(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
(21)【出願番号】P 2020150828
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】稲本 吉将
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-064991(JP,A)
【文献】特開2005-268292(JP,A)
【文献】特開平08-236503(JP,A)
【文献】特開2001-107272(JP,A)
【文献】特開2004-296477(JP,A)
【文献】特開平07-331460(JP,A)
【文献】特開2002-083804(JP,A)
【文献】特開2004-356575(JP,A)
【文献】特開2009-081271(JP,A)
【文献】特開2009-076711(JP,A)
【文献】特開2007-035860(JP,A)
【文献】特開2005-032851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン層と、前記シリコン層の上に形成されたアルミナ層と、前記アルミナ層の上または上方に前記アルミナ層の少なくとも一部を露出させるように形成されたマスクと、を備える基板を、プラズマ処理装置が備えるステージに載置する工程と、
前記アルミナ層の前記マスクから露出している部分をエッチングすることにより前記シリコン層を露出させるプラズマエッチング工程と、を備え、
前記プラズマエッチング工程が、BCl
3を含むハロゲン系ガス、および、酸素(O
2)を含む酸化性ガスから生成されるプラズマに前記シリコン層を晒すことを含む、プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記プラズマエッチング工程が、
前記シリコン層が露出するまで前記アルミナ層をエッチングする第1エッチング工程と、
前記第1エッチング工程により露出した前記シリコン層がオーバーエッチングされる第2エッチング工程と、を備え、
前記第1エッチング工程が、BCl
3を少なくとも含む第1のエッチングガスから生成されるプラズマに前記基板を晒すことにより行われ、
前記第2エッチング工程が、BCl
3と酸素(O
2)とを少なくとも含む第2のエッチングガスから生成されるプラズマに前記基板を晒すことにより行われる、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記第1エッチング工程が、
BCl
3を少なくとも含む第3のエッチングガスから生成されるプラズマに前記基板を晒す第3エッチング工程と、
前記第3エッチング工程の後、BCl
3と酸素(O
2)とを少なくとも含む第4のエッチングガスから生成されるプラズマに前記基板を晒す第4エッチング工程と、を有し、
前記第3のエッチングガスが酸素(O
2)を含まないか、前記第3のエッチングガスに含まれる酸素ガスの分圧は、前記第4のエッチングガスに含まれる酸素ガスの分圧よりも小さい、請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記プラズマエッチング工程において、前記ステージには高周波電力が印加される、請求項1~3のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記第1エッチング工程および前記第2エッチング工程において、前記ステージには高周波電力が印加され、
前記第2エッチング工程において前記ステージに印加される高周波電力が、前記第1エッチング工程において前記ステージに印加される高周波電力よりも小さい、請求項2または3に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記ハロゲン系ガスが、HCl、Cl
2、SiCl
4、HBr、Br
2、BBr
3、およびSiBr
4からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記酸化性ガスが、O
3、H
2O
2、H
2O、CO
x、SO
x、NO
x、およびN
2O(xは1以上の整数)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理方法に関し、特にプラズマ環境下でアルミナ膜をエッチングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ(酸化アルミニウム)膜をエッチング除去する方法としては、ハロゲン系ガスを用いたイオン性エッチングが主に利用されている。特許文献1では、BCl3とCOの混合ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)によりポリシリコン層に形成されたアルミナ膜を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコン層の上に形成されたアルミナ膜をイオン性エッチングにより除去する場合、オーバーエッチング時に露出した下地膜(例えば、シリコン層)とハロゲン系ガスが反応し、反応生成物が残存アルミナ膜の側壁に付着し得る。この反応生成物は、ウェット洗浄で除去することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面は、シリコン層と、前記シリコン層の上に形成されたアルミナ層と、前記アルミナ層の上または上方に前記アルミナ層の少なくとも一部を露出させるように形成されたマスクと、を備える基板を、プラズマ処理装置が備えるステージに載置する工程と、前記アルミナ層の前記マスクから露出している部分をエッチングすることにより前記シリコン層を露出させるプラズマエッチング工程と、を備え、前記プラズマエッチング工程が、BCl3を含むハロゲン系ガス、および、酸素(O2)を含む酸化性ガスから生成されるプラズマに前記シリコン層を晒すことを含む、プラズマ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シリコン層の上に形成されたアルミナ膜のエッチングにおいて、反応生成物の付着が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】従来の方法を用いて、シリコン層上のアルミナ層がエッチングされる様子を示す基板の構造断面図である。
【
図1B】従来の方法を用いて、シリコン層上のアルミナ層がエッチングされる様子を示す基板の構造断面図である。
【
図2】本発明の実施形態のプラズマ処理方法を示すフローチャートの一例である。
【
図3A】本発明の実施形態のプラズマ処理方法を用いて、シリコン層上のアルミナ層がエッチングされる様子を示す基板の構造断面図である。
【
図3B】本発明の実施形態のプラズマ処理方法を用いて、シリコン層上のアルミナ層がエッチングされる様子を示す基板の構造断面図である。
【
図4】本発明の実施形態のプラズマ処理方法を示すフローチャートの別の例である。
【
図5】本発明の実施形態のプラズマ処理方法で用いられるプラズマ処理装置(エッチング装置)の構成の一例を模式的に示す断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るプラズマ処理方法は、シリコン層と、シリコン層の上に形成されたアルミナ層と、アルミナ層の上または上方にアルミナ層の少なくとも一部を露出させるように形成されたマスクと、を備える基板を、プラズマ処理装置が備えるステージに載置する工程と、アルミナ層のマスクから露出している部分をエッチングすることによりシリコン層を露出させるプラズマエッチング工程と、を備える。プラズマエッチング工程が、BCl3を含むハロゲン系ガス、および、酸素(O2)を含む酸化性ガスから生成されるプラズマにシリコン層を晒すことを含む。
【0009】
ハロゲン系ガスとしては、BCl3のほか、HCl、Cl2、SiCl4、HBr、Br2、BBr3、およびSiBr4からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。酸化性ガスとしては、O2のほか、O3、H2O2、H2O、COx、SOx、NOx、およびN2O(xは1以上の整数)からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。
【0010】
シリコン層の上に形成されたアルミナ層は、BCl3を含むハロゲン系ガスを用いたプラズマエッチングにより除去され得る。しかしながら、シリコン層が露出した状態でプラズマエッチングが行われるオーバーエッチングの状態になると、ハロゲン系ガスとシリコン層とが反応し、反応生成物がマスクされたアルミナ層の側壁に付着し得る。例えば、BCl3を含むハロゲン系ガスを用いる場合、反応生成物は、Si、B、Cl、および、マスクに由来するC(炭素)を含み得る。反応生成物は、後工程(例えば、ウェット洗浄工程)で除去し難い。
【0011】
また、アルミナ層の側壁に反応生成物が付着すると、側壁近傍におけるシリコン層のエッチングが妨げられ、高いアスペクト比でシリコン層を深掘りすることが難しくなる。
【0012】
しかしながら、本発明のプラズマ処理方法では、プラズマエッチング工程において、酸素(O2)ガスに晒された雰囲気でオーバーエッチングが行われることによって、アルミナ層の側壁への反応生成物の付着が抑制される。
【0013】
エッチングガスに酸素(O2)ガスが含まれることで、シリコン層の表面にシリコン酸化膜が形成され易くなり、シリコン層がエッチングされ難くなる。また、ハロゲン系ガスとシリコン層との反応が抑制され、反応生成物が生じ難くなる。加えて、酸素(O2)ガスは、反応生成物を分解する作用を奏し得る。よって、反応生成物の付着が抑制される。
【0014】
酸素(O2)を含む酸化性ガスは、プラズマエッチング工程中において、少なくともシリコン層のオーバーエッチングが想定される期間、エッチングガスに加えられる。しかしながら、シリコン層がオーバーエッチングされる前のアルミナ層のエッチングの段階から、酸素(O2)を含む酸化性ガスをエッチングガスに添加してもよい。ただし、酸素(O2)を含む条件でアルミナ層のエッチングを行う場合、アルミナ層のエッチング速度が低下する。アルミナ層のエッチング速度を高く維持するため、酸化性ガスの添加は、アルミナ層のエッチングの途中であってシリコン層がオーバーエッチングされる直前から開始することが好ましい。
【0015】
プラズマエッチング工程は、シリコン層が露出するまでアルミナ層をエッチングする第1エッチング工程(アルミナ層のエッチング工程)と、第1エッチング工程により露出したシリコン層がオーバーエッチングされる第2エッチング工程(シリコン層のオーバーエッチング工程)と、を備えてもよい。ここで、第1エッチング工程は、BCl3を少なくとも含む第1のエッチングガスから生成されるプラズマに基板を晒すことにより行われ、第2エッチング工程が、BCl3と酸素(O2)とを少なくとも含む第2のエッチングガスから生成されるプラズマに基板を晒すことにより行われる。これにより、アルミナ層のエッチング速度を高く維持できるとともに、反応生成物の付着が抑制される。
【0016】
第1のエッチングガスに、酸素(O2)が含まれていてもよい。しかしながら、アルミナ層のエッチング速度を高く維持するとともにマスクの消耗を小さくする観点からは、上記の通り、第1のエッチングガスは、酸素(O2)を含まないか、第1のエッチングガスに含まれる酸素ガスの濃度(分圧)を第2のエッチングガスよりも低くすることが好ましい。
【0017】
第1エッチング工程において、第1のエッチングガスに含まれる酸素の濃度(分圧)を段階的に変化させ、アルミナ層のエッチングが進行するに従って酸素の濃度(分圧)が増加するように、第1のエッチングガスの組成を変化させてもよい。
【0018】
好ましくは、第1エッチング工程は、BCl3を少なくとも含む第3のエッチングガスから生成されるプラズマに基板を晒す第3エッチング工程と、第3エッチング工程の後、BCl3と酸素(O2)とを少なくとも含む第4のエッチングガスから生成されるプラズマに基板を晒す第4エッチング工程と、を有する。この場合、第3のエッチングガスが酸素(O2)を含まないか、第3のエッチングガスに含まれる酸素ガスの分圧は、第4のエッチングガスに含まれる酸素ガスの分圧よりも小さい。
【0019】
本実施形態の方法では、アルミナ層が除去されてシリコン層が露出したことを検出すると、エッチングガスの組成を第1のエッチングガスから第2のエッチングガスに切り替える制御が行われ得る。しかしながら、実際にチャンバ内のガス組成が変更されるにはある程度の時間が必要であり、また、基板面内においてアルミナ層の膜厚やエッチング速度に面内分布が存在することにより、切り替え時において、露出したシリコン層が第1のエッチングガスに晒される場合がある。よって、第1のエッチングガスが酸素(O2)を含んでいない場合、オーバーエッチングが検出された直後において、ハロゲン系ガスとシリコン層とが反応する場合があり、反応生成物がアルミナ層の側壁に付着し得る。
【0020】
しかしながら、第1エッチング工程を第3エッチング工程と第4エッチング工程の2回に分けて行うことで、シリコン層の露出が検出された時点で、露出したシリコン層は第4のエッチングガスに晒されている。第4のエッチングガスは酸素(O2)を含むため、ハロゲン系ガスとシリコン層との反応生成物の付着を確実に抑制することができる。また、アルミナ層のエッチングの大半は、酸素分圧の小さな第3のエッチングガスで行うことができる。よって、アルミナ層のエッチング速度が低下することも抑制される。
【0021】
第3エッチング工程から第4エッチング工程への移行は、例えば、所定の膜厚のアルミナ層のエッチング除去が完了した時点で行うこととしてよい。所定の膜厚は、例えば、アルミナ層の全厚の80%~95%であり得る。
【0022】
第4のエッチングガスの酸素濃度は、第2のエッチングガスの酸素濃度と同じであってもよい。第4のエッチングガスは、第2のエッチングガスと同じであってもよい。つまり、オーバーエッチングの検出後もそのまま第4のエッチングガスによるエッチングを継続してもよい。
【0023】
なお、アルミナ層が除去されてシリコン層が露出したことの検出には、例えば、プラズマプロセスモニタを用いることができる。シリコンに起因するプラズマ発光を検出することにより、アルミナ層が除去されてシリコン層が露出したこと、すなわち、シリコン層のオーバーエッチングが開始されたことを判断できる。また、チャンバから排気されるガスの組成を分析することで、アルミナ層のエッチングの進行状況を測定することができ、エッチング除去されたアルミナ層の厚みを推定することができる。
【0024】
プラズマエッチング工程において、ステージには高周波電力が印加されることが望ましい。高周波電力の印加により、ステージとプラズマとの間に自己バイアス電位が生じ、プラズマ中のイオンまたはラジカルがステージに設けられた基板に向かって衝突する。衝突のエネルギーにより、エッチングを促進させることができる。アルミナは安定な化合物であるため、アルミナ層をエッチング除去するに際して、高周波電力の印加が好ましい。
【0025】
しかしながら、シリコン層のオーバーエッチング時には、シリコン層のエッチングを抑制し、反応生成物の生成および付着を抑制する観点から、アルミナ層のエッチング時よりも小さな高周波電力を印加することが好ましい。すなわち、第2エッチング工程においてステージに印加される高周波電力は、第1エッチング工程においてステージに印加される高周波電力よりも小さいことが好ましい。
【0026】
本実施形態のプラズマ処理方法は、MEMSによるジャイロセンサ素子の作製など、シリコン層に垂直で且つ高アスペクト比の深い溝を形成する場合に有用である。通常の有機材料で構成されたフォトレジストをマスクとして用いる場合、シリコン層のエッチングに伴ってフォトレジストもプラズマに晒され損耗する。十分なフォトレジストの厚みがない場合、シリコン層のエッチングに伴うフォトレジストの損耗により、フォトレジストが水平方向に後退してマスクパターンの寸法が変化し得る。この結果、シリコン層に形成される溝幅にばらつきが生じたり、シリコン層に形成される溝の側壁上部が広がったりし、均一で垂直な深い溝を形成することが困難になりやすい。
【0027】
このため、シリコン層を深掘りエッチングする場合、損耗を考慮してフォトレジストの厚みを厚く形成しておくことが必要となる。しかしながら、フォトレジストを厚くするほど、マスクを微細なパターンに形成することが難しくなる。また、フォトレジストを厚くすると、シリコン層の深掘りエッチング中に、エッチングに必要なラジカル種やイオン種が溝底部に到達しにくくなるため、エッチング速度の低下やエッチングストップが発生し易くなる。結果、溝底部まで到達できなかった過剰なラジカル種、イオン種により溝側壁部がエッチングされることにより溝の側壁部に広がり(ボーイング形状)が発生し易くなる。そこで、損耗し難いアルミナ膜を溝形成の際のマスクとして用いることが期待されている。本実施形態のプラズマ処理方法により、シリコン層上にエッチングマスクとしてアルミナ層を形成する場合の問題が解決される。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、シリコン層上にアルミナ層のパターンを形成する場合に有用である。
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法について、具体的に説明する。
【0029】
図1Aおよび
図1Bに、従来の方法でアルミナ膜をエッチングする場合の基板30の状態を示す。先ず、
図1Aに示すように、シリコン層31上にアルミナ層32および有機材料で構成されたレジストマスク33を堆積により形成し、フォトリソグラフィーにより所定領域のレジストマスク33を除去する。レジストマスク33の除去は、公知の方法を用いればよい。
【0030】
次に、
図1Bに示すように、レジストマスク33で覆われていない領域のアルミナ層32をエッチング除去する。エッチングにより、レジストマスク33で覆われていない領域において、シリコン層31が露出する。しかしながら、シリコン層31が露出した直後の状態では、レジストマスク33の境界の段差部分においてアルミナ層32は除去され難いため、段差部分においてアルミナ層32のエッチング除去が不十分であり、アルミナ層32の側壁がテーパ形状となり易い。
【0031】
そこで、通常、アルミナ層32の側壁を垂直に近い形状に形成するために、シリコン層31が露出した後もアルミナ層32のエッチングが一定期間継続される。このとき、露出したシリコン層31がオーバーエッチングされる。しかしながら、このとき、アルミナ層32のエッチングをハロゲン系ガスを用いたイオン性エッチングで行うとした場合、
図1Bに示すように、ハロゲン系ガスが露出したシリコンと反応し、反応生成物34がシリコン層31およびアルミナ層32の側壁に付着し得る。結果、アルミナ層32の側壁を垂直に加工することが困難になる。付着した反応生成物は、後工程においてシリコン層のエッチングを妨げ、垂直で深い溝を形成することが困難になる。
【0032】
これに対し、本実施形態では、アルミナ層のエッチングが完了し、シリコン層のオーバーエッチングが想定される期間において、ハロゲン系ガスに加えて酸素(O2)を含む酸化性ガスを含むエッチングガスにシリコン層が晒されるようにする。これにより、反応生成物34の付着を抑制できる。
【0033】
図2は、本実施形態のプラズマ処理方法を示す一例のフローチャートである。また、
図3Aおよび
図3Bは、本実施形態のプラズマ処理方法を用いてアルミナ膜をエッチングする場合の基板30の状態を示す断面図である。
【0034】
本実施形態のプラズマ処理方法では、先ず、従来方法に係る
図1Aと同様、フォトリソグラフィーにより所定領域のレジストマスク33を除去し、アルミナ層32を露出させる(ST01)。アルミナ層32の膜厚は、例えば、10~500nmである。
【0035】
続いて、第1のエッチングガスを用いて、アルミナ層32のエッチングを行い、シリコン層31を露出させる(ST02:第1のエッチング工程)。第1のエッチングガスは、BCl
3を少なくとも含む。エッチングは、シリコン層31が露出するまで行われる。この時の状態が
図3Aに示されている。
【0036】
(第1のエッチング工程)
アルミナ層32のエッチングは、ハロゲン系ガスをプラズマ化し、またバイアスをステージに印加して、ある程度のイオン衝撃を加えたエッチング条件で行われる。これにより、イオン性エッチングと反応性エッチングが並行して進行する。アルミナは安定な化合物であるため、アルミナ層32のエッチングを効率的に行うためには、イオン衝撃によるエネルギーをアルミナ層がエッチングされる反応に利用することが好ましい。
【0037】
一方で、イオン衝撃を加えた条件でエッチングを行う場合、イオン衝撃はアルミナ層32上のレジストマスク33にも作用し、レジストマスク33が消耗する。また、レジストマスク33とハロゲン系ガスとの反応物(デポ)が形成され得る。反応物(デポ)は、イオン性エッチングによるレジストマスク33の除去速度が大きいことからレジストマスク33の上面には堆積し難く、イオン性エッチングの作用が弱いレジストマスク33の側壁部分およびアルミナ層32の側壁部分に付着し易い。結果、アルミナ層32の側壁がテーパ形状となり易く、アルミナ層32の側壁を垂直に立てることが困難となる場合がある。
【0038】
アルミナ層32の側壁を基板面に対して垂直に近い形状に加工するため、ステージには高周波電力を印加するものの、印加する高周波電力を低めに設定し、反応性が主体のエッチング条件でアルミナ層32をエッチングすることが好ましい。一方、加速されたイオン種が他のイオン種またはラジカル種と衝突することが抑制され、イオン種が他のイオン種またはラジカル種に妨げられることなく移動して基板に到達できるように、第1のエッチングガスの全圧を低くしてもよい。これにより、エッチング速度が低下するものの、アルミナ層32の側壁を例えば80°以上に垂直にエッチングすることが可能になる。
【0039】
第1エッチング工程において、ステージに印加される高周波電力は、例えば、5~50Wである。第1のエッチングガスの全圧は、例えば、0.1~2.0Paである。
【0040】
以下に、第1エッチング工程で用いられる第1のエッチングガスの具体例を示す。
第1のエッチングガス:BCl3ガスとO2の混合ガス
流量: 50sccm
全圧: 0.25Pa
BCl3分圧: 0.225Pa
O2分圧: 0.025Pa
【0041】
以下に、第1エッチング工程における他のプラズマ処理条件の一例を示す。
ICPコイルへの印加パワー: 800W
バイアス: 100W
基板温度: 15℃
【0042】
ST03において、シリコン層31の露出が検出される(ST03においてYES分岐)と、第2のエッチング工程に移行する(ST04)。第2エッチング工程では、露出したシリコン層31のオーバーエッチングが開始されるとともに、アルミナ層32のエッチングが側面方向から進行する。これにより、アルミナ層32の側壁をより垂直に近づけて形成することができる。
【0043】
(第2のエッチング工程)
第2のエッチング工程では、第2のエッチングガスを用いて、アルミナ層32をエッチングする。このとき、露出したシリコン層31もエッチングされる。これにより、
図3Bに示す構造が得られる。第2のエッチングガスは、BCl
3と酸素(O
2)とを少なくとも含む。
【0044】
イオン衝撃を伴う条件でハロゲン系ガスを用いてエッチングを行う場合、シリコンとハロゲン系ガスとの反応生成物が形成され、アルミナ層およびシリコン層の側壁に付着し得る。しかしながら、第2のエッチングガスに酸素(O2)を含ませることで、シリコン層のエッチング速度が低下し、反応生成物が付着し難くなる。また、付着し得る反応生成物は、酸素ガスの働きにより分解される。
【0045】
第2エッチング工程では、アルミナ層32の側壁への反応生成物の付着を抑制するため、第1エッチング工程と同様、ステージに印加する高周波電力を低めに設定し、反応性が主体のエッチング条件とすることが好ましい。第2エッチング工程において、ステージに印加する高周波電力は、第1エッチング工程においてステージに印加する高周波電力よりも小さくてもよい。また、第1エッチング工程と同様、第2のエッチングガスの全圧を低くしてもよい。
【0046】
また、第2エッチング工程において、反応生成物の付着を抑制するため、プラズマを形成するための高周波電力の大きさ(例えば、ICPコイルに印加する高周波電力の大きさ)を、第1エッチング工程よりも小さくしてもよい。第2エッチング工程において、プラズマを形成するための高周波電力の、ステージに印加する高周波電力に対する比を第1エッチング工程と同じとしながら、両方の高周波電力を第1エッチング工程よりも小さくしてもよい。
【0047】
第2エッチング工程において、ステージに印加される高周波電力は、例えば、5~30Wである。第2のエッチングガスの全圧は、例えば、0.1~1.0Paである。
【0048】
以下に、第2エッチング工程で用いられる第2のエッチングガスの具体例を示す。
第2のエッチングガス:BCl3とO2の混合ガス
流量: 50sccm
全圧: 0.25Pa
BCl3分圧: 0.225Pa
O2分圧: 0.025Pa
【0049】
以下に、第2エッチング工程における他のプラズマ処理条件の一例を示す。
ICPコイルへの印加パワー: 400W
バイアス: 10W
基板温度: 15℃
【0050】
上記では、第1のエッチング工程において、第1のエッチングガスとしてBCl3とO2の混合ガスを用いる場合を具体的に示したが、アルミナ層のエッチング速度を高めるため、第1のエッチングガスに含まれる酸素濃度(分圧)を第2のエッチングガスの酸素濃度(分圧)よりも小さくしてもよい。第1のエッチングガスはO2を含まないBCl3であってもよい。また、第1のエッチング工程では、第1のエッチングガスの組成を段階的または連続的に変更してもよい。第1のエッチング工程では、第1のエッチングガスの酸素濃度(分圧)を、酸素濃度を段階的にまたは連続的に増加させ、第2のエッチングガスの酸素濃度(分圧)に達するようにしてもよい。好ましくは、アルミナ層のエッチング除去量が所定量に達したときに、第1のエッチングガスの組成が第2のエッチングガスの組成と一致するように構成してもよい。これにより、第1のエッチング工程から第2のエッチング工程が切れ目なく進行する。
【0051】
図4は、本実施形態のプラズマ処理方法の別の例を示すフローチャートである。
図4の例では、第1のエッチング工程ST02は、工程ST02Aと工程ST02Bからなる。
【0052】
工程ST02A(第3のエッチング工程)では、エッチングガスの酸素濃度(分圧)を段階的にまたは連続的に所定濃度P1まで増加させながら、アルミナ層のエッチングを行う。その後、工程ST02B(第4のエッチング工程)では、エッチングガスの酸素濃度(分圧)を上記所定濃度P1に維持し、アルミナ層32のエッチングを継続する。工程ST02Aから工程ST02Bへの切り替えのタイミングは、例えば、アルミナ層のエッチング除去量が所定量(例えば、エッチング前のアルミナ層の全厚の80%~95%)となる時期に、予め設定されている。
【0053】
その後、シリコン層31の露出に伴い、第2のエッチング工程ST04に移行する。この場合、第4のエッチング工程におけるエッチングガスに酸素ガスが含まれているため、シリコン層31の露出を実際に検出しなくてもよい。所定期間T1の経過に伴い、第4のエッチング工程ST02Bから第2のエッチング工程ST04への移行が自動的に行われる。所定期間T1は、アルミナ層32のエッチング速度等を考慮し、シリコン層31の露出が想定される時間に予め設定されている。
【0054】
第4のエッチング工程におけるエッチングガスの酸素濃度(分圧)P1は、第2のエッチングガスの酸素濃度(分圧)P2と同じであってもよい。酸素以外のガスを考慮した第4のエッチング工程におけるエッチングガスの組成が、第2のエッチングガスの組成と同じであってもよい。
【0055】
(プラズマ処理装置)
図5に、本実施形態のプラズマ処理方法にて用いられるプラズマ処理装置(エッチング装置)の構成の一例を示す。
図5に示すプラズマ処理装置21は、誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置であり、プラズマを発生させる空間(つまり、反応室)を提供するチャンバ23を備える。チャンバ23は、プロセスガス(エッチングガス)を反応室内に導入するガス導入口23aと、反応室から排気する排気口23bとを備えている。ガス導入口23aには、プロセスガスを反応室内に供給するガス供給源24が接続されている。排気口23bには、反応室内を減圧排気するための減圧ポンプを含む減圧機構25が接続されている。
【0056】
チャンバ23の頂部は、誘電体壁26で閉鎖されている。誘電体壁26の上部には、上部電極としてのアンテナ(ICPコイル)27が配されている。アンテナ27には、第1高周波電源28Aから、高周波電力が印加される。チャンバ23内の下方には、ステージ11が配されており、ステージ11上には基板22が載置される。ステージ11は、金属ブロック12上に配置され、金属ブロック12はベース部13内に収容されている。金属ブロック12は、第2高周波電源28Bと電気的に接続されており、下部電極として、基板22に第2高周波電力を印加可能であり、バイアス電圧を発生可能である。
【0057】
減圧機構25を稼動させると、チャンバ23の内部が減圧される。減圧されたチャンバ23の内部にプロセスガスを導入した状態で、第1高周波電源28Aにより誘電体壁26とステージ11との間に高周波電圧を印加すると、導入されたプロセスガスがプラズマ化される。プロセスガス流量および減圧機構25の出力は、コントローラ19により各々制御される。導入口23aおよび排気口23bの開度もコントローラ19により各々制御される。その他、プラズマ処理装置21を構成する各要素の制御も、コントローラ19により行われる。
【0058】
ステージ11は、冷却装置14と、基板22を静電吸着するための静電吸着用電極16とを備えている。冷却装置14は、金属ブロック12内に形成された冷媒流路12aと、温調された冷媒を冷媒流路12a内に循環させる冷媒循環装置15とを備えている。静電吸着用電極16は、駆動電源17に電気的に接続されている。ステージ11の基板22が載置される位置には、図示しない伝熱ガスの供給孔が設けられており、この供給孔には伝熱ガス源18から伝熱ガスが供給される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るプラズマ処理方法は、アルミナ層のエッチングプロセスに適用できる。
【符号の説明】
【0060】
21:プラズマ処理装置(エッチング装置)
11:ステージ
12:金属ブロック
13:ベース部
14:冷却装置
15:冷媒循環装置
16:静電吸着用電極
17:駆動電源
18:伝熱ガス源
19:コントローラ
23a:導入口
23b:排気口
24:ガス供給源
25:減圧機構
26:誘電体壁
27:アンテナ
28A:第1高周波電源
28B:第2高周波電源
30:基板
31:シリコン層
32:アルミナ層
33:レジストマスク
34:反応生成物