1の精製床から最終精製床まで配列された複数の精製床とを含み、それにより、第1の精製床が、水回収リザーバから水フィルター中に導入された新たな水を受け取り、かつ最終精製床が水フィルターから水を放出する、水フィルターを用いて使用され得る。1つ以上の水量は、好ましくは複数の精製床に存在する。
【0143】
ステップ504によると、新たな水量が水フィルター中に導入された場合、放出されるであろう最終精製床中の水量の精製状態が決定される。精製状態は、精製床の少なくとも1つにおける次の放出可能な水量の滞留時間を追跡することに応じて決定され得る。
【0144】
ステップ505が続いて、水フィルター中の最終精製床中の放出可能な水量がクリーンであるか、またはクリーンでないかは、例えば、ステップ504で決定される精製状態に応じて決定される。放出可能な水量がクリーンである場合、プロセス202は、ステップ506に続き、水フィルターの第1の精製床中に新たな水量を導入するために水回収リザーバから水を排出し得る。他方、放出可能な水量がクリーンでない場合、プロセスは、ステップ507に続き、1つ以上の精製床が関連する床装填しきい値に達したかどうかが決定される。
【0145】
ステップ506によると、新たな水量は、放出可能な水量がクリーンであるかどうかという決定に応じて第1の精製床中に導入される。導入された新たな水量は、放出可能な水量が最終精製床を出て、かつ1つ以上の水量の次の放出可能な水量が最終精製床に入るように、水フィルター中の1つ以上の水量のそれぞれを移動させる。
【0146】
他方、ステップ507において、精製床の少なくとも1つと関連する床装填状態が関連する床装填しきい値を超えているかどうかが決定される。床装填状態は、例えば、少なくとも1つの精製床中の水の滞留時間を追跡することに応じて決定され得る。
【0147】
種々の実施形態において、フィルターは、1つ以上の精製床がそれらの関連する床装填しきい値を超える床装填状態を有すると決定することに応じて、期限切れとして決定され得る。水フィルターの残りの有効精製床が1つの水量をクリーンにするために不十分な能力を有する場合、水フィルターは、別の水量をクリーンにすることが不可能であり得る。次いで、水フィルターは期限切れとみなされ得る。一例において、最終精製床がその関連する床装填しきい値に達した場合、フィルターは期限切れとして考えられ得る。別の例において、精製床のいくらかまたは全てがそれらの関連する床装填しきい値に達した場合、フィルターは期限切れとして考えられ得る。
【0148】
ステップ507から続いて、排出中の過剰制限またはバルブ欠陥など、低温、過剰水または期限切れフィルター以外の欠陥がステップ508において確認され得る。次いで、ステップ503において、欠陥状態が更新されて、例えば、診断のためにコントローラー上に提供され得る。
【0149】
ステップ506または503のいずれかの後、プロセス202は、次いで、ステップ509において終了する。このように、水フィルターに入る水量は、水フィルターからクリーンな水のみが排出されることを促進するために評価され得る。
【0150】
図9は、水量が、例示的な水フィルターを通って進む時に、精製床追跡器において精製状態(PS)および床装填状態(LS)を追跡するための例示的なプロセス600を示す概略図である。多くの実施形態において、水フィルター中のそれぞれの精製床は、異なる精製床追跡器および任意の所定の時点で異なる水量と関連し得る。
【0151】
例示された実施形態において、精製床追跡器は、精製床Xを通して進む種々の水量Yを追跡し続ける。例えば、プロセス600は、例示的なコントローラーからの水排出コマンドによって開始可能であるステップ601における水排出によって開始し得る。これにより、前の水量Y-1は下流方向に精製床Xを出て、かつ水量Yはステップ602において上流方向から精製床Xへと入り得る。
【0152】
多くの例示的な実施形態において、精製床追跡器は、関連する精製床Xに存在する現在の水量Yの滞留時間、現在の水量Yの現在の精製状態および関連する精製床Xの床装填状態などのパラメータを維持する。パラメータは、プロセス600によって更新され得る表などのデータ構造で記憶され得る。
【0153】
プロセス600は、アンクリーンな状態を表すPS=1およびクリーンな状態を表すPS=0で1~0の水量Yの精製状態を追跡し得る。少なくともいくつかの例示的な実施形態において、精製状態は、0または1のみとしてBoolean値として追跡される。プロセス600によれば、水量は、好ましくは、完全滞留時間しきい値と等しい全滞留時間にわたり水量が1つ以上の有効な精製床に存在する場合のみ、クリーンであると考えられる。例えば、アンクリーンな水量(PS=1)が、滞留時間しきい値の半分の間、第1の有効精製床に存在し、かつ滞留時間しきい値の別の半分の間、第2の有効精製床に存在する場合、精製状態は、第2の有効精製床からの排出時にクリーンである(PS=0)と考えられ得る。
【0154】
追跡プロセス600は、アンクリーンな水が環境に達することを防ぐことにおける安全限界を好ましく維持するため、精製床Xの装填を過度に概算し得る。プロセス600は、整数、例えば、LS=0(床装填なし)~LS=100(床装填しきい値が100である場合には無効)の範囲の整数で床装填状態を追跡し得る。したがって、床装填状態は、LS=0~LS=99で有効である。床装填状態は、例えば、それぞれの増加が精製床X中への1つの完全水量の炭化水素の吸収を表して、増加し得る(+1)。しかしながら、滞留時間しきい値に達する前に水量Yが精製床Xを出る場合、精製床Xの床装填状態は、水量Yからの炭化水素の完全量が精製床X中に吸収され得なかったが、なお増加する(LS=LS+1)。床装填状態は、水量Yが完全滞留時間しきい値後に精製床Xを出る時にも増加する(LS=LS+1)。したがって、精製床Xの床装填状態は過度に概算され得る。
【0155】
多くの例示的な実施形態において、新たな水量が水フィルターに入る時、現在の精製状態は、ステップ603における上流の精製床X-1の精製状態から精製床Xに対して更新され得る。さらに、第1の精製床(X=1)と関連する精製床追跡器の現在の精製状態は、ステップ604において、新たな水量が炭化水素の完全量を有することを示すアンクリーン(PS=1)へと更新され得る。
【0156】
ステップ605において、現在の水量Yがクリーンであるかどうかがステップ605で決定される。例えば、精製状態がクリーンである(PS=0)場合、水量はクリーンな水を含むと決定される。水量がアンクリーンである場合、精製床Xの現在の床装填しきい値に達した(無効となった)かどうかはステップ607で決定される。
【0157】
現在の床装填状態が床装填しきい値に達した場合、欠陥状態は、ステップ608において精製床Xが床装填しきい値に達した(無効である)ことを示すように更新され得る。精製状態および滞留時間は、水量Yが無効な精製床Xに留まる限り水量Yがさらに精製され得ないため、好ましくは更新されない。しかしながら、現在の床装填状態が床装填しきい値に達しなかった(有効である)場合、現在の水量Yの現在の滞留時間は、ステップ609で更新される(例えば、1時間増加する)。
【0158】
ステップ609の後、現在の滞留時間が精製床Xにおける滞留時間しきい値以上であるかどうかがステップ610で決定される。現在の滞留時間が滞留時間しきい値に適合するかまたはそれを超える場合、現在の精製状態は、ステップ611においてクリーンに更新され得る。さらに、現在の床装填状態は、1の水量における炭化水素が精製床X中に吸収されたことを示すため、ステップ613で増加し得る。
【0159】
しかしながら、現在の滞留時間が滞留時間しきい値未満である場合、別の水量が排出される準備ができているかどうかはステップ612で決定される。次の排出の準備ができていない場合、水量がクリーンであるかどうかは、605ステップに戻るループにおいて確認される。
【0160】
しかしながら、次の排出の準備ができている場合、水量Yは排出され得る。さらに、現在の床装填状態は、精製床X中に吸収された炭化水素の量を過度に概算するために、ステップ613において増加し得る(LS=LS+1)。さらに、滞留時間しきい値に達する前、現在の水量Yは精製床Xから排出され得、かつ水量Yはなおアンクリーンであると考えられる(PS=0)。
【0161】
ステップ605、608または613のいずれかの後、プロセスはステップ614で終了する。しかしながら、プロセス600は、新たな水量が排出されるたびに繰り返され得る。このように、水フィルター中のそれぞれの水量は、滞留時間に基づき純度に関して追跡され得、それぞれの精製床は、クリーンにされた水量に基づき有用な使用寿命の終わりまで追跡され得る。
【0162】
図10は、水量が例示的な水フィルターを通って進む時に、水量追跡器において精製状態および床装填状態を追跡するための例示的なプロセス700を示す概略図である。多くの実施形態において、水フィルター中の水量は、異なる水量追跡器および任意の所定の時点で異なる精製床と関連し得る。より特に、新たな水量が水フィルターに入るたびに新たな水量追跡器が作成され得る。
【0163】
例示された実施形態において、水量追跡器は、種々の精製床Xを通して進む時の水量Yを追跡し続ける。例えば、プロセス700は、ステップ701における水排出によって開始し得る。これにより、水量Yは、前の精製床X-1を下流方向で出て、かつステップ702において現在の精製床Xへと入る。
【0164】
多くの例示的な実施形態において、水量追跡器は、関連する水量Yの現在の滞留時間、関連する水量Yの現在の精製状態、関連する水量が存在する現在の精製床Xおよび現在の精製床Xの現在の床装填状態などのパラメータを維持する。パラメータは、プロセス700によって更新され得る表などのデータ構造で記憶され得る。
【0165】
プロセス700は、クリーンな状態を表すPS=0およびアンクリーンな状態を表すPS=1で、例えば、10分の1(0.1)の増加において1~0の範囲の水量Yの精製状態を追跡し得る。プロセス700によれば、水量は、好ましくは、完全滞留時間しきい値と等しい全滞留時間にわたり水量が1つ以上の有効な精製床に存在する場合のみ、クリーンであると考えられる。
【0166】
特に、プロセス700は1つ以上の精製床の運動のプロフィールを表しているデータ構造(例えば、テーブル)を維持し得る。それぞれの表は、水量Yが有効精製床に存在する時間を表す一連の滞留時間しきい値(TRによってインデックス付けられる)と、水量中に残ることが推定される炭化水素の標準化された濃度(例えば、水量純度)を表す一連の精製状態(PS)とに関連し得る。それぞれの動力学的プロフィールは、それぞれの精製床の関連する動力学的パラメータに基づいて決定され得る。1つの例示的な例において、動力学的プロフィールを表す表は、以下に関連する:
0時間の滞留時間しきい値(TR=0)および100%の残留炭化水素(PS=1);
1時間の滞留時間しきい値(TR=1)および20%の残留炭化水素(PS=0.2);
3時間の滞留時間しきい値(TR=2)および10%の残留炭化水素(PS=0.1);ならびに
6時間の滞留時間しきい値(TR=3)および0%の残留炭化水素(PS=0)。
【0167】
種々の実施形態において、滞留時間しきい値および精製状態中の差異は、経時的な様々な精製変化を定義し得る。一例において、炭化水素吸収速度は、時間1~3(例えば、5%の炭化水素が1時間あたり除去される)よりも、時間0~1(例えば、80%の炭化水素が1時間あたり除去される)でより高くなり得る。換言すれば、いくつかの実施形態において、それぞれのその後の経時的な精製変化は、直前の経時的な精製変化未満であり得る。経時的な精製変化は、温度および精製床の吸収剤材料の種類などの動力学的または吸着等温線パラメータに依存し得る。1つ以上の精製床に関する動力学的または吸着等温線パラメータの異なる組合せを表すために、異なる表が使用され得る。
【0168】
多くの例示的な実施形態において、全滞留時間が滞留時間しきい値(TR)に達する場合は常に、水量Yの精製状態(PS)が更新され得る。水量Yが次の滞留時間しきい値に達する前に排出される場合でさえ、水ショット追跡器は、例えば、タイマーで滞留時間を更新し、次の有効精製床X+1において全滞留時間を追跡し続け得る。
【0169】
プロセス700は、全整数の代わりに、10分の1(0.1)でLS=0(床装填なし)~LS=100(床装填しきい値が100である場合には無効)の範囲において精製床Xの床装填状態を追跡し得る。水量Yから除去された炭化水素の量が10分の1(0.1)で追跡されるため、精製状態間の差異は、床装填を増加させるために使用され得る。例えば、水量Yの全滞留時間が1時間に達したら、現在の精製状態はPS=1からPS=0.2まで減少し得、精製床Xの床装填状態は差異(LS=LS+0.8)で増加し得る。
【0170】
プロセス700は、例えば、次の装填しきい値に達する前に水量Yが排出された場合、床装填状態を増加させることにより、床装填状態を過度に概算し得る。例えば、0時間に精製床Xに入り、30分のみの後に出る水量Yに対する水量追跡器は、水量Yが1時間(LS=LS+0.8)における次の滞留時間しきい値まで精製床Xに存在する場合のように、現在の床装填状態を増加させ得る。このように、プロセス700は、水フィルターからのアンクリーンな水の排出を防ぐことにおける安全限界を提供し得る。
【0171】
多くの例示的な実施形態において、新たな水量が水フィルターに入ると、水量Yの現在の精製床は、ステップ703においてX-1からXへと更新され得る。さらに、水量追跡器は、ステップ704において、第1の精製床(X=1)およびアンクリーンな精製状態(PS=1)と関連する現在の精製床を有する水量を作成し得、かつそれと関連し得る。
【0172】
ステップ705において、現在の水量Yがクリーンであるかどうかが決定される。例えば、精製状態がクリーンである場合(PS=0)、水量はクリーンな水を含むと決定される。水量がアンクリーンである場合、精製床Xの現在の床装填しきい値に達した(無効になった)かどうかはステップ707で決定される。
【0173】
現在の床装填状態が、床装填しきい値に達した場合、欠陥状態は、ステップ708において精製床Xが床装填しきい値に達した(無効である)ことを示すように更新され得る。精製状態および滞留時間は、水量Yが無効な精製床Xに残留する限り水量Yがさらに精製されないため、好ましくは更新されない。しかしながら、現在の床装填状態が床装填しきい値に達しなかった(無効である)場合、水量Yの現在の滞留時間はステップ709で更新される(例えば、1時間増加する)。
【0174】
ステップ709の後、別の水量が排出される準備ができているかどうかがステップ710で決定される。次の排出の準備ができている場合、水量Yは排出され得る。さらに、現在の床装填状態は、精製床X中に吸収された炭化水素の量を過度に概算するために、任意のステップ711において増加し得る(LS=LS+PS(TR)-PS(TR+1))。なおさらに、水量Yは、精製床X+1に入り得、精製床X+1の床装填限界に達したかどうかはステップ707に戻るループ(図示されず)で決定され、精製床X+1は、プロセス700の次のステップにおいて、現在の精製床Xであると考えられ得る。
【0175】
しかしながら、次の排出が準備されない場合、現在の滞留時間が次の滞留時間しきい値(TR+1)以上であるかどうかはステップ712で決定される。現在の滞留時間が滞留時間しきい値に適合するかまたは超える場合、現在の精製状態は、ステップ713の次の滞留時間しきい値(TR+1)と関連する次の精製状態(PS=PS(TR+1))に更新され得る。
【0176】
さらに、精製床Xの床装填状態(LS)は、それに応じてステップ714において増加し得る(LS=LS+PS(TR)-PS(TR+1))。例えば、床装填状態(LS)は、現在の滞留時間しきい値の精製状態(PS(TR))と、次の滞留時間しきい値の精製状態(PS(TR+1))との差異によって増加し得る。ステップ714の後、水量Yがクリーンであるかどうかは、ステップ705に戻るループにおいて決定される。
【0177】
ステップ705、708のいずれかの後、プロセスはステップ715で終了する。しかしながら、プロセス700は、新たな水量が排出されるたびに繰り返され得る。このように、水フィルター中のそれぞれの水量は、滞留時間に基づき純度に関して追跡され得、それぞれの精製床は、クリーンにされた水量に基づき有用な使用寿命の終わりまで追跡され得る。
【0178】
開示された系および構造の利点のいくつかを以下の実施例によってさらに例証する。本実施例において記載された特定の材料、量および寸法、ならびに他の条件および詳細は、本開示を不当に限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0179】
飽和および研磨容量の決定
Freundlich等温曲線定数、Kおよび1/nは、吸着物質と吸着剤との間の相互作用の範囲を示す適合定数である。本実施例において、フィルターは、ディーゼル炭化水素を水から除去するために設計される。典型的な実験において、様々な材料の吸着剤特性を次のように決定した。種々の質量のそれぞれの材料(50mg~500mg)は、20mLの水中B5ディーゼル燃料分散体でチャレンジされた(典型的に、1000~2500ppmの炭化水素含有量)。試料を一晩で平衡化し、それぞれの試料の平衡炭化水素濃度をn-ヘキサデカン(C16)標準と比較して、GC-MS(ガスクロマトグラフィー-質量分析)を使用して決定した。データは、経験的Freundlich等温式の線形化形態を使用して仕上げた。
【数2】
式中、qは、炭化水素/g吸着剤(x/m)のmgでの吸着剤装填であり、cは、水中平衡炭化水素濃度であり、Kおよび1/nは、材料依存性および温度依存性の等温パラメータである。ディーゼル燃料などの多成分吸着物質において、等温パラメータは、最初の水中燃料分散体濃度に依存する傾向があった。様々な材料の等温定数および容量値を表1(2500ppmの水中B5ディーゼル燃料分散体でチャレンジされた材料)および表2(1000ppmの水中B5ディーゼル燃料分散体でチャレンジされた材料)に表す。
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
Norit GCN 1240は、Cabot Corporation(Boston,MA)から商業的に入手可能である。
【0183】
Silcarbon K48は、Silcarbon Aktivkohle GmbH(Kirchhundem,Germany)から商業的に入手可能である。
【0184】
Norit ROW 0.8 Supraは、Cabot Corporation(Boston,MA)から商業的に入手可能である。
【0185】
Obermeier TyP Aqua S816は、Kurt Obermeier GmbH&Co.(Bad Berleburg,Germany)から商業的に入手可能である。
【0186】
Chemviron Carbosrb 28FBは、Chemviron Carbon(Feluy,Belgium)から商業的に利用可能である。
【0187】
Calgon Filtersorb F300は、Calgon Carbon Corporation(Moon Township,PA)から商業的に入手可能である。
【0188】
Calgon Filtersorb F400は、Calgon Carbon Corporation(Moon Township,PA)から商業的に入手可能である。
【0189】
実施例A
高容量炭素(Silcarbon K48)および研磨炭素(Norit GCN 1240)の吸着剤特性は、上記の等温実験を行なうことによって決定した。2500ppmの水中B5ディーゼル燃料分散体チャレンジのための等温パラメータは表1に提示される。本実施例の目標クリーン度は2ppmである。
【0190】
観察されるように、Silcarbon K48炭素は、より高い飽和容量を有するのに対し、Norit GCN 1240炭素は、2ppmの排出口炭化水素濃度を目標とする場合、より高い装填容量を有する。したがって、Silcarbon K48高容量段階と、それに続いてNorit GCN 1240研磨段階とを含む水中炭化水素精製システムは、Norit GCN 1240研磨炭素のみを含む等しい質量系よりも長い寿命を有するであろう。
【0191】
第1の段階が高容量材料を使用し、かつ第2の段階が研磨材料を使用する2段階に吸収剤床を分割することにより、水精製フィルターの寿命を増加させることができる。計算結果では、2500ppmの初期炭化水素濃度を有する50mLの水試料で床が連続的にチャレンジされる場合、このような寿命の増加が確認される。このモデルにおいて、水および炭素は、次のフィルター段階に移される前または要素を出る前に、Freundlich等温式に従って完全に平衡化することが可能となる。高容量材料および研磨材料のFreundlich等温パラメータは、水中ディーゼル燃料分散体チャレンジを使用する等温実験に基づく(表1)。このモデルは全ての実施例で使用された。本実施例において、両材料は活性炭であった。
【0192】
357gのNorit GCN 1240を含むフィルターは、2ppmの目標濃度を突破する前に68Lの水を精製するであろう。Silcarbon K48(高容量)およびNorit GCN 1240)(研磨)の2段階にフィルターを分割することにより、マルチバッチモデルの最適寿命は、60重量%の高容量炭素および40重量%の研磨炭素である。この比率において、2ppmでの破過前に82Lが精製される。これは、炭化水素吸収剤フィルター寿命の21%増加である。
【0193】
実施例B
Chemviron Carbsorb 28FBの357gを含むフィルターは、2ppmの目標濃度を突破する前に112Lの水を精製するであろう。Norit ROW 0.8 Supra(高容量炭素)およびCarbsorb 28FB(研磨炭素)の2つの等質量段階にフィルターを分割することにより、フィルターの寿命は水の148Lまで増加する。さらにシステムを改善することにより、マルチバッチモデルの最適寿命は、90重量%の高容量炭素および10重量%の研磨炭素であることが見出された。これらの比率は異なる特定の吸着剤のために異なり得る。この比率において、2ppmでの破過前に167Lが精製される。これは、炭化水素吸収剤フィルター寿命の49%増加である。
【0194】
実施例C
高容量材料の別の実施例において、典型的な研磨炭素は、ポリウレタンフォーム(Restek;カタログ番号22957)と比較された。ポリウレタンおよび研磨炭素は、Freundlich等温パラメータ Log Kおよび1/nを決定するために、1000ppmの水中炭化水素(B5)分散体でチャレンジされた(表2)。これらの値から、飽和および目標クリーン度(研磨)における装填が計算される。ここで、目標クリーン度は、2ppmの水中炭化水素である。実験データから、Restekポリウレタンは、単独で、意図されたクリーン度まで水を精製することができない(q=0mg炭化水素/g材料)。それとは対照的に、典型的な研磨炭素は、2ppmの目標クリーン度においてq=45.7mg炭化水素/g炭素の容量を有する。
【0195】
Restekポリウレタンは、研磨炭素より有意に高い飽和容量を有する(Restekポリウレタン:qsat=3686mg炭化水素/g材料;研磨炭素:qsat=561mg炭化水素/g材料)。したがって、高容量ポリマー段階と、それに続いて研磨炭素とを有する2段階フィルターは、単独で、炭素のフィルターより長い予想寿命を有する。
【0196】
例えば、マルチバッチ適用(チャレンジ水=1000ppm水中炭化水素)において、250g研磨炭素要素の計算された寿命は、2ppmの目標濃度を突破する前に112Lである。50gのRestekポリウレタンと、それに続いて200gの研磨炭素とを使用して設計されたフィルター要素は、破過前に132Lまでの計算された生涯スコアを有する。これは、炭化水素吸収剤フィルター寿命の18%増加である。
【0197】
吸収剤段階の順序は、水中炭化水素精製システムの全寿命を増加させるために重要である。上記の実施例における段階が逆にされる場合(200gの研磨炭素およびそれに続く50gのRestekポリウレタン)、システムの寿命は破過前に80Lに減少する。これは、炭化水素吸収剤フィルター寿命の29%減少である。
【0198】
実施例D
マルチバッチ適用フィルターは、120gのCalgon Filtersorb F400炭素の高容量段階と、それに続いて60gのChemviron Carbsorb 28FBの研磨段階とを有する。フィルターは、連続的な40mL容量の2500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。2ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは64Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(50L寿命)より28%の寿命増加である。
【0199】
寿命の増加は、水精製対象の範囲において生じる。床を出ることができる最大炭化水素濃度が20ppmである場合、上記の高容量/研磨フィルターは、破過前に69Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(54L寿命)より28%の寿命増加である。
【0200】
あるいは、フィルターが120gのNorit ROW 0.8 Supra炭素の高容量段階と、それに続いて60gのChemviron Carbsorb 28FBの研磨段階とを含む場合、2ppm炭化水素含有量における破過前にフィルターは70Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(50L寿命)より40%の寿命増加である。
【0201】
実施例E
マルチバッチ適用フィルターは、70gのNorit Row 0.8 Supra炭素の高容量段階と、それに続いて70gのChemviron Carbsorb 28FB炭素の研磨段階とを有する。フィルターは、連続的な50mL容量の1000ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。5ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは80Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(59L寿命)より36%の寿命増加である。
【0202】
実施例F
マルチバッチ適用フィルターは、140gのSilcarbon K48炭素の高容量段階と、それに続いて140gのObermeier TyP Aqua S816の研磨段階とを有する。フィルターは、連続的な50mL容量の2500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。2ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは64Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(59L寿命)より8%の寿命増加である。
【0203】
実施例G
マルチバッチ適用フィルターは、30gのポリウレタンフォーム(Restek;カタログ番号22957)の高容量段階と、それに続いて60gのObermeier TyP Aqua S816の研磨段階とを有する。フィルターは、連続的な40mL容量の2500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。2ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは18Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(12L寿命)より50%の寿命増加である。
【0204】
実施例H
高容量の材料で開始するフィルター設計は、フィルターの下流部分を研磨材料で置き換えることによって増加した寿命を有することができる。例えば、フィルターは、連続的な10mL容量の1000ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体を精製するよう設計される。5ppmの炭化水素含有量での破過前に37.5g高容量材料(Norit ROW 0.8 Supra)を含むフィルターは、26Lの水を精製するであろう。この設計を、30gの高容量炭素材料と、それに続いて7.5gの研磨材料(Calgon Filtersorb F300)とを含むように変更することにより、寿命が29Lの水精製まで増加した。これは12%の寿命増加である。
【0205】
実施例I
マルチバッチ適用フィルターは、150gのポリウレタンフォーム(Restek;カタログ番号22957)の高容量段階と、それに続いて150gのNorit ROW 0.8 Supra炭素の研磨段階とを有する。フィルターは、連続的な100mL容量の2500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。10ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは131Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(106L寿命)より24%の寿命増加である。
【0206】
実施例J
マルチバッチ適用フィルターは、2.25kgのNorit ROW 0.8 Supra炭素の高容量段階と、それに続いて3.75kgのChemviron Carbsorb 28FB炭素の研磨段階とを有する。フィルターは、連続的な1L容量の1500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。1ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは3260Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(2490L寿命)より31%の寿命増加である。
【0207】
実施例K
実施例Jからのフィルターは、連続する多数の高容量材料を使用することにより、さらに強化し得る。上記のフィルター中の高容量段階は、750gのポリウレタンフォーム(Restek;カタログ番号22957)と、それに続いて1.5kgのNorit Row 0.8 Supra炭素とを含むように変更する。研磨段階は変更しない。フィルターは、連続的な1L容量の1500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。1ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは4137Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(2490L寿命)より66%の寿命増加である。高容量段階がポリウレタンフォームのみである場合、寿命は3760Lまで減少する。
【0208】
実施例L
マルチバッチ適用フィルターは、70gのCalgon Filtersorb F400炭素の高容量段階と、それに続いて70gのChemviron Carbsorb 28FB炭素の研磨段階とを有する。フィルターは、連続的な50mL容量の500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。10ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは106Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(98L寿命)より8%の寿命増加である。
【0209】
実施例M
実施例Lの高容量段階を70gのNorit ROW 0.8 Supra炭素と置き換える。研磨段階は変更しない。フィルターは、連続的な50mL容量の500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。10ppmの炭化水素含有量での破過前にフィルターは120Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(98L寿命)より22%の寿命増加である。
【0210】
実施例N
実施例Mの高容量段階を105gに増加した。研磨段階を35gに減少した。フィルターは、連続的な50mL容量の500ppmの水中炭化水素(B5ディーゼル燃料)分散体でチャレンジされる。500ppbの炭化水素含有量での破過前にフィルターは101Lの水を精製するであろう。これは、研磨材料のみを含む均等な質量フィルター(74L寿命)より42%の寿命増加である。
【0211】
したがって、水中炭化水素精製システムの実施形態が開示される。当業者は、開示されたもの以外の実施形態で本明細書に記載の精製システムを実施し得ることを理解するであろう。開示された実施形態は、限定ではなく例証の目的で提示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10