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  • 特許-緑化基盤、及び、コンクリート打設方法 図1
  • 特許-緑化基盤、及び、コンクリート打設方法 図2
  • 特許-緑化基盤、及び、コンクリート打設方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】緑化基盤、及び、コンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/24 20060101AFI20240507BHJP
   E01C 13/08 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E01C11/24
E01C13/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020020596
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021123999
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】597170210
【氏名又は名称】株式会社エコシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】花岡 大伸
(72)【発明者】
【氏名】山下 敏秀
(72)【発明者】
【氏名】高田 実
(72)【発明者】
【氏名】徳成 広久
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-241803(JP,A)
【文献】特開平10-136773(JP,A)
【文献】特開平11-093169(JP,A)
【文献】特開平06-113666(JP,A)
【文献】特開2006-283380(JP,A)
【文献】特開2005-048403(JP,A)
【文献】特開2005-348669(JP,A)
【文献】特開平10-164981(JP,A)
【文献】特開平09-195290(JP,A)
【文献】特開2005-351026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0116521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/24
13/08
E02D 17/20
A01G 24/10
25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続空隙が設けられたコンクリート基盤と、
前記連続空隙に充填された、吸水率が10%以上の粒子と、
前記コンクリート基盤の上面に形成された導水層と前記コンクリート基盤の上面に形成された溝と、
前記溝に配置された散水管と
を有し、
前記導水層は、吸水率が10%以上の粒子で構成され、かつ、前記コンクリート基盤の上面において、前記溝を含み一体的に形成される
緑化基盤。
【請求項2】
前記導水層を構成する吸水率が10%以上の前記粒子、又は、前記コンクリート基盤の連続空隙に充填された吸水率が10%以上の前記粒子は、多孔質材料の破砕物であり、粒径3mm以下である
請求項1に記載の緑化基盤。
【請求項3】
前記コンクリート基盤は、車両の乗り入れが可能な程度の強度及び厚みを有する
請求項に記載の緑化基盤。
【請求項4】
前記コンクリート基盤は、強度及び保水性が異なる複数のコンクリート基盤を含む
請求項に記載の緑化基盤。
【請求項5】
コンクリートを流し込んで、連続空隙が設けられるポーラスコンクリートを形成する工程と、
前記ポーラスコンクリートの連続空隙に、吸水率が10%以上の粒子及び水を流し込む工程と、
吸水率が10%以上の粒子で、前記ポーラスコンクリートの上面に導水層を形成する工程と
を有し、
前記粒子及び水を流し込む工程は、前記コンクリートの流し込みから48時間以内に実施される
コンクリート打設方法。
【請求項6】
前記粒子及び水を流し込む工程は、前記コンクリートの凝結開始後から、前記コンクリートの固化完了までの間に実施される
請求項に記載のコンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化基盤、及び、コンクリート打設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、被舗装基盤に形成された配管溝内に給水導管を配設し、この給水導管の下部に回り込んで上記配管溝の縁辺面部に達する第1 の導水シートを上記配管溝に沿う部分に限定的に敷設するとともに、上記第1 の導水シートの上から上記被舗装基盤表面を全面的に覆う第2の導水シートを敷設し、この第2 の導水シートの上に透水性舗装層を施工したことを特徴とする湿潤性舗装システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-351026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、保水性及び強度に優れた緑化基盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る緑化基盤は、貫通孔が設けられたコンクリート基盤と、前記貫通孔に充填された、吸水率が10%以上の粒子とを有する。
【0006】
好適には、前記粒子は、多孔質材料の破砕物であり、粒径3mm以下である。
【0007】
好適には、前記コンクリート基盤の上面に形成された溝と、前記溝に配置された散水管と、前記コンクリート基盤の上面において、前記溝を含み一体的に形成された導水層とをさらに有し、前記導水層は、吸水率が10%以上の粒子で構成されている。
【0008】
好適には、前記コンクリート基盤は、車両の乗り入れが可能な程度の強度及び厚みを有する。
【0009】
好適には、前記コンクリート基盤は、強度及び保水性が異なる複数のコンクリート基盤を含む。
【0010】
また、本発明に係るコンクリート打設方法は、コンクリートを流し込んで、ポーラスコンクリートを形成する工程と、前記ポーラスコンクリートの貫通孔に、吸水率が10%以上の粒子及び水を流し込む工程とを有する。
【0011】
好適には、前記粒子及び水を流し込む工程は、前記コンクリートの流し込みから48時間以内に実施される。
【0012】
好適には、前記粒子及び水を流し込む工程は、前記コンクリートの凝結開始後から、前記コンクリートの固化完了までの間に実施される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保水性及び強度に優れた緑化基盤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における緑化基盤1を例示する断面図である。
図2】緑化基盤1におけるコンクリート打設方法(S10)を例示するフローチャートである。
図3】実施形態の緑化基盤1における変形例を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
まず、本実施形態における緑化基盤1の構成を説明する。
図1は、実施形態における緑化基盤1を例示する断面図である。
図1に例示するように、緑化基盤1は、被舗装基盤F上に施工されている。緑化基盤1は、芝生及び芝生床土側から被舗装基盤F側の順に、導水層10、保水層20、及び、排水調節シート40を有し、これらが積層している。また、緑化基盤1上には、芝生床土が積層し、芝生床土には、芝生が植栽されている。植栽された芝生の根は、成長するに従って、緑化基盤1の導水層10、保水層20、排水調節シート40、及び、被舗装基盤Fまで伸びることとなり、本図では、芝生の根が被舗装基盤Fまで伸びた状態を例示している。
【0016】
導水層10は、保水性のある粒子(保水性粒子5)を含む層であり、本例の導水層10は、主として保水性粒子5により構成されている。導水層10は、後述する保水層20の上面に例えば5mm以上5cm以下の厚さ、本例では1cm以上5cm以下の厚さで積層しており、芝生及び芝生床土側から圧力をかけて締め固めた状態となっている。この導水層10を構成する保水性粒子5は、多孔質材料の破砕物または粉砕物であり、吸水率が10%以上、本例では吸水率が10%以上20%以下の粒子である。例えば、保水性粒子5は、珪藻土、シャモット、瓦または煉瓦等を砕いた微細粒子、軽石、又は、溶岩を砕いた微細粒子である。即ち、保水性粒子5は、多孔質材料の微細粒子である。なお、本例の保水性粒子5は、瓦を砕いた微細粒子である。保水性粒子5の粒径は、例えば0.1mm以上10mm以下、本例では1mm以上3mm以下である。
また、保水性粒子5は、後述する保水層20の上面に形成された複数の溝22にも充填され、溝22に配置された潅水配管8を覆っている。即ち、導水層10の一部が潅水配管8を覆っている。
【0017】
保水層20は、導水層10と排水調節シート40との間に位置する層であり、複数の貫通孔(以下、連続空隙と称呼する)を有するコンクリートにより構成された基盤層である。本例の保水層20は、ポーラスコンクリートにより構成される。保水層20にある連続空隙には、保水性粒子5が充填されている。
また、保水層20の上面には、複数の溝22が形成される。溝22は、後述する潅水配管8を配置するための溝である。ここで、潅水配管8は、本発明に係る散水管の一例であり、主に植物を対象に水を供給するための配管である。溝22は、40cm以上60cm以下の間隔で等間隔に複数配列される。それぞれの溝22には、潅水配管8を配置した状態で、導水層10の一部が充填される。これにより、溝22に充填された導水層10の一部と、保水層20の上面に位置する導水層10とが一体となる。また、保水層20は、車両の乗り入れが可能な程度の強度及び厚みを有し、例えば7cm以上15cm以下の厚さである。なお、保水層20は、本発明に係るコンクリート基盤の一例である。
【0018】
排水調節シート40は、保水層20から排出される水量を調節するためのシートである。排水調節シート40は、保水層20を通過した水を一時的に滞留させることのできる程度の隙間を有してもよいし、略隙間のない状態であってもよい。例えば、豪雨の際に余分な水を排出させる観点から、排水調節シート40は、保水層20を通過した水を一時的に滞留させることのできる程度の隙間を有してもよいし、また、効率的に水を滞留させる観点から、排水調節シート40は、略隙間のない状態であってもよい。なお、本例の排水調節シート40は、一時的に滞留させることのできる程度の隙間を有するシートである。これにより排水調節シート40は、保水層20の連続空隙内に水を一時的に留まらせることができる。よって、保水層20及び導水層10を構成する保水性粒子5に、効率的に保水させることができる。なお、本例の排水調節シート40は、保水層20の下面に設けているが、これに限定するものではなく、省いてもよい。
このように、緑化基盤1は、保水性粒子5により導水層10を形成し、かつ、保水層20の空隙内に保水性粒子5を充填することにより、効率的に水分を保持することができる。これにより、芝生は、導水層10だけでなく、保水層20内部の保水性粒子5に保持された水分を求めて、根をより成長させることができる。
【0019】
次に、実施形態の緑化基盤1におけるコンクリート打設方法を説明する。
図2は、緑化基盤1におけるコンクリート打設方法(S10)を例示するフローチャートである。
図2に例示するように、ステップ100(S100)において、作業者は、被舗装基盤Fの上に排水調節シート40を配置する。なお、排水調節シート40が必要ない場合、本工程を省くことができる。
ステップ102(S102)において、作業者は、ポーラスコンクリートを打ち込むための型枠を配置する。また、作業者は、溝22を形成する位置において、溝22を形成するための型枠を配置する。なお、型枠に変えて埋木でもよい。
【0020】
ステップ104(S104)において、作業者は、ポーラスコンクリートを運搬する運搬装置、打込み用設備、及び、型枠で囲った範囲内を清掃する。このとき、型枠内に水がある場合は取り除く。そして、作業者は、清掃後に、固まっていない状態のポーラスコンクリートを型枠内に流し込む。
【0021】
ステップ106(S106)において、作業者は、型枠内に流し込んだポーラスコンクリートが固まり始めたか否か、いわゆるポーラスコンクリートの凝結の有無を確認する。作業者は、ポーラスコンクリートが凝結し始めたと判断した場合に(Yes)、S108の工程に移行し、ポーラスコンクリートが凝結していないと判断した場合に(No)、S106の作業工程に戻り、ポーラスコンクリートが凝結し始めるまで待機する。なお、ポーラスコンクリートの凝結の有無の確認が困難である場合は、ポーラスコンクリートを型枠内に流し込んでから、約8時間~10時間経過すれば、S108の作業工程に移行してもよい。
【0022】
ステップ108(S108)において、作業者は、型枠内において、凝結し始めて硬化していない状態のポーラスコンクリートの上に保水性粒子5を投入し、水を流し込む。水を流し込む作業において、作業者は、例えば、散水用ホースや高圧洗浄機を使用して水を散水する。作業者が散水することにより、ポーラスコンクリートの連続空隙内に流れ込む水と共に保水性粒子5が流れ込む。ポーラスコンクリートの連続空隙内に流れ込んだ保水性粒子5は、保水した状態で連続空隙内に留まるため、ポーラスコンクリートの内部から水を供給することができる。結果として、ポーラスコンクリートの水和反応時において、保水性粒子5に保水された水をセメントに供給することができる。このように、ポーラスコンクリートの硬化の初期段階において、ポーラスコンクリートの内部から水を供給すると共に、水によるポーラスコンクリートの養生を行うことにより、ポーラスコンクリートに対して効率的に水を供給することができる。結果として、ポーラスコンクリートの強度を上げることができ、水分不足によるひび割れを防止することができる。
なお、ポーラスコンクリートは、1日~2日経過すると概ね硬化してしまうため、作業者は、ポーラスコンクリートの流し込み作業(S104)から48時間以内にS108の作業工程を実施することが好ましい。本例では、ポーラスコンクリートの凝結開始後から硬化して固化完了までの間、換言すると、ポーラスコンクリートの流し込み作業から8時間~24時間以内に実施する。
【0023】
ステップ110(S110)において、作業者は、ポーラスコンクリートの固化完了(いわゆる、保水層20の形成)したことを確認した後に、型枠を取り外す。
ステップ112(S112)において、作業者は、固化完了した保水層20の上面に形成された溝22に潅水配管8を配置する。そして、作業者は、保水層20の上面に保水性粒子5を投入する。このとき、作業者は、潅水配管8を配置した溝22に保水性粒子5を充填するように投入する。作業者は、保水性粒子5を投入後、転圧機を使用して、保水性粒子5を転圧する。これにより、溝22に充填された保水性粒子5と、保水層20の上面に位置する保水性粒子5とが一体となった導水層10を形成することができる。
【0024】
ステップ114(S114)において、作業者は、導水層10の上面のうち、植栽エリアにおいて例えば床土を投入した苗床に芝生等の植物を植栽する。
このように、作業者は、緑化基盤1を得ることができる。なお、本例では、S110にて型枠を取り除いたあとに、S114にて植物を植栽する場合を具体例としたが、これに限定するものではなく、S114の植物を植栽する作業のあとにS110の型枠を取り外す作業を行ってもよい。具体的には、型枠を保水層20天端より高くしておき、その型枠中に導水層10を形成し、散水・充填して、芝生を植え、芝生が保水層20に定着したところで型枠を取り外してもよい。
【0025】
以上説明したように、本実施形態における緑化基盤1によれば、ポーラスコンクリートの連続空隙に保水性粒子5を充填することにより、ポーラスコンクリートの硬化作用時において、水を供給することができるため、強度のあるポーラスコンクリート層を得ることができる。
また、緑化基盤1によれば、潅水配管8から供給された水を保水性粒子5に保水させることにより、導水層10全体に水を浸透させることができる。
また、緑化基盤1は、保水層10の上面に植栽された植物に供給する水や養分を保持できるため、水やりや養分供給の頻度を減らすことができる。また、潅水配管8から導水層10及び保水層20への給水を、タイマーによる自動給水にて行うことにより、作業者は、水やり作業の頻度を減らすことができる。
また、緑化基盤1によれば、溝22に充填された導水層10の一部が潅水配管8に接触し覆っているため、潅水配管8から供給された水を効率的に導水層10全体に行き渡らせることができる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。例えば、透水性舗装に限らず、たとえば、ビル等の屋内、屋上、高架道路、又は、人工地盤上に施工してもよい。
【0026】
次に、上記実施例における変形例を説明する。なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例]
上記実施例では、コンクリートの基盤層として、保水層20のみの場合を具体例としたが、これに限定するものではなく、複数のコンクリートの基盤層を備えてもよい。
図3は、実施形態の緑化基盤1における変形例を例示する断面図である。
図3に例示するように、緑化基盤1は、芝生及び芝生床土側から被舗装基盤F側の順に、導水層10、保水層20、及び、排水調節シート40に加えて、強化層30をさらに有し、これらが積層している。
強化層30は、保水層20と排水調節シート40との間に位置する層であり、複数の連続空隙を有するコンクリートにより構成された基盤層である。本例の強化層30は、保水層20と同様に、ポーラスコンクリートにより構成され、強化層30にある複数の連続空隙内には、水性粒子5が充填されている。
また、強化層30は、保水層20と異なる強度及び保水性となっている。例えば、強度を高める観点から、強化層30は、保水層20に用いた骨材より高強度の骨材を含むことにより、保水層20より高い強度を有してもよい。また、強化層30は、ポーラスコンクリートの連続空隙を少なくすることにより、保水層20より高い強度を有してもよい。
また、例えば、保水性を高める観点から、強化層30は、保水層20の連続空隙の数よりを多くすることにより、連続空隙内に充填する保水性粒子5の量を多くすることができる。これにより、保水層20より高い保水性を有してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 緑化基盤
5 保水性粒子
8 潅水配管
10 導水層
20 保水層
40 排水調節シート
30 強化層
図1
図2
図3