(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】電解水生成装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240502BHJP
【FI】
C02F1/461 A
(21)【出願番号】P 2023210090
(22)【出願日】2023-12-13
【審査請求日】2023-12-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591201686
【氏名又は名称】株式会社日本トリム
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】樺山 繁
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正人
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139475(JP,A)
【文献】特開2018-069188(JP,A)
【文献】特開2021-122394(JP,A)
【文献】特開2023-120215(JP,A)
【文献】特開2014-087784(JP,A)
【文献】特開2016-077675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
A61M 1/00- 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水生成装置であって、
原水の供給を制御するための給水弁と、
前記給水弁から供給された前記原水を電気分解することにより電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンク内の水位を検出するための水位検出部と、
前記給水弁及び前記電解ユニットを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、制御モードとして、
前記給水弁を開き、前記電解ユニットで生成された前記電解水を前記タンクに供給する造水モードと、
前記給水弁を閉じ、前記電解ユニットで電気分解を行なわず待機する待機モードとを含み、
前記造水モードと前記待機モードとは交互に繰り返して実行されるものであり、
前記制御部は、前記水位検出部からの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する計算部と、前記減少速度に応じて、前記造水モードから前記待機モードに移行する第1タイミングを決定する決定部と、前記第1タイミングに基づいて前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる移行部とを含む、
電解水生成装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記減少速度と予め定められた閾値とを比較することにより、前記第1タイミングを決定する、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記減少速度が小さくなるに従い、前記第1タイミングを早く設定する、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記減少速度が大きくなるに従い、前記第1タイミングを遅く設定する、請求項1に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記水位検出部は、前記水位の上限値を検出するための第1センサーと、前記水位の下限値を検出するための第2センサーとを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記移行部は、前記待機モードにおける前記第2センサーからの出力に基づいて、前記制御モードを前記待機モードから前記造水モードに移行させる、請求項5に記載の電解水生成装置。
【請求項7】
前記水位検出部は、前記上限値と前記下限値との間の中間値の前記水位を検出するための第3センサーとを含み、
前記計算部は、前記第3センサー及び前記第2センサーからの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する、請求項5に記載の電解水生成装置。
【請求項8】
前記水位検出部は、複数の前記第3センサーを含み、
前記計算部は、前記第2センサーに最も近い高さの前記第3センサー及び前記第2センサーからの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する、請求項7に記載の電解水生成装置。
【請求項9】
前記移行部は、前記造水モードにおける前記第1センサー又は第3センサーからの出力に基づいて、前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる、請求項7に記載の電解水生成装置。
【請求項10】
前記水位検出部は、前記タンクから流出する水量を検出するための第1流量計を備え、
前記計算部は、前記第1流量計からの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する、請求項1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項11】
前記水位検出部は、前記水位の上限値を検出するための第1センサーと、前記水位の下限値を検出するための第2センサーと、前記上限値と前記下限値との間の中間値の前記水位を検出するための第3センサーとを含み、
前記移行部は、前記造水モードにおける前記第1センサー又は第3センサーからの出力に基づいて、前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる、請求項1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項12】
前記電解ユニットに供給される前記原水の供給量を検出する第2流量計をさらに備え、
前記移行部は、前記第2流量計からの出力に基づいて、前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる、請求項1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項13】
前記電解ユニットには、一定の供給量で前記原水が供給され、
時間を計数するタイマーをさらに備え、
前記移行部は、前記タイマーによって計数された前記造水モードでの造水時間に基づいて、前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる、請求項1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
【請求項14】
電解水生成装置の制御方法であって、
前記電解水生成装置は、
原水の供給を制御するための給水弁と、
前記給水弁から供給された前記原水を電気分解することにより電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンク内の水位を検出するための水位検出部と、
前記給水弁及び前記電解ユニットを制御するための制御部とを備え、
前記制御方法は、
前記給水弁を開き、前記電解ユニットで生成された前記電解水を前記タンクに供給する造水モードと、
前記給水弁を閉じ、前記電解ユニットで電気分解を行なわず待機する待機モードとを含み、
前記造水モードと前記待機モードとは交互に繰り返して実行されるものであり、
前記水位検出部からの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する第1工程と、前記減少速度に応じて、前記造水モードから前記待機モードに移行する第1タイミングを決定する第2工程と、前記第1タイミングに基づいて前記造水モードから前記待機モードに移行させる第3工程とを含む、
電解水生成装置の制御方法。
【請求項15】
前記第2工程は、前記減少速度と予め定められた閾値とを比較することにより、前記第1タイミングを決定する、請求項14に記載の電解水生成装置の制御方法。
【請求項16】
前記第2工程は、前記減少速度が小さくなるに従い、前記第1タイミングを早く設定する、請求項15に記載の電解水生成装置の制御方法。
【請求項17】
前記第2工程は、前記減少速度が大きくなるに従い、前記第1タイミングを遅く設定する、請求項15に記載の電解水生成装置の制御方法。
【請求項18】
前記水位検出部は、前記水位の上限値を検出するための第1センサーと、前記水位の下限値を検出するための第2センサーとを含み、
前記第3工程は、前記待機モードにおける前記第2センサーからの出力に基づいて
、前記待機モードから前記造水モードに移行させる、請求項14ないし17のいずれかに記載の電解水生成装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電解水生成装置によって生成された電解水を用いた透析治療が注目されている。例えば、水を電気分解することによって生成された水素ガスが溶け込んだ電解水素水が、患者の酸化ストレスの低減に寄与することが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大規模な病院等においては、多数の患者に対して同時に透析治療が行なわれる。このため、電解水生成装置には、大量の電解水を蓄えるためのタンクが備えられている。
【0005】
一方、透析治療は、通常、常時行なわれることはなく、タンク内の電解水が消費されない時間帯も存在する。このような時間帯では、電解水の溶存水素濃度の過度な上昇を抑制するため、タンク-電解ユニット間での電解水の循環及び電解ユニットでの電気分解は停止され、タンク内の電解水はタンク内に留められ、電気分解が行なわれることなく待機している。
【0006】
しかしながら、待機状態の電解水から溶け込んだ水素ガスが抜けることにより、溶存水素濃度が徐々に低下する。
【0007】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下を抑制できる電解水生成装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電解水生成装置であって、
原水の供給を制御するための給水弁と、
前記給水弁から供給された前記原水を電気分解することにより電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンク内の水位を検出するための水位検出部と、
前記給水弁及び前記電解ユニットを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、制御モードとして、
前記給水弁を開き、前記電解ユニットで生成された前記電解水を前記タンクに供給する造水モードと、
前記給水弁を閉じ、前記電解ユニットで電気分解を行なわず待機する待機モードとを含み、
前記造水モードと前記待機モードとは交互に繰り返して実行されるものであり、
前記制御部は、前記水位検出部からの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する計算部と、前記減少速度に応じて、前記造水モードから前記待機モードに移行する第1タイミングを決定する決定部と、前記第1タイミングに基づいて前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる移行部とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の前記電解水生成装置は、前記タンク内の前記水位の減少速度に応じて、前記制御部が前記造水モードから前記待機モードに移行するタイミングを決定し、前記制御モードを移行させる。これにより、前記タンク内の水位が適正化され、待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の電解水生成装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の電解水生成方法の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図1の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図3の待機モードから造水モードへの移行の手順を示すフローチャートである。
【
図6】水位の減少速度と第1タイミングとの関係を示すテーブルの一例をグラフ化した図である。
【
図7】
図1の水位検出部をタンクと共に示す断面図である。
【
図8】
図7の水位検出部の変形例をタンクと共に示す断面図である。
【
図9】
図8の水位検出部の変形例をタンクと共に示す断面図である。
【
図10】
図1の電解水生成装置の変形例を示すブロック図である。
【
図11】
図1の電解水生成装置の別の変形例を示すブロック図である。
【
図12】
図1の電解水生成装置の別の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の電解水生成装置1の概略構成を示している。電解水生成装置1は、電解水を生成するための装置であり、透析液を調製するための透析液調製装置100に接続される。電解水生成装置1は、生成した電解水を透析液調製装置100に供給する。
【0012】
電解水生成装置1は、原水の供給を制御するための給水弁2と、電解水を生成するための電解ユニット3と、電解水を貯蔵するためのタンク5と、タンク5内の水位を検出するための水位検出部6と、給水弁2及び電解ユニット3等を制御するための制御部8とを備える。
【0013】
給水弁2に供給される原水には、一般的には水道水が利用されるが、その他、例えば、井戸水、地下水等を用いることができる。原水は軟水化等の前処理が施されたうえで、給水弁2に供給される。そして、給水弁2を介して、電解ユニット3に電気分解される原水が供給される。
【0014】
図2は、電解ユニット3を示している。電解ユニット3は電解槽4を含んでいる。透析液調製装置100によって調製された透析液が多人数の患者の透析に用いられる場合、
図2に示されるように、電解ユニット3は、複数の電解槽4を含むように構成されるのが望ましい。複数の電解槽4は、流路として互いに並列に接続されている。このような複数の電解槽4を同時に運転することにより、迅速に大量の電解水が生成される。
【0015】
電解槽4は、電解室40と、陽極給電体41と、陰極給電体42と、隔膜43とを含んでいる。電解室40は、隔膜43によって、陽極給電体41が配された陽極室40aと陰極給電体42が配された陰極室40bとに区分される。原水は、例えば、二股に分岐する流路(図示せず)を介して、陽極室40a及び陰極室40bに供給される。
【0016】
陽極給電体41と陰極給電体42との間に印加される電圧は、制御部8によって制御される。
【0017】
制御部8は、電解水生成装置1の各部の制御を司る。制御部8は、例えば、各種の演算処理、情報処理等を実行するCPU(Central Processing Unit)と、CPUの動作を司るプログラム及び各種の情報を記憶するメモリ等とを有している。制御部8の各種の機能は、CPU、メモリ及びプログラムによって実現される。
【0018】
制御部8は、陽極給電体41及び陰極給電体42に供給される電解電流が予め設定された所望の値となるように、陽極給電体41及び陰極給電体42に印加する電解電圧をフィードバック制御する。例えば、電解電流が過大である場合、制御部8は、上記電圧を減少させ、電解電流が過小である場合、制御部8は、上記電圧を増加させる。これにより、電解電流が適切に制御される。なお、電解電流は、例えば、陽極給電体41及び陰極給電体42に電力を供給する回路内に設けた測定部によって測定される。
【0019】
電解槽4で電気分解された電解水のうち、陰極室40bで生成された電解水は陰極水としてタンク5に送られる。一方、陽極室40aで生成された電解水は陽極水として、電解水生成装置1の外部に排出される。
【0020】
電解槽4内で水が電気分解されることにより、陽極室40aで酸素ガスが発生し、陰極室40bで水素ガスが発生する。
【0021】
陽極室40aで発生した酸素ガスは、陽極室40a内の電解水に溶け込んで、陽極水として陽極室40aから取り出され、電解水生成装置1の外部に排出される。
【0022】
陰極室40bで発生した水素ガスは、陰極室40b内の電解水に溶け込んで、陰極水として陰極室40bから取り出され、タンク5に送られる。すなわち、陰極室40bからタンク5に送られる陰極水は、陰極室40bで電気分解され、水素ガスが溶け込んだ電解水素水である。
【0023】
図1において、タンク5は、電解ユニット3から供給された電解水を貯蔵する。これにより、一度に大量の電解水を透析液調製装置100に供給することが可能となる。電解水が透析治療に用いられる場合、陰極室40bで生成された電解水がタンク5に供給される。電解水が透析治療以外の用途に用いられる場合、陽極室40aで生成された電解水がタンク5に供給されてもよい。
【0024】
タンク5には、タンク5内の水位を検出するための水位検出部6が設けられている。水位検出部6は、例えば、光学的手法又は浮力によりタンク5内の水位を検出する。本実施形態では、タンク5の外壁の一部に透光性を有する窓部が設けられ、水位検出部6として上記窓部を透過する光を用いて電解水と接触することなく水位を検出するセンサーが適用されている。これにより、タンク5内での雑菌の発生・繁殖が抑制されうる。
【0025】
水位検出部6には、センサーを用いてタンク5内の水位を直接的に検出する形態の他、タンク5内の水位を間接的に検出する形態も適用される。タンク5内の水位を間接的に検出する形態の一例としては、後述する第1流量計11を備えた形態が挙げられる。第1流量計11は、タンク5から単位時間に流出する水量を検出する。タンク5の容量は一定であるので、タンク5から単位時間に流出する水量に基づいて、タンク5内の水位が計算される。
【0026】
水位検出部6は、検出した水位に対応する信号を制御部8に送信する。制御部8は、水位検出部6から送信された信号に基づいて、タンク5内の水位を知得する。
【0027】
透析液調製装置100は、電解水生成装置1から供給された電解水に透析原剤を混合して透析液を調製するための装置である。電解水に混合される透析原剤は、液状の他、粉末状のものが適用される。電解水生成装置1を構成するタンク5は、透析液調製装置100に電解水を供給可能に接続されている。本実施形態では、タンク5と透析液調製装置100とを接続する水路9が、電解水生成装置1から延出されている。
【0028】
透析液調製装置100によって調製された透析液は、透析装置(図示せず)に送られる。透析装置は、透析液供給装置とダイアライザーとを含んでいる。透析液供給装置は、透析液調製装置100から供給された透析液をダイアライザーに送出する。ダイアライザーは、例えば、中空糸膜等の多孔質膜によって構成された透析膜を含む人工腎臓であり、透析膜を介して透析液調製装置100から供給された透析液を透析治療の患者の血液に作用させ、血液から老廃物及び水分を除去する。
【0029】
図3は、電解水生成装置1を用いた電解水生成方法である電解水生成装置1の制御方法200の手順を示している。
【0030】
制御方法200は、制御部8の制御モードとして、造水モードM1と待機モードM2とを含んでいる。造水モードM1と待機モードM2とは、電解水の消費が極めて少ない場合を除き、通常は交互に繰り返して実行される。
【0031】
造水モードM1とは、給水弁2を開き、電解ユニット3で生成された電解水をタンク5に供給し造水するモードである。電解水生成装置1の運転開始時には、まず造水モードM1が実行される。造水モードM1では、給水弁2が開かれ、電解ユニット3で電解水が生成される。生成された電解水は、タンク5に供給され、蓄えられる。
【0032】
待機モードM2とは、給水弁2を閉じ、電解ユニット3で電気分解を行なわず、かつ、タンク5内に電解水を留めて待機するモードである。患者や病院の都合上、通常、透析治療には多少の待ち時間が生ずる。待ち時間においては、電解水生成装置1は待機モードM2に移行して、待機している。
【0033】
待機モードM2において、電解水生成装置1の外部の透析液調製装置100等から発信された電解水を要求する要求信号を受信すると、水路9を介してタンク5内の電解水が透析液調製装置100に供給される。これに伴い、タンク5内の電解水が消費され、タンク5内の水位が減少する。透析治療中にあっても、電解水の消費が進行するまでの間、電解水生成装置1は待機モードM2にて、待機している。
【0034】
透析液は、透析治療の直前に調製される。一方、透析液の調製に用いられる電解水は、例えば、病院の開院時(例えば、午前中)に予め生成される。すなわち、制御部8は、当初、造水モードM1で電解水生成装置1を制御する。造水モードM1で生成された電解水は、タンク5に供給され、透析治療が開始されるまでタンク5に貯蔵される。電解水がタンク5の上限に達すると、制御部8は、電解水生成装置1の制御モードを待機モードM2に切り替えて待機させる。
【0035】
その後、長時間にわたって待機モードM2が継続すると、タンク5内の電解水の溶存水素濃度が徐々に低下する。このため、タンク5から電解水を排出し、造水モードM1を実行することにより、タンク5内の電解水の溶存水素濃度の回復が図られてもよい。この場合、タンク5から排出された電解水を電解ユニット3に戻し、電解水が電解ユニット3とタンク5との間を循環するように構成されていてもよい。
【0036】
図4は、制御部8の構成を示している。制御部8は、タンク5内の水位の減少速度を計算する計算部81と、造水モードM1から待機モードM2に移行するタイミングを決定する決定部82と、制御モードを移行させる移行部83とを含んでいる。計算部81、決定部82及び移行部83は、上述したCPU、メモリ等のハードウェアとプログラム(ソフトウェア)との協同によって実現されるが、個別のハードウェア回路によって実現されていてもよい。
【0037】
計算部81は、時間を計数する機能を備え、水位検出部6から出力された信号に基づいて、単位時間あたりのタンク5内の水位の減少、すなわち水位の減少速度を計算する。
【0038】
決定部82は、タンク5内の水位の減少速度に応じて、造水モードM1から待機モードM2に移行、すなわち、造水モードM1を終了する第1タイミングを決定する。例えば、タンク5内の水位の減少速度が遅いとき、タンク5内の電解水の溶存水素濃度が徐々に低下する。このため、決定部82は、タンク5内の水位の減少速度に基づいて電解水の溶存水素濃度を推定し、造水モードM1から待機モードM2に移行する第1タイミングを決定する。なお、造水モードM1から待機モードM2に移行する第1タイミングは、本質的には、造水モードM1を終了して待機モードM2に移行するときのタンク5内の水位に相当する。
【0039】
決定部82は、後述するように、待機モードM2から造水モードM1に移行する第2タイミングを決定する、ように構成されていてもよい。
【0040】
そして、移行部83は、決定部82が決定した第1タイミングに基づいて、電解水生成装置1の制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる。すなわち、移行部83は、給水弁2を閉じ、電解ユニット3への電解電流の供給を停止することにより、タンク5内への電解水の供給を停止させる。
【0041】
図3において、水位の減少速度は、電解水生成装置1が待機モードM2で待機している際に計算される。従って、決定部82が決定した第1タイミングに基づいて、移行部83が電解水生成装置1の制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させるのは、
図3における2回目以降のサイクルとなる。
【0042】
造水モードM1で補充される電解水は、電解ユニット3で生成された直後であって、溶存水素濃度が高い水である。従って、2回目以降のサイクルの造水モードM1では、電解ユニット3で生成された電解水がタンク5内に補充されることにより、直前の待機モードM2で低下していた電解水の溶存水素濃度が高められる。
【0043】
待機モードM2におけるタンク5内の電解水の溶存水素濃度は、タンク5内の水位の減少速度に依存する。本電解水生成装置1では、計算部81が計算したタンク5内の水位の減少速度に応じて決定部82が決定した第1タイミングに基づいて、移行部83が制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させることにより、2回目以降のサイクルでタンク5内の水位が適正化され、待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下を抑制可能となる。
【0044】
図5は、造水モードM1から待機モードM2に移行する手順を示している。同図における造水モードM1及び待機モードM2は、
図3における2回目以降のサイクルでの造水モードM1及び待機モードM2である。
【0045】
造水モードM1から待機モードM2への移行は、タンク5内の水位の減少速度を計算する第1工程S10と、造水モードM1から待機モードM2に移行するタイミングを決定する第2工程S20と、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる第3工程S30の実行により実現される。
【0046】
第1工程S10では、水位検出部6から出力される信号に基づいて、計算部81が単位時間あたりのタンク5内の水位の減少、すなわちタンク5内の水位の減少速度を計算する。
【0047】
第2工程S20では、第1工程S10で計算されたタンク5内の水位の減少速度に応じて、決定部82が造水モードM1から待機モードM2に移行する第1タイミングを決定する。
【0048】
そして、第3工程S30では、第2工程S20で決定された第1タイミングに基づいて、移行部83は、電解水生成装置1の制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる。これにより、電解水の水位がタンク5の上限に達する前であっても、電解ユニット3からタンク5内への電解水の補充が停止される。
【0049】
なお、
図5において、第1工程S10及び第2工程S20は造水モードM1中に実行されているが、制御部8の処理能力によっては、第1工程S10及び第2工程S20の一部又はすべてが造水モードM1の前に実行されてもよい。
【0050】
既に述べたように、タンク5内の電解水の溶存水素濃度は、タンク5内の水位の減少速度に依存する。本電解水生成装置1の制御方法200では、第1工程S10で計算されたタンク5内の水位の減少速度に応じて第2工程S20で決定された第1タイミングに基づいて、第3工程S30で制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させることにより、2回目以降のサイクルでタンク5内の水位が適正化され、待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下を抑制可能となる。
【0051】
電解水生成装置1において、決定部82は、タンク5内の水位の減少速度と予め定められた閾値とを比較することにより、第1タイミングを決定する、ように構成されているのが望ましい。上記閾値は、例えば、制御部8のメモリによって記憶される。閾値は、電解水の使用状況や電解水生成装置1に接続される透析液調製装置100の仕様等に応じて書き換え可能であるのが望ましい。
【0052】
例えば、水位の減少速度が上記閾値よりも小さい場合、造水モードM1から待機モードM2に移行させる第1タイミングを予め定められた基準値に対して早め、タンク5内に大量の電解水が貯蔵されないようにする。これにより、待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下が抑制される。
【0053】
一方、水位の減少速度が上記閾値よりも大きい場合、造水モードM1から待機モードM2に移行させる第1タイミングを予め定められた基準値に対して遅らせて、タンク5内の電解水が枯渇することを抑制する。
【0054】
この場合、上記閾値からの水位の減少速度の隔たりに応じて第1タイミングを決定する、ように構成されているのが望ましい。
【0055】
例えば、上記閾値からの水位の減少速度の隔たりが小さい場合、上記基準値からの第1タイミングの隔たりを小さく設定し、上記閾値からの水位の減少速度の隔たりがより大きい場合、上記基準値からの第1タイミングの隔たりを大きく設定することにより、タンク5内の水位がより一層良好に制御される。
【0056】
同様に、電解水生成装置1の制御方法200では、第2工程S2は、減少速度と予め定められた閾値とを比較することにより、第1タイミングを決定する、ように構成されているのが望ましい。
【0057】
電解水生成装置1では、決定部82は、水位の減少速度が小さくなるに従い、第1タイミングを早く設定する、ように構成されているのが望ましい。
【0058】
このような構成を実現するために、上記閾値が用いられてもよいし、水位の減少速度と第1タイミングとの関係を示すテーブルが用いられてもよい。テーブルは、例えば、制御部8のメモリによって記憶される。
【0059】
図6は、上記テーブルの一例を示している。同図のテーブルでは、水位の減少速度と第1タイミングとが比例関係(線形)にある形態が示されている。水位の減少速度と第1タイミングとが二次関数や指数関数、対数関数等の曲線で表される関係にある形態であってもよい。
【0060】
同様に、電解水生成装置1の制御方法200では、第2工程S2は、減少速度が小さくなるに従い、第1タイミングを早く設定する、ように構成されているのが望ましい。
【0061】
病院の運営上、血液透析患者が一時的に増加し、透析液の使用量が増大することもある。このような場合、タンク5内の水位の減少速度が大きくなる。そこで、電解水生成装置1では、決定部82は、水位の減少速度が大きくなるに従い、第1タイミングを遅く設定する、ように構成されていてもよい。同様に、電解水生成装置1の制御方法200では、第2工程S2は、減少速度が大きくなるに従い、第1タイミングを遅く設定する、ように構成されていてもよい。
【0062】
このような構成を実現するために、上記閾値が用いられてもよいし、水位の減少速度と第1タイミングとの関係を示すテーブルが用いられてもよい。
【0063】
図7は、水位検出部6の構成をタンク5と共に示している。
【0064】
水位検出部6は、タンク5内の水位の上限値を検出するための第1センサー61と、タンク5内の水位の下限値を検出するための第2センサー62とを含んでいる。
【0065】
第1センサー61は、タンク5の上部に配されている。第1センサー61の位置は、タンク5内の水位の上限として設定されている位置であるが、タンク5の上端部に限られない。
【0066】
図3における1回目のサイクルでの造水モードM1は、第1センサー61がタンク内での水位の上限に達した電解水を検出するまで実行される。第1センサー61が電解水を検出すると、制御部8は、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる(
図3参照)。これにより、タンク5の容量の上限まで、電解水が満たされる。
【0067】
第2センサー62は、電解水生成装置1の仕様、タンク5の容量及び電解水生成装置1に接続される透析液調製装置100の仕様にもよるが、例えば、タンク5の下部の高さに配されている。第2センサー62の位置は、タンク5内の水位の下限として設定されている位置であるが、タンク5の下端部に限られない。
【0068】
より具体的には、タンク5内の電解水が急速に消費される場合であっても、電解水が枯渇しないように、タンク5の容量及び透析液調製装置100の仕様、さらには、同時に治療される患者数等を考慮して、タンク5の内底面からの第2センサー62の高さが定められる。
【0069】
このような構成では、計算部81は、第1センサー61及び第2センサー62からの出力に基づいて、タンク5内の水位の減少速度を計算することができる。より具体的には、計算部81は、第1センサー61が水位を検出してから第2センサー62が水位を検出までの時間を計数することにより、待機モードM2におけるタンク5内の水位の減少速度を計算することができる。
【0070】
第2センサー62による水位が下限値であることの検出は、待機モードM2から造水モードM1に移行するトリガーとすることができる。すなわち、決定部82は、待機モードM2における第2センサー62からの出力に基づいて、待機モードM2から造水モードM1に移行する第2タイミングを決定する。そして、移行部83は、決定部82に決定された第2タイミングに基づいて、制御モードを待機モードM2から造水モードM1に移行させる。これにより、タンク5内の電解水の枯渇を抑制できる。
【0071】
図8は、
図7の水位検出部6の変形例である水位検出部6Aの断面図である。水位検出部6Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水位検出部6の構成が採用されうる。
【0072】
水位検出部6Aは、第3センサー63を含む点で、水位検出部6とは異なる。第3センサー63は、上限値と下限値との間の中間値の水位を検出するためのセンサーである。このため、第3センサー63は、第1センサー61と第2センサー62との間の高さに配されている。
【0073】
このような構成では、計算部81は、第3センサー63及び第2センサー62からの出力に基づいて、タンク5内の水位の減少速度を計算することができる。より具体的には、計算部81は、第3センサー63が水位を検出してから第2センサー62が水位を検出までの時間を計数することにより、待機モードM2での後半における(すなわち、より現在に近い)タンク5内の水位の減少速度を計算することができる。
【0074】
図8に示される水位検出部6Aにおいて、移行部83は、造水モードM1における第1センサー61又は第3センサー63からの出力に基づいて、制御モードを造水モードから待機モードに移行させる、ことができる。
【0075】
例えば、水位の減少速度が閾値よりも小さく、第1タイミングが早く設定させている場合、移行部83は、造水モードM1において第3センサー63が電解水の水位を検出したとき(すなわち、第3センサー63の水位まで造水したとき)、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる。これにより、タンク5内に貯蔵される電解水の量が制限され、その後の待機状態での時間が短縮され、電解水の溶存水素濃度の低下を抑制可能となる。
【0076】
一方、水位の減少速度が閾値よりも大きく、第1タイミングが遅く設定させている場合、移行部83は、造水モードM1において第1センサー61が電解水の水位を検出したとき(すなわち、第1センサー61の水位まで造水したとき)、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる。これにより、タンク5内の電解水の枯渇を抑制できる。
【0077】
図9は、
図8の水位検出部6Aの変形例である水位検出部6Bの断面図である。水位検出部6Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した水位検出部6等の構成が採用されうる。
【0078】
水位検出部6Bは、複数の第3センサー63を含む点で、水位検出部6Aとは異なる。本実施形態の水位検出部6Bでは、3個の第3センサー63a、63b、63cによって第3センサー63が構成されている。水位検出部6Bにおいて、第3センサー63の個数は、2以上であれば特に限定されない。
【0079】
水位検出部6Bでは、第3センサー63a、63b、63cのうち任意のセンサーからの出力に基づいて、タンク5内の水位の減少速度を計算することができる。
【0080】
この場合、計算部81は、第2センサー62に最も近い高さの第3センサー63c及び第2センサー62からの出力に基づいて、タンク5内の水位の減少速度を計算する、のが望ましい。これにより、計算部81は、直近でのタンク5内の水位の減少速度を計算することができる。
【0081】
水位検出部6Bによれば、電解水の水位を段階的に取得できる。これにより、同時に多人数の透析治療を行なう場合であっても、透析液を調製に用いられる電解水に不足が生ずることを抑制できる。
【0082】
また、計算部81が、複数の第3センサー63a、63b、63c及び第2センサー62からの出力に基づいて、タンク5内の水位の減少速度を計算することにより、水位の減少速度の推移が算出され、決定部82は、水位の減少速度の変化の傾向を踏まえて、第1タイミングを決定することが可能となる。
【0083】
図9に示される水位検出部6Bにおいて、移行部83は、造水モードM1における第1センサー61又は第3センサー63a、63b、63cからの出力に基づいて、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる、ことができる。
【0084】
例えば、水位の減少速度が極めて遅い場合は、移行部83は第3センサー63cからの出力に基づいて、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させることにより、タンク5内に貯蔵される電解水の量を少なくすることができる。一方、水位の減少速度が若干早い場合は、移行部83は第3センサー63aからの出力に基づいて、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させることにより、タンク5内に貯蔵される電解水の量を多くすることができる。このように、水位の減少速度すなわち、電解水の消費速度に応じて、タンク5内に貯蔵される電解水の量を段階的に調整し、待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下をより一層抑制することが可能となる。
【0085】
水位検出部6Bが適用される電解水生成装置1では、
図6に示されるテーブルは、減少速度の増加に応じて第1タイミングが段階的に増加する形態となり、各段階に第3センサー63a、63b、63cのいずれかの出力を受けたタイミングが対応する。
【0086】
図10は、
図1の電解水生成装置1の変形例である電解水生成装置1Aの構成を示すブロック図である。電解水生成装置1Aのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1の構成が採用されうる。
【0087】
電解水生成装置1Aでは、水位検出部6Cがタンク5から単位時間に流出する水量を検出するための第1流量計11を備えている。本実施形態の第1流量計11は、タンク5から透析液調製装置100に至る水路9に配されているが、このような配置に限られず、例えば、タンク5と一体に配されていてもよい。第1流量計11は、検出した流水量に対応する信号を制御部8に送信する。
【0088】
制御部8には、タンク5の諸元、特に容量に関する情報が格納されている。従って、電解水生成装置1Aでは、計算部81は、第1流量計11から入力された信号に基づいて、タンク5内の水位を計算し、その減少速度を計算することができる。このような構成では、タンク5内の水位の減少速度を計算するにあたって、
図7ないし9に示される第1センサー61ないし第3センサー63等の構成は不要となる。
【0089】
図11は、
図1の電解水生成装置1の別の変形例である電解水生成装置1Bの構成を示すブロック図である。電解水生成装置1Bのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1等の構成が採用されうる。
【0090】
電解水生成装置1Bは、電解ユニット3に供給される原水の供給量を検出するための第2流量計12をさらに備えている。本実施形態の第2流量計12は、給水弁2と電解ユニット3との間の水路に配されているが、このような配置に限られず、例えば、電解ユニット3と一体に配されていてもよい。第2流量計12は、検出した給水量に対応する信号を制御部8に送信する。
【0091】
電解水生成装置1Bにおいて、タンク5内の水位を検出するための水位検出部6としては、第1センサー61、第2センサー62、第3センサー63、63a、63b、63cの他、第1流量計11が適用されうる。
【0092】
電解水生成装置1Bにおいて、移行部83は、第2流量計12からの出力に基づいて、タンク5内の水位を計算する。そして、移行部83は、決定部82によって決定された第1タイミングに相当する水位で、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる。これにより、水位の減少速度すなわち、電解水の消費速度に応じて、タンク5内に貯蔵される電解水の量を調整し、待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下をより一層抑制することが可能となる。また、造水モードM1でタンク5内に貯蔵される電解水の量を無段階に調整可能となるので、電解水の溶存水素濃度の低下をより一層精密に抑制できる。
【0093】
電解水生成装置1Bでは、
図6に示されるテーブルにおいて、第1タイミングは電解ユニット3に供給される原水の供給量で制御される。
【0094】
なお、電解水生成装置1Bにおいて、第2流量計12は、電解ユニット3からタンク5に供給される電解水の供給量を検出するための構成であってもよい。この場合、第2流量計12は、例えば、電解ユニット3とタンク5との間に配される。
【0095】
図12は、
図1の電解水生成装置1のさらに別の変形例である電解水生成装置1Cの構成を示すブロック図である。電解水生成装置1Cのうち、以下で説明されてない部分については、上述した電解水生成装置1等の構成が採用されうる。
【0096】
電解水生成装置1Cは、時間を計数するタイマー13をさらに備えている。タイマー13には制御部8に備えられているクロック機能が適用されてもよい。タイマー13によって、造水モードM1が実行された時間、すなわち造水時間が計数される。
【0097】
電解水生成装置1Cにおいても、タンク5内の水位を検出するための水位検出部6としては、第1センサー61又は第3センサー63a、63b、63cの他、第1流量計11が適用されうる。
【0098】
電解ユニット3には、一定の供給量で原水が供給される。本実施形態では、給水弁2が一定の供給量の原水を電解ユニット3に供給する。
【0099】
電解水生成装置1Cにおいては、電解ユニット3への給水量が一定であるので、移行部83は、タイマー13によって計数された造水時間に基づいて、タンク5内の水位を計算できる。そして、移行部83は、決定部82によって決定された第1タイミングに相当する水位で、制御モードを造水モードM1から待機モードM2に移行させる。これにより、水位の減少速度すなわち、電解水の消費速度に応じて、タンク5内に貯蔵される電解水の量を調整し、待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下をより一層抑制することが可能となる。また、造水モードM1でタンク5内に貯蔵される電解水の量を無段階に調整可能となるので、電解水の溶存水素濃度の低下をより一層精密に抑制できる。
【0100】
電解水生成装置1Cでは、
図6に示されるテーブルにおいて、第1タイミングは造水モードM1が実行された時間で制御される。
【0101】
電解水生成装置1B及び1Cにおいて水位検出部6として水位検出部6Aが適用される場合、決定部82は、タンク5内の水位が第3センサー63以上となるように第1タイミングを決定する。これにより、次回のサイクルにおいて、水位の減少速度が適切に計算されうる。同様に、電解水生成装置1B及び1Cにおいて水位検出部6として水位検出部6Bが適用される場合、決定部82は、タンク5内の水位が第3センサー63c以上となるように第1タイミングを決定する。
【0102】
以上、本発明の電解水生成装置1等が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【0103】
例えば、透析液調製装置100には、逆浸透処理により浄化された電解水が供給されるように構成されているのが望ましい。このような構成を実現するための形態として、
図1において、逆浸透膜モジュールを含む逆浸透処理装置が電解水生成装置1の上流、または電解水生成装置1と透析液調製装置100との間に配されたシステムが挙げられる。また、逆浸透処理装置が電解水生成装置1の内部(例えば、電解ユニット3の上流、電解ユニット3とタンク5との間またはタンク5の下流)に組み込まれた形態であってもよい。なお、電解水生成装置1に供給される原水として逆浸透処理水が適用される場合は、上述した逆浸透処理装置は不要としてもよい。
【0104】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0105】
[本発明1]
電解水生成装置であって、
原水の供給を制御するための給水弁と、
前記給水弁から供給された前記原水を電気分解することにより電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンク内の水位を検出するための水位検出部と、
前記給水弁及び前記電解ユニットを制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、制御モードとして、
前記給水弁を開き、前記電解ユニットで生成された前記電解水を前記タンクに供給する造水モードと、
前記給水弁を閉じ、前記電解ユニットで電気分解を行なわず待機する待機モードとを含み、
前記造水モードと前記待機モードとは交互に繰り返して実行されるものであり、
前記制御部は、前記水位検出部からの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する計算部と、前記減少速度に応じて、前記造水モードから前記待機モードに移行する第1タイミングを決定する決定部と、前記第1タイミングに基づいて前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる移行部とを含む、
電解水生成装置。
[本発明2]
前記決定部は、前記減少速度と予め定められた閾値とを比較することにより、前記第1タイミングを決定する、本発明1に記載の電解水生成装置。
[本発明3]
前記決定部は、前記減少速度が小さくなるに従い、前記第1タイミングを早く設定する、本発明1に記載の電解水生成装置。
[本発明4]
前記決定部は、前記減少速度が大きくなるに従い、前記第1タイミングを遅く設定する、本発明1に記載の電解水生成装置。
[本発明5]
前記水位検出部は、前記水位の上限値を検出するための第1センサーと、前記水位の下限値を検出するための第2センサーとを含む、本発明1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明6]
前記移行部は、前記待機モードにおける前記第2センサーからの出力に基づいて、前記制御モードを前記待機モードから前記造水モードに移行させる、本発明5に記載の電解水生成装置。
[本発明7]
前記水位検出部は、前記上限値と前記下限値との間の中間値の前記水位を検出するための第3センサーとを含み、
前記計算部は、前記第3センサー及び前記第2センサーからの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する、本発明5に記載の電解水生成装置。
[本発明8]
前記水位検出部は、複数の前記第3センサーを含み、
前記計算部は、前記第2センサーに最も近い高さの前記第3センサー及び前記第2センサーからの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する、本発明7に記載の電解水生成装置。
[本発明9]
前記移行部は、前記造水モードにおける前記第1センサー又は第3センサーからの出力に基づいて、前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる、本発明7に記載の電解水生成装置。
[本発明10]
前記水位検出部は、前記タンクから流出する水量を検出するための第1流量計を備え、
前記計算部は、前記第1流量計からの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する、本発明1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明11]
前記水位検出部は、前記水位の上限値を検出するための第1センサーと、前記水位の下限値を検出するための第2センサーと、前記上限値と前記下限値との間の中間値の前記水位を検出するための第3センサーとを含み、
前記移行部は、前記造水モードにおける前記第1センサー又は第3センサーからの出力に基づいて、前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる、本発明1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明12]
前記電解ユニットに供給される前記原水の供給量を検出する第2流量計をさらに備え、
前記移行部は、前記第2流量計からの出力に基づいて、前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる、本発明1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明13]
前記電解ユニットには、一定の供給量で前記原水が供給され、
時間を計数するタイマーをさらに備え、
前記移行部は、前記タイマーによって計数された前記造水モードでの造水時間に基づいて、前記制御モードを前記造水モードから前記待機モードに移行させる、本発明1ないし4のいずれかに記載の電解水生成装置。
[本発明14]
電解水生成装置の制御方法であって、
前記電解水生成装置は、
原水の供給を制御するための給水弁と、
前記給水弁から供給された前記原水を電気分解することにより電解水を生成するための電解ユニットと、
前記電解ユニットで生成された前記電解水を貯蔵するためのタンクと、
前記タンク内の水位を検出するための水位検出部と、
前記給水弁及び前記電解ユニットを制御するための制御部とを備え、
前記制御方法は、
前記給水弁を開き、前記電解ユニットで生成された前記電解水を前記タンクに供給する造水モードと、
前記給水弁を閉じ、前記電解ユニットで電気分解を行なわず待機する待機モードとを含み、
前記造水モードと前記待機モードとは交互に繰り返して実行されるものであり、
前記水位検出部からの出力に基づいて、前記タンク内の前記水位の減少速度を計算する第1工程と、前記減少速度に応じて、前記造水モードから前記待機モードに移行する第1タイミングを決定する第2工程と、前記第1タイミングに基づいて前記造水モードから前記待機モードに移行させる第3工程とを含む、
電解水生成装置の制御方法。
[本発明15]
前記第2工程は、前記減少速度と予め定められた閾値とを比較することにより、前記第1タイミングを決定する、本発明14に記載の電解水生成装置の制御方法。
[本発明16]
前記第2工程は、前記減少速度が小さくなるに従い、前記第1タイミングを早く設定する、本発明15に記載の電解水生成装置の制御方法。
[本発明17]
前記第2工程は、前記減少速度が大きくなるに従い、前記第1タイミングを遅く設定する、本発明15に記載の電解水生成装置の制御方法。
[本発明18]
前記水位検出部は、前記水位の上限値を検出するための第1センサーと、前記水位の下限値を検出するための第2センサーとを含み、
前記第3工程は、前記待機モードにおける前記第2センサーからの出力に基づいて、前記制御モードを前記待機モードから前記造水モードに移行させる、本発明14ないし17のいずれかに記載の電解水生成装置の制御方法。
【符号の説明】
【0106】
1 :電解水生成装置
1A :電解水生成装置
1B :電解水生成装置
1C :電解水生成装置
2 :給水弁
3 :電解ユニット
5 :タンク
6 :水位検出部
6A :水位検出部
6B :水位検出部
6C :水位検出部
8 :制御部
11 :第1流量計
12 :第2流量計
13 :タイマー
61 :第1センサー
62 :第2センサー
63 :第3センサー
63a :第3センサー
63b :第3センサー
63c :第3センサー
81 :計算部
82 :決定部
83 :移行部
200 :制御方法
M1 :待機モード
M1 :造水モード
M2 :待機モード
S10 :第1工程
S20 :第2工程
S30 :第3工程
【要約】
【課題】待機状態での電解水の溶存水素濃度の低下を抑制できる電解水生成装置を提供する。
【解決手段】電解水生成装置1は、給水弁2と、電解ユニット3と、タンク5と、水位検出部6と、給水弁2及び電解ユニット3を制御するための制御部8とを備える。制御部8は、制御モードとして、給水弁2を開き、電解ユニット3で生成された電解水をタンク5に供給する造水モードと、給水弁2を閉じ、電解ユニット3で電気分解を行なわず待機する待機モードとを含む。造水モードと待機モードとは交互に繰り返して実行される。制御部6は、水位検出部6からの出力に基づいて、タンク5内の水位の減少速度を計算する計算部と、造水モードから待機モードに移行するタイミングを決定する決定部と、制御モードを造水モードから待機モードに移行させる移行部とを含む。
【選択図】
図1