(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電子部品、電子部品の製造方法、電子部品の管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20240507BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240507BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20240507BHJP
H01G 2/24 20060101ALI20240507BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240507BHJP
【FI】
H01G9/00 290
G05B19/418 Z
G06Q50/04
H01G2/24
H01G13/00 341
(21)【出願番号】P 2020510898
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2019012821
(87)【国際公開番号】W WO2019189159
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2018063910
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 成太
(72)【発明者】
【氏名】石川 朋幸
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-078732(JP,A)
【文献】特開2012-138400(JP,A)
【文献】特開2001-006976(JP,A)
【文献】特開平02-010712(JP,A)
【文献】特開平06-196369(JP,A)
【文献】特開2011-210663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
G05B 19/418
G06Q 50/04
H01G 2/24
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部素子と、外装と、を備える電子部品の製造方法であって、
(i)複数の内部素子を、生産ロット単位
で製造するロット工程と、
(ii)前記複数の前記内部素子を、前記生産ロットから、各々が一以上の個片を含む複数の小単位に分離する分離工程と、
(iii)前記小単位と外装とが一体化され、かつ前記外装に所定の識別子が付された一体化物を得る一体化工程と、
(iv)個々の前記小単位について当該小単位が得られるまでに前記ロット工程で施された加工または処理に関するロット工程情報を、前記識別子と対応づけて記録装置に記録するロット工程情報記録工程と、
(v)前記一体化物に、前記小単位単位で加工
または処理を行なう
複数の小単位工程と、
(vi)個々の前記一体化物について個々の前記小単位工程で施された加工または処理に関する小単位工程情報を、前記識別子と対応づけて記録装置に記録する小単位工程情報記録工程と、
を具備する、
電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記ロット工程情報は、個々の前記小単位について当該小単位が得られるまでに前記ロット工程で施された加工または処理に関する時系列情報を含む、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記ロット工程は、保持具に並べて保持された前記複数の前記内部素子を製造する工程を含み、
前記ロット工程情報は、個々の前記小単位について当該小単位が得られるまでに前記ロット工程において加工または処理が施されたときの、前記複数の前記内部素子の前記保持具に保持された並び順に関する情報を含む、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記ロット工程は、保持具に並べて保持された前記複数の前記内部素子を製造する工程を含み、
前記ロット工程情報は、個々の前記小単位について当該小単位が得られるまでに前記ロット工程において加工または処理が施されたときの、前記複数の前記内部素子の前記保持具に保持された並び順に関する情報を含む、請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記小単位工程情報は、個々の前記一体化物について前記小単位工程で施された加工または処理に関する時系列情報を含む、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記小単位工程情報は、個々の前記一体化物について前記小単位工程で施された加工または処理に関する時系列情報を含む、請求項2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記小単位工程情報は、個々の前記一体化物について前記小単位工程で施された加工または処理に関する時系列情報を含む、請求項3に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記小単位工程情報は、個々の前記一体化物について前記小単位工程で施された加工または処理に関する時系列情報を含む、請求項4に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記分離工程は、前記生産ロットから前記複数の小単位を順次分離する1以上の
分離ステップを含み、
前記識別子は、前記分離工程で、順次分離する1以上の前記
分離ステップのそれぞれにおいて、前記外装に付される、
請求項
1~8のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記小単位工程は、
前記複数の
前記一体化物のうちの2以上の
前記一体化物が収容されている収容箱から、前記
一体化物を順不同で取り出す取出工程と、
前記収容箱から取り出した前記
一体化物の前記識別子を読み取る読取工程と、
前記識別子を読み取った前記
一体化物に所定の
加工または処理を行う処理工程と、
を備え、
前記読取工程で読み取った前記識別子に基づいて、前記処理工程において前記
一体化物に加工または処理
が行われた順番と
、前記分離工程で
当該一体化物が具備する前記小単位が分離された順番とを、対応付ける、
請求項
1~9のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記小単位工程は、個片単位で処理を行なう個片工程である、
請求項
1~10のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記ロット工程(i)で、
1万個以上の内部素子を製造する、
請求項
1~11のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電子部品、電子部品の製造方法、電子部品の管理方法、及びプログラムに関し、より詳細には、外装を備える電子部品、この電子部品の製造方法、この電子部品の管理方法、及びこの管理方法を実現するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子部品本体の外表面に少なくとも初期特性と寿命判定値を表示してなる有限寿命電子部品が、開示されている。特許文献1では、有限寿命電子部品を使用中に特性を測定し、この測定結果を、電子部品本体に表示された初期特性並びに寿命判定値と比較することにより、寿命推移時間ならびに余剰寿命の推定と再使用可否の判定が行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子部品では、電子部品の使用中に特性が低下した場合、この電子部品の製造時に電子部品を製造するための製造システムに異常がなかったか等を判定できるように、電子部品の製造情報(製造時の情報)を特定することが求められる。特許文献1記載の有限寿命電子部品では、測定結果を初期特性と比較することで、電子部品の特性が低下したか否かは判定できるが、電子部品の製造情報を知ることはできない。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みてなされ、製造情報を特定することが可能な電子部品、電子部品の製造方法、電子部品の管理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電子部品は、内部素子と、外装と、を備える。前記内部素子の生産ロットは、複数の小単位を含む。前記外装に、前記複数の小単位を識別する識別子が付されている。
【0007】
本開示の一態様に係る電子部品の製造方法は、内部素子と、外装と、を備える電子部品の製造方法である。前記製造方法は、生産ロット単位で、前記内部素子を製造するロット工程と、前記生産ロットから、各々が一以上の個片を含む複数の小単位に分離する分離工程と、前記小単位単位で加工を行なう小単位工程と、を備える。前記外装は、前記内部素子に一体化される。前記電子部品は、前記外装に、前記複数の小単位を識別する識別子が付されている。
【0008】
本開示の一態様に係る電子部品の管理方法は、内部素子と、外装と、を備え、生産ロットにおける複数の小単位を識別する識別子が前記外装に付されている電子部品の管理方法である。前記管理方法は、前記識別子に対応付けられた管理情報を管理することで、前記電子部品を前記小単位ごとに管理する。
【0009】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータで実行されたときに、前記コンピュータに、前記管理方法を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、電子部品の製造情報を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る電子部品の一例である電解コンデンサの斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の電解コンデンサの斜めから見た一部断面図である。
【
図3】
図3は、同上の電解コンデンサの断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る電子部品の一例である電解コンデンサの製造方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、同上の製造方法におけるロット工程のフローチャートである。
【
図6】
図6は、同上の製造方法における分離・一体化工程のフローチャートである。
【
図7】
図7は、同上の製造方法における小単位工程のフローチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係る電子部品の一例である電解コンデンサの製造システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)実施形態
(1.1)電子部品の構成
まず、本実施形態に係る電子部品の一例としての電解コンデンサ1について、
図1~
図3を参照して説明する。
図1は、電解コンデンサ1の斜視図である。
図2は、電解コンデンサ1の斜めから見た部分断面図である。
図3は、電解コンデンサ1の断面図である。本実施形態の電解コンデンサ1は、表面実装タイプの電解コンデンサであり、電解質に導電性高分子と電解液とを融合させた、いわゆるハイブリッドタイプの電解コンデンサである。
【0013】
図2に示すように、電解コンデンサ1は、コンデンサ素子(内部素子)10と、ケース(外装)20と、封口部材30と、電解質40と、座板50と、を備える。
【0014】
図2、
図3に示すように、コンデンサ素子10は、陽極箔11と、陰極箔12と、セパレータ13と、陽極リード端子14と、陰極リード端子15と、を備える。
【0015】
陽極箔11は、例えば、エッチング処理等によって表面が粗面化された金属箔を備える。金属箔は、例えばアルミニウム箔である。金属箔の材料は、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁作用を有する金属又はその合金であることが好ましい。金属箔の表面には、誘電体皮膜(誘電体層)16が形成されている。誘電体皮膜16は、例えば金属箔を化成処理することにより形成される。化成処理は、例えば、金属箔を化成液に浸漬し、必要に応じて加熱及び電圧を印加することにより行われる。
【0016】
陰極箔12は、例えば、金属箔を備える。金属箔は、例えばアルミニウム箔である。金属箔の材料は、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁作用を有する金属又はその合金であることが好ましい。陰極箔12の金属箔には、必要に応じて、表面の粗面化処理及び/又は化成処理を行ってもよい。陰極箔12は、金属箔の表面がカーボン被膜、チタン被膜等で覆われていてもよい。
【0017】
セパレータ13は、陽極箔11と陰極箔12との間に配置され、陽極箔11と陰極箔12との接触を防止する。セパレータ13は、絶縁性を有する材料により形成される。セパレータ13は、特に限定されないが、例えば、絶縁紙又は、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、ポリアミド、ガラス質等を主成分とする不織布等であってもよい。
【0018】
陽極リード端子14は、陽極箔11に接続されている。陽極リード端子14の材料は特に限定されず、導電性材料であればよい。陽極リード端子14は、リードタブ141と端子板142とを一体に備える。リードタブ141は、ケース20の内部で陽極箔11に接続されている。端子板142は、ケース20の外部に露出している。
【0019】
陰極リード端子15は、陰極箔12に接続されている。陰極リード端子15の材料は特に限定されず、導電性材料であればよい。陰極リード端子15は、リードタブ151と端子板152とを一体に備える。リードタブ151は、ケース20の内部で陰極箔12に接続されている。端子板152は、ケース20の外部に露出している。
【0020】
陽極リード端子14が接続された陽極箔11と陰極リード端子15が接続された陰極箔12とは、セパレータ13を挟んで対向して配置される。そして、これら陽極箔11、陰極箔12およびセパレータ13がロール状に巻き取られることで、コンデンサ素子(巻取り素子)10が円筒形状に形成される。
【0021】
ケース20は、アルミニウム等の材料により下面が開口する円筒状に形成されている。コンデンサ素子10は、陽極リード端子14の端子板142及び陰極リード端子15の端子板152が外部に露出するように、ケース20に収容される。
【0022】
電解コンデンサ1では、ケース20内において、陽極箔11と陰極箔12との間に、導電性高分子が配置されている。導電性高分子の材料は、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、及びそれらの誘導体等であってもよく、さらにドーパントが添加されていてもよい。導電性高分子は、例えば、陽極箔11の誘電体皮膜16の表面、陰極箔12の表面、及びセパレータ13の表面のうちの、少なくとも一部に、膜状に付着していてもよい。また、ケース20内には、コンデンサ素子10が収容された後に、電解液(電解質40)が注入される。
【0023】
封口部材30は、ゴム等の弾性材料により形成されている。封口部材30は、ケース20の下面の開口を塞ぐようにケース20に取り付けられる。封口部材30には、2つの貫通孔が形成されている。
【0024】
座板50は、絶縁性を有する材料により形成されている。座板50は、ケース20の下部に取り付けられる。座板50には、封口部材30の貫通孔とそれぞれ対応する位置に、2つの貫通孔が形成される。また、座板50の底面(下面)には、各貫通孔の出口から外側へと延びる2つの収容凹部が形成されている。
【0025】
ケース20の内部から外部に突出した陽極リード端子14及び陰極リード端子15は、封口部材30の貫通孔及び座板50の貫通孔に通され、外側に折れ曲がっている。陽極リード端子14の外側に折れ曲がった部分が、端子板142として、座板50の2つの収容凹部の一方に収容される。陰極リード端子15の外側に折れ曲がった部分が、端子板152として、座板50の2つの収容凹部の他方に収容される。
【0026】
図1に示すように、ケース20の天面21には、電解コンデンサ1の特性を示す表示部60が設けられている。表示部60は、ケース20の天面21に印刷によって表示されている。なお、
図2では、表示部60の図示を省略している。表示部60の表示内容は、例えば、電解コンデンサ1の極性(-極側)を示す黒塗りの極性表示と、静電容量の値(数値:単位はμF)と、定格電圧記号と、シリーズ記号と、鉛フリー対応品マーク(黒点)と、ロット番号(生産ロットを示す番号)と、を含む。本実施形態の電解コンデンサ1では、ケース20の天面21の第1領域(
図1の左側)に、極性表示が付されている。また、ケース20の天面21の第2領域(
図1の右側)において、上段に静電容量が付され、中段に定格電圧記号、及びシリーズ記号が付され、下段にロット番号が付されている。もちろん、表示部60の表示内容及び数値等は、
図1に示すものに限られない。
【0027】
また、
図1に示すように、ケース(外装)20には、表示部60以外に、識別子70が付されている。識別子70は、表示によってケース20に付されている。より詳細には、識別子70は、ケース20に直接印刷されている。また、識別子70は、ケース20の側面22にある。本実施形態では、識別子70は、マトリックス型の二次元コードである。
【0028】
ここにおいて、電解コンデンサ1のコンデンサ素子(内部素子)10の生産ロットは、複数の小単位(集合体)を含んでおり、識別子70は、複数の小単位を識別する識別子である。言い換えれば、生産ロットは、各々が複数の電解コンデンサ1を含む集合体(小単位)を、複数含んでいる。そして、識別子70は、複数の電解コンデンサ1を一ロットとする生産ロットに含まれる複数の小単位のうちで、この電解コンデンサ1が属する小単位を、特定する。
【0029】
1つの小単位に含まれる電解コンデンサ1の最小数は、1である。複数の小単位の各々に含まれる電解コンデンサ1の数は、互いに同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。例えば、複数の小単位の各々は、1~10個の電解コンデンサ1を含んでもよい。複数の小単位の各々は、10~100個の電解コンデンサ1を含んでもよい。複数の小単位の各々は、100~1000個の電解コンデンサ1を含んでもよい。複数の小単位の各々は、1000~1万個の電解コンデンサ1を含んでもよい。複数の小単位の各々は、1万個以上の電解コンデンサ1を含んでもよい。
【0030】
本実施形態では、複数の小単位の各々に含まれる電解コンデンサ1の数は、1個である。言い換えれば、本実施形態では、小単位は個片である。要するに、一つの生産ロットに含まれる複数の電解コンデンサ1には、互いに異なる識別子70が付されている。特に、本実施形態では、全ての生産ロットに含まれる全ての電解コンデンサ1には、互いに異なる識別子70が付されている。
【0031】
識別子70は、電解コンデンサ1の製造時に、電解コンデンサ1のケース(外装)20に付される。また、電解コンデンサ1の製造時には、各電解コンデンサ1の製造時における製造情報が、この電解コンデンサ1に付されている識別子70と対応付けて、管理装置200(後述)のデータベースに管理情報として記憶される。したがって、電解コンデンサ1の識別子70を読み取り、データベースの管理情報と照合することで、電解コンデンサ1の製造情報(製造時の情報)を個別に特定することが可能となる。
【0032】
一例において、製造情報は、電解コンデンサ1の製造システムの状態を示す情報、電解コンデンサ1の検査結果を示す情報等を含む。製造システムの状態の情報とは、例えば、製造システムに含まれる装置の駆動速度(モーターの回転速度)等の情報、装置の温度の情報等を含む。検査結果を示す情報は、例えば、検査結果の評価のランク(優・良・可の区別を示すランク等)を示す情報等を含む。つまり、本開示の製造情報とは、製品の一般的な仕様を示す情報というよりも、個々の製品の製造時の状態を示す情報を意味する。
【0033】
(1.2)製造方法
次に、本実施形態に係る電子部品の一例としての電解コンデンサ1の製造方法について、
図4~
図7を参照して説明する。
図4は、電解コンデンサ1の製造方法を示すフローチャートである。電解コンデンサ1の製造方法は、複数の工程を含み、複数の工程が所定の順番で行われることで電解コンデンサ1が製造される。
【0034】
図4に示すように、本実施形態の電子部品(電解コンデンサ1)の製造方法は、ロット工程S1と、分離・一体化工程S2と、小単位工程S3と、を含む。本実施形態では、ロット工程S1と、分離・一体化工程S2と、小単位工程S3とは、この順に行われる。
【0035】
ロット工程S1は、生産ロット単位で(生産ロットごとに)、電解コンデンサ1のコンデンサ素子(内部素子)10を製造する工程である。分離・一体化工程S2は、コンデンサ素子(内部素子)10にケース(外装)20を一体化し、生産ロットから、複数の小単位に分離する工程である。ここにおいて、小単位は、一以上の個片を含んでいる。小単位工程S3は、小単位単位で(小単位ごとに)加工を行う工程である。
【0036】
本実施形態では、分離・一体化工程S2において、生産ロットから、複数の個片(個別のコンデンサ素子10)に分離される。そして、小単位工程S3では、個片単位で(コンデンサ素子10ごとに)加工が行われる。言い換えれば、本実施形態では、小単位工程S3は、個片単位で加工を行う個片工程である。
【0037】
以下、本実施形態の電解コンデンサ1の製造方法について、より詳細に説明する。
【0038】
図5に示すように、本実施形態の電解コンデンサ1の製造方法では、ロット工程S1は、リード接続工程S11と、巻取工程S12と、ゴム組立工程S13と、保持工程S14と、断面化成工程S15と、ポリマー工程S16と、を含む。
【0039】
まず、リード接続工程S11の前に、所定の大きさの金属箔(アルミニウム箔)にエッチング処理及び化成処理を施し、所望の大きさに裁断することで、陽極箔11が準備される。また、所定の大きさの金属箔(アルミニウム箔)を所望の大きさに裁断することで、陰極箔12が準備される。
【0040】
リード接続工程S11では、陽極リード端子14のリードタブ141が、陽極箔11に例えばカシメや超音波溶接等により接続され、陰極リード端子15のリードタブ151が、陰極箔12に例えばカシメや超音波溶接等により接続される。
【0041】
巻取工程S12では、陽極箔11と陰極箔12とが、セパレータ13を挟んで対向するようにセットされる。そして、これら陽極箔11、陰極箔12及びセパレータ13がロール状に巻き取られることにより、巻取り素子(コンデンサ素子10)が順に作製される。ここにおいて、複数の陽極箔11及び陰極箔12は、リード接続工程S11においてリード端子14,15が接続された順番に従って、順に巻取り処理される。
【0042】
ゴム組立工程S13では、巻取工程S12で作製された巻取り素子に、封口部材30が取り付けられる。巻取り素子の陽極リード端子14及び陰極リード端子15が、封口部材30の2つの貫通孔にそれぞれ挿入されることで、巻取り素子に封口部材30が取り付けられる。ゴム組立工程S13では、例えば、巻取工程S12で作製された順に、巻取り素子に封口部材30が取り付けられる。つまり、巻取り素子には、巻取り素子が作製された順に従って(時系列に沿って)、封口部材30が取り付けられる。
【0043】
保持工程S14では、封口部材30が取り付けられた巻取り素子が、順に、帯状の保持具に保持される。保持具は、例えば金属製のキャリアバーである。巻取り素子は、作製された順(巻取り処理された順;封口部材30が取り付けられた順)に従って、保持具の第1端から第2端に向かって並ぶように保持具に保持される。保持具には、各巻取り素子の高さ方向が互いに揃うように、巻取り素子の陽極リード端子14が保持(例えば溶着)される。一つの保持具で保持される複数の巻取り素子が、一つの生産ロットを構成する。一つの生産ロットには、例えば、1~5万個程度の巻取り素子が含まれる。
【0044】
断面化成工程S15では、巻取り素子の陽極箔11に、化成処理が施される。断面化成工程S15では、例えば、保持具(キャリアバー)に保持された複数の巻取り素子を化成槽内の化成液に浸漬し、保持具と化成液との間に電圧を印加することで、化成処理を行う。断面化成工程S15によって、裁断によって形成された陽極箔11の裁断面に誘電体皮膜16が形成され、また、巻取工程S12等で生じ得る誘電体皮膜16のクラックが修復される。断面化成工程S15では、化成処理の後、必要に応じて巻取り素子を洗浄及び乾燥してもよい。
【0045】
ポリマー工程S16では、陽極箔11(誘電体皮膜16)の表面、陰極箔12の表面、セパレータ13の表面の少なくとも一部に、導電性高分子が付着される。ポリマー工程S16では、例えば、導電性高分子を溶媒中に分散させた分散液中に、保持具に保持された巻取り素子を浸漬し、巻取り素子内部全体へ分散液を浸透させ、巻取り素子を分散液から取り出す。そして、分散液を含浸させた巻取り素子に加熱処理を施し、溶媒の少なくとも一部を揮発させて導電性高分子を凝集させる。
【0046】
図6に示すように、分離・一体化工程S2は、取外工程(分離工程)S21と、圧入工程S22と、絞り工程S23と、識別子付与工程S24と、を含む。取外工程(分離工程)S21では、生産ロットから複数の小単位が順次、分離される。そして、取外工程(分離工程)S21で分離される順に従って、識別子70が外装(ケース20)に付される。
【0047】
取外工程(分離工程)S21では、巻取り素子が、保持具から取り外される。巻取り素子は、保持具の第1端側に保持された巻取り素子から順に、取り外される。取外工程S21は、例えば、保持具に保持された陽極リード端子14が、保持具から外される(保持具に溶着されている場合には、例えば、陽極リード端子14が適宜の長さの部分で切断される)ことで行われる。
【0048】
圧入工程S22では、保持具から取り外された巻取り素子に対して、ケース20が個別に取り付けられる。巻取り素子には、取外工程S21で保持具から取り外された順に、ケース20が取り付けられる。より詳細には、保持具から取り外された巻取り素子が、電解液(電解質40)が注入されたケース(外装)20に個別に挿入される。ここにおいて、ケース20の開口の径は封口部材30の外径よりも若干小さくなっており、ケース20に巻取り素子が挿入されることで、封口部材30がケース20に圧入される。これにより、巻取り素子にケース20が取り付けられてなる組立体が作製される。圧入工程S22では、巻取り素子に対して、保持具から取り外された順番でケース20が取り付けられる。すなわち、圧入工程S22では、保持具の第1端に保持されていた巻取り素子から順に、ケース20が取り付けられる。つまり、巻取り素子には、巻取り素子が作製された順に従って(時系列に沿って)、ケース20が取り付けられる。
【0049】
絞り工程S23では、ケース20の側壁において封口部材30に対応する部分を絞る絞り処理を行うことで、ケース20が封口部材30によって密閉される。絞り工程S23では、巻取り素子に対して、圧入工程S22においてケース20が取り付けられた順番で絞り処理が行われる。つまり、絞り工程S23では、例えば、保持具の第1端に保持されていた巻取り素子(組立体)から順に、絞り処理が行われる。
【0050】
識別子付与工程S24では、保持具に保持された組立体のケース20に、識別子70が順に付される。識別子付与工程S24では、インクジェット印刷機(第1インクジェット印刷機)によって、組立体のケース20の側面22に識別子70が印刷される。識別子付与工程S24では、例えば、絞り処理が行われた巻取り素子(組立体)のケース20から順に、識別子70が印刷される。つまり、組立体には、巻取り素子が作製された順に従って(時系列に沿って)、識別子70が付される。識別子付与工程S24で付与された識別子70は、管理装置200のデータベースに、識別子70が付与された時間とともに時系列で記憶される。
【0051】
なお、分離・一体化工程S2における、取外工程S21、圧入工程S22、絞り工程S23、識別子付与工程S24は、一連の装置で連続して行われてもよい。
【0052】
識別子70が付与された組立体は、収容箱(第1収容箱)に収容される。一つの生産ロットに含まれる複数の組立体は、1つの第1収容箱に収容されてもよいし、複数の第1収容箱に収容されてもよい。例えば、一つの第1収容箱には、数千個程度の組立体が収容されてもよい。また、第1収容箱に複数の生産ロットに含まれる複数の組立体が収容されてもよい。
【0053】
図7に示すように、小単位工程(個片工程)S3は、第1読取工程S31と、エージング工程S32と、第2読取工程S33と、印刷工程S34と、第3読取工程S35と、加工工程S36と、を含む。第1読取工程S31とエージング工程S32とは、2つの工程が1つのセットとして連続して行われる。第2読取工程S33と印刷工程S34とは、2つの工程が1つのセットとして連続して行われる。第3読取工程S35と加工工程S36とは、2つの工程が1つのセットとして連続して行われる。
【0054】
第1読取工程S31では、第1収容箱から任意の組立体が取り出され、取り出された組立体の識別子70が読み取られる。第1読取工程S31で読み取られた識別子70は、管理装置200のデータベースに、時系列で記憶される。
【0055】
エージング工程S32では、第1読取工程S31で識別子70が読み取られた組立体の、陽極リード端子14-陰極リード端子15間に、電圧を印加することで、誘電体皮膜16の再化成処理を行う。エージング工程S32では、必要に応じて組立体が適宜加熱される。再化成処理が終了した組立体は、収容箱(第2収容箱)に収容される。一つの生産ロットに含まれる複数の組立体は、1つの第2収容箱に収容されてもよいし、複数の第2収容箱に分けて収容されてもよい。また、例えば、同じ第1収容箱に収容されていた複数の組立体同士は、同じ第2収容箱に収容されてもよい。
【0056】
第2読取工程S33では、第2収容箱から任意の組立体が取り出され、取り出された組立体の識別子70が読み取られる。第2読取工程S33で読み取られた識別子70は、管理装置200のデータベースに、時系列で記憶される。
【0057】
印刷工程S34では、第2読取工程S33で識別子70が読み取られた組立体のケース20の天面21に、インクジェット印刷機(第2インクジェット印刷機)によって、表示部60が印刷される。表示部60が印刷された組立体は、収容箱(第3収容箱)に収容される。一つの生産ロットに含まれる複数の組立体は、1つの第3収容箱に収容されてもよいし、複数の第3収容箱に分けて収容されてもよい。また、例えば、同じ第2収容箱に収容されていた複数の組立体同士は、同じ第3収容箱に収容されてもよい。
【0058】
第3読取工程S35では、第3収容箱から任意の組立体が取り出され、取り出された組立体の識別子70が読み取られる。第3読取工程S35で読み取られた識別子70は、管理装置200のデータベースに、時系列で記憶される。
【0059】
加工工程S36では、第3読取工程S35で識別子70が読み取られた組立体に、座板50が取り付けられる。加工工程S36では、組立体の陽極リード端子14及び陰極リード端子15が、座板50の2つの貫通孔にそれぞれ挿入されることで、組立体に座板50が取り付けられる。また、座板50が取り付けられた後、陽極リード端子14及び陰極リード端子15が外側に折り曲げられることで、各リード端子の折れ曲がった部分が、座板50の2つの収容凹部に端子板142,152としてそれぞれ収容される。
【0060】
上記のような手順により、本実施形態の電解コンデンサ1が製造される。
【0061】
上記の説明から分かる通り、分離・一体化工程S2においては、巻取り素子が作製された順に従って、識別子70が付与される。そして、小単位工程S3における各処理工程(エージング工程S32、印刷工程S34、加工工程S36)では、直前に行われる読取工程(第1,第2,第3読取工程S31,S33,S35)で読み取られた識別子70に従って、処理される組立体がどの組立体であるかが把握される。すなわち、小単位工程S3における処理工程で処理される組立体の順番と、分離・一体化工程S2(取外工程S21)で分離される巻取り素子の順番とが、読取工程で読み取った識別子70に基づいて対応付けられている。
【0062】
要するに、本実施形態の電子部品の製造方法では、小単位工程S3は、取出工程と、読取工程(第1,第2,第3読取工程S31,S33,S35)と、処理工程(エージング工程S32、印刷工程S34、加工工程S36)と、を含んでいる。取出工程は、複数の小単位(個片)のうちの2以上の小単位が収容されている収容箱(第1~第3収容箱)から、小単位(個片)を順不同で取り出す工程である。読取工程は、収容箱から取り出した小単位(個片)の識別子70を読み取る工程である。処理工程は、識別子70を読み取った小単位(個片)に所定の処理を行う工程である。そして、本実施形態の電子部品の製造方法では、読取工程で読み取った識別子70に基づいて、処理工程において小単位(個片)が処理された順番と分離工程(取外工程S21)で小単位(個片)が分離された順番とが、対応付けられている。
【0063】
(1.3)製造システム
上記の製造方法は、例えば、
図8に示す製造システム100によって実行される。
【0064】
本実施形態の製造システム100は、従来の電子部品(電解コンデンサ)の製造システム(基本製造システム)110を備えている。本実施形態の製造システムは、基本製造システム110に加えて、インクジェット印刷機(第1インクジェット印刷機)120と、読取機130と、検査機140と、計測機150と、管理装置200と、を備えている。
【0065】
基本製造システム110は、従来周知の電解コンデンサの製造システムである。基本製造システム110は、(1.2)で説明した製造方法の工程のうち、リード接続工程S11、巻取工程S12、ゴム組立工程S13、保持工程S14、断面化成工程S15、ポリマー工程S16、取外工程S21、圧入工程S22、絞り工程S23、エージング工程S32、印刷工程S34、加工工程S36を行う。基本製造システム110は、一又は複数の装置を含んでいる。基本製造システム110は、例えば、リード接続工程S11及び巻取り工程S12を行う巻取機、断面化成工程S15で使用される化成槽、表示部60を印刷するためのインクジェット印刷機(第2インクジェット印刷機)等を含んでいる。
【0066】
インクジェット印刷機(第1インクジェット印刷機)120は、(1.2)で説明した製造方法の工程のうち、識別子付与工程S24を行う。
【0067】
読取機130は、(1.2)で説明した製造方法のうち、第1読取工程S31、第2読取工程S33、第3読取工程S35を行う。読取機130は、例えば、第1読取工程S31を行う第1読取機、第2読取工程S33を行う第2読取機、及び第3読取工程S35を行う第3読取機を備えていてもよい。或いは、読取機130は、第1,第2,第3読取り工程S31,S33,S35を行う1台の読取機であってもよい。
【0068】
検査機140は、(1.2)で説明した製造方法の各工程において、素子部材(巻取り素子、組立体)が所望の性能を有しているかを検査する。検査機140は、一又は複数の装置を含んでいる。
【0069】
検査機140は、例えば、リード接続工程S11において、接続後の陽極リード端子14及び陰極リード端子15の寸法が、所望の範囲内にあるかを検査する。検査機140は、例えば、巻取工程S12において、陽極箔11と陰極箔12とがショートしていないかを検査する。検査機140は、例えば、ゴム組立工程S13において、封口部材30の高さが所望の範囲内にあるかを検査する。検査機140は、例えば、断面化成工程S15及び/又はポリマー工程S16において、収束電流値が所望の範囲内にあるかを検査する。検査機140は、例えば、絞り工程S23において、ケース20の絞り形状が所望の形状を有しているかを検査する。検査機140は、例えば、エージング工程S32において、容量値、誘導正接(tanδ)、漏れ電流(LC)等が所望の範囲内にあるかを検査する。検
査機140は、例えば、印刷工程S34において、ケース20の天面21に所望の形状の表示部60が付されているかを検査する。検査機140は、例えば、加工工程S36において、容量値、誘導正接(tanδ)、等価直列抵抗(ESR)、漏れ電流(LC)等が所望の範囲内にあるかを検査する。検査機140による検査結果が所望の性能を有していない素子部材は、適宜、製造工程から取り除かれる。
【0070】
計測機150は、基本製造システム110の装置の状態を計測する。また、計測機150は、基本製造システム110の装置が設置されている環境の情報を計測する。計測機150は、一又は複数の装置を含んでいる。
【0071】
計測機150は、例えば、巻取機による巻取り素子の巻取り速度、化成槽の温度/化成槽に印加されている電圧、等を計測する。計測機150は、例えば、環境の温度、湿度等を計測する。
【0072】
管理装置200は、例えばプロセッサとメモリとを有するマイクロコンピュータを備えている。マイクロコンピュータのプロセッサがメモリに記録されたプログラムを実行することによって、管理装置200が備える種々の機能が実現される。管理装置200のプロセッサが実行するプログラムは、あらかじめマイクロコンピュータのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されてもよいし、電気通信回線を通して提供されてもよい。
【0073】
管理装置200は、上記のように、管理情報を記憶するデータベースを備えている。データベースは、上記のメモリと同じであってもよいし、別の電気的に書き換え可能な記録媒体であってもよい。
【0074】
管理装置200は、インクジェット印刷機120、読取機130、検査機140、及び計測機150と接続されている。
【0075】
管理装置200は、インクジェット印刷機120から、識別子付与工程S24でケース20に印刷した識別子70(識別子70の形状)を取得する。管理装置200は、インクジェット印刷機120から取得した識別子70を、時系列でデータベースに格納する。
【0076】
管理装置200は、読取機130から、第1,第2,第3読取り工程S31,S33,S35で読み取った識別子70(識別子70の形状)を取得する。管理装置200は、読取機130から取得した識別子70を、時系列でデータベースに格納する。
【0077】
管理装置200は、検査機140から、各工程での検査結果の情報(計測値)を取得する。管理装置200は、検査機140から取得した検査結果の情報を、時系列でデータベースに格納する。
【0078】
管理装置200は、計測機150から、装置の状態を示す情報、及び環境の情報を取得する。管理装置200は、計測機150から取得した情報を、時系列でデータベースに格納する。
【0079】
つまり、管理装置200は、インクジェット印刷機120から取得した識別子70、読取り機130から取得した識別子70、検査機140から取得した検査結果の情報、計測機150から取得した情報を、時系列でデータベースに格納している。
【0080】
(1.4)管理方法
次に、本実施形態の電子部品(電解コンデンサ1)の管理方法について説明する。本実施形態の電子部品の管理方法は、管理装置200によって実行される。
【0081】
本実施形態の電子部品の管理方法は、生産ロットにおける複数の小単位を識別する識別子70が外装(ケース20)に付されている電子部品(電解コンデンサ1)の管理方法である。電子部品(電解コンデンサ1)の管理方法は、識別子70に対応付けられた管理情報を管理することで、電子部品(電解コンデンサ1)を小単位ごとに管理する。
【0082】
本実施形態では、電解コンデンサ(電子部品)1のケース(外装)20に、個片を識別する識別子70が付されている。そして、本実施形態の電子部品の管理方法は、識別子70に対応付けられた管理情報を管理することで、電子部品(電解コンデンサ1)を個片ごとに管理する。
【0083】
まず、ロット工程S1、分離・一体化工程S2における電子部品の管理方法について、説明する。
【0084】
(1.2)欄の説明からわかるように、本実施形態の電子部品(電解コンデンサ1)の製造方法では、ロット工程S1、分離・一体化工程S2にわたって、処理が行われる複数の組立体(内部素子)の順番が、変わらない。そして、各工程(S11~S16,S21~S24)において処理に要する時間は既知であり、また、これらの工程は連続して行われている。このため、識別子付与工程S24において識別子70がいつ付与されたかがわかれば、この識別子70が付与された組立体に、いつの時点でどの工程が行われていたかを知ることが可能である。言い換えれば、識別子70が組立体に付与された時間がわかれば、製造システム100における所望の装置が、この組立体に処理を行っていた時間を、特定することが可能である。
【0085】
本実施形態の管理方法では、識別子付与工程S24において各電子部品に付与された識別子70が、管理装置200のデータベースに、識別子70が付された時間とともに時系列で格納される。これにより、各電子部品(電解コンデンサ1)の識別子70を読み取るだけで、この電子部品に対してロット工程S1、分離・一体化工程S2における各工程がいつ行われたかを、把握することが可能となる。
【0086】
また、本実施形態の管理方法では、ロット工程S1、分離・一体化工程S2においては、検査機140による検査結果の情報が、管理装置200のデータベースに時系列で格納される。検査機140による検査結果の情報は、最終的には、各電子部品(電解コンデンサ1)の識別子70と対応付けて、データベースに格納されることになる。これにより、電子部品(電解コンデンサ1)の製造後、各電子部品の識別子70を読み取ってデータベースと照合するだけで、この電子部品に対する検査機140の各工程での検査結果を把握することが可能となる。言い換えれば、製造情報(製造時の情報)として、この電子部品の検査結果を示す情報を、データベースから読み出すことが可能となる。
【0087】
さらに、本実施形態の管理方法では、ロット工程S1、分離・一体化工程S2においては、計測機150で計測される装置の状態の情報(例えば、装置の駆動速度、温度等)及び環境の情報(例えば、温度、湿度等)は、管理装置200のデータベースに時系列で格納される。これにより、電子部品(電解コンデンサ1)の製造後、各電子部品の識別子70を読み取れば、この電子部品が製造されていた時の装置の状態(電子部品の製造時における製造システム100の装置の状態)を、データベースから読み出すことが可能となる。言い換えれば、製造情報(製造時の情報)として、この電子部品が製造されていた時の装置の状態を示す情報を、データベースから読み出すことが可能となる。
【0088】
次に、小単位工程S3における電子部品の管理方法について、説明する。
【0089】
(1.2)欄で説明したように、本実施形態の電子部品の製造方法では、小単位工程S3は、取出工程と、読取工程(第1,第2,第3読取工程S31,S33,S35)と、処理工程(エージング工程S32、印刷工程S34、加工工程S36)と、を含んでいる。これら3つの工程は、一連の工程として連続して行われる。
【0090】
そして、本実施形態の電子部品の管理方法では、小単位工程S3において、読取工程で読み取られた識別子70が、(識別子70が読み取られた時間とともに)管理装置200のデータベースに時系列で格納される。これにより、各電子部品(電解コンデンサ1)の識別子70を読み取るだけで、この電子部品に、対応する処理工程がいつ行われたかを把握することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態の管理方法では、小単位工程S3においては、検査機140による検査結果の情報は、管理装置200のデータベースに時系列で格納される。検査機140による検査結果の情報は、最終的には、読取工程で読み取られた識別子70と対応付けて、データベースに格納される。これにより、電子部品(電解コンデンサ1)の製造後、各電子部品の識別子70を読み取ってデータベースと照合するだけで、この電子部品に対する検査機140の各工程での検査結果を把握することが可能となる。言い換えれば、製造情報(製造時の情報)として、この電子部品の検査結果を示す情報を、データベースから読み出すことが可能となる。
【0092】
さらに、本実施形態の管理方法では、小単位工程S3においては、計測機150で計測される装置の状態の情報及び環境の情報は、管理装置200のデータベースに時系列で格納される。これにより、電子部品(電解コンデンサ1)の製造後、各電子部品の識別子70を読み取れば、この電子部品が製造されていた時の装置の状態(電子部品の製造時における製造システム100の装置の状態)を、データベースから読み出すことが可能となる。言い換えれば、製造情報(製造時の情報)として、この電子部品が製造されていた時の装置の状態を示す情報を、データベースから読み出すことが可能となる。
【0093】
要するに、本実施形態の管理方法において、管理装置200のデータベースに格納される管理情報は、電子部品(電解コンデンサ1)の製造の各工程に関する情報を含んでいる。電子部品の製造の各工程に関する情報は、例えば、電子部品の製造の各工程における製造装置の状態の情報、電子部品の製造の各工程における環境の情報、電子部品の製造の各工程における検査結果の情報、のうちの少なくとも一つを含んでいる。
【0094】
上記のように、本実施形態の管理方法では、管理情報が電子部品の製造の各工程に関する情報を含んでいる。したがって、例えば電子部品の使用時において電子部品に不具合が発生した場合、この電子部品の識別子70を読み取れば、この電子部品の製造の各工程に関する情報を、製造情報としてデータベース(管理情報)から引き出すことが可能となる。これにより、例えば、不具合が発生した電子部品の製造時の各工程において、製造装置、製造環境、検査結果等に異常がなかったか否かを、検証することが可能となる。
【0095】
また、本実施形態の管理方法において、管理装置200のデータベースに格納される管理情報は、電子部品(電解コンデンサ1)の製造における時系列情報を含んでいる。電子部品の製造における時系列情報は、例えば、電子部品の製造時において各工程が行われた時間情報、複数の電子部品が製造された順番の情報、のうちの少なくとも一方を含んでいる。
【0096】
上記のように、本実施形態の管理方法では、管理情報が電子部品の製造の時系列情報を含んでいる。したがって、例えば電子部品の使用時において電子部品に不具合が発生した場合、この電子部品の識別子70を読み取れば、この電子部品の製造時における時系列情報を、製造情報としてデータベース(管理情報)から引き出すことが可能となる。これにより、例えば、不具合が発生した電子部品の製造時間の前後に、他に不具合のある電子部品があるか否か等を検証することが可能となる。
【0097】
(2)変形例
以上説明した上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。また、上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例のいくつかを列挙する。上記の実施形態及び下記の変形例は、適宜組み合わせ可能である。
【0098】
実施形態における管理装置200及び/又は管理方法と同様の機能は、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。ここで、管理装置200又は管理方法の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、管理装置200又は管理方法の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0099】
電子部品は、電解コンデンサ1に限られない。例えば、電子部品は、電気二重層コンデンサ(EDLC:Electric double-layer capacitor)、セラミックコンデンサ等であっても
よい。電子部品は、導電性高分子などの固体電解質を用いた固体電解コンデンサや、電解液を用いた電解コンデンサであってもよい。また、電解コンデンサ1は、導電性高分子を含まなくてもよい。コンデンサは、いわゆるスリーブタイプであってもよい。
【0100】
実施形態の製造方法において、いくつかの工程は適宜省略されてもよく、及び/又は他の工程が適宜追加されてもよい。例えば、断面化成工程S15等が、適宜省略されてもよい。
【0101】
また、実施形態の製造方法について、ロット工程S1における各工程及び分離・一体化工程S2における各工程の順番は、上記実施形態と異なっていてもよい。例えば、ゴム組立工程S13は、圧入工程S22の次に行われてもよい。また、識別子付与工程S24は、例えば絞り工程S23の前に行われてもよい。また、取外工程S21は、圧入工程S22/絞り工程S23の後に行われてもよいし、識別子付与工程S24の後に行われてもよい。
【0102】
また、ケース20に予め識別子70を付与しておき、圧入工程S22において、識別子70が付与されたケース20を巻取り素子に取り付けてもよい。すなわち、圧入工程S22と識別子付与工程S24とが同時に行われてもよい。
【0103】
保持具は、キャリアバーに限られず、電気絶縁性のフープであってもよい。
【0104】
電子部品は、コンデンサに限られず、他の受動部品であってもよい。例えば、電子部品は、抵抗素子、インダクタ等であってもよい。
【0105】
電子部品の外装は、ケース20に限られない。外装は、例えば、樹脂モールドであってもよい。
【0106】
識別子70は、外装(ケース20)の側面に印刷された二次元コードに限らない。識別子70は、例えば一次元コード(バーコード)、記号、文字等であってもよい。或いは、識別子70は、ICチップ、タグなどであってもよい。識別子70は、印刷によって外装に付されていなくてもよく、例えば識別子70が記載されたシールを外装に貼り付けることで、外装に付されていてもよい。識別子70は、外装の側面以外の場所(例えば、天面や底面)に付されていてもよい。
【0107】
製造システム100は、同一の工程を行うための複数の装置(例えば、複数の巻取り器)を備えていてもよい。例えば、管理情報に、複数の装置を区別するための設備情報を含めるようにすれば、電子部品がどの装置で製造されたかを判別することが可能となる。すなわち、識別子70を読み取るだけで、複数の装置のうちのどの装置で製造されたかを判別することが可能となる。
【0108】
識別子70を読み取ることでデータベースと照合可能な情報は、特に限定されないが、例えば、製造年月日、装置を区別するための設備情報、シリアルナンバー等を含んでいてもよい。
【0109】
(3)態様
以上説明した実施形態及び変形例から明らかなように、第1の態様の電子部品(電解コンデンサ1)は、内部素子(コンデンサ素子10)と、外装(ケース20)と、を備える。内部素子の生産ロットは、複数の小単位を含む。電子部品では、外装に、複数の小単位を識別する識別子(70)が付されている。
【0110】
第1の態様によれば、外装に、小単位を識別する識別子(70)が付されているので、識別子(70)を読み取ることで、小単位を特定することができる。これにより、電子部品の製造情報(製造時の情報)を特定することが可能となる。
【0111】
第2の態様の電子部品は、第1の態様において、識別子(70)は、表示により外装に付されている。
【0112】
第2の態様によれば、識別子(70)を容易に読み取ることが可能となる。また、例えば識別子(70)を撮影し、撮影した画像に写っている識別子を読み取ることで、間接的に識別子(70)を読み取ることができる。
【0113】
第3の態様の電子部品は、第2の態様において、識別子(70)は、外装に直接印刷されている。
【0114】
第3の態様によれば、容易に識別子(70)を付すことが可能となる。
【0115】
第4の態様の電子部品では、第2又は第3の態様において、識別子(70)は、外装の側面(22)にある。
【0116】
第4の態様によれば、外装(ケース20)の側面(22)を利用して、識別子(70)を付すことが可能となる。
【0117】
第5の態様の電子部品では、第2~第4のいずれかの態様において、識別子(70)は、一次元コード又は二次元コードである。
【0118】
第5の態様によれば、記号、文字等の場合に比べて、識別子(70)によって多くの情報を示すことが可能となる。
【0119】
第6の態様の電子部品では、第1~第5のいずれかの態様において、小単位は、個片である。
【0120】
第6の態様によれば、識別子(70)によって個片を特定することが可能となり、電子部品ごとの製造情報を特定することが可能となる。
【0121】
第7の態様の電子部品(電解コンデンサ1)の製造方法は、内部素子(コンデンサ素子10)と、外装(ケース20)と、を備える電子部品の製造方法である。電子部品の製造方法は、生産ロット単位で、内部素子を製造するロット工程(S1)と、生産ロットから、各々が一以上の個片を含む複数の小単位に分離する分離工程(取外工程S21)と、小単位単位で加工を行なう小単位工程(S3)と、を備える。外装は、内部素子に一体化される。電子部品では、外装に、複数の小単位を識別する識別子(70)が付されている。
【0122】
第7の態様によれば、電子部品の製造情報を特定することが可能となる。
【0123】
第8の態様の電子部品の製造方法では、第7の態様において、分離工程(取外工程S21)は、生産ロットから複数の小単位を順次分離する1以上の工程を含む。識別子(70)は、分離工程(取外工程S21)で、順次分離する1以上の前記工程のそれぞれにおいて、外装に付される。
【0124】
第8の態様によれば、生産ロットが小単位に分離される順に従って、外装に識別子(70)が付されるので、識別子(70)が小単位の製造順に従って付されることになり、小単位の製造時の時系列情報を特定することが可能となる。
【0125】
第9の態様の電子部品の製造方法は、第8の態様において、小単位工程(S3)は、取出工程と、読取工程と、処理工程と、を備える。取出工程は、複数の小単位のうちの2以上の小単位が収容されている収容箱から、小単位を順不同で取り出す工程である。読取工程は、収容箱から取り出した小単位の識別子(70)を読み取る工程である。処理工程は、識別子(70)を読み取った小単位に所定の処理を行う工程である。読取工程で読み取った識別子(70)に基づいて、処理工程において小単位が処理された順番と分離工程(取外工程S21)で小単位が分離された順番とを、対応付ける。
【0126】
第9の態様によれば、複数の小単位を収容箱に一旦収容する場合であっても、小単位の製造時の時系列情報を特定することが可能となる。
【0127】
第10の態様の電子部品の製造方法は、第7~第9のいずれかの態様において、小単位工程(S3)は、個片単位で処理を行なう個片工程である。
【0128】
第10の態様によれば、識別子(70)によって個片を識別することが可能となり、電子部品ごとの製造情報を特定することが可能となる。
【0129】
第11の態様の電子部品の管理方法は、内部素子(コンデンサ素子10)と、外装(ケース20)と、を備え、生産ロットにおける複数の小単位を識別する識別子(70)が外装に付されている電子部品(電解コンデンサ1)の管理方法である。電子部品の管理方法では、識別子(70)に対応付けられた管理情報を管理することで、電子部品を小単位ごとに管理する。
【0130】
第11の態様によれば、管理情報によって、電子部品の製造情報を特定することが可能となる。
【0131】
第12の態様の電子部品の管理方法は、第11の態様において、管理情報は、電子部品の製造の各工程に関する情報を含む。
【0132】
第12の態様によれば、管理情報によって、電子部品の製造時の各工程に関する情報を特定することが可能となる。
【0133】
第13の態様の電子部品の管理方法は、第11又は第12の態様において、管理情報は、電子部品の製造における時系列情報を含む。
【0134】
第13の態様によれば、電子部品の製造における時系列情報を特定することが可能となる。
【0135】
第14の態様のプログラムは、コンピュータで実行されたときに、コンピュータに、第11~第13のいずれかの態様の管理方法を実行させるプログラムである。
【0136】
第14の態様によれば、管理情報によって、電子部品の製造情報を特定することが可能となる。
【0137】
第2~6の態様に係る構成については、電子部品の必須の構成ではなく、適宜省略可能である。第8~第10の態様に係る構成については、電子部品の製造方法の必須の構成ではなく、適宜省略可能である。第12~第14の態様に係る構成については、電子部品の管理方法の必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0138】
1 電解コンデンサ(電子部品)
10 コンデンサ素子(内部素子)
20 ケース(外装)
22 側面
70 識別子
S1 ロット工程
S2 分離・一体化工程
S3 小単位工程