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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】音声処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240507BHJP
   G11B 31/00 20060101ALI20240507BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20240507BHJP
   H04S 7/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G11B31/00 501
G11B31/00 541Z
H04R3/12 Z
H04S7/00 380
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020183478
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073476
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】521423924
【氏名又は名称】プレミアムオーディオカンパニーテクノロジーセンター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕二
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-035452(JP,A)
【文献】国際公開第2019/125920(WO,A1)
【文献】特開2010-004510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
G11B 31/00
H04R 3/12
H04S 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンク機器から入力される音声信号をスピーカーに出力するeARC機能を有する音声処理装置であって、
制御部を備え、
前記制御部は、
前記シンク機器に接続されている電源ラインを所定時間、ローレベルにした後、ハイレベルとするローハイ動作を実行し、
前記ローハイ動作を実行した場合に、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化したとき、前記eARC機能のディスカバリー動作を実行し、
前記ローハイ動作を実行した場合に、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、前記所定時間を変更して、前記ローハイ動作を実行することを特徴とする音声処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ローハイ動作を実行した場合に、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、前記所定時間を変更して、前記ローハイ動作を実行する動作を、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化するまで、実行することを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記ローハイ動作を実行した場合に、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、前記所定時間を増加させて、前記ローハイ動作を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記eARC機能のディスカバリー動作を実行し、前記シンク機器が、前記eARC機能に対応していることを認識した場合、スピーカーから音声を出力することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の音声処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号に増幅等の音声処理を行う音声処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音声信号に増幅等の音声処理を行う音声処理装置として、テレビ等のシンク機器から入力される音声信号をスピーカーに出力するARC(Audio Return Channel)機能を有するAVレシーバーがある(例えば、特許文献1参照。)。テレビとAVレシーバーとは、HDMI(登録商標)ケーブルで接続される。また、テレビからHDMI(登録商標)ケーブルを介して、デジタル音声信号がAVレシーバーに入力される。AVレシーバーは、デジタル音声信号をアナログ音声信号にD/A変換して、スピーカーに出力する。
【0003】
また、HDMI(登録商標) Ver2.1から、eARC(enhanced Audio Return Channel)機能が、新規に追加された。eARCは、従来のARCに対して、HBR Audio、Multi-ch PCMの伝送を可能とする規格である(図3参照。)。なお、図3においては、HDMI(登録商標)を便宜的に「HD」と記載している。
【0004】
HDMI(登録商標)規格に対応した、AVレシーバー等のリピーター機器は、HDMI(登録商標)規格に対応した、テレビ等のシンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化したときに、eARCのディスカバリー動作(初期接続シーケンス)を実行する。そして、リピーター機器とシンク機器とが、互いにeARC対応機器であると認識すると、eARCによる音声出力を開始することになる。
【0005】
また、シンク機器のホットプラグ変化を待つのではなく、リピーター機器自体からディスカバリー動作を実行する場合(例えば、eARC機能のオン/オフ設定変更時など)は、HDMI(登録商標) TXの電源ライン(5V)を、一度、ローレベルからハイレベルにする。これにより、シンク機器のホットプラグを変化させて、eARCのディスカバリー動作を実行する。しかしながら、電源ライン(5V)のローレベルの期間が短いと、シンク機器によっては、ホットプラグを変化させない場合がある。この場合、ディスカバリー動作が実行されず、eARCによる音声が出力されない、という問題が発生する可能性がある。
【0006】
例えば、電源ライン(5V)をローレベルとする期間を、「a」msecと設定した場合、「A」社製のテレビでは、ホットプラプが変化するため、問題ないが、「B」社製テレビでは、ホットプラグが変化せず、eARCによる音声が出力されない、という問題が発生する場合がある。このため、上記のローレベルとする期間を、「b」(>「a」)msecに変更することで、「B」社製テレビにおける問題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-199693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今後、HDMI(登録商標) Ver2.1対応機器の普及により、eARC対応のテレビが市場で多く発売されることが予想される。しかしながら、全てのテレビが、上記のローレベル期間を「b」msecとすることで、問題なく動作する保証はなく、その場合、eARCによる音声が出力されない、という問題が発生する場合がある。
【0009】
本発明の目的は、テレビ等のシンク機器から入力される音声信号をスピーカーに出力するeARC機能を有する音声処理装置において、eARCによる音声が出力されないという問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明の音声処理装置は、シンク機器から入力される音声信号をスピーカーに出力するeARC機能を有する音声処理装置であって、制御部を備え、前記制御部は、前記シンク機器に接続されている電源ラインを所定時間、ローレベルにした後、ハイレベルとするローハイ動作を実行し、前記ローハイ動作を実行した場合に、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化したとき、前記eARC機能のディスカバリー動作を実行し、前記ローハイ動作を実行した場合に、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、前記所定時間を変更して、前記ローハイ動作を実行することを特徴とする。
【0011】
本発明では、制御部は、シンク機器に接続されている電源ラインを所定時間、ローレベルにした後、ハイレベルとするローハイ動作を実行した場合に、シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、所定時間を変更して(例えば、増加させて)、ローハイ動作を実行する。これにより、例えば、電源ラインがローレベルである期間が、所定時間では、ホットプラグが変化しないシンク機器であっても、変更後のローレベルとなる期間により、ホットプラグを変化させる可能性が高くなるため、eARCによる音声が出力されないという問題を解決することができる。
【0012】
第2の発明の音声処理装置は、第1の発明の音声処理装置において、前記制御部は、前記ローハイ動作を実行した場合に、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、前記所定時間を変更して、前記ローハイ動作を実行する動作を、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化するまで、実行することを特徴とする。
【0013】
第3の発明の音声処理装置は、第1又は第2の発明の音声処理装置において、前記制御部は、前記ローハイ動作を実行した場合に、前記シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、前記所定時間を増加させて、前記ローハイ動作を実行することを特徴とする。
【0014】
第4の発明の音声処理装置は、第1~第3の発明のいずれかの音声処理装置において、前記制御部は、前記eARC機能のディスカバリー動作を実行し、前記シンク機器が、前記eARC機能に対応していることを認識した場合、スピーカーから音声を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、eARCによる音声が出力されないという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るAVレシーバーの構成を示すブロック図である。
図2】AVレシーバーの処理動作を示すフローチャートである。
図3】eARCの概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るAVレシーバーの構成を示すブロック図である。AVレシーバー1(音声処理装置、リピーター機器)は、テレビ100(シンク機器)とHDMI(登録商標)ケーブルにより接続されている。AVレシーバー1は、テレビ100から入力される音声信号をスピーカー200に出力するeARC(enhanced Audio Return Channel)機能を有する。また、AVレシーバー1は、CEC(Consumer Electronics Control)規格に従った通信を行う機能を有する。
【0018】
図1に示すように、AVレシーバー1は、制御部2、記憶部3、表示部4、操作部5、デジタル信号入力端子6、DIR(Digital Interface Receiver)7、DSP(Digital Signal Processor)8、D/Aコンバーター(以下、「DAC」という。)9、ボリューム調整部10、増幅部11、スピーカー端子12を備える。
【0019】
制御部2は、記憶部3に記憶されたプログラムに従って、AVレシーバー1を構成する各部を制御する。記憶部3は、制御部2の主メモリとして機能するRAM(Random Access Memory)、プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)から構成されている。なお、記憶部3は、例示する構成に限られず、フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)等を含んでいてもよい。
【0020】
表示部4は、設定画面等を表示するものであり、LCD(液晶ディスプレイ)や蛍光表示管等である。操作部5は、ユーザー操作を受け付けるためのものであり、AVレシーバー1の筐体に設けられた操作ボタンやリモートコントローラーである。ユーザーは、操作部5を操作することにより、例えば、音声信号のボリューム値を指示することができる。
【0021】
デジタル信号入力端子6には、HDMI(登録商標)ケーブルを介して、テレビ100が接続されている。デジタル信号入力端子6には、テレビ100からSPDIF信号が入力される。DIR7は、テレビ100から入力されるSPDIF信号を、I2S信号に変換する。変換されたI2S信号は、DSP8に出力される。DSP8は、I2S信号に、イコライザー処理等のデジタル信号処理を行う。デジタル信号処理が行われたI2S信号は、DAC9に出力される。DAC9は、I2S信号をアナログ音声信号にD/A変換する。D/A変換されたアナログ音声信号は、ボリューム調整部10に出力される。
【0022】
ボリューム調整部10は、アナログ音声信号のボリューム値を調整する。ボリューム値が調整されたアナログ音声信号は、増幅部11に出力される。増幅部11は、ボリューム値が調整されたアナログ音声信号を増幅する。増幅されたアナログ音声信号は、スピーカー端子12に出力される。スピーカー端子12には、スピーカー200が接続されている。スピーカー200は、アナログ音声信号に基づいて、音声を出力する。
【0023】
制御部2は、テレビ100のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化したときに、eARCのディスカバリー動作(初期接続シーケンス)を実行する。また、制御部2は、テレビ100のホットプラグ変化によらず、ディスカバリー動作を実行する場合(eARC機能のオン/オフ設定の変更時など)、HDMI(登録商標) TXの電源ライン(5V)を、ローレベルからハイレベルとする。具体的には、制御部2は、テレビ100に接続されている電源ラインを、所定時間(例えば、「a」msec)、ローレベルにした後、ハイレベルとするローハイ動作を実行する。
【0024】
制御部2は、所定時間「a」msec、電源ラインをローレベルとするローハイ動作を実行した後、テレビ100のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化したとき、eARC機能のディスカバリー動作(初期接続シーケンス)を実行する。制御部2は、eARC機能のディスカバリー動作を実行し、テレビ100が、eARC機能に対応していることを認識した場合、スピーカー200から音声を出力する。すなわち、制御部2は、eARCによる音声出力を行う。
【0025】
制御部2は、所定時間「a」msec、電源ラインをローレベルとするローハイ動作を実行した後、テレビ100のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、所定時間「a」を変更して、ローハイ動作を実行する。具体的には、制御部2は、所定時間「a」msecを「b」msecに増加させて、ローハイ動作を実行する。例えば、「b」=2「a」である。
【0026】
制御部2は、ローハイ動作を実行した場合に、シンク機器のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、所定時間「a」を変更して、ローハイ動作を実行する動作を、テレビ100のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化するまで、実行する。例えば、制御部2は、電源ラインをローレベルとする期間を、所定時間「a」msecとして、テレビ100のホットプラグの変化がない場合、次は、電源ラインをローレベルとする期間を、「b」(=2「a」)msecとする。この場合でも、テレビ100のホットプラグの変化がない場合、次は、電源ラインをローレベルとする期間を、「c」(=4「a」)msecとする。
【0027】
以下、AVレシーバー1の処理動作を、図2に示すフローチャートに基づいて、説明する。制御部2は、まず、eARCの設定を変更する(eARC設定:オンからオフ)か否かを判断する(S1)。制御部2は、eARCの設定を変更しないと判断している間は(S1:No)、S1の処理を実行する。制御部2は、eARCの設定を変更すると判断した場合(S1:Yes)、電源ライン(5V)をローレベルとした後、ハイレベルとするローハイ動作を行う(S2)。
【0028】
次に、制御部2は、テレビ100のホットプラグが変化したか否かを判断する(S3)。制御部2は、テレビ100のホットプラグが変化していないと判断した場合(S3:No)、電源ライン(5V)をローレベルとする期間を変更する(前回値+α)(S4)。次に、制御部2は、S2の処理を実行する。一方で、制御部2は、テレビ100のホットプラグが変化したと判断した場合(S3:Yes)、eARCのディスカバリー動作を実行する(S5)。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、制御部2は、テレビ100(シンク機器)に接続されている電源ラインを所定時間、ローレベルにした後、ハイレベルとするローハイ動作を実行した場合に、テレビ100(シンク機器)のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、所定時間を変更して(例えば、増加させて)、ローハイ動作を実行する。これにより、例えば、電源ラインがローレベルである期間が、所定時間では、ホットプラグが変化しないシンク機器であっても、変更後のローレベルとなる期間により、ホットプラグを変化させる可能性が高くなるため、eARCによる音声が出力されないという問題を解決することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0031】
上述の実施形態においては、制御部2は、テレビ100(シンク機器)に接続されている電源ラインを所定時間、ローレベルにした後、ハイレベルとするローハイ動作を実行した場合に、テレビ100(シンク機器)のホットプラグが、ローレベルからハイレベルに変化しなかったとき、所定時間を増加させて、ローハイ動作を実行する。これに限らず、制御部2は、所定時間を減少させて、ローハイ動作を実行するようになっていてもよい。この場合、最初のローレベルとする所定時間は、十分に長い時間に設定される。
【0032】
上述の実施形態においては、音声処理装置として、スピーカーが別に接続されるAVレシーバーを例示した。これに限らず、例えば、スピーカーが増幅部と一体に構成されたバータイプのスピーカー装置等、他の音声処理装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は音声信号に増幅等の音声処理を行う音声処理装置に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0034】
1 AVレシーバー(音声処理装置、リピーター機器)
2 制御部
100 テレビ(シンク機器)
200 スピーカー
図1
図2
図3