(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】環境制御システム、環境制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/125 20200101AFI20240507BHJP
G06Q 10/10 20230101ALI20240507BHJP
【FI】
H05B47/125
G06Q10/10
(21)【出願番号】P 2021201614
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2020163041の分割
【原出願日】2020-09-29
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】奥野 達也
(72)【発明者】
【氏名】原田 和樹
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-109876(JP,A)
【文献】特開2020-089747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 47/125
G06Q 10/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特定空間の各々に割り当てられた音響装置の出力を制御する音響制御部に対して指示する指示部と、
前記複数の特定空間の各々に存在するユーザに関する情報を取得する取得部と、
前記取得部にて取得された前記ユーザに関する情報に基づいて、前記複数の特定空間の各々における前記ユーザの滞留指数を演算する演算部と、を備え、
前記滞留指数は、対応する特定空間を評価するための指標であって、時間経過に対する当該特定空間に存在する前記ユーザの人数又は構成の変化と相関を持ち、
前記指示部は、前記複数の特定空間のうちのいずれかの特定空間において、
前記演算部にて演算された前記滞留指数が閾値を超えると、少なくとも当該特定空間における前記音響装置の音響制御を変更するように前記音響制御部に対して指示する、
環境制御システム。
【請求項2】
複数の特定空間の各々に割り当てられた音響装置の出力を制御する音響制御部に対して指示する指示ステップと、
前記複数の特定空間の各々に存在するユーザに関する情報を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにて取得した前記ユーザに関する情報に基づいて、前記複数の特定空間の各々における前記ユーザの滞留指数を演算する演算ステップと、を含み、
前記滞留指数は、対応する特定空間を評価するための指標であって、時間経過に対する当該特定空間に存在する前記ユーザの人数又は構成の変化と相関を持ち、
前記指示ステップでは、前記複数の特定空間のうちのいずれかの特定空間において、
前記演算ステップにて演算された前記滞留指数が閾値を超えると、少なくとも当該特定空間における前記音響装置の音響制御を変更するように前記音響制御部に対して指示する、
環境制御方法。
【請求項3】
1以上のプロセッサに、
請求項
2に記載の環境制御方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境制御システム、環境制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、照明制御装置が開示されている。この照明制御装置は、人体情報検知手段で検知した照明エリアの人間の動作速度に基づいて、照明エリアをあらかじめ複数に区分した各々の区分領域が人間の滞在する滞在領域か非滞在領域かを判定する。そして、照明制御手段は、判定結果に基づき、区分領域に配置された照明器具に対し照明制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ユーザの動線の滞留を解消しやすい環境制御システム、環境制御方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る環境制御システムは、指示部と、取得部と、を備える。前記指示部は、複数の特定空間の各々に割り当てられた音響装置の出力を制御する音響制御部に対して指示する。前記取得部は、前記複数の特定空間の各々に存在するユーザに関する情報を取得する。前記指示部は、前記複数の特定空間のうちのいずれかの特定空間において、前記取得部にて取得された前記ユーザに関する情報に基づいて、少なくとも当該特定空間における前記音響装置の音響制御を変更するように前記音響制御部に対して指示する。
【0006】
本発明の一態様に係る環境制御方法は、指示ステップと、取得ステップと、を含む。前記指示ステップでは、複数の特定空間の各々に割り当てられた音響装置の出力を制御する音響制御部に対して指示する。前記取得ステップでは、前記複数の特定空間の各々に存在するユーザに関する情報を取得する。前記指示ステップでは、前記複数の特定空間のうちのいずれかの特定空間において、前記取得ステップにて取得された前記ユーザに関する情報に基づいて、少なくとも当該特定空間における前記音響装置の音響制御を変更するように前記音響制御部に対して指示する。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、上記の環境制御方法を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の環境制御システム、環境制御方法、及びプログラムは、ユーザの動線の滞留を解消しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、実施の形態に係る環境制御システムが使用されるオフィスであって、発光制御を変更する前のオフィスの概要を示す平面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施の形態に係る環境制御システムが使用されるオフィスであって、発光制御を変更した後のオフィスの概要を示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る環境制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る環境制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施の形態の変形例1に係る環境制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施の形態の変形例2に係る環境制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
【0012】
(実施の形態)
[構成]
まず、実施の形態に係る環境制御システムの構成について説明する。
図1Aは、実施の形態に係る環境制御システムが使用されるオフィスであって、発光制御を変更する前のオフィスの概要を示す平面図である。
図1Bは、実施の形態に係る環境制御システムが使用されるオフィスであって、発光制御を変更した後のオフィスの概要を示す平面図である。
図2は、実施の形態に係る環境制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【0013】
実施の形態に係る環境制御システム100は、例えばオフィス等の自身の行いたい作業に応じて自由に作業場所を選択し得る環境で使用され、このような環境を制御するためのシステムである。実施の形態では、環境制御システム100は、ABW(Activity Based Working)型のオフィスに使用される、と仮定する。ここで、「ABW」とは、仕事内容に合わせて働く場所又はデスク等をユーザ(従業員等)が選択する働き方をいう。ABW型のオフィスにおいては、ユーザは、集中力を要する作業を行う場合には比較的静音性の高い場所を選択し、打ち合わせを行う場合にはソファ等のリラックス可能な場所を選択することが可能である。
【0014】
なお、環境制御システム100は、ABW型のオフィスに限らず、フリーアドレス型のオフィスで使用されてもよいし、ユーザが行いたい作業に応じて自由に作業場所を選択し得る環境であれば、他の環境で使用されてもよい。例えば、環境制御システム100は、小学校、中学校、高校、又は大学等の教育施設で使用されてもよいし、公民館、又は図書館等の公共施設で使用されてもよいし、店舗又は商業施設で使用されてもよい。
【0015】
環境制御システム100は、
図2に示すように、照明制御部11と、指示部12と、取得部13と、演算部14と、設定部15と、記憶部16と、を備えている。なお、環境制御システム100は、少なくとも指示部12、取得部13、及び演算部14を備えていればよく、照明制御部11、設定部15、及び記憶部16は備えていなくてもよい。例えば、環境制御システム100とは別の照明制御システムが存在している場合、この照明制御システムが照明制御部11として機能し得る。
【0016】
また、環境制御システム100が使用される環境(ここでは、ABW型のオフィス3)には、
図1A及び
図1Bに示すように、複数の照明器具1が設置されている。環境制御システム100は、オフィス3に設置されていてもよいし、オフィス3から離れた遠隔地に設置されていてもよい。
【0017】
各照明器具1は、オフィス3の天井に設置されている。もちろん、各照明器具1は、オフィス3の天井のみならず、壁、床、又はデスクに設置されていてもよい。実施の形態では、各照明器具1は、一例として、対象とする空間を均一に照らすアンビエント照明としてのベースライトであって、LED(Light Emitting Diode)等の固体発光素子を有する光源を備えている。また、各照明器具1の光源は、照明制御部11に制御されることにより調光、調色、又はその両方が可能に構成されている。
【0018】
各照明器具1は、複数のグループG1に割り当てられている。
図2に示す例では、各照明器具1は、3つのグループG1に割り当てられている。もちろん、グループG1の数は3つに限らず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。ここで、同じグループG1に割り当てられる1以上の照明器具1は、互いに近傍に位置している。そして、あるグループG1に割り当てられる1以上の照明器具1は、オフィス3において当該グループG1に対応する空間を照らす。
【0019】
例えば、3つのグループG1がグループ「A」、「B」、「C」である、と仮定する。この場合、グループ「A」に割り当てられた1以上の照明器具1は、オフィス3においてグループ「A」に対応する空間「α」を照らし、グループ「B」に割り当てられた1以上の照明器具1は、オフィス3においてグループ「B」に対応する空間「β」を照らし、グループ「C」に割り当てられた1以上の照明器具1は、オフィス3においてグループ「C」に対応する空間「γ」を照らす。
【0020】
このように、グループG1に割り当てられた1以上の照明器具1は、グループG1に対応する空間を照らす。つまり、実施の形態では、照明制御部11は、複数(ここでは、3つ)の空間の各々に割り当てられた照明器具1の発光を制御する。ここで、複数の空間は、少なくとも1つの特定空間SP1(
図1A及び
図1B参照)を含んでいる。特定空間SP1は、後述する滞留指数に基づいて照明器具1が発光制御される空間である。実施の形態では、複数の空間は、いずれも特定空間SP1である。つまり、照明制御部11は、複数の特定空間SP1の各々に割り当てられた照明器具1の発光を制御する、とも言える。
【0021】
各照明器具1のグループG1への割り当ては、例えば、環境制御システム100の管理者によって、あらかじめ実行される。管理者は、例えば環境制御システム100のパラメータを設定可能な情報端末を用いて、上記割り当てを実行する。情報端末は、一例として、スマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等を含み得る。
【0022】
なお、オフィス3において、隣り合う空間の間は仕切られていてもよいし、仕切られていなくてもよい。実施の形態では、オフィス3は1つの大部屋で構成されており、壁又は什器によって仕切られた他の部屋が存在しない、と仮定する。この場合、オフィス3の見通しが向上したり、意匠性が向上したりするため、好ましい。
【0023】
また、実施の形態では、隣り合う2つの空間において、一方の空間に設置された照明器具1から照射される光は、厳密に一方の空間のみを照らしていなくてもよく、一部の光が他方の空間へと漏れることが許容されている。つまり、任意の空間においては、当該空間に対応する照明器具1から照射される光が主たる照明光となっていればよく、当該空間とは異なる空間からの照明光の一部が漏れてきても、当該空間の照明に殆ど影響を与えなければよい。なぜならば、このとき当該空間を使用するユーザの視認性又はユーザが視る作業環境に対して、当該空間とは異なる空間からの照明光の一部が及ぼす影響は限定的であるためである。
【0024】
照明制御部11は、各照明器具1と通信可能であって、各照明器具1に照明制御信号を送信することにより、各照明器具1の調光、調色、又はその両方を制御する。実施の形態では、照明制御部11は、同じグループG1に割り当てられた1以上の照明器具1に対しては、同じ照明制御信号を送信する。つまり、照明制御部11は、各照明器具1をグループG1ごとに制御する。照明制御部11と各照明器具1との通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよいし、通信規格も特に限定されない。また、照明制御信号は厳密に同時に送信される必要はなく、複数の照明制御信号の送信の時差は、好ましくは60分以内、より好ましくは30分以内、さらに好ましくは1分以内である。上記時差が60分以内であれば、什器又は家具を人力で移動させて空間の環境を変化させることに比べ、省労力となるため好ましい。
【0025】
また、照明制御部11から同じグループG1に割り当てられた1以上の照明器具1に対して送信される照明制御信号は厳密に同一である必要はなく、当該空間の影響が限定的である範囲で制御内容に誤差があることが許容される。例えば、許容範囲は、色温度では±500K、調光率では±20%である。
【0026】
指示部12は、照明制御部11に制御信号を送信することにより、照明制御部11に対して指示する。照明制御部11は、指示部12から制御信号を受信すると、受信した制御信号の内容に従って、各グループG1の1以上の照明器具1、言い換えれば各空間に割り当てられた1以上の照明器具1を制御する。
【0027】
取得部13は、複数の特定空間SP1の各々に存在するユーザに関する情報を取得する。取得部13は、ユーザの存在情報又はユーザの識別情報を取得する。後述する[滞留指数の演算]の[第1演算例]により演算部14が滞留指数を演算する場合、取得部13は、ユーザの存在情報を取得可能な態様であればよい。一方、後述する[滞留指数の演算]の[第2演算例]により演算部14が滞留指数を演算する場合、取得部13は、ユーザの識別情報を取得可能な態様であればよい。
【0028】
取得部13は、例えばオフィス3の特定空間SP1に設置された赤外線センサ等の人感センサから送信される検知結果を取得することにより、ユーザの存在情報を取得することが可能である。すなわち、取得部13は、人感センサの検知結果を取得することにより、特定空間SP1におけるユーザの存否に関する情報、つまりユーザの存在情報を取得することが可能である。
【0029】
また、取得部13は、例えばオフィス3に採用された、BLE(Bluetooth(登録商標
) Low Energy)等を用いた屋内位置情報検知システムからの検知結果を取得することに
より、ユーザの存在情報又はユーザの識別情報を取得することが可能である。
【0030】
また、取得部13は、例えばオフィス3に設置されたカメラからオフィス3を撮像した画像を取得し、この画像に対して適宜の画像解析処理を実行することで、ユーザの存在情報又はユーザの識別情報を取得することが可能である。
【0031】
その他、取得部13は、例えば特定空間SP1に設置されたタグリーダから、ユーザが所持する無線ICタグの読み取り結果を取得することにより、ユーザの存在情報又はユーザの識別情報を取得することが可能である。
【0032】
演算部14は、取得部13にて取得されたユーザに関する情報に基づいて、複数の特定空間SP1の各々におけるユーザの滞留指数を演算する。ここで、「滞留指数」とは、特定空間SP1を評価するための指標であって、時間経過に対する特定空間SP1に存在するユーザの人数又は構成の変化と相関を持つ指数である。例えば、滞留指数は、単位時間(数十分、又は数時間等)における特定空間SP1に存在するユーザの人数の変化の頻度が大きい程小さく、頻度が小さい程大きくなる。また、例えば、滞留指数は、単位時間における特定空間SP1に存在するユーザの構成の変化の頻度が大きい程小さく、頻度が小さい程大きくなる。滞留指数は、時刻情報と、ユーザの人数及び識別情報のうちの少なくとも1つと、に基づいて演算される。滞留指数の演算方法については、後述する[滞留指数の演算]にて詳細に説明する。
【0033】
滞留指数が大きい特定空間SP1では、特定空間SP1に存在するユーザの人数又は構成が経時的に殆ど変化しない可能性が高い。一方、滞留指数が小さい特定空間SP1では、特定空間SP1に存在するユーザの人数又は構成が経時的に変化する可能性が高い。このため、滞留指数が小さい特定空間SP1では、例えばABW型のオフィス又はフリーアドレス型のオフィスで期待されるような、偶発的なコミュニケーションの発生確率の向上が期待できる。そして、多様なコミュニケーションを契機に、イノベーションが創出される可能性が高まるため、オフィスを運営する管理者にとって好ましい。
【0034】
指示部12は、演算部14にて演算された滞留指数が閾値を超えると、特定空間SP1における照明器具1の発光制御を変更するように照明制御部11に対して指示する。実施の形態では、滞留指数は、最大値が「1」である正の実数である。閾値は、例えば0.5以上の値であって、例えば環境制御システム100の管理者又は施工者により、あらかじめ設定されていてもよい。また、閾値は、後述する設定部15にて適宜設定されてもよい。
【0035】
既に述べたように、実施の形態では、特定空間SP1は複数である。したがって、実施の形態では、指示部12は、複数の特定空間SP1のうちのいずれかの特定空間SP1において、演算部14にて演算された滞留指数が閾値を超えると、少なくとも当該特定空間SP1における照明器具1の発光制御を変更するように照明制御部11に対して指示する。つまり、任意の特定空間SP1にて滞留指数が閾値を超えた場合、指示部12は、当該特定空間SP1の照明器具1の発光制御を変更するように指示する。もちろん、指示部12は、更に他の特定空間SP1の照明器具1の発光制御も変更するように指示してもよい。
【0036】
指示部12は、滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1に存在するユーザに滞留しがちであることを気づかせるために、特定空間SP1における照明器具1の発光制御を変更するように照明制御部11に対して指示する。例えば、指示部12は、滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1の照明器具1からの照明光の照度又は色温度の設定値を変更するように照明制御部11に指示したり、当該特定空間の照明器具1をベースライトからスポットライトに切り替えるように照明制御部11に指示したりする。
【0037】
また、例えば、指示部12は、滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1に割り当てられる照明器具1の数を増減する(つまり、特定空間SP1を拡張又は縮小する)ように照明制御部11に指示することもあり得る。この場合、指示部12は、当該特定空間SP1に割り当てられる照明器具1の数の増減に伴って、他の特定空間SP1に割り当てられる照明器具1の数も増減するように照明制御部11に指示する。つまり、照明器具1の発光制御は、照度若しくは色温度の設定値を変更する制御、滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1に割り当てられる照明器具1の数を増減する制御、又はスポット光を照射する制御を含み得る。なお、スポット光を照射する制御については、照明器具1がベースライトの他にスポットライトを備えている場合にのみ実行可能である。
【0038】
特に、実施の形態では、指示部12は、滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1のユーザに対して他の空間への移動を促すために、特定空間SP1における照明器具1の発光制御を変更するように照明制御部11に対して指示する。つまり、照明器具1の発光制御は、ユーザに対して滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1以外の空間への移動を促す制御を含み得る。
【0039】
例えば、滞留指数が閾値を超える前において、特定空間SP1の照明光の色温度が比較的低く、暖色系の照明であった、と仮定する。この場合、指示部12は、この特定空間SP1の照明光の色温度を高くするように照明制御部11に対して指示する。これにより、この特定空間SP1の照明光の色温度が比較的高くなり、寒色系の照明となる。すると、暖色系の照明を好むが故にこの特定空間SP1に滞在していたユーザが、暖色系の照明を求めて他の空間へと移動する可能性が高くなることが期待できる。
【0040】
また、例えば、滞留指数が閾値を超える前において、特定空間SP1がベースライトにより均一に照らされていた、と仮定する。この場合、指示部12は、この特定空間SP1の照明器具1をベースライトからスポットライトに切り替えるように照明制御部11に対して指示する。これにより、この特定空間SP1がスポット光で照らされるようになる。すると、均一な照明を好むが故にこの特定空間SP1に滞在していたユーザが、均一な照明を求めて他の空間へと移動する可能性が高くなることが期待できる。
【0041】
ここで、上記のように滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1の環境が変化した場合、当該特定空間SP1とは別の他の空間にいるユーザが、当該特定空間SP1の環境を好んで当該特定空間SP1へと移動する可能性がある。つまり、照明器具1の発光制御は、ユーザに対して滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1以外の空間から当該特定空間SP1への移動を促す制御を含み得る、と言える。
【0042】
例えば、滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1において割り当てられる照明器具1が増えると、当該特定空間SP1が拡張され、当該特定空間SP1に空きスペースが生じる。この場合、他の空間に滞在していたユーザが、当該特定空間SP1の空きスペースを利用すべく当該特定空間SP1へと移動する可能性が高くなることが期待できる。
【0043】
以下、指示部12による、特定空間SP1での照明器具1の発光制御を変更する指示の具体例について
図1A及び
図1Bを用いて説明する。以下では、
図1A及び
図1Bにおいて、オフィス3の左下にある特定空間SP1を「第1空間SP11」、オフィス3の右上にある空間を「第2空間SP12」、オフィス3の右下にある空間を「第3空間SP13」として説明する。
【0044】
図1Aに示す例では、第1空間SP11は、照明光の色温度が基準色温度(ここでは、5000K)よりも低い(ここでは、3000K)、暖色系の照明となるように各照明器具1が制御されている。また、
図1Aに示す例では、第2空間SP12は、照明光の色温度が基準色温度よりも高い(ここでは、6000K)、寒色系の照明となるように各照明器具1が制御されている。また、
図1Aに示す例では、第3空間SP13は、照明光の色温度が基準色温度となるように各照明器具1が制御されている。
【0045】
ここで、第1空間SP11にて滞留指数が閾値を超えた、と仮定する。すると、指示部12は、
図1Bに示すように第1空間SP11の照明光の色温度が基準色温度よりも高く(ここでは、6000K)なるように、照明制御部11に対して指示する。このとき、指示部12は、滞留指数が閾値を超えていない第2空間SP12及び第3空間SP13についても発光制御を変更するように指示する。具体的には、指示部12は、
図1Bに示すように、第2空間SP12の照明光の色温度が基準色温度となるように、第3空間SP13の照明光の色温度が基準色温度よりも低く(ここでは、3000K)なるように、照明制御部11に対して指示する。
【0046】
これにより、第1空間SP11に滞在していたユーザが、発光制御の変更前とは逆の照明環境となった第1空間SP11から移動する可能性が高くなることが期待できる。また、発光制御の変更後の第2空間SP12及び第3空間SP13は、発光制御の変更前の第1空間SP11の照明環境と近しいため、当該ユーザがこれらの空間SP12,SP13のいずれかに移動する可能性が高くなることが期待できる。
【0047】
設定部15は、ユーザからの入力に応じて、演算部14にて用いられる閾値を設定する。ユーザは、例えばユーザが使用する情報端末を用いて、閾値を設定するための入力を行うことが可能である。情報端末にて入力された閾値は、情報端末から環境制御システム100へと送信される。そして、設定部15は、情報端末から受信した閾値を、演算部14にて用いる閾値として更新する。これにより、特定空間SP1にユーザが滞留しているか否かの判定にユーザの主観を反映することが可能である。
【0048】
なお、設定部15での閾値の設定は、ユーザの中でも権限を有する者のみが実行できるようにしておくのが好ましい。この場合の権限は、例えば環境制御システム100の管理者に与えるのが好ましい。また、既に述べたように、閾値は、例えば環境制御システム100の管理者又は施工者により、あらかじめ設定されていてもよい。この場合、設定部15は不要である。
【0049】
記憶部16は、照明制御部11、指示部12、演算部14等が動作を行うために必要な情報(コンピュータプログラム等)が記憶される記憶装置である。記憶部16は、例えばHDD(Hard Disk Drive)によって実現されるが、半導体メモリによって実現されてもよく、特に限定されることなく公知の電子情報記憶の手段を用いることができる。
【0050】
照明制御部11、指示部12、取得部13、演算部14、設定部15、及び記憶部16は、いずれも同一の基板に実装されるか、又は同一の筐体に納められていてもよい。上記基板又は筐体は、オフィス3の天井、壁、床、又はデスク等の什器・家具に備え付けられていてもよい。この場合、環境制御システム100が小型化されるため好ましい。
【0051】
[滞留指数の演算]
以下、演算部14による滞留指数の演算例を列挙する。
【0052】
[第1演算例]
第1演算例では、滞留指数は、任意の時刻において特定空間SP1に存在するユーザの人数に基づいて演算される。ユーザの人数は、取得部13にて取得されるユーザの存在情報に基づいて算出することが可能である。
【0053】
具体的には、取得部13は、定期的にユーザの存在情報を取得する。これにより、取得部13は、時刻と、当該時刻における特定空間SP1に存在するユーザの人数と、が紐づいたデータを定期的に取得する。つまり、取得部13は、ユーザに関する情報として、各特定空間SP1での任意の時刻におけるユーザの存在情報を取得する。そして、演算部14は、取得部13にて取得されたデータに基づいて、滞留指数を演算する。つまり、演算部14は、取得部13にて取得された存在情報に基づいて、複数の特定空間SP1の各々におけるユーザの滞留指数を演算する。
【0054】
任意の2つの特定空間SP1における滞留指数の演算の一例について、以下の表1を用いて説明する。以下では、2つの特定空間SP1のうちの一方の特定空間SP1を「第1特定空間」、他方の特定空間SP1を「第2特定空間」という。表1における「第1演算値」は、時間経過に伴う特定空間SP1におけるユーザの人数の変動量を表している。ここでは、「第1演算値」は、取得部13にて取得した任意の時刻における特定空間SP1でのユーザの人数と、取得部13にて取得した当該時刻の直前の時刻における特定空間SP1でのユーザの人数と、の差分の絶対値である。
【0055】
例えば、10:00における第1特定空間での第1演算値は、10:00における第1特定空間でのユーザの人数「9」と、9:00における第1特定空間でのユーザの人数「10」と、の差分の絶対値「1」となる。また、例えば、12:00における第2特定空間での第1演算値は、12:00における第2特定空間でのユーザの人数「6」と、11:00における第2特定空間でのユーザの人数「2」と、の差分の絶対値「4」となる。
【0056】
【0057】
演算部14は、所定の時間ごとに滞留指数を演算する。ここでは、所定の時間は3時間であって、表1に示す例では9:00~12:00である。まず、演算部14は、所定の時間における各時刻の第1演算値の総和を演算することにより、所定の時間における第2演算値を求める。表1に示す例では、9:00~12:00における第1特定空間での第2演算値は、第1特定空間での第1演算値の総和である「1+1+1=3」となる。また、表1に示す例では、9:00~12:00における第2特定空間での第2演算値は、第2特定空間での第1演算値の総和である「6+8+4=18」となる。
【0058】
そして、演算部14は、所定の時間における第2演算値の逆数を演算することにより、所定の時間における滞留指数を求める。表1に示す例では、9:00~12:00における第1特定空間での第2演算値は「3」であるため、9:00~12:00における第1特定空間での滞留指数は、「1/3≒0.33」となる。また、表1に示す例では、9:00~12:00における第2特定空間での第2演算値は「18」であるため、9:00~12:00における第2特定空間での滞留指数は、「1/18≒0.06」となる。
【0059】
なお、第2演算値が「0」である場合、滞留指数は「1」を「0」で除することになるが、実施の形態では、この場合の滞留指数を「無限大」である、とする。
【0060】
ここで、滞留指数は、大きいほど特定空間SP1にユーザが滞留しがちであり、小さいほど特定空間SP1にユーザが滞留していないことを表す。したがって、表1に示す例では、9:00~12:00においては、第1特定空間にユーザが滞留しがちである一方、第2特定空間にユーザは滞留していない。つまり、表1に示す例では、9:00~12:00においては、第2特定空間は、ABW型のオフィス又はフリーアドレス型のオフィスで期待されるような、偶発的なコミュニケーションの発生確率の向上が期待できる空間である、と言える。
【0061】
[第2演算例]
第2演算例では、滞留指数は、任意の時刻において特定空間SP1に存在するユーザの識別情報に基づいて演算される。ユーザの識別情報は、取得部13にて取得することが可能である。
【0062】
具体的には、取得部13は、定期的にユーザの識別情報を取得する。これにより、取得部13は、時刻と、当該時刻における特定空間SP1に存在するユーザの識別情報と、が紐づいたデータを定期的に取得する。つまり、取得部13は、ユーザに関する情報として、任意の時刻におけるユーザの識別情報を取得する。そして、演算部14は、取得部13にて取得されたデータに基づいて、滞留指数を演算する。つまり、演算部14は、取得部13にて取得された識別情報に基づいて、ユーザごとに特定空間SP1におけるユーザの滞留指数を演算する。
【0063】
任意の2つの特定空間SP1(ここでは、第1特定空間及び第2特定空間)における滞留指数の演算の一例について、以下の表2を用いて説明する。表2において、「ユーザID」はユーザの識別情報を表している。表2に示す例では、「ユーザID」は、3桁の数字により表されている。もちろん、「ユーザID」は、例えばアルファベット等の文字列により表されてもよいし、数字及び文字の組み合わせにより表されてもよい。
【0064】
また、表2における「第3演算値」は、時間経過に伴う特定空間SP1におけるユーザの識別情報の変動量を表している。ここでは、「第3演算値」は、取得部13にて取得した任意の時刻における特定空間SP1でのユーザの識別情報と、取得部13にて取得した当該時刻の直前の時刻における特定空間SP1でのユーザの識別情報と、で相違する識別情報の数の絶対値である。
【0065】
例えば、10:00における第1特定空間でのユーザIDが「001」、「002」、「003」であるのに対して、9:00における第1特定空間でのユーザIDは「001」、「002」、「003」である。したがって、9:00と10:00とでユーザの識別情報に相違がないため、10:00における第1特定空間での第3演算値は「0」となる。また、例えば、10:00における第2特定空間でのユーザIDが「004」、「007」、「010」であるのに対して、9:00における第2特定空間でのユーザIDは「004」、「005」、「006」である。したがって、9:00と10:00とで第2特定空間でのユーザの人数には相違は無いが、2人のユーザが入れ替わっているので、10:00における第2特定空間での第3演算値は「2」となる。
【0066】
【0067】
演算部14は、所定の時間ごとに滞留指数を演算する。ここでは、所定の時間は3時間であって、表2に示す例では9:00~12:00である。まず、演算部14は、所定の時間における各時刻の第3演算値の総和を演算することにより、所定の時間における第4演算値を求める。表2に示す例では、9:00~12:00における第1特定空間での第4演算値は、第1特定空間での第3演算値の総和である「0+0+1=1」となる。また、表2に示す例では、9:00~12:00における第2特定空間での第4演算値は、第2特定空間での第3演算値の総和である「2+2+2=6」となる。
【0068】
そして、演算部14は、所定の時間における第4演算値の逆数を演算することにより、所定の時間における滞留指数を求める。表2に示す例では、9:00~12:00における第1特定空間での第4演算値は「1」であるため、9:00~12:00における第1特定空間での滞留指数は、「1/1=1」となる。また、表2に示す例では、9:00~12:00における第2特定空間での第4演算値は「6」であるため、9:00~12:00における第2特定空間での滞留指数は、「1/6≒0.17」となる。
【0069】
なお、第4演算値が「0」である場合、滞留指数は「1」を「0」で除することになるが、実施の形態では、この場合の滞留指数を「無限大」である、とする。
【0070】
ここで、滞留指数は、大きいほど特定空間SP1にユーザが滞留しがちであり、小さいほど特定空間SP1にユーザが滞留していないことを表す。したがって、表2に示す例では、9:00~12:00においては、第1特定空間にユーザが滞留しがちである一方、第2特定空間にユーザは滞留していない。つまり、表2に示す例では、9:00~12:00においては、第2特定空間は、ABW型のオフィス又はフリーアドレス型のオフィスで期待されるような、偶発的なコミュニケーションの発生確率の向上が期待できる空間である、と言える。
【0071】
上述の滞留指数の演算方法は、一例であって、他の方法により滞留指数を演算してもよい。例えば、上記の第1演算値は、取得部13にて取得した任意の時刻における特定空間SP1でのユーザの人数を、取得部13にて取得した当該時刻の直前の時刻における特定空間SP1でのユーザの人数で除した場合の商であってもよい。また、例えば、上記の第2演算値は、所定の時間における第1演算値の積分値であってもよい。また、滞留指数は、上述の第1演算例での演算方法と、第2演算例での演算方法と、を組み合わせて演算されてもよい。
【0072】
[動作]
以下、実施の形態に係る環境制御システム100の動作の一例について説明する。
図3は、実施の形態に係る環境制御システム100の動作例を示すフローチャートである。以下では、演算部14にて用いられる閾値は、あらかじめ設定されている、と仮定する。また、以下では、照明制御部11は、グループG1ごとに各照明器具1を発光制御している、と仮定する。さらに、以下では、複数の特定空間SP1のうちの1つの特定空間SP1に焦点を当てて説明する。
【0073】
まず、取得部13は、特定空間SP1に存在するユーザに関する情報を定期的に取得する(S1)。処理S1は、環境制御方法の取得ステップST1に相当する。取得部13が情報の取得を開始してから所定の時間(例えば、3時間)が経過すると(S2:Yes)、演算部14は、取得部13にて取得された情報に基づいて、滞留指数を演算する(S3)。処理S3は、環境制御方法の演算ステップST3に相当する。
【0074】
そして、演算部14にて演算された滞留指数が閾値を超えない場合(S4:No)、指示部12は特に何も実行しない。つまり、照明制御部11による各照明器具1の発光制御は変更されない。一方、演算部14にて演算された滞留指数が閾値を超えると(S4:Yes)、指示部12は、特定空間SP1における照明器具1の発光制御を変更するように照明制御部11に対して指示する(S5)。処理S5は、環境制御方法の指示ステップST1に相当する。これにより、特定空間SP1の照明環境が変更される。以下、上記の一連の処理S1~S5が繰り返される。
【0075】
[利点]
以下、実施の形態に係る環境制御システム100の利点について説明する。実施の形態に係る環境制御システム100では、複数の特定空間SP1のうちのいずれかの特定空間SP1におけるユーザの滞留指数が閾値を超える、つまり当該特定空間SP1においてユーザが滞留しがちになると、当該特定空間SP1の照明環境が変更される。このため、当該特定空間SP1に滞在しているユーザに対して、他の空間への移動の契機を与えることができ、ユーザの動線の滞留の解消しやすくなる、という利点がある。その結果、当該特定空間SP1に滞留しがちなユーザが他の空間へと移動することにより、例えばABW型のオフィス又はフリーアドレス型のオフィスで期待されるような、偶発的なコミュニケーションの発生確率の向上が期待できる。そして、多様なコミュニケーションを契機に、イノベーションが創出される可能性が高まることも期待できる。
【0076】
また、実施の形態に係る環境制御システム100では、少なくとも滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1の照明環境を変更することで、複数の特定空間SP1の各々の照明環境を異ならせることができ、いわゆるゾーニング効果が期待できる。
【0077】
ここで、ゾーニング効果とは、例えば、空間の認知上の区切れ感を意味し、外観上複数の空間が互いに異なる空間であるとユーザが認知しやすい効果を含み得る。また、ゾーニング効果は、ユーザによる認知をもって、ゾーニングの意図通りにユーザの行動又は動線の変化を促しやすくする効果を含み得る。例えば、任意の空間について、ユーザが集中力を要する作業を行いやすい空間となることを意図してゾーニングをした、と仮定する。この場合、当該空間を見たユーザが、集中力を要する作業を行うことを主目的として当該空間を使用すれば、ゾーニング効果が発揮されたと言える。
【0078】
また、ゾーニング効果は、ユーザが実際にゾーニングされた空間を利用した場合に、ユーザの主観的な効果・実感、又は生理・心理・生体的作用がゾーニングの主旨に応じた傾向を示す効果を含み得る。例えば、任意の空間について、集中力を要する作業を行いやすい空間となることを意図してゾーニングを行い、当該空間をユーザが利用した、と仮定する。この場合、ユーザが当該空間を利用することで集中できたという実感を得たり、心理・生体作用としてユーザが集中をしていたことを示唆する指標・データが得られたりすれば、ゾーニング効果が発揮されたと言える。
【0079】
上述のように照明制御を行うことで、什器又は家具を用いることなく各特定空間SP1をゾーニングすることが可能である。このため、各特定空間SP1の意匠性を高めやすく、かつ、調光・調色等の照明制御により瞬時にオフィス3のレイアウトを変化させる、いわゆるアクティブゾーニングが可能となる。すなわち、上記の照明制御によりゾーニングを行う場合、各特定空間SP1における調光・調色の制御パラメータの変更は例えば数秒で完了する。この場合、結果としてオフィス3のレイアウトを数秒で変更することが可能である。ここで、什器又は家具を人力で移動させることでオフィス3のレイアウトを変更する場合であれば、60分、数時間、又は一日、場合によっては数日を要する。この点から、上記の照明制御によるゾーニングは、極めて顕著な効果を奏し得る。
【0080】
アクティブゾーニングにより、従来の什器又は家具の配置を変更することによるオフィスのレイアウトの変更と比較して、時間ごと、日ごと、又は月ごと等の短周期でオフィス3のレイアウトを変化させることが可能である。
【0081】
(その他の実施の形態)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。以下、実施の形態の変形例について列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0082】
[実施の形態の変形例1]
実施の形態の変形例1に係る環境制御システム100では、オフィス3に複数の音響装置2が設置されており、かつ、指示部12が音響制御部17に対して指示する点で、実施の形態に係る環境制御システム100と相違する。
図4は、実施の形態の変形例1に係る環境制御システム100の機能構成を示すブロック図である。なお、環境制御システム100は、音響制御部17を備えていなくてもよい。例えば、環境制御システム100とは別の音響制御システムが存在している場合、この音響制御システムが音響制御部17として機能し得る。
【0083】
各音響装置2は、オフィス3の天井に設置されている。もちろん、各音響装置2は、オフィス3の天井のみならず、壁、床、又はデスクに設置されていてもよい。実施の形態では、各音響装置2は、一例として無指向性のスピーカであって、音響制御部17から送信されるコンテンツを再生する。なお、各音響装置2は、例えばパラメトリック・スピーカ、超音波を用いたスピーカ、又は筐体をホーン構造にしたスピーカ等の指向性を有するスピーカであってもよい。指向性を有するスピーカを用いた場合、一部の音が他の空間へ漏れ出る割合を小さくしやすいため、好ましい。
【0084】
各音響装置2は、各照明器具1と同様に、複数のグループG1に割り当てられている。
図1及び
図2に示す例では、各音響装置2は、3つのグループG1に割り当てられている。ここで、同じグループG1に割り当てられる1以上の音響装置2は、互いに近傍に位置している。そして、あるグループG1に割り当てられる1以上の音響装置2は、オフィス3において当該グループG1に対応する空間に音を出力する。
【0085】
例えば、3つのグループG1がグループ「A」、「B」、「C」である、と仮定する。この場合、グループ「A」に割り当てられた1以上の音響装置2は、オフィス3においてグループ「A」に対応する空間「α」に音を出力し、グループ「B」に割り当てられた1以上の音響装置2は、オフィス3においてグループ「B」に対応する空間「β」に音を出力し、グループ「C」に割り当てられた1以上の音響装置2は、オフィス3においてグループ「C」に対応する空間「γ」に音を出力する。
【0086】
各音響装置2のグループG1への割り当ては、各照明器具1のグループG1への割り当てと同様に、環境制御システム100の管理者が情報端末を用いることで、あらかじめ実行される。
【0087】
なお、隣り合う2つの空間において、一方の空間に設置された音響装置2から出力される音は、一方の空間のみに出力されなくてもよく、一部の音が他方の空間へと漏れ出ることが許容されている。つまり、任意の空間においては、当該空間に対応する音響装置2から出力される音が主たる音となっていればよく、当該空間とは異なる空間からの音の一部が漏れてきても、当該空間の音響に影響を与えなければよい。
【0088】
音響制御部17は、各音響装置2と通信可能であって、各音響装置2に音響制御信号(再生させたいコンテンツを含む)を送信することにより、各音響装置2にコンテンツを再生させるように制御する。ここでは、音響制御部17は、同じグループG1に割り当てられた1以上の音響装置2に対しては、同じ音響制御信号を送信する。つまり、音響制御部17は、各音響装置2をグループG1ごとに制御する。音響制御部17と各音響装置2との間の通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよいし、通信規格も特に限定されない。
【0089】
また、コンテンツは、音響制御部12に保存されていてもよいし、各音響装置2に保存されていてもよいし、記憶部16に保存されていてもよい。コンテンツは、例えば、WAV形式、mp3形式などの電子データ媒体で保存されるが、これに限定されるものではなく、たとえばコンパクトディスク(CD)など、公知のいかなる保存方法で保存されてもよい。
【0090】
指示部12は、音響制御部17に制御信号を送信することにより、音響制御部17に対して指示する。音響制御部17は、指示部12から制御信号を受信すると、受信した制御信号の内容に従って、各グループG1の1以上の音響装置2、言い換えれば各空間に割り当てられた1以上の音響装置2を制御する。つまり、指示部12は、複数の特定空間SP1の各々に割り当てられた音響装置2の出力を制御する音響制御部17に対して指示するように構成されている。
【0091】
そして、指示部12は、複数の特定空間SP1のうちのいずれかの特定空間SP1において、演算部14にて演算された滞留指数が閾値を超えると、少なくとも当該特定空間SP1における音響装置2の出力制御を変更するように音響制御部17に対して指示する。例えば、滞留指数が閾値を超える前において特定空間SP1に音楽等が再生されていない場合、指示部12は、何らかの音楽等を特定空間SP1にて再生するように音響制御部17に対して指示する。一方、滞留指数が閾値を超える前において既に特定空間SP1に音楽等が再生されている場合、指示部12は、逆の性質を有する音楽等を特定空間SP1にて再生するように音響制御部17に対して指示する。
【0092】
上述のように、音が特定空間SP1に出力されるので、特定空間SP1に滞留しがちなユーザに対して、他の特定空間SP1へと移動する契機を更に与えやすくなり、ユーザの動線の滞留を更に解消しやすくなる、という利点がある。
【0093】
[実施の形態の変形例2]
実施の形態の変形例2に係る環境制御システム100は、
図5に示すように、通知部18を備えている点で、実施の形態に係る環境制御システム100と相違する。
図5は、実施の形態の変形例2に係る環境制御システム100の機能構成を示すブロック図である。
【0094】
通知部18は、演算部14にて演算された滞留指数に関する情報をユーザに通知する。例えば、通知部18は、オフィス3の平面図であって、特定空間SP1の滞留指数を可視化したヒートマップ又はグラフ等(以下、単に「マップ等」という)を生成する。そして、通知部18は、生成したマップ等をユーザの使用する情報端末へ送信する。これにより、ユーザは、情報端末にて受信したマップ等を確認することにより、特定空間SP1の滞留度合いを把握することが可能である。
【0095】
また、通知部18は、生成したマップ等を、オフィス3に設置されたプロジェクタへ送信してもよい。この場合、プロジェクタは、受信したマップ等をスクリーンに投影する。これにより、ユーザは、スクリーンに投影されたマップ等を確認することにより、特定空間SP1の滞留度合いを把握することが可能である。なお、プロジェクタは、スクリーンの代わりに、オフィス3の壁、又は天井等にマップを投影してもよい。
【0096】
その他、通知部18は、マップ等を送信する代わりに、特定空間SP1の滞留度合いを表すメッセージ、又は音声コンテンツをユーザに通知してもよい。もちろん、通知部18は、上記のマップ等、メッセージ、及び音声コンテンツを適宜組み合わせてユーザに通知してもよい。
【0097】
[その他の変形例]
実施の形態では、3時間ごとに滞留指数を演算しているが、更に短い周期で滞留指数を演算してもよいし、更に長い周期で滞留指数を演算してもよい。
【0098】
実施の形態では、演算部14は、ユーザの区別なく滞留指数を演算しているが、これに限らない。例えば、演算部14は、取得部13にて取得されたユーザの識別情報に基づいて、ユーザごとに滞留指数を演算してもよい。この場合、特定のユーザに焦点を当てて、特定空間SP1に滞在している特定のユーザに対して、他の空間への移動の契機を与えることが可能である。
【0099】
実施の形態では、オフィス3は、他に部屋の存在しない1つの大部屋で構成されているが、これに限らない。例えば、オフィス3は、1以上の部屋を有する大部屋で構成されていてもよいし、複数の階層に跨って構成されていてもよい。
【0100】
実施の形態では、環境制御システム100は、1つのオフィス3を対象としているが、これに限らない。例えば、環境制御システム100は、複数のオフィス3を対象とし、オフィス3ごとに各照明器具1を制御してもよい。
【0101】
実施の形態では、照明器具1は環境制御システム100の構成要素に含まれていないが、照明器具1が環境制御システム100の構成要素に含まれていてもよい。同様に、実施の形態の変形例1では、音響装置2は環境制御システム100の構成要素に含まれていないが、音響装置2が環境制御システム100の構成要素に含まれていてもよい。
【0102】
また、例えば、上記実施の形態では、環境制御システム100は、複数の装置によって実現されたが、単一の装置として実現されてもよい。例えば、環境制御システム100は、サーバ装置に相当する単一の装置として実現されてもよい。環境制御システム100が複数の装置によって実現される場合、環境制御システム100が備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。例えば、上記実施の形態でサーバ装置が備える構成要素は、閉空間に設置された情報端末に備えられてもよい。つまり、本発明は、クラウドコンピューティングによって実現されてもよいし、エッジコンピューティングによって実現されてもよい。
【0103】
例えば、上記実施の形態における装置間の通信方法については特に限定されるものではない。また、装置間の通信においては、図示されない中継装置が介在してもよい。
【0104】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0105】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0106】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0107】
例えば、本発明は、環境制御システム100等のコンピュータが実行する環境制御方法として実現されてもよいし、このような環境制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0108】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【0109】
(まとめ)
以上述べたように、環境制御システム100は、指示部12と、取得部13と、演算部14と、を備える。指示部12は、複数の特定空間SP1の各々に割り当てられた照明器具1の発光を制御する照明制御部11に対して指示する。取得部13は、複数の特定空間SP1の各々に存在するユーザに関する情報を取得する。演算部14は、取得部13にて取得されたユーザに関する情報に基づいて、複数の特定空間SP1の各々におけるユーザの滞留指数を演算する。指示部12は、複数の特定空間SP1のうちのいずれかの特定空間SP1において、演算部14にて演算された滞留指数が閾値を超えると、少なくとも当該特定空間SP1における照明器具1の発光制御を変更するように照明制御部11に対して指示する。
【0110】
このような環境制御システム100によれば、特定空間SP1に滞留しがちなユーザに対して、他の空間への移動の契機を与えることができ、ユーザの動線の滞留を解消しやすくなる、という利点がある。
【0111】
また、例えば、環境制御システム100では、取得部13は、ユーザに関する情報として、複数の特定空間SP1の各々での任意の時刻におけるユーザの存在情報を取得する。演算部14は、取得部13にて取得された存在情報に基づいて、複数の特定空間SP1の各々におけるユーザの滞留指数を演算する。
【0112】
このような環境制御システム100によれば、比較的取得しやすいユーザの滞在時間に基づいて滞留指数を演算するので、特定空間SP1におけるユーザの滞留度合いを求めやすい、という利点がある。
【0113】
また、例えば、環境制御システム100では、取得部13は、ユーザに関する情報として、任意の時刻におけるユーザの識別情報を取得する。演算部14は、取得部13にて取得された識別情報に基づいて、複数の特定空間SP1の各々におけるユーザの滞留指数を演算する。
【0114】
このような環境制御システム1000によれば、比較的取得しやすいユーザの識別情報に基づいて滞留指数を演算するので、特定空間SP1におけるユーザの滞留度合いを求めやすい、という利点がある。
【0115】
また、例えば、環境制御システム100では、照明器具1の発光制御は、照度若しくは色温度の設定値を変更する制御、滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1に割り当てられる照明器具1の数を増減する制御、又はスポット光を照射する制御を含む。
【0116】
このような環境制御システム100によれば、特定空間SP1に滞留しがちなユーザが、特定空間SP1の照明環境の変化を視覚的に把握しやすくなる、という利点がある。
【0117】
また、例えば、環境制御システム100では、照明器具1の発光制御は、ユーザに対して滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1以外の空間への移動を促す制御を含む。
【0118】
このような環境制御システム100によれば、特定空間SP1に滞留しがちなユーザが他の空間へ移動しやすくなる、という利点がある。また、このような環境制御システム100では、例えば、滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1の感染リスクを低減するために、当該特定空間SP1の照度を低くしたり、照明を点滅させたり等して、ユーザに移動を促すための能動的な制御を行ってもよい。このような制御を行うことで、複数のユーザが密接したり、又は密集したりする状況を解消しやすくなり、感染リスクを低減しやすくなる、という利点がある。
【0119】
また、例えば、環境制御システム100では、照明器具1の発光制御は、ユーザに対して滞留指数が閾値を超えた特定空間SP1以外の空間から当該特定空間SP1への移動を促す制御を含む。
【0120】
このような環境制御システム100によれば、ユーザの移動の活性化を図りやすい、という利点がある。
【0121】
また、例えば、環境制御システム100では、指示部12は、複数の特定空間SP1の各々に割り当てられた音響装置2の出力を制御する音響制御部17に対して指示するように構成される。指示部12は、複数の特定空間SP1のうちのいずれかの特定空間SP1において、演算部14にて演算された滞留指数が閾値を超えると、少なくとも当該特定空間SP1における音響装置2の出力制御を変更するように音響制御部17に対して指示する。
【0122】
このような環境制御システム100によれば、音が特定空間SP1に出力されるので、特定空間SP1に滞留しがちなユーザに対して、他の特定空間SP1へと移動する契機を更に与えやすくなり、ユーザの動線の滞留を更に解消しやすくなる、という利点がある。
【0123】
また、例えば、環境制御システム100は、演算部14にて演算された滞留指数に関する情報をユーザに通知する通知部18を更に備える。
【0124】
このような環境制御システム100によれば、特定空間SP1の滞留度合いをユーザが把握することが可能である。
【0125】
また、例えば、環境制御システム100は、ユーザからの入力に応じて、演算部14にて用いられる閾値を設定する設定部15を更に備える。
【0126】
このような環境制御システム100によれば、特定空間SP1にユーザが滞留しているか否かの判定にユーザの主観を反映することが可能である。
【0127】
また、例えば、環境制御方法は、指示ステップST1と、取得ステップST2と、演算ステップST3と、を含む。指示ステップST1では、複数の特定空間SP1の各々に割り当てられた照明器具1の発光を制御する照明制御部11に対して指示する。取得ステップST2では、複数の特定空間SP1の各々に存在するユーザに関する情報を取得する。演算ステップST3では、取得ステップST2にて取得したユーザに関する情報に基づいて、複数の特定空間SP1の各々におけるユーザの滞留指数を演算する。指示ステップST1では、複数の特定空間SP1のうちのいずれかの特定空間SP1において、演算ステップST3にて演算された滞留指数が閾値を超えると、少なくとも当該特定空間SP1における照明器具1の発光制御を変更するように照明制御部11に対して指示する。
【0128】
このような環境制御方法によれば、特定空間SP1に滞留しがちなユーザに対して、他の空間への移動の契機を与えることができ、ユーザの動線の滞留を解消しやすくなる、という利点がある。
【0129】
また、例えば、プログラムは、1以上のプロセッサに、上記の環境制御方法を実行させる。
【0130】
このようなプログラムによれば、特定空間SP1に滞留しがちなユーザに対して、他の空間への移動の契機を与えることができ、ユーザの動線の滞留を解消しやすくなる、という利点がある。
【符号の説明】
【0131】
100 環境制御システム
11 照明制御部
12 指示部
13 取得部
14 演算部
15 設定部
17 音響制御部
18 通知部
1 照明器具
2 音響装置
SP1 特定空間
ST1 指示ステップ
ST2 取得ステップ
ST3 演算ステップ