(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】スクライブヘッド及びスクライブ装置
(51)【国際特許分類】
B28D 5/00 20060101AFI20240507BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20240507BHJP
C03B 33/027 20060101ALI20240507BHJP
C03B 33/03 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B28D5/00 Z
B28D7/02
C03B33/027
C03B33/03
(21)【出願番号】P 2021207279
(22)【出願日】2021-12-21
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡島 康智
(72)【発明者】
【氏名】阪口 良太
(72)【発明者】
【氏名】竹原 春香
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
B28D 7/02
C03B 33/027
C03B 33/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料基板にスクライブラインを形成するスクライビングツールを保持するホルダー保持部と、前記ホルダー保持部を上下方向に移動自在に支持するリニアガイドと、前記リニアガイドを介してホルダー保持部が取り付けられるステー部材と、を有するスクライブヘッドにおいて、
前記リニアガイドの周りを取り囲むように、当該リニアガイドに粉塵が入り込むことを防ぐべく前記粉塵をパージするパージ機構が備えられて
おり、
前記リニアガイドは、上下方向にスライド自在に移動する摺動部と、前記摺動部が摺動するレール部とを有し、
前記ホルダー保持部は前記摺動部に取り付けられ、前記レール部は前記ステー部材に取り付けられていて、
前記パージ機構は、前記リニアガイドの周りを取り囲むように、前記ステー部材とホルダー保持部との間に設けられた環形状の保護部材を有し、前記保護部材の内環側に形成された空間に外部よりパージ用のエアが供給されると共に、前記ホルダー保持部と保護部材との間の隙間を通って外部に吐出するように構成されている
ことを特徴とするスクライブヘッド。
【請求項2】
前記環形状の保護部材における前記ホルダー保持部に対面する端面と前記ホルダー保持部との間には、パージ用のエアが外部に吐出するための隙間部が形成されるように、前記保護部材とスクライブヘッドの位置関係が設定されている
ことを特徴とする請求項
1に記載のスクライブヘッド。
【請求項3】
前記環形状の保護部材における前記ホルダー保持部に対面する端面には、前記保護部材の縁に沿うように形成された無端状の凹状溝部が設けられている
ことを特徴とする請求項
2に記載のスクライブヘッド。
【請求項4】
前記凹状溝部は、断面が前記端面に対して斜めとなる傾斜溝形状とされている
ことを特徴とする請求項
3に記載のスクライブヘッド。
【請求項5】
脆性材料基板にスクライブラインを形成するスクライビングツールを保持するホルダー保持部と、前記ホルダー保持部を上下方向に移動自在に支持するリニアガイドと、前記リニアガイドを介してホルダー保持部が取り付けられるステー部材と、を有し、前記リニアガイドの周りを取り囲むように、当該リニアガイドに粉塵が入り込むことを防ぐべく前記粉塵をパージするパージ機構が備えられているスクライブヘッドと、
前記スクライブヘッドと対向する位置に配備され且つ脆性材料基板が載置されるテーブルと、
前記テーブルを跨ぐように架設され且つ前記スクライブヘッドが取り付けられているビームと、を備え
、
前記リニアガイドは、上下方向にスライド自在に移動する摺動部と、前記摺動部が摺動するレール部とを有し、
前記ホルダー保持部は前記摺動部に取り付けられ、前記レール部は前記ステー部材に取り付けられていて、
前記パージ機構は、前記リニアガイドの周りを取り囲むように、前記ステー部材とホルダー保持部との間に設けられた環形状の保護部材を有し、前記保護部材の内環側に形成された空間に外部よりパージ用のエアが供給されると共に、前記ホルダー保持部と保護部材との間の隙間を通って外部に吐出するように構成されている
ことを特徴とするスクライブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料基板をスクライブするスクライブ装置に備えられたスクライブヘッドの技術に関し、特にスクライブヘッドを上下させるリニアガイドに粉塵が侵入することを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脆性材料基板の分断には、その基板にスクライブラインを形成するスクライブ工程と、スクライブラインに沿ってブレード(ブレーク刃)を押し付けて基板を分断するブレーク工程がある。そのうち、スクライブ工程ではスクライブ装置が用いられている。
スクライブ装置には、カッターホイールなどを用いたスクライビングツールがホルダージョイントを介してスクライブヘッドに取り付けられており、そのスクライビングツールにより脆性材料基板にスクライブラインを形成する。
【0003】
具体的には、このスクライブヘッドは、スクライビングホイールやダイヤモンドポイントなどを用いたスクライビングツールを備えている。また、スクライビングツールはホルダにより下方に向かって刃先を向けるように保持されており、リニアガイドにより上下に案内され上下方向の位置が設定される。さらにエアシリンダーから進退するロッドによって、スクライブヘッドは正確に上下に移動することになる。
【0004】
このように、スクライブヘッドを上下することで、スクライビングツールにより脆性材料基板に荷重を加えて脆性材料基板に垂直クラックを形成している。
ところで、昨今はスクライブ対象である脆性材料基板の薄肉化が進んでおり、低い接触圧すなわち低加工圧でスクライブを行うケースが増えている。
このようなケースでまず問題となるのが、リニアガイドの特性である。
【0005】
スクライブヘッドにおいて採用されるリニアガイドは、レール部とこのレール部を「滑り」乃至は「ころがり」により摺動する摺動部の2つの部品で構成されている。レール部上を摺動部がスライドすることで直線運動を実現する。この摺動部にスクライビングツールを含むホルダー保持部が取り付けられ、レール部はスクライブヘッドのベース側に取り付けられることで、スクライビングツールを上下に移動可能となっている。
【0006】
このようなリニアガイドは、摺動部の端部にシール部材が配設されており、摺動部内に粉塵が侵入することを可及的に防止できるものとなっていた。
近年、低い接触圧すなわち低加工圧でスクライブを行うことを意図し、このシール部材を備えない乃至はシール部材を敢えて取り外したリニアガイドを用いることが多くなっている。シール部材が存在しないことで、リニアガイドにおける摺動抵抗を減らし、低い接触圧すなわち低加工圧でスクライブを行うことが可能となる。
【0007】
しかしながら、シール部材を備えていないリニアガイドには、大きな問題が存在する。すなわち、シール部材がないため、摺動部内に粉塵が侵入する可能性が大となる。摺動部内に粉塵が侵入した場合、リニアガイドの正常な動作が保証できないものとなる。
粉塵が侵入することを防ぐことを考えた場合、エアを吹き付けて粉塵をパージしたり、エアによる侵入壁を形成するなどが考えられる。エアを対象物に吹き付ける観点に立ち特許文献を探した場合、特許文献1を知見することができる。
【0008】
特許文献1は、上面が平坦な円板状をなし、上面と支持対象物との間にエアの流れを生じさせることで支持対象物を非接触状態で支持する支持機構であって、上面の中央部分にエアの噴出口を備えるとともに、上面の外周近傍の位置に、上面の径方向に対して所定の角度だけ傾斜する上面視円形状の溝部を備える支持機構を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術は、上面に支持対象物を支持する非接触の支持機構であり、非接触の支持を実現するために噴出口からエアを噴出するものであって、粉塵が侵入することを防ぐために、エアパージを行うものではない。
特許文献1に開示された技術を用いたとしても、シール部材を有さないリニアガイドにおいて、摺動部内に粉塵が侵入することを防ぐことは不可能である。
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、低い接触圧すなわち低加工圧でスクライブを行うことを目的とし、シール部材を有さないリニアガイドを採用した際に、エアパージにより確実にリニアガイドの摺動部内に粉塵が侵入することを防止できるスクライブヘッドユニットの技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のスクライブヘッドは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のスクライブヘッドは、脆性材料基板にスクライブラインを形成するスクライビングツールを保持するホルダー保持部と、前記ホルダー保持部を上下方向に移動自在に支持するリニアガイドと、前記リニアガイドを介してホルダー保持部が取り付けられるステー部材と、を有するスクライブヘッドにおいて、前記リニアガイドの周りを取り囲むように、当該リニアガイドに粉塵が入り込むことを防ぐべく前記粉塵をパージするパージ機構が備えられていることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記リニアガイドは、上下方向にスライド自在に移動する摺動部と、前記摺動部が摺動するレール部とを有し、前記ホルダー保持部は前記摺動部に取り付けられ、前記レール部は前記ステー部材に取り付けられていて、前記パージ機構は、前記リニアガイドの周りを取り囲むように、前記ステー部材とホルダー保持部との間に設けられた環形状の保護部材を有し、前記保護部材の内環側に形成された空間に外部よりパージ用のエアが供給されると共に、前記ホルダー保持部と保護部材との間の隙間を通って外部に吐出するように構成されている。
【0014】
好ましくは、前記環形状の保護部材における前記ホルダー保持部に対面する端面と前記ホルダー保持部との間には、パージ用のエアが外部に吐出するための隙間部が形成されるように、前記保護部材とスクライブヘッドの位置関係が設定されているとよい。
好ましくは、前記環形状の保護部材における前記ホルダー保持部に対面する端面には、前記保護部材の縁に沿うように形成された無端状の凹状溝部が設けられているとよい。
【0015】
好ましくは、前記凹状溝部は、断面が前記端面に対して斜めとなる傾斜溝形状とされているとよい。
また、本発明のスクライブ装置は、上記したスクライブヘッドと、前記スクライブヘッドと対向する位置に配備され且つ脆性材料基板が載置されるテーブルと、前記テーブルを跨ぐように架設され且つ前記スクライブヘッドが取り付けられているビームと、を備え、前記リニアガイドは、上下方向にスライド自在に移動する摺動部と、前記摺動部が摺動するレール部とを有し、前記ホルダー保持部は前記摺動部に取り付けられ、前記レール部は前記ステー部材に取り付けられていて、前記パージ機構は、前記リニアガイドの周りを取り囲むように、前記ステー部材とホルダー保持部との間に設けられた環形状の保護部材を有し、前記保護部材の内環側に形成された空間に外部よりパージ用のエアが供給されると共に、前記ホルダー保持部と保護部材との間の隙間を通って外部に吐出するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスクライブヘッド及びスクライブ装置によれば、低い接触圧すなわち低加工圧でスクライブを行うことを意図し、シール部材を有さないリニアガイドを採用した際に、エアパージにより確実にリニアガイドの摺動部内に粉塵が侵入することを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のスクライブヘッドを示した斜視図である。
【
図2】本発明のスクライブヘッドを示した正面図である。
【
図3】本発明のスクライブヘッドを示した背面斜視図である。
【
図4】本発明のスクライブヘッドの分解斜視図である。
【
図5】本発明のスクライブヘッドのリング部材周辺の断面斜視図である。
【
図8】エア流通端面に対して斜めとなる傾斜溝形状の凹状溝部を示した断面図である。
【
図9】本発明のスクライブ装置の概略を模式的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかるスクライブヘッド及びスクライブ装置の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。また、図面に関して、見やすくするため、構成部品の一部を省略して描いている。また、スクライブ装置51におけるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向等については、図面に示す通りである。
【0019】
まず、本発明のスクライブヘッド1が備えられたスクライブ装置51の概略について説明する。
図9は、本発明のスクライブヘッド1が備えられたスクライブ装置51の概略を模式的に示した正面図である。なお、スクライブラインを形成する方向については、
図9に示すように左側から右側へと向かうX軸方向である。
【0020】
図9に示すように、スクライブ装置51は、脆性材料基板Fが載置されるテーブル52(載置台)と、脆性材料基板Fの表面上にスクライブラインを形成するスクライブヘッド1と、を有している。
テーブル52は、スクライブヘッド1と対向する位置に配備されている。テーブル52は、モータが内蔵された支持部53により下方から支持されている。テーブル52は、当該テーブル52上に載置された脆性材料基板Fを保持する真空吸引手段(図示せず)を備えている。
【0021】
支持部53の内部には、モータ(図示せず)が格納されている。このモータは、テーブル52のXY平面で回転させて所定角度に位置決めするものである。支持部53は、移動台54上に載置されている。
移動台54は、一対の案内レール55に沿って、Y軸方向に移動自在に保持されている。この移動台54は、ボ-ルネジ56と螺合しており、モータの駆動によりボ-ルネジ56が回転することにより、案内レール55に沿ってY軸方向に移動する。
【0022】
また、スクライブ装置51には、移動台54とその上部のテーブル52を跨ぐようにビーム57(ブリッジ)がX軸方向に沿って、X軸方向に一対配備された支柱58により架設されている。ビーム57には、スクライブヘッド1をX軸方向に案内するガイドレール59が取り付けられている。
ガイドレール59とスクライブヘッド1とは、移送部60を介して接続されている。その移送部60がガイドレール59に沿ってモータの駆動によりスライド移動することにより、ホルダー保持部2が取り付けられたスクライブヘッド1はX軸方向に移動可能となっている。また、スクライブヘッド1は、Z軸方向にも移動可能となっている。
【0023】
図1に、本発明のスクライブヘッド1の斜視図を示す。
図2に、本発明のスクライブヘッド1の正面図を示す。
図3に、本発明のスクライブヘッド1の背面図(一部の部材を破線にて表記)を示す。
図1~
図3などに示すように、スクライブヘッド1は、ホルダー保持部2と、ホルダー保持部2を格納するケース体3と、ケース体3を上下方向に移動させる上下移動機構と、上下移動機構に取り付けられ且つ上下方向に移動可能なスライド部材4と、上下移動機構を囲いダストなどの侵入を防いで保護する保護部材5と、ホルダー保持部2などを保持し且つ移送部60に取り付けられるステー部材6(基盤体)と、を有している。
【0024】
ケース体3は、内部にホルダー保持部2を格納する空間が確保された筐体である。ケース体3内にホルダー保持部2を格納し、ケース体3の上部において取り付けネジ31によりホルダー保持部2の上部を固定することで、ホルダー保持部2はケース体3内で保持される。
また、ケース体3には、X軸方向を向く貫通孔3aが複数設けられている。貫通孔3aには、取り付けネジ32が挿入される。ケース体3は、取り付けネジ32によりスライド部材4に取り付けられている。これにより、ケース体3とスライド部材4はともに上下方向に移動可能となる。
【0025】
ケース体3の底部には、ホルダージョイント12が取り付けられる取り付け部3bが形成されている。取り付け部3bは、上下方向に貫通した孔部であって、径が異なる(下部より上部が小径の)段差部が形成されている。その段差部にホルダージョイント12を保持するリング部材7が取り付けネジ33を介して取り付けられることにより、ホルダージョイント12がケース体3の底部に取り付けられる。つまり、ホルダー保持部2は、ケース体3からホルダージョイント12及びスクライビングツール11が下方に突出するように配備される。
【0026】
リング部材7は、内周の大きさがホルダージョイント12の外周より大きい周囲の空間が形成されている。本実施形態では、リング部材7の内周形状は略四角形状とされている。リング部材7の内周の範囲において、ホルダージョイント12は回転する。
上下移動機構にはスライド部材4が取り付けられていて、上下移動機構としては、本実施形態ではリニアガイド30を採用している。リニアガイド30は直線状の案内レール31(レール部)に沿ってスライダー32(摺動部)が移動するものであり、案内レール31は軸心が上下(垂直)方向を向くように配備され、スライダー32は案内レール31に沿って上下(垂直)方向を摺動しつつ移動する。
【0027】
スライド部材4は、ケース体3を取り付け可能にする広さを有する板部材である。スライド部材4には、リニアガイド30のスライダー32が取り付けられている。スライダー32が垂直方向を移動することにより、スライド部材4とケース体3は垂直方向を移動する。ただし、保護部材5とステー部材6は、移送部60を介してビーム57に固定されている。
【0028】
スライド部材4は、上方に設けられたエアシリンダー8に連結されている。スライド部材4とケース体3は、エアシリンダー8の駆動とリニアガイド30により上下方向に移動することできる。なお、エアシリンダー8の本体は支持部材9を介して、ステー部材6の第2取り付け壁6bに取り付けられている。
保護部材5は、リニアガイド30を囲うことができる大きさの環状の部材である。保護部材5には、内部に空気を送り込む孔部5aが設けられている。孔部5aには、空気を供給するエアホース10が接続されている。この保護部材5は、内部に空気を送り込むことでダストなどの侵入を防いで保護するパージ機構となっている。
【0029】
また、保護部材5とスライド部材4の間(X軸方向に沿った間)については、若干の隙間部Bを設けて配備されている。この隙間部Bは、スライド部材4が上下方向に移動するために空けられたものであり、またこの隙間部Bは、保護部材5の内部に送り込まれた空気により壁ができた状態(シールされた状態)となっており、粉塵などの侵入を防いでいる。
【0030】
ステー部材6は、平面視で(Z軸方向から見て)L字形状に形成された部材である。ステー部材6は、移送部60に取り付けられる第1取り付け壁6aと、その第1取り付け壁6aの直交方向に立設され且つホルダー保持部2が取り付けられる第2取り付け壁6bと、を有している。
第1取り付け壁6aには、Y軸方向を向く貫通孔6cが複数設けられている。貫通孔6cには、取り付けネジ34が挿入される。第1取り付け壁6aは、取り付けネジ34により移送部60に取り付けられている。これにより、ステー部材6は移送部60に取り付けられる。
【0031】
第2取り付け壁6bは、第1取り付け壁6aの一方縁から直交方向に立設されている。第2取り付け壁6bには、Y軸方向を向く貫通孔6dが複数設けられている。貫通孔6dには、取り付けネジ35が挿入される。第2取り付け壁6bは、取り付けネジ35により移送部60に取り付けられている。これにより、ステー部材6は移送部60に取り付けられる。また、第2取り付け壁6bには、スライド部材4とリニアガイド30の案内レール31が取り付けられている。
【0032】
図3に示すように、X軸方向において、第2取り付け壁6b、保護部材5(リニアガイド30)、スライド部材4、ケース体3の順に、積層するように配備されている。
スクライブヘッド1には、ホルダー保持部2が取り付けられている。ホルダー保持部2は、スクライブヘッド1全体のZ軸方向の移動とは別に、ホルダー保持部2もZ軸方向(垂直方向)に移動可能となっている。
【0033】
図2に示すように、本発明にかかるスクライブヘッド1は、脆性材料基板Fの表面上にスクライブラインを形成するスクライビングツール11と、スクライビングツール11を着脱自在に保持するホルダージョイント12と、ホルダージョイント12を上下方向軸心回りに回転可能に保持するホルダージョイント保持部13と、を有している。
スクライビングツール11は、脆性材料基板Fにスクライブラインを形成するカッターホイールと、カッターホイールを支持するホルダーとが一体となったものである。スクライビングツール11は、ホルダージョイント12に取り付けられる。
【0034】
ホルダージョイント12は、ホルダー保持部2の下部に取り付けられている。ホルダージョイント12は、平面視で(Z軸方向から見て)略四角形状の部材であって、下部が開口され且つ上部が閉塞された有底筒状の部材である。ホルダージョイント12は、外周の大きさがリング部材7の内周より小さい周囲とされている。ホルダージョイント12は、リング部材7の内周において回転する。
【0035】
ホルダージョイント12の下部の軸心中央には、円筒形状の挿入部12aが形成されている。その挿入部12aは、スクライビングツール11を保持する保持部12aとなっている。その保持部12aの上端には、マグネット(図示せず)が設けられている。
ホルダージョイント12の保持部12aにスクライビングツール11を挿入すると、磁性材料であるホルダーの上端(基端)がマグネットによって吸引されて、スクライビングツール11がホルダージョイント12に固定される。
【0036】
ホルダージョイント12の上部には、上方向に突出状の軸部材が設けられており、軸部材の上部は、延長部材14の下部に挿入される。
本実施形態では、延長部材14が備えられており、その延長部材14は電磁ブレーキ部16の下部に取り付けられている。延長部材14は、平面視で(Z軸方向から見て)円形状の部材であって、下部が開口され且つ上部が閉塞された有底筒状の部材である。
【0037】
延長部材14の下部の軸心中央には、円筒形状の挿入部が形成されている。延長部材14の保持部にホルダージョイント12の軸部材を挿入し側方からネジを締め付けることにより、軸部材が保持部内で固定され、ホルダージョイント12が延長部材14に固定される。
延長部材14の上部には、ホルダージョイント12のZ軸心周りの回動を規制したり、回転自在にしたりするための電磁ブレーキ部16が取り付けられている。
【0038】
図4~
図7において、本発明において最も特徴的な部材であるスクライブヘッド1における「保護部材5」の詳細を示す。
前述した如く、ホルダー保持部2が配備されたスライド部材4は上下移動機構に取り付けられている。上下移動機構として本実施形態では、リニアガイド30を採用している。リニアガイド30は案内レール31に沿って「滑り」乃至は「ころがり」によりスライダー32が移動するものであり、案内レール31は軸心が上下(垂直)方向を向くように配備され、スライダー32は案内レール31に沿って上下(垂直)方向を直線移動する。
【0039】
案内レール31(レール部)はステー部材6の第2取り付け壁6bに上下方向を向くように取り付けられており、案内レール31の側面に長手方向を向く直線の条状溝が形成されている。スライダー32(摺動子)は断面門型形状を呈しており、この門型部分が案内レール31を抱きかかえるようにZ軸に沿って嵌まり込んでいて、門型の先端部が条状の溝部に嵌まり込んでいる。このスライダー32が垂直方向を移動することにより、スライド部材4とケース体3は垂直方向を移動する。ただし、ステー部材6及びそれに取り付けられる保護部材5は、移送部60を介してビーム57に固定されている。
【0040】
スライド部材4は、上方に設けられたエアシリンダー8に連結されている。スライド部材4とケース体3は、エアシリンダー8の駆動とリニアガイド30により上下方向に移動することできる。なお、エアシリンダー8の本体は支持部材9を介して、ステー部材6の第2取り付け壁6bに取り付けられている。
保護部材5は、リニアガイド30を囲うことができる大きさの環状の部材である。この保護部材は、リニアガイド30の周りを取り囲むように、ケース体3とスクライブヘッドとの間に設けられた環形状の部材であり、ステンレスなどの金属で構成されている。保護部材5の内環側に形成された内部空間Sに、外部よりパージ用のエアが供給されると共に、ホルダー保持部2と保護部材5との間の隙間を通って外部に吐出するように構成されている。
【0041】
具体的には、保護部材5には、内部に空気を送り込む孔部5aが設けられている。孔部5aには、空気を供給するエアホース10が接続されている。この保護部材5は、内部に空気を送り込むことでダストなどの侵入を防いで保護するパージ機構(リニアガイド30に粉塵が入り込むことを防ぐために、粉塵を空気にてパージする機構)となっている。
また、保護部材5とスライド部材4のX軸方向における位置については、若干の隙間を設けて配備されている。この隙間部Bは、スライド部材4が上下方向に移動するために空けられたものである。言い換えれば、環形状の保護部材5におけるホルダー保持部2に対面する端面(エア流通端面33)とケース体3との間には、パージ用のエアが外部に吐出するための隙間部Bが形成されるように、保護部材5とホルダー保持部2の位置関係が設定されている。この隙間部Bにより、保護部材5の内部に送り込まれた空気により壁ができた状態(シールされた状態)となっており、ダストなどの侵入を防いでいる。
【0042】
図7などに示すように、粉塵をパージするための空気による壁をより確実に形成するために、エア流通端面33には、保護部材5の環形状に沿うように形成された無端状(リング状)の凹状溝部34が設けられている。
図8に示すように、この凹状溝部34は、断面がエア流通端面33に対して斜めとなる傾斜溝形状とされている。凹状溝部34の角度(外向き角度)は、保護部材5の外向きに向いて30°~60°の範囲がよく、好ましくは、45°がよい。エア流通端面33において凹状溝部34より内側平坦部35の幅(
図8におけるL)は1.5mm以上あることが好ましい。なお、内側平坦部35の距離が長いとエアの流速が早くなり圧力が下がり、凹状溝部34に到達するとエアの流速が遅くなり圧力が上がることから上記した寸法関係が決定されることになる。また、
図8に示すように、凹状溝部34の形状(傾き)を変化させたり、凹状溝部34の条数を増減することで、外部と保護部材の内部空間Sとの圧力差を変えることができ、効果的な粉塵のパージが可能となる。
【0043】
かかる凹状溝部34を設けることで、内部空間Sからエア流通端面33を通って外部に吐出するエアを凹状溝部34内に滞留させることができ、このエア滞留により圧力の高い領域を形成することで空気による壁をより確実に形成し、外部からリニアガイド30に対して粉塵が入り込むことを防ぐことが可能となる。
上記した保護部材5は、次のように作用することになる。
【0044】
まず、保護部材5には、内部に空気を送り込む孔部5aが設けられている。孔部5aには、空気を供給するエアホース10が接続されている。このエアホース10を介して外部からエアが供給され、孔部5aにエアが供給され、このエアは保護部材5内の内部空間Sへ供給される。内部空間S、言い換えればリニアガイド30の周りに供給されたエアは、リニアガイド30周辺の粉塵をパージするとともに、エア流通端面33を通って外部に吐出するようになる。このとき、外部に吐出するエアを、エア流通端面33に形成された凹状溝部34内に滞留させることができ、このエア滞留により圧力(静圧)の高い領域を形成することで、空気による壁を形成し、外部から保護部材の内部空間S、言い換えればリニアガイド30に対して粉塵が入り込むことを防ぐことが可能となる。
【0045】
以上、本発明によれば、保護部材5の内部空間Sから外部に吐出するエアを用いることで、シール部材を有さないリニアガイド30に対する粉塵の侵入を抑制することが可能となる。特に、保護部材5のエア流通端面33に形成された凹状溝部34によって、エアを一時的に滞留させ、静圧の高い領域(エアによる壁領域)を形成することで、外部からの粉塵等の侵入を効果的に防止でき、凹状溝部34がない場合に比してエアの漏出や吹き出し音も小さくすることができ、更には、保護部材5の内部空間Sに供給するエアの量を低減することもできるようになる。
【0046】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、作動条件や操作条件、構成物の寸法、重量などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【符号の説明】
【0047】
1 スクライブヘッド
2 ホルダー保持部
3 ケース体
3a 貫通孔
3b 取り付け部
4 スライド部材
5 保護部材
5a 孔部
6 ステー部材
6a 第1取り付け壁
6b 第2取り付け壁
6c 貫通孔
6d 貫通孔
7 リング部材
8 エアシリンダー
9 支持部材
10 エアホース
11 スクライビングツール
12 ホルダージョイント
12a 挿入部(保持部)
13 ホルダージョイント保持部
14 延長部材
15 ベアリング
16 電磁ブレーキ部
17 電磁体(電磁コイル)
18 永久磁石(マグネット)
19 非磁性体
19a 挿入部(保持部)
30 リニアガイド
31 案内レール(レール部)
32 スライダー(摺動部)
33 エア流通端面
34 凹状溝部
35 内側平坦部
B 隙間部
F 脆性材料基板
S 内部空間