IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大森機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-集積品の移し替え装置及び移し替え方法 図1
  • 特許-集積品の移し替え装置及び移し替え方法 図2
  • 特許-集積品の移し替え装置及び移し替え方法 図3
  • 特許-集積品の移し替え装置及び移し替え方法 図4
  • 特許-集積品の移し替え装置及び移し替え方法 図5
  • 特許-集積品の移し替え装置及び移し替え方法 図6
  • 特許-集積品の移し替え装置及び移し替え方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】集積品の移し替え装置及び移し替え方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B25J15/06 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020093953
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186926
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206093
【氏名又は名称】大森機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092598
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良平
(72)【発明者】
【氏名】平澤 勝人
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-34825(JP,A)
【文献】特開2011-84332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の箱を集積した集積品を第一位置から第二位置に移し替える集積品の移し替え装置であって、
前記複数の箱をそれぞれ吸着保持する複数の吸引手段を備えた吸着ヘッドと、
前記吸着ヘッドを3次元空間内で移動するロボットアームを備え、
前記第一位置には、前記集積品の、前記複数の箱の重ね方向の一方の面を支える支え部材を設け、
前記吸着ヘッドは、前記第一位置にいる前記集積品の他方の面に接触可能な抑え部材を備え、
前記箱は、胴体部分が膨らんだ状態で前記第一位置に配置され、前記第一位置に位置する前記集積品の一部の箱が、前記吸引手段と正対しない事態を生じる場合があり、
前記吸引手段と正対しない事態を生じるか否かにかかわらず前記集積品の前記他方の面に接触する前記抑え部材が、相対的に前記支え部材に接近することで、前記胴体部分の膨らみを減少或いはなくして隣接する前記箱の間隔を狭め、前記複数の吸引手段が、それぞれ対応する前記箱に正対し、その正対した状態で前記吸引手段による前記箱の吸着保持を行うようにした集積品の移し替え装置。
【請求項2】
複数の箱を集積した集積品を第一位置から第二位置に移し替える集積品の移し替え装置であって、
前記複数の箱をそれぞれ吸着保持する複数の吸引手段を備えた吸着ヘッドと、
前記吸着ヘッドを3次元空間内で移動するロボットアームを備え、
前記第一位置には、前記集積品の、前記複数の箱の重ね方向の一方の面を支える支え部材を設け、
前記吸着ヘッドは、前記第一位置にいる前記集積品の他方の面に接触可能な抑え部材を備え、
前記集積品の前記他方の面に接触する前記抑え部材が、相対的に前記支え部材に接近することで、前記複数の吸引手段が、それぞれ対応する前記箱に正対し、その正対した状態で前記吸引手段による前記箱の吸着保持を行うようにし、
前記抑え部材に向けて接近離反するガイド部材を設け、
前記抑え部材が相対的に前記支え部材に接近している際には前記ガイド部材は前記集積品に非接触の状態を保つようにし、前記吸引手段が、前記箱を吸引した状態で前記ガイド部材が前記抑え部材に向けて接近移動し、前記集積品に接触するようにした集積品の移し替え装置。
【請求項3】
前記抑え部材に向けて接近した前記ガイド部材は、前記集積品に接触するが、前記集積品を加圧しない位置で接近移動を停止するようにした請求項2に記載の集積品の移し替え装置。
【請求項4】
前記ロボットアームの動きに伴い、前記抑え部材が移動し、相対的に前記支え部材に接近するようにした請求項1から3のいずれか1項に記載の集積品の移し替え装置。
【請求項5】
前記抑え部材が前記支え部材に相対的に接近移動する際は、前記吸引手段は前記箱に非接触にし、前記正対した状態で前記吸引手段が前記箱に接触し吸引を行う請求項1から4のいずれか1項に記載の集積品の移し替え装置。
【請求項6】
前記ロボットアームの動きにより前記吸引手段が前記箱に向けて前進移動し、前記非接触の状態から接触した状態に遷移するようにした請求項5に記載の集積品の移し替え装置。
【請求項7】
前記複数の吸引手段は、前記箱を集積する方向に沿って配置し、その複数の吸引手段の配置方向の延長線上に前記抑え部材を配置した請求項1から6のいずれか1項に記載の集積品の移し替え装置。
【請求項8】
複数の箱を集積した集積品を第一位置から第二位置に移し替える集積品の移し替え方法であって、
前記箱は、胴体部分が膨らんだ状態で前記第一位置に配置され、前記第一位置にある前記集積品を、前記複数の箱の重ね方向の一方の面が、前記第一位置側に設けた支え部材に接触した状態にし、
前記複数の箱をそれぞれ吸着保持する複数の吸引手段と、前記集積品の他方の面に接触可能な抑え部材を有する吸着ヘッドを所定位置に移動し、前記抑え部材が前記集積品の他方の面に接触し、前記抑え部材が前記集積品の他方の面に接触した際には、前記集積品の一部の箱が、前記吸引手段と正対しない事態を生じる場合があり、
次いで前記抑え部材が相対的に前記支え部材に接近移動して、前記胴体部分の膨らみを減少或いはなくして前記集積品の前記重ね方向の長さを短くすることで、前記吸引手段と正対しない事態を生じるか否かにかかわらず前記複数の吸引手段がそれぞれ対応する前記箱に正対し、
その正対した状態で前記吸引手段により前記箱を吸引して前記吸着ヘッドに前記集積品を吸着保持し、
その吸着保持した状態で前記吸着ヘッドを前記第二位置に移動し、次いで吸引を解除することで前記集積品を前記第二位置に供給する集積品の移し替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積品の移し替え装置及び移し替え方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の箱を集積した集積品の状態で搬送される当該集積品を、搬送ラインから取り出すとともに、所定位置に移し替えるシステムにおいて、例えば、特許文献1に開示された装置を用いた場合には、以下のように動作することで移し替えができる。例えば、集積品を構成する個々の箱の側面を、それぞれロボットアームの先端に取り付けた吸着ヘッドに備えた複数の吸引手段により吸着保持することで吸着ヘッドに集積品を一括して吸着保持する。そして、その吸着保持した状態のままロボットアームが適宜の軌跡で吸着ヘッドを移動させることで、集積品を搬送ラインから取り出すとともに例えば下流側の搬送ラインなどの所定位置に運ぶ。そして、その所定位置で吸引手段による吸引を解除することで、集積品を所定位置に移し替えることができる。
【0003】
特許文献1に開示された吸着ヘッドは、吸引手段(吸引ノズル)を、集積品を構成する箱の並び方向にその箱の厚さ相当のピッチで配置している。これにより、1つ或いは1組の吸引手段が、接触状態で集積された各箱の側面に正対し、各吸引手段により各箱をしっかりと吸着保持する。
【0004】
よって、上流側の搬送ラインが、例えば特許文献2に開示される集積装置のように集積品を上下方向に移動する縦型のコンベアを用いた場合、左右一対の支持部材で直接支持される箱の上に、所定数の箱が順に積み重なって集積品が形成される。このようなケースでは、吸着ヘッドは、各吸引手段が上下に配置される姿勢で集積品に接近し、各吸引手段が上下に配置される各箱の側面に接触して吸着保持するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-84332号公報
【文献】特許第3778415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、集積品を構成する各箱の形状が、綺麗な直方体ではなく、例えば胴体部分が膨れた太鼓状のようになることがある。すると、上述したように各箱を上下に積み重ねて集積品を構成する場合、直方体の箱を段積したものに比べて膨らみの部分だけ上方に位置する。そして、上側に位置する箱ほど、各箱の膨らみによるズレが積算されて大きくなり、集積品を構成する各箱の配置間隔が、本来の箱の厚さピッチよりも広くなる。
【0007】
すると、上下に配置される各吸引手段が、各箱に正対せずに正しい位置で吸着できないおそれがある。その結果、例えば、箱に対する吸着保持力が弱く、移動中等において箱を落下してまったり、そもそも吸着手段が箱に接触せず吸着できない事態を生じるおそれもある。
【0008】
上記の胴体部分の膨らみは、例えば展開状態のブランクカートン等を適宜折り曲げたり、起こしたりして箱を形成した場合に、元に戻ろうとする力が働き、綺麗に平坦にならず特に広い面が湾曲することがあり、その湾曲する程度は不定である。係る点からも、個々の箱のズレ量はまちまちとなり、ズレ量を考慮した吸引手段の位置調整も困難である。また仮にできたとしても、調整するための機構・制御が複雑となる。
【0009】
上述した課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、本発明は、必ずしも記載した課題の全てを解決できる必要はなく、少なくとも一つの課題が解決できればよい。またこの課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の集積品の移し替え装置は、(1)複数の箱を集積した集積品を第一位置から第二位置に移し替える集積品の移し替え装置であって、前記複数の箱をそれぞれ吸着保持する複数の吸引手段を備えた吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを3次元空間内で移動するロボットアームを備え、前記第一位置には、前記集積品の、前記複数の箱の重ね方向の一方の面を支える支え部材を設け、前記吸着ヘッドは、前記第一位置にいる前記集積品の他方の面に接触可能な抑え部材を備え、前記箱は、胴体部分が膨らんだ状態で前記第一位置に配置され、前記第一位置に位置する前記集積品の一部の箱が、前記吸引手段と正対しない事態を生じる場合があり、前記吸引手段と正対しない事態を生じるか否かにかかわらず前記集積品の前記他方の面に接触する前記抑え部材が、相対的に前記支え部材に接近することで、前記胴体部分の膨らみを減少或いはなくして隣接する前記箱の間隔を狭め、前記複数の吸引手段が、それぞれ対応する前記箱に正対し、その正対した状態で前記吸引手段による前記箱の吸着保持を行うようにした。
(2)複数の箱を集積した集積品を第一位置から第二位置に移し替える集積品の移し替え装置であって、前記複数の箱をそれぞれ吸着保持する複数の吸引手段を備えた吸着ヘッドと、前記吸着ヘッドを3次元空間内で移動するロボットアームを備え、前記第一位置には、前記集積品の、前記複数の箱の重ね方向の一方の面を支える支え部材を設け、前記吸着ヘッドは、前記第一位置にいる前記集積品の他方の面に接触可能な抑え部材を備え、前記集積品の前記他方の面に接触する前記抑え部材が、相対的に前記支え部材に接近することで、前記複数の吸引手段が、それぞれ対応する前記箱に正対し、その正対した状態で前記吸引手段による前記箱の吸着保持を行うようにし、前記抑え部材に向けて接近離反するガイド部材を設け、前記抑え部材が相対的に前記支え部材に接近している際には前記ガイド部材は前記集積品に非接触の状態を保つようにし、前記吸引手段が、前記箱を吸引した状態で前記ガイド部材が前記抑え部材に向けて接近移動し、前記集積品に接触するようにするとよい。
【0011】
例えば集積した箱が膨らむなどして箱の厚さが、設定された正規の厚さよりも増すことがある。そして、このような箱を複数集積すると、個々の箱における増加分が加算され、集積品の集積方向の長さ全体では、その増加分が無視できず、例えば、第一位置に位置する当該集積品の一部の箱が、吸引手段と正対しない事態を生じることがある。このような場合であっても、本発明によれば、ロボットアームの同載により、吸着ヘッドを第一位置付近に移動し、抑え部材が、集積品の他方の面に接触するとともに、相対的に支え部材に接近する。すると、抑え部材は、集積品を移動方向に付勢し、抑え部材と支え部材との間隔が狭まることで例えば各箱の膨らみを減少させたり、なくしたりし、複数の吸引手段が、それぞれ対応する箱に正対する位置関係になる。よって、その状態で吸引手段による吸引を行うことで、各吸引手段がそれぞれ箱を所望の吸引力で吸着保持できる。
【0012】
そして、その吸着保持した状態でロボットアームを動作させることで、吸着ヘッドを第一位置から離反させることで、第一位置から集積品を取り出し、第二位置にて吸着を解除することで、集積品を第二位置に供給し、移し替えが行える。
【0013】
支え部材は、実施形態では支持部材7に対応する。実施形態のように箱を上下に段積した姿勢の集積品の場合には支持するようにしているが、例えば箱を起立させて横並びのように集積した場合には、一方の面に接触し例えば移動を規制するものなどにより実現するとよい。
【0014】
(4)前記ロボットアームの動きに伴い、前記抑え部材が移動し、相対的に前記支え部材に接近するようにするとよい。このようにすると、抑え部材を支え部材に向けて接近移動させるためにロボットアームの動作を利用できるので、別途の駆動源・機構が不要で、吸着ヘッドの構成の簡略化、軽量化、小型化等を図ることができる。
【0015】
(5)前記抑え部材が前記支え部材に相対的に接近移動する際は、前記吸引手段は前記箱に非接触にし、前記正対した状態で前記吸引手段が前記箱に接触し吸引を行うようにするとよい。このようにすると、抑え部材により箱が付勢されて、例えば厚さが縮小したり、変形したりしている際に、吸引手段が箱に接触していないため、当該箱が吸引手段からのストレスを受けず、箱へのダメージを受けることなくスムーズに変形等することができる。
【0016】
(6)前記ロボットアームの動きにより前記吸引手段が前記箱に向けて前進移動し、前記非接触の状態から接触した状態に遷移するようにするとよい。このようにすると、吸引手段の箱に向けて移動させるためにロボットアームの動作を利用できるので、別途の駆動源・機構が不要で、吸着ヘッドの構成の簡略化、軽量化、小型化等を図ることができる。
【0017】
また、前記抑え部材に向けて接近離反するガイド部材を設け、前記抑え部材が相対的に前記支え部材に接近している際には前記ガイド部材は前記集積品に非接触の状態を保つようにし、前記吸引手段が、前記箱を吸引した状態で前記ガイド部材が前記抑え部材に向けて接近移動し、前記集積品に接触するようにした場合には、例えば吸引手段の吸着面が下方を向くように吸着ヘッドを下向きにし、集積品を吊り下げ保持する姿勢にした場合に、集積品の下方が左右に広がろうとすることがあるが、ガイド部材と抑え部材によりかかる広がりを抑制できる。
【0018】
(3)前記抑え部材に向けて接近した前記ガイド部材は、前記集積品に接触するが、前記集積品を加圧しない位置で接近移動を停止するようにするとよい。このようにすると、上述したように集積品を構成する箱の広がりを抑制しつつ、箱に対する過度の加圧がないので箱延いては箱に内蔵される製品への損傷・ダメージ等の発生を抑制できる。
【0019】
(7)前記複数の吸引手段は、前記箱を集積する方向に沿って配置し、その複数の吸引手段の配置方向の延長線上に前記抑え部材を配置するとよい。このようにすると、抑え部材で付勢されて箱の形状、特に集積方向の長さ修正された部分に吸引手段が位置するのでよい。効率よく修正し、吸着保持できるのでよい。
【0020】
(8)本発明に係る集積品の移し替え方法は、複数の箱を集積した集積品を第一位置から第二位置に移し替える集積品の移し替え方法であって、前記箱は、胴体部分が膨らんだ状態で前記第一位置に配置され、前記第一位置にある前記集積品を、前記複数の箱の重ね方向の一方の面が、前記第一位置側に設けた支え部材に接触した状態にし、前記複数の箱をそれぞれ吸着保持する複数の吸引手段と、前記集積品の他方の面に接触可能な抑え部材を有する吸着ヘッドを所定位置に移動し、前記抑え部材が前記集積品の他方の面に接触し、前記抑え部材が前記集積品の他方の面に接触した際には、前記集積品の一部の箱が、前記吸引手段と正対しない事態を生じる場合があり、次いで前記抑え部材が相対的に前記支え部材に接近移動して、前記胴体部分の膨らみを減少或いはなくして前記集積品の前記重ね方向の長さを短くすることで、前記吸引手段と正対しない事態を生じるか否かにかかわらず前記複数の吸引手段がそれぞれ対応する前記箱に正対し、その正対した状態で前記吸引手段により前記箱を吸引して前記吸着ヘッドに前記集積品を吸着保持し、その吸着保持した状態で前記吸着ヘッドを前記第二位置に移動し、次いで吸引を解除することで前記集積品を前記第二位置に供給するとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、仮に箱の形状が膨らんだり、変形したりしてその厚みが増すようなことがあっても、複数の吸引手段を、集積品を構成する各箱に正対させ、吸着保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る集積品の移し替え装置が実装されるシステムの一例を示す正面図である。
図2】その平面図である。
図3】第一搬送コンベアの一例を示す図である。
図4】吸着ヘッドの一例を示す正面図である。
図5】その底面図である。
図6】吸着ヘッドを構成する吸引ノズル、抑え部材、ガイド部材等の一例を示す斜視図である。
図7】作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1図2は、本発明に係る集積品の移し替え装置が実装されるシステムの一例を示す。本形態では、所定数(例えば10個)の箱1を上下に段積した集積品2の状態で下降移動する第一搬送コンベア3と、複数の箱1を起立させて前後に整列させた状態の集積品2を搬送する第二搬送コンベア4と、その第一搬送コンベア3で搬送される集積品2をピックアップし、第二搬送コンベア4上の所定位置に供給する集積品移し替え装置10を備える。箱1は、扁平な略直方体状の外観を有する。
【0025】
第一搬送コンベア3は、例えば図3等に示すように、上下に所定の間隔を置いて配置した一対のプーリ5に掛け渡したエンドレスベルト6の外周面に所定ピッチで支持部材7を取り付けた構成のものを左右に所定間隔を置い配置する。左右のエンドレスベルト6に取り付けた支持部材7は、対向する部材同士が同一水平平面上に位置し、そのエンドレスベルト6は同期して同速度で回転する。これにより、対向する左右の支持部材7が、同一平面上を維持しながら下降移動する。よって、左右一対の支持部材7が、箱1の下面の左右両側縁を支持した状態で下降移動する、当該支持された箱1も下降移動する。
【0026】
この第一搬送コンベア3の上方所定位置にて、図示省略する供給手段により、箱1を順次段積供給する。これにより、供給手段は、最上方に位置し、箱1を受けていない支持部材7の上に箱1を供給後、直前に供給した箱1の上に次の箱を置くことを所定回数繰り返す。その結果、支持部材7の上には、所定数(例えば10個)の箱1を集積した集積品2が置かれ、支持部材7の下降移動に伴い集積品2も下降移動する。
【0027】
さらに、各エンドレスベルト6に取り付けた支持部材7の配置ピッチは、段積・集積する箱1の個数分の高さよりも長くする。これにより、支持部材7で支持される集積品2の上端面と、その上の支持部材7で支持される集積品2の下端面との間には所定の空間が確保される。
【0028】
また、図示省略するが、第一搬送コンベア3の集積品2の取り出し位置の奥側には、所定のストッパー部材を配し、例えば前方側から当該集積品2を後方に向けて付勢力を与えた場合には、集積品2がストッパー部材に接触し、集積品2の後退移動を抑止するようにするとよい。
【0029】
第二搬送コンベア4は、バケットコンベアであり、例えば搬送面を構成するエンドレスベルト8の表面の適宜位置に、壁部9を設け、前後の壁部9間の空間が集積品2を収納するバケットを構成する。このバケット内に、集積品2を各箱1が起立した状態でセットし、その状態で搬送する。
【0030】
集積品移し替え装置10は、ロボット本体により動作する多関節のロボットアーム12と、ロボットアーム12の先端に取り付けた吸着ヘッド15等を備える。ロボット本体は、ロボットアーム12を動作させ、その先端に取り付けた吸着ヘッド15を、3次元空間内を任意の軌跡等で移動させ、第一搬送コンベア3側の所定位置と、第二搬送コンベア4上の所定位置との間で往復するように制御する。
【0031】
吸着ヘッド15は、第一搬送コンベア3により搬送される集積品2を構成する各箱1をそれぞれ吸着保持するもので、より具体的には上下に段積された各箱1の露出する側面にそれぞれ吸引ノズルを接触させて吸着保持する機能を有する。具体的な構成は、例えば、図4図6等に示すようにするとよい。
【0032】
平板状のベース部材21の一面側に、長手方向に沿って10組の吸引ノズル22を備える。各組を構成する吸引ノズル22は、それぞれ2個ずつ有し、ベース部材21の長手方向に対して直交する方向の略同一直線上に位置させる。そして、10組の吸引ノズル22は、長手方向に沿って、箱1の高さ(集積品2を構成する重ね方向の長さ)相当のピッチで配置する。
【0033】
本形態では、ベース部材21に、厚さ方向に貫通するスリット21aを、長手方向に沿って平行に2本設ける。そして、このスリット21a内に挿入するボルト・ねじ等により、吸引ノズル22を長手方向の所定位置に固定する。また、例えばねじ等を緩めることで、吸引ノズル22の長手方向の位置を調整可能にするとよい。
【0034】
ベース部材21の反対面側には、ボックス部23を設ける。そのボックス部23内には、例えば吸引ノズル22と図外の吸引ポンプ等と接続する配管等を配置する。このボックス部23のベース部材21と対向する面を、ロボットアーム12の先端に接続し、一体化する。これにより、ロボットアーム12の動きに伴い、吸着ヘッド15の姿勢・向き、位置が変位する。
【0035】
一方、ベース部材21の長手方向の一方端部には、吸引ノズル22を取り付けた一面側に、抑え部材25を取り付ける。この抑え部材25は、円柱状の棒状体から構成し、図4等に示すように、吸引ノズル22と同様にベース部材21の一側面に対して直交する方向に延びるように連結する。さらに、図6等に示すように、抑え部材25は、吸引ノズル22よりも長くし、抑え部材25の先端位置を、ベース部材21を基準にして吸引ノズル22よりも前方に突出するように配置する。
【0036】
さらに、図5図6等に示すように、抑え部材25は、所定の間隔を置いて2本配置する。この2本の抑え部材25は、1組の吸引ノズル22と同様に、ベース部材21の長手方向に対して直交する方向の略同一直線上に配置する。さらにその離反する間隔は、1組の吸引ノズル22の間隔と等しくし、各抑え部材25は、それぞれ10組の吸引ノズル22と略同一直線上に配置する。すなわち、2本の抑え部材25の一方が、各組の一方側の吸引ノズル22と同一直線上に位置し、他方の抑え部材25が、各組の他側の吸引ノズル22と同一直線上に位置する。
【0037】
また、これら2本の抑え部材25のベース部材21の連結は、例えば図6等に示すように、ベース部材21の一側面に、ボルト,ねじ等の締結具等により固定した細長な矩形状の連結部材26の両端に、それぞれ抑え部材25を取り付けることで行う。
【0038】
このように、本実施形態ではベース部材21に対して吸引ノズル22並びに抑え部材25が連結されて一体化している。よって、ロボットアーム12の動きに合わせて、10本の吸引ノズル22と2本の抑え部材25は一体となって所定方向に移動する。
【0039】
さらに本実施形態では、吸引ノズル22を挟んで抑え部材25と対向するように、ガイド部材27を配置する。このガイド部材27は、適宜位置を折り曲げた板状部材から構成し、抑え部材25に対して接近離反移動可能に配置する。すなわち、ガイド部材27は、この接近離反移動は、ボックス部23に内蔵されたシリンダの駆動を受けて、往復直線運動をする。また、ガイド部材27の基端側には一対のガイドロッド28を取付ける。このガイドロッド28は、例えばボックス部23内に設けたガイド筒部29に挿入し、上述したシリンダの駆動により往復移動するガイド部材27が安定した姿勢を維持しながら直線運動するようにする。
【0040】
そして、ガイド部材27が抑え部材25から離反した待機位置にある場合、ガイド部材27と抑え部材25間の距離は、集積品2の全体の高さより広くする。より具体的には、個々の箱1に膨らみがある状態で段積みされたときの高さよりも広くする。一方、ガイド部材27が抑え部材25に接近した動作位置にある場合、ガイド部材27と抑え部材25間の距離は、膨らみがない状態の箱1が段積みされた集積品2の全体の高さと等しくする。
【0041】
上述した構成において、吸着ヘッド15を用いた第一搬送コンベア3からの集積品2の吸着取り出し処理は、以下のように行うとよい。まずロボットアーム12の動作により、図1等に示すように吸着ヘッド15を、第一搬送コンベア3で搬送される所定の集積品2の前に移動する。次いで、吸着ヘッド15を集積品2に向けて前進移動させ、抑え部材25をピックアップ対象の集積品2と、その一つ上にある集積品2の間の空間内に挿入し、図7(a-1),(a-2)に示すように、抑え部材25を集積品2の上面(最上方の箱1の上面)に接触させる。
【0042】
このように抑え部材25が上下の集積品の間に進入したときには、吸引ノズル22の先端の吸盤部と箱1は非接触で所定のクリアランスを保った状態にする。そして、このように抑え部材25が上下の集積品2の間に挿入したときには、各吸引ノズル22と箱1の相対位置はズレていて、正対しない。
【0043】
次いで、そのクリアランスを保った状態のまま、第一搬送コンベア3の搬送速度よりも若干速い速度で吸着ヘッド15を下降移動する。これにより、抑え部材25と、ピックアップ対象の集積品2を保持している支持部材7との間隔が狭くなり、箱1に対して下方への付勢力を与え、箱1の膨らみを解消し、各箱1が直方体の状態で綺麗に整列した段積した状態となる。これにより、複数の箱1の配置ピッチと、複数の吸引ノズル22の配置ピッチが等しくなり、箱1と吸引ノズル22の位置が正対する(図7(b-1),(b-2)参照)。
【0044】
このように、箱1と吸引ノズル22の位置が正対したならば、吸着ヘッド15を集積品2に向けて前進移動し、各吸引ノズル22の先端の吸盤部を、それぞれ箱1の側面に接触させるとともに、吸引ノズル22による吸引を行う(図7(c)参照)。これにより、各吸引ノズル22が、それぞれ対向する箱1を吸着保持する。そして各吸引ノズル22が、各箱1に対して正しい位置に位置しているため、所望の吸引力で箱1を吸着することができる。また、本実施形態では、第一搬送コンベア3の集積品2の取り出し位置の奥側にストッパー部材を配置したので、吸着ヘッド15が前進移動し、各吸引ノズル22の先端の吸盤部がそれぞれ箱1の側面に接触して後方に付勢した際に、吸引ノズル22とストッパー部材との間で挟み込みしっかり吸着保持することができる。
【0045】
次いで、ガイド部材27が上昇移動し、ガイド部材27がピックアップ対象の集積品2の下面に接触する(図7(d)参照)。その後、ロボットアーム12が動作し、吸着ヘッド15を後退させ、第一搬送コンベア3から集積品2を取り出す。そして、ロボットアーム12が駆動し、所定の軌跡で吸着ヘッド15を移動し、第二搬送コンベア4の上方に位置させる。この吸着ヘッド15の移動中或いは、第二搬送コンベア4の上方に位置させた状態で、吸着ヘッド15の姿勢を90度変換し、下向きに変位する。つまり、吸引ノズル22の先端が下方を向き、各箱1を吸引ノズル22に吊り下げ保持する。上述したように、各吸引ノズル22が、箱1を所望の吸引力で吸着保持しているため、このように吊り下げ保持しても、箱1が落下することなく、第二搬送コンベア4上に位置させることができる。
【0046】
また、このように箱1を吊り下げ保持した場合、箱1が左右に広がろうとする力が働くことがあるが、本実施形態では、抑え部材25とガイド部材27で、集積品2を左右両側から挟み込んでいるため、左右に広がるのを抑制する。よって、集積品2は、各箱1が膨らむことなく、さらに、左右に広がることも無く、所望のサイズのまま第一搬送コンベア3からピックアップし、第二搬送コンベア4の前後の壁部9間のバケット内にスムーズに挿入することができる。
【0047】
ガイド部材27と抑え部材25でしっかり箱1を挟み込んで把持するようにすると、箱1内の製品が破損・損傷するおそれもあるが、本形態では、箱の保持は吸引ノズルの吸引力で行い、ガイド部材27は箱1に接触するが抑え込まないようにしたため、箱1内の製品が破損等しない。
【0048】
なお、箱1内の製品が損傷等のおそれがない場合には、抑え部材25とガイド部材27で箱1を所定の力で把持するようにしてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、縦型の第一搬送コンベア3で搬送される箱が上下に段積された集積品を取り出し、第二搬送コンベアに各箱を起立させて前後に並んだ状態にして供給するようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、例えば、その逆で、起立したものを吸着して上下に段積した状態にして縦型の搬送コンベアに供給するものに適用してもよい。また、それらのように姿勢を変えるものに限ら、上下に段積された集積品の姿勢のまま移し替えたり、起立した箱を横並びにした集積品の姿勢のまま移し替えるようにしたりするものにも適用できる。さらに、取り出し並びに供給の一方または双方が搬送コンベアでなくてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、第一搬送コンベア3が下降移動中に、その移動に併せて吸着ヘッド15も所定速度で下降移動して例えば箱1の膨らみをなくし吸引ノズル22を箱1に正対した状態で吸着保持するようにしたが、本発明はこれに限ることはなく、例えば第一搬送コンベア3が一時停止中の状態で、抑え部材25を所定距離だけ下降移動するようにしてもよい。但し、箱1膨らみが小さいと下降移動する距離も短くなるので、ロボットアーム12による移動制御が精度良く行えない場合がある。そこで、実施形態のように、第一搬送コンベア3により移動中の集積品2に対して吸着ヘッド15も移動させてピックアップするとよい。
【0051】
係る理由から、集積品をピックアップする第一位置は、搬送コンベア等の集積品を移動させる機能を有し、集積品を移動させながら抑え部材も移動させて箱の形状を整え、箱と吸引ノズルを正対させるようにするとよい。
【0052】
集積品2を保持した吸着ヘッド15を後退させて第一搬送コンベア3から集積品2を取り出す際は、例えば第一搬送コンベア3が一時停止したまま真っ直ぐ後退移動するようにしたが、例えば、第一搬送コンベア3の一時停止を解除して支持部材7を下降移動したり、吸着ヘッド15を後退させる際に上方に移動したりするなどして、支持部材7と吸着ヘッド15とを相対的に移動することで、集積品2と支持部材7とが離間した状態で行うとよい。
【0053】
上述した実施形態では、多軸ロボットを用い、吸着ヘッド全体を早めに下降移動した後で前進移動することで簡単にできる。このようにロボットアームの動きにより、抑え部材の下降移動や吸引ノズルの箱に向けての前進移動を行うようにしたが、別途所定の駆動源や駆動機構を設けてもよい。但し、実施形態のようにロボットアームの動きを利用する方が、簡単な構成で行えるので良い。
【0054】
以上、本発明の様々な側面を実施形態並びに変形例を用いて説明してきたが、これらの実施形態や説明は、本発明の範囲を制限する目的でなされたものではなく、本発明の理解に資するために提供されたものであることを付言しておく。本発明の範囲は、明細書に明示的に説明された構成や製法に限定されるものではなく、本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも、その範囲に含むものである。本発明のうち、特許を受けようとする構成を、添付の特許請求の範囲に特定したが、現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても、本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求する可能性があることを、念のために申し述べる。
【符号の説明】
【0055】
1 :箱
2 :集積品
3 :第一搬送コンベア
4 :第二搬送コンベア
7 :支持部材(支え部材)
10 :集積品の移し替え装置
12 :ロボットアーム
15 :吸着ヘッド
22 :吸引ノズル(吸引手段)
25 :抑え部材
27 :ガイド部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7