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特許7482437真空断熱材の生産方法、真空断熱容器の生産方法、および、保温袋の生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】真空断熱材の生産方法、真空断熱容器の生産方法、および、保温袋の生産方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
F16L59/065
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020029649
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021134819
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 洸紀
(72)【発明者】
【氏名】宅島 司
(72)【発明者】
【氏名】秦 裕一
(72)【発明者】
【氏名】森川 行男
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-226298(JP,A)
【文献】特開2004-218746(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132265(WO,A2)
【文献】特開2005-114014(JP,A)
【文献】特開2006-029456(JP,A)
【文献】特開2012-180903(JP,A)
【文献】特開2012-197951(JP,A)
【文献】特開2008-106836(JP,A)
【文献】国際公開第2000/075557(WO,A1)
【文献】特開2010-060045(JP,A)
【文献】特開2012-042011(JP,A)
【文献】特開2017-058012(JP,A)
【文献】特開2008-002598(JP,A)
【文献】特開2007-056972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/221011(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0095970(US,A1)
【文献】特開2021-133940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/06
B65D 81/38
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性を有する外被材により芯材を真空封止し、折り曲げ予定部で折り曲げ加工して形成される真空断熱材の生産方法において、
断熱材内部に水分、気体を吸着する吸着剤を配置し、
前記折り曲げ予定部は、前記吸着剤が配置された位置とは重複しない位置であって、前記芯材において、前記吸着剤が配置された位置と前記吸着剤が配置されていない位置との境界に沿って設けられる、真空断熱材の生産方法
【請求項2】
前記芯材は、前記吸着剤が嵌め込まれる切れ込みを備える、請求項1に記載の真空断熱材の生産方法
【請求項3】
ガスバリア性を有する外被材により芯材を真空封止して形成される真空断熱材を、折り曲げ予定部で折り曲げ加工して袋体を形成してなる真空断熱容器の生産方法において、
前記真空断熱材の内部に水分、気体を吸着する吸着剤を配置し、
前記折り曲げ予定部は、前記吸着剤が配置された位置とは重複しない位置であって、前記折り曲げ予定部は、前記芯材において、前記吸着剤が配置された位置と前記吸着剤が配置されていない位置との境界に沿って設けられる、真空断熱容器の生産方法
【請求項4】
前記袋体は、前記折り曲げ予定部における折り曲げ加工により前記真空断熱材が二つ折りにされ、一対の対向する面部が形成されるように構成され、
前記対向する面部の少なくとも一方に吸着剤を備え、前記対向する面部の間に貨物が挿入された場合、前記対向する面部が、前記吸着剤の部分が折り曲げ起点となって、外側に向けて張り出すように亀甲状に折り曲げられる、請求項3に記載の真空断熱容器の生産方法
【請求項5】
前記袋体は、前記折り曲げ予定部における折り曲げ加工により前記真空断熱材が二つ折りにされ、一対の対向する面部が形成されるように構成され、
前記対向する面部の少なくとも一方に吸着剤を備え、前記対向する面部の間に貨物が挿入された場合、前記対向する面部が、前記吸着剤の部分が折り曲げ起点となって、外側に向けて張り出すように箱形状に折り曲げられる、請求項3に記載の真空断熱容器の生産方法
【請求項6】
前記芯材は、前記吸着剤が嵌め込まれる切れ込みを備える、請求項3から5の何れか一項に記載の真空断熱容器の生産方法
【請求項7】
前記外被材は、表面に箔フィルム層を有し、裏面に蒸着フィルム層を有し、箔フィルム層が外側に、蒸着フィルム層が内側になるように、折り曲げ加工した、請求項3から6の何れか一項に記載の真空断熱容器の生産方法
【請求項8】
ポリエチレン又はポリウレタンと、アルミニウム層とで形成される保護袋と、
請求項3から7の何れか一項に記載の真空断熱容器の生産方法により生産された真空断熱容器と、を備えた、保温袋の生産方法であって、
前記真空断熱容器は、前記保護袋の内部に収納される、
保温袋の生産方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材断熱容器、および保温袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバリア性を有する外被材により芯材を真空封止し、折り曲げ予定部で折り曲げ加工して形成される真空断熱材が知られている(特許文献1参照)。
この種の従来の真空断熱材では、断熱材内部の水分およびガスを吸着するために、真空断熱材の内部に吸着剤が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-078707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、真空断熱材を、折り曲げ予定部で折り曲げ加工する場合、正確に折り曲げられない。一般に、吸着剤は芯材に配置されて、外被材で一緒に内包される。ところが、芯材と吸着剤とは折り曲げ性が異なる。したがって、吸着剤を含む芯材部分と、吸着剤を含まない芯材部分とを、一緒に折り曲げる場合、狙いの折り曲げ性を確保できない、という課題がある。また、狙いの位置で折り曲げ加工を行うため、通常、折り曲げ癖を付与するために、芯材くり抜きや、プレス加工などにより、溝加工を行うが、加工工数によるコストアップや真空断熱材の長期信頼性が低下するといった課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、狙いの折り曲げ性を確保して、正確に折り曲げできる、真空断熱材、および断熱容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ガスバリア性を有する外被材により芯材を真空封止し、折り曲げ予定部で折り曲げ加工して形成される真空断熱材の生産方法において、断熱材内部に水分、気体を吸着する吸着剤を配置し、前記折り曲げ予定部は、前記吸着剤が配置された位置とは重複しない位置であって、前記芯材において、前記吸着剤が配置された位置と前記吸着剤が配置されていない位置との境界に沿って設けられる、ものである。
【0007】
本発明によれば、折り曲げ予定部は、吸着剤が配置された位置とは重複しない位置に設けられているため、真空断熱材を折り曲げ予定部により折り曲げるとき、吸着剤を含む芯材部分と、吸着剤を含まない芯材部分とを、一緒に折り曲げることがなくなり、狙いの折り曲げ性を確保できると共に、折り曲げ癖を付与するための追加加工なく狙いの位置で折り曲げ加工が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、真空断熱材を折り曲げ予定部により折り曲げるとき、狙いの折り曲げ性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(A)は、真空断熱材を示す平面図、図1(B)は、真空断熱容器の斜視図
図2図2(A)、図2(B)、図2(C)、及び図2(D)は切れ込みの変形例を示す平面図
図3図3(A)、図3(B)は、真空断熱材の別の実施の形態を示す図
図4図4(A)は、真空断熱容器の別の実施の形態を示す図、図4(B)は、図4(A)の上面図
図5図5(A)は、真空断熱容器の別の実施の形態を示す図、図5(B)は、図5(A)の上面図
図6図6(A)は、真空断熱容器の別の実施の形態を示す図、図6(B)は、図6(A)の上面図
図7】真空断熱容器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、ガスバリア性を有する外被材により芯材を真空封止し、折り曲げ予定部で折り曲げ加工して形成される真空断熱材において、断熱材内部に水分、気体を吸着する吸着剤を配置し、前記折り曲げ予定部は、前記吸着剤が配置された位置とは重複しない位置であって、前記吸着剤が配置された位置に沿って設けられる、ものである。
上記の構成によれば、折り曲げ予定部は、吸着剤が配置された位置とは重複しない位置に設けられているため、真空断熱材を折り曲げ予定部により折り曲げるとき、吸着剤を含む芯材部分と、吸着剤を含まない芯材部分とを、一緒に折り曲げることがなくなり、狙いの折り曲げ性を確保できる。
また、真空断熱材を折り曲げ予定部により折り曲げるとき、吸着剤を含む芯材の硬い部分が折り曲げ起点となって、折り曲げられ、狙いの折り曲げ性を容易に確保できる。折り曲げの工程では、狙いの位置で折り曲げ加工を行うため、通常、折り曲げ癖を付与するために、芯材くり抜きや、プレス加工などにより、溝加工を行うが、これら加工が不要になる。吸着剤の部分で折り曲げした場合、吸着剤によって外被材が破れて真空が維持できなくなったりするが、これを避けることができる。
【0011】
第2の発明は、前記吸着剤が嵌め込まれる切れ込みを備える、ものである。
上記構成によれば、芯材に対し、吸着剤を配置する作業が容易になると共に、狙いの位置に吸着剤を配置することで正確な位置で折り曲げ加工を行うことができるようになる。
【0012】
第3の発明は、ガスバリア性を有する外被材により芯材を真空封止して形成される真空断熱材を、折り曲げ予定部で折り曲げ加工して形成される真空断熱容器において、前記真空断熱材の内部に水分、気体を吸着する吸着剤を配置し、前記折り曲げ予定部は、前記吸着剤が配置された位置とは重複しない位置であって、前記折り曲げ予定部は、前記吸着剤が配置された位置に沿って設けられる、ものである。
上記の構成によれば、折り曲げ予定部は、吸着剤が配置された位置とは重複しない位置に設けられているため、真空断熱材を折り曲げ予定部により折り曲げるとき、吸着剤を含む芯材部分と、吸着剤を含まない芯材部分とを、一緒に折り曲げることがなくなり、狙いの折り曲げ性を確保できる。
また、真空断熱材を折り曲げ予定部により折り曲げるとき、吸着剤を含む芯材の硬い部分が折り曲げ起点となって、折り曲げられ、狙いの折り曲げ性を容易に確保できる。折り曲げの工程では、通常、折り曲げ癖を付与するために、芯材くり抜きや、プレス加工などにより、溝加工を行うが、これら加工が不要になる。吸着剤の部分で折り曲げした場合、吸着剤によって外被材が破れて真空が維持できなくなったりするが、これを避けることができると共に、折り曲げ癖を付与するための追加加工なく狙いの位置で折り曲げ加工が可能となり、加工工数によるコストアップや長期信頼性の低下が少ない真空断熱材を提供することができる。
【0013】
第4の発明は、袋体の対向する面部のいずれか、または両面に吸着剤を備え、貨物が挿入された場合、前記対向する面部が、前記吸着剤の部分が折り曲げ起点となって、亀甲状に折り曲げられる、ものである。
上記の構成によれば、断熱容器の容量を大きくすることができる。
【0014】
第5の発明は、袋体の対向する面部のいずれか、または両面に吸着剤を備え、貨物が挿入された場合、前記対向する面部が、前記吸着剤の部分が折り曲げ起点となって、箱形状に折り曲げられる、ものである。
上記の構成によれば、断熱容器の容量を大きくすることができる。
【0015】
第6の発明は、前記芯材は、前記吸着剤が嵌め込まれる切れ込みを備える、ものである。
上記構成によれば、芯材に対し、吸着剤を配置する作業が容易になると共に、狙いの位置に吸着剤を配置することで正確な位置で折り曲げ加工を行うことができるようになる。
【0016】
第7の発明は、前記外被材は、表面に箔フィルム層を有し、裏面に蒸着フィルム層を有し、箔フィルム層が外側に、蒸着フィルム層が内側になるように、折り曲げ加工した、ものである。
上記構成によれば、外被材のガスバリア性を保つとともに、断熱容器の内側を伝う熱の流れを低減することができる。
【0017】
第8の発明は、ポリエチレン又はポリウレタンと、アルミニウム層とで形成される保温袋を備える、ものである。
上記の構成によれば、断熱容器の高い保温性を維持できる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態を示す斜視図である。
図1(A)において、符号11は、真空断熱材を示す。
真空断熱材11は、シート状であり、外被材12と、芯材13と、を備える。
真空断熱材11の製造手順の一例を示す。外被材12は、平面視で矩形状を有し、一辺が開放された袋状に形成される。
外被材12の解放された一辺から、矩形の板状の芯材13を挿入し、同じく一辺から真空吸引し、減圧状態とした後に、一辺を熱溶着して製造する。この状態では、真空断熱材11は、芯材13の外周囲に熱溶着された部分として、端部非断熱部21,22、および側部非断熱部24,25を備える。
【0019】
端部非断熱部21,22を、矢印A,Bで示すように折り曲げて、真空断熱材11の外側に接着する。端部非断熱部21,22は、真空断熱材11の内側に接着してもよい。また、真空断熱材11を、矢印Cで示すように、折り曲げ予定部(二等分線)114に沿って折り曲げる。図1(B)は、折り曲げ予定部に沿って折り曲げた状態である。
この状態で、側部非断熱部24,25を、矢印D,Eで示すように折り曲げて、真空断熱材11の面にそれぞれ接着する。側部非断熱部24,25は、真空断熱材11の一面及び他面にそれぞれ接着してもよい。これにより、一方の端部非断熱部21に開口部27が形成された袋体(以下、真空断熱容器)1が形成される。
【0020】
別の製造手順によれば、一方の側部非断熱部24を折り曲げて真空断熱材11に接着した状態で、真空断熱材11を折り曲げ予定部114に沿って折り曲げ、他方の側部非断熱部25、及び端部非断熱部21を折り曲げて真空断熱材11に接着することで、一方の側部非断熱部24に開口が形成された袋体を形成してもよい。
端部非断熱部21、22及び側部非断熱部24、25の接着は、例えば、粘着テープで接着することにより行われる。
粘着テープで接着することにより、端部非断熱部21、22及び側部非断熱部24、25を折り曲げて接着する際に生じる段差が、粘着テープにより被覆されるため、真空断熱容器1の外面を滑らに形成することができる。ただし、これに限定されるものではなく、接着剤や溶着等を用いてもよい。
【0021】
外被材12は、真空断熱材11の内部に外気が侵入することを抑制し、屈曲性を有するものであればよい。外被材12は、例えば、熱溶着フィルムと、中間層としてのガスバリアフィルムと、最外層として表面保護フィルムとを、それぞれラミネートしたものを用いることができる。外被材12の熱溶着フィルムとしては、低密度ポリエチレンフィルムなどの樹脂フィルが好適である。ガスバリアフィルムとしては、ガスバリア性を有する公知のフィルムを好適に用いることができる。
【0022】
本実施形態では、外被材12は、表面に箔フィルム層を有し、裏面に蒸着フィルム層を有し、箔フィルム層が外側に、蒸着フィルム層が内側になるように、外被材12を折り曲げ加工して、真空断熱容器1が形成される。
この場合、内側の蒸着フィルム層としては、アルミニウム蒸着ポリエチレンフタレート(VM-PET)や、アルミニウム蒸着エチレンビニルアルコール共重合体(VM-EVOH)などが好適である。また、外側の箔フィルム層としては、アルミニウム箔ラミネートフィルムなどが好適である。
外側のアルミニウム箔層は、内側のアルミニウム蒸着層よりも熱伝達率がよい。本構成では、外面からの熱の侵入を防止し、断熱効果が高まる。アルミニウム蒸着層が内側に位置し、容器内部を均熱化できる。
【0023】
芯材13は、例えば、チョップドストランドマットを積層してシート状に形成される。チョップドストランドマットは、ガラス繊維のストランドを、カットし、繊維方向を不規則にして均一に分散させ、結合剤を用いてシート状に成形したものである。例えば、厚さが0.5mmのチョップドストランドマットを積層して形成され、減圧状態での厚さが、例えば、2mm~3mmとなるように形成されている。
【0024】
チョップドストランドマットを積層した芯材13を用いることによって、芯材13の繊維方向が芯材13の厚み方向と直交し、芯材13の厚み方向に熱が伝達され難くなる。すなわち、芯材13の熱伝達率を低減させることができる。
減圧状態での芯材13の厚さを2mm~3mmとすることによって、可撓性を有する真空断熱材11を構成することができる。
芯材13は、チョップドストランドマットに限定されず、断熱性を有し、可撓性を有するものであればいずれの材料を用いてもよい。
【0025】
本実施の形態では、図1(A)に示すように、芯材13の折り曲げ予定部114の図中上下に一対の吸着剤14が配置される。吸着剤14は、外被材12内の水分、気体を吸着し、真空断熱材11の断熱性能を維持すると共に、外部から経時的に透過侵入する水分を吸着する。芯材13には、上下にそれぞれ4つの切れ込み113が形成される。芯材13の4つの切れ込み113には、吸着剤14の端部が嵌め込まれる。これによれば、芯材13に対し、吸着剤14を正確に配置できる。
この切れ込みは吸着剤14を固定できるものであれば、切れ込みの形状、及び切れ込みの個数は問わない。図2は切れ込みの変形例を示す図である。切れ込みは、例えば、図2(A)に示すような1つの切れ込み113や、図2(B)に示すようなU字形状の切れ込み123や、図2(C)に示すようなL字形状の切れ込み124や、図2(D)に示すようなI字形状の切れ込み125であってもよい。
図2(B)に示すU字形状の切れ込み123、図2(C)に示すL字形状の切れ込み124、図2(D)に示すI字形状の切れ込み125は、吸着剤14の周囲に形成される。切れ込み123、切れ込み124、及び切れ込み125は、真空断熱材11を形成する際に、減圧状態とすることによって、芯材13の厚み方向に窪む。そこで、切れ込み123、切れ込み124、及び切れ込み125に対向する外被材12は、互いに近接する方向に変形する。したがって、外被材12によって吸着剤14を固定できる。本構成は、一対の吸着剤14を配置するものに限定されず、吸着剤14の個数は限定されない。
【0026】
本実施の形態では、吸着剤14が切れ込み113に嵌め込まれるため、外被材12の内側を真空吸引し、減圧状態とする際に、吸着剤14の位置がずれない。吸着剤14の位置決めは、切れ込み113に限定されない。
例えば、吸着剤14の配置の位置を囲うように、或いは吸着剤14の位置の基準を示すように、位置決めマークを付してもよい。位置決めマークは、芯材13を切断すると同時に形成される、プレスによる切れ込みであってもよい。
【0027】
吸着剤14の具体的な種類は特に限定されず、代表的には、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、金属系吸着材、ゼオライト等のように物理的な水分吸着性を発揮する材料(物理吸着剤)を挙げることができる。さらには、水分吸着材としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の酸化物または水酸化物等のように化学的な水分吸着性を発揮する材料(化学吸着剤)を挙げることができる。これら材料は1種のみを吸着剤14として用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて吸着剤14として用いてもよい。
【0028】
吸着剤14とともに、外被材12の内部に気体吸着材を封入してもよい。気体吸着材は、外被材12の内部、すなわち真空断熱構造の内部に残存する気体成分、もしくは、外部から経時的に透過侵入する気体成分を吸着して除去するものであればよい。ここで、気体吸着材は、少なくとも気体吸着性を有していればよいが、気体吸着性だけでなく水分吸着性を有してもよい。気体吸着材の水分吸着性は、基本的には、水蒸気を吸着する性質であり、気体吸着性の一部とみなすことができる。
【0029】
気体吸着材の具体的な種類は特に限定されず、前述した吸着剤14と同様に、シリカゲル、活性アルミナ、活性炭、金属系吸着材、ゼオライト等の公知の材料を好適に用いることができる。これら材料は1種のみを気体吸着材として用いてもよいし、2種以上を適宜組み合わせて気体吸着材として用いてもよい。特に、本開示においては、気体吸着材として、銅イオン交換されて成るZSM-5型ゼオライト(銅イオン交換ZSM-5型ゼオライト)を好適に用いることができる。
【0030】
銅イオン交換ZSM-5型ゼオライトは、空気成分である窒素、及び酸素だけでなく、水分(水蒸気)に対しても優れた吸着能力を有する。そのため、気体吸着材が銅イオン交換ZSM-5型ゼオライトを用いたものであれば、吸着剤14を兼用することができるので、真空断熱材11の製造時に真空ポンプでは排気しきれなかった空気成分、真空断熱材11の内部で経時的に発生する微量なガス、真空断熱材11の外部から内部へ経時的に透過侵入してくる空気成分または水分等を良好に吸着除去することができる。その結果、真空断熱材11は優れた断熱性能を長期間実現することができる。
【0031】
吸着剤14、及び気体吸着材の使用形態は特に限定されず、粉末、粉末の包装体、粉末の成形体等が挙げられる。気体吸着材が銅イオン交換ZSM-5型ゼオライトであれば、粉末を所定形状に成形した成形体を挙げることができる。吸着剤14、及び気体吸着材の使用量も特に限定されず、真空断熱材11の外被材12内部における減圧状態(略真空状態)を良好に保持できる程度の量であればよい。
【0032】
本実施の形態では、吸着剤14が配置された位置は、図1(B)に示す、後の工程で折り曲げられる際の、折り曲げ予定部114の位置とは重複しない。
吸着剤14を含む芯材13の部分は、吸着剤14を含まない芯材13の部分に比べて硬くなり、吸着剤14を含む芯材13の部分を、折り曲げ加工するとなると、設計した通りの、狙いの折り曲げ性を確保できない。
【0033】
本実施の形態では、折り曲げ予定部114は、吸着剤14が配置された位置とは重複しない位置に設けられるため、真空断熱材11を折り曲げ予定部114により折り曲げるとき、吸着剤14を含む芯材13の部分と、吸着剤14を含まない芯材13の部分とを、一緒に折り曲げることがなくなり、狙いの折り曲げ性を確保できる。
【0034】
図3(A)(B)は、別実施の形態を示す。図1と同一の構成部分には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
この真空断熱材111は、芯材13に吸着剤14が配置される。吸着剤14が配置される位置は、折り曲げ予定部114の位置とは重複しない。吸着剤14は、折り曲げ予定部114に沿うように配置される。
【0035】
吸着剤14を含む芯材13の部分は、それ以外の芯材13の部分に比べて硬くなるが、本実施の形態では、吸着剤14は、折り曲げ予定部114に沿って配置されるため、折り曲げの工程では、吸着剤14を含む芯材13の硬い部分が折り曲げ起点となって、折り曲げられ、狙いの折り曲げ性を容易に確保できる。
折り曲げの工程では、折り曲げ性の確保や狙いの折り曲げ位置にて折り曲げ加工を行うため、通常、折り曲げ癖を付与するために、芯材くり抜きや、プレス加工などにより、溝加工を行うが、これら加工が不要になる。
吸着剤14の部分で折り曲げした場合、吸着剤14によって外被材12が破れて真空が維持できなくなったりするが、これを避けることができる。
【0036】
図4(A)(B)は、真空断熱容器1を示す。図1と同一の構成部分には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
真空断熱容器1は、開口部27を有する袋体であり、一対の対向する面部6,7を備える。対向する面部6,7は矩形状であり、それぞれの面部6,7の中央には矩形状の吸着剤14を備える。吸着剤14は、上記実施の形態と同様に、芯材13に配置され、外被材12に、真空吸引した減圧状態で内包されている。
【0037】
本実施の形態では、貨物31が、開口部27から真空断熱容器1内に挿入されると、貨物31の形状に応じて、吸着剤14を含む芯材13の矩形の部分が、吸着剤14を含まない芯材13の部分よりも硬いため、硬い部分(吸着剤)が折り曲げ起点となって、対向する面部6,7が、図4(B)に示すように、亀甲状に張り出すように折り曲げられる。
すなわち、対向する面部6,7には、四つの隅部A1~A4からそれぞれ対角線上に延びる第1折り曲げ予定部101~104と、第1折り曲げ予定部101~104の終端に、それぞれ矩形状に連続する矩形の第2折り曲げ予定部105と、が設けられ、第2折り曲げ予定部104は、吸着剤14を囲う。
対向する面部6,7の折り曲げ時には、通常、折り曲げ癖を付与するために、プレス加工などにより、溝加工を行うが、これら加工は不要である。また、吸着剤14の部分で折り曲げした場合、吸着剤14によって外被材12が破れて真空が維持できなくなったりするが、これを避けることができる。
【0038】
本実施の形態では、貨物31が、真空断熱容器1内に挿入された場合、対向する面部6,7が、第1折り曲げ予定部101~104、および第2折り曲げ予定部105に沿って折り曲げられて、亀甲状となるため、真空断熱容器1の収容容積が増す。
【0039】
図5(A)(B)は、真空断熱容器1の別実施の形態を示す。図4と同一の構成部分には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
真空断熱容器1は、図5(A)に示すように、開口部27を有する袋体であり、一対の対向する面部6,7を備えている。
対向する面部6,7は矩形状であり、それぞれの面部6,7には、一対の吸着剤14A,14Bが、開口部27に向けて延びるように配置される。一対の吸着剤14A,14Bは、第2折り曲げ予定部105に沿って配置される。
【0040】
本実施の形態でも、貨物31が、真空断熱容器1内に挿入された場合、図5(A)(B)に示すように、対向する面部6,7は、硬い部分(吸着剤)が折り曲げ起点となって、第1折り曲げ予定部101~104、および第2折り曲げ予定部105に沿って、折り曲げられて亀甲状となる。これによれば、真空断熱容器1はその収容容積が増す。
【0041】
図6(A)(B)は、真空断熱容器1の別実施の形態を示す。図4と同一の構成部分には、同一の符号を付して示し、詳細な説明は省略する。
図6(A)に示すように、真空断熱容器1は、対向する面部6,7に、第3折り曲げ予定部106、107を備える。第3折り曲げ予定部106、107は、開口部27に向けて平行に延びている。また、対向する面部6,7に、第4折り曲げ予定部108、第5折り曲げ予定部109、および第6折り曲げ予定部110を備える。
第3折り曲げ予定部106、107のそれぞれの外側には、2つの吸着剤14C,14Dを備えている。2つの吸着剤14C,14Dは、第3折り曲げ予定部106、107に沿うように配置される。
【0042】
この構成では、貨物31が縦長である。この貨物31が真空断熱容器1内に挿入された場合、図6(B)に示すように、対向する面部6,7が、貨物31の形状に応じて変形する。すなわち、対向する面部6,7は、硬い部分(吸着剤)が折り曲げ起点となって、第3折り曲げ予定部106、107、第4折り曲げ予定部108、第5折り曲げ予定部109、および第6折り曲げ予定部110に沿って折り曲げられて、開口部27側が解放されて箱形状となり、真空断熱容器1の収容容積が増す。
【0043】
何れの実施の形態でも、貨物31が、開口部27から真空断熱容器1内に挿入されると、吸着剤14を含む芯材13の矩形の部分が、吸着剤14を含まない芯材13の部分よりも硬いため、硬い芯材13の部分(吸着剤)が折り曲げ起点となって、対向する面部6,7が、亀甲状、或いは、箱形状に折り曲げられ、真空断熱容器1の収容容積が増す。
吸着剤14の配置の位置や、個数などは、これらに限定されるものではなく、対向する面部6,7が張り出した後の形状は、亀甲状や、箱形状などに限定されるものではなく、任意の変更が可能なことは云うまでもない。
【0044】
次に、真空断熱容器1を用いた保温袋51について説明する。
図7に示すように、保温袋51は、真空断熱容器1を内部に収納して保護する保護袋53を備える。保護袋53は一辺に開口52が形成された矩形の袋状に形成される。保護袋53の内面の幅寸法は、真空断熱容器1の幅寸法と略同一に形成される。
保護袋53の内底部55から開口52までの長さは、真空断熱容器1の底部5から開口部2までの長さよりも長く形成されている。
【0045】
保護袋53は、具体的な構成が特に限定されないが、クッション性を備えるシートにより構成されるとともに可撓性を有し、真空断熱容器1を保護可能に構成されている袋体を挙げることができる。例えば、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムと、発泡ポリエチレンシートと、高密度ポリエチレンフィルムと、を積層し厚み約1~2mmのシートを利用して保護袋53を形成することができる。
【0046】
保護袋53の内部には、真空断熱容器1が開口部2の開口方向を、保護袋53の開口52の開口方向と一致するよう収納される。
真空断熱容器1の底部5を保護袋53の内底部55に当接させた状態で、真空断熱容器1と保護袋53とを接着し、真空断熱容器1と保護袋53とを固定する。
真空断熱容器1と保護袋53との接着は、例えば、真空断熱容器1の開口部2の外周に貼られた両面テープ57により行われる。なお、真空断熱容器1と保護袋53とを接着剤により接着してもよい。
保護袋53に真空断熱容器1を接着した状態で、保護袋53の真空断熱容器1よりも長い部分は、折り畳み部56とされ、折り畳み部56は、保護袋53内に真空断熱容器1を収納した状態で、折り畳まれる。
【0047】
本実施の形態では、真空断熱容器1に物品を挿入する場合に、開口部2が開かれ真空断熱容器1の内部に物品が挿入される。
この場合、端部非断熱部21、及び端部非断熱部22のそれぞれが、開口部2の外側に折り曲げられるため、開口部2の内側を平滑に形成でき、真空断熱容器1の内側への物品の出し入れを円滑に行うことができる。
【0048】
芯材13の厚さを2mm~3mm程度に薄く形成しているので、真空断熱容器1が撓みやすく、収納される物品の形状に応じて真空断熱容器1を容易に変形させることができ、真空断熱容器1への物品の出し入れを容易に行うことができる。
また、真空断熱容器1が撓んで、収納された物に合わせて変形されるので、真空断熱容器1内の空間に存在する気体を少なくすることができ、真空断熱容器1の保温性を向上させることができる。
【0049】
真空断熱容器1は、内部に物品を保持した状態で、開口部2を閉じてもよい。
開口部2を閉じることにより、開口部2から外気が流入するのを抑制し、保温性能を向上させることも可能である。
【0050】
真空断熱容器1の内側のガスバリアフィルムに樹脂フィルムにアルミを蒸着させた場合、内側のガスバリアフィルムの金属層が薄く構成される。このため、ガスバリアフィルムの金属層を熱が伝わるヒートブリッジ現象が、金属箔を用いたガスバリアフィルムを用いる場合よりも低減される。
【0051】
保護袋53内に真空断熱容器1が収納されるので、真空断熱容器1が保護袋53に覆われ、真空断熱容器1で生じるヒートブリッジ現象の影響を低減できる。
開口52を閉じて畳み部56を折り畳むことにより、開口52を介した保護袋53内への空気の流入を抑制することができる。
【0052】
なお、本実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は前記実施の形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明に係る真空断熱材、および真空断熱容器は、シート状の真空断熱材を折り曲げて袋状に形成されるもので、容易かつ少ない製造コストで製造することができる断熱袋として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 真空断熱容器
2 開口部
6,7 対向する面部
11 真空断熱材
12 外被材
13 芯材
14 吸着剤
20 非断熱部
21,22 側部非断熱部
24,25 端部非断熱部
51 保温袋
53 保護袋
114 折り曲げ予定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7