(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】耐張装置
(51)【国際特許分類】
H02G 7/20 20060101AFI20240507BHJP
H01B 17/06 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H02G7/20
H01B17/06 B
(21)【出願番号】P 2020148722
(22)【出願日】2020-09-04
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】514183042
【氏名又は名称】TDM株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】高司 顕徳
(72)【発明者】
【氏名】熊林 豊
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直樹
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-004394(JP,A)
【文献】特開2012-161225(JP,A)
【文献】米国特許第04323722(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/00-7/22
H01B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4本以上の架空送電線を鉄塔に引き留めるための耐張装置において、
前記鉄塔側に配置された碍子連と、
前記碍子連よりも前記架空送電線側に該架空送電線ごとに設けられ、それぞれ1本のジャンパ線を保持する、該架空送電線と同じ所定数のジャンパ部材とを備え、
前記所定数のジャンパ部材は、上下方向に離間した複数段に分かれて配置されたものであり、
前記所定数のジャンパ部材のうち
の何れのジャンパ部材であっても、前記架空送電線の延線方向から見て、前記所定数のジャンパ部材のうち自身よりも上段に配置された
全てのジャンパ部材を水平方向に避けた位置に配置されたものであることを特徴とする耐張装置。
【請求項2】
前記所定数のジャンパ部材と前記碍子連との間に配置され、前記架空送電線の弛度を調整するバーニヤ金具を備えたことを特徴とする請求項1記載の耐張装置。
【請求項3】
前記所定数のジャンパ部材は、前記延線方向から見て、鉛直線を基準として線対称に配置されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の耐張装置。
【請求項4】
前記所定数のジャンパ部材は、前記延線方向から見て、等脚台形の各角部に相当する位置に配置されたものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の耐張装置。
【請求項5】
4本以上の架空送電線を鉄塔に引き留めるための耐張装置において、
前記鉄塔側に配置された碍子連と、
前記碍子連よりも前記架空送電線側に該架空送電線ごとに設けられ、それぞれ1本のジャンパ線を保持する、該架空送電線と同じ所定数のジャンパ部材とを備え、
前記所定数のジャンパ部材は、上下方向に離間した複数段に分かれて配置され、全てが同一形状をしたものであり、
前記所定数のジャンパ部材のうち下段に配置されたジャンパ部材は、前記架空送電線の延線方向から見て、前記所定数のジャンパ部材のうち自身よりも上段に配置されたジャンパ部材を水平方向に避けた位置に配置されたものであることを特徴とする耐張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4本以上の架空送電線を鉄塔に引き留めるための耐張装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔間(径間)には多数の架空送電線が架線されている。殆どの架空送電線は、偶数本を一組として多数組が配置され、組ごとに鉄塔に引き留められている。架空送電線の各組は、例えば鉄塔の支持アーム毎に分かれて鉄塔に取り付けられる。これにより、各組どうしは大きく離間して架線されている。一つの組内に属する架空送電線どうしは、架空送電線の延線方向に距離をあけて配置された多数のスペーサによって線径方向に所定間隔を維持して束ねられている。スペーサは、架空送電線の延線方向から見て正多角形の各頂点部分に架空送電線が位置するように架空送電線を把持している。これにより組内に属する架空送電線間の線径方向の最短距離は均一に保たれている。
【0003】
架空送電線と鉄塔の間には架空送電線を鉄塔に引き留めるための耐張装置が配置されている(例えば、特許文献1等参照)。一つの組内に属する複数の架空送電線は、1つの耐張装置によって鉄塔に引き留められている。特許文献1に記載された耐張装置は、鉄塔側に配置された碍子連と、4本の架空送電線をそれぞれ把持する4つのクランプと、各クランプが連結されたバーニヤ金具と、ジャンパ線を保持する4つのジャンパ部材とを備えている。なお、碍子連とバーニヤ金具の間やバーニヤ金具とクランプの間に、クレビス金具などの公知の連結金具が設けられている。以下の説明では、バーニヤ金具と連結金具を総称してバーニヤ金具などと称することがある。バーニヤ金具は、架空送電線の弛度を調整するためのものであり、専用の弛度調整工具を用いることで架空送電線の延線方向の長さを変更することが可能なものである。各ジャンパ部材は、ジャンパ線を保持するためのものであり、各クランプそれぞれに固定されている。この耐張装置では、架空送電線を束ねるスペーサによって形成された架空送電線どうしの線径方向の間隔と同一の間隔になるようにクランプが配置されている。すなわち、架空送電線の延線方向から見て正四角形の各頂点部分に、クランプ、ジャンパ部材およびバーニヤ金具などが位置するように構成されている。これにより、4つのクランプのうち2つは上段に配置され、残る2つは下段に配置されている。また、ジャンパ部材およびバーニヤ金具なども同様にそれぞれ上段と下段に2つづつ配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された耐張装置では、上段に配置されたジャンパ部材から真下に向かってジャンパ線を垂れ下げると、下段に配置されたジャンパ部材または下段のバーニヤ金具などに、垂れ下がったジャンパ線が接触してしまう。また、接触しなくても、下段に配置されたジャンパ部材または下段に配置されたバーニヤ金具などにジャンパ線が近接しているとコロナ放電が生じてしまう虞がある。これらを回避するため、上段に配置されたジャンパ部材には架空送電線の延線方向から見て水平方向に向かって屈曲した屈曲部が形成されたものが用いられる。屈曲部が形成されたジャンパ部材を用いることで、上段に配置されたジャンパ部材から垂れ下がるジャンパ線は、下段に配置されたクランプまたは下段に配置されたバーニヤ金具などから所定の間隔をあけて垂れ下がっている。一方、下段に配置されたジャンパ部材には、ジャンパ線が真下に垂れ下がるように直線状のものが用いられる。このため、従来の耐張装置では、上段のジャンパ部材と下段のジャンパ部材で異なる形状のものを用意していた。その結果、部品の種類が増加し、耐張装置が高価になってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、安価な耐張装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の耐張装置は、4本以上の架空送電線を鉄塔に引き留めるための耐張装置において、
前記鉄塔側に配置された碍子連と、
前記碍子連よりも前記架空送電線側に該架空送電線ごとに設けられ、それぞれ1本のジャンパ線を保持する、該架空送電線と同じ所定数のジャンパ部材とを備え、
前記所定数のジャンパ部材は、上下方向に離間した複数段に分かれて配置されたものであり、
前記所定数のジャンパ部材のうちの何れのジャンパ部材であっても、前記架空送電線の延線方向から見て、前記所定数のジャンパ部材のうち自身よりも上段に配置された全てのジャンパ部材を水平方向に避けた位置に配置されたものであることを特徴とする。
また、上記目的を解決する本発明の耐張装置は、4本以上の架空送電線を鉄塔に引き留めるための耐張装置において、
前記鉄塔側に配置された碍子連と、
前記碍子連よりも前記架空送電線側に該架空送電線ごとに設けられ、それぞれ1本のジャンパ線を保持する、該架空送電線と同じ所定数のジャンパ部材とを備え、
前記所定数のジャンパ部材は、上下方向に離間した複数段に分かれて配置され、全てが同一形状をしたものであり、
前記所定数のジャンパ部材のうち下段に配置されたジャンパ部材は、前記架空送電線の延線方向から見て、前記所定数のジャンパ部材のうち自身よりも上段に配置されたジャンパ部材を水平方向に避けた位置に配置されたものであることを特徴とする。
また、4本以上の架空送電線を鉄塔に引き留めるための耐張装置において、
前記鉄塔側に配置された碍子連と、
前記碍子連よりも前記架空送電線側に該架空送電線ごとに設けられ、それぞれ1本のジャンパ線を保持する、該架空送電線と同じ所定数のジャンパ部材とを備え、
前記所定数のジャンパ部材は、上下方向に離間した複数段に分かれて配置されたものであり、
前記所定数のジャンパ部材のうち下段に配置されたジャンパ部材は、前記架空送電線の延線方向から見て、前記所定数のジャンパ部材のうち自身よりも上段に配置されたジャンパ部材を水平方向に避けた位置に配置されたものであることを特徴としてもよい。
【0008】
ここで、前記ジャンパ部材は、同一水平面上に2つづつ配置されたものであってもよい。
【0009】
本発明の耐張装置によれば、上段に配置されたジャンパ部材からジャンパ線を真下に垂れ下げても、そのジャンパ線は、下段に配置されたジャンパ部材や下段に配置されたバーニヤ金具などとは架空送電線の延線方向から見て水平方向にずれた位置に垂れ下がるので、それらに接触してしまうことやそれらに接近しすぎてしまうことを容易に回避できる。これにより、上段に配置されるジャンパ部材と下段に配置されるジャンパ部材の共通化が可能になるので、耐張装置を安価に構成できる。
【0010】
この耐張装置において、前記所定数のジャンパ部材と前記碍子連との間に配置され、前記架空送電線の弛度を調整するバーニヤ金具を備えていてもよい。
【0011】
前記架空送電線の弛度調整を行う際に、下段に配置されているバーニヤ金具に、その真上から弛度調整工具を取り付けることができるので、弛度調整作業が容易になる。
【0012】
また、この耐張装置において、前記所定数のジャンパ部材は、前記延線方向から見て、鉛直線を基準として線対称に配置されたものであってもよい。
【0013】
こうすることで、この耐張装置に前記延線方向を回転中心とした回転モーメントが加わりにくいので、この耐張装置の姿勢が安定しやすい。
【0014】
また、この耐張装置において、前記所定数のジャンパ部材は、前記延線方向から見て、等脚台形の各角部に相当する位置に配置された態様であってもよい。
【0015】
この態様によれば、この耐張装置の姿勢を安定させやすい上に、前記上段に配置されたジャンパ部材から垂れ下がるジャンパ線をジャンパスペーサで束線することで、そのジャンパ線と、前記下段に配置されたジャンパ部材や下段に配置されたバーニヤ金具などとの間隔を容易に広げることができる。
【0016】
さらに、この耐張装置において、前記下段に配置されたジャンパ部材は、前記上段に配置されたジャンパ部材に対して前記水平方向に100mm以上離間して配置されたものであることが好ましい。
【0017】
こうすることで、前記上段に配置されたジャンパ部材によって保持されたジャンパ線と、前記下段に配置されたジャンパ部材や下段に配置されたバーニヤ金具などとの接触を確実に防止し、またコロナ放電の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の耐張装置によれば、安価な耐張装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)は、本実施形態の耐張装置を示す平面図であり、(b)は、同図(a)に示した耐張装置の正面図である。
【
図2】
図1に示した耐張装置に備えられたジャンパソケットを、
図1(b)の矢印Aの方向に見たA矢視図である。
【
図3】(a)は、
図1に示した耐張装置によって引き留められた架空送電線の端部近傍を簡易的に示す斜視図であり、(b)は、
図1に示した耐張装置に備えられたジャンパソケットを架空送電線の延線方向から見た、ジャンパソケットどうしの間隔を示す配置図である。
【
図4】(a)は、
図1に示した耐張装置に弛度調整工具が取り付けられた状態を示す
図1(b)と同様の正面図であり、(b)は、同図(a)に示した弛度調整工具とジャンパソケットを同図(a)の矢印Bの方向から見たB矢視図である。
【
図5】(a)は、第1変形例の耐張装置におけるジャンパソケットを架空送電線の延線方向から見た、
図3(b)と同様の配置図であり、(b)は、第2変形例の耐張装置におけるジャンパソケットを架空送電線の延線方向から見た、
図3(b)と同様の配置図であり、(c)は、第3変形例の耐張装置におけるジャンパソケットを架空送電線の延線方向から見た、
図3(b)と同様の配置図である。
【
図6】(a)は、第2実施形態の耐張装置を示す平面図であり、(b)は、同図(a)に示した耐張装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である耐張装置は、架空送電線を鉄塔に引き留めるために、鉄塔と架空送電線の間に配置されるものである。本実施形態では、耐張装置として、4本の架空送電線を2つの碍子連で鉄塔に引き留める4導体2連耐張装置を用いる例を説明する。
【0021】
図1(a)は、本実施形態の耐張装置を示す平面図であり、
図1(b)は、同図(a)に示した耐張装置の正面図である。
【0022】
図1(a)および
図1(b)に示す耐張装置1は、不図示の鉄塔の支持アームと架空送電線Eの間に配置されている。これらの
図1(a)および
図1(b)では、図の左側が架空送電線(ライン)側になり右側が鉄塔(アース)側になる。また、
図1(a)では紙面に直交する方向が上下方向になる。
【0023】
図1(a)および
図1(b)に示すように、耐張装置1は、耐張装置取付金具11、鉄塔側2連ヨーク金具12、2つの鉄塔側アークホーン13、2つの碍子連14、送電線側アークホーン15、送電線側ヨーク金具16、4つのバーニヤ金具17、4つの圧縮形クランプ18および4つのジャンパソケット19を備えている。なお、耐張装置には、碍子連14とバーニヤ金具17の間やバーニヤ金具17と圧縮形クランプ18の間に、クレビス金具などの公知の連結金具が設けられているが、以下の説明では連結金具の説明は省略することがある。また、バーニヤ金具17と連結金具を総称してバーニヤ金具17などと称することがある。また、
図1(a)では、ジャンパソケット19が図示省略されており、
図1(b)では、耐張装置取付金具11が図示省略されている。
【0024】
耐張装置取付金具11は、不図示の鉄塔に設けられた支持アームに連結されている。また、耐張装置取付金具11には、鉄塔側2連ヨーク金具12が連結されている。鉄塔側アークホーン13は、この鉄塔側2連ヨーク金具12の上面に固定されている。また、鉄塔側2連ヨーク金具12には、2つの碍子連14が連結されている。碍子連14は、複数の碍子が連なったものである。碍子連14は、その中心線を架空送電線Eの延線方向と平行にして所定の間隔を保って並列に2つ配置されている。
図1(a)および
図1(b)では、最も鉄塔側に位置する碍子と最も架空送電線E側に位置する碍子の間に存在する碍子は図示省略し、複数の碍子が連なっていることを二点鎖線で表している。碍子連14の最も架空送電線E側に位置する碍子は、送電線側ヨーク金具16に連結されている。
【0025】
送電線側ヨーク金具16は、2連固定ヨーク161と、上側2連ヨーク162と、下側2連ヨーク163と、直角クレビスリンク金具164とを備えている。2連固定ヨーク161には2つの碍子連14が連結されている。2連固定ヨーク161には、送電線側アークホーン15が固定されている。上側2連ヨーク162は、2連固定ヨーク161の上側部分に連結されている。この上側2連ヨーク162には、2つのバーニヤ金具17が連結されている。バーニヤ金具17は、架空送電線Eの弛度を調整するためのものであり、架空送電線Eの延線方向に延在し、その延在方向の長さを変更することが可能な金具である。以下、上側2連ヨーク162に連結された2つのバーニヤ金具17を上段バーニヤ金具17Uと称する。下側2連ヨーク163は、2連固定ヨーク161の下側部分に直角クレビスリンク金具164を介して連結されている。下側2連ヨーク163は、直角クレビスリンク金具164の長さ分、上側2連ヨーク162よりも送電線側にずれた位置に配置されている。この下側2連ヨーク163にも2つのバーニヤ金具17が連結されている。以下、下側2連ヨーク163に連結された2つのバーニヤ金具17を下段バーニヤ金具17Dと称する。
【0026】
バーニヤ金具17それぞれの架空送電線E側には、圧縮形クランプ18が連結されている。圧縮形クランプ18は架空送電線Eごとに設けられ、各圧縮形クランプ18は架空送電線Eを把持している。ジャンパソケット19は、圧縮形クランプ18の鉄塔側部分を挟み込むことで各圧縮形クランプ18に固定されている。すなわち、ジャンパソケット19も、架空送電線Eごとに設けられている。ジャンパソケット19は、それぞれ1本のジャンパ線Jを保持している。このジャンパソケット19は、ジャンパ部材の一例に相当する。ジャンパ線Jは、ジャンパソケット19の下方部分から下方に向かって延在している。以下、上段バーニヤ金具17Uに連結された圧縮形クランプ18に固定されたジャンパソケット19を上段ジャンパソケット19Uと称し、下段バーニヤ金具17Dに連結された圧縮形クランプ18に固定されたジャンパソケット19を下段ジャンパソケット19Dと称する。2つの上段ジャンパソケット19Uから下方に延在する2本のジャンパ線Jには、それら2本のジャンパ線Jどうしを間隔をあけて保持する上段ジャンパスペーサ31が取り付けられている。
【0027】
図2は、
図1に示した耐張装置に備えられたジャンパソケットを、
図1(b)の矢印Aの方向に見たA矢視図である。すなわち、
図2は、ジャンパソケット19を架空送電線Eの延線方向から見た図である。
【0028】
図2に示すように、ジャンパソケット19は、上下方向に離間して、上段ジャンパソケット19Uと下段ジャンパソケット19Dの2段に分かれて配置されている。また、ジャンパソケット19は、架空送電線Eの延線方向から見て、鉛直線VLを基準として線対称に配置されている。2つの上段ジャンパソケット19Uは、2つの下段ジャンパソケット19Dよりも上方でかつ同一水平面上に並んで配置されている。また、2つの下段ジャンパソケット19Dも同一水平面上に並んで配置されている。2つの下段ジャンパソケット19Dは、架空送電線Eの延線方向から見て、2つの上段ジャンパソケット19Uを水平方向に避けた位置に配置されている。換言すれば、ジャンパソケット19は、鉛直方向から見た場合に、鉛直方向に対して互いに水平方向かつ架空送電線Eの延線方向に交わる方向にずれた位置に配置されている。そして、ジャンパソケット19は、その延線方向から見て、等脚台形Tの各角部に相当する位置に1つづつ配置されている。各ジャンパソケット19は、圧縮形クランプ18を挟み込んでいるソケット上方部191と、ジャンパ線Jを保持しているソケット下方部192とを備えた同一形状をしている。ソケット上方部191にはネジが設けられている。このネジによってソケット上方部191の幅が狭まり、その狭まった部分で圧縮形クランプ18を挟み込むことで、ジャンパソケット19は、圧縮形クランプ18に固定されている。ソケット下方部192には下方に向かって直線状に突出している。ソケット下方部192の内部にはジャンパ線Jの端部が固定されている。2つの上段ジャンパソケット19Uから下方に延在する2本のジャンパ線Jは、上段ジャンパスペーサ31によって互いに線径方向に間隔をあけて束ねられている。これにより、その2本のジャンパ線Jは、下段ジャンパソケット19Dや下段バーニヤ金具17D(
図1(b)参照)から遠ざかるように、鉛直線VL側に引き寄せられている。なお、4本のジャンパ線Jの、
図2に示した下端よりも先には、ジャンパ線Jの延線方向からみて正方形の各角部に相当する位置でジャンパ線Jを把持する不図示のジャンパスペーサが、ジャンパ線Jの延線方向に距離をあけて複数配置されている。そして、そのジャンパスペーサによって、4本のジャンパ線Jは、線径方向に互いに一定の間隔が保たれた状態で、鉄塔に設けられた支持アーム間に吊り下げられている。
【0029】
図3(a)は、
図1に示した耐張装置によって引き留められた架空送電線の端部近傍を簡易的に示す斜視図である。
図3(a)の右端部分に示された白抜きの丸は、架空送電線Eの、圧縮形クランプ18(
図1参照)によって把持された端点を示している。
【0030】
図3(a)に示すように、架空送電線Eは、径間スペーサSによって、隣り合う架空送電線Eまでの線径方向の間隔(径間導体間隔)がL1に保たれている。径間スペーサSは、架空送電線Eの延線方向に所定距離ごとに配置されている。すなわち、架空送電線Eのうち耐張装置1に把持されている両端の極近傍部分を除けば、4本の架空送電線Eは、架空送電線Eの延線方向から見て、一辺の長さがL1の正方形の各角部に相当する位置に配置され、互いに平行に鉄塔間に架線されている。なお、径間導体間隔L1は、一般的に500mmまたは400mmであり、本実施形態では400mmである。一方、
図1に示すように、架空送電線Eのうち耐張装置1の圧縮形クランプ18によって把持された部分は、耐張装置1のバーニヤ金具17、圧縮形クランプ18およびジャンパソケット19と同様に、架空送電線Eの延線方向から見て、等脚台形の各角部に相当する位置に配置されている。
【0031】
図3(b)は、
図1に示した耐張装置に備えられたジャンパソケットを架空送電線の延線方向から見た、ジャンパソケットどうしの間隔を示す配置図である。
図3(b)ではジャンパソケット19を簡略化して四角形で示している。なお、圧縮形クランプ18およびバーニヤ金具17なども同様の間隔で配置されている。
【0032】
上述したように、ジャンパソケット19は、架空送電線Eの延線方向から見て、上底が短く下底が長い等脚台形Tの各角部に相当する位置に配置されている。
図3(b)には、この等脚台形Tの各寸法が示されている。本実施形態では、上底の長さL3は、350mmであり、径間導体間隔L1(
図3(a)参照)よりも短い。また、下底の長さL4は、650mmであり、径間導体間隔L1よりも長い。また、高さL5は、径間導体間隔L1と同一の400mmである。ただし、これら上底の長さL3、下底の長さL4、高さL5は、径間導体間隔L1×0.5以上の間隔であればよい。これよりも狭いと、ジャンパソケット19間または、ジャンパソケット19とジャンパ線J(
図2参照)の間でコロナ放電が発生する虞がある。一方、これら上底の長さL3、下底の長さL4、高さL5は、径間導体間隔L1×2.0以下の間隔であることが好ましい。この間隔を超えると、鉄塔の支持アームのうちの一つに引き留められた架空送電線Eやジャンパ線Jと、他の支持アームに引き留められた架空送電線Eやジャンパ線Jとの距離を確保するために大きな鉄塔が必要になる。また、上底の長さL3および下底の長さL4が長くなりすぎたり、高さL5が高くなりすぎると、耐張装置1を構成する部品も大きくなり、耐張装置1が高価になってしまう。上段ジャンパソケット19Uと下段ジャンパソケット19Dとの水平方向の間隔L6は、本実施形態では150mmである。この間隔L6は、100mm以上であることが好ましい。100mm以上にすることで、上段ジャンパソケット19Uから垂れ下がるジャンパ線Jと、下段ジャンパソケット19Dや下段バーニヤ金具17Dなどとの接触を確実に防止し、またコロナ放電がそれらの間で発生してしまうことを抑制することができる。また、後述する弛度調整工具ATの取付作業を容易することができる。ただし、間隔L6が広くなりすぎると、鉄塔の支持アームのうちの一つに引き留められた架空送電線Eやジャンパ線Jと、他の支持アームに引き留められた架空送電線Eやジャンパ線Jとの距離を確保するために大きな鉄塔が必要になるので、間隔L6は200mm以下が好ましい。また、間隔L6が広くなりすぎると、下側2連ヨーク163(
図1参照)などの耐張装置1を構成する部品も大きくなり、耐張装置1が高価になってしまう。
【0033】
図4(a)は、
図1に示した耐張装置に弛度調整工具が取り付けられた状態を示す
図1(b)と同様の正面図であり、
図4(b)は、同図(a)に示した弛度調整工具とジャンパソケットを同図(a)の矢印Bの方向から見たB矢視図である。
図4(b)ではジャンパソケット19を簡略化して四角形で示している。
【0034】
図4(a)に示すように、架空送電線Eの弛度を調整する際には、バーニヤ金具17に弛度調整工具ATを取り付け、弛度調整工具ATに設けられた油圧シリンダーによってバーニヤ金具17を延在方向に縮めて架空送電線Eの長さを調整する作業を行う。従来の、架空送電線Eの延線方向から見て、正四角形の各頂点部分に、ジャンパソケット19が配置された耐張装置では、弛度調整工具ATが上段ジャンパソケット19Uや上段バーニヤ金具17Uなどと干渉してしまうことを回避するため、弛度調整工具ATを下段バーニヤ金具17Dの水平方向または下段バーニヤ金具17Dの下方から下段バーニヤ金具17Dに取り付けていた。鉄塔の上で重い弛度調整工具ATを水平方向または下方から下段バーニヤ金具17Dに取り付ける作業は非常に煩雑で危険でもあった。
【0035】
これに対し、本実施形態の耐張装置1では、
図4(b)に示すように、下段ジャンパソケット19Dは、架空送電線Eの延線方向から見て、上段ジャンパソケット19Uを水平方向に避けた位置に配置し、上述したように間隔L6を100mm以上にしている。これにより、上段ジャンパソケット19Uや上段バーニヤ金具17Uなどと弛度調整工具ATとが干渉することなく、上方から弛度調整工具ATを下段バーニヤ金具17Dに取り付けることができる。従って、下段バーニヤ金具17Dへの弛度調整工具ATの取り付けが非常に容易になり、取付作業における安全性も高めることができる。また、2つの下段ジャンパソケット19Dがともに、2つの上段ジャンパソケット19U間よりも水平方向における外側に配置されているので、弛度調整工具ATを下段ジャンパソケット19Dよりも少し持ち上げてその外側から取り付けることができる。これにより取付作業がより容易になる。
【0036】
この実施形態の耐張装置1によれば、上段ジャンパソケット19Uとしてジャンパ線Jを真下に垂れ下げるものを用いても、そのジャンパ線Jは、下段ジャンパソケット19Dや下段バーニヤ金具17Dなどとは、架空送電線Eの延線方向から見て、水平方向にずれた位置に垂れ下がるので、それらに接触してしまうことや接近しすぎてしまうことを容易に回避できる。これにより、上段ジャンパソケット19Uと下段ジャンパソケット19Dを共通化できるので、耐張装置1を安価に構成できる。また、ソケット下方部192が下方に向かって直線状に突出したものを用いることで、屈曲した部分を有するソケット下方部192と比較してジャンパソケット19を構成する材料が少なくてすむので、ジャンパソケット19を安価に作製できる。また、4つのジャンパソケット19が、架空送電線Eの延線方向から見て、鉛直線VLを基準として線対称に配置されているので、架空送電線Eの延線方向を回転中心とした回転モーメントが耐張装置1に加わりにくい。これにより、耐張装置1がねじられにくく姿勢が安定しやすい。さらに、ジャンパソケット19は、架空送電線Eの延線方向から見て、等脚台形Tの各角部に相当する位置に配置されているので、上段ジャンパソケット19Uから垂れ下がるジャンパ線Jを上段ジャンパスペーサ31で束線することで、そのジャンパ線Jと、下段ジャンパソケット19Dや下段バーニヤ金具17Dなどとの間隔を容易に広げることができる。また、上述したように、弛度調整工具ATを下段ジャンパソケット19Dよりも少し持ち上げてその水平方向における外側から容易に下段バーニヤ金具17D取り付けることができるので取付作業が容易である。
【0037】
続いて、これまで説明してきた耐張装置1の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素には、これまで用いた符号と同じ符号を付して重複する説明は省略することがある。
【0038】
図5(a)は、第1変形例の耐張装置におけるジャンパソケットを架空送電線の延線方向から見た、
図3(b)と同様の配置図である。この
図5(a)では、ジャンパソケット19を簡略化して四角形で示している。
【0039】
図5(a)に示すように、第1変形例の耐張装置1におけるジャンパソケット19は、架空送電線E(
図1参照)の延線方向から見て、上底が下底より長い逆等脚台形の各角部に相当する位置に配置されている点が先の実施形態の耐張装置1と異なる。なお、
図5(a)では図示されていないが、この第1変形例では、
図1に示した圧縮形クランプ18およびバーニヤ金具17なども、架空送電線Eの延線方向から見て、逆等脚台形の各角部に相当する位置に配置されている。第1変形例では、弛度調整工具AT(
図4参照)を下段バーニヤ金具17Dに取り付ける際に、弛度調整工具ATを一旦上段バーニヤ金具17Uよりも上方に持ち上げてから下段バーニヤ金具17Dに取り付ける必要がある点と、上段ジャンパソケット19Uから垂れ下がるジャンパ線J(
図2参照)を上段ジャンパスペーサ31で束線するとかえって下段ジャンパソケット19Dや下段バーニヤ金具17Dなどにそのジャンパ線Jが接触しやすくなってしまう点を除いて、先の実施形態と同様の効果がある。
【0040】
図5(b)は、第2変形例の耐張装置におけるジャンパソケットを架空送電線の延線方向から見た、
図3(b)と同様の配置図である。この
図5(b)でも、ジャンパソケット19を簡略化して四角形で示している。
【0041】
図5(b)に示すように、第2変形例の耐張装置1におけるジャンパソケット19は、架空送電線E(
図1参照)の延線方向から見て、並行四辺形の各角部に相当する位置に配置されている点が先の実施形態の耐張装置1と異なる。なお、
図5(b)では図示されていないが、この第2変形例では、
図1に示した圧縮形クランプ18およびバーニヤ金具17なども、架空送電線Eの延線方向から見て、並行四辺形の各角部に相当する位置に配置されている。第2変形例では、架空送電線Eの延線方向を回転中心とした回転モーメントが耐張装置1に加わりやすい点と、
図5(b)において右側に配置されている下段ジャンパソケット19Dに連なる下段バーニヤ金具17Dに弛度調整工具AT(
図4参照)を取り付ける際に、弛度調整工具ATを一旦上段バーニヤ金具17Uよりも上方に持ち上げてから下段バーニヤ金具17Dに取り付ける必要がある点と、上段ジャンパソケット19Uから垂れ下がるジャンパ線J(
図2参照)を上段ジャンパスペーサ31で束線するとかえって
図5(b)において右側に配置されている下段ジャンパソケット19Dやそれに連なる下段バーニヤ金具17Dなどにそのジャンパ線Jが接触しやすくなってしまう点を除いて、先の実施形態と同様の効果がある。
【0042】
図5(c)は、第3変形例の耐張装置におけるジャンパソケットを架空送電線の延線方向から見た、
図3(b)と同様の配置図である。この
図5(c)でも、ジャンパソケット19を簡略化して四角形で示している。
【0043】
第3変形例の耐張装置1は、6本の架空送電線E(
図1参照)を鉄塔に引き留めるものである点が先の実施形態の耐張装置1と異なる。
図5(c)に示すように、この第3変形例の耐張装置1では、架空送電線Eの延線方向から見て、等脚台形の各角部に相当する位置に上段ジャンパソケット19Uと下段ジャンパソケット19Dが配置され、さらにその下に2つの第2下段ジャンパソケット19D2が配置されている。なお、
図5(c)では図示されていないが、この第3変形例では、
図1に示した圧縮形クランプ18およびバーニヤ金具17なども、架空送電線Eの延線方向から見て、
図5(c)に示したジャンパソケット19と同位置に配置されている。2つの第2下段ジャンパソケット19D2は同一水平面に配置されている。下段ジャンパソケット19Dと第2下段ジャンパソケット19D2との相対位置関係は、上段ジャンパソケット19Uと下段ジャンパソケット19Dの相対位置関係と同一である。すなわち、架空送電線Eの延線方向から見て、第2下段ジャンパソケット19D2は、下段ジャンパソケット19Dに対して、水平方向に間隔L6離間し、垂直(上下)方向に高さL5離間している。なお、上述の相対位置関係は、同一でなくても構わない。この第3変形例でも先の実施形態と同様の効果がある。
【0044】
次に、第2実施形態の耐張装置1について説明する。
【0045】
図6(a)は、第2実施形態の耐張装置を示す平面図であり、
図6(b)は、同図(a)に示した耐張装置の正面図である。
【0046】
これらの
図6(a)および
図6(b)でも、図の左側が架空送電線(ライン)側になり右側が鉄塔(アース)側になる。
図6(a)および
図6(b)に示す耐張装置1は、圧縮形クランプ18とジャンパソケット19の代わりに、非圧縮型クランプ21とジャンパ金具22を用いている点が、
図1に示した耐張装置1とは異なる。なお、一般的に、ジャンパソケット19は、圧縮形クランプ18と共に用いられ、ジャンパ金具22は、非圧縮型クランプ21と共に用いられる。非圧縮型クランプ21は、バーニヤ金具17それぞれの架空送電線E側に連結されている。この非圧縮型クランプ21は、いわゆるくさびクランプである。非圧縮型クランプ21は架空送電線Eごとに設けられ、各非圧縮型クランプ21はそれぞれ架空送電線Eを把持している。ジャンパ金具22は、U字ボルトによって各非圧縮型クランプ21に固定されている。従って、ジャンパ金具22も、架空送電線Eごとに設けられている。ジャンパ金具22は、ジャンパ線Jを保持するものである。ジャンパ金具22は、それぞれ1本のジャンパ線Jを保持している。このジャンパ金具22は、ジャンパ部材の一例に相当する。上段バーニヤ金具17Uに連結された非圧縮型クランプ21に固定されたジャンパ金具22が上段ジャンパ金具22Uであり、下段バーニヤ金具17Dに連結された非圧縮型クランプ21に固定されたジャンパ金具22が下段ジャンパ金具22Dである。2つの上段ジャンパ金具22Uから下方に延在する2本のジャンパ線Jには、上段ジャンパスペーサ31が取り付けられている。このジャンパ金具22は、先の実施形態におけるジャンパソケット19と同様に、架空送電線Eの延線方向から見て、等脚台形Tの各角部に相当する位置に1つづつ配置されている。この第2実施形態の耐張装置1においても、先の実施形態と同様の効果を奏する。
【0047】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、耐張装置1として、4本の架空送電線Eを2つの碍子連14で鉄塔に引き留める4導体2連耐張装置を用いて説明し、6本の架空送電線Eを鉄塔に引き留める耐張装置1を第3変形例として説明したが、本発明を8本以上の架空送電線Eを鉄塔に引き留める耐張装置1に適用してもよい。また、碍子連14の数は任意で構わない。
【0048】
なお、以上説明した実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 耐張装置
14 碍子連
19 ジャンパソケット
19D 下段ジャンパソケット
19U 上段ジャンパソケット
E 架空送電線
J ジャンパ線