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特許7482379勾配屋根の軒先構造及び勾配屋根の軒先施工方法
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  • 特許-勾配屋根の軒先構造及び勾配屋根の軒先施工方法 図1
  • 特許-勾配屋根の軒先構造及び勾配屋根の軒先施工方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】勾配屋根の軒先構造及び勾配屋根の軒先施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/40 20060101AFI20240507BHJP
   E04D 3/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E04D3/40 H
E04D3/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021099509
(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公開番号】P2022190960
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】中松 保二
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3145631(JP,U)
【文献】特開2007-314946(JP,A)
【文献】特開2007-309074(JP,A)
【文献】特開平08-312086(JP,A)
【文献】特開2008-050919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/40
E04D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も水下の母屋よりも軒先側に設置された既設軒先水切り材を被覆する新設軒先水切り材と、
最も水下に位置する既設屋根瓦の上面に固定され、且つ、最も水下に配置される新設屋根瓦を係止する軒先役物と、
前記母屋の軒先側の面に固定された既設鼻隠し材を被覆する新設鼻隠し材と、を備え、
前記新設軒先水切り材は、前記既設軒先水切り材を被覆し、水下側へ突出するV字型状の水切り被覆部と、当該水切り被覆部の上端部を軒先側へ折り曲げてなる折曲片と、前記水切り被覆部の前記母屋側の一端部を水上側へ延出させた延出部と、当該延出部の前記母屋側の一端から下方へ延びる垂下部と、を有しており、
前記軒先役物は、最も水下に位置する前記既設屋根瓦の軒先側の面、及び前記折曲片を被覆し、
前記垂下部は、前記新設鼻隠し材で被覆されることを特徴とする勾配屋根の軒先構造。
【請求項2】
前記新設鼻隠し材は、軒先側の面に上吊り式の軒樋が固定されることを特徴とする請求項1記載の勾配屋根の軒先構造。
【請求項3】
前記新設軒先水切り材は、軒先側の面に水下側へ突出する板状の雨水ガイドを固定されることを特徴とする請求項に記載の勾配屋根の軒先構造。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれかに記載の勾配屋根の軒先構造を用いた勾配屋根の軒先施工方法であって、
前記新設軒先水切り材で既設軒先水切り材を被覆し、
前記軒先役物を最も水下に位置する既設屋根瓦の上面に固定するとともに、水下側の一端部で前記既設屋根瓦の軒先側の面、及び前記折曲片を被覆し、
前記新設鼻隠し材で既設鼻隠し材及び前記垂下部を被覆することを特徴とする勾配屋根の軒先施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設屋根瓦を新設屋根瓦で被覆する勾配屋根の軒先構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、勾配屋根の軒先部分は、屋根面から伝い落ちてくる雨水を受けるため損傷しやすく、従来より、この軒先部分を改修する方法として既設の軒先部材を新たな軒先部材で被覆する所謂カバー工法が知られている(例えば特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1及び特許文献2に記載の発明には、既設勾配屋根の軒先部材を新設のカバー材で被覆する工法について記載されている。これらのカバー材は、軒先側へ突出している最水下の既設屋根瓦を被覆する部分と、既設水切り材を被覆する部分とを一体的に形成されているため、野地板と既設屋根瓦との間から雨水が浸入することを効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-46248号公報
【文献】特開平8-120848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のカバー材は、既設水切り材の下部に位置する既設鼻隠し材を被覆していないため、既設鼻隠し材と野地板との間から雨水が浸入する可能性がある。また傷んだ勾配屋根の軒先部材は、経年劣化によって各部材ごとに損傷や撓みなどの程度が異なるため、既設屋根瓦を被覆する部分と既設水切り材を被覆する部分とが一体化されたカバー材では、既設の軒先部材に上手く設置することができない虞がある。
【0006】
そこで、本発明は上述した課題を鑑みてなされたものであって、勾配屋根の軒先部分を改修する際に、防水性と施工性とを向上することができる勾配屋根の軒先構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の勾配屋根の軒先構造は、最も水下の母屋よりも軒先側に設置された既設軒先水切り材を被覆する新設軒先水切り材と、最も水下に位置する既設屋根瓦の上面に固定され、且つ、最も水下に配置される新設屋根瓦を係止する軒先役物と、前記母屋の軒先側の面に固定された既設鼻隠し材を被覆する新設鼻隠し材と、を備え、前記新設軒先水切り材は、前記既設軒先水切り材を被覆し、水下側へ突出するV字型状の水切り被覆部と、当該水切り被覆部の上端部を軒先側へ折り曲げてなる折曲片と、前記水切り被覆部の前記母屋側の一端部を水上側へ延出させた延出部と、当該延出部の前記母屋側の一端から下方へ延びる垂下部と、を有しており、前記軒先役物は、最も水下に位置する前記既設屋根瓦の軒先側の面、及び前記折曲片を被覆し、前記垂下部は、前記新設鼻隠し材で被覆されることを特徴としている。
【0009】
本発明の第の勾配屋根の軒先構造は、前記新設鼻隠し材が、軒先側の面に上吊り式の軒樋が固定されることを特徴としている。
【0010】
本発明の第の勾配屋根の軒先構造は、前記新設軒先水切り材が、軒先側の面に水下側へ突出する板状の雨水ガイドを固定されることを特徴としている。
【0012】
本発明の第1の勾配屋根の軒先施工方法は、第1から第のいずれかに記載の勾配屋根の軒先構造を用いた勾配屋根の軒先施工方法であって、前記新設軒先水切り材で既設軒先水切り材を被覆し、前記軒先役物を最も水下に位置する既設屋根瓦の上面に固定するとともに、水下側の一端部で前記既設屋根瓦の軒先側の面、及び前記折曲片を被覆し、前記新設鼻隠し材で既設鼻隠し材及び前記垂下部を被覆することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の勾配屋根の軒先構造によると、既設の軒先部材を被覆する部材が、新設軒先水切り材、軒先役物、及び新設鼻隠し材に分かれているので、それぞれの既設軒先部材にフィットさせやすく、施工性を向上させることができる。また軒先役物は、最も水下に位置する既設屋根瓦の軒先側の面、及び折曲片を被覆するので、軒先役物と折曲片との間から雨水が浸入することを効果的に防止することができる。
【0014】
本発明の第の勾配屋根の軒先構造によると、新設軒先水切り材は、下端部が新設鼻隠し材で被覆される。したがって、新設軒先水切り材と新設鼻隠し材との間から雨水が侵入することを効果的に防止できる。
【0015】
本発明の第の勾配屋根の軒先構造によると、新設鼻隠し材は、軒先側の面に上吊り式の軒樋が固定されるため、軒樋のブラケットが目立たず、改修後の軒先の美観性を向上させることができる。
【0016】
本発明の第の勾配屋根の軒先構造によると、新設軒先水切り材は、軒先側の面に水下側へ突出する板状の雨水ガイドを固定される。したがって、軒樋を支持するブラケットが干渉して軒樋と新設軒先水切り材との間の隙間が広がったとしても、当該隙間から新設鼻隠し材の方向へ雨水が垂れることを防止できる。
【0017】
本発明の第の勾配屋根の軒先構造によると、新設軒先水切り材は、既設軒先水切り材を被覆する部分が、水下側へ突き出しているため、より確実に雨水を下方へ流し落とすことができ防水性を向上させることができる。
【0018】
本発明の第1の勾配屋根の軒先施工方法によると、新設軒先水切り材で既設軒先水切り材を被覆した後、軒先役物を最も水下に位置する既設屋根瓦の上面に固定するとともに、水下側の一端部で既設屋根瓦の軒先側の面、及び折曲片を被覆し、さらに新設鼻隠し材で既設鼻隠し材及び垂下部を被覆するとされる。したがって、それぞれの既設軒先部材に各新設軒先部材をフィットさせやすく、施工性を向上させることができる。また新設軒先水切り材と軒先役物との間、及び新設軒先水切り材と新設鼻隠し材との間から雨水が浸入することを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】勾配屋根の軒先構造を示す断面図。
図2】既設の勾配屋根を示す断面図。
図3図1のA部分拡大断面図。
図4】新設軒先水切り材を示す斜視図。
図5】軒先役物を示す斜視図。
図6】新設鼻隠し材を示す斜視図。
図7】既設軒先水切り材を新設軒先水切り材で被覆した状態を示す断面図。
図8】軒先役物を既設屋根瓦に設置した状態を示す断面図。
図9】新設屋根瓦を設置した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る勾配屋根の軒先構造の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本願の勾配屋根の軒先構造は、既設勾配屋根の軒先部分を改修する際に用いる構造であり、既設の軒先部材を新設の軒先部材で被覆するものである。なお、本発明における「新設軒先水切り材の軒先側の面」、「新設軒先水切り材の下端部」、「新設鼻隠し材の軒先側の面」は、本実施形態においてそれぞれ「軒先被覆部の軒先側の面21a」、「垂下部24」、「第1被覆部の軒先側の面51」が相当する。
【0021】
図1及び図3に示すように、勾配屋根の軒先構造1は、既設軒先水切り材X1を被覆する新設軒先水切り材2と、最も水下に位置する既設屋根瓦X2の上面X2aに固定され、且つ、最も水下に配置される新設屋根瓦3を係止する軒先役物4と、既設鼻隠し材X3を被覆する新設鼻隠し材5と、新設軒先水切り材2に固定される板状の雨水ガイド6と、新設鼻隠し材5に固定される軒樋7と、を備えている。
【0022】
図2に示すように改修前の勾配屋根Xは、母屋X4、母屋X4の上部にビスX5で固定される野地板X6、防水用の既設アスファルトルーフィングX7、既設屋根瓦X2、野地板X6の軒先側の面を被覆する既設軒先水切り材X1、母屋X4の軒先側の面に固定される既設鼻隠し材X3、とから構成されており、また、母屋X4の下面には軒天井材X8が固定されている。図示するように既設軒先水切り材X1は、軒先側へ突き出した形状をしており、既設屋根瓦X2から伝い落ちてくる雨水が母屋X4の方向へ流れることを防止している。また既設屋根瓦X2は、平板状の化粧スレート材であり、水下から水上へ向けて順に重ね葺きされ、且つ、最も水下に位置する既設屋根瓦X2の一端は野地板X6よりも水下側へ突き出している。一方、既設鼻隠し材X3は、母屋X4の軒先側の面に固定され、母屋X4よりも下方へ突出する固定部X3aと、固定部X3aの下端から水上側へ延び、軒天井材X8の天井面X8aを被覆する天井被覆部X3bと、天井被覆部X3bの水上側の一端から上方へ延びるとともに、軒先側へ折曲される折曲部X3cと、を有しており、折曲部X3cの上端は軒天井材X8に当接している。
【0023】
続いて、既設の軒先部材を被覆する新設軒先部材について説明する。図3及び図4に示す新設軒先水切り材2は、1枚の金板を折り曲げて形成したものであって、既設軒先水切り材X1を被覆するV字形状の水切り被覆部21と、水切り被覆部21の上端部を軒先側へ折り曲げて形成される折曲片22と、水切り被覆部21の母屋X4側の一端部を水上側へ延出させた延出部23と、延出部23の母屋X4側の一端から下方へ延びる垂下部24と、を有している。図示するように、新設軒先水切り材2で既設軒先水切り材X1を被覆すると、折曲片22は、最も水下に位置する既設屋根瓦X2の下面X2cに当接し、また延出部23及び垂下部24は、それぞれ野地板X6の下面X6a、及び既設鼻隠し材X3に当接する。
【0024】
図1及び図3に示す新設屋根瓦3は、板厚の薄い金属板を折曲して形成された金属屋根瓦であり、軒方向へ延びる長尺な部材である。新設屋根瓦3は、既設屋根瓦X2の上部を被覆する瓦被覆部31と、瓦被覆部31の水下側の一端を下方へ折下げて形成され、軒先役物4又は隣り合う水下側の新設屋根瓦3に引掛けられる水下側引掛け片32と、瓦被覆部31の水上側の一端を波型状に折り曲げて形成し、水上側の新設屋根瓦3を引掛ける水上側引掛け片33と、を有している。図3に示すように、水下側引掛け片32は、瓦被覆部31の水下側の一端から下方へ延びる垂下片32aと、垂下片32aの下端を水上側へ折曲して形成された瓦係止片32bと、からなり、瓦係止片32bの先端は、水下側へ向けて略U字型状に折り下げられている。一方水上側引掛け片33は、図1に示すように、水下側へ開く瓦係止溝33aを形成しており、この瓦係止溝33aに隣接する新設屋根瓦3の瓦係止片32bを引掛けることができる。また水上側引掛け片33の水上側の一端部は、既設屋根瓦X2に新設ビス8で固定される。なお、新設屋根瓦3の下部にはポリスチレンフォームで形成された断熱材9が充填され、さらに既設屋根瓦X2と断熱材9との間には新設アスファルトルーフィング10が敷設される。
【0025】
図3及び図5に示す軒先役物4は、板厚の薄い金属板を折曲して形成された軒方向へ延びる部材である。軒先役物4は、既設屋根瓦X2の上部に載置される載置部41と、載置部41の軒先側の一端を波型状に折曲して形成される係止部42と、当該係止部42の軒先側の一端を下方へ折曲するとともに水上側へ折り曲げて形成され、既設屋根瓦X2の軒先側の面X2b及び下面X2cに外嵌する嵌合部43と、を有している。
【0026】
図5に示すように、係止部42は、載置部41の水下側の一端を上方へ折上げるとともに、水下側へ折曲して形成した突出部42aと、突出部42aの水下側の一端を凹型状に折り曲げて形成された軒先係止溝42bと、から構成される。軒先係止溝42bは、軒先側へ開く形状に加工されており、先述した最も水下に配置される新設屋根瓦3の瓦係止片32bを挿入することができる。そして嵌合部43は、軒先係止溝42bの水下側の一端から下方へ延び、既設屋根瓦X2の軒先側の面X2bを被覆する被覆片43aと、被覆片43aの下端を水上側へ折曲して形成され、既設屋根瓦X2の下面X2c側に回り込み、新設軒先水切り材2の折曲片22に係止する係止片43bと、から構成される。
【0027】
図3及び図6に示す新設鼻隠し材5は、1枚の金板を折り曲げて形成したものであって、既設鼻隠し材X3の固定部X3aを全面被覆する第1被覆部51と、第1被覆部51の下端から水上側へ延びて天井被覆部X3bを被覆する第2被覆部52と、第2被覆部52の水上側の一端から上方へ延びて軒天井材X8に当接する第3被覆部53と、を有している。なお、軒先水切り材2、軒先役物4、新設鼻隠し材5の長さは特に限定されないが、長さを2000~3000mm程度とし、運搬し易い長さとすることが望ましい。
【0028】
図3等に示すように、新設軒先水切り材2は、水切り被覆部21の軒先側の面21aに板状の雨水ガイド6が新設ビス8で固定され、また、新設鼻隠し材5は、第1被覆部51の軒先側の面51aに軒樋7が設置される。雨水ガイド6は、金板を折り曲げて形成されたものであって、水切り被覆部21に固定される水切り固定片61と、水切り固定片61の軒先側の一端から水下へ延び、雨水を軒樋7へと導水するガイド片62とからなり、ガイド片62は、軒先側の一端が、新設軒先水切り材2よりも水下側へ突出している。図示するように、軒樋7は雨水を受ける樋部71をブラケット72で上方から支持する所謂上吊り式の樋であるため、軒先部分を見上げた際にブラケット72が目立たず改修後の軒先の美観性を向上させることができる。そして、雨水ガイド6は、ガイド片62によって新設屋根瓦3及び軒先役物4から受けた雨水を樋部71へ導くので、ブラケット72が干渉して新設軒先水切り材2と樋部71との間の隙間が広がっても、当該隙間から新設鼻隠し材5の方向へ雨水が垂れることを効果的に防止することができる。
【0029】
続いて、勾配屋根の軒先構造1の施工方法について説明する。まず、図7に示すように、既設軒先水切り材X1を新設軒先水切り材2で被覆するとともに、雨水ガイド6の水切り固定片61を新設軒先水切り材2の水切り被覆部21に重ね合わせ、水切り被覆部21及び水切り固定片61を新設ビス8で既設軒先水切り材X1に固定する。そして図8に示すように、新設アスファルトルーフィング10を既設屋根瓦X2の上部に配置し、軒先役物4の係止片43bで折曲片22を覆うとともに被覆片43aで既設屋根瓦X2の軒先側の面X2bを被覆して載置部41を既設屋根瓦X2の上部に載置する。このように、被覆片43a及び係止片43bで既設屋根瓦X2の軒先側の面X2b、及び折曲片22を被覆するので、軒先役物4と折曲片22との間から雨水が浸入することを効果的に防止することができる。
【0030】
続いて図9に示すように、断熱材9の上面を新設屋根瓦3の被覆部31の下面に両面テープなどで固着し、新設アスファルトルーフィング10の上に断熱材9及び新設屋根瓦3を水下から順に屋根勾配に沿って設置する。新設屋根瓦3を設置する際は、まず最も水下に配置される新設屋根瓦3の瓦係止片32bを軒先役物4の軒先係止溝42bに引掛け、断熱材9を新設アスファルトルーフィング10に載置し、新設屋根瓦3の水上側引掛け片33の一端部を既設屋根瓦X2に新設ビス8で固定する。次に、水上側に配置する新設屋根瓦3の瓦係止片32bを、先ほど設置した新設屋根瓦3の瓦係止溝33aに嵌め込んで係止し、水上側引掛け片33(図示せず)を既設屋根瓦X2に固定する。同様の手順で水下から水上へ向けて屋根面全体に新設屋根瓦3を設置する。
【0031】
次に図3に示すように、新設鼻隠し材5の第1被覆部51を新設軒先水切り材2の垂下部24及び既設鼻隠し材X3の固定部X3aに重ね合わせ、新設鼻隠し材5で既設鼻隠し材X3全体を被覆して新設ビス8(図示せず)で第1被覆部51を母屋X4に固定する。このように新設鼻隠し材5で新設軒先水切り材2の垂下部24を被覆することによって新設軒先水切り材2と新設鼻隠し材5との間から雨水が侵入することを効果的に防止できる。また新設の軒先部材を3つのパーツに分けているため、既設軒先部材にフィットさせやすく、施工性を向上させることができる。そして最後に、軒樋7のブラケット72を図外の固定金具で新設鼻隠し材5の第1被覆部51に固定し、樋部71を所定の位置に設置して勾配屋根の軒先構造1を完成させる。
【0032】
このように、本願の勾配屋根の軒先構造1は、新設軒先水切り材2で既設軒先水切り材X1を被覆した後、軒先役物4の水下側の一端部で既設屋根瓦X2の軒先側の面X2a、及び新設軒先水切り材2の上端部を被覆し、さらに新設鼻隠し材5で既設鼻隠し材X3及び新設軒先水切り材2の下端部を被覆するので、新設軒先水切り材2と軒先役物4との間、及び新設軒先水切り材2と新設鼻隠し材5との間から雨水が浸入することを効果的に防止することができる。そして、雨水ガイド6と上吊り式の軒樋7とを組み合わせることによって、改修後の軒先廻りの美観性を好ましいものとすることができる。
【0033】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る勾配屋根の軒先構造は、勾配屋根の軒先部分を改修する際に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 勾配屋根の軒先構造
2 新設軒先水切り材
21 軒先被覆部
21a 軒先被覆部の軒先側の面(新設軒先水切り材の軒先側の面)
22 折曲片
24 垂下部(新設軒先水切り材の下端部)
3 新設屋根瓦
4 軒先役物
5 新設鼻隠し材
51 第1被覆部の軒先側の面(新設鼻隠し材の軒先側の面)
6 雨水ガイド
7 軒樋
X1 既設軒先水切り材
X2 既設屋根瓦
X2a 既設屋根瓦の上面
X2b 既設屋根瓦の軒先側の面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9