(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】免疫毒素、その製剤、および薬におけるその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240507BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240507BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240507BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240507BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240507BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240507BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240507BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240507BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240507BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61K39/395 Y
A61K38/16
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/68
A61P37/06
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020543729
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2018079860
(87)【国際公開番号】W WO2019086534
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-28
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】524097724
【氏名又は名称】フィリコス ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ホーレン ヘンリクス ヘーラルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】フレイリンク マールテン ヤープ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン オーステルハウト イープケ ヴィンセンティウス ヨハネス マリア
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】特表平03-504499(JP,A)
【文献】特表平03-504605(JP,A)
【文献】特開昭63-258426(JP,A)
【文献】vanOosterhout, Y. V. et al.,Acombination of anti-CD3 and anti-CD7 ricin A-immunotoxins for the in vivotreatment of acute graft versus host disease,Blood,2000年,Vol.95,No.12,p.3693-3701
【文献】内山 進 ほか,抗体医薬品の溶液物性,薬剤学,2014年,第74巻,第1号,p.12-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/60
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号
1のアミノ酸配列を含む
重鎖と、配列番号
2のアミノ酸配列を含む
軽鎖とを有する、CD3を認識する第1のモノクローナル抗体であって、少なくとも1つのリシン毒素A(RTA)にコンジュゲートしている、第1のモノクローナル抗体、
および
配列番号
11のアミノ酸配列を含む
重鎖と、配列番号
12のアミノ酸配列を含む
軽鎖とを有する、CD7を認識する第2のモノクローナル抗体であって、少なくとも1つのリシン毒素A(RTA)にコンジュゲートしている、第2のモノクローナル抗体;
(ii)5~20mMのクエン酸塩バッファ;
(iii)50~300mMのL-アルギニンまたはその薬学的に許容される塩;
(iv)0.01~0.1%(w/v)のポリソルベート;ならびに
(v)120~160mMのマルトース
を含
む、薬学的組成物であって、
(i)~(v)が水中に存在し、かつ、
該薬学的組成物が6~7.5の範囲のpHを有する、
薬学的組成物。
【請求項2】
100~150mMのトレハロース;
25~75mMのグリシン;および
80~120mMのマンニトール
から選択される少なくとも1つの作用物質を更に含む、請求項1
記載の組成物。
【請求項3】
マルトースが、130~150mMのマルトース一水和物である、請求項1
または2記載の組成物。
【請求項4】
0.05~0.5mg/mLの第1のモノクローナル抗体と、0.05~0.5mg/mLの第2のモノクローナル抗体とを含む、請求項1~
3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
0.2mg/mLの第1のモノクローナル抗体、および0.2mg/mLの第2のモノクローナル抗体を含む、請求項1~
4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
10mMのクエン酸ナトリウム/クエン酸バッファを含む、請求項1~
5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
125mMのL-アルギニンHClを含む、請求項1~
6のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
0.05%(w/v)のTween(登録商標)20を含む、請求項1~
7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
140mMのマルトース一水和物を含む、請求項1~
8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
注射用水中に存在し、かつ、6.5のpHを有する、請求項1~
9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
リシン毒素Aが、リシン、脱グリコシル化リシンA(dgRTA)、または非グリコシル化組み換えリシンAである、請求項1~
10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項記載の組成物の凍結乾燥形態であり、かつ水または水溶液での再構成に好適である、凍結乾燥組成物。
【請求項13】
請求項1~
11のいずれか一項記載の組成物を含む、ヒト対象における急性移植片対宿主病(aGVHD)を処置するための医薬であって、
該対象がエプスタイン・バーウイルス(EBV)またはヒトサイトメガロウイルス(CMV)のウイルス力価の増加または上昇を呈すると判断された場合に、該組成物が該対象に投与されるように用いられることを特徴とする、医薬。
【請求項14】
体表面積(BSA)1m
2あたり4mgの用量で、前記組成物の複数回の注入が対象に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項
13記載の医薬。
【請求項15】
48時間間隔で与えられる4回の4時間輸注が、対象に投与されるように用いられることを特徴とする、請求項
13または
14記載の医薬。
【請求項16】
第1の抗体;
第2の抗体;
該第1の抗体の毒素部分;および
該第2の抗体の毒素部分
のうちの少なくとも1つの免疫原性が低減されている、請求項
13~
15のいずれか一項記載の医薬。
【請求項17】
対象が、血液1mLあたり1000ウイルスDNAコピーを超える、EBVまたはCMVのウイルス力価を呈する、請求項
13~
16のいずれか一項記載の医薬。
【請求項18】
組成物が、CD3+またはCD7+のT細胞を抑制または殺傷する、請求項
13~
17のいずれか一項記載の医薬。
【請求項19】
組成物が、CD3+またはCD7+のT細胞に比べてCD8+抗ウイルスT細胞を温存する、請求項
13~
18のいずれか一項記載の医薬。
【請求項20】
対象が、前記組成物の投与の前に少なくとも1回、ウイルス力価、ウイルス培養、ウイルス抗原の検出、ウイルス血清検査、または免疫組織学的検査の少なくとも1つを測定することによって、ウイルスの感染または再活性化についてモニタリングされる、請求項
13~
19のいずれか一項記載の医薬。
【請求項21】
前記モニタリングが、リアルタイム定量PCRによって血漿ウイルス力価を測定することを含む、請求項
20に記載の医薬。
【請求項22】
対象が、予防的抗ウイルス薬で処置されているか、または処置されたことがある、請求項
13~
21のいずれか一項記載の医薬。
【請求項23】
請求項1~
11のいずれか一項記載の組成物の治療的有効量を含む、急性移植片対宿主病(aGVHD)を有するヒト対象における慢性G
VHD(cGVHD)を予防するための医薬。
【請求項24】
請求項1~
11のいずれか一項記載の組成物を含む、ヒト対象における急性移植片対宿主病(aGVHD)を処置するための医薬であって、該対象が10g/L~15g/Lの血清アルブミンレベルを有する場合に、該組成物が該対象に投与されるように用いられることを特徴とする、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫調節療法(例えば、免疫抑制)に関連する、慢性移植片対宿主病(cGVHD)に対する予防的療法、ウイルスの再活性化の予防およびウイルスの再活性化の制御、ならびにエプスタイン・バーウイルス(EBV)感染の移植後リンパ増殖性障害(PTLD)への進行および進行性多巣性白質脳症(PML)の発症の予防を含む抗ウイルス療法を含む、療法の分野に関する。改善された薬学的組成物を含む、このような療法において使用するための方法および手段が提供される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫抑制は、特定の生命を脅かす免疫病態、例えば、移植関連拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD)、急性実質臓器拒絶反応、およびいくつかの重度の自己免疫疾患の処置において使用される。
【0003】
EP 0945139 A1(特許文献1)、EP 1 066 058 B1(特許文献2)、およびUS 2006/051355(特許文献3)には、同種造血幹細胞移植(HSCT)後のGVHD等の免疫関連疾患を処置するための免疫毒素カクテルが記載されている。免疫毒素カクテルは、それぞれリシンAにコンジュゲートしている抗CD3抗体および抗CD7抗体を含み、これは、成熟T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞を標的とし、免疫系を「リセット」する。これら文書には、急性GVHD(aGVHD)を有するヒト患者に免疫毒素カクテルを投与したパイロット臨床試験が報告されている。
【0004】
国際公開公報第98/55150号(特許文献4)には、T細胞白血病、リンパ腫、急性骨髄性白血病、およびHIV感染を含むウイルス感染を処置するための、ある量のヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質に連結しているモノクローナル抗体TXU-7を含む免疫毒素が記載されている。
【0005】
US 2008/233128(特許文献5)には、抗CD3「OKT3」等のT細胞枯渇抗体によるウイルス感染の処置が記載されている。ここに記載されている研究は、実際の成績が報告されていない研究デザインである。
【0006】
van Oosterhout et al., Blood, 2000, Vol. 95, No. 12, pp. 3693-3701(非特許文献1)には、抗CD3および抗CD7免疫毒素組み合わせ物を使用した、急性GVHDを処置するためのパイロット研究が記載されている。
【0007】
Keymeulen et al., Blood, 2010, Vol. 115, No. 6, pp. 1145-1155(非特許文献2)には、抗CD3抗体(TRX4)による1型糖尿病患者の処置がEBVの一過的な再活性化と関連していたことが報告されている。
【0008】
van Oosterhout et al., Int. J. Pharm, 2001, Vol. 221, pp. 175-186(非特許文献3)には、GVHDの処置に関するパイロット臨床試験のための抗CD3および抗CD7リシンA免疫毒素の免疫毒素カクテルの生成が記載されている。
【0009】
Campath(アレムツズマブ)による抗体療法は、例えば、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)の免疫療法のために使用されている。Campathは、全身および局所のステロイドに対して抵抗性を有する急性腸GVHDの処置において使用されている(Schnitzler et al., Biology of Blood and Marrow Transplantation, 2008, Vol. 15, No. 8, pp. 910-919(非特許文献4))。しかし、Campath療法の合併症は、日和見感染、具体的には、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)の再活性化のリスクが著しく増大することである(Schnitzler et al. ibid)。
【0010】
抗胸腺細胞グロブリン(ATG)による抗体療法は、臓器移植における急性拒絶反応の免疫療法および再生不良性貧血の療法のために使用されている。また、ATGは、GVHDの処置においても使用されている(Bacigalupo et al., Blood, 2001, Vol. 98, No. 10, pp. 2942-2947(非特許文献5))。しかし、致死的な感染のリスクがより高いことが報告された(Bacigalupo et al. ibid)。ATGによる早期処置は、ステロイド抵抗性aGVHD患者の生存を改善することが報告されている(MacMillan et al., Biology of Blood and Marrow Transplantation, 2002, Vol. 8, pp. 40-46(非特許文献6))。ステロイド抵抗性aGVHDについてATGに対して比較した、CD147抗原に対するハイブリドーマによって生成されたマウスIgMモノクローナル抗体であるABX-CBLの第2/3相多施設無作為化臨床試験では、急性ステロイド抵抗性GVHDの処置において、ABX-CBLがATGを超える改善を示さなかったことが見出された(MacMillan et al., Blood, 2007, Vol. 109, No. 6, pp. 2657-2662(非特許文献7))。
【0011】
多数の療法がaGVHDの処置において有望であることが示されているが、今日までの研究では、より後期の時点で生存患者において発症する慢性GVHD(cGVHD)の罹患率が飽くまでも高いことが報告されている。例えば、aGVHDの処置を受けた生存者の中でのcGVHDの発症率は44%~80%の範囲であると報告されている(Furlong et al., Bone Marrow Transplant., 2009, Vol. 44, No. 11, pp. 739-748(非特許文献8);Socie et al., Blood, 2017, Vol. 129, No. 5, pp. 643-649(非特許文献9);MacMillan et al., Biology of Blood and Marrow Transplantation, 2002, Vol. 8, pp. 40-46(非特許文献6);およびMacMillan et al., Blood, 2007, Vol. 109, No. 6 , pp. 2657-2662(非特許文献7)を参照)。
【0012】
移植後リンパ増殖性障害(PTLD)は、臓器移植後の治療的免疫抑制に起因するB細胞増殖に対して与えられた名称である。この疾患は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に潜伏感染しているB細胞リンパ球の制御不能な増殖である。
【0013】
以前の公知の免疫毒素療法では、毛細血管漏出症候群(CLS)を含む合併症が報告されている。これによって、免疫毒素療法を使用することができる患者が(例えば、処置前に少なくとも特定の血清アルブミンレベルを有する患者に制限され得る。毛細血管漏出症候群を含むおよび/またはそれに関連する合併症を最小限に抑える免疫毒素ベースの療法を提供することが望ましい。
【0014】
組み合わせ免疫毒素を保存および運搬するための公知の薬学的組成物は、特に、より高温における長期安定性に関して、多数の問題点を呈することが見出されている。具体的には、不溶性凝集物の出現が、このような薬学的組成物の有効期間に影響を与えるおよび/または長期にわたる低温保存を必要とする場合がある。
【0015】
したがって、抗T細胞免疫抑制は特定の重篤な免疫障害の処置において大いに有望であるが、このような免疫無防備状態の患者の中でのウイルス感染および/またはウイルス再活性化に対する予防的処置を含む処置法の選択肢に対するアンメットニーズ、ならびにaGVHDの処置後のcGVHDの罹患率を低減するおよび/または重度の毛細血管漏出症候群等の免疫毒素療法に関連する従来の合併症を最小限に抑えるもしくは回避する処置法の選択肢に対するアンメットニーズが依然として存在する。更なるアンメットニーズには、上述の病態を処置するための医薬の安定性の増大した製剤の提供が含まれる。本発明は、これらおよび他のニーズに対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】EP 0945139 A1
【文献】EP 1 066 058 B1
【文献】US 2006/051355
【文献】国際公開公報第98/55150号
【文献】US 2008/233128
【非特許文献】
【0017】
【文献】van Oosterhout et al., Blood, 2000, Vol. 95, No. 12, pp. 3693-3701
【文献】Keymeulen et al., Blood, 2010, Vol. 115, No. 6, pp. 1145-1155
【文献】van Oosterhout et al., Int. J. Pharm, 2001, Vol. 221, pp. 175-186
【文献】Schnitzler et al., Biology of Blood and Marrow Transplantation, 2008, Vol. 15, No. 8, pp. 910-919
【文献】Bacigalupo et al., Blood, 2001, Vol. 98, No. 10, pp. 2942-2947
【文献】MacMillan et al., Biology of Blood and Marrow Transplantation, 2002, Vol. 8, pp. 40-46
【文献】MacMillan et al., Blood, 2007, Vol. 109, No. 6, pp. 2657-2662
【文献】Furlong et al., Bone Marrow Transplant., 2009, Vol. 44, No. 11, pp. 739-748
【文献】Socie et al., Blood, 2017, Vol. 129, No. 5, pp. 643-649
【発明の概要】
【0018】
発明の簡単な説明
概して、本発明は、免疫調節処置、具体的には、T細胞指向性免疫抑制および/または炎症性サイトカインの抑制を受けている対象におけるウイルス感染またはウイルス再活性化を処置(予防的処置を含む)するための方法および手段に関する。本発明者らは、驚くべきことに、T-Guard(登録商標)組み合わせ療法(抗CD3および抗CD7の免疫毒素のカクテル)で処置されたヒト移植後患者等の対象が、標準的な免疫抑制対照で処置された患者と比較したとき、例えばヒトサイトメガロウイルス(CMV)および/またはエプスタイン・バーウイルス(EBV)によるウイルス感染および/またはウイルス再活性化の罹患率の低下を呈することを見出した。本明細書に記載のとおり、これは、日和見性ウイルス感染が特に問題であるとき、特に初期処置後相においてT-Guard(登録商標)で処置された患者の中での生存率の増大に反映される。ウイルス力価をモニタリングした患者では、T-Guard(登録商標)処置の最中または後(例えば、直後)にウイルス再活性化の消散(すなわち、スパイク後にウイルス力価がより低レベルに戻る)がみられた。
【0019】
したがって、第1の局面では、本発明は、免疫調節処置を受けている哺乳類対象における、ウイルス感染もしくはウイルス再活性化、またはウイルス感染もしくはウイルス再活性化のPTLDもしくはPMLへの進行の処置または予防的処置の方法において使用するための、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子と、CD7を特異的に認識する第2の抗体分子と、を含む組成物であって、第1および第2の抗体分子がそれぞれ毒素部分を備える、組成物を提供する。
【0020】
また、本発明の第1の局面は、免疫調節処置を受けている哺乳類対象における、ウイルス感染もしくはウイルス再活性化、またはウイルス感染もしくはウイルス再活性化のPTLDもしくはPMLへの進行の処置または予防的処置の方法において使用するための、CD3を特異的に認識しかつ毒素部分に連結している第1の抗体分子であって、CD7を特異的に認識しかつ毒素部分に連結している第2の抗体分子と、同時に、別々に、または逐次に投与するための、第1の抗体分子を提供する。
【0021】
また、本発明の第1の局面は、免疫調節処置を受けている哺乳類対象における、ウイルス感染もしくはウイルス再活性化、またはウイルス感染もしくはウイルス再活性化のPTLDもしくはPMLへの進行の処置または予防的処置の方法において使用するための、CD7を特異的に認識しかつ毒素部分に連結している抗体分子(「第2の抗体分子」)であって、CD3を特異的に認識しかつ毒素部分に連結している更なる抗体分子(「第1の抗体分子」)と、同時に、別々に、または逐次に投与するための、第2の抗体分子を提供する。
【0022】
本発明のこの局面に従って、組成物は、抗CD3および抗CD7の抗体分子の混合物もしくはカクテルの形態で提供されてもよく、または例えば別々の容器に包装もしくは収容された、抗CD3抗体分子を含む第1の組成物と、抗CD7抗体分子を含む第2の組成物と、を含むキットオブパーツの形態で提供されてもよい。キットオブパーツは、対象に投与する前に組み合わせるためのものであってもよく、または第1および第2の組成物が同じ対象にそれぞれ投与される、同時に、別々に、または逐次に投与するためのものであってもよい。
【0023】
一部の例では、前記第1および第2の抗体分子は、組成物(例えば、混合物またはカクテル)の形態で提供され、1または複数の用量の前記組成物を投与することによって対象に投与されるべきである。組成物は、例えば、そのそれぞれの毒素部分をそれぞれ有する第1および第2の抗体分子の混合物であって、第1および第2の抗体分子が、100:1~1:100、典型的には10:1~1:10、特定の例では2:1~1:2の範囲、例えば約1:1のモル比で存在する、混合物であってよい。
【0024】
一部の例では、ウイルスの感染または再活性化のウイルスは、HIV以外であってよい。特定の例では、ウイルス感染またはウイルス再活性化は、ヘルペスウイルス目のウイルスであってよい。具体的には、ウイルス感染は、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)およびエプスタイン・バーウイルス(EBV)から選択してよい。特定の例では、ウイルス感染またはウイルス再活性化は、ポリオーマウイルス科のJCウイルス(ジョンカニンガムウイルスとしても知られている)によるものであってよい。
【0025】
一部の例では、免疫調節処置は、免疫抑制処置である。具体的には、免疫調節処置は、T細胞指向性免疫抑制であってよい。特定の例では、免疫調節処置は、移植片対宿主病(GvHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置を含む。具体的には、自己免疫疾患は、構成要素として異常なT細胞活性を有する疾患であってよい。
【0026】
一部の例では、組成物は、免疫調節処置で使用されるのと同じ組成物である。すなわち、同時に、別々に、または逐次に投与するための1または複数の用量の組成物(例えば、T-Guard(登録商標))またはその構成要素である抗体分子は、2重の効果または2重の目的を達成するために対象に投与され得るか、または投与されるためのものであり得る。つまり、免疫抑制を必要とするT細胞媒介性病態の処置と、ウイルス感染もしくはウイルス再活性化またはPTLDもしくはPMLへの進行の処置または予防的処置である。
【0027】
一部の例では、第1の抗体分子および/または第2の抗体分子は、マウス抗体である。
【0028】
一部の例では、第1の抗体分子は、ヒトCD3に選択的に結合するIgG2bアイソタイプモノクローナル抗体である。具体的には、第1の抗体分子は、EP 0945139 AlおよびSpits et al., Hybridoma, 1983, Vol. 2, p. 423(これらの全内容は参照により明示的に本明細書に組み入れられる)において「SPV-T3a」と開示されている抗体であってよい。
【0029】
一部の例では、第2の抗体分子は、IgG2aアイソタイプモノクローナル抗体である。具体的には、第2の抗体分子は、EP 0945139 Al、およびTax et al., Monoclonal antibodies against human thymocytes and T lymphocytes. Protides of the biological fluids, 29th Colloquium,1981, edited by Peeters H, Pergamon Press, Oxford and New York, 1982、およびTax et al., Clin. Exp. Immunol., 1984, Vol. 55, p. 427(これらの全内容は参照により明示的に本明細書に組み入れられる)において「WT1」と開示されている抗体であってよい。
【0030】
一部の例では、第1の抗体および第2の抗体は、リシン、脱グリコシル化リシンA(dgRTA)、および非グリコシル化組み換えリシンAからなる群より選択される毒素部分にコンジュゲートしている。抗体は、任意の好適なコンジュゲーションまたはリンカーケミストリーを使用して、毒素部分、例えばリシンAにコンジュゲートし得る。具体的には、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP;Pharmacia)または4-スクシンイミジルオキシカルボニル-アルファ-メチル-α(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)をコンジュゲーションに使用してよい。毒素(例えば、リシンA)の抗体分子に対するコンジュゲーション比は、0.5:1~5:1の範囲であってよい。具体的には、毒素(例えば、リシンA)の抗体分子に対するコンジュゲーション比は、0.8:1~1.2:1の範囲であってよい。
【0031】
抗体の調製および毒素、例えばリシンAへのコンジュゲーションは、その全内容が参照により明示的に本明細書に組み入れられるEP 0945139 Al(その8ページ、段落[0063]~[0065]を参照)に記載されているとおりであってよい。完全組み換え免疫毒素(例えば、Fab、scFv、または切断可能なペプチドリンカーを通して組み換えリボソーム阻害タンパク質に連結しているSC mAbが本明細書において具体的に企図される。更にまたはあるいは、第1および第2の抗体分子は、単一の二重特異性(抗CD3/抗CD7)抗体として提供されてもよく、それによって、抗CD3/CD7-rRTA等の二重特異性免疫毒素が提供される。
【0032】
一部の例では、
第1の抗体;
第2の抗体;
該第1の抗体の毒素部分;および
該第2の抗体の毒素部分
のうちの少なくとも1つの免疫原性が低減されている。免疫原性低減ストラテジは、Epibase(登録商標)もしくはEpibase IV(登録商標)(Lonza Group AG)またはEpiMatrix T細胞エピトープマッピングシステム(EpiVax, Inc.)によって実施され得る。
【0033】
一部の例では、対象は、EBVおよび/またはCMVによるウイルス感染を有するかまたはリスクを有すると判定されたことがある。例えば、ドナーがEBVおよび/またはCMVの感染歴を有するかまたは有すると疑われ、EBV/CMV陰性レシピエントと組み合わせられる、ドナー-レシピエント移植組み合わせの場合である。更なる例は、抗T細胞療法で「前処置された(conditioned)」ことのある移植のレシピエントである。具体的には、対象は、血液1mLあたり1000ウイルスDNAコピーを超えるEBVおよび/またはCMVのウイルス力価を呈し得る。具体的には、対象は、免疫調節療法の最初の適用の7日前に始まり、免疫調節療法の最後の適用で終わる期間中の任意の時点で、増加したおよび/または上昇しているEBVおよび/またはCMVのウイルス力価を呈し得る。例えば、対象は、免疫調節処置の最初の適用の日またはその1日もしくは複数日前に、増加したEBVおよび/またはCMVの血漿ウイルス力価を提示し得る。あるいはまたは更に、対象は、上昇しているEBVおよび/またはCMVの血漿ウイルス力価(すなわち、1回目の測定と比較して2回目またはその後の測定においてより高い力価)を呈し得、これは、ウイルスの感染または再活性化が十分に制御されていないことを示唆する。増加したおよび/または上昇しているEBVおよび/またはCMVのウイルス力価を呈する、免疫無防備状態のヒト患者を含む対象は、T-Guard(登録商標)等の本発明の組成物による処置に特に適している可能性がある。
【0034】
いくつかの態様では、組成物は、本発明の第1の局面の組成物を投与した180日後におけるウイルス力価の低下(例えば、血液1mLあたり1000未満ウイルスDNAコピーのEBVおよび/またはCMVのウイルス力価)によって評価したとき、臨床的利益を提供する。
【0035】
一部の例では、組成物は、CD3+および/またはCD7+のT細胞を抑制および/または殺傷する。
【0036】
一部の例では、組成物は、CD3+および/またはCD7+のT細胞に比べてCD8+抗ウイルスT細胞を温存する。具体的には、組成物は、CMVおよび/またはEBVを標的とするCTL等の抗ウイルスT細胞を比較的温存しながら、CD3+およびCD7+のT細胞を標的とし得る。
【0037】
一部の例では、組成物は、PTLDの予防的処置を含む処置の方法において使用するためのものであってよい。一部の例では、組成物は、進行性多巣性白質脳症(PML)の予防的処置を含む処置の方法において使用するためのものであってよい。
【0038】
PMLは、複数の位置における脳の白質の進行性の損傷または炎症を特徴とする、稀な、通常致死性のウイルス疾患である。これは、通常免疫系による制御下で存在し、維持されるJCウイルスによって引き起こされる。JCウイルスは、免疫系が衰弱している場合を除いて、一般的に無害である。一般に、PMLは、最初の数ヶ月間における死亡率が30~50パーセントであり、生存者に様々な程度の神経性廃疾が残る場合がある。PMLは、重度の免疫不全の患者、最も一般的には、後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者においてほぼ排他的に生じるが、化学療法を含む慢性免疫抑制薬による治療を受けている人々、例えば、移植、ホジキンリンパ腫、多発性硬化症、乾癬、および他の自己免疫疾患の患者でもPMLのリスクが増大する。
【0039】
一部の例では、処置の方法の一部として、例えばCMVまたはEBVによるウイルスの感染および/または再活性化について対象をモニタリングする。すなわち、ウイルス力価、またはウイルス感染、ウイルス増殖、もしくはウイルス再活性化の徴候を測定するために、対象、またはより正式には、対象から入手した血液もしくは血漿のサンプル等のサンプルを分析してもよい。あるいはまたは更に、ウイルス感染の症状等、ウイルスの感染または再活性化の間接的な徴候について対象をモニタリングしてもよい。このようなモニタリングは、処置の前、最中、および/または後に実施してよい。具体的な例では、モニタリングは、処置の過程において定期的に実施してよく、例えば、毎日または毎週ウイルス力価を決定する。一部の例では、ウイルスの感染および/または再活性化について対象をモニタリングすることは、免疫調節処置の前、最中、および/または後に少なくとも1回ウイルス力価を測定することを含む。特定の例では、モニタリングは、リアルタイム定量PCRによって血漿ウイルス力価を測定することを含む。
【0040】
一部の例では、対象は、予防的抗ウイルス薬で処置されているかまたは処置されたことがある。例えば、対象は、アシクロビル(登録商標)による処置の過程を経験したことがあってよい。
【0041】
第2の局面では、本発明は、ウイルス感染またはウイルス再活性化を有するかまたはリスクを有する哺乳類対象を処置する方法であって、それぞれ毒素部分を備える、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子およびCD7を特異的に認識する第2の抗体分子の、治療的に有効な量を、同時に、別々に、または逐次に、前記処置を必要としている対象に投与する工程を含み、該対象が免疫調節処置を受けている、方法を提供する。一部の例では、前記第1および第2の抗体分子は、組成物(例えば、混合物またはカクテル)の形態で提供され、1または複数の用量の前記組成物を投与することによって対象に投与される。組成物は、例えば、そのそれぞれの毒素部分をそれぞれ有する第1および第2の抗体分子の混合物であって、第1および第2の抗体分子が、100:1~1:100、典型的には10:1~1:1、特定の例では2:1~1:2の範囲、例えば約1:1のモル比で存在する混合物であってよい。
【0042】
いくつかの態様では、処置の方法は、第1および第2の抗体を投与した180日後におけるウイルス力価の低下(例えば、血液1mLあたり1000未満ウイルスDNAコピーのEBVおよび/またはCMVのウイルス力価)によって評価したとき、臨床的利益を提供する。
【0043】
本発明の第1の局面の組成物、選択肢、および他の特徴は、本発明の第2の局面にも等しく適用される。
【0044】
第3の局面では、本発明は、免疫調節処置を受けている哺乳類対象におけるウイルス感染またはウイルス再活性化の処置または予防的処置の方法において使用するための医薬の調製における、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子と、CD7を特異的に認識する第2の抗体分子と、を含む組成物の使用であって、第1および第2の抗体分子がそれぞれ毒素部分を備える、使用を提供する。第1および第2の抗体は、1または複数の用量の組成物を投与することによって対象に投与される組成物(例えば、混合物またはカクテル)として提供され得る。あるいは、第1および第2の抗体は、例えば別々の容器に包装または収容されている、抗CD3抗体分子を含む第1の組成物と抗CD7抗体分子を含む第2の組成物とを含むキットオブパーツの形態で提供されてもよい。キットオブパーツは、対象に投与する前に組み合わせるためのものであってもよく、または第1および第2の組成物が同じ対象にそれぞれ投与される、同時に、別々に、または逐次に投与するためのものであってもよい。
【0045】
本発明の第1の局面の組成物、選択肢、および他の特徴は、本発明の第3の局面にも等しく適用される。
【0046】
第4の局面では、本発明は、免疫調節処置を受けている哺乳類対象における慢性移植片対宿主病(cGVHD)の処置または予防的処置の方法において使用するための、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子と、CD7を特異的に認識する第2の抗体分子と、を含む組成物であって、第1および第2の抗体分子がそれぞれ毒素部分を備える、組成物を提供する。
【0047】
いくつかの態様では、組成物は、免疫調節処置の180日後におけるcGVHDの罹患率によって測定したときに臨床的利益を提供するためのcGVHDの予防的処置において使用するためのものであってよい。
【0048】
いくつかの態様では、免疫調節処置は、急性移植片対宿主病(aGVHD)の処置を含む。例えば、aGVHDについての治療的利益を提供するため、および、(例えば、組成物、例えばT-Guard(登録商標)による処置の180日後に測定したとき)cGVHDを発症する確率の低下という形での臨床的利益を提供するために、同種幹細胞移植を受け、aGVHD、特にステロイド不応性aGVHDを既に発症している患者を、組成物、例えばT-Guard(登録商標)で処置してよい。
【0049】
いくつかの態様では、組成物は、免疫調節処置のために使用されるのと同じ組成物であり、したがって、組成物は2重の目的のために投与される。つまり、aGVHDの処置およびcGVHDの予防的処置である。
【0050】
本発明の第4の局面に関して、第1および第2の抗体分子は、本発明の第1の局面に従って定義されるとおりであってよい。
【0051】
第5の局面では、本発明は、慢性移植片対宿主病(cGVHD)を有するかまたは発症するリスクを有する哺乳類対象を処置する方法であって、それぞれ毒素部分を備える、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子およびCD7を特異的に認識する第2の抗体分子の、治療的に有効な量を、同時に、別々に、または逐次に、前記処置を必要としている対象に投与する工程を含み、該対象が免疫調節処置を受けている、方法を提供する。一部の例では、前記第1および第2の抗体分子は、組成物(例えば、混合物またはカクテル)の形態で提供され、1または複数の用量の前記組成物を投与することによって対象に投与される。組成物は、例えば、そのそれぞれの毒素部分をそれぞれ有する第1および第2の抗体分子の混合物であって、第1および第2の抗体分子が、100:1~1:100、典型的には10:1~1:10、特定の例では2:1~1:2の範囲、例えば約1:1のモル比で存在する混合物であってよい。
【0052】
本発明の第1の局面の組成物、選択肢、および他の特徴は、本発明の第5の局面にも等しく適用される。
【0053】
いくつかの態様では、免疫調節処置は、急性移植片対宿主病(aGVHD)の処置を含む。例えば、aGVHDについての治療的利益を提供するため、および、(例えば、組成物、例えばT-Guard(登録商標)による処置の180日後に測定したとき)cGVHDを発症する確率の低下という形での臨床的利益を提供するために、同種幹細胞移植を受け、aGVHD、特にステロイド不応性aGVHDを既に発症している患者を、組成物、例えばT-Guard(登録商標)で処置してよい。
【0054】
いくつかの態様では、組成物は、免疫調節処置のために使用されるのと同じ組成物であり、したがって、組成物は2重の目的のために投与される。つまり、aGVHDの処置およびcGVHDの予防的処置である。
【0055】
第6の局面では、本発明は、
(i)0.05~0.5mg/mL、任意で0.2mg/mLの、CD3を特異的に認識し、かつ、少なくとも1つのリシン毒素A(RTA)にコンジュゲートしているモノクローナル抗体分子、および/または
0.05~0.5mg/mL、任意で0.2mg/mLの、CD7を特異的に認識し、かつ、少なくとも1つのRTAにコンジュゲートしているモノクローナル抗体分子;
(ii)5~20mM、任意で10mMのクエン酸塩バッファ;
(iii)50~300mM、任意で75~200mMまたは125mMのL-アルギニンまたはその薬学的に許容される塩;
(vi)0.01~0.1%(w/v)、任意で0.05%(w/v)のポリソルベート
を含み、
水中に存在し、かつ、6~7.5の範囲、任意で6.5のpHを有する、薬学的組成物を提供する。
【0056】
いくつかの態様では、CD3を特異的に認識する抗体分子は、ヒトCD3に選択的に結合するマウスIgG2bアイソタイプモノクローナル抗体である。具体的には、抗体はSPV-T3aであってよい。
【0057】
いくつかの態様では、CD7を特異的に認識する抗体分子は、ヒトCD7に選択的に結合するマウスIgG2aアイソタイプモノクローナル抗体である。具体的には、抗体はWT1であってよい。
【0058】
特定の態様では、SPV-T3aおよびWT1の両方が組成物中に存在する。一部の例では、各抗体は、抗体分子1個あたり平均1~2個のRTA(例えば、脱グリコシル化RTA(dgRTA))分子にコンジュゲートしている。一部の例では、コンジュゲーションは、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-アルファ-メチル-α(2-ピリジルジチオ)トルエン架橋剤を介する。
【0059】
いくつかの態様では、クエン酸塩バッファは、クエン酸と塩、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウム、またはクエン酸アンモニウムを形成する薬学的に許容される塩基を含む。特定の態様では、クエン酸塩バッファは、クエン酸ナトリウムを含む。
【0060】
いくつかの態様では、L-アルギニン塩は、L-アルギニン.HClである。
【0061】
いくつかの態様では、ポリソルベートは、Tween(登録商標)20である。
【0062】
いくつかの態様では、組成物は、
120~160mMのマルトース;
100~150mM、任意で125mMのトレハロース;
25~75mM、任意で50mMのグリシン;および
80~120mM、任意で100mMのマンニトール
から選択される少なくとも1つの作用物質を更に含む。
【0063】
具体的には、組成物は、130~150mM、任意で140mMのマルトース一水和物を含み得る。
【0064】
いくつかの態様では、組成物は、
(i)0.2mg/mLのSPV-T3a-dgRTAおよび0.2mg/mLのWT1-dgRTA;
(ii)10mMのクエン酸ナトリウム/クエン酸バッファ;
(iii)125mMのL-アルギニン.HCl;
(iv)0.05%(w/v)のTween(登録商標)20;
(v)140mMのマルトース一水和物
を含み、
注射用水中に存在し、かつ、6.5のpHを有する。
【0065】
いくつかの態様では、組成物は無菌である。いくつかの態様では、組成物は、注射に好適である。
【0066】
第7の局面では、本発明は、本発明の第6の局面の組成物の凍結乾燥形態である、凍結乾燥組成物を提供する。凍結乾燥組成物は、例えば、水または水溶液で再構成して、本発明の第6の局面の組成物を形成するのに好適であり得る。
【0067】
第8の局面では、本発明は、本発明の第2の局面の処置の方法で使用するためのおよび/または本発明の第5の局面の処置の方法で使用するための、本発明の第6または第7の局面の薬学的組成物を提供する。
【0068】
第9の局面では、本発明は、本発明の第2の局面の処置の方法で使用するためのおよび/または本発明の第5の局面の処置の方法で使用するための医薬の調製における、本発明の第6または第7の局面の組成物の使用を提供する。
【0069】
第10の局面では、本発明は、
本発明の第6または第7の局面の組成物をその中に有する容器または筐体と;
本発明の第2の局面の処置の方法における組成物の使用についておよび/または本発明の第5の局面の処置の方法における使用についての指示を含むラベルまたは添付文書と
を含む製造物品を提供する。一部の例では、容器または筐体は、例えば、封止および/または気密の栓を用いて、無菌性を保持する。
【0070】
第11の局面では、本発明は、薬において使用するための、本発明の第6または第7の局面の組成物を提供する。
【0071】
第12の局面では、本発明は、哺乳類対象における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置の方法において使用するための、本発明の第6または第7の局面の組成物を提供する。
【0072】
第13の局面では、本発明は、哺乳類対象における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置の方法であって、それを必要としている対象に、本発明の第6または第7の局面の組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0073】
第14の局面では、本発明は、哺乳類対象における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫を処置するための医薬の調製における、本発明の第6または第7の局面の組成物の使用を提供する。
【0074】
第15の局面では、本発明は、
本発明の第6または第7の局面の組成物をその中に有する容器または筐体と;
哺乳類対象における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置の方法における組成物の使用についての指示を含むラベルまたは添付文書と
を含む製造物品を提供する。一部の例では、容器または筐体は、例えば、封止および/または気密の栓を用いて、無菌性を保持する。
【0075】
第16の局面では、本発明は、それぞれ毒素部分を備える、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子およびCD7を特異的に認識する第2の抗体分子を含む、組成物であって、組成物の投与前に測定したときに30g/L未満の血清アルブミンレベルを有するヒト患者における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置の方法において使用するための組成物を提供する。
【0076】
いくつかの態様では、組成物患者は、10g/L~30g/L、任意で15g/L~25g/Lの血清アルブミンレベルを有する。いくつかの態様では、組成物は、前記組成物の投与後のグレード3以上の毛細血管漏出症候群(CLS)の罹患率によって測定したときに臨床的利益を提供する方法において使用するためのものである。いくつかの態様では、第1および第2の抗体分子は、本発明の第1の局面に関して定義されたとおりである。いくつかの態様では、組成物は、本発明の第6の局面に関して定義されたとおりである。
【0077】
第17の局面では、本発明は、ヒト患者における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫を処置するための方法であって、前記処置を必要としており、かつ組成物の投与前に測定したときに30g/L未満の血清アルブミンレベルを有する患者に、それぞれ毒素部分を備える、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子およびCD7を特異的に認識する第2の抗体分子の、治療的に有効な量を、同時に、別々に、または逐次に投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの態様では、患者は、10g/L~30g/L、任意で15g/L~25g/Lの血清アルブミンレベルを有する。いくつかの態様では、該方法は、投与後のグレード3以上の毛細血管漏出症候群(CLS)の罹患率によって測定したときに臨床的利益を提供するためのものである。いくつかの態様では、第1および第2の抗体分子は、本発明の第1の局面に関して定義されたとおりである。いくつかの態様では、組成物は、本発明の第6の局面に関して定義されたとおりである。
【0078】
第18の局面では、本発明は、組成物の投与前に測定したときに30g/L未満の血清アルブミンレベルを有するヒト患者における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫を処置するための医薬の調製における、それぞれ毒素部分を備える、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子およびCD7を特異的に認識する第2の抗体分子を含む組成物の使用を提供する。いくつかの態様では、患者は、10g/L~30g/L、任意で15g/L~25g/Lの血清アルブミンレベルを有する。いくつかの態様では、医薬は、投与後のグレード3以上の毛細血管漏出症候群(CLS)の罹患率によって測定したときに臨床的利益を提供するためのものである。いくつかの態様では、第1および第2の抗体分子は、本発明の第1の局面に関して定義されたとおりである。いくつかの態様では、組成物は、本発明の第6の局面に関して定義されたとおりである。
【0079】
[本発明1001]
免疫調節処置を受けている哺乳類対象におけるウイルス感染またはウイルス再活性化の処置または予防的処置の方法において使用するための、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子と、CD7を特異的に認識する第2の抗体分子と、を含む組成物であって、第1および第2の抗体分子がそれぞれ毒素部分を備える、組成物。
[本発明1002]
ウイルス感染またはウイルス再活性化が、ヘルペスウイルス目またはポリオーマウイルス科のウイルスによるものである、本発明1001の使用のための組成物。
[本発明1003]
ウイルス感染またはウイルス再活性化が、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、およびJCウイルスからなる群より選択される、本発明1002の使用のための組成物。
[本発明1004]
免疫調節処置が、移植片対宿主病(GvHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置を含む、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1005]
免疫調節処置に使用されるのと同じ組成物である、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1006]
第1の抗体分子および/または第2の抗体分子が、マウス抗体である、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1007]
第1の抗体分子が、ヒトCD3に選択的に結合するIgG2bアイソタイプモノクローナル抗体である、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1008]
第1の抗体分子が、抗体SPV-T3aである、本発明1007の使用のための組成物。
[本発明1009]
第2の抗体分子が、IgG2aアイソタイプモノクローナル抗体である、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1010]
第2の抗体分子が、抗体WT1である、本発明1009の使用のための組成物。
[本発明1011]
第1の抗体および第2の抗体が、リシン、脱グリコシル化リシンA(dgRTA)、および非グリコシル化組み換えリシンAからなる群より選択される毒素部分にコンジュゲートしている、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1012]
第1の抗体;
第2の抗体;
該第1の抗体の毒素部分;および
該第2の抗体の毒素部分
のうちの少なくとも1つの免疫原性が低減されている、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1013]
対象が、EBVおよび/またはCMVによるウイルス感染を有するかまたはリスクを有すると判定されたことがある、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1014]
対象が、血液1mLあたり1000ウイルスDNAコピーを超える、EBVおよび/またはCMVのウイルス力価を呈する、本発明1013の使用のための組成物。
[本発明1015]
対象が、免疫調節療法の最初の適用の14日前に始まり、該免疫調節療法の最後の適用で終わる期間中の任意の時点で、増加したおよび/または上昇している、EBVおよび/またはCMVのウイルス力価を呈する、本発明1013または本発明1014の使用のための組成物。
[本発明1016]
CD3+および/またはCD7+のT細胞を抑制および/または殺傷する、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1017]
CD3+および/またはCD7+のT細胞に比べてCD8+抗ウイルスT細胞を温存する、本発明1016の使用のための組成物。
[本発明1018]
(i)処置の方法が、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)および/もしくは進行性多巣性白質脳症(PML)の予防を含む;ならびに/または
(ii)ウイルスの感染および/もしくは再活性化について対象がモニタリングされる、
前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1019]
ウイルスの感染および/または再活性化について対象をモニタリングすることが、免疫調節処置の前、間、および/または後に少なくとも1回
ウイルス力価の測定;
ウイルス培養;
ウイルス抗原の検出;
ウイルス血清検査;および/または
免疫組織学的検査
を行うことを含む、本発明1018(ii)の使用のための組成物。
[本発明1020]
モニタリングが、リアルタイム定量PCRによって血漿ウイルス力価を測定することを含む、本発明1019の使用のための組成物。
[本発明1021]
対象が、予防的抗ウイルス薬で処置されているか、または処置されたことがある、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1022]
第1の抗体分子を含む第1のパートと第2の抗体分子を含む第2のパートとを含むキットオブパーツの形態で提供され、第1および第2のパートが、同時に、別々に、または逐次に対象に投与するためのものである、前記本発明のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1023]
ウイルス感染またはウイルス再活性化を有するかまたはリスクを有する哺乳類対象を処置する方法であって、
それぞれ毒素部分を備える、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子およびCD7を特異的に認識する第2の抗体分子の、治療的に有効な量を、同時に、別々に、または逐次に、前記処置を必要としている対象に投与する工程を含み、
前記対象が免疫調節処置を受けている、方法。
[本発明1024]
第1および第2の抗体分子が、1または複数の用量の組成物の形態で提供され、前記組成物が、前記第1および第2の抗体分子を100:1~1:100のモル比で含む、本発明1023の方法。
[本発明1025]
ウイルス感染またはウイルス再活性化が、ヘルペスウイルス目またはポリオーマウイルス科のウイルスによるものである、本発明1023または本発明1024の方法。
[本発明1026]
ウイルス感染またはウイルス再活性化が、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、およびJCウイルスからなる群より選択される、本発明1025の方法。
[本発明1027]
免疫調節処置が、移植片対宿主病(GvHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置を含む、本発明1023~1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
組成物が、免疫調節処置に使用されるのと同じ組成物である、本発明1023~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
第1の抗体分子および/または第2の抗体分子が、マウス抗体である、本発明1023~1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
第1の抗体分子が、ヒトCD3に選択的に結合するIgG2bアイソタイプモノクローナル抗体である、本発明1023~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
第1の抗体分子が、抗体SPV-T3aである、本発明1030の方法。
[本発明1032]
第2の抗体分子が、IgG2aアイソタイプモノクローナル抗体である、本発明1023~1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
第2の抗体分子が、抗体WT1である、本発明1032の方法。
[本発明1034]
第1の抗体および第2の抗体が、リシン、脱グリコシル化リシンA(dgRTA)、および非グリコシル化組み換えリシンAからなる群より選択される毒素部分にコンジュゲートしている、本発明1023~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
第1の抗体;
第2の抗体;
該第1の抗体の毒素部分;および
該第2の抗体の毒素部分
のうちの少なくとも1つの免疫原性が低減されている、本発明1023~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
対象が、EBVおよび/またはCMVによるウイルス感染を有するかまたはリスクを有すると判定されたことがある、本発明1023~1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
対象が、血液1mLあたり1000ウイルスDNAコピーを超える、EBVおよび/またはCMVのウイルス力価を呈する、本発明1036の方法。
[本発明1038]
対象が、免疫調節処置の最初の適用の14日前に始まり、免疫調節処置の最後の適用で終わる期間中の任意の時点で、増加したおよび/または上昇している、EBVおよび/またはCMVのウイルス力価を呈する、本発明1036または本発明1037の方法。
[本発明1039]
組成物が、CD3+および/またはCD7+のT細胞を抑制および/または殺傷する、本発明1023~1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
組成物が、CD3+および/またはCD7+のT細胞に比べてCD8+抗ウイルスT細胞を温存する、本発明1039の方法。
[本発明1041]
移植後リンパ増殖性障害(PTLD)および/または進行性多巣性白質脳症(PML)の予防を含む、本発明1023~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
ウイルスの感染および/または再活性化について対象をモニタリングすることを更に含む、本発明1023~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
ウイルスの感染および/または再活性化について対象をモニタリングすることが、免疫調節処置の前、間、および/または後に少なくとも1回
ウイルス力価の測定;
ウイルス培養;
ウイルス抗原の検出;
ウイルス血清検査;および/または
免疫組織学的検査
を行うことを含む、本発明1042の方法。
[本発明1044]
モニタリングが、リアルタイム定量PCRによって血漿ウイルス力価を測定することを含む、本発明1043の方法。
[本発明1045]
対象が、予防的抗ウイルス薬で処置されているか、または処置されたことがある、本発明1023~1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
抗ウイルス薬がアシクロビルを含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
免疫調節処置を受けている哺乳類対象における慢性移植片対宿主病(cGVHD)の処置または予防的処置の方法において使用するための、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子と、CD7を特異的に認識する第2の抗体分子と、を含む組成物であって、第1および第2の抗体分子がそれぞれ毒素部分を備える、組成物。
[本発明1048]
免疫調節処置の180日後におけるcGVHDの罹患率によって測定したときに臨床的利益を提供するためのcGVHDの予防的処置において使用するための、本発明1047の使用のための組成物。
[本発明1049]
前記本発明のいずれかの使用のための組成物であり、免疫調節処置が急性移植片対宿主病(aGVHD)の処置を含む、本発明1047または本発明1048の使用のための組成物。
[本発明1050]
免疫調節処置に使用されるのと同じ組成物である、本発明1047~1049のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1051]
第1および第2の抗体分子が、本発明1006~1011のいずれかに定義されるとおりである、本発明1047~1050のいずれかの使用のための組成物。
[本発明1052]
慢性移植片対宿主病(cGVHD)を有するかまたは発症するリスクを有する哺乳類対象を処置する方法であって、
それぞれ毒素部分を備える、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子およびCD7を特異的に認識する第2の抗体分子の、治療的に有効な量を、同時に、別々に、または逐次に、前記処置を必要としている対象に投与する工程を含み、
該対象が免疫調節処置を受けている、方法。
[本発明1053]
免疫調節処置が、急性移植片対宿主病(aGVHD)の処置を含む、本発明1052の方法。
[本発明1054]
免疫調節処置の180日後におけるcGVHDの罹患率によって測定したときに臨床的利益を提供するためのcGVHDの予防的処置の方法である、本発明1053の方法。
[本発明1055]
第1および第2の抗体分子が、本発明1006~1011のいずれかに定義されるとおりである、本発明1052~1054のいずれかの方法。
[本発明1056]
(i)0.05~0.5mg/mL、任意で0.2mg/mLの、CD3を特異的に認識しかつ少なくとも1つのリシン毒素A(RTA)にコンジュゲートしているモノクローナル抗体分子、および/または
0.05~0.5mg/mL、任意で0.2mg/mLの、CD7を特異的に認識しかつ少なくとも1つのRTAにコンジュゲートしているモノクローナル抗体分子;
(ii)5~20mM、任意で10mMのクエン酸塩バッファ;
(iii)50~300mM、任意で75~200mMまたは125mMのL-アルギニンまたはその薬学的に許容される塩;
(vi)0.01~0.1%(w/v)、任意で0.05%(w/v)のポリソルベート
を含み、
水中に存在し、かつ、6~7.5の範囲、任意で6.5のpHを有する、薬学的組成物。
[本発明1057]
(a)CD3を特異的に認識する抗体分子が、ヒトCD3に選択的に結合するマウスIgG2bアイソタイプモノクローナル抗体である、および/または
(b)CD7を特異的に認識する抗体分子が、ヒトCD7に選択的に結合するマウスIgG2aアイソタイプモノクローナル抗体である、
本発明1056の組成物。
[本発明1058]
CD3を特異的に認識する抗体分子がSPV-T3aであり、および/またはCD7を特異的に認識する抗体分子がWT1である、本発明1057の組成物。
[本発明1059]
SPV-T3aおよびWT1が両方とも存在し、かつ、それぞれが、抗体分子1個あたり平均1~2個の脱グリコシル化RTA(dgRTA)分子にコンジュゲートしており、
コンジュゲーションが、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-アルファ-メチル-α(2-ピリジルジチオ)トルエン架橋剤を介する、
本発明1058の組成物。
[本発明1060]
(a)クエン酸塩バッファが、クエン酸ナトリウムもしくはクエン酸カリウムを含む;
(b)L-アルギニン塩が、L-アルギニン.HClである;および/または
(c)ポリソルベートが、Tween(登録商標)20である、
本発明1056~1059のいずれかの組成物。
[本発明1061]
120~160mMのマルトース;
100~150mM、任意で125mMのトレハロース;
25~75mM、任意で50mMのグリシン;および
80~120mM、任意で100mMのマンニトール
から選択される少なくとも1つの作用物質を更に含む、本発明1056~1060のいずれかの組成物。
[本発明1062]
少なくとも1つの作用物質が、130~150mM、任意で140mMのマルトース一水和物である、本発明1061の組成物。
[本発明1063]
(i)0.2mg/mLのSPV-T3a-dgRTAおよび0.2mg/mLのWT1-dgRTA;
(ii)10mMのクエン酸ナトリウム/クエン酸バッファ;
(iii)125mMのL-アルギニン.HCl;
(iv)0.05%(w/v)のTween(登録商標)20;
(v)140mMのマルトース一水和物
を含み、
注射用水中に存在し、かつ、6.5のpHを有する、本発明1056~1062のいずれかの組成物。
[本発明1064]
本発明1056~1063のいずれかに定義されるとおりの組成物の凍結乾燥形態であり、水または水溶液で再構成して本発明1056~1063のいずれかの組成物を形成するのに好適である、凍結乾燥組成物。
[本発明1065]
本発明1023~1046のいずれかおよび/または本発明1052~1055のいずれかの方法において使用するための、本発明1056~1064のいずれかの組成物。
[本発明1066]
薬において使用するための、本発明1056~1064のいずれかの組成物。
[本発明1067]
哺乳類対象における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置の方法において使用するための、本発明1056~1064のいずれかの組成物。
[本発明1068]
それぞれ毒素部分を備える、CD3を特異的に認識する第1の抗体分子と、CD7を特異的に認識する第2の抗体分子とを含む、組成物であって、前記組成物の投与前に測定したときに30g/L未満の血清アルブミンレベルを有するヒト患者における急性移植片対宿主病(aGVHD)、移植片拒絶反応、自己免疫疾患、T細胞白血病、またはT細胞リンパ腫の処置の方法において使用するための、組成物。
[本発明1069]
患者が、10g/L~30g/L、任意で15g/L~25g/Lの血清アルブミンレベルを有する、本発明1068の使用のための組成物。
[本発明1070]
組成物の投与後のグレード3以上の毛細血管漏出症候群(CLS)の罹患率によって測定したときに臨床的利益を提供する方法において使用するための、本発明1068または本発明1069の使用のための組成物。
[本発明1071]
第1および第2の抗体分子が、本発明1006~1011のいずれかに定義されるとおりであるか、または組成物が、本発明1056~1064のいずれかに定義されるとおりである、本発明1068~1070のいずれかの使用のための組成物。
本発明は、明確に容認できないまたは明示的に回避すべきであると述べられている場合を除いて、記載されている局面および好ましい特徴の組み合わせを含む。本発明のこれらおよび更なる局面および態様は、以下に更に詳細に、付随する実施例および図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】研究対象集団の百分率として表される、対照(n=21)(バー1および3)およびT-Guard(登録商標)処置(n=6)(バー2および4)についての28日目の奏効率(バー1および2)および6ヶ月全生存率(バー3および4)を示す。奏効率および生存率はいずれもT-Guard(登録商標)処置群においてより高かった。
【
図2】対照(施設の標準治療)で処置された患者についての生存曲線(x軸におけるGvHD後の時間(月)に対してy軸に生存をプロット)を示す。<6ヶ月の初期相は、不応性GvHDおよび感染に関連する生存率の急速な下降を呈し;>6ヶ月の後期相は、基礎疾患の再発に関連する生存率の緩やかな下降を呈する。
【
図3】対照(施設の標準治療)(n=20)およびT-Guard(登録商標)(n=6)で最長6ヶ月間処置された患者についての2本の生存曲線(x軸におけるGvHD後の時間(月)に対してy軸に生存率をプロット)を示す。T-Guard(登録商標)で処置された患者は、対照群よりも高い生存率を呈する。
【
図4】T-Guard(登録商標)(矢印によって示されるとおり、48時間間隔で与えられる4回の輸注)で処置された患者についての、処置開始後の時間(日)に対してプロットされたEBV(丸)およびCMV(三角)の力価のプロットを示す。T-Guard(登録商標)処置およびその後の休薬の後、250000DNAコピー/mLの測定レベルに達したEBV力価は、後日著しい下降を呈したことが明らかである。
【
図5】T-Guard(登録商標)(矢印によって示されるとおり、48時間間隔で与えられる4回の輸注)で処置された患者(
図4で処置された患者とは異なる)についての、処置開始後の時間(日)に対してプロットされたEBV(丸)およびCMV(三角)の力価のプロットを示す。T-Guard(登録商標)処置後にCMV力価が下降したことは明らかである。更に、T-Guard(登録商標)処置およびその後の休薬の後、処置開始の14日間後に、EBV力価の著しい下降がみられた。
【
図6】T-Guard(登録商標)で処置された患者から入手した、1人の患者のFACS細胞選別結果の例を示す。左側のパネルは、CD8 FITCに対してプロットされたCD3 cy7を示す。右側のパネルは、CMV APCに対してプロットされたCMV PEを示す。テトラマーを用いた患者02-02の循環T細胞の分析から、処置開始後3週間以内にCD8陽性T細胞画分内においてCMV反応性細胞の割合が高い(17.38%)ことが明らかになった。
【
図7】T-Guard(登録商標)で処置された患者および歴史的対照で処置された患者についての、28日目における全臨床反応(ORR)および6ヶ月目における全生存率(OS)を示す。T-Guard(登録商標)で処置された結果(n=20)をバー2および4に示し;歴史的対照(n=42;Nijmegen、NL(n=21):イノリモマブ/エタネルセプト;Munster、DE(n=21):インフリキシマブ)をバー1および3に示す。CR=完全奏効(バー1および2のより陰影の濃いバーの下方部分)。PR=部分奏効(より陰影の薄いバーの上方部分)。y軸は、研究対象集団における百分率を示す。CRおよびOSは、歴史的対照よりもT-Guard(登録商標)で処置された患者において高い。
【
図8】T-Guard(登録商標)で処置された患者(n=20;橙色;およそ1ヶ月以降上方の曲線)および歴史的対照で処置された患者(n=42;灰色;およそ1ヶ月以降下方の曲線)の全生存率(OS)のカプラン・マイヤー曲線を示す。y軸は、OS(%)であり;x軸は、第2選択処置後の経過観察時間(月)である。6ヶ月OSは、歴史的対照についての29%に対して、T-Guard(登録商標)処置について60%であった。コックス回帰分析からP=0.02が得られた。
【
図9】抗体-毒素コンジュゲートを調製および精製して薬学的に許容される生成物組成物を得るためのステップ・バイ・ステッププロセスのフローチャート図を示す(「プロセスA」)。中央の横線よりも上方のコンジュゲーションおよび精製の工程は、pH7.5の25mMリン酸塩バッファ中で実施され;横線よりも下方の工程は、pH6.5の10mMクエン酸塩バッファ中で実施される。
【
図10】抗体-毒素コンジュゲートを調製および精製して薬学的に許容される生成物組成物を得るための別のステップ・バイ・ステッププロセスのフローチャート図を示す(「プロセスB」)。プロセスAとの違いは、10mMクエン酸塩バッファへの変更が、更に上流で上方の横線によって示される時点において行われる点である。上方の横線よりも下の工程は、pH6.5の10mMクエン酸塩バッファ中で実施される。
【
図11】T-Guard(登録商標)処置が、多様なT細胞レパートリーによる迅速な免疫再構築を誘導することを示す。(A)T-Guard(登録商標)療法の前(スクリーニング)、ならびに1ヶ月間後(M1)、3ヶ月間後(M3)、および6ヶ月間後(M6)の21人の患者について、固有のCDR3配列の総数によって測定したときの固有のT細胞クローンの数を示す(ウィルコクソンマッチドペア符号順位検定)。T-Guard(登録商標)療法の後最初の6ヶ月間以内に固有のT細胞クローンが著しく増加し、これは、T細胞内の多様性の拡大を強調する。T-Guard(登録商標)療法の前(C)、療法の1ヶ月間後(D)、3ヶ月間後(E)、および6ヶ月間後(F)の1人の患者の血中T細胞レパートリー。
【
図12】T-Guard(登録商標)投与によって例示される、本発明の免疫毒素組み合わせ物の推定作用機序を描いたイラストを示す。毒素によって誘導されるアポトーシス(抗CD3および抗CD7指向性)およびアロ活性化の阻害の両方が関与していると考えられる。
【
図13】歴史的対照と比較した、CD3/CD7-ITで処置した後28日目における奏効率(上)および6ヶ月全生存率(下)の概要。CD3/CD7-ITおよび歴史的対照を受けた患者間の差は統計的に有意であり、完全寛解率(p=0.012)および6ヶ月生存率(p=0.021)の両方が改善した。
【
図14-1】CD3/CD7-ITは、多様なT細胞レパートリーによる急速な免疫再構築を誘導する。(A~C)全患者についての、T細胞数中央値(A)、NK細胞数中央値(B)、およびB細胞数中央値(C)の時間経過。各プロットにおいて、青色の線は中央値を表し、下方および上方の灰色の点線は、それぞれ、第一四分位数および第三四分位数を表す。(D)CD3/CD7-ITの投与前(Pre)ならびに処置の1、3、および6ヶ月後の固有のT細胞クローンの絶対数の概略。固有のCDR3配列の総数を使用して、固有のT細胞クローンの数を測定した。p値は、ウィルコクソンマッチドペア符号順位検定に基づく。CD3/CD7-IT療法の6ヶ月後の固有のT細胞クローンの著しい増大は、拡大されたT細胞の多様性の増大を反映している。(E~H)療法前(E)、ならびにCD3/CD7-IT療法の1ヶ月後(F)、3ヶ月後(G)、および6ヶ月後(H)における、1人の患者におけるT細胞レパートリーを示す代表的なヒストグラム。
【
図14-2】CD3/CD7-ITは、多様なT細胞レパートリーによる急速な免疫再構築を誘導する。(A~C)全患者についての、T細胞数中央値(A)、NK細胞数中央値(B)、およびB細胞数中央値(C)の時間経過。各プロットにおいて、青色の線は中央値を表し、下方および上方の灰色の点線は、それぞれ、第一四分位数および第三四分位数を表す。(D)CD3/CD7-ITの投与前(Pre)ならびに処置の1、3、および6ヶ月後の固有のT細胞クローンの絶対数の概略。固有のCDR3配列の総数を使用して、固有のT細胞クローンの数を測定した。p値は、ウィルコクソンマッチドペア符号順位検定に基づく。CD3/CD7-IT療法の6ヶ月後の固有のT細胞クローンの著しい増大は、拡大されたT細胞の多様性の増大を反映している。(E~H)療法前(E)、ならびにCD3/CD7-IT療法の1ヶ月後(F)、3ヶ月後(G)、および6ヶ月後(H)における、1人の患者におけるT細胞レパートリーを示す代表的なヒストグラム。
【
図15】CD3/CD7-ITは、抗ウイルスEBVおよびCMV関連T細胞クローンの割合に影響を与えない。(AおよびC)処置後にウイルス感染検査で陽性であった患者における抗EBV(A)および抗CMV(C)のT細胞の絶対数の概略。各患者群において、ウイルス関連T細胞の数を処置の前および後に測定した。(BおよびD)固有の抗EBV(B)および抗CMV(D)のT細胞クローンの差分存在量分析を示すプロット。処置前にそれぞれのウイルス感染検査で陽性であった2人の患者の代表的なグラフを示す。スクリーニングサンプルを、CD3/CD7-ITによる療法の1ヶ月後および3ヶ月後に採取したサンプルと比較した。この一対比較によって、療法の結果として、それぞれのCMVおよびEBV関連クローンの大部分が拡大も縮小もしなかったことが確認される。各プロットにおいて、灰色の実線の斜め線は、両サンプルにおけるクローンが同数であることを示す(変化無し)。灰色の点線とそれぞれのX軸またはY軸との間に位置するクローンは、他方のサンプル中には存在していなかった、例えば、処置前には存在していたが、処置後には存在していなかった。
【発明を実施するための形態】
【0081】
発明の詳細な説明
本発明の説明では、以下の用語が使用され、以下に示すとおり定義されることが意図される。
【0082】
抗体分子
本発明の全ての局面に関して本明細書で使用するとき、用語「抗体」または「抗体分子」は、天然であろうと、部分的にまたは全体的に合成によって生成されようと、いかなる免疫グロブリンも含む。用語「抗体」または「抗体分子」は、モノクローナル抗体(mAb)およびポリクローナル抗体(ポリクローナル抗血清を含む)を含む。抗体は、インタクトであっても、完全抗体に由来する断片であってもよい(下記参照)。抗体は、ヒト抗体であっても、ヒト化抗体であっても、非ヒト起源の抗体であってもよい。「モノクローナル抗体」は、標的分子の1つの抗原部位または「決定基」に対する均質で高度に特異的な抗体集団である。「ポリクローナル抗体」は、標的分子の様々な抗原決定基に対する不均質な抗体集団を含む。用語「抗血清(antiserumまたはantisera)」とは、免疫された動物から得られた抗体を含有する血清を指す。
【0083】
全抗体の断片が、抗原に結合する機能を発揮できることが示されている。したがって、本明細書における抗体に対する言及、および、本発明の方法、アレイ、およびキットに対する言及は、完全抗体に及び、また、抗体結合断片を含む任意のポリペプチドまたはタンパク質にも及ぶ。結合断片の例は、(i)VL、VH、CL、およびCH1のドメインからなるFab断片;(ii)VHおよびCH1のドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHのドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片;(v)単離されたCDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価断片であるF(ab')2断片;(vii)VHドメインおよびVLドメインが、これら2つのドメインを会合させて抗原結合部位を形成するペプチドリンカーによって連結されている単鎖Fv分子(scFv);(viii)二重特異性単鎖Fvダイマー(国際公開公報第93/11161号);ならびに(ix)遺伝子融合によって構築された多価または多重特異性の断片である「ダイアボディ」(国際公開公報第94/13804号;58)である。VHおよびVLのドメインを連結するジスルフィド架橋を組み込むことによって、Fv、scFv、またはダイアボディの分子を安定化させることができる。CH3ドメインに接合しているscFvを含むミニボディを作製してもよい。
【0084】
本明細書で使用するとき、抗体分子および免疫毒素は、それぞれ、組み換え抗体および組み換え免疫毒素(例えば、Fab、scFv、または切断可能なペプチドリンカーを通して組み換えリボソーム阻害タンパク質に連結されているSC mAb)を包含することを意図する。更にまたはあるいは、第1および第2の抗体分子は、単一の二重特異性(抗CD3/抗CD7)抗体として提供されてもよく、それによって、抗CD3/CD7-rRTA等の二重特異性免疫毒素が提供される。
【0085】
抗体分子に関して、用語「選択的に結合する」は、特異的結合対の一方のメンバーがその特異的結合パートナー以外の分子に対していかなる有意な結合も示さない状況を指すために本明細書で使用することができる。この用語は、例えば、抗原結合部位が、多数の抗原によって保有されている特定のエピトープに特異的である場合にも適用可能であり、この場合、抗原結合部位を保有している特異的結合メンバーは、そのエピトープを保有している様々な抗原に結合することができる。
【0086】
CD3に選択的に結合する抗体は、一部の例では、抗体SPV-T3aの相補性決定領域(CDR)を含み得る。IMGT付番システム(Lefranc, M.-P. et al., Nucleic Acids Research, 1999, Vol. 27, pp. 209-212、参照により本明細書に組み入れられる)に従って、SPV-T3aのCDRは、CDRH1~H3:配列番号5~7;CDRL1~L3:配列番号8~10である。一部の例では、CD3に選択的に結合する抗体は、SPV-T3aのVH(配列番号3)および/またはSPV-T3aのVL(配列番号4)を含み得る。特定の態様では、CD3に選択的に結合する抗体は、配列番号1の重鎖および配列番号2の軽鎖を有するSPV-T3a抗体であり得る。
【0087】
CD7に選択的に結合する抗体は、一部の例では、抗体WT1の相補性決定領域(CDR)を含み得る。IMGT付番システム(Lefranc, M.-P. et al., Nucleic Acids Research, 1999, Vol. 27, pp. 209-212、参照により本明細書に組み入れられる)に従って、WT1のCDRは、CDRH1~H3:配列番号15~17;CDRL1~L3:配列番号18~20である。一部の例では、CD7に選択的に結合する抗体は、WT1のVH(配列番号13)および/またはWT1のVL(配列番号14)を含み得る。特定の態様では、CD7に選択的に結合する抗体は、配列番号11の重鎖および配列番号12の軽鎖を有するWT1抗体であり得る。
【0088】
SPV-T3a
SPV-T3aは、CD3γ鎖(UniProt:P09693)、CD3δ鎖(UniProt:P04234)、および2本のCD3ε鎖(UniProt:P07766)で構成されたT細胞表面糖タンパク質であるヒトCD3に選択的に結合するマウスIgG2bモノクローナル抗体である。SPV-T3aの生成および特性評価は、その全内容が参照により明示的に本明細書に組み入れられるSpits et al., Hybridoma, 1983, Vol. 2, pp. 423-437に記載されている。本明細書に記載のとおり、SVP-T3a抗体は、4-スクシンイミジルオキソカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(「SMPT」)架橋剤を使用して、リシン毒素A(RTA)、例えば脱グリコシル化リシン毒素Aにコンジュゲートし得る。各SPV-T3a抗体にコンジュゲートする脱グリコシル化リシン毒素A分子の平均数は、約1.5であると考えられる。この抗体コンジュゲートは、本明細書では、SPV-T3a-RTAと称される場合もある。コンジュゲーションおよび精製は、
図9に描かれているプロセスまたは
図10に描かれているプロセスによって実行することができる。
【0089】
ハイブリドーマ細胞ペレットからmRNAを抽出し、RT-PCRを実施し、ABI3130xl Genetic AnalyzerでDNAの配列を決定することによって、SPV-T3aの軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を決定した。アミノ酸配列を予測し、質量分析によって確認した。相補性決定領域(CDR)は、IMGT付番システム(Lefranc, M.-P. et al., Nucleic Acids Research, 1999, Vol. 27, pp. 209-212、参照により本明細書に組み入れられる)に従って決定されたとおりである。
【0090】
SPV-T3aの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を、それぞれ、以下に示す。
SPV-T3a重鎖:
VHドメインに下線を引き;CDRH1~H3を太字で示し、波下線を引く。
SPV-T3a軽鎖:
VLドメインに下線を引き;CDRL1~L3を太字で示し、波下線を引く。
【0091】
WT1
WT1は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、胸腺細胞および成熟T細胞でみられる膜貫通タンパク質であるヒトCD7(UniProt:P09564)に選択的に結合するマウスIgG2aモノクローナル抗体である。WT1の生成および特性評価は、Tax et al., Hamatol Bluttransfus, 1983, Vol. 28, pp. 139-141およびTax et al., Clin Exp Immunol, 1984, Vol. 55, pp. 427-436に記載されており、これらの両方の内容は、参照により明示的に本明細書に組み入れられる。本明細書に記載のとおり、WT1抗体は、SMPT架橋剤を使用して、リシン毒素A(RTA)、例えば脱グリコシル化リシン毒素Aにコンジュゲートし得る。各WT1抗体にコンジュゲートする脱グリコシル化リシン毒素A分子の平均数は、約1.5であると考えられる。この抗体コンジュゲートは、本明細書ではWT1-RTAと称される場合もある。コンジュゲーションおよび精製は、
図9に描かれているプロセスまたは
図10に描かれているプロセスによって実行することができる。WT1は、市販されている。例えば、抗CD7抗体(クローンWT1)は、例えば、免疫蛍光検査および免疫組織化学的検査等の研究用途のために、LifeSpan BioSciences, Inc.によってカタログ番号:LS-C122885-1000(PBS中1000μL、0.1%アジ化ナトリウム)で販売されている。
【0092】
ハイブリドーマ細胞ペレットからmRNAを抽出し、RT-PCRを実施し、ABI3130xl Genetic AnalyzerでDNAの配列を決定することによって、WT1の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を決定した。アミノ酸配列を予測し、質量分析によって確認した。相補性決定領域(CDR)は、IMGT付番システム(Lefranc, M.-P. et al., Nucleic Acids Research, 1999, Vol. 27, pp. 209-212、参照により本明細書に組み入れられる)に従って決定されたとおりである。
【0093】
WT1の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を、それぞれ、以下に示す。
WT1重鎖:
VHドメインに下線を引き;CDRH1~H3を太字で示し、波下線を引く。
WT1軽鎖:
VLドメインに下線を引き;CDRL1~L3を太字で示し、波下線を引く。
【0094】
移植片対宿主病(GVHD)-急性および慢性
GVHDは、遺伝的に異なるヒトから移植組織を受け取った後の内科的合併症である。GVHDは、一般に、幹細胞移植(骨髄移植)に関連しているが、この用語は他の形態の組織移植にも適用される。提供された組織(移植片)における免疫細胞は、レシピエント(宿主)を異物(非自己)であると認識する。次いで、移植された免疫細胞は、宿主の身体の細胞を攻撃する。伝統的に、移植後最初の100日間以内に発生したGVHDを恣意的に急性と分類し、一方、後期に依然として存在していたかまたは発症したGVHDを慢性GVHDと称していた。現在の見解では、慢性GVHDは急性GVHDの単なる延長ではない(Toubai et al. 2008、Flowers et al. 2011)。急性GVHDに冒される臓器と慢性GVHDに冒される臓器は著しく重複しているが、慢性GVHDにおける罹患臓器の分布ははるかに広く、眼、肺、唾液腺、および食道も含まれる。組織学的徴候に基づくと、急性GVHDは、アポトーシスおよび壊死が大半を占めているが、慢性GVHDは、特定の自己免疫障害でみられるのと同様の炎症および線維形成のプロセスを表す(Higman et al. 2004、Filipovich et al. 2005)。急性GVHDは、その後の慢性GVHDに大いに関連しているが、急性GVHDのヒトの約20~30%は、後に慢性GVHDを発症しない。更に、慢性GVHDのうちの25~35%は、先立つ急性所見を何ら示さない「デノボ」である(Lee 2005)。
【0095】
本明細書で使用するとき、「グレード3以上の毛細血管漏出症候群(CLS)の罹患率によって測定したときに臨床的利益を提供する」とは、例えば組成物の投与の1~100日後、例えば1~10日後に評価したとき、本発明の組成物を投与した患者においてグレード3以上の毛細血管漏出症候群または血管漏出症候群(VLS)の発症を回避することを意味する。CLS/VLSのグレード分類は、その内容が参照により明示的に本明細書に組み入れられるSausville et al., Blood, 1995, Vol. 85, No. 12, pp. 3457-3465に定義されているとおりであってよい。具体的には、NCI共通毒性規準を使用した。血管漏出は、具体的には、以下のとおりグレード分類した:グレードI、最小限の足首の圧痕浮腫;グレード2、足首の圧痕浮腫、体重が増加するが、総体重増加は10 lb未満;グレード3、10 lbを超える体重増加を伴う末梢性浮腫、または肺機能障害が記録されない胸水;グレード4、全身浮腫、胸水、または肺機能障害もしくは肺浮腫を伴う腹水;ならびにグレード5、肺浮腫の状況における人工呼吸を必要とする呼吸不全または昇圧補助を必要とする低血圧。
【0096】
薬学的組成物およびその投与
本発明の組成物は、固体または液体の組成物の形態であってよい薬学的組成物として製剤化され得る。このような組成物は、一般的に、何らかの担体、例えば、固体担体または液体担体、例えば、水、石油、動物もしくは植物の油、鉱油、または合成油を含む。生理食塩水、またはグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールが含まれていてもよい。このような組成物および調製物は、一般的に、少なくとも0.1重量%の化合物を含有する。
【0097】
静脈内、皮膚、もしくは皮下への注射、または罹患部位への注射の場合、活性成分は、非経口的に許容される水溶液、またはパイロジェンフリーであり、かつ、好適なpH、浸透圧、および安定性を有する液体の形態であってよい。当業者は、例えば、生理食塩水、グリセロールを用いて調製された分散液、液体ポリエチレングリコール、または油中の、例えば化合物またはその誘導体の溶液を使用して、好適な溶液をうまく調製することができる。
【0098】
1つまたは複数の化合物に加えて、任意で他の活性成分と組み合わせて、組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体、バッファ、安定剤、浸透圧調整剤、保存剤、もしくは抗酸化剤、または当業者に周知の他の材料のうちの1つまたは複数を含むことができる。このような材料は、非毒性でなければならず、かつ活性成分の有効性に干渉してはならない。担体または他の材料の正確な性質は、静脈内注射等の投与経路に依存し得る。
【0099】
好ましくは、薬学的組成物は、個体に対する利益を示すのに十分である、予防上有効な量または治療的に有効な量で個体に与えられる(場合によっては、予防が療法とみなされる場合もあるが)。典型的に、これは、個体に利益を提供する治療的に有用な活性を引き起こすであろう。投与される化合物の実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、処置される病態の性質および重症度に依存する。処置の処方、例えば投薬量の決定等は、一般医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、および開業医に公知の他の要因を考慮する。上述の技術およびプロトコールの例は、Handbook of Pharmaceutical Additives, 2nd Edition (eds. M. Ash and I. Ash), 2001 (Synapse Information Resources, Inc., Endicott, New York, USA); Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd edition, 1994に見出すことができる。一例として、組成物は、好ましくは、体重1kgあたり活性化合物およそ0.01~100mg、より好ましくは、体重1kgあたりおよそ0.5~10mgの投薬量で患者に投与される。
【0100】
具体例では、本発明の薬学的組成物は、体表面積(BSA)1m2あたり約4mgの用量で投与されてもよく、または投与するためのものであってもよい。本発明の薬学的組成物は、有利には、複数回輸注、例えば、48時間間隔で与えられる4回の4時間輸注として投与されてもよく、または投与するためのものであってもよい。
【0101】
以下は、例として提示され、特許請求の範囲の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0102】
実施例1 - T-Guard(登録商標)免疫毒素カクテルによる処置後の移植片対宿主病患者の生存延長
治験薬は、それぞれ組み換えリシン毒素A鎖(RTA)にコンジュゲートしている等量(w/w)の2つのマウス抗体(mAb)SVP-T3a(抗CD3、IgG2b)およびWT1(抗CD7、IgG2a):SPV-T3a-RTAおよびWT1-RTAからなる、T-Guard(登録商標)と命名された免疫毒素組み合わせ物である。T-Guardは、48時間間隔で与えられる4回の4時間輸注としてヒトGvHD患者に静脈内投与される。各用量は、体表面積(BSA)1m2あたり4mgからなる。典型的には、推定BSAは1.4~2.5m2(小柄な人~大柄な人)のいずれかになるであろう。患者のBSAが2.5m2を超える場合、用量の計算には2.5m2を使うべきである。
【0103】
T-Guard(登録商標)で処置される群における7人のGvHD患者のうち、T-Guard(登録商標)処置の開始直前に、1人はCMVについて陽性であり、1人はEBVについて陽性であった。T-Guard(登録商標)処置の開始後にEBVもCMVも新たな再活性化はみられなかった。イノリモマブ(商品名Leucotac、抗CD25)およびエタネルセプト(商品名Enbrel、抗TNF)の組み合わせからなる施設の標準治療(SoC)で処置された21人の患者のうち、2人の患者はほぼ確実な侵襲性真菌疾患を発症し、2人の患者はCMV感染を発症し(1人はCMV大腸炎に進行)、2人の患者はアデノウイルス感染を発症し、3人の患者はEBV感染を発症した。
図1に示すとおり、28日目奏効率および6ヶ月生存率はいずれも、対照と比較してT-Guard(登録商標)処置群において優れていた。
図2は、施設のSoCで処置された患者についての生存曲線を示す。顕著な早期死亡相(<6ヶ月)が明らかである。この早期死亡期は、不応性GvHDおよびウイルスの感染または再活性化の両方に関連している(van Groningen et al., Biol. Blood Marrow Transplant, 2016, Vol. 22, pp. 170-182も参照。
図3は、6ヶ月時点までの、施設のSoCに対するT-Guard(登録商標)処置患者の生存曲線を示す。T-Guard(登録商標)処置患者において累積生存率がより高いことが明らかである。
【0104】
実施例2 - T-Guard(登録商標)免疫毒素カクテルで処置された移植片対宿主病患者の中でのウイルス再活性化の自然消散
ウイルス力価陽性を呈するGvHD患者をT-Guard(登録商標)(実施例1において上記したのと同じ投薬量および間隔)で処置し、経時的にCMVおよびEBVのウイルス力価についてモニタリングする更なる調査を実行した。
【0105】
全内容が参照により明示的に本明細書に組み入れられるKalpoe et al., J. Clin. Microbiol., 2004, Vol. 42, No. 4, pp. 1498-1504に本質的に記載されているとおり、リアルタイム定量PCRによってCMV力価を測定した。
【0106】
全内容が参照により明示的に本明細書に組み入れられるNiesters et al., J. Clin. Microbiol., 2000, Vol. 38, pp. 712-715に本質的に記載されているとおり、リアルタイム定量PCRによってEBV力価を測定した。
【0107】
2人のGvHD患者が、アシクロビル(登録商標)による予防にもかかわらず、スクリーニング時にウイルス力価陽性を呈した。1番目の患者はEBVについて陽性であり、2番目の患者はEBVおよびCMVの両方について陽性であった。特に1番目の患者は、T-Guard(登録商標)処置開始後の最初の週にEBV力価の大幅な増大を示し、250000DNAコピー/mLに達した(
図4を参照)。驚くべきことに、EBV力価は、その後、リツキシマブまたは治療用CTLの形態で更に介入することなく、次の2週間で回復した。2番目の患者でも、より低い力価ではあるが、EBVおよびCMVの両方について同様の応答がみられた(
図5を参照)。
【0108】
2番目の患者の21日目血液サンプルのテトラマー分析は、CMV指向性T細胞である患者のCD8陽性細胞が17%含まれていることを示した(
図6を参照)。いかなる特定の理論も縛られるものではないが、本発明者らは、T-Guard(登録商標)処置によって比較的温存される抗CMV T細胞が患者のCMV力価を低く維持することができると考える。HLA一致EBVテトラマーによる染色を実施することも更に企図される。処置開始後2週間目におけるEBV再活性化の消散は、同様にEBV指向性T細胞も存在しているに違いないことを明らかに示唆している(
図5を参照)。
【0109】
本実施例は、患者が、T-Guard(登録商標)処置を受けた後2~3週間以内に、ステロイド抵抗性急性GvHDから回復し、(先存する)感染との戦いに成功することを実証する。これら患者の両方が「安定な」GvHD応答者であるという事実は、T-Guard(登録商標)が抗ウイルスT細胞よりもアロ反応性T細胞を優先的に排除することを示唆している。抗ウイルス細胞が比較的温存されることが分かりつつあり、該細胞は、その後、T-Guard(登録商標)の休薬後に(最後の輸注後1~2日間以内に)リンパ球減少症によって誘導される恒常的増殖によって拡大し得ると現在考えられている。
図11に示されるT細胞レパートリーの拡大から、この結論についての更なる裏付けが得られる。
【0110】
実施例3 - ステロイド不応性急性GVHDの処置についての抗CD3/CD7免疫毒素組み合わせ物(T-Guard(登録商標))の第I/II相試験
背景
ステロイド不応性急性移植片対宿主病(SR-aGVHD)のより有効な療法が緊急に必要とされている。感染および血液悪性腫瘍の再発は惨憺たる全生存率(OS)につながるので、寛解を達成した後の免疫抑制の期間を制限する療法が好ましい可能性がある。免疫毒素(IT)組み合わせ物(T-Guard(登録商標))は、活性化Tリンパ球におけるCD3およびCD7を標的とする2つの抗体-薬物コンジュゲート(すなわち、リシンA)からなり、迅速な免疫再構築を可能にすると同時にSR-aGVHDにおける第3選択療法として有効性が示されている。したがって、T-Guard(登録商標)は、本発明の様々な局面に従う組成物である。
【0111】
目的
SR-aGVHDの処置についてT-Guard(登録商標)の安全性および有効性に関する前向き第I/II相多施設治験を行った(NCT02027805)。
【0112】
方法
グレードII~IVのSR-aGVHDの成人患者が、組み入れ適格者であった。除外基準は、無制御感染、慢性GVHDの徴候、重度の腎機能障害、および重度の低アルブミン血症の存在からなっていた。各4mg/m2を合計4用量、48時間ごとに4時間静脈内注入として、T-Guard(登録商標)を与えた。主要有効性評価項目は、28日目の全臨床反応(ORR)と定義した。主な副次的評価項目は、6ヶ月OSならびに安全性および耐容性であった。
【0113】
結果
2014年6月から2016年9月の間に、計画していた20人の成人患者が2つの欧州の施設に組み入れられた。患者は、11人が女性、9人が男性であり、中央年齢は53歳(範囲18~74歳)であり、全員が骨髄性およびリンパ性の悪性腫瘍のため同種幹細胞移植を受けたことがあった。2人を除いて全員が、計画していた8日間のT-Guard(登録商標)による処置を完了した。SR-aGVHDは、3人の患者がグレードIIであり(15%)、11人がIIIであり(55%)、7人がIVであった(35%)。大部分の患者において、2つの臓器に関連しており(16/20、80%)、胃腸(GI)および肝臓の関連がそれぞれ18例および5例であった。ベースラインアルブミンレベルは、中央値が23gr/L(範囲:16~34;N 35~50gr/L)であり、2バイオマーカーモデル(ST2およびREG3α)に基づいて、低リスクに分類された患者はおらず(<0.08)、50%が高リスクに分類された(≧0.32)。2バイオマーカーモデルは、その全内容が参照により明示的に本明細書に組み入れられる国際公開公報第2013/066369号において更に説明されている。
【0114】
28日目、12人の患者が臨床反応を達成し(ORR:12/20、60%)、10人(50%)が完全寛解(CR)を達成した、
図7。高リスクバイオマーカープロファイルを有する患者では、50%でCRが達成された。6ヶ月間の最短経過観察で、12人の患者が生存していた(6ヶ月OS 60%)、
図7。他の8人の患者における死因は不応性aGVHD(N=4)、不応性GVHDおよび感染(N=3)、ならびに偽膜性大腸炎(N=l)であった。計画していた処置を受けた患者のうち、ORR、CR率、および6ヶ月OSは、それぞれ、60%、50%、および60%であった。成績は、ORRは52%であり、6ヶ月OSは29%であったインフリキシマブ(N=21)またはイノリモマブ/エタネルセプト(N=21)のいずれかを受けた歴史的対照よりも良好であった(
図7および8)。
【0115】
著しい輸注反応は記録されなかったが、2人の患者が1回目の輸注時に悪寒を経験し、そして、クレマスチンの予輸注の導入後、輸注反応はみられなかった。予想どおり、全体の感染および有害事象の比率は高かった。しかし、1人を超える患者で発生し、低アルブミン血症、細小血管症、および血小板減少症からなっていた、起因性の可能性がある有害事象の数は限られていた。毛細血管漏出症候群は1人の患者でしか発生せず、浮腫は利尿剤による処置を必要とする状態であった(グレード2)。早期(<3ヶ月)のEBVおよびCMVの感染は、それぞれ3人の患者で記録されたが、CMV疾患もPTLDも発生しなかった。カビ活性型(mould-active)抗真菌薬予防を受けたのはわずか40%であったが、侵襲性真菌疾患(IFD)はみられなかった。観察された少数かつ軽度の副作用は、他のRTA免疫毒素と比較して例外的であるとみなされた。これは、投薬が、副作用を最小限に抑えながら、治療的効果を生じさせることができたことを示唆する。
【0116】
1週間の処置の経過はT細胞およびNK細胞の即時枯渇に関連していたが、T-Guard(登録商標)IT組み合わせ物の半減期が短い(約9時間)ことから、ディープシーケンシングによって評価したとき、多様なT細胞受容体レパートリーを伴い、抗ウイルスEBVおよびCMV特異的クローンの割合に対して負の作用を有しない迅速な免疫再構築が可能になった。6ヶ月間以内に、療法後の最初の月と比較して固有のT細胞クローンが著しく増大した(p=0.03)(
図11を参照)。
【0117】
特に注目すべきは、この第1/2相試験においてT-Guard(登録商標)処置の6ヶ月(180日)後に12人の患者のうちの1人しかcGVHD症状と診断されなかったことであり、これは、180日目におけるcGVHDの罹患率がわずか8.3%であると言い換えられる。更に、このcGVHD事象は、単に「限定的」であると評価された(表1を参照)。
【0118】
(表1)慢性GVHD事象
* 登録前に報告されたcGVHDの徴候および症状(口および皮膚)。
** 病歴に報告されたcGVHDであると確認されていた患者。
CR=完全応答者;PR=部分応答者;A=生存;D=死亡。
【0119】
6ヶ月(180日)目における生存者のcGVHD率は、文献で報告されている典型的な>40%の罹患率ではなく、わずか8.3%である。具体的には、以下のcGVHDが以前に報告されている:
【0120】
結論
特に、高リスクの状況(90%GI関連、50%高リスクバイオマーカープロファイル)であることを考慮すると、短期間のT-Guard(登録商標)によるSR-aGVHDの処置は安全かつ耐容性良好であると証明され、結果として高いCR率および60%の有望な6ヶ月OSが得られた。
【0121】
更に、研究結果は、驚くべきことに、SR-aGVHDのための第2選択処置(すなわち、T-Guard(登録商標)投与)後180日目にcGVHDの罹患率によって評価したとき、本発明の様々な局面に従う組成物であるT-Guard(登録商標)がcGVHDを予防的に処置することができたことを示す。したがって、これら結果は、SR-aGVHDを含むaGVHDのための免疫調節処置を受けている患者群の中でのcGVHDの予防的処置において、T-Guard(登録商標)を二次使用できることを示唆する。
【0122】
重篤なRTA関連毒性の非存在
RTAベースの免疫毒素の治療的使用に関連する主な安全上の懸念のうちの1つは、毛細血管漏出症候群(CLS)、続いて、CKレベルの増加を伴う筋肉痛である(Vitetta et al. 1991、Amlot et al. 1993、Conry et al. 1995、Sausville et al. 1995、Stone et al. 1996、Engert et al. 1997、Frankel et al. 1997、Schnell et al. 1998、Messmann et al. 2000、Schnell et al. 2000、Schindler et al. 2001、Schnell et al. 2002、Schnell et al. 2003、Schindler et al. 2011)。Vitetta教授の研究グループは、1μg/mL(約0.5×10-8M)以上の血清濃度が、主にCLSからなる重篤なRTA関連副作用の発生に典型的に関連していた同等の免疫毒素について記載している(Amlot et al. 1993、Sausville et al. 1995、Stone et al. 1996)。更に、5つの臨床試験における患者の後ろ向き分析に基づいて、Schindlerらは、RTAベースの免疫毒素の毒性が事前の放射線療法によって増悪すると結論付けた(Schindler et al. 2001)。Stone et al., 2001およびSausville et al. 1995は、免疫毒素のCmaxがCLS/VLSの重症度との間に正の相関があると報告した(例えば、Sausville et al., 1995の
図2を参照)。
【0123】
興味深いことに、本明細書に記載のとおり、T-Guard(登録商標)処置は、これまで処置された患者のいずれにおいても重度のCLSも筋肉痛も全く誘導しなかった。第1/2相治験でも、研究者主導型用量漸増試験においても、全てのそれぞれの患者が事前に化学療法および放射線療法を受けていたが、全ての患者において1μg/mL以上のCmax値は得られなかった。第2相試験における患者のうちの8人が、CLSに関連するいくつかの限定的な症状を有すると診断されたが、これら患者のうちの7人は、全く処置を必要とせず(軽度CLS;グレード1)、浮腫のために利尿剤で処置されたのはわずか1人であった(中等度CLS;グレード2)。これまでのところ、T-Guard(登録商標)で処置された32人の患者のいずれにおいても(研究者主導型用量漸増試験および「患者指名(named patients)」を含む)CLSの重症例は報告されていない。また、第1/2相試験ではCKの上昇も処置に関連する筋肉痛も観察されなかった(研究者主導型用量漸増試験では、1人の患者だけがグレード1の血漿CKレベルの増加を示した)。
【0124】
いかなる特定の理論にも縛られるものではないが、本発明者らは、T-Guard(登録商標)の好ましい安全性プロファイルの理由が、SPV-T3aおよびWT1にRTA毒素が分割されている(それぞれ半分の用量)ことである可能性があり、これらmAbは、等電点の差に起因して異なる全身分布プロファイルを有し得る(そして、それによって、非特異的毒性を弱める)と仮定する。SPV-T3a-RTAおよびWT1-RTAによる推定されるT細胞の相乗的排除、ならびにアロ活性化の阻害を通じてSPV-T3aによって提供される相加的免疫抑制と共に、これは、T-Guard(登録商標)のこれまでに観察された有望な治療濃度域を説明し得る。
【0125】
対照的に、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)におけるデニロイキンジフチトクス(Ontak(登録商標))の使用は、「血清アルブミンレベルが少なくとも3.0g/dLになるまでOntakの投与を先延ばしすること」(2008年10月改訂のONTAK(登録商標)米国ラベルを参照)とラベルに警告されている。Ontak(登録商標)で処置された患者の32.5%(76/234)で毛細血管漏出症候群が発生したと報告された。ラベルには、「血清アルブミンレベルが3.0g/dL未満の場合はOntakの使用を控えること」と警告されている。更に、CTCLの処置についてのデニロイキンジフチトクスの第III相治験について記載しているOlsen et al., J. Clin. Oncol., 2001, Vol. 19, No. 2, pp. 376-388では、CLS(またはこの論文では血管漏出症候群「VLS」と呼ばれている)を「以下:浮腫、低アルブミン血症(2.8g/dL)、および/または低血圧のうちの少なくとも2つが、重症度にかかわらず、同時に発生すること」と定義している。この定義によれば、患者の25%(71人のうちの18人)がVLSを経験していた。Olsen et al. 2001には、更に、「再チャレンジ時にVLSの2回目のエピソードを経験した4人の患者が、2回目のエピソードが発生した過程の開始時に2.8g/dL未満のアルブミンレベルを有していた。3.0g/dL未満の血清アルブミンレベルは、患者をこの症候群に罹りやすくすると予測され、その可能性があると考えられる。先在する浮腫もこの症候群の発症についてのリスク因子であった。」と述べられていた。
【0126】
注目すべきことに、T-Guard(登録商標)第1/2相試験の患者は、処置開始時に23g/L(範囲16~34g/L)(すなわち、2.3g/dL(範囲1.6~3.4g/dL))の血清アルブミンレベル中央値を有していた。これは、驚くべきことに、T-Guard(登録商標)が、免疫毒素ベースの療法であるにもかかわらず、別の免疫毒素ベースの療法(Ontak(登録商標))について安全であるとみなされたレベルを下回る血清アルブミンレベルを有する患者のサブグループにおいて使用するのに適していると考えられることを示す。いかなる特定の理論にも縛られるものでもないが、本発明者らは、このことが、有利には、開業医およびその患者に対して更に処置法の選択肢を広げると考える。
【0127】
【0128】
実施例4 - 改善された免疫毒素製剤の開発
T-guard(登録商標)は、GVHDを処置するために開発されている。T-Guard(登録商標)は、2つの抗体(SPV-T3aおよびWT1)からなる組み合わせ製品である。モノクローナル抗体SPV-T3aは、CD-3を標的とし、一方、WT-1は、CD-7タンパク質を標的とする。いずれも、標的細胞の結合時に毒素負荷として機能するリシン毒素A鎖(RTA)に個々にカップリングする。抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、投与直前に混合される別々の輸注濃縮物(SPV-T3a-RTAおよびWT1-RTA)として製剤化され得る。例えば、各製剤(1:1比)4mLを1個のバイアル内で一緒に希釈剤で希釈して、100mLにしてよい。
【0129】
両抗体(SPV-T3aおよびWT1)は、製剤化バッファ(13mMリン酸ナトリウムバッファpH7.5、140mM NaCl、および0.05%(v/v)Tween-20)において物理的安定性の問題を示す。この製剤化バッファは、Tween-20を補給したPBSバッファに相当する。SPV-T3a-RTAは、この製剤化バッファ中2~8℃で2.5年間安定であるが、凍結/融解ストレス時に凝集体の形成を示す。WT1-RTAは、この製剤化バッファ中5~8℃で安定ではなく、-20℃では2.5年間安定に保たれる。3年間保存した後、製品は、DLSで検出されるとおり、生物学的活性および粒子形成に関する規格を満たさない。
【0130】
本発明者らは、より長い有効期間にわたって両モノクローナル抗体(MAb)の物理的安定性を増大させるであろう製剤を得たいと願っていた。
【0131】
方法
タンパク質含量分析
分光光度法の一般的な用途は、サンプル中のタンパク質濃度を定量するために、スペクトルのUV領域における光吸収を測定することである。タンパク質中に通常みられるいくつかのアミノ酸、例えばトリプトファンおよびチロシンは、280nmの範囲で光を吸収する。タンパク質溶液の吸収は、アミノ酸配列の内容およびタンパク質濃度に依存する。タンパク質の質量吸光係数(ε)を使用し、ランベルト・ベールの法則に従って、溶液中の濃度をその吸光度(A)から計算することができる:
A=ε*c*l(式中、
A=吸光度
ε=質量吸光係数(cm-1*(mg/mL)-1)
c=濃度(mg/mL)
l=光路長(cm))
【0132】
バッファの成分および塩もこの波長において光を吸収することがあるので、分光光度計は、常に、製剤化バッファでブランクをとらなければならない。サンプルの希釈にも製剤化バッファを使用すべきである。使い捨てキュベットを使用して、UV-1800 Spectrophotometer(Shimadzu)で測定を実施する。
【0133】
SDS-PAGE
SDS-PAGEは、その電気泳動移動度に従ってポリアクリルアミドマトリクス中でタンパク質を分離する。SDSの結合がタンパク質の固有電荷をマスクし、その結果、質量単位に対して電荷が均一に分布する。したがって、ゲル電気泳動中、SDS処理されたタンパク質は、そのおおよそのサイズに応じて移動する。更に、存在する非共有結合性凝集体は、SDSの存在下で解離する。
【0134】
用途に従って、非還元条件下または還元条件下のいずれでサンプルを泳動させてもよい。還元剤(例えば、ジチオトレイトール(DTT))の添加は、タンパク質中の内部ジスルフィド結合の破壊を引き起こし、インタクトなタンパク質骨格を有するタンパク質とこれらジスルフィド架橋によって互いに保持されているニックの入ったタンパク質とを識別するために使用することができる。
【0135】
Novex 4~12% Bis/Trisゲルにおいてサンプルを分析する。還元条件下で電気泳動を実施した場合、NuPage還元剤をサンプルに添加し、抗酸化剤(Invitrogen)を電気泳動バッファに添加した。バンドの高さまたはバンドの広がりの差を防ぐために、等体積のサンプルをロードした。MOPS-SDSランニングバッファを使用して電気泳動を行った。固定溶液中でインキュベートした後、タンパク質をCBBR250溶液で染色し、脱染した。専売スキャニングソフトウェア(ImageQuant, GE)を使用してゲルをスキャンした。
【0136】
SE-UPLC分析
SE-UPLCによって、分子サイズ分布、ならびにインタクトなモノマー抗体ならびに潜在的な(タンパク質関連)不純物および変異体の相対量を決定することができる。SE-UPLCの主な目的は、不可逆的な可溶性タンパク質のオリゴマー化および凝集、ならびにタンパク質の加水分解によって生成されるより小さなタンパク質断片を検出することである。方法の開発中、同時に良好な回収率を与えながら、タンパク質またはその多量体型のカラムへの「固着」を防ぐためにタンパク質と固相との相互作用を最小化するカラムおよび移動相が選択される。成分は、そのMWによってのみ分離されるはずである。タンパク質は、280nmにおけるUV吸光度によって検出され、特定のタンパク質不純物の相対量(相対表面積(%)として表される)は、そのピークの表面積を全表面積で除することによって計算される。
【0137】
220nmまたは280nmで検出するUPLC H-Class生物測定器(Waters)において実験を実施する。システムは、特に生体分子用の、ステンレス鋼の生体不活性流路を備えている。
【0138】
粒径分析(DLS)
光線がコロイド分散液を通過するとき、粒子または液滴は全ての方向に光の一部を散乱させる。粒子が光の波長と比べて非常に小さいとき、散乱光の強度は全ての方向において均一であり(レイリー散乱);より大きな粒子(直径が約250nmを超える)の場合、強度は角度依存的である(ミー散乱)。
【0139】
コヒーレントレーザー光を使用すると、光電子増倍管検出器を使用して散乱強度の時間依存的変動を観察することが可能である。これら変動は、粒子がランダムな熱(ブラウン)運動を起こすのに十分な程度小さく、したがって、粒子間の距離が絶えず変化しているという事実に起因する。したがって、強度変動の時間依存性を分析することで粒子の拡散係数を得ることができ、そこからストークス・アインシュタインの式を介して媒体の粘度を知ることで粒子の流体力学半径または直径を計算することができる。
【0140】
使い捨ての低容量UVCuvettes(PlastiBrand)内においてZetasizer NanoZS(Malvern)でDLS測定を実施した。典型的な測定は、25℃において70μLで実施し、この場合、実際の測定前に3分間サンプルをこの温度に平衡化させた。測定期間およびレーザー強度は、サンプルの散乱シグナルに基づいて機器が自動的に選択した。全ての測定は、Zetasiserソフトウェア(バージョン7.02)を使用して分析した。
【0141】
バッファ交換
複数のバッファを迅速にスクリーニングできるようにするために、2mL Zeba Spin Desaltingカラム(MWCO=7kDa、Pierce)を使用してバッファ交換を実施した。これらカラムは、サイズ排除樹脂を含有し、希釈または濃縮されたサンプルに使用することができるので、良好なタンパク質回収率が可能になる。カラムは、常に、700μLの材料のサンプルサイズで使用した。
【0142】
PEGスクリーニング
PEG-6000ベースのスクリーニングを使用して、一次製剤スクリーニングを実施した。ADCは凝集しやすいことが知られているので、可溶性が、主な安定性パラメータのうちの1つである。バッファの種類およびpHが可溶性に影響を与えるので、12種の異なるバッファを調製して、MAbの最適可溶性についてスクリーニングした。
【0143】
試験した条件は、以下のとおりであった:
・ヒスチジンバッファ pH5.5、6.0、および6.5
・リン酸塩バッファ pH7.0、7.5、および7.5
・クエン酸塩バッファ pH5.5、6.0、および6.5
・酢酸塩バッファ pH4.0、4.5、および5.0
・D-PBS(参照として)
【0144】
各バッファおよび40%(w/v)PEG-6000を含有するバッファ溶液から50mM溶液を調製した。後者は、40%(w/v)PEG-6000を含む50mM溶液を得るために、PEG-6000を12g計量し、濃縮バッファ溶液およびMQ水を添加して30mLにすることによって作製された。原液をバッファまたはタンパク質で更に希釈して、最終濃度4~20%(w/v)のPEG-6000にした。
【0145】
濃縮器(Amicon ultra 15、10kDa MWCO)を使用して、原物質を約0.40mg/mLの濃度に濃縮した。UV吸光度測定を使用して濃度を決定した。総体積100μLでプレートにおいて物質を2倍希釈し、5℃で1日間インキュベートした後、プレートを測定した。405nmのODフィルタを備えるEnvision(Perkin Elmer)において読み取りを実施した。
【0146】
結果の概略
様々な実験の中から、様々な実験の概要を与える以下の概要(表2および表3)を作成する。両概要は、リン酸塩バッファpH7.5と比較して、クエン酸塩バッファpH6.5が好ましいことを示す。リン酸塩バッファは、クエン酸塩バッファと比較してより多くの凝集事象を生じさせる。これは、SE-UPLC、SDS-PAGE、およびDLSによって確認される。クエン酸塩バッファでは、賦形剤について差が観察される。この場合、賦形剤としてのアルギニンについて、より高い回収率およびより良好な安定性がみられる。この賦形剤は、凍結/融解ストレスに対する耐性、および25℃以下の温度でより少量の高分子量(HMW)変異体を示した。40℃では、多量の凝集体も観察された。両抗体について同じ結論を導くことができ、SDS-PAGEによって結果が確認された。
【0147】
(表2)凍結/融解分析および短期間保存試験からのWT1-RTAについての異なる結果の概要。異なるバッファ(リン酸塩およびクエン酸塩)および賦形剤を与え、結果を良好(++)、中間(+)、または好ましくない(-)と評価した。SE-UPLCの結果は、HMWおよびagg(曲線下面積)として与えられる。「F/T」=凍結/融解;「Stab」=安定性;「HMW」=高分子量変異体;「Agg」=凝集体。
【0148】
(表3)凍結/融解分析および短期間保存試験からのSPV-T3a-RTAについての異なる結果の概要。異なるバッファ(リン酸塩およびクエン酸塩)および賦形剤を与え、結果を良好(++)、中間(+)、または好ましくない(-)と評価した。SE-UPLCの結果は、HMWおよびagg(曲線下面積)として与えられる。「F/T」=凍結/融解;「Stab」=安定性;「HMW」=高分子量変異体;「Agg」=凝集体。
【0149】
WT1-RTAおよびSPV-T3a-RTAについての上記結果に基づいて選択した処方は、10mMクエン酸塩(pH6.5)、155mM L-アルギニン.HCl、および0.05%(w/v)Tween-20であった。この処方のレシピは、以下のとおりである:
成分量
クエン酸* 0.11g
クエン酸ナトリウム* 2.79g
L-アルギニン.HCl 32.70g
Tween-20 0.5g
H20 1000mLまで添加
*NaOH溶液を使用してpHを6.5に補正
【0150】
実施例5 - より更に改善された免疫毒素製剤の開発
本発明者らは、より更にT-Guard(登録商標)製剤の安定性を改善しようとした。上述の製剤(10mMクエン酸塩(pH6.5)、155mM L-アルギニン.HCl、および0.05%(w/v)Tween-20)では、SPV-T3a-RTAおよびWT1-RTAがいずれも、-60℃、-20℃、および5℃で最長9ヶ月間安定であることが見出された。しかし、25℃における安定性は、凝集体の形成が原因で最適以下であることが見出された。本明細書に記載する試験の目的は、加速安定性試験に基づいてより安定な製剤を開発することであった。
【0151】
熱ストレス試験
両化合物(WT1-RTAおよびSPV-T3a-RTA)を特性評価するために、6種の異なる分析技術を使用した:
・SEC
・SDS-PAGE
・凝集点
・DLS
・pH
・重量オスモル濃度
【0152】
【0153】
抗体の凝集機序については入手可能な情報がないので、スクリーニングのために広範囲にわたる賦形剤を検討した:還元剤、可溶化剤、抗酸化剤、アミノ酸、および糖。
【0154】
賦形剤の各組み合わせの効果を、抗体ごとに以下に要約する。
【0155】
(表5)SPV-T3a-RTAに対する賦形剤の効果
【0156】
【0157】
12mMグルタミン酸塩および50mMグリシンの添加は、SPV-T3aRTAの安定性に対して正の効果を有し、一方、50mMグリシン、20mMソルビトール、および20mMトレハロースの添加は、WT1-RTAの安定性に対して正の効果を有する。
【0158】
以下の目的で新規製剤試験を実行した:
・グリシン、ソルビトール、およびトレハロースで観察された正の効果を確認する
・現行の賦形剤(例えば、より高濃度のグリシン)の更なる組み合わせを試験する
・新規賦形剤(例えば、他の糖)
【0159】
製剤化バッファの重量オスモル濃度の達成目標は、300~450 mOsm/kgであった。
【0160】
したがって、上記試験において両化合物に対して正の効果を有していた製剤化バッファ、試験した賦形剤の新規組み合わせ、より高濃度の賦形剤を含む製剤化バッファ、および他の糖を含む製剤化バッファを用いて、追加の賦形剤のスクリーニングを計画した。
【0161】
以下の概要に従って加速安定性試験を実行した。
【0162】
【0163】
(表8)SPV-T3a-RTAの安定性に対する賦形剤の効果
【0164】
(表9)WT1-RTAの安定性に対する賦形剤の効果
【0165】
試験した製剤のうちの4つは、両化合物(SPV-T3a-RTAおよびWT1-RTA)の安定性に対して正の効果を有する:
1. 10mMクエン酸塩、125mM L-アルギニン;0.05%Tween 20;125mMトレハロース;50mMグリシン
2. 10mMクエン酸塩;125mM L-アルギニン;0.05%Tween 20;125mMマルトース;50mMグリシン
3. 10mMクエン酸塩;120mM L-アルギニン;0.05%Tween 20;100mMマンニトール;50mMグリシン
4. 10mMクエン酸塩;125mM L-アルギニン;0.05%Tween 20;140mMマルトース
【0166】
次いで、以下の製剤に対して更なる安定性試験を実行した:10mM クエン酸塩;125mM L-アルギニン;0.05% Tween 20;140mM マルトース(37% HClでpH6.5に調整)。
【0167】
新規製剤化バッファ中40℃で2日間インキュベートした結果、既存の製剤化バッファ中でのインキュベーションに比べて、約23%多いSPV-T3a-RTAモノマーおよび約13%多いWT1-RTAモノマーが得られた。また、不溶性凝集体の減少も観察された(表10および11を参照)。
【0168】
(表10)既存のおよび新規の製剤化バッファ中40℃で2日間後のWT1-RTAタンパク質分布
【0169】
(表11)既存のおよび新規の製剤化バッファ中40℃で2日間後のSPV-T3a-RTAタンパク質分布
【0170】
凝集点分析は、SPV-T3a-RTA(Tagg=51℃)およびWT1-RTA(Tagg=52℃)が、既存の製剤化バッファ(SPV-T3a-RTAおよびWT1-RTAについて、それぞれ、Tagg=42℃および45℃)と比較して新規製剤化バッファ中でより安定であることを示した。
【0171】
実施例6 - モノクローナル抗体-RTAコンジュゲーションプロセスの改変
上記試験(実施例4および5)の結果、両コンジュゲートの非常に良好な安定性プロファイルを支援する製剤が得られた。したがって、開発事業を継続して、生産および精製のプロセスにおいてどの程度まで上流でこの好ましい製剤化バッファを使用することができるかを探索した。
【0172】
本発明者らは、沈殿および得られる生成物のロスを低減することを目的としていた。Blue Sepharoseカラム工程(コンジュゲートしていない遊離抗体の除去)の収率は低く、回収される画分は凝集の問題を抱えている。かなりの割合がカラムに沈殿し、そして、失われる。
【0173】
本発明者らは、また、mAbおよびmAb-RTAコンジュゲートのロバストで完全な分離を達成するために、Blue Sepharose親和性クロマトグラフィについてのローディングおよび溶出の条件を絞り込むことも目的としていた。
【0174】
最後に、本発明者らは、このより早期の沈殿を防ぐためにも、好ましい製剤化バッファを更に上流のコンジュゲーション工程までにおいて使用しようとした。
【0175】
生産プロセスの変更を
図9および10に描写する。
図9は、中央の横線よりも上方のコンジュゲーションおよび精製の工程がpH7.5の25mMリン酸塩バッファ中で実施され;横線よりも下方の工程がpH6.5の10mMクエン酸塩バッファ中で実施される、プロセスAを示す。
図10は、10mMクエン酸塩バッファへの変更が、更に上流で上方の横線によって示される時点において行われる点でプロセスAとは異なる、プロセスBを示す。上方の横線よりも下方の工程は、pH6.5の10mMクエン酸塩バッファ中で実施される。
【0176】
プロセスBに変更した際、以下のことが見出された:
・抗体のコンジュゲーション反応はロバストであり、製剤化バッファ(10mMクエン酸塩、125mM L-アルギニン.HCl、0.05%(w/v)Tween-20、140mMマルトース(pH6.5))と適合している。
・G25においてランニングバッファを変更することによって、実施が簡単になる。
・L-アルギニン濃度を変更することによって、Blue Sepharose結合をわずかに変化させることができる。L-アルギニン濃度を増大させることによって、溶出を達成することができる。
・125mM L-アルギニンでは、コンジュゲートしていないmAbは結合せず、フロースルーにおいて未結合であるのは、mAb-RTA1の一部だけである。平衡化、結合、および洗浄に最適な選択的条件は、75~125mM、例えば、100~125mMの範囲内のL-アルギニンと決定することができる。
・溶出工程は、mAb-RTA1、mAb-RTA2、およびmAb-RTA3を分離できたことを示す。結合は、コンジュゲーションの程度が高くなるにつれてより強固になる。
・プロセスBは、収率と純度とのバランスをとるために最適化しやすい。また、薬物-抗体変異体を選択的に濃縮することができた。
・Blue Sepharose後の溶出プールは、混濁度または沈殿が低減されたことが見出された。
【0177】
実施例7 - ステロイド不応性急性移植片対宿主病についての抗CD3/CD7免疫毒素の組み合わせ物の第I/II相治験
序論
急性移植片対宿主病(aGvHD)は、同種造血幹細胞移植(HSCT)後に生じる場合がある主な合併症である。aGvHDを発症した患者の予後は、特に胃腸(GI)および/または肝臓に関連している重度のステロイド不応性aGvHD(SR-aGvHD)の場合、不良である1、2。現在、SR-aGvHDについて承認されている標準第2選択療法は存在せず、利用可能な治療選択肢のいずれも説得力のある優れた結果をもたらすとは考えられず、平均して完全応答者はわずか30%である1、3、4。6ヶ月生存率は約50%であるが、長期生存率は5人の患者のうち1人で達成される2。
【0178】
移植片対宿主免疫反応の根底にある核心は、エフェクタ相(effector phase)中に組織損傷および炎症の伝播を誘導する、宿主の抗原提示細胞に応答するアロ反応性ドナーT細胞の増殖および分化である5~7。したがって、現在使用されている療法の多くは、T細胞の枯渇を引き起こす抗体、またはT細胞の機能を抑制するように設計された生物製剤もしくは低分子阻害剤のいずれかからなる1、3、6、8。このようなアプローチの明白な課題は、感染性合併症および基礎疾患である血液腫瘍の再発を回避するために、誘導される免疫抑制が可能な限り選択的かつ短期間でなければならないことであり、そうしなければ、急性GvHD反応を制御するという直接的な利益を相殺してしまう可能性がある9~12。
【0179】
この目標を達成するための新規アプローチとして、本発明者らは、免疫系の急速な処置後再構築を可能にしながら、相乗的なT細胞のインビボ枯渇および抑制を誘導するように設計された2つの抗T細胞免疫毒素の組み合わせ物を開発した
13、14。この組み合わせ製品は、それぞれが別々に組み換えリシン毒素A鎖
15にコンジュゲートしている、CD3およびCD7に対する2つのマウスモノクローナル抗体の1:1混合物(T-Guard(商標)、以後CD3/CD7-ITと略される)からなる
16、17。前臨床試験は、CD3/CD7-ITが、タンパク質合成を阻害することによってT細胞、特に活性化されたT細胞およびNK細胞の両方のアポトーシスを誘導し、TCR/CD3複合体をブロックおよび調節することによってT細胞の活性化を低減することを示した(
図12)
17。用量漸増試験では、SR-aGvHD患者7人のうち5人が第3選択療法としてのCD3/CD7-ITに応答した
17。その試験の有望な成績が、本明細書に報告するSR-aGVHDの処置についてのCD3/CD7-ITの第I/II相試験につながった。
【0180】
方法
この前向き単群第I/II相試験は、Radboud University Medical Center Nijmegen(オランダ)およびUniversity Medical Center Muenster(ドイツ)の倫理委員会および施設内審査委員会によって承認された。全ての患者からインフォームドコンセントを得た。
【0181】
用量漸増試験の成績に基づいて第I/II相試験のT-Guard開始用量4mg/m2を選択した17。無効なまたは毒性のある処置に不必要に曝露されることから患者を保護するために、8人の患者の後に中間解析が予め計画されているブライアント-デイ二段階デザインを適用した18。最初の8人の患者の後、2人以下(≦25%)の28日応答者および/または4人以上(≧50%)の用量規定毒性(グレード3以上の有害薬物反応)が観察された場合(第I相)、無益および/または毒性のため治験を終了することになる。そうでない場合、合計20人の患者まで治験を広げるべきである(第II相)(サンプルサイズ推定:S2)。
【0182】
HSCT後または移植後ドナーリンパ球輸注後にグレードII~IVのaGvHDを発症した成人(≧18歳)患者19が、参加適格者であり;aGvHDのグレードは、Harrisら20によって確立された基準に従って定義した。aGvHDの診断は、組織生検で確認した。SR-aGvHDは、3日間後に進行していたかまたは全身性コルチコステロイド(≧2mg/kg/日プレドニゾロンまたは等価物)において7日間後に改善されなかったaGvHDとして定義された3、4。SR-aGvHDに対する追加の療法を既に受けていた患者は除外し、中等度または重度の慢性GvHD(cGvHD)の所見、重度の臓器機能不全、無制御感染、血清クレアチニンレベル>266μmol/L(1.87mg/dL)、および/または血清アルブミンレベル≦1.5g/dLの患者も同様であった。
【0183】
CD3/CD7-ITの処置スケジュール(S3)は、48時間間隔で投与される4mg/m2の4時間静脈内(i.v.)注入4回からなっていた。主にシクロスポリンAからなるGvHD予防は、単独でまたはミコフェノール酸モフェチルと組み合わせて、CD3/CD7-ITによる療法中も継続した。T-Guardに応答する患者における全身性コルチコステロイドについての推奨漸減は、3~5日間間隔で(開始用量の)10%であった。試験の28日目の後、ステロイドの漸減速度をローカルプロトコールに委ねた。抗微生物予防薬、感染の先行および/または経験的処置、ならびにクレマスチンによる前処置(2mg i.v.)の使用は、医師の裁量および確立されているローカルプロトコールに委ねた。
【0184】
少なくとも1用量のCD3/CD7-ITを受けた場合、その患者を毒性および有効性に関する分析に含めた。主要評価項目は、CD3/CD7-ITで処置した後、28日目における全奏効率(ORR、PR率とCR率との合計として定義される)および6ヶ月目までの可能性のある薬物関連AEの発生であった。副次的評価項目は、28日目のCR率、6ヶ月全生存率(OS)、およびcGvHDの罹患率であった。ORR、28日目におけるCR、および6ヶ月OSを、イノリモマブ-エタネルセプト(N=21)またはインフリキシマブ(N=21)のいずれかを受けた本発明者らの施設の歴史的対照で得られた結果と比較した21。CRは、aGvHDに関連する全ての徴候および症状の回復として定義した。PRは、完全消散も新たな臓器におけるGvHDの出現もない、全ての初期GvHD標的臓器におけるGvHDステージの改善として定義した。無応答(NR)は、28日目よりも前に、変化も、混合応答も、進行性疾患も、救済療法の必要性もないことと定義した22。2014年のNIH診断基準を使用して、cGvHDを評価およびスコア付けした23。サイトカイン放出症候群(CRS)を含む血液および非血液のAEは、Common Terminology Criteria for AEs(CTCAE 4.0)に基づいてグレード分類した。毛細血管漏出症候群(CLS)は、以前に定義された基準を使用して以下のとおりグレード分類した24:グレード1、無症候性、療法の必要無し;グレード2、症候性であるが、補液は必要ない;グレード3、呼吸困難または補液が必要;グレード4、生命の危険がある、昇圧剤補助および/または人工呼吸が必要。グレード3のAEの場合、患者の毒性パラメータが改善された場合または研究者の裁量で患者の利益にかなうと判断されたときにのみ、その後のCD3/CD7-ITの投薬を行った。侵襲性真菌疾患(IFD)、EBVおよびCMVの感染は、確立された指針に従って定義した25~27。
【0185】
CD3/CD7-ITの製造
CD3/CD7-ITは、それぞれが組み換えRTAにコンジュゲートしている、マウスモノクローナル抗体SPV-T3a(抗CD3)およびWT1(抗CD7)からなる。残留リンカーをシステインでブロックし、脱グリコシル化植物由来RTAを組み換えRTAに置き換える工程を付加して、既に記載されている優良医薬品製造基準15を使用してCD3/CD7-ITを製造した17、28。等張緩衝液pH6.5中0.2mg/mLの濃度で免疫毒素を製剤化し、凍結保存した(-20℃以下)。
【0186】
インビトロ実験室分析
処置の前および後に末梢血サンプルを回収して、予測GvHDバイオマーカー、サイトカインレベル、免疫再構築、薬物動態、およびヒト抗薬物抗体(ADA)の出現を分析した。
【0187】
バイオマーカーST2(腫瘍形成抑制2)およびReg3α(再生膵島由来タンパク質3アルファ)のレベルは、Icahn School of Medicine(Mount Sinai, New York)で測定した。aGvHD患者における処置失敗および非再発死亡のリスクを予測するために使用される検証済アルゴリズム29に基づいて、各患者について確率スコアp^を決定した。全身性コルチコステロイドによるの処置の1週間±3日間後にp^が>0.291であるとき、患者は高リスクである。
【0188】
定量的多重化イムノアッセイを使用して、Myriad RBM(Austin, TX)において血清サイトカインレベルを測定した。
【0189】
フローサイトメトリーを使用して免疫表現型検査によってリンパ球を分析した。リンパ球のCD45+および低側方散乱細胞にゲートをかけ、血液1マイクロリットルあたりの各表現型について、ヘルパーT細胞(CD5+およびCD4+)、細胞傷害性T細胞(CD5+およびCD8+)、NK細胞(CD56+およびCD5-)、およびB細胞(CD19+)の一覧を記録した。CD3/CD7-IT処置によってCD3が調節される可能性があるので、T細胞を同定および定量するためにCD3の代わりにCD5を使用した。TCRシーケンシングのために、PAXgeneチューブに回収した全血からDNAを単離した。次いで、TCRβのCDR3領域を増幅し、ImmunoSEQ(Adaptive Biotechnologies, Seattle)を使用して配列決定した。偏りが制御されたVおよびJの遺伝子プライマーを使用して、約20倍のカバレッジでハイスループットシーケンシング(HTS)分析するために、再配置されたV(D)Jセグメントを増幅させた30。クラスタリングアルゴリズムを使用して配列決定の誤りを補正した後、International ImMunoGeneTics情報システムを使用してCDR3セグメントにアノテーションを付け、それによって、V、D、およびJの遺伝子のどれが各再配置に寄与しているかを同定した31。患者のTCRβデータを、EBVおよびCMVの抗原に特異的であると報告されているTCRβ配列と比較することによって、EBV関連およびCMV関連のT細胞の絶対数を決定した32。
【0190】
SPV-T3a-RTAおよびWT1-RTAの血清濃度ならびにこれら免疫毒素のいずれかに対するADAの存在は、検証済の生物発光アッセイを使用してCelonic AG(Basel, Switzerland)で測定した。薬物動態分析は、既に記載されているとおり実施した17。
【0191】
統計解析
記述統計を使用して、患者の特徴を分析した。クロッパー-ピアソンの正確な95%信頼区間(CI)と共に推定aGvHD奏効率を提示する。毒性は、AEの発生および/またはCTCAEグレード≧2の感染を表にすることによって分析した。カプラン・マイヤー曲線を使用して、全生存を分析した。カイ二乗検定を使用して、CD3/CD7-ITに起因する28日目におけるORRならびに完全寛解率および部分寛解率を、イノリモマブ-エタネルセプト(N=21)またはインフリキシマブ(N=21)のいずれかを受けた施設の歴史的対照から得られた対応する結果と比較した21。ログランク検定を使用して6ヶ月OS率を比較した。
【0192】
免疫再構築に関して、ウィルコクソンマッチドペア符号順位検定を使用して処置前、1ヶ月、3ヶ月、および6ヶ月のサンプル間の患者内差を分析した。両側p値<0.05を統計的に有意であるとみなした。DeWittら33に記載されているとおり差分存在量分析を使用して、拡大および濃縮されたT細胞クローンを同定した。所与のクローンを、各レパートリーまたは時点におけるその比率に基づいて2つのサンプルで有意に拡大または縮小されたと判定し、5%のレベルでベンジャミニ-ホフバーグ補正するフィッシャー直接検定を使用して分析した。
【0193】
結果
患者およびGvHDの特徴
20人の患者が、2014年6月から2016年9月の試験に登録された。患者、ドナー、およびGvHDの特徴を表1に提示する。登録時、3人の患者(15%)はグレードIIのaGvHDを有しており、17人はグレードIIIまたはIVのaGvHDを有していた(85%)。16人の患者(80%)では、2つの臓器に関連しており;それぞれ18(90%)および5(25%)の症例でGI管および肝臓に関連していた。ベースラインのアルブミンレベルは、特にGI-GvHDの患者で低かった(中央値:2.3g/dL;範囲:1.6~3.4g/dL;正常範囲:3.5~5.Og/dL)。ST2およびReg3αの血清濃度を使用する検証済のアルゴリズムは、全ての患者について有意なリスクを示し、平均p^は0.345であり;患者の大部分(11/20)が処置失敗およびNRMのリスクが高いと分類された29。初期コルチコステロイド処置後、8日間の間隔(中央値)(範囲:5~16日間)後、および移植の48日間(中央値)(範囲:26~308日間)後にCD3/CD7-ITによる処置を開始した。
【0194】
GvHD応答および患者の成績
CD3/CD7-ITによる療法後の経過観察期間の中央値は、292日間(範囲:3~889日間)であった。処置スケジュールの完了前に、進行性SR-aGvHDによって2人の患者が死亡した。残りの18人の患者(90%)は、48時間間隔で4回の予定された投薬を全て受けた。28日目、ORRは60%(12/20患者)であり、95%CIは36~81%であり;10人の患者(50%;95%CI:27~73%)がCRを達成した(
図13)。
【0195】
12人の応答かつ生存患者では、プロトコールに従ってコルチコステロイドを漸減することができた。高リスクバイオマーカープロファイルを有する患者では、ORRが55%(6/11)であった。6ヶ月の時点で、12人の患者がCD3/CD7-IT組み合わせ物に対する応答後に生存しており、これは、60%のOS率に相当し(95%CI:36~78%)(
図13);高リスクバイオマーカープロファイルを有する患者については、生存率が64%(7/11)であった。治験中に死亡した8人の患者の死因は、不応性aGvHD(4人の患者)、感染を伴う不応性GvHD(3人の患者)、および偽膜性大腸炎(1人の患者)であった。CD3/CD7-ITで達成された成績は、治験の開始直後に含まれていた42人の患者のコホートについて報告された成績より良好であった。具体的には、CR率は、それぞれ、19%に対して50%(p=0.012)であり、6ヶ月OS率は、29%に対して60%(p=0.021)であった。28日目の応答または6ヶ月生存率を予測するベースラインの特徴に関して、明らかな差を見出すことはできなかった。処置開始時のaGVHDの重症度における差を補正するために、全体のaGVHDグレード分類について調整した後に上記分析を繰り返した。aGVHDグレードの調整後
20、CR率およびOS率は有意なままであった(それぞれ、p=0.032および0.034。処置開始24ヶ月後において、試験した患者は、この歴史的対照群と比較してほぼ2倍の全生存率を依然として示した(16.7%に対し35%、それぞれp=0.47および0.09)。6ヶ月の時点まで生存していた12人の患者のうちの3人(25%)はcGVHDを発症し;2人の患者は重症度が軽度であると報告され、1人の患者は重症であった。AML患者3人で再発がみられたが、全て有害リスクAMLを有する患者であった。
【0196】
安全性
データ安全性モニタリング委員会(DSMB)は、最初の8人の患者の予め計画されていた中間解析について審査し、それに基づいて、重大な安全上の懸念は生じておらず、観察されたリスク便益バランスは試験の継続を保証すると結論付けた。概して、CD3/CD7-ITは耐容性良好でありかつ安全であることが見出され、試験薬に関するSUSAR(疑わしい予想外の重篤な有害反応)またはSAE(重篤なAE)は報告されなかった。臨床的に有意な輸注関連反応は記録されなかったが、前処置を受けていなかった2人の患者が悪寒を経験し、これは、クレマスチン処置後に直ちに回復した(グレード2のAE)。患者の大部分でマクロファージの活性化/動員のマーカー(MCP-1およびMIP-1β)レベルが増大し、この増大は、最初の輸注後に最も顕著であったが、悪寒を経験した上述の2人の患者だけは、IL-6レベルも増大した34、35。残りの患者は、IL-6、IL-8、IL-10、またはIFN-γの濃度がいずれも増大せず、CRSに対応する臨床徴候も発現しなかった。
【0197】
20人の患者のうち数人が、低アルブミン血症、細小血管症、および/または血小板減少症を含む、限られた数の可能性のある処置関連AEを発症した(表2)。低アルブミン血症は、ベースライン時に20人の患者全てで存在しており(患者の80%においてグレード2または3)、CD3/CD7-ITによる処置に起因して8人の患者で悪化した可能性がある。これら8人の患者は軽度の末梢性浮腫を発症したが、1例を除いて全て、利尿剤で容易に管理することができた。1人の患者は、全身性の浮腫および顕著な体重増加のためにアルブミン輸注および利尿剤による処置を必要としていたので、この患者は、グレード2のCLSを有すると分類された。15人の患者(75%)は、既存の血小板数が少なく(症例の25%においてグレード3または4)、14人の患者(70%)において血小板減少症が発生または悪化した。様々な他の原因が血小板減少症の発症に寄与した可能性もあるが、時間経過は、9人の患者においてCD3/CD7-ITが関連している可能性を少なくとも示唆している。それにもかかわらず、血小板減少症は一過性であり、結果として出血事象は生じず、血小板輸血を必要とするのは稀であった。早期のEBVおよびCMVの感染(3ヶ月間以内)がそれぞれ3人の患者で観察され(2人の患者はEBVおよびCMVの両方について陽性であった)が、EBV疾患もCMV疾患も発生しなかった。カビ活性型抗真菌予防を受けたのは患者のわずか40%であったが、いずれの患者でもIFDは観察されなかった。それにもかかわらず、この状況で予想されるとおり、感染およびAEの数は比較的多かった。2人の患者がクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染を発症し、その結果、偽膜性大腸炎によって1人が死亡した。更に、5人の患者が菌血症(2人、2人、および1人の患者が、それぞれ、腸球菌、ブドウ球菌、またはクレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)に感染)を発症したが、この罹患率(25%)は、歴史的対照で報告されたものより高くはなかった21。
【0198】
CD3/CD7-ITによる処置後、20人の患者のうちの10人(50%)でSPV-T3a-RTAおよび/またはWT1-RTAに対するADAが検出され;これら10人の患者のうちの4人では、いずれの所与の時点でも力価が≧20,000であった。それにもかかわらず、血清病の症例は報告されなかった。ADAは、典型的には9~10日間後に形成されるので、ADAの出現は、ほとんど臨床的に関連しないと考えられ、一方、CD3/CD7-ITは、現在、1週間処置法の選択肢としてのみ開発されており、その血清半減期はわずか9時間である。
【0199】
薬物動態
薬物動態分析によって、CD3/CD7-ITの平均血清半減期およびCmax(およびSD)が、それぞれ、8.59±3.04時間および1231±671μg/Lであることが明らかになり、これは、既に公開されているデータと一致する17。
【0200】
免疫再構築および抗ウイルス免疫
その意図する効果と一致して、CD3/CD7-ITによる処置は、T細胞およびNK細胞の顕著な枯渇を引き起こし、早ければ処置後2週目には早くも急速な回復が始まった(
図14A~B)。重要なことに、B細胞の絶対数において著しい効果はみられなかった(
図14C)。処置開始の前および後に、ナイーブ、メモリ、エフェクタ、およびエフェクタメモリ型のT細胞の相対比率の処置誘導変化の観点では明らかなパターンはみられなかった(CD4:CD8比の減少または反転についてもみられなかった)。更に、制御性T細胞(Treg)の絶対数およびCD4集団におけるTregの百分率は、正常変動を示し、処置開始後28日目または残りの経過観察期間の間に明白な上昇または下降の傾向を観察することはできなかった。
【0201】
CD3/CD7-ITによる処置の前、および、可能な場合、1、3、および6ヶ月後に、PBMC中のTCR-β遺伝子のCDR3領域に対してHTSを実施した。HTSは、所与のサンプル中のT細胞の合計数、T細胞レパートリーの多様性、および全てのT細胞におけるTCR CDR3領域の配列を決定することができる。サンプル中のT細胞の多様性は、サンプル中に存在する固有のT細胞クローンの数によって特徴づけられ、これは、HTSを用いて同定された固有のCDR3配列の数により反映される。CD3/CD7-ITによる処置の開始前、患者は、1ヶ月で更に減少した低いT細胞多様性を有しており、これは、恐らくT細胞の絶対数の低減に起因する。T細胞の多様性は処置後6ヶ月間で着実に回復し、いくつかの新規ポリクローナルT細胞集団を含む多様なT細胞レパートリーを備えていた(
図14D~H)。
【0202】
次に、本発明者らは、CD3/CD7-ITが抗ウイルスT細胞クローンに影響を与えるかどうかについて調べた。したがって、本発明者らは、CD3/CD7-ITで処置した後の患者におけるEBVおよび/またはCMV特異的T細胞クローンの発生を分析した。それぞれCMVおよびEBV特異的抗原を認識する受容体をコードしている164個および854個のTCRβ配列の検証済リストをスクリーニングすることによって、抗ウイルスT細胞クローンを同定した32。
【0203】
EBVおよびCMVについて、それぞれ、患者の95%および40%が血清学的検査陽性であり、ドナーでは85%および35%であった。感染は、血清学的検査陽性の患者でのみ発生した。
図15AおよびCは、CD3/CD7-ITによる処置後にEBVおよび/またはCMVの感染を経験した4人の患者を示す(2人の患者はEBVまたはCMVの感染のみを有しており、2人の患者はEBVおよびCMVの両方の感染を有していた)。これら患者は全て、感染後にEBVおよびCMV関連クローンの数の増大を示し、これは、抗ウイルスT細胞応答がCD3/CD7-ITによる処置によって負の影響を受けなかったことを示唆する。
【0204】
最後に、本発明者らは、処置開始前にウイルス感染検査で陽性であった患者における、CD3/CD7-ITで処置する直前に採取したサンプルと処置の1および3ヶ月後に採取したサンプルとの間で一対比較を実施することによって、固有の抗ウイルスT細胞クローンの差分分析を行った。この分析によって、処置の開始時に、EBVおよびCMV関連T細胞クローンは、クローンの存在量の観点でT細胞集団全体を通して等しく分布しており;更に、これらクローンは、CD3/CD7-ITを用いた療法の結果として拡大も縮小もしなかった(
図15B~D)ことが明らかになった。処置開始時に抗ウイルスT細胞を有していたが、ウイルス感染を発症しなかった患者由来のサンプルを分析したときにも同様の結果が得られ;本発明者らのデータ(図示せず)は、これら患者が、血清陽性ドナーからこれら抗ウイルスクローンを獲得した可能性があることを示唆している。要約すると、これら結果は、CD3/CD7-ITが抗EBVまたは抗CMVのT細胞クローンの比率に負の影響を与えないことを示し、これは、この処置によって、これら患者がこれら日和見性ウイルスに感染するリスクが高くなるとは考えられないことを示唆する。
【0205】
考察
ここで、本発明者らは、SR-aGvHD患者におけるCD3/CD7-IT療法の使用のインビボにおける安全性および有効性について試験するための多施設第I/II相治験の結果を報告する。本発明者らの結果は、このCD3/CD7-ITが有望な有効性を有することを示し、28日目におけるORRは60%であり;具体的には、患者の50%がCRを達成し、6ヶ月OS率は60%であった。これら結果は、施設の歴史的対照について報告された成績と比較してより優れており(
図13)、患者の高リスクプロファイル(85%が重度のSR-aGvHDを有し、90%がGI関連を有し、55%が高リスクバイオマーカープロファイルを有していた)に鑑みれば注目に値すべきである。第2選択療法のプール解析は、患者の32%しか完全寛解に達しなかったことを示し、対応する6ヶ月生存率は49%であった
1。更に、本発明者らによる第II相の結果は、患者の約30%でCRを達成したことが示されている、ブレンツキシマブベドチンおよびルキソリチニブを含むSR-aGVHDに関して現在調査中の他の薬物について報告されたものと確かに一致している
36。本発明者らの試験は、了承を必要とするいくつかの制限を有している。まず、サンプルサイズが比較的小さく、無作為化対照薬群が含まれていなかった。更に、調査対象集団が、年齢、移植前処置、ドナーの種類、および使用したGvHD予防レジメンに関して不均質であった。それでもなお、調査対象集団は、本発明者らの施設において処置されたSR-aGVHDの患者を代表するものであり、主に、潜在的な高リスク特徴を有する患者からなっていた。
【0206】
CD3/CD7-ITは安全であると考えられる。抗CD3 mAb SPV-T3aの存在にもかかわらず、CD3/CD7-ITは、いずれもクレマスチンを予め輸注していなかった2人の患者において軽度の輸注反応を誘導した。更に、他のRTAベースの免疫毒素にみられるような、CRSまたは横紋筋融解症に関連する毒性は観察されなかった37、38。研究者らは、低アルブミン血症、細小血管症、および血小板減少症が恐らくCD3/CD7-ITに関連していると考えていた。しかし、これら事象は、主に、既存の病態の悪化からなっていた。研究者らは、これら事象を、基礎疾患であるSR-GVHDおよび/またはカルシニューリン阻害剤の併用に関連している可能性がより高いとみなした。それにもかかわらず、免疫毒素の潜在的な毒素作用に鑑みれば、CD3/CD7-ITがこれら事象に寄与したかも知れないという可能性は残り、将来の研究においてこの可能性に注意を払う必要があるであろう。
【0207】
この臨床状況について予測されるとおり、感染は比較的一般的であったが、感染の罹患率は、以前の報告または本発明者らの施設の対照と実質的に異なっていなかった21、39、40。GvHD自体の存在および処置に起因する多面的な免疫不全、GI-GvHDに起因する粘膜壁の破壊、および/またはディスバイオシスは、これら感染、特にクロストリジウム・ディフィシル感染および腸球菌による菌血症の大部分を説明することができる41。患者の半分しかカビ活性抗真菌予防を受けなかったが、IFDの症例は観察されなかった。より重要なことに、T細胞およびNK細胞の顕著な枯渇にもかかわらず、EBV/CMV感染の罹患率(15%)は比較的低いと考えられ21、39、本発明者らの患者において移植後リンパ増殖性障害またはCMV疾患が発生した例はなかった。これは、ウイルス特異的T細胞が処置によって比較的温存されたという事実、および処置開始後6ヶ月以内に免疫の再構築が生じたという事実によって説明し得る。処置の2週目に、特にSR-aGvHDの寛解を達成した患者においてT細胞およびNK細胞の数が増加し始め;3ヶ月目には、これら細胞数はHSCT後に通常みられるものと同様であった42。この細胞数の増大は、T細胞クローンの多様性の同時かつ著しい増大も伴っていた。したがって、CD3/CD7-ITによる療法は、寛解を達成した後に患者の免疫系を回復させることができ、療法後の免疫再構築は、インビボにおけるT細胞の枯渇に依拠する他の処置様式(例えば、抗胸腺細胞グロブリンおよびアレムツズマブ)よりも良好であると考えられる43、44。
【0208】
他の免疫毒素ベースの処置、例えばH65-RTA(抗CD5、リシンA鎖)およびデニロイキンジフチトクス(CD25、ジフテリア毒素)は、aGvHDの処置について臨床的に評価されている
13、45。CD3/CD7-ITは、こういった以前の療法と比較して有利な点を与え得る。まず、組み合わせ物は、同じ標的細胞における複数の抗原を標的とし、これは、単一の免疫毒素を使用するよりも有効である傾向のあるストラテジである
46~53。更に、CD3/CD7-ITは、活性化されたばかりのT細胞、およびaGvHDの遠心性相(efferent phase)において役割を果たす可能性のあるNK細胞に対して明らかな優位性を有する
17。最後に、CD3/CD7-ITは、RTAによって誘導される細胞の殺傷とは無関係の機序を介してCD3/TCR複合体に結合することによって抗CD3 mAb SPV-T3aが追加の免疫抑制を与える点で二重の作用機序を有する(
図12)
17。
【0209】
まとめると、本発明者らは、高リスクSR-aGvHDを有する患者が組み入れられた第I/II相試験の結果を報告し、これは、CD3/CD7-ITが、高い臨床寛解率および処置後の急速な免疫再構築を提供することを示す。これら結果に基づき、SR-aGvHDの処置にCD3/CD7-ITを含めることの潜在的価値について調べるために、第III相試験を現在設計している。
【0210】
(表1)患者の特徴、ならびにHSCTおよびGvHDの特性
a 移植前処置:NMA前処置は、Flu-TBIからなっており;RICレジメンは、Flu-BusおよびFlu-Melベースであり;MACレジメンは、Cyclo-TBI、Flu-Mel-TBI、またはFLAMSAベースであった。
b 初期コルチコステロイド処置に対する。
注記:aGvHD=急性移植片対宿主病;BM=骨髄;CyA=シクロスポリン A;DLI=ドナーリンパ球輸注;ハプロイド=ハプロタイプ一致血縁ドナー;MAC=骨髄破壊的移植前処置;MMF=ミコフェノール酸モフェチル;MMUD=不適合非血縁ドナー;MRD=適合血縁ドナー;MTX=メトトレキサート;MUD=適合非血縁ドナー;NA=該当無し;NMA=非骨髄破壊的移植前処置;PhAT=薬理学的監査証跡;PBSC=末梢血幹細胞;RIC=強度減弱移植前処置。
a初期コルチコステロイド処置に対する。
【0211】
(表2)処置に関連している可能性のある有害事象の概略
グレード2a グレード3 グレード4
貧血(1)b 血小板減少症(3) 血小板減少症(5)
腹痛(1) 好中球減少症(1)
血小板減少症(1) ビリルビン増加(2)
好中球減少症(1) ミオパシー(1)
細小血管症(1) 細小血管症(1)
悪寒(2) 低アルブミン血症(1)
毛細血管漏出症候群(1)
低アルブミン血症(1)
a 各AEのグレード分類は、Messmannら24によって記載されているシステムを使用してグレード分類した毛細血管漏出症候群を除いて、Common Terminology Criteria for AEsのバージョン4.0に基づく。
b 括弧内の数字は、表示された有害事象を経験した患者の数を指す。
【0212】
【0213】
本明細書に引用した全ての参照文献は、その全文が参照により本明細書に組み入れられ、全ての目的のために、各個々の刊行物または特許または特許出願が、その全文が参照により組み入れられると具体的にかつ個々に指定されているかのように同程度組み入れられる。
【0214】
本明細書に記載される具体的な態様は、一例として提供されるものであって、限定するものではない。本明細書におけるいずれの副題も、便宜上含まれるだけであり、いかなる方法でも開示を限定すると解釈されるべきではない。
【配列表】