(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】レール把持具及び保線作業装置
(51)【国際特許分類】
E01B 29/04 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
E01B29/04
(21)【出願番号】P 2020138027
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】500539561
【氏名又は名称】株式会社テムザック
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】馬場 勝之
(72)【発明者】
【氏名】永松 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】木村 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】麻生 秀樹
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-306133(JP,A)
【文献】実開昭52-166272(JP,U)
【文献】特開2010-126298(JP,A)
【文献】特開2013-043771(JP,A)
【文献】実開平06-059377(JP,U)
【文献】特開2011-021421(JP,A)
【文献】登録実用新案第3153761(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0095242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保線作業時にレールを把持するクランプ部
と、道床上に接地される支持フレームと、該支持フレームに対して前記クランプ部を昇降させる昇降手段とを備えたレール把持具であって、
前記クランプ部は、左右一対のクランプアームと、該各クランプアームを駆動する駆動手段とを有し、
前記各クランプアームは、垂直軸と、該垂直軸の下端側から水平方向に突出する係止爪とを備え、
前記駆動手段で前記各クランプアームを前記各垂直軸の軸心回りに回動させ、前記各係止爪を前記レールの頭部の下面側に係合させて前記レールを把持することを特徴とするレール把持具。
【請求項2】
請求項1記載のレール把持具において、前記クランプ部は、前記駆動手段の駆動力を前記各垂直軸に伝達して、前記各クランプアームの回動動作を同期させるリンク機構を備え、前記駆動手段及び前記リンク機構は筐体に収容され、前記各クランプアームは、前記筐体の底部から下方に突出していることを特徴とするレール把持具。
【請求項3】
請求項
1記載のレール把持具において、前記支持フレームは、少なくとも左右一対の脚部を有し、該脚部の長手方向に沿って前記クランプ部を案内することを特徴とするレール把持具。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1記載のレール把持具において、前記レールの上面位置を検知するレール検知手段、前記レールの上面を撮影するレール撮影手段及び前記レールの上面にレーザー光を照射するレーザー光照射手段のいずれか1以上を備えていることを特徴とするレール把持具。
【請求項5】
ジャッキアームの先側
にレール把持具が取付けられた扛上手段が2つ並列に配置され、2つの該扛上手段の間が電気的に絶縁された軌框扛上ユニットを備え
、
前記レール把持具は、保線作業時にレールを把持するクランプ部を備え、
該クランプ部は、左右一対のクランプアームと、該各クランプアームを駆動する駆動手段とを有し、
前記各クランプアームは、垂直軸と、該垂直軸の下端側から水平方向に突出する係止爪とを備え、
前記駆動手段で前記各クランプアームを前記各垂直軸の軸心回りに回動させ、前記各係止爪を前記レールの頭部の下面側に係合させて前記レールを把持することを特徴とする保線作業装置。
【請求項6】
請求項5記載の保線作業装置において、前記レール把持具の前記クランプ部は、前記駆動手段の駆動力を前記各垂直軸に伝達して、前記各クランプアームの回動動作を同期させるリンク機構を備え、前記駆動手段及び前記リンク機構は筐体に収容され、前記各クランプアームは、前記筐体の底部から下方に突出していることを特徴とする保線作業装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の保線作業装置において、前記レール把持具は、道床上に接地される支持フレームと、該支持フレームに対して前記クランプ部を昇降させる昇降手段とを備えることを特徴とする保線作業装置。
【請求項8】
請求項
5~7のいずれか1記載の保線作業装置において、軌陸車の荷台に搭載可能であることを特徴とする保線作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保線作業時に用いられるレール把持具及びレール把持具を備えることにより保線作業を効率的に行うことができる保線作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道では、レール(軌条)が枕木で支えられ、その下の道床にはバラストが敷き詰められている。このバラストはクッションの役目を果たしているが、使用に伴ってレールの落ち込み(レベルの低下)が発生するので、レールを正規の高さに整正するための保線作業が必要となる。保線作業では、左右2本のレールと複数の枕木が締結された梯子状の軌框を持ち上げる扛上作業と、バラストの搗き固め(突き固め)を行う搗き固め作業が行われる。従来の扛上作業では、道床(バラスト)とレールとの間に、手動のレールジャッキを差込んで軌框を持ち上げ、その後、タイタンパー等を用いて搗き固め作業を行っており、人力に頼る作業が多く、作業者の負担が大きかった。特に夏場の炎天下での作業は過酷であり、作業者の体力の消耗が激しく、負担が増大し、作業の能率も低下するという問題があった。
そこで、扛上作業における作業者の負担を軽減し、作業効率の改善を図るものとして、例えば、特許文献1~5には、様々なレール把持具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-21602号公報
【文献】特開平9-59905号公報
【文献】特開昭58-94501号公報
【文献】実開平6-59377号公報
【文献】特開2015-121050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2には、対となる左右のアームの一方のみを回動させる片開き式のレール把持具が開示され、特許文献3~5には、対となる左右のアームをそれぞれ回動させる両開き式のレール把持具が開示されているが、いずれも水平軸を中心にアームを回動させるものである。このため、アームの回動中心となる水平軸をレールと平行にし、レールの幅方向中央位置に水平軸の軸心を一致させなければ、確実にレールを把持することができず、また、レールを持ち上げた際にレールが傾いてしまい、レールを正規の高さに整正し難くなるという課題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、細かな位置合わせを必要とせず、簡単かつ確実にレールを把持することができる動作の安定性に優れたレール把持具及びそれを備えることにより、保線作業を効率的に行うことができる省力性に優れた保線作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係るレール把持具は、保線作業時にレールを把持するクランプ部を備えたレール把持具であって、
前記クランプ部は、左右一対のクランプアームと、該各クランプアームを駆動する駆動手段とを有し、
前記各クランプアームは、垂直軸と、該垂直軸の下端側から水平方向に突出する係止爪とを備え、
前記駆動手段で前記各クランプアームを前記各垂直軸の軸心回りに回動させ、前記各係止爪を前記レールの頭部の下面側に係合させて前記レールを把持する。
【0006】
第1の発明に係る保線作業装置において、前記クランプ部は、前記駆動手段の駆動力を前記各垂直軸に伝達して、前記各クランプアームの回動動作を同期させるリンク機構を備え、前記駆動手段及び前記リンク機構は筐体に収容され、前記各クランプアームは、前記筐体の底部から下方に突出していることが好ましい。
【0007】
第1の発明に係る保線作業装置において、道床上に接地される支持フレームと、該支持フレームに対して前記クランプ部を昇降させる昇降手段とを備えていることが好ましい。
【0008】
第1の発明に係る保線作業装置において、前記支持フレームは、少なくとも左右一対の脚部を有し、該脚部の長手方向に沿って前記クランプ部を案内することができる。
【0009】
第1の発明に係る保線作業装置において、前記レールの上面位置を検知するレール検知手段、前記レールの上面を撮影するレール撮影手段及び前記レールの上面にレーザー光を照射するレーザー光照射手段のいずれか1以上を備えてもよい。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る保線作業装置は、第1の発明に係るレール把持具を備えている。
【0011】
第2の発明に係る保線作業装置において、ジャッキアームの先側に前記レール把持具が取付けられた扛上手段が2つ並列に配置され、2つの該扛上手段の間が電気的に絶縁された軌框扛上ユニットを備えていることが好ましい。
【0012】
第2の発明に係る保線作業装置において、軌陸車の荷台に搭載可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係るレール把持具及び第2の発明に係る保線作業装置は、クランプ部の左右一対のクランプアームをそれぞれの垂直軸の軸心回りに回動させることにより、各垂直軸の下端側に設けた係止爪をレールの頭部の下面側にそれぞれ係合させてレールを両側から確実に把持することができる。特に、クランプアームはその場で垂直軸の軸心回りに回動するだけで、クランプ部が移動したり、傾いたりすることがなく、重心の移動(変化)が発生しないので、細かな位置合わせ(調整)を行うことなく、把持したレールをスムーズかつ確実に持ち上げることができる。
【0014】
第1の発明に係るレール把持具において、クランプ部が、駆動手段の駆動力を各垂直軸に伝達して、各クランプアームの回動動作を同期させるリンク機構を備え、駆動手段及びリンク機構が筐体に収容され、各クランプアームが、筐体の底部から下方に突出している場合、1つの駆動手段で左右のクランプアームを駆動することができ、レール把持具の小型化及び軽量化を図ると共に、駆動手段及びリンク機構を筐体で保護することができ、耐久性及び動作の安定性に優れる。
【0015】
第1の発明に係るレール把持具において、道床上に接地される支持フレームと、支持フレームに対してクランプ部を昇降させる昇降手段とを備えている場合、支持フレームを道床上に接地(固定)した状態で、レールを把持したクランプ部を簡単かつ確実に昇降させることができ、施工性に優れる。
【0016】
第1の発明に係るレール把持具において、支持フレームが、少なくとも左右一対の脚部を有し、脚部の長手方向に沿ってクランプ部を案内する場合、クランプ部の位置ずれ(移動)や傾きを防止して、レールを接地面に対して直角方向に昇降させることができ、負荷を軽減できる。
【0017】
第1の発明に係るレール把持具において、レールの上面位置を検知するレール検知手段を備えている場合、クランプ部の高さを容易に調整してクランプアームでレールを確実に把持することができ、レールの上面を撮影するレール撮影手段及び/又はレールの上面にレーザー光を照射するレーザー光照射手段を備えている場合、クランプ部の左右方向位置を容易に調整して、左右のクランプアームでレールを略均等に保持することができる。
【0018】
第2の発明に係る保線作業装置において、ジャッキアームの先側にレール把持具が取付けられた扛上手段が2つ並列に配置され、2つの扛上手段の間が電気的に絶縁された軌框扛上ユニットを備えている場合、2つの扛上手段のジャッキアームで、それぞれのレール把持具を前後及び上下に移動させ、左右のレールをそれぞれのレール把持具で確実に把持して効率的に軌框扛上作業を行うことができ、汎用性及び操作性に優れる。このとき、2つの扛上手段のレール把持具でそれぞれ把持される左右のレールの間に電気が流れることがなく、安全性に優れる。
【0019】
第2の発明に係る保線作業装置において、軌陸車の荷台に搭載可能である場合、軌陸車で軌道上を移動しながら保線作業を行えるだけでなく、一般道路上を軌陸車で走行して作業現場に移動することもでき、別途、移動手段を備える必要がなく、構造を簡素化して量産性を向上させ、設備導入の促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るレール把持具の使用状態を示す背面図である。
【
図2】同レール把持具の使用状態を示す平面図である。
【
図3】同レール把持具の使用状態を示す側面図である。
【
図4】(A)は同レール把持具のクランプ部を示す平面図であり、(B)は同レール把持具のクランプ部を示す背面図である。
【
図5】(A)は同レール把持具のクランプ部の動作を示す平面図であり、(B)は同レール把持具のクランプ部の動作を示す背面図である。
【
図6】同レール把持具のクランプ部における駆動手段及びリンク機構を示す背面図である。
【
図7】(A)、(B)は同レール把持具のクランプ部におけるリンク機構の動作を示す平面図である。
【
図8】同レール把持具を備えた保線作業装置の使用状態を示す側面図である。
【
図9】同保線作業装置の使用状態を示す平面図である。
【
図10】同保線作業装置におけるレール把持具の取付け状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1~
図3に示す本発明の一実施の形態に係るレール把持具10は、保線作業時にレール11a(11b)を把持して持ち上げるために用いられるものである。ここで、
図8、
図9において、左右2本のレール11a、11bと複数の枕木12を梯子状に締結したものが軌框13であり、軌框13の下の道床14には小石や砂利等のバラストが敷き詰められている。そして、軌框13と道床14を合わせたものが軌道15であり、保線作業では、レール把持具10でレール11a、11bを把持して軌框13を持ち上げる軌框扛上作業と、道床14(バラスト)を搗き固める道床搗き固め作業を行う。
図1~
図5に示すように、レール把持具10は、レール11a又は11bを把持するクランプ部17を備えている。このクランプ部17は、左右一対のクランプアーム18a、18bと、各クランプアーム18a、18bを駆動する駆動手段19とを有しており、各クランプアーム18a、18bは、垂直軸21a、21bと、垂直軸21a、21bの下端側から水平方向に突出する係止爪22a、22bとを備えている。そして、レール把持具10は、駆動手段19で各クランプアーム18a、18bを各垂直軸21a、21bの軸心回りに回動させることにより、各係止爪22a、22bをレール11a(11b)の頭部23の下面側に係合可能な状態とすることができる。
【0022】
以下、クランプ部17の詳細について説明する。
クランプ部17は、
図4~
図7に示すように、駆動手段19の駆動力を各垂直軸21a、21bに伝達して、各クランプアーム18a、18bの回動動作を同期させるリンク機構25を備えている。本実施の形態では、
図4(A)、
図5(A)、
図6に示すように、駆動手段19として、シャフト26を長手方向に往復動させるプルプッシュ型のソレノイドを用いた。また、リンク機構25として、シャフト26の長手方向に沿って取付けたスライド板27に、スライド板27の長手方向と直交する長孔状の2つのガイド孔28a、28bを形成し、各垂直軸21a、21bの上端側に取付けた回転円板29a、29bの外周部に設けたリンクピン30a、30bを摺動可能に遊嵌させたものを用いた。駆動手段19でシャフト26と共にスライド板27をスライドさせると、
図7(A)、(B)に示すように、スライド板27に形成されたガイド孔28a、28bもシャフト26の長手方向(ガイド孔28a、28bの長手方向と直交方向に移動する。このとき、ガイド孔28a、28bに遊嵌されたリンクピン30a、30bは、ガイド孔28a、28bと共に移動しながら、ガイド孔28a、28bの長手方向に沿って摺動するので、回転円板29a、29bが回転する。そして、回転円板29a、29bと共に各垂直軸21a、21bが回転することにより、各クランプアーム18a、18bを各垂直軸21a、21bの軸心回りに回動させることができる。従って、各クランプアーム18a、18bの係止爪22a、22bを各垂直軸21a、21bの円周方向に180度の位相差で配置し、回転円板29a、29b(垂直軸21a、21b)の回転角度を90度に設定すれば、駆動手段19でシャフト26を往復動させることにより、係止爪22a、22bとレール11a(11b)が平行な状態(
図4(B))と、係止爪22a、22bとレール11a(11b)が直交する状態(
図5(B))を切り替えることができる。
【0023】
なお、リンク機構により、駆動手段の駆動力を各垂直軸に伝達して、各クランプアームの回動動作を同期させることができればよく、駆動手段とリンク機構のそれぞれの構造及び駆動手段とリンク機構の組合せは、本実施の形態に限定されることなく適宜、選択することができる。例えば、駆動手段の往復直線運動をスライダクランク機構やラックピニオン機構を用いて各垂直軸の回転運動に変換してもよいし、駆動手段の回転運動を歯車等を用いて各垂直軸に伝達してもよい。また、リンク機構を用いずに、それぞれの垂直軸を別々の駆動手段(例えばモーター)で回動させることもできる。
さらに、本実施の形態では、クランプ部17は、
図1~
図5に示すように、駆動手段19及びリンク機構25が収容される筐体32を有しており、各クランプアーム18a、18bのみが、筐体32の底部33から下方に突出しているので、駆動手段19及びリンク機構25を筐体32で保護することができる。なお、
図4(A)、
図5(A)では、筐体の蓋を省略した。
【0024】
次に、レール把持具10は、
図1~
図3に示すように、道床14上に接地される支持フレーム35と、支持フレーム35に対してクランプ部17を昇降させる昇降手段36を備えている。昇降手段としては、油圧シリンダーが好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、適宜、選択することができる。支持フレーム35は、左右一対の脚部37a、37bを有する門型に形成されており、脚部37a、37bの長手方向に沿ってクランプ部17を案内することができるので、クランプ部17の位置ずれ(移動)や傾きを防止して、クランプ部17で把持されたレール11a(11b)を接地面(道床14の表面)に対して確実に直角方向に昇降させることができる。なお、本実施の形態では、筐体32の両側にそれぞれガイド部38を設け、これらをそれぞれの脚部37a、37bの前後に係合させたが、ガイド部の形状、数及び配置は適宜、選択することができる。例えば、脚部の長手方向に沿って溝を形成し、筐体の両側に形成した突起状のガイド部を係合させてもよいし、脚部の長手方向に沿って凸条部を形成し、筐体の両側に形成した溝状のガイド部に係合させてもよい。
【0025】
また、
図1、
図4(B)、
図5(B)に示すように、筐体32の底部33に、レール11a(11b)の頭部23の上面位置を検知するレール検知手段として、接触センサー40を取付けることが好ましい。そして、
図4(B)に示すように、接触センサー40がレール11a(11b)の頭部23の上面に接触した時に、クランプ部17の下降を自動的に停止させることにより、クランプ部17の高さを容易に調整することができ、
図5(B)に示すように、係止爪22a、22bをレール11a(11b)の頭部23に干渉させることなく、クランプアーム18a、18bを確実かつスムーズに回転させて、駆動手段19、リンク機構25、昇降手段36等の破損を防止することができる。なお、レール検知手段は適宜、選択することができ、接触センサーの代わりに例えば非接触式の近接センサー等を用いてもよい。また、レール検知手段の取付け位置は、その種類に応じて、適宜、選択することができる。さらに、レール検知手段に代えて、又はレール検知手段に加えて、レールの上面を撮影するレール撮影手段及び/又はレールの上面にレーザー光を照射するレーザー光照射手段を取付け、クランプ部(レール把持具)の左右方向位置を調整することもできる。レール撮影手段としては、CCDカメラ等が好適に用いられ、撮影した画像をモニターに表示することにより、作業者がモニター上で画像を確認しながら位置合わせを行うことができる。このとき、モニター上に、位置決めの目安(基準)となるガイド線(マーカー)を表示することにより、施工性が向上する。また、レーザー光照射手段を用いる場合は、レールの上面に照射されるレーザー光の位置を作業者が目視で直接、確認しながら位置合わせを行うこともできるし、レールの上面を上述のレール撮影手段で撮影し、モニター(画面)上でレーザー光の位置を確認しながら位置合わせを行うこともできる。
【0026】
以上のように構成されたレール把持具10を備えた
図8、
図9の保線作業装置41について説明する。
図8、
図9に示す保線作業装置41は、例えば8tの軌陸車42の荷台43に搭載されて軌道15上を移動しながら、保線作業を行うものである。軌陸車42は、レール11a、11b上を移動(走行)するための車輪44aと、道路上を走行するためのタイヤ44bを備えており、図示しない昇降手段で車輪44aを昇降させることができる。
図8では、車輪44aを降下させてタイヤ44bを浮かせ、レール11a、11b上を移動可能な状態となっている。なお、軌陸車42の前後方向及び幅方向を保線作業装置41の前後方向及び左右方向とし、
図8は左側面を表すものとする。
【0027】
保線作業装置41は、荷台43に固定されるベースフレーム46と、ベースフレーム46上に取付けられた軌框扛上ユニット47及び道床搗き固めユニット48とを有している。軌框扛上ユニット47には、左右の多関節のジャッキアーム49a、49bの先側にそれぞれレール把持具10が取付けられた2つの扛上手段50a、50bが並列に配置されており、これら2つの扛上手段50a、50bの間は電気的に絶縁されている。そして、各ジャッキアーム49a、49bの基側はベースフレーム46に保持されている。
また、各ジャッキアーム49a、49bは、それぞれ各関節部52a~52cで回動可能に連結された第1~第3のアーム部53a~53cと、各関節部52a~52cを中心に第1~第3のアーム部53a~53cを回動させる第1~第3の油圧シリンダー54a~54cを有している。よって、第1~第3の油圧シリンダー54a~54cを伸縮させて第1~第3のアーム部53a~53cを回動させることにより、それぞれのレール把持具10を前後及び上下に移動させることができる。
【0028】
また、軌框扛上ユニット47は、ベースフレーム46に取付けられ、各ジャッキアーム49a、49bの基側を軌陸車42の幅方向にスライド可能に保持するスライド機構55を備えている。このスライド機構55は、軌陸車42の幅方向に沿って設けられた固定横架部57と、固定横架部57の長手方向の両端部で固定横架部57の長手方向にスライド可能に保持され、各ジャッキアーム49a、49bの基側と連結された摺動部58a、58bとを備えている。ここで、摺動部58a、58bの基側は、中空の固定横架部57に内挿されており、固定横架部57と摺動部58a、58bは同軸上に配置されている。そして、固定横架部57に内蔵された左右の摺動用油圧シリンダー(図示せず)の先側がそれぞれ摺動部58a、58bの基側に連結されており、各摺動用油圧シリンダーを伸縮させることにより、摺動部58a、58bをそれぞれ固定横架部57の長手方向にスライドさせることができる。これにより、ジャッキアーム49a、49b全体をそれぞれ軌陸車42の幅方向に移動させることができ、レール11a、11bの位置に合わせて各レール把持具10を左右に移動させることができる。また、作業終了後に、摺動部58a、58bを近付け、左右のジャッキアーム49a、49b(扛上手段50a、50b)の間隔を狭めることにより、軌陸車42に保線作業装置41を搭載したままで、周囲の障害物との干渉(衝突)を防止しながら軌道15上を移動することや、車幅の制限を受けることなく、一般道路や高速道路等を走行することが可能となる。
【0029】
この保線作業装置41において、各レール把持具10の支持フレーム35は、
図10に示すように、軌陸車42の幅方向に沿って設けられた(レール11a、11bの長手方向と直交する)水平軸支部60を介して、ジャッキアーム49a、49bのそれぞれの第3のアーム部53cの先側に回動可能に保持されている。そして、ジャッキアーム49a、49bのそれぞれの第3のアーム部53cに、各水平軸支部60を中心に支持フレーム35を回動させる回動用油圧シリンダー61が取付けられている。よって、各レール把持具10の前後方向位置に応じてジャッキアーム49a、49bの伸縮状態(第1~第3のアーム部53a~53cの回動状態)が変化しても、第3のアーム部53cに対して支持フレーム35を所望の角度で回動させて2本の脚部37a、37bを確実に道床14上に接地させることができる。なお、脚部の数は適宜、選択することができ、例えば4本でもよく、レールを避けて(レールの側方で)道床上に接地できればよい。
【0030】
先に説明した各ジャッキアーム49a、49bとスライド機構55で、左右のレール把持具10を所定の位置に移動させた後、各クランプ部17でレール11a、11bの頭部23を把持して上昇させることにより、軌框13を持ち上げることができる。
図8、
図9では、扛上手段50aが使用状態で、扛上手段50bが待機状態(折り畳み状態)となっているが、実際の軌框扛上作業では、左右の扛上手段50a、50bを用いて、各クランプ部17でレール11a、11bを把持し、軌框13全体を持ち上げることが好ましい。但し、必要に応じて、扛上手段50a、50bのいずれか一方のみを用いて、レール11a又はレール11bを持ち上げることもできる。
【0031】
次に、道床搗き固めユニット48は、
図8、
図9に示すように、先側に道床14の搗き固めを行う搗き固め手段63が取付けられ、基側がベースフレーム46に保持されて搗き固め手段63を移動させる搗き固めアーム64を備えている。この搗き固めアーム64は、ベースフレーム46に鉛直に取付けられたポスト65と、基側がポスト65の先側(上端側)に回動可能に連結されたブーム66と、基側がブーム66の先側に回動可能に連結されたアーム67を有している。ポスト65とブーム66の間、及びブーム66とアーム67の間には、それぞれ図示しない油圧シリンダーが取付けられており、各油圧シリンダーを伸縮させてブーム66及びアーム67を回動させることにより、搗き固め手段63を前後及び上下に移動させることができる。また、道床搗き固めユニット48は、搗き固めアーム64の基側(ポスト65の下端部)に設けられ、搗き固めアーム64を水平面内で旋回させる旋回機構68を備えている。これにより、搗き固めアーム64全体を水平面内で旋回させて、搗き固め手段63を左右(軌陸車42の幅方向)に移動させることができる。旋回機構68は油圧モーターにより駆動されるものが好適に用いられるが、電気モーターにより駆動されるものを用いることもできる。搗き固め手段63は油圧式の振動発生手段(図示せず)を備えており、四隅のタンピングツール(平ヅメ)70を振動させて道床14(バラスト)を搗き固めることができる。なお、搗き固め手段63としては、例えば4頭タイタンパーアタッチメントが好適に用いられるが、振動によって道床14(バラスト)を搗き固めることができればよく、8頭のタイタンパーアタッチメント等を用いてもよい。
【0032】
軌陸車42には、軌陸車42に電力及び油圧を供給するための軌陸車用電源油圧ユニット71が搭載されているが、これとは別に、ベースフレーム46には、軌框扛上ユニット47及び道床搗き固めユニット48に電力及び油圧を供給するための専用の電源油圧ユニット72が設置されている。この電源油圧ユニット72は、発電機及び油圧ポンプ等を備えている。また、軌陸車42の運転席73とは別に、ベースフレーム46には、軌框扛上ユニット47及び道床搗き固めユニット48を操作する作業者が着席する操作席74が設置されている。そして、操作席74の近傍(ここでは前方)には、軌框扛上ユニット47及び道床搗き固めユニット48を操作するための操作部75が取付けられている。これにより、操作席74に着席した作業者は、軌框扛上ユニット47及び道床搗き固めユニット48の各部の動作を目視で確認しながら操作を行うことができる。具体的には、軌框扛上ユニット47及び道床搗き固めユニット48で用いられる各油圧シリンダー、油圧式の振動発生手段及び油圧モーター等の油圧機器の油圧制御を行うための切替弁を操作(選択的に開閉)することにより、各部に所定の動作を行わせる。なお、
図8~
図10では電気配線及び油圧配管は省略した。
【0033】
以下、保線作業装置41の使用方法について説明する。
保線作業装置41は、軌陸車42の荷台43に搭載された状態で一般道路、高速道路及び軌道15上を移動する。このとき、先に説明したように、摺動部58a、58bを近付け、ジャッキアーム49a、49b及び搗き固めアーム64を折り畳むことにより、軌框扛上ユニット47及び道床搗き固めユニット48が所定の寸法内に収まるようにすることができる。
そして、目的地(保線対象位置)まで移動したら、レール11a、11bの間隔に合わせて摺動部58a、58bをスライドさせ、扛上手段50a、50bの左右方向の位置決めを行う。その後、ジャッキアーム49a、49bで各レール把持具10を前後及び上下に移動させ、各支持フレーム35の2本の脚部37a、37bを道床14に接地させる。次に、各クランプ部17を
図4(B)に示した状態で所定の高さ(接触センサー40でレール11a(11b)の頭部23の上面を検出する)まで下降させ、駆動手段19を駆動して各クランプアーム18a、18bを回動させることにより、
図5(B)に示したように、各係止爪22a、22bがレール11a、11bの頭部23の下面側に係合可能な状態となる。そして、ジャッキアーム49a、49bで各支持フレーム35を道床14に押し付けた状態で各レール把持具10の昇降手段36を駆動して各クランプ部17を上昇させることにより、
図10に示すように、それぞれのクランプアーム18a、18bで頭部23を把持して軌框13を部分的に持ち上げることができる(以上、軌框扛上作業)。
【0034】
次に、搗き固めアーム64を伸縮させて搗き固め手段63の前後方向位置及び上下方向位置を調整すると共に、旋回機構68で搗き固めアーム64を旋回させて搗き固め手段63の左右方向位置を調整し、搗き固め手段63を一方のレール把持具10の後方位置(
図8の実線参照)で道床14に接地させる。そして、搗き固め手段63に取付けられた振動発生手段でタンピングツール(平ヅメ)70を振動させることにより、レール把持具10で持ち上げられたレール11aの周囲(主にレール把持具10の後方側)の道床14(バラスト)の搗き固めを行う。その後は同様にして、搗き固め手段63をレール把持具10の前方位置(
図8の破線参照)、他方のレール把持具10の後方位置、他方のレール把持具10の前方位置に順次、移動させ、それぞれの位置で道床14(バラスト)の搗き固めを行う。なお、各レール把持具10のそれぞれの前方位置及び後方位置で搗き固めを行う順番は、適宜、選択することができる。また、必ずしも上記の4箇所で1回ずつ搗き固めを行う必要はなく、ある位置での搗き固めの結果、搗き固めが不要と判断された位置では搗き固めを行わなくてもよいし、一度、搗き固めを行った位置で、さらに搗き固めが必要と判断された時には、再度(繰返し)、搗き固めを行ってもよい(以上、道床搗き固め作業)。
一連の作業が完了したら、次の目的地(保線対象位置)まで移動し、同様の作業を行う。
【0035】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、ジャッキアーム及び搗き固めアームの関節の数及び駆動手段(油圧シリンダー)の数と配置は、適宜、選択することができる。また、ジャッキアーム及び搗き固めアームは、それぞれレール把持具及び搗き固め手段を上下、前後及び左右方向に移動させることができればよく、その構造は、多関節構造のみに限定されず、適宜、選択することができる。例えば、関節を曲げる構造に代えて若しくは加えて、アームの一部を伸縮させる構造とすることもできる
さらに、レール把持具のクランプ部(駆動手段及びリンク機構等)の構造は、適宜、選択することができる。また、支持フレームの脚部の数又はクランプ部(駆動手段及びリンク機構等)の構造等に応じて、支持フレームに対するクランプ部の取付け位置は、適宜、選択することができる。
【0036】
上記実施の形態では、軌框扛上ユニットが左右一対(2つ)の扛上手段を有するものについて説明したが、1つの扛上手段のみを有する構造とすることもできる。また、保線作業の対象とする左右のレールの間隔を限定し、左右の扛上手段(ジャッキアーム)の間隔を固定したまま作業可能な場合は、スライド機構を省略できる。さらに、スライド機構を用いて扛上手段全体(ジャッキアーム及びレール把持具)を左右方向に移動させる代りに、旋回機構を用いてジャッキアームを旋回させることにより、レール把持具を左右方向に移動させてもよい。
操作席及び操作部の位置は特に限定されるものではなく、適宜、選択することができる。また、リモコンにより、作業者が地上から保線作業装置を操作する構成とすることもでき、その場合、ベースフレーム上の操作席及び操作部は省略してもよい。
上記実施の形態では、保線作業装置に専用の電源油圧ユニットを搭載したが、軌陸車用電源油圧ユニットを共用できる場合は、専用の電源油圧ユニットは不要である。
【符号の説明】
【0037】
10:レール把持具、11a、11b:レール、12:枕木、13:軌框、14:道床、15:軌道、17:クランプ部、18a、18b:クランプアーム、19:駆動手段、21a、21b:垂直軸、22a、22b:係止爪、23:頭部、25:リンク機構、26:シャフト、27:スライド板、28a、28b:ガイド孔、29a、29b:回転円板、30a、30b:リンクピン、32:筐体、33:底部、35:支持フレーム、36:昇降手段、37a、37b:脚部、38:ガイド部、40:接触センサー、41:保線作業装置、42:軌陸車、43:荷台、44a:車輪、44b:タイヤ、46:ベースフレーム、47:軌框扛上ユニット、48:道床搗き固めユニット、49a、49b:ジャッキアーム、50a、50b:扛上手段、52a~52c:関節部、53a:第1のアーム部、53b:第2のアーム部、53c:第3のアーム部、54a:第1の油圧シリンダー、54b:第2の油圧シリンダー、54c:第3の油圧シリンダー、55:スライド機構、57:固定横架部、58a、58b:摺動部、60:水平軸支部、61:回動用油圧シリンダー、63:搗き固め手段、64:搗き固めアーム、65:ポスト、66:ブーム、67:アーム、68:旋回機構、70:タンピングツール(平ヅメ)、71:軌陸車用電源油圧ユニット、72:電源油圧ユニット、73:運転席、74:操作席、75:操作部