(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】モータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20240507BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240507BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 F
(21)【出願番号】P 2020116394
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中野 慎介
(72)【発明者】
【氏名】坂口 翔大
(72)【発明者】
【氏名】清水 公徳
(72)【発明者】
【氏名】園田 大輔
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-147251(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002074(WO,A1)
【文献】特開平01-194871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/42-7/98
H02P21/00-25/03
25/04
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するインバータと、
前記インバータに電力を供給する電源の1以上の電源線うちの少なくとも1つの電源線の電位と、前記モータのアースの電位と、の間の振幅を検出し、検出結果を出力する第1の検出器と
、
前記インバータを、PWM(Pulse Width Modulation)信号を用いてPWM制御するPWM制御部と、を備え
、
前記PWM制御部は、前記第1の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の波形を制御し、
さらに、前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位とにおける第1の所定の周波数成分を除去する第1のフィルタを備え、
前記第1の検出器は、前記第1のフィルタにより前記第1の所定の周波数成分が除去された、前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位との間の振幅を検出し、
さらに、
前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位とにおける第2の所定の周波数成分を除去する第2のフィルタと、
前記第2のフィルタにより前記第2の所定の周波数成分が除去された、前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位との間の振幅を検出する第2の検出器とを備え、
前記PWM制御部は、前記第1の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の周波数が変化するように、前記PWM信号の波形を制御し、前記第2の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように、前記PWM信号を制御する
モータ駆動装置。
【請求項2】
前記第1の検出器は、前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位との間のピーク振幅を検出する
請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記PWM制御部は、前記PWM信号の周波数が変化するように、前記PWM信号を制御する
請求項
1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記PWM制御部は、前記PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように、前記PWM信号の波形を制御する
請求項
1または請求項
3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記PWM制御部は、前記第1の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の周波数が変化するように、前記PWM信号の波形を制御した後に、前記第2の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように、前記PWM信号を制御する
請求項
1に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータを駆動するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを駆動するための三相交流を出力するインバータを備えるモータ駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般に、モータを駆動するインバータは、スイッチング素子を備え、スイッチング素子がPWM(Pulse Width Modulation)信号によりスイッチング制御されることで、所望の周波数の三相交流を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インバータを備えるモータ駆動装置において、スイッチング素子がスイッチング動作を行うと、そのインバータからスイッチングノイズが放出される。
【0006】
このスイッチングノイズは、周囲の機器等に悪影響を及ぼす恐れがある。このため、モータ駆動装置から放出されるスイッチングノイズを、そのモータ駆動装置の周囲環境に応じた所望のノイズレベル以下に抑制する必要がある。
【0007】
一方で、インバータを備えるモータ駆動装置に対しては、スイッチング素子が行うスイッチング動作によるスイッチング損失の低減が望まれる。
【0008】
そこで、本開示は、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができるモータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係るモータ駆動装置は、モータを駆動するインバータと、前記インバータに電力を供給する電源の1以上の電源線うちの少なくとも1つの電源線の電位と、前記モータのアースの電位と、の間の振幅を検出し、検出結果を出力する第1の検出器と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができるモータ駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係るモータ駆動システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係るインバータから実施の形態1に係るモータに供給される三相交流の電流波形を示す波形図である。
【
図3A】
図3Aは、コモン電流におけるスイッチングノイズの周波数と、観測される端子雑音電圧強度との関係を示すシミュレーション結果である。
【
図3B】
図3Bは、コモン電流におけるスイッチングノイズの周波数と、観測される端子雑音電圧強度との関係を示すシミュレーション結果である。
【
図4】
図4は、ノイズレベル調整処理のフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係るモータ駆動システムの構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施の形態3に係るモータ駆動システムの構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、実施の形態4に係るモータ駆動システムの構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、実施の形態5に係るモータ駆動システムの構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態6に係るモータ駆動システムの構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、実施の形態7に係るモータ駆動システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
インバータにおいて、スイッチング素子のスイッチングを制御するPWM信号の立ち上がりまたは/および立ち下がりエッジの傾きを急峻にすると、または、PWM信号の周波数を高くすると、スイッチング損失が低減する。その反面、PWM信号の立ち上がりまたは/および立ち下がりエッジの傾きを急峻にすると、または、PWM信号の周波数を高くすると、インバータから放出されるスイッチングノイズが増大する。
【0013】
一般に、モータを駆動するインバータから放出されるスイッチングノイズに起因する端子雑音電圧強度は、モータに接続される信号線、電源線等といった、モータ駆動装置の周囲環境の影響を受ける。このため、インバータを設計する際には、想定され得る様々な周囲環境において、スイッチングノイズが所望のノイズレベルを超えないように、スイッチングノイズの放出特性にマージンを持たせる必要がある。すなわち、想定され得る様々な周囲環境において、スイッチングノイズが所望のノイズレベルを超えないように、PWM信号の波形を調整する必要がある。このようにしてPWM信号の波形を調整した結果、実際の周囲環境に応じた所望のノイズレベルに対して、インバータにおけるスイッチング損失が、過剰に大きくなってしまうことがあるという問題がある。
【0014】
そこで、発明者らは、上記問題に鑑みて、実際の周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができるモータ駆動装置について、鋭意、実験、検討を重ねた。その結果、発明者らは、下記モータ駆動装置に想到した。
【0015】
本開示の一態様に係るモータ駆動装置は、モータを駆動するインバータと、前記インバータに電力を供給する電源の1以上の電源線うちの少なくとも1つの電源線の電位と、前記モータのアースの電位と、の間の振幅を検出し、検出結果を出力する第1の検出器と、を備える。
【0016】
一般に、インバータがモータを駆動する場合において、インバータから放出されるスイッチングノイズは、インバータからモータに供給される三相交流における同相信号成分としてモータに伝播する。そして、このインバータからモータに伝播する同相信号成分が、端子雑音電圧強度に強く寄与する。このモータに伝播された同相信号成分は、キルヒホッフの電流保存則により、モータのアースから出力される。
【0017】
上記構成のモータ駆動装置によると、第1の検出器は、モータに伝播された同相信号成分の強度を、インバータに電力を供給する1以上の電源のうちの少なくとも1つの電源の電位と、モータのアースの電位と、の間の振幅として検出し、検出結果を出力する。このため、このモータ駆動装置を利用する利用者は、第1の検出器から出力される検出結果を確認しながら、スイッチング損失を低減するための対策を取ることができる。
【0018】
従って、上記構成のモータ駆動装置によると、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができるモータ駆動装置が提供される。
【0019】
また、前記第1の検出器は、前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位との間のピーク振幅を検出するとしてもよい。
【0020】
これにより、第1の検出器は、モータに伝播された同相信号成分のピーク強度を検出することができる。
【0021】
また、更に、前記インバータを、PWM(Pulse Width Modulation)信号を用いてPWM制御するPWM制御部を備え、前記PWM制御部は、前記第1の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の波形を制御するとしてもよい。
【0022】
これにより、PWM信号の波形を制御することで、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0023】
また、前記PWM制御部は、前記PWM信号の周波数が変化するように、前記PWM信号を制御するとしてもよい。
【0024】
これにより、PWM信号の周波数が変化するようにPWM信号の波形を制御することで、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0025】
また、前記PWM制御部は、前記PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように、前記PWM信号の波形を制御するとしてもよい。
【0026】
これにより、PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するようにPWM信号の波形を制御することで、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0027】
また、さらに、前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位とにおける第1の所定の周波数成分を除去する第1のフィルタを備え、前記第1の検出器は、前記第1のフィルタにより前記第1の所定の周波数成分が除去された、前記少なくとも1つの電源の電位と前記アースの電位との間の振幅を検出するとしてもよい。
【0028】
これにより、第1の検出器は、モータに伝播された同相信号成分から第1の所定の周波数成分が除去された信号の強度を検出することができる。
【0029】
また、さらに、前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位とにおける第2の所定の周波数成分を除去する第2のフィルタと、前記第2のフィルタにより前記第2の所定の周波数成分が除去された、前記少なくとも1つの電源線の電位と前記アースの電位との間の振幅を検出する第2の検出器とを備え、前記PWM制御部は、前記第1の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の周波数が変化するように、前記PWM信号の波形を制御し、前記第2の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように、前記PWM信号を制御するとしてもよい。
【0030】
これにより、モータに伝播された同相信号成分から第1の所定の周波数成分が除去された信号の強度に基づいてPWM信号の周波数が変化するようにPWM信号の波形を制御し、モータに伝播された同相信号成分から第2の所定の周波数成分が除去された信号の強度に基づいてPWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するようにPWM信号の波形を制御することで、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0031】
また、前記PWM制御部は、前記第1の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の周波数が変化するように、前記PWM信号の波形を制御した後に、前記第2の検出器により検出された振幅に基づいて、前記PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように、前記PWM信号を制御するとしてもよい。
【0032】
これにより、PWM信号の周波数が変化するように行うPWM信号の波形の制御を、PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下りエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように行うPWM信号の波形の制御よりも優先して行うことができる。
【0033】
以下、本開示の一態様に係るモータ制御装置の具体例について、図面を参照しながら説明する。ここで示す実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。従って、以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ならびに、ステップ(工程)およびステップの順序等は、一例であって本開示を限定する趣旨ではない。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0034】
なお、本開示の包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0035】
(実施の形態1)
<構成>
図1は、実施の形態1に係るモータ駆動システム1の構成例を示すブロック図である。
【0036】
図1に示すように、モータ駆動システム1は、モータ駆動装置10と、モータ80と、三相交流電源90とを備える。
【0037】
モータ80は、モータ駆動装置10により駆動される。
【0038】
三相交流電源90は、モータ駆動装置10に、L1相とL2相とL3相との3相からなる三相交流を供給する。
図1に示すように、L1相の交流成分は、電源線91を通ってモータ駆動装置10に供給され、L2相の交流成分は、電源線92を通ってモータ駆動装置10に供給され、L3相の交流成分は、電源線93を通ってモータ駆動装置10に供給される。
【0039】
モータ駆動装置10は、三相交流電源90から供給される三相交流を電力源とし、モータ80を駆動する。
【0040】
図1に示すように、モータ駆動装置10は、インバータ20と、第1の検出器31と、第2の検出器32と、PWM制御部40と、第1のフィルタ51と、第2のフィルタ52と、平滑回路60と、整流回路70とを備える。
【0041】
整流回路70は、三相交流電源90から供給される三相交流を整流する。以下、整流回路70により整流された直流であって、次に説明する平滑回路60により平滑化される前の直流のことを「平滑前直流」とも称する。
【0042】
平滑回路60は、整流回路70により整流された平滑前直流が供給され、供給される平滑前直流を平滑化する。以下、平滑回路60により平滑化された直流のことを「平滑後直流」とも称する。
【0043】
整流回路70と平滑回路60とは、上記構成により、インバータ20に直流(ここでは平滑後直流)を供給する直流電源として機能する。
図1に示すように、直流電源における高い電位側の直流成分Pは、電源線61を通ってインバータ20に供給され、直流電源における低い電位側の直流成分Nは電源線62を通ってインバータ20に供給される。
【0044】
インバータ20は、平滑回路60により平滑化された平滑後直流が供給され、モータ80を駆動する。より具体的には、インバータ20は、スイッチング動作を行う複数のスイッチング素子(ここでは、6個のスイッチング素子)を備え、これら複数のスイッチング素子が、後述するPWM制御部40から出力されるPWM信号によりPWM制御されることで、供給される平滑後直流を、U相とV相とW相とからなる三相交流に変換し、変換した三相交流をモータ80に供給することでモータ30を駆動する。
図1に示すように、U相の交流成分は、電源線21を通ってモータ80に供給され、V相の交流成分は、電源線22を通ってモータ80に供給され、W相の交流成分は、電源線23を通ってモータ80に供給される。
【0045】
図2は、インバータ20からモータ80に供給される三相交流の電流波形を示す波形図である。
【0046】
図2に示すように、インバータ20は、PWM制御部40から出力されるPWM信号により、スイッチング素子がPWM制御されることで、互いに位相が120度ずつずれた正弦波成分を主成分とするU相電流とV相電流とW相電流とを、それぞれ、電源線21と電源線22と電源線23とを通して、モータ80に供給する。
【0047】
また、
図2に示すように、U相電流とV相電流とW相電流とには、それぞれ、正弦波成分に加えて、スイッチング素子が行うスイッチング動作に由来するノイズ成分が含まれる。これらノイズ成分の一部は、モータ80に供給される三相交流の同相信号成分となり、端子雑音電圧強度に影響を与える。
【0048】
前述したように、U相電流の正弦波成分と、V相電流の正弦波成分と、W相電流の正弦波成分とは、互いに位相が120度ずつずれている。このため、U相電流とV相電流とW相電流との総和であるコモン電流における正弦波成分は、互いに打ち消しあってゼロとなる。よって、コモン電流は、U相電流のノイズ成分と、V相電流のノイズ成分と、W相電流のノイズ成分との総和となる。すなわち、インバータ20からモータ80に、三相交流における同相信号成分として伝播するスイッチングノイズがコモン電流となる。
【0049】
キルヒホッフの電流保存則により、コモン電流は、モータ80のアースから出力される。そして、コモン電流は、アース配線のインピーダンス、接地先のインピーダンス等により電圧信号に変換される。三相交流における同相信号成分は、インバータ20からモータ80に伝播し、さらに、モータ80のアースを通じてモータ駆動装置10に戻ってくる。このため、インバータ20のスイッチング動作により発生した同相信号成分がモータ駆動装置10に戻ってくるまでに遅延が生じる。従って、モータ駆動装置10に同相信号が戻ってくるタイミングでは、インバータ20に電力を供給する1以上の電源には、インバータ20からモータ80に供給される三相交流における同相信号成分が重畳していない。このため、インバータ20に電力を供給する電源の1以上の電源線のうちの少なくとも1つの電源線の電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅を検出することで、端子雑音電圧強度に影響を与える、モータ80に供給される三相交流における同相信号成分の強度を検出することができる。
【0050】
再び
図1に戻り、モータ駆動装置10の説明を続ける。
【0051】
第1のフィルタ51は、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位とにおける第1の所定の周波数成分を除去する。第1のフィルタ51は、例えば、ハイパスフィルタであってもよいし、ローパスフィルタであってもよいし、バンドパスフィルタであってもよいし、バンドエリミネーションフィルタであってもよい。ここでは、一例として、第1のフィルタ51は、2MHz以下の周波数成分を除去するハイパスフィルタであるとして説明する。
【0052】
第2のフィルタ52は、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位とにおける第2の所定の周波数成分を除去する。第2の所定の周波数成分は、例えば、第1の所定の周波数成分と排他的であってもよいし、第1の所定の周波数成分の少なくとも一部を含んでもよい。第2のフィルタ52は、例えば、ハイパスフィルタであってもよいし、ローパスフィルタであってもよいし、バンドパスフィルタであってもよいし、バンドエリミネーションフィルタであってもよい。ここでは、一例として、第2のフィルタ52は、2MHzより高い周波数成分を除去するローパスフィルタであるとして説明する。
【0053】
第1の検出器31は、第1のフィルタ51により第1の所定の周波数成分が除去された、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位との間の振幅を検出し、検出結果を出力する。ここでは、第1の検出器31は、第1のフィルタ51により第1の所定の周波数成分が除去された、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位との間のピーク振幅を検出するとして説明する。しかしながら、第1の検出器31は、上記振幅を検出することができれば、必ずしも、上記ピーク振幅を検出する構成に限定される必要はない。
【0054】
第2の検出器32は、第2のフィルタ52により第2の所定の周波数成分が除去された、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位との間の振幅を検出し、検出結果を出力する。ここでは、第2の検出器32は、第2のフィルタ52により第2の所定の周波数成分が除去された、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位との間のピーク振幅を検出するとして説明する。しかしながら、第2の検出器32は、上記振幅を検出することができれば、必ずしも、上記ピーク振幅を検出する構成に限定される必要はない。
【0055】
PWM制御部40は、モータ80が所望の動作をするように、インバータ20を、PWM信号を用いてPWM制御する。PWM制御部40は、第1の検出器31により検出された振幅と、第2の検出器により検出された振幅とに基づいて、PWM信号の波形を制御する。ここで、所望の動作は、例えば、予め定められた動作であってもよいし、例えば、外部から指定される動作であってもよい。例えば、モータ駆動装置10が、ユーザからの入力操作を受け付ける入力装置を備えている場合には、所望の動作は、入力装置によって受け付けられた、ユーザによるモータ80の動作を指定する入力操作により定められてもよい。例えば、モータ駆動装置10が、外部装置と通信する通信装置を備えている場合には、所望の動作は、通信装置によって受信された、外部装置(例えば、モータ駆動装置10の上位コントローラ)からの動作指令により定められてもよい。
【0056】
PWM制御部40は、例えば、マイクロプロセッサ(図示せず)とメモリ(図示せず)とを含んで構成され、マイクロプロセッサがメモリに記憶されるプログラムを実行することで、各種機能を実現するとしてもよい。
【0057】
図1に示すように、PWM制御部40は、周波数制御部41と、傾き制御部42と、ゲート駆動回路43とを備える。
【0058】
ゲート駆動回路43は、モータ80に所望の動作をさせるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号をインバータ20に出力する。
【0059】
ゲート駆動回路43は、モータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号として、互いに異なる複数のPWM信号を生成する機能を有する。複数のPWM信号には、互いに周波数が異なり、互いに、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとが等しい複数のPWM信号が含まれる。ゲート駆動回路43は、周波数制御部41から出力される周波数指示信号(後述)に基づいて、モータ80に1の所望の動作をさせるための、互いに周波数が異なり、互いに、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとが等しい複数のPWM信号の中から1つのPWM信号を決定し、決定したPWM信号を出力する。また、複数のPWM信号には、互いに、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が異なり、互いに周波数が等しい複数のPWM信号が含まれる。ゲート駆動回路43は、傾き制御部42から出力される傾き指示信号(後述)に基づいて、モータ80に1の所望の動作をさせるための、互いに、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が異なり、互いに周波数が等しい複数のPWM信号の中から1つのPWM信号を決定し、決定したPWM信号を出力する。
【0060】
図3Aおよび
図3Bは、モータ80が1の所望の動作を行う場合の、コモン電流におけるスイッチングノイズの周波数と、観測される端子雑音電圧強度との関係を示すシミュレーション結果である。
図3Aにおいて、横軸は、コモン電圧におけるスイッチングノイズの周波数であり、縦軸は、端子雑音電圧強度であり、fswは、PWM信号の周波数である。ここでは、一つの動作条件時のPWM信号の周波数を基準値として設定し、基準値の1倍~4倍まで周波数を変化させた場合の依存性を示す。
図3Bにおいて、横軸は、コモン電圧におけるスイッチングノイズの周波数であり、縦軸は、端子雑音電圧強度であり、DV/DTは、PWM信号の立ち上がり、および立下りエッジの傾きである。ここでも、一つの動作条件時のDV/DTの値を基準値として設定し、基準値の0.7倍~1.8倍までDV/DTの値を変化させた場合の依存性を示す。
【0061】
図3Aに示すように、コモン電圧におけるスイッチングノイズの周波数の高周波数領域(ここでは、2MHzより高いの周波数領域)と低周波数領域(ここでは、2MHz以下の周波数領域)との双方の周波数領域において、PWM信号の周波数が高い程、端子雑音電圧強度が高くなる。一方で、前述したように、PWM信号の周波数が高い程、モータ駆動装置10におけるスイッチング損失が少なくなる。このため、ゲート駆動回路43が、許容される端子雑音電圧強度の範囲の中で、できるだけ高い周波数のPWM信号を出力することが望まれる。
【0062】
図3Bに示すように、コモン電圧におけるスイッチングノイズの周波数の高周波数領域において、PWM信号の立ち上がりまたは立下りエッジの傾きが急峻である程、端子雑音電圧強度が高くなる。一方で、前述したように、PWM信号の立ち上がりまたは立ち下がりエッジの傾きが急峻である程、モータ駆動装置10におけるスイッチング損失が少なくなる。このため、ゲート駆動回路43が、許容される端子雑音電圧強度の範囲の中で、できるだけPWM信号の立ち上がりまたは立ち下がりエッジの傾きが急峻なPWM信号を出力することが望まれる。
【0063】
再び
図1に戻り、モータ駆動装置10の説明を続ける。
【0064】
周波数制御部41は、第1の検出器31により検出された振幅に基づいて、ゲート駆動回路43が出力するPWM信号の周波数を決定するための周波数指示信号を、ゲート駆動回路43に出力する。周波数制御部41は、例えば、第1の検出器31により検出された振幅が、第1の所定値以上である場合に、PWM信号の周波数を1段階下げる旨を示す周波数指示信号を出力するとしてもよい。
【0065】
傾き制御部42は、第2の検出器32により検出された振幅に基づいて、ゲート駆動回路43が出力するPWM信号の、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を決定するための傾き指示信号を、ゲート駆動回路43に出力する。傾き制御部42は、例えば、第2の検出器32により検出された振幅が、第2の所定値以上である場合に、PWM信号の、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を一段階下げる旨を示す傾き指示信号を出力するとしてもよい。
【0066】
<動作>
以下、上記構成のモータ駆動装置10が行う動作について説明する。
【0067】
モータ駆動装置10は、インバータ20に電力を供給する電源の1以上の電源線のうちの少なくとも1つの電源線である電源線62の電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅に基づいて、PWM信号の波形を制御するノイズレベル調整処理を行う。
【0068】
図4は、モータ駆動装置10が行うノイズレベル調整処理のフローチャートである。
【0069】
ノイズレベル調整処理は、例えば、ゲート駆動回路43がモータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号を出力している場合において、モータ駆動装置10を利用するユーザから、モータ駆動装置10に対して、ノイズレベル調整処理を開始する旨の操作がなされることで開始される。
【0070】
ノイズレベル調整処理が開始されると、ゲート駆動回路43は、モータ80に1の所望の動作をさせるために出力する複数のPWM信号の中から、周波数と、立ち上がりおよび立ち下がりエッジの傾きとが最大となるPWM信号を、インバータ20へ出力するPWM信号として決定し、決定したPWM信号の出力を開始する(ステップS10)。
【0071】
決定したPWM信号の出力が開始されると、周波数制御部41は、第1の検出器31により検出された振幅が、第1の所定値以上であるか否かを調べる(ステップS20)。
【0072】
ステップS20の処理において、第1の検出器31により検出された振幅が、第1の所定値以上である場合に(ステップS20:Yes)、周波数制御部41は、PWM信号の周波数を1段階下げる旨を示す周波数指示信号を、ゲート駆動回路43に出力する。
【0073】
PWM信号の周波数を1段階下げる旨を示す周波数指示信号が出力されると、ゲート駆動回路43は、モータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号において、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの傾きを保ったまま周波数を下げることが可能であるか否かを調べる(ステップS30)。
【0074】
ステップS30の処理において、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの傾きを保ったまま周波数を下げることが可能である場合に(ステップS30:Yes)、ゲート駆動回路43は、モータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号において、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの傾きを保ったまま周波数が1段階下がったPWM信号を、インバータ20へ出力するPWM信号として決定し、決定したPWM信号の出力を開始する(ステップS40)。
【0075】
ステップS40の処理が終了すると、モータ駆動装置10は、再びステップS20の処理を行う。
【0076】
ステップS20の処理において、第1の検出器31により検出された振幅が、第1の所定値以上でない場合に(ステップS20:No)、傾き制御部42は、第2の検出器32により検出された振幅が、第2の所定値以上であるか否かを調べる(ステップS50)。
【0077】
ステップS50の処理において、第2の検出器32により検出された振幅が、第2の所定値以上である場合に(ステップS50:Yes)、傾き制御部42は、PWM信号の、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を一段階下げる旨を示す傾き指示信号を、ゲート駆動回路43に出力する。
【0078】
PWM信号の、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を一段階下げる旨を示す傾き指示信号が出力されると、ゲート駆動回路43は、モータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号において、周波数を保ったまま立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を下げることが可能であるか否かを調べる(ステップS60)。
【0079】
ステップS60の処理において、周波数を保ったまま立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を下げることが可能である場合に(ステップS60:Yes)、ゲート駆動回路43は、モータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号において、周波数を保ったまま立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が一段階下がったPWM信号を、インバータ20へ出力するPWM信号として決定し、決定したPWM信号の出力を開始する(ステップS70)。
【0080】
ステップS70の処理が終了すると、モータ駆動装置10は、再びステップS50の処理を行う。
【0081】
ステップS30の処理において、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの傾きを保ったまま周波数を下げることが可能でない場合(ステップS30:No)と、ステップS60の処理において、周波数を保ったまま立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を下げることが可能でない場合(ステップS60:No)とに、モータ駆動装置10は、外部に、ノイズレベルを適切に調整することができない旨を示すアラーム信号を出力する(ステップS80)。
【0082】
ステップS50の処理において、第2の検出器32により検出された振幅が、第2の所定値以上でない場合(ステップS50:No)と、ステップS80の処理が終了した場合とに、モータ駆動装置10は、そのノイズレベル調整処理を終了する。
【0083】
なお、モータ駆動装置10は、所望の動作が複数ある場合には、複数の所望の動作それぞれに対して、ノイズレベル調整処理を行うとしてもよい。この場合、ゲート駆動回路43は、例えば、複数の所望の動作それぞれに対して行ったノイズレベル調整処理により調整されたPWM信号の波形を記憶するメモリを有し、所望の動作が切り替わる毎に、メモリに記憶されるPWM信号の波形通りのPWM信号を、インバータ20へ出力するとしてもよい。
【0084】
また、モータ駆動装置10は、所望の動作が範囲を持つ場合には、所望の動作の範囲内の複数の動作ポイントに対して、ノイズレベル調整処理を行うとしてもよい。この場合、ゲート駆動回路43は、例えば、複数の動作ポイントそれぞれに対して行ったノイズレベル調整処理により調整されたPWM信号の波形のうち、最も周波数が低いPWM信号をインバータ20に出力するとしてもよいし、例えば、最も立ち上がりおよび立ち下がりエッジの傾きが緩やかなPWM信号をインバータ20に出力するとしてもよいし、例えば、最も周波数が低く、かつ、最も立ち上がりおよび立ち下がりエッジの傾きが緩やかなPWM信号をインバータ20に出力するとしてもよい。
【0085】
<考察>
前述したように、同相信号がモータ80からアースを通じてモータ駆動装置10に戻ってくるタイミングでは、インバータ20に電力を供給する1以上の電源(ここでは、平滑回路60と整流回路70とからなる直流電源と、三相交流電源90)には、インバータ20からモータ80に供給される三相交流における同相信号成分が重畳していない。このため、モータ駆動装置10は、上記直流電源からインバータ20に直流を供給する電源線62の電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅を検出することで、端子雑音電圧強度に影響を与える、モータ80に供給される三相信号における同相信号の強度を検出することができる。このため、モータ駆動装置10に対して、予め、第1の所定値と第2の所定値とを、モータ駆動装置10から放出されるスイッチングノイズが、モータ駆動装置10の周囲環境に応じて所望されるノイズレベルを超えないレベルとなるような値に設定しておき、この状態で、モータ駆動装置10に、ノイズレベル調整処理を実行させることで、モータ駆動装置10は、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、周波数が過剰に低くなることがなく、かつ、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとが過剰に緩やかになることがないPWM信号を出力することができる。このように、モータ駆動装置10は、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0086】
また、モータ駆動装置10は、ノイズレベル調整処理を行うことで、PWM信号の周波数が変化するように行うPWM信号の波形の制御を、PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下りエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように行うPWM信号の波形の制御よりも優先して行うことができる。
【0087】
図3Aに示すように、PWM信号の周波数を変更することで、コモン電圧におけるスイッチングノイズの周波数の高周波数領域と低周波数領域との双方の周波数領域において、端子雑音電圧強度を低減ことができる。一方で、
図3Bに示すように、PWM信号の立ち上がりまたは/および立下りエッジの傾きを変更することで、コモン電圧におけるスイッチングノイズの周波数の高周波数領域のみにおいて、端子雑音電圧強度を低減ことができる。これらのことから、PWM信号の周波数が変化するように行うPWM信号の波形の制御を、PWM信号の立ち上がりエッジの傾きと立ち下りエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が変化するように行うPWM信号の波形の制御よりも優先して行うことで、効果的にPWM信号の波形の調整を行うことができることがわかる。
【0088】
従って、モータ駆動装置10は、ノイズレベル調整処理を行うことで、効果的にPWM信号の波形の調整を行うことができる。
【0089】
(実施の形態2)
以下、実施の形態1に係るモータ駆動装置10の一部が変更されて構成される実施の形態2に係るモータ駆動装置について説明する。
【0090】
以下では、実施の形態2に係るモータ駆動装置について、実施の形態1に係るモータ駆動装置10の構成要素と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、モータ駆動装置10との相違点を中心に説明する。
【0091】
図5は、実施の形態2に係るモータ駆動システム1Aの構成例を示すブロック図である。
【0092】
図5に示すように、モータ駆動システム1Aは、実施の形態1に係るモータ駆動システム1に対して、モータ駆動装置10が、モータ駆動装置10Aに変更されて構成される。また、
図5に示すように、モータ駆動装置10Aは、モータ駆動装置10に対して、結合回路100が追加され、第1のフィルタ51が第1のフィルタ51Aに変更され、第2のフィルタ52が第2のフィルタ52Aに変更されて構成される。
【0093】
結合回路100は、三相交流電源90の、L1相の交流成分をモータ駆動装置10Aに供給する電源線91と、L2相の交流成分をモータ駆動装置10Aに供給する電源線92と、L3相の交流成分をモータ駆動装置10Aに供給する電源線93とを、コンデンサを介して結合する。以下では、結合回路100により、電源線91と電源線92と電源線93とが結合されることで得られる電位を、三相交流結合電位と称する。
【0094】
第1のフィルタ51Aは、実施の形態1に係る第1のフィルタ51と同様のフィルタ特性を有するフィルタである。第1のフィルタ51が、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位とにおける第1の所定の周波数成分を除去するのに対して、第1のフィルタ51Aは、モータ80のアースの電位と、三相交流結合電位とにおける第1の所定の周波数成分を除去する。
【0095】
第2のフィルタ52Aは、実施の形態1に係る第2のフィルタ52と同様のフィルタ特性を有するフィルタである。第2のフィルタ52が、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位とにおける第2の所定の周波数成分を除去するのに対して、第2のフィルタ52Aは、モータ80のアースの電位と、三相交流結合電位とにおける第2の所定の周波数成分を除去する。
【0096】
<考察>
実施の形態1において前述したように、同相信号がモータ80からアースを通じてモータ駆動装置10に戻ってくるタイミングでは、インバータ20の電力を供給する電源である三相交流電源90には、インバータ20からモータ80に供給される三相交流における同相信号成分が重畳していない。このため、モータ駆動装置10Aは、三相交流結合電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅を検出することで、端子雑音電圧強度に影響を与える、モータ80に供給される三相信号における同相信号の強度を検出することができる。
【0097】
従って、モータ駆動装置10Aは、実施の形態1に係るモータ駆動装置10と同様に、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0098】
(実施の形態3)
以下、実施の形態1に係るモータ駆動装置10の一部が変更されて構成される実施の形態3に係るモータ駆動装置について説明する。
【0099】
以下では、実施の形態3に係るモータ駆動装置について、実施の形態1に係るモータ駆動装置10の構成要素と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、モータ駆動装置10との相違点を中心に説明する。
【0100】
図6は、実施の形態3に係るモータ駆動システム1Bの構成例を示すブロック図である。
【0101】
図6に示すように、モータ駆動システム1Bは、実施の形態1に係るモータ駆動システム1に対して、モータ駆動装置10が、モータ駆動装置10Bに変更されて構成される。また、
図6に示すように、モータ駆動装置10Bは、モータ駆動装置10に対して、第2の検出器32と第2のフィルタ52とが削除され、傾き制御部42が傾き制御部42Bに変更されて構成される。また、傾き制御部42が傾き制御部42Bに変更されることに伴い、PWM制御部40がPWM制御部40Bに変更されている。
【0102】
傾き制御部42Bは、第1の検出器31により検出された振幅に基づいて、ゲート駆動回路43が出力するPWM信号の、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を決定するための傾き指示信号を、ゲート駆動回路43に出力する。傾き制御部42Bは、例えば、第1の検出器31により検出された振幅が、第2の所定値以上である場合に、PWM信号の、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方を一段階下げる旨を示す傾き指示信号を出力するとしてもよい。
【0103】
<考察>
上記構成のモータ駆動装置10Bは、実施の形態1に係るモータ駆動装置10と同様に、電源線62の電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅を検出することで、端子雑音電圧強度に影響を与える、モータ80に供給される三相信号における同相信号の強度を検出することができる。
【0104】
従って、上記構成のモータ駆動装置10Bは、実施の形態1に係るモータ駆動装置10と同様に、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0105】
(実施の形態4)
以下、実施の形態3に係るモータ駆動装置10Bの一部が変更されて構成される実施の形態4に係るモータ駆動装置について説明する。
【0106】
以下では、実施の形態4に係るモータ駆動装置について、実施の形態3に係るモータ駆動装置10Bの構成要素と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、モータ駆動装置10Bとの相違点を中心に説明する。
【0107】
図7は、実施の形態4に係るモータ駆動システム1Cの構成例を示すブロック図である。
【0108】
図7に示すように、モータ駆動システム1Cは、実施の形態3に係るモータ駆動システム1Bに対して、モータ駆動装置10Bが、モータ駆動装置10Cに変更されて構成される。また、
図7に示すように、モータ駆動装置10Cは、モータ駆動装置10Bに対して、第2の検出器32が削除され、第1の検出器31が、第1の検出器31Cに変更されて構成される。
【0109】
第1の検出器31は、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位との間の振幅を検出し、検出結果を出力する。
【0110】
<考察>
上記構成のモータ駆動装置10Cは、実施の形態3に係るモータ駆動装置10Bと同様に、電源線62の電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅を検出することで、端子雑音電圧強度に影響を与える、モータ80に供給される三相信号における同相信号の強度を検出することができる。
【0111】
従って、上記構成のモータ駆動装置10Cは、実施の形態3に係るモータ駆動装置10Bと同様に、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0112】
(実施の形態5)
以下、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cの一部が変更されて構成される実施の形態5に係るモータ駆動装置について説明する。
【0113】
以下では、実施の形態5に係るモータ駆動装置について、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cの構成要素と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、モータ駆動装置10Cとの相違点を中心に説明する。
【0114】
図8は、実施の形態5に係るモータ駆動システム1Dの構成例を示すブロック図である。
【0115】
図8に示すように、モータ駆動システム1Dは、実施の形態4に係るモータ駆動システム1Cに対して、モータ駆動装置10Cが、モータ駆動装置10Dに変更されて構成される。また、
図8に示すように、モータ駆動装置10Dは、モータ駆動装置10Cに対して、傾き制御部42Bが削除され、ゲート駆動回路43がゲート駆動回路43Dに変更されて構成される。また、傾き制御部42Bが削除されること、および、ゲート駆動回路43がゲート駆動回路43Dに変更されることに伴い、PWM制御部40BがPWM制御部40Dに変更されている。
【0116】
ゲート駆動回路43Dは、モータ80に所望の動作をさせるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号をインバータ20に出力する。
【0117】
ゲート駆動回路43Dは、モータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号として、互いに異なる複数のPWM信号を生成する機能を有する。複数のPWM信号には、互いに周波数が異なり、互いに、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとが等しい複数のPWM信号が含まれる。ゲート駆動回路43Dは、周波数制御部41から出力される周波数指示信号に基づいて、モータ80に1の所望の動作をさせるための、互いに周波数が異なり、互いに、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとが等しい複数のPWM信号の中から1つのPWM信号を決定し、決定したPWM信号を出力する。
【0118】
<考察>
上記構成のモータ駆動装置10Dは、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cと同様に、電源線62の電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅を検出することで、端子雑音電圧強度に影響を与える、モータ80に供給される三相信号における同相信号の強度を検出することができる。
【0119】
従って、上記構成のモータ駆動装置10Dは、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cと同様に、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0120】
(実施の形態6)
以下、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cの一部が変更されて構成される実施の形態6に係るモータ駆動装置について説明する。
【0121】
以下では、実施の形態6に係るモータ駆動装置について、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cの構成要素と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、モータ駆動装置10Cとの相違点を中心に説明する。
【0122】
図9は、実施の形態6に係るモータ駆動システム1Eの構成例を示すブロック図である。
【0123】
図9に示すように、モータ駆動システム1Eは、実施の形態4に係るモータ駆動システム1Cに対して、モータ駆動装置10Cが、モータ駆動装置10Eに変更されて構成される。また、
図9に示すように、モータ駆動装置10Eは、モータ駆動装置10Cに対して、周波数制御部41が削除され、ゲート駆動回路43がゲート駆動回路43Eに変更されて構成される。また、周波数制御部41が削除されること、および、ゲート駆動回路43がゲート駆動回路43Eに変更されることに伴い、PWM制御部40BがPWM制御部40Eに変更されている。
【0124】
ゲート駆動回路43Eは、モータ80に所望の動作をさせるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号をインバータ20に出力する。
【0125】
ゲート駆動回路43Eは、モータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号として、互いに異なる複数のPWM信号を生成する機能を有する。複数のPWM信号には、互いに、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が異なり、互いに周波数が等しい複数のPWM信号が含まれる。ゲート駆動回路43Eは、傾き制御部42Bから出力される傾き指示信号に基づいて、モータ80に1の所望の動作をさせるための、互いに、立ち上がりエッジの傾きと立ち下がりエッジの傾きとのうちの少なくとも一方が異なり、互いに周波数が等しい複数のPWM信号の中から1つのPWM信号を決定し、決定したPWM信号を出力する。
【0126】
<考察>
上記構成のモータ駆動装置10Eは、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cと同様に、電源線62の電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅を検出することで、端子雑音電圧強度に影響を与える、モータ80に供給される三相信号における同相信号の強度を検出することができる。
【0127】
従って、上記構成のモータ駆動装置10Eは、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cと同様に、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0128】
(実施の形態7)
以下、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cの一部が変更されて構成される実施の形態7に係るモータ駆動装置について説明する。
【0129】
以下では、実施の形態7に係るモータ駆動装置について、実施の形態4に係るモータ駆動装置10Cの構成要素と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、モータ駆動装置10Cとの相違点を中心に説明する。
【0130】
図10は、実施の形態6に係るモータ駆動システム1Fの構成例を示すブロック図である。
【0131】
図10に示すように、モータ駆動システム1Fは、実施の形態4に係るモータ駆動システム1Cに対して、モータ駆動装置10Cが、モータ駆動装置10Fに変更されて構成される。また、
図10に示すように、モータ駆動装置10Fは、モータ駆動装置10Cに対して、周波数制御部41と、傾き制御部42Bとが削除され、ゲート駆動回路43がゲート駆動回路43Fに変更され、第1の検出器31Cが第1の検出器31Fに変更されて構成される。また、周波数制御部41と傾き制御部42Bとが削除されること、および、ゲート駆動回路43がゲート駆動回路43Fに変更されることに伴い、PWM制御部40BがPWM制御部40Fに変更されている。
【0132】
第1の検出器31Eは、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位との間の振幅を検出し、検出結果を出力する。第1の検出器31は、例えば、モータ駆動装置10Fを利用するユーザに対して画像を表示するディスプレイを備え、ディスプレイに、検出結果を示す文字列または波形を表示してもよい。また、第1の検出器31Fは、例えば、モータ駆動装置10Fを利用するユーザに対して音声を出力するスピーカを備え、スピーカから、検出結果を示す音声を出力してもよい。
【0133】
ゲート駆動回路43Fは、モータ80に所望の動作をさせるためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号をインバータ20に出力する。
【0134】
ゲート駆動回路43Fは、モータ80に1の所望の動作をさせるためのPWM信号として、互いに異なる複数のPWM信号を生成する機能を有する。
【0135】
ゲート駆動回路43Fは、モータ駆動装置10Fを利用するユーザからの指示に基づいて複数のPWM信号の中から1つのPWM信号を決定し、決定したPWM信号を出力する。ここで、ユーザからの指示は、例えば、モータ駆動装置10Fが、ユーザからの入力操作を受け付ける入力装置を備えている場合には、入力装置によって受け付けられるとしてもよい。また、ユーザからの指示は、例えば、モータ駆動装置10Fが、外部装置と通信する通信装置を備えている場合には、通信装置によって外部装置から受信されるとしてもよい。
【0136】
<考察>
上記構成のモータ駆動装置10Fは、電源線62の電位と、モータ80のアースの電位との間の振幅を検出することで、端子雑音電圧強度に影響を与える、モータ80に供給される三相信号における同相信号の強度を検出する。このため、モータ駆動装置10Fを利用するユーザは、モータ駆動装置10Fから出力される、第1の検出器31Fによる検出結果を確認しながら、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切に、モータ80に1の所望の動作をさせるための複数のPWM信号の中から1つのPWM信号を決定することができる。
【0137】
このように、モータ駆動装置10Fによると、周囲環境に応じた所望のノイズレベルを超えない範囲において、適切にスイッチング損失を低減することができる。
【0138】
(他の実施の形態)
以上、本開示の一態様に係るモータ駆動装置について、実施の形態1~実施の形態7に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形をこれら実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0139】
以下に、本開示の一態様に係るモータ駆動装置の変形例の一例を記載する。
【0140】
(1)実施の形態1において、第1のフィルタ51は、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位とにおける第1の所定の周波数成分を除去するとして説明した。これに対して、他の構成例として、第1のフィルタ51は、モータ80のアースの電位と、電源線61の電位とにおける第1の所定の周波数成分を除去する構成例も考えられる。この場合、第1の検出器31は、第1のフィルタ51により第1の所定の周波数成分が除去された、モータ80のアースの電位と、電源線61の電位との間の振幅を検出することとなる。
【0141】
また、実施の形態1において、第2のフィルタ52は、モータ80のアースの電位と、電源線62の電位とにおける第2の所定の周波数成分を除去するとして説明した。これに対して、他の構成例として、第2のフィルタ52は、モータ80のアースの電位と、電源線61の電位とにおける第2の所定の周波数成分を除去する構成例も考えられる。この場合、第2の検出器32は、第2のフィルタ52により第2の所定の周波数成分が除去された、モータ80のアースの電位と、電源線61の電位との間の振幅を検出することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本開示は、モータを駆動するモータ駆動装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0143】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F モータ駆動システム
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F モータ駆動装置
20 インバータ
21、22、23、61、62、91、92、93 電源線
31、31C、31E、31F 第1の検出器
32 第2の検出器
40、40B、40D、40E、40F PWM制御部
41 周波数制御部
42、42B 傾き制御部
43、43D、43E、43F ゲート駆動回路
51、51A 第1のフィルタ
52、52A 第2のフィルタ
60 平滑回路
70 整流回路
80 モータ
90 三相交流電源
100 結合回路