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  • 特許-エンジンのガス燃料供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】エンジンのガス燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20240507BHJP
   F02B 43/00 20060101ALI20240507BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F02M21/02 301B
F02B43/00 A
F02M35/10 301M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020098648
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191952
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】會澤 修太郎
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
(72)【発明者】
【氏名】福岡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】村上 努
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-021642(JP,A)
【文献】特開2018-021510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0085322(US,A1)
【文献】特開平08-284703(JP,A)
【文献】特開2003-027989(JP,A)
【文献】特開2002-221037(JP,A)
【文献】実開昭59-139571(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
F02B 43/00
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ボンベに充填・貯留した高圧のガス燃料を減圧調整するレギュレータと、吸気通路のスロットルよりも下流位置に前記レギュレータにより減圧したガス燃料を送出するミキサーを備えているとともに排気再循環装置から送出された排気ガスを前記吸気通路の前記スロットルと前記ミキサーとの間に配置した排気ガス導入口から導入して前記ガス燃料に混合する方式のエンジンシステムを備えたエンジンのガス燃料供給装置において、前記レギュレータの受圧部背面に導入するための吸気管圧力導入管の圧力取り出し口を前記吸気通路における前記排気ガス導入口よりも上流で前記スロットルよりも下流の箇所に接続したことを特徴とするガス燃料供給装置。
【請求項2】
燃料ボンベに充填・貯留した高圧のガス燃料を減圧調整するレギュレータと、上流にターボチャージャーを備えた吸気通路のスロットルよりも下流位置に前記レギュレータにより減圧したガス燃料を送出するミキサーを備えているとともに排気再循環装置から送出された排気ガスを前記吸気通路のスロットルとミキサーとの間に配置した排気ガス導入口から導入して前記ガス燃料に混合する方式のエンジンシステムを備えたエンジンのガス燃料供給装置において、前記レギュレータの受圧部背面に導入するための吸気管圧力導入管の圧力取り出し口を前記吸気通路における前記排気ガス導入口よりも上流で且つ前記スロットルよりも上流の箇所に接続したことを特徴とするガス燃料供給装置。
【請求項3】
前記吸気管圧力導入管の前記圧力取り出し口が、前記吸気通路の上方位置に接続されているとともに前記圧力取り出し口の先端が前記吸気通路内に突出していることを特徴とする請求項1または2記載のガス燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体または高圧気体の状態で貯留しているガス燃料を所定圧力の気体にしてエンジンに供給するガス燃料供給装置に関し、殊に、レギュレータと吸気通路側を接続して吸気管圧力を導入する吸気管圧力導入管を備えたエンジンのガス燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LPGやCNGなどのガス燃料をエンジンに供給するガス燃料供給装置として、例えば図4に示すように燃料ボンベ1に充填・貯留した高圧のガス燃料を、レギュレータ2で所定圧力に減圧調整しながら燃料フィルタ3、インジェクタ4、燃料配管5を介して吸気通路6に配置したミキサー7からエンジン吸気管(インテークマニフォールド)8を経てエンジン9に供給する方式のものが知られている。
【0003】
また、前記吸気通路6の末端側を構成する前記エンジン吸気管8と前記レギュレータ2との間を、吸気管負圧を導入するための吸気管圧力導入管[MAPホース(Manifold Absolute Pressure hоse)]10で接続することで、吸気管負圧を前記レギュレータ2内に導入して利用する技術も例えば特開2002-21642号公報などに記載されている。
【0004】
このように、前記吸気管圧力導入管10を経由させて前記吸気通路6側で生じた吸気管負圧を前記レギュレータ2内に導入することで、前記エンジン9の運転状況に応じて前記レギュレータ2の制御圧力を補正したり、エンジン停止時に前記レギュレータ2内の一次室と二次室との連通を強制閉弁させてガス燃料の流出を防止したりする機能を実現可能なものとしている。
【0005】
しかしながら、前記エンジン吸気管8と前記レギュレータ2を前記吸気管圧力導入管10でそのまま接続した場合、前記吸気通路6側に生じた凝集水等の水分が前記吸気管圧力導入管10内に侵入し、それが抵抗になって負圧の伝達を妨げる原因になる場合があり、侵入した水分が凝固すると前記吸気管圧力導入管10を用いた機能が殆ど発揮されなくなってしまうという難点を有している。
【0006】
このような凝集水の問題は、例えば特開2018-21510号公報にも記載されているように、排気の一部をシリンダ内に環流させる排気再循環(EGR)装置のEGRガスが露点温度以下になりやすいために吸気通路内で凝集水が頻繁に発生することが知られており、図4に示したエンジンシステムのように、EGRクーラー11、EGRバルブ12及びそれらの接続配管による排気再循環装置を備えたものにあっては、前記吸気通路6を介して前記吸気管圧力導入管10内に凝集水が一層侵入しやすい状態となってしまう。
【0007】
尚、図4中、符号13はエンジン排気管、符号14はスロットル、符号15はターボチャージャー、符号16はターボチャージャーの吸気通路、符号17はターボチャージャーの排気通路、符号18はインタークーラーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-21642号公報
【文献】特開2018-21510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、レギュレータが吸気管圧力導入管で吸気通路側に接続されたガス燃料供給装置について、水分が吸気管圧力導入管に侵入してレギュレータへの吸気管圧力の導入が妨げられるのを防止できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためなされた本発明は、燃料ボンベに充填・貯留した高圧のガス燃料を減圧調整するレギュレータと、吸気通路のスロットルよりも下流位置に前記レギュレータにより減圧したガス燃料を送出するミキサーを備えているとともに排気再循環装置から送出された排気ガスを前記吸気通路における前記スロットルと前記ミキサーとの間に配置した排気ガス導入口から導入して前記ガス燃料に混合する方式のエンジンシステムを備えたエンジンのガス燃料供給装置において、前記レギュレータの受圧部背面に導入するための吸気管圧力導入管の圧力取り出し口を前記吸気通路における前記排気ガス導入口よりも上流で前記スロットルよりも下流の箇所に接続したことを特徴とする。
【0011】
また、前記課題を解決するためになされたもう一つの発明は、燃料ボンベに充填・貯留した高圧のガス燃料を減圧調整するレギュレータと、上流にターボチャージャーを備えた吸気通路のスロットルよりも下流位置に前記レギュレータにより減圧したガス燃料を送出するミキサーを備えているとともに排気再循環装置から送出された排気ガスを前記吸気通路における前記スロットルと前記ミキサーとの間に配置した排気ガス導入口から導入して前記ガス燃料に混合する方式のエンジンシステムを備えたエンジンのガス燃料供給装置において、前記レギュレータの受圧部背面に導入するための吸気管圧力導入管の圧力取り出し口を前記吸気通路における前記排気ガス導入口よりも上流で且つ前記スロットルよりも上流の箇所に接続したことを特徴とする。
【0012】
殊に、本発明において、前記吸気管圧力導入管の前記圧力取り出し口が、前記吸気通路
の上方位置に接続されているとともに前記圧力取り出し口の先端が前記吸気通路内に突出している場合には、前記吸気通路の内壁面に滞留している排気凝集水が圧力取り出し口に侵入することを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、吸気通路とレギュレータが吸気管圧力導入管で接続されたガス燃料供給装置において、水分が吸気管圧力導入管に侵入してレギュレータへの吸気管圧力の導入が妨げられることを有効に防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好ましい実施の形態であるガス燃料供給装置の構成を示す配置図である。
図2図1に示した実施の形態における吸気通路への吸気管圧力導入管の圧力取り出し口の接続部を示す一部を切截した拡大部分図である。
図3】本発明における異なる実施の形態のガス燃料供給装置の構成を示す配置図である。
図4】従来の排気再循環装置を備えたガス燃料供給装置の構成を示す配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施の形態であるガス燃料供給装置の構成を示しており、燃料ボンベ1から送出されたLPGやCNGなどの高圧ガス燃料を減圧調整するレギュレータ2と、減圧されて所定圧力の気体となったガス燃料を燃料フィルタ3およびインジェクタ4を介して吸気通路6に送る燃料配管5と、この燃料配管5で送られたガス燃料を空気と混合して前記吸気通路6内に送出するミキサー7を備えている。
【0017】
また、このガス燃料供給装置を備えたエンジンシステムにおいては、エンジン排気管13と前記吸気通路6との間が、EGRクーラー11、EGRバルブ12からなる排気再循環(EGR)装置を備えた配管で接続されており、エンジン9による排気の一部をEGRガスとして前記吸気通路6側に戻しながら循環させるようになっている。
【0018】
更に、前記レギュレータ2の受圧部背面に導入するための吸気管圧力導入管10における圧力取り出し口19を、前記吸気通路6における前記EGRバルブ12からのEGRガスを導入する排気ガス導入口20よりも上流で前記スロットル14よりも下流の箇所に接続して、レギュレータ2内の大気室(図示せず)に吸気管圧力を導入しながら、エンジン9の運転状況に応じて制御圧力の補正を自動的に行うことができる。
【0019】
尚、図面中、符号13はエンジン排気管、符号15はターボチャージャー、符号16はターボチャージャーの吸気通路、符号17はターボチャージャーの排気通路、符号18はインタークーラーである。
【0020】
本実施の形態によると、前記EGRバルブ12から送出された水分を含むEGRガスが前記排気ガス導入口20から前記吸気通路6に入る箇所で凝集水等の水分が生じるが、前記レギュレータ2の受圧部背面に導入するための前記吸気管圧力導入管10の前記圧力取り出し口19を、前記吸気通路6における前記EGRバルブ12からのEGRガスを導入する前記排気ガス導入口20よりも上流の箇所に接続したことにより、前記吸気管圧力導入管10内に水分が侵入することを防止して、前記吸気管圧力導入管10内に水分が侵入することによる前記レギュレータ2内への圧力導入機能が妨げられてしまうことを確実に防止することができる。
【0021】
また、本実施の形態では、図2に示したように、前記吸気管圧力導入管10の前記圧力取り出し口19が前記吸気通路6の上方位置に接続されているとともに前記圧力取り出し口19の先端が前記吸気通路6内に突出している。
【0022】
前記EGRバルブ12から送出された水分を含むEGRガスが前記排気ガス導入口20から前記吸気通路6に入る箇所で生じる凝集水等の水分の多くは前記吸気通路6の下方に溜まるので、凝集水が吸気管圧力導入管10における前記取出口19から侵入することがなく、更に、前記圧力取り出し口19の先端が前記吸気通路6内に突出していることから、前記吸気通路6内壁面に滞留している排気凝集水が前記圧力取り出し口19から前記吸気管圧力導入管20に侵入することも確実に防止することができる。
【0023】
図3は本発明の異なる実施の形態を示すものであり、基本的に前記図1に示した実施の形態と同様であるが、前記レギュレータ2の受圧部背面に導入するための前記吸気管圧力導入管10の前記圧力取り出し口19を前記吸気通路6における前記排気ガス導入口20よりも上流で且つ前記スロットル14よりも上流の箇所に接続した点が異なる。
【0024】
本実施の形態によると、前記図1に示した実施の形態と同様に前記レギュレータ2の受圧部背面に導入するための前記吸気管圧力導入管10の前記圧力取り出し口19を前記吸気通路6における前記排気ガス導入口20よりも上流に接続しただけでなく、前記吸気管圧力導入管10の前記圧力取り出し口19を前記吸気通路6における前記スロットル14の上流に移動したことにより、前記EGRバルブ12から送出された水分を含むEGRガスが前記排気ガス導入口20から前記吸気通路6に入る箇所で凝集水等の水分が前記スロットル14により遮蔽されて、更に前記吸気管圧力導入管10内に水分が侵入することを防止するため、前記吸気管圧力導入管10内に水分が侵入することによる前記レギュレータ2内への圧力導入機能が妨げられてしまうことを、更に確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
燃料ボンベ、2 レギュレータ、3 燃料フィルタ、4 インジェクタ、5 燃料配管、6 吸気通路、7 ミキサー、8 エンジン吸気管、9 エンジン、10 吸気管圧力導入管、11 EGRクーラー、12 EGRバルブ、13 エンジン排気管、14 スロットル、15 ターボチャージャー、16 吸気通路、17 排気通路、18 インタークーラー、19 圧力取り出し口、20 吸気管圧力導入管
図1
図2
図3
図4