(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】塗料、塗膜、積層体、及びフレキシブルフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
C09D 123/28 20060101AFI20240502BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240502BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240502BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240502BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20240502BHJP
【FI】
C09D123/28
C09D7/20
C09D5/00 D
B32B27/32 C
H01B7/08
(21)【出願番号】P 2023509044
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2022011523
(87)【国際公開番号】W WO2022202471
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2021048049
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 尚子
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-272083(JP,A)
【文献】特開2017-8189(JP,A)
【文献】特開2020-15278(JP,A)
【文献】特開2017-197651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00,101/00-201/10
B32B 27/32
H01B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸変性ポリプロピレン100質量部;及び、
(B)有機溶剤450質量部以上を含み、
上記(A)酸変性ポリプロピレンの融点は90℃以下であり;
上記(B)有機溶剤は、
(B1)芳香族炭化水素系溶剤80~99質量%;ならびに、
(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上の溶剤20~1質量%からなり;
ここで上記(B1)芳香族炭化水素系溶剤の配合割合と上記(B2)溶剤の配合割合との和は100質量%である、塗料。
【請求項2】
更に、(C)カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物0.1~20質量部を含む、請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
上記(C)カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物が、加水分解性基を有しないものである、請求項2に記載の塗料。
【請求項4】
上記(B)有機溶剤が、
(B1)芳香族炭化水素系溶剤92~99質量%;ならびに、
(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上8~1質量%からなる、請求項1~3の何れか1項に記載の塗料。
【請求項5】
上記(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上が、5g以上の水溶解度を有するか、又は水溶性である、請求項4に記載の塗料。
【請求項6】
上記(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性量が0.1~2.8質量%である、請求項1~5の何れか1項に記載の塗料。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の塗料を用いて形成された塗膜。
【請求項8】
厚みが0.05μm以上、かつ5μm未満である、請求項7に記載の塗膜。
【請求項9】
固形分として(A)酸変性ポリプロピレンを70質量%以上含む塗料を用いて形成され、
厚みが0.05μm以上、かつ5μm未満である
、請求項8に記載の塗膜。
【請求項10】
上記固形分として(A)酸変性ポリプロピレンを70質量%以上含む塗料が、
(A)酸変性ポリプロピレン100質量部;及び、
(C)カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物0.1~20質量部を含む、
請求項9に記載の塗膜。
【請求項11】
上記(C)カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物が、加水分解性基を有しないものである、請求項10に記載の塗膜。
【請求項12】
基材フィルム、および、この基材フィルムの少なくとも一方の面の上に形成された請求項7~11の何れか1項に記載の塗膜を含み、
上記塗膜は上記基材フィルムの面の上に直接形成されている積層体。
【請求項13】
上記基材フィルムが、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、又はポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムである、請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
上記基材フィルムの少なくとも一方の面の上に、上記塗膜、及び接着性樹脂層をこの順に有する、請求項12又は13に記載の積層体。
【請求項15】
上記接着性樹脂層が、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の層である、請求項14に記載の積層体。
【請求項16】
請求項12~15の何れか1項に記載の積層体を含むフレキシブルフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、塗膜、積層体、及びフレキシブルフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フレキシブルフラットケーブルは、コンピュータ、画像表示装置、携帯電話、スマートフォン、プリンター、カーナビ、及び複写機などの電子機器の配線に使用されている。フレキシブルフラットケーブルは、配列させた複数の導体を、絶縁基材フィルムの片面の上に接着性樹脂組成物層、典型的にはポリエステル系ホットメルト接着剤層を設けた絶縁接着性積層体により挟持し、被覆した構造を有するケーブルである。
【0003】
近年、フレキシブルフラットケーブルは、ミリ波レーダー、及び車載カメラなどの自動車外に設置される電子機器;炊飯器、電子ジャーポット、及び電子レンジなどの水蒸気を発生する家電製品などの高温多湿の環境が想定される用途にも使用されるようになっている。ところが、接着性樹脂組成物としてポリエステル系樹脂組成物を用いたのでは、耐湿熱性が不十分であり、高温多湿の環境下で使用されると、積層体が導体から剥がれ、甚だしくは導体が露出したりすることがあるという問題のあることが分かった。そこで、本出願人は、接着性樹脂組成物としてポリエステル系樹脂組成物に替えてポリオレフィン系樹脂組成物を用いることを提案した(例えば、国際公開第2016/181880号、及び国際公開第2018/042995号(特許文献1及び2)参照)。また、国際公開第2016/047289号、国際公開第2014/185332号、及び国際公開第2019/171709号(特許文献3~5)にも、接着性樹脂組成物として用いられる他のポリオレフィン系樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また近年、フレキシブルフラットケーブルケーブルを、より高い定格温度の規格に適合させる観点から、絶縁基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムに替えて、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムなどを用いることが検討されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層と、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルムなどとは層間接着強度が不十分という不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/181880号
【文献】国際公開第2018/042995号
【文献】国際公開第2016/047289号
【文献】国際公開第2014/185332号
【文献】国際公開第2019/171709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術にない新規な塗料、ならびに、この塗料から形成された塗膜、積層体、及びフレキシブルフラットケーブルを提供することにある。
本発明の更なる課題は、アンカーコートとして好適な塗膜を形成することができる塗料、ならびに、この塗料から形成された塗膜、積層体、及びフレキシブルフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の諸態様は以下の通りである。
[1].
(A)酸変性ポリプロピレン100質量部;及び、
(B)有機溶剤450質量部以上を含み、
上記(A)酸変性ポリプロピレンの融点は90℃以下であり;
上記(B)有機溶剤は、
(B1)芳香族炭化水素系溶剤80~99質量%;ならびに、
(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上の溶剤20~1質量%からなり;
ここで上記(B1)芳香族炭化水素系溶剤の配合割合と上記(B2)溶剤の配合割合との和は100質量%である、塗料。
[2].
更に、(C)カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物0.1~20質量部を含む、[1]項に記載の塗料。
[3].
上記(C)カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物が、加水分解性基を有しないものである、[2]項に記載の塗料。
[4].
上記(B)有機溶剤が、(B1)芳香族炭化水素系溶剤92~99質量%;ならびに、(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上8~1質量%からなる、[1]項~[3]項の何れか1項に記載の塗料。
[5].
上記(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上が、5g以上の水溶解度を有するか、又は水溶性である、[4]項に記載の塗料。
[6].
上記(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性量が0.1~2.8質量%である、[1]~[5]項の何れか1項に記載の塗料。
[7].
[1]~[6]項の何れか1項に記載の塗料を用いて形成された塗膜。
[8].
厚みが0.05μm以上、かつ5μm未満である、[7]項に記載の塗膜。
[9].
固形分として(A)酸変性ポリプロピレンを70質量%以上含む塗料を用いて形成され、
厚みが0.05μm以上、かつ5μm未満である塗膜。
[10].
上記固形分として(A)酸変性ポリプロピレンを70質量%以上含む塗料が、
(A)酸変性ポリプロピレン100質量部;及び、
(C)カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物0.1~20質量部を含む、[9]項に記載の塗膜。
[11].
上記(C)カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物が、加水分解性基を有しないものである、[10]項に記載の塗膜。
[12].
基材フィルム、および、この基材フィルムの少なくとも一方の面の上に形成された[7]~[11]項の何れか1項に記載の塗膜を含み、
上記塗膜は上記基材フィルムの面の上に直接形成されている積層体。
[13].
上記基材フィルムが、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、又はポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムである、[12]項に記載の積層体。
[14].
上記基材フィルムの少なくとも一方の面の上に、上記塗膜、及び接着性樹脂層をこの順に有する、[12]項又は[13]項に記載の積層体。
[15].
上記接着性樹脂層が、ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の層である、[14]項に記載の積層体。
[16].
[12]~[15]項の何れか1項に記載の積層体を含むフレキシブルフラットケーブル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来技術にない新規な塗料、ならびに、この塗料から形成された塗膜、積層体、及びフレキシブルフラットケーブルが提供される。本発明の好ましい塗料は、更に貯蔵安定性に優れるものであり得る。本発明の好ましい塗膜は、ポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムの何れに対しても優れた接着強度を発現し得る。本発明の好ましい塗膜は、更に、ポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムの何れに対しても、高温高湿環境下における良好な接着強度を発現し得る。
本発明の塗料は、アンカーコートを形成するための塗料として好適であり得る。本発明の好ましい塗料は、特に、フレキシブルフラットケーブルケーブルのポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層とポリエチレンナフタレート樹脂フィルムなどとの層間接着強度を高めるためのアンカーコートを形成するための塗料として、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のフレキシブルフラットケーブルの一実施形態を示す断面の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「樹脂」の用語は、2種以上の樹脂を含む樹脂混合物や、樹脂以外の成分を含む樹脂組成物をも包含する用語として使用する。
【0011】
本明細書において「フィルム」の用語は、「シート」と相互交換的に又は相互置換可能に使用する。本明細書において、「フィルム」及び「シート」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできるものに使用する。「板」の用語は、工業的にロール状に巻き取ることのできないものに使用する。また本明細書において、ある層と他の層とを順に積層することは、それらの層を直接積層すること、及び、それらの層の間にアンカーコートなどの別の層を1層以上介在させて積層することの両方を含む。
【0012】
本明細書において数値範囲に係る「以上」の用語は、ある数値又はある数値超の意味で使用する。例えば、20%以上は、20%又は20%超を意味する。数値範囲に係る「以下」の用語は、ある数値又はある数値未満の意味で使用する。例えば、20%以下は、20%又は20%未満を意味する。また数値範囲に係る「~」の記号は、ある数値、ある数値超かつ他のある数値未満、又は他のある数値の意味で使用する。ここで、他のある数値は、ある数値よりも大きい数値とする。例えば、10~90%は、10%、10%超かつ90%未満、又は90%を意味する。更に、数値範囲の上限と下限とは、任意に組み合わせることができるものとし、任意に組み合わせた実施形態が読み取れるものとする。例えば、ある特性の数値範囲に係る「通常10%以上、好ましくは20%以上である。一方、通常40%以下、好ましくは30%以下である。」や「通常10~40%、好ましくは20~30%である。」という記載から、そのある特性の数値範囲は、一実施形態において10~40%、20~30%、10~30%、又は20~40%であることが読み取れるものとする。
【0013】
実施例以外において、又は別段に指定されていない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用されるすべての数値は、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値は、有効数字に照らして、及び通常の丸め手法を適用することにより解釈されるべきである。
【0014】
本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、平行、直交、及び垂直などの用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。
【0015】
1.塗料
本発明の塗料は、(A)酸変性ポリプロピレンを含む。本発明の塗料は、一実施形態において、(A)酸変性ポリプロピレン、及び(B)有機溶剤を含む。該成分(B)有機溶剤は、好ましい一実施形態において、(B1)芳香族炭化水素系溶剤、ならびに(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上からなる。別の好ましい一実施形態において、本発明の塗料は、(A)酸変性ポリプロピレンと、(B1)芳香族炭化水素系溶剤、ならびに(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上からなる(B)有機溶剤とを含み、この(B)有機溶剤以外の有機溶剤を含まないものであってよい。
本発明の塗料は、他の一実施形態において、固形分として(A)酸変性ポリプロピレンを70質量%以上含む。好ましい一実施形態において、本発明の塗料は、(A)酸変性ポリプロピレンと、(B1)芳香族炭化水素系溶剤、ならびに(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上からなる(B)有機溶剤とを含み、かつ固形分として(A)酸変性ポリプロピレンを70質量%以上含む。
本発明の塗料は、好ましい一実施形態において、更に(C)硬化剤(好ましくはカルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物であってよい)を含む。好ましい一実施形態において、本発明の塗料は、(A)酸変性ポリプロピレンと、(B1)芳香族炭化水素系溶剤、ならびに(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上からなる(B)有機溶剤と、(C)硬化剤(好ましくはカルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物であってよい)を含む。また別の好ましい一実施形態において、本発明の塗料は、(A)酸変性ポリプロピレンと、(B1)芳香族炭化水素系溶剤、ならびに(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上からなる(B)有機溶剤と、(C)硬化剤(好ましくはカルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物であってよい)を含み、かつ固形分として(A)酸変性ポリプロピレンを70質量%以上含む。以下、各成分について説明する。
【0016】
(A)酸変性ポリプロピレン
本発明の塗料は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを含む。上記成分(A)酸変性ポリプロピレンは、不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体が共重合、通常は、グラフト共重合(以下、「酸変性」ということがある。)されているポリプロピレン系樹脂である。上記成分(A)酸変性ポリプロピレンは、不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体が共重合されていることから、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムの何れに対しても優れた接着強度を発現させる働きをする。また上記成分(A)酸変性ポリプロピレンは、ポリプロピレン系樹脂であることから、ポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層に対して優れた接着強度を発現させる働きをする。
【0017】
上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの融点は、塗料を調製する際の溶解性の観点、及び塗膜の高温高湿環境下における接着強度の観点から適宜選択する。上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの融点は、塗料を調製する際の溶解性の観点から、通常90℃以下、好ましくは85℃以下、より好ましくは82℃以下であってよい。一方、その融点は、塗膜の高温高湿環境下における接着強度の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは68℃以上、更により好ましくは70℃以上であってよい。
【0018】
本明細書において(実施例も含めて)、融点は、JIS K7121-1987に準拠し、示差走査熱量測定装置(DSC測定装置)を使用し、30℃で5分間保持した後、20℃/分で240℃まで昇温し、240℃で5分間保持した後、-10℃/分で-50℃まで降温し、-50℃で5分間保持した後、10℃/分で240℃まで昇温するプログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程で測定される融解曲線)から算出される。このとき上記融点は、上記セカンド融解曲線に現れる融解ピークのピークトップ温度である。なお融解ピークが2つ以上観察されたときは、ピークトップ高さが最大の融解ピークのピークトップ温度を融点とする。
【0019】
上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性量(酸変性ポリプロピレンの総質量100質量%に対する、共重合されている不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体に由来する構造単位の含有量)は、共重合されている不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸誘導体の種類、及び塗料が含む他の成分の種類を勘案し、塗膜の接着強度、及び塗料の貯蔵安定性の観点から適宜決定され得る。典型的には、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性量は、通常0.1質量%以上5.0質量%以下、好ましくは0.1質量%以上3.5質量%以下、0.1質量%以上3.0質量%以下、0.5質量%以上5.0質量%以下、0.5質量%以上3.5質量%以下、0.5質量%以上3.0質量%以下、1.0質量%以上5.0質量%以下、1.0質量%以上3.5質量%以下、または1.0質量%以上3.0質量%以下であってよい。上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性量は、共重合されている不飽和カルボン酸誘導体が無水マレイン酸であり、上記成分(C)硬化剤として1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を含む場合には、塗膜の接着強度の観点から、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であってよい。一方、この場合の上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性量は、塗料の貯蔵安定性の観点から、通常5.0質量%以下、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは2.8質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下であってよい。なお上記成分(A)酸変性ポリプロピレンが2種以上の酸変性ポリプロピレン系樹脂の混合物である場合には、混合物としての酸変性量が上述の範囲となるようにすればよい。また、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの1種または混合物は、少量(通常50質量%未満、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下)であれば、酸変性されていないポリプロピレン系樹脂(酸変性量0質量%)と混合されていてよい。この場合にも、混合物としての酸変性量が上述の範囲となるようにすればよい。
【0020】
上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性量は、13C-NMRスペクトルを使用して求めることができる。13C-NMRスペクトルは、例えば、核磁気共鳴装置を使用し、以下の条件で測定することができる。
試料濃度:60mg/NMR溶媒0.6mL
NMR溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン/ベンゼン-d6(90体積%/10体積%)の混合溶剤
測定温度:130℃
パルス幅:45°(5.0μ秒)
繰り返し時間:4秒
【0021】
上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを生産する方法は、特に制限されず、公知の方法で生産することができる。上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを生産する方法としては、例えば、(p)ポリプロピレン系樹脂、(q)不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上、及び(r)有機過酸化物を含む樹脂組成物を、溶融混練し、上記成分(p)に上記成分(q)をグラフトさせることにより、生産する方法をあげることができる。このとき上記溶融混練は、上記成分(q)及び上記成分(r)が完全に反応し、生産される上記成分(A)酸変性ポリプロピレン中に未反応のまま残存しないようにする観点から、好ましくは上記成分(r)の1分半減期温度以上の温度で1分間以上、より好ましくは上記成分(r)の1分半減期温度以上の温度で2分間以上行うことができる。ここで、1分間半減期温度とは、半減期が1分間になる温度であり、すなわち、この温度で上記(r)中の-O-O-結合を分解させたとき、該結合の現在濃度が初期濃度の半分になるのに要する時間が1分間であることを意味する。
【0022】
上記成分(p)ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと他の少量のα-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンなど)との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む)などをあげることができる。
【0023】
上記成分(p)ポリプロピレン系樹脂の融点は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの融点を上述の好ましい範囲にする観点から、好ましくは60~90℃、より好ましくは68~90℃または68~85℃、更により好ましくは70~85℃または70~82℃であってよい。このようなポリプロピレン系樹脂は、プロピレン連鎖の立体規則性が低い(mm分率が通常50~80モル%程度)か、コモノマーとしてα-オレフィンが比較的多く(α-オレフィンの種類にもよるが、通常5~35モル%程度)ランダム共重合されているか、プロピレンの異常挿入(2-1挿入や1-3挿入)を比較的多く(通常5~35モル%程度)含んでいるか、又はこれらの組み合わせの構造を有していてよい。融点の定義、及び測定方法は上述した。
【0024】
上記成分(p)ポリプロピレン系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0025】
上記成分(q)の不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸などをあげることができる。上記成分(q)の不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、マレイン酸モノエステル、イタコン酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルなどの不飽和多価カルボン酸のエステルであって1個以上のカルボキシル基を有する化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び無水フマル酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル、及びフマル酸ジエステルなどの不飽和カルボン酸ジエステル;アクリル酸メチルなどのアクリル酸アルキル;及び、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸アルキルなどをあげることができる。上記成分(q)の不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上としては、塗膜の接着強度の観点から、不飽和カルボン酸、不飽和多価カルボン酸のエステルであって1個以上のカルボキシル基を有する化合物、及び不飽和カルボン酸の酸無水物が好ましい。不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物がより好ましく、無水マレイン酸が更に好ましい。
【0026】
上記成分(q)の不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0027】
上記成分(q)の不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上の配合量は、溶融混錬中に上記成分(q)が完全に反応し、生産される上記成分(A)酸変性ポリプロピレン中に未反応のまま残存しないようにする観点、及び上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性量を上述の好ましい範囲にする観点から、適宜決定することができる。上記成分(q)の不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上の配合量は、上記成分(p)ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、通常0.1~5質量部、好ましくは0.5~3.5質量部、より好ましくは1~2.8質量部、更に好ましくは1.5~2.5質量部であってよい。
【0028】
上記成分(r)有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、及びtert-ブチルクミルパーオキサイドなどをあげることができる。上記成分(r)有機過酸化物としては、接着強度の観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3が好ましい。
【0029】
上記成分(r)有機過酸化物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
上記成分(r)有機過酸化物の配合量は、上記成分(q)及び上記成分(r)が完全に反応し、生産される上記成分(A)酸変性ポリプロピレン中に未反応のまま残存しないようにする観点、及び上記成分(p)ポリプロピレン系樹脂の分子量低下を抑制する観点から、適宜決定することができる。上記成分(r)有機過酸化物の配合量は、上記成分(p)ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、通常0.05~1.5質量部、好ましくは0.2~1.3質量部、より好ましくは0.5~1.0質量部であってよい。
【0031】
本発明の塗料は、他の一実施形態において、固形分として上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上含むものであってよい。このような塗料を用いることにより、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂フィルム、及びポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層の何れに対しても優れた接着強度を発現する塗膜を形成することができる。
【0032】
(B)有機溶剤
本発明の塗料は、一実施形態において、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンに加えて上記成分(B)有機溶剤を含む。上記成分(B)有機溶剤は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの溶解に寄与するものであれば、特に制限されない。上記成分(B)有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、脂環族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、及びこれらの溶剤の水素原子の少なくとも1個が塩素原子などのハロゲン原子に置換されたハロゲン系溶剤などをあげることができる。
【0033】
上記成分(B)有機溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0034】
上記成分(B)有機溶剤は、典型的な一実施形態において、(B1)芳香族炭化水素系溶剤、ならびに、(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤、及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上(以下、「エステル系溶剤等」と略すことがある。)からなるものであってよい。好ましい一実施形態において、本発明に係る塗料は、上記成分(B)有機溶剤中の上記(B1)および(B2)以外の有機溶剤の含有量が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0質量%(すなわち、上記成分(B)有機溶剤が上記(B1)および(B2)以外の有機溶剤を全く含まない)であってよい。
【0035】
上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを溶解させることはできるが、貯蔵安定性が低い(容易にゲル化が起こる)という不都合があった。また上記成分(B2)エステル系溶剤等は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンをほとんど溶解させることができない。即ち、上記成分(B2)エステル系溶剤等は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの貧溶剤である。塗料の貯蔵安定性を高めるためには、良溶剤を使用するのが技術常識であるところ、少量の貧溶剤を含ませることにより、貯蔵安定性を高めることができた(上述の不都合を解決できた)ことは、驚くべきことである。
【0036】
理論に拘束される意図はないが、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの酸変性されている部分は、上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤との相性が低く、そのため酸変性されている部分同士が集まって相互作用が高まり、ゲル化が促進されうる。ここに少量の上記成分(B2)エステル系溶剤等を加えると、上記成分(B2)の有するエステル基、ケトン基、及び水酸基が上記成分(A)の酸変性されている部分周辺に集まり、酸変性されている部分同士の距離を広げてゲル化を抑制することができると考察している。
【0037】
上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤は、芳香環を有する炭化水素系溶剤である。上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン、オルソキシレン、及びベンゼンなどをあげることができる。これらの中で、上記成分(B1)としては、塗料を調製する際の上記成分(A)酸変性ポリプロピレンの溶解性、及び塗料の貯蔵安定性の観点から、芳香環を有する炭化水素系溶剤であってエステル基、ケトン基、及び水酸基(アルコール性水酸基とフェノール性水酸基の両方を含む)のいずれも有しないものが好ましく、トルエン、キシレン、及びオルソキシレンがより好ましく、トルエンが更に好ましい。
【0038】
上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0039】
上記成分(B2)のエステル系溶剤は、1分子中に1個以上のエステル基を有する脂肪族(芳香環を有しない)炭化水素化合物であって、標準状態(温度25℃、圧力100KPa。以下、同じ)で液体の化合物である。上記エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸1-メチルエチル、酢酸n-ブチル、酢酸2-メチルプロピル、酢酸1-メチルプロピル、及び酢酸tert-ブチルなどの酢酸エステル;並びに、乳酸メチル(2-ヒドロキシプロピオン酸メチル)、乳酸エチル(2-ヒドロキシプロピオン酸エチル)、及び乳酸ブチル(2-ヒドロキシプロピオン酸n-ブチル)などの乳酸エステルなどをあげることができる。
【0040】
上記成分(B2)のケトン系溶剤は、1分子中に1個以上のケトン基を有する脂肪族(芳香環を有しない)炭化水素化合物であって、標準状態で液体の化合物である。上記ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、及びジアセトンアルコールなどをあげることができる。
【0041】
上記成分(B2)のアルコール系溶剤は、1分子中に1個以上のアルコール性水酸基を有する脂肪族(芳香環を有しない)炭化水素化合物であって、標準状態で液体の化合物である。上記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブチルアルコール)、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどをあげることができる。
【0042】
なお、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアルコール性水酸基を有するエステル系溶剤、及びジアセトンアルコールなどのアルコール性水酸基を有するケトン系溶剤は、アルコール系溶剤にも分類し得る化合物である。
【0043】
上記成分(B2)エステル系溶剤等の水溶解度は、塗料の貯蔵安定性の観点から、好ましくは5g以上、より好ましくは8g以上であってよい。上記成分(B2)エステル系溶剤等は、塗料の貯蔵安定性の観点から、水溶性であってよい。ここで水溶解度とは、温度20℃の純水100mLに溶解する(混合液が均一な外観を維持し得る)質量(単位:g)である。また水溶性とは、任意の割合で温度20℃の純水と混合し得る(混合液が均一な外観を維持する)ことを意味する。このような上記成分(B2)エステル系溶剤等としては、例えば、酢酸メチル(水溶解度24.4g)、酢酸エチル(水溶解度8.3g)、アセトン(水溶性)、メチルエチルケトン(水溶解度27.5g)、メタノール(水溶性)、エタノール(水溶性)、1-プロパノール(水溶性)、2-プロパノール(水溶性)、1-ブタノール(水溶解度7.7g)、2-メチル-1-プロパノール(水溶解度10g)、2-ブタノール(水溶解度26g)、2-メチル-2-プロパノール(水溶性)、1,3-ブタンジオール(水溶性)、及び1,4-ブタンジオール(水溶性)などをあげることができる。
【0044】
上記成分(B2)エステル系溶剤等としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0045】
上記成分(B)有機溶剤が、上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤、及び、上記成分(B2)エステル系溶剤等からなるものである実施形態において、上記成分(B)有機溶剤中の上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤の配合割合は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを溶解させる観点、及び塗料の貯蔵安定性の観点から適宜決定することができる。上記成分(B)有機溶剤中の上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤の配合割合は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを溶解させる観点から、上記成分(B1)の配合割合と上記成分(B2)の配合割合との和を100質量%として、通常80質量%以上、好ましくは86質量%以上、より好ましくは92質量%以上であってよい。即ち、上記成分(B)有機溶剤中の上記成分(B2)エステル系溶剤等の配合割合は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを溶解させる観点から、通常20質量%以下、好ましくは14質量%以下、より好ましくは8質量%以下であってよい。一方、上記成分(B)有機溶剤中の上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤の配合割合は、塗料の貯蔵安定性の観点から、通常99質量%以下、好ましくは98質量%以下であってよい。即ち、上記成分(B)有機溶剤中の上記成分(B2)エステル系溶剤等の配合割合は、塗料の貯蔵安定性の観点から、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上であってよい。
【0046】
上記成分(B)有機溶剤の配合量は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを溶解させる観点、塗料の貯蔵安定性の観点、厚みの薄い塗膜を形成する際の塗工性の観点、及び塗膜を形成する際の乾燥工程における作業性の観点から適宜決定することができる。上記成分(B)有機溶剤の配合量は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを溶解させる観点、塗料の貯蔵安定性の観点、及び厚みの薄い塗膜を形成する際の塗工性の観点から、上記成分(A)100質量部に対して、通常450質量部以上、好ましくは500質量部以上、より好ましくは550質量部以上であってよい。一方、この配合量は、塗膜を形成する際の乾燥工程における作業性の観点から、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1200質量部以下、更に好ましくは800質量部以下であってよい。
【0047】
(C)硬化剤
本発明の塗料は、一実施形態において、上記成分(C)硬化剤を含む。上記成分(C)硬化剤は、カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基を1分子中に2個以上有する化合物である。上記成分(C)硬化剤は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンがカルボキシル基を有するものである場合に、上記成分(A)中のカルボキシル基と化学結合を形成し、塗膜に適度な硬度を付与し、高温高湿環境下における塗膜の接着強度の低下を抑制する働きをする。つまり、この実施形態は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレンがカルボキシル基を有するものや無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物で変性されたものである場合に、特に有効である。
【0048】
上記カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、及びアミノ基などをあげることができる。これらの中で、上記カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基としては、塗料の貯蔵性、及び塗膜の接着強度の観点から、エポキシ基、及びイソシアネート基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。
【0049】
上記成分(C)硬化剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン、ビスフェノールA-エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリジジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物をあげることができる。
【0050】
また上記成分(C)硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びメチレンビス-4-シクロヘキシルイソシアネートなどの1分子中に2個のイソシアネート基を有する化合物;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体などの1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート;並びに、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などの1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物をあげることができる。
【0051】
上記成分(C)硬化剤は、高温高湿環境下における塗膜の接着強度の観点から、加水分解性基を有しないものが好ましい。上記加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、及びイソプロポキシ基などのアルコキシ基;アセトキシ基などのアシルオキシ基;並びに、クロロ基などのハロゲン基などをあげることができる。
【0052】
上記成分(C)硬化剤が、1分子中に有する上記カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基の数は、官能基の種類を勘案し、塗料の貯蔵安定性の観点、高温高湿環境下における塗膜の接着強度の低下を抑制する観点、及び塗膜の高硬度化を適度な範囲に止める観点から適宜決定することができる。上記成分(C)硬化剤が、1分子中に有する上記カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基の数は、該官能基がエポキシ基である場合には、通常2~20個、好ましくは3~12個であってよい。上記成分(C)硬化剤が、1分子中に有する上記カルボキシル基と化学結合を形成し得る官能基の数は、該官能基がイソシアネート基である場合には、通常2~20個、好ましくは3~12個であってよい。
【0053】
上記成分(C)硬化剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0054】
上記成分(C)硬化剤の配合量は、その種類を勘案し、硬化剤としての使用効果を確実に得る観点、塗膜の高硬度化を適度な範囲に止める観点、及び上記成分(C)を混合後、塗料を塗工するまでの間にゲル化が発生しないようにする観点から適宜決定することができる。上記成分(C)硬化剤の配合量は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレン100質量部に対して、硬化剤としての使用効果を確実に得る観点から、通常0.1質量部以上、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であってよい。一方、この配合量は、塗膜の高硬度化を適度な範囲に止める観点、及び上記成分(C)硬化剤を混合後、塗料を塗工するまでの間にゲル化が発生しないようにする観点から、通常20質量部以下、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下であってよい。
【0055】
本発明の塗料には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、上記成分(A)酸変性ポリプロピレン、上記成分(B)有機溶剤、及び上記成分(C)硬化剤以外の任意成分を更に含ませることができる。該任意成分としては、例えば、上記成分(A)酸変性ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、及び樹脂フィラー;並びに、滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤などの添加剤などをあげることができる。一実施形態において、本発明の塗料は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレン、上記成分(B)有機溶剤、及び上記成分(C)硬化剤以外の任意成分を含まない。他の一実施形態において、本発明の塗料は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、及び樹脂フィラー;並びに、滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤から選択されるいずれか1種または複数種の添加剤を含まない。
【0056】
上記成分(A)酸変性ポリプロピレン以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、及びメタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキル;並びに、酢酸ビニルなどのコモノマーとエチレンとの共重合体などをあげることができる。
【0057】
上記任意成分としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。上記任意成分の配合量は、上記成分(A)酸変性ポリプロピレン100質量部に対して、通常0質量部以上20質量部以下、好ましくは0質量部以上10質量部以下、あるいは0.01~10質量部程度であってよい。
【0058】
本発明の塗料は、これらの成分を、混合攪拌することにより得ることができる。上記成分(C)硬化剤を用いる実施形態において、本発明の塗料は、上記成分(C)以外の成分を混合攪拌した後、塗料の塗工を行う直前に、上記成分(C)硬化剤を混合攪拌し、得ることが好ましい。塗料を塗工するまでの間にゲル化が発生するなどのトラブルを抑止することができる。
【0059】
2.塗膜
本発明の塗膜は、本発明の塗料を用いて形成される。上記項目1にて説明されたいずれの実施形態の塗料も、本発明の塗膜を形成するために使用され得る。本発明の塗膜は、一実施形態において、上記成分(A)酸変性ポリプロピレン、及び上記成分(B)有機溶剤を含み、ここで上記成分(B)有機溶剤は、上記成分(B1)芳香族炭化水素系溶剤、ならびに、上記成分(B2)エステル系溶剤、ケトン系溶剤及びアルコール系溶剤からなる群から選択される1種以上からなる塗料を用いて形成される。本発明の塗膜は、他の一実施形態において、固形分として上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを70質量%以上含む塗料(すなわち、塗料に含まれる固形分の総質量の70質量%以上が酸変性ポリプロピレンである塗料)を用いて形成される。更なる他の一実施形態において、本発明の塗膜は、固形分として上記成分(A)酸変性ポリプロピレンを80質量%以上含む塗料を用いて形成される。
【0060】
本発明の塗膜は、本発明の塗料を用い、任意の基体の面の上に形成される。本発明の塗膜は、典型的な一実施形態において、本発明の塗料を用い、任意の基体の面の上に直接形成される。本発明の塗料については、「1.塗料」において上述した。上記基体については、「3.積層体」において後述する。
【0061】
本発明の塗料を用い、任意の基体の面の上に本発明の塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。上記方法としては、例えば、ロッドコート、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、キスリバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、溶液キャスト、及びダイコートなどの方法をあげることができる。上記基体として基材フィルムを用いる場合には、ロール・トゥ・ロールの方法で生産性良く塗料を塗布する観点から、例えば、ロッドコート、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、キスリバースコート、及びダイコートなどの方法が好ましい。
【0062】
本発明の塗膜の厚みは、用途を勘案し、接着強度の観点、及び塗膜を形成する際の生産性の観点から適宜決定する。本発明の塗膜の厚みは、通常0.05~30μm、好ましくは0.05~10μm、0.05~5μm、0.1~30μm、0.1~10μm、または0.1~5μmであってよい。
【0063】
本発明の塗膜の厚みは、塗膜をアンカーコートとして用いる場合には、特にポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層とポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、又はポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムなどとの層間接着強度を高めるためのアンカーコートとして用いる場合には、接着強度の観点から、通常5μm未満、好ましくは4μm以下、より好ましくは2μm以下、更に好ましくは1.5μm以下であってよい。一方、このような場合、塗膜を形成する際の生産性の観点から、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上であってよい。
【0064】
理論に拘束される意図はないが、塗膜をアンカーコートとして用いる場合に、塗膜の厚みが薄い(上述の範囲である)と、ポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層とポリエチレンナフタレート樹脂フィルム等とが一体化し、層間接着強度が高まると考察している。また両者を一体化させる観点から、塗膜の厚みは高度に均一であることが好ましく、従って、溶融押出製膜法よりも塗料を塗工して形成する方法の方が好ましいと考察している。
【0065】
3.積層体
本発明の積層体は、任意の基体、および、この基体の面の上に形成された本発明の塗膜を含む。上記項目2にて説明されたいずれの実施形態の塗膜も、本発明の積層体を形成するために使用され得る。本発明の積層体は、一実施形態において、任意の基体としての基材フィルムの少なくとも一方の面の上に、通常は一方の面の上に、本発明の塗膜を有する。本発明の積層体は、典型的な一実施形態において、任意の基体の面の上に本発明の塗膜を有し、該塗膜は上記基体の面の上に直接形成されている。本発明の塗膜、及び上記基体の面の上に本発明の塗膜を形成する方法については、「2.塗膜」において上述した。
【0066】
上記基体としては、例えば、樹脂フィルム等の基材フィルム、樹脂板、ガラスフィルム、ガラス板、金属箔、金属板、任意の形状を有する樹脂製、ガラス製、又は金属製の成形体などをあげることができる。
【0067】
上記基材フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルムなどの芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、及びアセチルセルロースブチレートなどのセルロース系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリフッ化ビニリデンなどの含弗素系樹脂;その他、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォンなどの任意の樹脂フィルムをあげることができる。これらのフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらの1種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
【0068】
本発明の積層体をフレキシブルフラットケーブルに用いる場合には、上記基材フィルムとしてはポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム(典型的には芳香族四塩基酸またはその誘導体と芳香族ポリアミンとの重縮合物)、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムが好ましい。本発明の積層体を定格温度の高いフレキシブルフラットケーブルに用いる場合には、上記基材フィルムとしてはポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムが好ましく、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムがより好ましい。
【0069】
上記基材フィルムの厚みは、本発明の積層体の用途を勘案し、要求諸特性を考慮して適宜決定することができる。本発明の積層体をフレキシブルフラットケーブルの絶縁接着性積層体として用いる場合には、上記基材フィルムの厚みは、フレキシブルフラットケーブルのフレキシブル性を担保する観点、フレキシブルフラットケーブルの強度の観点、及びフレキシブルフラットケーブルを生産する際の作業性の観点から適宜決定することができる。
【0070】
本発明の積層体をフレキシブルフラットケーブルの絶縁接着性積層体として用いる場合には、上記基材フィルムの厚みは、フレキシブルフラットケーブルの強度の観点、及びフレキシブルフラットケーブルを生産する際の作業性の観点から、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であってよい。一方、この場合の上記基材フィルムの厚みは、フレキシブルフラットケーブルのフレキシブル性を担保する観点から、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であってよい。
【0071】
本発明の積層体をフレキシブルフラットケーブルの補強テープ(フレキシブルフラットケーブルの導体端末に貼合され、ケーブルの導体端末を電子機器にコネクター接続できるように補強するためのテープ)として用いる場合には、上記基材フィルムの厚みは、コネクター接続に好適な剛性と強度を付与する観点、及び補強テープをコネクター接続に好適な大きさ、形状に切断する際の加工性の観点から適宜決定することができる。本発明の積層体をフレキシブルフラットケーブルの補強テープとして用いる場合には、上記基材フィルムの厚みは、コネクター接続に好適な剛性と強度を付与する観点から、通常100μm以上、好ましくは125μm以上、より好ましくは150μm以上であってよい。一方、この場合の上記基材フィルムの厚みは、補強テープをコネクター接続に好適な大きさ、形状に切断する際の加工性の観点から、通常500μm以下、好ましくは250μm以下であってよい。
【0072】
本発明の積層体をフレキシブルフラットケーブルの絶縁接着性積層体として用いる場合において、本発明の積層体は、上記基材フィルム、この基材フィルムの一方の面の上に形成された本発明の塗膜を含み、更に、該塗膜の面の上に形成された接着性樹脂の層、好ましくはホットメルト接着剤の層、より好ましくは難燃性ホットメルト接着剤の層を含むものであってよい。ホットメルト接着剤の層または難燃性ホットメルト接着剤の層の厚みは、特に限定されないが、通常1μm~300μmであってよく、好ましくは2μm~200μmであってよい。
該ホットメルト接着剤としては、公知のホットメルト接着剤、例えば、ポリエステル系ホットメルト接着剤(熱可塑性ポリエステル系樹脂)やポリオレフィン系ホットメルト接着剤(熱可塑性ポリオレフィン系樹脂)などを用いることができる。該難燃性ホットメルト接着剤としては、公知の難燃性ホットメルト接着剤、例えば、難燃性ポリエステル系ホットメルト接着剤(熱可塑性ポリエステル系樹脂と難燃剤を含む組成物)や難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤(熱可塑性ポリオレフィン系樹脂と難燃剤を含む組成物)などを用いることができる。フレキシブルフラットケーブルが、高温多湿の環境が想定される用途で使用される場合には、上記ポリオレフィン系ホットメルト接着剤、又は上記難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤が好ましい。
これらの接着剤の好ましいものとしては、特に限定されないが、例えば、国際公開2016/181880号に記載されている接着性樹脂組成物である「(A)酸変性ポリプロピレン系樹脂20~70質量%;(B)ポリプロピレン系樹脂20~60質量%;及び(C)エチレンと酢酸ビニル、メタクリル酸アルキル、及びアクリル酸アルキルからなる群から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体2~25質量%を含み、ここで上記成分(A)、上記成分(B)及び上記成分(C)の和は100質量%である、接着性樹脂組成物。」や、国際公開2018/042995号に記載されている樹脂組成物である「(A)酸変性ポリプロピレン系樹脂55~85質量%;及び、(B)エチレンと、酢酸ビニル、メタクリル酸アルキル、及びアクリル酸アルキルからなる群から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体45~15質量%を含み、ここで前記成分(A)と前記成分(B)との和は100質量%であり;上記成分(A)の酸変性量が0.5~10モル%である積層体の接着層用樹脂組成物。」などをあげることができる。国際公開2016/181880号、及び国際公開2018/042995号の明細書、請求の範囲、要約書、及び図面は、その全体が、引用により本明細書の開示として取り込まれる。
【0073】
4.フレキシブルフラットケーブル
本発明のフレキシブルフラットケーブルは、本発明の塗膜を含む。上記項目2にて説明されたいずれの実施形態の塗膜も、本発明のフレキシブルフラットケーブルを形成するために使用され得る。本発明のフレキシブルフラットケーブルは、本発明の積層体を含む。上記項目3にて説明されたいずれの実施形態の積層体も、本発明のフレキシブルフラットケーブルを形成するために使用され得る。本発明のフレキシブルフラットケーブルケーブルは、典型的な一実施形態において、上記基材フィルム、この基体フィルムの一方の面の上に形成された本発明の塗膜、および、更に該塗膜の面の上に形成された上記ホットメルト接着剤、好ましくは上記難燃性ホットメルト接着剤の層を含む絶縁接着性積層体を用いて生産される。
【0074】
本発明のフレキシブルフラットケーブルを生産する方法は、特に制限されず、公知の方法で生産することができる。上記方法としては、例えば、以下のような方法をあげることができる。上記絶縁接着性積層体(典型的には、上記基材フィルム、この基体フィルムの一方の面の上に形成された本発明の塗膜、および、更に該塗膜の面の上に形成された上記ホットメルト接着剤、好ましくは上記難燃性ホットメルト接着剤の層を含む積層体)を2ロール用い、公知のフレキシブルフラットケーブル製造装置を使用し、上記絶縁接着性積層体を上記ホットメルト接着剤の層が対向するように送り出し、その間に平行に引き揃えた導電体の平角線を挟み込み、上記装置の熱プレスロールで熱プレスして上記ホットメルト接着剤の層同士を互いに融着させることができる。上記絶縁接着性積層体には、導電体の平角線を挟み込む前に、孔を打抜くとともに、孔を打抜いた所に上記絶縁接着性積層体の上記基材フィルムの側から、上記補強テープ(すなわち本発明の積層体を採用することができ、あるいは代替的に、本発明の積層体以外の積層体を補強テープとして用いてもよい)を貼着することができる。次に、両側端をスリットして所定の仕上げ幅とし、上記孔と上記補強テープの部分で切断して、上記補強テープにより導体端末が補強されたフレキシブルフラットケーブルとして完成することができる。
【0075】
上記導電体の平角線としては、特に制限されず、任意のものを用いることができる。上記導電体の平角線は、フレキシブルフラットケーブルの摺動性の観点から、厚さ12~50μm、幅0.2~2mmの軟銅線、硬銅線、及びこれらの錫メッキ線やニッケルメッキ線であってよい。
【0076】
図1は本発明のフレキシブルフラットケーブルの一実施形態を示す断面の概念図である。基材フィルム1、1’の各々の一方の面の上に、アンカーコートとしての本発明の塗膜2または2’、更のその面の上に難燃性ホットメルト接着剤の層3または3’を有する絶縁接着性積層体2枚により、導電体の平角線4、4’、4’’および4’’’が挟み込まれている。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
使用した原材料
(A)酸変性ポリプロピレン
(A-1)東洋紡株式会社の無水マレイン酸変性ポリプロピレン「トーヨータックPMA-KH」(商品名)、融点77℃、マレイン酸変性量1.8質量%。
(A-2)東洋紡株式会社の無水マレイン酸変性ポリプロピレン「トーヨータックPMA-LE」(商品名)、融点69℃、マレイン酸変性量3.0質量%。
(A-3)東洋紡株式会社の無水マレイン酸変性ポリプロピレン「トーヨータックPMA-KE」(商品名)、融点78℃、マレイン酸変性量2.9質量%。
【0079】
(A-4)同方向回転二軸押出機を使用し、三井化学株式会社のプロピレン・1-ブテンランダム共重合体「タフマーXM7070」(商品名)100質量部、富士フイルム和光純薬株式会社の無水マレイン酸特級試薬1.1質量部、及び日本油脂株式会社の2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(有機過酸化物)「パーヘキサ25B」(商品名)3.0質量部からなる配合物を、スクリュー根元の投入口から一括フィードし、ダイス出口樹脂温度200℃、滞留時間3分間(計算値)の条件で溶融混錬し、融点75℃、マレイン酸変性量1.0質量%の無水マレイン酸変性ポリプロピレンを得た。
【0080】
(A-5)東洋紡株式会社の無水マレイン酸変性ポリプロピレン「トーヨータックPMA-T」(商品名)、融点94℃、マレイン酸変性量2.4質量%。
【0081】
(B)有機溶剤
(B1-1)トルエン。
(B2-1)酢酸エチル(水溶解度8.3g)。
(B2-2)メチルエチルケトン(水溶解度27.5g)。
(B2-3)2-プロパノール(水溶性)。
【0082】
(C)硬化剤
(C-1)東洋紡株式会社の1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物のメチルエチルケトン希釈液「ハードレンLAE-004」(商品名)。固形分(該化合物の含有量)65質量%。
(C-2)三井化学株式会社の1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物「タケネートD-170」(商品名)。
【0083】
(P)基材フィルム
(P-1)帝人株式会社の厚み25μm、片面にコロナ放電処理されたポリエチレンナフタレート樹脂フィルム「テオネックスQ83C」(商品名)。
(P-2)東レ株式会社の厚み25μm、片面にコロナ放電処理されたポリフェニレンサルファイド樹脂フィルム「トレリナ#25-3030」(商品名)。
(P-3)東レ・デュポン株式会社の厚み25μm、片面にコロナ放電処理されたポリイミド樹脂フィルム「カプトン100H」(商品名)。
(P-4)ユニチカ株式会社の厚み25μm、片面にコロナ放電処理されたポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム「エンブレットS25」(商品名)。
【0084】
上記基材フィルム(P-1)~(P-4)は何れもアンカーコートを有しない。即ち、コロナ放電処理面、非処理面の何れの面の上であっても、その面の上に直接塗膜を形成すると、基材フィルムと塗膜とは直接接触し積層されることになる。
【0085】
(1)塗料(S-1)の調製
アズワン株式会社製のポリプロピレン製容器「アイボーイPP広口びん500mL」(商品名)に、上記成分(A-1)100質量部、上記成分(B-1)570質量部、及び上記成分(B-2-1)30質量部からなる混合物300gを投入し、上記容器の口部分のネジ山にシーリングテープを噛ませて上記容器の蓋をきつく締め、密封した後、ロッキングミルを使用し、温度23℃の環境下において60分間の混合撹拌を行い、塗料(S-1)を得た。
【0086】
下記試験(i)溶解性、及び(ii)貯蔵安定性1を行った。結果を表1に示す。
【0087】
塗料(S-2)~(S-14)の調製
上記混合物の配合を表1に示すように変更したこと以外は、上記塗料(S-1)と同様にして塗料(S-2)~(S-14)を得た。下記試験(i)溶解性及び(ii)貯蔵安定性1を行った。結果を表1に示す。なお、表1および以下の説明では塗料(S-1)~(S-14)を塗料(S)と総称することがある。
【0088】
下記試験(i)塗料の生産性(溶解性)がBランクであったものは、ゲル状物が多く含まれていたと考察した。また下記試験(i)塗料の生産性(溶解性)がBランク又はCランクであったものについては以下の貯蔵安定性および接着強度に関する試験を省略した。
【0089】
(i)溶解性
上記塗料(S-1)~(S-14)について、目視により未溶解物が残っているか否かを確認した。目視で未溶解物が残っていることが確認されなかったものについては、更にアドバンテック東洋株式会社製の濾紙「定性濾紙No.2」(商品名)を使用し、100gの上記塗料の吸引濾過を試みた。
A:目視で未溶解物が残っていることは確認されなかった。また100gの上記塗料を滞りなく濾過することができた。
B:目視で未溶解物が残っていることは確認されなかった。しかし、濾過を試みると目詰まりが発生し、全量を濾過することができなかった。
C:目視で未溶解物が残っていることが確認された。
【0090】
(ii)貯蔵安定性1
上記塗料(S-1)~(S-4)、(S-6)~(S-7)および(S-10)~(S-14)(上記試験(i)塗料の生産性(溶解性)がAランクであった塗料)の各々を温度25℃の環境下で所定時間静置した後、株式会社エー・アンド・デイの音叉振動式粘度計「SV-10」(商品名)を使用して粘度を測定し、以下の基準で評価した。高い貯蔵安定性が必要とされる使用態様において(例えば室温で3時間以上、塗料を放置することが必要である場合)、成分(A)および(B)からなる塗料の貯蔵安定性1の評価ランクがC以上であれば、その塗料を実用的に採用可能である。実用的な採用可能性の観点から、当該塗料の貯蔵安定性1の評価ランクはB以上であることがより好ましく、Aであることが最も好ましい。
A:3週間静置後も、粘度は500mPa・s以下であった。
B:48時間静置後の粘度は500mPa・s以下であったが、3週間静置後の粘度は500mPa・s超であった。
C:3時間静置後の粘度は500mPa・s以下であったが、48時間静置後の粘度は500mPa・s超であった。
D:3時間静置後の粘度も500mPa・s超であった。
【0091】
(2)塗料(T-1)の調製
上記塗料(S-1)に上記成分(C-1)を、上記塗料(S-1)中の上記成分(A-1)100質量部に対して、9.8質量部(固形分換算6.4質量部)を混合攪拌し、塗料(T-1)を得た。なお上記成分(C-1)については、表に固形分換算の配合量を記載した。
【0092】
下記試験(iii)貯蔵安定性2を行った。結果を表2に示す。
【0093】
塗料(T-2)~(T-11)の調製
塗料の配合が表2に示すものとなるように、上記塗料(S)の種類、上記成分(C)の種類、及び上記成分(C)の配合量の少なくとも何れかを変更したこと以外は、上記塗料(T-1)と同様にして塗料(T-2)~(T-11)を得た。下記試験(iii)貯蔵安定性2を行った。結果を表2に示す。なお上記成分(C-1)および(C-2)については、表に固形分換算の配合量を記載した。
【0094】
(iii)貯蔵安定性2
上記塗料(T-1)~(T-11)の各々を温度25℃の環境下で所定時間静置した後、株式会社エー・アンド・デイの音叉振動式粘度計「SV-10」(商品名)を使用して粘度を測定し、以下の基準で評価した。高い貯蔵安定性が必要とされる使用態様において(例えば室温で3時間以上、塗料を放置することが必要である場合)、成分(A)、(B)および(C)からなる塗料の貯蔵安定性2の評価ランクがB以上であれば、その塗料を実用的に採用可能である。実用的な採用可能性の観点から、当該塗料の貯蔵安定性2の評価ランクはAであることがより好ましい。
A:24時間静置後も、粘度は500mPa・s以下であった。
B:3時間静置後の粘度は500mPa・s以下であったが、24時間静置後の粘度は500mPa・s超であった。
C:3時間静置後の粘度も500mPa・s超であった。
【0095】
(3)難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の製造
同方向回転二軸押出機を使用し、ダウ・ケミカル日本株式会社の無水マレイン酸変性ポリプロピレン「フサボンドP353」(商品名)55質量部、三井・デュポンポリケミカル株式会社のエチレン酢酸ビニル共重合体「EVAFLEX V523」(商品名)35質量部、株式会社プライムポリマーのランダムポリプロピレン「F-227D」(商品名)10質量部、アルベマール日本株式会社の臭素系難燃剤「SAYTEX8010」(商品名)54質量部、日本精鉱株式会社の三酸化二アンチモン「PATOX-M」(商品名)18質量部、及び三菱ケミカル株式会社の外滑剤「メタブレンL1000P」(商品名)1質量部からなる配合物を、ダイス出口樹脂温度210℃の条件で溶融混練し、難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤を得た。
【0096】
(4)難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の製膜
上記工程(3)で得た難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤を用い、Tダイ、押出機、及びニップ方式の引巻取り装置を備える製膜装置を使用し、ダイ出口樹脂温度210℃の条件で厚み40μmの接着性樹脂フィルムを製膜した。
【0097】
例1
上記基材フィルム(P-1)のコロナ放電処理面の上に、ロッドコート法を使用し、上記塗料(T-1)を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗工し、温度100℃で乾燥し、塗膜を形成した。次に、該塗膜の面の上に、上記工程(4)で得た接着性樹脂フィルムを重ね、誘電発熱ラミネーターを使用して熱ラミネートし、基材フィルム、塗膜、及び接着性樹脂フィルム(難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の層)をこの順に有する積層体を得た。このとき熱ラミネート条件は押圧ロールの予熱温度110℃、受けロールの予熱温度110℃、圧力0.4MPa、及び速度1.0m/分であった。下記試験(iv)、(v)を行った。結果を表3に示す。
【0098】
例2~11
上記塗料(T-1)の替わりに塗料(T-2)~(T-11)の各々を用いたこと以外は、例1と同様にして積層体を得た。下記試験(iv)、(v)を行った。結果を表3に示す。
【0099】
例12~15
上記塗膜の厚みを表3に示す厚み(乾燥後の厚み)に変更したこと以外は、例1と同様にして積層体を得た。下記試験(iv)、(v)を行った。結果を表3に示す。
【0100】
例16~18
上記基材フィルム(P-1)の替わりに基材フィルム(P-2)~(P-4)の各々を用いたこと以外は、例1と同様にして積層体を得た。下記試験(iv)、(v)を行った。結果を表3に示す。
【0101】
例19、20
上記塗膜の厚みを表3に示す厚み(乾燥後の厚み)に変更し、上記基材フィルム(P-1)の替わりに基材フィルム(P-2)または(P-3)を用いたこと以外は例1と同様にして積層体を得た。下記試験(iv)、(v)を行った。結果を表3に示す。
【0102】
例21
上記塗料(T-1)(硬化剤を含む)の替わりに上記塗料(S-1)(硬化剤を含まない)を用いたこと以外は、例1と同様にして積層体を得た。下記試験(iv)、(v)を行った。結果を表3に示す。
【0103】
(iv)接着強度1(標準状態における接着強度)
上記積層体から、そのマシン方向が長さ方向となるように幅50mm、長さ150mmの短冊を2枚切り出し、その接着性樹脂フィルム(難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の層)同士が対向するように2枚の上記短冊を重ね合わせ、何れも190℃に予熱された金属板とシリコーンゴムシートとで、圧力0.3MPa、及び時間8秒の条件で押圧し、熱融着させた。標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で24時間状態調節した後、標準状態の環境下において、熱融着させた短冊から、そのマシン方向が長さ方向となるように幅1インチ(25.4mm)、長さ150mmの試験片を採取し、試験速度100mm/分、T字剥離(引き剥がし角度180°)の条件で接着強度を測定した。また剥離界面を目視観察し、何れの界面で破壊したか(破壊モード)を調べた。表中の各記号の意味は以下の通りである。
P材破:基材フィルムが破れた。
HM:難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の層が凝集破壊していた。
P/AC:基材フィルムと塗膜との界面(層間)で剥離していた。
AC/HM:塗膜と難燃性ポリオレフィン系ホットメルト接着剤の層との界面(層間)で剥離していた。
【0104】
上記接着強度1(標準状態における接着強度)は、好ましくは10N/インチ以上、より好ましくは12N/インチ以上、更に好ましくは13N/インチ以上、より更に好ましくは15N/インチ以上であってよい。
【0105】
表中「>16」とは、破壊モードがP材破(基材フィルムが破れた)である場合に、基材フィルムが破れたときの応力が、16N/インチ以上であったことを意味する。
【0106】
(v)接着強度2(耐湿熱接着強度)
恒温恒湿槽を備えた引張試験機を使用して接着強度の測定を行った。具体的には、上記恒温恒湿槽内を温度105℃、相対湿度50%に安定させた後、上記試験(iv)接着強度1と同様にして得た試験片を上記恒温恒湿槽内の冶具にセットし、上記恒温恒湿槽内の温度が再び105℃に達してから10分間経過した後、試験速度100mm/分、T字剥離(引き剥がし角度180°)の条件で接着強度を測定した。また剥離界面を目視観察し、何れの界面で破壊したか(破壊モード)を調べた。表中の各記号の意味は、上記試験(iv)接着強度1と同じである。
【0107】
上記接着強度2(耐湿熱接着強度)は、好ましくは1N/インチ以上、より好ましくは2N/インチ以上、更に好ましくは3N/インチ以上、より更に好ましくは4N/インチ以上であってよい。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
上記実施例において、本発明の塗料を用いることにより、アンカーコートとして好適な塗膜を形成可能であることが実証された。本発明の好ましい塗料は、更に貯蔵安定性に優れていた。また上記実施例において、本発明の塗膜は、ポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムの何れに対しても優れた接着強度を発現した。本発明の好ましい塗膜は、更に、ポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、及びポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムの何れに対しても、高温高湿環境下における良好な接着強度を発現した。上記実施例における実証結果から、本発明の塗料は、アンカーコートを形成するための塗料として、特に、フレキシブルフラットケーブルケーブルのポリオレフィン系樹脂組成物の接着性樹脂組成物層とポリエチレンナフタレート樹脂フィルムなどとの層間接着強度を高めるためのアンカーコートを形成するための塗料として、好適に用いることができると考察した。
【符号の説明】
【0112】
1、1’:基材フィルム
2、2’:アンカーコートとしての本発明の塗膜
3、3’:難燃性ホットメルト接着剤の層
4、4’、4’’、4’’’:導電体の平角線