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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-01
(45)【発行日】2024-05-13
(54)【発明の名称】クリックヒンジ
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20240502BHJP
【FI】
F16C11/04 C
F16C11/04 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024508685
(86)(22)【出願日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2023039290
【審査請求日】2024-02-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592143057
【氏名又は名称】株式会社 サンコー
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐輔
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-86227(JP,A)
【文献】登録実用新案第3153622(JP,U)
【文献】特開2006-170255(JP,A)
【文献】特開2023-43517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04-11/10
E05D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プレートに対してヒンジ軸をなすシャフトの軸線周りに溝付プレートを回動可能に連結するクリックヒンジであって、
前記シャフトには、外周面の互いに対向する位置に形成された2つの第1平面部と、各前記第1平面部の間に形成された2つの第1円弧面部とが形成され、
前記溝付プレートは、前記シャフトが遊嵌状態で挿通される第1挿通孔と、前記第1挿通孔の外周縁位置に前記第1挿通孔の径方向に延伸する凹溝とが形成され、
前記シャフトの断面形状に倣った2つの第2平面部および各前記第2平面部の間に形成された2つの第2円弧面部を有すると共に前記シャフトが挿通可能な第2挿通孔と、前記凹溝に進入可能な第1凸部とが形成されたカム板が、前記溝付プレートに対して前記溝付プレートの板厚方向に重ねた状態で配置され、
前記シャフトの断面形状に倣った2つの第3平面部および各前記第3平面部の間に形成された2つの第3円弧面部を有すると共に前記シャフトが挿通可能な第3挿通孔が形成されたストッパが、前記カム板に対して前記カム板の板厚方向に重ねた状態で配置され、
前記ストッパを前記カム板および前記溝付プレートに向けて付勢する付勢部材が、前記ストッパに対して前記ストッパの板厚方向に重ねた状態で配設され、
前記固定プレートは、前記付勢部材に対して前記付勢部材の付勢方向に重ねた状態で配設されていると共に前記シャフトの挿通先端部が固定されていて、前記溝付プレートと共に前記付勢部材、前記ストッパおよび前記カム板を挟持しており、
前記カム板と前記ストッパは、前記第2挿通孔における各前記第2平面部の向きと前記第3挿通孔における各前記第3平面部の向きとが所定角度を形成するように係合可能に設けられていて、
前記カム板には、前記第1凸部の形成面と反対側面に第1凹部が形成され、
前記ストッパには、前記カム板の前記第1凹部に進入可能な第2凸部が形成され、
前記第1凹部は、
前記第2挿通孔を平面視した際において、前記第2挿通孔の2つの前記第2円弧面部の中心どうしを結ぶ第1軸と、前記第2挿通孔の2つの各前記第2平面部の中心どうしを結ぶ第2軸とが交差する第1直交座標系において、前記第1軸又は前記第2軸のいずれか一方に対し予め設定された第1角度で回動させた方向に延伸されて形成され、
前記第2凸部は、
前記第3挿通孔を平面視した際において、前記第3挿通孔の2つの各前記第3円弧面部の中心どうしを結ぶ第3軸と、前記第3挿通孔の2つの各前記第3平面部の中心どうしを結ぶ第4軸とが交差する第2直交座標系において、前記第1凹部において選択された前記第1軸又は前記第2軸のいずれか一方と同方向に延伸する前記第3軸または前記第4軸に対し前記第1凹部の回動方向とは逆方向の予め設定された第2角度で回動させた方向に延伸されて形成されていることを特徴とするクリックヒンジ。
【請求項2】
前記第1角度と前記第2角度の絶対値が等しいことを特徴とする請求項1記載のクリックヒンジ。
【請求項3】
前記凹溝と前記第1凸部との当接部における第1接線と水平面とにより形成された第1接線角度と、前記第1凹部と前記第2凸部との当接部における第2接線と前記水平面とにより形成された第2接線角度が異なっていることを特徴とする請求項1または2記載のクリックヒンジ。
【請求項4】
前記第2接線角度は前記第1接線角度よりも大きいことを特徴とする請求項3記載のクリックヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリックヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
2つの物体を回動可能に連結し、所定位置において2つの物体を位置決めした状態を維持することが可能であって、使用者が回動対象物を所定位置に回動させたことが分かるようにクリック感を生じさせるクリックヒンジがある。このようなクリックヒンジの一例として、特許文献1(日本国特許第5415913号公報)に開示されているような構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第5415913号公報(請求項1,明細書段落0018-0019,図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているクリックヒンジ200は、図6図7Aおよび図7Bに示すように、ヒンジ軸となるシャフト210、溝付プレート220、カム板230、付勢部材250および固定プレート260を具備している。シャフト210は溝付プレート220、カム板230、付勢部材250および固定プレート260に挿通され、挿通先端部212を固定プレート260への貫通先面に固定されており、溝付プレート220と固定プレート260の間にカム板230と付勢部材250が挟持された状態でシャフト210の中心軸周りに溝付プレート220が回動可能に構成されている。溝付プレート220にはシャフト210の挿通孔222の外周縁に向けて径方向に延びるV溝224が形成されており、付勢部材250の付勢力により付勢されたカム板230に形成された凸部232がV溝224に進入することでクリック感を生じさせると共に、溝付プレート220を位置決め固定する(回動を規制する)構成になっている。
【0005】
溝付プレート220の挿通孔222、カム板230の挿通孔234、付勢部材250の挿通孔254および固定プレート260の挿通孔264に対するシャフト210の挿通(組み立て)を容易にするため、それぞれの挿通孔222,234,254,264は、シャフト210の平面形状(断面形状)よりも若干大きく形成されている。このため、それぞれの挿通孔222,234,254,264とシャフト210との間には図7Aおよび図7Bに示すように、ある程度の隙間S0が設けられている。この隙間S0により、溝付プレート220のV溝224にカム板230の凸部232を凹凸嵌合させた状態にしても、シャフト210と挿通孔222,234との間に形成された隙間S0により溝付プレート220にガタツキが生じてしまうといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は、ヒンジ軸となるシャフトとシャフトを挿通させるための挿通孔が形成された部材との組み立ての容易さは従来技術と同程度でありながらも、シャフトとシャフトを挿通させた部材との間に生じるガタツキを可及的に抑え、使用感に優れたクリックヒンジの提供を目的としている。
【0007】
すなわち本発明は、固定プレートに対してヒンジ軸をなすシャフトの軸線周りに溝付プレートを回動可能に連結するクリックヒンジであって、前記シャフトには、外周面の互いに対向する位置に形成された2つの第1平面部と、各前記第1平面部の間に形成された2つの第1円弧面部とが形成され、前記溝付プレートは、前記シャフトが遊嵌状態で挿通される第1挿通孔と、前記第1挿通孔の外周縁位置に前記第1挿通孔の径方向に延伸する凹溝とが形成され、前記シャフトの断面形状に倣った2つの第2平面部および各前記第2平面部の間に形成された2つの第2円弧面部を有すると共に前記シャフトが挿通可能な第2挿通孔と、前記凹溝に進入可能な第1凸部とが形成されたカム板が、前記溝付プレートに対して前記溝付プレートの板厚方向に重ねた状態で配置され、前記シャフトの断面形状に倣った2つの第3平面部および各前記第3平面部の間に形成された2つの第3円弧面部を有すると共に前記シャフトが挿通可能な第3挿通孔が形成されたストッパが、前記カム板に対して前記カム板の板厚方向に重ねた状態で配置され、前記ストッパを前記カム板および前記溝付プレートに向けて付勢する付勢部材が、前記ストッパに対して前記ストッパの板厚方向に重ねた状態で配設され、前記固定プレートは、前記付勢部材に対して前記付勢部材の付勢方向に重ねた状態で配設されていると共に前記シャフトの挿通先端部が固定されていて、前記溝付プレートと共に前記付勢部材、前記ストッパおよび前記カム板を挟持しており、前記カム板と前記ストッパは、前記第2挿通孔における各前記第2平面部の向きと前記第3挿通孔における各前記第3平面部の向きとが所定角度を形成するように係合可能に設けられていて、前記カム板には、前記第1凸部の形成面と反対側面に第1凹部が形成され、前記ストッパには、前記カム板の前記第1凹部に進入可能な第2凸部が形成され、前記第1凹部は、前記第2挿通孔を平面視した際において、前記第2挿通孔の2つの前記第2円弧面部の中心どうしを結ぶ第1軸と、前記第2挿通孔の2つの各前記第2平面部の中心どうしを結ぶ第2軸とが交差する第1直交座標系において、前記第1軸又は前記第2軸のいずれか一方に対し予め設定された第1角度で回動させた方向に延伸されて形成され、前記第2凸部は、前記第3挿通孔を平面視した際において、前記第3挿通孔の2つの各前記第3円弧面部の中心どうしを結ぶ第3軸と、前記第3挿通孔の2つの各前記第3平面部の中心どうしを結ぶ第4軸とが交差する第2直交座標系において、前記第1凹部において選択された前記第1軸又は前記第2軸のいずれか一方と同方向に延伸する前記第3軸または前記第4軸に対し前記第1凹部の回動方向とは逆方向の予め設定された第2角度で回動させた方向に延伸されて形成されていることを特徴とするクリックヒンジである。
【0008】
これにより、ヒンジ軸となるシャフトとシャフトを挿通させるための挿通孔が形成された部材との組み立ての容易さは従来技術と同程度でありながらも、シャフトとシャフトを挿通させた部材との間に生じるガタツキを可及的に抑え、使用感に優れたクリックヒンジとすることができる。
【0009】
また、前記第1角度と前記第2角度の絶対値が等しいことがより好ましい。
【0010】
れにより、シャフトとシャフトを挿通させるための部材とのクリアランスを大きくしても、シャフトとシャフトを挿通させるための部材との間のガタツキ量を抑えることができる。
【0011】
また、前記凹溝と前記第1凸部との当接部における第1接線と水平面とにより形成された第1接線角度と、前記第1凹部と前記第2凸部との当接部における第2接線と前記水平面とにより形成された第2接線角度が異なっていることが好ましく、さらに、前記第2接線角度は前記第1接線角度よりも大きいことがより好ましい。
【0012】
これらにより、溝付プレートとカム板との嵌合状態を解除させるための力をカム板とストッパの嵌合を解除させるための力よりも低くすることができ、カム板とストッパの嵌合状態が解除されることなく溝付プレートとカム板の嵌合状態を解除させること(ヒンジとして回動させること)ができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明におけるクリックヒンジの構成によれば、ヒンジ軸となるシャフトとシャフトを挿通させるための挿通孔が形成された部材との組み立ての容易さは従来技術と同程度でありながらも、シャフトとシャフトを挿通させた部材との間に生じるガタツキを可及的に抑え、使用感に優れたクリックヒンジとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態におけるクリックヒンジの分解斜視図である。
図2図2は、図1中の矢印IIから臨んだ状態において溝付プレートの表示を省略した要部斜視図である。
図3図3Aは、本実施形態におけるクリックヒンジのシャフトにカム板を装着する際の状態を示す平面図であり、図3Bは、図3Aに示す状態からカム板を矢印A方向に回動させた状態を示す平面図である。
図4図4Aは、本実施形態におけるクリックヒンジのシャフトにストッパを装着する際の状態を示す平面図であり、図4Bは、図4Aに示す状態からストッパを矢印B方向に回動させた状態を示す平面図である。
図5図5は、図1に示すクリックヒンジの組立後における要部側面図である。
図6図6は、従来技術におけるヒンジ構造を示す分解斜視図である。
図7図7Aは、図6中の矢印VII側から臨んだ状態における組立後のクリックヒンジの側面図であり、図7Bは、カム板および溝付プレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明におけるクリックヒンジ100について説明がなされる。図1は本実施形態におけるクリックヒンジ100の分解斜視図である。本実施形態におけるクリックヒンジ100は、ヒンジ軸となるシャフト10、溝付プレート20、カム板30、ストッパ40、付勢部材としての複数の皿ばね50および固定プレート60を具備している。本実施形態におけるクリックヒンジ100には、溝付プレート20に本発明にかかるクリックヒンジ100と同構造の第2ヒンジ機構70が取り付けられており、いわゆる2軸回動式のヒンジ構造をなす形態が例示されているが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。第2ヒンジ機構70の構成は配設を省略することもできる。
【0016】
シャフト10は、図1および図2に示すように大径部12と小径部14を有する同心異径円柱体を基本形態としている。小径部14の外周面には互いに対向する位置に形成された2つの第1平面部16と2つの第1平面部16の間に形成された第1円弧面部18が交互に形成されている。また、小径部14の高さ方向先端部における第1円弧面部18の各々における周方向中間部分の所要長さ範囲には先端側平面部19が形成されている。このような先端側平面部19を形成することで、固定プレートの高さ方向における位置決めができる点で好都合である。なお、本実施形態における小径部14は中央部分14Aがくり抜かれた筒体に形成されているが、小径部14を柱体にしておくこともできる。シャフト10は、溝付プレート20の第1挿通孔22、カム板30の第2挿通孔32、ストッパ40の第3挿通孔、複数の皿ばね50の第4挿通孔52および固定プレート60の第5挿通孔62にそれぞれ挿通される。シャフト10の挿通先端部は、固定プレート60を挿通させた先側の面(皿ばね50との対向面とは反対側の面)に固定されている。
【0017】
すなわち、溝付プレート20、カム板30、ストッパ40および複数の皿ばね50は、記載順にそれぞれの板厚方向に重ねた状態で配設されており、固定プレート60は、皿ばね50の付勢方向に重ねた状態で皿ばね50の上側に配設されている。そして、カム板30、ストッパ40および複数の皿ばね50は、溝付プレート20と固定プレート60の間で挟持され、このときの複数の皿ばね50の付勢力によりストッパ40とカム板30が溝付プレート20に向けて押圧された(付勢された)状態になっている。
【0018】
溝付プレート20には、シャフト10の小径部14が遊嵌状態で挿通される第1挿通孔22が形成されている。第1挿通孔22の平面形状は、シャフト10の小径部14が挿通可能な円形に形成されている。このように溝付プレート20の第1挿通孔22が第1挿通孔22に挿通される小径部14の平面形状よりもわずかに大きくされていることで、小径部14の外周面と第1挿通孔22との間に隙間(図示はせず)が形成されることになる。この隙間により第1挿通孔22にシャフト10(小径部14)を挿通させる際の作業性を従来技術と同程度にすることができる。
【0019】
また、溝付プレート20の上面には、第1挿通孔22の外周縁から第1挿通孔22の径外方向に凹溝24が形成されている。本実施形態における凹溝24は断面形状がV字形状をなしたいわゆるV溝に形成されている。凹溝24の外側端部の平面位置はカム板30の外周縁位置と同一平面位置になっている。本実施形態における溝付プレート20の両端縁には第2ヒンジ機構70が取り付けられている。この第2ヒンジ機構70により溝付プレート20は、シャフト10の中心軸線L1の方向およびシャフト10の中心軸線L1に直交する回転軸(第2ヒンジ機構70の回転軸)L2を回転の中心として回動可能になっている。
【0020】
カム板30は、図1図3Aおよび図3Bに示すようにシャフト10の小径部14が挿通可能な第2挿通孔32を有するリング板状に形成されている。第2挿通孔32は、図3Aに示すように、シャフト10の小径部14の第2挿通孔32への挿入部分における断面形状に倣った2つの第2平面部32Aと、第2平面部32Aの間に形成され第2平面部32Aの一方の端部どうしを繋ぐ第2円弧面部32Bにより形成されている。図3Aからも明らかなように、第2挿通孔32はシャフトの小径部14よりも図3A中の幅方向においてわずかに大きく形成されている。したがって第2挿通孔32にシャフト10の小径部14を挿通させる際には、幅方向に第1隙間S1があることにより、第2挿通孔32への小径部14を挿通させる際の作業性を従来技術におけるクリックヒンジ100と同程度を維持することができる。また、第2挿通孔32に小径部14を挿通させた後の状態は、小径部14を第2挿通孔32の周方向に僅かに回動可能になっている。
【0021】
また、図1および図2に示すように、カム板30の下面(溝付プレート20との対向面)には凹溝24と嵌合可能な第1凸部34がカム板30の直径方向に沿って第2挿通孔32とカム板30の外周縁との間に亘って形成されている。本実施形態における第1凸部34の断面形状は半円柱形状に形成されている。第1凸部34は、図3Aに示すように、第2挿通孔32の第2円弧面部32Bの周方向の中心どうしを結ぶ中心点O1を通過する第1軸A1(図3A中の縦の一点鎖線)と、第2平面部32Aの長さ方向の中心どうしを結ぶ中心点O1を通過する第2軸A2(図3A中の横の一点鎖線)からなる第1直交座標系において、中心点O1を回転の中心として第2挿通孔32の外周縁周りに(第1軸A1に対し)予め設定された第1角度であるα度回動させた方向に延伸すると共に中心点O1を通過する第1中心軸A3(図3A中の斜めの点線)に平行に第1幅寸法W1の範囲に形成されている。第1幅寸法W1は、溝付プレート20に形成された凹溝24の幅寸法W0(図1参照)よりも幅広に形成されている(図5参照)。
【0022】
第1凸部34の第1中心軸A3を第1軸A1に一致させるようにカム板30を図3A中の矢印Aの方向に回動させると、図3Bに示すように第2挿通孔32の左上部分の第2平面部32Aと第2円弧面部32Bとの交点位置K1に小径部14の第1角部DK1が当接した状態になる。これにより小径部14に対するカム板30の矢印A方向(時計回り方向)の回動が規制される。
【0023】
また、カム板30の上面(第1凸部34の形成面とは反対側面)には、第1凹部36が形成されている。本実施形態における第1凹部36の平面位置は、第1凸部34の平面位置と同一平面位置に形成されている。第1凹部36の断面形状は、等脚台形形状に形成されている。本実施形態における第1凹部36は、図3A図3Bおよび図5に示すように、開口側幅寸法W2が底面側幅寸法W3よりも幅広に形成されており、逆台形形状をなしている。
【0024】
ストッパ40は、図1図2図4Aおよび図4Bに示すようにシャフト10の小径部14が挿通可能な第3挿通孔42を有するリング板状に形成されている。第3挿通孔42は、図4Aに示すように、シャフト10の小径部14の外周面形状よりも幅方向においてわずかに大きく形成されている。本実施形態における第3挿通孔42の平面形状は、第2挿通孔32と同一形状に形成されている。具体的に説明すると、第3挿通孔42は、シャフト10の小径部14の第3挿通孔42への挿入部分における断面形状に倣った2つの第3平面部42Aと、第3平面部42Aの間に形成され第3平面部42Aの一方の端部どうしを繋ぐ第3円弧面部42Bにより形成されている。
【0025】
図4Aからも明らかなように、第3挿通孔42はシャフトの小径部14よりも図4A中の幅方向においてわずかに大きく形成されている。したがって第3挿通孔42にシャフト10の小径部14を挿通させる際には、幅方向に第2隙間S2があることにより、第3挿通孔42への小径部14を挿通させる際の作業性を従来技術におけるクリックヒンジ100と同程度を維持することができる。また、第3挿通孔42に小径部14を挿通させた後の状態は、小径部14を第3挿通孔42の周方向に僅かに回動可能になっている。
【0026】
また、図1および図2に示すように、ストッパ40の下面(カム板30との対向面)には、第1凹部36と嵌合可能な第2凸部44がストッパ40の直径方向に沿って第3挿通孔42とストッパ40の外周縁との間に亘って形成されている。第2凸部44は、図4Aに示すように、第3挿通孔42の2つの第3円弧面部42Bの周方向の中心どうしを結び第3挿通孔42の中心点O1を通過する第3軸A4(図4A中の縦の一点鎖線)と第4軸A5(図4A中の横の一点鎖線)からなる第2直交座標系において、第3挿通孔42の中心点O2を回転の中心として第3挿通孔42の外周縁周りに(第3軸A4に対して)予め設定された第2角度であるβ度回動させた方向に延伸すると共に中心点O1を通過する第2中心軸A6(図4A中の斜めの点線)に平行に第2幅寸法W4で形成されている。
【0027】
なお、第3軸A4は、第1凹部36と同一平面位置にある第1凸部34の中心軸である第1中心軸A3を規定する際に選択された第1軸A1と同方向に延伸するものである。すなわち、第2凸部44は、第2直交座標系において第1凹部36において選択された第1軸A1と同方向に延伸する第3軸A4に対し第1凹部36を形成する際の回動方向とは逆方向の予め設定された第2角度βで回動させた方向に延伸されて形成されている。
【0028】
本実施形態においては、第2挿通孔32と第3挿通孔42が同一形状に形成されているため、第2直交座標系(第3軸A4と第4軸A5)は第1直交座標系(第1軸A1と第2軸A2)と同一になる。本実施形態におけるα度とβ度は、互いの回動方向を逆方向としていると共に回動角度の絶対値を等しくしている。
【0029】
本実施形態における第2凸部44の断面形状は等脚台形形状に形成されており、第2幅寸法W4は等脚台形形状の基部側における幅寸法である。したがって第2凸部44の突出先端部側の先端側幅寸法W5は、第2幅寸法W4よりも幅狭に形成されている。また、第2凸部44の先端側幅寸法W5は、第1凹部36の開口側幅寸法W2よりも幅狭であり、かつ、第1凹部36の底面側幅寸法W3よりも幅広に形成されている。このように形成された第2凸部44の第2中心軸A6を第3軸A4に一致するようにストッパ40を図4A中の矢印Bの方向に回動させると、第3挿通孔42の右上部分の第3平面部42Aと第3円弧面部42Bとの交点位置K2に小径部14の第2角部DK2が当接した図4Bに示す状態になる。これにより小径部14に対するストッパ40の矢印B方向(反時計回り方向)の回動が規制される。
【0030】
本実施形態におけるクリックヒンジ100は、溝付プレート20と、図3Bに示す状態のカム板30と、図4Bに示す状態のストッパ40と、ストッパ40の上面に重ねられた複数の皿ばね50と、固定プレート60とが組み立てられたものである。組み立てられたクリックヒンジ100のカム板30、ストッパ40、皿ばね50および固定プレート60は、溝付プレート20に対してシャフト10の中心軸線L1周りに回動可能になる。溝付プレート20の凹溝24にカム板30の第1凸部34が進入したとき、またはカム板30の第1凹部36にストッパ40の第2凸部44が進入したときにクリックヒンジ100にクリック感が得られる。そして凹溝24に第1凸部34が進入すると共に第1凹部36に第2凸部44が進入すると、カム板30、ストッパ40、皿ばね50および固定プレート60の回動が所定の力で規制された状態になる。
【0031】
これをより詳細に説明すると、カム板30の第1凹部36にストッパ40の第2凸部44を凹凸嵌合させた状態かつカム板30の第1凸部34を溝付プレート20の凹溝24に凹凸嵌合させた状態で、カム板30とストッパ40を平面視すると、第2挿通孔32における第2平面部32Aの向きと、第3挿通孔42における第3平面部42Aの向きとが所定角度を形成するように嵌合(係合)した状態になる。この状態においては、図3Bに示すようにカム板30によりシャフト10に対する時計回り方向の回動が規制され、図4Bに示すようにストッパ40によりシャフト10に対する反時計回り方向の回動が規制された状態になる。以上により、クリックヒンジ100におけるシャフト10の中心軸線周りのガタツキの発生を防止することができる。
【0032】
また、図5に示されているように、溝付プレート20の凹溝24とカム板30の第1凸部34との嵌合は、断面V字形状の凹溝24に断面半円柱形状の第1凸部34が進入した状態になっている。これに対し、カム板30の第1凹部36とストッパ40の第2凸部44との嵌合は、断面形状が等脚台形形状の第1凹部36に第1凹部36の等脚台形形状よりも小さい等脚台形形状に形成された第2凸部44が進入している。したがって、溝付プレート20に対するカム板30の嵌合強度よりもカム板30に対するストッパ40の嵌合強度の方が高くなり、カム板30とストッパ40の嵌合状態を常に維持した状態で溝付プレート20とカム板30との嵌合状態を解除することができる。
【0033】
本実施形態においては、溝付プレート20の凹溝24の断面形状がV字形状をなし、カム板30の第1凸部34の断面形状が半円柱形状をなしているが、凹溝24と第1凸部34の断面形状を共に等脚台形形状にすることもできる。この場合、凹溝24の母線と第1凸部34の母線との当接部分における第1接線T1と水平面(クリックヒンジ100の各構成の積み重ね方向と直交する方向の面)Hとにより形成される第1接線角度θ1より第1凹部36の母線と第2凸部44の母線との当接部分における第2接線T2と水平面Hとにより形成される第2接線角度θ2の方が大きいことが好ましい。これにより先述の溝付プレート20、カム板30およびストッパ40と同様に、カム板30とストッパ40の嵌合状態を常に維持した状態で溝付プレート20とカム板30との嵌合状態を解除することができる。
【0034】
以上の本発明にかかるクリックヒンジ100について実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態におけるシャフト10は、小径部14に第1平面部16と第1円弧面部18および先端側平面部19が形成された形態を例示しているが、シャフト10の形態はこの形態に限定されるものではない。本発明におけるクリックヒンジ100は、シャフト10を挿通させた後に、少なくともカム板30とストッパ40をシャフト10の中心軸線L1周りに回動できればよい。具体的には、先端側平面部19を省略した2つの第1平面部16と、第1平面部16の第1端部どうしと、第1平面部16の第2端部どうしを連結する(第1平面部16の間に形成される)第1円弧面部18とからなるトラック形状に形成された小径部14を採用することもできる。
【0035】
また、本実施形態におけるカム板30は、第1凸部34と第1凹部36は、樹脂成形時やプレス成形時における成形性を向上させるために同一平面位置に配設しているが、この形態に限定されるものではない。第1凸部34と第1凹部36の平面位置は同一平面位置でなくてもよい。また、カム板30の第2挿通孔32とストッパ40の第3挿通孔42の平面形状を同一にしているが、第2挿通孔32と第3挿通孔42の平面形状は異なっていてもよい。
【0036】
また、第1凹部36(第1凸部34)は、第1直交座標系の第1軸A1に対して予め設定された第1角度αで回動させた方向に延伸する第1中心軸A3に沿って形成され、第2凸部44は、第1凹部36(第1凸部34)の形成時に選択された第1軸A1と同方向に延伸する第3軸A4に対して予め設定された第2角度β回動させた方向に延伸する第2中心軸A6に沿って形成された形態を例示しているが、本発明はこの形態に限定されるものではない。本発明は、第1凹部36(第1凸部34)を第1直交座標系の第2軸A2に対して予め設定された第1角度αで回動させた方向に延伸する図示しない中心軸に沿って形成し、第2凸部44を第1凹部36(第1凸部34)の形成時に選択された第2軸A2と同方向に延伸する第4軸A5に対して予め設定された第2角度β回動させた方向に延伸する図示しない中心軸に沿って形成した形態を採用することもできる。
【0037】
また、本実施形態における付勢部材として皿ばね50を用いているが、付勢部材は皿ばね50に限定されるものではない。付勢部材はシャフト10を挿通させて、ストッパ40と固定プレート60との間に挟持させることができればよく、つるまきばね等に代表されるような公知の付勢部材を適宜採用することができる。
【0038】
また、本実施形態においては、第1角度αと第2角度βとの絶対値が等しい形態が例示されているが、この形態に限定されるものではない。本発明は、第1角度αの回動方向に対し第2角度βが逆方向に回動されていればよく、第1角度αと第2角度βとの絶対値が異なっている形態を採用することもできる。
【0039】
また、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【要約】
シャフトとシャフトを挿通させた部材との間に生じるガタツキを可及的に抑え、使用感に優れたクリックヒンジを提供することを課題とする。解決手段として、シャフト(10)、凹溝(24)を有する溝付プレート(20)、第2挿通孔(32)を有するカム板(30)、第3挿通孔(42)を有するストッパ(40)、皿ばね(50)、皿ばね(50)によりストッパ(40)とカム板(30)を溝付プレート(20)に付勢する固定プレート(60)を具備し、固定プレート(60)は、シャフト(10)の挿通先端部が固定され、溝付プレート(20)と共に皿ばね(50)、ストッパ(40)およびカム板(30)を挟持し、カム板(30)とストッパ(40)は、第2挿通孔(32)に対する向きと第3挿通孔(42)に対する向きとが所定角度を形成して係合することを特徴とするクリックヒンジ(100)である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7