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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】車両の排気消音装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/14 20100101AFI20240507BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20240507BHJP
   F01N 1/08 20060101ALI20240507BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240507BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240507BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20240507BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20240507BHJP
   E05F 15/611 20150101ALI20240507BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20240507BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F01N13/14
F01N1/00 D
F01N1/00 E
F01N1/08 K
B60J5/04 C
B62D25/20 N
B60K11/06
B60K13/04 Z
E05F15/611
E05F15/73
E05B49/00 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020184895
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074660
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】志村 直紀
(72)【発明者】
【氏名】石毛 誠二
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070165(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013215815(DE,A1)
【文献】実開昭56-161117(JP,U)
【文献】特開2019-127804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169708(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104420938(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/14
F01N 1/00
F01N 1/08
B60J 5/04
B62D 25/20
B60K 11/06
B60K 13/04
E05F 15/611
E05F 15/73
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部を開閉可能なバックドアとユーザの開閉要求動作を検出するセンサとを有すると共に前記センサの検出結果に基づき前記バックドアを開閉駆動するバックドア開閉機構と、車両後部下方に配設された排気消音装置とを備えた車両の排気消音装置において、
前記排気消音装置の後部下方を覆うプロテクタを設けると共に前記排気消音装置の上側近傍位置にユーザのキック動作を検出するための前記センサを配置し、
前記プロテクタの車幅方向中間部分に前方から後方へ向かう熱伝導を規制する熱伝導規制機構を設けたことを特徴とする車両の排気消音装置。
【請求項2】
前記熱伝導規制機構は、車幅方向に延びるスリットにより構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の排気消音装置。
【請求項3】
前記排気消音装置は、その内部を車幅方向に区分する1対の仕切板を有し、
前記スリットは、前記1対の仕切板の間に対応するように形成されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の排気消音装置。
【請求項4】
前記スリットの前側スリット縁部の高さ位置が後側スリット縁部の高さ位置よりも低く設定されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両の排気消音装置。
【請求項5】
前記スリットの前側スリット縁部よりも前側部分が前方程高くなるように形成されたことを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の車両の排気消音装置。
【請求項6】
前記排気消音装置は、車幅方向に延びて扁平状に形成されたことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の車両の排気消音装置。
【請求項7】
車幅方向にのびるリヤバンパ部材を有し、
前記センサは前記リヤバンパ部材の後側下部に配設され、
前記プロテクタが、前記センサと略同じ車幅方向寸法に設定されたことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の車両の排気消音装置。
【請求項8】
前記プロテクタは、前記排気消音装置の底壁及び後側縦壁に接合されると共に前記後側縦壁との間に開口部を形成したことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の車両の排気消音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の排気消音装置に関し、特に、ユーザの開閉要求動作を検出するセンサの検出結果に基づきバックドアを開閉駆動可能なバックドア開閉機構を備えた車両の排気消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンから排出される排気ガスの騒音を低減するため、車両後部に配置された排気管の排気口付近に排気消音装置(サイレンサともいう)が設けられている。
特許文献1のエンジンの排気消音装置は、車幅方向に延びて扁平状に形成されたサイレンサ本体と、車体前方から排気ガスを導入するためにサイレンサ本体の車幅方向中央部前側に挿入された入力パイプと、サイレンサ本体から排気ガスを排出するためにサイレンサ本体の左右両端部に連通された1対の出力パイプと、サイレンサ本体内部を車幅方向に区分する複数のプレート部材とを有し、入力パイプと出力パイプを立体交差するように複数のプレート部材で支持している。
【0003】
近年、ユーザの利便性を向上するため、多様なアシスト機構が車両に搭載されている。
車両のバックドアを対象としたアシスト機構の一つにバックドア開閉機構(ハンズフリーパワーリフトゲートシステム)がある。このバックドア開閉機構は、携帯機である電子キーを所持したユーザが所定の検出エリア内に入るだけで、機械的な鍵を使用することなく、車両のバックドアの解錠開放及び閉鎖施錠を自動的に行うシステムである。
具体的には、車両のリヤバンパ内に静電センサを配置し、ユーザの開閉要求意思を反映した足の挙動、例えば、ユーザによるキック動作、が検出エリア内で検知された場合、バックドアが自動的に解錠されて開放駆動される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-162763号公報
【文献】特開2017-198503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の車両制御装置は、手荷物等でユーザの両手が塞がっている場合であっても、ユーザは、検出エリア内で足先によるキック動作を行うことによりバックドアの開閉要求意思をシステムに認識させることができ、その結果、機械的な鍵を使用することなく車両のバックドアを開放してユーザの利便性を確保することができる。
しかし、特許文献2の技術では、ユーザがキック動作する際、足先が高熱を知覚してユーザが不快感を覚える虞がある。
【0006】
エンジンの排気消音装置は、通常、リヤフロアパネル下方に配設される一方、キック動作を検知する静電センサは、車両後端部分に設置されたリヤバンパ内に配設される。
バックドア開閉機構を搭載した車両の検出エリアにおいて、リヤバンパ(静電センサ)と排気消音装置とキック動作する足は、平面視にて略重畳する位置関係になっている。
それ故、ユーザによるキック動作の仕方によっては、ユーザの足先が排気消音装置に接触することがある。
【0007】
そこで、排気消音装置に断熱用プロテクタを設けることが考えられる。
しかし、車両の走行を停止した直後、排気消音装置のサイレンサ本体は、排気ガスによって、例えば、約350℃以上の高温になるため、サイレンサ本体に伝達された熱は溶接等の接合部を介してプロテクタに伝導され、プロテクタはユーザが不快感を覚える程の高温になる。即ち、ユーザが熱による不快感を覚えることなく、バックドア開閉機構によりバックドアを開閉駆動させることは容易ではない。
【0008】
本発明の目的は、ユーザが熱による不快感を覚えることなく、バックドア開閉機構によりバックドアを開閉駆動可能な車両の排気消音装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の車両の排気消音装置は、車両後部を開閉可能なバックドアとユーザの開閉要求動作を検出するセンサとを有すると共に前記センサの検出結果に基づき前記バックドアを開閉駆動するバックドア開閉機構と、車両後部下方に配設された排気消音装置とを備えた車両の排気消音装置において、前記排気消音装置の後部下方を覆うプロテクタを設けると共に前記排気消音装置の上側近傍位置にユーザのキック動作を検出するための前記センサを配置し、前記プロテクタの車幅方向中間部分に前方から後方へ向かう熱伝導を規制する熱伝導規制機構を設けたことを特徴としている。
【0010】
この車両の排気消音装置では、前記排気消音装置の後部下方を覆うプロテクタを設けているため、高温の排気消音装置の後部下方を被覆することができ、排気消音装置の高温化した表面の露出を回避することができる。前記排気消音装置の上側近傍位置にユーザのキック動作を検出するための前記センサを配置しているため、バックドアの開閉要求意思を簡単な動作でバックドア開閉機構に認識させることができる。
前記プロテクタの車幅方向中間部分に前方から後方へ向かう熱伝導を規制する熱伝導規制機構を設けたため、プロテクタのうち高温になり且つ最短距離で熱を後方に伝導する最短熱伝導経路に相当する車幅方向中間部分において後方へ向かう熱伝導を規制することができ、プロテクタの後端側部分の温度上昇を抑制することができる。これにより、キック動作する際、ユーザの足先がプロテクタに接触しても高熱を知覚しない。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記熱伝導規制機構は、車幅方向に延びるスリットにより構成されたことを特徴としている。この構成によれば、簡単な構成で最短熱伝導経路を前後に遮断することができ、プロテクタの後端側部分への熱伝導を確実に阻止することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記排気消音装置は、その内部を車幅方向に区分する1対の仕切板を有し、前記スリットは、前記1対の仕切板の間に対応するように形成されたことを特徴としている。この構成によれば、最小限のスリット寸法でプロテクタの後端側部分への熱伝導を確実に阻止することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において、前記スリットの前側スリット縁部の高さ位置が後側スリット縁部の高さ位置よりも低く設定されたことを特徴としている。
この構成によれば、車両走行時、スリットを介した異物の侵入を防止することができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項2~4の何れか1項の発明において、前記スリットの前側スリット縁部よりも前側部分が前方程高くなるように形成されたことを特徴としている。
この構成によれば、車両後進時、スリットを介してプロテクタ内に侵入した異物を前側傾斜部分により外部に排出することができる。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1~5の何れか1項の発明において、前記排気消音装置は、車幅方向に延びて扁平状に形成されたことを特徴としている。この構成によれば、排気消音装置の地上高を確保することができ、車両後部の設計自由度を高くすることができる。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1~6の何れか1項の発明において、車幅方向にのびるリヤバンパ部材を有し、前記センサは前記リヤバンパ部材の後側下部に配設され、前記プロテクタが、前記センサと略同じ車幅方向寸法に設定されたことを特徴としている。
この構成によれば、ユーザがキック動作を行う可能性がある範囲に重点的にプロテクタを配置することができる。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1~7の何れか1項の発明において、前記プロテクタは、前記排気消音装置の底壁及び後側縦壁に接合されると共に前記後側縦壁との間に開口部を形成したことを特徴としている。この構成によれば、排気消音装置の後側縦壁とプロテクタとの間に溜まった熱を効率よく外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両の排気消音装置によれば、プロテクタの車幅方向中間部分後部の温度上昇を抑制することにより、ユーザが熱による不快感を覚えることなく、バックドア開閉機構によりバックドアを開閉駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1に係る排気消音装置を備えた車両の概略構成図である。
図2】車体後部の側面図である。
図3】車体後部の底面図である。
図4】排気消音装置の底面側斜視図である。
図5】上側ケースを省略した排気消音装置の上面側斜視図である。
図6】プロテクタの後側正面図である。
図7】プロテクタの底面図である。
図8】プロテクタの底面側斜視図である。
図9図4のIX-IX線断面図である。
図10図4のX-X線断面図である。
図11】スリット部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両の排気消音装置に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施例1について図1図11に基づいて説明する。
車両Vは、横置き4気筒直列ガソリンエンジン(図示略)が前部のエンジンルームに搭載されている。図1に示すように、この車両Vは、ユーザが手を用いることなくバックドア3を自動的に開閉駆動するバックドア開閉機構Mと、車両Vの後部下方に配設された排気消音装置D等を備えている。以下、車体前後方向前側を前方、車幅方向左側を左方として説明する。
【0022】
まず、車両Vの後部車体構造について説明する。
図1に示すように、車両Vは、後部車体の両側部を前後に延びる左右1対のリヤサイドフレーム1と、車室床面を形成するフロントフロアパネル(図示略)の後端部に接合され且つキックアップ部を介して荷室床面を形成するリヤフロアパネル2と、左右に延びるエンドパネル4を含む車体後部に形成された後部開口部を開閉可能なバックドア3と、エンドパネル4の後方にて左右に延びる閉断面状のバンパフレーム5と、このバンパフレーム5の後方を覆うバンパパネル6(リヤバンパ部材)と、リヤフロアパネル2よりも下方で且つバンパパネル6よりも前方位置に配置された排気消音装置Dと、リヤフロアパネル2よりも下方で且つ排気消音装置Dよりも前方位置に配置されたリヤサスクロスメンバ7等を備えている。
【0023】
バックドア3は、バックウインドウガラス(図示略)が取り付けられ、その上端部が上下方向に揺動自在なヒンジを介して後部開口部の上端縁部に固定されている。
後部開口部の左右両端部分には、バックドア3を開閉駆動する駆動装置12が夫々設置されている。駆動装置12は、伸縮可能な軸形状に形成され、アクチュエータ機能を備えている。駆動装置12は、軸方向一側端部が後部開口部の側縁部、軸方向他側端部がバックドア3の側縁部中段部に対して回動可能に連結されている。
【0024】
バンパパネル6は、内部空間を備えた略桶状に形成されている。このバンパパネル6は、裏面に内部空間内に向けて突出する取付ボス部(図示略)を有し、所定のクリップ(図示略)を介してバンパフレーム5に対して固定されている。
バンパパネル6の内部空間には、ユーザとの間の静電容量変化を検知する受動的且つ長尺状(例えば、車幅方向中心から左右方向に300mm 全長約60cm)の第1,第2静電センサ8,9が夫々配置されている。第1静電センサ8は、ユーザの脚の膝から脛部分を検知するように設置され、第2静電センサ9は、ユーザの足の甲部分を検知するように第1静電センサ8よりも低い位置に設置されている。
これにより、第1,第2静電センサ8,9は、予め規定された検出エリア内において、図2及び図3にて仮想線で示すユーザの足先による標準的なキック動作、所謂振り子運動動作を検出可能に構成されている。
【0025】
次に、バックドア開閉機構Mについて説明する。
バックドア開閉機構Mは、携帯機11を所持するユーザがバックドア3を開閉作動させたいという意思に応じて、駆動装置12を駆動させてバックドア3をユーザの意思に合わせて自動的に開閉駆動させるように構成されている。
図1に示すように、バックドア開閉機構Mは、第1,第2静電センサ8,9と、携帯機11と、駆動装置12と、車載機としての制御装置13等を備えている。
【0026】
携帯機11は、携帯機11と制御装置13との通信判定領域内にユーザが入った際、制御装置13との通信を行うため、発信部及び受信部を有している。尚、通信判定領域は、第1,第2静電センサ8,9の検出エリアを含むように設定されている。
制御装置13は、携帯機11との間でIDコードの送受信を行い、バックドア3を施錠又は解錠する第1の機能と、バックドア3を自動開閉する第2の機能とを有する。
制御装置13は、CPUやメモリ等を備えたECUで構成され、発信部及び受信部を有している。
【0027】
通信判定領域内にユーザが入った際、携帯機11は、制御装置13からのIDコード(リクエスト信号)を受信し、IDコード(応答信号)を送信する。制御装置13は、携帯機11から受信したIDコードを照合し、ID認証に成功するとバックドア開閉処理を開始する。バックドア開閉処理では、まず、ユーザによるキック動作の有無を判定する。
第1,第2静電センサ8,9によってユーザによるキック動作が検知されない場合は、バックドア開閉処理を終了する。
【0028】
第1,第2静電センサ8,9によってユーザによるキック動作が検知された場合、バックドア3が施錠された閉鎖状態のときには、例えば、バックドア3のロック機構(図示略)を解錠すると共に駆動装置12を伸長作動させてバックドア3を開くように開作動させる。バックドア3が解錠された開放状態のときには、例えば、駆動装置12を短縮作動させてバックドア3を閉めるように閉作動させた後、バックドア3のロック機構を施錠する。尚、バックドア開閉処理では、少なくとも、バックドア3の開作動が実行可能であれば良い。
【0029】
次に、排気消音装置Dについて説明する。
この車両Vの排気装置は、エンジンに接続され、フロントフロアパネル及びリヤフロアパネル2の下方を前方側から後方側に亙って略直線状に延設され、排気マニホールド、ターボ過給機、排気管、中継パイプ(何れも図示略)、及び排気系騒音(排気系吐出騒音)を低減する排気消音装置Dを備えている。
【0030】
図1図3に示すように、排気消音装置Dは、車両Vの車幅方向中間位置に配設され、サイレンサ本体20と、プロテクタ30とを主な構成要素としている。
排気消音装置Dの下端部は、バンパパネル6の下端部よりも下側に配置され、排気消音装置Dの左右方向寸法は、第1,第2静電センサ8,9の左右方向寸法と略同じ寸法に設定されている。この排気消音装置Dは、前側左右両端部及び後側左右両端部がマウント部29を介してリヤサイドフレーム1に夫々支持されている。
【0031】
図4図5図9図10に示すように、厚さ0.8mmのステンレス製サイレンサ本体20は、桶状の下側ケース21と、この下側ケース21と協働して容積室を形成する桶状の上側ケース22と、中継パイプとケース21,22が形成する容積室とを連通する入力パイプ23と、容積室から排気ガスを外部に排出する左右1対の出力パイプ24a,24bと、ケース21,22が形成する容積室を左右方向に3つの部屋に仕切る左右1対の仕切板25等を備えている。
【0032】
ケース21,22が形成する容積室は、平面視にて略矩形状に形成されると共に左右に延びて扁平状に形成されている。下側ケース21には、前後に延びる凹状のビード部21aが複数(例えば、4つ)設けられている。入力パイプ23は、前端部が中継パイプの後端部に接続され、後端部が容積室の前側中央部に挿入されている。
出力パイプ24aは、導入口が容積室の前側左縦壁部に対向するように配置され、車幅方向中央部まで延設された後、略U字状に屈曲されて容積室の後側左縦壁部から外部に突出している。外部に突出した出力パイプ24aは、左方に延びた後、バンパパネル6の下方位置まで後方に延びている。出力パイプ24bは、出力パイプ24aと左右対称に構成されている。
【0033】
図5に示すように、1対の仕切板25は、ケース21,22が形成する容積室を左右方向に略3等分で且つ排気ガスが各部屋間を流動可能に仕切っている。
出力パイプ24a,24bの車幅方向外側部分は、下側ケース21により夫々1箇所支持され、車幅方向内側部分は、仕切板25により夫々2箇所支持されている。
それ故、入力パイプ23を介して容積室の中央の部屋に導入された排気ガスは、部屋内で膨張すると共に1対の仕切板25を介して左右各々の部屋に移動する。運動エネルギが低減された排気ガスは、左右各々の部屋から出力パイプ24a,24bを介して外部に排出される。
【0034】
次に、プロテクタ30について説明する。
図2図4図9図10に示すように、プロテクタ30は、サイレンサ本体20の後部下方部分(下側ケース21の後側底壁部分及び後側縦壁部分)から所定距離離隔した状態で覆うように設けられている。厚さ0.8mmのステンレス製のプロテクタ30は、下側の底壁部分と後側の縦壁部分とを主な構成要素としている。このプロテクタ30の左右方向寸法は、第1,第2静電センサ8,9の左右方向寸法と略同じ寸法に設定されている。
【0035】
図6図11に示すように、プロテクタ30は、左右に延びるスリット部31(熱伝導規制機構)と、複数(例えば3つ)のビード部32と、下側ケース21とプロテクタ30が形成する隙間空間に侵入した水を外部に排出する複数(例えば4つ)のドレイン部33と、隙間空間に溜まった熱気を外部に排出する複数(例えば3つ)の開口部34等を備えている。
【0036】
スリット部31は、前後方向幅が1.5~3.0mmの範囲に設定され、左右方向幅が1対の仕切板25の間(離間距離)に対応するように形成されている。
サイレンサ本体20において、スリット部31よりも前側部分は、入力パイプ23によって導入された排気ガスの熱エネルギによって加熱される。そして、1対の仕切板25の間に対応した下側ケース21の底壁部分が、後方に向かう最短熱伝導経路に相当している。
【0037】
同様に、1対の仕切板25の間に対応したプロテクタ30の底壁部分が、プロテクタ30の後方に向かう最短熱伝導経路に相当している。排気ガスの熱エネルギによって昇温された前側部分から熱がスリット部31よりも後側部分に伝導される際、最短熱伝導経路を遮断するスリット部31により後方に向かう熱伝導経路が長くなるため、熱が外部に放熱されてスリット部31よりも後側部分の温度がスリット部31を形成しないときの温度に比べて低下する。
【0038】
図11に示すように、スリット部31の前側スリット縁部31aの高さ位置が後側スリット縁部31bの高さ位置よりも低く設定され、前側スリット縁部31aよりも前側部分31cが前方程高くなるように形成されている。これにより、車両Vの前進時、スリット部31を介して下側ケース21とプロテクタ30が形成する隙間空間に外部から異物が侵入することを防止している。また、車両Vの後退時、スリット部31を介して下側ケース21とプロテクタ30が形成する隙間空間に異物が侵入した場合であっても、前側部分31cのテーパ形状を利用して侵入した異物をスリット部31から外部に排出する。
【0039】
3つのビード部32は、プロテクタ30の車幅方向中央部分及び左右両端側部分に夫々凹状に設けられ、前端側部分から後方に延びて上端部近傍位置に亙って形成されている。
図7に示すように、プロテクタ30の前端側部分には、3つのビード部32を左右で挟み込むように4つの貫通状のドレイン部33が夫々設けられている。
図6図9図10に示すように、各ビード部32の上端部に対応して下側ケース21の後側縦壁部分からの離隔距離が拡大した断面略矩形状の開口部34が3箇所形成されている。これら開口部34は、下側ケース21と上側ケース22の接合フランジに対向するように配置されている。
【0040】
図6図7に示すように、プロテクタ30は、下側ケース21に対して接合部35a~35f,36a~36eにて溶接(例えば、MIG溶接等)されている。
プロテクタ30の前端部には、凹状に形成された前側接合部35a~35fが左側から順に配置されている。前側接合部35a,35fは、プロテクタ30の左右端部の前端部分、前側接合部35b,35eは、左側及び右側のビード部32の前側近傍部分、前側接合部35c,35dは、中央のビード部32を挟む左右1対のドレイン部33の前側近傍部分に設けられている。
【0041】
プロテクタ30の上端部には、凹状に形成された上側接合部36a~36eが左側から順に配置されている。左側の開口部34の左側に上側接合部36aが設けられ、右側の開口部34の右側に上側接合部36eが設けられている。中央の開口部34の左右両側に、上側接合部36b,36cが夫々設けられている。
【0042】
次に、本発明の実施形態による車両Vの排気消音装置の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、排気消音装置Dの後部下方を覆うプロテクタ30を設けているため、高温の排気消音装置Dの後部下方を被覆することができ、排気消音装置Dの高温化した表面の露出を回避することができる。排気消音装置Dの上側近傍位置にユーザのキック動作を検出するためのセンサ8,9を配置しているため、バックドア3の開閉要求意思を簡単な動作でバックドア開閉機構Mに認識させることができる。
プロテクタ30の車幅方向中間部分に前方から後方へ向かう熱伝導を規制する熱伝導規制機構(スリット部31)を設けたため、プロテクタ30のうち高温になり且つ最短距離で熱を後方に伝導する最短熱伝導経路において後方へ向かう熱伝導を規制することができ、プロテクタ30の後端側部分の温度上昇を抑制することができる。これにより、キック動作する際、ユーザの足先がプロテクタ30に接触しても高熱を知覚しない。
【0043】
熱伝導規制機構は、車幅方向に延びるスリット30により構成されたため、簡単な構成で最短熱伝導経路を前後に遮断することができ、プロテクタ30の後端側部分への熱伝導を確実に阻止することができる。排気消音装置Dは、その内部を車幅方向に区分する1対の仕切板25を有し、スリット31は、1対の仕切板25の間に対応するように形成されたため、最小限のスリット寸法でプロテクタ30の後端側部分への熱伝導を確実に阻止することができる。
【0044】
スリット31の前側スリット縁部31aの高さ位置が後側スリット縁部31bの高さ位置よりも低く設定されたため、車両走行時、スリット31を介した異物の侵入を防止することができる。スリット31の前側スリット縁部31aよりも前側部分31cが前方程高くなるように形成されたため、車両後進時、スリット31を介してプロテクタ30内に侵入した異物を前側部分31cのテーパ形状により外部に排出することができる。
【0045】
排気消音装置Dは、車幅方向に延びて扁平状に形成されたため、排気消音装置Dの地上高を確保することができ、車両後部の設計自由度を高くすることができる。車幅方向にのびるリヤバンパパネル6を有し、センサ8,9はリヤバンパパネル6の後側下部に配設され、プロテクタ30が、センサ8,9と略同じ車幅方向寸法に設定されたため、ユーザがキック動作を行う可能性がある範囲に重点的にプロテクタ30を配置することができる。
プロテクタ30は、排気消音装置Dの底壁及び後側縦壁に接合されると共に後側縦壁との間に開口部34を形成したため、排気消音装置Dの後側縦壁とプロテクタ30との間に溜まった熱を効率よく外部に排出することができる。
【0046】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、スリット31が熱伝導規制機構である例について説明したが、少なくとも、プロテクタ30の最短熱伝導経路相当部分の熱伝導を遮断できれば良く、例えば、プロテクタ30の車幅方向中間部分に前方から後方へ向かう熱を積極的に冷却する冷却機構を設けても良い。
【0047】
2〕前記実施形態においては、ユーザによるキック動作を長尺状の静電センサ8,9で検知する例について説明したが、単一のセンサで検知しても良い。また、静電センサではなく、ユーザの開閉要求意思をCCD等の撮像手段により判定しても良い。
【0048】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0049】
3 バックドア
6 バンパパネル(リヤバンパ部材)
8,9 静電センサ
25 仕切板
30 プロテクタ
31 スリット部(熱伝導規制機構)
31a 前側スリット縁部
31b 後側スリット縁部
31c 前側部分
34 開口部
M バックドア開閉機構
D 排気消音装置
V 車両
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