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特許7482388トイレ空間用脱臭装置および衛生洗浄装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】トイレ空間用脱臭装置および衛生洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/00 20060101AFI20240507BHJP
   E03D 9/08 20060101ALI20240507BHJP
   E03D 9/05 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E03D9/00 B
E03D9/08 B
E03D9/05
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020023272
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127623
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】磯野 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】荒木 祐介
(72)【発明者】
【氏名】音羽 勇哉
(72)【発明者】
【氏名】中道 俊一
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-321373(JP,A)
【文献】特開2013-076244(JP,A)
【文献】特開2017-115363(JP,A)
【文献】特開2017-223030(JP,A)
【文献】特開2018-031210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口を形成する吸気部と、
排気口を形成する排気部と、
前記吸気口から空気を吸気するファン装置と、
前記吸気口と前記排気口とを連通し空気を流通させる脱臭風路中に設けられ、前記脱臭風路中で水を溜めることが可能な水溜め部と、
前記水溜め部へ給水する給水部と、
前記水溜め部から排水する排水口を形成する排水部と、
を備え、
前記水溜め部の底面は、少なくとも前記排水口に向かう第1の方向に下り傾斜した第1底面と、前記第1底面に向かう方向に下り傾斜した第2底面とから構成され、
前記水溜め部は、前記ファン装置が駆動された状態において、前記給水部から給水された状態では、前記第1底面の上方および前記第2底面の上方に水が溜まる構成であって、
前記第1底面と前記第2底面との接続部において、前記接続部の半分以上が前記第1の方向に下り傾斜しているトイレ空間用脱臭装置。
【請求項2】
前記第1底面は、少なくとも前記第2底面に向かう方向に上り傾斜を持たない請求項1記載のトイレ空間用脱臭装置。
【請求項3】
前記第1底面の前記第1の方向への下り傾斜の傾斜角度は、前記第2底面の前記第1底面に向かう方向への下り傾斜の傾斜角度に対して同等以下である請求項1または2に記載のトイレ空間用脱臭装置。
【請求項4】
前記ファン装置の駆動を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記ファン装置を駆動させ、この駆動により形成される負圧によって前記水溜め部に流れ込む空気を、水に押し当てることで、前記給水部から給水される水を前記水溜め部に溜め、
前記ファン装置の停止によって、前記水溜め部に溜めた水を前記吸気口から排水させ、 前記第1底面と前記第2底面との前記接続部は、少なくとも前記吸気口の上端の直下まで延びている請求項1~3のいずれか1つに記載のトイレ空間用脱臭装置。
【請求項5】
ボウル部を有する便器に設けられる衛生洗浄装置であって、
請求項1~4のいずれか1つに記載のトイレ空間用脱臭装置を備え、
前記排水口は前記ボウル部に向けて開口され、
前記第1底面と前記第2底面との前記接続部の前記排水口側の端部は、前記排水口の長手方向の中心位置よりも、前記ボウル部の中央部に近い位置にある衛生洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ空間用脱臭装置および衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ空間において脱臭を行う脱臭装置として、臭気成分を含む空気を水に接触させることによって、臭気成分を水に溶解させるものが知られている。例えば、特許文献1に記載の脱臭機能部は、温水洗浄便座装置に設けられ、ファン装置によって気体流路に吸入された気体に水を噴出する水噴出装置を備える。気体に含まれる臭気および浮遊物を含む水は、貯水部に落下した後に貯水部から下り傾斜の水導出部に導出され、または水導出部に落下して、水導出部から便鉢部内へと排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-223030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、トイレ空間内における設置物、例えば便座や便器には公差や設置状態等による設置角度のばらつきがあり、また便座に人が腰掛けた際に荷重や衝撃により便座や衛生洗浄装置に傾きが生じることがあり、これらの設置物の傾きにより、設置物に取り付けられた脱臭装置も傾く可能性がある。臭気成分を水に溶解させる脱臭装置においては、脱臭装置の傾きは水の貯水性や排水性に影響を及ぼす懸念がある。例えば、特許文献1の場合、便鉢部内に向けて開口する第一開口部へ向かって上り傾斜が付く角度ばらつきにより、水導出部から便鉢部内への排水性能が低下し、水導出部に水が残ってバイオフィルムが発生する原因となる場合が考えられる。また、第一開口部へ向かって下り傾斜が付く角度ばらつきにより、貯水部から水導出部への水導出性能のバランスがくずれ、貯水部に水が十分に貯水されないことにより水が噴出されず機能損失に至る可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、臭気成分を水溜め部に溜めた水に溶解させる構成において貯水性と排水性の相反する2つの性能の安定性を確保できるトイレ空間用脱臭装置および衛生洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明のトイレ空間用脱臭装置は、吸気口を形成する吸気部と、排気口を形成する排気部と、前記吸気口から空気を吸気するファン装置と、前記吸気口と前記排気口とを連通し空気を流通させる脱臭風路中に設けられ、前記脱臭風路中で水を溜めることが可能な水溜め部と、前記水溜め部へ給水する給水部と、前記水溜め部から排水する排水口を形成する排水部と、を備え、前記水溜め部は、前記排水口に向かう第1の方向に下り傾斜した第1底面と、前記第1底面に向かう方向に下り傾斜した第2底面とを有し、前記第1底面と前記第2底面との接続部の大部分が前記第1の方向に下り傾斜している。
第1の発明によれば、下り傾斜する方向が互いに異なる第1底面と第2底面を水溜め部の底面に形成することで、設置状態等における水溜め部の底面の傾きのばらつきに対して排水性および貯水性が影響を受けにくくなる。
第2の発明は、第1の発明において、前記第1底面は、少なくとも前記第2底面に向かう方向に上り傾斜を持たない。
第2の発明によれば、設置ばらつき等により、第2底面の第1底面に向かう方向の下り傾斜の角度が大きくなってしまった場合においても、排水速度を緩和して、水の途切れを抑制しながら排水することができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第1底面の前記第1の方向への下り傾斜の傾斜角度は、前記第2底面の前記第1底面に向かう方向への下り傾斜の傾斜角度に対して同等以下である。
第3の発明によれば、貯水性の安定性を確保しながら、所望の排水性を発揮しやすくなる。
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つにおいて、前記ファン装置の駆動を制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記ファン装置を駆動させ、この駆動により形成される負圧によって前記水溜め部に流れ込む空気を、水に押し当てることで、前記給水部から給水される水を前記水溜め部に溜め、前記ファン装置の停止によって、前記水溜め部に溜めた水を前記吸気口から排水させ、前記第1底面と前記第2底面との前記接続部は、少なくとも前記吸気口の上端の直下まで延びている。
第4の発明によれば、吸気口において第2底面側の領域が第1底面側の領域よりも高さ方向において狭まる。これにより、吸気口を通じて水溜め部に流入する空気の風量や風速に偏りが生じる。すなわち、吸気口のより広い第1底面側の領域に、より多くの空気が流入しやすくなる。一方で、第2底面は第1底面に向かう方向に下り傾斜しているため、水は、第2底面においてより第1底面に近い側に溜まりやすい。その水がより溜まりやすい領域に、より多くの空気が流入し、その空気で前述したように水を押し当てるため、貯水の安定性が高まる。
第5の発明の衛生洗浄装置は、ボウル部を有する便器に設けられる衛生洗浄装置であって、第1~第4のいずれか1つに記載のトイレ空間用脱臭装置を備え、前記排水口は前記ボウル部に向けて開口され、前記第1底面と前記第2底面との前記接続部の前記排水口側の端部は、前記排水口の長手方向の中心位置よりも、前記ボウル部の中央部に近い位置にある。
第5の発明によれば、第1底面と第2底面との接続部の排水口側の端部を排水口の長手方向の中心位置よりも外側に位置させる場合よりも、傾きの排水性に対する影響を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のトイレ空間用脱臭装置および衛生洗浄装置によれば、臭気成分を水溜め部に溜めた水に溶解させる構成において貯水性と排水性の相反する2つの性能の安定性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のトイレ装置の斜視図である。
図2】一実施形態の水脱臭ユニットの断面斜視図である。
図3】一実施形態の水脱臭ユニットの断面図である。
図4】(a)は一実施形態の水脱臭ユニットにおける水溜め部の底面の模式斜視図であり、(b)は水溜め動作時の水溜め部を吸気口側から見た模式正面図である。
図5】(a)は他の実施形態の水脱臭ユニットにおける水溜め部の底面の模式斜視図であり、(b)はさらに他の実施形態の水脱臭ユニットにおける水溜め部の底面の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態の1つについて説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態のトイレ装置1の斜視図である。
【0011】
トイレ装置1はトイレ空間に設置される。トイレ装置1は、腰掛大便器(以下、単に便器と称する)100と、便器100の上に設置された衛生洗浄装置200とを有する。便器100は、上方に向けて開口され水が溜められたボウル部101を有する。ボウル部101は操作部(図示せず)を使用者が操作することで洗浄水により洗浄され、排水配管(図示せず)へと洗浄水を排水する。
【0012】
衛生洗浄装置200は、便器100に便座(図示せず)を介して腰掛けた使用者のおしりなどの局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部などを有する。なお、図1においては、局部洗浄機能部に含まれるノズル等を図示せず省略している。また、衛生洗浄装置200は、トイレ空間用脱臭装置(以下、単に脱臭装置と称する)10を有する。脱臭装置10は、水脱臭ユニット20と、制御部90とを有する。
【0013】
図2は、水脱臭ユニット20の断面斜視図である。図3(a)及び(b)は、水脱臭ユニット20の断面図である。
【0014】
水脱臭ユニット20は、水脱臭部40と、ファン装置60と、酸化触媒70とを有する。水脱臭部40、ファン装置60、および酸化触媒70は、ケース21とカバー22とによって形成される空間内に設けられている。ファン装置60は、例えばシロッコファンである。または、ファン装置60は、軸流ファンやクロスフローファンであってもよい。
【0015】
ケース21とカバー22とによって形成される空間内に、ファン装置60の駆動により空気が流通する脱臭風路80が形成されている。脱臭風路80中には水溜め部50が設けられている。また、水脱臭ユニット20は、吸気口23を形成する吸気部123と、排気口24を形成する排気部124と、排水口25を形成する排水部125とを有する。この例では、吸気口23が排水口25を兼ねている。吸気口23および排気口24は、脱臭風路80と連通している。
【0016】
ファン装置60の駆動により、吸気口23から脱臭風路80内に空気が吸気され、吸気された空気は水溜め部50を流通した後、ファン装置60に吸い込まれ、さらに酸化触媒70を流通して、排気口24から水脱臭ユニット20の外に排気される。
【0017】
水溜め部50は、吸気口23とファン装置60との間に位置する。ファン装置60は、水溜め部50よりも、脱臭風路80における下流側に配置されている。
【0018】
水溜め部50の上方はカバー22によって閉塞され、左右の側方はケース21の側壁部によって閉塞されている。水溜め部50の脱臭風路80における最下流部に後壁部41が設けられている。
【0019】
ケース21に水溜め部50の底面が形成されている。水溜め部50の底面は、第1底面51と第2底面52とを有する。
【0020】
第1底面51は、後壁部41(排気口24側)から排水口25(吸気口23を兼ねる)に向かう第1の方向Aに下り傾斜している。第2底面52は、第1底面51に向かう方向に下り傾斜している。
【0021】
第1底面51と第2底面52との接続部53は、例えば溝が直線状に形成されている。または、第1底面51と第2底面52との接続部53は、面を含む広がりを持っていてもよい。接続部53の大部分(半分より多い部分)が第1の方向Aに下り傾斜している。すなわち、接続部53は、第1の方向Aに下り傾斜している部分を、第1の方向Aに下り傾斜していない部分(第1の方向Aに上り傾斜している部分や、水平部分)よりも多く含む。
【0022】
接続部53は、少なくとも吸気口23(排水口25)の上端の直下まで延びている。すなわち、接続部53は、少なくとも吸気口23の下側の壁面を形成する位置まで延びている。図2に示す例では、接続部53は、水溜め部50から吸気口23(排水口25)を超えて、吸気口23(排水口25)の外側まで延びている。
【0023】
水溜め部50の後壁部41に、後壁部41から脱臭風路80中に突出する突出壁42が設けられている。突出壁42は、その上端が下端よりも脱臭風路80における上流側に位置するように鉛直方向に対して傾斜している。突出壁42の上端の上方には、水溜め部50からファン装置60側への空気の流通を許容する空間が形成されている。
【0024】
水溜め部50には、給水部27から水が給水される。給水部27は、例えば給水口27a(図3に示す)を有する給水ノズルである。例えば、給水源(水道)から図示しない局部洗浄機能部に含まれるノズルへの給水路に給水され、さらにその給水路から分岐して給水部27へ給水される。前記給水路からの分岐後、電解槽に給水し、電解槽にて除菌水を生成して、その除菌水を給水部27に給水してもよい。
【0025】
水溜め部50に溜められた水は、排水口25から排水される。水脱臭ユニット20が図1に示す便器100の上に設置された状態において、排水口25はボウル部101に向けて開口し、水溜め部50に溜められた水は排水口25からボウル部101へ排水される。
【0026】
本実施形態では、例えば、排水口25の近傍に給水部27が設けられている。給水部27は水溜め部50の外部に位置し、排水口25は、水溜め部50と給水部27との間に位置する。給水部27の給水口27aは排水口25に向けられている。なお、給水部27が設けられる位置は、この例に限るものではなく、水溜め部50に水を給水可能な位置であればよい。
【0027】
次に、本実施形態の脱臭装置10の動作について説明する。
【0028】
図1に示す便器100への使用者の着座が検知されると、制御部90の制御により、ファン装置60が駆動され、給水部27から水溜め部50へ水が給水される。給水部27から吸気口23(排水口25)に向けて吐水され、吸気口23(排水口25)を通じて水溜め部50に水が給水される。便器100への使用者の着座の検知は、便座や便器100、あるいはトイレ空間に設けられたセンサにより検知される。
【0029】
例えば、ファン装置60の駆動と、給水部27からの給水は同時に開始される。または、ファン装置60の駆動タイミングと、給水タイミングにはタイムラグがあってもよい。制御部90は、ファン装置60の駆動開始および停止、ならびに給水部27からの水の給水開始および停止を制御する。駆動されたファン装置60は、吸気口23から脱臭風路80内に空気を吸気する。
【0030】
図3(a)は、本実施形態における水溜め動作を説明する断面図である。
【0031】
図3(a)において、脱臭風路80内の空気の流れを黒太線の矢印で表す。ファン装置60の駆動により吸気口23から吸気された空気は、水溜め部50を流れてファン装置60に吸い込まれ、排気口24から排気される。
【0032】
大気圧下の空気が吸気口23から脱臭風路80内に吸い込まれる。ファン装置60は、脱臭風路80に負圧を発生させる負圧形成手段として機能する。水溜め部50に給水された水は、後述するように排水口25に向かう第1の方向に流れ、排水口25から排水可能である。
【0033】
しかしながら、ファン装置60が駆動された状態においては、水溜め部50に発生した負圧によって、水の排水方向(第1の方向)に逆らう方向に流れる空気を水Wに押し当て、給水部27から給水された水Wを水溜め部50の底面上に溜めることができる。空気に押された水Wは、後壁部41および突出壁42に堰き止められ、脱臭風路80における下流側への移動が阻止される。給水部27からの水の給水は所定時間後に停止される。
【0034】
吸気口23から吸気され臭気成分を含んだ空気の一部は、水溜め部50に溜められた水Wの水面に沿うように流れ、水溜め部50に溜められた水Wの水面が脱臭風路80の一部を形成する。そして、臭気成分の内、アンモニアやトリメチルアミンなどの水溶性の高い臭気成分が水溜め部50に溜められた水Wに溶解し、脱臭される。
【0035】
突出壁42は、空気との衝突により水面が波立つことで生じた水面付近の水滴が気流に乗ってファン装置60側に移動してしまうことを抑制する。
【0036】
脱臭風路80中を水溜め部50よりもさらに下流側に流れた空気中における水Wに溶解しなかった硫化水素やメチルメルカプタンなどの臭気成分は、排気口24に隣接して配置された酸化触媒70により脱臭される。酸化触媒70は、硫化水素、メチルメルカプタンを酸化し分解する。
【0037】
また、吸気口23から空気と一緒に吸い込まれた埃や紙片等の粉塵を、水溜め部50に溜められた水Wで捕捉することができ、酸化触媒70に粉塵が流れることによる酸化触媒70の性能低下を抑制することができる。さらに、ファン装置60も、水溜め部50よりも脱臭風路80の下流側に配置されているため、粉塵がファン装置60へ到達してしまうことも抑制できる。
【0038】
また、通常、脱臭装置の吸気口には、粉塵を補足するためのメッシュフィルタが設けられるが、本実施形態においては、水溜め部50により粉塵を補足することができ、メッシュフィルタを設けなくともよい。そのため、本実施形態においては、メッシュフィルタをメンテナンスする手間をなくすことができる。
【0039】
図3(b)は、本実施形態における排水動作を説明する断面図である。
【0040】
使用者が便器100から離座し、この離座に基づいてファン装置60の駆動が停止される。ファン装置60の停止により、水溜め部50は大気圧に戻り、水Wを溜まった状態に保持していた力が解除される。これにより、水溜め部50に溜まっていた水Wは、排水口25から、図1に示すボウル部101に排水される。また、水溜め部50に溜められた水Wに捕捉された粉塵なども水Wとともに排水される。便器100からの使用者の離座は、便座や便器100、あるいはトイレ空間内に設けられたセンサにより検知される。
【0041】
図4(a)は、水溜め部50の第1底面51および第2底面52の模式斜視図である。図4(a)において手前側に排水口25が位置し、排水時の水の流れを模式的に矢印で表している。
【0042】
水は第1底面51上および第2底面52上に溜まる。第1底面51は排水口25に向かう方向に下り傾斜しているため、第1底面51上の水はその下り傾斜に沿って排水口25に向かって流れる。第2底面52は第1底面51に向かう方向に下り傾斜しているため、第2底面52上の水は、主に第1底面51と第2底面52との接続部53に向かって流れる。
【0043】
また、第1底面51において排水口25に向かう方向の途中に接続部53がある。そのため、第1底面51上の水と第2底面52上の水は主に接続部53に集約される。他の領域で流れに取り残されそうになる水を接続部53に集約することができる。接続部53の大部分は排水口25に向かう方向に下り傾斜している。
【0044】
その接続部53に集約された水は、凝集した状態で流れが途切れることを抑制されつつ、接続部53の排水口25側の端部53aに向かって流れ、その端部53aの近傍領域(端部53a自体も含む領域)からボウル部101に排水される。このように水を集約(凝集)させた流れを形成することで、水が薄くなって水の流れが途切れることを抑制でき、第1底面51上および第2底面52上に島状に水が残ることを抑制できる。これは、第1底面51および第2底面52におけるバイオフィルムの形成を抑制する。
【0045】
なお、第1底面51から接続部53に集約されずに排水口25に向かう水の流れも形成し得る。また、第2底面52から接続部53に集約されずに排水口25に向かう水の流れも形成し得る。水溜め部50に溜められた水のうち、接続部53に集約されて端部53aの近傍領域から排水される量が最も多くなる。
【0046】
水溜め部50における排水性と貯水性は、第1底面51の排水口25に向かう下り傾斜の角度に対してトレードオフの関係にある。なお、本明細書において傾斜角度は、水平線(または水平面)に対する傾斜角度を表す。第1底面51の下り傾斜の角度が大きいほど、排水性は高くなるが、逆に貯水性は低下する。一方で、第2底面52の第1底面51に向かう方向の下り傾斜の角度は、排水性には大きく影響するが、貯水性にはほとんど影響しない。第2底面52の第1底面51に向かう方向の下り傾斜の角度が大きいほど、排水性は高くなるが、貯水性の低下はほとんど見られない。
【0047】
本実施形態によれば、下り傾斜する方向が互いに異なる第1底面51と第2底面52を水溜め部50の底面に形成することで、便器100への設置状態等における水溜め部50の底面の傾きのばらつきに対して排水性および貯水性が影響を受けにくくなる。
【0048】
例えば、第1底面51の排水口25に向かう下り傾斜の角度を、設置ばらつき等を見込んで予め小さめに設計することで、便器100への設置状態において第1底面52の下り傾斜角度が想定よりも大きくなってしまっても、所望の貯水性の確保が可能となる。
【0049】
第1底面51の下り傾斜角度を小さめにすることで排水性が低下した分は、第2底面52の第1底面51に向かう方向の下り傾斜の角度を大きめにすることで、第1底面51の排水性の低下を補い、水溜め部50の底面全体において所望の排水性を確保することが可能となる。設置状態において、第1底面52の下り傾斜角度が想定よりも小さくなってしまった場合においても、第2底面52の第1底面51に向かう方向の下り傾斜の角度を大きめにすることで、第1底面51の排水性の低下を補い、水溜め部50の底面全体において所望の排水性を確保することが可能となる。
【0050】
このように本実施形態によれば、臭気成分を水溜め部50に溜めた水に溶解させる構成において貯水性と排水性の相反する2つの性能の安定性を確保できる。
【0051】
排水機構として可動部材、例えば電磁弁を用いた場合、電磁弁の固着により開弁不良が生じ排水できなくなる懸念があるが、本実施形態では、そのような排水機構を設けずに、ファン装置60による負圧の形成を停止するだけで排水できる。簡単な構成で水溜め部50から水を排水して、水溜め部50に残る水を少なくすることができ、残った水に起因するバイオフィルムの形成を抑制することができる。
【0052】
前述したように、ファン装置60の駆動により形成される負圧によって水溜め部50に水を溜める構成においては、第1底面51の下り傾斜の角度が大きいほど、排水性は高くなるが、逆に貯水性は低下する。一方で、第2底面52の第1底面51に向かう方向の下り傾斜の角度は、排水性には大きく影響するが、貯水性にはほとんど影響しない。そのため、第1底面51の排水口25に向かう下り傾斜の傾斜角度は、第2底面52の第1底面51に向かう方向への下り傾斜の傾斜角度に対して同等以下とすることが望ましい。このようにすることで、貯水性の安定性を確保しながら、所望の排水性を発揮しやすくなる。
【0053】
第1底面51は排水口25に向かう方向に下り傾斜を持っていればよく、第2底面52に向かう方向に上り傾斜を持っていてもよい。ただし、設置ばらつき等により、第2底面52の第1底面51に向かう方向の下り傾斜の角度が大きくなってしまった場合、第1底面51が第2底面52に向かう方向に上り傾斜をもっていると、第2底面52から第1底面51に流れ込む水の速度が助長され、排水速度が速くなりすぎることによる水の途切れの懸念がある。したがって、第1底面51は、少なくとも第2底面52に向かう方向に上り傾斜をもたないことが望ましい。このようにすることで、設置ばらつき等により、第2底面52の第1底面51に向かう方向の下り傾斜の角度が大きくなってしまった場合においても、排水速度を緩和して、水の途切れを抑制しながら排水することができる。
【0054】
図4(b)は、ファン装置60の駆動による水溜め動作時の水溜め部50を吸気口23側から見た模式正面図である。
【0055】
第1底面51と第2底面52との接続部53は、少なくとも吸気口23の上端の直下まで延びている。すなわち、第2底面52が少なくとも吸気口23の上端の直下まで延びている。このような構造によって、図4(b)に示すように、吸気口23において第2底面52側の領域が、第1底面51側の領域よりも高さ方向(吸気口23の短手方向)において狭まる。これにより、吸気口23を通じて水溜め部50に流入する空気の風量や風速に偏りが生じる。すなわち、吸気口23のより広い第1底面51側の領域に、より多くの空気が流入しやすくなる。一方で、第2底面52は第1底面51に向かう方向に下り傾斜しているため、水は、第2底面52においてより第1底面51に近い側に溜まりやすい。その水がより溜まりやすい領域に、より多くの空気が流入し、その空気で前述したように水を押し当てるため、貯水の安定性が高まる。
【0056】
また、吸気口23は排水口25を兼ね、第1底面51と第2底面52との接続部53が排水口25の直下まで延びていることで、接続部53に集約された水が排水口25まで誘導される。これにより、水の途切れを抑制しながら水を排水口25まで誘導することができ、排水性を高めることができる。
【0057】
衛生洗浄装置200を使用する際に発生する傾きは、着座位置である便器100の左右方向Bにおける中央部101aから発生しやすい。これによって水溜め部50の底面に生じる傾きは、傾きの発生源である便器100の中央部101aよりも外側の方で大きくなる。
【0058】
そこで、図1に示すように、最も多くの水の排水経路となる接続部53の排水口25側の端部53aを、排水口25の長手方向(左右方向)の中心位置よりも、ボウル部101の中央部101aに近い位置にすることで、排水口25の長手方向の中心位置よりも外側に位置させる場合よりも、傾きの排水性に対する影響を小さくすることができる。
【0059】
また、接続部53の排水口25側の端部53aをボウル部101の中央部101aに近い位置に寄せることで、排水口25から排水された水がボウル部101の外側のリム上面に流れにくくなり、機外漏水を確実に防止できる。
【0060】
第2底面52は第1底面51に向かう方向に下り傾斜する部分を持てば良く、図5(a)に示すように、排水口25に向かう第1の方向Aに曲面状に上り傾斜する部分を持っていても良い。このような構成においても、第2底面52上の水を第1底面51との接続部53に集約させることができる。
【0061】
また、図5(b)に示すように、第2底面52は第1底面51を挟むように2つ設けてもよい。
【0062】
以上説明した実施形態では、脱臭装置10を衛生洗浄装置200に設けた例を説明したが、本発明による脱臭装置は、大便器および小便器の少なくともいずれかを含むトイレ空間に設けられればよく、脱臭装置は例えば小便器に設けてもよい。この場合、排水口は小便器のボウル部面に向けて開口され、小便器のボウル部面へ排水口から排水することができる。
【0063】
また、以上説明した実施形態では、負圧形成手段としてファン装置60を採用した例を説明したが、本発明は、ファン装置60の空気吸引によって水溜め部50に負圧を形成することに限らず、負圧形成手段は水溜め部50にて負圧を形成することができればよい。例えば負圧形成手段としてポンプを採用し、ポンプの空気吸引によって水溜め部50に負圧を形成してもよい。
【0064】
また、吸気口23が排水口25も兼ねる構成に限らず、吸気口23と排水口25をそれぞれ別の構成要素として設けてもよい。吸気口23が排水口25も兼ねる構成の場合には、別に設ける場合に比べて、簡易な構成により、前述した本実施形態の機能を実現可能となる。
【0065】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…トイレ装置、10…脱臭装置、20…水脱臭ユニット、23…吸気口、24…排気口、25…排水口、27…給水部、40…水脱臭部、50…水溜め部、51…第1底面、52…第2底面、53…接続部、60…ファン装置、80…脱臭風路、90…制御部、100…便器、101…ボウル部、200…衛生洗浄装置
図1
図2
図3
図4
図5