(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】構造物の表面のコーティング方法及びその構造物
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20240507BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240507BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240507BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240507BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240507BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B32B9/00 A
B32B27/40
B05D7/00 L
B05D7/24 302T
B05D5/06 C
B05D7/24 302Y
(21)【出願番号】P 2022097673
(22)【出願日】2022-06-16
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502127559
【氏名又は名称】株式会社コスモテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】小池 義行
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030716(JP,A)
【文献】特開2021-55400(JP,A)
【文献】特開2018-16947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/36
B32B 9/00
B32B 27/40
B05D 7/00
B05D 7/24
B05D 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上に設けられた構造物の表面を清掃する工程と、
前記構造物の表面に養生を行う工程と、
前記構造物の表面に、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物である透明なポリウレアを塗布する工程と、
前記塗布された透明なポリウレアに無機系ガラス質コーティング剤を塗布する工程と、
前記養生を除去し、清掃する工程と、を有することを特徴とする構造物の表面のコーティング方法。
【請求項2】
表面に、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物である透明なポリウレアが塗布され、
前記塗布された透明なポリウレアに無機系ガラス質コーティング剤が塗布され、陸上に設けられることを特徴とする構造物。
【請求項3】
前記構造物は、コンクリート、金属、合成樹脂のいずれか一以上から成る請求項
1に記載の構造物の表面のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上に設けられるコンクリート・各種金属・樹脂等から成る構造物の表面のコーティング方法及びその構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特開2010-1707号公報(特許文献1)にて、コンクリート構造物の素地の表面状態を外部から目視で確認することができる強化コーティング方法が提案されている。
この特許文献1の従来例は、コンクリート構造物の表面の汚れを除去し、コンクリート構造物表面に透明ポリウレタン樹脂溶液を塗り付けたのちにガラス連続繊維シートを貼着し、その上から透明ポリウレタン樹脂溶液を塗り付けてガラス連続繊維シートに含侵させ、これを乾燥させることで固化させて透明又は半透明の第一コーティング層を形成するものである。
【0003】
さらに、特開2011-169085号公報(特許文献2)にて、コンクリート構造物の素地の表面状態を外部から目視で確認することができる強化コーティングを実現するコンクリート構造物表面の強化コーティング方法及びコンクリート構造物の強化コーティング構造、並びに強化コンクリート構造物が提案されている。
この特許文献2の従来例は、同一箇所で最大で2つまでしか交差しない様にガラス繊維糸を配列したガラス連続繊維シートを透明ポリウレタン樹脂を介して構造物2に貼着し、その上から透明ポリウレタン樹脂を塗り付けてガラス連続繊維シートに含浸させ、これを乾燥させて固化し透明若しくは半透明のコーティング層を形成するものである。
【0004】
さらに、特開2016-180229号公報(特許文献3)にて、点検等を行う際に、破損箇所を目視で確認できると共に、作業者の作業負担を軽減することができ、かつ、利用者に不安感を与えないコンクリートのコーティング構造、コンクリート表面のコーティング方法が提案されている。
この特許文献3の従来例は、コーティング構造体は、コンクリート表面に設けた下地層、下地層に貼設して形成されたガラス連続繊維シート層、ガラス連続繊維シート層上に設けた中間樹脂層、中間樹脂層上に設けた表面層を備え、下地層、中間樹脂層、表面層には透明ポリウレタン樹脂が使用され、マイクロカプセルは、液密な中空の球体である外殻体と、外殻体内に封入された励起光照射により発光する液状の蛍光物質からなり、透明ポリウレタン樹脂の塗剤に所定量投入された後に混練され、透明ポリウレタン樹脂の乾燥後は塗膜中に分散された状態となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明は、陸上に設けられるコンクリート・磁器タイル等石材類・各種金属類・樹脂等から成る構造物の表面の状態を、外部から目視により確認でき、構造物の表面を強化し、構造物の表面の汚れ及び劣化を防止する効果を長寿命化する構造物の表面のコーティング方法及びその構造物を提供する。
【0009】
本発明は、陸上に設けられた構造物の表面を清掃する工程と、前記構造物の表面に養生を行う工程と、前記構造物の表面に、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物である透明なポリウレアを塗布する工程と、前記塗布された透明なポリウレアに無機系ガラス質コーティング剤を塗布する工程と、 前記養生を除去し、清掃する工程と、を有することを特徴とする構造物の表面のコーティング方法である。
【0010】
さらに、本発明は、表面に、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物である透明なポリウレアが塗布され、
前記塗布された透明なポリウレアに無機系ガラス質コーティング剤が塗布され、陸上に設けられることを特徴とする構造物である。
【0013】
本発明は、陸上に設けられるコンクリート・磁器タイル・各種金属類・樹脂等等から成る構造物の表面の劣化進行の状態を、外部から目視により確認でき、構造物の表面を強化し、構造物の表面の汚れを防止し、長期点検性を付与する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
陸上に設けられる構造物における本実施形態の工程説明図
及び海洋に設けられる構造物における本参考例の工程説明図である。
【
図2】陸上に設けられる構造物の本実施形態の構成図である。
【
図3】海洋に設けられる構造物の本
参考例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図2に示される陸上に設けられるコンクリート等から成る構造物10における構造物10の表面11のコーティング方法を、
図1を参照して説明する。
本実施形態の最初の工程1は、陸上に設けられた構造物10の表面11を清掃する工程である。
高圧洗浄やブラスト処理により表面の汚れ、レイタンス、浮き、劣化部を取り除き、金属の錆は除去し、表面11を清掃する。
【0016】
次の工程2は、構造物10の表面11に養生を行う工程である。
表面11の工程施工部分を養生することにより飛散を防止する。表面11の工程施工部の境界部分は、マスキングテープを貼ると養生の撤去を行いやすい。
【0017】
次に、
図1に示される工程3は、
図2に示される構造物10の表面11に、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物である透明なポリウレア12を塗布する工程である。
対象物表面の状態に応じ、必要であればプライマー処理を行う。ポリウレア12を刷毛、ローラー、又はエアレス吹付け機により指定量塗布する。ポリウレア12の使用量は機械のカウンター及びサンプリングの膜厚にて確認する。
ポリウレア12の標準塗布量は、0.5~1.0kg/m2で、塗装間隔である乾燥時間は、24時間程度である。
15年超の長期間に亘り構造物表面皮膜の視認性を確保する強靭な皮膜を形成する。
通常の塗料皮膜と異なり、摩擦や打撃などの外部からの物理的擦傷に対しても破断しにくい。
ポリウレア12は、ヘキサメチレン-1,6ジイソシアネート ホモポリマー50~75%、グルタル酸、2メチル-ジメチルエステル 5~30%、ヘキサメチレン ジイソシアネートオリゴマー1~25%ヘキサメチレン ジイソシアネート0.1~0.5%から成る。
他のポリウレア12は、テトラエチル鉛 メチレンシクロヘキサン アスパラギン酸75~95%オキシジプロパノール安息香酸エステル化物1~5%から成る。
【0018】
ポリウレア12は、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物で、防水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐熱性、防食性に非常に優れた効果を有する。
数秒から数分で硬化する速乾性は、あらゆる状況での使用を可能にし、施工の幅を広げ、グレードによっては400%以上の伸長率を有し、その柔軟性がもたらす強度は、例えば、軍事施設の防爆対策としても使用される。
溶剤等も含まないため環境に悪影響も無く、容易に構造物の表面を強靭化する表面皮膜を得られる。
【0019】
ポリウレア12は、従来のポリウレタン系などと比較して耐薬性・防食性などの物性において非常に優れた効果を有する。
グレードによっては、50%の硫酸に対し、長期間に亘る耐性を有しているので、酸や強アルカリ等の強い薬品による腐食から長期間に亘って構造物の表面を保護する。
また、JIS規格、塗料摩耗試験においても、試験後の塗膜損耗量が3mgと他の従来のポリウレタン系と比較して圧倒的な耐摩耗性を有する。
耐候性が非常に高く、過酷な屋外環境下でも長期間に亘って、構造物の表面の保護を実現出来る。
【0020】
ポリウレア12は、強度と柔軟性に優れ、コンクリートの表面強度と同等の強度を持ちながら、グレードによっては400%以上の伸長率を有する。
その強靭性かつ柔軟性がもたらす強度は、軍事施設の防爆対策としても使用される。
特に、コンクリート基材のクラックには割れることなく適応し、基材の保護に効果的である。
以上のようにポリウレア12は、防水・耐薬品・耐摩耗・防錆・剥落防止・耐爆発・耐熱・耐衝撃・耐紫外線に優れた特徴を有する。
【0021】
本実施形態の工程は、100%ピュアのポリウレア樹脂を中心に、ハイブリッドポリウレア樹脂を用いて構造物の耐久性向上、延命を図る目的で高温・高圧にて表面に吹付ける工法である。
樹脂には芳香族、脂肪族、アスパラギン酸エステル系の3種類があり、耐候性に優る。
超速乾である特徴より垂直面や天井面への吹付けでもダレなどが生じない、優れた施工性を持つ。
非常に結合力の強い“ウレア結合”にて遮塩性、耐酸、耐アルカリを初めとする耐化学薬品性に優れる。
優れた接着性により、塗布対象部分を補強するシームレスなコーティングが可能である。
優れた耐久性、施工性によりライフサイクルコストの低減が可能である。
【0022】
従来、構造物の表面の被服材として適用されている材料に、エポキシ樹脂あるいはポリウレタンがある。
エポキシ樹脂は、一般的に接着性や耐薬品性に優れるが、クラック追従性に弱い。
ポリウレタンは、柔らかいため、優れたクラック適応性があるが、耐アルカリ薬品性等の耐薬品性や耐候性に劣る。
従来のエポキシ樹脂あるいはポリウレタンに比較して、ポリウレアは、耐薬品性・耐候性に優れ、且つ、クラック適応性がある。
この優れた物性はポリウレアの“ウレア結合”によるものであり、柔軟性を維持したまま、高剛性、優れた物質遮断性を有する。
【0023】
以下、ポリウレタンとポリウレア12の化学式を示す。
ポリウレタンにおけるポリオールとイソシアネートの反応性生物は、以下の化学式1に示される。
【化1】
【0024】
ポリウレア12におけるアミンとイソシアネートの反応性生物は、以下の化学式2に示される。
【化2】
【0025】
ポリウレア12の代表的物性は、以下の表1に示される。
【表1】
【0026】
ポリウレア12の詳細な物性は、以下の表2に示される。
【表2】
【0027】
ポリウレア12の塗膜の物性は、以下の表3に示される。
【表3】
【0028】
従来のポリウレタンは、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)とポリイソシアネートの発熱反応をベースに、ポリオールのようなヒドロキシル末端基との化合物となる。
ポリウレア12は、ポリウレタンと同じようなMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)とポリイソシアネートの発熱反応をベースにしているが、重要な違いはポリウレア12が活性水素基(アミン)を利用している点である。
ポリウレア12は、従来のポリウレタンの欠点である水分や高湿度環境での硬化不良の可能性、低い耐衝撃性や耐熱性などの問題を解決し、表面物性を向上させる。
ポリウレア12の構造中のC-N結合は、ポリウレタンの構造中のC-O結合よりも強く、結果ポリウレアは、より高い耐熱性や耐熱変形性、弾性力、強靭性を有するため、基材の動きやひび割れへの適応性能を向上させる。
【0029】
純粋なポリウレア12は100%疎水性であり、水分があることによって硬化を阻害されない。 例えば、水面の上でも皮膜として硬化し、強度発生は損なわれない。
また、硬化反応後は、水や紫外線に侵されることなく、長期に亘って塗膜性能を維持出来る。
これに対して、ポリウレタンは、水分に対して非常に敏感であり、塗膜の硬化性が劣化し、強度が劣化する。
硬化反応後は、ポリウレタンが塗布された基材が、紫外線による劣化を防ぐために定期的に塗布する必要がある。
また、恒久的にポリウレタンに水分が接することでの加水分解される場合もある。
【0030】
ポリウレア12の塗布は、刷毛、ローラー、又はエアレス吹付け機を使用する。
高温高圧吹付け機または推奨ローラーにより指定量塗布する。使用量は機械のカウンター及びサンプリングの膜厚にて確認する。
ポリウレア12の施工法としては、標準的には専用のスプレー車内においてA剤及びB剤を加熱・混合させて高温高圧吹付機によりスプレー塗布を行う。
本実施形態で用いる透明なポリウレア12は、このようなスプレー機材を使用しなくても、一般的な塗装用ローラー塗布によっても安定した皮膜を得ることが出来る。
【0031】
次に、
図1に示される本実施形態の工程4は、塗布された透明なポリウレア12に無機系ガラス質コーティング剤13を塗布する工程である。
無機系ガラス質コーティング剤13を構成する主剤は、以下の化学式3に示される。
【化3】
【0032】
無機系ガラス質コーティング剤13を構成する硬化剤は、以下に示される。
M(OR)n M=スズ等の金属元素
無機系ガラス質コーティング剤13を構成する硬化剤に空気中の水分が加わると、以下に示される化学反応を生じる。
M(OR)n +nH2O → M(OH)x +nROH(アルコール)
【0033】
無機系ガラス質コーティング剤13を構成する主剤に硬化剤及び空気中の水分が加わると、以下の化学式4に示される化学物質が生成される。
【化4】
【0034】
無機系ガラス質コーティング剤13は、上記に示すような反応機構によって硬化し、ポリシロキサン結合を有する有機無機複合塗膜を形成する。
ポリシロキサンとは、ケイ素-酸素骨格(Si-O結合)とメチル基、エチル基、フェニル基等の有機基を含有するシリコーンであり、当該コーティング材硬化後の膜成分には有機基の割合が数%と極めて低く、石英ガラスなどの無機物に近い構造を有する。
従って、高硬度、高耐候性を有し、また表面自由エネルギー(表面張力)が20mN/m以下で撥水・撥油性、離型性能に優れるため長期間にわたり極めて優れた防汚性能、汚染回復性を示す。
このため、無機系ガラス質コーティング剤13は、15~20年超の長期繰り返し洗浄回復性を有する。そのため、構造物表面に長期に亘る排気ガス等油脂分や土、ホコリ、汚泥等の繰り返し洗浄回復性を付与し、長期点検性を確保出来る。
【0035】
無機系ガラス質コーティング剤13は、耐候性が高く、15年超の長期間に亘り構造物表面に防汚性・繰り返し洗浄性を付与する。 ラッカースプレーや排気ガスなどに対する離形性が非常に高い。
無機系ガラス質コーティング剤13は、ベース剤として、シリコーン樹脂90~99%、イソプロピルアルコール1~5%から成り、硬化剤として、ジブチルスズジアセテ-ト30~40%、アセト酢酸エチル20~30%、エタノール20~30%、ナフサ, 石油, 軽質アルキレート20~30%、テトラ-n-ブトキシチタン10~20%を有する。
無機系ガラス質コーティング剤13の物性データは、表4に示される。
【表4】
【0036】
無機系ガラス質コーティング剤13の塗膜の物性データは、表5に示される。
【表5】
【0037】
無機系ガラス質コーティング剤13は、落書き貼り紙防止、高速道路等トンネル内装(視線誘導工)、打ち放しコンクリート面保護工事等数々の公共事業・民間工事に使用されている。
無機系ガラス質コーティング剤13は、シリカガラス粉体を混入することにより艶あり・半艶・艶消しとすることが出来、塗布対象物の意匠性保護も同時に可能である。
様々な対象物に直接塗布出来るが塗布対象基材の種別や状況により、必要に応じプライマーを塗布することもある。
また、表面皮膜の機能性の目的によって撥水性フッ素樹脂表面改質技術であるナノテクノロジー分散液を調合することにより、水滴との接触角度150°超の超撥水皮膜を得ることも可能である。
【0038】
無機系ガラス質コーティング剤13は、含有する無機比率が極めて高いため、長期間屋外で暴露されることによって塗膜の割れを生じる場合がある。
塗膜の透明性を失わずに割れを防止する手段としては、極力薄膜で塗布する。そのため、標準塗布量を0.04kg/m2と設定し、引き伸ばすように塗布する必要がある。
また、天然成分由来のセルロースナノファイバー、キチンナノファイバー等のバイオナノファイバーあるいは合成系のカーボンナノチューブあるいはエレクトロスピニング法による種々のナノファイバー等を分散混合する方法がある。
【0039】
さらに、キチンナノファイバーを使用する場合には、下記の製造方法によって得られるキチンナノファイバーの分散液を使用する。
このキチンナノファイバーの製造方法は、甲殻類由来のキチン含有材料を、 少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程に付し、酸性試薬にて処理する工程に付し、次いで、解繊工程に付すことを特徴とする。
さらに、このキトサンナノファイバーの製造方法は、甲殻類由来のキチン含有材料を少なくとも1回の脱蛋白工程および少なくとも1回の脱灰工程および少なくとも1回の脱アセチル化工程に付し、次いで、解繊工程に付すことを特徴とする。(特許第5186694号公報)
【0040】
最後の工程5は、 養生を除去し、清掃する工程で、本実施形態の工程は、完了する。
【0041】
本実施形態の構造物10は、表面11に、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物である透明なポリウレア12が塗布され、塗布された透明なポリウレア12に無機系ガラス質コーティング剤13が塗布され、陸上に設けられる。
陸上に設けられる構造物10は、トンネル、橋梁の橋脚、桁、プール、ダム、食品加工工場、発電所、パイプライン、水路、タンク、倉庫、船舶、駐車場、擁壁、産業廃棄物埋立地等の構造物で、コンクリート、磁器タイル等石材類、金属、合成樹脂類のいずれか一以上から成る。
【0042】
塗布された透明なポリウレア12に無機系ガラス質コーティング剤13が塗布され、陸上に設けられる本実施形態の構造物10の公的確認試験による性能は、表6に示される。
構造物10の表面11に、強靭且つ15年超の長期に亘り汚染物質を繰り返し洗浄でき回復効果を有し、長期点検性を付与する透明な塗膜の形成が出来た。
【表6】
【0043】
次に、
図3に示される
本発明の参考例である海洋に設けられるコンクリート等から成る構造物10aにおける構造物10aの表面11aのコーティング方法を、
図1を参照して説明する。
図2に示される陸上に設けられるコンクリート等から成る構造物10における構造物10の表面11のコーティング方法と、大部分の工程が共通するが、
図1に示される工程4aが異なる。
図1に示される工程4aは、
図3に示されるように構造物10aの表面11aにおいて、ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14を、塗布された透明なポリウレア12に塗布する工程である。
【0044】
塗料14は、特殊な抗菌処理を施した海洋向け塗料である。
大面積から小面積まで、構造物10aの表面11aに、ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14を塗布することにより、塗布部分に海藻類、貝殻等の海洋生物が付着することを防止する。
約2~3年程度、この効果が持続し、簡易な清掃のみで構造物10aの表面11aの長期の点検性を維持する。
約2~3年程度で徐々に表面11aの塗料14の塗膜が海水と共に徐々に融解していく。
その下層に透明なポリウレア12の層が存在しているため、構造物10aの表面11aの目視点検が容易に可能となる。
【0045】
塗料14を塗布することにより、構造物10aの表面11aに強靭且つ静止状況下の海中において長期に亘る防汚性、即ち、海洋生物付着防止性を付与する。
2~3年毎の定期検査時に塗料14を再塗布または塗布したシート状の建材を貼り付けることにより、構造物10aの表面11aの劣化状況の点検性を向上する。
塗料14を構成するベース剤は、テトラエトキシシラン0.1~1%、銅ピリチオン1~5%、亜酸化銅40~45%、酸化亜鉛1~5%、ベンガラ1~5%、石油ナフサG1~5%、キシレン10~20%、エチルベンゼン10~20%、 1,2,4トリメチルベンゼン1~2%、1,3,5トリメチルベンゼン0.1~1%、メチルアルコール0.5~1%、エチルアルコール0.5~1%、その他有機顔料、助剤から成る。
塗料14を構成する添加剤は、有機無機複合抗菌剤・キトサンナノファイバー溶液で、 2-(チオシアナートメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール0.1~2%、ナノシルバー水溶液(10,000ppm)80~90%、キトサンナノファイバー水溶液10~20%、助剤から成る。
ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14の物性データは、表7に示される。
【表7】
【0046】
ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14の塗膜の物性データは、表8に示される。
【表8】
【0047】
発電所などの海洋に設けられる構造物10aの点検サイクルは2~3年程度である。この点検は、海水を抜いて構造物10aの点検及び補修を行う。
構造物10aの劣化進行が有る場合、適宜、補修工事を行い、その上に14を、再塗布する。あるいは他所で塗料14を塗布したシート状のものを貼り付けるということも可能である。
従来、静止状況下で海水に浸漬して海洋生物の付着を防止出来る表面処理技術は存在しなかった。
従来、トリブチルスズ(TBT)などの毒性物質を混入して貝殻付着を防止する場合もあったが、国際条約により全面使用禁止となった。
以降、タンカーなどの船底にはケイ素ポリマー系防汚塗料の技術開発が進んだが、流水と航行による抵抗力によって表面塗膜が徐々に溶解して更新されることにより海洋生物の付着を防止する、という理論のため、船舶以外の静止状況下における海洋構造物表面の海洋生物付着防止効果を得られにくいという問題点があった。
ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14は、公的な廃棄物規格試験に合格している無公害のものでありながら静止状況下における海洋構造物表面に長期に亘り高い付着防止持続性を付与することが出来る。
日本国内海域以外の海外海域においても同様の効果を発揮することが出来る。
【0048】
陸上トンネルは、主に都市トンネルと山岳トンネルがあり、それぞれ汚染物質が異なる。
都市トンネルの内部空間は、大量の車両交通量による排気ガスよる汚染がされ、山岳トンネルにおいては、泥や砂、寒冷地対策の塩化カルシウム融雪剤等が混ざり合い固化付着を引き起こす。
一方、海洋に設けられる構造物10aは、例えば、発電所取水口などは海中に存在するトンネル構造物がある。
これらは、常時、海水と接しているため陸上とは比較にならない繁殖スピードで多量の菌類・海藻類・貝殻が付着し、構造物10aの表面11aを覆い、著しく点検性を阻害する。
図3に示されるように塗布された透明なポリウレア12に塗料14を塗布することにより、排気ガス等油脂分・土・ホコリ・汚泥・菌類・海藻類・貝殻が付着し、構造物の表面を覆い、著しく点検性を阻害することを防止し長期に亘り構造物表面の点検性を確保する。
【0049】
ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を防汚塗料加えた塗料14は、有機錫化合物(TBT)を含有しない塗料である。
フジツボやカラス貝や海藻類の付着と繁殖は、時に海洋構造物表面を覆い尽くし構造物表面の点検性を著しく損ねる。
また、船舶運航においては停泊中に海洋生物が付着、繁殖することにより航行開始時に船底表面の摩擦抵抗力を増加させ、燃料消費量の増大などの経済的損失を生じる。
このような海洋生物付着による経済的損失を避けるため、従来、塗料などに防汚剤を混合することにより海洋生物付着防止技術が発達してきた。
【0050】
従来の防汚剤は主に有機錫化合物(TBT)であるが、近年における国際的な環境問題に対する意識の向上などを背景に、有機錫化合物(TBT)の海洋汚染への懸念や海水に流出することによって魚介類の体内に濃縮・蓄積され、それを人間が摂取することによって人体への悪影響が発生するなどの事象が懸念された。
このため、2001年にIMO(国際海事機構)においてAFS条約(国際条約)が採択され、2003年以降、有機錫化合物(TBT)を含有する防汚塗料の塗装が禁止されることとなった。
このような流れによって海洋生物付着防止技術においてはある種の毒性物質を使用することは不可能となり、そのため海水の流速と航行時の抵抗力によって船底の表面塗膜が加水分解しつつ更新されるケイ素ポリマー系防汚塗料が開発され、多く使用されてきた。しかしながら海水の流速と航行時の抵抗力によって海洋生物の付着を阻止するタイプのものであるため、船舶以外の海洋構造物表面においては海洋生物付着防止性が得られにくい、という問題点があった。
そこでケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14を用いて静止状況下においても長期に亘る海洋生物付着防止性を発揮出来るものとした。
【0051】
ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14は、下記化学式5に示される加水分解機構によって船舶の航行中に船舶船底の表面塗膜が海水と航行による抵抗により徐々に溶解し、常に新しい塗膜表面が更新されることによって海洋生物を付着することを防止する効果を持続する。
これらの塗料はタンカーの船底等に一般的に使用されている。
【化5】
【0052】
ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14は、海洋汚染等の環境負荷が無く、現在広い範囲で使用されているが、海洋生物付着防止効果を海水流速抵抗力による加水分解効果に委ねている。
このため、船舶船底以外の海洋構造物などの海中静止構造物の表面においては航行による抵抗力が受けられないため、静止状態においての海洋生物付着防止効果が得られにくいが、本参考例により、発電所取水口壁面などの海中トンネル構造物等表面の長期点検性の確保に寄与する。
【0053】
ケイ素ポリマー系防汚塗料をベース剤とし、ベース剤に有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を添加剤として加えた塗料14は、海中静止状況下においても海洋生物付着防止効果を2~3年程度維持し続ける理由は以下のとおりである。
海洋生物付着の原因は対象物表面の栄養分であり、これは雑菌の塊が膜のようになった層(一般的にバイオフィルム層といわれる)である。対象物表面に豊富な養分が存在することにより海洋生物の幼虫の生育の温床となり、幼虫が生育・固着を繰り返すことにより厚い付着層が形成され、結果、海洋生物付着が促進されることとなる。
静止状況下にある海洋構造物表面の海洋生物付着防止効果を付与するには、長期に亘る貝類幼生付着成長阻害効果あるいは藻類付着着生阻害効果を付与することが必要である。そのためにはケイ素ポリマー系防汚塗料に対して以下の手順で長期間付着着生阻害効果を発揮することが期待される「抗菌剤」を選択し添加する方法が挙げられる。
そのためにケイ素ポリマー系防汚塗料に対して以下の手順で長期抗菌性を付与する。
【0054】
いわゆる抗菌剤には有機系抗菌剤と無機系抗菌剤が存在する。有機系抗菌剤とは本来は薬剤(洗剤)として使われていた ものであり、広義にとらえれば抗生物質、抗がん剤、酸化剤(過酸化水素、次亜塩素酸ナ トリウム)もこの系統に含まれる。
その特徴として1.比較的安全性がわかっている、2.熱安定性が低いものが多く、加工適性が低い、3.抗菌スペクトル(殺菌できる微 生物の範囲)が狭いものが多い、4.耐性菌が発現しやすい(即効性がある)などがあげらる。
化学構造によって、アルコール系、フェノ ール系、エステル系、過酸化物・エポキシ系、 ハロゲン系、イミダゾール・チアゾール系、 チオカーバメート系、界面活性剤系および有機金属系など、19 種の系列に分類出来る。
貝類の幼生や海洋性藻類の着生を阻害し、あるいはバクテリア、カビ等微生物の増殖を阻害するいわゆる「抗菌剤」は有機抗菌剤と無機抗菌剤に大別できる。
有機抗菌剤はさらに合成有機抗菌剤と天然有機抗菌剤に分けられる。
合成有機抗菌剤としては、アルコール系、フェノール系、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、エーテル系、ニトリル系、ハロゲン系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾリン系、イミダゾール・チアゾール系、アニリド系、ビグアナイド系、ジスルフィド系、チオカーバメート系、第四級アンモニウム塩系、両性界面活性剤系、有機金属系が挙げられる。天然有機抗菌剤としては、ヒノキチオール、ヒバ油、ヨモギエキス、ユーカリエキス、はっかオイル、樟脳、リモネン、辛子抽出物、天然ワサビ成分、カテキン(緑茶エキス)、柿抽出物、シソエキス、竹抽出エキス、キトサン(キトサンナノファイバー)、ポリリジン、天然抗生物質等が挙げられる。
一方無機抗菌剤は、無機化合物を主要な組成物とする抗菌剤であり、現在最も使用量が多い。無機抗菌剤としては、抗菌金属担持グループ(ケイ酸塩系、リン酸塩系、酸化物系、ガラス系)、金属(水)酸化物グループ(酸化亜鉛、(水)酸化カルシウム)、金属銀グループ(ナノシルバー系、銀コロイド)、光触媒グループ(単味系(二酸化チタン)、ハイブリッド型(二酸化チタン+銀、銅担持))が挙げられる。
【0055】
有機系抗菌剤の特徴は、以下のとおりである。
抗菌性:即効性、効果の発揮される種類が限定されるものが多い
耐熱性:一般に樹脂成型温度で一部が揮散か分解を起こす
持続性:水、熱等により蒸発・分解を生じやすく、効果が低下する
加工性:加工時に熱がかかる方法では蒸発・分散のおそれがある
安全性:抗菌剤自体の毒性は少ないが完全に安全性を確認できていない系統
もある。
【0056】
無機系抗菌剤の特徴は、以下のとおりである。
抗菌性:遅効性、細菌・カビ・酵母の広範囲で効果を発揮する。
耐熱性:樹脂成型温度(最高350℃)でも分解・変質がない。
持続性:有機溶媒等による溶出はなく、長期にわたり抗菌性を発現する。
加工性:粉体形状で従来の顔料等と同様に扱える。
安全性:銀を有効成分としたものが大部分であり、銀の安全性は高い。
また、無機系抗菌剤とはいわゆる銀を代表とした金属系抗菌剤溶液である。銀は古来より人間社会に溶け込み、ナイフやフォーク、皿などの食器類として活用されている。
現在ではナノテクノロジー(超微細処理技術)が発達し、ナノシルバー抗菌剤溶液として一般的に容易に入手出来る。
【0057】
これらのうち、微生物の生合成の阻害効果のあるフェノール系、ピリジン・キノリン系、トリアジン 系、イソチアゾロン系、アニリド系の抗菌剤水溶液から少なくとも二種類を抽出し、微生物のエネルギー獲得活動に対する阻害効果のあるニトリル系、イミダゾール・チアゾール系水溶液から少なくとも一種類を抽出するのが好ましい。
また、無機系抗菌剤としてナノシルバー抗菌剤水溶液を使用して上記有機系抗菌剤を混合攪拌する。この際、銀濃度は10,000ppmとなるように水溶液濃度を調整するのが好ましい。
混合攪拌方法としては真空攪拌乾燥機を用いて混合物原料粉体を抽出する方法が望ましい。
【0058】
上記により得られた添加剤原料をキトサンナノファイバー分散液と混合攪拌する。キトサンナノファイバー分散液は精製してイソプロピルアルコール溶媒で溶解させ、溶剤系分散液とする。
この際、製作する分量の目安としてベース剤であるケイ素ポリマー系防汚塗料の分量に対して添加剤として10%の添加剤溶液となるように溶液を製造する。
【0059】
例えば、ケイ素ポリマー系防汚塗料の分量を20kgとすると、調合する添加剤溶液は2kgとなるように設定する。
ベース剤であるケイ素ポリマー系防汚塗料と上記により得られた長期抗菌型添加剤溶液を添加剤として調合し、海中静止状況下において海洋汚染性が無く、長期に亘り海洋生物付着防止性を発現する表面皮膜を形成することが可能になる。
塗布作業としては塗布前に電動撹拌機を用い、容器の中味が均一になるようにゆっくりと時間をかけて攪拌を行い、一般的な塗装用中毛ローラー施工具等を用いて清掃を行って乾燥した清潔な被塗装面に塗布し、仕上げる。
【0060】
本参考例である構造物10aは、表11aに、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成されるウレア結合を基本とした樹脂化合物である透明なポリウレア12が塗布され、塗布された透明なポリウレア12にケイ素ポリマー系防汚塗料14が塗布され、海洋に設けられる。
海洋に設けられる構造物10aは、トンネル、橋梁の橋脚、桁、プール、ダム、食品加工工場、発電所、パイプライン、水路、タンク、倉庫、船舶、駐車場、擁壁、産業廃棄物埋立地等の構造物で、コンクリート、磁器タイル等石材類、金属、合成樹脂のいずれか一以上から成る。