(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】頭皮ケア装置
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A61H7/00 320A
(21)【出願番号】P 2019160687
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2021-09-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】近澤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】堀 理沙
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏之
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】後藤 泰輔
【審判官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0030687(KR,A)
【文献】特開2009-39503(JP,A)
【文献】特開2011-172631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00, 23/02, 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭皮をケアするケア部と、
頭皮を撮影する撮影部と、
頭皮に対向するように前記ケア部および前記撮影部を支持する支持部と、
前記撮影部により撮影された画像を参照して頭皮に関する情報を含む頭皮情報を検出する検出部から前記頭皮情報を取得し、前記頭皮情報に応じて前記ケア部を制御する制御部とを備え、
前記ケア部は第1ケア手段を出力する出力部、および、頭皮をマッサージする施療部の少なくとも1つを含み、
前記出力部は光を出力する光出力部、流体を出力する流体出力部、および、超音波を出力する超音波出力部の少なくとも1つを含み、
前記制御部は
前記光出力部、前記流体出力部、前記超音波出力部、および、前記施療部の少なくとも1つの動作が停止しているとき、前記撮影部が撮影するように前記撮影部を制御する
頭皮ケア装置。
【請求項2】
前記制御部は
前記施療部の動作が停止しているとき、および、前記施療部が前記撮影部から離れる方向に動作するとき、前記撮影部が撮影するように前記撮影部を制御する
請求項1に記載の頭皮ケア装置。
【請求項3】
前記施療部は間隔を空けて設けられる第1施療部および第2施療部を含み、
前記撮影部は前記第1施療部と前記第2施療部との間に設けられる
請求項1または2に記載の頭皮ケア装置。
【請求項4】
前記制御部は前記施療部の負荷を参照して頭皮の状態を解析する
請求項1~3のいずれか一項に記載の頭皮ケア装置。
【請求項5】
前記制御部は前記施療部の負荷に応じて前記ケア部を制御する
請求項1~4のいずれか一項に記載の頭皮ケア装置。
【請求項6】
前記撮影部の撮影範囲から髪の毛が除かれるように前記撮影部の周囲に設けられる櫛をさらに含む
請求項1~5のいずれか一項に記載の頭皮ケア装置。
【請求項7】
前記支持部は、ハウジングおよびカバーを含む本体であり、
前記本体はハンディタイプ構造を備える
請求項1~6のいずれか一項に記載の頭皮ケア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭皮をケアする頭皮ケア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
頭皮ケア装置として、例えばハンディタイプの頭皮ケア装置が知られている。頭皮ケア装置は頭皮をマッサージする施療部を備えている。施療部が頭皮に充てられた状態において施療部が動作することにより頭皮がマッサージされる。特許文献1は従来の頭皮ケア装置の一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
頭皮の状態を把握することにより頭皮の状態に適した頭皮のケアを実行できる。
本発明の目的は頭皮を適切にケアできる頭皮ケア装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に関する頭皮ケア装置は、頭皮をケアするケア部と、頭皮を撮影する撮影部と、頭皮に対向するように前記ケア部および前記撮影部を支持する支持部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に関する頭皮ケア装置によれば、頭皮を適切にケアできる頭皮ケア装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】カバーがハウジングに固定される構造を示す模式図。
【
図7】頭皮の状態から毛根を検出した状態を示す図。
【
図8】頭皮の状態を検出部が検出した結果の一例を示すグラフ。
【
図10】施療部が頭皮に接触した状態を示す模式図。
【
図11】施療部が施療中の状態の一例を示す模式図。
【
図12】施療部の負荷と距離との関係の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(頭皮ケア装置が取り得る形態の一例)
本発明に関する頭皮ケア装置は、頭皮をケアするケア部と、頭皮を撮影する撮影部と、頭皮に対向するように前記ケア部および前記撮影部を支持する支持部とを備える。
上記頭皮ケア装置によれば、ケア部および撮影部が支持部に設けられるため、ケア部による頭皮のケアの対象部位が適切に撮影される。使用者や頭皮ケア装置は撮影された画像を頭皮の適切なケアに利用できる。
【0009】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記撮影部により撮影された画像を参照して頭皮に関する情報を含む頭皮情報を検出する検出部から前記頭皮情報を取得し、前記頭皮情報に応じて前記ケア部を制御する制御部をさらに備える。
上記頭皮ケア装置によれば、頭皮の状態に応じて施療部が自動的に制御され、ユーザビリティが向上する。
【0010】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記制御部は前記ケア部の動作に応じて前記撮影部が撮影するように前記撮影部を制御する。
上記頭皮ケア装置によれば、ケア部の動作状態に応じて頭皮が適切に撮影される。
【0011】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記制御部は前記ケア部の動作が停止しているとき、前記撮影部が撮影するように前記撮影部を制御する。
上記頭皮ケア装置によれば、撮影部が撮影する場合にケア部の影響を受けにくく、頭皮が適切に撮影される。
【0012】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記ケア部は頭皮をマッサージする施療部を含む。
施療部による頭皮のマッサージにより例えば頭皮の血行が改善される。
【0013】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記制御部は前記施療部が前記撮影部から離れる方向に動作するとき、前記撮影部が撮影するように前記撮影部を制御する。
上記頭皮ケア装置によれば、撮影部により撮影された画像に、第1施療部および第2施療部によるマッサージの影響が反映されやすくなる。
【0014】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記施療部は間隔を空けて設けられる第1施療部および第2施療部を含み、前記撮影部は前記第1施療部と前記第2施療部との間に設けられる。
【0015】
第1施療部と第2施療部との間隔が広がるように第1施療部および第2施療部が動作した状態では、第1施療部と第2施療部との間の部分が髪の毛に覆われにくく、頭皮が適切に撮影される。
【0016】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記制御部は前記施療部の負荷を参照して頭皮の状態を解析する。
【0017】
施療部の負荷には頭皮の状態が反映される。例えば頭皮が硬くなるほど施療部の負荷が高くなる。頭皮の状態を検出する専用のデバイスが頭皮ケア装置に設けられない場合でも、頭皮の状態が解析される。
【0018】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記制御部は前記施療部の負荷に応じて前記ケア部を制御する。
頭皮の状態に応じてケア部が制御され、ケア部による頭皮のケアの効果が高くなる。
【0019】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記ケア部は頭皮に光を照射する照射部、および、頭皮に流体を供給する供給部の少なくとも1つを含む。
照射部により頭皮に光が照射される場合、光の波長に応じた頭皮のケア効果が得られる。供給部により頭皮に流体が供給される場合、流体の種類や流体に含まれる成分に応じた頭皮のケア効果が得られる。
【0020】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記撮影部の撮影範囲から髪の毛が除かれるように前記撮影部の周囲に設けられる櫛をさらに含む。
上記頭皮ケア装置によれば、撮影部の撮影範囲が髪の毛により覆われにくく、頭皮が適切に撮影される。
【0021】
前記頭皮ケア装置の一例によれば、前記支持部は、ハウジングおよびカバーを含む本体であり、前記本体はハンディタイプ構造を備える。
上記頭皮ケア装置によれば、ユーザビリティが向上する。
【0022】
(実施の形態1)
図1~
図5を参照して頭皮ケア装置10の構成について説明する。
図1は頭皮ケア装置10の一例を示している。頭皮ケア装置10は、頭皮をケアする機能を備える。頭皮ケアは、例えば頭皮環境の改善および毛髪ケアの少なくとも1つを含む。頭皮環境の改善は、例えば頭皮の血流の増加、頭皮の汚れの除去、および、頭皮のうるおいの増加の少なくとも1つを含む。頭皮の汚れは、例えば皮脂および角栓の少なくとも1つを含む。毛髪ケアは、例えば抜け毛の抑制、毛髪の活性化、および、毛髪の成長の促進を含む。
【0023】
一例では、頭皮ケア装置10は、頭皮環境の改善機能、および、毛髪ケア機能の少なくとも1つを含むケア部20を備える。ケア部20に頭皮環境の改善機能が含まれる例では、ケア部20は、血流を増加させる第1ケア部、頭皮の汚れを除去する第2ケア部、および、頭皮のうるおいを増加させる第3ケア部の少なくとも1つを含む。第1ケア部は、例えば頭皮をマッサージする施療部40、および、血流の増加に寄与する光を照射する光出力部31の少なくとも1つを含む。第2ケア部は、例えば洗浄剤を頭皮に供給する流体出力部32を含む。第3ケア部は、例えば水分および保湿剤の少なくとも1つを頭皮に供給する流体出力部32を含む。
【0024】
ケア部20に毛髪をケアする機能が含まれる例では、ケア部20は抜け毛を抑制する第4ケア部、毛髪を活性化させる第5ケア部、および、毛髪の成長を促進させる第6ケア部の少なくとも1つを含む。第4ケア部は、頭皮をマッサージする施療部40、および、抜け毛の抑制に寄与する有効成分を供給する光出力部31、および、流体出力部32の少なくとも1つを含む。第5ケア部は毛髪の活性化に寄与する有効成分を供給する光出力部31、および、流体出力部32の少なくとも1つを含む。第6ケア部は毛髪の成長の促進に寄与する有効成分を供給する、流体出力部32、および、毛髪の成長の促進に寄与する光を照射する光出力部31の少なくとも1つを含む。
【0025】
頭皮ケア装置10の形態は、例えばハンディタイプまたはビルトインタイプに分類される。ハンディタイプの頭皮ケア装置10では、頭皮ケア装置10は、ユーザが手に持つことができるように構成される。ビルトインタイプの頭皮ケア装置10では、頭皮ケア装置10は、支持部に組み込むことができるように構成される。支持部は、例えば頭皮の周囲に配置されるベースを含む。
【0026】
図1に例示される頭皮ケア装置10は、ハンディタイプの頭皮ケア装置10である。頭皮ケア装置10は、本体11を含む。本体11は、ハウジング12およびカバー13を含む。ハウジング12は、頭皮ケア装置10を構成する各種要素が収容される。ハウジング12は、例えばポリカーボネート樹脂により構成される。カバー13は、ハウジング12の少なくとも一部を覆うように構成される。カバー13は、例えば弾性部材により構成される。一例では、弾性部材は、ゴムにより構成される。
【0027】
頭皮ケア装置10を構成する主な要素は、ケア部20、撮影部50、および、制御部60である。ケア部20は、使用者のスキンケアをするケア手段を出力する。撮影部50は、少なくとも使用者の頭皮を撮影する。制御部60は、撮影部50により撮影された画像から得られた頭皮情報に応じて、ケア部20を制御する。ケア部20、撮影部50、および、制御部60の少なくとも1つは、本体11によって支持される。本体11は、ケア部20および撮影部50の少なくとも1つを外部に開放するための開口14をさらに含む。開口14は、出力部30および撮影部50の構成に応じて、任意の数が選択される。ケア部20は、支持部Sに固定される、または、支持部Sに着脱できるように構成される。撮影部50は、支持部Sに固定される、または、支持部Sに着脱できるように構成される。支持部Sは、ケア部20および撮影部50が頭皮に対向するようにケア部20および撮影部50を支持する。支持部Sの一例は、本体11である。ケア部20が頭皮に対向し、頭皮に接触する状態では、ケア部20は、対向する頭皮の部位を含むケア対象範囲をケアできる。撮影部50が頭皮に対向する状態では、撮影部50は、ケア対象範囲を含む撮影対象範囲を撮影できる。ケア部20の施療部40が頭皮に接触した状態では、撮影部50と頭皮との間に空間が形成される。
【0028】
ケア部20は、出力部30および施療部40を含む。出力部30は、第1ケア手段を出力する。第1ケア手段は流体、光、および、超音波の少なくとも1つによるケア手段を含む。出力部30は、光を出力する光出力部31、流体を出力する流体出力部32、および、超音波を出力する超音波出力部の少なくとも1つを含む。図示される例では、出力部30は、光出力部31および流体出力部32を含む。
【0029】
光出力部31は、例えば所定の波長の光を出力する発光ダイオードである。所定の波長は、第1例では発毛および育毛に効果のある主波長が610~740nmの赤色光である。第2例では、発毛および育毛に効果のある主波長が740nm~1450nmの赤外光である。第3例では、殺菌効果のある主波長が400~495nmの波長である青色光である。
【0030】
流体出力部32は、液体を保存するタンク、液体をミスト状に生成するミスト生成部、および、ミストを噴霧するためのノズルを含む。ミスト生成部は、ヒータおよびボイラにより構成される。頭皮ケア装置10は、流体出力部32から発生する流体を帯電させる放電装置を含んでいてもよい。放電装置は、負の高電圧を印加し、コロナ放電を発生させることによりマイナスイオンを生成し、流体にマイナスイオンを付与する。流体出力部32は、出力する流体と共に、頭皮ケアに有用な成分を付与する構成としてもよい。頭皮ケアに有用な成分の一例は、頭皮のカルボニル化を抑制する抗酸化物質および頭皮を弱酸性に構成する酸性成分、および、頭皮の皮脂を洗浄するための界面活性成分である。抗酸化物質の一例は、アンモニウムイオンである。酸性成分の一例は、硝酸イオンである。流体は、気体により構成されていてもよい。
【0031】
施療部40は、第2ケア手段を出力する。第2ケア手段は、物理的なケア手段を含む。物理的なケア手段は、例えば叩く、揉む、および、押圧することの少なくとも1つを含む。施療部40は、第1施療部41および第2施療部42を含む。第1施療部41と第2施療部42とは、同じ物理的なケア手段を出力してもよく、異なる物理的なケア手段を出力してもよい。第1施療部41と第2施療部42とは、同様のタイミングで物理的なケア手段を出力してもよく、異なるタイミングで物理的なケア手段を出力してもよい。
図1および
図2に示される例では、第1施療部41と第2施療部42とは、異なるタイミングで物理的なケア手段を出力するように構成される。
【0032】
施療部40は、物理的なケア手段を行うための駆動部43をさらに含む。駆動部43は、第1施療部41を駆動する第1駆動部43Aおよび第2施療部42を駆動する第2駆動部43Bを含む。駆動部43は、第1例ではモータおよびボールねじを含む電動アクチュエータにより構成される。第2例では、モータおよびギアを含むカム構造により構成される。
【0033】
第1施療部41は、第1施療子41Aおよび第1出力軸41Bを含む。第1施療子41Aは、頭皮と直接的またはカバーを介して接触し、物理的なケア手段を伝達する。第1出力軸41Bは、第1駆動部43Aから伝達される動力を軸の回転および軸方向への移動の少なくとも一方により、第1施療子41Aを物理的に動作させる。
【0034】
第2施療部42は、第2施療子42Aおよび第2出力軸42Bを含む。第2施療子42Aは、頭皮と直接的またはカバーを介して接触し、物理的なケア手段を伝達する。第2出力軸42Bは、第2駆動部43Bから伝達される動力を軸の回転および軸方向への移動の少なくとも一方により、第2施療子42Aを物理的に動作させる。
【0035】
撮影部50は、赤外線カメラ51および可視光カメラ52の少なくとも一方を含む。撮影部50は、使用者の頭皮の画像を撮影する。画像は、静止画および動画を含む。赤外線カメラ51から所定の間隔を空けて赤外線照明54が配置される。可視光カメラ52から所定の間隔を空けて可視光照明55が配置される。赤外線カメラ51および可視光カメラ52は、それぞれ所定の間隔を空けて複数のレンズを備えるように構成されていてもよい。撮影部50は、第1施療部41および第2施療部42の間に配置される。撮影部50の周囲には、櫛部53が形成される。
【0036】
制御部60は、制御プログラムを実行する演算処理装置により構成される。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびMPU(Micro Processing Unit)の少なくとも一方により構成される。制御部60は、例えば出力部30、施療部40、および、撮影部50を制御する。
【0037】
制御部60は、撮影部50が頭皮を撮影するタイミングを制御する。制御部60は、ケア部20の動作に応じて、撮影部50が頭皮を撮影するタイミングを制御する。一例では、制御部60は、出力部30および施療部40の少なくとも一方が稼働していないとき、撮影部50が頭皮を撮影するように制御する。好ましくは、制御部60は、出力部30および施療部40の両方が稼働していないとき、撮影部50が頭皮を撮影するように制御する。出力部30が稼働していないとは、出力部30を構成する光出力部31、流体出力部32、および超音波出力部の少なくとも1つが出力していないときを含む。施療部40が稼働していないときとは、第1例では、第1施療子41Aおよび第2施療子42Aの少なくとも一方が停止しているときを含む。第2例では、駆動部43が停止しているときを含む。第3例では、第1施療子41Aおよび第2施療子42Aの少なくとも一方が可動範囲の上限または下限に達したことにより、折り返すときを含む。
【0038】
頭皮ケア装置10は、検出部70および記憶部80をさらに含む。検出部70は、少なくとも撮影部50により撮影された画像を参照して、頭皮に関する情報を含む頭皮情報を検出する。検出部70は、演算処理装置である。頭皮情報は、使用者の頭皮の血流量、皮脂分泌量、キメ、水分量、毛髪の直径、毛髪の密度、毛髪の色、および、毛根の水分量の少なくとも1つを含む。
【0039】
記憶部80は、頭皮ケア装置10に関する種々の情報を記憶する。記憶部80は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリの少なくとも一方により構成される。記憶部80は、例えば制御部60および検出部70が使用するプログラム、撮影部50が撮影した画像および頭皮情報を記憶する。
【0040】
図4を参照して、櫛部53を備える撮影部50の構成について説明する。図示される例では、赤外線カメラ51、赤外線照明54、可視光カメラ52、および、可視光照明55の周りに、1つまたは複数の櫛部53が設けられる。櫛部53は、頭皮ケア装置10を頭皮に近づけたときに、撮影部50と頭皮との間に存在する毛髪量が少なくなるように構成され、赤外線照明54と赤外線カメラ51の間および可視光照明55と可視光カメラ52の間に毛髪が存在してできる影をなくすことにより、検出部70で演算する頭皮情報の誤差が低減される。
【0041】
櫛部53の形状は、一例では三角錐状様に形成される。好ましくは、三角錐状様に形成された櫛部53は、頭皮と対向する頂点部分が曲面により構成される。櫛部53は、撮影部50と対向する第1端部53Aおよび第1端部53Aを挟んだ反対側の第2端部53Bを含む。櫛部53は、第1端部53Aから第2端部53Bに向かうにつれて、幅が小さくなるように構成される。
【0042】
図5を参照して、カバー13がハウジング12に取り付けられた状態について説明する。
カバー13は、ハウジング12に取り付けられた状態において、頭皮と対向する第1面13Aおよび第1面13Aと直交し、ハウジング12側に延伸する第2面13B、および、第2面13Bと直交し、第1面13Aと平行である第3面13Cとを含む。第3面13Cは、第2面13Bから突出するリブである。第3面13Cが、ハウジング12と係合することで、施療部40の動作により、ハウジング12に対してカバー13が必要以上に浮き上がることが抑制される。
【0043】
図6~8を参照して、頭皮に関する情報である頭皮情報を取得する取得方法について説明する。検出部70は、赤外線カメラ51で撮影した画像(以下「赤外線画像」という)および可視光カメラ52で撮影した画像(以下「可視光画像」という)の少なくとも一方において特定される頭皮の領域から、頭皮に関する情報を含む頭皮情報を検出する。具体的には、検出部70は、赤外線画像および可視光画像の少なくとも一方において頭皮の状態を数値化し、記憶部80に記憶された判断基準に基づいて、頭皮に関する情報を検出する。判断基準は、頭皮の血流量、皮脂分泌量、キメ、水分量、毛髪の直径、毛髪の密度、毛髪の色、および、毛根の水分量の少なくとも1つを含む。判断基準は、試験等により予め設定される。判断基準は、頭皮に関する事項ごとに設定される。一例では、赤外線画像において、判断基準の1つである光の反射を示す値が所定値以上であるときに、血流量が多い状態であると判断される。赤外線画像において、光の反射を示す値が所定値未満であるときに、血流量が少ない状態であると判断される。
【0044】
図6は、可視光画像の一例を示す。検出部70は、可視光画像から、頭皮に関する情報を検出する。一例として、皮脂分泌量の検出方法を説明する。検出部70は、皮脂分泌量の多い毛根の位置を検出する。
図7は、可視光画像から、毛根の位置を特定した結果を示す一例である。具体的には、検出部70は、可視光画像を2値化し毛根の位置を特定する。検出部70は、各毛根の位置における皮脂分泌量を判断基準に従って判断する。一例では、判断基準は、可視光画像の明度である。明度が所定値以上である場合に、皮質分泌量が多い状態であると判断される。
【0045】
制御部60は、ケア部20を制御するケア部制御を実行する。ケア部制御では頭皮情報に応じてケア部20を制御する。ケア部制御は、出力部30および施療部40の制御を含む。制御部60は、頭皮情報を参照し供給条件が満たされているか否かを判定する。供給条件は、頭皮へのケア手段の供給に適した状況であるか否かを判定できるように予め決められる。頭皮へのケア手段の供給に適した状況は、例えば出力部30スキンケアの効果が期待できる状態である状況を含む。供給条件が満たされる場合、頭皮へのケア手段の供給に適した状況である判定される。供給条件が満たされない場合、頭皮へのケア手段の供給に適した状況ではないと判定される。
【0046】
供給条件が成立したか否かは、任意の条件により設定される。第1例では、検出部70が検出した頭皮情報のうち、1つ以上が所定値を上回ったとき、供給条件が成立したと判定する。別の例では、供給条件は、検出部70が検出した頭皮情報のうち、過半数が所定値を上回ったとき、供給条件が成立したと判定する。制御部60は、頭皮情報に応じて出力部30および施療部40の出力の強さを制御する。出力の強さは、単位時間あたりのケア手段の出力量およびケア手段の出力時間の少なくとも一方を含む。
【0047】
実施の形態1の頭皮ケア装置10の作用について説明する。
図5に示されるように、使用者は頭皮回りに頭皮ケア装置10を近づける。このとき、撮影部50に設けられる櫛部53により、頭皮の近くに存在する毛髪の量が減少する。制御部60は、ケア部20が稼働していないとき、撮影部50を制御し、画像を撮影する。検出部70は、得られた画像から頭皮情報を検出する。制御部60は、頭皮情報に応じてケア部20を制御する。
【0048】
頭皮情報からケアが必要ないと判断されると、出力部30からのケア手段の出力が停止される。これは例えば、ケア手段が浪費されることを抑制する効果、および、頭皮以外の部分にケア手段が供給されることを抑制する効果の少なくとも一方を奏することに寄与する。
【0049】
(実施の形態2)
実施の形態2の頭皮ケア装置10の構成について説明する。実施の形態2の頭皮ケア装置10の構成は、実施の形態1の頭皮ケア装置10の構成と一部相違し、それ以外の点では実質的に同一である。主な相違点は、実施の形態2の頭皮ケア装置10は、施療部40の動作状態が異なり、検出部70は、頭皮情報として、さらに頭皮の硬さに関する情報を検出する。制御部60は、頭皮の硬さに関する情報に応じて、ケア部20を制御する。
【0050】
図9に示される実施の形態2の頭皮ケア装置10の駆動部43は、第3駆動部43Cをさらに含む。第3駆動部43Cは、第1施療子41Aと第2施療子42Aとの距離を任意の距離に変更できる構成を備える。第3駆動部43Cは、例えばモータおよび反転ギアで構成される。図示される例では、第1駆動部43Aは、第1施療子41Aを中心軸による回転および中心軸方向の移動の少なくとも1つが実行できるように構成される。第2駆動部43Bは、第2施療子42Aを中心軸による回転および中心軸方向の移動の少なくとも1つが実行できるように構成される。制御部60は、第1駆動部43A、第2駆動部43B、および、第3駆動部43Cの少なくとも1つを制御することで、施療部40を制御する。
【0051】
図10~12を参照して、頭皮の硬さに関する情報を検出する検出方法について説明する。
図10で示されるように、第1施療子41Aおよび第2施療子42Aは、頭皮と接触する。第1施療子41Aと第2施療子42Aとの第1距離X1を検出部70が検出する。
図11で示されるように、制御部60は、第1施療子41Aと第2施療子42Aとの距離が第1距離X1よりも長い第2距離X2となるように、駆動部43を駆動する。検出部70は、施療部40に係る負荷を検出する。施療部40に係る負荷は、第1例では、第1施療子41Aおよび第2施療子42Aに係る力である。第2例では、駆動部43を構成するモータに流れる電流または電圧の量である。
【0052】
図12は、第1施療子41Aと第2施療子42Aとの距離と施療部40に係る負荷との関係を示すグラフである。それぞれの関係は、予め試験等により得られた結果が記憶部80に記憶される。実線は、頭皮の硬さが普通であるときのそれぞれの関係を示す。破線は、頭皮の硬さが硬いときのそれぞれの関係を示す。一点鎖線は、頭皮の状態が柔らかいときのそれぞれの関係を示す。制御部60は、頭皮の状態が硬い状態であるとき、例えば施療部40の運動量を増加させる。制御部60は、頭皮の状態が柔らかい状態であるとき、施療部40の運動量を減少させる。
【0053】
実施の形態2の頭皮ケア装置10の作用について説明する。
使用者は、頭皮に頭皮ケア装置10を接触させる。このとき、第1施療子41Aと第2施療子42Aとの距離は、第1距離X1である。制御部60は、第1施療子41Aと第2施療子42Aとの距離が長くなるように駆動部43を制御する。このとき、制御部60は、撮影部50を制御して、頭皮の画像を撮影する。第1施療子41Aと第2施療子42Aとの距離が、第1距離よりも長い第2距離X2であるとき、検出部70は、施療部40に係る負荷を検出する。検出部70は、頭皮の硬さを含む頭皮の状態を施療部40に係る負荷から検出する。検出部70は、頭皮の画像から、頭皮に関する情報を検出する。制御部60は、頭皮の状態および頭皮に関する情報に応じて、施療部40を制御する。
【0054】
(変形例)
実施の形態に関する説明は本発明に関する各頭皮ケア装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明は各実施の形態以外に例えば以下に示される実施の形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0055】
・頭皮ケア装置10における、出力部30と撮影部50との位置関係は任意に変更できる。第1例では、
図13に示されるように、撮影部50を取り囲むように出力部30が配置される。第2例では、
図14に示されるように撮影部50を中心に複数箇所に出力部30が設けられる。第3例では、
図15に示されるように、出力部30と撮影部50とが1つずつ中心から離れた箇所に設けられる。
【0056】
頭皮に関する情報は、出力部30と頭皮との距離(以下「検出距離」という)を含んでいてもよい。検出距離の検出方法について説明する。検出部70は、撮影部50に設けられる1つまたは複数のレンズで撮影した複数の画像から、使用者の頭皮の領域を特定する。検出部70は、撮影部50のレンズの位置と特定された頭皮の領域とから、検出距離を演算する。制御部60は、検出距離に応じて出力部30の出力を制御する。
【0057】
・頭皮情報は、常在細菌叢に関する情報をさらに含んでいてもよい。常在細菌叢は、任意の手段により検出される。第1例では、撮影部50は、可視光照明55から特定の波長の可視光を頭皮に照射し、可視光カメラ52で撮影した画像から毛髪と判断した部分をマスキングした頭皮画像を検出部70にて作成し、色彩分布を演算する。前記分布に基づいて、検出部70に設けた色彩と常在細菌叢の種類、量を推定したテーブルから頭皮状態を推定する。第2例では、赤外線照明54から特定の波長の赤外線を頭皮に照射し、赤外線カメラ51で撮影した画像から毛髪と判断した部分をマスキングした頭皮画像を検出部70にて作成し、色彩分布を演算する。前記分布に基づいて、検出部70に設けた色彩と頭皮の血流量を推定したテーブルから頭皮血流量を推定し、前記第1例で演算した結果と比較し、常在細菌叢の状態をより正確に推定する。制御部60は、常在細菌叢に関する情報に応じて、出力部30を制御する。
【0058】
・制御部60は、頭皮情報に基づいてケア手段を出力する順番を制御するように構成されていてもよい。一例では、頭皮情報が、皮脂分泌量が所定値以上多いという情報を含むとき、制御部60は、流体出力部32を制御し皮脂を洗浄する。皮脂の洗浄が終了したのちに、制御部60は、撮影部50を制御し、画像を再取得する。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の頭皮ケア装置は、家庭用および業務用の頭皮ケア装置に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
10 :頭皮ケア装置
11 :本体
12 :ハウジング
13 :カバー
13A:第1面
13B:第2面
13C:第3面
14 :開口
20 :ケア部
30 :出力部
31 :光出力部
32 :流体出力部
40 :施療部
41 :第1施療部
41A:第1施療子
41B:第1出力軸
42 :第2施療部
42A:第2施療子
42B:第2出力軸
43 :駆動部
43A:第1駆動部
43B:第2駆動部
43C:第3駆動部
50 :撮影部
51 :赤外線カメラ
52 :可視光カメラ
53 :櫛部
53A:第1端部
53B:第2端部
54 :赤外線照明
55 :可視光照明
60 :制御部
70 :検出部
80 :記憶部
S :支持部
X1 :第1距離
X2 :第2距離