(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】グルタチオンを標的に送達するための化合物ならびにその製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 5/093 20060101AFI20240507BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20240507BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240507BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240507BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240507BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240507BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240507BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240507BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240507BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240507BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240507BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240507BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240507BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240507BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C07K5/093
A61K38/06
A61P1/02
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P13/12
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/28
A61P29/00
A61P31/12
A61P35/00
A61P39/02
(21)【出願番号】P 2018564338
(86)(22)【出願日】2017-06-07
(86)【国際出願番号】 US2017036393
(87)【国際公開番号】W WO2017214297
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-22
(32)【優先日】2016-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506253388
【氏名又は名称】オレゴン ステイト ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】トリー エム ハーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エス ベックマン
(72)【発明者】
【氏名】パメラ アール ベイルビー
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】天野 貴子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0099845(US,A1)
【文献】国際公開第2013/177293(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0069208(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0220093(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0129070(US,A1)
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,Vol.1762,2006年,p.256-265
【文献】The Annual Review of Pharmacology and Toxicology,2007年,Vol.47,p.629-656
【文献】ACS Chemical Biology,2010年,Vol.5, No.4,p.405-414
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,1990年,Vol.33, No.3,p.1009-1014
【文献】Journal of the American Chemical Society,2013年,Vol.135,p.7693-7704
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,1998年,Vol.41, No.4,p.515-529
【文献】Molecules,2010年,Vol.15,p.1242-1264
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K5/093
A61K38/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式2
Aを満たす構造を有する化合物:
【化1】
[
各R
1は、独立して、
C
1-10
脂肪族から選択され;
各R
2は、独立して、水素または
C
1-10
脂肪族、から選択され;
R
3は、水素であり;
各リンカー-X基は、独立して、-C(O)(CH
2)
1-30X または-(CH
2)
pXから選択され
[各Xは、独立して、-P
+(R
d)
3[各R
dは、
フェニルである]から選択され
;
各pは、独立して、1~30で
ある]、
前記化合物が薬学的に許容され負に荷電した対イオンを含み、
かつ、nは0または1であり、nが0のとき式2
AのSはR
3に結合する、
化合物。
【請求項2】
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各R
1 およびR
2 が、独立して、
C
1-10
アルキルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
各R
1 およびR
2が、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、またはデシルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記リンカー-X基が、-C(O)(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、または-(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
各R
1およびR
2が、独立して、メチルまたはエチ
ルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、式3A、または3Bを満たす、請求項1に記載の化合物:
【化2】
【請求項8】
前記化合物が、以下から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の化合物と;
薬学的に許容される担体
とを含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、1つ以上の追加の治療剤をさらに含み、任意選択で、前記1つ以上の追加の治療剤が、N-アセチルシステイン、ビタミンE、ビタミンC、およびジアセチル-ビス(4-メチルチオセミカルバゾナト)銅IIから選択される、請求項
9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
グルタチオンレベルの低下もしくは減少に関連する疾患または病状の治療に用いられる、請求項1~
8のいずれか一項に記載の化合
物。
【請求項12】
前記化合物が、被験体に投与するために製剤化された化合物であり、任意選択で、前記被験体がヒトである、請求項1
1に記載の化合物。
【請求項13】
前記グルタチオンレベルの低下もしくは減少に関連する疾患または病状が、ミトコンドリアグルタチオンレベルの低下によって引き起こされる、請求項1
2に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、電子伝達鎖(ETC)活性の減衰、ジカルボキシレート輸送のアロステリック阻害、NADH/NAD
+酸化還元対からのGSH/GSSG酸化還元ネットワークの脱共役、ETCから発生するオキシダントへのミトコンドリア感受性、薬物および毒素に対する感受性の増強、透過性細孔開口およびプロアポトーシス因子の放出の開始、またはそれらの組み合わせに使用される、請求項1
1に記載の化合物。
【請求項15】
前記グルタチオンレベルの低下もしくは減少に関連する疾患または病状が、神経変性、脳卒中、糖尿病、心血管疾患、がん、筋傷害、筋肉ミオパチー、ウイルス感染、歯周病、血管障害、腎臓疾患、虚血-再灌流傷害、創傷修復の問題、炎症、統合失調症および他の神経心理学的障害、アセトアミノフェン毒性、急性アルコール毒性、慢性アルコール毒性、もしくはそれらの組み合わせである、請求項1
1に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の式2Aの化合物の製造方法であって、
グルタチオンジスルフィドを塩化チオニルおよびメタノールまたはエタノールから選択されるアルコールにばく露して保護されたグルタチオンジスルフィドを形成する工程;
前記保護されたグルタチオンジスルフィドを、(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド・HCl、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジイソプロピルエチルアミン、およびアルコール溶媒にばく露して、構造
【化4】
[Rはメチルまたはエチルである]を有する化合物を形成する工程
を含む、方法。
【請求項17】
以下から選ばれる化合物。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月9日に出願された米国仮特許出願第62/348,030号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、グルタチオンをさまざまな生物学的標的領域に送達する際に使用するための化合物、ならびにそのような化合物の製造方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グルタチオン(GSH)は、最も豊富な非タンパク質チオールおよび細胞性抗酸化物質である。それは、ほとんど全ての哺乳動物細胞にミリモル濃度で存在する。グルタチオンは、酸化還元サイクル、タンパク質フォールディング、細胞増殖の調節、および重金属の代謝において重要な役割を果たすトリペプチドである。グルタチオンは、細胞質ゾル中で、2工程のATP媒介プロセスで合成される。グルタミン酸-システインリガーゼは、律速第1工程の、グルタミン酸とシステインとの結合を触媒し、γ-グルタミルシステインを形成する。グルタチオンの生成は、グルタチオンシンターゼによって触媒されるグリシンのγ-グルタミルシステインへの結合を経る。グルタチオンは、細胞質にミリモル濃度で存在し、通常(例えば、96~99%は)還元状態で存在する。少量のグルタチオンは、混合ジスルフィドを介してまたはジスルフィドGSSGとしてタンパク質に結合する。細胞は、グルタチオンの3つの追加の区画化されたプールを、核、小胞体、およびミトコンドリアに含有する。
【0004】
ミトコンドリアは、適切な機能と酸化還元ホメオスタシスとの間の微妙なバランスを示す。酸素の主要な消費者として、ミトコンドリアは、酸化的損傷およびそれに続くミトコンドリア機能不全をもたらす活性酸素種(ROS)を生成し得る。ミトコンドリア機能不全は、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、および心臓血管疾患を含む、生物学的老化および広範囲の病理学的過程に関与している。ミトコンドリアグルタチオンは、通常の好気性代謝の間に生成される酸化的ストレスを緩和するとともに、有毒な損傷または他の病的状態の下で生成される付加的な活性酸素種(ROS)に応答する役割を果たす。
【0005】
ミトコンドリアグルタチオンの減少は、多くの場合、クリステの喪失、電子輸送の欠損、酸化的損傷および酸化還元摂動に先行するか、またはそれらと同時に起こり、ミトコンドリア駆動アポトーシスの閾値を直接低下させる。グルタチオンを送達するための従来の方法は、GSHが制限されたときに毒物学的損傷を予防する長い臨床歴を有する;しかしながら、GSH前駆体(例えば、N-アセチルシステイン)またはGSH-エステルは、主に細胞質ゾルGSHを増加させる。したがって、現在の治療法は、加齢に伴う、またはミトコンドリアを標的とする毒物学的損傷の下でのミトコンドリアGSH喪失を持続的には改善しない。したがって、ミトコンドリアGSH修復の欠如は、ミトコンドリア崩壊の程度を制限することの明確な障壁となり、それに付随する多くの疾患プロセスをもたらす。したがって、GSH(例えば、N-アセチルシステイン)、GSHエステル、または酸化防止剤のアミノ酸前駆体を供給してGSHを「節約する」直接的な経路は、細胞質ゾルGSHが修復されても、ミトコンドリアにおける定常状態レベルを確実には維持しないことは明らかである。GSHの送達剤として、例えば膜構造を介して使用することができる化合物およびそのような化合物の製造方法が、当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グルタチオン(および/またはグルタチオン前駆体化合物)の、細胞、被験体、または試料中の特定の標的への送達を促進することにより、細胞、被験体、または試料中のグルタチオンレベルを増加および/または維持するために使用することができる化合物の実施形態が、本明細書に開示される。特定の開示される実施形態では、化合物は、本明細書に記載の式のいずれか1つを満たす構造を有する。化合物は、典型的には、化合物の送達を促進する少なくとも1つの標的化部位を含む。特定の開示された実施形態では、標的化部位は、膜を介する化合物の輸送を促進する。
【0007】
化合物の製造方法の実施形態および該化合物を含む組成物も、本明細書に開示される。化合物の使用方法も開示される。特定の開示された実施形態では、グルタチオンレベルの低下もしくは減少に関連する疾患または病状を治療、改善、および/または予防するために化合物を使用することができる。例示的な実施形態では、グルタチオンレベルの低下もしくは減少は、ミトコンドリアグルタチオンレベルの低下に起因する。
【0008】
本開示の前述のおよび他の目的、特徴、ならびに利点は、添付の図面を参照して進められる以下の発明を実施するための形態からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】トリフェニルホスホニウムテトラエチルグルタチオンジスルフィド(Et
4GSSG-TPP
2)の質量スペクトルである;m/z 707.42のピークは、実際の質量1415(対イオンの質量を含まない)を反映する二重荷電ピークである。
【
図2】トリフェニルホスホニウム(TPP)GSH(「TPP-GSH」と表示された線)が、真正GSH(「GSH」と表示された線)と共に心筋ミトコンドリアに蓄積することを示す、HPLCトレースを表すクロマトグラムである。
【
図3】2つの異なる濃度のTPP-GSH(0.1μmおよび10μm)に対する%ミトコンドリアGSH補充を示す棒グラフである。
【
図4】3-ヒドロキシ-4-ペンテン酸(「3HP」)(μM)に応じたGSHのグラフであり、ミトコンドリア((黒四角)で表される)および細胞質ゾル(「●」(丸)で表される)GSHに対する3HPの影響を示す。
【
図5】若齢ラット肝臓におけるミトコンドリアGSHレベルに対する3HPの影響対若齢および老齢ラット肝臓におけるミトコンドリアGSHを示す棒グラフである。
【
図6】時間(分)に応じた酸素消費速度のグラフであり、3HP依存性GSH喪失が、(1)基礎呼吸、(2)ATP代謝回転、(3)プロトン流出、または(4)非ミトコンドリア呼吸を変化させないことを示している;しかしながら、3HP処理のレベルが高くなるにつれて呼吸機能が失われ、ミトコンドリアGSHの喪失により、細胞はもはや増加するエネルギー需要に応答できなくなることを示している。
【
図7】メナジオン(μM)に応じた生存率のグラフであり、老齢ラットの肝細胞が、若齢動物の細胞と比較して、メナジオンに約2倍の感受性があることを示している(老齢ではLC
50=232μM、対して若齢ではLC
50=401μM;n=6、p<0.05);このより高い受攻性は、年齢に伴うミトコンドリアGSHの喪失と同時発生的である(「A」と表示された、
図7の挿入図に示されているように)。
【
図8】細胞を、メナジオンの30分前に50μMのTPP-GSHで前処理することにより、肝毒性を防御することを示す図である;TPP-GSH処理後のLC
50は、若齢ラット(n=1)の未処理細胞と変わらない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(I.用語の説明)
以下の用語の説明は、本開示をより良く説明し、当業者を本開示の実施に導くために提供される。本明細書で使用される場合、「含む」は「含める」を意味し、単数形(「a」または「an」または「the」)は、文脈が明確に別段に指示しない限り、複数の言及を含む。「または」という用語は、文脈が明確に別段に指示しない限り、記載された代替要素の単一の要素または2つ以上の要素の組み合わせを指す。
【0011】
開示された方法のいくつかの工程は、簡便な提示のために特定の順序で記載されているが、以下に記載の特定の言語によって特定の順序が要求されない限り、この説明の様式は再配列を包含することを理解されたい。例えば、逐次記載された工程は、場合によっては再配列されるか、または同時に実行されてもよい。さらに、説明は、「生成する」および「提供する」のような用語を使用して、開示された方法を説明する場合がある。これらの用語は、実施される実際の工程の上位レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の工程は、特定の実装形態に応じて変化し、当業者によって容易に認識される。
【0012】
別段に説明されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似のまたは等価な方法および化合物を本開示の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および化合物を以下に記載する。化合物、方法、および実施例は、例示に過ぎず、別段に指示しない限り、限定することを意図するものではない。本開示の他の特徴は、以下の発明を実施するための形態および特許請求の範囲から明らかである。
【0013】
別段に指示しない限り、明細書または特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量、パーセント、温度、時間などを表す全ての数字は、用語「約」で修飾されると理解されるべきである。したがって、別段に指示しない限り、黙示的にまたは明示的に、記載の数値パラメーターは、標準試験条件/方法の下での所望の追求される特性および/または検出限界によって決まる近似値である。実施形態を、説明した先行技術と直接的かつ明示的に区別する場合、実施形態番号は、「約」という語句が列挙されていない限り、近似ではない。さらに、本明細書に列挙される全ての代替が等価であるとは限らない。
【0014】
本明細書に開示される化合物は、化学的結合体が異なる立体異性形態で存在することができるように、立体中心、立体中心軸などのような1つ以上の非対称要素、例えば不斉炭素原子を含有していてもよい。これらの化合物は、例えば、ラセミ体または光学活性体であり得る。2つ以上の不斉要素を有する化合物の場合、これらの化合物はさらにジアステレオマーの混合物であってもよい。不斉中心を有する化合物については、純粋な形態の全ての光学異性体およびそれらの混合物が包含される。これらの状況では、単一エナンチオマー、すなわち光学活性体は、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、またはラセミ体の分割によって得ることができる。ラセミ体の分割は、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または、例えばキラルHPLCカラムを用いたクロマトグラフィーなどの従来の方法によっても達成することができる。全ての形態は、それらを得るために使用される方法にかかわらず、本明細書で考慮される。
【0015】
活性剤の全ての形態(例えば、溶媒和物、光学異性体、エナンチオマー形態、多形体、遊離化合物および塩)は、単独でまたは組み合わせて使用されてもよい。
【0016】
本明細書で使用される立体化学的定義および慣習は、通常、S. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York;およびEliel, E. and Wilen, S., Stereochemistry of Organic Compounds (1994) John Wiley & Sons, Inc., New Yorkに従う。多くの有機化合物は光学活性形態で存在する、すなわち、それらは平面偏光の面を回転させる能力を有する。光学活性化合物を記載する際に、接頭辞DおよびLまたはRおよびSを使用して、そのキラル中心(単数または複数)についての分子の絶対配置を示す。接頭辞dおよびlまたは(+)および(-)を使用し、化合物による平面偏光の回転の符号を指定し、(-)またはlは、化合物が左旋性であることを意味する。接頭辞が(+)またはdの化合物は、右旋性である。
【0017】
本開示のさまざまな実施形態の検討を容易にするために、以下の特定の用語および略語の説明を提供する:
【0018】
アジュバント:他の薬剤、典型的には有効成分の効果を修正する賦形剤。アジュバントは、多くの場合、薬理学的および/または免疫学的薬剤である。アジュバントは、免疫応答を増加させることによって有効成分の効果を修正し得る。アジュバントは、製剤用の安定化剤としても作用し得る。例示的なアジュバントには、水酸化アルミニウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、死菌、スクアレン、洗浄剤、サイトカイン、パラフィン油、およびフロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバントなどの併用アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
アルデヒド:-C(O)H。
【0020】
脂肪族:少なくとも1個の炭素原子~50個の炭素原子、例えば1~25個の炭素原子、または1~10個の炭素原子を有する炭化水素、またはそのラジカルであって、アルカン(またはアルキル)、アルケン(またはアルケニル)、アルキン(またはアルキニル)が、それらの環式バージョンを含んで、さらには直鎖および分岐鎖配置、ならびに全ての立体異性体および位置異性体も含んで挙げられる。
【0021】
脂肪族-アリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なアリール基であって、アリール基が脂肪族基を介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0022】
脂肪族-ヘテロアリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なヘテロアリール基であって、ヘテロアリール基が脂肪族基を介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0023】
アルケニル:少なくとも2個の炭素原子~50個の炭素原子、例えば2~25個の炭素原子、または2~10個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合とを有する不飽和一価炭化水素であって、不飽和一価炭化水素が、親アルケンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することで得ることができる。アルケニル基は、分岐、直鎖、環状(例えば、シクロアルケニル)、シス、またはトランス(例えば、EまたはZ)であり得る。
【0024】
アルコキシ:-O-アルキルであって、例示的な実施形態には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
アルキル:少なくとも1個の炭素原子~50個の炭素原子、例えば1~25個の炭素原子、または1~10個の炭素原子を有する飽和一価炭化水素であって、飽和一価炭化水素が、親化合物(例えば、アルカン)の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することで得ることができる。アルキル基は、分岐、直鎖、または環状(例えば、シクロアルキル)であり得る。
【0026】
アルキニル:少なくとも2個の炭素原子~50個の炭素原子、例えば2~25個の炭素原子、または2~10個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合とを有する不飽和一価炭化水素であって、不飽和一価炭化水素が、親アルキンの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することで得ることができる。アルキニル基は、分岐、直鎖、または環状(例えば、シクロアルキニル)であり得る。
【0027】
アルキルアリール/アルケニルアリール/アルキニルアリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なアリール基であって、アリール基が、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基をそれぞれ介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0028】
アルキルヘテロアリール/アルケニルヘテロアリール/アルキニルヘテロアリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なヘテロアリール基であって、ヘテロアリール基が、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基をそれぞれ介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0029】
アミド:-C(O)NRaRbであって、RaおよびRbの各々が、独立して、水素、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0030】
アミン:-NRaRbであって、RaおよびRbの各々が、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0031】
アリール:少なくとも5個の炭素原子~15個の炭素原子、例えば5~10個の炭素原子を含み、単環または複数の縮合環を有する芳香族炭素環式基であって、結合点が芳香族炭素環式基の原子を介していれば、その縮合環が芳香族であってもなくてもよい。アリール基は、水素以外の1つ以上の基、例えば、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、他の官能基、またはそれらの任意の組み合わせなどで置換されていてもよい。
【0032】
カルボキシル:-C(O)ORaであって、Raがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、水素、およびそれらの任意の組み合わせである。
【0033】
担体:本明細書に記載の化合物を送達することができる成分として働く賦形剤。いくつかの実施形態では、担体は、懸濁助剤、可溶化助剤、またはエアロゾル化助剤であり得る。一般に、担体の性質は、使用される特定の投与様式次第である。例えば、非経口製剤は、通常、溶媒として、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される流体が挙げられる注射液を含む。いくつかの例では、薬学的に許容される担体は、被験体への投与(例えば、非経口、筋肉内、または皮下注射による)に適するように滅菌されていてもよい。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含むことができる。
【0034】
ハロ脂肪族:1個以上の水素原子、例えば1~10個の水素原子が、独立して、フルオロ、ブロモ、クロロ、またはヨードなどのハロゲン原子で置換されている脂肪族基。
【0035】
ハロ脂肪族-アリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なアリール基であって、アリール基が、ハロ脂肪族基を介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0036】
ハロ脂肪族-ヘテロアリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なヘテロアリール基であって、ヘテロアリール基が、ハロ脂肪族基を介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0037】
ハロアルキル/ハロアルケニル/ハロアルキニル:臭素、塩素、フッ素、またはヨウ素から選択することができるが、これらに限定されない少なくとも1個のハロゲン原子~20個のハロゲン原子、例えば1~15個のハロゲン原子、または1~5個のハロゲン原子を含むアルキル、アルケニル、またはアルキニル基(分岐、直鎖、もしくは環状であり得る)。
【0038】
ヘテロ脂肪族:酸素、窒素、硫黄、セレン、リン、およびそれらの酸化型から選択することができるが、これらに限定されない少なくとも1個のヘテロ原子~20個のヘテロ原子、例えば1~15個のヘテロ原子、または1~5個のヘテロ原子をその基内に含む脂肪族基。
【0039】
ヘテロ脂肪族-アリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なアリール基であって、アリール基が、ヘテロ脂肪族基を介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0040】
ヘテロアルキル/ヘテロアルケニル/ヘテロアルキニル:酸素、窒素、硫黄、セレン、リン、およびそれらの酸化型から選択することができるが、これらに限定されない少なくとも1個のヘテロ原子~20個のヘテロ原子、例えば1~15個のヘテロ原子、または1~5個のヘテロ原子をその基内に含むアルキル、アルケニル、またはアルキニル基(分岐、直鎖、もしくは環状であり得る)。
【0041】
ヘテロアルキル-アリール/ヘテロアルケニル-アリール/ヘテロアルキニル-アリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なアリール基であって、アリール基が、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル基をそれぞれ介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0042】
ヘテロアルキル-ヘテロアリール/ヘテロアルケニル-ヘテロアリール/ヘテロアルキニル-ヘテロアリール:本明細書に開示の化合物にカップリングしている、またはカップリング可能なヘテロアリール基であって、アリール基が、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル基をそれぞれ介してカップリングしているか、またはカップリングする。
【0043】
ヘテロアリール:酸素、窒素、硫黄、セレン、リン、およびそれらの酸化型から選択することができるが、これらに限定されない少なくとも1個のヘテロ原子~6個のヘテロ原子、例えば1~4個のヘテロ原子をその環内に含むアリール基。そのようなヘテロアリール基は、単環または複数の縮合環を有していてもよく、結合点が芳香族ヘテロアリール基の原子を介していれば、縮合環が芳香族であってもなくてもよく、および/またはヘテロ原子を含んでいてもいなくてもよい。ヘテロアリール基は、水素以外の1つ以上の基、例えば、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、他の官能基、またはそれらの任意の組み合わせなどで置換されていてもよい。
【0044】
イミドエステル:-C(NH2
+)ORaであって、Raが、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0045】
ケトン:-C(O)Raであって、Raが、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0046】
薬学的に許容される賦形剤:有効成分(例えば、本明細書に記載の化合物)以外の、該有効成分の製剤に含まれる物質。本明細書で使用される場合、賦形剤は、医薬組成物の粒子内に組み込まれてもよく、または医薬組成物の粒子と物理的に混合されてもよい。賦形剤は、例えば、活性薬剤を希釈するために、および/または医薬組成物の特性を修正するために使用され得る。賦形剤には、抗付着剤、結合剤、コーティング剤、腸溶コーティング剤、崩壊剤、香味剤、甘味剤、着色剤、滑沢剤、流動促進剤、吸着剤、防腐剤、アジュバント、担体または溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。賦形剤は、デンプンおよび加工デンプン、セルロースおよびセルロース誘導体、二糖類、多糖類および糖アルコールなどの糖類およびそれらの誘導体、タンパク質、合成ポリマー、架橋ポリマー、酸化防止剤、アミノ酸または防腐剤であってもよい。例示的な賦形剤には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、植物性ステアリン、スクロース、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、コハク酸トコフェリルポリエチレングリコール1000(ビタミンE TPGS、またはTPGSとしても知られている)、カルボキシメチルセルロース、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、セレン、システイン、メチオニン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、糖類、シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、タルトラジン、アスパルテーム、塩化ベンザルコニウム、ゴマ油、没食子酸プロピル、メタ重亜硫酸ナトリウムまたはラノリン。
【0047】
薬学的に許容される塩:当業者に知られているようにさまざまな有機および無機対イオンから誘導された、本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩であって、単なる例示としては、以下が挙げられる:ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど;分子が塩基性官能基を含有する場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸または無機酸の塩。「薬学的に許容される酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的有効性を保持しながら、酸パートナーによって形成される「薬学的に許容される塩」のサブセットである。特に、開示されている化合物は、以下を含むが、これらに限定されないさまざまな薬学的に許容される酸との塩を形成する:無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、ならびに有機酸、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、キシナホ酸など。「薬学的に許容される塩基付加塩」は、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などの無機塩基から誘導される「薬学的に許容される塩」のサブセットである。例示的な塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩である。薬学的に許容される有機塩基から誘導される塩には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:第一級、第二級、および第三級アミンの塩、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂など。例示的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。(例えば、参照により本明細書に組み込まれるS. M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci., 1977; 66:1-19を参照)。
【0048】
薬学的/治療有効量:特定の障害もしくは疾患を治療するか、またはその症状の1つ以上を改善もしくは根絶する、および/または疾患もしくは障害の発生を予防するのに十分な化合物の量。「治療有効量」を構成する化合物の量は、化合物、疾患の状態およびその重症度、治療を受ける患者の年齢などに応じて変化する。治療有効量は、当業者によって決定され得る。
【0049】
プロドラッグ:例えば腸内での加水分解または酵素変換により、in vivoで変換して生物学的に活性な化合物、特に親化合物を得る、本明細書に開示の化合物。プロドラッグ部位の一般的な例には、カルボン酸部位を持つ活性型を有する化合物の薬学的に許容されるエステルおよびアミド形態が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の化合物の薬学的に許容されるエステルの例には、リン酸基とカルボン酸のエステル、例えば脂肪族エステル、特にアルキルエステル(例えばC1-6アルキルエステル)が挙げられるが、これらに限定されない。他のプロドラッグ部位には、CH2-O-P(O)(ORd)2またはその塩[RdはHまたはC1-6アルキルである]などのリン酸エステルが含まれる。許容されるエステルには、シクロアルキルエステルおよびアリールアルキルエステル、例えば、限定されないが、ベンジルなども含まれる。本発明の化合物の薬学的に許容されるアミドの例には、第一級アミド、ならびに第二級および第三級アルキルアミド(例えば、約1~約6個の炭素を有する)が含まれるが、これらに限定されない。本開示による化合物の開示された例示的実施形態のアミドおよびエステルは、従来の方法に従って調製することができる。プロドラッグの徹底的な議論は、その両方が参照により本明細書に組み込まれるT. Higuchi and V. Stella, “Pro-drugs as Novel Delivery Systems,”Vol 14 of the A.C.S. Symposium Series、およびBioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987において提供されている。
【0050】
被験体:哺乳動物および他の動物、例えばヒト、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ、ウサギなど)、実用動物、および飼料動物など;したがって、開示された方法は、ヒトの治療および獣医学的応用での両方に適用可能である。
【0051】
治療する/治療:被験体、特に、関心のある疾患または病状を有するヒトにおける疾患または病状の治療であり、例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
(i)被験体において疾患もしくは病状が発生するのを防止すること、特に、そのような被験体がその病状に罹りやすいが、それに罹患しているとはまだ診断されていない場合;
(ii)疾患もしくは病状を阻害すること、例えば、その発症を阻止もしくは遅延させる;
(iii)疾患もしくは病状を軽減すること、例えば、疾患もしくは病状もしくはそれらの症状の退行を引き起こすこと;または
(iv)疾患もしくは病状を安定化させること。
【0052】
本明細書中で使用される場合、用語「疾患」および「病状」は交換可能に使用され得るが、以下の場合は異なり得る:特定の病気もしくは病状が既知の原因物質を有さず(そのため病因が未だ決定されていおらず)、したがってそれが疾患とはまだ認識されていないが、望ましくない病状または症候群としてのみ認識されており、多かれ少なかれ特定の症状のセットが臨床医によって確認されている。
【0053】
(II.化合物)
グルタチオンを標的に送達するために使用することができる化合物および/またはグルタチオン前駆体を標的領域に送達することができる化合物の実施形態が、本明細書に開示される。特定の開示される実施形態では、化合物はグルタチオン系化合物である。さらなる実施形態では、化合物は、in vitroまたはin vivoでグルタチオンを形成するために組み立てることができるグルタチオンベースのフラグメント化合物である。本明細書に開示の化合物は、被験体におけるグルタチオンレベルを増加または補充するために使用され得る。特定の開示された実施形態では、本明細書に開示される化合物は、膜を通過することができ、したがって、細胞、被験体、または試料中の異なる生物学的構造内のグルタチオンレベルを増加させるために使用され得る。化合物は、ミトコンドリア、小胞体、核の膜、および膜を含む他の生物学的構造を通過することができる。いくつかの実施形態では、化合物はDNAおよび/またはRNAと会合することができる。開示された化合物が膜を透過または通過することができるため、それらは特定の生物学的構造におけるグルタチオン(もしくはグルタチオン前駆体)レベルを増加および/または維持するために使用することができる。被験体におけるグルタチオン(もしくはグルタチオン前駆体)レベルを維持および/または増加させることにより、本開示の化合物は、無数の疾患および/または病状を治療するために使用することができ、それらは本明細書でさらに詳細に議論される。特定の開示される実施形態では、本明細書に開示される化合物(ならびに化合物の使用方法)は、グルタチオンおよび/もしくはグルタチオン前駆体をミトコンドリアならびに他の細胞区画に特異的かつ選択的に送達することによって、ミトコンドリアまたは他の細胞区画内のグルタチオン(もしくはグルタチオン前駆体)レベルを維持および/もしくは増加させるために使用することができる。
【0054】
特定の開示される実施形態では、化合物は、以下の式1Aまたは1Bを満たす構造、もしくはそれらの薬学的に許容される塩、両性イオン、もしくはプロドラッグに対応する構造を有することができる。化合物が以下に示す式の薬学的に許容される塩である実施形態では、化合物は、式1Aおよび1Bで以下に示されるR基の少なくとも1つの除去から生じる1つ以上の荷電基を含む。例えば、示されたカルボキシル基の酸素に結合した1つ以上のR基を除去して、負に荷電したカルボキシレートを提供することができる。さらに別の実施形態では、示されたアミン基(例えば、-NR-または-N(R)
2基)の1つ以上を四級化して、正に荷電したアミン基を提供することができる。そのような実施形態では、アミンは、アミン基のプロトン化またはアルキル化によって四級化され得る。化合物が薬学的に許容される塩である実施形態では、1つ以上の対イオン、例えば薬学的に許容される塩について上述した有機および/または無機塩が存在し得る。いくつかの実施形態では、化合物は双性イオンであり得、したがって、正に荷電した基および負に荷電した基(例えば、四級化された窒素原子およびカルボキシレート)を含み得る。
【化1-1】
【化1-2】
【0055】
式1A~1Dに関して、各Rは、独立して、水素、保護基、またはリンカー-X部位から選択することができる。適切な保護基は、アミン基、チオール基、またはカルボン酸に結合することができ、それらから除去することができる(例えば、官能基の置換により、または基の加水分解もしくは他の開裂により)官能基から選択することができる。いくつかの実施形態では、保護基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ脂肪族基、脂肪族-アリール基、ヘテロアリール基、脂肪族-ヘテロアリール基、ヘテロ脂肪族-アリール基、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリール基から選択することができる。リンカー-X部位に関して、この部位は、化合物の標的への送達を促進するのに適した官能基を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、カルボニル含有基、アルキレンオキシド、脂肪族基、イミドエステルから選択することができる;またはリンカーは、マレイミド、ハロアセチル、もしくはピリジルジスルフィドから生成することができる;Xは、膜を介した化合物の透過を促進または容易にすることができる標的化部位であり得る。引き続き式1Aおよび1Cに関して、nは0または1であり得る。式1Aおよび1Bに関して、Yは酸素または-NR'[R'は水素または保護基である]から選択される。特定の開示される実施形態では、Yは酸素または-NHである。
【0056】
いくつかの実施形態では、標的化部位は、化合物のサイトゾルへの送達を増加させることができる、例えば、(標的化部位を含まない類似化合物と比較して)化合物の送達を10倍増加させる、および/または(標的化部位を含まない類似化合物と比較して)ミトコンドリアへ100倍増加させることができる部位であり得る。いくつかの実施形態では、nが0である場合、式1Aおよび1CにおいてSとS'との間に形成されるジスルフィド部位は含まれず、代わりにS原子は、以下から選択されるR基に結合する:水素;脂肪族基、アリール基、ヘテロ脂肪族基、脂肪族-アリール基、ヘテロアリール基、脂肪族-ヘテロアリール基、ヘテロ脂肪族-アリール基、もしくはヘテロ脂肪族-ヘテロアリール基から選択される保護基;ニトロソ基;または本明細書に記載のリンカー-X基(式1Bおよび1D)。
【0057】
上記の式を満たす化合物は、Xが荷電基を含み、それにより電子的中性をもたらす実施形態において、対イオンをさらに含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、各Xは、独立して、ホスホニウム基、アンモニウム基、または正に荷電した部位を含む他のそのような基から選択することができる。特定の開示された実施形態では、疎水性の正電荷部位と組み合わせて使用される対イオンは、負に荷電した対イオンであり得、典型的には薬学的に許容される負に荷電した対イオンである。例示的な負に荷電した対イオンには、ハロゲン(例えば、Br-、Cl-、F-、I-)、スルホン酸塩(例えばメシル酸塩)、硫酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、リン酸塩、硝酸塩、サリチル酸塩、フマル酸塩、乳酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。独立した実施形態では、Xは、金ナノ粒子などのナノ粒子ではないか、またはナノ粒子以外の標的化部位である。
【0058】
いくつかの実施形態では、各Rは、独立して、以下から選択することができる:水素、アルキル、アルケニル、またはアルキニル;ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル;ヘテロアルキルアリール、ヘテロアルケニルアリール、またはヘテロアルキニルアリール;ヘテロアルキルヘテロアリール、ヘテロアルケニルヘテロアリール、またはヘテロアルキニルヘテロアリール;アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、またはアルキニルヘテロアリール;-C(O)R
cX、-C(R
c
2)
pX、-[(CH
2)
2O]
mX、-C(=NH
2
+)NR
cX、-CH
2C(O)NHR
cX、-SR
cX、
【化2】
[各R
cは、独立して、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択することができ;各Xは、独立して、-P
+(R
d)
3、-N
+(R
d)
3[各R
dは、独立して、水素、脂肪族、アリール、または脂肪族-アリールから選択することができる]から選択することができ;mおよびpの各々は、独立して、1~30、例えば1~20、または1~10、または1~5であり得る]から選択されるリンカー-X基。独立した実施形態では、リンカーが脂肪族リンカー基であり、Xがトリメチル置換アミン(すなわち、X=-N
+(Me)
3)である場合には、脂肪族リンカー基は、2つより多くのメチレン単位、例えば3~30のメチレン単位、または5~30のメチレン単位を含む。
【0059】
特定の開示される実施形態では、上記式1A~1Dに示される各Rは、独立して、以下であり得る:メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、デシルから選択されるアルキル;アルキルアミン(例えば、-エチルアミン、-プロピルアミン、-ブチルアミンなど)から選択されるヘテロ脂肪族;フェニルまたはナフチルから選択されるアリール;または-(CH
2)
mPh[mは1~20である]から選択される脂肪族-アリール;-C(O)(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(=NH
2
+)N(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-CH
2C(O)NH(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-S(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(O)[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(=NH
2
+)NCH
2[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-CH
2C(O)NH[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-S[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(O)(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-C(=NH
2
+)N(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-CH
2C(O)NH(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-S(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-(CH
2)
3-30(N)
+Me
3Br
-、-C(O)[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-C(=NH
2
+)NCH
2[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-CH
2C(O)NH[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-S[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、
【化3】
から選択されるリンカー-X基。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、式2A~2C、またはその薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを満たす構造を有することができる。化合物が、以下に示す式の薬学的に許容される塩である実施形態では、化合物は、式2A~2Cに示されるR
1および/またはR
2基の少なくとも1つの除去から生じる1つ以上の荷電基を含む。例えば、示されたカルボキシル基の酸素に結合した1つ以上のR
1および/またはR
2基を除去して、負に荷電したカルボキシレートを提供することができる。さらに別の実施形態では、示されたアミン基(例えば、-NH-または-N(H)-リンカー-X基)の1つ以上を四級化して、正に荷電したアミン基を提供することができる。そのような実施形態では、アミンは、アミン基のプロトン化またはアルキル化によって四級化され得る。化合物が薬学的に許容される塩である実施形態では、1つ以上の対イオン、例えば薬学的に許容される塩について上述した有機および/または無機塩が存在し得る。いくつかの実施形態では、化合物は双性イオンであり得、したがって、正に荷電した基および負に荷電した基(例えば、四級化された窒素原子およびカルボキシレート)を含み得る。
【化4】
式2A~2Dに関して、各R
1および各R
2は、独立して、水素または式1について上記したような保護基から選択することができる;各リンカーは、式1について上記したもののいずれかから選択することができる;各Xは、独立して、式1A~1Dについて上記した通りであり得る;nは0または1であり得る。式2Aおよび2Dに示すように、nが1である場合、化合物はジスルフィド含有化合物であり得る(したがって、両方の硫黄原子、SおよびS'が含まれる)。さらに、nが0である別の実施形態では、化合物は、チオール含有化合物(S原子が水素原子に結合している)、チオ-ニトロソ基(例えば、式2C)、またはチオエーテル含有化合物もしくはチオエステル含有化合物(S原子が、式1A~1Dについて記載したR基から選択されるR基に結合する)であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の式3A、3B、4A、4B、5A、5B、6A、または6Bを満たす構造を有することができる。
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
式3A、3B、4B、4A、5A、5B、6A、および6Bに関して、各R
1、R
2、X、m、およびnは、本明細書に記載の通りであり得る。式3B、4B、5B、および6Bに関して、各R
3は、水素、ニトロソ基、リンカー-X基、または保護基から選択することができる;各mは、独立して、1~30、例えば1~20、または1~10、または1~5であり得る。特定の開示された実施形態では、R
3は、以下から選択することができる:水素;ニトロソ;-C(O)R
cX、-C(R
c
2)
pX、-CH
2C(O)NHR
cX、もしくは-SR
cXから選択されるリンカー-X基;または脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、もしくはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択される保護基。いくつかの実施形態では、R
3は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、フェニル、またはナフチルから選択することができる。
【0062】
上記の特定の式によって企図されるように、化合物は二量体化合物またはヘテロ二量体化合物であり得る。二量体化合物では、二量体は、式1A、1C、2A、3A、4A、5A、および6Aに示される硫黄-硫黄結合を介して結合された2つのフラグメントを含む。各フラグメントは二量体化合物において同一である;すなわち、ジスルフィド結合を介して結合した2つの成分は同一である。ヘテロ二量体化合物において、ヘテロ二量体は、同様に、式1A、1C、2A、3A、4A、5A、および6Aに示される硫黄-硫黄結合を介して結合された2つのフラグメントを含む;しかしながら、2つのフラグメントは同一ではない。ヘテロ二量体化合物のいくつかの実施形態では、一方のフラグメントは標的化部位を含んでいてもよく、他方のフラグメントは標的化部位を含んでいなくてもよい。そのような実施形態は、二重送達を容易にするために使用することができる。例えば、ヘテロ二量体の2つのフラグメントのフラグメント化(例えば、還元的フラグメント化)の際に、標的部位を使用して1つのフラグメントをミトコンドリアに送達することができ、他方のフラグメントを細胞質ゾルに送達することができる。
【0063】
上記の式のうちの1つ以上を満たす代表的な化合物を、以下の表1に例示および列挙する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【0064】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の表2に列挙される化合物から選択することができる。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【0065】
上記の例示および命名された化合物は、非限定的な例であり、本開示は、5を超える繰返しアルキレンオキシドおよび/またはメチレン単位を含むリンカーが使用される化合物を企図する。本開示はまた、上記の化合物構造/名称で提供される任意のメチルまたはエチル保護基が、脂肪族基(例えば、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)または本明細書に開示される他の保護基などの別の保護基で置き換えられる化合物の実施形態を企図する。
【0066】
独立した実施形態では、本明細書に記載の式を満たす化合物は、以下のものではない、または以下のもの以外である:
【化6】
(6S,11R)-6-(tert-ブトキシカルボニル)-N,N,N,2,2-ペンタメチル-4,9,12,15-テトラオキソ-11-((トリチルチオ)メチル)-3,16-ジオキサ-5,10,13-トリアザオクタデカン-18-アミニウムブロミド;または
(6S,11R)-6-(tert-ブトキシカルボニル)-11-(メルカプトメチル)-N,N,N,2,2-ペンタメチル-4,9,12,15-テトラオキソ-3,16-ジオキサ-5,10,13-トリアザオクタデカン-18-アミニウムブロミド。
【0067】
独立した実施形態では、化合物はグルタチオンではないか、またはグルタチオン以外である;しかしながら、化合物は、送達の際または送達後に、グルタチオンに変換され得る。
【0068】
特定の開示された実施形態では、上記の化合物を形成するために組み立てることができる化合物フラグメントも、本明細書に記載の方法において有用であり得る。いくつかの化合物は、下記の式7~12のいずれか1つを満たす構造を有することができる。
【化7】
式7~12に関して、各Rは、独立して、保護基またはリンカー-X基から選択することができ、各R'は、独立して、水素または保護基から選択することができる。特定の開示された実施形態では、保護基は、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ハロ脂肪族-アリール、ハロ脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択することができる。例示的な実施形態では、保護基は、以下から選択することができる:アルキル、アルケニル、またはアルキニル;ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、またはヘテロアルキニル;ハロアルキル、ハロアルケニル、またはハロアルキニル;アルキル-アリール、アルケニル-アリール、またはアルキニル-アリール;ヘテロアルキル-アリール、ヘテロアルケニル-アリール、またはヘテロアルキニル-アリール;ハロアルキル-アリール、ハロアルケニル-アリール、またはハロアルキニル-アリール;ヘテロアルキル-ヘテロアリール、ヘテロアルケニル-ヘテロアリール、またはヘテロアルキニル-ヘテロアリール;アルキル-ヘテロアリール、アルケニル-ヘテロアリール、またはアルキニル-ヘテロアリール;ハロアルキル-ヘテロアリール、ハロアルケニル-ヘテロアリール、またはハロアルキニル-ヘテロアリール。さらに別の例示的な実施形態では、保護基は、以下から選択することができる:メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、デシル、フェニル、ナフチル、-(CH
2)
mPh[mは1~20である]、フルオレニルメチル、シリルオキシエーテル(-[(CH
2)
nO]
m-[(CH
2)
p]SiR
a
3[nは1~10に及び、mは0~10に及び、pは1~10に及ぶ])、トリハロアルキル、ジアリール、アルキルジアリール、またはそれらのエステル。
【0069】
リンカー-X基は、カルボニル含有基、アルキレンオキシド、イミドエステルから選択されるリンカー基、またはマレイミド、ハロアセチル、もしくはピリジルジスルフィドから生成されるリンカー基を含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカー-X基は、以下から選択することができる:-C(O)R
cX、-C(R
c
2)
pX、-[(CH
2)
2O]
mX、-C(=NH
2
+)NR
cX、-CH
2C(O)NHR
cX、-SR
cX、または
【化8】
[各R
cは、独立して、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択することができ;各Xは、独立して、-P
+(R
d)
3、-N
+(R
d)
3[各R
dは、独立して、水素、脂肪族、アリール、または脂肪族-アリールから選択される]から選択することができ;mおよびpは、独立して、1~30、例えば1~20、または1~10、または1~5であり得る]。特定の実施形態では、リンカー-X基は、以下から選択することができる:-C(O)(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(=NH
2
+)N(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-CH
2C(O)NH(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-S(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(O)[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(=NH
2
+)NCH
2[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-CH
2C(O)NH[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-S[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(O)(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-C(=NH
2
+)NCH
2[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-CH
2C(O)NH(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-S(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-(CH
2)
3-30(N)
+Me
3Br
-、-S[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、
【化9】
【0070】
例示的な実施形態では、化合物フラグメントは、以下の表3に示すいずれか1つから選択することができる。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0071】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の表4に列挙されるものから選択される。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【0072】
(III.化合物の製造方法)
本明細書に開示される化合物の実施形態は、以下に記載される方法の実施形態を用いて製造することができる。特定の開示された実施形態では、化合物は、1つ以上の保護基および/または標的化部位の付加と組み合わせたペプチドカップリング条件を用いて製造することができる。
【化10】
スキーム1に関して、酸前駆体化合物100を、酸触媒およびアルコール;標的化部位試薬(例えば、Y-リンカー-X[Yは、リンカー基とアミンとの反応の際に置換され、スキーム1に示されるようにN-リンカー-X基を形成することができる基であるか、またはYは、スキーム1に示されるようにカルボニル部位に結合するようになる窒素含有基である])、カップリング試薬、および塩基;またはそれらの組み合わせにばく露させ、化合物102を形成することができる。アルコールは、式R'OHを有するアルコール[R'は、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択される保護基である]であり得、酸触媒は、例えば、塩化チオニル、塩化トシル、塩化メシルなどから選択することができる。任意の適切な標的化部位試薬を、式Y-リンカー-X[リンカー-X基は本明細書に記載の通りである];または、本明細書に記載されるように、その後標的化部位と反応することができるY-リンカー基を有する特定の実施形態で使用することができる。適切なカップリング試薬には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-ヘキサフルオロホスフェート、2-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド・HCl、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブロモ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートなど、またはそれらの組み合わせ。適切な塩基には、ジイソプロピルエチルアミン、イソプロピルアミンなどのアミン塩基が挙げられるが、これらに限定されない。スキーム1(および以下に示すスキーム)に関して、各Rは、独立して、本明細書で提供される式について記載したように、水素または保護基から選択することができる;各R'は、独立して、本明細書に記載されるような保護基であり得る;各リンカー-X基は、本明細書で提供される式について記載した通りである。スキーム1に示された工程が実行される順序は、異なる実施形態によって変化し得る。例えば、いくつかの実施形態では、酸前駆体化合物100を最初にアルコールおよび酸触媒と反応させて中間体104を得て、次に標的化部位試薬で生成物102を得ることができる(スキーム1Aを参照)。他の実施形態では、酸前駆体化合物100を最初に標的化部位試薬およびカップリング試薬と反応させて中間体106を得て、続いてアルコールおよび酸触媒と反応させて生成物102を得ることができる(スキーム1Bを参照)。
【化11】
【化12】
スキーム1B
【0073】
本明細書に開示される化合物を製造する例示的な方法を、以下のスキーム2に示す。スキーム2に示すように、GSSG(グルタチオンジスルフィド)200を塩化チオニルおよびアルコール(例えば、メタノールおよび/またはエタノール)と反応させて、エステル生成物202Aおよび/または202Bを得る。次いで、エステル生成物202Aおよび202Bを、スキーム2に示すホスホニウム塩204およびカップリング試薬と反応させて、TPP含有グルタチオン化合物206Aおよび206Bを得る。
【化13】
【0074】
本明細書に記載の化合物のさらなる製造方法を、スキーム3に示す。スキーム3に関して、ジスルフィド前駆体300を、グリシン酸エチル塩酸塩とペプチドカップリングさせてアミド生成物302を得ることができる。アミド生成物302上のBoc保護基の脱保護を適切な酸で実施して遊離アミン生成物304を得て、それを保護されたペプチド306とカップリングさせて保護されたジスルフィド生成物308を得ることができる。保護されたジスルフィド生成物308の酸の脱保護は遊離酸生成物310をもたらし、それをトリホスホニウム塩312と反応させて標的部位含有生成物314を得ることができる。塩基で処理すると、生成物314のアミン部位が選択的に脱保護され、標的化化合物316を得ることができる。
【化14】
【0075】
さらなる実施形態では、式7~12のいずれか1つを満たす構造を有する化合物は、グリシン、システイン、またはグルタミン酸から選択される1つ以上のペプチドを、本明細書に記載の標的化部位試薬、カップリング試薬、および塩基にばく露させることによって製造することができる。いくつかの実施形態では、グリシン、システイン、またはグルタミン酸から選択される1つ以上のペプチドを、本明細書に記載のものなどの適切なペプチドカップリング試薬を用いて最初にカップリングさせ、次いでカップリングしたジまたはトリペプチドを、標的化部位試薬、カップリング試薬、および塩基にばく露させることができる。さらに別の実施形態では、1つ以上のペプチドを、最初に標的化部位試薬、カップリング試薬、および塩基にばく露し、次に別のペプチドにカップリングさせて標的化ジまたはトリペプチドを形成することができる。
【0076】
(IV.使用方法)
本明細書に開示される化合物は、細胞、被験体、または試料中のグルタチオンレベルを維持または増加させるために使用され得る。化合物の使用方法は、治療有効量の化合物を、細胞、被験体、または試料に投与する工程を含むことができる。特定の開示される実施形態では、化合物は、グルタチオンレベルの低下もしくは減少に関連する疾患または病状を治療、改善、および/または予防するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物を、年齢に伴うグルタチオン喪失またはミトコンドリアを標的とする毒物学的損傷に関連する疾患などの、ミトコンドリアグルタチオンレベルの低下に関連する疾患および/または病状を治療、改善、および/または予防するために使用することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、以下のいずれか1つ以上を防止するまたは軽減させるために使用することができる:(1)特にETC複合体における重要なチオールの酸化による、電子伝達鎖(ETC)活性の減衰;(2)TCAサイクルを不利に遅らせる、ジカルボキシレート輸送のアロステリック阻害;(3)NADH/NAD+酸化還元対からのGSH/GSSG酸化還元ネットワークの脱共役、ミトコンドリア膜電位およびATP合成の低下;(4)ETCから発生し、GSH依存性ペルオキシダーゼが過酸化水素および脂質ヒドロペルオキシドを排除するのを妨げるオキシダントに対するミトコンドリア感受性;(5)高齢者の「多剤併用」に寄与する可能性がある薬物および毒素に対する感受性の増大;ならびに(6)透過性細孔開口およびプロアポトーシス因子(チトクロームc、AIF)の放出の開始。なおさらなる実施形態では、本明細書に開示される化合物は、以下を治療、改善、または予防するために使用することができる:神経変性(例えば、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン病など)、脳卒中、糖尿病、心血管疾患(または慢性心不全などの他の心臓関連疾患)、がんおよび化学療法に伴う副作用、筋障害およびミオパチー、ウイルス感染症、歯周病、血管障害、腎臓疾患、虚血-再灌流障害、創傷修復の問題、炎症、統合失調症および他の神経心理学的障害、ならびにアセトアミノフェン毒性または急性アルコール中毒。
【0077】
本明細書に開示される化合物を、被験体に投与することができる。いくつかの実施形態では、化合物を、医薬組成物として製剤化することができる。本開示によって企図される医薬組成物には、本明細書に開示される少なくとも1つの化合物と、例えば、アジュバント、担体、安定化剤、またはそれらの組み合わせから選択される薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を含めることができるが、これらに限定されない。医薬組成物は、希釈剤、充填剤、結合剤、保湿剤、防腐剤、酸なども含むことができる。本明細書に記載の化合物は、単独で、1つ以上の追加の化合物と組み合わせて、または確立された療法の補助剤として、またはそれと組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、化合物は、治療される障害または病状に有用な他の治療剤と併用されてもよい。これらの化合物は、同時に、任意の順序で連続して、同じ投与経路によって、または異なる経路によって投与されてもよい。そのような化合物の例には、N-アセチルシステイン、ビタミンE、ビタミンC、およびジアセチル-ビス(4-メチルチオセミカルバゾナト)銅(II)(CuATSM)が挙げられる。
【0078】
本明細書に開示される化合物を含む医薬組成物は、固体、液体、および/またはローションの形態の薬学的に許容される製剤として投与することができる。適切な固体の投与形態としては、錠剤、カプセル、粉末、固体分散剤などが挙げられるが、これらに限定されない。適切な液体またはローション形態には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:水中油型または油中水型エマルジョン、水性ゲル組成物、または泡、フィルム、スプレー、軟膏、ペッサリー形態、坐剤形態、クリーム、リポソームまたはそれが塗布されたもしくは接触している皮膚または表面への化合物の徐放もしくは制御放出のためにマトリックス中に埋め込まれた他の形態としての使用のために製剤化された液体もしくはローション。
【0079】
該化合物または薬学的に許容される成分を含む組成物は、局所、眼、経口、口腔、全身、経鼻、注射(静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、もしくはくも膜下腔内など)、経皮、直腸、経膣など、または吸入もしくは吹送による投与に適した形態を含むが、これらに限定されないさまざまな投与様式に適するように製剤化され得る。
【0080】
経口または口腔投与の場合、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を用いて従来の手段によって調製されたロゼンジ、錠剤またはカプセル剤の形態をとり得る。錠剤またはカプセル剤は、例えば、糖、フィルム、または腸溶性コーティングを用いて、当該技術分野でよく知られている方法によってコーティングすることができる。
【0081】
経口投与用の本明細書に開示される化合物の液体製剤は、例えば、エリキシル剤、溶液剤、シロップ剤もしくは懸濁剤の形態をとることができ、または使用前に水または他の適切な溶媒で構成する乾燥製品として提供することができる。経口投与用の調製物も、化合物の制御放出をもたらすように適切に製剤化され得る。
【0082】
局所投与の場合、化合物は、溶液、ローション、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁液などとして製剤化することができる。経粘膜投与の場合、透過する障壁に適した浸透剤を製剤に使用することができる。
【0083】
全身性製剤には、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内または腹腔内注射による投与用に設計されたもの、ならびに経皮、経粘膜経口または肺投与用に設計されたものが含まれる。有用な注射用製剤には、水性もしくは油性溶媒中の化合物の滅菌懸濁液、溶液またはエマルジョンが含まれる。医薬組成物はまた、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含有してもよい。
【0084】
直腸および膣投与経路の場合、化合物またはその組成物は、ココアバターもしくは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する溶液(停留浣腸用)坐剤または軟膏として製剤化されてもよい。
【0085】
鼻内投与または吸入または吹送による投与の場合、化合物および/またはその組成物は、適切な噴射剤の使用により、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で好都合に送達することができる。加圧エアロゾルの場合、用量単位は、計量された量を送達するための弁を備えることによって決定され得る。吸入器または注入器で使用するためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンを含むカプセルおよびカートリッジ)は、化合物とラクトースもしくはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含むように製剤化することができる。
【0086】
本明細書に開示される化合物の投与量は、治療を受ける被験体の年齢、体重、全体的な健康、および病状の重症度を含むさまざまな要因によって決まる。投与量は、個体の性別に合わせて調整する必要もあり得る。化合物の投与量および投与頻度は、化合物が病状の急性発作の治療用に製剤化されるか、または障害の予防的処置のために製剤化されるか次第でもある。
【0087】
有効な投与量は、最初にin vitroアッセイから推定することができる。例えば、被験体における使用の初期投与量を製剤化して、in vitroアッセイで測定した特定の化合物のIC50またはEC50以上の活性化合物の循環血液濃度または血清濃度を達成することができる。投与量は、特定の化合物の生物学的利用能を考慮して、そのような循環血液濃度または血清濃度を達成するように計算することができる。
【0088】
開示される化合物またはその医薬組成物の投与量、例えば治療有効量は、典型的には、約0mg/kg/日超、例えば約0.0001mg/kg/日または0.001mg/kg/日または0.01mg/kg/日から、最大約100mg/kg/日の範囲である。より典型的には、投与量(または有効量)は、約0.0025mg/kg~約1mg/kgの少なくとも1日1回の投与、例えば0.01mg/kg~約0.5mg/kgまたは約0.05mg/kg~約0.15mg/kgに及び得る。総1日投与量は、典型的には、1日当たり約0.1mg/kg~約5mg/kgまたは~約20mg/kg、例えば1日当たり0.5mg/kg~約10mg/kgまたは1日当たり約0.7mg/kg~約2.5mg/kg/日に及ぶ。
【0089】
本明細書に開示される化合物の1つ以上を含む組成物は、典型的には、総重量パーセントで0超~最大99%の化合物を含む。より典型的には、本明細書に開示される化合物の1つ以上を含む組成物は、約1~約20総重量%の化合物、および約80~約99重量%の少なくとも1つの薬学的に許容される成分、例えばアジュバントを含む。
【0090】
(V.実施例)
アルゴン雰囲気下で、オーブン乾燥ガラス器具を用いて化学反応を行った。蛍光インジケータ(254nm)を備えたシリカプレート(60A)を用いて分析薄層クロマトグラフィー(TLC)を行い、UVランプおよびセリウムアンモニウムモリブデン酸(CAM)溶液で可視化した。シリカゲル(60A、72~230メッシュ)で生成物のクロマトグラフィー精製を行った。プロトンNMRスペクトルをBruker 400MHz分光計で記録した。プロトン化学シフトは、内部標準(CDCl3: δH 7.26; MeOH-d4: δH 3.31; DMSO-d6: δH 2.50, DMF-d7: δH 8.03)としての残留溶媒シグナルに対する百万分率(ppm)(δ)で報告した。1H NMRスペクトルにおける多重度は、以下のように表される:s=一重線、bs=幅広一重線、d=二重線、t=三重線、bt=幅広三重線、q=四重線、m=多重線;カップリング定数はヘルツ(Hz)で報告される。カーボンNMRスペクトルは、完全プロトンデカップリングによりBruker 700(175MHz)分光計で記録した。カーボン化学シフトは、内部標準(CDCl3: δC 77.16; MeOH-d4: δC 49.0; DMSO-d6: δC 39.52, DMF-d7: δC 163.15)としての残留溶媒シグナルに対する百万分率(ppm)(δ)で報告した。高分解能エレクトロスプレー質量スペクトルをWaters/Micromass LCT分光計で記録した。グルタチオンジスルフィドは、商業的供給元から入手可能であり、および/または過酸化物(例えば、過酸化水素など)の存在下でグルタチオンを酸化することによって製造することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、以下の条件を実施する高速液体クロマトグラフィーを用いて精製を行った:試料をMilliQ水、0.1%TFA中25%ACNに希釈し、RP-HPLCにより分離した。カラムはC18 Phenomenex 4μm、150mm×4.6mmであった。緩衝液A(99.9%MilliQ水、0.1%TFA)およびB(99.9%HPLC-等級CAN、0.1%TFA)のグラジエントを、1mL/分(%B):0~5分、5~15%;5~31分、15~100%;31~40分、100~5%で実施した。100μLの試料ループおよび~10nmolの試料負荷をいくつかの実施形態で使用した。ピークは、220nmにおいて、Waters 2487 UV分光光度計を用いて検出した。いくつかの実施形態では、Supelco C8 Supelcosil SPLC-8-D85μm、250mm×10mmなど、セミ分取カラムを使用して画分回収を促進することができる。使用した試料ループは、100μLループであった。そのような実施形態では、緩衝液A(99.9%MilliQ水、0.1%TFA)およびB(99.9%HPLC-等級CAN、0.1%TFA)のグラジエントを、3.8mL/分(%B):0~11分、5~15%;11~65分、15~95%;65~73分、95%、73~83分、95~5%で実施した。さらに他の実施形態では、緩衝液A(99.9%MilliQ水、0.1%TFA)およびB(99.9%HPLC-等級CAN、0.1%TFA)のグラジエントを、3.8mL/分(%B):0~5分、5~50%;5~40分、50~95%;40~45分、95%、45~50分、95~5%で実施した。
【化15】
【0092】
グルタチオンジスルフィド(500mg、0.817mmol)を室温で乾燥エタノール(100mL)に溶解し、氷上で冷却し、塩化チオニル(5.0mL、68.8mmol)を注射器からゆっくりと滴加した。溶液を振り混ぜ、4℃で7日間反応させた。反応混合物を減圧濃縮して塩化チオニルを除去し、白色油状残留物を得た。
【化16】
【0093】
トリフェニルホスホニウムグルタチオンジスルフィドテトラエチルエステル。HATUなどの標準的なペプチドカップリング反応を用いて、テトラメチルGSSGのアミノ基を親油性トリフェニルホスホニウム(TPP)カチオンと結合させた。上記のグルタチオンジスルフィドテトラエチルエステル合成からの油状残渣(~591mg、0.816mmol)をジクロロメタン(80mL)に溶解し、次いでカルボキシブチル-トリフェニルホスホニウムブロミド(709mg、1.6mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシヘキサフルオロホスフェート(HATU 608mg、1.6mmol)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(600μL、3.4mmol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。有機層を飽和NaHCO
3水溶液(120mL)、飽和NaBr水溶液(120mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、減圧濃縮して油状クルード残留物を得た。これを最小容量のジクロロメタンに溶解し、次いで酢酸エチルでトリチュレートした。溶媒を減圧下で除去し、最終化合物を白色粉末として得た(802mg、収率62.5%の最小収率)。
図1は、Et
4GSSG-TPP
2(トリフェニルホスホニウムテトラエチルグルタチオンジスルフィド)の質量スペクトルを提供する。
図1に関して、m/z 707.42のピークは、実際の質量1415(対イオンの質量を含まない)を反映する二重荷電ピークである。
【化17】
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物を、以下に記載の手順を使用して製造することができる。
【化18】
N,N'-ジ-Boc-L-シスチニルジグリシンジエチルエステル。N,N'-ジ-Boc-L-シスチン(1.0g、2.27mmol)、グリシンエチルエステル塩酸塩(697mg、4.99mmol)、およびHOBt(675mg、4.99mmol)のDMF(25mL)溶液に、EDCI(957mg、4.99mmol)およびトリエチルアミン(1.40mL、9.99mmol)を0℃で添加し、反応混合物をRTで24時間撹拌した。高真空ポンプを用いてDMFを除去し、油状クルード生成物をEtOAc(50mL)、および飽和NaHCO
3水溶液(50mL)で希釈した。水層をEtOAc(2×50mL)でさらに抽出した。合わせた有機層をブライン(100mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して白色クルード物質を得た。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc:Hex=2:1)により標記化合物(1.314g、94.5%)を得た;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 1.26 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 2.92 (dd, J = 14.8, 10.8 Hz, 2H), 3.08 (dd, J = 14.8, 3.8 Hz, 2H), 3.86 (dd, J = 17.6, 5.2 Hz, 2H), 4.13 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 4.18 (q, J = 7.2 Hz, 4H), 4.95 (m, 2H), 5.53 (d, J = 9.2 Hz, 2H);
13C NMR (175 MHz, CDCl
3): δ 14.3, 28.4, 41.2, 54.7, 61.5, 80.5, 156.0, 169.4, 171.0.
【0095】
【化19】
L-シスチニルジグリシンジエチルエステル二塩酸塩。N,N'-ジ-Boc-L-シスチニルジグリシンジエチルエステル(1.2g、1.97mmol)を含む丸底フラスコに、ジオキサン(14mL)中の4M HClを0℃で添加し、さらにRTで45分間撹拌した。溶媒を回転蒸発器を用いてフードの下で除去し、クルード物質を高真空ポンプを用いて完全に乾燥させ、標記化合物(942mg、99%)を得た;
1H NMR (400 MHz, MeOH-d
4): δ 1.28 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 3.14 (dd, J = 14.4, 8.8 Hz, 2H), 3.52 (dd, J = 8.8, 4.8 Hz, 2H);
13C NMR (175 MHz, MeOH-d
4): δ 14.6, 39.0, 42.1, 52.6, 62.6, 169.2, 171.0.
【0096】
【化20】
N,N'-ジ-Fmoc-L-グルタチオンジスルフィドジ-tert-ブチルエステルジエチルエステル。L-シスチニルジグリシンジエチルエステル二塩酸塩(700mg、1.45mmol)、およびN-Fmoc-L-グルタミン酸α-tert-ブチルエステル(1.417g、3.33mmol)のDMF(25mL)溶液に、ジイソプロピルアミン(656μL、3.76mmol)、およびHATU(1.431g、3.76mmol)をRTで添加した。RTで6時間撹拌した後、追加量のHATU(275mg、0.124mmol)およびジイソプロピルアミン(126μL、0.124mmol)を反応混合物に添加した。RTで15時間さらに撹拌した後、高真空ポンプを用いてDMFを除去した。クルード物質をCH
2Cl
2(120mL)、および飽和NaHCO
3水溶液(120mL)で希釈し、水層をEtOAc(2×100mL)でさらに抽出した。合わせた有機層をブライン(150mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮してクルード物質を得た。第1カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH
2Cl
2:MeOH=15:1)からの所望の生成物を含む画分を合わせ、第2カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、CH
2Cl
2:EtOAc:MeOH=20:2:1)により標記化合物(1.669g、94.1%)を得た;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 1.22 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.45 (s, 18H), 1.97-2.15 (m, 4H), 2.32-2.44 (m, 4H), 2.89-3.01 (m, 4H), 3.94 (d, J = 17.6 Hz, 2H), 4.10-4.24 (m, 8H), 4.33-4.43 (m, 6H), 5.53 (m, 2H), 6.41 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.17 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 7.27 (m, 2H), 7.38 (t, J= 7.6, 4H), 7.59 (d, J = 6.8 Hz, 4H), 7.74 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 8.38 (s, 2H);
13C NMR (175 MHz, CDCl
3): δ 14.2, 28.2, 31.7, 41.8, 45.8, 47.3, 53.1, 54.6, 61.9, 67.3, 81.1, 120.1, 125.3, 127.1, 127.9, 141.4, 143.9, 144.1, 156.6, 169.9, 170.1, 172.4, 172.7. HRMS (ESI) m/z 1225.4807 (C
62H
76N
6O
16S
2[M
+ H]
+の計算値: 1225.4832).
【0097】
【化21】
N,N'-ジ-Fmoc-L-グルタチオンジスルフィドジエチルエステル。N,N'-ジ-Fmoc-L-グルタチオンジスルフィドジ-tert-ブチルエステルジエチルエステル(620mg、0.51mmol)のCH
2Cl
2(7.0mL)溶液に、TFA(7.0mL)およびトリエチルシラン(178μL、1.11mmol)を0℃で添加し、RTで3時間撹拌した。溶媒を回転蒸発器を用いてフード下で除去し、クルード物質をCH
2Cl
2でさらに乾燥させた。白色クルード物質をEtOAc(10mL)で懸濁し、濾過して標記化合物(544mg、97%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMF-d
7): δ 1.19 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.85-2.23 (m, 4H), 2.57 (t, J = 2.0 Hz, 4H), 3.10 (dd, J = 9.4, 14.0 Hz, 2H), 3.30 (dd, J = 4.4, 13.6 Hz, 2H), 3.90 (d, J = 5.2 Hz, 4H), 4.06-4.12 (m, 4H), 4.25-4.35 (m, 8H), 4.87 (m, 2H), 7.35 (t, J= 7.6 Hz, 4H), 7.44 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 7.71 (d, J = 7.2, 2H), 7.77 (t, J = 8.4 Hz, 4H), 7.93 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 8.39 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 8.44 (d, J = 8.0 Hz, 2H);
13C NMR (175 MHz, DMF-d
7): δ 14.8, 28.7, 31.3, 41.7, 42.2, 48.1, 53.5, 55.9, 61.7, 67.6, 121.2, 126.6, 128.3, 128.8, 142.2, 145.2, 145.4, 157.8, 170.7, 171.7, 173.2, 175.2. HRMS (ESI) m/z 1113.3583 (C
54H
60N
6O
16S
2[M
+ H]
+の計算値: 1113.3580).
【0098】
【化22】
ビス-トリフェニルホスホニウムヘキシルアミド-N,N'-ジ-Fmoc-L-グルタチオンジスルフィドジエチルエステルジブロミド。N,N'-ジ-Fmoc-L-グルタチオンジスルフィドジエチルエステル(200mg、0.18mmol)のDMF(7.0mL)溶液に、DMF(7mL)中の6-(トリフェニルホスホニウム)ヘキサン-1-アミンクロリド塩酸塩
1(203mg、0.47mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(81μL、0.47mmol)、およびHATU(178mg、0.47mmol)をRTで添加し、さらにRTで6時間撹拌した。高真空ポンプを使用して溶媒を除去し、クルード物質をCH
2Cl
2(150mL)に溶解した。有機層を飽和NaHCO
3水溶液(150mL)、20%NaBr水溶液で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、減圧濃縮してクルード物質を得た。油状クルード物質を最小量のCH
2Cl
2に溶解し、EtOAcでトリチュレートし、白色沈殿物を濾過して、標記化合物(261mg、74%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMF-d
7): δ 1.17 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.33-1.47 (m, 8H), 1.52-1.59 (m, 4H), 1.65-1.75 (m, 4H), 1.97-2.17 (m, 4H), 2.36 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 3.06-3.16 (m, 6H), 3.30 (dd, J = 13.6, 4.4 Hz, 2H), 3.63-3.71 (m, 4H), 3.96 (d, J = 5.6 Hz, 4H), 4.08 (q, J = 7.2 Hz, 4H), 4.22-4.32 (m, 8H), 4.83-4.87 (m, 2H), 7.34 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 7.44 (t, J= 7.2 Hz, 4H), 7.73-7.85 (m, 20H), 7.92-7.98 (m, 20H), 8.42 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 8.47 (d, J = 8.0 Hz, 2H);
13C NMR (175 MHz, DMF-d
7): δ 14.8, 21.9 (d, J = 50.8 Hz, -CH
2-P), 23.2, 27.0, 29.4, 33.1, 39.8, 41.9, 42.2, 48.1, 53.5 (d, J = 8.8 Hz, -CH
2-CH
2-P), 56.2 (d, J = 10.5 Hz, -CH
2-CH
2-CH
2-P), 61.7, 67.6, 120.0 (d, J = 84.0 Hz, Ph
3P ipso C), 121.2, 126.5 (d, J = 10.5 Hz, Ph
3P ortho/meta), 128.3, 128.8, 131.4 (d, J = 12.3 Hz, Ph
3P ortho/meta), 134.9 (d, J = 10.5 Hz, Ph
3P para), 136.1, 142.2, 145.2 (d, J = 42.0 Hz), 157.7, 170.7, 171.8, 173.0, 173.3. HRMS (ESI) m/z 900.3662 (C
102H
114N
8 O
14 P
2 S
2[M
]
2+の計算値: 900.3680).
【0099】
【化23】
ビス-トリフェニルホスホニウムヘキシルアミド-L-グルタチオンジスルフィドジエチルエステルジブロミド。ビス-トリフェニルホスホニウムヘキシルアミド-N,N'-ジ-Fmoc-L-グルタチオンジスルフィドジエチルエステルジブロミド(100mg、50.97μmol)のDMF(4.5mL)溶液に、ピペリジン(0.5ml)を添加し、RTで15分間撹拌した。高真空ポンプを用いて溶媒を除去し、クルード物質をEt
2Oで洗浄した。クルード物質を最小量のMeOHに溶解し、Et
2Oでトリチュレートし、白色沈殿物を濾過して、標記化合物(53mg、77%)を得た。
1H NMR (400 MHz, MeOH-d
4): δ 1.24 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 1.33-1.39 (m, 4H), 1.42-1.47 (m, 4H), 1.53-1.60 (m, 4H), 1.63-1.70 (m, 4H), 1.84-2.01 (m, 4H), 2.28 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 2.99 (dd, J = 14.0, 9.2 Hz, 2H), 3.13 (t, J = 6.8 Hz, 4H), 3.23 (dd, J = 14.0, 4.8 Hz, 2H), 3.37-3.45 (m, 4H), 3.94 (d, J = 4.8 Hz, 4H), 4.14 (q, J = 7.2 Hz, 4H), 7.73-7.91 (m, 30H);
13C NMR (175 MHz, MeOH-d
4): δ 14.5, 22.5 (d, J = 50.75 Hz, -CH
2-P), 23.4, 27.1, 30.1, 31.1 (d, J = 15.75 Hz, -CH
2-CH
2-P), 32.2, 33.2, 40.1, 42.0, 42.2, 53.7, 54.0, 55.5, 62.4, 119.9 (d, J = 85.8 Hz, Ph
3P ipso C), 131.5 (d, J = 12.5 Hz, Ph
3P ortho/meta), 134.8 (d, J = 8.8 Hz, Ph
3P ortho/meta), 136.3, 171.7, 172.8, 175.2, 176.9. HRMS (ESI) m/z 678.2978 (C
72H
94N
8O
10 P
2 S
2 [M
]
2+の計算値: 678. 2999)
【0100】
(肝細胞への薬物誘発損傷に対するmitoGSHの効果)
老齢ラットから単離された肝細胞は、若齢成体動物よりも60%少ないミトコンドリアGSHを有する。この実施例では、GSH依存性機構がその解毒に関与し得るため、メナジオンを酸化還元サイクラーとして用いて、肝細胞中のミトコンドリアにストレスをかける。老齢肝細胞は、若齢動物と比較してメナジオンに対して顕著に感受性が高い(LC50若齢=~500μM;LC50老齢=300μM)。メナジオンに対する受攻性の増加は、GSH合成能力の低下に起因するGSHの喪失に関連している。
【0101】
細胞を単離した後、300μMのメナジオンを添加する前にTPP-GSH濃度を30分かけて増加させて肝細胞を処理した(
図2および
図3を参照、GSHが枯渇したミトコンドリアをTPP-GSHが30分以内に補充することを示す)。メナジオン単独投与は陽性対照として機能した。未処理の肝細胞における生存率も2時間にわたって測定した。1μMのTPP前処理は保護的ではなかったが、10および100μMのTPP-GSHは高齢ラットの肝細胞のメナジオンへの感受性を低下させた。トリフェニルホスホニウム単独では、生存率に影響を与えなかった。
図7および8は、老齢ラットの肝細胞が、若齢動物の細胞のほぼ2倍メナジオン感受性であることを立証する結果を提供する(LC
50=老齢では232μM対若齢では401μM、n=6、p<0.05)。このより高い受攻性は、年齢に伴うミトコンドリアGSHの喪失と一致する(
図7、「A」)。しかし、メナジオンの30分前に50μMのTPP-GSHで細胞を前処理すると、肝毒性を防ぐ(
図8)。TPP-GSH処理後のLC
50は、若齢ラット(n=1)の未処理細胞と変わらない。
【0102】
別個の実験では、単離されたミトコンドリアは脱共役されず、電子輸送も、TPP-GSHでの処理によって阻害されなかった。8ヶ月齢の雄Fischer344ラット腎臓ミトコンドリアに対する呼吸調節率(RCR)は、溶媒対照(平均2.6)、10μMTPP-GSH処理(2.8)、および100μMTPP-GSH処理(2.3)の間で有意差はなかった。
図4によって提供される情報は、ミトコンドリア(黒四角で表される)および細胞質ゾル(「●」(丸)で表される)GSHに対する3HPの影響を示す。
図5は、若齢ラット肝臓におけるミトコンドリアGSHレベルに対する3HPの影響対若齢および老齢ラット肝臓におけるミトコンドリアGSHを示す。さらに、
図6は、3HP依存性GSH喪失が、(1)基礎呼吸、(2)ATP代謝回転、(3)プロトン流出、または(4)非ミトコンドリア呼吸を変化させないことを示している;しかしながら、3HP処理のレベルが高くなるにつれて呼吸機能が失われ、ミトコンドリアGSHの喪失により、細胞はもはや増加するエネルギー需要に応答できなくなることを示している。
【0103】
(動物におけるmitoGSHの効果)
7ヵ月齢の雌の非トランスジェニックマウス3匹(それぞれ約30g)に、3.8mg/kgのTPP-GSSGを100μL/マウスで腹腔内注射した。TPP-GSSGを最初にDMFに可溶化し、その後注射用にミリポア水で希釈して5.3%(v/v)ジメチルホルムアミドにした。全てのマウスは健全で、48時間活性であり、有害作用は認められなかった。全てのマウスは、48時間にわたって体重が増加した(0.1g~2.3g)。上腕切断により採血し、遠沈させて血漿を採取し、小動物の肝臓化学プロファイルについてOSU獣医診断研究所に送付した。肝臓の損傷または異常は検出されなかった。
【0104】
(VI.いくつかの実施形態の概要)
本明細書に記載の式1Aを満たす構造を有する化合物の実施形態が本明細書に開示されており、式中(式1Aに関して)、各Rは、独立して、水素、保護基、またはリンカー-X部位から選択され;Yは酸素または-NR'[R'は水素もしくは保護基である]から選択され;nは0または1であり;化合物は、以下のものではない、または以下のもの以外である:グルタチオン、
(6S,11R)-6-(tert-ブトキシカルボニル)-N,N,N,2,2-ペンタメチル-4,9,12,15-テトラオキソ-11-((トリチルチオ)メチル)-3,16-ジオキサ-5,10,13-トリアザオクタデカン-18-アミニウムブロミド;もしくは
(6S,11R)-6-(tert-ブトキシカルボニル)-11-(メルカプトメチル)-N,N,N,2,2-ペンタメチル-4,9,12,15-テトラオキソ-3,16-ジオキサ-5,10,13-トリアザオクタデカン-18-アミニウムブロミド]。
【0105】
いくつかの実施形態では、nは1である。
【0106】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、nは0であり、化合物は、本明細書に記載の式1Bを満たす構造を有する。
【0107】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、化合物は、本明細書に記載の式1Cまたは1Dを満たす。
【0108】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、保護基は、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、ハロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ハロ脂肪族-アリール、ハロ脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択される。
【0109】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、保護基は、アルキル、アルケニル、またはアルキニル;ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、アルキル-アリール、アルケニル-アリール、アルキニル-アリール、ヘテロアルキル-アリール、ヘテロアルケニル-アリール、ヘテロアルキニル-アリール、ハロアルキル-アリール、ハロアルケニル-アリール、ハロアルキニル-アリール、ヘテロアルキル-ヘテロアリール、ヘテロアルケニル-ヘテロアリール、ヘテロアルキニル-ヘテロアリール、アルキル-ヘテロアリール、アルケニル-ヘテロアリール、アルキニル-ヘテロアリール、ハロアルキル-ヘテロアリール、ハロアルケニル-ヘテロアリール、またはハロアルキニル-ヘテロアリールから選択される。
【0110】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、保護基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、デシル、エチルアミン、フェニル、ナフチル、-(CH2)mPh[mは1~20である]、フルオレニルメチル、シリル-オキシエーテル、トリハロアルキル、ジアリール、アルキルジアリール、またはそれらのエステルから選択される。
【0111】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、シリル-オキシエーテルは、式-[(CH2)nO]m-[(CH2)p]SiRa
3[nは1~10に及び、mは0~10に及び、pは1~10に及ぶ]を有する。
【0112】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、リンカー-X基のリンカーは、カルボニル含有基、アルキレンオキシド、イミドエステルから選択されるか、またはマレイミド、ハロアセチル、もしくはピリジルジスルフィドから生成される。
【0113】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、リンカー-X基は、-C(O)R
cX、-C(R
c
2)
pX-[(CH
2)
2O]
mX、-C(=NH
2
+)NR
cX、-CH
2C(O)NHR
cX、-SR
cX、または
【化24】
[各R
cは、独立して、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択され;各Xは、独立して、-P
+(R
d)
3または-N
+(R
d)
3[各R
dは、独立して、水素、脂肪族、アリール、または脂肪族-アリールから選択される]から選択され;mおよびpの各々は、独立して、1~30である]から選択される。
【0114】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、リンカー-X基は、-C(O)(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(=NH
2
+)N(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-CH
2C(O)NH(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-S(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(O)[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(=NH
2
+)NCH
2[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-CH
2C(O)NH[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-S[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(O)(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-C(=NH
2
+)N(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-CH
2C(O)NH(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-S(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-(CH
2)
3-30(N)
+Me
3Br
-、-C(O)[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-C(=NH
2
+)NCH
2[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-CH
2C(O)NH[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-S[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、
【化25】
から選択される。
【0115】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、化合物は本明細書に記載の式2A~2Dのいずれか1つ以上を満たし、式中(式2A~2Dに関して)、各R1およびR2は、独立して、水素または脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、もしくはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択され;各リンカーは、(1)カルボニル含有基、アルキレンオキシド、イミドエステルから選択されるか、または(2)マレイミド、ハロアセチル、またはピリジルジスルフィドから生成される;各Xは、独立して、-P+(Rd)3または-N+(Rd)3[各Rdは、独立して、水素、脂肪族、アリール、または脂肪族-アリールから選択される]から選択され;nは0または1である。
【0116】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、各R1およびR2は、独立して、メチルまたはエチルから選択されるアルキルである。
【0117】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、各リンカーは、独立して、-C(O)Rc-、-[(CH2)2O]m-、-C(=NH2
+)NRc-、-CH2C(O)NHRc-、-SRc-[各Rcは、独立して、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択される;mは1~30である]から選択される。
【0118】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、Xは、-P+(Ph)3または-N+(Et)3から選択される。
【0119】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、化合物は、本明細書に記載の式3A、3B、4A、4B、5A、5B、6A、または6Bのいずれか1つを満たし、式中(式3A、3B、4A、4B、5A、5B、6A、または6Bに関して)、各R1およびR2は、独立して、水素または脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、もしくはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択され;R3は、水素、保護基、ニトロソ基、またはリンカー-X基から選択され;各mは、独立して、1~30である。
【0120】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、化合物は、本明細書で提供される表1および/または2に列挙される化合物から選択することができる。
【0121】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、化合物は以下のものではない、または以下のもの以外である:
【化26】
【0122】
本明細書に記載の式7~12のいずれか1つ以上を満たす構造を有する化合物の実施形態も本明細書に記載されており、式中(式7~12に関して)、各R'は、独立して、水素または保護基から選択され;各Rは、独立して、(1)カルボニル含有基、アルキレンオキシド、イミドエステルから選択されるリンカー基、または(2)マレイミド、ハロアセチル、またはピリジルジスルフィドから生成されるリンカー基を含むリンカー-X基であり;Xは-P+(Rd)3または-N+(Rd)3[各Rdは、独立して、水素、脂肪族、アリール、または脂肪族-アリールから選択される]から選択される。
【0123】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、リンカー-X基は、-C(O)R
cX、-C(R
c
2)
pX、-[(CH
2)
2O]
mX、-C(=NH
2
+)NR
cX、-CH
2C(O)NHR
cX、-SR
cX、または
【化27】
[各R
cは、独立して、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択され;各mおよびpは、独立して、1~30である]から選択される。
【0124】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、リンカー-X基は、-C(O)(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(=NH
2
+)N(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-CH
2C(O)NH(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-S(CH
2)
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(O)[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(=NH
2
+)NCH
2[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-CH
2C(O)NH[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-S[O(CH
2)
2]
1-30(P)
+Ph
3Br
-、-C(O)(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-C(=NH
2
+)N(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-CH
2C(O)NH(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-S(CH
2)
1-30(N)
+Me
3Br
-、-C(O)[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-C(=NH
2
+)NCH
2[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-CH
2C(O)NH[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、-S[O(CH
2)
2]
1-30(N)
+Me
3Br
-、
【化28】
から選択される。
【0125】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、化合物は、本明細書で提供される表3および/または表4に列挙される化合物から選択される。
【0126】
上記の化合物の実施形態のいずれかまたは全てに記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物の実施形態も、本明細書に記載される。
【0127】
いくつかの実施形態では、組成物の化合物は、以下のものではない、または以下のもの以外である:
【化29】
【0128】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、組成物は、1つ以上の追加の治療剤をさらに含む。
【0129】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、1つ以上の追加の治療剤は、N-アセチルシステイン、ビタミンE、ビタミンC、およびジアセチル-ビス(4-メチルチオセミカルバゾナト)銅IIから選択される。
【0130】
被験体に、治療有効量の上記の実施形態のいずれかまたは全てに記載の化合物および/または医薬組成物を投与する工程を含む方法の実施形態も、本明細書に記載される。
【0131】
特定の実施形態では、化合物および/または組成物の化合物は、以下のものではない、または以下のもの以外である:
【化30】
【0132】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、本方法は、化合物を投与用に製剤化する工程をさらに含む。
【0133】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、被験体はヒトである。
【0134】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、化合物および/または医薬組成物は、グルタチオンレベルの低下もしくは減少に関連する疾患または病状を治療、改善、および/または予防するために使用される。
【0135】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、グルタチオンレベルの低下もしくは減少に関連する疾患または病状は、ミトコンドリアグルタチオンレベルの低下によって引き起こされる。
【0136】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、本方法は、以下を防止するまたは軽減させる:電子伝達鎖(ETC)活性の減衰、ジカルボキシレート輸送のアロステリック阻害、NADH/NAD+酸化還元対からのGSH/GSSG酸化還元ネットワークの脱共役、ETCから発生するオキシダントへのミトコンドリア感受性、薬物および毒素に対する感受性の増強、透過性細孔開口およびプロアポトーシス因子の放出の開始、またはそれらの組み合わせ。
【0137】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、本方法は、神経変性、脳卒中、糖尿病、心血管疾患、がん、筋傷害、筋肉ミオパチー、ウイルス感染、歯周病、血管障害、腎臓疾患、虚血-再灌流傷害、創傷修復の問題、炎症、統合失調症および他の神経心理学的障害、アセトアミノフェン毒性、急性アルコール毒性、慢性アルコール毒性、もしくはそれらの組み合わせを治療、改善、または予防するために使用される。
【0138】
式Aを満たす構造を有する化合物を、酸触媒およびアルコール;標的化部位試薬、カップリング試薬、および塩基;またはそれらの組み合わせにばく露させ、式Bを満たす構造を有する化合物を形成する工程を含む方法も、本明細書に開示される;
[ここで、式Aは、
【化31】
であり、式Bは、
【化32】
であり;および
各Yは、酸素または-NR
b[R
bは水素または保護基である]から選択され;各Rは、独立して、水素または保護基から選択され;各R'は、独立して保護基であり;各リンカー-X基は、独立して、-C(O)R
cX、-C(R
c
2)
pX、-[(CH
2)
2O]
mX、-C(=NH
2
+)NR
cX、-CH
2C(O)NHR
cX、-SR
cX、または
【化33】
[各R
cは、独立して、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択され;各mおよびpは、独立して、1~30である;nは0または1である]から選択される]。
【0139】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、本方法は、式Aを満たす構造を有する前記化合物を、(i)酸触媒およびアルコールならびに(ii)標的化部位試薬、カップリング試薬、および塩基に順次ばく露させる工程を含む。
【0140】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、本方法は、式Aを満たす構造を有する化合物を、酸触媒およびアルコールに最初にばく露させて1つ以上の保護基を含む化合物を形成し、次いで保護された生成物を標的化部位試薬、カップリング試薬、および塩基にばく露させて式Bを満たす構造を有する化合物を形成する工程を含む。
【0141】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、本方法は、式Aを満たす構造を有する化合物を、標的化部位試薬、カップリング試薬、および塩基に最初にばく露させて1つ以上の標的化部位を含む化合物を形成し、次いで生成物を酸触媒およびアルコールにばく露させて式Bを満たす構造を有する化合物を形成する工程を含む。
【0142】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、酸触媒は、塩化チオニル、塩化トシル、または塩化メシルである。
【0143】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、アルコールは、式R'OH[R'は、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択される保護基である]を有する。
【0144】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、標的化部位試薬は、式Y-リンカー-X[リンカー-X基は、-C(O)R
cX、-[(CH
2)
2O]
mX、-C(R
c
2)
pX、-C(=NH
2
+)NR
cX、-CH
2C(O)NHR
cX、-SR
cX、または
【化34】
[各R
cは、独立して、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択され;各Xは、独立して、-P
+(R
d)
3または-N
+(R
d)
3[各R
dは、独立して、水素、脂肪族、アリール、または脂肪族-アリールから選択される]から選択され;各mおよびpは、独立して、1~30である]から選択される]を有する。
【0145】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、カップリング試薬は、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-ヘキサフルオロホスフェート、2-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド・HCl、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブロモ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートから選択される。
【0146】
本明細書に開示される化合物の製造方法の実施形態も本明細書に開示される。そのような方法は、グルタチオンジスルフィドを塩化チオニルおよびメタノールまたはエタノールから選択されるアルコールにばく露して保護されたグルタチオンジスルフィドを形成する工程;保護されたグルタチオンジスルフィドを、(4-カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド・HCl、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジイソプロピルエチルアミン、およびアルコール溶媒にばく露して、構造
【化35】
[Rはメチルまたはエチルである]を有する化合物を形成する工程
を含むことができる。
【0147】
グリシン、システイン、またはグルタミン酸から選択される1つ以上のペプチドを、標的化部位試薬、カップリング試薬、および塩基にばく露させる工程を含む、表3および/または4に記載の化合物を製造するための実施形態も、本明細書に開示される。
【0148】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、標的化部位試薬は、-C(O)R
cX、-[(CH
2)
2O]
mX、-C(R
c
2)
pX、-C(=NH
2
+)NR
cX、-CH
2C(O)NHR
cX、-SR
cX、または
【化36】
[各R
cは、独立して、脂肪族、アリール、ヘテロ脂肪族、脂肪族-アリール、ヘテロアリール、脂肪族-ヘテロアリール、ヘテロ脂肪族-アリール、またはヘテロ脂肪族-ヘテロアリールから選択され;各Xは、独立して、-P
+(R
d)
3または-N
+(R
d)
3[各R
dは、独立して、水素、脂肪族、アリール、または脂肪族-アリールから選択される]から選択され;mおよびpは、独立して、1~30である]から選択されるリンカー-X基を含む。
【0149】
上記の実施形態のいずれかまたは全てにおいて、カップリング試薬は、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-ヘキサフルオロホスフェート、2-(6-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド・HCl、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブロモ-トリピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートから選択される。
【0150】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例示の実施形態は単に本開示の好ましい例であり、本開示の範囲または特許請求される発明を限定するものとして解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、特許請求される発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。本発明者らは、したがって、これらの特許請求の範囲と主旨に含まれる全てを特許請求する。