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特許7482424導電性組成物、電子機器およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】導電性組成物、電子機器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240507BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240507BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20240507BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20240507BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20240507BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01B1/22 A
C08L63/00 C
C08K7/00
H01B1/00 H
H05K1/18 K
H05K1/09 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020045770
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021150039
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】池内 智史
(72)【発明者】
【氏名】岸 新
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191043(JP,A)
【文献】特開2014-080558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
C08L 63/00
C08K 7/00
H01B 1/00
H05K 1/18
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族性を有する環構造を含む可撓性エポキシ樹脂と、
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂と、
アミン硬化剤と、
導電性材料と、を含み、
前記可撓性エポキシ樹脂のエポキシ当量が800g/eq以上、1400g/eq以下であり、
前記導電性材料は、アスペクト比2以上のフィラーを含む、配線パターン用の導電性組成物。
【請求項2】
前記導電性材料の含有量は、前記配線パターンの30体積%以上、80体積%以下である、請求項1に記載の配線パターン用の導電性組成物。
【請求項3】
前記可撓性エポキシ樹脂は、脂肪族変性エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂およびゴム変性エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の配線パターン用の導電性組成物。
【請求項4】
前記可撓性エポキシ樹脂は、炭素数1~8のアルキレン基および炭素数1~8のポリオキシアルキレン基からなる群より選択される少なくとも1種を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の配線パターン用の導電性組成物。
【請求項5】
前記アミン硬化剤は、脂肪族ポリアミンおよび芳香族ポリアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の配線パターン用の導電性組成物。
【請求項6】
前記可撓性エポキシ樹脂100質量部に対する前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の量が30質量部以上、110質量部以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の配線パターン用の導電性組成物。
【請求項7】
前記可撓性エポキシ樹脂および前記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂の全量100質量部に対する前記アミン硬化剤の量が、20質量部以上、60質量部以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の配線パターン用の導電性組成物。
【請求項8】
前記導電性組成物の硬化物のJIS K 6251に準拠した引張試験において、応力の最大点における伸びが、3%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の配線パターン用の導電性組成物。
【請求項9】
前記導電性組成物の硬化物を第1方向に伸張したとき、前記第1方向において、伸張後の前記硬化物の25℃における電気抵抗値が伸張前の前記硬化物の25℃における電気抵抗値の115%になるときの前記硬化物の伸張率は、5%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の配線パターン用の導電性組成物。
【請求項10】
伸縮性基材と、
前記伸縮性基材の表面に形成された配線パターンと、
前記配線パターンに接続された電極を備える回路部材と、を備え、
前記配線パターンは、請求項1に記載の導電性組成物の硬化物を含み、
前記電極の少なくとも一部は、前記配線パターンに埋没している、電子機器。
【請求項11】
導電性組成物を準備する工程と、
前記導電性組成物を伸縮性基材上に塗布する工程と、
塗布された前記導電性組成物と回路部材の電極とが接触するように、前記伸縮性基材に前記回路部材を搭載する工程と、
塗布された前記導電性組成物を加熱して、前記導電性組成物の硬化物を含む配線パターンを形成するとともに、前記電極と前記配線パターンとを接続する工程と、を備え、
前記導電性組成物は、
芳香族性を有する環構造を含む可撓性エポキシ樹脂と、
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂と、
アミン硬化剤と、
導電性材料と、を含み、
前記導電性材料は、アスペクト比2以上のフィラーを含む、
電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する導電性組成物および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の用途拡大に伴い、電子機器に伸縮性が要求される場合がある。例えば、生体情報をセンシングする分野では、柔軟な生体にダイレクトに電子機器を貼り付けることや、伸縮する衣服に電子機器を搭載することが求められる。そこで、特許文献1および2は、金属粉と特定の樹脂とを含み、伸縮性に優れる樹脂組成物を提案している。この樹脂組成物は、例えば、基材上に配線パターンを形成するため用いられる。
【0003】
特許文献1は、導電性金属粉(A)及び樹脂(B)を含有した導電性膜であって、比抵抗が1.0×10-3Ωcm未満であり、少なくとも1方向に元の長さの36%以上伸長可能であり、基材および導電性膜を包持する包持部を設けない自立膜の状態で、元の長さの100%伸長した時の比抵抗増加比が10未満であることを特徴とする導電性膜を提案している。
【0004】
特許文献2は、ブロック共重合体および官能基含有エラストマーのうちから選ばれる少なくともいずれか1種と、微小粒子が集合し集合粒子を形成している連鎖状銀粉とを含有し、前記連鎖状銀粉のタップ密度が2.0g/cm以下であることを特徴とする導電性組成物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/114278号パンフレット
【文献】国際公開第2017/026420号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2が提案する樹脂(B)、ブロック共重合体もしくは官能基含有エラストマーでは、配線パターンに必要な柔軟性および靭性を十分に確保することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、芳香族性を有する環構造を含む可撓性エポキシ樹脂と、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂と、アミン硬化剤と、導電性材料と、を含み、前記導電性材料は、アスペクト比2以上のフィラーを含む、配線パターン用の導電性組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、伸縮性基材と、前記伸縮性基材の表面に形成された配線パターンと、前記配線パターンに接続された電極を備える回路部材と、を備え、前記配線パターンは、上記導電性組成物の硬化物を含み、前記電極の少なくとも一部は、前記配線パターンに埋没している、電子機器に関する。
【0009】
さらに、本発明は、上記導電性組成物を準備する工程と、前記導電性組成物を伸縮性基材上に塗布する工程と、塗布された前記導電性組成物と回路部材の電極とが接触するように、前記伸縮性基材に前記回路部材を搭載する工程と、塗布された前記導電性組成物を加熱して、前記導電性組成物の硬化物を含む配線パターンを形成するとともに、前記電極と前記配線パターンとを接続する工程と、を備える、電子機器の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強度、柔軟性および靭性に優れた硬化物を与える導電性組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の一部を模式的に示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電子機器の要部を模式的に示す側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電子機器の製造方法を示すフローチャートである。
図4】体積抵抗値の増加率を評価するために作製した配線パターンの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
配線パターン上には、通常、様々な回路部材が実装される。回路部材は電極を備えており、この電極を配線パターンに接続させることにより、回路部材は機能する。回路部材と配線パターンとの接続は、通常、はんだを用いて行われる。一般的には、はんだペーストを基材(基板等)に印刷した後、回路部材を基材に搭載する。最後に、リフロー工程によりはんだを溶融し、再度はんだを固化することで、回路部材の電極と、基板の配線パターンとが電気的に接続される。伸縮性基材を用いる場合、固化したはんだは変形し難いため、基材の伸縮に追随できずに電極から剥離してしまう場合がある。
【0013】
本実施形態では、伸縮性を有する樹脂の原料を含む導電性組成物を用いて、配線パターンの形成とともに、回路部材と配線パターンとの電気的接続を行う。基材が伸張、収縮および/または屈曲する(以下、単に伸縮すると称する。)と、配線パターンは基材に追随して伸縮する。よって、配線パターン自体の断線、基材と配線パターンとの剥離、さらには配線パターンと回路部材との剥離が抑制される。本実施形態は、この導電性組成物およびその硬化物を含む電子機器を包含する。本実施形態に係る導電性組成物は、特にフリップチップ実装技術などの表面実装(SMT:Surface Mount Technology)に好適に用いられる。
【0014】
[導電性組成物]
本実施形態に係る配線パターン用の導電性組成物は、芳香族性を有する環構造を含む可撓性エポキシ樹脂と、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂と、アミン硬化剤と、導電性材料とを含み、導電性材料は、アスペクト比2以上のフィラー(以下、扁平フィラーとも称する。)を含む。このような導電性組成物は、適度な流動性とタック性とを備える。そのため、導電性組成物は基材に密着しやすく、これを硬化させた硬化物もまた、基材に対して高い密着性を有する。
【0015】
導電性組成物が加熱されると、可撓性エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がアミン硬化剤と反応し、三次元網目構造を有する硬化物が生成する。可撓性エポキシ樹脂は、柔軟成分を有するとともに芳香族性を有する環構造を含むため、硬化物に柔軟性と靭性を付与する。また、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、硬化物に機械的強度と靭性を付与する。また、アミン硬化剤は、硬化物に弾性と靭性を付与する。よって、硬化物は、柔軟性および靭性に優れるとともに優れた強度を有する。例えば、導電性組成物の硬化物のJIS K 6251に準拠した引張試験において、応力の最大点における伸びは3%以上、更には4%以上を達成し得る。
【0016】
さらに、導電性組成物には、扁平フィラーが含まれている。これにより、基材が伸縮する場合にも導電性は確保され、硬化物の電気抵抗は小さく維持される。例えば、硬化物を第1方向に伸張したとき、第1方向において、伸張後の硬化物の電気抵抗値が伸張前の硬化物の電気抵抗値の115%になるときの硬化物の伸張率は、5%以上であり得る。回路部材が硬化物に接合されている場合、硬化物の上記伸長率は4%以上であってよい。
【0017】
さらに、可撓性エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂がアミン硬化剤と反応する際、わずかに導電性組成物の体積は収縮する。よって、さらに基材に対する密着性が高まるとともに、硬化物中に分散している導電性材料同士が接触し易くなって、導電性も高まる。なお、エポキシ樹脂として可撓性エポキシ樹脂のみを用いても硬化の際の収縮が小さく、導電性材料同士の接触が十分に確保されにくい。一方、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を併用することで体積の収縮が大きくなり、導電性組成物が十分な導電性を発現するようになる。
【0018】
導電性組成物は流動性とタック性とを有するため、導電性組成物で配線を描画し、その配線上に回路部材を搭載すると、回路部材の電極の少なくとも一部は配線(導電性組成物)中に埋没し、その状態で密着することができる。この状態で導電性組成物を加熱すると、電極の少なくとも一部を埋没させた状態のまま配線パターン(硬化物)が形成される。つまり、配線パターンは、電子機器の配線であるとともに、回路部材と配線とを接着し、電気的に接続する接合材として機能する。
【0019】
上記の通り、本実施形態に係る導電性組成物を用いると、配線パターンの形成とともに、回路部材と配線パターンとの電気的接続が行われるため、工数を削減することが可能となり、電子機器の生産性を向上させることができる。さらに、工数削減による製造コストの低減も期待できる。さらに、導電性組成物を用いて回路部材と配線パターンとの電気的接続を行うことで、リフロー工程、さらには熱圧着工程を省略することができる。したがって、基材として、あまり耐熱性の高くない材料を用いることができる。伸縮性を有する材料の多くは、耐熱性があまり高くない。
【0020】
A.可撓性エポキシ樹脂
芳香族性を有する環構造を含む可撓性エポキシ樹脂とは、分子内に、芳香族性を有する環構造を含む剛直骨格と、柔軟骨格と、を有するエポキシ樹脂であり、硬化物に柔軟性および靭性を付与する。可撓性エポキシ樹脂が、芳香族性を有する環構造を含む場合、環構造がゴムの架橋点のように作用し、柔軟性および靭性と同時に優れた機械的強度が発揮される。例えば、導電性組成物の硬化物のJIS K 6251に準拠した引張試験において、最大応力が大きく、かつ応力の最大点における伸びが大きくなる。このような導電性組成物の硬化物は、伸縮性基材の伸縮に追随しやすく、かつ回路部材を強固に保持することができる。
【0021】
芳香族性を有する環構造は、特に限定されず、縮合芳香環構造でもよく、ヘテロ環式構造でもよい。芳香族性を有する環構造は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、フルオレン環、ピロール環、チオフェン環、ビフェニル環、ビスフェノール構造、カルド構造などの少なくとも1つであればよい。
【0022】
可撓性エポキシ樹脂が有する柔軟骨格は、特に限定されないが、例えば、可撓性エポキシ樹脂として、脂肪族変性エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂およびゴム変性エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。脂肪族変性エポキシ樹脂は、柔軟な脂肪族基を有する。ポリエーテル変性エポキシ樹脂は、柔軟なポリオキシアルキレン基等を有する。ウレタン変性エポキシ樹脂は、柔軟なウレタンプレポリマーとエポキシ樹脂とを結合させたものである。ゴム変性エポキシ樹脂は、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリルなどを重合させたゴム状の重合体をエポキシ樹脂と結合させたものである。
【0023】
中でも、脂肪族変性エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂などは高い柔軟性を有する点で望ましい。例えば、可撓性エポキシ樹脂は、炭素数1~8(好ましくは3~7)のアルキレン基および炭素数1~8(好ましくは3~7)のポリオキシアルキレン基からなる群より選択される少なくとも1種を有することが望ましい。
【0024】
芳香族性を有する環構造を含む可撓性エポキシ樹脂は、例えば、芳香族性を有する環構造を有するエポキシ樹脂のユニットと柔軟骨格を有するエポキシ樹脂のユニットとを含む共重合体(もしくは重縮合体)であってもよい。芳香族性を有する環構造を有するエポキシ樹脂の中では、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂の取り扱いが容易であり、中でもビスフェノールF型エポキシ樹脂は可撓性エポキシ樹脂にビスフェノール構造を導入するのに適している。また、柔軟骨格を有するエポキシ樹脂の中では、例えば脂肪族変性エポキシ樹脂が適しており、中でも炭素数3~7のアルキレン基を有するアルキレングリコールジエポキシ樹脂などが適している。
【0025】
芳香族性を有する環構造を含む可撓性エポキシ樹脂は、例えば、下記式(1)で示すような構造を有する。式(1)中、Aはアルキレン基であり、XはCR2基を示し、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フェニル基などを示す。
【0026】
【化1】
【0027】
可撓性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば800g/eq以上、1400g/eq以下であってもよい。上記範囲のエポキシ当量を有する可撓性エポキシ樹脂は、柔軟骨格の割合が多く、硬化物が過度に硬くなって脆くなることを抑制するとともに硬化物に柔軟性を付与する。一方、可撓性エポキシ樹脂とジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂とを組み合わせることで硬化物の十分な機械的強度も確保される。
【0028】
可撓性エポキシ樹脂の含有量は、導電性組成物中の不揮発性成分から導電性材料を除いた残部(以下、樹脂成分ともいう。)の、例えば30質量%以上、70質量%以下であってよい。導電性組成物中の不揮発性成分の質量は、調製された導電性組成物から溶媒の質量を引いて算出される。また、乾燥後および硬化後の導電性組成物の質量は、導電性組成物中の不揮発性成分の質量とみなしてよい。なお、溶媒は用いなくてもよい。
【0029】
B.ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂とは、分子内に複数のエポキシ基とジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂をいう。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、嵩高い構造を有することから、硬化物に適度な機械的強度を付与しつつ、優れた靭性を与える。可撓性エポキシ樹脂とジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂とが組み合わさることで、硬化物の物性バランスが伸縮性基材に形成する配線パターンに更に適するようになる。
【0030】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、例えば、下記式(2)で示すようなノボラック構造を有してもよい。
【0031】
【化2】
【0032】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば150g/eq以上、200g/eq以下であってもよい。上記範囲のエポキシ当量を有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、粘度が低く、反応性に優れ、かつ導電性組成物の印刷性を向上させ得る点で好ましい。
【0033】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の量は、例えば、可撓性エポキシ樹脂100質量部に対して、30~110質量部であってもよく、50~100質量部であってもよい。
【0034】
なお、導電性組成物は、上記エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を少量であれば含有してもよいが、その量は可撓性エポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以下であることが望ましい。このような任意成分のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
C.アミン硬化剤
アミン硬化剤としては、脂肪族(脂環式を含む)ポリアミン、芳香族ポリアミン等のポリアミン、ヒドラジン類、ジアリルアミン化合物などの不飽和ジアミンなどを用い得る。脂肪族ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ビスヘキサミチレントリアミン、シクロヘキシルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、モノヒドロキシエチルジエチレントリアミン、ビスヒドロキシエチルジエチレントリアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチルアミノプロピルアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラスオキサスピロ[5,5]ウンデカン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、N-アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノアニソール、トルエンジアミン、キシリレンジアミン(例えばメタキシリレンジアミン)、ジアミノジフェニルスルホン(例えば4,4′-ジアミノジフェニルスルホン)、3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン、4,4′-メチレンビス(フェニルアミン)、4,4′-ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられる。中でも機械的強度と靭性に優れる点で、メタキシリレンジアミンが好ましい。
【0036】
アミン硬化剤の量は、例えば、可撓性エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂の全量100質量部に対して、20~60質量部であってもよく、25~40質量部であってもよい。また、可撓性エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂の全量が有するエポキシ基(エポキシ当量)に対する、アミン硬化剤が有する活性水素基の当量比(NH基/エポキシ基)は、硬化時間と導電性組成物のポットライフとのバランスを考慮すると、例えば、1以上、2以下がよい。
【0037】
D.導電性材料
導電性材料は、扁平フィラーを含む。これにより、硬化物の伸縮時の導電性が確保される。扁平フィラーとしては、フレーク状フィラー、鱗片状フィラーおよび繊維状フィラー(金属ナノワイヤー、金属ナノチューブ等)が例示できる。
【0038】
扁平フィラーのアスペクト比は、3以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。フレーク状フィラーおよび鱗片状フィラーのアスペクト比は、厚み方向の最大径の平均長さと、面方向の平均長さとの比である。繊維状フィラーのアスペクト比は、長手方向の平均長さと、短手方向の平均長さとの比である。面方向の平均長さは、その面の面積と同じ面積を有する円の直径とすればよい。その他の平均長さは、10個のフィラーの平均値である。
【0039】
アスペクト比は、乾燥後の導電性組成物あるいはその硬化物(配線パターン)の厚み方向の断面から求めてもよい。例えば、配線パターンの厚み方向の任意の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて倍率100倍以上で撮影する。この画像の観察視野内から任意の複数個(例えば、20個)のフィラーを選択して長径と短径とを測定する。長径は最大径であり、短径は最大径に垂直な方向における最大径である。長径と短径との比が2以上であるフィラーを扁平フィラーとする。このようにして10個の扁平フィラーを選出し、それぞれの長径と短径との比を算出し、これらの平均値を、扁平フィラーのアスペクト比とする。その他のフィラーのアスペクト比も同様にして求められる。
【0040】
扁平フィラーの平均粒径は、例えば1μm以上、20μm以下であってよく、1μm以上、10μm以下であってよい。扁平フィラーの平均粒径が上記範囲内にあると、硬化物の伸縮時の導電性が確保され易い。
【0041】
平均粒径は、体積基準の粒度分布における累積体積50%における粒径(D50。以下同じ。)である。D50は、レーザー回折式の粒度分布測定装置により測定できる。あるいは、平均粒径は、乾燥後の導電性組成物あるいはその硬化物(配線パターン)の厚み方向の断面から求めてもよい。例えば、上記のようにして選出された複数個(例えば、10個)の扁平フィラーについて粒子径を算出し、平均化することにより求めることができる。扁平フィラーの断面の面積と同じ面積を有する円の直径を、その扁平フィラーの粒子径とすればよい。その他のフィラーの平均粒径も同様にして求められる。
【0042】
導電性材料の含有量は、可撓性エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂の全量とアミン硬化剤と導電性材料との合計を100体積%として、例えば30体積%以上、80体積%以下であってよく、50体積%以上、80体積%以下であってよい。導電性材料の含有量が上記範囲であると、電気的接続の信頼性が確保され易くなる。
【0043】
導電性材料の含有量(体積割合)は、各エポキシ樹脂、アミン硬化剤および導電性材料のそれぞれの質量に、それぞれの比重を考慮することによって算出できる。導電性材料の含有量は、乾燥後の導電性組成物あるいはその硬化物(配線パターン)の厚み方向の断面から求めてもよい。例えば、上記のようにして得られたSEM画像あるいはTEM画像を、有機成分と導電性材料とにわけて二値化する。二値化された画像の観察視野内において、有機成分および導電性材料が占める面積割合をそれぞれ算出する。これら面積割合を、有機成分および導電性材料の体積割合とみなして、導電性材料の体積割合(含有量)を算出すればよい。
【0044】
扁平フィラーに含まれる元素としては、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、黄銅、モリブデン、タンタル、ニオブ、鉄、白金、錫、クロム、鉛、チタン、マンガン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウム、イリジウム等が挙げられる。扁平フィラーは、これら元素を合金として含んでいてもよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、導電性の観点から、扁平フィラーは銀を含むことが好ましい。
【0045】
導電性組成物は、導電性材料として、さらにアスペクト比が2未満のフィラー(以下、球状フィラーと称する。)を含んでもよい。球状フィラーの平均粒径は特に限定されないが、扁平フィラーの平均粒径より小さくてよい、これにより、扁平フィラー同士の隙間に入り込みやすくなって、硬化物の伸縮時の導電性がより維持され易くなる。球状フィラーの平均粒径は、例えば1μm以上、20μm以下であってよく、1μm以上、10μm以下であってよい。球状フィラーに含まれる元素としては、扁平フィラーと同様のものが挙げられる。
【0046】
E.その他
導電性組成物には、さらに、溶媒(溶剤)、触媒、鎖延長剤、バインダ、カップリング剤、導電助剤、無機フィラー、有機フィラー等が添加されてもよい。
【0047】
溶媒は、導電性組成物の粘度調製のために適宜使用される。触媒としては、例えば、スズ系触媒、アミン系触媒、有機金属化合物系触媒等が挙げられる。
【0048】
導電助剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。導電助剤としては、例えば、導電性高分子、イオン液体、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0049】
バインダは特に限定されず、公知のものを使用することができる。バインダとしては、伸縮率が高く、不飽和結合を分子内に含まないポリマーが好ましい。具体的には、ウレタン樹脂、ウレタンゴム、アクリル樹脂、アクリルゴム、ブチルゴム、クロロスルフォン化ゴム、フッ素ゴム、シリコーン等が挙げられる。ウレタン樹脂およびウレタンゴムは、溶媒蒸発型であってもよく、熱硬化型であってもよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0050】
[電子機器]
本実施形態に係る電子機器は、伸縮性基材と、伸縮性基材の表面に形成された配線パターンと、配線パターンに接続された電極を備える回路部材と、を備える。配線パターンは、上記の導電性組成物の硬化物を含む。そのため、基材が伸縮する場合、配線パターンは伸縮性基材に追随して変形して、配線パターン自体の断線、基材と硬化物との剥離が抑制される。さらに、電極の少なくとも一部は、伸縮性を有する配線パターンに埋没している。つまり、電極の底面が配線パターンに接触するとともに、側面の少なくとも一部も配線パターンに接触している。そのため、基材が伸縮する場合であっても、硬化物と回路部材との剥離も抑制される。よって、本実施形態に係る電子機器は、フレキシブルおよび/またはストレッチャブルでありながら、高い接続信頼性を有する。
【0051】
電子機器は、電気的な入出力、演算および通信等を行う。本実施形態に係る電子機器は、特に身体に近接あるいは密着させて使用するウェアラブル機器として適している。このようなウェアラブル機器は、例えば、縫製あるいは熱接着により衣服に取り付けられたり、粘着剤で身体に貼り付けて用いられたりする。
【0052】
回路部材と配線パターンとを接着する接合材と、配線パターンとが異なる伸縮性の材料により形成される場合、基材が伸縮することによりそれぞれの材料にかかる応力、および、それぞれの材料に残留する応力が異なる。そのため、電子機器の電気的特性や着用感等が低下し易い。本実施形態に係る電子機器は、配線パターンが接合材としても機能するため、上記のような不具合は生じ難い。
【0053】
図1は、本実施形態に係る電子機器の一部を模式的に示す側面図である。図2は、本実施形態に係る電子機器の要部を模式的に示す側面図である。
【0054】
電子機器100は、伸縮性基材10と、伸縮性基材10の表面に形成された配線パターン20と、配線パターン20に接続された電極31を備える回路部材30と、を備える。配線パターン20は、上記の導電性組成物の硬化物を含む。電極31の少なくとも一部は、配線パターン20に埋没している。すなわち、電極31の底面31aおよび側面31bの少なくとも一部が配線パターン20に接触している。
【0055】
基材は特に限定されない。基材としては、配線板として使用される従来公知のガラス基板、樹脂基板、セラミック基板およびシリコン基板等の他、フレキシブル基板、ストレッチャブル基板等と言われる伸縮性および/または屈曲性を有する基板が挙げられる。本実施形態に係る導電性組成物は、さらに、伸縮および/または屈曲可能な他の基材にも適している。これら伸縮および/または屈曲可能な基材を伸縮性基材と総称する。
【0056】
伸縮性基材の形態としては、例えば、織物、編物および不織布等の繊維構造体、ゴム、樹脂フィルム等が挙げられる。基材の素材は特に限定されない。繊維構造体は、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ウレタン、ポリビニルアルコール等の合成繊維;レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維;綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維;およびこれらの複合繊維を含んでいてよい。ゴムは、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等を含んでいてよい。樹脂フィルムは、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンスルホン、ウレタン、シリコーン等などを含んでよい。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0057】
基材がゴムあるいは樹脂フィルムである場合、JIS K 7126またはJIS K 7127に準拠して測定された破断時伸びが3%以上である場合、伸縮性基材であると評価できる。
【0058】
基材が繊維構造体である場合、JIS L 1096の引張強さ及び伸び率A法(ストリップ法)に準拠して測定された伸び率が3%以上である場合、伸縮性基材であると評価できる。
【0059】
伸縮性基材の厚みは特に限定されず、用途等に応じて適宜設定すればよい。
【0060】
電子機器は、例えば、以下の方法により製造することができる。
本実施形態に係る電子機器は、(1)芳香族性を有する環構造を含む可撓性エポキシ樹脂と、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂と、アミン硬化剤と、アスペクト比2以上のフィラーを含む導電性材料とを含む導電性組成物を準備する工程(S1)と、(2)導電性組成物を伸縮性基材上に塗布する工程(S2)と、(3)塗布された導電性組成物と回路部材の電極とが接触するように、伸縮性基材に回路部材を搭載する工程(S3)と、塗布された導電性組成物を加熱して、導電性組成物の硬化物を含む配線パターンを形成する工程(S4)と、を備える方法により製造される。図3は、本実施形態に係る電子機器の製造方法を示すフローチャートである。
【0061】
(1)導電性組成物の準備工程
導電性組成物は、上記の導電性材料、可撓性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アミン硬化剤およびその他の添加物を、例えばミキサーなどで混合することによって調製される。
【0062】
(2)導電性組成物の塗布工程
導電性組成物を基材に塗布する方法は特に限定されない。塗布方法としては、例えば、アプリケーター、ワイヤーバー、コンマロール、グラビアロール等を用いるコーティング法:スクリーン、平板オフセット、フレキソ、インクジェット、スタンピング、ディスペンサ等を用いる印刷法等が挙げられる。
【0063】
導電性組成物の塗布量は特に限定されず、電子機器の用途、導電性材料の平均粒径、搭載される回路部材等に応じて適宜設定すればよい。電極を埋没させ易くするために、電極と接触する部分に、厚めに導電性組成物を塗布してもよい。
【0064】
(3)回路部材の搭載工程
伸縮性基材に塗布された加熱前の導電性組成物は、流動性およびタック性を有している。そのため、導電性組成物上に回路部材を搭載すると、回路部材の電極の少なくとも一部は導電性組成物中に埋没し、その状態で導電性組成物に密着する。
【0065】
回路部材は、基材との対向面に外部端子を有するものであれば特に限定されない。回路部材としては、例えば、ICチップ等のベアチップ部品や、インターポーザを具備するパッケージ部品、電子部品モジュール、受動素子などのチップ部品、貫通電極を有する積層半導体等が挙げられる。
【0066】
(4)加熱工程
導電性組成物を加熱することにより、各エポキシ樹脂とアミン硬化剤とが反応する。これにより、電極の少なくとも一部を埋没させた状態のままで、配線パターン(硬化物)が形成されるとともに、電極と配線パターンとが接続される。つまり、配線パターンは、電子機器の配線であるとともに、回路部材と配線とを電気的に接続する接合材である。さらに言い換えれば、導電性組成物は、配線形成用の材料であり、かつ、接合用の材料である。そのため、それぞれの材料の相性や互いの物性の違い等を考慮することが省略されるとともに、材料間での剥離等の懸念も解消される。
【0067】
加熱工程により、配線パターンの形成とともに、回路部材と配線パターンとの電気的接続が行われるため、工数を削減することが可能となり、電子機器の生産性が向上する。さらに、工数削減による製造コストの低減も期待できる。使用する材料も限定されるため、さらに製造コストは低減され得る。
【0068】
加熱温度は、各エポキシ樹脂とアミン硬化剤との反応温度、基材の融点等に応じて適宜決定される。加熱温度は、例えば、100℃~150℃であってよく、110℃~140℃であってよい。加熱時間は特に限定されないが、60分以下であってよく、45分以下であってよく、30分以下であってよい。
【0069】
[実施例1~7、比較例1~3]
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(i)導電性組成物の準備
表1に示す配合量で各成分を混合し、自転・公転ミキサーにて混練し、ペースト状の実施例1~7の導電性組成物A1~A7および比較例1~3の導電性組成物B1~B3を調製した。
【0071】
実施例1~7および比較例1~3で使用した各成分は、以下の通りである。
【0072】
第1エポキシ樹脂(可撓性エポキシ樹脂):脂肪族変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量約1000、製品名:jERYX7110B80、三菱ケミカル(株)製
第2エポキシ樹脂(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂):エポキシ当量約165、製品名:EP-4088L、(株)ADEKA製
第3エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂):エポキシ当量約190、製品名:jER828、三菱ケミカル(株)製
硬化剤(アミン硬化剤):ST12(メタキシリレンジアミン)、三菱ケミカル(株)製
導電性材料:フレーク状銀粉、製品名:AgC-2351、平均粒径(D50)6.95μm、福田金属箔粉工業(株)製、アスペクト比:2.2以上
【0073】
(ii)電子機器の作製
伸縮性基材(ウレタンフィルム、日本マタイ(株)製、エスマーURS)上に、調製した導電性組成物を図4に示されるパターンで塗布した。
【0074】
導電性組成物は、メッシュスクリーンを用いて印刷により形成した。配線パターン20は、幅0.3mmの4本の第1方向に延びる配線21と、4個の抵抗値測定用の2.0mm×1.0mmサイズの端子部22A~22Dと、2個の1.0mm×1.25mmサイズのチップ部品実装部23とで構成されている。配線パターン20の第1方向における全長は25mmである。硬化前の導電性組成物の塗膜の2個の実装部23に跨がるように、チップ部品(0Ωのチップ抵抗)30(2125サイズ)を搭載し、チップ部品の2つの電極をそれぞれの実装部23に接触させた。この状態で、120℃で30分間加熱して、配線パターン20を形成するとともに回路部材を実装し、電子機器を得た。
【0075】
[評価]
導電性組成物、配線パターンおよび電子機器について、以下の評価を行った。
(1)体積抵抗値
ガラス板上に、調製した導電性組成物を塗布した後、上記の条件で加熱して、ガラス板上に60mm×10mm矩形のフィルム(導電性組成物の硬化物)を形成し、フィルムの長手方向の抵抗値を測定した。測定された抵抗値を用いて、下記式によりフィルムの体積抵抗値(比抵抗値)を算出した。
【0076】
体積抵抗値R=(抵抗値×フィルムの膜厚×フィルムの短手方向の長さ/フィルムの長手方向の長さ)×100
【0077】
抵抗値の測定は、JIS K 7194に準じた4端子法により行った。測定温度は25℃であり、抵抗値の温度による補正は省略した。以下の抵抗値も同様にして測定した。
【0078】
体積抵抗値Rは以下の指標で評価した。
◎:1.0mΩ・cm未満
○:1.0~2.0mΩ・cm
×:2.0mΩ・cmより大きい
【0079】
(2)機械的特性
シリコーンシート上にダンベル型の印刷マスクを用いて導電性組成物を塗布し、120℃で30分間加熱して、JIS K 6251に準拠したダンベル状6号形の試験片を作製し、引張試験を行った。試験装置には、株式会社エー・アンド・デイのテンシロン万能材料試験機RTCシリーズを用いた。最大応力と、最大点における伸び(歪み)を測定した。
【0080】
最大応力は以下の指標で評価した。
◎:4.5N/mm2より大きい
○:3.0~4.5N/mm2
×:3.0N/mm2より小さい
【0081】
伸びは以下の指標で評価した。
◎:3.5%より大きい
○:3.0~3.5%
×:3.0%より小さい
【0082】
(3)5%伸張時における硬化物の抵抗増加率(ΔRA)
上記(ii)で得られた電子機器の配線パターン20の4つの端子部22A~22Dにテスターの所定の端子を接続し、初期の抵抗値ERを上記と同様の4端子法により25℃で測定した。この抵抗値には、チップ抵抗の内部抵抗が加味されている。
【0083】
次いで、ウレタンフィルムの両端部を挟持して配線パターンを第1方向(図4における左右方向)に伸張し、ウレタンフィルムの伸張率が5%のときの配線パターン間の電気抵抗値ERを25℃で求め、初期の抵抗値ERからの抵抗値の増加率ΔRAを算出した。このとき、増加率が15%に満たなければ、伸張後の導電性組成物の硬化物の電気抵抗値が伸張前の115%になるときの伸張率は5%以上であるといえる。
【0084】
なお、ウレタンフィルムの伸張率は、配線パターンの伸張率とみなすことができる。
【0085】
ΔRAは以下の指標で評価した。
◎:10%より小さい
○:10~15%
×:15%より大きい
【0086】
(4)伸張時における硬化物の抵抗増加率ΔRB
上記(ii)で得られた電子機器の配線パターン20の4つの端子部のうち、2つの端子部22A、22Bにテスターの所定の端子を接続し、初期の抵抗値PRを2端子法により25℃で測定した。この抵抗値には、チップ抵抗の内部抵抗は加味されない。
【0087】
次いで、ウレタンフィルムの両端部を挟持して配線パターンを第1方向(図4における左右方向)に伸張し、ウレタンフィルムの伸張率が5%のときの配線パターン間の電気抵抗値PRを25℃で求め、初期の抵抗値PRからの抵抗値の増加率ΔRBを算出した。このとき、増加率が15%に満たなければ、伸張後の導電性組成物の硬化物の電気抵抗値が伸張前の115%になるときの伸張率は5%以上であるといえる。
【0088】
ΔRBは以下の指標で評価した。
◎:15%より小さい
○:15~20%
×:20%より大きい
【0089】
【表1】
【0090】
実施例1~7で調製した導電性組成物の硬化物は、いずれも初期の抵抗値が低く、抵抗増加率ΔRA、ΔRBの評価も高かった。これは、硬化物を伸張させても、抵抗値が増加し難いことを示している。抵抗増加率ΔRAの評価も高く、伸縮性基材の伸張時にもチップの電気抵抗は小さく維持されている。なお、導電性組成物のタック性も高いことから、チップは硬化物に強固に密着されていることがわかる。抵抗増加率ΔRAを評価する際に作製された電子機器をみると、電極の一部は硬化物に埋没していた。
【0091】
導電性組成物がジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含まない比較例1では、体積抵抗が大きく、伸長時の抵抗増加率も大きかった。これは、導電性組成物の硬化時の収縮が小さく、導電性材料同士の接点が得られにくいためと考えられる。また、導電性組成物が可撓性エポキシ樹脂を含まない比較例2では、引張試験において伸びが非常に小さく、伸長時の抵抗増加率の測定ができなかった。また、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の代わりにビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた比較例3では、伸長時の抵抗増加率が相当に大きくなった。これは、硬化物の機械的強度が不足して配線パターンに微細な破断が生じたことや、配線パターンとチップ部品との密着力の減少によるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の導電性組成物は、導電性およびタック性を有し、その硬化物は、導電性および伸縮性を有し、柔軟性および靭性に優れている。よって、本発明の導電性組成物は、伸縮性基材を有する電子機器の配線を形成する材料および接合材として、好ましく使用できる。本発明の電子機器は、伸縮性、屈曲性および高い接続信頼性を有するため、ヘルスケア製品、各種ディスプレイ、太陽電池、RFID等の高性能エレクトロニクス分野の製品に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0093】
100 電子機器
10 伸縮性基材
20 配線パターン(導電性組成物の硬化物)
21 配線
22A~22D 端子部
23 実装部
30 回路部材(チップ部品)
31 電極
31a 底面
31b 側面
図1
図2
図3
図4