(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A47G9/10 A
(21)【出願番号】P 2020187897
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019203762
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514186032
【氏名又は名称】ジャパンオリエンタルメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】阿立 正彦
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-160778(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00-27/22
A47C 31/00-31/12
A61F 5/00
A47G 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延び、かつ仰臥姿勢のユーザが頸部を載せるための横延び部と、
前記横延び部の左右両端部から前記ユーザの足元側としての縦方向下側に延び、かつ前記横延び部の縦方向下側に下側窪み部を形成するように、横方向において互いに離間し、前記ユーザの両肩部を載せるための左右一対の下側延設部と、
前記横延び部の左右両端部から前記一対の下側延設部とは反対の縦方向上側に延び、かつ前記横延び部の縦方向上側に前記ユーザの後頭部を配置させるための上側窪み部を形成するように、横方向において互いに離間する左右一対の上側延設部と、
を備えている
とともに、
前記一対の上側延設部は、横方向において前記上側窪み部を挟んで互いに対向し、かつともに上下高さ方向に起立する左右一対の第1の内側壁面部を有し、これら一対の第1の内側壁面部は、互いに平行な配置で縦方向に直状に延びており、
前記一対の下側延設部は、横方向において前記下側窪み部を挟んで互いに対向し、かつともに上下高さ方向に起立する左右一対の第2の内側壁面部を有し、これら一対の第2の内側壁面部は、互いに平行な配置で縦方向に直状に延びており、
前記上側窪み部の底面部に相当し、前記ユーザの後頭部が載せられる部分としての上向き面部を有するクッション部を、さらに備えており、かつ前記上向き面部の全域は、前記横延び部よりも高さが低い領域とされていることを特徴とする、枕。
【請求項2】
請求項1に記載の枕であって、
前記一対の上側延設部のうち、前記上側窪み部寄りの領域には、前記上側窪み部に近い部分ほど高さが低くなる傾斜面が設けられている、枕。
【請求項3】
請求項1または2に記載の枕であって、
前記各上側延設部は、前記各下側延設部よりも高さ方向の厚みが大きくされている、枕。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の枕であって、
前記各上側延設部および前記各下側延設部のそれぞれの基端部は、互いに繋がって前記横延び部に隣接し、かつ前記横延び部よりも高さ方向の厚みが大きくされている、枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕に関する。
【背景技術】
【0002】
枕の具体例として、
図11に示すような枕Peがある(たとえば、特許文献1,2を参照)。
この枕Peは、平面視における全体形状が略Π状または略逆U字状である。より具体的には、この枕Peは、横方向に湾曲して延びる横延び部1eと、この横延び部1eの左右両端部からユーザ(枕の使用者)9の足元側としての縦方向下側に湾曲して延びる左右一対の下側延設部2とを有している。横延び部1eの縦方向下側であって、左右一対の下側延設部2の相互間の領域は、窪み部4eとなっている。
【0003】
このような枕Peを利用してユーザ9が仰臥姿勢で寝る際には、ユーザ9の頸部90および後頭部91の略全体、あるいは頸部90のみを横延び部1eの上に載せるとともに、両肩部92を一対の下側延設部2の上に載せる。このため、両肩部92(とくに、肩甲骨の部分)と頸部90との間に不当に大きな高低差を生じないようにすることができる。また、その際には、ユーザ9の背骨(不図示)を窪み部4eに配置させることにより、背骨が強く圧迫されないようにし、背骨の動きが不当に妨げられない状態とする効果も期待できる。
【0004】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0005】
すなわち、前記した枕Peにおいて、ユーザ9が仰臥姿勢で利用する際に、頸部90および後頭部91の略全体を横延び部1eの上に載せた場合、ユーザ9の後頭部91の高さが理想的な高さよりも高くなってしまい、頸部90(頸椎)の形状が不自然な形状となる虞がある。これを解消する手段としては、
図12に示すように、横延び部1eの縦幅L10を小さめにし、この横延び部1e上にユーザ9の頸部90のみを載せ、ユーザ9の後頭部91を横延び部1eよりも縦方向上側に配置させることが考えられる。ところが、このような姿勢にした場合、後頭部91が不安定となって、左右に位置ずれし易くなる。これでは、寝違えを誘発する虞がある。
【0006】
なお、平面視における全体形状が略Π状または略逆U字状とされた他の枕として、特許文献3に記載の枕がある。ただし、この特許文献3に記載の枕は、ユーザが右向きや左向きなどの横臥姿勢で寝る際に、ユーザの背中に枕の一部が当たるようにし、ユーザの姿勢が不当に曲がらないようにし得るに過ぎない。したがって、枕Peについて述べた不具合を解消するには到らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】意匠登録第1487309号公報
【文献】意匠登録第1362462号公報
【文献】実開昭53-36411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、寝違えを生じるなど
の虞がなく、好ましい姿勢で快適な睡眠をとることが可能な枕を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0010】
本発明により提供される枕は、横方向に延び、かつ仰臥姿勢のユーザが頸部を載せるための横延び部と、前記横延び部の左右両端部から前記ユーザの足元側としての縦方向下側に延び、かつ前記横延び部の縦方向下側に下側窪み部を形成するように、横方向において互いに離間し、前記ユーザの両肩部を載せるための左右一対の下側延設部と、を備えている、枕であって、前記横延び部の左右両端部から前記一対の下側延設部とは反対の縦方向上側に延び、かつ前記横延び部の縦方向上側に前記ユーザの後頭部を配置させるための上側窪み部を形成するように、横方向において互いに離間する左右一対の上側延設部を、さらに備えていることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、ユーザが枕を用いて仰臥姿勢で寝る際には、ユーザの両肩部を一対の下側延設部に支持させつつ、頸部を横延び部に支持させることができるために、両肩部と頸部との間に不当に大きな高低差を生じないようにし、両肩部(とくに肩甲骨の領域)から頸部にわたる領域を自然な姿勢にすることができる。また、その際には、ユーザの背骨を下側窪み部に配置させることにより、背骨が強く圧迫されることを回避して、背骨の動きの自由度を高くすることができる。このようなことから、ユーザの頸部や両肩部を枕によって自然な形で支えて、寝心地をよくすることができる。肩部や頸部の凝りも生じ難い。
第2に、ユーザの後頭部については、上側窪み部に配置させることが可能であり、後頭部が好ましい高さよりも高くなることを解消し、ユーザの顎が少し上を向く姿勢にすることができる。このような姿勢は、首と背中の骨格形状を理想的な形状にする上でより好ましく、睡眠時の呼吸をし易くする効果をもたらせる。
第3に、ユーザの後頭部を上側窪み部に配置させた場合、ユーザの頭部の左右両側には、左右一対の上側延設部が位置し、これら一対の上側延設部によってユーザの頭部、ひいては頸部が左右に大きく振れないようにガードすることができる。したがって、寝違えを適切に防止する効果も得られる。
第4に、ユーザが横臥姿勢で寝る際には、ユーザの下側の肩部を下側窪み部に配置させた状態で、頸部を横延び部に載せ、この頸部と頭部とを略一定の高さにすることが可能である。したがって、横臥姿勢においても、背骨のラインを無理のない自然なライン(略直線状のライン)とすることができる。この場合、ユーザの後頭部や顔面部の両側には、左右一対の上側延設部を配置させることができるため、ユーザの頭部や頸部が横方向に振れることを防止し、頸部が曲がった状態で眠ることも適切に回避される。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記一対の上側延設部のうち、前記上側窪み部寄りの領域には、前記上側窪み部に近い部分ほど高さが低くなる傾斜面が設けられている。
【0013】
このような構成によれば、ユーザの頭部が上側窪み部に位置した場合に、ユーザの頭部の両横には、頭部に接近するほど高さが低くなる傾斜面が位置することとなる。したがって、ユーザが強い圧迫感を受けないようにすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記各上側延設部は、前記各下側延設部よりも高さ方向の厚みが大きくされている。
【0015】
このような構成によれば、仰臥姿勢のユーザの両肩部を下側延設部上に載せた場合に、両肩部の肩口、あるいは肩甲骨上部を、横延び部の高さ(頸部の高さ)と合わせる上で好
ましいものとなる。一方、上側延設部は、下側延設部よりも高い高さであるため、ユーザの頭部の両側に上側延設部を配置させ、頭部が左右に大きく振れないようにする上で一層好ましいものとなる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記各上側延設部および前記各下側延設部のそれぞれ基端部は、互いに繋がって前記横延び部に隣接し、かつ前記横延び部よりも高さ方向の厚みが大きくされている。
【0017】
このような構成によれば、仰臥姿勢のユーザが頸部を横延び部上に載せた場合に、この頸部の左右両側には、上側延設部および下側延設部のそれぞれの基端部が横延び部よりも高い高さで位置することとなる。したがって、ユーザの頸部を左右(横方向)に大きく位置ずれしないように安定させることができる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、本発明に係る枕の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)の側面図であり、(c)は、(a)のIc-Ic断面図であり、(d)は、(a)のId-Id断面図であり、(e)は、(a)のIe-Ie断面図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す枕の使用状態の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)の側面図であり、(c)は、(a)のIIc-IIc断面図である。
【
図3】(a)は、
図1に示す枕の使用状態の他の例を示す平面図であり、(b)は、(a)のIIIb-IIIb断面図である。
【
図4】(a)は、本発明の他の例を示す平面図であり、(b)は、(a)のIVb-IVb断面図である。
【
図6】(a)は、本発明の他の例を示す断面図であり、(b)は、(a)の分解断面図である。
【
図7】(a)は、本発明の他の例を示す斜視図であり、(b)は、(a)のVIIb-VIIb断面図であり、(c)は、(a)のVIIc-VIIc断面図であり、(d)は、(a)のVIId-VIId断面図である。
【
図8】
図7に示す枕の使用状態の例を示す平面図である。
【
図9】
図7に示す枕の使用状態の例を示す側面断面図である。
【
図11】(a)は、従来技術の一例を示す平面図であり、(b)は、(a)のXIb-XIb断面図である。
【
図12】(a)は、従来技術の他の例を示す平面図であり、(b)は、(a)のXIIb-XIIb断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
なお、
図11および
図12に示した従来技術と同一または類似の要素には、同一符号を適宜付す。
【0021】
図1および
図2に示す枕Pは、一般の枕と同様に、たとえば袋状に形成された布製などの側生地内に、ポリエチレンフレイク(ポリエチレン樹脂をフレイク状に加工したもの)などの中材を詰めた構成である(図面では、側生地および中材を区別せず、枕Pを一体物として示す)。後述するように、本発明に係る枕の具体的な材質は限定されない。
【0022】
枕Pは、平面視略H状であり、横延び部1、左右一対の下側延設部2、左右一対の上側延設部3を有しており、これらの部分はいずれも高さ方向に厚みをもっている。また、枕Pには、下側窪み部4、および上側窪み部5が形成されている。
【0023】
横延び部1は、横方向(
図1(a)の左右方向)に延びており、
図2に示すように、仰臥姿勢のユーザ9が頸部90を載せるための部分である。横延び部1の横幅W1は、たとえば15~20cm程度であり、縦寸法L1は、たとえば10~15cm程度である。
【0024】
一対の下側延設部2は、横延び部1の左右両端部からユーザ9の足元側としての縦方向下側に延び、かつ横方向において互いに離間した部分であって、
図2に示すように、ユーザ9の両肩部92を載せるための部分である。横延び部1の縦方向下側であって、一対の下側延設部2の相互間領域は、平面視切欠き凹部状の隙間部としての下側窪み部4である。この下側窪み部4は、ユーザ9が仰臥姿勢で寝る際に、ユーザ9の背骨付近を配置させるための部位であり、また横臥姿勢で寝る際には、
図3を参照して後述するように、ユーザ9の片側の肩部92を配置させるための部位である。下側窪み部4の横幅W2は、たとえば15~20cm程度である。各下側延設部2の横幅W3は、たとえば20~25cm程度であり、各下側延設部2の縦寸法L3は、たとえば25~30cmである。
【0025】
一対の上側延設部3は、横延び部1の左右両端部から一対の下側延設部2とは反対の縦方向上側に延び、かつ横方向において互いに離間した部分である。横延び部1の縦方向上側であって、一対の上側延設部3の相互間領域は、平面視切欠き凹部状の隙間部としての上側窪み部5である。この上側窪み部5は、ユーザ9が仰臥姿勢または横臥姿勢で寝る際に、ユーザ9の後頭部91を配置させるための領域である。一対の上側延設部3は、上側窪み部5に位置するユーザ9の後頭部91の左右両側に位置し、後頭部91が左右に位置ずれすることを抑制する役割を果たす。上側窪み部5の横幅W4は、たとえば下側窪み部4の横幅W2と同様に15~20cm程度である。各上側延設部3の横幅W5は、たとえば各下側延設部2の横幅W3と同様に20~25cm程度であり、各上側延設部3の縦寸法L4は、たとえば各下側延設部2の縦寸法L3と同様に25~30cmである。
好ましくは、
図1(e)に示すように、一対の上側延設部3のうち、上側窪み部5寄りの領域には、上側窪み部5に近い部分ほど高さが低くなるように傾斜した傾斜面30が設けられている。
【0026】
上側延設部3の厚みt1は、下側延設部2の厚みt2よりも相対的に大きくされている。好ましくは、上側延設部3と下側延設部2とは一連に繋がり、かつこれらの上面部3a,2aは、段差のない、または殆どない略面一状とされているとともに、下側延設部2の縦方向下側寄り部分から上側延設部3の縦方向上側寄り部分に進むほど、厚みが徐々に大きくなる傾斜面とされている。
【0027】
上側延設部3および下側延設部2の双方の基端部領域6は、横延び部1の左右両端部に隣接している。この基端部領域6の厚みt3は、横延び部1の厚みt4よりも大きくされている。厚みt4は、たとえば4~8cm程度であり、厚みt3は、たとえば6~10cm程度である。
【0028】
次に、前記した枕Pの使用例ならびに作用について説明する。
【0029】
まず、
図2に示すように、ユーザ9が枕Pを用いて仰臥姿勢で寝る際には、両肩部92を一対の下側延設部2上に載せて支持させつつ、頸部90を横延び部1上に載せて支持させる。このことにより、両肩部92と頸部90との間に不当に大きな高低差を生じないようにし、両肩部92のうちとくに肩甲骨の領域から頸部90にわたる領域を自然な姿勢にすることができる。その際、ユーザ9の背骨を下側窪み部4に配置させることが可能であ
る。このことにより、背骨が強く圧迫されることを回避することもできる。このようなことから、ユーザ9の頸部90や両肩部92を枕Pによって自然な形で支え、寝心地をよくすることができる。
【0030】
また、ユーザ9の後頭部91は、上側窪み部5に配置させることが可能であり、後頭部91が不当に高くなることを解消し、ユーザ9の顎が少し上を向く姿勢にすることが可能である。このような姿勢は、頸部90と背中の骨格形状を理想的な形状にし、気道を拡げる上でも好ましく、呼吸をし易くする効果をもたらせる。
【0031】
さらに、ユーザ9の後頭部91を上側窪み部5に配置させた際には、ユーザ9の頭部の左右両側に、一対の上側延設部3が位置するため、ユーザ9の頭部が左右に大きく振れないようにすることができる。上側延設部3は、下側延設部2よりも高さ方向の厚みが大きくされているため、ユーザ9の後頭部91が左右に振れることをより確実に防止することが可能である。一方、ユーザ9の頸部90の左右には、上側延設部3および下側延設部2の基端部領域6が位置し、かつこの基端部領域6は、横延び部1よりも高さが高くされているため、頸部90が左右に大きく位置ずれすることも防止される。このようなことから、寝違えも適切に防止される。頸部90や肩部92のこりも生じ難くなる。
【0032】
一方、
図1(e)を参照して説明したように、上側延設部3の上面部のうち、上側窪み部5寄りの領域には傾斜面30が設けられているため、このような傾斜面30が設けられていない場合と比較すると、上側延設部3の存在によってユーザ9が強い圧迫感を感じないようにすることもできる。また、傾斜面30は、この傾斜面30上にユーザ9の後頭部91が載せられたときに、この後頭部91を上側窪み部5に戻すガイド面としての役割も果たす。
【0033】
前記とは異なり、ユーザ9が横臥姿勢で寝る際には、
図3に示すような姿勢となる。同図に示す姿勢においては、ユーザ9の片側の肩部92が下側窪み部4に位置するようにして、頸部90が横延び部1上に載せられ、かつ一方の側頭部は、上側窪み部5に配置されている。このような姿勢によれば、背骨のライン(仮想線Laで示すライン)を真っ直ぐな状態、またはこれに近い状態とすることができる。このような横臥姿勢の場合においても、ユーザ9の頭部は、一対の上側延設部3によって挟まれ、左右に大きく振れることはなく、頸部90を曲げたまま眠ることを適切に解消する効果が期待できる。
【0034】
図4~
図10は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0035】
図4に示す枕P1は、一対の下側延設部2の相互間、および一対の上側延設部3の相互間のそれぞれに厚みが比較的薄いシート部40,50が設けられている。これらシート部40,50の上側が、下側窪み部4および上側窪み部5である。
このような構成によれば、枕P1の型が崩れることを、シート部40,50の存在によって抑制する効果が得られる。また、ユーザ9の仰臥姿勢時には、ユーザ9の後頭部91をシート部50上に配置させ、また横臥姿勢時には、ユーザ9の片側の肩部92をシート部40上に配置させることが可能となり、頭部91や肩部92が枕P1とは異なる部位(敷布団など)に直接触れないようにすることもできる。さらに、
図6~
図8を参照して後述する実施形態の上側および下側のクッション部51,41と同様に、シート部40,50を適度なクッション性をもつ部位とすることにより、ユーザ9の後頭部91や肩部92の座りをよくし、ユーザ9の寝心地をさらによくすることもできる。
本実施形態から理解されるように、本発明でいう下側窪み部および上側窪み部は、その底部にシート部40,50などが設けられた窪み部として形成されていてもよい。
【0036】
図5に示す枕P2は、横延び部1の下面部に、枕高さ調整用の補助部材7が着脱自在とされている。補助部材7を着脱自在とする手段としては、たとえば面ファスナ70a,70bが用いられている。
このような構成によれば、横延び部1の高さがユーザ9にとって低い場合には、補助部材7を用いて横延び部1の高さを高くし、ユーザ9にとって最適な高さ、またはこれに近い高さにすることができる。補助部材7として、厚みtが相違する複数種類の補助部材7を予め準備しておき、ユーザ9がそれらの中から自己に適するものを選択して高さ調整を可能とすることもできる。
【0037】
図6に示す実施形態においては、枕Pと、高さ調整用のベルト部材8とが組み合わされている。ベルト部材8は、たとえば可撓性を有する帯状の布材あるいは樹脂シート材などからなり、その長手方向両端部には、面ファスナ80a,80bが設けられている。ベルト部材8を枕Pの横延び部1に巻き付けて、この横延び部1を絞る(圧縮させる)ことにより、その上下方向の厚み(高さ)t4’を、通常の自然状態時の厚みt4よりも小さくすることが可能である。ベルト部材8による絞りの度合いを調整することにより、厚みt4’を無段階で調整することも可能である。
横延び部1の高さ調整手段として、前記したような手段を採用することも可能である。勿論、面ファスナ80a,80bに代えて、他の接合手段を用いることができる(この点は、
図5に示した面ファスナ70a,70b、および
図10を参照して後述する高さ調整用部材51a,41aについても同様)。
【0038】
図7に示す枕P3においては、一対の上側延設部3、および一対の下側延設部2の平面視形状が、比較的角張った形状とされており、各上側延設部3は、上面部が平坦な略直方体状である。これに対し、各下側延設部2は、ユーザ9の足元側である縦方向下側ほど、厚み(高さ)t5が小さくなるように平面状の上面部が傾斜した形態である。また、横延び部1には、ユーザ9の頸部90を一部嵌入させるための凹部10が形成されている。
【0039】
一対の上側延設部3の相互間、および一対の下側延設部2の相互間には、上側および下側のクッション部51,41が設けられている。
図7(b)~(d)においては、上側および下側のクッション部51,41、ならびに横延び部1などの各部が互いに別部材によって形成された上で接合されているが、本発明はこれに限定されず、枕P3の全体を単一部材で構成することもできる。
【0040】
上側および下側のクッション部51,41は、
図4に示したシート部50,40に類する部位であり、これらの上側が、上側窪み部5および下側窪み部4である。上側および下側のクッション部51,41は、いずれも適度な厚み、およびクッション性を有している。上側窪み部5および下側窪み部4の上面部の高さH1,H2は、いずれも横延び部1の上面部の高さH3よりも低い高さである。
【0041】
図8および
図9に示すように、ユーザ9の頸部90を横延び部1上に載せた状態で仰臥した際には、ユーザ9の後頭部91を上側のクッション部51によって適切に受けることが可能である。上側のクッション部51を、枕P3の他の部分よりも軟らかい材質にすれば、上側のクッション部51の後頭部91の当接箇所の窪み量を大きくし、後頭部91をより安定させることが可能である。なお、上側のクッション部51の一部は、後頭部91の左右両側に位置して後頭部91の左右への位置ずれを抑制する左右一対の傾斜面30aを構成している(
図7(d)も参照)。
下側のクッション部41は、ユーザ9が仰臥した際に、ユーザ9の背中側における頸部90の近傍部に当接し、この部分を適切に支える。したがって、頸部90およびその近傍部が不自然なかたちとなることを防止する上で一層好ましいものとなる。
【0042】
図10に示す枕P3は、上側および下側のクッション部51,41の上側に重ねることが可能な複数の高さ調整用部材51a,41aを備えた構成とされている。高さ調整用部材51a,41aは、上側および下側のクッション部51,41と同一の材質であり、十分なクッション性を有している。高さ調整用部材51a,41aを上側および下側のクッション部51,41に対して固定させるための手段としては、たとえば
図5に示した実施形態と同様に、面ファスナなどを用いてそれらを接合させる手段を採用することが可能であるが、これに限定されない。たとえば、枕P3を布製などの枕カバー(不図示)の内側に収容して使用する場合には、この枕カバーの内側に高さ調整用部材51a,41aが配され、高さ調整用部材51a,41aは枕カバーによって押さえつけられて位置決めされる。このような場合には、高さ調整用部材51a,41aを固定させるための特別な手段を設ける必要はない。
本実施形態によれば、高さ調整用部材51a,41aを適宜用いることにより、上側および下側のクッション部51,41の実質的な高さをユーザ9の要望に応じた高さに設定することが可能であり、より好ましいものとなる。
【0043】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る枕の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0044】
図1を参照して説明した各部の寸法値は、例示であり、それらの値に限定されない。本発明に係る枕としては、ユーザの様々な体格(たとえば、小柄、普通、大柄など)に対応させて、サイズが異なる複数種類の枕を製作して準備しておき、ユーザがそれらのうちから任意のものを選択して使用するといった方式を採用することもできる。個々のユーザの体格を採寸して対応するオーダメイド方式とすることもできる。
横延び部、下側延設部、および上側延設部の各部は、平面視において必ずしも直線状でなくてもよく、たとえば湾曲した形態であってもよい。
本発明に係る枕の材質や具体的な構造は限定されず、側生地および中材の具体的な種類や材質を問わない他、たとえば低反発枕のように、発泡樹脂などの樹脂を利用し、全体が一体成形された構造とすることも可能である。枕は、布製などの枕カバーによって全体またはその一部が覆われている構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0045】
P,P1~P3 枕
1 横延び部
2 下側延設部
3 上側延設部
30,30a 傾斜面
4 下側窪み部
5 上側窪み部
6 基端部領域
9 ユーザ
90 頸部
91 後頭部
92 肩部